(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】自動車のブレーキシステムのためのポンプ装置、ブレーキシステム
(51)【国際特許分類】
F04B 17/04 20060101AFI20241213BHJP
B60T 17/00 20060101ALI20241213BHJP
F04B 53/12 20060101ALI20241213BHJP
F04B 53/10 20060101ALI20241213BHJP
【FI】
F04B17/04
B60T17/00 D
F04B53/12
F04B53/10 C
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020114764
(22)【出願日】2020-07-02
【審査請求日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】10 2019 210 666.8
(32)【優先日】2019-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】ケイル,クリストフ
【審査官】丹治 和幸
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0051731(US,A1)
【文献】実開昭52-089707(JP,U)
【文献】特開2012-202337(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1778609(CN,A)
【文献】特開2010-265898(JP,A)
【文献】実開昭53-009506(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 17/00-19/24
F04B 23/00-23/14、
53/00-53/22
B60T 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(10)と、前記ハウジング(10)の中で液圧を生成するための圧力室(20)を区切る、前記ハウジング(10)の中で長手方向スライド可能に支承された圧力ピストン(11)と、前記圧力ピストン(11)に付属する復帰ばね(23)と、前記圧力室(20)を圧力接続部(3)から分断し、前記圧力室(20)における液圧が前記圧力接続部(3)における
液圧よりも高いときにのみ分断を解消する逆止め弁(15)と、磁気アーマチュア(21)および電気的に通電可能な磁気コイル(22)を有する電磁アクチュエータとを有し、前記磁気アーマチュア(21)は前記圧力ピストン(11)に配置され、前記磁気コイル(22)は前記ハウジング(10)の中および/または表面に配置される、自動車のブレーキシステム(1)のためのポンプ装置(9)において、前記圧力ピストン(11)が、一端で前記圧力室(20)に連通するとともに他端で前記逆止め弁(15)に付属する軸方向の貫通通路(19)を有
し、
前記圧力ピストン(11)は吸込接続部(5)を前記圧力室(20)と接続するために取込弁を有し、前記取込弁は、前記貫通通路(19)を共に形成する、前記圧力ピストン(11)の中で長手方向スライド可能に支承されたバルブスリーブ(28)として構成されすることを特徴とするポンプ装置。
【請求項2】
前記圧力ピストン(11)は前記圧力室(20)に付属する第1の端面(24)と前記逆止め弁(15)に付属する第2の端面とを有し、前記第1の端面(24)の断面積は前記第2の端面の断面積よりも広いことを特徴とする、請求項1に記載のポンプ装置。
【請求項3】
前記復帰ばね(23)は、前記第1の端面(24)と、前記圧力室(20)を区切る前記ハウジング(10)の閉じた端面との間で初期応力をかけられて保持されることを特徴とする、請求
項2に記載のポンプ装置。
【請求項4】
前記圧力ピストン(11)はその外套壁に、前記圧力ピストン(11)のいずれのスライド位置でも前記吸込接続部(5)と液圧接続される、前記吸込接続部(5)に付属する少なくとも1つの径方向開口部(31)を有することを特徴とする、請求項1から
3までのいずれか1項に記載のポンプ装置。
【請求項5】
前記バルブスリーブ(28)はその外套壁に、前記圧力ピストン(11)の中で前記バルブスリーブ(28)が第1のスライド位置にあるとき前記圧力ピストン(11)の前記径方向開口部(31)を前記圧力室(20)と接続するとともに第2のスライド位置のとき前記圧力室(20)から分断する、少なくとも1つの軸方向通路(30)を有することを特徴とする、請求項
4に記載のポンプ装置。
【請求項6】
前記バルブスリーブ(28)は前記圧力室(20)のほうを向く端部に、第2のスライド位置のとき前記軸方向通路(30)を閉止するように前記圧力ピストン(11)に当接し、第
1のスライド位置のとき前記軸方向通路(30)を解放するように前記圧力ピストン(11)に対して間隔をおいて位置する環状のシールシート(29)を有することを特徴とする、請求項
5に記載のポンプ装置。
【請求項7】
前記軸方向通路(30)は前記バルブスリーブ(28)の外套壁の外面にある溝状の凹部として構成されることを特徴とする、請求項
5または6に記載のポンプ装置。
【請求項8】
前記軸方向通路(30)は前記バルブスリーブ(28)の外套壁の外面にある円周溝として構成されることを特徴とする、請求項
5から
7までのいずれか1項に記載のポンプ装置。
【請求項9】
前記磁気アーマチュア(21)は前記圧力ピストン(11)に軸方向で外嵌されることを特徴とする、請求項1から
8までのいずれか1項に記載のポンプ装置。
【請求項10】
前記磁気アーマチュア(21)は前記圧力ピストン(11)と軸方向で形状接合式
に結合されることを特徴とする、請求項1から
9までのいずれか1項に記載のポンプ装置。
【請求項11】
前記ハウジング(10)は前記ブレーキシステム(1)の液圧ブロック(2)に差し込むための差込ハウジングとして構成されるとともに、前記液圧ブロック(2)での前記ハウジング(10)の軸方向の固定
を前記液圧ブロック(2)の可塑変形により保証するために少なくとも1つの径方向突起(34)を
前記ハウジング(10)の外面に有することを特徴とする、請求項1から
10までのいずれか1項に記載のポンプ装置。
【請求項12】
前記ハウジング(10)は多部分で構成され、前記圧力ピストン(11)および前記逆止め弁(15)を収容および支承するための第1のハウジング部分(10)を有し、ならびに、前記圧力室(20)を閉止するための、
かつ、前記磁気アーマチュア(21)をスライド可能に支承するための第2のハウジング部分を有し、これらのハウジング部分(10_1,10_2)が互いに固定的に結合されることを特徴とする、請求項1から
11までのいずれか1項に記載のポンプ装置。
【請求項13】
前記ハウジング部分(10_1,10_2)は可塑変形によっ
て相互に結合されることを特徴とする、請求項
12に記載のポンプ装置。
【請求項14】
ハウジング(10)と、前記ハウジング(10)の中で液圧を生成するための圧力室(20)を区切る、前記ハウジング(10)の中で長手方向スライド可能に支承された圧力ピストン(11)と、前記圧力ピストン(11)に付属する復帰ばね(23)と、前記圧力室(20)を圧力接続部(3)から分断し、前記圧力室(20)における液圧が前記圧力接続部(3)における液圧よりも高いときにのみ分断を解消する逆止め弁(15)と、磁気アーマチュア(21)および電気的に通電可能な磁気コイル(22)を有する電磁アクチュエータとを有し、前記磁気アーマチュア(21)は前記圧力ピストン(11)に配置され、前記磁気コイル(22)は前記ハウジング(10)の中および/または表面に配置される、自動車のブレーキシステム(1)のためのポンプ装置(9)において、前記圧力ピストン(11)が、一端で前記圧力室(20)に連通するとともに他端で前記逆止め弁(15)に付属する軸方向の貫通通路(19)を有し、
前記圧力ピストン(11)はその外套壁に、前記圧力ピストン(11)のいずれのスライド位置でも吸込接続部(5)と液圧接続される、前記吸込接続部(5)に付属する少なくとも1つの径方向開口部(31)を有し、前記吸込接続部(5)は前記圧力ピストン(11)の少なくとも一つのスライド位置で、前記圧力室(20)と液圧接続されることを特徴とするポンプ装置。
【請求項15】
少なくとも1つの液圧式に操作可能なホイールブレーキを有する少なくとも1つのブレーキ回路と、前記ブレーキ回路で液圧を生成するための少なくとも1つのポンプ装置(9)とを有する、自動車のためのブレーキシステム(1)において、請求項1から14までのいずれか1項に記載のポンプ装置(9)の構成を有することを特徴とするブレーキシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジングと、ハウジングの中で液圧を生成するための圧力室を区切る、ハウジングの中で長手方向スライド可能に支承された圧力ピストンと、圧力ピストンに付属する復帰ばねと、圧力室を圧力接続部から分断し、圧力室における液圧が圧力接続部におけるよりも高いときにのみ分断を解消する逆止め弁と、磁気アーマチュアおよび電気的に通電可能な磁気コイルを有する電磁アクチュエータとを有し、磁気アーマチュアは圧力ピストンに配置され、磁気コイルはハウジングの中および/または表面に配置される、自動車のブレーキシステムのためのポンプ装置に関する。
【0002】
さらに本発明は、少なくとも1つの液圧式に操作可能なホイールブレーキを有する少なくとも1つのブレーキ回路と、ブレーキ回路で液圧を生成するための少なくとも1つのポンプ装置とを有するブレーキシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
冒頭に述べた種類のポンプ装置およびブレーキシステムは、従来技術から知られている。液圧式のホイールブレーキの操作をブレーキペダル操作に依存することなく可能にするために、または、ブレーキペダル操作には依存するが、ブレーキペダルからホイールブレーキへの液圧式もしくは機械式の結合が遮断された場合にホイールブレーキへの圧力付勢を可能にするために、制御可能な、特に電気制御可能なポンプ装置をブレーキ回路に設けることが知られている。振動をするように往復運動するピストンを用いて圧力室の中で液圧が生成されて、ブレーキシステムまたはブレーキ回路に提供される。相応のポンプ装置は、たとえば特許文献1から公知である。そこでは、ポンプピストンが電磁アクチュエータにより復帰ばねの力に抗して駆動されて、ポンプ運動ないしポンププロセスを実行する。このとき逆止め弁が、圧力接続部から圧力室へ戻るように液圧媒体が流れ得ることを防止し、それは、圧力接続部の圧力が圧力室の圧力より高くなったときに、逆止め弁が圧力室と圧力接続部の間の接続を自動的に閉じることによる。それにより確実な吸込と、吸い込まれた液圧媒体の排出とが保証される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】ドイツ特許出願公開第102014204157A1号明細書
【発明の概要】
【0005】
請求項1の構成要件を有する本発明によるポンプ装置は、縮小された設計スペース需要のもとで、本発明によるポンプ装置が簡易な組付ならびに所望の液圧の個別的な提供を保証するという利点を有する。
【0006】
請求項1の構成要件を有する本発明によるポンプ装置は、圧力ピストンが、一端で圧力室に連通するとともに他端で逆止め弁に付属する、またはこのほうを向く、軸方向の貫通通路を有することを特徴とする。それに伴い、圧力室の中にある、圧力ピストン運動により圧力で付勢される液圧媒体が、圧力ピストンを通過して逆止め弁へ、およびそれに伴って圧力接続部へと圧送される。それに伴い圧力ピストンは、圧力付勢される液圧媒体の流動方向と反対向きにポンプ装置から外へ送り出される。それにより、圧力ピストンの貫通通路によって特別にコンパクトなポンプ装置の構成が可能となる。特にこの好ましい構成は、ポンプ装置が全体として、液圧ブロックの収容部へ組付のために容易に差込可能である差込装置として構成されることを可能にし、それにより、全体として予備組付される、または予備組付可能なポンプ装置によって、特別に容易な組付がもたらされる。
【0007】
本発明の好ましい発展例では、圧力ピストンは圧力室に付属する第1の端面と逆止め弁に付属する第2の端面とを有し、第1の端面の断面積は第2の端面の断面積よりも広い。特に、第1の端面の全体断面積は第2の端面の全体断面積よりも広い。それにより、圧力室の中で圧力ピストンが運動することで運動によって縮小する圧力室の容積が、圧力ピストンの運動によって場合により解放される、逆止め弁に付属する圧力ピストンの端部における容積よりも大きいことがもたらされる。それにより、所望の液圧の生成ならびに所望の方向への液圧媒体の圧送が確実に保証される。
【0008】
さらに復帰ばねは、第1の端面と、圧力室を区切るハウジングの閉じた端面との間で初期応力をかけられて保持されることが意図されるのが好ましい。それに伴い復帰ばねは全体として、ハウジングと、圧力ピストンの第1の端面と、ハウジングの閉じた端面とによって区切られる圧力室の中に位置する。圧力ピストンが変位することで圧力室の容積が変化し、それによって所望の液圧が保証される。圧力室の中に復帰ばねが配置されることで、設計スペースが最適化された構成が提供され、さらに、復帰ばねが圧力室の内部で外部要因に対して保全され、それによってポンプ装置の高い耐久性と機能性が保証される。
【0009】
さらに、圧力ピストンは吸込接続部を圧力室と接続するために取込弁を有することが意図されるのが好ましく、取込弁は、圧力通路を共に形成する、圧力ピストンの中で長手方向スライド可能に支承されたバルブスリーブによって構成される。このように、ハウジングに対して相対的に長手方向スライド可能に変位可能である圧力ピストンの中に、それ自体として圧力ピストンに対して相対的に長手方向スライド可能に変位可能であるバルブスリーブが配置され、それにより吸込接続部を圧力室と接続し、またはこれから分断する。圧力ピストンにバルブスリーブが統合されて構成されることで、ならびに、バルブスリーブによって圧力通路が共に形成されることで、ポンプ装置の特別にコンパクトな実施形態が提供される。これに加えて、それにより取込弁が好ましく、かつ組立技術的に容易にポンプ装置へ組み込まれる。復帰ばねはバルブスリーブに対して径方向に間隔を置いて位置するのが好ましく、それにより、バルブスリーブは復帰ばねと協同作用するのでなく、圧力ピストンないし復帰ばね力に関わりなく変位可能である。
【0010】
さらに、圧力ピストンはその外套壁に、圧力ピストンのいずれのスライド位置でも吸込接続部と液圧接続される、吸込接続部に付属する少なくとも1つの径方向開口部を有するのが好ましい。それにより、吸込接続部が圧力ピストンを通過してバルブスリーブないし取込弁と常に液圧接続されることが保証される。
【0011】
さらに、バルブスリーブはその外套壁に、圧力ピストンの中でバルブスリーブが第1のスライド位置にあるとき圧力ピストンの径方向開口部を圧力室と接続するとともに第2のスライド位置のとき圧力室から分断する、少なくとも1つの軸方向通路を有することが意図されるのが好ましい。このように吸込接続部は、バルブスリーブが第1のスライド位置にあるとき、圧力ピストンないし圧力ピストンの径方向開口部を通して、および軸方向通路を通して、圧力室と接続される。バルブスリーブが第2のスライド位置に変位すると、この接続は特にバルブスリーブによる軸方向通路の閉止によって遮断される。それにより、取込弁の簡易で確実な操作が保証される。
【0012】
バルブスリーブは圧力室のほうを向く端部に、第2のスライド位置のとき軸方向通路を閉止するように圧力ピストンに当接し、第2のスライド位置のとき圧力ピストンに対して間隔をおいて位置する環状のシールシートを有するのが特別に好ましい。このように軸方向通路は、バルブスリーブのシールシートによって閉止可能である。それと同時に、シールシートは圧力ピストンへのバルブスリーブの最大の侵入深さを定義し、それによって簡易な組付ならびに取込弁の確実な機能が保証される。
【0013】
軸方向通路はバルブスリーブの外套壁の外面にある溝状の凹部として構成されるのが好ましい。溝状の凹部により、円周側で完全に閉じた軸方向通路と比べて低コストに具体化可能である、縁部の開いた軸方向通路が提供される。円周側で、軸方向通路は一方ではバルブスリーブの溝状の凹部によって、および他方では圧力ピストンの内壁によって形成され、それにより、バルブスリーブと圧力ピストンの間の好ましい協同作用が可能となり、ならびに特に、上ですでに説明したシールシートによる軸方向通路の簡易な閉止が可能となる。
【0014】
さらに、軸方向通路はバルブスリーブの外套壁の外面にある円周溝として構成されることが意図されるのが好ましい。それに伴い、軸方向通路がバルブスリーブの円周全体にわたって延び、その意味において環状に構成される。それにより、一方では高い容積流量が保証され、他方では、汚れや有害粒子が存在していても軸方向通路の詰まりが確実に防止される。
【0015】
磁気アーマチュアは圧力ピストンに軸方向で外嵌されているのが好ましい。それにより、圧力ピストンへの磁気アーマチュアの簡易な配置が保証される。
【0016】
磁気アーマチュアは、圧力ピストンと軸方向で形状接合式に、特に可塑変形によって、好ましくは少なくとも1つのかしめによって結合されるのが特別に好ましい。形状接合式の結合により、磁気アーマチュアが圧力ピストンと常に一緒に動くことが保証され、それにより、電磁アクチュエータ、圧力ピストン、および復帰ばねの協同作用が常に保証される。
【0017】
ハウジングは、ブレーキシステムの液圧ブロックに差し込むための差込ハウジングとして構成されるとともに、液圧ブロックの内部または表面でのハウジングの軸方向の固定を特に液圧ブロックの可塑変形により保証するために、少なくとも1つの径方向突起を外面に有するのが特別に好ましい。差込ハウジングとしての構成により、ブレーキシステムの液圧ブロックへのポンプ装置の簡易な組付が保証される。差込ハウジングは、特に、ハウジングの中のアンダーカットおよび/または空隙スペースを回避するために、径方向突起を除いて、差込方向で減少していく直径または減少/低下していく、もしくは同じままの断面積を有することを特徴とする。それにより、液圧ブロックへのハウジングないしポンプ装置の確実な形状接合式の好ましい配置が提供される。径方向突起により、たとえば液圧ブロックの中への差込ハウジングの侵入深さが制限される。さらに径方向突起は、たとえば液圧ブロックの可塑変形によって差込ハウジングおよびこれに伴ってポンプ装置を液圧ブロックに確実に係止できるようにするための役目を果たし、それにより、液圧ブロックからポンプ装置が意図せず外れることも確実に防止される。
【0018】
ハウジングは多部分で構成されるのが特別に好ましく、圧力ピストンおよび逆止め弁を収容および支承するための第1のハウジング部分を有し、ならびに、圧力室を形成するための、特に磁気アーマチュアをスライド可能に支承するための第2のハウジング部分を有し、これらのハウジング部分が互いに固定的に結合される。多部分からなるハウジングの構成により、ブレーキシステムの液圧ブロックの内部または表面への配置前のポンプ装置の確実で簡易な予備組付が保証される。さらに、磁気アーマチュアを支承するための好ましい構成により、ポンプ装置のハウジングの中での磁気アーマチュアの確実な案内が保証される。各ハウジング部分の相互の固定的な結合により、好ましい予備組付が可能となる。
【0019】
各ハウジング部分は可塑変形によって、特にかしめによって、相互に恒久的に結合されるのが好ましい。それにより、意図せず外れることが確実に防止され、各ハウジング部分の相互の結合が恒久的に確実に保証される。特に形状接合式の結合により、高い液圧のもとでも恒久的に保証される特別にロバスト性の高い結合が提供される。
【0020】
請求項15の構成要件を有する本発明によるブレーキシステムは、ポンプ装置の本発明による構成を有することを特徴とする。それにより、すでに挙げた利点がもたらされる。特にこのブレーキシステムは、本発明によるポンプ装置をそれぞれ収容するための1つまたは複数の収容凹部を有する液圧ブロックを有する。特に収容凹部は差込収容部として構成され、それにより、それぞれのポンプ装置をそれぞれの収容部へ容易に差し込んで、そこで特に液圧ブロックの可塑変形によって液圧ブロックに固定することができ、ないしは固定される。
【0021】
その他の利点や好ましい構成要件および構成要件組み合わせは、特に、上記の説明ならびに特許請求の範囲から明らかとなる。次に、図面を参照しながら本発明について詳しく説明する。図面は次のものを示す。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】自動車のための好ましいブレーキシステムを第1の動作状態で示す簡略化した断面図である。
【
図2】ブレーキシステムのポンプ装置を第2の動作状態で示す簡略化した縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、ここには詳しくは図示しない自動車のための好ましいブレーキシステム1の一部分を簡略化した縦断面図で示している。ブレーキシステム1は液圧ブロック2を有している。液圧ブロック2には、液圧媒体のための、特にブレーキ液のためのブレーキシステムの圧力通路と吸込通路が統合されている。たとえば
図1に示す液圧ブロック2の区域は圧力接続部3を有していて、そこから2つの圧力通路4が分岐し、たとえばそれぞれ異なるブレーキ回路または1つの共通のブレーキ回路の摩擦ブレーキへと通じる。さらに、液圧ブロック2のこの区域は吸込接続部5を示しており、特に液圧媒体の提供と保管をするためのタンクおよび/またはブレーキシステム1のマスタブレーキシリンダと接続された2つの吸込通路6がこれに連通する。
【0024】
圧力通路4と吸込通路6は、液圧ブロック2の円筒状に構成された収容凹部7に連通し、収容凹部7の直径はその底面8を起点として自由なアクセス開口部の方向へ増加しかせず、場合により存在する事後的に生じる可塑変形を除いて減少はしない。
【0025】
収容凹部7にポンプ装置9が挿入され、これによって液圧媒体を吸込接続部5から圧力接続部3へと圧送可能であり、ポンプ装置9そのものが吸込接続部5を圧力接続部3から分断する。
【0026】
そのためにポンプ装置9は、差込ハウジングとして構成されたハウジング10を有している。このとき差込ハウジング10の外径は収容凹部7の内径に少なくとも実質的に相当し、それにより、
図1に示すとおり、ハウジング10が形状接合式に少なくとも実質的にクリアランスなしに収容凹部7へ差し込まれ、この意味において収容凹部は差込収容凹部として構成される。特にハウジング10の外径は、収容凹部7の内径よりもわずかに大きくなっており、それにより、ハウジング10と液圧ブロック2の間のプレス嵌めが差込状態のときに成立し、これによって圧力接続部3または圧力側が、吸込接続部5ないし吸込側から確実に分断される。
【0027】
ポンプ装置9のハウジング10の中に、ポンプピストン11が長手方向スライド可能に支承されている。そのためにハウジング10は、圧力ピストン11のための皿状の収容部12を有するスリーブ状に構成される。皿状の収容部12の底面にハウジング10は、逆止め弁15の形態の吐出弁14が付属する吐出開口部13を有している。逆止め弁15は、吐出開口部13を密閉して閉止するために、圧力ピストン11と反対を向いているハウジング10の側により構成されるシールシート17と協同作用する球形の弁部材16を有している。ここには示唆のみしている復帰ばね18によって弁部材16が弁座17の中に押圧され、それにより通常状態では、圧力接続部3に連通する吐出開口部13は閉じられている。
【0028】
圧力ピストン11は、圧力ピストン11を軸方向に通過するように延びる貫通通路19を有しており、それにより、圧力通路19は吐出弁14の一方の端部に向かい合う。圧力通路19の他方の端部は、圧力ピストン11とハウジング10とによって区切られた圧力室20のほうを向く。圧力ピストン11は圧力室20のほうを向く端部に、ハウジング10の外側に配置された磁気コイル22と協同作用するために構成された磁気アーマチュア21を担持している。このとき磁気アーマチュア21は、長手方向スライド可能なようにハウジング10の中で案内される。
【0029】
さらに圧力室20の中に、圧力ピストン11とハウジング10の間で初期応力をかけられて保持される復帰ばね23が配置されている。このとき圧力ピストン11は、ハウジング10の閉じた端面25に向かい合う、圧力室20のほうを向く第1の端面24を有しており、それにより、復帰ばね23は第1の端面24と端面25との間で初期応力をかけられて保持される。このとき端面24は、本実施例では磁気アーマチュア21によって共に形成される。磁気アーマチュア21は圧力ピストン11と形状接合式に結合されており、それにより、圧力ピストン11と磁気アーマチュア21は常に互いに一緒に動く。形状接合式の結合のために、本例では磁気アーマチュアは、ピストン11の径方向凹部27に係合するかしめ26によって結合されることが意図される。このように、磁気アーマチュア21は圧力ピストン11の一部を構成する。
【0030】
圧力ピストン11の貫通通路19は段差穴によって形成され、圧力室20のほうを向く段差穴の区域にバルブスリーブ28が長手方向スライド可能に支承されている。バルブスリーブ28は圧力室20のほうを向く自由端をもって、ピストン11の本体から軸方向に突出し、当該端部にシールシート29を有している。バルブスリーブ28はその外套壁で外面に、バルブシート28の円周全体にわたって延びる円周溝の形態の軸方向通路30を有している。このとき円周溝30は、そのスライド位置に関わりなく、圧力ピストン11に構成された径方向開口部31と円周溝30が常に液圧接続されるように構成される。このとき圧力ピストン11の径方向開口部31は、圧力ピストン11のスライド位置に関わりなく、吸込接続部5と常に液圧接続されるように構成される。
【0031】
図1に示すバルブスリーブ28のスライド位置のとき、シールシート29は軸方向で圧力ピストン11に当接して、圧力ピストン11の内壁とバルブスリーブ28の外壁との間に延びる軸方向通路30が閉止されるようになっている。それに伴い、吸込接続部5から圧力室20への液圧接続は遮断される。
【0032】
そして上に説明した状態を起点として、次のような機能がもたらされる。磁気コイル22が電流または電圧の供給を受けると、電磁場が生成されて、これが磁気アーマチュア21と協同作用してこれを引き付け、それにより復帰ばね23がさらに圧縮され、ないしは応力をかけられる。磁気アーマチュア21が引き付けられることで、圧力ピストン11が圧力室20の方向にスライドし、それによって圧力室20が縮小される。圧力ピストン11の往復運動時に生じる圧力室20の内圧により、バルブスリーブ28が軸方向で圧力ピストン11に向かって押圧され、それに伴って軸方向通路30が閉止されることが保証される。それによって圧力室20の中にある液圧媒体に及ぼされる圧力は、バルブスリーブ28により共に形成される貫通通路19を通って液圧媒体が吐出弁13に達するように作用する。このとき圧力が、圧力接続部3の圧力ならびに任意の復帰ばね18の復帰力よりも高いと、バルブ部材16が
図1に示す閉止位置から、吐出開口部13を解放する開放位置へと変位し、液圧媒体が圧力接続部3およびそれに伴って圧力通路4へ流れ込む。
【0033】
磁気コイル22の通電が終了すると、復帰ばね23が圧力ピストン11を初期位置へ戻るように押圧する。これに関して
図2はポンプ装置9を簡略化した縦断面図であらためて示しているが、これは、バルブスリーブ28と圧力ピストン11によって形成される取込弁が開いている第2の動作状態のときである。圧力ピストン11が戻りスライドすることで、バルブスリーブ28と圧力ピストン11の間の間隔がシールシート29のところで拡大し、それにより、
図2に矢印で示すように、液圧媒体が吸込接続部5から圧力室20へ流入するようになる。圧力ピストン11の戻り運動のときに圧力室20が再び拡大されることで負圧が生じ、この負圧によってバルブスリーブ28が圧力ピストン11から離れるように引っ張られて、封止面28が圧力ピストン11から外れ、それにより取込弁が開き、その結果として液圧媒体が吸込接続部5から圧力室20の中に流れる。
【0034】
ただし復帰ばねは、この位置には任意選択としてのみ存在する。別の実施例ではバルブ部材14は、圧力接続部3の静圧により弁座17に向かって単独で封止をするように押圧される。
【0035】
ブレーキシステム1および特にポンプ装置9の簡易な組付のために、ポンプ装置9のハウジング10はその外壁に少なくとも1つの径方向突起34を有している。ハウジング10が、特に予備組付されたポンプ装置9がハウジング10とともに収容凹部7へ差し込まれた後、
図1に示すように、径方向突起34の領域で特にかしめによって液圧ブロック2が可塑変形され、それにより、
図1のかしめ32によって示すように、径方向突起34が液圧ブロック2の材料により後方係合される。それによりポンプ装置9が確実かつ恒久的に液圧ブロック2に、特に封止をするように保持される。
【0036】
さらに簡易な組付のために、ハウジング10は複数の部分を有している。本実施例ではハウジング10は2部分で構成されており、第1のハウジング部分10_1は、収容凹部7に差し込まれる、すでに挙げた差込ハウジングを構成する。第2のハウジング部分10_2は、吐出開口部13と反対を向くほうのハウジング部分10_1の端部においてハウジング部分10_1に取り付けられる。そのためにカップ状のハウジング部分10_2がハウジング部分10_1に差し込まれ、特に、
図1にハウジング部分10_1のかしめ33によって示すように、可塑変形によって形状接合式に恒久的にハウジング部分10_1と結合される。このときハウジング部分10_2は圧力ピストン11とともに圧力室20を構成し、さらに、磁気アーマチュア21の、およびそれに伴って圧力ピストン11の、ハウジング10の中での長手方向スライド可能な支承のための役目を果たす。
【0037】
特にバルブスリーブ28は、わずかな漏れをもって軽い動きで圧力ピストン11の中にスライド可能に支承され、そのスリーブ形状により、バルブスリーブ28の長手方向に延びて貫通通路19を共に形成する貫流開口部を有する。磁気アーマチュア21だけでなく圧力ピストン11も全体として、電磁アクチュエータの作用を改善するために磁気伝導性の材料で製作されるのが好ましい。吐出開口部13にある弁座は、および、バルブスリーブ28と圧力ピストン11の間に構成可能な取込開口部にある弁座は、閉じた状態のときに少なくとも部分領域で弾性変形によって高い封止作用を実現するために、プラスチックで製作されるのが好ましい。磁気アーマチュア29と磁気コイルの磁極面との磁気的な分断は、ハウジング10での薄い壁厚によって具現されていてよい。圧力ピストン11の輪郭は、圧力ピストン11に対する力がそのストローク全体にわたって少なくとも実質的に等しく、ないしは一定に保たれるように構成されるのが好ましい。
【0038】
差込モジュールもしくは挿入モジュールとしての、またはカートリッジ形態でのポンプ装置9の好ましい構成により、液圧ボディ2の内部/表面へのポンプ装置9の簡易な組付が保証される。液圧ボディ2は、それぞれ相応に構成されたポンプ装置9を差込可能である複数の収容凹部2を有するのが好ましい。それにより、ブレーキシステム1の簡易な組付が総体として保証される。ポンプ装置は予備組付モジュールとしてまだ磁気コイルなしに製作されるのが特別に好ましく、それにより、液圧2へのポンプ装置9の簡易な差込と係止が保証される。そして磁気コイル22が引き続き組み付けられる。磁気アーマチュア29そのものが液圧媒体により貫流されることで、電磁アクチュエータの好ましい冷却がもたらされる。
【0039】
ポンプ装置9が個別に電磁式に操作可能であることにより、設計スペースを節減するポンプ装置の構成がもたらされ、ならびに、場合により存在する複数のポンプ装置9の個別的な制御がもたらされる。これに加えて、外方に対する可動の封止部を省略することができ、そのために漏れや空気吸込の危険が生じることがない。これに加えて、別個のコンポーネントとしての磁気コイル22の構成は、簡易化された組付を可能にするモジュールシステムの利点をもたらす。
【符号の説明】
【0040】
1 ブレーキシステム
2 液圧ブロック
3 圧力接続部
5 吸込接続部
9 ポンプ装置
10 ハウジング
10_1,10_2 ハウジング部分
11 圧力ピストン
15 逆止め弁
19 貫通通路
20 圧力室
21 磁気アーマチュア
22 磁気コイル
23 復帰ばね
24 第1の端面
26 かしめ
28 バルブスリーブ
29 シールシート
30 軸方向通路
31 径方向開口部
33 かしめ
34 径方向突起