IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大阪シーリング印刷株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-感熱記録体 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】感熱記録体
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/337 20060101AFI20241213BHJP
   B41M 5/41 20060101ALI20241213BHJP
【FI】
B41M5/337 212
B41M5/41 200
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2024543321
(86)(22)【出願日】2024-05-07
(86)【国際出願番号】 JP2024017006
【審査請求日】2024-08-02
(31)【優先権主張番号】P 2023138915
(32)【優先日】2023-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000205306
【氏名又は名称】大阪シーリング印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】藤井 麻衣
(72)【発明者】
【氏名】播摩 英伸
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-048433(JP,A)
【文献】特開平04-001085(JP,A)
【文献】特開2011-212856(JP,A)
【文献】特開平05-270135(JP,A)
【文献】特開平06-328864(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/337
B41M 5/41
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明の合成樹脂フィルムである基材と、可溶化脂肪酸系ワックスを含有するサーマル層とを備える感熱記録体。
【請求項2】
前記可溶化脂肪酸系ワックスは、可溶化剤を含有する、請求項に記載の感熱記録体。
【請求項3】
前記可溶化脂肪酸系ワックスは、透明の液状である、請求項に記載の感熱記録体。
【請求項4】
前記可溶化脂肪酸系ワックスの平均粒子径は、1.0μm以下である、請求項1に記載の感熱記録体。
【請求項5】
前記サーマル層は、界面活性剤および/または溶剤を含有する、請求項1~のいずれか1項に記載の感熱記録体。
【請求項6】
前記サーマル層は、さらに前記可溶化脂肪酸系ワックス以外のワックスであり、かつ平均粒子径が1μm以下のワックスを含有する、請求項1~のいずれか1項に記載の感熱記録体。
【請求項7】
前記可溶化脂肪酸系ワックス以外の前記ワックスの平均粒子径は、0.6μm以下である、請求項に記載の感熱記録体。
【請求項8】
前記可溶化脂肪酸系ワックスの含有割合は、前記サーマル層の乾燥質量100質量%に対して、0.1質量%以上5質量%以下である、請求項1~のいずれか1項に記載の感熱記録体。
【請求項9】
可溶化脂肪酸系ワックスを用いてサーマル層用塗料を調製する工程と、
前記サーマル層用塗料を塗布および乾燥させることにより、サーマル層を形成する工程とを備える、請求項1~のいずれか1項に記載の感熱記録体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感熱記録体に関する。
【背景技術】
【0002】
感熱記録体は、サーマルヘッド等の加熱によって化学反応により発色し、記録画像が得られるものであり、ファクシミリや自動券売機、科学計測機の記録用媒体としてだけではなく、小売店等のPOSシステムの感熱記録ラベル、レシート用紙として広範な用途に使用されている。
【0003】
中でも、弁当のような食品容器用ラベルや食品包装用フィルムとして、感熱記録体を使用する場合、不透明な感熱記録体を用いると内容物が視認できないという課題があるため、内容物が良好に視認できるよう、透明性に優れる感熱記録体が求められている。
【0004】
透明性に優れる感熱記録体としては、例えば、感熱記録層がカルボキシル基を有する分散剤と、エピクロロヒドリン変性ポリアミドポリアミン樹脂またはオキサゾリン基を含有する有機化合物を主成分とする架橋剤とを含有する感熱記録体が提案されており、さらに、粒子径の細かい材料を使用することにより、透明性がより向上することが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2021/106076号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、透明性に優れる感熱記録体に関する検討はいまだ充分とはいえず、さらなる検討の余地があった。
【0007】
従って本発明の目的は、透明性に優れる感熱記録体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討した結果、サーマル層に脂肪酸系ワックスを含有させることにより、透明性に優れる感熱記録体を提供することができることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
【0009】
すなわち、本発明は、脂肪酸系ワックスを含有するサーマル層を備える感熱記録体を提供する。上記感熱記録体は、サーマル層が脂肪酸系ワックスを含有することにより、透明性に優れる。
【0010】
上記脂肪酸系ワックスは、可溶化脂肪酸系ワックスおよび/またはエマルション状の脂肪酸系ワックスであることが好ましい。このような構成を有することにより、透明性をより向上させることができる。
【0011】
上記脂肪酸系ワックスは、可溶化脂肪酸系ワックスであることが好ましい。このような構成を有することにより、透明性をより向上させることができる。
【0012】
上記可溶化脂肪酸系ワックスは可溶化剤を含有することが好ましい。このような構成を有することにより、透明性をより向上させることができる。
【0013】
上記サーマル層は、界面活性剤および/または溶剤を含有することが好ましい。このような構成を有することにより、透明性をより向上させることができる。
【0014】
上記サーマル層は、さらに前記脂肪酸系ワックス以外のワックスであり、かつ平均粒子径が1μm以下のワックスを含有することが好ましい。このような構成を有することにより、透明性をより向上させることができる。
【0015】
上記脂肪酸系ワックスの含有割合は、上記サーマル層の乾燥質量100質量%に対して、0.1質量%以上5質量%以下であることが好ましい。このような構成を有することにより、透明性をより向上させることができる。
【0016】
また、本発明は、可溶化脂肪酸系ワックスおよび/またはエマルション状の脂肪酸系ワックスを用いてサーマル層用塗料を調製する工程と、
上記サーマル層用塗料を塗布および乾燥させることにより、サーマル層を形成する工程とを備える、感熱記録体の製造方法を提供する。このような方法によって製造される感熱記録体は、透明性に優れる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、透明性に優れる感熱記録体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の感熱記録体の一実施形態を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[感熱記録体]
本発明の感熱記録体は、脂肪酸系ワックスを含有するサーマル層を備える感熱記録体である。
【0020】
本発明の感熱記録体は、基材を備えてもよく、アンカー層を備えてもよい。本発明の感熱記録体が基材およびアンカー層を備える場合、本発明の感熱記録体は、上記基材と、上記アンカー層と、上記サーマル層とをこの順に備えることが好ましい。また、本発明の感熱記録体は、上記の層以外の層を備えてもよい。上記の層以外の層としては、例えば、バックコート層、中間層、トップコート層等が挙げられる。
【0021】
以下、本発明の感熱記録体の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明するが、本発明は、以下の各実施形態に限定されるものではない。
【0022】
図1は、本発明の感熱記録体の一実施形態を示す模式的な断面図である。
【0023】
本実施形態の感熱記録体1は、図1に示すように、基材2と、アンカー層3と、サーマル層4とをこの順に備える。
【0024】
(基材)
本実施形態において、基材2は感熱記録体1の支持体として機能する。また、基材2としては、例えば、透明の合成樹脂フィルム等を用いることができる。上記透明の合成樹脂フィルムとしては、例えば、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム等が挙げられる。また、上記透明の合成樹脂フィルムは、2軸延伸型のフィルムであってもよく、ヒートシール性を有するフィルムであってもよい。また、上記基材2は、単層であってもよく、複層であってもよい。基材2の厚さとしては、例えば、好ましくは5μm~150μmであり、より好ましくは10μm~100μmである。厚さが上記範囲であれば、塗工性、および透明性に優れるため好ましい。なお、上記記載の基材のうち、透明性の向上や機能性付与という観点から、2軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルムおよびヒートシール性を有するポリエチレンテレフタレート(HS-PET)フィルムを好適に用いることができる。
【0025】
(アンカー層)
本実施形態において、アンカー層3は基材2とサーマル層4との密着性を高める層として機能する。アンカー層3を形成する材料としては特に限定されず、結着剤のみを用いることができる。また、上記アンカー層3は、その他の成分を含有してもよく、例えば、顔料等を含有してもよい。さらに、アンカー層を必要としない場合は設けなくてもよい。
【0026】
上記アンカー層3に含まれる結着剤としては特に限定されず、例えば、変性スチレン・アクリル系樹脂、アクリル系エマルション、スチレン-アクリル共重合体、変性スチレンブタジエンラテックス、スチレン-ブタジエン共重合体(SBR)、アクリル-ブタジエン-スチレン共重合体、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル-アクリル酸共重合体、ポリウレタン系樹脂等が挙げられる。ここで、アクリルとは、アクリル酸(塩)、アクリル酸エステルを意味し、アクリル酸(塩)とは、アクリル酸、アクリル酸塩を意味する。
【0027】
上記結着剤としては、変性スチレン・アクリル系樹脂、アクリル系エマルション、スチレン-アクリル共重合体、アクリル-ブタジエン-スチレン共重合体、および酢酸ビニル-アクリル酸共重合体からなる群より選択される1種以上であることが好ましく、変性スチレン・アクリル系樹脂、およびアクリル系エマルションからなる群より選択される1種以上であることがより好ましい。中でも、上記変性スチレン・アクリル系樹脂を用いる場合、変性スチレン・アクリル酸(塩)系樹脂が好ましい。これらの結着剤は、単独または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0028】
上記アクリル酸塩における塩は、特に限定されず、例えば、アンモニア等のアンモニウム塩;トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン等のアルカノールアミン塩;メチルアミン塩、エチルアミン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩等のアルキルアミン塩;ジエチレンアミン塩、ジエチレントリアミン塩等のポリアミン塩;リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属塩;亜鉛、鉄等の多価金属塩等が挙げられる。中でも、アンモニウム塩が特に好ましい。これらの塩は、単独または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0029】
また、上記以外の結着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、デンプンおよびその誘導体、メトキシセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド-アクリル酸エステル共重合体、アクリルアミド-アクリル酸エステル-メタクリル酸三元共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、イソブチレン-無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、ポリアクリルアミド、アルギン酸ソーダ、ゼラチン、カゼイン等の水溶性高分子を用いてもよい。また、これらの結着剤は、単独または2種以上を組み合わせて使用できる。
【0030】
上記結着剤の含有割合は、上記アンカー層3の乾燥質量100質量%に対して、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは20質量%以上であり、さらに好ましくは50質量%以上であり、さらに好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは80質量%以上であり、特に好ましくは90質量%以上である。また、上記結着剤の含有割合は、上記アンカー層3の乾燥質量100質量%に対して、実質的に100質量%であってもよい。上記結着剤の含有割合が上記範囲内である場合、基材2とサーマル層4との密着性がより高まるという観点から好ましい。
【0031】
なお、本明細書において「乾燥質量」とは、塗料やその原料に含まれる水等の溶媒(揮発成分)を乾燥によって除いた不揮発性分(固形分)の質量を意味する。
【0032】
上記アンカー層3の塗布量(乾燥質量)としては、例えば、好ましくは0.3g/m2~5.0g/m2であり、より好ましくは0.5g/m2~2.0g/m2である。
【0033】
上記アンカー層3の厚みとしては、例えば、好ましくは0.3μm~5.0μmであり、より好ましくは0.5μm~2.0μmである。
【0034】
本実施形態におけるアンカー層3の塗布量および厚みが上記範囲内である場合、基材2とサーマル層4との密着性がより向上する傾向にあるため好ましい。
【0035】
本実施形態において、アンカー層3を設ける場合、上記基材2の種類に応じてアンカー層3の形成する材料を選択することができる。例えば、上記基材2として、ポリプロピレンフィルムを使用する場合、上記アンカー層3は、結着剤として変性スチレン・アクリル系樹脂を含むことが好ましく、変性スチレン・アクリル酸(塩)系樹脂を含むことがより好ましく、変性スチレン・アクリル酸(アンモニウム塩)系樹脂を含むことがより好ましい。また、上記ポリプロピレンフィルムは、透明性の向上や機能性付与という観点から、2軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルムが特に好ましい。
【0036】
また、上記基材2として、ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用する場合、上記アンカー層3は、結着剤としてアクリル系エマルションを含むことが好ましい。上記アクリル系エマルションとしては、例えば、「AQUENCE EPIX BC AD81B」(ヘンケルジャパン株式会社製)の名称で市販されている材料等を使用することができる。また、上記ポリエチレンテレフタレートフィルムは、透明性の向上や機能性付与という観点から、ヒートシール性を有するポリエチレンテレフタレート(HS-PET)フィルムが特に好ましい。上記基材2およびアンカー層3の組み合わせの場合、基材2とサーマル層4との密着性がより向上し、かつ感熱記録体1の透明性がより向上する傾向があるため好ましい。
【0037】
(サーマル層)
本実施形態において、サーマル層4は加熱により発色する層として機能する。上記サーマル層4は少なくとも脂肪酸系ワックスを含有する。
【0038】
感熱記録体1の透明度を向上させるために、各材料は平均粒子径の細かいものを使用することが好ましい。平均粒子径の細かい材料を使用することにより、粒子による光の乱反射が抑制されるため、感熱記録体1の透明性が向上する傾向にある。
【0039】
なお、本明細書において、平均粒子径とは、レーザー回折・散乱法により測定される粒度分布における積算値50%における粒子径(D50、メディアン径)をいう。レーザー回折・散乱法による平均粒子径の測定は、例えば、マイクロトラック・ベル社製の商品名「MT3300EX-II」を用いて行うことができる。以下、「平均粒子径」とは、上記方法により測定されるメディアン径をいう。
【0040】
上記脂肪酸系ワックスは、感熱記録体の透明性を向上させる機能を有する。具体的には、サーマル層4を形成する際に、その他の成分の粒子間の空隙に脂肪酸系ワックスが浸透し、空隙を封鎖することにより、空隙における光の乱反射を抑制し、その結果、感熱記録体の透明性をより向上させるものと推定される。上記脂肪酸系ワックスとしては、例えば、脂肪酸、脂肪酸塩、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル等が挙げられる。これらの脂肪酸系ワックスは、単独または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0041】
上記脂肪酸としては、例えば、炭素数10~22の高級脂肪酸等が挙げられる。上記高級脂肪酸としては、例えば、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸等の炭素数10~22の高級飽和脂肪酸;パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸等の炭素数10~22の高級不飽和脂肪酸等が挙げられる。これらの脂肪酸は、置換基を有していてもよい。上記置換基としては、例えば、ヒドロキシ基等が挙げられる。
【0042】
上記脂肪酸塩としては、例えば、上記脂肪酸を中和した塩等が挙げられる。上記塩としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属塩;亜鉛、鉄等の多価金属塩等が挙げられる。上記脂肪酸塩としては、具体的には、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸鉄、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、オレイン酸マグネシウム、オレイン酸カルシウム、オレイン酸亜鉛、オレイン酸鉄等が挙げられる。
【0043】
上記脂肪酸アミドとしては、例えば、上記脂肪酸と、アンモニウムまたはアミンとのアミド化反応物等が挙げられる。上記アミンとしては、例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のジアミン等が挙げられる。上記脂肪酸アミドとしては、具体的には、カプリン酸アミド、ラウリン酸アミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、アラキジン酸アミド、ベヘン酸アミド、パルミトレイン酸アミド、オレイン酸アミド、エライジン酸アミド、リノール酸アミド、リノレン酸アミド、N,N’-エチレンビス(ステアリン酸アミド)、N,N’-ヘキサメチレンビス(ステアリン酸アミド)等が挙げられる。
【0044】
上記脂肪酸エステルとしては、例えば、上記脂肪酸と、一価および/または多価アルコールとのエステル化反応物等が挙げられる。上記一価アルコールおよび/または多価アルコールとしては、例えば、エタノール、プロパノール等の一価アルコール;プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール等の多価アルコール等が挙げられる。
【0045】
本実施形態において、上記脂肪酸系ワックスは可溶化脂肪酸系ワックスおよび/またはエマルション状の脂肪酸系ワックスであることが好ましく、可溶化脂肪酸系ワックスであることがより好ましい。本明細書において、可溶化脂肪酸系ワックスとは、サーマル層またはサーマル層用塗料に可溶であることを意味する。上記可溶化脂肪酸系ワックスおよび/またはエマルション状の脂肪酸系ワックスを使用することで、感熱記録体の透明性が向上する傾向がある。特に、可溶化脂肪酸系ワックスは、サーマル層またはサーマル層用塗料に可溶となり、ひいては感熱記録体の透明性が向上する傾向がある。
【0046】
上記可溶化脂肪酸系ワックスは、脂肪酸系ワックスが単独でサーマル層またはサーマル層用塗料に可溶であってもよく、脂肪酸系ワックスが可溶化剤を含み、それらの混合物としてサーマル層またはサーマル層用塗料に可溶であってもよい。上記可溶化剤としては、例えば界面活性剤、溶剤、サーマル層用塗料に使用される溶媒等が挙げられる。上記サーマル層用塗料の溶媒としては、例えば有機溶剤や水等が挙げられ、好ましくは水である。なお、上記可溶化脂肪酸系ワックスが、上記サーマル層用塗料に使用される溶媒を含む場合、その溶媒の一部を含んでもよく、溶媒の全量を含んでもよい。取り扱い性や、可溶化が容易という観点から、上記可溶化脂肪酸系ワックスとしては、脂肪酸系ワックスと、可溶化剤とを含むことが好ましい。上記可溶化剤としては、界面活性剤、溶剤、およびサーマル層用塗料に使用される溶媒からなる群より選択される1種以上であることが好ましい。また、上記可溶化剤としては、界面活性剤および/または溶剤と、サーマル層用塗料の溶媒の一部とを含むことが好ましく、界面活性剤および/または溶剤とを含み、サーマル層用塗料の溶媒は含まないことも好ましい。
【0047】
上記エマルション状の脂肪酸系ワックスとは、上記脂肪酸系ワックスが自己乳化する化合物であり、単体でサーマル層用塗料の溶媒に分散し、エマルション状となるものであってもよく、界面活性剤等によってサーマル層用塗料の溶媒に分散し、エマルション状となるものであってもよい。なお、本明細書において、エマルション状の脂肪酸系ワックスは、安定にエマルションを形成する脂肪酸系ワックスのことを意味する。さらに、安定にエマルションを形成するとは、例えば、常温常圧下で24時間静置したときに、成分の分離や沈殿等の状態の変化が見られず、エマルションの状態を維持できることをいう。
【0048】
本実施形態において、上記サーマル層4は、上記脂肪酸系ワックス以外のその他の成分を含有してもよく、例えば、染料、顕色剤、フィラー、結着剤(バインダー)、分散剤、架橋剤、上記脂肪酸系ワックス以外のワックス(その他のワックス)、界面活性剤、溶剤等を含有してもよい。中でも、上記サーマル層4は、界面活性剤および/または溶剤を含有することが好ましい。上記界面活性剤としては特に限定されず、上記脂肪酸系ワックスの溶解性を向上させる機能を有する成分であればよい。上記界面活性剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。これらの界面活性剤は、単独または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0049】
上記アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸および/またはその塩、アルキルスルホン酸および/またはその塩、アルキル硫酸エステルおよび/またはその塩、アルキルエーテル硫酸エステルおよび/またはその塩等が挙げられる。上記アニオン性界面活性剤が有するアルキル基としては、例えば、炭素数10~22のアルキル基が挙げられる。上記アルキル基としては、例えば、飽和の炭化水素基、不飽和の炭化水素基等が挙げられる。上記アルキル基は、置換基を有していてもよい。上記置換基としては、例えば、ヒドロキシ基等が挙げられる。また、上記塩としては、例えば、アンモニア等のアンモニウム塩;トリエタノールアミン等のアルカノールアミン塩;リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属塩;亜鉛、鉄等の多価金属塩等が挙げられる。
【0050】
上記非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ソルビタンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル、グリセリンアルキルエステル、ポリオキシエチレングリセリンアルキルエステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等が挙げられる。上記非イオン性界面活性剤が有するアルキル基としては特に限定されず、炭素数10~22のアルキル基が挙げられる。上記アルキル基としては、飽和の炭化水素基、不飽和の炭化水素基等が挙げられる。上記アルキル基は、置換基を有していてもよい。上記置換基としては、例えば、ヒドロキシ基等が挙げられる。
【0051】
上記溶剤としては特に限定されず、上記脂肪酸系ワックスの溶解性を向上させる機能を有する成分であればよい。上記溶剤としては、例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール;ジイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、1,4-ジオキサン等のエーテル;メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、2-エチルヘキサノール、ベンジルアルコール等のアルコール;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン等が挙げられる。中でも、取り扱い性および脂肪酸系ワックスを可溶化させる観点から、上記溶剤としては、グリコールエーテル、グリコール、エーテル、およびアルコールからなる群より選択される1種以上であることが好ましく、グリコールエーテル、およびグリコールからなる群より選択される1種以上であることがより好ましく、グリコールエーテルであることがさらに好ましい。上記溶剤が、グリコールエーテルである場合、中でも、ジエチレングリコールモノブチルエーテルが特に好ましい。これらの溶剤は、単独または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0052】
なお、本明細書において、脂肪酸系ワックスに該当し、さらに界面活性剤、溶剤等のその他の成分にも該当し得る化合物は、脂肪酸系ワックスにのみ分類し、その他の成分には分類しない。そして、脂肪酸系ワックスには該当せず、界面活性剤および溶剤に該当し得る化合物は、界面活性剤にのみ分類し、溶剤には分類しない。
【0053】
上記脂肪酸系ワックスの平均粒子径は、好ましくは1.0μm以下である。上記脂肪酸系ワックスの平均粒子径が上記範囲内である場合、感熱記録体1の透明性がより向上する傾向にあるため好ましい。
【0054】
上記脂肪酸系ワックスの含有割合は、上記サーマル層4の乾燥質量100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上であり、さらに好ましくは1質量%以上である。また、上記脂肪酸系ワックスの含有割合は、上記サーマル層4の乾燥質量100質量%に対して、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは4質量%以下であり、さらに好ましくは3質量%以下である。上記脂肪酸系ワックスの含有割合が上記範囲内である場合、感熱記録体1の透明性がより向上する傾向にあるため好ましい。
【0055】
なお、本明細書において「脂肪酸系ワックスの含有割合」とは、脂肪酸系ワックスが可溶化剤を含む場合、上記脂肪酸系ワックスの乾燥質量と、上記可溶剤の乾燥質量との合計含有割合を意味する。また、脂肪酸系ワックスがエマルション状であり、界面活性剤を含む場合、界面活性剤を含むエマルションの乾燥質量の含有割合を意味する。
【0056】
本実施形態において、感熱記録体1の長期耐水性をより向上させる観点から、上記サーマル層4は、上記脂肪酸系ワックス以外のワックス(その他のワックス)を含むことが好ましい。上記脂肪酸系ワックス以外のワックスとしては、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、パラフィン等を用いることができる。中でも、感熱記録体1の長期耐水性および透明性をより向上させる観点から、上記脂肪酸系ワックス以外のワックスとしては、ポリスチレン、およびポリエチレンからなる群より選択される1種以上であることが好ましく、ポリスチレンがより好ましい。これらのワックスは、単独または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0057】
上記脂肪酸系ワックス以外のワックスの平均粒子径は、好ましくは0.1μm以上である。また、上記脂肪酸系ワックス以外のワックスの平均粒子径は、好ましくは1.0μm以下であり、より好ましくは0.6μm以下であり、さらに好ましくは0.55μm以下であり、さらに好ましくは0.4μm以下であり、特に好ましくは0.3μm以下である。上記脂肪酸系ワックス以外のワックスの平均粒子径が上記範囲内である場合、感熱記録体1の透明性がより向上する傾向にあるため好ましい。
【0058】
上記脂肪酸系ワックス以外のワックスの含有割合は、上記サーマル層4の乾燥質量100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上であり、さらに好ましくは1質量%以上である。また、上記脂肪酸系ワックス以外のワックスの含有割合は、上記サーマル層4の乾燥質量100質量%に対して、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは4質量%以下であり、さらに好ましくは3質量%以下である。上記脂肪酸系ワックス以外のワックスの含有割合が上記範囲内である場合、感熱記録体1の透明性がより向上する傾向にあるため好ましい。
【0059】
本実施形態において、サーマル層4が含有するワックスの種類としては、例えば、好ましくは1種類~5種類であり、より好ましくは1種類~2種類であり、さらに好ましくは2種類である。また、上記ワックスの種類が2種類の場合、その組合せとしては、脂肪酸系ワックスと、ポリスチレンとを1種類ずつ含有することが特に好ましい。
【0060】
上記脂肪酸系ワックスの乾燥質量を1としたときの、上記脂肪酸系ワックス以外のワックスの乾燥質量の比(脂肪酸系ワックス以外のワックスの乾燥質量/脂肪酸系ワックスの乾燥質量)としては、好ましくは0.1以上であり、より好ましくは0.5以上である。また、上記脂肪酸系ワックスの乾燥質量を1としたときの、上記脂肪酸系ワックス以外のワックスの乾燥質量の比(脂肪酸系ワックス以外のワックスの乾燥質量/脂肪酸系ワックスの乾燥質量)としては、好ましくは10以下であり、より好ましくは5以下であり、さらに好ましくは2以下である。また、上記脂肪酸系ワックスの乾燥質量を1としたときの、上記脂肪酸系ワックス以外のワックスの乾燥質量の比(脂肪酸系ワックス以外のワックスの乾燥質量/脂肪酸系ワックスの乾燥質量)としては、1であることが特に好ましい。脂肪酸系ワックスの乾燥質量に対する脂肪酸系ワックス以外のワックスの乾燥質量の比が上記範囲内である場合、感熱記録体1の透明性および長期耐水性がより向上する傾向にあるため好ましい。
【0061】
ワックス全量の含有割合は、上記サーマル層4の乾燥質量100質量%に対して、好ましくは0.2質量%以上であり、より好ましくは1質量%以上であり、さらに好ましくは1.5質量%以上である。また、ワックス全量の含有割合は、上記サーマル層4の乾燥質量100質量%に対して、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは8質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以下である。ワックス全量の含有割合が上記範囲内である場合、感熱記録体1の透明性がより向上する傾向にあるため好ましい。
【0062】
上記染料としては、例えば、3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-イソブチル-N-エチル)アミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-イソペンチル-N-エチル)アミノ-6-メチル-7-o-クロロアニリノフルオラン、3-(N-エチル-N-p-トルイジノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-エチル-N-イソペンチル)アミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-エトキシプロピル-N-エチル)アミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-シクロヘキシル-N-メチル)アミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-メチル-N-n-プロピル)アミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-p-トルイジノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-8-メチルフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(m-トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(o-クロロアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-クロロフルオラン、3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-ブロモフルオラン、3-ジブチルアミノ-7-(o-クロロアニリノ)フルオラン、3-ジペンチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジメチルアミノ-5-メチル-7-メチルフルオラン、3-ピロリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、クリスタルバイオレットラクトン等を用いることができる。これらの染料は、単独または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0063】
上記染料の平均粒子径としては、例えば、好ましくは0.1μm~1.0μmであり、より好ましくは0.1μm~0.6μmであり、さらに好ましくは0.1μm~0.55μmであり、さらに好ましくは0.1μm~0.4μmであり、特に好ましくは0.1μm~0.3μmである。上記染料の平均粒子径が上記範囲内である場合、感熱記録体1の透明性がより向上する傾向にあるため好ましい。
【0064】
上記染料の含有割合は、上記サーマル層4の乾燥質量100質量%に対して、好ましくは5質量%以上50質量%以下であり、より好ましくは8質量%以上35質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以上25質量%以下である。
【0065】
上記顕色剤としては、例えば、4-ヒドロキシフェニル(4’-n-プロポキシフェニル)スルホン、3-[(3-フェニルウレイド)フェニル]-4-メチルベンゼンスルホナート、N,N-ジ-[3-(p-トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、1,1-ビス(p-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(p-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(p-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(p-ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、2,2’-メチレンビス(4-クロロフェノール)、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-メチルペンタン、2,4'-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4'-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4'-イソプロポキシジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4'-メチルジフェニルスルホン、4-ヒドロキシフェニル-4'-ベンジルオキシフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4′-アリルオキシジフェニルスルホン、ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ポリ(4-ヒドロキシ安息香酸)、4-ヒドロキシ安息香酸ベンジル、2,4-ビス(フェニルスルホニル)フェノール、α-{4-[(4-ヒドロキシフェニル)スルホニル]フェニル}-ω-ヒドロキシポリ(重合度n=1~7)(オキシエチレンオキシエチレンオキシ-p-フェニレンスルホニル-p-フェニレン)2,2-ビス[(4-メチル-3-フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレア]ジフェニルスルホン、3,5-ビス(α-メチルベンジル)サリチル酸、ビス[4-(n-オクチルオキシカルボニルアミノ)サリチル酸亜鉛]、4,4'-ビス(p-トリルスルホニルアミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、4-ヒドロキシベンゼンスルホンアニリド、2'-(3-フェニルウレイド)ベンゼンスルホンアニリド、N-(2-ヒドロキシフェニル)-2-[(4-ヒドロキシフェニル)チオ]アセトアミド、N-(4-ヒドロキシフェニル)-2-[(4-ヒドロキシフェニル)チオ]アセトアミド、4-[[4-[4-[4-[[4-(1-メチルエトキシ)フェニル]スルホニルフェノキシ]ブトキシ]フェニル]スルホニル]フェノール、4-tert-ブチルフェノール・ホルムアルデヒド重縮合物、N-(p-トルエンスルホニル)N'-(3-p-トルエンスルホニルオキシフェニル)ウレア、1-フェニル-3-(4-メチルフェニルスルホニル)ウレア等を用いることができる。これらの顕色剤は、単独または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0066】
上記顕色剤の平均粒子径としては、例えば、好ましくは0.1μm~1.0μmであり、より好ましくは0.1μm~0.6μmであり、さらに好ましくは0.1μm~0.55μmであり、さらに好ましくは0.1μm~0.4μmであり、特に好ましくは0.1μm~0.3μmである。上記顕色剤の平均粒子径が上記範囲内である場合、感熱記録体1の透明性がより向上する傾向にあるため好ましい。
【0067】
上記顕色剤の含有割合は、上記サーマル層4の乾燥質量100質量%に対して、好ましくは20質量%以上70質量%以下であり、より好ましくは25質量%以上60質量%以下であり、さらに好ましくは30質量%以上50質量%以下である。
【0068】
上記フィラーとしては、例えば、カオリン、焼成カオリン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化チタン、硫酸バリウム、シリカゲル、活性白土、タルク、クレー、ケイソウ土、ホワイトカーボン、酸化亜鉛、酸化珪素、コロイダルシリカ、ポリスチレン樹脂粒子、尿素-ホルマリン樹脂粒子、ポリオレフィン樹脂粒子等を用いることができる。これらのフィラーは、単独または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0069】
上記フィラーの平均粒子径としては、例えば、好ましくは0.1μm~1.0μmであり、より好ましくは0.1μm~0.6μmであり、さらに好ましくは0.1μm~0.55μmであり、さらに好ましくは0.1μm~0.4μmであり、特に好ましくは0.1μm~0.3μmである。上記フィラーの平均粒子径が上記範囲内である場合、感熱記録体1の透明性がより向上する傾向にあるため好ましい。
【0070】
上記フィラーの含有割合は、上記サーマル層4の乾燥質量100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上30質量%以下であり、より好ましくは1質量%以上20質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以上15質量%以下である。
【0071】
上記結着剤としては、例えば、スチレン-ブタジエン共重合体(SBR)、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、デンプン、カゼイン、ゼラチン、ポリアミド、ポリアクリルアミド、変性ポリアクリルアミド、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、スチレン-無水マレイン酸共重合体、イソブチレン-無水マレイン酸共重合体、ジイソブチレン-無水マレイン酸共重合体、酢酸ビニル-無水マレイン酸共重合体、メチルビニル-無水マレイン酸共重合体、イソプロピレン-無水マレイン酸共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、アクリル酸エステル、アクリルニトリル、メチルビニルエーテル等を用いることができる。これらの結着剤は、単独または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0072】
上記結着剤の含有割合は、上記サーマル層4の乾燥質量100質量%に対して、好ましくは5質量%以上50質量%以下であり、より好ましくは10質量%以上40質量%以下であり、さらに好ましくは20質量%以上30質量%以下である。
【0073】
上記分散剤としては、カルボキシル基を有する分散剤が好ましい。上記カルボキシル基を有する分散剤としては、スチレン・アクリル酸(塩)系重合物、スチレン・アクリル酸エステル系重合物等のスチレン・アクリル系重合物;スチレン・マレイン酸(塩)樹脂、スチレン・マレイン酸エステル樹脂等を用いることができる。中でも、スチレン・アクリル系重合物が好ましく、スチレン・アクリル酸(塩)系重合物がより好ましく、スチレン・アクリル酸(アンモニウム塩)系重合物がさらに好ましい。これらの分散剤は、単独または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0074】
上記カルボキシル基を有する分散剤に含まれるアクリル酸塩における塩は、特に限定されず、例えば、アンモニア等のアンモニウム塩;トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン等のアルカノールアミン塩;メチルアミン塩、エチルアミン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩等のアルキルアミン塩;ジエチレンアミン塩、ジエチレントリアミン塩等のポリアミン塩;リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属塩;亜鉛、鉄等の多価金属塩等が挙げられる。中でも、アンモニウム塩が特に好ましい。
【0075】
上記分散剤の含有割合は、上記サーマル層4の乾燥質量100質量%に対して、好ましくは5質量%以上30質量%以下であり、より好ましくは7質量%以上18質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以上15質量%以下である。
【0076】
上記架橋剤としては、例えば、エピクロロヒドリン変性ポリアミドポリアミン樹脂、オキサゾリン基を含有する有機化合物等を用いることができる。これらの架橋剤は、単独または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0077】
上記架橋剤の含有割合は、上記サーマル層4の乾燥質量100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上10質量%以下であり、より好ましくは0.3質量%以上5質量%以下であり、さらに好ましくは0.5質量%以上2質量%以下である。
【0078】
上記分散剤としてカルボキシル基を有する分散剤を用い、上記架橋剤としてエピクロロヒドリン変性ポリアミドポリアミン樹脂を用いた場合、上記サーマル層4において、架橋剤であるエピクロロヒドリン変性ポリアミドポリアミン樹脂中のアゼチジニウム環(AZR)と、分散剤のカルボキシル基とが反応して、架橋構造が形成され、この架橋構造により、サーマル層4の成膜性が向上し、サーマル層4に含まれる空隙が埋められるものと考えられる。その結果、上記サーマル層4の透明性がより向上するため、透明性により優れた感熱記録体1を得ることができる。
【0079】
また、上記分散剤としてカルボキシル基を有する分散剤を用い、上記架橋剤としてオキサゾリン基を含有する有機化合物を用いた場合、上記サーマル層4において、架橋剤であるオキサゾリン基を含有する有機化合物のオキサゾリン基と、分散剤のカルボキシル基とが反応して、架橋構造が形成され、この架橋構造により、サーマル層4の成膜性が向上し、サーマル層4に含まれる空隙が埋められるものと考えられる。その結果、上記サーマル層4の透明性がより向上するため、透明性により優れた感熱記録体1を得ることができる。
【0080】
上記サーマル層4の塗布量(乾燥質量)としては、例えば、好ましくは0.5g/m2~10.0g/m2であり、より好ましくは1.0g/m2~8.0g/m2であり、さらに好ましくは2.0g/m2~6.0g/m2であり、さらに好ましくは3.0g/m2~6.0g/m2であり、さらに好ましくは3.5g/m2~5.5g/m2であり、さらに好ましくは4.0g/m2~5.0g/m2であり、特に好ましくは4.5g/m2である。塗布量が上記範囲内である場合、感熱記録体1の透明性がより向上する傾向にあるため好ましい。
【0081】
上記サーマル層4の厚みとしては、例えば、好ましくは2μm~6μmであり、より好ましくは3μm~5μmである。
【0082】
本実施形態の感熱記録体1は、上記構成を有することにより、透明性に優れる。
【0083】
本実施形態の感熱記録体1について、基材2とサーマル層4とを両端面とする積層体のヘイズ値を実施例に記載の方法で測定した場合、好ましくは40%以下であり、より好ましくは38%以下であり、さらに好ましくは37%以下である。基材2とサーマル層4とを両端面とする積層体のヘイズ値が上記範囲内である場合、透明性により優れるため好ましい。
【0084】
[感熱記録体の製造方法]
本発明の感熱記録体の製造方法は特に限定されるものではない。例えば、サーマル層に含まれる成分を水等の溶媒中に分散させることにより、サーマル層用塗料を公知乃至慣用の方法によって調製し、次いで得られた上記塗料を公知乃至慣用の方法によって塗布し、その後、公知乃至慣用の方法によって乾燥させることで製造することができる。
【0085】
(調製工程)
調製工程では、各成分を全て同じ溶媒中にあらかじめ分散させて上記サーマル層用塗料を調製してもよい。また、お互いに反応する発色剤と顕色剤とを、別々の分散液として調製してから両者を混合し、サーマル層用塗料としてもよい。その際、その他の成分は染料を含む分散液と、顕色剤を含む分散液とのどちらに添加してもよく、両者に添加してもよい。上記塗料を調製する方法は特に限定されず、例えば、撹拌、超音波処理、ボールミル、ビーズミル、サンドミル、高圧ホモジナイザー等を用いた解砕処理等が挙げられる。これらの方法は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0086】
本発明の感熱記録体の製造方法では、感熱記録体の透明性をより向上させる観点から、可溶化脂肪酸系ワックスおよび/またはエマルション状の脂肪酸系ワックスを用いてサーマル層用塗料を調製する工程を備えることが好ましい。中でも、可溶化脂肪酸系ワックスを用いてサーマル層用塗料を調製する工程を備えることがより好ましい。上記脂肪酸系ワックスをエマルション状に微粒子化、あるいは可溶化することによって、その他の成分の粒子間の空隙に対する脂肪酸系ワックスの浸透性がより向上し、空隙がより封鎖されるため、空隙における光の乱反射がより抑制されることとなり、その結果、感熱記録体の透明性がより向上するものと推定される。
【0087】
上記可溶化脂肪酸系ワックスを得る方法は特に限定されず、例えば、可溶化剤を脂肪酸系ワックスに添加し、混合することにより得ることができる。上記可溶化剤については、[感熱記録体]の項目で記載した内容を全て援用し得る。また、上記混合の方法としては特に限定されず、例えば、撹拌、超音波処理、ボールミル、ビーズミル、サンドミル、高圧ホモジナイザー等を用いた解砕処理等が挙げられる。これらの方法は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0088】
上記可溶化脂肪酸系ワックスは、透明の液状であることが好ましい。例えば、上記脂肪酸系ワックスと、上記可溶化剤とを混合することにより、透明の液状である可溶化脂肪酸系ワックスを調製することができる。このような可溶化脂肪酸系ワックスは、サーマル層またはサーマル層用塗料への浸透性がより向上し得るため、感熱記録体の透明性をより向上させることができ得る。なおかつ、このような可溶化脂肪酸系ワックスは、ワックスが媒体中に粒子として存在するエマルションとは異なり、ワックスが粒子として存在しないため、感熱記録体の透明性をより向上させることができ得る。
【0089】
(塗布工程)
塗布工程では、上記で得られたサーマル層用塗料を塗布する方法として、基材に直接、塗布する方法や、はく離ライナー等に塗布した後、基材に転写する方法等が挙げられる。塗布する方法は特に限定されず、例えば、エアーナイフコーティング、バリバーブレードコーティング、ピュアーブレードコーティング、ロッドブレードコーティング、ショートドウェルコーティング、カーテンコーティング、ダイコーティング、グラビアコーティング等が挙げられる。また、これらの方法は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0090】
(乾燥工程)
上記で塗布した塗料を乾燥させる方法は特に限定されず、例えば、加熱乾燥、常温乾燥、真空乾燥等が挙げられる。これらの方法により塗布した塗料を乾燥させることでサーマル層を形成することができる。また、これらの方法は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0091】
本発明の感熱記録体が、サーマル層以外のその他の層を備える場合、その他の層を形成する方法としては、上記の内容を援用し得る。例えば、図1に示す通り、基材2と、アンカー層3と、サーマル層4とをこの順に備える感熱記録体1の製造方法としては、基材2上にアンカー層3を形成し、次いでアンカー層3上にサーマル層4を形成することにより製造することができる。上記アンカー層用塗料の調製方法としては、アンカー層3に含まれる各成分を全て同じ溶媒中にあらかじめ分散させて調製してもよいし、お互いに反応する成分を含む場合は、各成分を別々の分散液として調製してから両者を混合し、調製してもよい。上記調製方法は特に限定されず、例えば、撹拌、超音波処理、ボールミル、ビーズミル、サンドミル、高圧ホモジナイザー等を用いた解砕処理等が挙げられる。これらの方法は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。上記で得られたアンカー層用塗料を基材2に塗布する方法としては、例えば、基材2上に直接、塗布する方法が挙げられる。アンカー層用塗料を塗布する方法は特に限定されず、例えば、エアーナイフコーティング、バリバーブレードコーティング、ピュアーブレードコーティング、ロッドブレードコーティング、ショートドウェルコーティング、カーテンコーティング、ダイコーティング、グラビアコーティング等が挙げられる。また、これらの方法は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。次いで、上記で塗布したアンカー層用塗料を乾燥させることで基材2上にアンカー層3を形成することができる。上記乾燥方法としては、例えば、加熱乾燥、常温乾燥、真空乾燥等が挙げられる。また、これらの方法は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。次いで、サーマル層4を上記と同様の手順でアンカー層3上に形成することにより、図1に示す感熱記録体1を得ることができる。
【0092】
本発明の感熱記録体の製造方法では、各層を例えばカーテンコータ等によって多層同時塗布してもよいし、個別に順次形成してもよい。また、一部の層を同時塗布し、一部の層を個別に順次形成してもよい。
【実施例
【0093】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載によってのみ限定される。なお、実施例3、4を参考例1、2と読み替えるものとする。
【0094】
基材上に、アンカー層、およびサーマル層をこの順に積層した感熱記録体を以下の工程によって作製した。
(実施例1)
(感熱記録体の作製)
<アンカー層>
変性スチレン・アクリル酸(アンモニウム塩)系樹脂(BASFジャパン株式会社製、商品名:ジョンクリルPDX7430)に対して乾燥質量が10質量%になるよう水を添加することにより、アンカー層用塗料を調製した。基材としての2軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム(厚さ:40μm)上に上記アンカー層用塗料を塗布し、次いで乾燥させることにより、塗布量が乾燥質量として0.5~2.0g/m2であり、厚さが0.5~2μmのアンカー層を形成した。
【0095】
<サーマル層>
各配合材料の乾燥質量が表1に示す組成になるよう、溶媒として水を使用し、乾燥質量23質量%に調製したサーマル層用塗料を上記アンカー層上に塗布し、次いで50℃で乾燥させることにより、塗布量が乾燥質量として4.0g/m2のサーマル層を形成し、実施例1の感熱記録体を作製した。なお、表1において、各配合材料の数値は、乾燥後の質量(乾燥質量)の比率を示している。また、特に記載がない限り、配合材料(脂肪酸系ワックス等)が界面活性剤、溶剤を含む場合、表1の各配合材料の数値は、界面活性剤、溶剤も含んだ乾燥時における質量比率を示している。
【0096】
また、配合材料として、ワックス1は、可溶化脂肪酸系ワックス(株式会社日新化学研究所製、商品名:R-053D)を使用した。なお、上記ワックス1は、主成分として脂肪酸系ワックスを含有し、界面活性剤としてアニオン性界面活性剤およびポリオキシエチレンアルキルエーテルを含有し、溶媒として水を含有していた。また上記ワックス1は水に易溶であった。また、染料は、平均粒子径が0.15μmの3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオランを使用し、顕色剤は、平均粒子径が0.15μmの4-ヒドロキシフェニル(4’-n-プロポキシフェニル)スルホン(三菱ケミカル株式会社製、商品名:トミラックKN)を使用し、フィラーは、平均粒子径が0.4μmのカオリンを使用し、結着剤(バインダー)は、ガラス転移温度Tgが「-3℃」のSBRを使用し、分散剤は、スチレン・アクリル酸(アンモニウム塩)系重合物を使用し、架橋剤は、エピクロロヒドリン変性ポリアミドポリアミン樹脂を使用した。
【0097】
(実施例2)
サーマル層において、さらに脂肪酸系ワックス以外のワックスとして、ワックス5(平均粒子径が0.2μmのポリスチレンワックス)を使用し、各配合材料の乾燥質量が表1に示す組成になるように配合量を調整した以外は、上記実施例1と同様にして実施例2の感熱記録体を作製した。
【0098】
(実施例3)
サーマル層において、ワックス1をワックス2のエマルション状の脂肪酸系ワックス(中京油脂株式会社製、商品名:ハイミクロン L-271)に変更した以外は、上記実施例2と同様にして実施例3の感熱記録体を作製した。なお、上記ワックス2は、主成分として脂肪酸アミドを乾燥質量20質量%~30質量%含有し、溶剤としてトリエタノールアミンを乾燥質量1.0質量%未満含有し、溶媒として水を含有していた。また、上記ワックス2は水に分散可能であった。また、ワックス2のエマルションに含まれる微粒子の平均粒子径を測定したところ、0.87μmであった。
【0099】
(実施例4)
サーマル層において、ワックス1をワックス3のエマルション状の脂肪酸系ワックス(株式会社日新化学研究所製、商品名:ニューワックス E-50)に変更した以外は、上記実施例2と同様にして実施例4の感熱記録体を作製した。なお、上記ワックス3は、主成分として脂肪酸系ワックスを含有し、その他の成分として固形パラフィンを乾燥質量10質量%~20質量%含有し、溶媒として水を含有していた。また、上記ワックス3は水に分散可能であった。また、ワックス3のエマルションに含まれる微粒子の平均粒子径を測定したところ、0.18μmであった。
【0100】
(実施例5)
サーマル層において、ワックス1をワックス4の可溶化脂肪酸系ワックスに変更した以外は、上記実施例2と同様にして実施例5の感熱記録体を作製した。上記ワックス4は、ワックス3のエマルション状の脂肪酸系ワックス(株式会社日新化学研究所製、商品名:ニューワックス E-50)を50℃で加温して水分を留去させて得られた固形分1gに対して、溶剤としてジエチレングリコールモノブチルエーテルを3g添加することによって調製し、これを可溶化脂肪酸系ワックスとして使用した。なお、実施例5では、上記ジエチレングリコールブチルエーテルは脂肪酸系ワックスを可溶化させるための溶剤として扱うため、表1の実施例5におけるワックス4の数値は、上記ジエチレングリコールブチルエーテルも含んだ乾燥質量の比率を示している。
【0101】
上記ワックス1および上記ワックス4は、透明の液状であった。
【0102】
(比較例1)
サーマル層において、ワックス1をワックス6、ワックス5をワックス7に変更した以外は、上記実施例2と同様にして比較例1の感熱記録体を作製した。なお、上記ワックス6は、平均粒子径が1.3μmのポリエチレンワックスを使用し、ワックス7は、融点が46℃で平均粒子径が0.3μmのパラフィンを使用した。
【0103】
以上の方法により、実施例1~5、および比較例1の感熱記録体を作製し、下記のヘイズ値の測定に使用した。
【0104】
(ヘイズ値の測定)
ヘイズ値の測定では、ヘーズメーター(日本電色株式会社製、商品名:NDH7000)を使用して、上記で作製した感熱記録体(基材とサーマル層とを両端面とする積層体)のサーマル層側から測定することにより、各感熱記録体のヘイズ値を測定した。各実施例および各比較例で作製した各感熱記録体について、得られたヘイズ値の結果を表1に示す。
【0105】
上記測定は、JIS K7136:2000に準じた方法により行った。
【0106】
【表1】
【0107】
表1から以下のことが確認できた。
【0108】
サーマル層に、ワックスとして脂肪酸系ワックスを含有する実施例1~5の感熱記録体は、脂肪酸系ワックスを含有していない比較例1の感熱記録体よりも、ヘイズ値が小さい値であったことから、ワックスとして脂肪酸系ワックスを使用することにより、感熱記録体の透明性が向上する傾向が確認された。さらに、エマルション状の脂肪酸系ワックスであるワックス3を使用して得られた実施例4の感熱記録体よりも、ワックス3を溶剤で可溶化し、可溶化脂肪酸系ワックスとしたワックス4を使用して得られた実施例5の感熱記録体の方が、ヘイズ値が小さく、透明性の向上が確認された。脂肪酸系ワックスを可溶化してから使用することによる透明性向上の詳細な作用機序は不明だが、目視で確認できる程度の大きさの粒子として存在していたワックス3を可溶化することにより、配合材料の粒子間の空隙への浸透性がより向上したためと推定される。
【0109】
以上のまとめとして、本発明の構成およびそのバリエーションを以下に付記する。
[付記1]脂肪酸系ワックスを含有するサーマル層を備える感熱記録体。
[付記2]前記脂肪酸系ワックスは、可溶化脂肪酸系ワックスおよび/またはエマルション状の脂肪酸系ワックスである、付記1に記載の感熱記録体。
[付記3]前記脂肪酸系ワックスは可溶化脂肪酸系ワックスである、付記1~2のいずれか1つに記載の感熱記録体。
[付記4]前記可溶化脂肪酸系ワックスは可溶化剤を含有する、付記2~3のいずれか1つに記載の感熱記録体。
[付記5]前記可溶化脂肪酸系ワックスは、透明の液状である、付記1~4のいずれか1つに記載の感熱記録体。
[付記6]前記サーマル層は、界面活性剤および/または溶剤を含有する、付記1~5のいずれか1つに記載の感熱記録体。
[付記7]前記サーマル層は、さらに前記脂肪酸系ワックス以外のワックスであり、かつ平均粒子径が1μm以下のワックスを含有する、付記1~6のいずれか1つに記載の感熱体。
[付記8]前記脂肪酸系ワックス以外のワックスは、ポリスチレン、ポリエチレン、パラフィンのいずれか1種以上である、付記7に記載の感熱体。
[付記9]前記脂肪酸系ワックスの含有割合は、前記サーマル層の乾燥質量100質量%に対して、0.1質量%以上5質量%以下である、付記1~8のいずれか1つに記載の感熱記録体。
[付記10]可溶化脂肪酸系ワックスおよび/またはエマルション状の脂肪酸系ワックスを用いてサーマル層用塗料を調製する工程と、前記サーマル層用塗料を塗布および乾燥させることにより、サーマル層を形成する工程とを備える、付記1~9のいずれか1つに記載の感熱記録体の製造方法。
[付記11]透明の液状である可溶化脂肪酸系ワックスを用いてサーマル層用塗料を調製する工程と、前記サーマル層用塗料を塗布および乾燥させることにより、サーマル層を形成する工程とを備える、付記1~9のいずれか1つに記載の感熱記録体の製造方法。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明の感熱記録体は、透明性に優れるため、例えば、弁当のような食品容器用ラベルや食品包装用フィルム等、内容物の視認性が求められる用途に特に好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0111】
1 感熱記録体
2 基材
3 アンカー層
4 サーマル層
【要約】
本発明は、透明性に優れる感熱記録体を提供することを目的とする。
本発明の感熱記録体は、脂肪酸系ワックスを含有するサーマル層を備える感熱記録体であることを特徴とする。前記脂肪酸系ワックスは、可溶化脂肪酸系ワックスおよび/またはエマルション状の脂肪酸系ワックスであることが好ましい。また、前記脂肪酸系ワックスは、可溶化脂肪酸系ワックスであることが好ましい。また、前記可溶化脂肪酸系ワックスは、可溶化剤を含有することが好ましい。
図1