(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】1,2,4-オキサジアゾール誘導体の固体製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/5355 20060101AFI20241213BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20241213BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20241213BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241213BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20241213BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20241213BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20241213BHJP
A61P 27/06 20060101ALI20241213BHJP
A61P 27/12 20060101ALI20241213BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20241213BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20241213BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20241213BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20241213BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20241213BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20241213BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20241213BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20241213BHJP
A61P 25/08 20060101ALI20241213BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20241213BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20241213BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20241213BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20241213BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20241213BHJP
【FI】
A61K31/5355
A61K9/14
A61P25/14
A61P43/00 111
A61P3/10
A61P3/04
A61P27/02
A61P27/06
A61P27/12
A61P13/12
A61P9/00
A61P9/10
A61P9/12
A61P21/00
A61P25/16
A61P25/28
A61P25/00
A61P25/08
A61P25/18
A61P25/24
A61P25/04
A61K47/12
A61K47/22
(21)【出願番号】P 2022503476
(86)(22)【出願日】2020-07-17
(86)【国際出願番号】 EP2020070307
(87)【国際公開番号】W WO2021009355
(87)【国際公開日】2021-01-21
【審査請求日】2023-07-11
(32)【優先日】2019-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】522022720
【氏名又は名称】アバクシス セラピューティクス
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ウッターズ,ジョアン
(72)【発明者】
【氏名】マンブール,カリーナ
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア-ラドナ,フランシスコ ハビエル
【審査官】石井 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0031347(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61P 1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
約75%~約100(w/w)%の、
式(
A)の1,2,4-オキサジアゾール誘導
体
【化1】
ならびに
クエン酸および/またはサッカリン
を含む固体製剤であって、
前記固体製剤におけるクエン酸および/またはサッカリンの総量
の、前記1,2,4-オキサジアゾール誘導体の量
に対するモル比が、約2~約20の範囲にある、
固体製剤。
【請求項2】
式(A)の1,2,4-オキサジアゾール誘導体
【化2】
を、
クエン酸および/またはサッカリンと
混合することにより入手可能な固体製剤であって、
クエン酸および/またはサッカリンの総量
の、前記1,2,4-オキサジアゾール誘導体の量
に対するモル比が、約2~約20の範囲にあり、
前記固体製剤が、約75(w/w)%~約100(w/w)%の範囲の1,2,4-オキサジアゾール誘導体ならびにクエン酸および/またはサッカリンの総量を含む、
固体製剤。
【請求項3】
前記モル比が、約2~約10の範囲にある、請求項1
または請求項2に記載の固体製剤。
【請求項4】
前記モル比が、約2~約5の範囲にある、請求項
3に記載の固体製剤。
【請求項5】
前記モル比が約2である、請求項
4に記載の固体製剤。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか1項に記載の固体組成物を製造するためのプロセスであって、
式(A)の
前記1,2,4-オキサジアゾール誘導体を、クエン酸および/またはサッカリンと混合するステップを含み、
クエン酸および/またはサッカリンの総量
の、前記1,2,4-オキサジアゾール誘導体の量
に対するモル比が、約2~約2
0の範囲にある、
プロセス。
【請求項7】
式(A)の1,2,4-オキサジアゾール誘導体
【化3】
の物理的安定性を増大させるための方法であって、
前記1,2,4-オキサジアゾール誘導体を、クエン酸および/またはサッカリンと混合するステップを含み、
クエン酸および/またはサッカリンの総量
の、前記1,2,4-オキサジアゾール誘導体の量
に対するモル比が、約2~約2
0の範囲にあり、
前記混合するステップの間に溶媒が存在しない、
方法。
【請求項8】
前記モル比が、約2~約10の範囲にある、請求項6に記載のプロセスまたは請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記モル比が、約2~約5の範囲にある、請求項8に記載のプロセスまたは方法。
【請求項10】
前記モル比が約2である、請求項9に記載のプロセスまたは方法。
【請求項11】
前記混合が、撹拌および/または粉砕である、請求項
6に記載のプロセスまたは請求項
7に記載の方法。
【請求項12】
請求項1~
5のいずれか1項に記載の固体製剤と、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項13】
前記少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤が、クエン酸およびサッカリンを含まない、請求項
12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
GLP-1受容体が関与または介在する疾患の処置および/または予防に使用するための
、請求項
12または請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記疾患が、
代謝障
害;
代謝障害により誘導されるかまたは代謝障害に関連する疾
患;
心血管疾
患;
神経変性疾
患;および
神経性疾患または精神神経性疾
患
から選択される、
請求項14に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項16】
前記疾患が、
糖尿病または肥満;
糖尿病性ニューロパチー、糖尿病性網膜症、緑内障、白内障、糖尿病性腎症、または糖尿病性足部潰瘍;
冠動脈疾患、脳卒中、心不全、高血圧性心疾患、または先天性心疾患;
アルツハイマー病、パーキンソン病、多系統萎縮症、ハンチントン病、視神経変性および運動障害、神経筋疾患、または認知欠乏症;ならびに
てんかん、統合失調症、双極性障害、うつ、または疼痛
から選択される、請求項15に記載の使用のための医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クエン酸および/またはサッカリンを伴う、2つのみの単環式第3級アミン基を含む1,2,4-オキサジアゾール誘導体の固体製剤に関する。
【0002】
また本発明は、本発明に係る固体組成物を製造するためのプロセスであって、2つのみの単環式第3級アミン基を含む1,2,4-オキサジアゾール誘導体を、クエン酸および/またはサッカリンと混合するステップを含む、プロセス、ならびに上記プロセスから入手可能な固体製剤に関する。
【0003】
また本発明は、2つのみの単環式第3級アミン基を含む1,2,4-オキサジアゾール誘導体の物理的安定性を増大させるための方法であって、1,2,4-オキサジアゾール誘導体をクエン酸および/またはサッカリンと混合するステップを含む、方法に関する。
【背景技術】
【0004】
心血管代謝疾患は、世界中で最も一般的な死因である。これらは、がんおよび慢性呼吸疾患の前の全死因の32%を占めており、1億人超の人々に影響する。これは、2005年の1750万人の死亡と比較して、2030年には2500万人超の死亡をもたらすことが予測されている。米国では、4人の成年のうち1人が罹患し、欧州では成年の15%が罹患していると推定されている。
【0005】
蔓延している心血管代謝障害は、2型糖尿病または非インスリン依存性糖尿病である。この糖尿病は、糖尿病患者の約90%に及ぶため、最も一般的な形態である。この疾患は、全ての年齢群に影響するが、その頻度は年齢と共に増大する。たとえば、この疾患の発症率は、米国の65歳超およびフランスの75歳超で25%である。世界的な基準では、成年の糖尿病の発症率は、1980年の4.7%から、2015年の8.5%まで増大している。糖尿病に直接関連する死亡率は、160万人の死亡/年と推定されている。さらに、近年の研究は、糖尿病が、症例の60%において、高血圧、過体重、さらには肥満および脂質代謝異常などの多くの他の心血管代謝リスクの出現に関連していることを示している。よって、2型糖尿病の処置のための探索は、依然として今日まで主要な課題であり続けている。
【0006】
GLP-1ペプチド受容体が、心血管疾患、および糖尿病、肥満、または食欲不振症などの摂食障害に関連していることが知られている。さらに、GLP-1受容体はまた、脳障害、特にアルツハイマー病、パーキンソン病などの神経変性障害、統合失調症および気分障害などの精神障害に直接および間接的に関連している。よって、国際特許公開公報第2012/101292号の特許出願(VIVIABIOTECH SL)は、糖尿病の処置に有益であり得る、GLP-1受容体が関与または介在する疾患を予防および/または処置するための1,2,4-オキサジアゾール誘導体を開示している。
【0007】
しかしながら、開示された1,2,4-オキサジアゾール誘導体は、油または潮解性の固体の形態で存在するため、幅広い医学的な使用にとって簡便ではない。油または潮解性の固体は、特に均質かつ安定した液体または粉末と比較して、操作(移動、混合、洗浄)に関してもクオリティコントロール(たとえばインライン自動化分析)に関しても簡便ではないため、このような物理的形態は、これら有効成分に由来する薬物の産業上の製造プロセスとっての著しい限定である。有効成分の製造とそれを含む医薬組成物のさらなる製造との間での保存もまた、油または潮解性の固体ではより困難となる。
【0008】
よって、より簡便な物理的形態で国際特許公開公報第2012/101292号に開示される1,2,4-オキサジアゾール誘導体を得ることが好適である。
【0009】
本出願人は、1,2,4-オキサジアゾール誘導体の物理的安定性の技術的な問題を解決するために綿密な研究を行った。特に、1,2,4-オキサジアゾール誘導体の分子内構造を安定化させる必要があり得るモノまたはジ付加塩を製造するために、1,2,4-オキサジアゾール誘導体の第3級アミン官能基の存在を利用しようとした。残念なことに、有機酸または無機酸を、1,2,4-オキサジアゾール誘導体と接触させることは、多くの場合、(以下の比較例に示されるように)別の粘着性(sicky)の油または迅速な潮解をもたらす吸湿性の固体をもたらす。よって、1,2,4-オキサジアゾール誘導体の物理的に安定した付加塩は、容易に形成できないと思われていた。
【0010】
しかしながら驚くべきことに、本出願人は、固体製剤が、クエン酸および/またはサッカリンを、2つの単環式第3級アミン基を含む1,2,4-オキサジアゾール誘導体と混合することにより得られ得ること、ならびにそれにより製剤された固体製剤が、予想を超えて経時的に物理的に安定し続けることを見出した。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、
約75(w/w)%~約100(w/w)%の
少なくとも1つの式(I)の1,2,4-オキサジアゾール誘導体:
【化1】
(式中、
R
1、R
2、R
3、R
4、およびR
5は、それぞれ独立して、水素、C
1-C
3アルキル、C
1-C
3ハロアルキル、C
1-C
3アルコキシ、およびC
1-C
3チオアルキルから選択される)、ならびに
クエン酸および/またはサッカリン
を含む固体製剤であって、
クエン酸および/またはサッカリンの総量と1,2,4-オキサジアゾール誘導体の量との間の前記固体製剤におけるモル比が、約2~約20の範囲にある、
固体製剤に関する。
【0012】
また本発明は、本明細書中上記に定義される少なくとも1つの1,2,4-オキサジアゾール誘導体を、クエン酸および/またはサッカリンと混合することにより入手可能な固体製剤であって、クエン酸および/またはサッカリンの総量と1,2,4-オキサジアゾール誘導体の量との間の最初のモル比が、約2~約20の範囲にあり、固体製剤が、約75(w/w)%~約100(w/w)%の範囲の、1,2,4-オキサジアゾール誘導体ならびにクエン酸および/またはサッカリンの総量を含む、
固体製剤に関する。
【0013】
一実施形態では、R1、R2、R4、およびR5は、水素であり、R3は、C1-C3ハロアルキル、好ましくはC1-C3フルオロアルキルである。
【0014】
一実施形態では、1,2,4-オキサジアゾール誘導体は、式(A):
【化2】
の化合物である。
【0015】
一実施形態では、モル比は、約2~約10の範囲にある。一実施形態では、モル比は、約2~約5の範囲にある。1つの特定の実施形態では、モル比は、約2である。
【0016】
また本発明は、本発明に係る固体組成物を製造するためのプロセスであって、本明細書中上記に定義される少なくとも1つの1,2,4-オキサジアゾール誘導体を、クエン酸および/またはサッカリンと混合するステップを含み、クエン酸および/またはサッカリンの総量と1,2,4-オキサジアゾール誘導体の量との間の最初のモル比が、約2~約20の範囲、好ましくは約2~約5の範囲にある、プロセスに関する。
【0017】
また本発明は、本明細書中上記に定義される少なくとも1つの1,2,4-オキサジアゾール誘導体の物理的安定性を増大させるための方法であって、1,2,4-オキサジアゾール誘導体を、クエン酸および/またはサッカリンと混合するステップを含み、クエン酸および/またはサッカリンの総量と1,2,4-オキサジアゾール誘導体の量との間の最初のモル比が、約2~約20の範囲、好ましくは約2~約5の範囲にあり、混合ステップの間、溶媒が存在しない、方法に関する。一実施形態では、混合は、撹拌および/または粉砕である。
【0018】
また本発明は、本発明に係る固体製剤と、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物に関する。一実施形態では、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤は、クエン酸およびサッカリンを含まない、また本発明は、医薬として使用するための、本発明に係る固体製剤または本発明に係る医薬組成物に関する。
【0019】
また本発明は、GLP-1受容体が関与または介在する疾患の処置および/または予防に使用するための、本発明に係る固体製剤または本発明に係る医薬組成物に関する。一実施形態では、この疾患は、
代謝障害、たとえば糖尿病または肥満;
代謝障害により誘導されるかまたは代謝障害に関連する疾患、たとえば糖尿病性ニューロパチー、糖尿病性網膜症、緑内障、白内障、糖尿病性腎症、または糖尿病性足部潰瘍;
心血管疾患、たとえば冠動脈疾患、脳卒中、心不全、高血圧性心疾患、または先天性心疾患;
神経変性疾患、たとえばアルツハイマー病、パーキンソン病、多系統萎縮症、ハンチントン病、視神経変性、および運動障害、神経筋疾患、または認知欠乏症;ならびに
神経性疾患または精神神経性疾患、たとえばてんかん、統合失調症、双極性障害、うつ、または疼痛
から選択される。
【0020】
定義
本発明では、以下の用語は、以下の意味を有する。
【0021】
数字に先行する「約」は、この数値の±10%を意味する。
【0022】
「アルコキシ」は、式-O-アルキルの基を表す。
【0023】
「アルキル」は、1~12個の炭素原子、好ましくは1~6個の炭素原子、より好ましくは1~3個の炭素原子を有するいずれかの飽和型の直鎖状または分枝状の炭化水素鎖を表す。アルキル基の例として、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、ペンチルおよびそのアイソマー(たとえばn-ペンチルもしくはi-ペンチル)、またはヘキシルおよびそのアイソマー(たとえばn-ヘキシルもしくはi-ヘキシル)がある。好ましくは、アルキルは、エチルまたはメチル、より好ましくはメチルである。
【0024】
「アミン」は、-NH2(一級アミン)、-NHR(第二級アミン)、または-NRR’(第三級アミン)の官能基を含む基を表す(式中RおよびR’は、それぞれ水素とは異なる。好ましくは、RおよびR’は、独立して、アルキル基である)。アミンは、直鎖状または分枝型、脂環式または環式(単環式または多環式)であり得る。
【0025】
「潮解」は、固体が、吸収した液体に溶解して溶液を形成するまで、周囲湿度(空気に存在するH2O)を吸収するプロセスを表す。潮解は、吸収により形成される溶液の蒸気圧が空気中の水蒸気の分圧よりも低い場合に起こる。空気から溶解点まで水分を吸収する物質は、「潮解性」と呼ばれる。空気から水分を吸収するが、かならずしも溶解点までは水分を吸収しない物質は、「吸湿性」と呼ばれる。
【0026】
「ハロアルキル」は、少なくとも1つの水素原子がフッ化物、塩化物、臭化物、およびヨウ素から選択されるハロゲン原子により置き換えられている、本明細書中上記に定義されるアルキル基を表す。好ましくは、ハロアルキル中の各ハロゲン原子は、フッ化物であり、すなわちハロアルキルは、「フルオロアルキル」である。
【0027】
「吸湿(Hygroscopy)」は、固体が周囲湿度(空気に存在するH2O)を吸収するプロセスを表す。物質が最終的に吸収した液体に溶解し溶液を形成する場合、吸湿は、「潮解」と呼ばれる。空気から水分を吸収するが、必ずしも溶解点まで吸収しない物質は、「吸湿性」と呼ばれる。
【0028】
組成物の成分と組み合わせて使用される「薬学的に許容される」は、医薬組成物の成分が互いに適合可能であり、医薬組成物を投与する対象に有害ではないことを意味する。
【0029】
「薬学的に許容される賦形剤」は、対象、好ましくはヒトに投与する場合に、有害反応、アレルギー反応、または他の望ましくない反応をもたらさない賦形剤またはビヒクルを表す。これは、あらゆる溶媒、分散媒体、コーティング剤、抗細菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含む。ヒトへの投与では、製剤は、米国食品医薬品局(FDA)または欧州医薬品庁(EMA)などの規制局が要求する無菌性、発熱性、全般的な安全性、および純度の基準と一致しなければならない。
【0030】
「医薬組成物」は、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤と協同した少なくとも1つの薬学的に有効な作用物質を含む組成物を表す。医薬組成物は、治療上の使用のためのものであり、健康に関連する。特に医薬組成物は、摂食障害から選択される疾患、たとえば肥満を処置するために表され得る。
【0031】
固体の「物理的安定性」は、空気中における室温(約20℃)での物質の潮解および融解の非存在を表す。固体物質の融解は、物質の融点が大気温度よりも高い場合、避けられる。物質の少なくとも90(w/w)%、好ましくは少なくとも95(w/w)%、より好ましくは少なくとも99(w/w)%、さらにより好ましくは少なくとも99.9(w/w)%が、潮解も融解も示さない場合、物理的安定性が達成されたとみなされる。好ましくは、物理的に安定な物質の吸湿は、少なくあるべきである。
【0032】
「固体」は、その融点が、大気圧(1atm、すなわち101325Pa)にて25℃超である物質を表す。
【0033】
「比表面積」は、単位質量あたりの物質の総表面積(m2/g)を表す。これは、たとえばBET(Brunauer, Emmett and Teller)の分析により測定され得る。
【0034】
「対象」は、温血動物、好ましくは哺乳類、より好ましくはヒトを表す。好ましくは、対象は、患者、すなわち、医療の受診を待機しているか、または医療を受診しているか、または現在/将来医療の対象である/あり得る、対象である。たとえば、対象は、摂食障害、たとえば肥満を処置され得る。
【0035】
「治療用作用物質」、「有効な作用物質」、および「薬学的に有効な作用物質」は、同義語であり、治療上の使用のための化合物を表し、健康に関連する。特に、治療用作用物質は、摂食障害、たとえば肥満を処置するために表され得る。
【0036】
「チオアルキル」は、式-S-アルキルの基を表す。
【0037】
「~を処置する(treating)」または「処置(treatment)」または「軽減(alleviation)」は、治療的な処置および防止的または予防的な手段(この目的は、それを必要とする対象の目的の疾患または病態を予防または遅延(減弱)することである)の両方を表す。処置を必要とするものは、疾患または病態をすでに有するもの、および障害を有する傾向のあるもの、または障害を予防すべきものを含む。対象は、本発明に係る化合物または組成物の治療量を投与された後、以下:病原性細胞の数の低下;病原性である総細胞のパーセントの低下;特定の疾患もしくは病態に関連する症状のうちの1つ以上のある程度までの緩和;罹患率および死亡率の低下;ならびに/またはクオリティオブライフの改善のうちの1つ以上の観察可能かつ/または測定可能な低下または不存在を示す場合、対象への疾患の「処置」は成功している。処置の成功および疾患の改善を評価するための上記パラメータは、医師によく知られている規定の手法により容易に測定可能である。たとえば、疾患は、摂食障害、たとえば肥満から選択され得る。
【0038】
詳細な説明
固体製剤
本発明は、
2つのみの単環式第3級アミン基を含む1,2,4-オキサジアゾール誘導体と、
クエン酸および/またはサッカリンと
を含む固体製剤であって、
クエン酸および/またはサッカリンの総量と1,2,4-オキサジアゾール誘導体の量との間の固体製剤におけるモル比が、約2以上である、
固体製剤に関する。
【0039】
また本発明は、
2つのみの単環式第3級アミン基を含む1,2,4-オキサジアゾール誘導体を、
クエン酸および/またはサッカリンと
混合することにより入手可能な固体製剤であって、
クエン酸および/またはサッカリンの総量と1,2,4-オキサジアゾール誘導体の量との間の最初のモル比が、約2以上である、
固体製剤に関する。
【0040】
一実施形態では、混合ステップの間、溶媒は存在しない。一実施形態では、混合ステップの間、1,2,4-オキサジアゾール誘導体、ならびにクエン酸および/またはサッカリン以外の物質は存在しない。
【0041】
一実施形態では、1,2,4-オキサジアゾール誘導体は、式(I-0):
【化3】
(式中、
R
1、R
2、R
3、R
4、およびR
5は、それぞれ独立して、水素、C
1-C
3アルキル、C
1-C
3ハロアルキル、C
1-C
3アルコキシ、およびC
1-C
3チオアルキルから選択される)
の化合物である。
【0042】
一実施形態では、R1、R2、R3、R4、およびR5は、それぞれ独立して水素およびC1-C3ハロアルキルから選択され、好ましくはC1-C3ハロアルキルは、C1-C3フルオロアルキルであり;より好ましくは、3つのみのフッ化物原子を含むC1-C3フルオロアルキル、たとえばトリフルオロメチルである。一実施形態では、R3は、C1-C3ハロアルキル;好ましくはC1-C3フルオロアルキル;より好ましくは、3つのみのフッ化物原子を含むC1-C3フルオロアルキル、たとえばトリフルオロメチルである。
【0043】
一実施形態では、R1、R2、R3、R4、およびR5のうち少なくとも2つは、水素である。1つの特定の実施形態では、R1およびR5が水素である。一実施形態では、R1、R2、R3、R4、およびR5のうち少なくとも4つが水素である。1つの特定の実施形態では、R1、R2、R4、およびR5が水素である。
【0044】
1つの好ましい実施形態では、1,2,4-オキサジアゾール誘導体は、
式(A):
【化4】
の4-((1-((3-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)メチル)ピペリジン-3-イル)メチル)モルフォリン(本明細書中以下では「化合物A」)である。
【0045】
化合物Aは、ChemDraw(登録商標)Professional 15.0(PerkinElmer)を使用して命名した。
【0046】
式:
【化5】
のクエン酸または「2-ヒドロキシプロパン-1,2,3-トリカルボン酸」(C
6H
8O
7、CAS[77-92-9])は、柑橘類に天然に存在する弱い有機酸(25℃にて5.2、4.3、および3.0の酸の基でのpKa)である。
【0047】
式:
【化6】
のサッカリンまたは「安息香酸スルフィミド」または「1,1-ジオキソ-1,2-ベンゾチアゾール-3-オン」(C
7H
5NO
3S、CAS[81-07-2])は、合成化学で製造される弱い有機酸(25℃で1.6のpKa)である。
【0048】
本開示における「1,2,4-オキサジアゾール誘導体」、「クエン酸」、または「サッカリン」に対する全ての言及は、それらの全てのエナンチオマーおよび溶媒和物を包有する。本開示における「1,2,4-オキサジアゾール誘導体」、「クエン酸」、または「サッカリン」に対する全ての言及は、それらの全ての塩、好ましくはそれらの薬学的に許容される塩を包有する。「化合物」(たとえば「1,2,4-オキサジアゾール誘導体」)に対する全ての言及は、「少なくとも1つの化合物」を意味すると解釈すべきであり、よって、2つ以上の1,2,4-オキサジアゾール誘導体、そのエナンチオマー、溶媒和物、および/または塩のいずれかの混合物を包有する。
【0049】
一実施形態では、固体製剤は、50(w/w)%以上の1,2,4-オキサジアゾール誘導体ならびにクエン酸および/またはサッカリンを含む(すなわち1,2,4-オキサジアゾール誘導体ならびにクエン酸および/サッカリンの総量は、固体組成物の総重量の少なくとも50%を表す)。一実施形態では、固体製剤は、約75~約100(w/w)%の範囲、好ましくは約85~99(w/w)%の範囲、より好ましくは約90~98(w/w)%の範囲、さらに好ましくは約95~97(w/w)%の範囲、さらにより好ましくは約95~96(w/w)%の範囲の1,2,4-オキサジアゾール誘導体ならびにクエン酸および/サッカリンの総量を含む。これら実施形態では、「w/w」は、「固体製剤の総重量に対する重量」を意味する。一実施形態では、固体製剤は、1,2,4-オキサジアゾール誘導体ならびにクエン酸および/またはサッカリンからなる。
【0050】
一実施形態では、固体製剤は、1,2,4-オキサジアゾール誘導体のモノまたはジクエン酸塩を含む。一実施形態では、固体製剤は、1,2,4-オキサジアゾール誘導体のジクエン酸塩を含む。一実施形態では、固体製剤は、1,2,4-オキサジアゾール誘導体のモノまたはジサッカリン塩を含む。一実施形態では、固体製剤は、1,2,4-オキサジアゾール誘導体のジサッカリン塩を含む。一実施形態では、固体製剤は、1,2,4-オキサジアゾール誘導体のモノクエン酸塩およびモノサッカリン塩を含む。
【0051】
一実施形態では、固体製剤は、
1,2,4-オキサジアゾール誘導体および/またはその塩と、
(クエン酸および/またはその塩)および/または(サッカリンおよび/またはその塩)と
を含むか、またはからなる。
【0052】
一実施形態では、クエン酸および/もしくはサッカリンの総量と1,2,4-オキサジアゾール誘導体の量との間の固体製剤におけるモル比または最初のモル比は、約100以下である。一実施形態では、モル比は、約2~約20の範囲である。1つの特定の実施形態では、モル比は、約2~約10の範囲にある。1つのさらなる特定の実施形態では、モル比は、約2~約5の範囲にある。1つのさらなる特定の実施形態では、モル比は、約2、約3、約4、または約5である。1つのさらなる特定の実施形態では、モル比は、約2~約3である。1つのさらなる特定の実施形態では、モル比は、約2である。
【0053】
一実施形態では、固体製剤は、少なくとも7日間、19±2℃および60±5%の湿度で、その物理的安定性(本明細書中上記に定義される)を保持している。一実施形態では、固体製剤は、少なくとも12日間、その物理的安定性を保持している。1つの特定の実施形態では、固体製剤は、少なくとも2週間、その物理的安定性を保持している。1つのさらなる特定の実施形態では、固体製剤は、少なくとも5週間、その物理的安定性を保持している。1つのさらなる特定の実施形態では、固体製剤は、少なくとも10週間、その物理的安定性を保持している。
【0054】
一実施形態では、固体製剤の比表面積(BET)は、クエン酸および/またはサッカリンが固体製剤に含まれていない場合、クエン酸および/またはサッカリンの比表面積よりも高い。
【0055】
一実施形態では、固体製剤の比表面積(BET)は、5m2/g超、好ましくは10m2/g超、より好ましくは20m2/g超である。1つの特定の実施形態では、固体製剤の比表面積(BET)は、約25m2/gである。1つの特定の実施形態では、固体製剤の比表面積(BET)は、約20m2/gである。1つの特定の実施形態では、固体製剤の比表面積(BET)は、約6m2/gである
【0056】
一実施形態では、固体製剤は、医薬組成物ではない。一実施形態では、固体製剤は、経口粉末などの経口製剤ではない。一実施形態では、固体製剤は、固体錠剤などの固体製剤ではない。これら実施形態では、固体製剤自体(per se)は、非常に高濃度の治療用作用物質(すなわち1,2,4-オキサジアゾール誘導体)を含み、毒性または有意な副作用をもたらすかまたは効力のある医学的処置をもたらさないため、治療目的で対象に直接投与されることに適してはいない。しかしながら、固体製剤は、本明細書中以下に記載されるように、通常非常に少量にて、治療目的のため治療用作用物質として、医薬組成物に製剤化され得る。
【0057】
塩
また本発明は、2つのみの単環式第三級アミン基を含む1,2,4-オキサジアゾール誘導体のクエン酸および/またはサッカリンの塩に関する。
【0058】
一実施形態では、この塩は、1,2,4-オキサジアゾール誘導体のモノまたはジクエン酸塩であり、すなわち1,2,4-オキサジアゾール誘導体は、1つのクエン酸塩から第三級アミン基の少なくとも1つへの少なくとも1つのプロトンの移動を介してイオン化されている。一実施形態では、この塩は、1,2,4-オキサジアゾール誘導体のジクエン酸塩であり、すなわち1,2,4-オキサジアゾール誘導体は、1つまたは2つのクエン酸から両方の第3級アミン基への2つのプロトンの移動を介してイオン化されている。
【0059】
一実施形態では、この塩は、1,2,4-オキサジアゾール誘導体のモノまたはジサッカリン塩であり、すなわち、1,2,4-オキサジアゾール誘導体は、1つのサッカリンから第三級アミン基の少なくとも1つへの少なくとも1つのプロトンの移動を介してイオン化されている。一実施形態では、この塩は、1,2,4-オキサジアゾール誘導体のジサッカリン塩であり、すなわち、1,2,4-オキサジアゾール誘導体は、2つのサッカリンから両方の第3級アミン基への2つのプロトンの移動を介してイオン化されている。
【0060】
一実施形態では、この塩は、1,2,4-オキサジアゾール誘導体のモノクエン酸塩およびモノサッカリン塩であり、すなわち、1,2,4-オキサジアゾール誘導体は、1つのクエン酸および1つのサッカリンから両方の第3級アミン基へのそれぞれ1つのプロトンの移動を介してイオン化されている。
【0061】
一実施形態では、この塩は、薬学的に許容される塩である。
【0062】
一実施形態では、1,2,4-オキサジアゾール誘導体は、本明細書中上述される、式(I-0)の化合物または化合物Aである。
【0063】
プロセスおよび方法
また本発明は、本明細書中上述される本発明に係る固体組成物を製造するためのプロセスであって、2つのみの単環式第三級アミン基を含む1,2,4-オキサジアゾール誘導体をクエン酸および/またはサッカリンと混合するステップを含み、
クエン酸および/またはサッカリンの総量と1,2,4-オキサジアゾール誘導体の量との間の最初のモル比が、約2以上である、
プロセスに関する。
【0064】
また本発明は、2つのみの単環式第三級アミン基を含む1,2,4-オキサジアゾール誘導体の物理的安定性を増大させるための方法であって、上記1,2,4-オキサジアゾール誘導体をクエン酸および/またはサッカリンと混合するステップを含み、
クエン酸および/またはサッカリンの総量と1,2,4-オキサジアゾール誘導体の量との間の最初のモル比が、約2以上である、
方法に関する。
【0065】
本明細書中上記に提供される「物理的安定性」の定義によると、本発明における物質の「物理的安定性の改善」または「物理的安定性の増大」は、物質の潮解の低減(もしくは抑制)および/または吸湿の低減(もしくは抑制)を表し、よって物質が固体となるように、物質は潮解性ではなく、かつ/または水の吸収が少なく、かつ/または物質の融点が増大している。
【0066】
物質の潮解の低減は、恐らくは、物質の吸湿の低減を特徴とし得る。吸湿性は、たとえば、DVS(動的蒸気吸着)により測定されてよく、これは、溶媒の蒸気圧に関するサンプルの質量の変化を測定する。
【0067】
物質の融点は、たとえば、同じ温度に維持されたサンプルと参照物質との間の熱流量を測定するDSC(示差走査熱量測定)分析によるか、または、融点を検出するために徐々に加熱される際にサンプルが観察され得る装置である、融点計測器(melting point meter)により、測定され得る。
【0068】
一実施形態では、1,2,4-オキサジアゾール誘導体は、本明細書中上述される式(I-0)の化合物かまたは化合物Aである。
【0069】
一実施形態では、クエン酸および/またはサッカリンの総量と1,2,4-オキサジアゾール誘導体の量との間の最初のモル比は、約100以下である。一実施形態では、モル比は、約2~約20の範囲にある。1つの特定の実施形態では、モル比は、約2~約10の範囲にある。1つのさらなる特定の実施形態では、モル比は、約2~約5の範囲にある。1つのさらなる特定の実施形態では、モル比は、約2、約3、約4、または約5である。1つのさらなる特定の実施形態では、モル比は、約2~約3の範囲にある。1つのさらなる特定の実施形態では、モル比は、約2である。
【0070】
一実施形態では、本プロセスまたは方法は、1,2,4-オキサジアゾール誘導体を、クエン酸および/またはサッカリンと接触させる第1のステップの後に、1,2,4-オキサジアゾール誘導体ならびにクエン酸および/またはサッカリンを混合する第2のステップを含む。
【0071】
一実施形態では、混合は、撹拌である。一実施形態では、混合は、粉砕である。
【0072】
一実施形態では、混合ステップの間に、溶媒は存在しない。一実施形態では、混合ステップの間に、1,2,4-オキサジアゾール誘導体、ならびにクエン酸および/またはサッカリン以外の物質は存在しない。
【0073】
医薬組成物
また本発明は、本明細書中上述される本発明に係る固体製剤と、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物に関する。
【0074】
一実施形態では、本医薬組成物中の固体製剤は、治療用作用物質である。
【0075】
一実施形態では、本医薬組成物は、約0.0001~約20(w/w)%、好ましくは約0.001~約10(w/w)%、より好ましくは約0.01~約5(w/w)%の範囲の量で固体製剤を含む。一実施形態では、本医薬組成物は、約0.01~約5(w/w)%の範囲、好ましくは約0.05~約2.5(w/w)%の範囲、より好ましくは約0.1~約1(w/w)%の範囲の量で固体製剤を含む。これら実施形態では、「w/w」は、「医薬組成物の総重量に対する重量」を意味する。
【0076】
一実施形態では、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤は、クエン酸を含まない。一実施形態では、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤は、サッカリンを含まない。一実施形態では、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤は、クエン酸およびサッカリンを含まず、すなわち、本医薬組成物に含まれる各薬学的に許容される賦形剤自体は、クエン酸またはサッカリンを含まない。
【0077】
使用
また本発明は、医薬として使用するための、本明細書中上述される本発明に係る固体製剤または医薬組成物に関する。
【0078】
一実施形態では、本固体製剤または本医薬組成物は、GLP-1受容体が関与または介在する疾患の処置および/または予防に使用するためのものである。
【0079】
一実施形態では、本固体製剤または本医薬組成物は、国際特許公開公報第2012/101292号の特許出願(VIVIABIOTECH SL)に開示される、GLP-1受容体が関与または介在する疾患の処置および/または予防に使用するためのものである。
【0080】
一実施形態では、GLP-1受容体が関与または介在する疾患は、肥満、食欲不振症、脂質機能不全、糖尿病、高インスリン症、およびメタボリックシンドロームから選択される。一実施形態では、GLP-1受容体が関与または介在する疾患は、肥満である。別の実施形態では、GLP-1受容体が関与または介在する疾患は、糖尿病である。一実施形態では、糖尿病は、2型真正糖尿病である。
【0081】
一実施形態では、GLP-1受容体が関与または介在する疾患は、肥満、食欲不振症、脂質機能不全、糖尿病、高インスリン症、およびメタボリックシンドロームにより誘導されるかまたはこれに関連する疾患から選択される(「GLP-1関連疾患」)。一実施形態では、疾患は、糖尿病性ニューロパチー、糖尿病性網膜症、緑内障、白内障、糖尿病性腎症、または糖尿病性足部潰瘍などのように、糖尿病により誘導されるかまたはこれに関連する(「糖尿病関連疾患」)。
【0082】
一実施形態では、本固体製剤または本医薬組成物は、摂食障害の処置および/または予防に使用するためのものである。一実施形態では、摂食障害は、肥満、食欲不振症、脂質機能不全、糖尿病、高インスリン症、およびメタボリックシンドロームから選択される。
【0083】
一実施形態では、本固体製剤または本医薬組成物は、糖尿病または肥満などの代謝障害の処置および/または予防に使用するためのものである。一実施形態では、代謝障害は、糖尿病および肥満から選択される。
【0084】
一実施形態では、本固体製剤または本医薬組成物は、心血管疾患の処置および/または予防に使用するためのものである。一実施形態では、心血管疾患は、冠動脈疾患、脳卒中、心不全、高血圧性心疾患、および先天性心疾患から選択される。
【0085】
一実施形態では、本固体製剤または本医薬組成物は、神経変性疾患の処置および/または予防に使用するためのものである。一実施形態では、神経変性疾患は、アルツハイマー病、パーキンソン病、多系統萎縮症、ハンチントン病、視神経変性、および運動障害、神経筋疾患、ならびに認知欠乏症から選択される。
【0086】
一実施形態では、本固体製剤または本医薬組成物は、神経性疾患または精神神経性疾患の処置および/または予防に使用するためのものである。一実施形態では、神経性疾患または精神神経性疾患は、てんかん、統合失調症、双極性障害、うつ、および疼痛から選択される。
【0087】
よって本発明は、疾患の処置および/または予防の方法であって、本明細書中上述される本発明に係る固体製剤または医薬組成物の治療上有効量のそれを必要とする対象への投与を含む、方法に関する。よって本発明はまた、医薬の製造における、本明細書中上述される本発明に係る固体製剤または医薬組成物の使用に関する。
【0088】
また本発明は、対象の体重増加を予防する非治療的な方法であって、本明細書中上述される本発明に係る固体製剤または医薬組成物を上記対象へ投与するステップを含む、方法に関する。一実施形態では、体重増加の予防は、脂肪増加の予防である。
【0089】
また本発明は、対象の体重増加を制御する非治療的な方法であって、本明細書中上述される本発明に係る固体製剤または医薬組成物を上記対象へ投与するステップを含む、方法に関する。一実施形態では、体重増加の制御は、脂肪増加の制御である。
【0090】
また本発明は、対象の体重減少を刺激する非治療的な方法であって、本明細書中上述される本発明に係る固体製剤または医薬組成物を上記対象へ投与するステップを含む、方法に関する。一実施形態では、体重減少の刺激は、脂肪減少の刺激である。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【
図1】
図1は、2.0当量のクエン酸と化合物Aを粉砕することにより得られる物理的に安定した白色の粉末としてのA-2CAを示す写真である。
【
図2】
図2は、2.0当量のサッカリンと化合物Aを粉砕することにより得られる物理的に安定した白色の粉末としてのA-2SAを示す写真である。
【
図3】
図3は、1.0当量のサッカリンおよび1.0当量のクエン酸と化合物Aを粉砕することにより得られる物理的に安定した白色の粉末としてのA-1CA-1SAを示す写真である。
【
図4】
図4は、A-2CA固体製剤(上部の黒色の曲線)およびクエン酸(下部の灰色の曲線)の重畳した粉末X線回折を示すグラフである。
【
図5】
図5は、A-2CA固体製剤のSEM顕微鏡写真を示す写真である。
【
図6】
図6は、A-2SA固体製剤(上部の黒色の曲線)およびサッカリン(下部の灰色の曲線)の重畳した粉末X線回折を示すグラフである。
【
図7】
図7は、A-2SA固体製剤のSEM顕微鏡写真を示す写真である。
【
図8】
図8は、A-1CA-1SA固体製剤(上部の黒色の曲線)、サッカリン(下部の濃灰色の曲線)、およびクエン酸(下部の薄灰色の曲線)の重畳した粉末X線回折を示すグラフである。
【
図9】
図9は、A-1CA-1SA固体製剤のSEM顕微鏡写真を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0092】
実施例
さらに本発明を、以下の実施例により示す。
【0093】
実施例1:固体製剤の合成
材料
化合物Aを、当該分野で知られている方法により合成した。13C-NMR(CDCl3): δ 24.5 (CH2pip), 28.3 (CH2pip), 32.6 (CH), 52.7 (CH2pip), 53.2 (CH2Npip), 53.7 (2CH2Nmorph), 57.6 (CH2Npip), 62.3 (CH2morph), 66.2 (2CH2Omorph), 122.4 (q, CF3), 125.2 (q, C) 126.2 (2CH), 127.9 (2CH), 130.9 (q, C)166.5 (C(N)=N), 177.8 (C(O)=N). 1H-NMR (CDCl3): δ 0.88-1.01 (m, 1H, 1/2CH2pip), 1.58-1.80 (m, 3H, 1/2CH2pip, CH2pip), 1.87-2.02 (m, 2H, 1/2 CH2Npip, CH), 2.13-2.28 (m, 3H, CH2morph, 1/2 CH2Npip), 2.32-2.54 (m, 4H, 2CH2Nmorph), 2.92 (d, 1H, 1/2 CH2Npip), 3.09 (d, 1H, 1/2CH2Npip), 3.62-3.78 (m, 4H, 2CH2Omorph), 3.94 (q, 2H, CH2pip), 7.75 (d, 2H, 2CHAr), 8.23 (d, 2H, 2CHAr)。Rf:0.67(溶離液:ジクロロメタン/メタノール(9/1)でシリカプレート上の薄層クロマトグラフィー(TLC)(2mm厚のアルミニウム箔上のシリカゲル60 F254 Merck)、UVおよびKMnO4溶液により顕色)。
【0094】
他の全ての反応物および全ての溶媒は、商業的な供給者から購入した。使用される全ての反応物および溶媒は、試薬グレードであった。
【0095】
実施例1-1:Aを液体の酸と混合する
全般的な手法
丸底フラスコにおいて、アルゴン雰囲気下の無水Et2OにおけるAの溶液(6mL/mmol)に、酸を、純粋な液体または無水Et2O(3mL/mmol)溶液で、滴下した。この混合物を、3時間静置させた。次に、生成物を、溶媒の蒸発により単離し、真空下で乾燥させた。
【0096】
酢酸
Aと酢酸との間の反応を、2.0当量の酸で行った。真空下で乾燥させた後、粘着性の油が得られた。
【0097】
臭化水素酸
Aと臭化水素酸との間の反応を、2.0当量の酸で行った。真空下で乾燥させた後、潮解性の固体が得られた。
【0098】
塩酸
Aと塩酸との間の反応を、かなり過剰な量の酸で行った。真空下で乾燥させた後、潮解性の固体が得られた。
【0099】
メタンスルホン酸
Aとメタンスルホン酸との間の反応を、1.0、1.3、2.3、および3.2当量の酸で数回行った。
【0100】
真空下で乾燥させた後、代わりに潮解性の固体であった3.2当量で形成された生成物を除き、粘着性の油が得られた。
【0101】
硫酸
Aと硫酸との間の反応を、2.0当量の酸で行った。真空下で乾燥させた後、粘着性の油が得られた。
【0102】
実施例1-2:固体の酸とAの混合
全般的な手法
メカノケミストリーが、固体の酸または塩基からの有機化合物の塩の効率的な製造に使用され得る。これは、粉砕ステップなどの混合ステップを含む溶媒フリーのプロセスである。粉砕ステップは、正味の粉砕(net grinding)または「LAG(Liquid Assisted Grinding)」(ここでは非常に少量の溶媒が、分子運動性を増大させるために添加され得る)のいずれかにより行われ得る。これは、反応を加速および/または完了することを目的とする。
【0103】
本発明の場合では、化合物Aが油であり、よって分子運動性が恐らくは十分であったため、正味の粉砕を使用した。2つの異なる正味の粉砕の手法を使用した:
固体の混合1:エッペンドルフに、A(200mg、0.5mmol)および酸を添加した。次に、エッペンドルフを、粉砕装置(Retsch MM400)に置き、30Hzで90分間撹拌した。
固体の混合2:乳鉢に、A(200mg、0.5mmol)および酸を添加し、次に、乳棒を用いて手動で粉砕した。
【0104】
クエン酸
Aとクエン酸との間の反応を、2.0当量の酸で行った。粉砕後、白色の粉末が得られた(
図1に示される「A-2CA」)。
【0105】
また、Aとクエン酸との間の反応を、1.0当量の酸で行った。粉砕後、粘着性の油が得られた(「A-1CA」)。
【0106】
フマル酸
Aとフマル酸との間の反応を、1.0当量または2.0当量の酸で2回行った。両方の場合で、粘着性の油が得られた。
【0107】
サッカリン
Aとサッカリンとの間の反応を、1.0当量または2.0当量の酸で2回行った。1当量のサッカリンのみを使用した場合、粘着性の油が得られた。他方で、2当量を用いた場合、白色の粉末が得られた(
図2に示される「A-2SA」)。
【0108】
サッカリンおよびクエン酸
Aと、サッカリンおよびクエン酸との間の反応を、それぞれ1.0当量の酸で行った。粉砕後、白色の粉末が得られた(
図3に示される「A-1CA-1SA」)。
【0109】
炭酸水素ナトリウム
Aと炭酸水素ナトリウムとの間の反応を、1.0当量または2.0当量の酸で2回行った。両方の場合で、粘着性の油が得られた。
【0110】
コハク酸
Aとコハク酸との間の反応を、1.0当量または2.0当量の酸で2回行った。両方の場合で、粘着性の油が得られた。
【0111】
実施例2:固体製剤の分析
材料および方法
核磁気共鳴(NMR)解析
NMRスペクトルを、JEOL JNM EX-400 400HzまたはJEOL JNM-ECZ 500Hzで記録した。サンプルを、標準的な石英管(5mm)にて室温の重水素化したDMSOにおいて調製した。スペクトルは、Deltaプログラムを使用して分析した。
【0112】
BET(Brunauer, Emmett and Teller)分析
比表面積を、容積測定吸着分析装置(volumetric adsorption analyser)(Micromeritics 3Flex physisorption apparatus)を用いて、77Kにて窒素吸着-脱着分析により測定した。BET(Brunauer, Emmett and Teller)法は、比表面積を計算するために、0.05~0.20のP/P0の範囲で適用した。
【0113】
粉末X線回折(X-Ray Powder Diffraction:PXRD)
粉末X線回折(PXRD)のデータは、45kVおよび30mAにてCu Kαの照射(λ=1.54184Å)を使用して、Panalytical X’Pert Pro diffractometer(Bragg-Brentano geometry, X’Celerator detector)で回収した。
【0114】
走査型電子顕微鏡(SEM)写真
サンプルの写真を、SEI検出器を備えるSEM顕微鏡Jeol JSM-6010LVを用いて撮影した。
【0115】
実施例2-1:A-2CAの分析
2-1-1)A-2CA分析サンプルの製造
2mLのエッペンドルフチューブに、A(201mg、0.490mmol、1.0eq)、クエン酸(188mg、0.976mmol、2.0eq)、2つの3mmのステンレス鋼の粉砕ボール、および5つの2mmのステンレス鋼の粉砕ボールを添加した。次に、エッペンドルフを、2つの粉砕ジャーを搭載した粉砕機(Retsch Mixer Mill 400)に置いた。次に、乾燥粉砕を、30Hzで90分間行った。同様の結果が、粉砕時間を30分間に減少させることにより得られた。撹拌を改善するために、反応混合物を、乳鉢に入れ、白色の粉末としてのA-2CAが得られるまで乳棒を用いて手動で粉砕した。
【0116】
2-1-2)NMR解析
A-2CAの1H NMRは、Aおよびクエン酸のスペクトルの重ね合わせに類似するスペクトルを示した。よって、Aおよびクエン酸の分子構造は維持されており、反応物の劣化は観察されていない。
【0117】
A-2CAの13C NMRは、Aと比較して窒素原子(第3級アミン)の近くの炭素原子に関して有意なシフトを示さなかった。よって、塩が形成されているかどうかはRMNから評価できなかった。
【0118】
2-1-3)潮解試験
A-2CAは、通常の湿度(相対湿度60±5%)、室温(19℃±2℃)にて、12日間、空気中に置かれた。
【0119】
この期間の間、液相は現れず、よって、A-2CA固体組成物は物理的に安定している。
【0120】
7日後、A-2CAの粉末の粒子は、わずかに粘着性となり、よってこの固体組成物は、中程度の吸湿性である。
【0121】
2-1-4)粉末XRD
A-2CAおよびクエン酸のディフラクトグラムを、
図4に示す。クエン酸は、両方のディフラクトグラムが同じピークのパターンを提示するため、A-2CAで検出される。さらに、A-2CAのディフラクトグラムは、非晶相の存在を示す。
【0122】
2-1-5)比表面積(BET)
A-2CAの比表面積は、
BET surfaceA-2CA=26.6m2/g
としてBET分析により測定した。
【0123】
2-1-6)SEM写真
A-2CAのサンプルの多くのSEM写真を記録し、代表例を、
図5に示す。SEM写真は、固体製剤の粒径分布を特徴づけるために有用であり得る。
【0124】
実施例2-2:A-2SA分析
2-2-1)A-2SA分析サンプルの製造
2mLのエッペンドルフチューブに、A(150mg、0.365mmol、1.0eq)、サッカリン(135mg、0.737mmol、2.0eq)、2つの3mmのステンレス鋼の粉砕ボールおよび5つの2mmのステンレス鋼の粉砕ボールを添加した。次に、エッペンドルフを、2つの粉砕ジャーを搭載した粉砕機(Retsch Mixer Mill 400)に置いた。次に、乾燥粉砕を、30Hzで35~90分行い、白色の粉末としてA-2SAを得た。
【0125】
粉砕時間が結果に影響しないことが見出された。以下の分析は、35分の粉砕後に得られた固体製剤で行った。
【0126】
2-2―2)NMR分析
A-2SAの1H NMRは、Aおよびサッカリンのスペクトルの重ね合わせに類似するスペクトルを示した。よって、Aおよびサッカリンの分子構造は維持されており、反応物の劣化は観察されなかった。
【0127】
A-2SAの13C NMRは、Aと比較して窒素原子(第3級アミン)の近くの炭素原子に関する有意なシフトを示さなかった。よって、塩が形成されているかどうかはRMNから評価できなかった。
【0128】
2-2-3)潮解試験
A-2SAは、通常の湿度(相対湿度60±5%)、室温(19±2℃)にて、12日間、空気中に置かれた。
【0129】
この期間の間、液相は現れず、よって、A-2SA固体組成物は物理的に安定している。
【0130】
7日後、A-2SAの粉末の粒子は、わずかに粘着性となり、よってこの固体組成物は、中程度の吸湿性である。
【0131】
2-2-4)粉末XRD
比較分析-サッカリンの粉末XRDおよびSEM写真
比較のため、サッカリンに及ぼす粉砕の作用を観察することが重要である。市販のサッカリンを、30Hzで35分間粉砕し、同じバッチの市販のサッカリン由来の粉砕していない粉末と比較した。
【0132】
粉砕前および粉砕後のサッカリンの回折パターン(PXRD)を入手し、比較した:これらは同一である。よって、粉砕は、実験条件下でのサッカリンのアモルファス化をもたらさない。
【0133】
さらに、粉砕前および粉砕後のサッカリンの走査型電子顕微鏡(SEM)写真から、市販のサッカリンよりも小さい粒子を有しているが、粉砕したサッカリンの結晶構造が、変化しないことが確認された。
【0134】
A-2SAの粉末XRD
A-2SAおよびサッカリンのディフラクトグラムを、
図6に示す。A-2CAでは、サッカリンは、両方のディフラクトグラムが同じピークパターンを提示するため、A-2SAで検出される。さらに、A-2SAのディフラクトグラムは、非晶相の存在を示す。
【0135】
2-2-5)比表面積
比較分析-サッカリンの比表面積
比較のため、サッカリンに及ぼす粉砕の作用を観察することが重要である。市販のサッカリンを、30Hzで35分間粉砕し、同じバッチの市販のサッカリン由来の粉砕していない粉末と比較した。
【0136】
2つのサッカリンサンプルの比表面積を、
サッカリン(市販):BET surface SA(c)=9.9m2/g
サッカリン(粉砕後)BET surface SA(g)=6.7m2/g
として、BET分析により測定した。
【0137】
この実験は、中程度減少(約-30%)するが、粉砕後のサッカリンの比表面積(BET)に関する有意な変化が観察されないことを証明している。
【0138】
A-2SAの比表面積
A-2SAの比表面積を、
BET surface A-2SA=21.6m2/g
としてのBET分析により測定した。
【0139】
同じ粉砕手法により、サッカリン単独のうちの1つよりも3倍高いA-2SAと混合したサッカリンの比表面積(BET)に関する有意な変化が観察された(約+220%)。
【0140】
よって、固体製剤におけるAの存在は、固体の比表面積を有意に修正し、よって、固体製剤の2つの化合物間の相互作用を証明している。よって本固体製剤は、単なる混合剤ではない。
【0141】
2-2-6)SEM写真
A-2SAサンプルの多くのSEM写真を記録し、代表例を
図7に示す。
【0142】
実施例2-3:A-1CA-1SAの分析
2-3-1)A-1CA-1SA分析サンプルの製造
粉砕ジャーに、A(302mg、0.735mmol、1.0eq)、クエン酸(142mg、0.742mmol、1.0eq)、サッカリン(13mg、0.737mmol、1.0eq)、およびメノウで作製された粉砕ボールを添加した。次に、このジャーを、別の粉砕ジャーを搭載した粉砕機(Retsch Mixer Mill 400)に置いた。乾燥粉砕を、30Hzで60分間行い、白色の固体としてA-1CA-1SAを得た。
【0143】
2-3-2)NMR分析
A-1CA-1SAの1H NMRは、Aおよびクエン酸およびサッカリンのスペクトルの重ね合わせと類似するスペクトルを示した。よって、A、クエン酸、およびサッカリンの分子構造は維持されており、反応物の劣化は観察されなかった。
【0144】
A-1CA-1SAの13C NMRは、Aと比較して窒素原子(第3級アミン)の近くの炭素原子に関する有意なシフトを示さなかった。よって、塩が形成されているかどうかはRMNから評価できなかった。
【0145】
2-3-3)潮解試験
A-1CA-1SAを、通常の湿度(相対湿度60±5%)、室温(19±2℃)にて、30日間、空気中に置いた。
【0146】
この期間の間、液相は現れず、よって、A-1CA-1SAは物理的に安定している。
【0147】
3-3-4)粉末XRD
A-1CA-1SA、クエン酸、およびサッカリンのディフラクトグラムを、
図8に示す。A-2CAおよびA-2SAに関しては、クエン酸およびサッカリンは、両ディフラクトグラムが同じピークパターンを提示するため、A-1CA-1SAで検出される。さらに、A-1CA-1SAのディフラクトグラムは、非晶相の存在を示す。
【0148】
3-3-5)比表面積
A-1CA-1SAサンプルの比表面積は、
BET surface A-1CA-1SA=6.5m2/g
としてのBET分析により測定した。
【0149】
3-3-6)SEM写真
A-1CA-1SAの多くのSEM写真を記録し、代表例を
図9に示す。
【0150】
結論
1,2,4-オキサジアゾール誘導体Aにおける2つの第3級アミン官能基の存在により、有効成分の物理的に安定した形態を得るために、モノまたはジ付加塩の製造が検討された。
【0151】
本出願人により行われた詳細な製剤試験(実施例1)の結果を、以下の表1に示すようにまとめることができる。
【表1】
【0152】
Aに対し様々な相対量にて液体または固体として使用される酸の大部分では、粘着性の油または潮解性(吸湿性)の化合物の形成がもたらされる。よって、化合物Aの物理的に安定した付加塩は容易に入手できないと思われていた。
【0153】
しかしながら、クエン酸および/またはサッカリンである特定の酸の使用は、予想外なことに、化合物Aの安定した固体製剤をもたらした。また、クエン酸および/またはサッカリンは、安定化作用を達成するために少なくとも2当量の量で使用されなければならない:1当量のクエン酸またはサッカリンのみが化合物Aに添加される場合、結果得られる混合物は粘着性であることが見出されている。
【0154】
分析試験(実施例2)により、本発明に係る固体製剤が物理的に安定していることが確認された。
【0155】
また、本発明に係る固体製剤における化合物Aの主な構造は影響を受けないことが証明され、よって、その生体活性は、「遊離」化合物Aと同等であることが合理的に予想できる。
【0156】
A-2SAで観察された有意な比表面積(surface specific area)の増大は、固体組成物が単なる混合剤ではなく、Aおよびサッカリンが固体製剤の中で化学的な相互作用を有することをさらに示している。
【0157】
理論により拘束されることを望むものではないが、本出願人は、化合物Aが、非共有結合(「弱い」結合)、たとえば水素結合またはファンデルワールス力により、クエン酸および/またはサッカリンと結合し得ると考えている。よってこの場合、本固体製剤は、複数の成分の錯体である(A、ならびにクエン酸および/またはサッカリンは、化合物Aの物理的安定性を有意に増大させるためには十分な相互作用ではあるが、実際のプロトン移動を伴わず弱く結合しているであろう)。
【0158】
結論として、本明細書中提供される実験結果は、本発明が、1,2,4-オキサジアゾール誘導体をクエン酸および/またはサッカリンと混合することにより、1,2,4-オキサジアゾール誘導体の迅速かつ容易な物理的安定化を可能にすることを明確に証明している。よって、クエン酸および/またはサッカリンは、単独または組み合わせて、2つの第3級アミン官能基を有する1,2,4-オキサジアゾール誘導体に対する強力な安定化剤である。得られた物理的に安定した固体の粉末は、1,2,4-オキサジアゾール誘導体を、産業上の適用にとっておよび/または医薬の成分としてより有用にさせている。