(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】吸収性物品の包装構造体
(51)【国際特許分類】
B65D 85/07 20170101AFI20241213BHJP
A61F 13/15 20060101ALI20241213BHJP
B65D 33/00 20060101ALI20241213BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20241213BHJP
【FI】
B65D85/07
A61F13/15 210
B65D33/00 B
B65D33/00 A
B65D65/40 D
(21)【出願番号】P 2020095111
(22)【出願日】2020-05-29
【審査請求日】2023-03-10
(31)【優先権主張番号】P 2019102927
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】富田 美奈
(72)【発明者】
【氏名】坂 渉
(72)【発明者】
【氏名】幸田 拓也
【審査官】吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-540366(JP,A)
【文献】実公昭50-033361(JP,Y1)
【文献】特開平11-011520(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 65/40
A61F 13/15
B65D 33/00
B65D 85/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収性物品をパッケージに収容して成る吸収性物品の包装構造体であって、
前記パッケージは、正面と、前記正面に対向する背面と、第1の側面と、前記第1の側面に対向する第2の側面と、天面と、前記天面に対向する底面とからなる六面体であり、
一方の包装構造体のパッケージの背面と他方の包装構造体のパッケージの正面との間の静摩擦係数は、0.25以上であり、且つ、
前記一方の包装構造体のパッケージの第1の側面と前記他方の包装構造体のパッケージの第2の側面との間の静摩擦係数よりも大きい包装構造体。
【請求項2】
一方の包装構造体のパッケージの背面と他方の包装構造体のパッケージの正面との間の静摩擦係数は、一方及び他方の包装構造体の各第1及び第2の側面と前記包装構造体を積層状態で収容する収容体の、前記各第1及び第2の側面と向かい合う包装構造体側表面との間の静摩擦係数よりも大きい請求項1に記載の包装構造体。
【請求項3】
吸収性物品をパッケージに収容して成る吸収性物品の包装構造体であって、
前記パッケージは、正面と、前記正面に対向する背面と、第1の側面と、前記第1の側面に対向する第2の側面と、天面と、前記天面に対向する底面とからなる六面体であり、
一方の包装構造体のパッケージの背面と他方の包装構造体のパッケージの正面との間の静摩擦係数が、0.25以上であり、
一方の包装構造体のパッケージの背面と他方の包装構造体のパッケージの正面との間の静摩擦係数は、一方及び他方の包装構造体の各第1及び第2の側面と前記包装構造体を積層状態で収容する収容体の、前記各第1及び第2の側面と向かい合う包装構造体側表面との間の静摩擦係数よりも大きい包装構造体。
【請求項4】
前記パッケージの各面は、最外層に凹凸を有するマット層をそれぞれ備える請求項1~3のいずれか1項に記載の包装構造体。
【請求項5】
前記パッケージの正面及び背面は、第1の側面から第2の側面に向かって延びるマット層からなる第1のマット層領域を複数備え、
前記パッケージの第1及び第2の側面は、前記天面から前記底面に向かって延びるマッ
ト層からなる第2のマット層領域を複数備え、かつ
下記(式)を満たす請求項4に記載の包装構造体。
正面及び背面における第1のマット層領域の横方向平均マット率
>
第1及び第2の側面における
、正面から背面までの最短距離を100%としたときの複数の第2のマット層領域の横寸法の合計の割合 ・・・(式)
【請求項6】
前記パッケージの内部のパック圧が、1.2kPa以上2.5kPa以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の包装構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品の包装構造体に関し、より詳しくは、吸収性物品をパッケージに収容して成る吸収性物品の包装構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、吸収性物品が収容され、外面が印刷されたパッケージを備える包装構造体が知られている。例えば特許文献1には、正面、背面、2つの側面、天面及び底面を備えた六面体のパッケージに吸収性物品を収納した包装構造体が開示されている。
【0003】
包装構造体は、店舗へ搬送され、パッケージの底面を下にした状態、すなわち縦置きした状態で、あるいはパッケージの背面を下にした状態、すなわち平積みした状態で店舗の棚等に陳列される。このような包装構造体のパッケージの外面には、どのような陳列状態にあっても収容された吸収性物品の種類等の情報を認識できるように、パッケージの各面に吸収性物品の品種(テープ型、パンツ型等)やサイズ等を表す情報が表示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、包装構造体は、陳列時に荷崩れを生じることがある。例えば、パッケージを平積みした状態で積み重ねる陳列方法においては、複数を積み重ねた状態のまま移動させたり、陳列状態から包装構造体を取り出す際に、包装構造体の陳列状態の乱れや荷崩れが生じ易い。
【0006】
本発明の課題は、上述した従来技術が有する欠点を解消し得る包装構造体に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の吸収性物品の包装構造体は、吸収性物品をパッケージに収容して成り、パッケージは、正面と、正面に対向する背面と、第1の側面と、第1の側面に対向する第2の側面と、天面と、天面に対向する底面とからなる六面体であり、一方の包装構造体のパッケージの背面と他方の包装構造体のパッケージの正面との間の静摩擦係数は、0.25以上である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の吸収性物品の包装構造体は、積み重ねた状態において荷崩れし難い。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1の(A)は、本発明の実施の形態1にかかる吸収性物品の包装構造体の内部を示す斜視図、
図1の(B)は、本発明の実施の形態1にかかる吸収性物品の包装構造体の外部を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施の形態に係る
図1(B)のA-A線断面図である。
【
図3】
図3の(A)は、本発明の実施の形態にかかる吸収性物品の包装構造体を縦置きした状態を示す斜視図、
図3の(B)は、本発明の実施の形態にかかる吸収性物品の包装構造体を平積みした状態を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、静摩擦係数の測定方法を示す図である。
【
図5】
図5は、複数の包装構造体を収容する収容体の一例である段ボール箱に収容した状態を示す図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施の形態4にかかる吸収性物品の包装構造体を示す斜視図である。
【
図7】
図7の(A)及び(B)は、包装構造体の崩れ難さを評価する様子を示す図である。
【
図8】
図8の(A)及び(B)は、包装構造体の段ボール箱への入れ易さを評価する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
[実施の形態1]
図1の(A)に示すように、包装構造体1は、複数の吸収性物品3とパッケージ5とを備える。複数の吸収性物品3は、パッケージ5によって包装されている。吸収性物品3は、例えば、おむつ又はナプキン等である。
【0011】
パッケージ5は、正面7と、正面7に対向する背面9と、第1の側面11と、第1の側面11と対向する第2の側面13と、天面15と、天面15に対向する底面17とからなる六面体である。パッケージ5の各面は、最外層にマット層19を備え、第1の側面11は、マット層19と、非マット層領域21aとを備える。また、パッケージ5は、
図1の(B)に示すように、正面7に非マット層領域21bを、第1の側面11に非マット層領域21cを、第2の側面13に非マット層領域21dを、天面15に非マット層領域21eを備える。非マット層領域21aには、例えばパッケージ5によって包装されている複数の吸収性物品3のサイズや枚数が記載される。非マット層領域21b~21eには、例えば吸収性物品3のロゴタイプ等が記載される。
【0012】
図2に示すように、パッケージ5は、包装構造体1に使用される場合に内側となる面(吸収性物品側表面23)から外側となる面に向かって、フィルム基材層25、インク層27、及びマット層19の順で積層されている。
【0013】
フィルム基材層25は、パッケージ5が包装構造体1に用いられた際に形状や強度を保つための基礎となる材料である。フィルム基材層25は、柔軟性及び強度のあるフィルム材料で構成されるのが好ましい。柔軟性及び強度のあるフィルム材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート等が挙げられる。また、フィルム基材層25は、単層であってもよいし、同一又は異なる材料からなる複数の層を有する積層フィルムであってもよい。
【0014】
インク層27は、模様、絵柄、文字等の吸収性物品3に関する情報をパッケージ5に付与するための層である。インク層27の材料は、インク組成物である。インク組成物は、例えば、カーボンブラック、ジアミン、ポリオール、硬化剤及び有機溶媒等を含有する。
硬化剤は、例えば、イソシアネートである。有機溶媒は、例えば、トルエンである。インク層27は、例えばグラビア印刷法等により、フィルム基材層25の表面に所望の模様、絵柄、文字等を表示するように上記組成物を印刷する(塗布する)ことによって形成することができる。
【0015】
マット層19は、パッケージ5の最外層として設けられている。マット層19は、パッケージ5の表面に微細な凹凸を作り、パッケージ同士の摩擦係数を所望の値とすることができる。マット層19は、マット剤29を分散させた樹脂層31である。
静摩擦系係数を所望の値とするには、マット剤29の形状、粒径等にもよるが、マット剤の配合量を増減して適切な量とすることが好ましく、例えばマット剤は樹脂層中にマット剤と樹脂の合計重量に対して、1質量%以上20質量%以下含有することが好ましく、5質量%以上15質量%以下含有することがより好ましい。また、所望の静摩擦系係数とする観点からは、マット剤粒径は、0.1μm以上50μm以下であることが好ましい。
例えば、マット剤29は、シリカ、アルミナ、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、カーボンブラックが好ましく、シリカがより好ましい。樹脂層31は、例えば、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、フェノキシ系樹脂、シリコーン系樹脂から形成される。
【0016】
マット層19では、
図2に示すように、複数のマット剤29が樹脂層31から外側にはみ出ていることにより表面に微細な凹凸が形成されている。この微細な凹凸によりパッケージ同士の摩擦を高めることができる。また、マット層19の印刷版の線数やマット材の濃度により、表面に形成される凹凸の密度を調整可能であり、パッケージ同士の摩擦力を変化させることが可能である。
マット層19の印刷の線数を多くすると摩擦力が大きくなり、印刷の線数を少なくすると摩擦力が小さくなる。また、マット層19の凹凸の密度を密にする摩擦力が大きくなり、凹凸の密度を疎にすると摩擦力が小さくなる。
【0017】
このような実施の形態1の包装構造体1において、
図3の(A)に示すように、一方の包装構造体1aと他方の包装構造体1bは、例えば、店舗等の陳列棚(図示せず)に、一方の包装構造体1aのパッケージ5aの背面9aと他方の包装構造体1bのパッケージ5bの正面7bとが接触し、各底面17a、17bを下にした状態、すなわち縦置きした状態で陳列される。あるいは
図3の(B)に示すように、一方の包装構造体1aのパッケージ5aの背面9aと他方の包装構造体1bのパッケージ5bの正面7bとを下にした状態、すなわち平積みした状態で店舗の棚等に陳列される。
【0018】
実施の形態1の包装構造体1において、一方の包装構造体1aのパッケージ5aの背面9aと他方の包装構造体1bのパッケージ5bの正面7bとの間の静摩擦係数は、荷崩れを防止する観点から0.25以上であり、好ましくは0.30以上であり、また、上限値は特に制限はないが、パッケージの取りやすさの観点から0.50以下が好ましく、0.40以下がより好まく、0.35以下がより好ましく、そして、好ましくは0.25以上0.50以下であり、より好ましくは0.30以上0.40以下、より好ましくは0.30以上0.35以下である。
【0019】
このような実施の形態1の包装構造体1は、一方の包装構造体1aのパッケージ5aの背面9aと他方の包装構造体1bのパッケージ5bの正面7bとが接触した状態から外力が加えられてもずれ難いため、陳列時に荷崩れし難い。例えば、実施の形態1の包装構造体1は、
図3の(A)に示すような複数の包装構造体1が、隣り合わせで並べられた陳列状態、あるいは
図3の(B)に示すような隣り合わせで積層された陳列状態から取り出すことが考えられる。より具体的には、
図3の(A)に示す陳列状態の場合は、隣り合うパッケージのうち、最前列のものから手前に引いて取り出し、
図3の(B)に示す陳列状態の場合は、隣り合うパッケージのうち最上位のもの又は最下位のものから順次手前に引いて取り出す。
このように、実施の形態1の包装構造体1を陳列状態から取り出す際に包装構造体が荷崩れし難く、積み直す作業等の時間も必要としない。さらに、実施の形態1の包装構造体1は、陳列状態が乱れ難いため、外観性を損なわず、崩れた包装構造体1が影となって、内容部の情報が見え難くなるという問題もない。
加えて、実施の形態1の包装構造体1は、パッケージ5の最外層にマット層19を備えることによって、ユーザの購買意欲を高めることもできる。
【0020】
上述した静摩擦係数は、JIS-K7125 プラスチック-フィルムおよびシート摩擦係数試験方法に準拠し、例えば、
図4に示すような測定装置37を用いて測定することができる。測定装置37は、試験台39と、試験台39上に設置された滑車41と、滑車41に架けられたワイヤ43と、ワイヤ43の一端に取り付けられ試験台39上に配置された重り45を備えている。滑車41は、回転の軸を固定した定滑車である。第1サンプル47は、重り45の測定面(接触面)に固定する。第2サンプル49は、試験台39に設けられた周知の固定具などで、重り45の測定面(接触面)と対面する試験台39の上面に固定する。
【0021】
ワイヤ43の他端には、スプリング51を介して引張試験機(図示せず)に接続されている。スプリング51は、重り45が動き始めるときの衝撃を吸収する。引張試験機は、例えばオートグラフ(株式会社島津製作所、型番AG-X)である。
重り45は、190gの重量を有し、平面視において30mm×100mm(縦×横)の測定面寸法を有する。測定面寸法において、横とは重り45が移動する方向への寸法である。
【0022】
第1サンプル47がフィルム状である場合、第1サンプル47の非測定面である重り45側にエアスルー不織布(坪量:20g/m2)を貼り付けて介在させて第1サンプル47を重り45に固定する。第2サンプル49がフィルム状である場合、第2サンプル49の非測定面である試験台39側にエアスルー不織布(坪量:20g/m2)を貼り付けて介在させて試験台39の上面に固定する。
第1サンプル47は、横寸法は、重り45の測定面(接触面)のサイズと同じサイズ(100mm)とし、縦寸法は、錘の測定面(接触面)のサイズよりも大きいサイズ(60mm)とし、錘に、縦方向に巻き付けた状態として固定した。錘の測定面(接触面)に位置する部分のサイズは、平面視において30mm×100mm(縦×横)である。第2サンプル49のサイズは、重り45の測定面(接触面)のサイズと同じかそれより大きいサイズとし、例えば縦250mm×150mm(縦×横)である。
【0023】
一方の包装構造体のパッケージの背面と他方の包装構造体のパッケージの正面との間の静摩擦係数を測定する場合、第1のサンプルを切り出す包装構造体と、第2のサンプルを切り出す包装構造体とは別の包装構造体であっても良いが、同一構成の包装構造体が正面の向きを揃えて隣り合わせで積層されているか又は積層されることが予定されている場合、一つの包装構造体の正面及び背面のいずれか一方から第1のサンプルを切り出し、他方から第2のサンプルを切り出してもよい。
また、パッケージの静摩擦係数を測定する正面及び背面の一方又は双方にマット領域と非マット領域とが混在するような場合は、各面それぞれを、天面側の端から底面側の端までの距離を3等分して第1、第2及び第3の3つの領域に区分し、各領域の中央部から切り出したサンプルを用いて、第1領域どうしの摩擦係数、第2領域どうしの摩擦係数、第3領域どうしの摩擦係数を測定する。そして、それらの平均値を、静摩擦係数値とする。
パッケージにおける表面状態が一様である面や、内面の表面状態が通常一様である段ボール箱については、任意の場所からサンプルを切り出すことができる。
測定装置37の引張試験機を駆動させて、スプリング51及びワイヤ43を介して、第1サンプル47を巻き付けて固定した重り45に300mm/分の引張速度で外力を加える。外力は徐々に増加して第1サンプル47に摩擦を与え、最大荷重に達する。最大荷重に達した直後、重りが動き始める。この最大荷重は静摩擦力として表される。
【0024】
続いて、下記式(1)によって静摩擦係数を求める。
μS=FS/FP ・・・(1)
上記式(1)において、μSは静摩擦係数であり、FSは静摩擦力[N]であり、FPは重り45の質量によって生じる法線力(=1.86[N])である。
【0025】
本発明は、上述した実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能である。以下に本発明の形態の変形例を説明するが、以下に説明する変形例において、上述した実施の形態と同一の作用効果を奏する部分には同一の符号を付することによりその部分の詳細な説明を省略し、以下の説明では実施の形態と主に異なる点を説明する。
【0026】
[実施の形態2]
実施の形態2の包装構造体1は、一方の包装構造体1aのパッケージ5aの背面9aと他方の包装構造体1bのパッケージ5bの正面7bとの間の静摩擦係数が、一方の包装構造体1aのパッケージ5aの第1の側面11aと他方の包装構造体1bのパッケージ5bの第2の側面13bとの間の静摩擦係数よりも0.05以上大きいことが荷崩れを防止する観点から好ましい、また、パッケージ6の取りやすさの観点から前記静摩擦係数は0.5以下であることが好ましい。
一方の包装構造体1aのパッケージ5aの背面9aと他方の包装構造体1bのパッケージ5bの正面7bとの間の静摩擦係数は、実施の形態1と同様に0.25以上であり、好ましくは0.30以上であり、また、上限値は特に制限はないが、0.50以下が好ましく、0.40以下がより好まく、0.35以下がより好ましく、そして、好ましくは0.25以上0.50以下であり、より好ましくは0.30以上0.40以下、より好ましくは0.30以上0.35以下である。
一方の包装構造体1aのパッケージ5aの第1の側面11aと他方の包装構造体1bのパッケージ5bの第2の側面13bとの間の静摩擦係数は、0.05以上であることが好ましく、0.10以上であることがより好ましく、また、0.50以下であることが好ましく、0.30以下であることがより好ましく、そして、0.05以上0.50以下であり、好ましくは0.10以上0.30以下である。
【0027】
実施の形態2の包装構造体1において、第1及び第2の側面11a、13bの各マット層19の印刷線数は、正面7及び背面9のマット層19の印刷線数のそれぞれ40%であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、60%以上であることがさらに好ましく、また、90%以下であることが好ましく、80%以下であることがより好ましく、そして、40%~90%であることが好ましく、50~80%であることがより好ましく、60~80%であることがさらに好ましい。
すなわち、第1及び第2の側面11、13の各マット層19の印刷線数は、インチ当たり175本以上であることが好ましく、200本以上であることがより好ましく、240本以上であることがさらに好ましく、また、500本以下であることが好ましく、460本以下であることがより好ましく、420本以下であることがさらに好ましく、そして、175本~500本であることが好ましく、200本~460本であることがより好ましく、240本~420本であることがさらに好ましい。
【0028】
このような実施の形態2の包装構造体1は、上述した構成を備えるため、
図3の(B)に示すように実施の形態2の包装構造体1を積層して積み上げて1列としたものを並列配置した状態に陳列する際に、パッケージを重ねた状態で陳列棚へ差し込むときに、差し込むパッケージの側面と隣の列に積まれたパッケージの側面との摩擦が、積み重ねたパッケージの正面と背面との摩擦(静摩擦係数)よりも小さいので、積み重ねた差し込むパッケージ及び隣の列に陳列した包装構造体が崩れることなく、スムーズに陳列棚へ差し込むことができ、陳列の作業効率が良い。また、
図3の(B)に示すような状態に陳列された際に、ユーザが一方の例の包装構造体1を抜き出して、隣の列に陳列した包装構造体1が一緒に抜き出てしまうことを防止することができる。
【0029】
[実施の形態3]
実施の形態3の包装構造体1は、
図5に示すように、一方の包装構造体1aのパッケージ5aの背面9aと他方の包装構造体1bのパッケージ5bの正面7bとの間の静摩擦係数が、一方及び他方の包装構造体1a、1bの各第1及び第2の側面11a、11b、13a、13bと、複数の包装構造体を積層状態で収容する収容体である段ボール箱53の、各側面との対向面となる包装構造体側表面55との間の静摩擦係数よりも大きいことが段ボール箱53から包装構造体1a、1bを崩さずにとりやすくする観点から好ましい。
段ボール箱53の包装構造体側表面55と一方及び他方の包装構造体1a、1bの各第1及び第2の側面11a、11b、13a、13bとの間の静摩擦係数は、0.05以上であることが好ましく、0.10以上であることがより好ましく、また、0.50以下であることが好ましく、0.35以下であることがより好ましく、そして、0.05以上0.50以下であることが好ましく、0.10以上0.35以下であることがより好ましい。
【0030】
このような実施の形態3の包装構造体1は、上述した構成を備えるため、平積みされた複数の包装構造体1の陳列状態を崩すことなく、
図5に示すような状態に段ボール箱53へ収容することができる。このため、製造ライン中で包装構造体を積み重ねた状態で段ボール箱53へ収容する際に収容しやすい。
実施の形態3における静摩擦値は、パッケージ5の側面の中央領域をそれぞれ切り出して、第1サンプル47と第2サンプル49として採取し、
図4で説明した測定方法により得ることができる。この場合の第1サンプル47と第2サンプル49の切り出し寸法は、前記のサンプルと同一サイズである。また、第1サンプル47は、マット層19のない部位であり、第2サンプル49は、マット層19がある部位である。
【0031】
[実施の形態4]
実施の形態4の包装構造体1は、
図6に示すように、パッケージ5の正面7及び背面9が、第1の側面11から第2の側面13に延びる矩形形状のマット層からなる第1のマット層領域57を複数備え、パッケージ5の第1及び第2の側面11、13が、天面15から底面17に延びる矩形形状のマット層からなる第2のマット層領域59を複数備える。
図6では、背面9の第1のマット層領域57と第2の側面13の第2のマット層領域59の記載を省略している。
実施の形態4の包装構造体1は、下記(式)を満たすことが所望の摩擦係数とし荷崩れを防止する観点から好ましい。
正面7及び背面9における第1のマット層領域57の横方向平均マット率>第1及び第2の側面11、13における第2のマット層領域59の横方向合計マット率 ・・・(式)
【0032】
実施の形態4の包装構造体1において、正面7及び背面9における第1のマット層領域57の横方向平均マット率、すなわち第1のマット層領域57の横寸法(第1の側面11から第2の側面13までの長さ)は、第1の側面11から第2の側面13までの最短距離を100%としたときに、それぞれのマット層領域の横寸法の平均値が60%以上であることが所望の摩擦係数とし荷崩れを防止する観点から好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、また、100%以下であることが好ましく、そして、60%以上100%以下であることが好ましく、80%以上100%以下であることがより好ましく、90%以上100%以下であることがさらに好ましい。また、第1のマット層領域57の縦寸法(天面15から底面17までの長さ)は、天面15から底面17までの最短距離を100%としたときに、所望の摩擦係数とし荷崩れを防止する観点からそれぞれ5%以上30%以下であり、好ましくは5%以上20%以下、より好ましくは5%以上15%以下である。さらに、複数の第1のマット層領域57の縦寸法の合計は、所望の摩擦係数とし荷崩れを防止する観点から好ましくは10%以上であり、より好ましくは15%以上であり、さらに好ましくは30%以上であり、また、好ましくは80%以下であり、より好ましくは75%以下であり、さらに好ましくは70%以下であり、また、好ましくは10~80%であり、より好ましくは15%以上75%以下、さらに好ましくは30%以上70%以下である。
【0033】
正面7及び背面9における第1マット層領域の数は、所望の摩擦係数とし荷崩れを防止する観点から2個以上であることが好ましく、15個以上であることがより好ましく、また、15個以下であることが好ましく、10個以下であることがより好ましく、そして、2個以上15個以下が好ましく、より好ましくは4個以上10個以下である。
第2のマット層領域59の縦寸法は、それぞれのマット層領域の縦寸法の平均値が所望の摩擦係数とし荷崩れを防止する観点から60%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、また、100%以下であることが好ましく、そして、60%以上100%以下であることが好ましく、80%以上100%以下であることがより好ましく、90%以上100%以下であることがさらに好ましい。また、第2のマット層領域59の横寸法は、所望の摩擦係数とし荷崩れを防止する観点からそれぞれ5%以上であることが好ましく、また、30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、15%以下であることがさらに好ましく、そして、5%以上30%以下であることが好ましく、より好ましくは5%以上20%以下、さらに好ましくは5%以上15%以下である。
【0034】
さらに、第1及び第2の側面11、13における第2のマット層領域59の横方向合計マット率、すなわち複数の第2のマット層領域59の横寸法の合計は、第1のマット層領域の横寸法の、第1の側面11から第2の側面13までの最短距離に対する比率の平均値よりも小さいことを前提として、所望の摩擦係数とし荷崩れを防止する観点から10%以上であることが好ましく、15%以上であることがより好ましく、30%以上であることがさらに好ましく、また、80%以下であることが好ましく、75%以下であることがより好ましく、70%以下であることがさらに好ましく、10~80%であることが好ましく、より好ましくは15%以上75%以下、さらに好ましくは30%以上70%以下である。
天面15及び底面17における第2マット層領域の数は、所望の摩擦係数とし荷崩れを防止する観点から3個以上であることが好ましく、15個以上であることがより好ましく、また、15個以下であることが好ましく、10個以下であることがより好ましく、そして、2個以上15個以下であることが好ましく、より好ましくは3個以上10個以下である。
【0035】
このような実施の形態4の包装構造体1は、上述した構成を備えるため、複数の包装構造体1を隣り合わせて配置した場合、一方のパッケージの正面と他方のパッケージの背面とのパッケージの底面から天面に向かう方向の摩擦が、一方のパッケージの側面と他方のパッケージの側面との上記方向の摩擦よりも大きくなるため、平積みされた複数の包装構造体1の陳列状態をくずすことなく、
図5に示すような状態に段ボール箱53へ収容することができる。
【0036】
本発明の包装構造体において、パッケージ内部のパック圧は、荷崩れを防止する観点及び包装構造体の取りやすさの観点から、1.2kPa以上であることが好ましく、1.5kPa以上であることがより好ましく、2.5kPa以下であることが好ましく、2.2kPa以下であることがより好ましく、また好ましくは1.2kPa以上2.5kPa以下であり、より好ましくは1.5kPa以上2.2kPa以下である。
パッケージ内部のパック圧は、おむつの厚みに対する圧縮特性を測定し、パッケージ内のおむつ厚みに相当する荷重に換算することで求めた。具体的には、オートグラフ(株式会社島津製作所、型番AG-X)を用い、おむつ5枚を重ねた状態で、50kgfの荷重がかかるまで圧縮し、パッケージ内のおむつ厚み5枚分の厚みと同じ厚みとなった時点の圧縮力(荷重)を、パック圧とした。なお、測定にはパッケージから出し10時間以上放置後のおむつを用いる。パッケージ内のおむつ厚みは、パッケージ寸法と入り枚数からパッケージ内のおむつの厚みを算出した。
【0037】
上述した実施の形態は、マット層を有するものであったが、マット層でない構成で、上述した各静摩擦係数の条件を満たすようにすることもできる。
【0038】
上述した本発明の実施形態に関し、更に以下の吸収性物品を開示する。
<1>
吸収性物品をパッケージに収容して成る吸収性物品の包装構造体であって、前記パッケージは、正面と、前記正面に対向する背面と、第1の側面と、前記第1の側面に対向する第2の側面と、天面と、前記天面に対向する底面とからなる六面体であり、一方の包装構造体のパッケージの背面と他方の包装構造体のパッケージの正面との間の静摩擦係数は、0.25以上、好ましくは0.25以上0.50以下、より好ましくは0.30以上0.40以下である、包装構造体。
【0039】
<2>
一方の包装構造体のパッケージの背面と他方の包装構造体のパッケージの正面との間の静摩擦係数は、一方の包装構造体のパッケージの第1の側面と他方の包装構造体のパッケージの第2の側面との間の静摩擦係数よりも0.05以上大きく、好ましくは0.05以上0.50以下であり、好ましくは0.10以上0.30以下である前記<1>に記載の包装構造体。
<3>
一方の包装構造体のパッケージの背面と他方の包装構造体のパッケージの正面との間の静摩擦係数は、一方及び他方の包装構造体の各第1及び第2の側面と前記包装構造体を積層状態で収容する収容体の前記各第1及び第2の側面と向かい合う包装構造体側表面との間の静摩擦係数よりも大きい前記<1>又は<2>に記載の包装構造体。
<4>
前記収容体の包装構造体側表面と一方及び他方の包装構造体の各第1及び第2の側面との間の静摩擦係数は、0.05以上大きく、好ましくは0.05以上0.50以下、より好ましくは0.10以上0.35以下である前記<1>~<3>のいずれか1つに記載の包装構造体。
<5>
前記パッケージの各面は、最外層に凹凸を有するマット層をそれぞれ備える前記<1>~<4>のいずれか1つに記載の包装構造体。
【0040】
<6>
前記第1及び第2の側面のマット層の印刷線数は、前記正面及び背面のマット層の印刷線数の40%~90%、好ましくは50~80%、より好ましくは60~80%である前記<5>に記載の包装構造体。
<7>
前記パッケージの各面は、内側となる面から外側となる面に向かって、フィルム基材層、インク層、及びマット層の順で積層されている、前記<1>~<6>のいずれか1つに記載の包装構造体。
<8>
前記フィルム基材の材料は、ポリエチレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートから選択される1又は2以上である、前記<7>に記載の包装構造体。
<9>
前記インク層の材料は、カーボンブラック、ジアミン、ポリオール、硬化剤及び有機溶媒を含有する、前記<7>又は<8>に記載の包装構造体。
<10>
前記マット層は、シリカ、アルミナ、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、カーボンブラックから選択されるマット剤を分散させたアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、フェノキシ系樹脂、シリコーン系樹脂から選択される樹脂層から形成される、前記<7>~<9>いずれか1つに記載の包装構造体。
【0041】
<11>
前記パッケージの正面及び背面は、第1の側面から第2の側面に向かって延びるマット層からなる第1のマット層領域を複数備え、前記パッケージの第1及び第2の側面は、前記天面から前記底面に向かって延びるマット層からなる第2のマット層領域を複数備える前記<6>に記載の包装構造体。
<12>
前記正面及び前記背面における前記第1マット層領域の数は、2個以上15個以下であり、好ましくは4個以上10個以下である前記<11>に記載の包装構造体。
<13>
前記天面及び前記底面における前記第2マット層領域の数は、2個以上15個以下であり、好ましくは3個以上10個以下である前記<11>又は<12>に記載の包装構造体。
<14>
前記パッケージの内部のパック圧は、1.2kPa以上であることが好ましく、1.5kPa以上であることがより好ましく、2.5kPa以下であることが好ましく、2.2kPa以下であることがより好ましく、また好ましくは1.2kPa以上2.5kPa以下であり、より好ましくは1.5kPa以上2.2kPa以下である、前記<1>~<13>いずれか1つに記載の包装構造体。
【0042】
本発明の効果を確認するために、実施例1~3及び比較例1~2の包装構造体を製造し、比較実験を行った。
実施例1
六面体の包装構造体のフィルム基材層として用いられるポリエチレン製フィルムと、シリカ(マット剤)と、樹脂層31として用いられる樹脂層材料のいずれかと、複数の吸収性物品(おむつ)とを準備した。次に、フィルム基材層(ポリエチレン製フィルム)の各面に、マット剤と樹脂層材料を用いて同じ印刷線数(400線)のマット層を形成した。続いて、ポリエチレン製フィルムにマット層を形成して袋形状(収納可能な形状)としたパッケージを構成し、このパッケージに、複数の吸収性物品を収容して実施例1の包装構造体を4つ製造した。
【0043】
実施例2
実施例1と同じ材料を準備した。次に、六面体のポリエチレン製フィルムの正面、背面、天面、底面にマット剤と樹脂層材料を用いて同じ印刷線数(400線)のマット層を形成し、ポリエチレン製フィルムの第1及び第2の側面に上記4面の約63%の印刷線数(250線)のマット層を形成してパッケージを構成した。そして、複数の吸収性物品をパッケージ内に収容して実施例2の包装構造体を4つ製造した。
【0044】
実施例3
実施例1と同じ材料を準備した。次に、六面体のポリエチレン製フィルムの正面及び背面に、
図6に示すような、複数の第1のマット層領域57を形成し、ポリエチレン製フィルムの第1及び第2の側面に、複数の第2のマット層領域59を形成してパッケージを構成した。そして、複数の吸収性物品をパッケージ内に収容して実施例3の包装構造体を4つ製造した。ここで、第1のマット層領域57の各横寸法は、第1の側面から第2の側面までの最短距離を100%としたときに100%であり、複数の第1のマット層領域57の縦寸法の合計は、天面から底面までの最短距離を100%としたときに60%であった。また、第2のマット層領域59の各縦寸法は、天面から底面までの最短距離を100%としたときに100%であり、複数の第2のマット層領域の横寸法の合計は、第1の側面から第2の側面までの最短距離を100%としたときに50%であった。
【0045】
実施例4
実施例1と同じ材料を準備した。そして実施例3よりも複数の第1のマット層領域57と複数の第2のマット層領域59のマット濃度を高くしたパッケージを構成した。そして、複数の吸収性物品をパッケージ内に収容して実施例4の包装構造体を4つ製造した。
マット濃度は、樹脂層中のマット剤含有量を実施例3よりも高くした。
【0046】
実施例5
実施例1と同じ材料を準備した。そして実施例3のようにポリエチレン製フィルムの正面及び背面に複数の第1のマット層領域57を形成するとともに、第1及び第2の側面は非マットとしたパッケージを構成した。そして、複数の吸収性物品をパッケージ内に収容して実施例5の包装構造体を4つ製造した。
実施例1~5の包装構造体におけるパッケージ内部のパック圧は1.8kPaであった。
【0047】
比較例1
ポリエチレン製フィルムを用いた六面体のフィルム基材層と複数の吸収性物品(おむつ)とを準備した。このフィルム基材層にはマット層を形成せずにパッケージを構成した。次に、複数の吸収性物品をこのパッケージ内に収容して比較例1の包装構造体を4つ製造した。
【0048】
比較例2
実施例1と同じ材料を準備した。
次に、実施例3のポリエチレン製フィルムを用いた六面体のフィルム基材層の正面及び背面に、第2のマット層領域59を形成し、六面体のフィルム基材層の第1及び第2の側面に、複数の第1のマット層領域57を形成してパッケージを構成した。続いて、複数の吸収性物品をパッケージ内に収容して比較例2の包装構造体を4つ製造した。ここで、第2のマット層領域の各縦寸法は、天面から底面までの最短距離を100%としたときに100%であり、複数の第2のマット層領域の横寸法の合計は、第1の側面から第2の側面までの最短距離を100%としたときに50%であった。また、第1のマット層領域の各横寸法は、第1の側面から第2の側面までの最短距離を100%としたときに100%であり、複数の第1のマット層領域の縦寸法の合計は、天面から底面までの最短距離を100%としたときに60%であった。
【0049】
評価1(包装構造体の崩れ難さ評価)
図7の(A)及び(B)に示すように、試験者の腰部程度の高さの机(図示せず)の上に、実施例1~5及び比較例1、2の包装構造体をそれぞれ平積みに4個積み重ね、一番下の包装構造体の両側面に手を添え、外力を加えて5秒以内に50cmの距離を移動させる評価試験を行った。評価試験は、同一の試験者が5回繰り返し行い、4段階スコアの平均値を算出した。4段階スコアとは移動前後の包装構造体1の整列性を下記の基準で判断したものである。例えば、1<2<3<4のように、1は上側に積んだ包装構造体が崩れ落ち、2は上側に積んだ包装構造体が大きくずれ、3は上側に積んだ包装構造体がややずれ、4は上側に積んだ包装構造体の整列状態が保たれた。ここで、4個積み重ねた包装構造体1のサイズは50cm×38cm×35.5cm(
図7の(A)のH×L×T)であった。
【0050】
評価2(段ボール箱への入れ易さ評価)
図8の(A)に示すように、段ボール箱53の1辺のフタの上に、包装構造体1を平積みに4個重ね、一番下の包装構造体1の手前側の面(天面15)に片手を添えて、3秒以内に段ボール箱53の底面53aまで包装構造体1を押し込む(
図8の(B))評価試験を行った。評価試験は、同一の試験者が5回繰り返し行い、4段階スコアの平均値を算出した。4段階スコアとはその際の包装構造体1の整列状態を下記の基準で判断した。例えば、1<2<3<4のように、1は、上側に積んだ包装構造体が崩れ落ち、2は、上側に積んだ包装構造体が大きくずれ、3は、上側に積んだ包装構造体がややずれ、4は、上側に積んだ包装構造体の整列状態が保たれた。なお、段ボール箱の内寸法は、51cm×39cm×36cm(
図8の(A)のH×L×T)であった。
【0051】
評価1及び2の結果を、実施例1~5及び比較例1~2の包装構造体のパッケージの静摩擦係数の測定結果とともに下記表1に示す。なお、下記表1において、Aは、一方の包装構造体のパッケージの背面と他方の包装構造体のパッケージの正面との間の静摩擦係数、Bは、一方の包装構造体のパッケージの第1の側面と他方の包装構造体のパッケージの第2の側面との間の静摩擦係数、Cは、段ボール箱の包装構造体側表面と包装構造体の正面及び背面との間の静摩擦係数、Dは、段ボール箱の包装構造体側表面と包装構造体の側面との間の静摩擦係数を示す。表1において静摩擦係数A、Bは、一方の包装構造体のパッケージの背面と他方の包装構造体のパッケージの正面のものを示し、静摩擦係数C、Dは、一方の包装構造体のパッケージの側面と他方の包装構造体のパッケージの側面のものを示す。
【0052】
【0053】
表1に示すように、実施例1~5の包装構造体と比較例1、2の包装構造体とを比較すると、実施例1~5の包装構造体はそれぞれ、一方の包装構造体のパッケージの背面と他方の包装構造体のパッケージの正面との間の静摩擦係数が、0.25以上であるため、
図3の(B)に示すような平積みした陳列状態から実施の形態1の包装構造体1を最上位のもの又は最下位のものから順次手前に引いて取り出す際に包装構造体1が荷崩れし難いことが、評価1の結果から確認された。
【0054】
また、実施例1の包装構造体と実施例2の包装構造体とを比較すると、実施例2の包装構造体は、一方の包装構造体のパッケージの背面と他方の包装構造体のパッケージの正面との間の静摩擦係数が、一方の包装構造体のパッケージの第1の側面と他方の包装構造体のパッケージの第2の側面との間の静摩擦係数よりも0.05以上大きいため、平積みされた複数の包装構造体1の陳列状態をくずすことなく、
図5に示すような状態に段ボール箱53へ収容できることが、評価2の結果から確認された。
【0055】
さらに、実施例3の包装構造体と比較例2の包装構造体とを比較すると、実施例3の包装構造体は、パッケージの正面及び背面が、第1の側面から第2の側面に延びる矩形形状のマット層からなる第1のマット層領域57を複数備え、パッケージの第1及び第2の側面が、天面から底面に延びる矩形形状のマット層からなる第2のマット層領域59を複数備えるため、平積みされた複数の包装構造体1の陳列状態を崩すことなく、
図5に示すような状態に段ボール箱53へ収容できることが、評価2の結果から確認された。
実施例3の包装構造体と実施例4の包装構造体とを比較すると、実施例4の方が第1のマット層領域57及び第2のマット層領域59の静摩擦値が実施例3よりも大きいため、評価1の結果が確認された。
実施例4の包装構造体と実施例5の包装構造体とを比較すると、実施例5においては、各側面の静摩擦値が実施例4よりも低いため、評価1の結果が確認された。
【符号の説明】
【0056】
1・・・包装構造体
3・・・吸収性物品
5・・・パッケージ
7・・・・正面
9・・・・背面
11・・・第1の側面
13・・・第2の側面
15・・・天面
17・・・底面
19・・マット層
25・・フィル基材層
27・・・インク層
57・・・第1のマット層領域
59・・・第2のマット層領域