(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】昇降機の保守運転装置
(51)【国際特許分類】
B66B 31/00 20060101AFI20241213BHJP
B66B 5/00 20060101ALI20241213BHJP
【FI】
B66B31/00 D
B66B5/00 D
(21)【出願番号】P 2020127828
(22)【出願日】2020-07-29
【審査請求日】2023-06-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】水野 新太
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-100281(JP,A)
【文献】特開昭62-036283(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 21/00-31/02
B66B 5/00- 5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保守点検を行う作業者の音声が入力される第1のマイクと、
昇降機の操作装置を操作する操作者の音声が入力される第2のマイクと、
前記第1のマイクに入力された音声が示す運転内容と前記第2のマイクに入力された音声が示す運転内容とが一致するか否かを判定する判定装置と、
前記操作装置の操作内容に応じて昇降機を駆動させる駆動装置と、
を備え、
前記駆動装置は、前記第1のマイクに入力された音声が示す運転内容と前記第2のマイクに入力された音声が示す運転内容とが一致すると前記判定装置が判定した場合に、前記操作装置の操作内容に応じて昇降機を駆動させる昇降機の保守運転装置。
【請求項2】
前記判定装置は、前記第1のマイクに入力された音声が示す運転内容または前記第2のマイクに入力された音声が示す運転内容と前記操作装置の操作内容とが一致するか否かをさらに判定し、
前記駆動装置は、前記第1のマイクに入力された音声が示す運転内容または前記第2のマイクに入力された音声が示す運転内容と前記操作装置の操作内容とがさらに一致すると前記判定装置が判定した場合に、前記操作装置の操作内容に応じて昇降機を駆動させる請求項1に記載の昇降機の保守運転装置。
【請求項3】
前記判定装置は、前記操作装置が操作された後に前記第1のマイクに入力された音声が示す運転内容と前記操作装置の操作内容とが一致するか否かをさらに判定し、
前記駆動装置は、前記操作装置が操作された後に前記第1のマイクに入力された音声が示す運転内容と前記操作装置の操作内容とがさらに一致すると前記判定装置が判定した場合に、前記操作装置の操作内容に応じて昇降機を駆動させる請求項2に記載の昇降機の保守運転装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、昇降機の保守運転装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、かごに設けられ、かごを操作するための第1の操作装置と、ピットに設けられ、制御盤に接続された第2の操作装置と、かごを駆動させる駆動装置と、を備えているエレベーターの保守運転装置が知られている。第1の操作装置は、かごの運転を行う運転者に操作され、第2の操作装置は、保守点検を行う作業者に操作される。第1の操作装置の操作内容と第2の操作装置の操作内容とが互いに対応する場合に、第1の操作装置の操作内容に応じて駆動装置がかごを駆動させる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、保守点検を行う作業者が第2の操作装置を操作しなければならない。これにより、作業者の作業量が増加するという問題点があった。
【0005】
本開示は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、作業者の作業量を削減することができる昇降機の保守運転装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る昇降機の保守運転装置は、保守点検を行う作業者の音声が入力される第1のマイクと、昇降機の操作装置を操作する操作者の音声が入力される第2のマイクと、第1のマイクに入力された音声が示す運転内容と第2のマイクに入力された音声が示す運転内容とが一致するか否かを判定する判定装置と、操作装置の操作内容に応じて昇降機を駆動させる駆動装置と、を備え、駆動装置は、第1のマイクに入力された音声が示す運転内容と第2のマイクに入力された音声が示す運転内容とが一致すると判定装置が判定した場合に、操作装置の操作内容に応じて昇降機を駆動させる。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る昇降機の保守運転装置によれば、作業者の作業量を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に係るエスカレーターの保守運転装置を示すブロック図である。
【
図3】
図1のエスカレーターの保守運転装置を備えたエスカレーターを示す構成図である。
【
図5】
図1のエスカレーターの保守運転装置の動作を示すフローチャートである。
【
図6】実施の形態2に係るエスカレーターの保守運転装置を示すブロック図である。
【
図8】
図6のエスカレーターの保守運転装置を備えたエスカレーターを示す構成図である。
【
図9】
図6のエスカレーターの保守運転装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係るエスカレーターの保守運転装置を示すブロック図である。実施の形態1に係るエスカレーターの保守運転装置は、第1のマイク1と、第2のマイク2と、第1のスピーカ3と、第2のスピーカ4と、操作装置5と、駆動装置6と、制御装置7Aと、を備えている。
【0010】
第1のマイク1には、保守点検を行う作業者の音声が入力される。第1のマイク1に入力された音声は、制御装置7Aに入力される。
【0011】
第2のマイク2には、操作装置5を操作する操作者の音声が入力される。第2のマイク2に入力された音声は、制御装置7Aに入力される。
【0012】
第1のスピーカ3は、保守点検を行う作業者に向かって音声を発する。第1のスピーカ3は、第1のマイク1に隣り合うように配置されている。これにより、保守点検を行う作業者は、第1のマイク1に自身の音声を入力することができるとともに、第1のスピーカ3が発する音声を聞くことができる。第1のスピーカ3は、制御装置7Aによって制御される。
【0013】
第2のスピーカ4は、操作装置5を操作する操作者に向かって音声を発する。第2のスピーカ4は、第2のマイク2に隣り合うように配置されている。これにより、操作装置5を操作する操作者は、第2のマイク2に自身の音声を入力することができるとともに、第2のスピーカ4が発する音声を聞くことができる。第2のスピーカ4は、制御装置7Aによって制御される。
【0014】
操作装置5は、操作者に所持される。操作装置5は、操作者によって操作される。操作装置5が操作されることによって、操作信号が操作装置5から出力される。操作装置5から出力された操作信号は、制御装置7Aに入力される。操作装置5は、保守点検の際に、エスカレーターの踏段を移動させるために操作される装置である。
【0015】
駆動装置6は、エスカレーターの踏段を駆動させる。駆動装置6は、制御装置7Aによって制御される。制御装置7Aが駆動装置6を制御することによって、エスカレーターの踏段の駆動が制御される。
【0016】
ここで、エスカレーターの保守点検の際に作業者および操作者が行う手順について簡単に説明する。まず、エスカレーターの保守点検において、エスカレーターを駆動させる場合には、エスカレーターの運転内容を示す音声を作業者が発する。その後、作業者が発した音声を操作者が聞き取り、聞き取った音声が示す運転内容と同じ運転内容を示す音声を操作者が発する。その後、操作者が聞き取った音声が示す運転内容にしたがって、操作者が操作装置5を操作する。その後、エスカレーターの運転内容を示す音声を作業者が再度発する。操作者が操作装置5を操作する操作内容と作業者が再度発した音声が示す運転内容とが一致する場合に、操作者が操作する操作装置5の操作内容に応じてエスカレーターが駆動するように、制御装置7Aが駆動装置6の駆動を制御する。
【0017】
図2は、
図1の制御装置7Aを示すブロック図である。制御装置7Aは、記憶装置71と、判定装置72と、制御装置本体73と、を有している。
【0018】
記憶装置71には、作業者の音声および操作者の音声が予め記憶されている。記憶装置71への作業者の音声および操作者の音声の記憶は、エスカレーターの保守点検が行われる前に行われる。記憶装置71には、複数の作業者の音声および複数の操作者の音声が記憶されてもよい。この場合には、保守点検が行われる前に、複数の作業者の音声の中から、今回の保守点検における作業者の音声が予め特定され、複数の操作者の音声の中から、今回の保守点検における操作者の音声が予め特定される。
【0019】
判定装置72には、エスカレーターの保守点検が行われる際に、第1のマイク1に入力された作業者の音声が入力される。第1のマイク1に入力される作業者の音声には、保守点検におけるエスカレーターの運転内容が含まれる。また、判定装置72には、エスカレーターの保守点検が行われる際に、第2のマイク2に入力された操作者の音声が入力される。第2のマイク2に入力される操作者の音声には、保守点検におけるエスカレーターの運転内容が含まれる。
【0020】
この例では、エスカレーターの駆動とは、エスカレーターの踏段の駆動である。保守点検におけるエスカレーターの運転内容としては、「アップ運転」、「ダウン運転」、「スローアップ運転」、「スローダウン運転」、「短距離アップ運転」、「短距離ダウン運転」などが挙げられる。「短距離アップ運転」とは、踏段の移動経路における往路側部分に配置された踏段が予め設定された距離だけ上階側階床に向かって移動する運転である。「短距離アップ運転」における踏段の予め設定された移動距離は、この例では、100mm程度となっている。「短距離ダウン運転」とは、踏段の移動経路における往路側部分に配置された踏段が予め設定された距離だけ下階側階床に向かって移動する運転である。「短距離ダウン運転」における踏段の予め設定された移動距離は、この例では、100mm程度となっている。
【0021】
また、保守点検におけるエスカレーターの運転内容としては、「安全スイッチの点検」、「手摺駆動装置の点検」、「ドライブユニットの点検」などが挙げられる。「安全スイッチの点検」とは、並べられた複数の踏段から一部の踏段が取り外されることによって形成された踏段の開口部が、安全スイッチが配置された領域に対応する位置に配置されるエスカレーターの運転である。これにより、作業者は、安全スイッチの保守点検を行うことができる。「手摺駆動装置の点検」とは、踏段の開口部が、手摺駆動装置が配置された領域に対応する位置に配置されるエスカレーターの運転である。これにより、作業者は、手摺駆動装置の保守点検を行うことができる。「ドライブユニットの点検」とは、踏段の開口部が、ドライブユニットが配置された領域に対応する位置に配置されるエスカレーターの運転である。これにより、作業者は、ドライブユニットの保守点検を行うことができる。なお、ドライブユニットが複数ある場合には、保守点検におけるエスカレーターの運転内容として、「第1ドライブユニットの点検」、「第2ドライブユニットの点検」が含まれてもよい。
【0022】
判定装置72は、エスカレーターの保守点検が行われる際に、第1のマイク1に入力された作業者の音声と記憶装置71に記憶されている作業者の音声とが同一人の音声であるか否かを判定する。この例では、第1のマイク1に入力された作業者の音声と記憶装置71に記憶されている作業者の音声とが同一人の音声であることを、作業者の音声が同一人であるとする。
【0023】
また、判定装置72は、エスカレーターの保守点検が行われる際に、第2のマイク2に入力された操作者の音声と記憶装置71に記憶されている操作者の音声とが同一人の音声であるか否かを判定する。この例では、第2のマイク2に入力された操作者の音声と記憶装置71に記憶されている操作者の音声とが同一人の音声であることを、操作者の音声が同一人であるとする。
【0024】
また、作業者の音声が同一人であり、かつ、操作者の音声が同一人であると判定装置72が判定した場合に、判定装置72は、第1のマイク1に入力された音声が示す運転内容と第2のマイク2に入力された音声が示す運転内容とが一致するか否かを判定する。この例では、第1のマイク1に入力された音声が示す運転内容と第2のマイク2に入力された音声が示す運転内容とが一致することを、運転内容が一致するとする。
【0025】
また、運転内容が一致すると判定装置72が判定した場合に、判定装置72は、第1のマイク1に入力された音声が示す運転内容と操作者によって操作された操作装置5の操作内容とが一致するか否かを判定する。この例では、第1のマイク1に入力された音声が示す運転内容と操作装置5の操作内容とが一致することを、運転内容と操作内容とが一致するとする。なお、判定装置72は、第2のマイク2に入力された音声が示す運転内容と操作装置5の操作内容とが一致するか否かを判定してもよい。
【0026】
また、運転内容と操作内容とが一致すると判定装置72が判定した場合に、判定装置72は、操作装置5が操作された後に第1のマイク1に入力された音声が示す運転内容と操作者によって操作された操作装置5の操作内容とが一致するか否かを判定する。この例では、操作装置5が操作された後に第1のマイク1に入力された音声が示す運転内容と操作装置5の操作内容とが一致することを、操作後運転内容と操作内容とが一致するとする。判定装置72のそれぞれの判定結果は、制御装置本体73に入力される。
【0027】
制御装置本体73は、駆動装置6の駆動を制御する。また、制御装置本体73は、第1のスピーカ3が音声を発することを制御し、さらに、第2のスピーカ4が音声を発することを制御する。
【0028】
制御装置本体73には、操作者によって操作された操作装置5の操作内容が入力される。操作後運転内容と操作内容とが一致すると判定装置72が判定した場合に、制御装置本体73は、操作装置5の操作内容に応じて駆動装置6によるエスカレーターの踏段の駆動を制御する。
【0029】
図3は、
図1のエスカレーターの保守運転装置を備えたエスカレーターを示す構成図である。エスカレーターは、エスカレーターの保守運転装置と、トラス8と、トラス8に設けられた複数の踏段9と、を備えている。
図3では、踏段9の開口部91は、トラス8の傾斜部分の長手方向中央部に形成されている。
【0030】
トラス8は、建物の下階側階床10と上階側階床11とに渡って設けられている。下階側階床10に隣り合うトラス8の部分には、下部機械室81が配置されている。上階側階床11に隣り合うトラス8の部分には、上部機械室82が配置されている。上部機械室82には、駆動装置6および制御装置7Aが配置されている。
【0031】
この例では、作業者Aは、トラス8の傾斜部分において、保守点検の作業を行う。トラス8の傾斜部分には、第1のマイク1および第1のスピーカ3が配置されている。なお、作業者Aが下部機械室81において保守点検の作業を行う場合には、第1のマイク1および第1のスピーカ3が下部機械室81に配置されてもよい。また、トラス8の複数の箇所のそれぞれに、第1のマイク1および第1のスピーカ3が配置されてもよい。
【0032】
この例では、操作者Bは、上階側階床11において、操作装置5を操作する。操作装置5は、ケーブルを介して、制御装置7Aに接続されている。操作者Bが操作装置5を操作する場合に、操作者Bは、操作装置5を制御装置7Aに接続する。操作装置5の操作が終了した場合に、操作者Bは、操作装置5を制御装置7Aから切り離す。
【0033】
図4は、
図3の操作装置5を示す拡大図である。操作装置5は、アップボタン51と、ダウンボタン52と、を有している。保守点検の作業において、アップ運転が行われる場合に、操作者Bは、アップボタン51を操作する。一方、保守点検の作業において、ダウン運転が行われる場合に、操作者Bは、ダウンボタン52を操作する。
【0034】
操作装置5には、第2のマイク2および第2のスピーカ4が取り付けられている。第2のマイク2、第2のスピーカ4および操作装置5から、ポータブル操作装置12が構成されている。
図4には、ポータブル操作装置12が示されている。
【0035】
次に、エスカレーターの保守運転装置の動作について説明する。
図5は、
図1のエスカレーターの保守運転装置の動作を示すフローチャートである。作業者Aが第1のマイク1に作業者Aの音声を入力し、操作者Bが第2のマイク2に操作者Bの音声を入力した場合に、ステップS101において、エスカレーターの保守運転装置は、第1判定工程を行う。第1判定工程では、判定装置72は、作業者Aの音声が同一人であるか否かを判定し、かつ、操作者Bの音声が同一人であるか否かを判定する。
【0036】
ステップS101において、作業者Aの音声が同一人ではないと判定装置72が判定した場合、または、操作者Bの音声が同一人ではないと判定装置72が判定した場合に、エスカレーターの保守運転装置は、ステップS102において、警告工程を行う。警告工程では、制御装置本体73の制御によって、第1のマイク1に作業者Aの音声を入力することを指示する音声を第1のスピーカ3が発し、第2のマイク2に操作者Bの音声を入力することを指示する音声を第2のスピーカ4が発する。
【0037】
ステップS101において、作業者Aの音声が同一人であると判定装置72が判定し、かつ、操作者Bの音声が同一人であると判定装置72が判定した場合に、エスカレーターの保守運転装置は、ステップS103において、第2判定工程を行う。第2判定工程では、判定装置72は、運転内容が一致するか否かを判定する。
【0038】
ステップS103において、運転内容が一致しないと判定装置72が判定した場合に、エスカレーターの保守運転装置の処理は、ステップS102に進む。
【0039】
ステップS103において、運転内容が一致すると判定装置72が判定し、さらに、操作者Bが操作装置5を操作した場合に、エスカレーターの保守運転装置は、ステップS104において、第3判定工程を行う。第3判定工程では、判定装置72は、運転内容と操作内容とが一致するか否かを判定する。
【0040】
ステップS104において、運転内容と操作内容とが一致しないと判定装置72が判定した場合には、エスカレーターの保守運転装置の処理は、ステップS102に進む。
【0041】
ステップS104において、運転内容と操作内容とが一致すると判定装置72が判定し、操作装置5が操作された後に作業者Aの音声が第1のマイク1に入力された場合に、エスカレーターの保守運転装置は、ステップS105において、第4判定工程を行う。第4判定工程では、判定装置72は、操作後運転内容と操作内容とが一致するか否かを判定する。
【0042】
ステップS105において、操作後運転内容と操作装置5の操作内容とが一致しないと判定装置72が判定した場合には、エスカレーターの保守運転装置の処理は、ステップS102に進む。
【0043】
ステップS105において、操作後運転内容と操作内容とが一致すると判定装置72が判定した場合には、エスカレーターの保守運転装置は、ステップS106において、運転工程を行う。運転工程では、操作装置5の操作内容に応じて、駆動装置6は、エスカレーターの踏段9を駆動させる。これにより、作業者Aは、保守点検を行うことができる。以上により、エスカレーターの保守運転装置の動作が終了する。
【0044】
以上説明したように、実施の形態1に係るエスカレーターの保守運転装置は、第1のマイク1と、第2のマイク2と、判定装置72と、駆動装置6と、を備えている。第1のマイク1には、保守点検を行う作業者Aの音声が入力される。第2のマイク2には、操作装置5を操作する操作者Bの音声が入力される。判定装置72は、運転内容が一致するか否かを判定する。運転内容が一致すると判定装置72が判定した場合に、駆動装置6は、操作装置5の操作内容に応じてエスカレーターの踏段9を駆動させる。この構成によれば、作業者Aが操作装置5を操作する必要がない。これにより、作業者Aの作業量を削減することができる。
【0045】
また、判定装置72は、運転内容と操作内容とが一致するか否かをさらに判定する。運転内容が一致し、かつ、運転内容と操作内容とが一致すると判定装置72が判定した場合に、駆動装置6は、操作装置5の操作内容に応じてエスカレーターを駆動させる。この構成によれば、操作者Bの操作ミスを抑制することができる。
【0046】
また、判定装置72は、操作後運転内容と操作内容とが一致するか否かをさらに判定する。運転内容が一致し、運転内容と操作内容とが一致し、かつ、操作後運転内容と操作内容とが一致すると判定装置72が判定した場合に、駆動装置6は、操作装置5の操作内容に応じてエスカレーターを駆動させる。この構成によれば、作業者Aの言い間違いによるエスカレーターの駆動を抑制することができる。
【0047】
また、判定装置72は、作業者Aの音声が同一人であるか否かを判定し、操作者Bの音声が同一人であるか否かを判定する。作業者Aの音声が同一人であり、かつ、操作者Bの音声が同一人であると判定装置72が判定した場合に、駆動装置6は、操作装置5の操作内容に応じてエスカレーターを駆動させる。この構成によれば、保守点検の作業現場において、複数の作業者Aおよび複数の操作者Bがいる場合に、作業者Aの音声が同一人であり、操作者Bの音声が同一人である場合にのみ、エスカレーターが駆動する。これにより、他の作業者Aの音声によるエスカレーターの駆動を抑制することができる。
【0048】
なお、実施の形態1では、作業者Aの音声が同一人の音声であるか否かを判定装置72が判定し、操作者Bの音声が同一人であるか否かを判定装置72が判定する構成について説明した。しかしながら、作業者Aの音声が同一人の音声であるか否かの判定および操作者Bの音声が同一人であるか否かの判定を判定装置72が行わない構成であってもよい。
【0049】
実施の形態2.
図6は、実施の形態2に係るエスカレーターの保守運転装置を示すブロック図である。
図7は、
図6の制御装置を示すブロック図である。
図8は、
図6のエスカレーターの保守運転装置を備えたエスカレーターを示す構成図である。実施の形態2に係るエスカレーターの保守運転装置は、駆動装置6と、制御装置7Bと、マイク13と、スピーカ14と、を備えている。駆動装置6は、実施の形態1の駆動装置6と同様である。トラス8の傾斜部分には、マイク13およびスピーカ14が配置されている。なお、作業者Aが下部機械室81において保守点検の作業を行う場合には、マイク13およびスピーカ14が下部機械室81に配置されてもよい。また、トラス8の複数の箇所のそれぞれに、マイク13およびスピーカ14が配置されてもよい。
【0050】
制御装置7Bは、記憶装置71と、判定装置72と、制御装置本体73と、を有している。
【0051】
記憶装置71には、実施の形態1と同様に、作業者Aの音声が予め記憶されている。なお、記憶装置71には、実施の形態1と異なり、操作者Bの音声が記憶されていない。
【0052】
判定装置72は、実施の形態1と同様に、エスカレーターの保守点検が行われる際に、作業者の音声が同一人であるか否かを判定する。なお、判定装置72は、実施の形態1と異なり、操作者Bの音声が同一人であるか否かを判定せず、運転内容が一致するか否かを判定せず、運転内容と操作内容とが一致するか否かを判定せず、操作後運転内容と操作内容とが一致するか否かを判定しない。
【0053】
制御装置本体73には、実施の形態1と異なり、操作装置5の操作内容が入力されない。制御装置本体73には、エスカレーターの保守点検が行われる際に、マイク13に入力された音声が示す運転内容が入力される。作業者の音声が同一人であると判定装置72が判定した場合に、制御装置本体73は、マイク13に入力された音声が示す運転内容に応じて駆動装置6によるエスカレーターの踏段9の駆動を制御する。制御装置本体73は、スピーカ14が音声を発することを制御する。その他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0054】
次に、エスカレーターの保守運転装置の動作について説明する。
図9は、
図6のエスカレーターの保守運転装置の動作を示すフローチャートである。作業者Aがマイク13に作業者Aの音声を入力した場合に、ステップS201において、エスカレーターの保守運転装置は、判定工程を行う。判定工程では、判定装置72は、作業者Aの音声が同一人であるか否かを判定する。
【0055】
ステップS201において、作業者Aの音声が同一人ではないと判定装置72が判定した場合には、エスカレーターの保守運転装置は、ステップS202において、警告工程を行う。警告工程では、制御装置本体73の制御によって、マイク13に作業者Aの音声を入力することを指示する音声をスピーカ14が発する。
【0056】
一方、ステップS201において、作業者Aの音声が同一人であると判定装置72が判定した場合には、エスカレーターの保守運転装置は、ステップS203において、運転工程を行う。運転工程では、駆動装置6は、マイク13に入力された音声が示す運転内容に応じてエスカレーターの踏段9を駆動させる。これにより、作業者Aは、保守点検を行うことができる。以上により、エスカレーターの保守運転装置の動作が終了する。
【0057】
以上説明したように、実施の形態2に係るエスカレーターの保守運転装置は、マイク13と、記憶装置71と、判定装置72と、駆動装置6と、を備えている。マイク13には、保守点検を行う作業者Aの音声が入力される。記憶装置71には、保守点検を行う作業者Aの音声が記憶されている。判定装置72は、マイク13に入力された音声と記憶装置71に記憶された作業者Aの音声とが一致するか否かを判定する。マイク13に入力された音声と記憶装置71に記憶された作業者Aの音声とが一致すると判定装置72が判定した場合に、駆動装置6は、マイク13に入力された音声が示す運転内容に応じてエスカレーターの踏段9を駆動させる。この構成によれば、作業者Aが操作装置5を操作する必要がない。これにより、作業者Aの作業量を削減することができる。また、操作者Bが操作装置5を操作する必要がない。これにより、操作者Bの作業を削減することができる。
【0058】
なお、実施の形態2では、作業者Aの音声が同一人であるか否かの判定のみに基づいて、駆動装置6がエスカレーターの踏段9を駆動させる構成について説明した。しかしながら、作業者Aの音声が同一人であると判定された後に、運転内容を示す音声がスピーカ14から発せられる構成であってもよい。この場合に、運転内容を示す音声がスピーカ14から発生される前にマイク13に入力された音声が示す運転内容と、運転内容を示す音声がスピーカ14から発生された前にマイク13に入力された音声が示す運転内容とが一致するか否かを判定装置72が判定する。判定装置72の判定結果に基づいて、駆動装置6は、エスカレーターの踏段9を駆動させる。
【0059】
また、各実施の形態では、昇降機の保守運転装置としてエスカレーターの保守運転装置を例に説明した。しかしながら、昇降機の保守運転装置としてはエレベーターの保守運転装置であってもよい。この場合に、第1のマイク1またはマイク13は、例えば、ピットに設けられ、第2のマイク2は、かご内またはかご上に設けられる。
【符号の説明】
【0060】
1 第1のマイク、2 第2のマイク、3 第1のスピーカ、4 第2のスピーカ、5 操作装置、6 駆動装置、7A、7B 制御装置、8 トラス、9 踏段、10 下階側階床、11 上階側階床、12 ポータブル操作装置、13 マイク、14 スピーカ、51 アップボタン、52 ダウンボタン、71 記憶装置、72 判定装置、73 制御装置本体、81 下部機械室、82 上部機械室、91 開口部。