(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】ラベル、包装材及び包装体
(51)【国際特許分類】
B65D 81/34 20060101AFI20241213BHJP
【FI】
B65D81/34 U
(21)【出願番号】P 2021007858
(22)【出願日】2021-01-21
【審査請求日】2023-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000205306
【氏名又は名称】大阪シーリング印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100150348
【氏名又は名称】嶋田 太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100086737
【氏名又は名称】岡田 和秀
(72)【発明者】
【氏名】播摩 英伸
【審査官】植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-256797(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0399507(US,A1)
【文献】特開2016-060531(JP,A)
【文献】特開2005-224381(JP,A)
【文献】特開2013-166948(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/34
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱によって収縮する熱収縮性フィルムを有する基材層と、該基材層の片面に形成され
た粘着剤層とを備えるラベルであって、
前記粘着剤層は、低揮発性油を含有し、
前記低揮発性油が、植物油
であるとともに、
前記粘着剤層が、水系粘着剤層である、
ことを特徴とするラベル。
【請求項2】
前記基材層が、前記熱収縮性フィルムからなり、該熱収縮性フィルムの片面に前記粘着剤層が形成されている、
請求項
1に記載のラベル。
【請求項3】
加熱によって生じる蒸気を排出するための蒸気抜き部を有する包装材であって、
請求項
1または2に記載のラベルが、前記蒸気抜き部を覆うように貼着されている、
ことを特徴とする包装材。
【請求項4】
当該包装材が、内容物を収容する容器本体の開口を塞ぐ蓋体を構成する、
請求項
3に記載の包装材。
【請求項5】
前記請求項
4に記載の包装材と、内容物を収容する前記容器本体とを備える、
ことを特徴とする包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジ等を使用して加熱処理される食品等を包装する包装容器や包装袋等の包装体、この包装体を構成する蓋や包装用フィルム等の包装材、及び、この包装材に貼着されるラベルに関する。
【背景技術】
【0002】
電子レンジでそのまま加熱調理することができるように、各種の食材や加工食品等の内容物を包装用フィルム等で構成された包装袋内に密封したり、内容物を収容した包装容器の開口部を包装用フィルム等で密封した食品が多く販売されている。
【0003】
この種の食品をそのまま電子レンジで加熱調理すると、内容物から生じる水蒸気等によって包装袋や包装容器の内圧が過剰に上昇し、包装袋を構成する包装用フィルムや、包装容器の開口部を密封する包装用フィルムが破裂し、収容されている内容物が外部に飛散することになる。
【0004】
このため、加熱時に袋面や容器の蓋部に自然に蒸気抜き用の孔が形成されるようにした技術が、従来から種々提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、熱収縮性フィルムを有するラベルを、容器の蓋体に形成された蒸気抜き部を覆うように貼着しておき、容器ごと電子レンジで加熱した場合に、熱収縮性フィルムが熱によって収縮して蒸気抜き部が開口し、容器内から生じる水蒸気等を外部へ排出させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように食品を収納した容器を、電子レンジで加熱した場合に、食品から発生する水蒸気等を、蒸気抜き部を開口させて排出させる技術は種々提案されているが、用途によっては、電子レンジによって加熱を開始してから早いタイミングで水蒸気等を排出させたい場合がある。
【0008】
本発明は、このような実情に着目してなされたものであって、電子レンジ等で加熱を開始してから早いタイミングで水蒸気等を排出させることが可能なラベル、包装材及び包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明では次のように構成している。
【0010】
(1)本発明に係るラベルは、加熱によって収縮する熱収縮性フィルムを有する基材層と、該基材層の片面に形成された粘着剤層とを備えるラベルであって、前記粘着剤層は、低揮発性油を含有する。
【0011】
本発明に係るラベルを、例えば、各種の食材や加工食品等の内容物を収容した包装容器や包装袋を構成する包装材に、その蒸気抜き部を覆うように貼着し、内容物を収容した包装容器や包装袋を、電子レンジ等を用いて加熱処理した場合に、当該ラベルの基材層の熱収縮性フィルムが熱によって収縮することによって、包装材の蒸気抜き部を開口させて、内容物から生じた水蒸気等を当該ラベル外へ排出することができる。
【0012】
本発明に係るラベルによると、熱収縮性フィルムを有する基材層の片面の粘着剤層は、低揮発性油を含有している。この低揮発性油は、電子レンジ等によるマイクロ波を吸収して加熱されるので、低揮発性油を含有していない粘着剤層に比べて、マイクロ波加熱による粘着剤層の上昇温度が高くなる。この粘着剤層の温度上昇によって、基材層の熱収縮性フィルムの加熱が促進され、電子レンジ等で加熱を開始してから早期に熱収縮性フィルムを収縮させることができる。
【0013】
これによって、包装容器や包装袋を、電子レンジ等を用いて加熱処理した場合に、当該ラベルの基材層の熱収縮性フィルムを早期に熱収縮させて、包装容器や包装袋を構成する包装材に形成された蒸気抜き部を開口させて、内容物から生じた水蒸気等を早期に排出することができる。
【0014】
(2)本発明の一実施態様によると、前記低揮発性油が、ポリオールである。
【0015】
この実施態様によると、熱収縮性フィルムを有する基材層の片面の粘着剤層に含有されているポリオールは、電子レンジ等によるマイクロ波を吸収して加熱されるので、ポリオールを含有していない粘着剤層に比べて、電子レンジ等でマイクロ波加熱した場合に、加熱による粘着剤層の上昇温度が高くなり、基材層の熱収縮性フィルムの加熱が促進され、電子レンジ等で加熱を開始してから早期に熱収縮性フィルムを熱収縮させることができる。
【0016】
(3)本発明の他の実施態様では、前記低揮発性油が、植物油である。
【0017】
この実施態様によると、熱収縮性フィルムを有する基材層の片面の粘着剤層に含有されている植物油は、電子レンジ等によるマイクロ波を吸収して加熱されるので、植物油を含有していない粘着剤層に比べて、電子レンジ等でマイクロ波加熱した場合に、加熱による粘着剤層の上昇温度が高くなり、基材層の熱収縮性フィルムの加熱が促進され、電子レンジ等で加熱を開始してから早期に熱収縮性フィルムを熱収縮させることができる。
【0018】
(4)本発明の好ましい実施態様では、前記ポリオールが、グリセリンである。
【0019】
この実施態様によると、基材層の片面の粘着剤層に含有されているグリセリンは、電子レンジ等によるマイクロ波を吸収して加熱されるので、グリセリンを含有していない粘着剤層に比べて、電子レンジ等でマイクロ波加熱した場合に、加熱による粘着剤層の上昇温度が高くなり、基材層の熱収縮性フィルムの加熱が促進され、電子レンジ等で加熱を開始してから早期に熱収縮性フィルムを熱収縮させることができる。
【0020】
(5)本発明の一実施態様では、前記粘着剤層における前記グリセリンの含有量が、乾燥重量で15重量%以上60重量%以下である。
【0021】
この実施態様によると、粘着剤層におけるグリセリンの含有量が、乾燥重量で15重量%以上であるので、電子レンジ等でマイクロ波加熱した場合に、粘着剤層の温度を、基材層の熱収縮性フィルムの加熱を促進できる程度まで上昇させることができる一方、グリセリンの含有量が、乾燥重量で60重量%以下であるので、粘着剤層の粘着力を十分に確保することができる。
【0022】
(6)本発明の他の実施態様では、前記粘着剤層が、水系粘着剤層である。
【0023】
この実施態様によると、粘着剤層は、水系の粘着剤層であるので、食品用途に好適である。
【0024】
(7)本発明の一実施態様では、前記基材層が、前記熱収縮性フィルムからなり、該熱収縮性フィルムの片面に前記粘着剤層が形成されている。
【0025】
この実施態様によると、熱収縮性フィルムの片面に粘着剤層が形成されているので、電子レンジ等で加熱した場合に、粘着剤層の温度上昇によって、熱収縮性フィルムが効率的に加熱される。
【0026】
(8)本発明に係る包装材は、加熱によって生じる蒸気を排出するための蒸気抜き部を有する包装材であって、上記(1)ないし(7)いずれかのラベルが、前記蒸気抜き部を覆うように貼着されている。
【0027】
本発明に係る包装材によると、当該包装材によって、例えば、各種の食材や加工食品等の内容物を収容した包装容器や包装袋を構成した場合、内容物を収容した包装容器や包装袋を、電子レンジを用いて加熱処理したときに、当該包装材の蒸気抜き部を覆うラベルの熱収縮性フィルムが、加熱を開始してから早期に熱収縮し、当該包装材の蒸気抜き部を開口させて、内容物から生じた水蒸気等を早期に排出することができる。
【0028】
(9)本発明の他の実施態様では、当該包装材が、内容物を収容する容器本体の開口を塞ぐ蓋体を構成する。
【0029】
この実施態様によると、包装容器を、電子レンジ等を用いて加熱処理した場合に、内容物等から生じる水蒸気等によって、包装容器の内圧が過剰に上昇するのが防止されて、包装容器の容器本体から蓋体が外れるのを防止することができる。
【0030】
(10)本発明に係る包装体は、上記(9)の包装材と、内容物を収容する前記容器本体とを備える。
【0031】
本発明に係る包装体によると、当該包装体である包装容器を、電子レンジ等を用いて加熱処理した場合に、内容物等から生じる水蒸気等によって、包装容器の内圧が過剰に上昇するのが防止されて、蓋体が容器本体から外れるのを防止することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、ラベルの基材層の片面の粘着剤層は、電子レンジ等によるマイクロ波を吸収して加熱される低揮発性油を含有しているので、これらを含有しない粘着剤層に比べて、マイクロ波加熱による上昇温度が高くなり、基材層の熱収縮性フィルムの加熱を促進することができ、電子レンジ等で加熱を開始してから早期に熱収縮性フィルムを収縮させることができる。
【0033】
これによって、包装容器や包装袋を、電子レンジ等を用いて加熱処理した場合に、ラベルの基材層の熱収縮性フィルムを早期に熱収縮させて、包装容器や包装袋を構成する包装材に形成された蒸気抜き部を開口させて、内容物から生じた水蒸気等を早期に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】
図1は本発明の一実施形態に係る包装容器の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0036】
図1は、本発明の一実施形態に係る包装体としての包装容器1の平面図であり、
図2は、
図1のA-A線断面図である。
【0037】
この実施形態の包装容器1は、電子レンジ調理食品等の図示しない内容物が収容された容器本体2と、この容器本体2の上部開口3を塞ぐ包装材としてのトップシール用フィルム4と、このトップシール用フィルム4に貼着されたラベル5とを備えている。
【0038】
容器本体2は、上部開口3の周囲に鍔状のフランジ部2aを備えており、このフランジ部2aの上面に、トップシール用フィルム4がヒートシールされて密封されている。
【0039】
この実施形態の包装容器1は、そのまま電子レンジで加熱する際に発生した水蒸気によって包装容器1が破裂しないように、平面視矩形のトップシール用フィルム4の上面の1つの角部には、例えば、
図1に示すように、破線Bで示される位置まで、矢印Cで示すように、トップシール用フィルム4を剥がすことを促す図示しない表記が印刷されている。
【0040】
すなわち、この包装容器1では、当該包装商品を購入した消費者は、トップシール用フィルム4の1つの角部を剥がして蒸気抜き口を形成した後、包装容器1を電子レンジで加熱する。
【0041】
しかし、消費者が、うっかりしてトップシール用フィルム4の角部を剥がすのを忘れて、包装容器1を電子レンジで加熱すると、包装容器1が破裂することになる。
【0042】
このため、この実施形態の包装容器1では、包装容器1を、トップシール用フィルム4の角部を剥がすことなく、そのまま電子レンジで加熱しても発生した水蒸気等を排出できるようにして、包装容器1が破裂するのを防止するために、次のように構成している。
【0043】
トップシール用フィルム4の中央部には、トップシール用フィルム4の角部を剥がすことなく、そのまま電子レンジで加熱した場合に、発生した蒸気を排出するための蒸気抜き部として、平面視円形の蒸気抜き孔4aが形成されている。
【0044】
この蒸気抜き孔4aを覆うように、ラベル5が、トップシール用フィルム4に貼着されている。
【0045】
このラベル5は、基材層を構成する加熱によって収縮する熱収縮性フィルム6と、この熱収縮性フィルム6の片面に形成された粘着剤層7とを備えている。
【0046】
熱収縮性フィルム6は、加熱によって収縮するシュリンクフィルムであり、この熱収縮性フィルム6は、例えば、一軸延伸のポリスチレンフィルム(OPS)であり、この実施形態では、平面視矩形となっている。
【0047】
この熱収縮性フィルム6は、一軸延伸のポリスチレンフィルムに限らず、例えば、熱収縮性PETフィルム、熱収縮性PE(ポリエチレン)フィルム、熱収縮性PP(ポリプロピレン)フィルム、熱収縮性PV(ポリ塩化ビニル)フィルム、あるいは、PS(ポリスチレン)とPET(ポリエチレンテレフタレート)の積層系であるハイブリッド熱収縮性フィルム等を使用することができ、一軸延伸に限らず、二軸延伸の熱収縮性フィルムを使用してもよい。
【0048】
なお、容器本体2及びトップシール用フィルム4は、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂から構成されている。
【0049】
当該包装商品を購入した消費者が、トップシール用フィルム4の1つの角部を剥がすのを忘れて、包装容器1をそのまま電子レンジで加熱すると、加熱によってラベル5の熱収縮性フィルム6が収縮し、更に、トップシール用フィルム4の角部が剥がされていないために、容器本体2の内容物から生じる水蒸気等による内圧の上昇を受けて、熱収縮性フィルム6が、粘着剤層7と共に歪んで皺が生じ、あるいは、一部が剥離する。これによって、トップシール用フィルム4とラベル5の粘着剤層7との間に部分的に隙間が生じ、トップシール用フィルム4の中央の蒸気抜き孔4aが、ラベル5の外側の空間と部分的に連通し、容器本体2の内容物から生じる水蒸気等が、ラベル5外へ排出されて、包装容器1の破裂が防止される。
【0050】
消費者が、トップシール用フィルム4の1つの角部を剥がすことなく、包装容器1をそのまま電子レンジで加熱した場合には、容器本体2aの内容物から生じる水蒸気等による内圧が急激に上昇する。このため、包装容器1の破裂を防止するには、電子レンジによる加熱を開始してから早期に容器本体2の内容物から生じる水蒸気等をラベル5外へ排出する必要がある。
【0051】
そこで、この実施形態の包装容器1では、電子レンジによる加熱を開始してからラベル5の熱収縮性フィルム6を早期に収縮変形させるようにしている。
【0052】
具体的には、熱収縮性フィルム6の片面に形成されている粘着剤層7は、電子レンジによるマイクロ波を吸収して加熱される低揮発性油を含有している。
【0053】
低揮発性油としては、例えば、ポリオール及び植物油などを挙げることができる。
【0054】
ポリオールとしては、例えば、グリセリンが好ましい。
【0055】
植物油としては、例えば、オリーブ油などが好ましい。
【0056】
この実施形態では、粘着剤層7は、ポリオールであるグリセリンを含有している。
【0057】
粘着剤層7を構成する粘着剤は、重合体を乳化させて水中に分散させた水系粘着剤であるのが好ましく、この実施形態では、アクリル系粘着剤である。
【0058】
このように熱収縮性フィルム6の片面に形成されている粘着剤層7に、マイクロ波を吸収して加熱されるグリセリンを含有させることによって、電子レンジで包装容器1を加熱すると、粘着剤層7のグリセリンが電子レンジのマイクロ波を吸収して加熱される。これによって、グリセリンを含有していない場合に比べて、粘着剤層7の温度上昇が高くなり、この粘着剤層7が片面に形成されている熱収縮性フィルム6の加熱が促進され、熱収縮性フィルム6が早期に熱収縮する。この熱収縮性フィルム6の熱収縮によって、トップシール用フィルム4の中央の蒸気抜き孔4aが、ラベル5の外側の空間と部分的に連通し、容器本体2の内容物から生じる水蒸気等を、加熱開始から早期に排出することができる。
【0059】
したがって、包装容器1を、トップシール用フィルム4の1つの角部を剥がすことなく、そのまま電子レンジで加熱して、容器本体2の内容物から生じる水蒸気等による内圧が急激に上昇しても、熱収縮性フィルム6を早期に加熱して熱収縮させることによって、容器本体2の内容物から生じる水蒸気等を早期に排出することができ、包装容器1の破裂を防止することができる。
【0060】
上記のように、この実施形態では、粘着剤層7は、マイクロ波を吸収して加熱されるグリセリンを含有しており、このグリセリンの含有量について、次のようにして検討を行った。
【0061】
先ず、粘着剤層7におけるグリセリンの含有量を異ならせた下記表1に示される配合のNo.1~No.6の6種類のサンプルを作製した。
【0062】
【表1】
この表1は、粘着剤層7を構成するアクリル系粘着剤と、グリセリンとの乾燥重量の重量%を示している。
【0063】
この表1において、No.1は、グリセリンを含有していないアクリル系粘着剤のみのサンプルであり、No.2~No.6は、グリセリンの重量%が、それぞれ、15重量%、30重量%、50重量%、60重量%、70重量%の各サンプルである。
【0064】
この内、グリセリンの含有量が70重量%のNo.6のサンプルは、接着不良となり、粘着剤層7として粘着力が不足して使用することができなかった。
【0065】
したがって、粘着剤層7として必要な粘着力を確保するためには、グリセリンの含有量は、70重量%未満である必要があり、60重量%以下であるのが好ましい。
【0066】
粘着力が不十分なNo.6を除くNo.1~No.5の5種類のサンプルによって片面に粘着剤層をそれぞれ形成した各熱収縮性フィルムからなる各ラベルを、厚さ50μmのPETフィルムにそれぞれ貼着した。各ラベルをそれぞれ貼着したPETフィルムを、電子レンジによって、出力500Wで3分間加熱した。この電子レンジによる加熱の前後における各ラベルの表面温度を、非接触式温度計によってそれぞれ計測した。
【0067】
その結果を、下記の表2に示す。
【0068】
【表2】
この表2に示されるように、グリセリンを含有しない粘着剤層によってPETフィルムに貼着したNo.1のラベルの加熱による上昇温度が、36.0℃であるのに対して、グリセリンを、15重量%、30重量%それぞれ含有した各粘着剤層によってPETフィルムにそれぞれ貼着したNo.2、No.3の各ラベルの加熱による上昇温度は、40.8℃、40.9℃であり、いずれもNo.1のラベルに比べて4.5℃以上高かった。
【0069】
また、グリセリンを、50重量%、60重量%それぞれ含有した各粘着剤層によってPETフィルムにそれぞれ貼着したNo.4、No.5の各ラベルの加熱による上昇温度は、それぞれ42.2℃、45.1℃であり、グリセリンの含有量が多い程、加熱による上昇温度は高くなることが分かる。
【0070】
このように粘着剤層に、マイクロ波を吸収して加熱されるグリセリンを含有させることによって、グリセリンを含有させない場合に比べて、ラベルの加熱による上昇温度を高めることができる。この上昇温度を4.5℃以上高めることができるので、グリセリンの含有量を、15重量%以上にするのが好ましい。
【0071】
次に、トップシール用フィルム上でのラベルの熱収縮状態を目視で観察した。すなわち、上記表1のNo.1~No.5の5種類のサンプルによって片面に粘着剤層をそれぞれ形成した各熱収縮性フィルムからなる各ラベルを、一枚のトップシール用フィルムにそれぞれ貼着した。このトップシール用フィルムによって、内容物として100gの水を収容した容器を封止し、電子レンジによって、出力500Wで2分間加熱した後、トップシール用フィルム上の各ラベルの熱収縮の度合いを目視で評価した。なお、前記2分間は、容器内の水が沸騰し始める程度の時間である。
【0072】
評価結果を、下記表3に示す。
【0073】
【表3】
この表3に示すように、マイクロ波を吸収して加熱されるグリセリンを含有しない粘着剤層によってトップシール用フィルムに貼着したNo.1のラベルでは、加熱による収縮が認められなかったのに対して、グリセリンを、15重量%、30重量%それぞれ含有した各粘着剤層によってトップシール用フィルムにそれぞれ貼着したNo.2、No.3の各ラベルでは、加熱による収縮が認められ、皺が発生した。
【0074】
また、グリセリンを、50重量%、60重量%それぞれ含有した各粘着剤層によってトップシール用フィルムにそれぞれ貼着したNo.4、No.5の各ラベルでは、加熱による著しい収縮が認められ、皺が著しく発生した。
【0075】
熱収縮性フィルムからなるラベルを加熱開始から早期に、十分に熱収縮させるためには、グリセリンの含有量を50重量%以上にするのが好ましく、60重量%以上にするのがより好ましい。
【0076】
上記のようにグリセリンの含有量が多い程、ラベルの熱収縮性フィルムの熱収縮が大きくなって、皺が著しく発生するのは、マイクロ波を吸収して発熱するグリセリンによって粘着剤層の上昇温度が高くなって、熱収縮性フィルムの加熱が促進されると共に、粘着剤層の凝集力が低下して、トップシール用フィルムからラベルが剥離し易くなったためである。
【0077】
以上のように本実施形態によれば、ラベル5を構成する熱収縮性フィルム6の片面に形成されている粘着剤層7は、電子レンジによるマイクロ波を吸収して加熱されるグリセリンを含有しているので、消費者が包装容器1のトップシール用フィルム4の1つの角部を剥がすことなく、そのまま電子レンジで加熱すると、粘着剤層7のグリセリンが、マイクロ波を吸収して加熱されることによって、粘着剤層7の上昇温度が高くなる。これによって、片面に粘着剤層7が形成されている熱収縮性フィルム6の加熱が促進されて、加熱開始から早期に熱収縮し、トップシール用フィルム4の蒸気抜き孔4aが開口し、包装容器1の内容物から生じる水蒸気等を早期に排出することができる。これによって、消費者がトップシール用フィルム4の1つの角部を剥がさなかったことによって、内容物から生じる水蒸気等による内圧が急激に上昇しても、包装容器1の破裂を防止することができる。
【0078】
上記実施形態では、消費者が、包装容器1のトップシール用フィルム4の一部を剥がして蒸気抜き口を形成した後に、電子レンジが加熱する包装容器に適用して説明したが、本発明のラベルは、電子レンジで加熱する前に、消費者が、蒸気抜き口を形成する必要のない包装容器に適用してもよい。
【0079】
上記実施形態のラベルの基材層は、熱収縮性フィルムのみで構成されたが、基材層を熱収縮性フィルムと他のフィルムとの積層フィルムで構成してもよい。
【0080】
上記実施形態では、容器本体2は、その上部開口3を、トップシール用フィルム4によって封止したが、他の実施形態として、トップシール用フィルム4に代えて、板状の蓋体によって封止してもよい。この場合、蓋体に蒸気抜き部を形成し、この蒸気抜き部を覆うように、ラベルを貼着すればよい。
【0081】
また、包装容器1に限らず、例えば、包装フィルムを重ねて合せて、その周縁部をヒートシールして構成した包装袋などに適用してもよい。この場合、包装袋に蒸気抜き部を形成し、この蒸気抜き部を覆うように、ラベルを貼着すればよい。
【符号の説明】
【0082】
1 包装容器
2 容器本体
3 上部開口
4 トップシール用フィルム
4a 蒸気抜き孔
5 ラベル
6 熱収縮性フィルム
7 粘着剤層