(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】電力需給管理装置、電力需給管理システム及び電力需給管理方法
(51)【国際特許分類】
H02J 3/14 20060101AFI20241213BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20241213BHJP
【FI】
H02J3/14 130
H02J13/00 311T
(21)【出願番号】P 2021011475
(22)【出願日】2021-01-27
【審査請求日】2023-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】520448991
【氏名又は名称】株式会社イーネットワークシステムズ
(74)【代理人】
【識別番号】100109715
【氏名又は名称】塩谷 英明
(72)【発明者】
【氏名】及川 浩
【審査官】杉田 恵一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-120787(JP,A)
【文献】特開2017-169418(JP,A)
【文献】特開2018-170925(JP,A)
【文献】特開2019-170101(JP,A)
【文献】特開2020-054053(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/14
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電線を介して電力の供給を受ける複数の需要家サイトに対してデマンドレスポンスを要請し、実行する電力需給管理装置であって、
前記複数の需要家サイトのそれぞれの過去の電力使用量の履歴に関する電力使用情報を管理するデータベースと、
デマンドレスポンスに関する指令に従い、前記データベースを参照し、前記複数の需要家サイトのそれぞれの前記電力使用情報に基づいて、少なくとも1以上の前記需要家サイトを抽出する需要家サイト抽出部と、
前記デマンドレスポンスの要請のために、抽出された前記少なくとも1以上の需要家サイトに関連付けられた情報通信端末装置にデマンドレスポンス要請通知を送信するデマンドレスポンス要請部と、
前記デマンドレスポンス要請通知に応答して前記情報通信端末装置から送信される許諾可否通知に従い、前記デマンドレスポンスの要請に対して許諾した前記需要家サイトにおける電流量上限値を変更するように制御を行う電流量上限値変更部と、を備
え、
前記需要家サイト抽出部は、前記電力使用量が所定のしきい値以上である前記需要家サイトを抽出する、
電力需給管理装置。
【請求項2】
前記需要家サイト抽出部は、前記需要家サイトの過去の特定の時間帯における電力使用量に基づいて、前記需要家サイトを抽出する、
請求項1に記載の電力需給管理装置。
【請求項3】
前記需要家サイト抽出部は、前記指令によって示される削減要請総電力量に基づいて、所定数の前記需要家サイトを抽出する、
請求項1
又は2に記載の電力需給管理装置。
【請求項4】
抽出された前記需要家サイトの契約アンペアに従って、該需要家サイトに対する削減要請電力量を決定する削減要請電力量決定部を更に備える、
請求項
3に記載の電力需給管理装置。
【請求項5】
送電線を介して電力の供給を受ける複数の需要家サイトに対してデマンドレスポンスを要請し、実行する電力需給管理装置であって、
前記複数の需要家サイトのそれぞれの過去の電力使用量の履歴に関する電力使用情報を管理するデータベースと、
デマンドレスポンスに関する指令に従い、前記データベースを参照し、前記複数の需要家サイトのそれぞれの前記電力使用情報に基づいて、少なくとも1以上の前記需要家サイトを抽出する需要家サイト抽出部と、
前記デマンドレスポンスの要請のために、抽出された前記少なくとも1以上の需要家サイトに関連付けられた情報通信端末装置にデマンドレスポンス要請通知を送信するデマンドレスポンス要請部と、
前記デマンドレスポンス要請通知に応答して前記情報通信端末装置から送信される許諾可否通知に従い、前記デマンドレスポンスの要請に対して許諾した前記需要家サイトにおける電流量上限値を変更するように制御を行う電流量上限値変更部と、
抽出された前記需要家サイトの契約アンペアに従って、該需要家サイトに対する削減要請電力量を決定する削減要請電力量決定部と、を備え、
前記需要家サイト抽出部は、前記指令によって示される削減要請総電力量に基づいて、所定数の前記需要家サイトを抽出する、
電力需給管理装置。
【請求項6】
前記許諾した需要家サイトの前記削減要請電力量に基づいて、削減見込み電力量を算出するデマンドレスポンス許諾集計部を更に備える、
請求項
4又は5に記載の電力需給管理装置。
【請求項7】
前記デマンドレスポンス許諾集計部は、算出された前記削減見込み電力量と前記削減要請総電力量とを比較し、
前記需要家サイト抽出部は、前記デマンドレスポンス許諾集計部により前記削減見込み電力量が前記削減要請総電力量に達していないと判断される場合に、前記データベースを参照し、他の前記需要家サイトを更に抽出する、
請求項6に記載の電力需給管理装置。
【請求項8】
前記デマンドレスポンス許諾集計部は、算出された前記削減見込み電力量と前記削減要請総電力量とを比較し、前記削減見込み電力量が前記削減要請総電力量に達していると判断する場合に、前記許諾した需要家サイトに前記デマンドレスポンスを実行するためのデマンドレスポンス電流量上限値を含むデマンドレスポンス実施リストを作成する、
請求項6又は7に記載の電力需給管理装置。
【請求項9】
前記デマンドレスポンス許諾集計部は、前記許諾可否通知を未だ送信していない前記需要家サイトに前記デマンドレスポンスの要請の受付が終了した旨の通知を送信する、
請求項8に記載の電力需給管理装置。
【請求項10】
前記電流量上限値変更部は、前記デマンドレスポンス実施リストに従って、前記デマンドレスポンス電流量上限値を指定した第1の電流量上限値変更コマンドを前記需要家サイトに送信する、
請求項8に記載の電力需給管理装置。
【請求項11】
前記電流量上限値変更部は、前記指令に従った前記デマンドレスポンスの終了時に、前記需要家サイトにおける前記デマンドレスポンス電流量上限値を元の電流量上限値に戻すための第2の電流量上限値変更コマンドを前記需要家サイトに送信する、
請求項10に記載の電力需給管理装置。
【請求項12】
送電線を介して電力の供給を受ける複数の需要家サイトに対してデマンドレスポンスを要請し、実行する電力需給管理装置と、前記需要家サイトに関連付けられた情報通信端末装置とを備える電力需給管理システムであって、
前記電力需給管理装置は、
前記複数の需要家サイトのそれぞれの過去の電力使用量の履歴に関する電力使用情報を管理するデータベースと、
デマンドレスポンスに関する指令に従い、前記データベースを参照し、前記複数の需要家サイトのそれぞれの前記電力使用情報に基づいて、少なくとも1以上の前記需要家サイトを抽出する需要家サイト抽出部と、
前記デマンドレスポンスの要請のために、抽出された前記少なくとも1以上の需要家サイトに関連付けられた情報通信端末装置にデマンドレスポンス要請通知を送信するデマンドレスポンス要請部と、
前記デマンドレスポンス要請通知に応答して前記情報通信端末装置から送信される許諾可否通知に従い、前記デマンドレスポンスの要請に対して許諾した前記需要家サイトにおける電流量上限値を変更するように制御を行う電流量上限値変更部と、を備え、
前記情報通信端末装置は、
受信した前記デマンドレスポンス要請通知に従い、前記デマンドレスポンスの要請に対して許諾の可否の選択をユーザに促すユーザインターフェースと、
前記選択された許諾の可否に基づく前記許諾可否通知を前記電力需給管理装置に送信する送信部と、を備える、
電力需給管理システム。
【請求項13】
送電線を介して電力の供給を受ける複数の需要家サイトに対してデマンドレスポンスを要請し、実行する電力需給管理装置による電力需給管理方法であって、
データベースに複数の需要家サイトのそれぞれの過去の電力使用量の履歴に関する電力使用情報を蓄積し、管理することと、
デマンドレスポンスに関する指令を受信することと、
受信した前記指令に従い、前記データベースを参照し、前記複数の需要家サイトのそれぞれの前記電力使用情報に基づいて、少なくとも1以上の前記需要家サイトを抽出することと、
前記デマンドレスポンスの要請のために、抽出された前記少なくとも1以上の需要家サイトに関連付けられた情報通信端末装置にデマンドレスポンス要請通知を送信することと、
前記デマンドレスポンス要請通知に応答して前記情報通信端末装置から送信される許諾可否通知を受信することと、
受信した前記許諾可否通知に従い、前記デマンドレスポンスの要請に対して許諾した前記需要家サイトにおける電流量上限値を変更するように制御を行うことと、を含
み、
前記需要家サイトを抽出することは、前記電力使用量が所定のしきい値以上である前記需要家サイトを抽出することを含む、
電力需給管理方法。
【請求項14】
送電線を介して電力の供給を受ける複数の需要家サイトに対してデマンドレスポンスを要請し、実行する電力需給管理装置による電力需給管理方法であって、
データベースに複数の需要家サイトのそれぞれの過去の電力使用量の履歴に関する電力使用情報を蓄積し、管理することと、
デマンドレスポンスに関する指令を受信することと、
受信した前記指令に従い、前記データベースを参照し、前記複数の需要家サイトのそれぞれの前記電力使用情報に基づいて、少なくとも1以上の前記需要家サイトを抽出することと、
前記デマンドレスポンスの要請のために、抽出された前記少なくとも1以上の需要家サイトに関連付けられた情報通信端末装置にデマンドレスポンス要請通知を送信することと、
前記デマンドレスポンス要請通知に応答して前記情報通信端末装置から送信される許諾可否通知を受信することと、
受信した前記許諾可否通知に従い、前記デマンドレスポンスの要請に対して許諾した前記需要家サイトにおける電流量上限値を変更するように制御を行うことと、
抽出された前記需要家サイトの契約アンペアに従って、該需要家サイトに対する削減要請電力量を決定することと、を含み、
前記需要家サイトを抽出することは、前記指令によって示される削減要請総電力量に基づいて、所定数の前記需要家サイトを抽出することを含む、
電力需給管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力需給管理装置、電力需給管理システム及び電力需給管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各発電所(集中電源)で発電された電力(すなわち、電気)は、大小幾つかの変電所を介して送電線により消費地に送られ、最終的に変圧器(トランス)から配電線を介して、一般家庭等の各需要家に送られる。一般に、発電、変電、送電、及び配電を統合したシステムは、電力系統と称される。このような電力系統における電力は、貯蔵できないため、常に需要量と供給量とをバランスさせる必要がある。この需給バランスが崩れると電圧や周波数等の電気の品質が低下し、場合によっては、大規模な停電が発生してしまうおそれがある。
【0003】
電力の需給バランスを保つために、従来は、電力の供給量を需要量に合わせるという考え方から、電力会社が発電設備の稼働状況を調整していた。しかしながら、この場合、電力会社は、発電設備を余剰に用意しておく必要があるため、管理運用コストが嵩み、結果として、電気料金の高騰を招いていた。
【0004】
また、昨今は、太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーの導入が進んだが、これらは天候などの自然の状況に応じて発電量が左右されるため、供給量を制御することができない。こうした動きと並行して、太陽光発電や家庭用燃料電池などのコージェネレーション、蓄電池、電気自動車、いわゆるネガワットなど、需要家側に導入される分散型のエネルギーリソースの普及が進んでいる。
【0005】
このような背景から、電力会社を中心とした大規模発電所に依存した従来型のエネルギー供給システムが見直され、これに伴い、需要家側のエネルギーリソースを電力システムに活用するスキームの構築が進められている。具体的には、工場や家庭といった各施設が有する分散型のエネルギーリソースを、アグリゲーターと呼ばれる管理システムが、IoT(Internet of Things)を活用して、遠隔的・統合的に制御することにより、電力の需給バランスを調整するスキームが提唱されている。このようなスキームは、あたかも一つの発電所のように機能することから、仮想発電所(Virtual Power Plant:VPP)と称される。
【0006】
更に、近年は、電力の需要量を供給量に合わせるという考え方が採り入れられ、デマンドレスポンス(Demand Response:DR)によって需要量と供給量とのバランスを保つための運用がなされている。すなわち、デマンドレスポンスは、市場価格の高騰時又は電力系統の信頼性の低下時において、電気料金価格の設定又はインセンティブの支払に応じて、需要家側が電力の使用(消費)を抑制するように電力需要パターンを変化させることをいう。
【0007】
このような仮想発電所やデマンドレスポンスは、電力系統における電力負荷の平準化や再生可能エネルギーの供給過剰の吸収、電力不足時の供給等の問題に対するソリューションとして期待されている。デマンドレスポンスに関して、幾つかのシステムが提案されている。
【0008】
例えば、下記特許文献1は、需要家に対してデマンドレスポンスの実行を簡易に要請することができるとともに、デマンドレスポンスを実行する需要家に対する適切な報酬額を算出したり需要家によって調整される電力量を予定通りの大きさにしたりすることが可能なデマンドレスポンスシステムを開示している。
【0009】
また、下記特許文献2は、デマンドレスポンス要請時における電力需要量の増減を容易に把握する装置を開示している。具体的には、特許文献2は、デマンドレスポンスの要請がなかった場合に想定される電力需要量の所定の時間帯における変動を時間に対応させて表すとともに、デマンドレスポンスの要請に応じた電力需要量のデマンドレスポンスの要請時間帯における変動を時間に対応させて表すベースライン画面を表示するための画面表示情報を作成するベースライン画面作成部を備えた電力情報作成装置を開示している。
【0010】
更に、下記特許文献3は、需要家の被制御機器に関する適切な処理を可能にする装置を開示している。具体的には、特許文献3は、複需要家の被制御機器に関する処理の決定に用いる所定の情報を取得する取得部と、取得部により取得された所定の情報に基づいて、需要家の被制御機器に対応するサービス内容を決定する決定部と、決定部により決定されたサービス内容に基づいて、需要家の被制御機器に関する処理を実行する実行部とを備える情報処理装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2018-170925号公報
【文献】特開2019-170101号公報
【文献】特開2020-054053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
デマンドレスポンスの効果的な実現のためには、電力供給側からのデマンドレスポンスの要請に確実に応じることができる需要家を見定めて、該需要家からその承諾を得ることが重要である。従前は、電力系統において需給バランスの不均衡が予測されると、例えば電力会社の担当者が契約電力量の大きいいわゆる大口需要家に電話をかけて使用電力の削減を要請して承諾を得て、大口需要家はその要請に従って電気機器の稼働を停止する等によって電力使用量を削減していた。しかしながら、上記特許文献1~3のいずれも、特定の消費地内のどの需要家にデマンドレスポンスを要請し、より迅速に承諾を得るといった問題を何ら考慮するものでなかった。
【0013】
そこで、本発明は、特定の電力消費地内からデマンドレスポンスの要請に応じ得る需要家を効果的に抽出し、該需要家から迅速に承諾の可否を得ることができる電力需給管理装置、電力需給管理システム及び電力需給管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するための本発明は、以下に示す発明特定事項ないしは技術的特徴を含んで構成される。
【0015】
ある観点に従う本発明は、送電線を介して電力の供給を受ける複数の需要家サイトに対してデマンドレスポンスを要請し、実行する電力需給管理装置であり得る。前記電力需給管理装置は、前記複数の需要家サイトのそれぞれの過去の電力使用量の履歴に関する電力使用情報を管理するデータベースと、デマンドレスポンスに関する指令に従い、前記データベースを参照し、前記複数の需要家サイトのそれぞれの前記電力使用情報に基づいて、少なくとも1以上の前記需要家サイトを抽出する需要家サイト抽出部と、前記デマンドレスポンスの要請のために、抽出された前記少なくとも1以上の需要家サイトに関連付けられた情報通信端末装置にデマンドレスポンス要請通知を送信するデマンドレスポンス要請部と、前記デマンドレスポンス要請通知に応答して前記情報通信端末装置から送信される許諾可否通知に従い、前記デマンドレスポンスの要請に対して許諾した前記需要家サイトにおける電流量上限値を変更するように制御を行う電流量上限値変更部とを備え得る。
電力需給管理装置。
【0016】
前記需要家サイト抽出部は、前記需要家サイトの過去の特定の時間帯における電力使用量に基づいて、前記需要家サイトを抽出し得る。
【0017】
また、前記需要家サイト抽出部は、前記電力使用量が所定のしきい値以上である前記需要家サイトを抽出し得る。
【0018】
また、前記需要家サイト抽出部は、前記指令によって示される削減要請総電力量に基づいて、所定数の前記需要家サイトを抽出し得る。
【0019】
前記電力需給管理装置は、抽出された前記需要家サイトの契約アンペアに従って、該需要家サイトに対する削減要請電力量を決定する削減要請電力量決定部を更に備え得る。
【0020】
また、前記電力需給管理装置は、前記許諾した需要家サイトの前記削減要請電力量に基づいて、削減見込み電力量を算出するデマンドレスポンス許諾集計部を更に備え得る。
【0021】
前記デマンドレスポンス許諾集計部は、算出された前記削減見込み電力量と前記削減要請総電力量とを比較し、前記削減見込み電力量が前記削減要請総電力量に達しているか否かを判断し得る。そして、前記需要家サイト抽出部は、前記デマンドレスポンス許諾集計部により前記削減見込み電力量が前記削減要請総電力量に達していないと判断される場合に、前記データベースを参照し、他の前記需要家サイトを更に抽出し得る。
【0022】
また、前記デマンドレスポンス許諾集計部は、前記削減見込み電力量が前記削減要請総電力量に達していると判断する場合に、前記許諾した需要家サイトにデマンドレスポンスを実行するためのデマンドレスポンス電流量上限値を含むデマンドレスポンス実施リストを作成し得る。
【0023】
また、前記デマンドレスポンス許諾集計部は、前記許諾可否通知を未だ送信していない前記需要家サイトにデマンドレスポンスの要請の受付が終了した旨の通知を送信し得る。
【0024】
前記電流量上限値変更部は、前記デマンドレスポンス実施リストに従って、前記デマンドレスポンス電流量上限値を指定した第1の電流量上限値変更コマンドを前記需要家サイトに送信し得る。
【0025】
また、前記電流量上限値変更部は、前記指令に従った前記デマンドレスポンスの終了時に、前記需要家サイトにおける前記デマンドレスポンス電流量上限値を元の電流量上限値に戻すための第2の電流量上限値変更コマンドを前記需要家サイトに送信し得る。
【0026】
また、別の観点に従う本発明は、送電線を介して電力の供給を受ける複数の需要家サイトに対してデマンドレスポンスを要請し、実行する電力需給管理装置と、前記需要家サイトに関連付けられた情報通信端末装置とを備える電力需給管理システムであり得る。前記電力需給管理装置は、前記複数の需要家サイトのそれぞれの過去の電力使用量の履歴に関する電力使用情報を管理するデータベースと、デマンドレスポンスに関する指令に従い、前記データベースを参照し、前記複数の需要家サイトのそれぞれの前記電力使用情報に基づいて、少なくとも1以上の前記需要家サイトを抽出する需要家サイト抽出部と、前記デマンドレスポンスの要請のために、抽出された前記少なくとも1以上の需要家サイトに関連付けられた情報通信端末装置にデマンドレスポンス要請通知を送信するデマンドレスポンス要請部と、前記デマンドレスポンス要請通知に応答して前記情報通信端末装置から送信される許諾可否通知に従い、前記デマンドレスポンスの要請に対して許諾した前記需要家サイトにおける電流量上限値を変更するように制御を行う電流量上限値変更部とを備え得る。また、前記情報通信端末装置は、受信した前記デマンドレスポンス要請通知に従い、前記デマンドレスポンスの要請に対して許諾の可否の選択をユーザに促すユーザインターフェースと、前記選択された許諾の可否に基づく前記許諾可否通知を前記電力需給管理装置に送信する送信部(通信部)とを備え得る。
【0027】
更に、別の観点に従う本発明は、送電線を介して電力の供給を受ける複数の需要家サイトに対してデマンドレスポンスを要請し、実行する電力需給管理装置による電力需給管理方法であり得る。前記方法は、データベースに前記複数の需要家サイトのそれぞれの過去の電力使用量の履歴に関する電力使用情報を蓄積し、管理することと、デマンドレスポンスに関する指令を受信することと、受信した前記指令に従い、前記データベースを参照し、前記複数の需要家サイトのそれぞれの前記電力使用情報に基づいて、少なくとも1以上の前記需要家サイトを抽出することと、前記デマンドレスポンスの要請のために、抽出された前記少なくとも1以上の需要家サイトに関連付けられた情報通信端末装置にデマンドレスポンス要請通知を送信することと、前記デマンドレスポンス要請通知に応答して前記情報通信端末装置から送信される許諾可否通知を受信することと、受信した前記許諾可否通知に従い、前記デマンドレスポンスの要請に対して許諾した前記需要家サイトにおける電流量上限値を変更するように制御を行うこととを含み得る。
【0028】
また、本発明は、コンピューティングデバイスに前記方法を実行させるためのコンピュータプログラム又はこれを非一時的に担持したコンピュータ可読可能な記録媒体であり得る。
【0029】
なお、本明細書等において、手段とは、単に物理的手段を意味するものではなく、その手段が有する機能をソフトウェアによって実現する場合も含む。また、1つの手段が有する機能が2つ以上の物理的手段により実現されても、2つ以上の手段の機能が1つの物理的手段により実現されても良い。また、「システム」とは、複数の装置(又は特定の機能を実現する機能モジュール)が論理的に集合した物のことをいい、各装置や機能モジュールが単一の筐体内にあるか否かは特に問わない。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、特定の電力消費地内からデマンドレスポンスの要請に応じ得る需要家を効果的に抽出し、該需要家から迅速に承諾の可否を得ることができる。
【0031】
本発明の他の技術的特徴、目的、及び作用効果ないしは利点は、添付した図面を参照して説明される以下の実施形態により明らかにされる。本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、また他の効果があっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る電力需給管理システムの一例を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係る電力需給管理装置の機能的モデルの一例を説明するための図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態に係る電力需給管理装置におけるデータベースのデータ構造の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態に係る電力需給管理装置における削減要請電力量決定テーブルの一例を示す図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態に係る電力需給管理装置によるデマンドレスポンスの要請通知の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、本発明の一実施形態に係る電力需給管理システムにおける需要家サイトの構成の一例を示すブロックダイアグラムである。
【
図7】
図7は、本発明の一実施形態に係る電力需給管理システムにおける情報通信端末装置の構成の一例を示すブロックダイアグラムである。
【
図8】
図8は、本発明の一実施形態に係る電力需給管理システムにおける情報通信端末装置のユーザインターフェース上の画面の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、本発明の一実施形態に係る電力需給管理システムにおける情報通信端末装置のユーザインターフェース上の画面の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、本発明の一実施形態に係る電力需給管理システムにおける全体処理の流れの一例を説明するためのシーケンスチャートである。
【
図11A】
図11Aは、本発明の一実施形態に係る電力需給管理装置のDR実行処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図11B】
図11Bは、本発明の一実施形態に係る電力需給管理装置のDR実行処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図12】
図12は、本発明の一実施形態に係るシステムにおけるコンピューティングデバイスのハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、あくまでも例示であり、以下に明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形(例えば各実施形態を組み合わせる等)して実施することができる。また、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付して表している。図面は模式的なものであり、必ずしも実際の寸法や比率等とは一致しない。図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることがある。
【0034】
図1は、本発明の一実施形態に係る電力需給管理システムの一例を示す図である。同図に示すように、電力需給管理システム1は、概略的には、給電指令装置10と、電力需給管理装置20と、複数の需要家サイト30とを含み構成され、これらは、通信ネットワーク40に通信可能に接続されている。また、発電所(図示せず)において発電された電力は、変電所S、並びに送電線及び/又は配電線(以下、単に「送電線」という。)ELを介して、所定の電圧まで降圧されて複数の需要家サイト30に供給される。本開示の電力需給管理システム1は、以下で詳述されるように、電力需給管理装置20が需要家サイト30へのデマンドレスポンス(以下「DR」という。)により電力の需給バランスを図っている。
【0035】
給電指令装置10は、電力系統における電力の需給バランスの予測に従って、削減すべき電力量を示すDRに関する指令(以下「DR指令」という。)を発する。DR指令は、例えば需給バランスの調整のためにデマンドレスポンスの実施により削減すべき総電力量(以下「削減要請総電力量」という。)を含む。例えば、DR指令は、デマンドレスポンスの実施日時「2020年1月xx日17:00~19:00」及び最大使用可能電力量「1MW」(電流量上限値「10,000A」)といった情報を含む。給電指令装置10は、例えば電力会社や送配電事業者、アグリゲーションコーディネーターと称される事業者(単にアグリゲーターと称されることもある。)等によって管理・運営されるが、これに限られない。給電指令装置10によるDR指令は、通信ネットワーク40を介して電力需給管理装置20に送信される。
【0036】
電力需給管理装置20は、各需要家サイト30を遠隔的・統合的に制御して、電力の需給バランスを調整する。例えば、電力需給管理装置20は、給電指令装置10からのDR指令に従って、管轄する地域における複数の需要家サイト30により削減すべき電力量を確保するために、承諾を得た少なくとも幾つかの需要家サイト30に対する最大使用可能電力量(すなわち、最大使用電流量)の調整及び/又は制御を遠隔的に行う。電力需給管理装置20は、例えばアグリゲーターによって運用・管理されるが、これに限られない。アグリゲーターは、例えば、電力会社、送配電事業者及び/又は小売電気事業者であり得る。
【0037】
電力需給管理装置20は、需要家サイト30の電力使用に関する各種の情報(以下「電力使用情報」という。)を管理するためのデータベース220を備える。電力使用情報は、例えば、需要家サイト30の例えば過去の電力使用量の履歴を含む。電力需給管理装置20は、物理的に1つの又は論理的に1つのコンピューティングデバイス上に構築されても良いし、或いは、幾つかのコンピューティングデバイス上に分散されて構築されても良い。このようなコンピューティングデバイスのハードウェア構成は、
図11に例示されるが、これに限られず、また、既知であるため、その詳細な説明は省略する。電力需給管理装置20は、例えば、通信ネットワーク40を介して、SSL/TSL等のセキュア通信技術を利用することによって、給電指令装置10や需要家サイト30とのセキュアな通信セッションを構築し得る。
【0038】
例えば、電力需給管理装置20は、給電指令装置10からDR指令を受信すると、データベース220を参照して、電力削減量の確保に効果的な少なくとも1以上の需要家サイト30を抽出し、抽出した需要家サイト30にDRの要請(すなわち、所定のスケジュールに従った最大使用可能電力量(電流上限値)の変更要請、いわゆる下げDR要請)を送信して、需要家サイト30からその許諾を得る。そして、電力需給管理装置20は、需要家サイト30から許諾を得ると、最大使用可能電力量の設定指示を需要家サイト30に送信する。
【0039】
需要家サイト30は、送電線ELを介して供給される電力を使用する需要家側のサイトである。需要家は、典型的には、電力会社等との電力契約における契約電力の大きさに応じて、高圧大口需要家や高圧小口需要家、低圧需要家に分類される。本開示では、需要家は、一般家庭等の低圧需要家を想定して説明されるが、これに限られない。契約電力は、いわゆる契約アンペアとも称される。
【0040】
需要家サイト30は、例えば計測器320や遮断器、分電盤(図示せず)、及び電力系統から供給される電力を商用使用するために必要な各種の電気機器(いわゆる負荷装置)を含み構成される。本開示では、需要家サイト30は、電流量調整装置330を更に含み構成される(
図6参照)。電流量調整装置330は、電力需給管理装置20の遠隔制御の下、動作し得る。例えば、電流量調整装置330は、電力需給管理装置20から受信した最大使用可能電力量の設定指示に従って、需要家サイト30に対する契約アンペアの範囲において使用可能電力量の上限値を一時的に変更し得る。
【0041】
本開示では、需要家サイト30は、DRの要請を受ける側のサイトとして説明されるが、VPPにおけるエネルギーリソーサー(すなわち、分散型小規模発電所)として機能するように、発電設備を含み構成されても良い。発電設備は、例えば、太陽光発電設備や風力発電設備、ガス発電等のコージェネレーション設備を含み得る。
【0042】
また、需要家サイト30は、需要家サイト30を管理する管理者(又は電力を使用する消費者たるユーザ)がインタラクティブに操作するための情報通信端末装置340を含み構成される。情報通信端末装置340は、例えば、電力需給管理装置20からDRの要請通知を受信し、これに応答して、許諾の可否を電力需給管理装置20に送信する。情報通信端末装置340は、アグリゲーターによって需要家サイト30の一部として認識されるように、例えば共通の識別コードによって需要家サイト30と関連付けられる。
【0043】
典型的には、情報通信端末装置340は、通信機能を有し、管理者がインタラクティブに操作可能なコンピューティングデバイスであり、例えば、デスクトップコンピュータや、ノートコンピュータ、タブレットコンピュータ、スマートフォン、フィーチャフォン及びその他のインテリジェントデバイスが挙げられるが、これらに限られない。本開示では、情報通信端末装置340は、タッチ操作が可能なスマートフォンであるものとする。
【0044】
すなわち、情報通信端末装置340は、CPU(プロセッサ)やチップセット及びメモリ、通信モジュール、ユーザインターフェース等のハードウェア資源及びオペレーティングシステム(例えばカーネル、各種のデバイスドライバ、標準ライブラリ等を含み構成され得る。以下「OS」という。)のソフトウェア資源から構成される。情報通信端末装置340は、プロセッサの制御の下、OS上で各種のアプリケーションプログラムを実行し、所望の機能を実現する。本開示において、情報通信端末装置340は、例えば、アプリケーションプログラムの一つとして、情報通信端末装置340をDRの要請に応答するためのユーザインターフェースとして機能させるための命令群ないしはモジュールを含むDRクライアントプログラムを実装し得る。或いは、情報通信端末装置340は、アプリケーションプログラムの一つとしてブラウザプログラムを実装し、該ブラウザプログラムにより実現されるブラウザのアドオンプログラムにより、上記機能が実現されるように構成されても良い。
【0045】
通信ネットワーク40は、例えば、移動通信システム規格に準拠した移動通信ネットワークであり得る。通信ネットワーク40は、移動通信ネットワークに代えて又はこれに加えて、IPベースのコンピュータネットワークであっても良い。或いは、通信ネットワーク40は、送電線ELを用いて、つまり送電線ELに通信データを重畳する通信方式により構築されても良い。通信ネットワーク40は、ノードとしての、電力需給管理装置20と需要家サイト30及び/又は情報通信端末装置340との間で通信を可能とするあらゆるプロトコルのネットワークが適用可能である。
【0046】
図2は、本発明の一実施形態に係る電力需給管理装置の機能的モデルの一例を説明するための図である。同図では、電力需給管理装置20の各種のコンポーネント(構成要素)のうち、本開示にとりわけ関連するコンポーネントが示され、他のコンポーネントについては、複雑化を回避するため、適宜に省略されている。すなわち、同図に示す例では、電力需給管理装置20は、概略的には、通信部210と、データベース220と、DR実行部230とを含み構成されている。これらのコンポーネントは、ハードウェアコンポーネントそのもの、或いは、電力需給管理装置20のプロセッサが、OS上でDR管理プログラムを実行することにより、各種のハードウェアコンポーネントと協働して実現され得る。
【0047】
通信部210は、通信ネットワーク40を介して、外部の装置、とりわけ、給電指令装置10及び各需要家サイト30と各種の情報をやりとりするための通信インターフェースである。一例として、通信部210は、給電指令装置10からDR指令を受信し、これをDR実行部230に引き渡す。他の例として、通信部210は、各需要家サイト30から電力使用量を定期的又は不定期に受信し、これをデータベース220に蓄積するためにDR実行部230に引き渡す。更に他の例として、通信部210は、特定の需要家サイト30にDRの要請に関する通知(以下「DR要請通知」という。)を送信し、そのうちの幾つかの需要家サイト30から該要請に対する許諾の可否を示す通知(以下「許諾可否通知」という。)を受信する。
【0048】
データベース220は、上述したように、各需要家サイト30の電力使用に関する各種の情報を管理する。例えば、データベース220は、需要家サイト30ごとの電力使用情報を蓄積し管理する。
【0049】
図3は、本発明の一実施形態に係る電力需給管理装置におけるデータベースのデータ構造の一例を示す図である。同図に示すように、例えば、データベース220の各レコードは、需要家サイトID、メールアドレス、契約アンペア、インセンティブ、DR許諾状況、及び電力使用情報等のフィールドを含み得るが、これに限られない。図示されていないが、各レコードは、需要家サイト30の名義や住所、電話番号、パスコードといった需要家サイト30の属性情報に関するフィールドを更に含み得る。
【0050】
同図を参照して、需要家サイトIDは、各需要家サイト30を識別するためのIDである。メールアドレスは、電力需給管理装置20がDRの要請を送信するための需要家サイト30の管理者の電子メールアドレスを示す。電子メールアドレスは、需要家サイト30(すなわち、管理者)のユーザIDとして用いられ得る。契約アンペアは、需要家サイト30が電力会社等との電力契約に基づく契約電力量を示す。インセンティブは、DRの要請に応じて許諾した需要家サイト30に与えられる報酬等を示す。DR許諾状況は、DRの要請に対する許諾可否の状況を示す。電力使用情報は、各需要家サイト30における過去の所定の時間間隔ごとの電力使用量を示す履歴データである。電力使用量は、例えば需要家サイト30に設置された計測器320から取得され得るが、これに限られず、電力会社や送配電事業者等から提供されても良い。電力使用情報は、例えば30分や1時間ごとの電力使用量の平均値であるが、これに限られない。例えば、電力使用情報は、30分や1時間ごとの電力使用量のピーク値であっても良い。
【0051】
図2に戻り、DR実行部230は、DR指令に従って、管轄する地域における特定の需要家サイト30に対してDRを要請し、実行する。本開示では、DR実行部230は、例えば、需要家サイト抽出部231と、削減要請電力量決定部232と、DR要請部233と、DR許諾集計部234と、電流量上限値変更部235とを含み構成される。
【0052】
需要家サイト抽出部231は、DR指令によって示される削減要請総電力量に基づいて、データベース220を参照し、DRの実施を効果的に実現し得る1又はそれ以上の需要家サイト30を抽出する。すなわち、需要家サイト抽出部231は、DR指令によって示されるDR実施日の特定の時間帯における削減要請総電力量に従って、データベース220における需要家サイト30ごとの電力使用情報に基づいて、該時間帯において電力使用量が大きいと予想される所定数の需要家サイト30を所定のしきい値に基づいて抽出する。抽出される需要家サイト30の数は、例えば削減要請総電力量に応じて決定され得る。
【0053】
例えば、需要家サイト抽出部231は、DR指令によって示された実施日の1週間前に対応する日の時間帯における需要家サイト30の電力使用量を取得し、その値(又は平均値)が大きい需要家サイト30を順番に所定数だけ抽出する。具体例として、DR指令が実施日「2020年1月xx日17:00~19:00」で削減要請総電力量「1MW」であった場合、需要家サイト抽出部231は、2020年1月xx日の1週間前の日の17:00~19:00での電力使用量が4kW以上であった需要家サイト30を抽出する。
【0054】
或いは、例えば、需要家サイト抽出部231は、DR指令によって示された実施日から直近一定期間における各日での同じ時間帯の需要家サイト30の電力使用量を集計し、その値(又はその平均値)が大きい需要家サイト30を順番に所定数だけ抽出する。具体例として、DR指令が実施日「2020年1月xx日17:00~19:00」で削減要請総電力量「1MW」であった場合、需要家サイト抽出部231は、2020年1月xx日から直近1週間における各日の17:00~19:00の電力使用量の平均値が4kW以上であった需要家サイト30を抽出する。
【0055】
また、需要家サイト抽出部231は、後述するように、DRの要請を許諾した需要家サイト30の個別の削減要請電力量に基づいて算出される削減見込み電力量が削減要請総電力量に達していない場合、更にDR要請の対象となる需要家サイト30を抽出する。
【0056】
削減要請電力量決定部232は、例えば
図4に示すような削減要請電力量決定テーブル2321に従って、抽出された各需要家サイト30に対する個別の削減要請電力量を決定する。例えば、削減要請電力量決定部232は、データベース220を参照して、抽出された需要家サイト30の契約アンペアを特定し、削減要請電力量決定テーブル2321に従って、削減要請電力量を決定する。例えば、ある需要家サイト30の契約アンペアが40Aである場合、30A分の電力量(すなわち、実効電圧が100Vであれば3kW)を該需要家サイト30の削減要請電力量として決定する。削減要請電力量決定部232は、抽出された需要家サイト30に対する削減要請電力量を示すDR要請リストを作成し、DR要請部233及びDR許諾集計部234に引き渡す。
【0057】
具体例として、需要家サイト抽出部231が、過去の電力使用量の実績値が4kW以上であった需要家サイト30(契約アンペアは40A)を200戸抽出することができたとする。この場合、各需要家サイト30への削減要請電力量が3kWとして、
3kW*200戸=600kW
であり、削減要請総電力量1000kWに対して400kW分が未だ不足する。したがって、需要家サイト抽出部231は、400kW分を更に確保するために、過去の電力使用量が3kW以上4kW未満であった需要家サイト30を更に抽出する。この場合に、需要家サイト抽出部231は、例えば需要家サイト30を400戸抽出することができたとすると、削減要請総電力量は、
2kW*400戸=800kW
となり、合計で600戸1400kW分が確保されることになる。
【0058】
DR要請部233は、需要家サイト抽出部231から引き渡されたDR要請リストに従って、需要家サイト30ごとにDR要請通知を作成し、これを需要家サイト30に関連付けられた情報通信端末装置340に対してプッシュ送信し、DR要請の受付を開始する。DR要請通知は、例えば、
図5に示すように、DRの実施日時(開始日時及び終了日時)、現在の契約アンペア、及び実施日時における上限使用可能アンペア等を含む。需要家サイト30(すなわち、本例では情報通信端末装置340)は、DR要請通知を受信すると、管理者のインタラクティブな操作の下、又は自動応答処理に従い、該要請に対する許諾の可否を選択し、該許諾の可否を示す通知(以下「許諾可否通知」という。)を電力需給管理装置20に送信する。
【0059】
DR許諾集計部234は、需要家サイト30からDRの要請に対する許諾可否通知を受信すると、該要請を許諾した需要家サイト30の削減要請電力量を集計し、現在の削減見込み電力量を算出する。DR許諾集計部234は、算出された削減見込み電力量と削減要請総電力量とを比較して、算出された削減見込み電力量が削減要請総電力量に達していると判断する場合、許諾した需要家サイト30のDR要請に対する許諾の内容に基づいてDRの実施内容を示すDR実施リストを作成し、これを電流量上限値変更部235に引き渡す。DR実施リストは、例えば、DR要請リストに対して許諾した需要家サイト30とこれに関連付けられたDR電流量上限値とを含み得る。
【0060】
なお、DR許諾集計部234は、算出された削減見込み電力量が削減要請総電力量に達していると判断する場合、まだ許諾可否通知を受信していない需要家サイト30の情報通信端末装置340に対して、DR要請の受付が終了した旨の通知を送信する。
【0061】
一方、DR許諾集計部234は、算出された削減見込み電力量が削減要請総電力量に達していないと判断する場合、その未達分(不足分)を追加の削減要請電力量として需要家サイト抽出部231に通知する。DR許諾集計部234は、算出された削減見込み電力量が削減要請総電力量に達するまで、需要家サイト30の抽出及び需要家サイト30へ要請が行われるように、需要家サイト抽出部231に通知する。
【0062】
電流量上限値変更部235は、DR要請を許諾した需要家サイト30に対して、その削減要請電力量に基づいて、DRの実施スケジュールに従って電流量上限値の設定ないしは変更を遠隔的に制御する。例えば、電流量上限値変更部235は、DRの開始日時になると、DR実施リストに従って、DR電流量上限値を指定した電流量上限値変更コマンドを各需要家サイト30の電流量調整装置330に送信する。これを受けて、需要家サイト30の電流量調整装置330は、現在の電流量上限値をDR電流量上限値に変更する。
【0063】
図6は、本発明の一実施形態に係る電力需給管理システムにおける需要家サイトの構成の一例を示すブロックダイアグラムである。同図では、需要家サイト30の各種のコンポーネント(構成要素)のうち、本開示に係る技術に関連するコンポーネントが示されている。すなわち、同図に示す例では、需要家サイト30は、例えば、制御装置310と、計測器320と、電流量調整装置330とを含み構成されている。また、需要家サイト30は、上述したように、需要家サイト30の管理者がインタラクティブに操作するための情報通信端末装置340を含む。
【0064】
制御装置310は、需要家サイト30で使用される電力を統括的に制御する。本開示では、制御装置310は、電流量調整装置330を制御可能に構成されている。また、制御装置310は、電気機器(負荷装置)を制御し得る。このような制御装置310は、HEMS(Home Energy Management System)と称されることもある。
【0065】
制御装置310と計測器320及び電流量調整装置330等とは例えばデータ通信回線を介して接続され得る。データ通信回線は、有線であっても良いし、無線であっても良い。計測器320や電流量調整装置330と接続する無線データ通信回線の一例として、例えばいわゆるBルートであり得るが、これに限られない。
【0066】
また、制御装置310は、通信ネットワーク40(例えば4G又は5G移動通信システム)を介して電力需給管理装置20と通信可能に接続される。本開示では、制御装置310は、電流量上限値変更コマンドを受信可能に構成される。また、制御装置310は、情報通信端末装置340と関連付けられ、通信可能に接続され得る。制御装置310は、情報通信端末装置340とは例えばWiFi(登録商標)規格により通信可能に接続されるが、これに限られない。
【0067】
制御装置310は、電力需給管理装置20から電流量上限値変更コマンドを受信すると、現在の電流量上限値を電流量上限値変更コマンドが指定するDR電流量上限値に変更するように、電流量調整装置を制御する。また、制御装置310は、電流量上限値変更コマンドに従って、DRの終了日時にDR電流量上限値を元の契約アンペアである電流量上限値に戻すように、電流量調整装置を制御する。或いは、DRの終了日時になると、電力需給管理装置20は、変更された電流量上限値を契約アンペアに戻すための電流量上限値変更コマンドを需要家サイト30に送信し、これを受けて、需要家サイト30は、現在の電流量上限値を元の電流量上限値に戻すようにしても良い。
【0068】
計測器320は、電力系統から供給される電力(商用電力)の使用量を計測し得る。計測器320は、計測された電力使用量を、無線データ通信回線を介して、例えば所定の時間間隔で、制御装置310に送信し、これにより、制御装置310は、通信ネットワーク40を介して、電力使用量を電力需給管理装置20に送信する。なお、計測器320は、電力需給管理装置20と直接的に通信する機能を備えても良い。電力使用量をデジタル的に計測し、通信機能を備えたスマートメーターは、計測器320の一態様である。
【0069】
電流量調整装置330は、需要家サイト30における電流上限値を調整する。本開示では、電流量調整装置330は、遮断器332を含み構成されるが、これに限られない。電流量調整装置330は、需要家サイト30における負荷装置による電力使用量に基づく電流値が電流上限値を超えると判断する場合、遮断器332を制御して、電力系統からの電流を遮断する。電流上限値は、通常時は、契約アンペアに等しいが、DR実施時には、DR電流上限値として設定される。
【0070】
例えば、電流量調整装置330は、制御装置310の制御の下、現在の電流上限値を電流量上限値変更コマンドによって示されたDR電流上限値に変更する。例えば、契約アンペアが60Aである需要家サイト30は、DR電流上限値45AのDR要請に対して許諾した場合、DRの実施に伴い、電流量調整装置330は、電流上限値を現在の60Aから45Aに変更する。電流量調整装置330は、負荷装置による現在の電力使用量に基づく電流値が現在の電流上限値45Aを超えると判断する場合、遮断器332を制御して、電流を遮断する。また、電流量調整装置330は、DRの終了日時になると、制御装置310の制御の下、現在の電流上限値(DR電流上限値)を元の契約アンペアが示す電流上限値に変更する。
【0071】
なお、本開示では、電流量調整装置330は、制御装置310とは別体として構成された例が示されるが、これに限られず、電流量調整装置330は、制御装置310の一部として構成されても良い。
【0072】
図7は、本発明の一実施形態に係る電力需給管理システムにおける情報通信端末装置の構成の一例を示すブロックダイアグラムである。情報通信端末装置340は、需要家サイト30の管理者がインタラクティブに操作するため端末装置として機能する。同図では、情報通信端末装置340の各種のコンポーネント(構成要素)のうち、本開示にとりわけ関連するコンポーネントが示され、他のコンポーネントについては、複雑化を回避するため、適宜に省略される。同図に示す例では、情報通信端末装置340は、制御部341と、記憶部342と、ユーザインターフェース部343と、通信部344とを含み構成されている。かかるコンポーネントは、ハードウェアコンポーネントそのもの、或いは、例えば、情報通信端末装置のプロセッサが、OS上でDRクライアントプログラムを実行することにより、各種のハードウェア資源と協働して、実現され得る。
【0073】
制御部341は、情報通信端末装置340を統括的に制御するためのコンポーネントであり、典型的には、情報通信端末装置340のプロセッサ並びにOS(例えば各種のデバイスドライバを含む。)及びDRクライアントプログラム等を含み構成される。言い換えれば、情報通信端末装置は、プロセッサがOS上でDRクライアントプログラムを実行することにより、情報通信端末装置340をDRクライアントアプリケーションとして機能させる。
【0074】
記憶部342は、各種のプログラム及びデータセットを記憶するコンポーネントであり、典型的には、情報通信端末装置340のプロセッサの利用に供されるメモリデバイスを含み構成される。一例として、記憶部342は、オペレーティングシステム、DRクライアントプログラム、及び需要家サイトプロファイルを記憶する。DRクライアントプログラムは、電力需給管理装置20が送信するDR要請通知に基づいて、管理者に許諾の可否を促すためのサブプログラムないしはモジュールを含み構成され得る。需要家サイトプロファイルは、需要家サイト30に関するデータないしは情報であり、例えば、需要家サイトIDや需要家サイトの属性情報、DRの許諾状況、現在の電流量上限値、及びその他のデータを含み得る。
【0075】
ユーザインターフェース部343は、管理者が、情報通信端末装置340をインタラクティブに操作することを可能にするコンポーネントであり、例えば、ディスプレイ及び位置入力機構が一体となったタッチパネルやスピーカーの入出力デバイスを含み構成され得る。一例として、管理者によるユーザインターフェース部343に対する所定の操作に応じて、ユーザインターフェース部343は、電力需給管理装置20からDR要請通知に対する許諾の可否を入力するための画面を表示する。他の例として、ユーザインターフェース部343は、需要家サイト30自身の現在の電力使用量を画面に表示する。
【0076】
通信部344は、通信ネットワーク40を介して、電力需給管理装置20や他の外部の装置との間で各種のデータを送受信するコンポーネントであり、典型的には、通信インターフェース回路ないしはチップセットを含み構成される。送信部及び/又は受信部は、通信部344の一態様である。
【0077】
上述のように構成される情報通信端末装置340は、DR要請通知を受信すると、ユーザインターフェース部343上に例えば
図8に示すようなDR要請通知画面800を表示して、管理者にDRの要請が届いている旨を知らせる。これに対して、管理者は、ユーザインターフェース部343を操作して、例えば
図9にDR要請許諾可否画面900を表示させる。DR要請許諾可否画面900には、例えば、DR実施日、開始時間、終了時間、削減要請電力量、及びインセンティブ等が示される。管理者は、このようなDR要請許諾可否画面900に対して、DRの要請に協力する(許諾)場合には、「はい」を選択し、DRの要請に協力しない(不許諾)場合には、「いいえ」を選択する。これにより、情報通信端末装置340は、電力需給管理装置20に許諾又は不許諾を示す許諾可否通知を送信する。
【0078】
なお、本例では、情報通信端末装置340は、DR要請通知の受信に従ってDR要請許諾可否画面900を表示させ、管理者に許諾の可否の入力を促すように構成されたが、これに限られず、管理者が予め許諾条件を設定しておき、該許諾条件を満たす場合は、DR要請の許諾を自動的に選択し、許諾可否通知を送信するように構成されても良い。
【0079】
管理者は、このような情報通信端末装置340に対して、例えば、DR要請通知に対する許諾の可否を入力する。他の例として、管理者は、ユーザインターフェース部343を操作して、需要家サイト30自身の現在の電力使用量を画面に表示させて、確認し得る。
【0080】
図10は、本発明の一実施形態に係る電力需給管理システムにおける全体処理の流れの一例を説明するためのシーケンスチャートである。
【0081】
同図を参照して、電力需給管理装置20が提供するDRによる電力需給計画への参加を可能にするために、需要家サイト30は、電力需給管理装置20とDR許諾契約を締結する(S1001)。かかる締結は、書面を介して行われても良いし、例えば、電子的閲覧により行われても良い。例えば、管理者は、情報通信端末装置340のユーザインターフェース部343を操作して、DRクライアントプログラムをダウンロードし、これを実行することにより、電力需給管理装置20にアクセスし、契約書面の電子閲覧により、DR許諾契約を締結し得る。これにより、電力需給管理装置20は、需要家サイト30をDR要請候補者として、データベース220に登録する。
【0082】
給電指令装置10は、電力系統における電力の需給バランスの予測に従い、DRの実施計画を策定すると(S1002)、削減要請総電力量を示すDR指令を電力需給管理装置20に送信する(S1003)。
【0083】
電力需給管理装置20は、DR指令を受信すると、削減要請総電力量を確保するために、データベース220を参照し、1又はそれ以上の需要家サイト30を抽出する(S1004)。電力需給管理装置20は、抽出された需要家サイト30に対するDRの要請のため、削減要請電力量を決定し(S1005)、各需要家サイト30にDR要請通知を送信する(S1006)。DR要請通知の送信は、登録されたメールアドレスを用いた情報通信端末装置340のメーラーへのプッシュ型送信でも良いし、或いは、DRクライアントアプリケーションに対するプッシュ型送信であっても良い。
【0084】
需要家サイト30(すなわち、情報通信端末装置340)は、DR要請通知を受信すると、許諾可否画面を表示し、管理者に該要請に対する許諾の可否の入力を促し、管理者は、許諾の可否を選択する(S1007)。これにより、情報通信端末装置340は、許諾可否通知を電力需給管理装置20に送信する(S1008)。
【0085】
電力需給管理装置20は、各需要家サイト30から許諾可否通知を受信すると、許諾した需要家サイト30による削減要請電力量を集計し、削減見込み電力量を算出する(S1009)。電力需給管理装置20は、削減要請総電力量以上の削減見込み電力量を確保することができた場合、需要家サイト30からの許諾可否通知の受付を停止し、許諾可否通知を未だ送信していない需要家サイト30に対してDR要請の受付が終了した旨の通知を送信する。
【0086】
続いて、電力需給管理装置20は、DRの実施計画に従いDRを実施し(S1010)、これにより、許諾した需要家サイト30に対して電流量上限値変更コマンドを送信する(S1010)。
【0087】
需要家サイト30は、電流量上限値変更コマンドを受信すると、受信した電流量上限値変更コマンドに基づいて、現在の電流量上限値をDR電流量上限値に変更し、DRを実現する(S1012)。また、需要家サイト30は、DRの終了時刻になると、現在の電流量上限値を元の電流量上限値(すなわち、契約アンペア)に戻す。或いは、DRの終了時刻になると、電力需給管理装置20は、変更された電流量上限値を契約アンペアに戻すための電流量上限値変更コマンドを需要家サイト30に送信し、これを受けて、需要家サイト30は、現在の電流量上限値を元の電流量上限値に戻すようにしても良い。
【0088】
図11A及び11Bは、本発明の一実施形態に係る電力需給管理装置のDR実行処理の一例を示すフローチャートである。同図に示す処理は、電力需給管理装置20のプロセッサが、DR管理プログラムを実行することにより、各種のハードウェアコンポーネントと協働して実現される。
【0089】
同
図Aに示すように、電力需給管理装置20は、給電指令装置10からDR指令を受信するまで待機している(S1101)。電力需給管理装置20は、給電指令装置10からDR指令を受信すると(S1101のYes)、需要家サイト抽出部231は、DR指令によって示される削減要請総電力量に基づいて、データベース220を参照し、DRの実施を効果的に実現し得る1又はそれ以上の需要家サイト30を抽出する(S1102)。
【0090】
次に、削減要請電力量決定部232は、抽出された各需要家サイト30に対する個別の削減要請電力量を決定する(S1103)。例えば、削減要請電力量決定部232は、データベース220を参照して、抽出された需要家サイト30の契約アンペアに従って、削減要請電力量を決定する。また、削減要請電力量決定部232は、抽出された需要家サイト30に対する削減要請電力量を示すDR要請リストを作成する。
【0091】
DR要請部233は、作成されたDR要請リストに従って、需要家サイト30ごとにDR要請通知を作成し、これを需要家サイト30の情報通信端末装置340に送信する(S1104)。これにより、管理者は、アグリゲーターからDRの協力要請があったことを知ることができる。情報通信端末装置340がDR要請通知を受信すると、管理者は、情報通信端末装置340のユーザインターフェース部343を操作して、該要請に対する許諾の可否を選択し、これにより、情報通信端末装置340は、許諾可否通知を電力需給管理装置20に送信する。
【0092】
電力需給管理装置20は、需要家サイト30からDRの要請に対する許諾可否通知を受信するまで待機する(S1105)。電力需給管理装置20は、需要家サイト30から許諾可否通知を受信すると(S1105のYes)、DR許諾集計部234は、該要請を許諾した需要家サイト30の削減要請電力量を集計し、現在の削減見込み電力量を算出する(S1106)。
【0093】
続いて、DR許諾集計部234は、算出された削減見込み電力量が削減要請総電力量以上であるか否か(達しているか否か)を判断する(S1107)。DR許諾集計部234は、算出された削減見込み電力量が削減要請総電力量以上でないと判断する場合には(S1107のNo)、その不足分を算出し(S1108)、需要家サイト抽出部231により他の需要家サイト30を更に抽出するために、S1102の処理に戻る。
【0094】
一方、DR許諾集計部234は、算出された削減見込み電力量が削減要請総電力量以上であると判断する場合には(S1107のYes)、許諾した需要家サイト30のDR要請に対する許諾の内容に基づいてDR実施リストを作成する(
図11BのS1109)、これにより、電力需給管理装置20は、DRの実施日まで待機する(S1110)。DR実施リストは、例えば、DR要請リストに対して許諾した需要家サイト30ごとのDR電流量上限値を含み得る。
【0095】
DR実施日になると、電流量上限値変更部235は、DR実施リストに従って、要請を許諾した需要家サイト30に対して電流量上限値の設定を遠隔的に制御するために、電流量上限値変更コマンドを送信する(S1111)。これにより、電流量上限値変更コマンドを受信した需要家サイト30は、現在の電流量上限値をDR電流量上限値に変更する。なお、DR電流量上限値で変更された電流量上限値は、DRの終了に伴い、元の契約アンペアである電流量上限値に変更される。
【0096】
以上のように、本実施形態によれば、給電指令装置10からのDR指令に基づき、電力需給管理装置20は、管轄する地域における需要家サイト30に対してDR要請通知を送信し、これに応答してDR要請を許諾した需要家サイト30にDR電流上限値を設定することにより、効率的かつ確実にDRの実施を実現することができる。とりわけ、本実施形態によれば、電力需給管理装置20は、データベース220に蓄積された電力使用情報に基づいて、DR実施日に電力使用量が大きいと予想される需要家サイト30を抽出しているので、DRの実施を効果的に実現し得るようになる。更に、本実施形態によれば、需要家サイト30の管理者(ユーザ)は、スマートフォンのような情報通信端末装置340を用いて、簡単な操作でDRの要請に対して許諾の可否を選択することができる。このことは、管理者からのレスポンス率を向上させ、より効率的かつ確実に削減要請総電力量を確保し易くなる。
【0097】
上記各実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな形態で実施することができる。
【0098】
例えば、上記実施形態では、電力需給管理システム1では、電力需給管理装置20が、デマンドレスポンスの要請に応じた需要家サイト30全体に対して電流量上限値を制限するように制御したが、これに限られず、需要家サイト30における所定の電気機器に対して電流量上限値を制限するように制御しても良い。例えば、HEMSとして構成される需要家サイト30の制御装置310は、電力需給管理装置20からの電流量上限値変更コマンドに従い、消費電力の大きい電子機器(例えばエアーコンディショナーやIH機器等)に対して、強制的な下げDRを実施し得る。更に、制御装置310は、電力需給管理装置20の制御の下、需要家サイト30蓄電池や太陽電池、コージェネレーションシステム等に上げDRを実施しても良い。
【0099】
また、本明細書に開示される方法においては、その結果に矛盾が生じない限り、ステップ、動作又は機能を並行して又は異なる順に実施しても良い。説明されたステップ、動作及び機能は、単なる例として提供されており、ステップ、動作及び機能のうちのいくつかは、発明の要旨を逸脱しない範囲で、省略でき、また、互いに結合させることで一つのものとしても良く、また、他のステップ、動作又は機能を追加しても良い。
【0100】
また、本明細書では、さまざまな実施形態が開示されているが、一の実施形態における特定のフィーチャ(技術的事項)を、適宜改良しながら、他の実施形態に追加し、又は該他の実施形態における特定のフィーチャと置換することができ、そのような形態も本発明の要旨に含まれる。
【符号の説明】
【0101】
1…電力需給管理システム1
10…給電指令装置
20…電力需給管理装置
210…通信部
220…データベース
230…デマンドレスポンス実行部
231…需要家サイト抽出部
232…削減要請電力量決定部
233…デマンドレスポンス要請部
234…デマンドレスポンス許諾集計部
235…電流量上限値変更部
30…需要家サイト
310…制御装置
320…計測器
330…電流量調整装置
332…遮断器
340…情報通信端末装置
341…制御部
342…記憶部
343…ユーザインターフェース部
344…通信部
40…通信ネットワーク