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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】流量制御弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/04 20060101AFI20241213BHJP
【FI】
F16K31/04 K
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023503648
(86)(22)【出願日】2022-02-02
(86)【国際出願番号】 JP2022004112
(87)【国際公開番号】W WO2022185824
(87)【国際公開日】2022-09-09
【審査請求日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】P 2021034580
(32)【優先日】2021-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菱谷 康平
(72)【発明者】
【氏名】大内 共存
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 威
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-249847(JP,A)
【文献】特開2003-208229(JP,A)
【文献】特開2004-203224(JP,A)
【文献】特開2009-52655(JP,A)
【文献】特開2010-52672(JP,A)
【文献】特表2007-501917(JP,A)
【文献】特開2010-43727(JP,A)
【文献】特開2008-14485(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/00-31/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁座が設けられた弁本体と、
モータの回転を減速して回転体に伝達する減速部と、
前記回転体の回転移動に応じて、移動体を軸線方向に移動させる変換機構と、
前記移動体の軸線方向移動に応じて移動し、前記弁座に対して進退動する弁体と、を有し、
前記回転体に配設された第1係合部と前記弁本体に配設された第2係合部とが前記回転体の回転に応じて、接近または離間するように設けられており、
前記弁座に対して前記弁体が着座した後に、前記第1係合部と前記第2係合部とが当接し、前記回転体の回転が停止され、
前記回転体は、前記弁本体に固定された雌ねじ筒に摺動するようにガイドされており、
前記減速部は、遊星歯車機構を有し、前記回転体は、前記遊星歯車機構のギヤ本体であり、
前記変換機構は、前記ギヤ本体と共に回転する雄ねじ部材と、前記雄ねじ部材に螺合する雌ねじ筒とからなり、
前記雄ねじ部材は、前記移動体であり、
前記ギヤ本体は、前記雌ねじ筒の外周部に摺動するようにガイドされている、
ことを特徴とする流量制御弁。
【請求項2】
遊星歯車機構は、前記モータのロータと一体の太陽ギヤと、該太陽ギヤと噛み合う遊星ギヤを回転自在に支持するキャリヤと、前記太陽ギヤと同心かつ前記弁本体側に固定されていて前記遊星ギヤと噛み合うリングギヤと、該リングギヤの歯数と歯数が異なる内歯が内周に形成された出力ギヤ部を備えたギヤ本体と、を有し、
前記キャリヤは、前記雌ねじ筒の内周部に摺動可能に嵌合するキャリヤ軸部を有する、
ことを特徴とする請求項に記載の流量制御弁。
【請求項3】
前記移動体に対して、前記弁体を前記弁座に向かって付勢する付勢部材を有する、
ことを特徴とする請求項に記載の流量制御弁。
【請求項4】
前記回転体に配設された第3係合部と、前記弁本体に配設された第4係合部と、を有し、
前記弁座に対して前記弁体が所定距離だけ離間した後に、前記第3係合部と前記第4係合部とが当接する、
ことを特徴とする請求項に記載の流量制御弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流量制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ルームエアコン、カーエアコン等に用いられる冷凍サイクルにおいては、圧縮機、室外熱交換器、室内熱交換器、及び膨張弁等に加えて、冷媒の流量を調整する流量制御弁などが備えられる。
【0003】
この種の流量制御弁としては、例えば特許文献1に示すギア式電動弁が知られている。このギア式電動弁は、ステッピングモータから出力された回転力を減速機構を介して減速し、さらに減速された回転力をねじ機構を用いて軸線方向力に変換して、弁体に伝達する。これにより弁体は弁座に対して離間または着座するため、開弁又は閉弁動作を実行できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-232465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示すギア式電動弁においては、ステッピングモータの回転力が減速装置により減速されるため、閉弁時に弁体から弁座に付勢される押圧力が比較的高く、そのため閉弁時のシール性を高く維持できるという長所がある。
【0006】
一方で、冷凍サイクル内を循環する冷媒には、金属などの異物の混入が生じる恐れがある。このような異物がギア式電動弁に進入し、閉弁時に弁体と弁座との間に介在して、強い押圧力で挟み込まれることで、いわゆる異物の噛み込みが生じることも危惧される。
【0007】
本発明の目的は、異物の噛み込みを抑制して、適切な流量制御を行える流量制御弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成るために、本発明による流量制御弁は、
弁座が設けられた弁本体と、
モータの回転を減速して回転体に伝達する減速部と、
前記回転体の回転移動に応じて、移動体を軸線方向に移動させる変換機構と、
前記移動体の軸線方向移動に応じて移動し、前記弁座に対して進退動する弁体と、を有し、
前記回転体に配設された第1係合部と前記弁本体に配設された第2係合部とが前記回転体の回転に応じて、接近または離間するように設けられており、
前記弁座に対して前記弁体が着座した後に、前記第1係合部と前記第2係合部とが当接し、前記回転体の回転が停止され、
前記回転体は、前記弁本体に固定された雌ねじ筒に摺動するようにガイドされており、
前記減速部は、遊星歯車機構を有し、前記回転体は、前記遊星歯車機構のギヤ本体であり、
前記変換機構は、前記ギヤ本体と共に回転する雄ねじ部材と、前記雄ねじ部材に螺合する雌ねじ筒とからなり、
前記雄ねじ部材は、前記移動体であり、
前記ギヤ本体は、前記雌ねじ筒の外周部に摺動するようにガイドされている、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、異物の噛み込みを抑制して、適切な流量制御を行える流量制御弁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施の形態にかかる流量制御弁の閉弁状態を示す縦断面図である。
図2図2は、図1に示す流量制御弁のA-A線における断面を平面視した図である。
図3図3は、第1の実施の形態にかかる流量制御弁の開弁状態を示す縦断面図である。
図4図4は、図3に示す流量制御弁の図2と同様な断面を平面視した図である。
図5図5は、本実施形態の流量制御弁に用いるギヤ列を、各ギヤの軸線が同一平面内に位置するように展開して示す図である。
図6図6は、本実施形態の変形例にかかるギヤ列を示す、図5と同様な断面図である。
図7図7は、第2の実施の形態にかかる流量制御弁の閉弁状態を示す縦断面図である。
図8図8は、図7に示す流量制御弁のB-B線における断面を平面視した図である。
図9図9は、第2の実施の形態にかかる流量制御弁の開弁状態を示す縦断面図である。
図10図10は、図9に示す流量制御弁の図8と同様な断面を平面視した図である。
図11図11は、本実施形態の流量制御弁に用いるギヤ列を、各ギヤの軸線が同一平面内に位置するように展開して示す図である。
図12図12は、第3の実施の形態にかかる流量制御弁の閉弁状態を示す縦断面図である。
図13図13は、第3の実施の形態にかかる流量制御弁の開弁状態を示す縦断面図である。
図14図14は、遊星歯車機構を分解した状態で示す図である。
図15図15は、ギヤ本体の下面と雌ねじ筒の上面とを示す斜視図である。
図16図16は、第4の実施の形態にかかる流量制御弁の閉弁状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明にかかる実施形態の流量制御弁について説明する。本実施形態の流量制御弁は、冷凍サイクル装置の循環路内に設置され、該循環路内を流れる冷媒の流量を制御する。
【0012】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施の形態にかかる流量制御弁1の閉弁状態を示す縦断面図であり、図2は、図1に示す流量制御弁1のA-A線における断面を平面視した図である。図3は、第1の実施の形態にかかる流量制御弁1の開弁状態を示す縦断面図であり、図4は、図3に示す流量制御弁の図2と同様な断面を平面視した図である。図5は、流量制御弁1に用いるギヤ列を、各ギヤの軸線が同一平面内に位置するように展開して示す図であるが、一部簡略化して示している。
【0013】
(流量制御弁の構成)
流量制御弁1は、駆動部10と、減速部20と、弁機構部30とを有する。弁機構部30の軸線をLとする。また、モータ側を上方とし、弁体側を下方として説明する。
【0014】
まず、駆動部10について説明する。図において、駆動部10は、駆動部ケース11と、駆動部ケース11の内側に取り付けられたステータ12と、ステータ12の径方向内側に配置されたロータ13と、ロータ13に固定された駆動軸14とを有する。ステータ12とロータ13とで、ステッピングモータを構成する。なお、駆動源としてはステッピングモータに限らず、ブラシレスモータ、ブラシ付きモータ等を採用してもよい。
【0015】
駆動部ケース11は有頂円筒状に形成され、その頂部中央下面に軸受15を固定保持している。軸受15は、駆動軸14を回転可能に保持する。ステータ12及びロータ13の下方において、駆動部ケース11の内周に嵌合するように、有頂円筒状の支持筒16が配設されている。支持筒16の下端が、駆動部ケース11をふさぐ環状部材17の上面に当接しており、駆動部ケース11の下端と環状部材17の外周とは、カシメにより固定されている。
【0016】
支持筒16は、頂部中央下面に形成された中空円筒部16aと、貫通孔(不図示)とを有する。駆動軸14の下端は、支持筒16の貫通孔を貫通すると共に、貫通孔により回転可能に支持されている。
【0017】
次に、減速部20について説明する。
減速部20は、支持筒16の頂部下面と環状部材17の上面に両端をそれぞれ保持された第1軸21及び第2軸22と、支持筒16の貫通孔を貫通した駆動軸14の下端に固定された駆動ギヤ23と、第1軸21に対して回転可能に保持された第1伝達ギヤ24と、第2軸22に対して回転可能に保持された第2伝達ギヤ25と、最終ギヤ26と、雄ねじ軸27と、雌ねじ筒28とを有する。最終ギヤ26が回転体を構成し、雄ねじ軸27が移動体を構成する。雄ねじ軸27は、最終ギヤ26に圧入固定され一体とされている。
【0018】
第1軸21及び第2軸22は、駆動軸14と平行に配設されている。図5に示すように、第1伝達ギヤ24は、駆動ギヤ23に噛合する第1入力ギヤ部24aと、第1出力ギヤ部24bとを同軸に連結してなる。第2伝達ギヤ25は、第1出力ギヤ部24bに噛合する第2入力ギヤ部25aと、最終ギヤ26に噛合する第2出力ギヤ部25bとを同軸に連結してなる。なお、各軸を金属製、各ギヤを樹脂製とすることができる。駆動ギヤ23、第1伝達ギヤ24、第2伝達ギヤ25,最終ギヤ26によりギヤ列を構成する。
【0019】
駆動ギヤ23の歯数ZAは、第1入力ギヤ部24aの歯数ZBよりも少ない。また、第1出力ギヤ部24bの歯数ZCは、第2入力ギヤ部25aの歯数ZDよりも少ない。さらに、第2出力ギヤ部25bの歯数ZEは、最終ギヤ26の歯数ZFよりも少ない。このため、駆動ギヤ23から最終ギヤ26まで回転力が伝達される間に、減速比(ZB/ZA)×(ZD/ZC)×(ZF/ZE)による減速が行われる。
【0020】
図2,4を参照して、最終ギヤ26は、その下面に雄ねじ軸27を取り巻くように、円弧溝26aを備えている。円弧溝26aの周方向の一端を端部26bとし、その他端を端部26cとする。端部26bから端部26cまでの角度は、所与の値となっている。ここで、端部26bが第1係合部を構成し、端部26cが第3係合部を構成する。第1係合部及び第3係合部については後述する。上述したように、最終ギヤ26は回転体を構成するが、回転体は最終ギヤ26に限らない。例えばロータ13から回転力を受けて回転する部材であって、回転に応じて弁本体31の第2係合部に対して接近または離間する第1係合部を少なくとも有するものであれば、回転体として用いることができる。
【0021】
図1,2において、環状部材17の上面に穴17aが形成され、ピン29の下端が穴17aに嵌合固定されている。また、ピン29の上端が、円弧溝26a内に位置するように配設されている。ピン29が、弁本体31に配設された第2係合部及び第4係合部を構成する。ここで、「弁本体31に配設された」とは、弁本体31上に直接配設されるほか、弁本体31に固定される他部材上に間接的に配設される場合を含む。第2係合部及び第4係合部については後述する。
【0022】
雄ねじ軸27は、その上端を支持筒16の中空円筒部16aの内周16bに嵌合させ、中空円筒部16a内で相対回転及び軸線方向に変位可能に配設されている。また、雄ねじ軸27の中間位置において最終ギヤ26が嵌合固定されており、その下端側の外周には雄ねじ27aが形成されている。
【0023】
中空円筒状である雌ねじ筒28は、縮径した上端側において環状部材17の内周に嵌合して固定されており、軸線Lに沿って貫通する貫通孔28aを備える。貫通孔28aの下端側には、雄ねじ27aに螺合する雌ねじ28bが形成されている。雌ねじ筒28は環状部材17に固定されているため、雄ねじ軸27が回転すると、雄ねじ27aが雌ねじ28bに対して螺動し、これにより雌ねじ筒28から軸線方向力が付与される。これにより、雄ねじ軸27は、自身の回転角度に応じた量だけ軸線方向に変位することとなる。雄ねじ軸27と雌ねじ筒28とで、変換機構を構成する。
【0024】
雌ねじ筒28は、その下端に拡径した薄肉円筒部28cを備える。また、雌ねじ筒28の外周に、円筒状の連結部材34が配設されている。連結部材34は、雌ねじ筒28の外周に嵌合する縮径した上端部34aと、下端内周の内ねじ部34bとを備える。
【0025】
次に、弁機構部30について説明する。
弁機構部30は、弁本体31と、弁軸32と、弁体33と、を有する。
【0026】
金属製の弁本体31は、比較的肉厚の中空円筒状であり、上端外周に縮径部31aを備え、縮径部31aの下方外周に、外ねじ部31bを備える。縮径部31aの外周に薄肉円筒部28cが嵌合する。雌ねじ筒28の外周に嵌合させた連結部材34の内ねじ部34bを、外ねじ部31bに螺合させ、連結部材34をねじ込むことで、その縮径した上端部34aの下面が薄肉円筒部28cの上端段部に当接係合する。これにより弁本体31に対して雌ねじ筒28を連結固定することができる。
【0027】
薄肉円筒部28cの内周における雌ねじ筒28の下面と、弁本体31の上端との間にはスペーサ35が配置され、連結固定時の弁本体31と雌ねじ筒28との間隔を調整できるようになっている。
【0028】
弁本体31の下端近傍外周に形成された開口31cに、軸線Lに直交するように第1流路を構成する第1配管51が連結されている。第1配管51の軸線をOとする。
【0029】
また、弁本体31の下端において軸線Lと同軸に形成された開口が、オリフィス31dを構成する。また、オリフィス31dの上端が、弁座31eを構成する。オリフィス31dに連通するようにして、第2配管52が弁本体31に連結されている。
【0030】
弁本体31の内側に弁軸32が配設されている。弁軸32は、小径部32aと、大径部32bと、鍔部32cと、小径凸部32dとを同軸に連設してなる。雄ねじ軸27の下端に対向する小径部32aの上端には、弁軸32とは別体であるボール保持部32eが取り付けられている。雄ねじ軸27の下端中央の凹部と、ボール保持部32eの上端中央の凹部との間に、金属製のボール37が配置される。
【0031】
弁本体31の上端内周に、環状板36がカシメ固定されている。弁軸32の小径部32aを囲うようにして、金属製のベローズ38が、環状板36の下面と、弁軸32の大径部32bの上端外周とを連結している。このため流量制御弁1の使用時に、弁本体31の内部において、ベローズ38の外側は冷媒と接するが、ベローズ38の内側は大気に接することとなる。弁本体31の内部であってベローズ38の外側が、弁室Cを構成する。
【0032】
弁軸32の下方には、有底円筒状の弁体33が配置されている。弁体33は、弁本体31の内周に対して摺動可能な上端側の大円筒部33aと、下端側の小円筒部33bと、底部33cとを連設してなる。底部33cの下面側は、軸線Lに軸対称であるテーパ面33dが形成されている。大円筒部33aの上端は、環状のスライド板40の外周にカシメ固定されている。スライド板40は、弁軸32の大径部32bに、軸線L方向に沿って摺動可能に嵌合しているが、鍔部32cに当接することで、それ以上弁軸32の下方に移動することはない。弁軸32と弁体33とは、軸線方向に所定距離だけ相対変位可能である。
【0033】
弁体33の小円筒部33bの内周側において、付勢部材であるコイルバネ39が配設されている。コイルバネ39の上端は、小径凸部32dの周囲にて弁軸32の下端に当接し、コイルバネ39の下端は、弁体33の底部33cの上面に当接している。このため、コイルバネ39により、弁体33は弁軸32に対して常に下方に付勢されている。なお、雄ねじ軸27は、弁軸32及び弁体33と一体に形成されていてもよい。
【0034】
(流量制御弁の動作)
本実施形態にかかる流量制御弁1の動作を説明する。第1配管51と第2配管52は、冷凍サイクルに接続されており、第1配管51が入口側配管、第2配管52が出口側配管であるとする。
【0035】
(閉弁時)
開弁した状態から、駆動部10に対して外部電源から制御信号に応じて給電が行われ、駆動軸14が一方向に回転すると、減速部20のギヤ列を介して減速されて雄ねじ軸27に伝達される。雄ねじ軸27に伝達された回転運動は、減速部20の変換機構を介して軸線方向運動に変換され、これにより雄ねじ軸27は、最終ギヤ26とともに下方に変位する(最終ギヤ26の回転に応じて、ねじ軸27は軸線方向下方に移動する)。最終ギヤ26が軸線方向に変位しても、第2伝達ギヤ25との噛合が外れることはない。
【0036】
雄ねじ軸27が下方に変位すると、ボール37を介して押されることで、弁軸32は下方に移動する。弁軸32が下方に移動すると、ベローズ38が伸長し、コイルバネ39に押された状態で弁体33が下方に移動し、テーパ面33dが弁座31eに着座する。このときコイルバネ39は、着座時の衝撃を弱める緩衝効果を発揮する。
【0037】
さらに弁軸32が回転することで、弁軸32が下降してコイルバネ39が圧縮され、テーパ面33dが弁座31eに対して所定の付勢力で押圧される。このとき、スライド板40が弁軸32の大径部32bの外周に沿って摺動するため、コイルバネ39の付勢力に抗して弁軸32と弁体33の相対変位が許容される。以上により、所定の予圧が付与されて閉弁状態が確保されるため、第1配管51から弁室Cを通過して第2配管52へ向かう冷媒の流れが遮断される。かかる状態を図1に示す。
【0038】
またこの間、弁室C内の流体圧がベローズ38の外表面に作用するため、所定値以上の流体圧が作用すれば、ベローズ38を縮長方向に作用させ、弁軸32と共に弁体33を開方向に移動させることができる。
【0039】
ところで、駆動部10から出力された回転力は、減速部20によって減速されており、そのため雄ねじ軸27と弁軸32を軸線方向に移動させる力も強くなる。したがって、弁軸32が弁体33に底付きした状態で、さらに駆動部10からの回転力が印加されると、テーパ面33dと弁座31eとの間に生じる押圧力が過大となる。
【0040】
本実施形態においては、テーパ面33dと弁座31eとの間に生じる押圧力が過大となることを抑制する構造を設けている。具体的には、雄ねじ軸27と共に最終ギヤ26が回転すると、ピン29が円弧溝26aに沿って相対移動し、ピン29と端部26bとが接近する。さらに、テーパ面33dが弁座31eに着座した後、雄ねじ軸27が所定角度回転したときに、ピン29(第2係合部)が、円弧溝26aの端部26b(第1係合部)に当接するため、それ以上の最終ギヤ26の回転が阻止され、それ以上、弁軸(弁体)が下降しなくなる。かかる状態を図2に示す。すなわち、ピン29(第2係合部)と端部26b(第1係合部)はそれぞれ弁体の下限側ストッパとして機能する。
【0041】
これにより雄ねじ軸27及び弁軸32の下降が制止されるため、弁軸32に対して弁体33に付与される押圧力はコイルバネ39の付勢力のみとなり、テーパ面33dと弁座31eとの間に生じる押圧力の過度な上昇を回避できる。このとき、異物がテーパ面33dと弁座31eとの間に噛み込まれた場合でも、押圧力が比較的低いことから圧痕が生じることがなく、次に開弁したときに異物が脱落すれば、テーパ面33dと弁座31eとの良好なシール性を確保できる。
【0042】
(開弁時)
一方、外部電源から逆特性の制御信号に応じた給電により、駆動軸14が逆方向に回転すると、減速部20のギヤ列を介して減速されて雄ねじ軸27に伝達される。雄ねじ軸27に伝達された回転運動は、減速部20の変換機構を介して軸線方向運動に変換され、これにより雄ねじ軸27は、最終ギヤ26とともに上方に変位する。
【0043】
雄ねじ軸27が上方に変位すると、弁軸32を閉弁方向に押圧する力が消失するため、弁室C内の冷媒圧を受けたベローズ38が縮長しつつ、弁軸32も上昇する。弁軸32が上昇すると、スライド板40が弁軸32の鍔部32cに係止され、その後は弁軸32と共に弁体33も上昇するため、テーパ面33dが弁座31eから離間する。かかる状態を図3に示す。
【0044】
このとき、第1配管51から弁室Cに進入した冷媒は、テーパ面33dと弁座31eとの隙間を通過して、オリフィス31dを介して第2配管52へと流出する。テーパ面33dと弁座31eとの隙間は、駆動軸14の回転角度に応じて変化するため、駆動軸14の回転角度を調整することで、第1配管51から第2配管52へ流れる冷媒の量を調整できる。
【0045】
また、本実施形態によれば、例えば脱調現象などによって、仮に駆動軸14が逆方向に回転しすぎた場合でも、ピン29(第4係合部)が円弧溝26aの反対側の端部26c(第3係合部)に当接するため、それ以上の最終ギヤ26の回転を阻止され、それ以上、弁軸(弁体)が上昇しなくなる。かかる状態を図4に示す。すなわち、ピン29(第4係合部)と端部26b(第3係合部)はそれぞれ弁体の上限側ストッパとして機能する。
【0046】
(変形例)
図6は、本実施形態の変形例にかかるギヤ列を示す、図5と同様な断面図である。本変形例の減速部20Aも、第1軸21及び第2軸22と、駆動ギヤ23と、第1伝達ギヤ24と、第2伝達ギヤ25と、最終ギヤ26Aと、雄ねじ軸27と、を有する。上述した実施の形態に対して、共通する構成については同じ符号を付して重複説明を省略する。
【0047】
本変形例においては、上述した実施の形態に対して、最終ギヤ26Aの下面に円弧溝を設けておらず、その代わりに、下面における軸線Lから離れた位置に突起26Aaを形成している。突起26Aaが第1係合部を構成する。
【0048】
最終ギヤ26Aは、上述した実施の形態と同様に、雄ねじ軸27と共に回転に応じて上下に移動するため、突起26Aaは、開弁状態から閉弁方向に弁体33が移動する際に、軸線Lの周囲を螺旋運動しながら下降する。したがって、突起26Aaの高さHを予め調整することで、1回転目には突起26Aaがピン29(第2係合部)の上部を通過し(空振りし)、2回転目以降に初めて突起26Aa(第1係合部)をピン29に当接させることができ(図5参照)、それ以上の出力ギヤの回転が阻止される。すなわち、ピン29(第2係合部)と突起26Aa(第1係合部)はそれぞれ下限側ストッパとして機能する。
【0049】
本変形例によれば、突起26Aaをピン29に当接させるタイミングの選択の自由度が高まるため、減速部20Aの適切な減速比を選択することができる。また、本変形例によれば、溝を設けないことにより、最終ギヤ26Aをより薄形とすることができ、それにより流量制御弁の軽量化を図れる。
【0050】
なお、突起26Aa及びピン29が先端側の端面同士が当接することと避けるために、突起26Aa及びピン29はそれぞれ先端側の端面は平面ではなく、雄ねじ(雌ねじ)のネジ山の傾斜に平行な傾斜面を有するように形成されると好適である。
【0051】
[第2の実施形態]
図7は、第2の実施の形態にかかる流量制御弁1Bの閉弁状態を示す縦断面図であり、図8は、図7に示す流量制御弁1BのB-B線における断面を平面視した図である。図9は、第2の実施の形態にかかる流量制御弁1Bの開弁状態を示す縦断面図であり、図10は、図9に示す流量制御弁の図8と同様な断面を平面視した図である。図11は、流量制御弁1Bに用いるギヤ列を、各ギヤの軸線が同一平面内に位置するように展開して示す図であるが、一部簡略化して示している。
【0052】
(流量制御弁の構成)
流量制御弁1Bは、駆動部10Bと、減速部20Bと、弁機構部30とを有する。ここでも、弁機構部30の軸線をLとする。また、モータ側を上方とし、弁体側を下方として説明する。
【0053】
本実施形態の駆動部10Bは、支持筒16Bを備えている。支持筒16Bの頂部下面において軸線Lと同軸に固定軸16Baが形成されている。環状部材17Bは、ピンを植設していない。代わりに、支持筒16Bの下面において軸線Lから離れた位置にピン29Bが下方に向けて植設されている。
【0054】
減速部20Bは、支持筒16Bの頂部下面と環状部材17Bの上面に両端をそれぞれ保持された第1軸21及びアイドル軸22Bと、駆動軸14の下端に固定された駆動ギヤ23と、第1軸21に対して回転可能に保持された第1伝達ギヤ24と、固定軸16Baに回転可能に保持され且つ雄ねじ軸27Bに同軸に連結された最終ギヤ25Bと、アイドル軸22Bに同軸に連結され最終ギヤ25Bに噛合するアイドルギヤ26Bとを有する。最終ギヤ25Bが回転体を構成する。上述した実施の形態に対して、共通する構成については同じ符号を付して重複説明を省略する。
【0055】
アイドルギヤ26Bの上面には、隆起部26Baが形成されている。隆起部26Baは、図8,10に示すように軸線L方向に見て幅狭の扇状に形成されている。周方向に対向する隆起部26Baの一側面を端面26Bbとし、その他側面を端面26Bcとする。端面26Bbから端面26Bcでの角度は、所与の値となっている。
【0056】
第1伝達ギヤ24は、駆動ギヤ23に噛合する第1入力ギヤ部24aと、第1出力ギヤ部24bとを同軸に連結してなる。最終ギヤ25Bは、第1出力ギヤ部24bに噛合する入力ギヤ部25Baと、アイドルギヤ26Bに噛合する出力ギヤ部25Bbとを同軸に連結してなる。
【0057】
流量制御弁1Bにおいて、弁体33の着座後において雄ねじ軸27Bが所定角度回転したときに、アイドルギヤ26Bの隆起部26Baの端面26Bb(第1係合部)がピン2
9(第2係合部)に当接するため、それ以上の最終ギヤ25Bの回転が阻止される。かかる状態を図8に示す。すなわち、ピン29(第2係合部)と端面26Bb(第1係合部)はそれぞれ弁体の下限側ストッパとして機能する。
【0058】
これに対し、開弁時に雄ねじ軸27Bが逆方向に回転したときに、アイドルギヤ26Bの隆起部26Ba(第3係合部)の端面26Bcがピン29(第4係合部)に当接するため、それ以上の最終ギヤ25Bの逆回転が阻止される。かかる状態を図10に示す。すなわち、ピン29(第4係合部)と端面26Bb(第3係合部)はそれぞれ弁体の上限側ストッパとして機能する。
【0059】
本実施形態において、駆動ギヤ23の歯数ZAは、第1入力ギヤ部24aの歯数ZBよりも少ない。また、最終ギヤ25Bの入力ギヤ部25Baの歯数ZGは、第1出力ギヤ部24bの歯数ZCよりも少ない。このため、駆動ギヤ23から最終ギヤ25Bまで回転力が伝達される間に、減速比(ZB/ZA)×(ZC/ZG)による減速が行われる。一方、最終ギヤ25Bの出力ギヤ部25Bbの歯数ZHは、アイドルギヤ26Bの歯数ZIよりも少ないため、最終ギヤ25Bに対して、アイドルギヤ26Bの回転は、減速比(ZI/ZH)で減速される。
【0060】
本実施形態によれば、最終ギヤ25Bの回転角度に対してアイドルギヤ26Bの回転角度が増大するため、端面26Bbにピン29が当接するタイミングをより高精度に設定可能である。あるいは、端面26Bbにピン29が当接するタイミングを変えることなく、駆動ギヤ23の回転角度に対する弁体33のリフト量を増大できる。これにより弁全開時の圧力損失を低減させることができるため、オリフィス径の縮小が可能となり、差圧負荷の低減を期待できる。
【0061】
[第3の実施形態]
図12は、第3の実施の形態にかかる流量制御弁1Cの閉弁状態を示す縦断面図であり、図13は、第3の実施の形態にかかる流量制御弁1Cの開弁状態を示す縦断面図であるが、ここではステータを省略している。図14は、遊星歯車機構を分解した状態で示す図である。図15は、ギヤ本体125の下面と雌ねじ筒128の上面とを示す斜視図である。
【0062】
(流量制御弁の構成)
流量制御弁1Cは、駆動部110と、当該駆動部110による回転力が入力されて歯車減速を行う遊星ギヤ式減速機構(以下、「減速部」と略する)120と、弁機構部130とを備えている。流量制御弁1Cの軸線をLとする。また、モータ側を上方とし、弁体側を下方として説明する。
【0063】
図において、不図示のステータの径方向内側に配置されるキャン111は、その下端が弁本体131に対して環状の受け部材112を介して固着された気密容器であって、薄肉の有頂円筒状を有する。駆動部110は、不図示のステータによって回転駆動される永久磁石型のロータ組立体113を有している。ロータ組立体113は、キャン111の内部において回転自在に支持されている。ステータとロータ組立体113とにより、電動モータの一例としてのステッピングモータが構成される。
【0064】
減速部120は、図14に示すように、ロータ組立体113と一体の太陽ギヤ121と、例えばプラスチックを成形加工して形成されているキャリヤ122に回転自在に支持され且つ太陽ギヤ121と噛み合う複数(この例では3個)の軸線方向に長い遊星ギヤ123と、太陽ギヤと同心に配置されていて各遊星ギヤ123の一部分(上側部分)と噛み合うリングギヤ124と、リングギヤ124の歯数と僅かに歯数が異なる内歯が内周に形成された(即ち、リングギヤ124とは転位関係にある)出力ギヤ部125aを備えたギヤ本体125とを備えている。太陽ギヤ121、キャリヤ122、リングギヤ124及びギヤ本体125は、PPS(ポリフェニレンサルファイド樹脂)から形成されていると好ましい。ギヤ本体125が回転体を構成する。
【0065】
図14から明らかなように、各遊星ギヤ123は、リングギヤ124と噛み合うと同時に、一部分(下側部分)において、ギヤ本体125の出力ギヤ部125aと噛み合っている。
【0066】
ロータ組立体113は、磁性材料を含有するプラスチック材料(ここではPPS)によって、周壁としての筒体126と中央に配設される太陽ギヤ部材127とが一体に有頂筒状に成形されている。またロータ組立体113は、太陽ギヤ部材127を軸線方向に貫通するシャフト114(図12,13)によって、キャン111内部において回転自在に支持されている。
【0067】
図14に示すように、太陽ギヤ部材127の中心に植設された円筒の外周に太陽ギヤ121が形成されている。リングギヤ124は、例えばプラスチックを成形加工して作られたリング状のギヤである。
【0068】
このような構成によれば、電動モータの回転入力により太陽ギヤ121が自転回転をすると、太陽ギヤ121とリングギヤ124とに噛み合う遊星ギヤ123が自転しながら太陽ギヤ121の回りを公転回転する。遊星ギヤ123は、リングギヤ124との関係で転位した関係にあるギヤ本体125と噛み合っているので、遊星ギヤ123のこの回転により、ギヤ本体125は、転位の程度(歯数差)に応じてリングギヤ124に対して例えば50対1程度の相対的に非常に高い減速比で回転する。遊星ギヤ123が転位した関係にあるリングギヤ124と出力ギヤ部125aとに噛み合っている遊星ギヤ機構は、不思議遊星ギヤ機構と称されている。
【0069】
キャリヤ122は、3つの柱部122aを平行に上面外周に植設してなる下部円盤122bと、環状のプレート122cと、下部円盤122bの中央から下方に延在する円筒状のキャリヤ軸部122dとを有し、柱部122aを介して下部円盤122bとプレート122cとが平行に固定されている。キャリヤ軸部122dの上端側には、シャフト114の下端が回転可能に嵌合する嵌合孔122eが同軸に形成され、その下端側には係合孔122fが同軸に形成されている。係合孔122fは、軸線Lに直交する断面が、例えばD字形のように非円形状を備える。
【0070】
周方向に隣接する柱部122aの間において、亜鉛合金から形成された遊星ギヤ123の両端が、下部円盤122bとプレート122cとに対して回転自在に保持されており、これにより遊星ギヤ123はキャリヤ122に対して回転可能となっている。
【0071】
図12,13において、キャリヤ122の下方に、雌ねじ筒128が配設されている。雌ねじ筒128は、環状板132を介して弁本体131の上端に固定連結されている。
【0072】
雌ねじ筒128は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などの摺動性に優れた樹脂製であり、その上端近傍に金属製の環状板132をインサート成形などにより固着してなる。雌ねじ筒128は、上端中央に形成された円筒状の開口128aと、開口128aと連通する雌ねじ部128bと、下端側の薄肉円筒部128cとを有する。開口128aには、キャリヤ軸部122dが相対回転可能に嵌合している。
【0073】
図15において、ギヤ本体125の下面には、軸線から離間した位置に突起部125cが形成されている。一方、雌ねじ筒128の上面には、薄肉円筒部128cの下方に係止部128eが形成されている。係止部128eは、所定の角度にわたって延在する半円筒面状の案内部128fと、案内部128fの周方向の一端に形成された段部128gと、その他端に形成された段部128hとを有する。突起部125cが第1係合部及び第3係合部を構成し、段部128gが第2係合部を構成し、段部128hが第4係合部を構成する。
【0074】
なお、ギヤ本体125が薄肉円筒部128cの外周部にガイドされることにより、ギヤ本体125の回転軸が固定され、各ギヤの回転が安定する。また、出力ギヤ部125aの下方に配置されているガイドと同じ方向且つ近い位置に突起部125cを設けることで、突起部125cが段部128gに当接した際にもギヤの回転軸に交わる方向に負荷が生じにくいため、ギヤの摩耗を低減できる。第1係合部~第4係合部については後述する。
【0075】
さらに、本実施形態では、突起部125cがギヤ本体125の下面に形成され、係止部128e(段部128g)が雌ねじ筒128の上面に形成されているが、突起部125cをギヤ本体125の上面に、係止部128e(段部128g)をリングギヤ124の下面に形成してもよいことはもちろんである。この場合は、ギヤ本体125の外周とギヤケース141の内周をガイドすることで、ギヤの回転軸に交わる方向に負荷が生じにくくなり、ギヤの摩耗を低減できる。もちろん、突起部125cをギヤ本体125の側面に形成し、係止部128eをそれにあわせて配置してもよい。
【0076】
雌ねじ筒128の縮径した薄肉円筒部128cを、ギヤ本体125の底部開口125bに嵌合させて、ギヤ本体125と雌ねじ筒128とが組み付けられた時、係止部128eの上面が、ギヤ本体125の下面に当接する。かかる状態で、ギヤ本体125と雌ねじ筒128とは相対回動可能であり、それにより突起部125cは案内部128fの外周に沿って相対移動する。
【0077】
図12,13において、雌ねじ筒128内に挿入される雄ねじ部材129は、係合部129aと、雄ねじ部129bと、円盤部129cとを連設してなる。係合部129aは、軸線Lに直交する断面が係合孔122fと同様に非円形状であり、係合孔122fに係合した状態で係合孔122fに対して軸線方向に相対移動可能であるが、回転方向には一体的に回転する。雄ねじ部129bは雌ねじ部128bに螺合する。雄ねじ部材129が移動体を構成する。
【0078】
ここで、雌ねじ筒128に固着された環状板132は、溶接等により弁本体131に接合されているため、雄ねじ部材129が回転すると、雄ねじ部129bが雌ねじ128bに対して螺動する。これにより雌ねじ筒128から軸線方向力が付与されるため、雄ねじ部材129は回転角度に応じた量だけ軸線方向に変位することとなる。雌ねじ筒128はPTFE製であるため、グリスなどの潤滑剤は不要である。雄ねじ部材129と雌ねじ筒128とで、変換機構を構成する。
【0079】
雌ねじ筒128の薄肉円筒部128c内に、円盤部129cが配置される。薄肉円筒部128cの周壁には、連通孔128dが形成されている。
【0080】
次に、弁機構部130について説明する。
金属製の弁本体131は、比較的圧肉の中空円筒状であり、上述したように、キャン111の下端が環状の受け部材112を介して固着されており、また弁本体131の上端外周とリングギヤ124の外周とが、薄肉円筒部材であるギヤケース141により連結されている。弁本体131において、ギヤケース141と受け部材112との間の周壁に、連通孔131aが形成されている。弁本体131の内部が、弁室Cを構成する。
【0081】
弁本体131の下端近傍外周に形成された開口131cに、軸線Lに直交するように第1流路を構成する第1配管51が連結されている。第1配管51の軸線をOとする。
【0082】
また、弁本体131の下端において軸線Lと同軸に形成された開口が、オリフィス131dを構成する。また、オリフィス131dの上端が、弁座131eを構成する。オリフィス131dに連通するようにして、第2配管52が弁本体131に連結されている。
【0083】
雄ねじ部材129の下方には、有底円筒状のスリーブ部材133が配置されている。スリーブ部材133は、薄肉円筒部128cの内周に嵌合して摺動可能な円筒部133aと、底部133cとを連設してなる。円筒部133aの周壁には、連通孔133bが形成されている。円筒部133aの上端は、雄ねじ部材129の円盤部129cの外周にカシメ固定されており、スリーブ部材133と雄ねじ部材129とは一体で移動する。底部133cは、中央に円形開口133dを備える。
【0084】
ニードル部材134は、鍔部134aと、鍔部134aより小径の胴部134bとを連設してなる。鍔部134aとスリーブ部材133の底部133cとの間には、スペーサ135が配置されている。
【0085】
鍔部134aをスリーブ部材133内に配設した状態で、胴部134bを円形開口133dに嵌合させたとき、胴部134bの下端側がスリーブ部材133から突き出るが、鍔部134aが円形開口133dの縁に引っかかるため、ニードル部材134はスリーブ部材133から脱落しない。
【0086】
ニードル部材134の鍔部134aの上方には、筒状のホルダ136が配設されている。ホルダ136は、円形フランジ部136aと、円筒部136bとを連設してなる。
【0087】
円筒部136bの外方において、円形フランジ部136aの上面に、下端を当接させるようにしてコイルバネ139が配設されている。付勢部材であるコイルバネ139の上端は、円盤部129cの下面に当接している。このため、コイルバネ139により、ホルダ136を介してニードル部材134は、雄ねじ部材129に対して常に下方に付勢されている。
【0088】
スリーブ部材133から下方に突き出た胴部134bの外周に、環状の弁体137が圧入などによって取り付けられている。弁体137の外周面は、下方に向かって縮径する円錐形状となっている。なお、ニードル部材134の下端も円錐形状としてもよい。ニードル部材134が下方に押圧された状態で、スリーブ部材133の下面と弁体137の上面との間には、所定の隙間が形成され、この隙間分だけ、スリーブ部材133とニードル部材134とは軸線方向に相対変位可能である。この隙間は、スペーサ135の厚みを変更することにより調整可能である。
【0089】
(流量制御弁の動作)
本実施形態にかかる流量制御弁1Cの動作を説明する。第1配管51と第2配管52は、冷凍サイクルに接続されており、第1配管51が入口側配管、第2配管52が出口側配管であるとする。
【0090】
(閉弁時)
開弁状態から、制御信号に応じて外部電源から給電が行われると、不図示のステータが磁力を発生する。かかる磁力に応じた角度だけ、ロータ組立体113が回転駆動され、所定方向に回転力を発生する。かかる回転力は太陽ギヤ121に伝達され、減速部120を介して減速され、出力ギヤ部125aに伝達され、ギヤ本体125が軸線L回りに回転する。
【0091】
ギヤ本体125の回転に伴って雄ねじ部材129が回転する。雄ねじ部材129の回転運動は、変換機構を介して軸線方向運動に変換され、これにより雄ねじ部材129はギヤ本体125に対して下方に変位する。雄ねじ部材129が下方に変位すると、スリーブ部材133、ホルダ136、ニードル部材134、弁体137も下方に変位する。このとき、突起部125cも案内部128fの外周に沿って相対移動し、段部128gに接近する。
【0092】
弁体137の外周面が弁座131eに着座した後に、位置固定されたニードル部材134に対し、スリーブ部材133が下方に相対移動し、コイルバネ139がさらに圧縮される。このときコイルバネ39は、着座時の衝撃を弱める緩衝効果を発揮する。さらに雄ねじ部材129が下降して、弁体137が弁座131eに対して所定の付勢力で押圧され、閉弁状態が確保されるため、第1配管51から弁室Cを通過して第2配管52へ向かう冷媒の流れが遮断される。かかる状態を図11に示す。
【0093】
本実施形態においては、スリーブ部材133の下面と弁体137の上面との間の隙間がゼロになる前に、突起部125c(第1係合部)が案内部128fの段部128g(第2係合部)に当接するため、それ以上の雄ねじ部材129の回転及び下降が阻止される。すなわち、突起部125c(第1係合部)と段部128g(第2係合部)はそれぞれ弁体の下限側ストッパとして機能する。
【0094】
これにより、弁体137に付与される押圧力はコイルバネ39の付勢力のみとなり、弁体137と弁座131eとの間に生じる押圧力の過度な上昇を回避できる。このとき、異物が弁体137と弁座131eとの間に噛み込まれた場合でも、押圧力が比較的低いことから圧痕が生じることがなく、次に開弁したときに異物が脱落すれば、弁体137と弁座131eとの良好なシール性を確保できる。
【0095】
本実施形態によれば、ギヤ本体125と雌ねじ筒128とは軸線方向に相対移動しないため、同じ位置で突起部125cと段部128gとの当接が行われることから、当接面積を確保でき、それにより耐久性が高まる。
【0096】
(開弁時)
一方、外部電源から逆特性の制御信号に応じた給電により、ロータ組立体113が回転駆動され、逆方向に回転力を発生する。かかる回転力は太陽ギヤ121に伝達され、減速部120を介して減速され、出力ギヤ部125aに伝達され、ギヤ本体125が軸線L回りに逆方向に回転する。
【0097】
ギヤ本体125の回転に伴って雄ねじ部材129が回転する。雄ねじ部材129の回転運動は、変換機構を介して軸線方向運動に変換され、これにより雄ねじ部材129はギヤ本体125に対して上方に変位する。雄ねじ部材129が上方に変位すると、スリーブ部材133、ホルダ136、ニードル部材134、弁体137も上方に変位する。このとき、突起部125cも案内部128fの外周に沿って相対移動する。
【0098】
弁体137の外周面が弁座131eから離間すると、第1配管51から弁室Cに進入した冷媒は、弁体137と弁座131eとの隙間を通過して、オリフィス131dを介して第2配管52へと流出する。弁体137と弁座131eとの隙間は、太陽ギヤ121の回転角度に応じて変化するため、太陽ギヤ121の回転角度を調整することで、第1配管51から第2配管52へ流れる冷媒の量を調整できる。かかる状態を図13に示す。
【0099】
このとき、弁室Cに流入した冷媒は、連通孔128dを介して薄肉円筒部128c内へと進入し、連通孔133bを介してスリーブ部材133内へと進入し、また連通孔131aを介してキャン111内へと進入するため、動作を妨げるおそれのある流量制御弁1C内における各部圧力差を解消することができる。
【0100】
また、本実施形態によれば、例えば脱調現象などによって、仮に太陽ギヤ121が逆方向に回転しすぎた場合でも、突起部125c(第3係合部)が案内部128fの段部128h(第4係合部)に当接するため、それ以上の雄ねじ部材129の回転及び上昇が阻止される。すなわち、突起部125c(第3係合部)と段部128h(第4係合部)はそれぞれ弁体の上限側ストッパとして機能する。
【0101】
[第4の実施形態]
図16は、第4の実施の形態にかかる流量制御弁1Dの閉弁状態を示す縦断面図であるが、同様にステータを省略している。本実施形態においては、第3の実施形態に対して、ギヤ本体125D及び雌ねじ筒128Dの形状と、キャリヤ122Dと軸部122Ddとが分離している点が主として異なる。上述した実施の形態に対して、共通する構成については同じ符号を付して重複説明を省略する。
【0102】
回転体であるギヤ本体125Dは、中央の底部開口125Dbの上端周囲から上方に突出する環状部125Deを備える。環状部125Deの上面には、円板状のキャリヤ122Dが摺動可能に配置されている。雌ねじ筒128Dは、薄肉円筒部を有しておらず、その上端面はギヤ本体125Dの下面に対向している。
【0103】
ギヤ本体125Dの底部開口125Dbの内周には、軸部122Ddの縮径した上端部122Dhが圧入により嵌合されており、軸部122Ddの下端側は、雌ねじ筒128Dの開口128Daに摺動可能に嵌合している。軸部122Ddの上端面は、キャリヤ122Dの下面に対向して配置されている。軸部122Ddの係合孔122Dfには、雄ねじ部材129の係合部129aが嵌合している。シャフト114の下端は、キャリヤ122Dの中央開口を貫通して、軸部122Ddの嵌合孔122Deに相対回転可能に嵌合している。
【0104】
本実施の形態によれば、キャリヤ122Dと軸部122Ddとが相対回転する代わりに、ギヤ本体125Dと軸部122Ddとが一体的に回転する。このため、係合孔122Dfと係合部129aとの係合を介して、雄ねじ部材129も同時に回転する。これにより、雌ねじ128Dbと雄ねじ部129bとの相対螺動がなされて、弁体137が軸線L方向に変位する。
【0105】
ギヤ本体125Dは減速部120によって最も減速されるギヤであるものの、この構成ではギヤ本体125Dが回転できる回転角度が少ないため(例えば360度未満)、本実施形態では雌ねじ128Dbと雄ねじ部129bのねじピッチを比較的大きくして、弁体137の必要なリフト量を確保している。
【0106】
リフト量を確保する手段としては、ねじピッチを大きくすること以外にも、雌ねじ128Dbと雄ねじ部129bに多条ねじ(例えば二条ねじ)を採用することがある。ねじ径が小さい場合は、ピッチを大きくするだけでは剛性が不足してしまうため、このような多条ねじの採用が効果的である。
【0107】
本実施形態においても、ギヤ本体125Dの下面に、軸線から離間した位置において突起部125Dcが形成されている。上述した実施形態と同様に、軸部122Ddの上端に近い位置に突起部125Dcを設けることで、突起部125Dcが雌ねじ筒128Dの段部に当接した際にもギヤの回転軸に交わる方向に負荷が生じにくいため、ギヤの摩耗を低減できる。突起部125Dcが第1係合部及び第3係合部を構成し、雌ねじ筒128Dの案内部128Dfの段部が第2係合部と第4係合部を構成する。
【0108】
なお、本実施形態においては、上記実施の形態と比較して、雄ねじ部材129の回転角度が小さいという特徴を有する。そのため、ギヤ本体125Dに突起部を設ける代わりに、雄ねじ部材129に突起部を設け、また雌ねじ筒128Dまたは弁本体131に、それに対向する凸部を設け、両者を当接可能な位置に配置することによって、雄ねじ部材129の過回転を抑制することができる。この場合、雄ねじ部材129が回転体及び移動体を構成する。
【符号の説明】
【0109】
1、1B、1C、1D 流量制御弁
10、10B 駆動部
20、20B 減速部
26a 最終ギヤの円弧溝
26Ba アイドルギヤの隆起部
29 ピン
30、130 弁機構部
31 弁本体
32 弁軸
33、137 弁体
120 減速部(遊星歯車機構)
125c、125Dc ギヤ本体の突起部
128g 雌ねじ筒の段部

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