(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】サンプリングバッグ洗浄装置及びサンプリングバッグの洗浄方法
(51)【国際特許分類】
G01N 1/00 20060101AFI20241213BHJP
G01N 1/22 20060101ALI20241213BHJP
【FI】
G01N1/00 101X
G01N1/22 C
(21)【出願番号】P 2021025757
(22)【出願日】2021-02-20
【審査請求日】2024-01-30
(73)【特許権者】
【識別番号】512165293
【氏名又は名称】株式会社テクロム
(74)【代理人】
【識別番号】100145953
【氏名又は名称】真柴 俊一郎
(72)【発明者】
【氏名】服部 良平
【審査官】寺田 祥子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-142082(JP,A)
【文献】特開2016-166851(JP,A)
【文献】登録実用新案第3178212(JP,U)
【文献】登録実用新案第3208763(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00- 1/44
B01D 53/02-53/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄ガス供給手段と、前記洗浄ガス供給手段とサンプリングバッグとを接続する洗浄ガス供給チューブと、サンプリングバッグに接続され前記サンプリングバッグからガスを排出する排出チューブと、を有するサンプリングバッグ洗浄装置であって、
前記洗浄ガス供給チューブと前記排出チューブとが、前記洗浄ガス供給チューブを内管とし、前記排出チューブを外管とした二重管構造となっており、
外管である前記排出チューブに、その内部と外部とを連通する孔が開けられて
おり、
前記孔から排出されたガスに含まれる揮発性物質を吸着する吸着手段を有し、前記吸着手段が、前記孔を有する排出チューブの領域を取り囲むように設けられている、
ことを特徴とする前記サンプリングバッグ洗浄装置。
【請求項2】
前記吸着手段に、2以上の排出チューブが挿通されている、請求項
1に記載のサンプリングバッグ洗浄装置。
【請求項3】
洗浄ガス供給手段と、前記洗浄ガス供給手段とサンプリングバッグとを接続する洗浄ガス供給チューブと、サンプリングバッグに接続され前記サンプリングバッグからガスを排出する排出チューブと、を有するサンプリングバッグ洗浄装置であって、
前記洗浄ガス供給チューブと前記排出チューブとが、前記洗浄ガス供給チューブを内管とし、前記排出チューブを外管とした二重管構造となっており、
外管である前記排出チューブに、その内部と外部とを連通する孔が開けられており、
前記孔から排出されたガスに含まれる揮発性物質を吸着する吸着手段を有し、前記吸着手段が、前記孔を有する排出チューブの領域を取り囲むように設けられており、
前記排出チューブにエジェクターが接続されている、
ことを特徴とする前記サンプリングバッグ洗浄装置。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか1項に記載のサンプリングバッグの洗浄装置を用いた、サンプリングバッグの洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプリングバッグ洗浄装置及び当該装置を用いたサンプリングバッグの洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスを捕集してその成分を分析するために、サンプリングバッグが使用されている。サンプリングバッグは、自動車の内装材などの部品から放散される揮発性物質を捕集して検査するような特殊用途でも使用される(例えば、特許文献1)が、主には作業環境における揮発性物質等を含むガスを捕集して分析するために使用されている。
【0003】
一般的にこのようなサンプリングバッグは高価であり繰り返し使用できる事が望ましい。しかしながら、一度環境測定で使用されたサンプリングバッグ内部は、捕集されたガスに含まれる揮発性物質により汚染される恐れがある。さらに、測定対象によっては、サンプリングバッグの内部がより高濃度の揮発性物質により汚染される可能性もある。したがって、一度使用されたサンプリングバッグを再利用するためには、その内部を十分に洗浄しなければならない。
【0004】
環境測定用で使用されているサンプリングバッグは、自動車部品の揮発性物質を測定する際に使用されるサンプリングバッグの接続口の口径よりも小さい口径を有する接続口が設けられていることが一般的である。また、環境測定用のサンプリングバッグにおいて、2以上の接続口が設けられているものも存在するが、大半の環境測定用サンプリングバッグにおける接続口は1つのみである。したがって、自動車部品の揮発性物質を測定するサンプリングバッグを洗浄する技術、例えば特許文献1に開示された技術では、前記のような環境測定用のサンプリングバッグを洗浄することは一般的に困難である。
【0005】
さらに、環境測定を行う場合において、測定する環境によっては高濃度の揮発性物質を含むガスが環境測定用のサンプリングバッグ内にサンプリングされる。使用前のサンプリングバッグが含む揮発性物質の濃度はわずかである一方で、一般的に、環境測定におけるサンプルはこれよりもはるかに高濃度の揮発性物質を含み得る。特許文献1は吸引装置(ポンプ等)により、使用前のサンプリングバッグ内に供給されたガスを強制排気させる方法を開示している。しかしながら、環境測定のサンプルガスに含まれる高濃度の揮発性物質を吸引すると、ポンプ内部が汚染されるだけでなく、ポンプが故障する可能性もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の技術を用いては、一度使用された環境測定用のサンプリングバッグを十分に洗浄することが困難であった。また、従来の技術を用いては、一度使用された環境測定用のサンプリングバッグを洗浄する際に、洗浄に使用する機器の故障が発生するリスクがあった。したがって、このような問題が解決出来る技術が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記のような課題を解決するために本発明者が鋭意検討を重ねた結果、特定構造を有する装置及び当該装置を用いた洗浄方法により前記課題が解決出来ることを見いだし、本発明に至った。
すなわち本発明は、
[1]洗浄ガス供給手段と、前記洗浄ガス供給手段とサンプリングバッグとを接続する洗浄ガス供給チューブと、サンプリングバッグに接続され前記サンプリングバッグからガスを排出する排出チューブと、を有するサンプリングバッグ洗浄装置であって、
前記洗浄ガス供給チューブと前記排出チューブとが、前記洗浄ガス供給チューブを内管とし、前記排出チューブを外管とした二重管構造となっており、
外管である前記排出チューブに、その内部と外部とを連通する孔が開けられている、
ことを特徴とする前記サンプリングバッグ洗浄装置、
[2]前記孔から排出されたガスに含まれる揮発性物質を吸着する吸着手段を有する、[1]に記載のサンプリングバッグ洗浄装置、
[3]前記吸着手段が、前記孔を有する排出チューブの領域を取り囲むように設けられている、[2]に記載のサンプリングバッグ洗浄装置、
[4]前記吸着手段に、2以上の排出チューブが挿通されている、[3]に記載のサンプリングバッグ洗浄装置、
[5]洗浄ガス供給手段と、前記洗浄ガス供給手段とサンプリングバッグとを接続する洗浄ガス供給チューブと、サンプリングバッグに接続され前記サンプリングバッグからガスを排出する排出チューブと、を有するサンプリングバッグ洗浄装置であって、
前記排出チューブにエジェクターが接続されていることを特徴とする前記サンプリングバッグ洗浄装置、
[6]前記エジェクターがガスエジェクターである、[5]に記載のサンプリングバッグ洗浄装置、
[7]洗浄ガス供給手段と、前記洗浄ガス供給手段とサンプリングバッグとを接続する洗浄ガス供給チューブと、サンプリングバッグに接続され前記サンプリングバッグからガスを排出する排出チューブと、を有するサンプリングバッグ洗浄装置であって、
前記洗浄ガス供給チューブと前記排出チューブとが、前記洗浄ガス供給チューブを内管とし、前記排出チューブを外管とした二重管構造となっており、
外管である前記排出チューブに、その内部と外部とを連通する孔が開けられており、
前記排出チューブにエジェクターが接続されている、
ことを特徴とする前記サンプリングバッグ洗浄装置、並びに
[8][1]~[7]のいずれかに記載のサンプリングバッグの洗浄装置を用いた、サンプリングバッグの洗浄方法、
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、揮発性物質を捕集した後のサンプリングバッグを、再利用できる程度にまで容易に洗浄可能である。また、捕集された揮発性物質によって洗浄装置自身が著しく汚染され及び装置が故障する可能性をより抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】(A)第一形態における本発明のサンプリングバッグ洗浄装置の模式図及び(B)におけるA-B断面図である。
【
図2】サンプリングバッグ内における洗浄ガスの流れを説明する模式図である。
【
図4】(A)吸着手段を有するサンプリングバッグ洗浄装置の模式図、(B)吸着手段の拡大図及び(C)(B)におけるC-D断面図である。
【
図5】(A)
図4とは別の形態の吸着手段の模式図及び(B)(A)におけるE-F断面図である。
【
図6】(A)吸着手段を有する別の形態のサンプリングバッグ洗浄装置の模式図、(B)吸着手段の拡大図及び(C)(B)におけるG-H断面図である。
【
図7】(A)吸着手段に複数の排出チューブが挿通されている状態を示す模式図及び(B)(A)におけるI-J断面図である。
【
図8】第一形態のサンプリングバッグ洗浄装置の具体的な形態を説明する図面である。
【
図9】第一形態のサンプリングバッグ洗浄装置の具体的な構成を説明する模式図である。
【
図10】第二形態における本発明のサンプリングバッグ洗浄装置の模式図である。
【
図11】サイレンサーを有する第二形態のサンプリングバッグ洗浄装置の模式図である。
【
図12】(A)サイレンサーの周囲が吸着手段で覆われている第二形態のサンプリングバッグ洗浄装置の模式図及び(B)(A)におけるK-L断面図である。
【
図13】第二形態のサンプリングバッグ洗浄装置の具体的な形態を説明する図面である。
【
図14】第二形態のサンプリングバッグ洗浄装置の具体的な構成を説明する模式図である。
【
図15】第三形態のサンプリングバッグ洗浄装置の模式図である。
【
図16】第三形態のサンプリングバッグ洗浄装置の具体的な形態を説明する図面である。
【
図17】第三形態のサンプリングバッグ洗浄装置の具体的な構成を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。なお、本発明は、以下の実施形態そのままに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の技術的範囲内で種々の変更が可能であることは言うまでもない。また、文中における「上下」、「前後」及び「左右」は、説明に対応する各図面に記載の方向を意味する。
【0012】
1.第一形態
本発明のサンプリングバッグ洗浄装置1の一形態が、
図1(A)に示されている。サンプリングバッグ洗浄装置1は、洗浄ガス供給手段2と、前記洗浄ガス供給手段2とサンプリングバッグXとを接続する洗浄ガス供給チューブ3と、サンプリングバッグXに接続され前記サンプリングバッグXからガスを排出する排出チューブ4と、を有するサンプリングバッグ洗浄装置1であって、
前記洗浄ガス供給チューブ3と前記排出チューブ4とが、前記洗浄ガス供給チューブ3を内管とし、前記排出チューブを外管4とした二重管構造となっており、
外管である前記排出チューブ4に、その内部と外部とを連通する孔41が少なくとも1つ開けられている洗浄装置である。
【0013】
前記洗浄ガス供給手段2は、サンプリングバッグXに洗浄ガスを供給する。洗浄ガス供給手段2は、このような洗浄ガスを貯蔵・供給するためのボンベ等のガス供給源、ポンプ等の動力源及び洗浄ガスの供給量を制御するためのマスフローコントローラー等の制御装置等を含んで良い。
【0014】
洗浄ガス供給チューブ3は、前記洗浄ガス供給手段2と、サンプリングバッグXとを、接続口X1を介して接続するチューブである。前記洗浄ガスは、洗浄ガス供給手段2から洗浄ガス供給チューブ3を介してサンプリングバッグX内に供給される。洗浄ガス供給チューブ3は、例えば、フッ素樹脂等の可撓性を有する円管状に成形したチューブであることが好ましい。洗浄ガス供給チューブ3の外径は、サンプリングバッグXの接続口X1を介してサンプリングバッグXの内部に挿入できる程度の大きさであることが好ましい。洗浄ガス供給チューブ3の具体的な外径は、例えば、1~3mm、好ましくは1~2mm、より好ましくは1~1.6mmである。洗浄ガス供給チューブ3の外径を前記数値範囲とすることにより、サンプリングバッグ、例えば環境測定用のサンプリングバッグの接続口を介した洗浄ガス供給チューブ3のサンプリングバッグXへの挿入をよりスムーズに行うことができる。洗浄ガス供給チューブ3の具体的な内径は、例えば、0.5~2.5mm、好ましくは0.5~1.5mm、より好ましくは0.5~1mmである。洗浄ガス供給チューブ3の内径を前記数値範囲とすることにより、当該チューブを介した洗浄ガスの供給量を確保できる。
【0015】
排出チューブ4は、前記サンプリングバッグXの接続口X1に接続され、サンプリングバッグX内のガスをサンプリングバッグX外に排出するためのチューブである。排出チューブ4は、例えば、フッ素樹脂等の可撓性を有する円管状に成形したチューブであることが好ましい。排出チューブ4の外径は、特に制限されない。排出チューブ4の内径は、洗浄ガス供給チューブ3を内包して二重管にすることができ、かつ、排出チューブ4の内壁と洗浄ガス供給チューブ3の外壁とで形成される空間(
図1(B)における空間S)にてサンプリングバッグX内から排出されるガスを通過させることができる程度の大きさであることを条件として、特に制限されない。排出チューブ4の具体的な内径は、例えば、2~8mm、好ましくは2~4mm、より好ましくは2~3mmである。内径を前記数値範囲とすることにより、サンプリングバッグXの接続口X1との接続をスムーズに行うことができ、かつ、サンプリングバッグXからのガスの排出を過度に妨げることがなくなる。
【0016】
排出チューブ4には、その内部と外部とを連通する孔41が少なくとも1つ開けられている。後述するように、前記孔41を介してサンプリングバッグX内のガスが排出チューブ4の外部に排出される。孔41の数は、1つでも良いし、2以上開けられても良い。排出チューブ4における孔41の位置は特に制限されない。なお、排出チューブ4における孔41の位置をサンプリングバッグXの接続口X1から離すことにより、後述する吸着手段6の接続又は吸着手段6による排出チューブ4の取り囲みをより容易に行える。孔41の大きさも、サンプリングバッグX内からのガスの排出を過度に妨げないことを条件として、特に制限されない。孔41の大きさとして、例えば、孔41を平面方向から見た際の面積が、3~8mm2、好ましくは4~6mm2、より好ましくは3~4mm2である。孔41の大きさを前記数値範囲とすることにより、排出チューブ4からのガスの排出をより効率よく行える。
【0017】
前記の通り、洗浄ガス供給チューブ3と排出チューブ4とが、前記洗浄ガス供給チューブ3を内管とし、前記排出チューブ4を外管とした二重管構造となっている(
図1(B)参照)。このような二重管構造とすることにより、接続口X1を一つしか有していないサンプリングバッグXであっても、より高い効率で洗浄できる。後述のように、サンプリングバッグX内のガスは、排出チューブ4の内壁と洗浄ガス供給チューブ3の外壁とで形成された空間(
図1(B)における空間S)を流れて孔41を介して排出チューブ4の外部に排出される。したがって、洗浄ガス供給チューブ3の外径と、排出チューブ4の内径との比率を、例えば、外径:内径で1:2、好ましくは1:3、より好ましくは1:4にすることが好ましい。外径と内径の比率を前記数値範囲内とすることにより、洗浄ガスの供給とサンプリングバッグXからのガスの排出をよりバランス良く行うことができる。なお、二重管構造は、洗浄ガス供給チューブ3全体が排出チューブ4との二重管構造となっていても良いし、
図1(A)に示すように洗浄ガス供給チューブ3の一部が排出チューブ4との二重管構造となっていても良い。なお、
図1において洗浄ガス供給チューブ3と排出チューブ4の二重管が1組のみ記載されているが、必要に応じて、例えば2以上のサンプリングバッグを一度に洗浄する場合には、2組以上の二重管を備えても良い。
【0018】
排出チューブ4の接続口X1と接続される側とは反対側の端部に、洗浄ガス供給チューブ3を通しつつ排出チューブ4に蓋をするための円環構造のキャップ42を備えることが好ましい。このようなキャップ42として、例えば、ゴム等の弾性材料からなるOリング及びシリコンチューブ等が使用できる。洗浄ガス供給チューブ3は、前記キャップ42の内周に通してあって、洗浄ガス供給チューブ3の外周がキャップ42に弾性的に接している。したがって、洗浄ガス供給チューブ3をサンプリングバッグXの接続口X1に沿ってスライドさせるときには、この弾接による抵抗を受け、不用意に洗浄ガス供給チューブ3がスライド移動してしまうことを防ぐことができる。また、キャップ42により、排出ガスが主として孔41から排出されるようにできる。
【0019】
前記サンプリングバッグ洗浄装置1を用いたサンプリングバッグXの洗浄方法を説明する。洗浄対象となるサンプリングバッグの種類に特に制限はないが、本発明においては、環境測定用のサンプリングバッグ、とりわけ使用後のサンプリングバッグを好適に洗浄可能である。前述の通り、サンプリングバッグXの接続口X1には、シリコンチューブやゴム管等の接続手段を用いて排出チューブ4が接続されている。例えば、
図1の例においては、シリコンチューブの一方の孔にサンプリングバッグXの接続口X1が差し込まれ、もう一方の孔に排出チューブ4が差し込まれることにより、サンプリングバッグXと排出チューブ4とが接続されている。洗浄ガス供給手段2に接続された洗浄ガス供給チューブ3が、排出チューブ4の内部を通り、接続口X1を介してサンプリングバッグXの内部に挿入されている。洗浄ガス供給チューブ3は、キャップ42でスライドさせることによって、チューブ長手方向に移動させることができる。したがって、排出チューブ4から洗浄ガス供給チューブ3が突出してサンプリングバッグX内部に入り込む長さを容易に調節することができる。調節する長さは、サンプリングバッグXの接続口X1から、矩形に形成されるサンプリングバッグXの接続口X1から最も遠い角の端部までの距離にほぼ合うようにするのが望ましいが、通常は洗浄ガス供給チューブ3の先端がサンプリングバッグXの中央部付近あるいはそれより奥にまで差し込まれる長さに調節すれば十分である。つまり、洗浄ガス供給チューブ3は、その先端がサンプリングバッグXの少なくとも中央部に位置する長さで排出チューブ4から突出するようにすればよい。このように各種の大きさのサンプリングバッグXにおいて接続口X1から最も遠い角の端部までの距離にほぼ合うよう長さ調節ができるように、洗浄ガス供給チューブ3はそれ自体が十分な長さを有するものが用いられ、使用する最も大きなサンプリングバッグXの対角線よりも長い寸法に洗浄ガス供給チューブ3を用いることが好ましい。
【0020】
洗浄ガス供給手段2から洗浄ガス供給チューブ3を介して洗浄ガスが供給される。洗浄ガスとしては、大気中の空気などを用いることも可能であるが、揮発性有機化合物(VOC)などの不純物を含まない精製ガス、例えば99.999%以上に高純度な窒素ガスや空気を用いることが好ましい。洗浄ガスは洗浄ガス供給チューブ3の先端からサンプリングバッグX内に吹き込まれる。洗浄ガス供給チューブ3の先端はサンプリングバッグX内に深く差し込まれているので、洗浄ガスはサンプリングバッグXの接続口X1から遠く離れた箇所に吹き込まれる。このようにサンプリングバッグX内の奥深くに洗浄ガス供給チューブ3の先端から洗浄ガスが吹き込まれると、洗浄ガスはサンプリングバッグXの端部へ送られてサンプリングバッグXの端部が膨らみ、次に接続口X1の側へ向かって膨らむ部分が広がるようにサンプリングバッグX内を流れる。すなわち
図2に点線矢印で示すように、洗浄ガスはサンプリングバッグXの奥の端部から接続口X1の方向に向かってサンプリングバッグX内の全域を流れる。そしてサンプリングバッグXの容量を超える量の洗浄ガスが吹き込まれると、容量を超える分の洗浄ガスは接続口X1から排出チューブ4に流れ出し、排出チューブ4に開けられた孔41を通して排気される。洗浄ガス供給チューブ3を介した洗浄ガスの供給を連続的に行うことにより排出チューブ4の孔41を介したガスの排出が連続的に行われ、これにより洗浄ガスによるサンプリングバッグXの洗浄を連続的に行うことができる。
【0021】
洗浄時間は、サンプリングバッグXの容量及び洗浄ガスの流量などに応じて適宜調整可能である。例えば容量が10LのサンプリングバッグXの場合、洗浄ガスの流量を500mL/minに設定して洗浄を行なうときには、洗浄ガスを1.5~2.5時間程度サンプリングバッグ1内に通すことによって洗浄を完了することができる。さらに、サンプリングバッグ1に供給する洗浄ガスの流量は、サンプリングバッグXの容量に応じて適宜調整可能である。
【0022】
本発明のサンプリングバッグ洗浄装置1は、上記のような構成を有することにより、洗浄ガスの充填及び排出という操作を繰り返して行なうような必要はなく、サンプリングバッグX内に洗浄ガスを連続的に供給するという簡便な操作だけで、高濃度の揮発性物質で汚染されたサンプリングバッグであったとしても、効率よく再利用可能な状態にまで洗浄可能である。また、孔41から排出される揮発性物質の量をモニタリングすることにより、洗浄作業を終了させるタイミングをより容易に確認できる。さらに、接続口が1つしかないサンプリングバッグであっても、効率よく洗浄できる。
【0023】
排出チューブ4には、排出チューブ4を開閉する及び/又は開閉の方向を制御する弁5を使用しても良い。
図3は、弁5を含んだ洗浄ガス供給チューブ3と排出チューブ4の構成の一例を示している。
図3において、キャップ42で閉じられ上下方向に伸びた排出チューブ4の間に、三方弁5が挿入されている。三方弁の右側には、強制排出チューブ43が接続されている。強制排出チューブ43は、ポンプ等の排気手段に接続されている。洗浄ガスを供給し、サンプリングバッグXを洗浄する際には、三方弁5の強制排出チューブ43が接続されている側が閉じられており、サンプリングバッグXから排出されたガスは孔41を介して外部に排出される。サンプリングバッグXの洗浄が終了し、サンプリングバッグX内からガスを強制排出する際には、三方弁5の強制排出チューブ43が接続されている側を開けて、強制排出チューブ43と排出チューブ4とを連通させ、強制排出チューブ43に接続されたポンプ等を駆動させる。なお、強制排出チューブ43からの吸引速度を上げることにより、孔41の圧力損失の影響をできるだけ低くして、サンプリングバッグXからのガスの排出を行うことができる。前記吸引速度は、孔41の大きさ等にしたがい適宜調整可能である。このような構成を有することにより、サンプリングバッグXの洗浄を終了した後にサンプリングバッグXを強制的にしぼませることにより、洗浄作業終了後の処理をより迅速に行うことができる。
【0024】
本発明のサンプリングバッグ洗浄装置1は、前記孔41から排出されたガスに含まれる揮発性物質を吸着する吸着手段を有してもよい。
図4は、このような吸着手段6を備えたサンプリングバッグ洗浄装置1の具体例を示している。
図4(A)~(C)に示すように、吸着手段6は、内部が空洞の容体61及び前記容体61に開けられた排出口62を含み、容体61の内部には、揮発性物質を吸着する吸着剤63が含まれている。吸着剤63としては、例えば、活性炭、ゼオライト及びモレキュラシーブ等が使用可能である。前記容体61の素材、形状及び大きさに特に制限はなく、内部に収容される吸着剤の種類、量、排出ガスに含まれる揮発性物質の種類等により適宜変更可能である。前記吸着手段6は、孔41と連通するように接続されたチューブ64を介して、排出チューブ4と接続されている。なお、チューブ64と容体61とが接する箇所においてOリング65が備えられている。チューブ64は、Oリング65の内周に通してあって、チューブ64の外周がOリング65に弾性的に接している。Oリング65によって、容体61とチューブ64との隙間からガスが過剰に漏れないようになっている。
【0025】
前記のように洗浄ガスによってサンプリングバッグXから追い出されたガスが、孔41及びチューブ64を介して吸着手段6に送られる。前記ガスに含まれた揮発性物質は、吸着手段6内に充填された吸着剤63により吸着され、揮発性物質が除かれ又はその濃度が減少したガスが、排出口62を介して外部に放出される。このような構成を有することにより、高濃度の揮発性物質により汚染されたサンプリングバッグを洗浄する場合であっても、洗浄する作業環境を過度に汚染することなくより安全に作業可能である。
【0026】
前記のように吸着手段6の内部に吸着剤63を充填しても良いし、吸着剤を充填せずに排出口62に吸着フィルターを備えてもよい。
図5は、吸着手段6の排出口62に吸着フィルター66を備えた形態を示している。
図5(A)に示すように、吸着手段6の排出口62に吸着フィルター66を備え、さらに、排出口とは別の孔を開けた上でその孔に吸気ファン67を備えても良い。吸気ファン67を駆動させることで吸着手段6の容体61内部に外気が供給される。供給された外気により、チューブ64を介して容体61内に排出された排出ガスが、排出口62へと押し出される。排出口62には吸着フィルター66が備えられており、排出ガスに含まれる揮発性物質は吸着フィルター66により吸着され、揮発性物質が除去又はその濃度が減少したガスが吸着手段6外へと排出される。吸着フィルター66に含まれる吸着物質に特に制限はなく、前記のような吸着材が好適に使用できる。
図5のように吸着フィルター66を使用することにより、吸着材63を容体61内部に充填した場合と比較してメンテナンスがより容易となる。なお、吸気ファンの代わりに又はこれと併せて、排出口62に吸着フィルターを備えた排気ファンを備えることも可能である。
【0027】
吸着手段6を備える場合の別形態として、
図6(A)に示すように、吸着手段6が、孔41を有する排出チューブ4の領域を取り囲むように設けられても良い。
図6(B)は、吸着手段6で囲まれた排出チューブ4の一部を拡大した図面である。
図6(B)に示すように、排出チューブ4が吸着手段6の容体61を貫通しており、孔41を有する部分及びその周辺の領域が吸着手段6の内部に収容されている。なお、排出チューブ4と吸着手段6の外壁が接触する部分にはOリング65、65が備えられている。排出チューブ4は、Oリング65、65の内周に通してあって、排出チューブ4の外周がOリング65、65に弾性的に接している。Oリング65、65により、容体61と排出チューブ4との隙間からガスが過剰に漏れないようにされている。吸着手段6の内部には、吸着剤63が充填されており、前記吸着剤63が吸着手段6の内部に貫入された排出チューブ4の周囲を囲んでいる。孔41から排出されたガスに揮発性物質が含まれている場合、排出チューブ4の周囲を囲む吸着剤により揮発性物質が吸着され、揮発性物質が除かれ又はその濃度が減少したガスが、排出口62を介して外部に放出される。排出チューブ4と前記のような吸着手段6とを併用することにより、チューブ64を使用する必要がなくなるため、サンプリングバッグ洗浄装置の構成をより簡略化させ、装置をよりコンパクトにできる。
【0028】
また、吸着手段6に2以上の排出チューブ4を挿通しても良い。
図7は、
図5に示す吸着手段6に2以上の排出チューブ4を挿通した形態を示している。
図7(A)に示すように、2以上の排出チューブ4が、吸着手段6の容体61に挿通されている。各排出チューブ4における孔41を含む領域は、吸着手段6の容体61の内部に収容されている。吸着手段6には、吸気ファン67及び排出口62に備えられた吸着フィルター66が備えられている。このような形態とすることにより、一度に洗浄できるサンプリングバッグの数を大幅に増加できる。具体的には、例えば、
図7の例では、吸着手段6に挿通された6本の排出チューブ4の数に対応する数のサンプリングバッグを一度に洗浄できる。サンプリングバッグ洗浄装置1において
図7のような吸着手段6の数を増やすことにより、更に多くのサンプリングバッグを一度に洗浄できる。また、
図7のような形態とすることにより、2以上の排出チューブ4から排出されるガスに含まれる揮発性物質を、単一の吸着手段6により回収できるため、洗浄装置の構造をよりシンプルにでき、洗浄装置のサイズをより小さくすることができる。
【0029】
図8は、第一形態のサンプリングバッグ洗浄装置1のより具体的な形態を示している。11はサンプリングバッグ洗浄装置1の筐体であり、内部にメイン配管、開閉弁、制御部などが組み込まれており、メイン配管にはガスボンベなどが接続できるようになっている。筐体11には、後述する制御部に含まれる、スタートスイッチ121、ストップスイッチ122及びタイマー123等が備えられている。
【0030】
図9は、本発明のサンプリングバッグ洗浄装置のより具体的な構成を示す図面である。なお、
図9において説明の便宜上洗浄ガス供給チューブ3と排出チューブ4とが個別のチューブとして示されているが、実際には洗浄ガス供給チューブ3と排出チューブ4とは
図1に示すように二重管構造となっている。具体的には、排出チューブ4における弁5が設けられている箇所まで洗浄ガス供給チューブ3と排出チューブ4が二重管構造である。メイン配管13が、外部に備えられたガスボンベ(図示せず)等の洗浄ガス供給手段2に接続されている。メイン配管13には開閉弁14及び圧力計15が備えられている。メイン配管13に洗浄ガス供給チューブ3が接続されており、洗浄ガス供給チューブ3は、前述の通りサンプリングバッグX内に挿入されている。
【0031】
排出チューブ4は筐体11の内部に挿入されており、孔41を含む部分も筐体11の内部に挿入されている。排出チューブ4には、必要に応じて吸着手段6及び弁5が備えられている。弁5には強制排出チューブ43が接続されており、強制排出チューブ43には積算流量計16及びポンプ等の吸引装置17が接続されている。弁5を「閉」にし、メイン配管13の開閉弁14を「開」とすることにより、洗浄ガスがサンプリングバッグXに供給される。前述の通り、洗浄ガスの供給量がサンプリングバッグXの容量を超えた場合には、超えた分の容量が排出チューブ4に流れ込み、排出チューブ4に開けられた孔41から排出される。
図9においては、排出チューブ4における孔41を含む領域が吸着手段6により取り囲まれており、孔41から排出されたガスに含まれる揮発性物質が吸着手段6により吸着され、揮発性物質が除去され又はその濃度が減少した後のガスが装置外に排出される。
【0032】
サンプリングバッグXの洗浄終了後、サンプリングバッグXからガスを強制的に排出する場合には、開閉弁14を「閉」にして弁5を「開」にし、吸引装置17を駆動させ、外部にガスを排出させる。積算流量計16により、サンプリングバッグXの容量に対応する量のガスが吸引された場合には、吸引装置17を停止する。筐体11の内部に制御部12が備えられている。制御部12には、スタートスイッチ121、ストップスイッチ122及びタイマー123等が設けられている。開閉弁14、圧力計15、弁5、積算流量計16及び吸引装置17は制御部12に接続されている。洗浄ガス供給チューブ3への洗浄ガスの供給量及び強制排出チューブ43からの排出量等が制御部12により制御される。また、制御部12を操作することにより、例えば、前記タイマー123を操作して洗浄時間を設定し、開閉弁14を設定時間に閉じるようにして、前記洗浄操作を自動で制御可能である。
【0033】
2.第二形態
本発明のサンプリングバッグ洗浄装置1の別形態が、
図10に示されている。本形態のサンプリングバッグ洗浄装置1は、洗浄ガス供給手段2と、前記洗浄ガス供給手段2とサンプリングバッグXとを接続する洗浄ガス供給チューブ3と、サンプリングバッグXに接続され前記サンプリングバッグXからガスを排出する排出チューブ4と、を有するサンプリングバッグ洗浄装置1であって、
前記排出チューブ4にエジェクター7が接続されている洗浄装置である。第二形態において、洗浄ガス供給手段2は、特に説明しない限り、第一形態と同様である。また、洗浄ガス供給チューブ3及び排出チューブ4は、特に説明しない限り、これらが二重管構造になっていないことを除き第一形態と同様である。
【0034】
図10の例において、洗浄ガス供給チューブ3がサンプリングバッグXの接続口X1に接続されており、排出チューブ4がサンプリングバッグXの接続口X2に接続されている。接続口X1はOリング31でキャップされており、洗浄ガス供給チューブ3はOリング31の内周に通してあり、洗浄ガス供給チューブ3の外周がOリング31に弾性的に接している。したがって、洗浄ガス供給チューブ3を接続口X1に沿ってスライドさせるときには、この弾接による抵抗を受けることとなり、不用意に洗浄ガス供給チューブ3がスライド移動することを防止できる。また、Oリング31により、接続口X1からガスの過剰な漏出を防止できる。排出チューブ4には、接続口X2に接続された側とは反対側の端部に、エジェクター7の吸込口71が接続されている。前記エジェクター7の一次側72及び二次側73にはそれぞれチューブ74及び75が接続されている。チューブ74の一次側72に接続された側とは反対側の端部に、ポンプ又はガスボンベ等の流体供給手段76が接続されている。前記エジェクター7は、一次側72から二次側73に向けて流体を供給することで吸込口71からガスを吸い込むことができるものであれば特に制限なく使用できる。例えば、SMC社製の型番ZH07DLAを好適に使用可能である。
【0035】
洗浄ガス供給手段2から洗浄ガス供給チューブ3を介して洗浄ガスが供給される。洗浄ガスは洗浄ガス供給チューブ3の先端からサンプリングバッグX内に吹き込まれる。サンプリングバッグX内に供給されたガスを強制的に排出したい場合には、流体供給手段76を駆動させ、液体又は気体である流体を一次側72から二次側73へと流すことにより吸込口71に吸引圧力を発生させる。サンプリングバッグX内のガスは、排出チューブ4を介してエジェクター7の吸込口71に吸い込まれ、流体と共に二次側73及びチューブ75を介してサンプリングバッグX外に排出される。このようなエジェクター7を使用することにより、サンプリングバッグX内に高濃度の揮発性物質が含まれている場合であってもエジェクター7が過度に汚染されることはないため、ポンプを使用した場合と比較して汚染又は破損の可能性をより抑えることができる。また、ポンプ等の機械機構を使用した場合と比較して、エジェクター7はサンプリングバッグ洗浄装置1内に占める専有面積が狭く、サンプリングバッグ洗浄装置をより小型化可能である。なお、
図10において洗浄ガス供給チューブ3、排出チューブ4及びエジェクター7が1組のみ記載されているが、必要に応じて、例えば2以上のサンプリングバッグを一度に洗浄する場合には、これらを2組以上備えても良い。
【0036】
第二形態のサンプリングバッグ洗浄装置1を用いたサンプリングバッグXの洗浄は以下のように行われる。洗浄ガス供給手段2から洗浄ガス供給チューブ3を介して洗浄ガスが供給される。洗浄ガスは洗浄ガス供給チューブ3の先端からサンプリングバッグX内に吹き込まれる。洗浄ガス供給チューブ3の先端はサンプリングバッグX内に深く差し込まれているので、洗浄ガスはサンプリングバッグXの接続口X1から遠く離れた箇所に吹き込まれる。サンプリングバッグXに十分な量の洗浄ガス、言い換えればサンプリングバッグXが破裂しない程度にサンプリングバッグXを膨らませる程度の量が供給された後、洗浄ガスの供給をストップさせる。供給をストップさせた後、直ちに又は所定の時間(例えば、1~数分)を空けた後、エジェクター7に流体を供給して吸引圧力を発生させ、エジェクター7の吸引口71を介してサンプリングバッグX内のガスを吸引させる。吸引圧力は、サンプリングバッグXの容量等に合わせて適宜調整可能である。サンプリングバッグ内に供給された洗浄ガスを除去した後、必要に応じて、再度洗浄ガスを供給して前記操作を繰り返す。このような操作を繰り返すことにより、バッチ式の洗浄方法により、サンプリングバッグXの内部をより清浄な状態に洗浄できる。
【0037】
なお、前記エジェクター7を使用する場合において、流体は気体を使用することがより好ましい。したがって、エジェクター7としてガスエジェクターを使用することがより好ましい。流体として液体を使用する場合には、サンプリングバッグXに含まれている揮発性物質を含んだ液体が二次側73から排出されるためこのように排出された液体を貯蔵するタンク等が必要となる。一方で、流体として気体を使用することによりこのようなタンク等貯蔵容器が必要なくなるため、サンプリングバッグ洗浄装置1をより小型化可能となる。また、流体供給源としてガスボンベを使用する場合にはガスボンベの圧力を利用して流体を供給でき、ポンプ等の機械機構を使用することなく流体の供給が可能となるため、サンプリングバッグ洗浄装置をより小型化できる。なお、前記気体として、例えば、空気が使用可能である。洗浄ガスを流体として使用することも可能である。
【0038】
また、エジェクター7としてガスエジェクターを使用する場合、エジェクターのガス排出側、即ちエジェクター7の二次側73にサイレンサー8を接続して良い。
図11は、
図10のサンプリングバッグ洗浄装置1におけるチューブ75にサイレンサー8を接続した形態を図示している。このようなサイレンサー8を接続することにより、エジェクター7からガスが排出される際に発生する騒音を抑えることができる。このようなサイレンサー8は、ガスエジェクターの騒音を抑えられるものであれば特に制限なく使用可能である。このようなサイレンサー8として、例えば、SMC株式会社製の樹脂製サイレンサーANシリーズが挙げられる。
【0039】
また、エジェクター7の二次側73に吸着手段9を備えても良い。このような吸着手段9を備えることにより、二次側73から流体と共に排出された揮発性物質を吸着して、揮発性物質を除去又はその濃度を減少させて装置外部にガスを排出でき、作業環境を過度に汚染することなくより安全に作業可能である。吸着手段9は、前記吸着手段6と同様の構成を有するものが使用可能である。また、前記のようなサイレンサー8を使用する場合においては、前記サイレンサー8を吸着手段9により覆うことがより好ましい。例えば、
図12に示すように、サイレンサー8を、吸着剤93を含む内部が空洞の容体91を含む吸着手段9の内部に収容しても良い。吸着手段9は、前記吸着手段6と同様の構成の物が特に制限なく使用できる。サイレンサー8から排出されたガスに含まれる揮発性物質が吸着手段9内の吸着剤93により吸着され、揮発性物質が除去され又はその濃度が抑えられたガスが排出口92から排出される。
【0040】
図13は、第二形態のサンプリングバッグ洗浄装置1のより具体的な形態を示している。11はサンプリングバッグ洗浄装置1の筐体であり、内部にメイン配管、開閉弁、制御部などが組み込まれており、ガス配管にはガスボンベなどが接続できるようになっている。筐体11には、後述する制御部12に含まれる、スタートスイッチ121、ストップスイッチ122、タイマー123及びタイマー124等が備えられている。
【0041】
図14は、第二形態のサンプリングバッグ洗浄装置1の具体的な構成を示す図面である。メイン配管13が、外部に備えられたガスボンベ(図示せず)等の洗浄ガス供給手段2に接続されている。メイン配管13には、開閉弁143及び圧力計153が接続されている。メイン配管13は、途中で洗浄ガス供給配管131と流体供給配管132に分かれており、これら配管には開閉弁141、圧力計151及び積算流量計161並びに開閉弁142及び圧力計152が備えられている。洗浄ガス供給配管131に洗浄ガス供給チューブ3が接続されており、洗浄ガス供給チューブ3は、前述の通り接続口X1を介してサンプリングバッグX内に挿入されている。
【0042】
流体供給配管132はエジェクター7の一次側72に接続されており、二次側73にチューブ75が接続されている。チューブ75には積算流量計162及び吸着手段9が接続されている。排出チューブ4はエジェクター7の吸込口71に接続されている。
【0043】
開閉弁141、142及び143、圧力計151、152及び153並びに積算流量計161及び162は制御部12に接続されており、洗浄ガス供給配管131及び流体供給配管132へのガスの供給量並びにエジェクター7を用いたガスの排出量が制御される。制御部12には、スタートスイッチ121、ストップスイッチ122、タイマー123及びタイマー124等が設けられている。制御部12を操作することにより、例えば、前記タイマー123及びタイマー124を操作して洗浄時間を設定し、開閉弁141及び142を設定時間に開閉するようにして、前記洗浄操作を自動で制御可能である。
【0044】
メイン配管13の開閉弁143が開いた状態で、洗浄ガス供給配管131の開閉弁141が「開」、流体供給配管132の開閉弁142が「閉」となるように開閉制御されると、洗浄ガス供給チューブ3から洗浄ガスがサンプリングバッグXに供給される。次に、開閉弁141が「閉」、開閉弁142が「開」となるように開閉制御されるとエジェクター7に流体が供給される。従って、洗浄ガス供給チューブ3からサンプリングバッグXへの洗浄ガスの供給が停止されると共に、サンプリングバッグX内の洗浄ガスは、サンプリングバッグX内に含まれる揮発性物質と共にエジェクター7による吸引力で吸引され、チューブ75及び吸着手段9を通して装置外に排出される。このようにサンプリングバッグX内の洗浄ガスを吸引して強制的に排出することができるので、サンプリングバッグXが大容量のものであっても、短時間で洗浄ガスをサンプリングバッグXから排出できる。
【0045】
サンプリングバッグX内の洗浄ガスが全量排出されると開閉弁142が「閉」となりエジェクター7の作動は停止するが、この停止の制御は積算流量計162から制御部12に出力される信号に応答してなされる。すなわち、サンプリングバッグXから排出される洗浄ガスの量は積算流量計162によって計測されるが、排出ガスがチューブ75を通過する量を積算流量計162で計測して積算し、積算量がサンプリングバッグXの容量に達した時点でエジェクター7を停止させるように制御される。
【0046】
3.第三形態
本発明のサンプリングバッグ洗浄装置1の第三形態は、第一形態と第二形態とを組み合わせた形態である。即ち、第三形態は、洗浄ガス供給手段2と、前記洗浄ガス供給手段2とサンプリングバッグXとを接続する洗浄ガス供給チューブ3と、サンプリングバッグXに接続され前記サンプリングバッグXからガスを排出する排出チューブ4と、を有するサンプリングバッグ洗浄装置1であって、
前記洗浄ガス供給チューブ3と前記排出チューブ4とが、前記洗浄ガス供給チューブ3を内管とし、前記排出チューブ4を外管とした二重管構造となっており、
外管である前記排出チューブ4に、その内部と外部とを連通する孔41が少なくとも1つ開けられており、
前記排出チューブ4にエジェクター7が接続されている、
ことを特徴とする前記サンプリングバッグ洗浄装置である。
【0047】
第三形態のサンプリングバッグ洗浄装置1の具体的な構成が、
図15に示されている。第三形態におけるサンプリングバッグXは、接続口X1が一つのみ設けられている。洗浄ガス供給手段2、洗浄ガス供給チューブ3、排出チューブ4及びエジェクター7は、特に説明しない限り、第一形態及び第二形態と同様である。第三形態においては、接続口を1つだけ有するサンプリングバッグであっても、洗浄ガスを連続的に供給して洗浄可能である。また、エジェクター7によりサンプリングバッグXからガスを強制的に除去しても、エジェクター7が破損等する可能性が低いため、繰り返し使用可能である。なお、2組以上の二重管を備えて良いこと、弁5を含んで良いこと、吸着手段6を設けて良いこと、エジェクター7としてガスエジェクターを使用して良いこと、2組以上のエジェクターを備えて良いこと、エジェクター7にサイレンサー8を設けて良いこと、並びに吸着手段9を備えて良いこと等は、第一形態及び第二形態と同様である。
【0048】
第三形態のサンプリングバッグ洗浄装置が前記のような構成を有することにより、高濃度の揮発性物質により汚染されたサンプリングバッグを洗浄する場合であっても、洗浄する作業環境を過度に汚染することなくより安全に作業可能である。また、サンプリングバッグX内に高濃度の揮発性物質が含まれている場合であってもエジェクター7が過度に汚染されることはないため、ポンプを使用した場合と比較して破損する可能性をより抑えることができる。さらに、ポンプ等の機械機構を使用した場合と比較して、エジェクター7はサンプリングバッグ洗浄装置1内に占める専有面積が狭く、サンプリングバッグ洗浄装置をより小型化可能である。加えて、単一の装置により、連続式の洗浄及びバッチ式の洗浄を容易に切り替えることができるため、使用するサンプリングバッグの種類、サンプリングバッグに含まれる揮発性物質の種類及びその濃度に応じて、洗浄条件を極めて容易に変更可能である。
【0049】
図16は、第三形態のサンプリングバッグ洗浄装置1のより具体的な形態を示している。11はサンプリングバッグ洗浄装置1の筐体であり、内部にメイン配管、開閉弁、制御部などが組み込まれており、ガス配管にはガスボンベなどが接続できるようになっている。筐体11には、後述する制御部12に含まれる、スタートスイッチ121、ストップスイッチ122、タイマー123及びタイマー124等が備えられている。
【0050】
図17は、第三形態のサンプリングバッグ洗浄装置1の具体的な構成を示す図面である。なお、
図17において説明の便宜上洗浄ガス供給チューブ3と排出チューブ4とが個別のチューブとして示されているが、実際には洗浄ガス供給チューブ3と排出チューブ4とは
図15に示すように二重管構造となっている。具体的には、排出チューブ4における弁5が設けられている箇所まで洗浄ガス供給チューブ3と排出チューブ4が二重管構造である。メイン配管13が、外部に備えられたガスボンベ(図示せず)等の洗浄ガス供給手段2に接続されている。メイン配管13には、開閉弁143及び圧力計153が接続されている。メイン配管13は、途中で洗浄ガス供給配管131と流体供給配管132に分かれており、これら配管には開閉弁141、圧力計151及び積算流量計161並びに開閉弁142及び圧力計152が備えられている。洗浄ガス供給配管131に洗浄ガス供給チューブ3が接続されており、洗浄ガス供給チューブ3は、前述の通り接続口X1を介してサンプリングバッグX内に挿入されている。
【0051】
流体供給配管132はエジェクターの一次側72に接続されており、二次側73にチューブ75が接続されている。チューブ75には積算流量計162及び吸着手段9が接続されている。排出チューブ4には、弁5が備えられている。弁5には強制排出チューブ43が接続されており、前記強制排出チューブ43がエジェクター7の吸込口71に接続されている。吸着手段6が、孔41を含む排出チューブ4の領域を取り囲んでいる。
【0052】
弁5、開閉弁141、142及び143、圧力計151、152及び153並びに積算流量計161及び162は制御部12に接続されており、洗浄ガス供給配管131及び流体供給配管132へのガスの供給量並びにエジェクター7を用いたガスの排出量が制御される。制御部12には、スタートスイッチ121、ストップスイッチ122、タイマー123及びタイマー124等が設けられている。制御部12を操作することにより、例えば、前記タイマー123及びタイマー124を操作して洗浄時間を設定し、開閉弁141及び142を設定時間に開閉するようにして、前記洗浄操作を自動で制御可能である。
【0053】
メイン配管13の開閉弁143が開いた状態で、洗浄ガス供給配管131の開閉弁141が「開」、弁5が「閉」、流体供給配管132の開閉弁142が「閉」となるように開閉制御されると、洗浄ガス供給チューブ3から洗浄ガスがサンプリングバッグXに供給される。サンプリングバッグXの容量を超えた洗浄ガスが供給された場合、容量を超えた分のガスは排出チューブ4、孔41及び吸着手段6を介して装置外に排出される。吸着手段6により排出されるガスに含まれる揮発性物質が除去又はその濃度が減少するため、作業環境を過度に汚染する恐れが抑えられる。
【0054】
次に、メイン配管13の開閉弁143が開いた状態で、開閉弁141が「閉」、弁5が「開」、開閉弁142が「開」となるように開閉制御されるとエジェクター7に流体が供給される。従って、洗浄ガス供給チューブ3からサンプリングバッグXへの洗浄ガスの供給が停止されると共に、サンプリングバッグX内の洗浄ガスは、サンプリングバッグ内に含まれる揮発性物質と共にエジェクター7による吸引力で吸引され、チューブ75及び吸着手段9を通して装置外に排出される。このようにサンプリングバッグX内の洗浄ガスを吸引して強制的に排出することができるので、サンプリングバッグXが大容量のものであっても、洗浄ガスを短時間で排出できる。連続式の洗浄を行う場合には、前記操作によりサンプリングバッグをしぼませることができる。バッチ式の洗浄を行う場合には、洗浄ガスの供給と前記排出操作を繰り返せばよい。
【0055】
サンプリングバッグX内の洗浄ガスが全量排出されると開閉弁142が「閉」となりエジェクター7の作動は停止されるが、この停止の制御は積算流量計162から制御部12に出力される信号に応答してなされる。すなわち、サンプリングバッグXから排出される洗浄ガスの量は積算流量計162によって計測されるが、洗浄ガスがチューブ75を通過する量を積算流量計162で計測して積算し、積算量がサンプリングバッグXの容量に達した時点でエジェクター7を停止させるように制御される。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明のサンプリングバッグ洗浄装置及び洗浄方法により、環境測定で使用したサンプリングバッグをより容易に再利用可能な程度にまで洗浄可能である。したがって、高価なサンプリングバッグを頻繁に購入する必要がなくなるため、環境測定のコストを削減し、環境測定をより手軽に安価に行えるようになる。
【符号の説明】
【0057】
1:サンプリングバッグ洗浄装置、11:筐体、12:制御部、121 :スタートスイッチ、122:ストップスイッチ、123:タイマー、124:タイマー、13:メイン配管、131:洗浄ガス供給配管、132:流体供給配管、14:開閉弁 、15:圧力計、16:積算流量計、17:吸引装置
2:洗浄ガス供給手段
3:洗浄ガス供給チューブ、31:Oリング
4:排出チューブ、41:孔、42:キャップ、43:強制排出チューブ、
5:弁
6:吸着手段、61:容体、62:排出口、63:吸着剤、64:チューブ、65:Oリング、66:吸着フィルター、67:吸気ファン
7:エジェクター、71:吸込口、72:一次側、73:二次側、74 :チューブ、75:チューブ、76:流体供給手段
8:サイレンサー
9:吸着手段、91:容体、92:排出口、93:吸着剤
X:サンプリングバッグ、X1:接続口、X2:接続口