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▶ シャンハイ アスクレーピオス メディテック カンパニー,リミテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】拡張したイオン交換膜電解セル
(51)【国際特許分類】
   C25B 11/02 20210101AFI20241213BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20241213BHJP
   C25B 9/17 20210101ALI20241213BHJP
   C25B 9/73 20210101ALI20241213BHJP
【FI】
C25B11/02 301
C25B1/04
C25B9/17
C25B9/73
【請求項の数】 20
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020074285
(22)【出願日】2020-04-17
(65)【公開番号】P2020180372
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2020-11-06
【審判番号】
【審判請求日】2023-02-28
(31)【優先権主張番号】201910336337.2
(32)【優先日】2019-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519382695
【氏名又は名称】シャンハイ アスクレーピオス メディテック カンパニー,リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI ASCLEPIUS MEDITEC CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.758, Jiaxin Highway, Jiading District, Shanghai 201822 China
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】リン、シン-ユン
【合議体】
【審判長】粟野 正明
【審判官】土屋 知久
【審判官】相澤 啓祐
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0099479(US,A1)
【文献】特開2011-150997(JP,A)
【文献】特開2002-332586(JP,A)
【文献】特開昭55-12692(JP,A)
【文献】特開2010-189689(JP,A)
【文献】中国実用新案第201990733(CN,U)
【文献】国際公開第2016/076857(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B1/00-15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡張したイオン交換膜電解セルであって、
アノード板と、
カソード板と、
前記アノード板と前記カソード板との間に配設された、少なくとも1枚のバイポーラ電極板と、
前記アノード板と前記少なくとも1枚のバイポーラ電極板との間に配設された、第1のイオン交換膜板と、
前記少なくとも1枚のバイポーラ電極板と前記カソード板との間に配設された、第2のイオン交換膜板と、
それぞれ凹状中央部を有し、前記凹状中央部は、互いに接続された複数の溝、及び前記溝同士の間に形成された複数の隆起部を有し、前記溝は、第1の方向に延びる第1のセットの溝、及び第2の方向に延びる第2のセットの溝を備え、2Dアレイに配置される前記隆起部を形成する、前記アノード板の面、前記カソード板の面、及び前記少なくとも1枚のバイポーラ電極板の2つの面と、
平坦板、及び前記平坦板に配設された支持セクションを備えるセパレータと、
前記アノード板の前記溝と前記第1のイオン交換膜板との間、及び前記少なくとも1枚のバイポーラ電極板の前記溝と前記第2のイオン交換膜板との間に形成された、複数の酸素チャンバと、
前記第1のイオン交換膜板と前記少なくとも1枚のバイポーラ電極板の前記溝との間、及び前記第2のイオン交換膜板と前記カソード板の前記溝との間に形成された、複数の水素チャンバと
を備え、
水素出口チャネル、酸素出口チャネル、及び水入口チャネルは、前記拡張したイオン交換膜電解セルに形成され、前記水素出口チャネルは、複数の前記水素チャンバの各々に連結され、前記酸素出口チャネル及び前記水入口チャネルは、複数の前記酸素チャンバの各々に連結され、
前記セパレータは、前記水素チャンバのうちの1つから前記水素出口チャネルへの接合部に配設される、拡張したイオン交換膜電解セル。
【請求項2】
前記酸素チャンバは、前記アノード板に隣接した第1の酸素チャンバを備え、前記アノード板の前記面は、凸状周縁部を有し、前記凹状中央部に空間が形成され、前記第1の酸素チャンバは前記空間を備え、前記凸状周縁部は、前記アノード板及び前記第1のイオン交換膜板が積み重ねられたとき、前記水素出口チャネルの一部、前記酸素出口チャネルの一部、及び前記水入口チャネルの一部に対応する複数の穴を有し、前記酸素出口チャネル及び前記水入口チャネルが連結される、請求項1に記載の拡張したイオン交換膜電解セル。
【請求項3】
前記水素チャンバは、前記カソード板に隣接した第1の水素チャンバを備え、前記カソード板の前記面は、凸状周縁部を有し、前記凹状中央部に空間が形成され、前記第1の水素チャンバは前記空間を備え、前記水素出口チャネルは前記凹状中央部に連結される、請求項1に記載の拡張したイオン交換膜電解セル。
【請求項4】
前記少なくとも1枚のバイポーラ電極板は、カソード面及びアノード面を有し、前記カソード面及び前記アノード面の各々は、凸状周縁部を有し、前記水素チャンバは、前記少なくとも1枚のバイポーラ電極板の前記カソード面に隣接した第2の水素チャンバを備え、前記凹状中央部に第1の空間が形成され、前記第2の水素チャンバは前記第1の空間を備え、前記酸素チャンバは、前記少なくとも1枚のバイポーラ電極板の前記アノード面に隣接した第2の酸素チャンバを含み、前記凹状中央部に第2の空間が形成され、前記第2の酸素チャンバは前記第2の空間を備え、積み重ねられたとき、前記カソード面及び前記アノード面の凸状周縁部は、前記水素出口チャネルの一部、前記酸素出口チャネルの一部、及び前記水入口チャネルの一部に対応する複数の穴を有し、前記水素出口チャネルは前記カソード面の前記凹状中央部に連結され、前記酸素出口チャネル及び前記水入口チャネルは、前記アノード面の前記凹状中央部に連結される、請求項1に記載の拡張したイオン交換膜電解セル。
【請求項5】
前記アノード板と前記第1のイオン交換膜板との間、前記第1のイオン交換膜板と前記少なくとも1枚のバイポーラ電極板との間、前記少なくとも1枚のバイポーラ電極板と前記第2のイオン交換膜板との間、及び前記第2のイオン交換膜板と前記カソード板との間、にそれぞれ配設された、複数のシリコン封止ガスケットをさらに備え、前記シリコン封止ガスケットの各々は、中空セクション及び環状セクションによって形成された中空環状構造であり、前記水素出口チャネル、前記酸素出口チャネル、及び前記水入口チャネルは、前記シリコン封止ガスケットの各々の前記環状セクションを貫通する、請求項1に記載の拡張したイオン交換膜電解セル。
【請求項6】
前記シリコン封止ガスケットの各々の前記中空セクションにそれぞれ配設され、かつ隣接した前記第1のイオン交換膜板、または隣接した前記第2のイオン交換膜板にそれぞれ装着された、複数の拡散板をさらに備える、請求項5に記載の拡張したイオン交換膜電解セル。
【請求項7】
前記隆起部は、対応する前記拡散板に当接するよう構成され、前記アノード板、前記カソード板、前記少なくとも1枚のバイポーラ電極板、前記第1のイオン交換膜板、及び前記第2のイオン交換膜板が積み重ねられたとき、前記隆起部は、対応する前記拡散板を、対応する前記第1のイオン交換膜板または対応する前記第2のイオン交換膜板に当接させ、前記溝は、前記水素出口チャネル、前記酸素出口チャネル、及び前記水入口チャネルのうちの少なくとも1つにそれぞれ連結される、請求項6に記載の拡張したイオン交換膜電解セル。
【請求項8】
前記拡散板は複数の孔を有し、それによって水、水素、及び酸素は前記孔を流れ抜ける、請求項6に記載の拡張したイオン交換膜電解セル。
【請求項9】
前記セパレータは、前記酸素チャンバのうちの1つから前記酸素出口チャネル及び前記水入口チャネルへの接合部に配設され、前記セパレータは、対応する前記シリコン封止ガスケットに対して当接してポートを形成し、前記水素出口チャネルは、前記水素チャンバに、前記ポートを介して連結され、または前記酸素出口チャネル及び前記水入口チャネルは、前記酸素チャンバに、前記ポートを介して連結される、請求項5に記載の拡張したイオン交換膜電解セル。
【請求項10】
前記カソード板に面した側とは反対側のアノード板の側、及び前記アノード板に面した側とは反対側のカソード板の側、のうちの少なくとも1つの箇所の上部に配設された、少なくとも1枚の絶縁熱ボードをさらに備え、前記少なくとも1枚の絶縁熱ボードは、前記拡張したイオン交換膜電解セルの電流を外部環境から分離するよう、かつ前記拡張したイオン交換膜電解セルの熱エネルギーを外部環境に伝導するよう構成される、請求項1に記載の拡張したイオン交換膜電解セル。
【請求項11】
前記カソード板に面した側とは反対側のアノード板の側、及び前記アノード板に面した側とは反対側のカソード板の側、のうちの少なくとも1つの箇所の上部に配設された、少なくとも1枚の放射板をさらに備え、前記少なくとも1枚の放射板は、前記拡張したイオン交換膜電解セルの熱を外部環境へ消散させるよう構成される、請求項1に記載の拡張したイオン交換膜電解セル。
【請求項12】
複数の係止チャネル及び複数の係止構成要素をさらに備え、前記係止チャネルは、前記係止構成要素と嵌合するよう、前記アノード板、前記カソード板、前記少なくとも1枚のバイポーラ電極板、前記第1のイオン交換膜板、及び前記第2のイオン交換膜板を貫通する、請求項1に記載の拡張したイオン交換膜電解セル。
【請求項13】
拡張したイオン交換膜電解セルであって、
アノード板と、
カソード板と、
前記アノード板と前記カソード板との間に配設された、第1のバイポーラ電極板と、
前記アノード板と前記第1のバイポーラ電極板との間に収容することができる、第1のイオン交換膜板と、
前記カソード板と前記第1のバイポーラ電極板との間に収容することができる、第2のイオン交換膜板と、
前記アノード板に隣接した、第1の酸素チャンバと、
前記カソード板に隣接した、第1の水素チャンバと、
前記第1のバイポーラ電極板のアノード面に隣接した、第2の酸素チャンバと、
前記第1のバイポーラ電極板のカソード面に隣接した、第2の水素チャンバと、
平坦板、及び前記平坦板に配設された支持セクションを備え、前記第1の水素チャンバ及び前記第2の水素チャンバのうちの1つから水素出口チャネルへの接合部に配設される、セパレータと、
前記カソード板に面した側とは反対側のアノード板の側、または前記アノード板に面した側とは反対側のカソード板の側に配設された、少なくとも1枚の放射板であって、前記少なくとも1枚の放射板は、前記拡張したイオン交換膜電解セルの熱を外部環境へ消散させるよう構成され、前記少なくとも1枚の放射板は、複数のフィンを有する、少なくとも1枚の放射板と
を備え、
酸素出口チャネルは、前記第1の酸素チャンバ及び前記第2の酸素チャンバに連結され、水素出口チャネルは、前記第1の水素チャンバ及び前記第2の水素チャンバに連結される、拡張したイオン交換膜電解セル。
【請求項14】
前記第1の酸素チャンバは、前記第1の水素チャンバ及び前記第2の水素チャンバと流体連結されず、前記第2の酸素チャンバは、前記第1の水素チャンバ及び前記第2の水素チャンバと流体連結されない、請求項13に記載の拡張したイオン交換膜電解セル。
【請求項15】
前記酸素出口チャネルは、少なくとも前記アノード板から前記カソード板へ延び、前記水素出口チャネルは、少なくとも前記アノード板から前記カソード板へ延びる、請求項13に記載の拡張したイオン交換膜電解セル。
【請求項16】
前記アノード板及び前記カソード板はそれぞれ、
第1の凹状中央部と、
前記第1の凹状中央部に配設された、複数の第1の隆起部と、
前記第1の隆起部同士の間に配設された、複数の第1の溝と
を備え、
前記第1の酸素チャンバは、前記アノード板の前記第1の溝を備え、前記アノード板の前記第1の溝は、前記酸素出口チャネルに連結され、前記第1の水素チャンバは、前記カソード板の前記第1の溝を備え、前記カソード板の前記第1の溝は、前記水素出口チャネルに連結される、請求項15に記載の拡張したイオン交換膜電解セル。
【請求項17】
前記第1のバイポーラ電極板の、前記アノード面及び前記カソード面はそれぞれ、
第2の凹状中央部と、
前記第2の凹状中央部に配設された、複数の第2の隆起部と、
前記第2の隆起部同士の間に配設された、複数の第2の溝と
を備え、
前記第2の酸素チャンバは、前記アノード面の前記第2の溝を備え、前記アノード面の前記第2の溝は、前記酸素出口チャネルに連結され、前記第2の水素チャンバは、前記カソード面の前記第2の溝を備え、前記カソード面の前記第2の溝は、前記水素出口チャネルに連結される、請求項16に記載の拡張したイオン交換膜電解セル。
【請求項18】
酸素導管及び水素導管をさらに備え、前記酸素出口チャネルは、前記カソード板または前記アノード板を貫通して前記酸素導管に連結され、前記水素出口チャネルは、前記カソード板または前記アノード板を貫通して前記水素導管に連結される、請求項15に記載の拡張したイオン交換膜電解セル。
【請求項19】
前記アノード板と前記カソード板との間に配設された、第2のバイポーラ電極板と、
前記第2のバイポーラ電極板のアノード面に隣接した、第3の酸素チャンバと、
前記第2のバイポーラ電極板のカソード面に隣接した、第3の水素チャンバと
をさらに備え、
前記酸素出口チャネルは、前記第1の酸素チャンバ、前記第2の酸素チャンバ、及び前記第3の酸素チャンバに連結され、前記水素出口チャネルは、前記第1の水素チャンバ、前記第2の水素チャンバ、及び前記第3の水素チャンバに連結される、請求項18に記載の拡張したイオン交換膜電解セル。
【請求項20】
前記第3の酸素チャンバは、前記第1の水素チャンバ、前記第2の水素チャンバ、及び前記第3の水素チャンバと流体連結されず、前記第3の水素チャンバは、前記第1の酸素チャンバ、前記第2の酸素チャンバ、及び前記第3の酸素チャンバと流体連結されない、請求項19に記載の拡張したイオン交換膜電解セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年4月25日に申請された中国特許出願公開第201910336337.2号に基づき、優先権を主張する。その開示は、その全てが参照として本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、イオン交換膜電解セルを提供する。より詳細には、水を電気分解し、気体及び液体を迂回させることができる、拡張したイオン交換膜電解セルを提供する。
【背景技術】
【0003】
イオン交換膜電解セルは、水を電気分解するために一般的に使用されるセルのうちの1つである。従来のイオン交換膜電解セルには、アノードセクション及びカソードセクションを分離するイオン交換膜が装備され、水の入口/出口、及び/または気体の入口/出口を有する。しかしながら、従来のイオン交換膜電解セルの空間は、2つのセクションのみに分割され、各セクションには、1枚の電極板しか配設できない。多量の水を電気分解する必要がある場合、従来のイオン交換膜電解セルでは、電解セルの体積を増加させ、電極板の面積を増加させて、電気分解する水の量を増やすことしかできない。しかし、電気分解する水の量は、電解セルの体積及び電極板の面積の増加に対して正比例せず、そのため、従来のイオン交換膜電解セルの電解効率を、大幅に改善することはできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した課題から判るように、改善すべき上記の課題を解決するための、イオン交換膜電解セルを提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の課題に対応するにあたり、本発明の目的は、拡張したイオン交換膜電解セルを提供することである。本発明の特定の実施形態によると、拡張したイオン交換膜電解セルは、アノード板、カソード板、少なくとも1枚のバイポーラ電極板、第1のイオン交換膜板、第2のイオン交換膜板、複数の酸素チャンバ、及び複数の水素チャンバ、を備える。この少なくとも1枚のバイポーラ電極板は、アノード板とカソード板との間に配設される。第1のイオン交換膜板は、アノード板と少なくとも1枚のバイポーラ電極板との間に配設され、第2のイオン交換膜板は、少なくとも1枚のバイポーラ電極板とカソード板との間に配設される。複数の酸素チャンバは、アノード板と第1のイオン交換膜板との間、及び少なくとも1枚のバイポーラ電極板と第2のイオン交換膜板との間に形成される。複数の水素チャンバは、第1のイオン交換膜板と少なくとも1枚のバイポーラ電極板との間、及び第2のイオン交換膜板とカソード板との間に形成される。水素出口チャネル、酸素出口チャネル、及び水入口チャネルは、拡張したイオン交換膜電解セルに形成され、水素出口チャネルは、複数の水素チャンバの各々に連結され、酸素出口チャネル及び水入口チャネルは、複数の酸素チャンバの各々に連結される。
【0006】
1つの実施形態において、酸素チャンバは、アノード板に隣接した第1の酸素チャンバを備える。アノード板の一方の面は、凸状周縁部及び凹状中央部を有する。凹状中央部には空間が形成され、第1の酸素チャンバはこの空間を含む。アノード板と第1のイオン交換膜板が重ねられ、酸素出口チャネル及び水入口チャネルの凹状中央部に連結されたとき、凸状周縁部は、水素出口チャネルの一部分、酸素出口チャネルの一部分、及び水入口の一部分に対応した複数の穴を有する。
【0007】
1つの実施形態において、水素チャンバは、カソード板に隣接した第1の水素チャンバを備える。カソード板の一方の面は、凸状周縁部及び凹状中央部を有する。凹状中央部には空間が形成され、第1の水素チャンバはこの空間を含み、水素出口チャネルは凹状中央部に連結される。
【0008】
1つの実施形態において、少なくとも1枚のバイポーラ電極板は、カソード面及びアノード面を有し、カソード面及びアノード面の各々は、凸状周縁部及び凹状中央部を有する。水素チャンバは、少なくとも1枚のバイポーラ電極板のカソード面に隣接した、第2の水素チャンバを備える。凹状中央部には第1の空間が形成され、第2の水素チャンバは、この第1の空間を含む。酸素チャンバは、少なくとも1枚のバイポーラ電極板のアノード面に隣接した、第2の酸素チャンバを備える。凹状中央部には第2の空間が形成され、第2の酸素チャンバは、この第2の空間を含む。積み重ねられたとき、カソード面及びアノード面の凸状周縁部は、水素出口チャネルの一部分、酸素出口チャネルの一部分、及び水入口チャネルの一部分に対応した複数の穴を有する。水素出口チャネルはカソード面の凹状中央部に連結され、酸素出口チャネル及び水入口チャネルは、アノード面の凹状中央部に連結される。
【0009】
1つの実施形態において、拡張したイオン交換膜電解セルは、複数のシリコン封止ガスケットをさらに備える。これらシリコン封止ガスケットは、アノード板と第1のイオン交換膜板との間、第1のイオン交換膜板と少なくとも1枚のバイポーラ電極板との間、少なくとも1枚のバイポーラ電極板と第2のイオン交換膜板との間、及び第2のイオン交換膜板とカソード板との間に、それぞれ配設される。シリコン封止ガスケットの各々は、中空セクション及び環状セクションによって形成された、中空環状構造である。水素出口チャネル、酸素出口チャネル、及び水入口チャネルは、シリコン封止ガスケットの各々の環状セクションを貫通する。
【0010】
1つの実施形態において、拡張したイオン交換膜電解セルは、複数の拡散板をさらに備える。これら拡散板は、シリコン封止ガスケットの各々の中空セクションにそれぞれ配設され、かつ隣接した第1のイオン交換膜板、または隣接した第2のイオン交換膜板に隣接してそれぞれ装着される。
【0011】
1つの実施形態において、アノード板の一方の面、カソード板の一方の面、及び少なくとも1枚のバイポーラ電極板の2つの面、のうちの少なくとも1つは凹状中央部を有する。凹状中央部は、複数の隆起部、及びこれら隆起部同士の間に形成された複数の溝を有する。これら隆起部は、対応する拡散板に当接するよう構成される。アノード板、カソード板、少なくとも1枚のバイポーラ電極板、第1のイオン交換膜板、及び第2のイオン交換膜板が積み重ねられたとき、これら隆起部は、対応する拡散板を、対応する第1のイオン交換膜板または対応する第2のイオン交換膜板に当接させる。溝は、水素出口チャネル、酸素出口チャネル、及び水入口チャネルのうちの少なくとも1つに、それぞれ連結される。
【0012】
1つの実施形態において、拡散板は、水、水素、及び酸素が流れ抜けるよう、複数の細孔を有する。
【0013】
1つの実施形態において、拡張したイオン交換膜電解セルは、複数のセパレータをさらに備える。セパレータは、水素チャンバの各々から水素出口チャネルへの接合部、ならびに酸素チャンバから酸素出口チャネル及び水入口チャネルへの接合部に、それぞれ配設される。セパレータは、対応するシリコン封止ガスケットに対してそれぞれ当接して、複数のポートを形成し、水素出口チャネルは、これらポートの一部分を介して水素チャンバに連結され、酸素出口チャネル及び水入口チャネルは、これらポートの別の部分を介して酸素チャンバに連結される。
【0014】
1つの実施形態において、拡張したイオン交換膜電解セルは、カソード板に面した側とは反対側におけるアノード板の側、及びアノード板に面した側とは反対側におけるカソードの側、のうちの少なくとも1箇所に配設された、少なくとも1枚の絶縁熱ボードをさらに備える。この少なくとも1枚の絶縁熱ボードは、拡張したイオン交換膜電解セルの電流を、外部環境から分離して、拡張したイオン交換膜電解セルの熱エネルギーを、外部環境に伝導するよう構成される。
【0015】
1つの実施形態において、拡張したイオン交換膜電解セルは、カソード板に面した側とは反対側におけるアノード板の側、及びアノード板に面した側とは反対側におけるカソードの側、のうちの少なくとも1箇所に配設された、少なくとも1枚の放射板をさらに備える。この少なくとも1枚の放射板は、拡張したイオン交換膜電解セルの熱エネルギーを外部環境に消散させるよう構成される。
【0016】
1つの実施形態において、拡張したイオン交換膜電解セルは、複数の係止チャネル及び複数の係止構成要素をさらに備える。係止チャネルは、係止構成要素と嵌合するよう、アノード板、カソード板、少なくとも1枚のバイポーラ電極板、第1のイオン交換膜板、及び第2のイオン交換膜板を貫通する。
【0017】
他の特定の実施形態において、本発明の拡張したイオン交換膜電解セルは、アノード板、カソード板、第1のバイポーラ電極板、第1のイオン交換膜板、第2のイオン交換膜板、第1の酸素チャンバ、第2の酸素チャンバ、第1の水素チャンバ、及び第2の水素チャンバ、を備える。第1のバイポーラ電極板は、アノード板とカソード板との間に配設される。第1のイオン交換膜板は、アノード板と第1のバイポーラ電極板との間に収容することができる。第2のイオン交換膜板は、カソード板と第1のバイポーラ電極板との間に収容することができる。第1の酸素チャンバはアノード板に隣接し、第1の水素チャンバはカソード板に隣接し、第2の酸素チャンバは第1のバイポーラ電極板のアノード面に隣接し、第2の水素チャンバは第1のバイポーラ電極板のカソード面に隣接する。酸素出口チャネルは、第1の酸素チャンバ及び第2の酸素チャンバに連結され、水素出口チャネルは、第1の水素チャンバ及び第2の水素チャンバに連結される。
【0018】
1つの実施形態において、第1の酸素チャンバは、第1の水素チャンバ及び第2の水素チャンバと流体連結されず、第2の酸素チャンバは、第1の水素チャンバ及び第2の水素チャンバと流体連結されない。
【0019】
1つの実施形態において、酸素出口チャネルは、少なくともアノード板からカソード板へ延び、水素出口チャネルは、少なくともアノード板からカソード板へ延びる。
【0020】
1つの実施形態において、アノード板及びカソード板は、第1の凹状中央部、複数の第1の隆起部、及び複数の第1の溝を、それぞれ備える。第1の隆起部は、第1の凹状中央部に配設され、第1の溝は、第1の隆起部同士の間に配設される。第1の酸素チャンバは、アノード板の第1の溝を備え、アノード板の第1の溝は、酸素出口チャネルに連結される。第1の水素チャンバは、カソード板の第1の溝を備え、カソード板の第1の溝は、水素出口チャネルに連結される。
【0021】
1つの実施形態において、第1のバイポーラ電極板のアノード面及びカソード面は、第2の凹状中央部、複数の第2の隆起部、及び複数の第2の溝、をそれぞれ備える。第2の隆起部は、第2の凹状中央部に配設され、第2の溝は、第2の隆起部同士の間に配設される。第2の酸素チャンバは、アノード面の第2の溝を備え、アノード面の第2の溝は、酸素出口チャネルに連結される。第2の水素チャンバは、カソード面の第2の溝を備え、カソード面の第2の溝は、水素出口チャネルに連結される。
【0022】
1つの実施形態において、拡張したイオン交換膜電解セルは、酸素導管及び水素導管をさらに備える。酸素出口チャネルは、カソード板またはアノード板を貫通し、酸素導管に連結される。水素出口チャネルは、カソード板またはアノード板を貫通し、水素導管に連結される。
【0023】
1つの実施形態において、拡張したイオン交換膜電解セルは、第2のバイポーラ電極板、第3の酸素チャンバ、及び第3の水素チャンバさらに備える。第2のバイポーラ電極板は、アノード板とカソード板との間に配設される。第3の酸素チャンバは、第2のバイポーラ電極板のアノード面に隣接する。第3の水素チャンバは、第2のバイポーラ電極板のカソード面に隣接する。酸素出口チャネルは、第1の酸素チャンバ、第2の酸素チャンバ、及び第3の酸素チャンバに連結され、水素出口チャネルは、第1の水素チャンバ、第2の水素チャンバ、及び第3の水素チャンバに連結される。
【0024】
1つの実施形態において、第3の酸素チャンバは、第1の水素チャンバ、第2の水素チャンバ、及び第3の水素チャンバと流体連結されず、第3の水素チャンバは、第1の酸素チャンバ、第2の酸素チャンバ、及び第3の酸素チャンバと流体連結されない。
【0025】
従来技術と比較すると、本発明の拡張したイオン交換膜電解セルは、以下の利点を有する。
1.本発明の拡張したイオン交換膜電解セルにおける、アノード板、カソード板、バイポーラ電極板、第1のイオン交換膜板、及び第2のイオン交換膜板は、独立した板である。カルシウム蓄積の問題が電気分解後に生じた場合、拡張したイオン交換膜電解セルは、洗浄のために分解することができる。拡張したイオン交換膜電解セルの任意の部分が、激しく損傷を受けたときでさえ、損傷した板を、複数の構成要素または電気分解全体を交換するよう意図された、新しいものに直ちに交換することができる。
2.本発明の拡張したイオン交換膜電解セルにおける、アノード板、カソード板、及びバイポーラ電極板は、電解セルの動作を妨げる不安定な設置の問題を起こすことなく、一体化で形成された電極板とすることができる。
3.本発明の拡張したイオン交換膜電解セルは、1枚のアノード板、1枚のカソード板、及び少なくとも1枚のバイポーラ電極板を積層することによって、主に形成される。アノード板及びカソード板は、電気分解のために正電流及び負電流にそれぞれ接続され、バイポーラ電極板は、電流に接続させる必要はない。バイポーラ電極板は、アノード板とカソード板との間の電位差を使用し、正極性及び負極性を形成する。本発明の拡張したイオン交換膜電解セルは、バイポーラ電極板を使用して、各電極板が電流との連通を必要とする構成を排除し、正の接触子及び負の接触子に接続した複数の電極板によって生じる、従来の電解セルの問題も排除する。
4.本発明の拡張したイオン交換膜電解セルのバイポーラ電極板は、アノード板とバイポーラ電極板との間に形成された電気分解空間のためのカソードであり、バイポーラ電極板は、カソード板とバイポーラ電極板との間に形成された電気分解空間のためのアノードである。この特性のため、バイポーラ電極板の一方の面は、水を電気分解して水素を発生させ、他方の面は、水を分解して酸素を発生させることができる。したがって、アノード板とカソード板とを交互に配置する必要がある従来の電解セルと比較して、本発明の拡張したイオン交換膜電解セルに配設する電極板の数は、従来の電解セルよりも少ないので、費用及び体積を節減する。
5.本発明の拡張したイオン交換膜電解セルは、水及び気体の流れを誘導するために直線封止ガスケットを使用する従来の電解セルの代わりに、アノード板、カソード板、及びバイポーラ電極板自体の構造設計を使用して、水及び気体の流れを誘導する。それによって、拡張したイオン交換膜電解セルは、従来の電解セルにおける封止ガスケットの劣化または直線封止ガスケットによる、位置ずれの問題を排除する。
【0026】
実施形態のうちのいくつかが、図面を参照して詳細に説明される。同様の表示は同様の部材を示す。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の拡張したイオン交換膜電解セルの1つの実施形態における、構造分解概略図である。
図2図1の水素出口チャネル、酸素出口チャネル、及び水入口チャネルの概略図である。
図3a図1のアノード板の、異なる視線による概略図である。
図3b図1のアノード板の、異なる視線による概略図である。
図3c図1のアノード板の、異なる視線による概略図である。
図4a図1のカソード板の、異なる視線による概略図である。
図4b図1のカソード板の、異なる視線による概略図である。
図4c図1のカソード板の、異なる視線による概略図である。
図5a図1のバイポーラ電極板の、異なる視線による概略図である。
図5b図1のバイポーラ電極板の、異なる視線による概略図である。
図5c図1のバイポーラ電極板の、異なる視線による概略図である。
図6図1のアノード板、カソード板、及びバイポーラ電極板を積み重ねた概略図である。
図7図1の電気分解空間の概略図である。
図8a図1のセパレータの側面図である。
図8b図1のセパレータの概略斜視図である。
図9a図1のセパレータの使用状態の概略図である。
図9b図1のセパレータの使用状態の概略上面図である。
図10図1の係止チャネルの概略図である。
図11図1の、積み重ねた後の拡張したイオン交換膜電解セルの概略斜視図である。
図12】本発明の拡張したイオン交換膜電解セルの、別の実施形態における構造分解概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の利点、趣旨、及び特徴を、以下の実施形態及び図面を用いて、以下で説明かつ検討する。
【0029】
開示する装置及び方法の、以降で説明する実施形態の詳細な記述は、本明細書では例示として提示され、参照する図に限定されない。特定の実施形態が示され、詳細が説明されるが、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、様々な変形及び変更が成され得ることを理解されたい。本発明の範囲は、形成する構成要素の数、それらの材料、それらの形状、それらの相対的な配置などに限定されず、本発明の実施形態における例としてのみ開示される。
【0030】
本明細書の説明において、用語「1つの実施形態において」、「別の実施形態において」、または「いくつかの実施形態において」は、本実施形態の特定の特徴、構造、材料、または特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。本明細書の説明において、記述した用語の概略の表現は、必ずしも同じ実施形態を指さない。さらに、説明した特定の特徴、構造、材料、または特性は、適切な方法で任意の1つまたは複数の実施形態に含まれる場合がある。
【0031】
本明細書の実施形態において、用語「または(or)」は、列挙された一部の構成要素の組み合わせ、及び列挙された全ての構成要素の組み合わせを含む。例えば、記載された「AまたはB」は、Aのみ、Bのみ、ならびにA及びBの両方、を含む。さらに、本発明の要素または構成要素の前の不定冠詞(a)及び冠詞(the)は、要素または構成要素の数を限定しない。したがって、不定冠詞(a)及び定冠詞(the)は、1つまたは少なくとも1つを含むものとして解釈するべきである。さらに、要素または構成要素の単数形は、明確に数が単数形であることを指さない限り、複数形も含む。
【0032】
図1及び図2を参照されたい。図1は、本発明の拡張したイオン交換膜電解セルEの1つの実施形態における、構造分解概略図である。図2は、図1の水素出口チャネルZ1、酸素出口チャネルZ2、及び水入口チャネルZ3の概略図である。図1に示されるように、本発明の拡張したイオン交換膜電解セルEは、アノード板1、カソード板2、少なくとも1枚のバイポーラ電極板3、第1のイオン交換膜板41、及び第2のイオン交換膜板42を含む。バイポーラ電極板3は、アノード板1とカソード板2との間に配設される。第1のイオン交換膜板41は、アノード板1とバイポーラ電極板3との間に配設され、第2のイオン交換膜板42は、カソード板2とバイポーラ電極板3との間に配設される。図2に示されるような実施形態において、アノード板1、カソード板2、バイポーラ電極板3、第1のイオン交換膜板41、及び第2のイオン交換膜板42が互いに積み重ねられたとき、アノード板1、カソード板2、バイポーラ電極板3、第1のイオン交換膜板41、及び第2のイオン交換膜板42と連通された、水素出口チャネルZ1、酸素出口チャネルZ2、及び水入口チャネルZ3が、拡張したイオン交換膜電解セルE内に形成される。1つの実施形態において、酸素出口チャネルZ2は、少なくともアノード板1からカソード板2へ延ばされ、水素出口チャネルZ1は、少なくともアノード板1からカソード板2へ延ばされる。
【0033】
詳細には、図2は、アノードにおいて片側入口及び片側出口の構造を伴う、拡張したイオン交換膜電解セルEを示す。拡張したイオン交換膜電解セルEは、水をインプットして、水素及び酸素をそれぞれアウトプットする。この実施形態におけるアノードの片側入口及び片側出口において、アノード板1、バイポーラ電極板3、第1のイオン交換膜板41、及び第2のイオン交換膜42の全ては、互いに対応する穴11を有する。電極板が組み立てられ、接続されたとき、対応する穴11は互いに連通して、水素出口チャネルZ1、酸素出口チャネルZ2、及び水入口チャネルZ3を形成する。この時点では、カソード板2には対応する穴11は存在せず、そのためチャネルはカソード板2を貫通せず、水、水素、及び酸素は、片方からインプット及びアウトプットされる。反対に、拡張したイオン交換膜電解セルEが、カソードにおいて片側入口及び片側出口の構造である場合、カソード板2、バイポーラ電極板3、第1のイオン交換膜板41、及び第2のイオン交換膜板42の全ては、互いに対応する穴11を有する。穴11は互いに連通して、水素出口チャネルZ1,酸素出口チャネルZ2、及び水入口チャネルZ3を形成し、アノード板1には対応する穴11は存在しない。拡張したイオン交換膜電解セルEが、両側入口及び両側出口の構造である場合、水素出口チャネルZ1、酸素出口チャネルZ2、及び水入口チャネルZ3は、片側開放または両側開放とすることができる。片側開放である場合、一方の側は水素をアウトプットし、他方の側は酸素及び水をアウトプットする。上述の設計原理によると、入口側及び出口側に対応する穴11が存在し、入口側及び出口側に対応した別の側には、対応する穴11は存在しない。両側開放である場合、水素、酸素、及び水は、両側において入って出ることができ、両側には対応する穴11が存在する。この開放設計において、水素、酸素、及び水はそれぞれ、水素出口チャネルZ1、酸素出口チャネルZ2、及び水入口チャネルZ3の方向の流れである。実際、拡張したイオン交換膜電解セルEは、酸素導管52及び水素導管51をさらに備える。酸素出口チャネルZ2は、アノード板1またはカソード板2を貫通して、酸素導管52と接続し、水素出口チャネルZ1は、カソード板2またはアノード板1を貫通して、水素導管51と接続する。換言すると、本発明の拡張したイオン交換膜電解セルEは、水素出口チャネルZ1と連通するために延びた水素導管51と、酸素出口チャネルZ2と連通するために延びた酸素導管52と、水入口チャネルZ3と連通するために延びた水導管53と、をさらに備え、拡張したイオン交換膜電解セルEに水をインプットして、拡張したイオン交換膜電解セルEから水素及び酸素を集める。
【0034】
図3a~図7を参照されたい。図3a、図3b、及び図3cは、図1のアノード板1の異なる視線による概略図である。図4a、図4b、及び図4cは、図1のカソード板2の異なる視線による概略図である。図5a、図5b、及び図5cは、図1のバイポーラ電極板3の異なる視線による概略図である。図6は、図1のアノード板1、カソード板2、及びバイポーラ電極板3を積み重ねた概略図である。図7は、図1の電気分解空間Z4の概略図である。
【0035】
特定の実施形態において、アノード板1及びカソード板2は全て、凹状中央部13、複数の隆起部14、及び複数の溝15を備える。隆起部14は凹状中央部13に配設され、溝15は隆起部14同士の間に配設される。第1の酸素チャンバZ61は、アノード板1の溝15を備え、アノード板1の溝15は、酸素出口チャネルZ2と連通する。第1の水素チャンバZ51は、カソード板2の溝を備え、カソード板2の溝15は、水素出口チャネルZ1と連通する。バイポーラ電極板3のアノード面302及びカソード面301は全て、凹状中央部13、複数の隆起部14、及び複数の溝15を備える。隆起部14は凹状中央部13に配設され、溝15は隆起部14同士の間に配設される。第2の酸素チャンバZ62は、アノード面302の溝15を備え、アノード面302の溝15は、酸素出口チャネルZ2と連通する。第2の水素チャンバZ52は、カソード面301の溝15を備え、カソード面301の溝15は、水素出口チャネルZ1と連通する。
【0036】
換言すると、図3図4及び図5に示されるように、図3a、図4a、及び図5aは正面図;図3b、図4b、及び図5bは背面図;図3c、図4c、及び図5cは概略斜視図である。アノード板1の一方の面、及びカソード板2の一方の面、ならびにバイポーラ電極板3の両方の面は、特別な構造を有する。特別な構造は、リング状の凸状周縁部12、及び中間に凹状中央部13を有する。明確に示すために、凹状中央部13は、点線によって枠に囲まれて選択された領域である。隆起部14、及び隆起部14同士の間に形成された溝15は、凹状中央部13に配設される。アノード板1、カソード板2、及びバイポーラ電極板3における特別な構造の違いは、設計上の僅かな違いである。
【0037】
図2図3、及び図7に示されるように、アノード板1の一方の面は、(図3aに示されるように)特別な構造を有する。特別な構造の凸状周縁部12が、第1のイオン交換膜板41と積み重ねられたとき、第1の酸素チャンバZ61を、特別な構造の凹状中央部13に形成することができる。凸状周縁部12は穴11を有し、積み重ねられたとき、水素出口チャネルZ1、酸素出口チャネルZ2、及び水入口チャネルZ3をそれぞれ形成する。アノード板1の凹状中央部13は、それらの穴11と連通するよう延びることができ、それによって酸素出口チャネルZ2及び水入口チャネルZ3を形成する。
【0038】
図2図4、及び図7に示されるように、カソード板2の一方の面は、(図4aに示されるように)特別な構造を有する。特別な構造の凸状周縁部12が、第2のイオン交換膜板42と積み重ねられたとき、第1の水素チャンバZ51を、特別な構造の凹状中央部13に形成することができる。凸状周縁部12は穴11を有し、積み重ねられたとき、水素出口チャネルZ1、酸素出口チャネルZ2、及び水入口チャネルZ3をそれぞれ形成する。カソード板2の凹状中央部13は、それらの穴11と連通するよう延びることができ、それによって水素出口チャネルZ1を形成する。
【0039】
図2図5、及び図7に示されるように、アノード板1、カソード板2、及びバイポーラ電極板3が互いに積み重ねられたとき、バイポーラ電極板3は、(図6に示されるように)アノード板1とカソード板2との間に配設される。特別な構造を有する、アノード板1の一方の面及びカソード板2の一方の面は、互いに向き合うよう配設されることになる。バイポーラ電極板3は、アノード板1に面したカソード面301がカソード板2と同様または類似した特別な構造を有し、カソード板2に面したアノード面302がアノード板1と同様または類似した特別な構造を有する。バイポーラ電極板3は、カソード面301及びアノード面302を有し、(図5bに示されるような)カソード面301及び(図5aに示されるような)アノード面の各々は、特別な構造を有する。カソード面301の凸状周縁部12が、第1のイオン交換膜板41と積み重ねられたとき、第2の水素チャンバZ52は、凹状中央部13に形成される。アノード面302の凸状周縁部12が、第2のイオン交換膜板42と積み重ねられたとき、第2の酸素チャンバZ62は、凹状中央部13に形成される。カソード面301及びアノード面302の凸状周縁部12は、穴11を有し、積み重ねられたとき、水素出口チャネルZ1、酸素出口チャネルZ2、及び水入口チャネルZ3を、それぞれ形成する。カソード面301の凹状中央部13は、それらの穴11と連通するよう延びることができ、それによって水素出口チャネルZ1を形成する。アノード面302の凹状中央部13は、それらの穴11と連通するよう延びることができ、それによって酸素出口チャネルZ2及び水入口チャネルZ3を形成する。
【0040】
凹状中央部13と、水素出口チャネルZ1、酸素出口チャネルZ2、または水入口チャネルZ3との間の連通方法は、凸状周縁部12及び凹状中央部13の対応する穴11同士の間の接合部の高さが、凹状中央部13の高さと等しいように設計されることによる。それによって接合部は連通空間を形成することになる。連通空間の2つの端部は、穴11及び凹状中央部13と連通し、連通空間の2つの側壁は凸状周縁部12である。
【0041】
加えて、特別な構造を除き、アノード板1及びカソード板2は、それぞれ顕著な構造16を有し、外部電源の正電流及び負電流を受け取る。バイポーラ電極板は、このような顕著な構造16を有さない。アノード板1、カソード板2、及びバイポーラ電極板3が、異なる構造を有するよう設計される理由は、本発明の拡張したイオン交換膜電解セルEが、バイポーラ電極板3をアノード板1とカソード板2との間に配設して電位差を形成し、バイポーラ電極板3の一方の面をアノードに、かつ他方の面をカソードに変えるためである。この設計によって、本発明の拡張したイオン交換膜電解セルEは、バイポーラ電極板3を使用して各電極板を電流と連通させる配置を排除し、多くの電極板をアノードまたはカソードに接続することによって生じる問題も、排除することができる。
【0042】
図1及び図7を再度参照されたい。図7に示されるように、電気分解空間Z4、第1の水素チャンバZ51,第2の水素チャンバZ52,第1の酸素チャンバZ61,及び第2の酸素チャンバZ62は、明確な例示のために点線を使用して空間的位置を表わす。1つの実施形態において、複数の酸素チャンバZ6が、アノード板1と第1のイオン交換膜板41と間、及び少なくとも1枚のバイポーラ電極板3と第2のイオン交換膜板42と間に、形成される。複数の水素チャンバZ5は、第1のイオン交換膜板41と少なくとも1枚のバイポーラ電極板3との間、及び第2のイオン交換膜板42とカソード板2と間に、形成される。重ね合わされると、水素出口チャネルZ1は、水素チャンバZ5と連通し、酸素出口チャネルZ2及び水入口チャネルZ3は、酸素チャンバZ6と連通する。
【0043】
好ましい実施形態において、酸素チャンバZ6は、アノード板1に隣接した第1の酸素チャンバZ61を備える。アノード板1の一方の面は、凸状周縁部12及び凹状中央部13を有する。凸状周縁部12が第1のイオン交換膜板41と積み重ねられたとき、凹状中央部13に空間が形成され、第1の酸素チャンバZ61はこの空間を備える。凸状周縁部12は、水素出口チャネルZ1の一部分、酸素出口チャネルZ2の一部分、及び水入口チャネルZ3の一部分にそれぞれ対応した穴を有し、酸素出口チャネルZ2及び水入口チャネルZ3は、凹状中央部13と連通する。
【0044】
好ましい実施形態において、水素チャンバZ5は、カソード板2に隣接した第1の水素チャンバZ51を備える。カソード板2の一方の面は、凸状周縁部12及び凹状中央部13を有する。凸状周縁部12が、第2のイオン交換膜板42と積み重ねられたとき、凹状中央部13に空間が形成される。第1の水素チャンバZ51はこの空間を備え、水素出口チャネルZ1は、凹状中央部13と連通する。
【0045】
好ましい実施形態において、少なくとも1枚のバイポーラ電極板3は、カソード面301及びアノード面302を有し、カソード面301及びアノード面302の各々は、凸状周縁部12及び凹状中央部13を有する。水素チャンバZ5は、少なくとも1枚のバイポーラ電極板3のカソード面301に隣接した、第2の水素チャンバZ52を備える。カソード面301の凸状周縁部12が、第1のイオン交換膜板41と積み重ねられたとき、凹状中央部13に空間が形成される。第2の水素チャンバZ52は、この空間を備える。水素チャンバZ6は、少なくとも1枚のバイポーラ電極板3のアノード面302に隣接した、第2の酸素チャンバZ62を備える。アノード面302の凸状周縁部12が、第2のイオン交換膜板42と積み重ねられたとき、凹状中央部13に空間が形成される。第2の酸素チャンバZ62は、この空間を備える。カソード面301及びアノード面302の凸状周縁部12の各々は、水素出口チャネルZ1の一部、酸素出口チャネルZ2の一部、及び水入口チャネルZ3の一部にそれぞれ対応した穴を有する。水素出口チャネルZ1は、カソード面301の凹状中央部13と連通し、酸素出口チャネルZ2及び水入口チャネルZ3は、アノード面302の凹状中央部13と連通する。
【0046】
図7に示されるように、1枚のイオン交換膜板によって分離された、1つの水素チャンバ及び1つの酸素チャンバを組み合わせて、1つの電気分解空間Z4を形成することができる。それによって、アノード板1とバイポーラ電極板3との間に形成された電気分解空間Z4において、第1の酸素チャンバZ61が、第1のイオン交換膜板41とアノード板1との間に配設され、第2の水素チャンバZ52が、第1のイオン交換膜板41とバイポーラ電極板3との間に配設される。カソード板2とバイポーラ電極板3との間に形成された電気分解空間Z4において、第1の水素チャンバZ51が、第2のイオン交換膜板42とカソード板2との間に配設され、第2の酸素チャンバZ62が、第2のイオン交換膜板42とバイポーラ電極板3との間に配設される。アノード板1、カソード板2、及びバイポーラ電極板3の特別な構造設計のため、第1の酸素チャンバZ61は、酸素出口チャネルZ2を介して、第2の酸素チャンバZ62と連通し、第1の水素チャンバZ51は、水素出口チャンバZ1を介して、第2の水素チャンバZ52と連通する。換言すると、水素出口チャネルZ1、酸素出口チャネルZ2、及び水入口チャネルZ3は、互いに電気分解空間Z4と連通することができる。さらに、第1の酸素チャンバZ61は、第1の水素チャンバZ51及び第2の水素チャンバZ52と流体連通されず、第2の酸素チャンバZ62は、第1の水素チャンバZ51及び第2の水素チャンバZ52と流体連通されない。
【0047】
図1図2、及び図7を再度参照されたい。互いに重ね合わせて形成された、拡張したイオン交換膜電解セルにおける、水の漏洩及び気体の漏洩の可能性を軽減させるため、ならびに、水素出口チャネルZ1、酸素出口チャネルZ2、水入口チャネルZ3、及び電気分解空間Z4が、それらの独立した空間を維持するために、本発明における拡張したイオン交換膜電解セルEは、複数のシリコン封止ガスケット6をさらに備える。シリコン封止ガスケット6の各々は、アノード板1と第1のイオン交換膜板41との間、第1のイオン交換膜板41とバイポーラ電極板3との間、バイポーラ電極板3と第2のイオン交換膜板42との間、及び第2のイオン交換膜板42とカソード板2との間に、それぞれ配設される。シリコン封止ガスケット6は、環状セクション62、及び環状セクション62によって形成された中空セクション61を有する。水素出口チャネルZ1、酸素出口チャネルZ2、及び水入口チャネルZ3は、シリコン封止ガスケット6の各々の環状セクション62を貫通する。中空セクション61は、電気分解空間Z4と一致する。加えて、隣接したアノード板1、隣接したカソード板2、または隣接したバイポーラ電極板3に面した、シリコン封止ガスケット6の一方の面は、封止効果を促進させるための直線凸状設計を有する。
【0048】
本発明の拡張したイオン交換膜電解セルEの電気分解効率を改善するために、本発明の拡張したイオン交換膜電解セルEは、複数の拡散板7をさらに備える。複数の拡張版7は、シリコン封止ガスケット6の各々の中空セクション61にそれぞれ配設され、かつ隣接した第1のイオン交換膜板41、または隣接した第2のイオン交換膜板42にそれぞれ装着される。アノード板1、カソード板2、及びバイポーラ電極板3の隆起部14は、対応する拡散板7に当接するよう構成される。アノード板1、カソード板2、バイポーラ電極板3、第1のイオン交換膜板41、及び第2のイオン交換膜板42が互いに積み重ねられて、拡張したイオン交換膜電解セルEを形成するとき、隆起部14は、対応する拡散板7を、対応する第1のイオン交換膜板41または対応する第2のイオン交換膜板42に当接させる。隆起部14同士の間の溝15は、水素出口チャネルZ1、酸素出口チャネルZ2、及び水入口チャネルZ3のうちの少なくとも1つに、それぞれ連通する。詳細には、隆起部14が対応する拡散板7に対して当接して、対応する拡散板7を、対応する第1のイオン交換膜板41または対応する第2のイオン交換膜板42に当接させると、第1のイオン交換膜板41または第2のイオン交換膜板42と、拡散板7との間の間隙によって生じた抵抗を、軽減させることができる。1つの実施形態において、拡散板7は、複数の孔を有する多孔性の導電性材料である。この時点において、拡散板7を、アノード板1、カソード板2、及びバイポーラ電極板3の拡張として見做すことができる。したがって、拡散板7は、アノード板1、カソード板2、またはバイポーラ電極板3における電流を受け取ることによって電界を形成することができ、それによって水素イオン及び酸素イオンは、拡散板7の孔において指向性運動を作ることができる。拡散板7の孔において、拡散板7と、第1のイオン交換膜板41または第2のイオン交換膜板42に配設された触媒層との間で、アノードは、アノードに隣接した水の電子を損失して酸素を発生させ、カソードは、カソードに隣接した水の電子を獲得して水素を発生させる。拡散板7の孔は、水、水素、酸素が穴を流れ抜けることも可能にし、それによって水素及び酸素の急速な発生を促進させる。電極板及び拡散板7における、水素泡及び酸素泡は、水の流れを通して電極板及び拡散板7から取り除かれ、水素出口チャネルZ1、及び酸素出口チャネルZ2に導かれ、電気分解効率を改善する。1つの実施形態において、拡散板7の材料は、高い安定性を有するチタンであってよい。チタンは、電気分解機能を補助できるが、電気分解機能に関与しない。
【0049】
図7図9を参照されたい。図8aは、図1のセパレータ54の側面図である。図8bは、図1のセパレータ54の概略斜視図である。図9aは、図1のセパレータ54の使用状態の概略図である。図9bは、図1のセパレータ54の使用状態の概略上面図である。シリコン封止ガスケット6が、第1の水素チャンバZ51、第2の水素チャンバZ52、及び水素出口チャネルZ1の中における連通を遮断するのを防止するため、ならびに第1の酸素チャンバZ61、第2の酸素チャンバZ62、酸素出口チャネルZ2、及び水入口チャネルZ3の中における連通を遮断するのを防止するために、本発明の拡張したイオン交換膜電解セルEは、複数のセパレータ54をさらに備える。図8a及び図8bに示されるように、セパレータ54は、平坦板541、及び平坦板541に配設された複数の支持セクション542を備える。隣接した各支持セクション542は、特定の距離だけ離隔される。図9a及び図9bに示されるように、セパレータ54は、水素出口チャネルZ1と連通する、第1の水素チャンバZ51と第2の水素チャンバZ52との接合部、ならびに、酸素出口チャネルZ2及び水入口チャネルZ3と連通する、第1の酸素チャンバZ61と第2の酸素チャンバZ62との接合部に、それぞれ配設される。平坦板541は、対応するシリコン封止ガスケット6に対して当接し、それによってポートが、支持セクション542及びアノード板1によって、支持セクション542及びカソード板2によって、ならびに支持セクション542及びバイポーラ電極板3によって、形成される。ポートはそれぞれ、第1の水素チャンバZ51及び第2の水素チャンバZ52を、水素出口チャネルZ1と連通させ、第1の酸素チャンバZ61及び第2の酸素チャンバZ62を、酸素出口チャネルZ2及び水入口チャネルZ3と連通させる。
【0050】
他の実施形態において、図1を再度参照されたい。拡張したイオン交換膜電解セルEが、その内部で過熱しないよう、電気分解反応中の電気分解によって発生した熱エネルギーを迅速に消散できるようにするため、本発明の拡張したイオン交換膜電解セルEは、少なくとも1枚の絶縁熱ボード8をさらに備える。絶縁熱ボード8は、カソード板2に面した側とは反対側におけるアノード板1の側、及びアノード板1に面した側とは反対側におけるカソード板2の側、のうちの少なくとも一方に配設される。絶縁熱ボード8は、拡張したイオン交換膜電解セルEの電流を、外部環境から分離して、拡張したイオン交換膜電解セルEにおける熱エネルギーを外部環境に伝導するよう構成される。加えて、本発明の拡張したイオン交換膜電解セルEは、カソード板2に面した側とは反対側におけるアノード板1の側、及びアノード板1に面した側とは反対側におけるカソード板2の側に配設された、少なくとも1枚の放射板9も、さらに備えることができる。放射板9は、拡張したイオン交換膜電解セルEの熱エネルギーを外部環境に消散させるよう構成される。加えて、水素導管51、酸素導管52、及び水導管53それぞれの一方の端部が、突出した外縁部58を有するので、拡張したイオン交換膜電解セルEを積み重ねて組み立てるとき、水素導管51、酸素導管52、及び水導管53は、まずアノード板1、次に放射板9が配設された後に、配設される。それによって、突出した外縁部58は、アノード板1と放射板9との間に挟まれる。
【0051】
図1図10、及び図11を参照されたい。図10は、図1の係止チャネルZ7の概略図である。図11は、積み重ねた後の図1の拡張したイオン交換膜電解セルEの概略斜視図である。拡張したイオン交換膜電解セルEを安定させて固定するために、本発明の拡張したイオン交換膜電解セルEは、複数の係止チャネルZ7及び複数の係止構成要素55をさらに備える。本発明の拡張したイオン交換膜電解セルEにおける、アノード板1、カソード板2、バイポーラ電極板3、第1のイオン交換膜板41、第2のイオン交換膜板42、シリコン封止ガスケット6、絶縁熱ボード8、及び放射板9は、全てが対応する係止穴56を有する。積み重ねられた後、対応する係止穴56は積み重ねられて係止チャネルZ7を形成することになる。各係止チャネルZ7は,係止構成要素と嵌合するよう、アノード板1、カソード板2、バイポーラ電極板3、第1のイオン交換膜板41、第2のイオン交換膜板42、シリコン封止ガスケット6、絶縁熱ボード8、及び放射板9を貫通する。図11は、係止された後の拡張したイオン交換膜電解セルEを示す。
【0052】
図1及び図11を再度参照されたい。拡張したイオン交換膜電解セルEの構造を絶縁して固定するために、本発明の拡張したイオン交換膜電解セルEは、フレーム57をさらに備える。フレーム57は、互いに積み重ねた後の拡張したイオン交換膜電解セルEの、周縁部の周りに設置される。
【0053】
図1及び図12を参照されたい。図12は、本発明の拡張したイオン交換膜電解セルEの、別の実施形態における構造分解概略図である。当業者は、図1が、1枚のバイポーラ電極板3を有する拡張したイオン交換膜電解セルEの構造を示すことを理解できる。図1の実施形態の拡張である図12に示されるように、拡張したイオン交換膜電解セルEには、水を電気分解することによって発生させる水素及び酸素の量を増加させるための、第2のバイポーラ電極板32が、図1の実施形態に加えられている。前述の技術的特性に基づくと、第2のバイポーラ電極板32が、第1の電極板31とカソード板2との間に配設されるとき、第2のイオン交換膜板42が、第1のバイポーラ電極板31と第2のバイポーラ電極板32との間に配設され、さらに1つの第3のイオン交換膜板43が、第2のバイポーラ電極板32とカソード板2との間に配設されることを、意味することができる。加えて、第3の酸素チャンバ(図示せず)は、第2のバイポーラ電極板32のアノード面302に隣接し、かつ第3の水素チャンバは、第2のバイポーラ電極板32のカソード面301に隣接する。図2及び図7を共に参照されたい。第3の酸素チャンバは、第1の酸素チャンバZ61及び第2の酸素チャンバZ62と、酸素出口チャネルZ2を介して連通し、第3の水素チャンバは、第1の水素チャンバZ51及び第2の水素チャンバZ52と、水素出口チャネルZ1を介して連通する。好ましい実施形態において、第3の酸素チャンバは、第1の水素チャンバZ51、第2の水素チャンバZ52、及び第3の水素チャンバと流体連通されず、第3の水素チャンバは、第1の酸素チャンバZ61、第2の酸素チャンバZ62、及び第3の酸素チャンバと流体連通されない。
【0054】
拡張したイオン交換膜電解セルEの電極板の、穴11、凹状中央部13、及び凸状周縁部12における連係した設計を通して、3つの水素チャンバは、水素出口チャネルZ1によって互いに連通して、電気分解中に水素出口チャネルZ1から水素をアウトプットすることができる。加えて、3つの酸素チャンバは、酸素出口チャネルZ2及び水入口チャネルZ3によって互いに連通することができ、それによって水は、電気分解のために水入口チャネルZ3から電気分解空間Z4にインプットされ、電気分解中に酸素出口チャネルZ2から酸素をアウトプットする。当業者は、それぞれの要件によって、拡張したイオン交換膜電解セルEで積み重ねられた電極板の数を決定できること、及びそれに限定されないことを理解されたい。
【0055】
アノード板1の一方の面は、凸状周縁部12及び凹状中央部13を有する。アノード板1の凸状周縁部12が、第1のイオン交換膜板41と積み重ねられたとき、第1の酸素チャンバZ61は、アノード板1の凹状中央部13に形成される。凸状周縁部12は穴11を有し、積み重ねられたとき、水素出口チャネルZ1、酸素出口チャネルZ2、及び水入口チャネルZ3をそれぞれ形成する。酸素出口チャネルZ2及び水入口チャネルZ3を形成する穴11は、アノード板1の凹状中央部13と連通する。カソード板2の一方の面も、凸状周縁部12及び凹状中央部13を有する。カソード板2の凸状周縁部12が、第2のイオン交換膜板42と積み重ねられたとき、第1の水素チャンバZ51が、カソード板2の凹状中央部13に形成され、カソード板2の凹状中央部13は、水素出口チャネルZ1と連通する。第1のバイポーラ電極板31は、カソード面301及びアノード面302を有し、カソード面301及びアノード面302はそれぞれ、凸状周縁部12及び凹状中央部13を有する。カソード面301の凸状周縁部12が、第1のイオン交換膜板41と積み重ねられたとき、第2の水素チャンバZ52が、カソード面301の凹状中央部13に形成される。アノード面302の凸状周縁部12が、第2のイオン交換膜板42と積み重ねられたとき、第2の酸素チャンバZ62が、アノード面302の凹状中央部13に形成される。カソード面301及びアノード面302の凸状周縁部12は、それぞれ穴11を有し、積み重ねられたとき、水素出口チャネルZ1、酸素出口チャネルZ2、及び水入口チャネルZ3を形成する。水素出口チャネルZ1を形成する穴11は、カソード面301の凹状中央部13と連通する。酸素出口チャネルZ2及び水入口チャネルZ3を形成する穴11は、アノード面302の凹状中央部13と連通する。第2のバイポーラ電極板32も、カソード面301及びアノード面302を有し、カソード面301及びアノード面302はそれぞれ、凸状周縁部12及び凹状中央部13を有する。カソード面301の凸状周縁部12が、第2のイオン交換膜板42と積み重ねられたとき、第3の水素チャンバが、カソード面301の凹状中央部13に形成される。アノード面302の凸状周縁部12が、第3のイオン交換膜板43と積み重ねられたとき、第3の酸素チャンバが、アノード面302の凹状中央部13に形成される。カソード面301及びアノード面302の凸状周縁部12は、それぞれ穴11を有し、積み重ねられたとき、水素出口チャネルZ1、酸素出口チャネルZ2、及び水入口チャネルZ3を形成する。水素出口チャネルZ1を形成する穴11は、カソード面301の凹状中央部13と連通する。酸素出口チャネルZ2及び水入口チャネルZ3を形成する穴11は、アノード面302の凹状中央部13と連通する。
【0056】
加えて、図12に示される特定の実施形態における技術的特性は、上述のものと等しい。図12は、図1の実施形態の拡張である。したがって、技術的特性は、前述の技術的特性と類比することによって推定することができるので、ここでは繰り返さない。
【0057】
従来技術と比較して、本発明の拡張したイオン交換膜電解セルEにおける、アノード板1、カソード板2、第1のバイポーラ電極板31、第1のイオン交換膜板41、及び第2のイオン交換膜板42は、独立した板である。カルシウム蓄積の問題が電気分解後に生じた場合、拡張したイオン交換膜電解セルEは、洗浄のために分解することができる。拡張したイオン交換膜電解セルEの任意の部分が、激しく損傷を受けたときでさえ、損傷した板を、複数の構成要素または電気分解全体を交換するよう意図された、新しいものに直ちに交換することができる。加えて、本発明の拡張したイオン交換膜電解セルEにおける、アノード板1、カソード板2、及びバイポーラ電極板3は、電解セルの動作を妨げる不安定な設置の問題を起こすことなく、一体化で形成された電極板とすることができる。アノード板1及びカソード板2を交互に配置する必要がある、従来の電解セルと比較して、本発明の拡張したイオン交換膜電解セルEは、第1のバイポーラ電極板31を使用して、各電極板が電流との連通を必要とする構成を排除し、正の接触子及び負の接触子に接続された複数の電極板によって生じる従来の電解セルの問題も排除する。このように、拡張したイオン交換膜電解セルEの電極板の数は、従来の電解セルの電極板の数未満であり、それによって、費用及び組み立てた後の拡張したイオン交換膜電解セルEの体積を節減する。
【0058】
加えて、本発明の拡張したイオン交換膜電解セルEは、水及び気体の流れを誘導するために直線封止ガスケットを使用する従来の電解セルの代わりに、アノード板1、カソード板2、及びバイポーラ電極板3自体の構造設計を使用して、水及び気体の流れを誘導する。それによって、拡張したイオン交換膜電解セルEは、従来の電解セルにおける封止ガスケットの劣化または直線封止ガスケットによる、位置ずれの問題を排除する。
【0059】
上述の例及び説明、本発明の特徴及び趣旨を、できるだけ判りやすく説明した。さらに重要なことには、本発明は本明細書で説明した実施形態に限定されない。当業者は、セルの多くの変更及び代替が、本発明の教示を保持しつつ成され得ることを、容易に認識するであろう。したがって、上記の開示は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるよう解釈されたい。
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図4a
図4b
図4c
図5a
図5b
図5c
図6
図7
図8a
図8b
図9a
図9b
図10
図11
図12