(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】組換え安定化ガレクチン9タンパク質を含む、癌の予防または治療用薬学的組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 38/17 20060101AFI20241213BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241213BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241213BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20241213BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20241213BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20241213BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20241213BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20241213BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20241213BHJP
A61K 31/675 20060101ALI20241213BHJP
A61K 31/7068 20060101ALI20241213BHJP
A61K 31/505 20060101ALI20241213BHJP
A61K 31/513 20060101ALI20241213BHJP
A61K 31/704 20060101ALI20241213BHJP
A61K 31/407 20060101ALI20241213BHJP
A61K 31/7016 20060101ALI20241213BHJP
A61K 31/337 20060101ALI20241213BHJP
A61K 33/243 20190101ALI20241213BHJP
A61K 31/282 20060101ALI20241213BHJP
A61K 31/4745 20060101ALI20241213BHJP
A61K 31/7048 20060101ALI20241213BHJP
A61K 31/4439 20060101ALI20241213BHJP
A61K 31/517 20060101ALI20241213BHJP
A61K 9/02 20060101ALI20241213BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20241213BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20241213BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20241213BHJP
A23L 33/17 20160101ALI20241213BHJP
C07K 14/47 20060101ALN20241213BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20241213BHJP
【FI】
A61K38/17 ZNA
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K9/08
A61K9/10
A61K9/14
A61K9/20
A61K9/48
A61K45/00
A61K31/675
A61K31/7068
A61K31/505
A61K31/513
A61K31/704
A61K31/407
A61K31/7016
A61K31/337
A61K33/243
A61K31/282
A61K31/4745
A61K31/7048
A61K31/4439
A61K31/517
A61K9/02
A61K9/16
A61K48/00
A61K31/7088
A23L33/17
C07K14/47
C12N15/12
(21)【出願番号】P 2023530077
(86)(22)【出願日】2021-11-11
(86)【国際出願番号】 KR2021016449
(87)【国際公開番号】W WO2022108243
(87)【国際公開日】2022-05-27
【審査請求日】2023-05-18
(31)【優先権主張番号】10-2020-0154641
(32)【優先日】2020-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】522102778
【氏名又は名称】ジバイオロジックス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】GBIOLOGICS INC.
【住所又は居所原語表記】(Sampyeong-dong) Pangyo Digital Center #C 701-4 Pangyo-ro 242, Bundang-gu, Seongnam-si,Gyeonggi-do 13487 (KR)
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】ソン、デビッド
【審査官】西村 亜希子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/080703(WO,A1)
【文献】Autophagy,2015年,Vol. 11, No. 8,pp. 1373-1388
【文献】International Journal of Oncology,2017年,Vol. 51, No.2,pp. 607-614
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1で表されるアミノ酸配列を有する組換え安定化ガレクチン9タンパク質またはそれをコードするポリヌクレオチドを有効成分として含む、癌の予防または治療用薬学的組成物であって、
前記癌が、KRAS突然変異を有し、大腸癌、膵臓癌、肺癌及び卵巣癌から選択される、薬学的組成物。
【請求項2】
前記組換え安定化ガレクチン9タンパク質が、配列番号1で表されるアミノ酸配列のN末端から1番目のアミノ酸残基の欠失を含む、請求項1に記載の癌の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項3】
前記薬学的組成物が、薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項1に記載の癌の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項4】
前記薬学的組成物が、経口投与用、筋肉内投与用、静脈内投与用、腹腔内投与用、皮下投与用、皮内投与用または局所投与用に製剤化される、請求項1に記載の癌の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項5】
前記薬学的組成物が、錠剤、カプセル剤、注射剤、トロッキー剤、散剤、顆粒剤、液剤、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤、坐剤、膣錠剤及び丸剤で構成される群から選択される剤形に剤形化される、請求項1に記載の癌の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項6】
配列番号1で表されるアミノ酸配列を有する組換え安定化ガレクチン9タンパク質またはそれをコードするポリヌクレオチド及び抗癌剤を、複合剤、混合剤または併用剤の有効成分として含む、癌の予防または治療用薬学的組成物であって、
前記癌が、KRAS突然変異を有し、大腸癌、膵臓癌、肺癌及び卵巣癌から選択される、薬学的組成物。
【請求項7】
前記抗癌剤が、シクロホスファミド(Cyclophosphamide)、ニムスチン(Nimustine)、ゲムシタビン(Gemcitabine)、5-フルオロウラシル(5-Fluorouracil;5-FU)、テガフール-ウラシル(UFT)、ドキソルビシン(Doxorubicin)、エピルビシン(Epirubicin)、マイトマイシン(mitomycin)、フレオマイシン(phleomycin)、パクリタキセル(Paclitaxel)、ドセタキセル(Docetaxel)、シスプラチン(cisplatin)、オキサリプラチン(Oxalite)、イリノテカン(Irinotecan)、エトポシド(etoposide)、アキシチニブ(Axitinib)、タルセバ(Tarceva)からなる群から選択される、
請求項6に記載の癌の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項8】
配列番号1で表されるアミノ酸配列を有する組換え安定化ガレクチン9タンパク質またはそれをコードするポリヌクレオチドと、従来の抗癌剤との配合比が、
1:0.01~1:10重量部である、請求項6に記載の癌の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項9】
配列番号1で表されるアミノ酸配列を有する組換え安定化ガレクチン9タンパク質またはそれをコードするポリヌクレオチドを含む製剤、及び抗癌剤を含む製剤を複合的、混合的または併用的に含む、癌の予防または治療用複合剤、混合剤または併用剤キットであって、
前記癌が、KRAS突然変異を有し、大腸癌、膵臓癌、肺癌及び卵巣癌から選択される、キット。
【請求項10】
前記製剤が、錠剤、カプセル剤、注射剤、トロッキー剤、散剤、顆粒剤、液剤、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤、坐剤、膣錠剤及び丸剤からなる群から選択される剤形に剤形化される、請求項9に記載の癌の予防または治療用複合剤、混合剤または併用剤キット。
【請求項11】
配列番号1で表されるアミノ酸配列を有する組換え安定化ガレクチン9タンパク質またはそれをコードするポリヌクレオチドを有効成分として含む、癌の予防または改善用保健機能食品組成物であって、
前記癌が、KRAS突然変異を有し、大腸癌、膵臓癌、肺癌及び卵巣癌から選択される、保健機能食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組換え安定化ガレクチン9タンパク質及びその用途に関し、特に前記タンパク質を有効成分として含む、癌の予防または治療用薬学的組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
生体にはβ-ガラクトシド構造を持つ糖鎖を特異的に認識する動物レクチンが存在することが見出されており、現在まで少なくとも14種の遺伝子が同定されている。ガレクチンは、その構造によって、プロト型(prototype)、キメラ型(chimera)及びタンデムリピート型(tandem repeat)に分類される。
【0003】
タンデムリピート型ガレクチンの一種であるガレクチン9は、2つの糖鎖認識部位(糖認識ドメイン,carbohydrate recognition domain;CRD)とそれらをつなぐリンクペプチド領域で形成されており、そのリンクペプチド領域によりN末端ドメイン(N-terminal Carbohydrate Recognition Domain;NCRD)とC末端ドメイン(C-terminal Carbohydrate Recognition Domain;CCRD)が連結されたものであり、現在まで多方面にわたる活性が報告されている。T細胞に関して、ガレクチン9は、Tim-3に結合してTim-3陽性Th1細胞のアポトーシス(apoptosis)を誘導し、過剰なTh1反応を阻害することにより、自己免疫性の炎症を抑制する。また、Tim-3が引き起こす自己免疫疾患、アレルギー、癌などの様々な難治性疾患の原因または悪化因子の1つであるTh17細胞を減少させる。
【0004】
ガレクチン9を実際の治療剤として用いるために、ガレクチン9の1)タンパク質分解酵素感受性、2)低溶解性、3)低収量という問題を解決すべく、ガレクチン9のリンカーペプチドを切断してタンパク質分解酵素抵抗性を有するガレクチン9改変体(G9Null;非特許文献1)を作製する研究などが続けられている。
【0005】
一方で、癌は、体の組織または他の部分と接触して広がる可能性のある、制御不可能な細胞の異常な成長による疾患であり、癌細胞は、癌細胞が集まって塊状になっている固形腫瘍を形成したり、白血病のように分散した細胞として存在したりする。正常細胞は成熟するまで分化し、後に必要に応じて損傷した細胞や死んだ細胞を交替するが、癌細胞は絶えず分化し、最終的に近隣する細胞を押し出して他の部分に広がるため、悪性と呼ばれる。悪性腫瘍細胞は、血流またはリンパ系を介して体の他の部分に転移し、そこで増殖して新しい腫瘍を形成する。
【0006】
また、様々な治療法の開発にもかかわらず、癌は依然として世界中で人間の健康を深刻に脅かしている。現在、癌の主な治療法としては、外科手術、放射線療法、ホルモン療法、及び化学療法があり、その中で、化学療法は、少なくとも1種の抗癌剤を用いて癌を直接治療したり、あるいは症状を緩和する方法である。抗癌化学療法(Chemotherapy)は、癌患者にとって最も効果的な治療法の1つとして知られているが、継続した抗癌剤の投与は、抗癌化学療法の失敗を招く原因として指摘されている。これは、細胞が抗癌剤に対する耐性を獲得するためであり、1つの抗癌剤に耐性を獲得すると、構造の異なる抗癌剤に対しても多剤耐性(Multidrug Resistance)を獲得する可能性がある。
【0007】
さらに、RASタンパク質は、細胞の分化、増殖及び生存に関連するシグナル伝達体系において重要な役割を果たすSmall GTPaseタンパク質である。RASファミリーは、HRAS、NRAS、及びKRASの3つのアイソフォームが知られており、いくつかの癌腫で変異(mutation)が見られるoncogeneとしてよく知られている。特に致死率の高い肺癌、大腸癌、及び膵臓癌などで高い頻度のRAS変異が報告されており、RAS-driven cancerの約85%がKRAS変異によることが知られている。KRASのactive siteで変異が起こった場合、GTPase-activating proteins(GAPs)によるGTP hydrolysisが円滑に進まず、GTP-bound RASタンパク質のcellular levelが増加し、下位シグナル伝達体系が異常に活性化され、癌細胞の増殖が起こることになる。
【0008】
そこで、本発明者らは抗癌剤の開発のために鋭意努力した結果、既存の野生型ガレクチン9の2つの糖鎖認識部位のうちC末端ドメイン(CCRD)及びリンクペプチドのアミノ酸が欠失及び置換された組換え安定化ガレクチン9タンパク質の癌組織サイズが減少し、また癌誘発マウスの生存率が増加する効果を確認し、さらに、前記組換え安定化ガレクチン9タンパク質と抗癌剤の組み合わせが抗癌効果の面で顕著な相乗効果があり、複合、混合または併用抗癌剤として利用できることを確認したので、それに基づいて本発明の完成に至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】大韓民国登録特許第10-1222281号公報
【文献】特許第5888761号明細書
【文献】米国特許第9908921号明細書
【非特許文献】
【0010】
【文献】Nishi,N et al,FEBS Lett.2005 Apr 11;579(10):2058-64.
【文献】Hobbs,G.A,et al.,RAS isoforms and mutations in cancer at a glance.J Cell Sci 2016,129(7),1287-92
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、組換え安定化ガレクチン9タンパク質及びそれを含む癌の予防または治療用薬学的組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の目的を達成するために、本発明は、配列番号1で表されるアミノ酸配列を有する組換え安定化ガレクチン9タンパク質またはそれをコードするポリヌクレオチドを有効成分として含む癌の予防または治療用薬学的組成物と、配列番号1で表されるアミノ酸配列を有する組換え安定化ガレクチン9タンパク質またはそれをコードするポリヌクレオチドを薬学的に有効な量で個体に投与するステップを含む、癌の予防または治療方法と、癌の予防または治療に用いるための配列番号1で表されるアミノ酸配列を有する組換え安定化ガレクチン9タンパク質またはそれをコードするポリヌクレオチドを有効成分として含む薬学的組成物の用途とを提供する。
【0013】
さらに、本発明は、配列番号1で表されるアミノ酸配列を有する組換え安定化ガレクチン9タンパク質またはそれをコードするポリヌクレオチド及び抗癌剤を複合剤、混合剤または併用剤の有効成分として含む癌の予防または治療用薬学的組成物と、配列番号1で表されるアミノ酸配列を有する組換え安定化ガレクチン9タンパク質またはそれをコードするポリヌクレオチドを薬学的に有効な量で含む製剤と、抗癌剤を含む製剤を個体に複合的、混合的または併用的に投与するステップを含む、癌の治療方法と、癌の予防または治療に用いるための配列番号1で表されるアミノ酸配列を有する組換え安定化ガレクチン9タンパク質またはそれをコードするポリヌクレオチド及び抗癌剤を複合剤、混合剤または併用剤の有効成分として含む癌の予防または治療用薬学的組成物の用途とを提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の組換え安定化ガレクチン9タンパク質は、癌細胞の細胞成長を抑制し、細胞死を誘導し、体重減少などの副作用なしに癌誘発マウスの癌組織のサイズが減少し、生存率を高める効果が示され、抗癌剤と複合、混合または併用して投与すると、相乗的な抗癌活性を示すので、癌の予防または治療用薬学的組成物の有効成分として有用に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1A】KRAS野生型またはKRAS遺伝子突然変異を有する様々な癌細胞株における組換え安定化ガレクチン9タンパク質(sGal-9)の細胞成長抑制を確認した図である。
【
図1B】KRAS野生型またはKRAS遺伝子突然変異を有する様々な癌細胞株における組換え安定化ガレクチン9タンパク質(sGal-9)の細胞死誘導を確認した図である。
【
図2】KRAS遺伝子突然変異を有する大腸癌細胞株であるDLD-1細胞におけるsGal-9の細胞増殖抑制を確認した図である。
【
図3】KRAS遺伝子突然変異を有する大腸癌細胞株であるDLD-1細胞において、sGal-9及びEGFR阻害剤であるエルロチニブ(Erlotinib)を併用処理したときの細胞成長変化を確認した図である。
【
図4】sGal-9及び/またはゲムシタビンを投与したKRAS遺伝子突然変異膵臓癌誘発マウスモデルの体重変化を確認した図である。 (1)ピンク色:PBS(対照群)のみを単独投与したときの体重変化測定結果(g) (2)オレンジ色:0.5mg/kgのsGal-9を単独投与したときの体重変化測定結果(g) (3)濃い緑色:5mg/kgのsGal-9を単独投与したときの体重変化測定結果(g) (4)緑色:50mg/kgのゲムシタビンを単独投与したときの体重変化測定結果(g) (5)青色:5mg/kgのsGal-9と50mg/kgのゲムシタビンを併用投与したときの体重変化測定結果(g)
【
図5】KRAS遺伝子突然変異膵臓癌誘発マウスモデルに組換え安定化ガレクチン9タンパク質(sGal-9)及び/またはゲムシタビン(Gemcitabine)を投与した後、癌組織のサイズ変化を確認した図である。 (1)ピンク色:PBS(対照群)のみを単独投与したときの癌組織のサイズ変化測定結果(mm
3) (2)オレンジ色:0.5mg/kgのsGal-9を単独投与したときの癌組織のサイズ変化測定結果(mm
3) (3)濃い緑色:5mg/kgのsGal-9を単独投与したときの癌組織のサイズ変化測定結果(mm
3) (4)緑色:50mg/kgのゲムシタビンを単独投与したときの癌組織のサイズ変化測定結果(mm
3) (5)青色:5mg/kgのsGal-9と50mg/kgのゲムシタビンを併用投与したときの癌組織のサイズ変化測定結果(mm
3)
【
図6】sGal-9及び/またはゲムシタビンを投与したKRAS遺伝子突然変異膵臓癌誘発マウスモデルの生存率変化を確認した図である。 (1)ピンク色:PBS(対照群)のみを単独投与したときの生存率測定結果(%) (2)オレンジ色:0.5mg/kgのsGal-9を単独投与したときの生存率測定結果(%) (3)濃い緑色:5mg/kgのsGal-9を単独投与したときの生存率測定結果(%) (4)緑色:50mg/kgのゲムシタビンを単独投与したときの生存率測定結果(%) (5)青色:5mg/kgのsGal-9と50mg/kgのゲムシタビンを併用投与したときの生存率測定結果(%)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように、本発明の実施形態を挙げて詳しく説明する。本発明の実施例は、当該技術分野における平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供するものである。よって、本発明の実施例は様々な他の形態に変形してもよく、本発明がこれらの実施例に限定されるものではない。
【0017】
本発明の明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」という場合、これは特に断らない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいことを意味する。
【0018】
本発明は、配列番号1で表されるアミノ酸配列を有する組換え安定化ガレクチン9タンパク質またはそれをコードするポリヌクレオチドを有効成分として含む、癌の予防または治療用薬学的組成物と、配列番号1で表されるアミノ酸配列を有する組換え安定化ガレクチン9タンパク質またはそれをコードするポリヌクレオチドを薬学的に有効な量で個体に投与するステップを含む、癌の予防または治療方法と、癌の予防または治療に用いるための配列番号1で表されるアミノ酸配列を有する組換え安定化ガレクチン9タンパク質またはそれをコードするポリヌクレオチドを有効成分として含む薬学的組成物の用途とを提供する。
【0019】
本発明において、前記組換え安定化ガレクチン9タンパク質は、体重減少などの副作用なしに癌組織のサイズが減少し、生存率が高まる効果を有する。
【0020】
本発明における「予防」とは、組成物の投与により発病を抑制または遅延させるあらゆる行為を意味する。
【0021】
本発明における「治療」とは、組成物の投与により前記疾患の症状を好転または有利に変化させるあらゆる行為を意味する。
【0022】
本発明における前記組換え安定化ガレクチン9タンパク質は、野生型ガレクチン9(wild type Galectin-9)の糖鎖認識活性を保持しながらも、プロテアーゼに対してより安定した分子構造を有するタンパク質である。
【0023】
具体的には、前記組換え安定化ガレクチン9タンパク質は、NCRD-リンカー-CCRDの構造を有する野生型ガレクチン9の2つのCRD(Carbohydrate Recognition Domain)をつなぐリンク領域及びCCRD(C-terminal Carbohydrate Recognition Domain;C末端ドメイン)を改変して製造した組換えタンパク質である。より具体的には、前記組換え安定化ガレクチン9タンパク質は、前記リンカー領域のペプチドが全て欠失し、CCRD(配列番号2)において1~10位のアミノ酸配列(配列番号3)が欠失し、13位のAla(Alarine;A)がPro(Proline;P)に置換されたものであって、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるようにしてもよく、配列番号1で表されるアミノ酸配列と75%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の配列相同性を有するアミノ酸配列を含んでもよく、標的化配列、タグ(tag)、標識した残基、半減期またはペプチド安定性を増加させるための特定目的で作製されたアミノ酸配列をさらに含んでもよい。
【0024】
また、前記組換え安定化ガレクチン9タンパク質は、配列番号1で表されるアミノ酸配列のN末端から1番目のアミノ酸残基の欠失を含んでもよく、具体的には、配列番号4で表されるアミノ酸配列からなってもよい。
【0025】
本発明における「ポリヌクレオチド(polynucleotide)」とは、ヌクレオチドが結合された重合体を意味し、遺伝情報を伝達する役割を果たす。本発明の目的上、配列番号1の組換えタンパク質をコードし、前記組換えタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列と75%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の配列相同性を有する配列が含まれる。
【0026】
本発明における「相同性」とは、野生型アミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列との類似の程度を意味し、このような相同性の比較は、当該技術分野で周知の比較プログラムを用いて行うことができ、2つ以上の配列間の相同性を百分率(%)で計算することができる。
【0027】
本発明において、前記癌は、以下のものからなる群から選択されてもよい:(A)(1)非浸潤性乳管癌種(DCIS)(面皰癌種、篩状癌、乳頭癌、微小乳頭状)、浸潤性乳管癌種(IDC)、管状癌種、膠様(コロイド)癌種、乳頭癌種、化生性癌種及び炎症性癌種を含む、腺管癌種、(2)上皮内小葉癌種(LCIS)及び浸潤性小葉癌種を含む、小葉癌種、並びに、(3)乳首のパジェット病を含む、乳腺癌、(B)(1)子宮頸部上皮内腫瘍(グレードI)、子宮頸部上皮内腫瘍(グレードII)、子宮頸部上皮内腫瘍(グレードIII)(扁平上皮内癌種)、角化扁平上皮癌種、非角化扁平上皮癌種、疣状癌種、潜在腺癌種、子宮頸管型、類子宮内膜腺癌種、明細胞腺癌種、腺扁平上皮癌種、腺様嚢胞癌種、小細胞癌及び分化癌を含む、子宮頸部の癌、(2)類内膜癌種、腺癌種、腺棘細胞腫(扁平上皮化生を有する腺癌種)、腺扁平上皮癌種(腺癌及び扁平上皮癌の混合、粘液腺癌種、漿液性腺癌種)、透明細胞腺癌種、扁平上皮腺癌及び未分化腺癌を含む、子宮体癌、(3)漿液性嚢胞腺腫、漿液性嚢胞腺癌種、粘液性嚢胞腺腫、子宮内膜性腫瘍、類内膜腺癌種、透明細胞腫瘍、透明細胞嚢胞腺癌及び未分化腫瘍を含む、卵巣癌、(4)扁平上皮癌種及び腺癌種を含む、膣癌、並びに、(5)外陰部上皮内腫瘍(グレードI)、外陰部上皮内腫瘍(グレードII)、外陰部上皮内腫瘍(グレードIII)(扁平上皮内癌種)、扁平上皮癌種、疣状癌種、外陰部のパジェット病、腺癌種(NOS)、基底細胞癌種(NOS)、及びバルトリン腺癌種を含む、外陰部癌を含む、女性生殖系の癌、(C)(1)扁平上皮癌種を含む陰茎癌、(2)腺癌種、肉腫、及び前立腺の移行上皮癌種を含む、前立腺癌、(3)精上皮腫勢腫瘍、非精上皮腫勢腫瘍、奇形腫、胎生期癌種、卵黄嚢腫瘍、絨毛癌種を含む精巣癌を含む、男性生殖系の癌、(D)肉腫(血管肉腫、線維肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫)、粘液腫、横紋筋腫、線維腫、脂肪腫及び奇形腫を含む心臓系の癌、(E)喉頭の扁平上皮癌種、原発性胸膜中皮腫及び咽頭の扁平上皮癌種を含む、呼吸器系の癌、(F)扁平上皮癌種(表皮癌種)、扁平上皮癌種の変異体、紡錘細胞癌種、小細胞癌種、他の細胞の癌種、中間細胞型の癌種、複合型燕麦細胞癌種、腺癌種、腺房腺癌種、乳頭腺癌種、細気管支肺胞上皮癌種、粘液形成を有する固形癌種、大細胞癌種、巨細胞癌種、透明細胞腺癌種及び肉腫を含む、肺癌、(G)(1)原発性腺癌種、カルチノイド腫瘍及びリンパ種を含む、ファーター(Vater)膨大部の癌種、(2)腺癌種、扁平上皮癌及び黒色腫を含む、肛門管の癌、(3)上皮癌種、腺癌種、乳頭腺癌種、腸型腺癌、粘液腺癌種、透明細胞腺癌種、印環細胞癌種、腺扁平上皮癌種、扁平上皮癌種、小細胞(燕麦細胞)癌種、未分化癌種、腺癌種(NOS)、肉腫及びカルチノイド腫瘍を含む、肝外胆管の癌、(4)潜在腺癌種、腺癌種、粘液腺癌種(コロイド型、50%粘液癌種より多い)、印環細胞癌種(コロイド型、50%印環細胞より多い)、扁平上皮癌種(表皮癌種)、腺扁平上皮癌種、小細胞(燕麦細胞)癌種、未分化癌種、腺癌種(NOS)、肉腫、リンパ腫及びカルチノイド腫瘍を含む、結腸直腸癌、(5)扁平上皮癌種、腺癌種、平滑筋肉腫及びリンパ腫を含む、食道癌、(6)腺癌種、腸型腺癌、腺扁平上皮癌種、上皮内癌種、腺癌種(NOS)、透明細胞腺癌種、粘液腺癌種、乳頭腺癌種、印環細胞癌種、小細胞(燕麦細胞)癌種、扁平上皮癌及び未分化癌種を含む、胆嚢癌、(7)扁平上皮癌種を含む、口唇及び口腔の癌、(8)肝癌(肝細胞癌種)、胆管癌種、肝芽腫、血管肉腫、肝細胞腺腫及び血管腫を含む、肝臓癌、(9)導管細胞癌種、多形性巨細胞癌種、巨細胞癌種、破骨細胞(osteoclastoid)型巨細胞癌種、腺癌種、腺扁平上皮癌種、粘液(コロイド)癌種、嚢胞腺癌種、acinar細胞癌種、乳頭腺癌種、小細胞(燕麦細胞)癌種、混合細胞型小細胞(燕麦細胞)癌種、腺癌種(NOS)、未分化癌種、ランゲルハンス島に発生する内分泌細胞腫瘍、及びカルチノイドを含む、膵外分泌腺癌、(10)腺房細胞癌種、腺様嚢胞癌種(円柱腫)、腺癌種、腺扁平上皮癌種、多形性腺腫内癌種(悪性混合腫瘍)、粘膜表皮癌種(高分化または低グレード)及び粘膜表皮癌種(低分化または高グレード)を含む、唾液腺癌、(11)腺癌種、乳頭腺癌種、管状腺癌種、粘液腺癌種、印環細胞癌種、腺扁平上皮癌種、扁平上皮癌種、小細胞癌種、未分化癌種、リンパ腫、肉腫及びカルチノイド腫瘍を含む胃癌、並びに、(12)腺癌種、リンパ腫、カルチノイド腫瘍、カポジ肉腫、平滑筋腫、血管腫、脂肪腫、神経線維腫及び線維腫を含む、小腸癌、を含む、消化管癌、(H)(1)腎細胞癌種、ベリニ集合管腫瘍、腺癌種、乳頭腺癌種、管状腺癌種、顆粒細胞癌種、透明細胞腺癌種(副腎腫)、腎臓の肉腫及び腎芽細胞腫を含む、腎臓癌、(2)移行上皮癌種、乳頭移行上皮癌種、扁平上皮癌種及び腺癌種を含む、腎盂及び尿管の癌、(3)移行上皮癌種、扁平上皮癌種及び腺癌種を含む、尿道癌、並びに、(4)上皮内癌種、移行尿路上皮癌種、乳頭移行上皮癌種、扁平上皮癌種、腺癌種、未分化型含む膀胱癌を含む、泌尿器系の癌、(I)(1)(a)骨形成;骨肉腫、(b)軟骨形成;軟骨肉腫及び間葉性軟骨肉腫、(c)悪性巨細胞癌、(d)ユーイング肉腫、(e)血管腫瘍;血管内皮腫、血管周囲細胞腫及び血管肉腫、(f)結合組織腫瘍;線維肉腫、脂肪肉腫、悪性間葉腫及び未分化肉腫、並びに、(g)他の腫瘍;脊索腫、長骨アダマンチノーマを含む、骨癌、(2)胞巣状軟部肉腫、血管肉腫、類上皮肉腫、骨外性軟骨肉腫、線維肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、悪性線維性組織球腫、悪性血管外皮腫、悪性間葉腫、悪性シュワン腫、横紋筋肉腫、滑膜肉腫及び肉腫(NOS)を含む、軟部組織癌、(3)頭蓋骨の腫瘍(骨腫、血管腫、肉芽腫、黄色腫、変形性骨炎)、髄膜の腫瘍(髄膜腫、髄膜肉腫、神経膠腫症)、脳の腫瘍(星状細胞腫、髄芽腫、神経膠腫、上衣腫、胚細胞腫(胚腫)、多形性膠芽腫、乏突起膠腫、神経鞘腫、網膜芽細胞腫、先天性腫瘍)、及び脊髄の癌(神経芽細胞腫、髄膜腫、神経膠腫、肉腫)を含む、神経系の癌、(4)骨髄性白血病(急性及び慢性)、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病、骨髄増殖性疾患、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、ホジキン病及び非ホジキンリンパ腫(悪性リンパ腫)を含む、血液癌、(5)(a)(小胞巣を有する乳頭癌を含む)乳頭癌種、濾胞状癌種、髄様癌種及び未分化(退形成)癌種を含む、甲状腺癌、並びに、(b)交感神経芽細胞腫、交感神経産生細胞腫、悪性神経節細胞腫、神経節交感神経芽細胞腫及び神経節細胞腫を含む神経芽細胞腫を含む、内分泌系の癌、(6)扁平上皮癌種、扁平上皮癌の紡錘細胞変異体、基底細胞癌種、汗腺または皮脂腺から進展する腺癌種及び悪性黒色腫を含む、皮膚癌、(7)(a)結膜の腫瘍を含む、結膜癌、(b)基底細胞癌種、扁平上皮癌種、瞼の黒色腫及び脂腺細胞癌種を含む、瞼の癌、(c)腺癌種、腺様嚢胞癌種、多形性腺腫内癌種、粘液性類表皮癌種及び扁平上皮癌種を含む、涙腺の癌、(d)紡錘細胞黒色腫、混合細胞黒色腫及び類上皮細胞黒色腫を含む、ブドウ膜の癌、(e)眼球孔の肉腫、軟部組織腫瘍及び骨肉腫を含む眼球孔の癌、並びに、(f)網膜芽細胞腫を含む、眼の癌、を含む、筋肉、骨及び軟部組織の癌。
【0028】
さらに、前記癌は、KRAS遺伝子が突然変異した癌であってもよい。本発明の一実施形態では、KRAS遺伝子が突然変異した癌腫として、大腸癌、膵臓癌、肺癌及び卵巣癌に対して、本発明の組換え安定化ガレクチン9タンパク質の抗癌活性を確認した。
【0029】
前記KRAS遺伝子は、様々な癌で頻繁に突然変異するRAS遺伝子の1つであり、KRAS遺伝子のコドン12及び13における突然変異は、前記遺伝子の産物であるp21-RASタンパク質の機能的変化をもたらし、その結果、細胞液に必要以上の成長シグナルを伝達することで、細胞の成長と分裂を促し、発癌過程に関与する。KRAS遺伝子の突然変異は、膵臓癌の約90%、大腸癌の約50%、非小細胞肺癌(non-small cell lung cancers)の約30%で現れるなど、ヒトの癌によく発見される。
【0030】
本発明において、本発明の前記組換え安定化ガレクチン9タンパク質またはそれをコードするポリヌクレオチドは、コロイド懸濁液、粉末、食塩水、脂質、リポソーム、ミクロスフェア(microspheres)、ナノ球形粒子などの薬学的に許容される担体により輸送されてもよい。これらは、輸送手段と複合体を形成することもでき、関連することもでき、脂質、リポソーム、微細粒子、金ナノ粒子、ポリマー、縮合反応剤、多糖類、ポリアミノ酸、デンドリマー、サポニン、吸着促進物質、脂肪酸などの当該技術分野で公知の輸送システムを用いて生体内で輸送することもできる。
【0031】
また、薬学的に許容される担体には、製剤の際に通常用いられるラクトース、グルコース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、鉱油などが含まれるが、これらに限定されるものではない。また、前記成分以外に、滑沢剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などをさらに含んでもよい。
【0032】
本発明において、本発明の薬学的組成物は、目的とする方法に応じて経口投与または非経口投与(例えば、筋肉内、静脈内、腹腔内、皮下、皮内または局所に適用)され、投与量は、患者の状態及び体重、疾患の程度、薬物の形態、投与経路及び時間によって異なるが、当業者により適宜選択される。
【0033】
本発明の薬学的組成物は、薬学的に有効な量で投与する。
【0034】
本発明における「薬学的に有効な量」とは、医学的治療に適用できる合理的な利益/リスク比で疾患を治療するのに十分な量を意味し、有効用量レベルは、患者の疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物に対する感受性、投与時間、投与経路及び排出率、治療期間、同時に用いられる薬物が含まれる要素、並びにその他医学分野で公知の要素により決定される。本発明による薬学的組成物は、個別治療剤として投与してもよく、手術、ホルモン治療、薬物治療及び生物学的反応調節剤と併用して用いてもよく、前記製剤と同時に、個別にまたは順次投与してもよく、単一または多重投与してもよい。前記要素を全て考慮して副作用なく最小限の量で最大の効果が得られる量を投与することが重要であり、これは当業者により容易に決定される。
【0035】
具体的には、本発明の薬学的組成物の有効量は、患者の年齢、性別、状態、体重、体内での活性成分の吸収度、不活性率、排泄速度、疾病の種類、併用される薬物により異なり、投与経路、肥満の重症度、性別、体重、年齢などにより増減する。
【0036】
本発明において、前記薬学的組成物は、錠剤、カプセル剤、注射剤、トロッキー剤、散剤、顆粒剤、液剤、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤、坐剤、膣錠剤及び丸剤からなる群から選択される剤形に剤形化されてもよいが、これらに限定されるものではなく、必要に応じて適切な剤形に剤形化されてもよい。また、前記組成物を製剤化する場合は、通常用いる充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を用いて調製される。
【0037】
経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、トローチ剤などが含まれ、これらの固形製剤は、本発明の少なくとも1つの組換えタンパク質に少なくとも1つの賦形剤、例えば、デンプン、炭酸カルシウム、スクロース(sucrose)またはラクトース(lactose)、ゼラチンなどを混合して調製される。また、通常の賦形剤以外に、ステアリン酸マグネシウム、タルクなどの滑沢剤も用いられる。経口投与のための液体製剤には、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などが含まれ、通常用いられる通常の希釈剤である水、流動パラフィン以外にも種々の賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが用いられる。
【0038】
非経口投与のための製剤には、滅菌水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥剤、坐剤などが含まれる。
【0039】
非水性溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物性油、オレイン酸エチルなどの注射可能なエステルなどが用いられる。坐剤の基剤としては、ウィテップゾール(witepsol)、マクロゴール、ツイーン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロール、ゼラチンなどが用いられる。
【0040】
また、本発明は、配列番号1で表されるアミノ酸配列を有する組換え安定化ガレクチン9タンパク質またはそれをコードするポリヌクレオチド及び抗癌剤を複合剤、混合剤または併用剤の有効成分として含む癌の予防または治療用薬学的組成物と、配列番号1で表されるアミノ酸配列を有する組換え安定化ガレクチン9タンパク質またはそれをコードするポリヌクレオチドを薬学的に有効な量で含む製剤と、抗癌剤を含む製剤を個体に複合的、混合的または併用的に投与するステップを含む、癌の治療方法と、癌の予防または治療に用いるための配列番号1で表されるアミノ酸配列を有する組換え安定化ガレクチン9タンパク質またはそれをコードするポリヌクレオチド及び抗癌剤を複合剤、混合剤または併用剤の有効成分として含む癌の予防または治療用薬学的組成物の用途とを提供する。
【0041】
本発明において、前記抗癌剤の例としては、シクロホスファミド(Cyclophosphamide)、ニムスチン(Nimustine)、ゲムシタビン(Gemcitabine)、5-フルオロウラシル(5-Fluorouracil;5-FU)、テガフール-ウラシル(UFT)、ドキソルビシン(Doxorubicin)、エピルビシン(Epirubicin)、マイトマイシン(mitomycin)、フレオマイシン(phleomycin)、パクリタキセル(Paclitaxel)、ドセタキセル(Docetaxel)、シスプラチン(cisplatin)、オキサリプラチン(Oxalite)、イリノテカン(Irinotecan)、エトポシド(etoposide)、アキシチニブ(Axitinib)、またはタルセバ(Tarceva)であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0042】
本発明において、前記組換え安定化ガレクチン9タンパク質またはそれをコードするポリヌクレオチドの濃度は、0.01~100mg/kgであってもよく、前記抗癌剤の濃度は、1~1000mg/kgであってもよい。
【0043】
本発明において、本発明の医薬における前記組換え安定化ガレクチン9タンパク質またはそれをコードするポリヌクレオチド及び抗癌剤の含有量は、製剤形態などに応じて適宜選択されてもよい。
【0044】
本発明において、前記組換え安定化ガレクチン9タンパク質またはそれをコードするポリヌクレオチド及び抗癌剤が1つの単一製剤として剤形化される場合、組換え安定化ガレクチン9タンパク質またはそれをコードするポリヌクレオチドの含有量は、一般的に、全製剤に対して約0.01~99.99wt%であり、具体的には、約0.01~90wt%であり、好ましくは、約0.1~90wt%であり、より好ましくは、約0.1~80wt%であり、さらに好ましくは、約0.1~70wt%であり、抗癌剤は、一般的に、全製剤に対して約0.01~99.99wt%であり、具体的には、約0.01~90wt%であり、好ましくは、約0.1~80wt%であり、より好ましくは、約0.1~70wt%であり、さらに好ましくは、約0.1~60wt%である。一方で、1つの単一製剤として配合される場合において、本発明の医薬における組換え安定化ガレクチン9タンパク質またはこれをコードするポリヌクレオチド及び抗癌剤の含有量比は、1:0.01~10重量比で配合されてもよい。また、1つの単一製剤として配合される場合において、本発明の医薬における担体などの添加剤の含有量は可変であるが、一般的に、全製剤に対して約1~99.00wt%であり、具体的には、約1~90wt%であり、好ましくは、約10~90wt%であり、より好ましくは、約10~80wt%であり、さらに好ましくは、約10~70wt%である。
【0045】
本発明において、前記組換え安定化ガレクチン9タンパク質またはそれをコードするポリヌクレオチド及び抗癌剤を個別に製剤化して併用する場合、組換え安定化ガレクチン9タンパク質またはそれをコードするポリヌクレオチドを含有する製剤における組換え安定化ガレクチン9タンパク質またはそれをコードするポリヌクレオチドの含有量は、一般的に、その含有製剤に対して約0.01~99.99wt%であり、具体的には、約0.1~99.99wt%であり、好ましくは、約0.1~90wt%であり、より好ましくは、約0.1~80wt%であり、さらに好ましくは、約1~80wt%である。また、抗癌剤を含有する製剤における含癌剤の含有量は、一般的に、その含有製剤に対して約0.01~99.99wt%であり、具体的には、約0.1~99.9wt%であり、好ましくは、約0.1~90wt%であり、より好ましくは、約0.1~80wt%であってもよい。一方で、前記組換え安定化ガレクチン9タンパク質またはそれをコードするポリヌクレオチド及び抗癌剤を個別に製剤化して併用する場合、担体などの添加剤の含有量は可変であるが、一般的に、各含有製剤に対して約1~99.00wt%であり、具体的には、約1~90wt%であり、好ましくは、約10~90wt%であり、より好ましくは、約10~80wt%であり、さらに好ましくは、約10~70wt%であってもよい。
【0046】
さらに、本発明は、配列番号1で表されるアミノ酸配列を有する組換え安定化ガレクチン9タンパク質またはそれをコードするポリヌクレオチド及び抗癌剤を複合剤、混合剤または併用剤の有効成分として含む、癌の予防または治療用複合剤、混合剤または併用剤キットと、癌の予防または治療に用いるための配列番号1で表されるアミノ酸配列を有する組換え安定化ガレクチン9タンパク質またはそれをコードするポリヌクレオチド及び抗癌剤を複合剤、混合剤または併用剤の有効成分として含む複合剤、混合剤または併用剤キットの用途とを提供する。
【0047】
前記併用剤キットにおける併用製剤の各成分の含有量、含有量比、癌については、前記癌の予防または治療用薬学的組成物の説明と同様であるので、具体的な説明は前記内容を援用する。
【0048】
本発明の具体的な実施例において、配列番号1で表されるアミノ酸配列を有する組換え安定化ガレクチン9タンパク質の抗癌活性及び前記組換えタンパク質及び抗癌剤の複合剤、混合剤または併用剤に対する抗癌活性を確認するために、KRAS野生型またはKRAS遺伝子突然変異を有する大腸癌、膵臓癌、肺癌及び卵巣癌細胞に、前記組換えタンパク質を投与したところ、細胞成長が抑制され、細胞死が誘導されることを確認した。また、KRAS遺伝子突然変異を有する大腸癌細胞に前記組換えタンパク質とエルロチニブを併用処理したところ、細胞成長抑制において相乗効果があることを確認した。
【0049】
さらに、KRAS遺伝子突然変異膵臓癌誘発マウスモデルに前記組換えタンパク質または抗癌剤を単独で投与したり、前記組換えタンパク質及びゲムシタビンを複合、混合または併用投与したところ、体重減少などの副作用なしに癌組織のサイズが減少し、生存率を高める効果が示されることを確認した。また、前記組換えタンパク質及び抗癌剤のそれぞれを単独で投与した場合よりも、併用投与した場合、顕著な相乗効果があることを確認した。
【0050】
本発明の対象は、癌治療を必要とする哺乳動物である。一般に、対象はヒト癌患者である。本発明の一態様において、対象は、ヒト以外の霊長類などの非ヒト哺乳動物、モデルシステムに用いられる動物(例えば、薬剤のスクリーニング、特徴付け及び評価に用いられるマウス及びラット)、並びに他の哺乳動物、例えば、ウサギ、モルモット、ハムスター、イヌ、ネコ、チンパンジー、ゴリラ、サルなどの類人猿類動物であってもよい。
【0051】
本発明の一態様において、前記薬学的組成物は、癌患者の治療のために単独で、あるいは手術、ホルモン療法、薬物治療及び生物学的応答調節剤と並行して用いられてもよい。
【0052】
さらに、本発明は、配列番号1で表されるアミノ酸配列を有する組換え安定化ガレクチン9タンパク質またはそれをコードするポリヌクレオチドを有効成分として含む、癌の予防または改善用保健機能食品組成物と、癌の予防または改善に用いるための配列番号1で表されるアミノ酸配列を有する組換え安定化ガレクチン9タンパク質またはそれをコードするポリヌクレオチドを有効成分として含む保健機能食品組成物の用途とを提供する。
【0053】
本発明における前記組換え安定化ガレクチン9タンパク質及び癌については前述した通りであるので、前述した内容を援用し、具体的な説明を省略する。
【0054】
本発明における「改善」とは、治療される状態に関するパラメーター、例えば症状の程度を少なくとも減少させるあらゆる行為を意味する。ここで、前記保健機能食品組成物は、癌の予防または改善のために、当該疾患の発症前または発症後に、治療のための薬剤と同時にまたは別個に用いられる。
【0055】
一方、本発明において配列番号1で表されるアミノ酸配列を有する組換え安定化ガレクチン9タンパク質は、癌細胞の増殖抑制及び細胞死誘導効果が示され、副作用なしに癌組織のサイズ減少及び生存率増加効果が現れたことを確認したので、前記組換えタンパク質を癌の予防または改善用保健機能食品の有効成分として有用に用いることができる。
【0056】
本発明の保健機能食品において、有効成分を食品にそのまま添加してもよく、他の食品または食品成分と共に用いてもよく、通常の方法で適宜用いられる。有効成分の混合量はその使用目的(予防または改善用)に応じて適宜決定される。一般に、食品または飲料の製造時に、本発明の保健機能食品は、原料に対して15重量%以下、好ましくは10重量%以下の量で添加される。しかしながら、健康及び衛生を目的とするか、または健康調節を目的とする長期間の摂取においては、前記量は前記範囲以下であってもよい。
【0057】
本発明の保健機能食品は、前記有効成分を含有すること以外に特に制限はなく、他の成分を必須成分として含有してもよい。例えば、通常の飲料のように、様々な香味剤や天然炭水化物などを追加成分として含有してもよい。前述した天然炭水化物の例としては、グルコース、フルクトースなどの単糖類、マルトース、スクロースなどの二糖類、デキストリン、シクロデキストリンなどの多糖類が含まれる通常の糖、及びキシリトール、ソルビトール、エリトリトールなどの糖アルコールが挙げられる。前述したもの以外の香味剤としては、天然香味剤(ソーマチン、ステビア抽出物(例えば、レバウディオサイドA、グリチルリチンなど))及び合成香味剤(サッカリン、アスパルテームなど)を用いることが有利である。前記天然炭水化物の割合は、当業者の選択により適宜決定される。
【0058】
前記以外に、本発明の保健機能食品は、様々な栄養剤、ビタミン、ミネラル(電解質)、合成風味剤や天然風味剤などの風味剤、着色剤及び増進剤(チーズ、チョコレートなど)、ペクチン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護コロイド、増粘剤、pH調整剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に用いられる炭酸化剤などを含有してもよい。これらの成分は、独立してまたは組み合わせて用いることができ、これらの添加剤の割合も、当業者により適宜選択される。
【0059】
以下、製造例及び実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。しかしながら、これらの製造例及び実施例は本発明の理解を助けるためのものにすぎず、本発明がこれらに限定されるものではない。
【0060】
<製造例1>組換え安定化ガレクチン9タンパク質の製造
配列番号1のアミノ酸配列を有する組換え安定化ガレクチン9タンパク質をコードする遺伝子を含む発現ベクターを作製し、前記発現ベクターをheat shock法により大腸菌(E.coli)に導入した。大腸菌を50μg/mL kanamycin含有LB培地に培養し、600nmでの吸光度が0.7に達した時点でアラビノースを添加し、組換えタンパク質の発現を誘導することにより、組換えタンパク質を発現させた。次に、組換えタンパク質の発現を誘導した細胞を溶解及び濾過し、標的タンパク質を陽イオン交換法やaffinityカラムなどを用いて捕獲し、高純度の組換え安定化ガレクチン9タンパク質を高収率で得た。
【実施例1】
【0061】
組換え安定化ガレクチン9タンパク質(Recombinant stable Galectin 9 protein;sGal-9)及び抗癌剤のin vitro抗癌活性の確認
<1-1>様々な癌細胞株における組換え安定化ガレクチン9タンパク質の抗癌活性の確認
配列番号1のアミノ酸配列を有する組換え安定化ガレクチン9タンパク質の抗癌活性を調べるために、KRAS野生型またはKRAS遺伝子突然変異を有する癌細胞株に、前記組換えタンパク質を処理し、その後、細胞成長及び細胞死を確認した。
【0062】
具体的には、KRAS野生型膵癌細胞株としてHT-29、KRAS遺伝子突然変異を有する大腸癌細胞株としてDLD-1細胞、HCT-116細胞、SW620細胞、KRAS野生型膵癌細胞株としてBx-pc3細胞、KRAS遺伝子突然変異を有する膵臓癌細胞株としてL3.6pl細胞及びAsPC-1細胞、KRAS野生型肺癌細胞株としてH226細胞、KRAS遺伝子突然変異を有する肺癌細胞株としてA549細胞、KRAS野生型卵巣癌細胞株としてSKOV3ip1細胞、KRAS遺伝子突然変異を有する肺癌細胞株としてSKOV3細胞を、96ウェルプレートにウェル当たり5×10
3個ずつ分注し、37℃の細胞培養器で1日間培養後、<製造例1>の組換えタンパク質をウェル当たり3.2、16、80、400、2000、あるいは10,000nM処理し、72時間培養した。72時間培養してから、SRB(sulforhodamine B)アッセイキット(abcam,US)を用いてメーカーの手順に従って細胞成長を確認した。陰性対照群として、NIH3T3細胞を使用した(
図1A)。
【0063】
また、KRAS遺伝子突然変異を有する大腸癌細胞株であるDLD-1細胞を6ウェルプレートにウェル当たり1×10
5個ずつ分注し、37℃の細胞培養器で1日間培養後、<製造例1>の組換えタンパク質を1,000nMで処理し、24時間または48時間それぞれ培養した。培養済み細胞を冷たいPBSで2回洗浄し、その後、Annexic-APC及び7-AAD apoptosis kit(Biolegend,US)を用いてメーカーの手順に従って染色してから、フローサイトメーター(CytoFLEX,Beckmancoulter)を用いて細胞死を分析した(
図1B)。
【0064】
その結果、
図1A及び
図1Bに示すように、組換えタンパク質を処理したKRAS野生型またはKRAS遺伝子突然変異を有する大腸癌、膵臓癌、肺癌及び卵巣癌細胞において、陰性対照群と比較して細胞成長が抑制され、細胞死が誘導されることを確認した。
【0065】
<1-2>KRAS遺伝子突然変異を有する大腸癌細胞株における組換え安定化ガレクチン9タンパク質の抗癌活性の確認
配列番号1のアミノ酸配列を有する組換え安定化ガレクチン9タンパク質の抗癌活性を調べるために、KRAS遺伝子突然変異を有する大腸癌細胞株に、前記組換えタンパク質を処理し、その後、癌細胞増殖を細胞のコロニー形成能(colony formation)分析で確認した。
【0066】
具体的には、KRAS遺伝子突然変異を有する大腸癌細胞株であるDLD-1細胞を6ウェルプレートに、3%v/vのマトリゲルが含まれた培地に5×10
3ずつ分注し、<製造例1>の組換えタンパク質を0、50、100、250、500、1000nMで処理し、10日間培養した。次いで、リン酸緩衝溶液を用いて洗浄し、その後、0.05%のクリスタルバイオレット、1%のホルムアルデヒド、及び1%のメタノールが添加されたリン酸緩衝溶液で処理し、室温下、20分間反応させて群体を染色した。そして蒸留水を用いて洗浄してから、室温下、16時間乾燥した。染色後、乾燥したプレートの写真を撮って画像を確保し、それに基づいて群体の数を測定した(
図2)。
【0067】
その結果、
図2に示すように、組換えタンパク質処理濃度が高くなるにつれて、癌細胞の群体形成能が減少することを確認し、組換えタンパク質が濃度依存的に癌細胞の増殖を抑制することを確認した。
【0068】
<1-3>組換え安定化ガレクチン9タンパク質及び抗癌剤のin vitro抗癌活性の確認
配列番号1のアミノ酸配列を有する組換え安定化ガレクチン9タンパク質及び抗癌剤併用処理による抗癌活性を調べるために、KRAS遺伝子突然変異を有する大腸癌細胞株に、前記組換えタンパク質及び抗癌剤として、EGFR阻害剤であるエルロチニブ(Erlotinib,ブランド名:タルセバ(Tarceva))を併用処理し、その後、細胞成長を確認した。
【0069】
具体的には、KRAS遺伝子突然変異を有する大腸癌細胞株であるDLD-1細胞を96ウェルプレートにウェル当たり5×10
3個ずつ分注し、一定濃度(3μM)のエルロチニブを単独または<製造例1>の組換えタンパク質と併用処理した。<製造例1>の組換えタンパク質の場合、ウェルあたり3.2、16、80、400、2000、または10000nMで処理した。その後、細胞を72時間培養してから、SRB(sulforhodamine B)アッセイキット(abcam,US)を用いてメーカーの手順に従って細胞成長を確認した(
図3)。
【0070】
その結果、
図3に示すように、組換えタンパク質及びエルロチニブをそれぞれ単独で処理した細胞と比較して、組換えタンパク質及びエルロチニブを併用処理した細胞において、細胞成長抑制の相乗効果が示されることを確認した。
【実施例2】
【0071】
組換え安定化ガレクチン9タンパク質(Recombinant stable Galectin 9 protein;sGal-9)及び抗癌剤のin vivo抗癌活性の確認
<2-1>膵臓癌誘発マウスモデルにおける組換え安定化ガレクチン9タンパク質及び/またはゲムシタビン(Gemcitabine)投与による体重変化の確認
配列番号1のアミノ酸配列を有する組換え安定化ガレクチン9タンパク質の抗癌活性を調べるために、KRAS遺伝子突然変異膵臓癌細胞株であるMIA PaCa-2細胞を移植し、2週間マウスの背中皮下に膵臓癌組織を形成させた膵臓癌誘発マウスモデルに前記組換えタンパク質を投与し、その後、体重変化を確認した。
【0072】
具体的には、「実験動物の管理と使用に関する指針(Guide for the Care and Use of Laboratory Animals;NRC)」に従ってマウスを管理しながら実施した。平均膵臓癌のサイズが200mm3のマウスを集め、ランダムに5匹ずつ分類した。
【0073】
実験群は、全5群(1群当たり5匹)であり、対照群(PBS)、組換え安定化ガレクチン9タンパク質低濃度投与群(sGal-9 0.5mg/kg)、sGal-9高濃度投与群(sGal-9 5mg/kg)、ゲムシタビン投与群(Gemcitabine 50mg/kg)、並びにsGal-9及びゲムシタビン併用投与群(sGal-9 5mg/kg+Gemcitabine 50mg/kg)に分類した。各群に与えられた濃度のsGal-9を週2回、及び/またはゲムシタビンを週1回、50日間腹腔投与しながら、体重変化を確認した(
図4)。
【0074】
その結果、
図4に示すように、対照群、sGal-9低濃度投与群、sGal-9高濃度投与群、並びにsGal-9及びゲムシタビン併用投与群において有意な体重の変化がないことを確認し、前記sGal-9単独投与、及びsGal-9及び抗癌剤の併用投与における副作用がないことを確認した。
【0075】
<2-2>膵臓癌誘発マウスモデルにおける組換え安定化ガレクチン9タンパク質及び/またはゲムシタビン投与による癌組織サイズ変化の確認
配列番号1のアミノ酸配列を有する組換え安定化ガレクチン9タンパク質の抗癌活性を調べるために、KRAS遺伝子突然変異膵臓癌(MIA PaCa-2)誘発マウスモデルに実施例<2-1>に記載の方法と同様の方法でsGal-9及び/またはゲムシタビンを50日間投与し、膵臓癌組織のサイズ変化を磁気共鳴画像(MRI)で確認した(
図5)。
【0076】
その結果、
図5に示すように、対照群と比較して、sGal-9低濃度及び高濃度投与群において膵臓癌組織のサイズが減少する効果を確認し、従来の抗癌剤よりも、低い濃度でsGal-9がより優れた効果を示すことを確認した。また、ゲムシタビンを単独で投与した場合よりも、sGal-9及びゲムシタビンを併用投与した場合、優れた相乗効果が現れることを確認した。
【0077】
<2-3>膵臓癌誘発マウスモデルにおける組換え安定化ガレクチン9タンパク質及びゲムシタビンの生存率変化の確認
配列番号1のアミノ酸配列を有する組換え安定化ガレクチン9タンパク質の抗癌活性を調べるために、KRAS遺伝子突然変異膵臓癌(MIA PaCa-2)誘発マウスモデルに実施例<2-1>に記載の方法と同様の方法でsGal-9及び/またはゲムシタビンを50日間投与し、生存率の変化を確認した(
図6)。そのとき、膵臓癌組織のサイズが1700mm
3以上の場合、死亡時点として認めた。
【0078】
その結果、
図6に示すように、sGal-9低濃度及び高濃度投与群において、生存率が優れることを確認した。また、ゲムシタビンを単独で投与した場合よりも、sGal-9及びゲムシタビンを併用投与した場合、優れた相乗効果が現れることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明に係る組換え安定化ガレクチン9タンパク質は、癌細胞の細胞成長を抑制し、細胞死を誘導する効果を示し、癌誘発動物モデルにおいて副作用なしに癌組織のサイズが減少し、生存率を高める効果が示され、抗癌剤と複合、混合または併用して投与すると、相乗的な抗癌活性を示すので、癌の予防または治療用組成物の有効成分として有用に用いることができる。
【配列表】