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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】サドルカバー
(51)【国際特許分類】
   B62J 1/20 20060101AFI20241213BHJP
【FI】
B62J1/20 A
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021021879
(22)【出願日】2021-02-15
(65)【公開番号】P2022124230
(43)【公開日】2022-08-25
【審査請求日】2023-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】595046713
【氏名又は名称】株式会社パールイズミ
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 充
【審査官】宇佐美 琴
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第034394(JP,Z1)
【文献】中国実用新案第206654127(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2011/0198903(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サドルの表面及びサドルレールが突設される裏面の一部を被覆するカバー本体と、
前記カバー本体の底面側に前記サドルの前記裏面を部分的に覆うように設けられる開口周縁部と、
前記開口周縁部の一部から他部に向け突出して設けられる複数の突出片と、を備え、
前記複数の突出片は、前記サドルの前記裏面と前記サドルレールとの間に形成されるレール裏空間に入り、前記開口周縁部の前記他部に対して着脱自在に止着され、前記サドルレールに対して前記サドルの進行方向及び幅方向へ圧接する複数の係止縁を有し
前記サドルレールは、幅方向に一対配置されて、前記一対のサドルレールの間に形成されるレール間隙を有し、
前記複数の突出片のうちの少なくとも1つは、前記レール間隙を通って前記レール裏空間に入り、前記複数の係止縁が前記一対のサドルレールに対してそれぞれ幅方向へ圧接するように配置され、
前記複数の突出片は、前記開口周縁部の幅方向一側部位から前記開口周縁部の進行方向後側部位に向け又は逆向きに突出形成される一側突出片と、前記開口周縁部の幅方向他側部位から前記開口周縁部の前記進行方向後側部位に向け又は逆向きに突出形成される他側突出片と、を有し、前記一側突出片及び前記他側突出片が、前記一対のサドルレールの幅方向へ開口する一対のレール開口を通って前記レール裏空間に入るように配置され、
前記複数の突出片は、前記開口周縁部の進行方向前側部位から前記一側突出片及び前記他側突出片に向け突出形成される先端側突出片を有し、前記先端側突出片が、前記レール間隙を通って前記レール裏空間に入るように配置されることを特徴とするサドルカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポーツ自転車などを含む自転車のサドルに被覆して用いられるサドルカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のサドルカバーとして、サドルに対するカバー本体の止具として、マジックファスナーが設けられた一対の係止帯を、カバー本体の環状袋部の略中央部に夫々が対向するように配設されたものがある(例えば、特許文献1参照)。
カバー本体の開ロ周縁部は、カバー本体の周縁を折り返して縫着することで環状袋部が形成され、環状袋部内に伸縮部材を配設することにより、開ロ周縁部が常時収縮するように形成されている。
サドルカバーの使用時は、カバー本体の開口周縁部に形成された環状袋部をサドルに被せてから、係止帯によってカバー本体をサドルに固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭58-54982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、自転車の中でもロードバイク,クロスバイク,マウンテンバイクなどのスポーツバイクは、一般的なシティサイクルに比べ漕ぎ易くて高速走行や長距離走行が可能となるように軽量構造になっている。このため、特にスポーツバイクに用いられるサドルカバーは、サドルに対して位置ズレしないものが要求されている。
しかし乍ら、特許文献1では、サドルの外表面に沿って被覆されたカバー本体の開口側を係止帯により広がらないように締め付け固定する構造であるため、乗り手の体重移動に伴って臀部とサドルの座面との間で位置ズレが発生し易い。
詳しく説明すると、特許文献1は、単にカバー本体でサドルを外側から全体的に包み込むだけの構造であるため、漕ぎ動作(ペダリング)で進行方向と交差する幅方向に体重移動した時には、係止帯で締め付けたカバー本体がサドルの座面に対して幅方向へ全体的に位置ズレしてしまう。また急激な制動動作(ブレーキング)で進行方向に体重移動した時には、係止帯で締め付けたカバー本体がサドルの座面に対して進行方向へ全体的に位置ズレしてしまった。
このようなサドルの座面に対する幅方向や進行方向への位置ズレは、乗り手の姿勢崩れを誘発し、効率の良い漕ぎ動作や急激な制動動作が行えず、臀部の痛みを生じることや、安定した高速走行や長距離走行を実現できないという問題があった。
さらに、特許文献1では、係止帯によりカバー本体の開口側を締め付け固定した状態でサドルの底面がシートポストを除いてほとんどが被覆されるため、サドルの底面に突設したサドルレールが露出せず、サドルバッグやテールライトやリフレクターなどの自転車アクセサリーの取り付けが困難であるという問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題を解決するために本発明に係るサドルカバーは、サドルの表面及びサドルレールが突設される裏面の一部を被覆するカバー本体と、前記カバー本体の底面側に前記サドルの前記裏面を部分的に覆うように設けられる開口周縁部と、前記開口周縁部の一部から他部に向け突出して設けられる複数の突出片と、を備え、前記複数の突出片は、前記サドルの前記裏面と前記サドルレールとの間に形成されるレール裏空間に入り、前記開口周縁部の前記他部に対して着脱自在に止着され、前記サドルレールに対して前記サドルの進行方向及び幅方向へ圧接する複数の係止縁を有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の実施形態に係るサドルカバーの全体構成を示す説明図であり、(a)がサドルに被覆した状態の底面図、(b)が同側面図である。
図2】同平面図である。
図3】サドルカバーのみの底面図であり、複数の突出片が開いた状態を示している。
図4】複数の突出片を閉じた状態のサドルカバーのみの底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
本発明の実施形態に係るサドルカバーAは、図1図4に示すように、スポーツ自転車(スポーツバイク)などを含む自転車のサドルSに対して着脱自在に被覆されるサドル用カバーである。
サドルSは、乗り手の臀部が接する表面S1と、サドルレールRが突出して設けられる裏面S2と、からなる。
サドルレールRは、サドルSの裏面S2からサドルSの厚み方向へ突出してサドルSの進行方向へ略平行に延びるように進行方向と交差する幅方向へ一対配置される。このため、サドルSの裏面S2とサドルレールRとの間には、レール裏空間Rsが形成される。一対のサドルレールRの間には、幅方向へ開口してレール裏空間Rsに通じるレール間隙Raが形成され、一対のサドルレールRには、幅方向へ開口してレール裏空間Rsに通じる一対のレール開口Rbがそれぞれ形成される。サドルレールRの形状は、その長手方向中間の横軸部R1と、横軸部R1の長手方向両側に形成される傾斜軸部R2と、を有する。横軸部R1は、サドルSの裏面S2と略平行に形成され、サドルクランプ(ヤグラ)Cを介してシートポストPが連結される。サドルクランプCの取り付け位置よりも進行方向後側の横軸部R1や後側の傾斜軸部R2は、サドルバッグ,テールライト(リアライト),リフレクター,カメラやボトルケース等のマウントなどの自転車アクセサリーBを取り付けるためのスペースとして有効利用されている。図示例では、自転車アクセサリーBとしてサドルバッグを取り付けた例を示している。
サドルSの具体例として図示例では、裏面S2から一対のサドルレールRのみが突設されるスポーツバイク用の軽量なサドルSを示している。
【0008】
詳しく説明すると、本発明の実施形態に係るサドルカバーAは、サドルSの表面S1及び裏面S2の一部を被覆するように設けられるカバー本体1と、カバー本体1の底面側にサドルSの裏面S2を部分的に覆うように設けられる開口周縁部2と、開口周縁部2の一部から他部に向け突出して設けられる複数の突出片3と、を主要な構成要素として備えている。
カバー本体1は、変形可能で所定の伸縮性を有し且つ通気性や耐久性に優れたシート材料で、サドルSの外形状に沿って少なくとも表面S1を覆うように形成される。
カバー本体1は、その平面側にサドルSの表面S1に沿って形成される座面1aを有する。カバー本体1の座面1aには、乗り手の臀部に対応した形状のクッション部1bが凹凸状に形成される。クッション部1bは、適度な反発性能を有するクッション材(図示しない)で構成されている。カバー本体1の座面1aにおいてサドルSの表面S1と厚み方向へ対向する内面1cは、サドルSの表面S1との摩擦抵抗が大きな滑り止め材料で構成されている。
さらに、カバー本体1は、その底面側に開口部1dを有する。
【0009】
カバー本体1の開口周縁部2は、開口部1dの周囲にサドルSの裏面S2の外周部と厚み方向へ対向して変形可能な環状に形成される。開口周縁部2は、その周方向へ複数に分割してサドルSの裏面S2の外周部位をそれぞれ部分的に覆う複数の被覆部とすることが好ましい。
開口周縁部2の具体例として図1図4に示される場合には、開口周縁部2が幅方向左右と進行方向前後に四分割され、四つの被覆部を形成している。詳しく説明すると、開口周縁部2(複数の被覆部)は、サドルSの裏面S2の幅方向一側部位と厚み方向へ対向する一側被覆部21と、裏面S2の幅方向他側部位と対向する他側被覆部22と、裏面S2の進行方向前側部位と対向する先端被覆部23と、裏面S2の進行方向後側部位と対向する末端被覆部24と、を有する。
つまり、カバー本体1の開口部1dは、複数の被覆部(一側被覆部21,他側被覆部22,先端被覆部23,末端被覆部24)で囲まれた中央部分に、サドルSのサイズよりも小さく形成される。このため、サドルSに対してカバー本体1を取り付ける時は、複数の被覆部(一側被覆部21,他側被覆部22,先端被覆部23,末端被覆部24)のいずれか一つ又は複数の変形で開口部1dを拡開させることにより、開口部1dからサドルSが挿入可能となるように構成されている。
【0010】
一側被覆部21は、開口周縁部2の幅方向一側部位に一対のレール開口Rbのいずれか一方に向けて面状に形成される。
他側被覆部22は、開口周縁部2の幅方向他側部位に一対のレール開口Rbの他方を向けて面状に形成される。
先端被覆部23は、開口周縁部2の進行方向前側部位にレール間隙Raを向けて面状に形成される。
末端被覆部24は、開口周縁部2の進行方向側部位に一対のサドルレールRやレール間隙Raを向けて面状に形成される。
さらに、一側被覆部21において進行方向前側の端縁(前端縁)21aは、図3に示されるように、先端被覆部23の進行方向後側の端縁(後端縁)23aと連続させている。一側被覆部21の後端縁21bは、図1(a)及び図3に示されるように、末端被覆部24の前側端縁24aと連続させている。他側被覆部22の前端縁22aは、図3に示されるように、先端被覆部23の進行方向後側の端縁(後端縁)23aと連続させている。他側被覆部22の後端縁22bは、図1(a)及び図3に示されるように、末端被覆部24の前側端縁24aと連続させている。
【0011】
複数の突出片3は、開口周縁部2となる複数の被覆部(一側被覆部21,他側被覆部22,先端被覆部23,末端被覆部24)の一部から他部に向け部分的に突出して形成され、複数の突出片3の変形で開閉自在に配置される。
複数の突出片3は、レール裏空間Rsに入るとともに、開口周縁部2の他部や異なる複数の突出片3に対して着脱自在に止着するように配置される。
複数の突出片3の具体例として図1図4に示される場合には、四つの被覆部のうち三つの被覆部(一側被覆部21,他側被覆部22,先端被覆部23)に三つの突出片3を形成している。つまり、複数の突出片3は、一側被覆部21に連続形成される一側突出片31と、他側被覆部22に連続形成される他側突出片32と、先端被覆部23に連続形成される先端側突出片33と、を有する。
図示例では、一側被覆部21の一側突出片31と、他側被覆部22の他側突出片32は、末端被覆部24に対して留め具でそれぞれ着脱自在に止着される。先端被覆部23の先端側突出片33は、一側被覆部21及び他側被覆部22や一側突出片31及び他側突出片32に対して留め具で着脱自在に止着されている。
また、その他の例として図示しないが、図示例と逆向きで、末端被覆部24から一側被覆部21や他側被覆部22に向けて突出形成した二つの突出片3を、一側被覆部21や他側被覆部22に対して留め具でそれぞれ着脱自在に止着することなどの変更も可能である。
【0012】
図示例の一側突出片31は、一側被覆部21から一対のレール開口Rbのいずれか一方を通ってレール裏空間Rsに入り、末端被覆部24に向けて突出形成される。一側突出片31の突出端には、レール間隙Raを通って末端被覆部24と厚み方向へ対向する一側止着面31aが連続形成される。
他側突出片32は、他側被覆部22から一対のレール開口Rbの他方を通ってレール裏空間Rsに入り、末端被覆部24に向けて突出形成される。他側突出片32の突出端には、レール間隙Raを通って末端被覆部24と厚み方向へ対向する他側止着面32aが連続形成される。
これにより、一側突出片31及び他側突出片32がレール間隙Raで厚み方向へ重なり合い、両者間には摩擦抵抗が生じる。
先端側突出片33は、先端被覆部23からレール間隙Raを通ってレール裏空間Rsに入り、一側被覆部21及び他側被覆部22や一側突出片31及び他側突出片32に向けて突出形成される。先端側突出片33の突出端には、レール裏空間Rsに配置される一側被覆部21及び他側被覆部22や一側突出片31及び他側突出片32と対向する先端側止着面33aが連続形成される。
さらに図示例では、先端側止着面33aのサイズをレール間隙Raの幅寸法よりも大きく設定して、一側突出片31及び他側突出片32に対する接合面積を広く確保している。
【0013】
一側止着面31a及び他側止着面32aと末端被覆部24の対向面には、留め具として一側留め具31b,他側留め具32bが設けられる。
先端側止着面33aと一側被覆部21や一側突出片31及び他側被覆部22や他側突出片32との対向面には、先端側留め具33bが設けられる。
一側留め具31b,他側留め具32b,先端側留め具33bは、マジックテープ(登録商標)やベルクロ(登録商標)ファスナーや面ファスナーなどと呼ばれる面状留め具、スナップボタンなどの点状留め具、スライドファスナーなどの線状留め具などのいずれか一つ又は複数の組み合わせで構成される。
一側留め具31b,他側留め具32b,先端側留め具33bの具体例として図1図4に示される場合には、面状留め具のみを用いている。
【0014】
さらに、複数の突出片3は、サドルSに対するカバー本体1の取り付け状態で、一対のサドルレールRに対して進行方向及び幅方向へ圧接する複数の係止縁3Lを有する。
複数の係止縁3Lの具体例として図1図4に示される場合には、三つの突出片3(一側突出片31,他側突出片32,先端側突出片33)のすべてが、一対のサドルレールRの傾斜軸部R2に各係止縁3Lを部分的に圧接させることにより、傾斜軸部R2に対して進行方向及び幅方向へ位置ズレ不能に係合させている。
図示例の一側突出片31は、その突出端(一側止着面31a)の近傍部位に、サドルSに対するカバー本体1の取り付け状態で、後側の傾斜軸部R2の一方に対し進行方向及び幅方向へ圧接して係合する第一係止縁31Lが形成される。
他側突出片32は、その突出端(他側止着面32a)の近傍部位に、サドルSに対するカバー本体1の取り付け状態で、後側の傾斜軸部R2の他方に対し進行方向及び幅方向へ圧接して係合する第二係止縁32Lが形成される。
先端側突出片33は、その全体又は一部の幅寸法をレール間隙Raと同等又はそれよりも太く形成することにより、サドルSに対するカバー本体1の取り付け状態で、前側の傾斜軸部R2の両方に対して進行方向及び幅方向へ圧接して係合する第三係止縁33Lが形成される。
【0015】
次に、サドルSに対するカバー本体1の取り付け方法について説明する。
先ず、図3に示される複数の突出片3(一側突出片31,他側突出片32,先端側突出片33)のすべてが開いた状態で、複数の被覆部(一側被覆部21,他側被覆部22,先端被覆部23,末端被覆部24)の変形により開口部1dが拡開し、サドルSを挿入する。
これに続いて、開口周縁部2の一部から突出した複数の突出片3(一側突出片31,他側突出片32,先端側突出片33)を順番に変形させ、図1(a)や図4に示されるように、それぞれの突出端(一側止着面31a,他側止着面32a,先端側止着面33a)を、開口周縁部2の他部や異なる複数の突出片3のいずれかに対し着脱自在に止着して閉じる。
図示例では、開口周縁部2の幅方向左右対向部位に配置された二つの突出片3(一側突出片31,他側突出片32)を順次変形し、一対のレール開口Rbに挿通してレール裏空間Rsに入れる。そして二つの突出端(一側止着面31a,他側止着面32a)を進行方向後側部位の被覆部(末端被覆部24)に対し着脱自在に接合して止着する。その後、残った突出端(先端側止着面33a)を異なる複数の突出片3(一側突出片31,他側突出片32)に対し着脱自在に接合して止着する。
これにより、一側突出片31の第一係止縁31Lと、他側突出片32の第二係止縁32Lが、一対のサドルレールRの後側傾斜軸部R2に進行方向及び幅方向へ圧接し係合して位置決めされる。これと同時に、先端側突出片33の第三係止縁33Lが、一対のサドルレールRの前側傾斜軸部R2に進行方向及び幅方向へ圧接し係合して位置決めされる。
【0016】
このような本発明の実施形態に係るサドルカバーAによると、サドルSの表面S1及び裏面S2の一部をカバー本体1が被覆した状態で、開口周縁部2の一部から突出した複数の突出片3が、レール裏空間Rsに入り、開口周縁部2の他部に対して着脱自在に止着される。
これと同時に、複数の突出片3の係止縁3Lが、サドルレールRに対して進行方向及び幅方向へ圧接することにより、複数の係止縁3Lを介して複数の突出片3がそれぞれ進行方向及び幅方向へ移動不能に位置決めされる。
さらに、サドルレールRにおいて少なくとも複数の突出片3がレール裏空間Rsに入ったレール部位は、複数の突出片3で覆われず露出している。
したがって、サドルレールRに対してカバー本体1を位置ズレ不能に固定し且つサドルレールRの露出領域を確保することができる。
その結果、カバー本体でサドルを外側から全体的に包み込む構造の従来のものに比べ、漕ぎ動作(ペダリング)で幅方向に体重移動した時や、急激な制動動作(ブレーキング)で進行方向に体重移動した時に、カバー本体1がサドルSに対して幅方向や進行方向に位置ズレしない。このため、乗り手の姿勢崩れを誘発せず、効率の良い漕ぎ動作や急激な制動動作を確実に行え、臀部の痛みを生じることや、安定した高速走行や長距離走行を実現できる。
さらに、係止帯によりカバー本体の開口側を締め付け固定した状態でサドルの底面がシートポストを除いてほとんどが被覆される従来のものに比べ、サドルレールRにおいてシートポストPの取り付け箇所以外にも十分に露出するため、サドルバッグ,テールライト(リアライト),リフレクター,カメラやボトルケース等のマウントなどの自転車アクセサリーBが取り付け可能になり、利便性に優れる。
【0017】
特に、サドルレールRは、幅方向に一対配置されて、一対のサドルレールRの間に形成されるレール間隙Raを有し、複数の突出片3は、レール間隙Raを通ってレール裏空間Rsを入り、複数の係止縁3Lを一対のサドルレールRに幅方向へ圧接させるように配置することが好ましい。
この場合には、複数の突出片3がレール間隙Raを通ってレール裏空間Rsに入ることで、複数の係止縁3Lが一対のサドルレールRに対して幅方向へ圧接するため、カバー本体1が幅方向へより強固に移動不能に位置決めされる。
したがって、サドルレールRに対するカバー本体1の幅方向位置ズレ防止機能を簡単な構造で向上させることができる。
その結果、漕ぎ動作(ペダリング)で幅方向に体重移動した時におけるカバー本体1の幅方向への位置ズレを軽量構造でより確実に防止できる。
【0018】
さらに、複数の突出片3は、開口周縁部2の幅方向一側部位(一側被覆部21)から開口周縁部2の進行方向後側部位(末端被覆部24)に向け又は逆向きに突出形成される一側突出片31と、開口周縁部2の幅方向他側部位(他側被覆部22)から開口周縁部2の進行方向後側部位(末端被覆部24)に向け又は逆向きに突出形成される他側突出片32と、を有し、一側突出片31及び他側突出片32が、一対のサドルレールRの幅方向へ開口する一対のレール開口Rbを通ってレール裏空間Rsに入るように配置することが好ましい。
この場合には、サドルレールRにサドルクランプCを介してシートポストPが連結されたサドルSの取り付け固定状態であっても、一側突出片31及び他側突出片32が一対のレール開口Rbを通りレール裏空間Rsに入って止着される。
したがって、取り付け固定状態のサドルSに対してカバー本体1を幅方向へ位置ズレ不能に被覆して固定することができる。
その結果、サドルSの取り付け固定状態のままでサドルクランプCやシートポストPが邪魔にならないため、カバー本体1の被覆及び取り外し作業が容易で利便性に優れる。
【0019】
また、複数の突出片3は、開口周縁部2の進行方向前側部位(先端被覆部23)から一側突出片31及び他側突出片32に向け突出形成される先端側突出片33を有し、先端側突出片33が、レール間隙Raを通ってレール裏空間Rsに入るように配置することが好ましい。
この場合には、サドルレールRにサドルクランプCを介してシートポストPが連結されたサドルSの取り付け固定状態であっても、先端側突出片33がレール間隙Raを通りレール裏空間Rsに入って止着される。
したがって、取り付け固定状態のサドルSに対してカバー本体1を進行方向へ位置ズレ不能に被覆して固定することができる。
その結果、サドルSの取り付け固定状態のままでサドルクランプCやシートポストPが邪魔にならないため、カバー本体1の被覆及び取り外し作業が容易で利便性に優れる。
【0020】
なお、前示の実施形態において図示例では、サドルSの裏面S2から一対のサドルレールRのみが突設されるスポーツバイク用の軽量なサドルSの場合を示したが、これに限定されず、一対のサドルレールRを有していればシティサイクルの一般的なサドルでもよい。この場合においても、前述した実施形態と同様な作用と利点が得られる。
さらに、開口周縁部2を幅方向左右と進行方向前後に四分割して四つの被覆部を形成したが、これに限定されず、開口周縁部2を二分割,三分割又は五分割以上に変更して二つ,三つ又は五つ以上の被覆部を形成してもよく、各被覆部の形状を図示例以外の形状に変更することも可能である。
また、四つの被覆部のうち三つの被覆部に三つの突出片3を形成したが、これに限定されず、二つ,四つ以上の突出片3を形成してもよく、各突出片3の形状を図示例以外の形状に変更することも可能である。
【符号の説明】
【0021】
A サドルカバー 1 カバー本体
2 開口周縁部 21 幅方向一側部位(一側被覆部)
22 幅方向他側部位(他側被覆部) 23 進行方向前側部位(先端被覆部)
24 進行方向後側部位(末端被覆部) 3 突出片
31 一側突出片 32 他側突出片
33 先端側突出片 3L 係止縁
S サドル S1 表面
S2 裏面 R サドルレール
Ra レール間隙 Rs レール裏空間
Rb レール開口
図1
図2
図3
図4