(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】魚フィーレ骨抜き取り方法
(51)【国際特許分類】
A22C 25/16 20060101AFI20241213BHJP
【FI】
A22C25/16
(21)【出願番号】P 2024098026
(22)【出願日】2024-06-18
【審査請求日】2024-06-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】395013164
【氏名又は名称】土佐電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100189717
【氏名又は名称】太田 貴章
(72)【発明者】
【氏名】増田 純弥
【審査官】木村 麻乃
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-014346(JP,A)
【文献】特開平06-225687(JP,A)
【文献】特開2022-047900(JP,A)
【文献】実開平07-005507(JP,U)
【文献】国際公開第93/013672(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A22C 25/00-25/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚フィーレに対して一方側に配置される第1の多関節ロボットの先端部に魚フィーレ骨抜き取りチャックが搭載され、前記魚フィーレに対して他方側に配置される第2の多関節ロボットの先端部に魚フィーレ抑えプレートが搭載され、
前記魚フィーレ骨抜き取りチャックは、前記第1の多関節ロボットによって、ばらつきのある骨の向きに合わせた引き抜き方向とすることができ、
前記魚フィーレ抑えプレートは、前記第2の多関節ロボットによって、魚身を抑える方向を変更でき、
前記魚フィーレ骨抜き取りチャックの一対の挟持部にて前記魚フィーレから前記骨を掴んで抜き取る前記魚フィーレ骨抜き取りチャックとともに用いる前記魚フィーレ抑えプレートであり、
前記魚身を抑える魚身当接片と、
前記第2の多関節ロボットに取り付ける取り付け片と、
前記魚身当接片と前記取り付け片との間に位置させるU字片と
を有し、
前記魚身当接片に切り込みが形成され、
前記挟持部にて前記骨を掴む状態では、前記切り込みに前記挟持部が位置し、
前記挟持部を前記骨の長手方向に移動させることで前記骨を引き抜く際には、前記魚身当接片によって前記魚身を抑える
魚フィーレ抑えプレートを用いた魚フィーレ骨抜き取り方法であって、
前記魚身当接片を前記骨の近傍に移動させる魚身当接片移動工程と、
前記魚身当接片移動工程の後に、一対の前記挟持部によって前記骨を掴む骨挟持工程と、
前記骨挟持工程とともに又は前記骨挟持工程の前後のタイミングで前記魚身当接片によって前記魚身を抑える魚身抑え工程と、
前記魚身当接片によって前記魚身を抑えた状態で、前記挟持部を前記骨の前記長手方向に移動させることで前記骨を引き抜く骨引き抜き工程と、
前記骨引き抜き工程の後に前記魚身当接片を前記魚身から退避させる魚身当接片退避工程と
、
前記骨引き抜き工程の後に前記挟持部を骨回収機構部に移動し、一対の前記挟持部を開動作させることで前記骨を前記骨回収機構部に回収する骨回収工程と
によって
1つの前記骨に対する骨抜き動作を行い、
次の前記骨に対する前記骨抜き動作を、前記魚身当接片移動工程と、前記骨挟持工程と、前記魚身抑え工程と、前記骨引き抜き工程と、前記魚身当接片退避工程と、前記骨回収工程とを繰り返すことで行い、
前記骨回収機構部を、前記魚フィーレ抑えプレートを動作させる前記第2の多関節ロボットに設け、
前記骨回収機構部を、前記魚フィーレ抑えプレートの上端側に配置する
ことを特徴とする魚フィーレ骨抜き取り方法。
【請求項2】
前記骨回収機構部には、抜き取った前記骨を吸引するバキューム管が接続されている
ことを特徴とする
請求項1に記載の魚フィーレ骨抜き取り方法。
【請求項3】
前記骨回収工程では、抜き取った前記骨をカウントする
ことを特徴とする
請求項1に記載の魚フィーレ骨抜き取り方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚身、とくに3枚におろした魚の半身から小骨、ピンボーンを正確に抜き取るための魚フィーレ骨抜き取り方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在日本において、サーモンの市場は年間40万トンを超える需要がある。日本でのサケ・サーモン生産はその多くが天然漁獲によるものであり、一般的に「天然物」好きな日本人の嗜好に合致しているが、一方で寄生虫等の課題があり「生食用」に適していない。この産業構造によって輸入が増加しており、「生食用」加工品は「加熱用」加工品に比べ一般的に高付加価値であることを鑑みれば、結果として日本の生産者、加工会社に利益としての付加価値が落ちにくい状況である。
サケ・サーモンは日本人に特に定着した魚種の一つであること、及び天然漁獲量は資源制約などから増加させることは難しく「生食用」として不適であることから、国内では、サケ・サーモン養殖が拡大傾向にあり、輸入品から国産品への一部シフトが期待されている。
サーモンの加工工程は、うろこ取り・ヘッドカット・三枚おろし・スキンナー・ピンボーン除去からなる。現在、うろこ取り・ヘッドカット・三枚おろし・スキンナーにおいては既存の水産加工機械を用いて、サーモンのサイズに関わらず自動化が可能である。しかしながら、サーモンの上神経骨(小骨もしくはピンボーン)の骨抜き作業は、未だ人手に頼っているのが現状であり、多大な労力を要している。ピンボーンを自動で抜き取る機器も考案されているが様々な課題がある。参考文献に沿って説明する。
特許文献1は、魚フィーレのピンボーンを、巻き込むように回転する一組のベルトに挟ませることにより、抜く装置である。しかしながら魚の形状、骨のある位置に個体差のばらつきがあるため、ベルトに対して骨が位置ずれしている場合、骨のない部分をベルトに挟み込み骨の取り残しが発生する場合がある。
特許文献2は、魚フィーレから突出したピンボーンに対して、特定の挟持部材でそのピンボーンをはさみ抜き取る仕組みのため、埋もれている骨や、魚フィーレ個体差により挟持部材とピンボーンの位置がずれた場合は、うまく抜けなかったり、取り残しが発生する。
特許文献3は、魚フィーレに対して回転ローラーを押しあて、魚フィーレの進行方向と反対方向に回転ローラーを回転させ、そのローラーは骨を通過させる網のような構造でできており、その網に骨を通過させることによりピンボーンを引き抜くものであるが、ピンボーンがフィーレから突出している必要がある。
特許文献4は、魚フィーレにローラーを押し当てることによりピンボーンを突出させ、その状態を維持した状態で、爪のような治具によりピンボーンを引き抜く構造であるが、魚の形状、骨のある位置に個体差のばらつきがあるため、治具位置に対して骨が位置ずれしている場合、骨の取り残しが発生する場合がある。
以上述べたように、これらの装置は対象の骨を、魚身表面に対して垂直に刺さっている骨に限定されていたり、ピンボーンを突出させるため骨抜き装置で魚身を押さえたりするため、魚身を変形させるという課題がある。さらにそれらの装置に共通している課題は、骨の位置を特定した後骨を抜いているのではなく、骨のありそうな位置に対して骨抜きを行っているため、骨の取り残しが発生したり、骨の周りの魚身に触ったりし、場合により魚身を傷つけることも考えられ、魚フィーレが廃棄される場合もある。そのためサーモンの骨抜きは人手が主流であり、これらの問題により現状自動化ができていない。
特許文献5は、骨の位置を画像で確認しているが、魚フィーレの大きさ、形状のばらつき、骨の位置、方向のばらつきなどがあり、通常のカメラと直行ロボットだけでは対応するのは難しく、骨の位置の3次元的計測や、その計測により骨の刺さっている方向も認識し、その方向に沿って3次元的動きにより骨を抜き取るということはできないという課題がある。そのため無理に骨を抜いて魚身を痛めたり、取り残しが発生したりする場合があるが、それに対するリカバリーが十分でなく、全自動システムという形態にはなっていない。
このように、魚フィーレの骨を自動で抜く装置として特許文献1から4が提案されている。しかしこれらの装置は対象の骨を、魚身表面に対して垂直に刺さっている骨に限定されている、また、骨抜き装置と魚身を接触させるために魚身を押さえたり、下から持ち上げたりすることで魚身を変形させるという課題がある。さらに、それらの装置に共通している課題として、骨の位置を特定した後に骨を抜いているのではなく、骨のありそうな位置に対して骨抜きを行うことで、骨の取り残しが発生したり、骨の周りの魚身に触れたりして、場合により魚身を傷つけることも考えられる。そのため、魚フィーレが廃棄される場合もある。
そのため、サーモンの骨抜きは人手に頼ることが主流であり、これらの課題により現状は自動化ができていない。
近年、主要都市のバックヤードでは、工員確保が難しく、さらに熟練された工員の不足もあり、骨抜き作業を含めた、高次加工が産地に求められている。しかし、産地での熟練された工員の確保も、工員の高齢化とともに年々厳しくなっており、産地加工工場の機械化、無人化が要望されている。さらに、全世界においても日本食ブームが加速しており、冷凍の刺身用切り身や冷凍の寿司ネタの需要が年々増えている。
しかしながら魚身を傷つけないように骨だけを抜くのではなく、骨の周りの魚身に触れて、場合により魚身を傷つけることも考えられる。さらに最近の骨なし切り身の需要増に対応して、アジ、タイなどの小型の魚の骨抜きも要求されており、様々な魚の種類、サイズに対応した全自動骨抜きシステムが求められているが、そのような課題を解決できるシステムは未だにない状況である。
このような状況の中で、本出願人は、魚フィーレに対する骨の位置を一本一本認識させ、骨の周りの魚身に傷をつけることなく骨だけを抜き取ることができる魚フィーレ骨抜き取りシステムを既に提案している(特許文献6)。
特許文献6で提案している魚フィーレ骨抜き取りシステムによれば、魚フィーレに対する骨の位置を一本一本認識させ、骨の周りの魚身に傷をつけることなく骨だけを抜き取ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4955036号公報
【文献】特開2001-61404号公報
【文献】特公平07-063300号公報
【文献】特許第4078281号公報
【文献】特許第6006568号公報
【文献】特許第6950994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献6で開示しているように、魚フィーレ骨抜き取りチャックを用いることで、特許文献1から特許文献5の方法に比べて、骨の周りの魚身に傷をつけることなく骨だけを抜き取ることができるが、骨を挟んでチャックをすぼめる過程で、骨がずれることがあり、大きくずれるとチャックから骨がはみ出す場合がある。このように骨がチャックからはみ出してしまうと、骨を掴むことができない。骨がずれる原因としては、骨の周りに魚身がついており、骨を掴もうとするときに、魚身を骨と一緒に挟んでしまうため、チャックをすぼめる過程で魚身が移動することに起因する。
そこで本出願人は、骨のずれを防止することができ、骨の周りの魚身に傷をつけることなく骨だけを確実に抜き取ることができる魚フィーレ骨抜き取りチャック、この魚フィーレ骨抜き取りチャックを動作させる多関節ロボット、及びこの多関節ロボットを有する魚フィーレ骨抜き取りシステムを既に提案している。
しかし、魚フィーレ骨抜き取りチャックによって骨を抜き取る際に、骨の抜き取り方向に魚身が持ち上がることがあり、魚フィーレ骨抜き取りチャックの移動範囲では骨が抜けない場合がある。また、魚身が持ち上がることで、魚身の位置が微妙にずれることがあり、骨の位置がずれてしまうことがある。
【0005】
本発明は、魚フィーレ骨抜き取りチャックによって骨を抜き取る際に、魚身の持ち上がりを防止して骨だけを確実に抜き取ることができるとともに、魚身の位置ずれによる骨の位置ずれを防止することができる魚フィーレ骨抜き取り方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明の魚フィーレ骨抜き取り方法は、魚フィーレ21に対して一方側に配置される第1の多関節ロボット41(51)の先端部に魚フィーレ骨抜き取りチャック60が搭載され、前記魚フィーレ21に対して他方側に配置される第2の多関節ロボット80の先端部に魚フィーレ抑えプレート70が搭載され、前記魚フィーレ骨抜き取りチャック60は、前記第1の多関節ロボット41(51)によって、ばらつきのある骨Xの向きに合わせた引き抜き方向とすることができ、前記魚フィーレ抑えプレート70は、前記第2の多関節ロボット80によって、魚身Yを抑える方向を変更でき、前記魚フィーレ骨抜き取りチャック60の一対の挟持部61A、61Bにて前記魚フィーレ21から前記骨Xを掴んで抜き取る前記魚フィーレ骨抜き取りチャック60とともに用いる前記魚フィーレ抑えプレート70であり、前記魚身Yを抑える魚身当接片71と、前記第2の多関節ロボット80に取り付ける取り付け片72と、前記魚身当接片71と前記取り付け片72との間に位置させるU字片73とを有し、前記魚身当接片71に切り込み74が形成され、前記挟持部61A、61Bにて前記骨Xを掴む状態では、前記切り込み74に前記挟持部61A、61Bが位置し、前記挟持部61A、61Bを前記骨Xの長手方向に移動させることで前記骨Xを引き抜く際には、前記魚身当接片71によって前記魚身Yを抑える魚フィーレ抑えプレート70を用いた魚フィーレ骨抜き取り方法であって、前記魚身当接片71を前記骨Xの近傍に移動させる魚身当接片移動工程と、前記魚身当接片移動工程の後に、一対の前記挟持部61A、61Bによって前記骨Xを掴む骨挟持工程と、前記骨挟持工程とともに又は前記骨挟持工程の前後のタイミングで前記魚身当接片71によって前記魚身Yを抑える魚身抑え工程と、前記魚身当接片71によって前記魚身Yを抑えた状態で、前記挟持部61A、61Bを前記骨Xの前記長手方向に移動させることで前記骨Xを引き抜く骨引き抜き工程と、前記骨引き抜き工程の後に前記魚身当接片71を前記魚身Yから退避させる魚身当接片退避工程と、前記骨引き抜き工程の後に前記挟持部61A、61Bを骨回収機構部90に移動し、一対の前記挟持部61A、61Bを開動作させることで前記骨Xを前記骨回収機構部90に回収する骨回収工程とによって1つの前記骨に対する骨抜き動作を行い、次の前記骨Xに対する前記骨抜き動作を、前記魚身当接片移動工程と、前記骨挟持工程と、前記魚身抑え工程と、前記骨引き抜き工程と、前記魚身当接片退避工程と、前記骨回収工程とを繰り返すことで行い、前記骨回収機構部90を、前記魚フィーレ抑えプレート70を動作させる前記第2の多関節ロボット80に設け、前記骨回収機構部90を、前記魚フィーレ抑えプレート70の上端側に配置することを特徴とする。
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の魚フィーレ抑えプレート70において、前記骨回収機構部90には、抜き取った前記骨Xを吸引するバキューム管が接続されていることを特徴とする。
請求項3記載の本発明は、請求項1に記載の魚フィーレ骨抜き取り方法において、前記骨回収工程では、抜き取った前記骨Xをカウントすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、挟持部を骨の長手方向に移動させることで骨を引き抜く際には、魚身当接片によって魚身を抑えることで、魚身の持ち上がりを防止し、骨だけを確実に抜き取ることができるとともに魚身の位置ずれを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施例1による魚フィーレ骨抜き取りシステムを示す工程図
【
図2】同魚フィーレ骨抜き取りシステムで用いるパレットを示す構成図
【
図3】同魚フィーレ骨抜き取りシステムの作業場所を示す構成図
【
図4】本発明の実施例2による魚フィーレ骨抜き取りシステムの作業場所を示す構成図
【
図5】本発明の実施例3による魚フィーレ骨抜き取りシステムの作業場所を示す構成図
【
図7】
図6に示す骨抜き取りチャックの動作工程を示す図
【
図8】
図3から
図5に示す骨抜き取りチャックの他の構成を示す要部斜視図
【
図9】
図3及び
図4に示す魚フィーレ抑えプレートの使用状態を示す写真
【
図10】
図3及び
図4に示す魚フィーレ抑えプレートを用いた魚フィーレ骨抜き取り方法を示す写真
【
図11】本発明に最適な魚フィーレ載置プレートを示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1の実施の形態による魚フィーレ骨抜き取り方法は、魚身当接片を骨の近傍に移動させる魚身当接片移動工程と、魚身当接片移動工程の後に、一対の挟持部によって骨を掴む骨挟持工程と、骨挟持工程とともに又は骨挟持工程の前後のタイミングで魚身当接片によって魚身を抑える魚身抑え工程と、魚身当接片によって魚身を抑えた状態で、挟持部を骨の長手方向に移動させることで骨を引き抜く骨引き抜き工程と、骨引き抜き工程の後に魚身当接片を魚身から退避させる魚身当接片退避工程と、骨引き抜き工程の後に挟持部を骨回収機構部に移動し、一対の挟持部を開動作させることで骨を骨回収機構部に回収する骨回収工程とによって1つの骨に対する骨抜き動作を行い、次の骨に対する骨抜き動作を、魚身当接片移動工程と、骨挟持工程と、魚身抑え工程と、骨引き抜き工程と、魚身当接片退避工程と、骨回収工程とを繰り返すことで行い、骨回収機構部を、魚フィーレ抑えプレートを動作させる第2の多関節ロボットに設け、骨回収機構部を、魚フィーレ抑えプレートの上端側に配置するものである。本実施の形態によれば、挟持部を骨の長手方向に移動させることで骨を引き抜く際には、魚身当接片によって魚身を抑えることで、魚身の持ち上がりを防止し、骨だけを確実に抜き取ることができるとともに魚身の位置ずれを防止することができる。また、魚身の持ち上がりを防止して連続した骨抜き動作を安定して行うことができる。また、骨を確実に回収することができ、連続した骨抜き動作を安定して行うことができる。また、魚フィーレ骨抜き取りチャックの動作範囲に近い位置に骨回収機構部が配置されるため、連続した骨の抜き取り動作時間を短くすることができる。
【0010】
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態による魚フィーレ骨抜き取り方法において、骨回収機構部には、抜き取った骨を吸引するバキューム管が接続されているものである。本実施の形態によれば、骨を確実に回収することができる。
【0011】
本発明の第3の実施の形態、第1の実施の形態による魚フィーレ骨抜き取り方法において、骨回収工程では、抜き取った骨をカウントするものである。本実施の形態によれば、抜き取った骨をカウントすることで、骨の抜き取り確認を行うことができる。
【実施例】
【0012】
図1は本発明の実施例1による魚フィーレ骨抜き取りシステムを示す工程図である。
投入場所1ではパレット20(
図2参照)に魚フィーレ21(
図2参照)を載置する。投入場所1で魚フィーレ21が載置されたパレット20はコンベア11で移動され、パレット合流場所2に移動する。
投入場所1では、パレット20のマーカー22(
図2参照)を読み取り、通信回線12を経由してシステムコンピュータ13に送られる。これによりパレット20のマーカー22情報と魚フィーレ21とが特定される。マーカー22の読み取り装置及び読取方法は、非接触での磁気情報読取が適しているがその他の方法でもよい。投入場所1からパレット20が合流場所2に移動すると、投入場所1では、ほぼ同時に新たなパレット20に新たな魚フィーレ21が載置される。
魚フィーレ21を搭載していないパレット20は、パレット20を複数枚格納できるストッカーから自動供給することが好ましいが、人が供給してもよい。
パレット合流場所2は、リトライ投入場所でもあり、リトライコンベア10からリトライのためのパレット20が、投入場所1からのパレット20と、ぶつからないように制御される。リトライのためのパレット20がリトライコンベア10に存在する場合には、投入場所1からのパレット20と、リトライコンベア10からのパレット20とが交互に合流場所2に供給され、作業場所3に移動する。
【0013】
作業場所3では、第1撮像工程3Aと第2撮像工程3Bと骨抜き工程3Cとを有する。
第1撮像工程3Aでは、パレット20に載置した魚フィーレ21を撮像し、システムコンピュータ13では、第1撮像工程3Aで撮像された第1撮像画像により骨が存在する領域を特定する(骨領域特定工程13A)。
第2撮像工程3Bでは、骨領域特定工程13Aで特定された領域を撮像し、システムコンピュータ13では、第2撮像工程3Bで撮像された第2撮像画像により骨の位置を特定する(骨位置特定工程13B)。
骨抜き工程3Cでは、骨位置特定工程13Bで特定された骨の外方端部を魚フィーレ骨抜き取りチャック60にて掴み、魚フィーレ骨抜き取りチャック60の移動により骨を抜く。
作業場所3では、このようにして、パレット20上に搭載された魚フィーレ21の骨が1本1本抜かれる。詳しくは後述の
図2以降で説明する。
【0014】
骨抜き工程3Cが終わったパレット20は検査場所4に移動する。検査場所4ではX線もしくは赤外線にて骨の抜き残しがあるかないかを画像により判断する(検査工程)。判定結果は検査場所4で読み取られたマーカー22の情報とともに通信回線12経由でシステムコンピュータ13に送られ、マーカー22の情報と骨抜き結果が特定される。判定結果には少なくとも、同一魚フィーレ21に対して不良と判断された回数、残った骨の場所情報が含まれている。良品分岐場所5でマーカー22を読み取り、もしあらかじめ決められたすべての骨が抜き取られている場合は、良品分岐場所5から良品格納場所7に移動する。良品格納場所7は良品と判断された魚フィーレ21が搭載されたパレット20を格納する良品ストッカー群である。格納しないで常に取り出すようなシステムにすることも可能である。良品分岐場所5でマーカー22を読み取り、不良の場合は、不良リトライ分岐場所6に移動する。すなわち不良リトライ分岐場所6で読み取られたマーカー22により、このパレット20の搭載された魚フィーレ21は何回不良と判断されたかを、あらかじめ決められた回数と照らし合わせ、決められた回数に達している場合は不良品格納場所8に移動する。不良品格納場所8は不良品と判断された魚フィーレ21が搭載されたパレット20を格納する不良品ストッカーである。格納しないで常に取り出すようなシステムにすることもできるし、作業者17による不良品作業場所16に移動するようなシステムにすることもできる。不良リトライ分岐場所6で読み取られたマーカー22により、このパレット20に搭載された魚フィーレ21の不良回数が決められた回数に達していない場合は、リトライコンベア10に移動し、合流場所2に送られる。
【0015】
本実施例では、取り残し骨のある魚フィーレ21を載せた不良パレット群を不良品格納場所8として示している。不良品格納場所8の不良品ストッカーは不良品ストッカー格納場所15に運ばれる。不良品作業場所16は不良品ストッカー格納場所15に運ばれた不良品ストッカーから1枚のパレット20を取り出して載せる場所であり、ここでパレット20のマーカー22を読み取り、不良情報をディスプレイ14に表示する。作業者17は、ディスプレイ14の表示内容に沿って、取り残した骨を抜き取る。不良品格納場所8を不良品作業場所16としてもよい。
【0016】
図2は本実施例による魚フィーレ骨抜き取りシステムで用いるパレットの構成図である。
図2では、パレット20の上に魚フィーレ21が載っている状態を示している。基準マーク23は3個以上設けることが好ましく、パレット20の位置及び傾きの少なくともいずれかを計測する。なお、図示しないが、パレット20上方に基準マーク23の座標を計測できる計測センサーを配置し、計測センサーで基準マーク23の座標を計測することにより、パレット20の計測センサーの位置に対する座標を特定することができる。パレット20が移動して他の作業場所3に移った場合でも、これと同様に計測センサーにより移動してきたパレット20の基準マーク23を読み取ることにより、パレット20の位置が特定される。そのため、パレット20の停止位置がずれた場合でも、パレット20に置かれた魚フィーレ21の形状は、基準マーク23のあるすべての作業場所で、その基準マーク23を読み取ることにより、魚フィーレ21の形状をすべての作業場所で共有することができる。すべての作業場所においてパレット20の停止位置がずれない、もしくは許容範囲内のずれの場合はこの基準マーク23を使って座標の補正を行う必要はない。したがってパレット20の停止位置のずれが生じない方法で作業を行う環境が実現できれば、この基準マーク23をなくすことも可能である。
【0017】
マーカー22はパレット20を特定するものであり、パレット20に載っている魚フィーレ21も特定できる。本実施例では、作業場所3にパレット20が搬入されたとき、基準マーク23とほぼ同時にマーカー22も読み取られ、LANまたは無線LANによる通信回線12で、その読み取られたマーカー22の内容はシステムコンピュータ13に送られる。検査場所4においては、パレット20上のマーカー22に対応した検査結果がシステムコンピュータ13に送られる。良品分岐場所5においては、マーカー22情報からシステムコンピュータ13は不良リトライ分岐場所6に送るべきか、良品格納場所7に送るべきか判断する。不良品作業場所16においても同様であり、システムコンピュータ13がマーカー22に対応した検査結果をディスプレイ14に表示する。
【0018】
図3は本実施例による魚フィーレ骨抜き取りシステムの作業場所を示す構成図である。
第1撮像工程3Aは、コンベア11でパレット20が搬入されると、基準マーク23とマーカー22が読み取られ、システムコンピュータ13に情報が転送される。3次元センサー36は、高さ情報及び輝度情報をライン状に計測し、魚フィーレ21全体の3次元座標を取り込む。高さ情報を読み取らない場合は2次元カメラを使うこともできる。3次元センサー36はレール44に搭載され、レール44に沿って移動しながら計測を行うものである。本実施例ではコンベア11の移動方向37に対向する方向に移動する。魚フィーレ21全体もしくは決められた領域の計測が終了すると、システムコンピュータ13に3次元情報が転送され、魚フィーレ21の骨のありそうな部分もしくは部分群を特定する。なお、システムコンピュータ13とは別の画像処理コンピューターを用い、画像処理によって特定することもでき、特定した座標をシステムコンピュータ13に転送してもよい。また、画像処理コンピュータ、システムコンピュータ13内、もしくはそれらに付属するコンピュータにおいて、画像処理の代わりに機械学習させたニューラルネットワークで処理することもできる。その場合撮像された画像をメモリーに蓄積し、蓄積された画像をさらに機械学習させることにより認識の精度を向上させることも可能である。そして基準マーク23、マーカー22情報などとともにシステムコンピュータ13が管理しているメモリーに、魚フィーレ21の骨のありそうな部分もしくは部分群がそれらの領域を表す座標として格納される。3次元の計測終了とほぼ同時に魚フィーレ21の搭載されたパレット20は第2撮像工程3Bに搬入される。
【0019】
第2撮像工程3Bでは、第1撮像工程3Aと同様に、基準マーク23とマーカー22が読み取られ、システムコンピュータ13に情報が転送される。多関節ロボット38は、その先端部には照明39及びカメラ40が搭載されている。システムコンピュータ13はマーカー22情報に対応した、さらに基準マーク23で校正された魚フィーレ21の骨のありそうな部分もしくは部分群の座標を多関節ロボット38に転送する。転送された情報により骨のありそうな場所に多関節ロボット38に搭載された照明39及びカメラ40が移動し、撮像を行う。
第2撮像工程3Bでは、画像処理コンピューターに画像情報が転送され、魚フィーレ21の骨もしくは骨群を特定し、特定した座標をシステムコンピュータ13に転送する。第1撮像工程3Aにおいて、3次元センサー36ではなく、2次元カメラを用いた場合は、カメラ40の代わりに、高さ情報も同時にとれるカメラを使うか、もしくはカメラ40とは別に高さセンサーを追加して、3次元座標としてシステムコンピュータ13に転送する。第1撮像工程3Aの場合と同様、設備投資、生産タクトの関係で画像情報をシステムコンピュータ13に転送して、画像処理を行っても構わないし、画像処理の代わりに機械学習させたニューラルネットワークで処理することもできる。その場合も第1撮像工程3Aの場合と同様、撮像された画像をメモリーに蓄積し、蓄積された画像をさらに機械学習させることにより認識の精度を向上させることも可能である。そして基準マーク23、マーカー22情報とともにシステムコンピュータ13が管理しているメモリーに、魚フィーレ21の骨もしく骨群が格納される。認識された骨は、魚フィーレ骨抜き取りチャック60が骨を抜くために挟む骨の場所を座標としてシステムコンピュータ13が管理するメモリーに格納されている。また座標だけでなく、骨の刺さっている方向も一緒にメモリーに格納されている場合もある。骨を抜く方向は基本的には魚の頭の方向であるが、個体差により方向が異なっている場合や、魚身と骨が強く絡みつき骨を抜きにくい場合、骨の刺さっている方向に沿って抜くと抜きやすい場合があるからである。
【0020】
画像計測終了とほぼ同時に魚フィーレ21の搭載されたパレット20は、骨抜き工程3Cに搬入される。
第1撮像工程3A及び第2撮像工程3Bと同様に、基準マーク23とマーカー22が読み取られ、システムコンピュータ13に情報が転送される。多関節ロボット41は、その先端部には魚フィーレ骨抜き取りチャック60が搭載されている。システムコンピュータ13はマーカー22情報に対応した、さらに基準マーク23で校正された魚フィーレ21の骨の部分もしくは部分群の座標を多関節ロボット41に転送する。転送された情報により骨のある部分に魚フィーレ骨抜き取りチャック60が移動し骨を抜く。この骨抜き工程3Cを決められた骨の数だけ繰り返す。結果をシステムコンピュータ13に転送し、骨抜き工程3Cが終了後は検査工程にパレット20が移動される。
【0021】
第2撮像工程3Bに多関節ロボット38が使われている理由は、魚フィーレ21は3次元的な形状であるため、その形状に沿った位置に照明39、カメラ40を配置することにより精度の高い計測が可能となる。例えば魚フィーレ21の表面に垂直な位置で計測することにより、全面にピントが合うと同時に画像歪などが軽減される。また骨抜き工程3Cに多関節ロボット41が使われている理由は、魚フィーレ21に刺さっている骨は、基本的には魚の頭の方向を向いているが、ばらつきがある。骨は魚身に絡んでいるため骨の向いている方向に抜くことによりスムースに抜ける。様々な方向に骨を抜くため魚フィーレ骨抜き取りチャック60は多関節ロボット41に搭載され、骨の外方端部を魚フィーレ骨抜き取りチャック60にて掴む。
【0022】
カメラ40を取り付けた更なる利点として、カメラ40の画像を利用して、カメラ40を前後に動かす機構によりピント合わせを行うことにより、ピントが合った場合はカメラ40と対象画像、例えば抜くべき骨、までの距離が一定になり、これにより魚フィーレ骨抜き取りチャック60までの距離もわかるようになり、骨の位置まで正確に魚フィーレ骨抜き取りチャック60を誘導することができる。カメラ40でピントを合わせて距離を計測する代わりに、カメラ40を3次元センサー36に変更するか、もしくはカメラ40とは別に高さセンサーを追加して、3次元座標を取ることも可能である。
【0023】
図には示していないが、検査工程においても、基準マーク23とマーカー22が読み取られ、システムコンピュータ13に情報が転送される。そしてX線もしくは赤外線による画像により、抜き残した骨を判定する。取得した画像は図示していない画像処理コンピューターに転送され、魚フィーレ21の取り残した骨があるかないかを判断し、結果をシステムコンピュータ13に転送する。設備投資、生産タクトの関係で画像処理コンピューターの代わりにシステムコンピュータ13に画像を転送して、処理を行っても構わない。画像処理の代わりに機械学習させたニューラルネットワークで処理することもできる。その場合撮像された画像をメモリーに蓄積し、蓄積された画像をさらに機械学習させることにより認識の精度を向上させることも可能である。判断結果により、取り残しの骨があると判断された場合は、読み取られたマーカー22を通信回線12経由でシステムコンピュータ13に照会することにより、同一魚フィーレ21に対して何回目の検査を行ったかを把握し、その検査回数(以後不良係数という)を1つ増やす。不良係数はパレット20に新規に魚フィーレ21が投入されたとき0にしておく。取り残した骨の場所の座標を、基準マーク23により校正された座標でシステムコンピュータ13に転送する。基準マーク23により校正された座標でシステムコンピュータ13に転送する代わりに、取り残した骨の座標をシステムコンピュータ13に転送し、システムコンピュータ13で基準マーク23により校正された座標に変換しても構わない。またシステムコンピュータ13に座標を転送する場合、取り残した骨の数も転送する。
【0024】
図1に示す、作業場所3に搬入されたパレット20は、マーカー22を読み取ることにより不良係数が1以上の場合、第1撮像工程3Aと第2撮像工程3Bとをパスして、骨抜き工程3Cにおいてシステムコンピュータ13から取り残し骨の校正された座標に基づき、骨抜きを行うこともできる。この時、リトライコンベア10やその他搬送時にパレット20に搭載された魚フィーレ21がパレット20に対して移動した恐れがあると判断される場合は、第1撮像工程3Aと第2撮像工程3Bとをパスすることなく作業を行ってもいいし、第1撮像工程3Aをパスして第2撮像工程3Bから作業を行うこともできる。この場合は、システムコンピュータ13に蓄えられた取り残した骨の座標を使うのではなく、第1撮像工程3Aと第2撮像工程3Bにおいて新たなに計測された骨の座標を用いて骨抜きを行う。
【0025】
多関節ロボット80は、その先端部には魚フィーレ抑えプレート70と骨回収機構部90とが搭載されている。魚フィーレ抑えプレート70は、一対の挟持部61A、61Bにて魚フィーレ21から骨Xを掴んで抜き取る魚フィーレ骨抜き取りチャック60とともに用いられ、魚フィーレ骨抜き取りチャック60に連動して動作する。システムコンピュータ13はマーカー22情報に対応した、さらに基準マーク23で校正された魚フィーレ21の骨Xの部分もしくは部分群の座標を多関節ロボット80に転送する。転送された情報により骨Xのある部分に魚フィーレ抑えプレート70が移動する。この骨抜き工程3Cを決められた骨Xの数だけ繰り返す。
【0026】
骨回収機構部90には、抜き取った骨Xを吸引するバキューム管(図示せず)が接続されている。このように、空気とともに骨Xを吸引することで、骨Xを確実に回収することができる。更に、抜き取った骨Xを検出する骨検出部(図示せず)を備え、抜き取った骨Xをカウントすることで、骨Xの抜き取り確認を行うことができる。骨Xの抜き取り確認を行うことで、骨Xの取り残しに対して迅速に対応することができる。なお、骨検出部には例えば赤外線センサーを使用することができ、骨検出部はバキューム管に設けることができる。
多関節ロボット80の先端部に、魚フィーレ抑えプレート70とともに骨回収機構部90を設けることで、魚フィーレ骨抜き取りチャック60の動作範囲に近い位置に骨回収機構部90が配置されるため、連続した骨Xの抜き取り動作時間を短くすることができる。
骨回収機構部90は、魚フィーレ抑えプレート70の上端側に配置することが好ましく、魚フィーレ骨抜き取りチャック60の先端部が挿入でき、一対の挟持部61A、61Bを開動作させることで骨Xを収容することができる。骨回収機構部90に収容された骨Xは、空気とともにバキューム管に吸引される。
なお、骨回収機構部90にブラシ材を配置することで、一対の挟持部61A、61Bに付着した魚身Yなどを除去することができる。
【0027】
図4は本発明の実施例2による魚フィーレ骨抜き取りシステムの作業場所を示す構成図である。
本実施例では、投資金額、作業タクト、生産量などの兼ね合いより工程数を少なくするために、第1撮像工程3Aは実施例1のままで、第2撮像工程3Bと骨抜き工程3Cとを同じ場所で行うものである。工程3Dは第2撮像工程3Bと骨抜き工程3Cとを同一の多関節ロボット51で行う。すなわち、照明39、カメラ40、及び魚フィーレ骨抜き取りチャック60を1つの多関節ロボット51に搭載している。
【0028】
本実施例の新たな利点は、骨を抜いた後に照明39とカメラ40で確認し、抜けてないと判断したとき、再度骨抜きを行わせることができる。抜けてないと判断する方法は、骨のあるべき場所の近傍の画像を撮像し、画像処理を行い、骨を確認する方法もあるが、もう一つの方法として、カメラ40の視野に魚フィーレ骨抜き取りチャック60の先端周辺が映るように工夫しておくことにより、骨を抜いた後、魚フィーレ骨抜き取りチャック60の先端周辺を画像撮影し、画像処理を行うことにより骨の確認をする方法もある。すなわち魚フィーレ骨抜き取りチャック60先端周辺に骨がある場合は骨が抜けていることがわかる。そのためには以前に抜いた骨が魚フィーレ骨抜き取りチャック60先端周辺についたままである場合は正しい判断ができないため、骨を抜いた後魚フィーレ骨抜き取りチャック60から骨を毎回除去しておく必要がある。除去の方法としては魚フィーレ骨抜き取りチャック60先端部分から骨を外した後、洗浄することにより行うことができる。さらに洗浄した後、画像にて骨の存在を確認することも可能である。さらに実施例1では第2撮像工程3Bから骨抜き工程3Cにパレット20が移動するとき、何らかの原因で魚フィーレ21が移動した場合、骨抜き工程3Cの多関節ロボット41に送られた骨の座標との齟齬が生じ、骨抜きがうまくできない場合が考えられるが、先ほど説明したように、再度骨を認識し骨抜きを行うように制御することで、この問題を解決することができる。さらに実施例2では、骨の位置を確認しながら魚フィーレ骨抜き取りチャック60を制御して骨を抜くような制御も可能になり、信頼性を向上させた骨抜きシステムを実現することができる。また実施例2で骨抜きの後の魚フィーレ21の骨残りの確認をすべての骨を抜くごとに行うように制御した場合は、検査工程を省略することも可能である。
【0029】
実施例2と同様、カメラ40を取り付けた更なる利点として、カメラ40の画像を利用して、カメラ40を前後に動かす機構によりピント合わせを行うことにより、ピントが合った場合はカメラ40と対象画像、例えば抜くべき骨、までの距離が一定になり、これにより魚フィーレ骨抜き取りチャック60までの距離もわかるようになり、骨の位置まで正確に魚フィーレ骨抜き取りチャック60を誘導することができる。カメラ40の代わりに高さ情報を取るセンサーを使うか、もしくはカメラ40とは別に高さセンサーを追加して、3次元座標を取ることもできる。
【0030】
本実施例においても、実施例2と同様に、多関節ロボット80には、魚フィーレ抑えプレート70と骨回収機構部90とが搭載されている。
【0031】
図5は本発明の実施例3による魚フィーレ骨抜き取りシステムの作業場所を示す構成図である。
実施例3では、第1撮像工程3Aは実施例1のままで、第2撮像工程3Bと骨抜き工程3Cとを同じ場所で行うものであるが、工程3Eは第2撮像工程3Bを多関節ロボット38で行い、骨抜き工程3Cを多関節ロボット41で行う。すなわち、照明39及びカメラ40を多関節ロボット38に搭載し、魚フィーレ骨抜き取りチャック60を多関節ロボット41に搭載している。
【0032】
実施例3が、実施例2に対して、新たに加わった利点は、次の通りである。魚フィーレ骨抜き取りチャック60及び抜いた骨を照明39とカメラ40で自由に確認できることである。例えば実施例2ではカメラ40の位置と魚フィーレ骨抜き取りチャック60の位置により、抜いた骨の半分しか映らなかった場合においても、カメラ40を自由に移動できるため、骨の全体を撮影することができ、骨全体の形状を確認することができる。
【0033】
さらなる利点として、実施例2では、照明39とカメラ40が、骨が含まれている場所が撮影できるところまで移動し、撮影後、魚フィーレ骨抜き取りチャック60が骨の位置まで移動するようになるが、実施例3では、照明39とカメラ40が、骨が含まれている場所で撮影すると、ほぼ同時に魚フィーレ骨抜き取りチャック60が骨の近傍まで移動させておくことができるため、骨を認識してから骨を抜くまでの多関節ロボット38の移動時間を減らすことができる。実施例3では多関節ロボット38、41を2台使用しているが、ロボット1台と腕が2本の双腕ロボットでも実現できる。実施例1、2と同様にカメラ40の代わりに高さ情報を取るセンサーを使うか、もしくはカメラ40とは別に高さセンサーを追加して、3次元座標を取ることもできる。
【0034】
図6は
図3から
図5に示す骨抜き取りチャックの要部斜視図であり、
図6(a)は一対の挟持部を開とした状態、
図6(b)は一対の挟持部を閉とした状態を示している。また、
図7は
図6に示す骨抜き取りチャックの動作工程を示している。
骨抜き取りチャック60は、一対の挟持部61A、61Bの前端に、骨X(
図7参照)の周囲に位置する魚身Y(
図7参照)を押圧する押圧部62A、62Bを有している。
一方の押圧部62Aは、一方の挟持部61Aの前端の両側に配置するとともに、一方の挟持部61Aの一方側挟持面63Aよりも、他方の挟持部61Bの方向に延出させている。
また、他方の押圧部62Bは、他方の挟持部61Bの前端の両側に配置するとともに、他方の挟持部61Bの他方側挟持面63Bよりも、一方の挟持部61Aの方向に延出させている。
一方側挟持面63Aには、挟み込む骨Xの長手方向に垂直な方向に畝部64Aを形成している。他方側挟持面63Bには、挟み込む骨Xの長手方向に垂直な方向に畝部64Bを形成している。
【0035】
図6(a)に示すように、一対の挟持部61A、61Bを開とした状態では、一方の押圧部62A、一方の押圧部62Aの間に位置する畝部64A、他方の押圧部62B、及び他方の押圧部62Bの間に位置する畝部64Bによって、立方形状の枠が形成される。なお、一方の押圧部62Aの前面は、一方の押圧部62Aの間に位置する畝部64Aよりも前方に突出し、他方の押圧部62Bの前面は、他方の押圧部62Bの間に位置する畝部64Bよりも前方に突出している。
また、
図6(b)に示すように、一対の挟持部61A、61Bを閉とした状態では、一方側挟持面63Aに形成している畝部64Aの間に、他方側挟持面63Bに形成している畝部64Bが位置する。
このように、一方側挟持面63A及び他方側挟持面63Bには、挟み込む骨Xの長手方向に垂直な方向に畝部64A、64Bを形成しているので、骨Xを確実に掴むことができ、抜き取り動作時に骨Xが一対の挟持部61A、61Bから抜けることを防止することができる。
【0036】
一対の挟持部61A、61Bを閉とした状態では、他方の押圧部62Bが一方の挟持部61Aの一方側外面65Aより外方に突出し、一方の押圧部62Aが他方の挟持部61Bの他方側外面65Bより外方に突出している。これは、一対の挟持部61A、61Bの前端側での肉厚(一方側挟持面63Aから一方側外面65Aまでの肉厚、他方側挟持面63Bから他方側外面65Bまでの肉厚)を薄くするとともに、一対の挟持部61A、61Bの開度を大きくしているためである。
【0037】
図7(a)は、抜き取る対象となる骨Xに対して骨抜き取りチャックを配置した状態を示す要部側面構成図、
図7(b)は、
図7(a)に示す矢印D方向から見た構成図である。
図7(a)に示すように、多関節ロボット41、51によって、骨抜き取りチャック60を骨Xの近傍に配置する。
骨抜き取りチャック60は、骨Xの長手方向が、一方の押圧部62A、一方の押圧部62Aの間に位置する畝部64A、他方の押圧部62B、及び他方の押圧部62Bの間に位置する畝部64Bによって形成される立方形状の枠による仮想平面に垂直となるように配置する(
図7(a)参照)とともに、骨Xが仮想平面内に位置するように配置する(
図7(b)参照)。
【0038】
図7(c)は、骨抜き取りチャックを魚身に押圧した状態を示す要部側面構成図、
図7(d)は、
図7(c)に示す矢印D方向から見た構成図である。
図7(c)及び
図7(d)では、骨抜き取りチャック60を骨Xの長手方向に移動させた後に、一対の挟持部61A、61Bを若干閉動作させた状態を示している。
図7(c)に示すように、多関節ロボット41、51によって、骨抜き取りチャック60を骨Xの長手方向に移動させ、押圧部62A、62Bで魚身Yを押圧する。
押圧部62A、62Bを骨Xの長手方向に押し当てる際には、一対の挟持部61A、61Bを開状態としている。
このように、骨Xの周囲に位置する魚身Yを押圧することで、骨Xのずれを防止することができるとともに、骨Xがずれても立方形状の枠外となることはない。従って、
図7(d)に示すように、骨Xは立方形状の枠内に位置する。
また、押圧部62A、62Bを骨Xの長手方向に押し当て、又は押し当てた後に一対の挟持部61A、61Bを若干閉動作させることで、骨Xを魚身Yから露出させることができる。
【0039】
図7(e)は、骨を挟持部にて掴んで引き抜いた状態を示す要部側面構成図、
図7(f)は、
図7(e)に示す矢印D方向から見た構成図である。
図7(c)及び
図7(d)に示す状態から、一対の挟持部61A、61Bを閉動作させることで骨Xを挟持部61A、61Bにて掴み、挟持部61A、61Bを骨Xの長手方向に引き抜くことで骨Xを抜き取る。
【0040】
以上のように、骨Xの周囲に位置する魚身Yを押圧することで、一対の挟持部61A、61Bの間から骨Xがはみ出すことを防止することができ、押圧部62A、62Bを骨Xの長手方向に押し当てることで、骨Xを魚身Yから露出させることができ、骨Xだけを確実に抜き取ることができる。
【0041】
図8は
図3から
図5に示す骨抜き取りチャックの他の構成を示す要部斜視図であり、
図8(a)は一対の挟持部を開とした状態、
図8(b)は一対の挟持部を閉とした状態を示している。
図6と同一構成には同一符号を付して説明を省略する。
本実施例では、一対の挟持部61A、61Bを閉とした状態では、他方の押圧部62Bが一方の挟持部61Aの一方側外面65Aより外方に突出せず、一方の押圧部62Aが他方の挟持部61Bの他方側外面65Bより外方に突出しない。本実施例によれば、一対の挟持部61A、61Bの前端側での肉厚(一方側挟持面63Aから一方側外面65Aまでの肉厚、他方側挟持面63Bから他方側外面65Bまでの肉厚)を厚くすることで、一対の挟持部61A、61Bの強度を高めることができる。
なお、立方形状の枠は、骨Xより狭い若干の隙間があってもよい。すなわち、一方の押圧部62Aと他方の押圧部62Bとの間に隙間があってもよい。また、この立方形状の枠は、魚身Yを押圧する際に形成されていればよい。
また、
図6に示す実施例、及び
図8に示す実施例では、一方の挟持部61Aには一対の押圧部62Aを設け、他方の挟持部61Bには一対の押圧部62Bを設けた場合を示しているが、一方の挟持部61Aだけに一対の押圧部62Aを設け、他方の挟持部61Bには押圧部62Bを設けないものであってもよい。この場合には、一方の押圧部62A、一方の押圧部62Aの間に位置する畝部64A、及び他方の挟持部61Aの畝部64Bによって立方形状の枠が形成される。
【0042】
図9は
図3及び
図4に示す魚フィーレ抑えプレートの使用状態を示す写真であり、
図9(a)は骨の近傍に位置させた状態、
図9(b)は魚身を抑えた状態、
図9(c)は骨抜き取りチャックによって骨を引き抜く動作開始の状態を示している。
図10は
図3及び
図4に示す魚フィーレ抑えプレートを用いた魚フィーレ骨抜き取り方法を示す写真であり、
図10(a)は魚身当接片移動工程後の状態、
図10(b)は骨抜き取りチャックを骨の位置に移動させて骨挟持工程前の状態、
図10(c)は骨挟持工程後で魚身抑え工程後の状態、
図10(d)は骨引き抜き工程中の状態、
図10(e)は魚身当接片退避工程後で骨回収工程中の状態を示している。
【0043】
図9に示すように、魚フィーレ抑えプレート70は、魚身Yを抑える魚身当接片71と、多関節ロボット80への取り付け片72と、魚身当接片71と取り付け片72との間に位置させるU字片73とを有している。U字片73によって、魚フィーレ骨抜き取りチャック60と魚身当接片71との干渉を防ぎ、魚身当接片71の角度を調整することができる。
【0044】
図10に示すように、魚身当接片71の間には、切り込み74が形成され、挟持部61A、61Bにて骨Xを掴む状態では、切り込み74に挟持部61A、61Bが位置する。なお、本実施例では、1枚の魚身当接片71の間に切り込み74を形成しているが、魚身当接片71を複数片で構成し、複数片の間に切り込み74を形成してもよい。
本実施例による魚フィーレ抑えプレート70は、魚身当接片71を、魚身の表面形状に沿って変形させており、挟持部61A、61Bを骨Xの長手方向に移動させることで骨Xを引き抜く際には、魚身当接片71によって魚身Yを抑える。
このように、挟持部61A、61Bを骨Xの長手方向に移動させることで骨Xを引き抜く際には、魚身当接片71によって魚身Yを抑えることで、魚身Yの持ち上がりを防止し、骨Xだけを確実に抜き取ることができるとともに魚身Yの位置ずれを防止することができる。
【0045】
図9(c)に示すように、骨Xを引き抜く際には、魚身当接片71を、骨Xの長手方向に対して垂直な面として魚身Yを抑えている。従って、魚身Yへの魚身当接片71の接触面積を最小限にすることができるとともに、魚身Yの持ち上がりを防止することができる。
【0046】
本実施例による魚フィーレ骨抜き取り方法は、
図10(a)に示すように、魚身当接片71を骨Xの近傍に移動させる魚身当接片移動工程と、魚身当接片移動工程の後に、
図10(c)に示すように、一対の挟持部61A、61Bによって骨Xを掴む骨挟持工程と、
図10(c)に示すように、骨挟持工程とともに又は骨挟持工程の前後のタイミングで魚身当接片71によって魚身Yを抑える魚身抑え工程と、
図10(d)に示すように、魚身当接片71によって魚身Yを抑えた状態で、挟持部61A、61Bを骨Xの長手方向に移動させることで骨Xを引き抜く骨引き抜き工程と、骨引き抜き工程の後に魚身当接片71を魚身Yから退避させる魚身当接片退避工程と、骨引き抜き工程の後に挟持部61A、61Bを骨回収機構部90に移動し、一対の挟持部61A、61Bを開動作させることで骨Xを骨回収機構部90に回収する骨回収工程とによって、1つの骨Xに対する骨抜き動作を行う。そして、次の骨Xに対する骨抜き動作を、上記の工程を繰り返すことにより行うことで、魚身Yの持ち上がりを防止して連続した骨抜き動作を安定して行うことができる。
なお、
図10に示す魚フィーレ載置プレート100は、パレット20上に固定され、魚フィーレ21を載置する。
【0047】
図11は本発明に最適な魚フィーレ載置プレートを示す斜視図である。
魚フィーレ載置プレート100は、魚フィーレ21を載置する載置面100uには、多数の突起部101を形成している。このような魚フィーレ載置プレート100を用いることで、骨Xの抜き取り動作に伴う魚身Yの位置ずれを防止することができる。
また、突起部101には、尖った頂部102を形成している。従って、尖った頂部102が魚身Yに引っかかることで魚身Yの持ち上がりを防止できるとともに魚身Yの位置ずれを防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、3枚におろした魚の半身から骨を正確に抜き取るものである。
【符号の説明】
【0049】
1 投入場所
2 パレット合流場所
3 作業場所
4 検査場所
5 良品分岐場所
6 不良リトライ分岐場所
7 良品格納場所
8 不良品格納場所
10 コンベア
11 リトライコンベア
12 通信回線
13 システムコンピュータ
14 ディスプレイ
15 不良品ストッカー格納場所
16 不良品作業場所
17 作業者
20 パレット
21 魚フィーレ
22 マーカー
23 基準マーク
36 3次元センサー
37 移動方向
38 多関節ロボット
39 照明
40 カメラ
41 多関節ロボット(第1の多関節ロボット)
44 レール
51 多関節ロボット(第1の多関節ロボット)
60 魚フィーレ骨抜き取りチャック
61A、61B 挟持部
62A、62B 押圧部
63A 一方側挟持面
63B 他方側挟持面
64A、64B 畝部
65A 一方側外面
65B 他方側外面
70 魚フィーレ抑えプレート
71 魚身当接片
72 取り付け片
73 U字片
74 切り込み
80 多関節ロボット(第2の多関節ロボット)
90 骨回収機構部
100 魚フィーレ載置プレート
100u 載置面
101 突起部
102 頂部
X 骨
Y 魚身
【要約】
【課題】魚フィーレ骨抜き取りチャックによって骨を抜き取る際に、魚身の持ち上がりを防止して骨だけを確実に抜き取ることができるとともに、魚身の位置ずれによる骨の位置ずれを防止することができる魚フィーレ抑えプレート、魚フィーレ骨抜き取り方法、及び魚フィーレ載置プレートを提供すること。
【解決手段】魚身Yを抑える魚身当接片71を有し、魚身当接片71に切り込み74が形成され、挟持部61A、61Bにて骨Xを掴む状態では、切り込み74に挟持部61A、61Bが位置し、挟持部61A、61Bを骨Xの長手方向に移動させることで骨Xを引き抜く際には、魚身当接片71によって魚身Yを抑えることを特徴とする。
【選択図】
図1