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特許7603395インプリント装置、および物品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】インプリント装置、および物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20241213BHJP
   B29C 59/02 20060101ALI20241213BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
H01L21/30 502M
B29C59/02 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020142790
(22)【出願日】2020-08-26
(65)【公開番号】P2022038342
(43)【公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 浩司
【審査官】今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-203935(JP,A)
【文献】特開平08-153663(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027、21/30
B29C 59/02
G03F 7/20-7/24、9/00-9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モールドを用いて基板上のインプリント材を成形する処理を、前記基板における複数のショット領域の各々に対して行うインプリント装置であって、
前記基板に設けられたマークの位置を検出する検出部と、
前記処理において、前記検出部での検出結果に基づいて前記基板と前記モールドとの位置合わせを制御する制御部と、
を備え、
前記基板は、前工程で原版のパターンが個別に転写された複数の転写領域と、前記前工程で前記原版のパターンが転写されなかった非転写領域とを含み、
前記モールドは、前記複数の転写領域のうち少なくとも2つの転写領域を1つのショット領域として当該少なくとも2つの転写領域上のインプリント材を一括して成形可能に構成され、
前記制御部は、
1つのショット領域に2以上の転写領域が含まれるとの第1条件、および、1つのショット領域に前記非転写領域と1以上の転写領域とが含まれるとの第2条件のいずれかが満たされるように、前記基板における前記複数のショット領域のレイアウトを決定し、
互いに大きさが異なる2以上の転写領域を有する特定ショット領域の前記処理において、前記特定ショット領域に含まれる2以上の転写領域のうち最も小さい転写領域以外の転写領域に設けられたマークの前記検出結果を用いて前記位置合わせを制御する、ことを特徴とするインプリント装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記特定ショット領域の前記処理において、前記最も小さい転写領域に設けられたマークの前記検出結果を用いずに前記位置合わせを制御する、ことを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記特定ショット領域の前記処理において、前記最も小さい転写領域に設けられたマークの位置を前記検出部に検出させない、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のインプリント装置。
【請求項4】
前記特定ショット領域に含まれる2以上の転写領域のうち最も小さい転写領域の面積は、前記前工程で前記原版のパターンが転写される最大面積の半分より小さい、ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項5】
前記特定ショット領域は、前記基板の周縁部に配置されて前記モールドのパターンの一部のみが転写されるショット領域である、ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項6】
前記制御部は、決定した前記レイアウトを示す情報に基づいて、各ショット領域の前記処理を制御する、ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記基板における前記複数の転写領域の配置を示す情報に基づいて、前記レイアウトを決定する、ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記複数のショット領域のうち前記第1条件を満たすショット領域について転写領域の数が同じになるように前記レイアウトを決定する、ことを特徴とする請求項7に記載のインプリント装置。
【請求項9】
前記複数の転写領域の各々は、少なくとも1つのチップ領域を含む、ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項10】
前記検出部は、前記モールドに設けられたマークと前記基板に設けられたマークとの相対位置を検出する、ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載のインプリント装置を用いて基板上にパターンを形成する形成工程と、
前記形成工程でパターンが形成された前記基板を加工する加工工程と、を含み、
前記加工工程で加工された前記基板から物品を製造することを特徴とする物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリント装置、および物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インプリント技術は、ナノスケールの微細パターンの転写を可能にする技術であり、半導体デバイスや磁気記憶媒体などの量産用ナノリソグラフィ技術の1つとして提案されている。インプリント技術を用いたインプリント装置は、パターンが形成されたモールドと基板上のインプリント材とを接触させた状態で当該インプリント材を硬化させ、硬化したインプリント材からモールドを引き離すことで基板上にパターンを形成することができる。
【0003】
近年、インプリント装置では、生産性(スループット)を向上させるため、前工程で原版のパターンが個別に転写された2以上の転写領域に対して一括にインプリントする所謂マルチエリアインプリント技術の開発が進められている。特許文献1には、基板の中央部においてマルチエリアインプリントを実行する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-199760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インプリント装置では、半導体チップの収率向上や後工程のエッチング処理による基板の保護などの観点から、基板の中央部だけでなく、基板の周縁部においてもインプリント材を精度よく成形することが求められている。
【0006】
そこで、本発明は、基板上のインプリント材を精度よく成形するために有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としてのインプリント装置は、モールドを用いて基板上のインプリント材を成形する処理を、前記基板における複数のショット領域の各々に対して行うインプリント装置であって、前記基板に設けられたマークの位置を検出する検出部と、前記処理において、前記検出部での検出結果に基づいて前記基板と前記モールドとの位置合わせを制御する制御部と、を備え、前記基板は、前工程で原版のパターンが個別に転写された複数の転写領域と、前記前工程で前記原版のパターンが転写されなかった非転写領域とを含み前記モールドは、前記複数の転写領域のうち少なくとも2つの転写領域を1つのショット領域として当該少なくとも2つの転写領域上のインプリント材を一括して成形可能に構成され、前記制御部は、1つのショット領域に2以上の転写領域が含まれるとの第1条件、および、1つのショット領域に前記非転写領域と1以上の転写領域とが含まれるとの第2条件のいずれかが満たされるように、前記基板における前記複数のショット領域のレイアウトを決定し、互いに大きさが異なる2以上の転写領域を有する特定ショット領域の前記処理において、前記特定ショット領域に含まれる2以上の転写領域のうち最も小さい転写領域以外の転写領域に設けられたマークの前記検出結果を用いて前記位置合わせを制御する、ことを特徴とする。
【0008】
本発明の更なる目的又はその他の側面は、以下、添付図面を参照して説明される好ましい実施形態によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、例えば、基板上のインプリント材を精度よく成形するために有利な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】インプリント装置の構成例を示す概略図
図2】モールド側マークおよび基板側マークを示す図
図3】インプリント処理を説明するための図
図4】基板上における複数の転写領域の配置の一例を示す図
図5】複数のショット領域のレイアウトの従来例を示す図
図6】モールドと基板上の樹脂との接触工程を説明するための図
図7】第1実施形態における複数のショット領域のレイアウト例を示す図
図8】第2実施形態における複数のショット領域のレイアウト例を示す図
図9】第3実施形態における複数のショット領域のレイアウト例を示す図
図10】物品の製造方法を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0012】
インプリント装置は、基板上に供給されたインプリント材と型とを接触させ、インプリント材に硬化用のエネルギーを与えることにより、型の凹凸パターンが転写された硬化物のパターンを形成する装置である。例えば、インプリント装置は、基板上に液状のインプリント材を供給し、凹凸のパターンが形成されたモールド(型)を基板上のインプリント材に接触させた状態で当該インプリント材を硬化させる。そして、モールドと基板との間隔を広げて、硬化したインプリント材からモールドを剥離(離型)することで、基板上のインプリント材にモールドのパターンを転写することができる。このような一連の処理は「インプリント処理」と呼ばれ、基板における複数のショット領域の各々について行われる。
【0013】
インプリント材には、硬化用のエネルギーが与えられることにより硬化する硬化性組成物(未硬化状態の樹脂と呼ぶこともある)が用いられる。硬化用のエネルギーとしては、電磁波、熱等が用いられる。電磁波としては、例えば、その波長が10nm以上1mm以下の範囲から選択される、赤外線、可視光線、紫外線などの光である。硬化性組成物は、光の照射により、あるいは、加熱により硬化する組成物である。このうち、光により硬化する光硬化性組成物は、重合性化合物と光重合開始材とを少なくとも含有し、必要に応じて非重合性化合物または溶剤を含有してもよい。非重合性化合物は、増感剤、水素供与体、内添型離型剤、界面活性剤、酸化防止剤、ポリマ成分などの群から選択される少なくとも一種である。インプリント材は、スピンコータやスリットコータにより基板上に膜状に付与される。あるいは、液体噴射ヘッドにより、液滴状、あるいは複数の液滴が繋がってできた島状または膜状となって基板上に付与されてもよい。インプリント材の粘度(25℃における粘度)は、例えば、1mPa・s以上100mPa・s以下である。
【0014】
<第1実施形態>
本発明に係る第1実施形態について説明する。図1は、本実施形態のインプリント装置1の構成例を示す概略図である。インプリント装置1は、基板上のインプリント材をモールド(型)で成形して硬化させ、硬化したインプリント材からモールドを引き離す(離型する)ことで基板上にパターンを形成するインプリント処理を行う。本実施形態では、インプリント材として、樹脂を使用し、樹脂硬化法として、紫外線の照射によって樹脂を硬化させる光硬化法を採用する。
【0015】
インプリント装置1は、モールド11を保持するモールド保持部12と、基板13を保持する基板保持部14と、検出部15と、硬化部25と、観察部23と、制御部CNTとを有する。また、インプリント装置1は、基板上に樹脂を供給するためのディスペンサを含む樹脂供給部、モールド11の側面に力を加えてモールド11のパターン領域11aを変形させるための形状変形機構なども有しうる。さらに、インプリント装置1は、モールド保持部12を保持するためのブリッジ定盤、基板保持部14を保持するためのベース定盤なども有しうる。
【0016】
モールド11は、基板13(の上の樹脂)に転写すべきパターン(凹凸パターン)が形成されたパターン領域11a(パターン面)を有する。モールド11は、基板上の樹脂を硬化させるための紫外線を透過する材料、例えば、石英などで構成されうる。また、モールド11のパターン領域11aには、モールド11と基板13との位置合わせの制御で用いられるアライメントマーク(モールド側マーク18)が形成されている。
【0017】
モールド保持部12は、モールド11を保持する保持機構である。モールド保持部12は、例えば、モールド11を真空吸着又は静電吸着するモールドチャックと、モールドチャックを載置するモールドステージと、モールドステージを駆動する(移動させる)駆動系とを含む。かかる駆動系は、モールドステージ(即ち、モールド11)を少なくともZ軸方向(基板上の樹脂にモールド11を押印する際の押印方向)に駆動する。また、かかる駆動系は、Z軸方向だけではなく、X軸方向、Y軸方向およびθ方向(Z軸周りの回転方向)にモールドステージを駆動する機能を備えていてもよい。
【0018】
基板13は、モールド11のパターンが転写される基板(即ち、樹脂で構成されたパターンが上に形成される基板)である。基板13の材料としては、例えば、ガラス、セラミックス、金属、半導体、樹脂等が用いられうる。必要に応じて、基板13の表面に、基板13とは別の材料からなる部材が設けられてもよい。基板13は、例えば、シリコンウェハ、化合物半導体ウエハ、石英ガラスである。また、基板13は、例えば、SOI(Silicon on Insulator)基板などであってもよい。基板13には、樹脂供給部から樹脂が供給(塗布)される。また、基板13には、モールド11と基板13との位置合わせの制御で用いられるアライメントマーク(基板側マーク19)が形成されている。
【0019】
基板保持部14は、基板13を保持する保持機構である。基板保持部14は、例えば、基板13を真空吸着又は静電吸着する基板チャックと、基板チャックを載置する基板ステージと、基板ステージを駆動する(移動させる)駆動系とを含む。かかる駆動系は、基板ステージ(即ち、基板13)を少なくともX軸方向及びY軸方向(モールド11の押印方向に直交する方向)に駆動する。また、かかる駆動系は、X軸方向およびY軸方向だけではなく、Z軸方向およびθ方向(Z軸周りの回転方向)に基板ステージを駆動する機能を備えていてもよい。
【0020】
検出部15は、基板13に設けられたアライメントマーク(基板側マーク19)の位置を検出しうる。本実施形態の場合、検出部15は、モールド11(モールド側マーク18)を介して基板側マーク19を光学的に観察するスコープを含み、モールド側マーク18とそれに対応する基板側マーク19との相対位置を検出する。例えば、検出部15は、スコープにより検出されたモールド側マーク18とそれに対応する基板側マーク19との相対位置に基づいて、モールド11(パターン領域11a)と基板(ショット領域)との相対位置を計測することができる。ここで、検出部15は、モールド側マーク18と基板側マーク19との相対的な位置関係を検出することができればよい。したがって、検出部15は、2つのマークを同時に撮像するための光学系を備えたスコープを含んでいてもよいし、2つのマークの干渉信号やモアレなどの相対位置関係を反映した信号を検知するスコープを含んでいてもよい。また、検出部15は、モールド側マーク18と基板側マーク19とを同時に検出できなくてもよい。例えば、検出部15は、内部に配置された基準位置に対するモールド側マーク18及び基板側マーク19のそれぞれの位置を求めることで、モールド側マーク18と基板側マーク19との相対的な位置関係を検出してもよい。
【0021】
硬化部25は、樹脂を硬化させるための光22(例えば紫外線)をモールド11を介して基板上の樹脂に照射し、当該樹脂を硬化させる。硬化部25は、例えば、樹脂を硬化させるための光22を射出する光源と、光源から射出された光22をインプリント処理において最適な光に調整するための光学系とを含みうる。本実施形態のインプリント装置1は、硬化部25から射出された光22がビームスプリッタ24で反射されて基板13(具体的には基板上の樹脂)に照射されるように構成されうる。
【0022】
観察部23は、例えばモールド11のパターン領域11aの全体が収まる視野を有するカメラを含み、紫外線の照射による基板上の樹脂の硬化状態を観察(確認)する機能を有する。また、観察部23は、基板上の樹脂の硬化状態だけではなく、基板上の樹脂に対するモールド11の押印状態、モールド11のパターンへの樹脂の充填状態、基板上の硬化した樹脂からのモールド11の離型状態も観察することが可能である。本実施形態のインプリント装置1は、観察部23がビームスプリッタ24を介して基板上の樹脂の硬化状態を観察するように構成されうる。
【0023】
制御部CNTは、例えばCPUやメモリなどを含み、インプリント装置1の各部を制御することにより、インプリント処理及びそれに関連する処理を制御する。例えば、制御部CNTは、検出部15の検出結果(即ち、モールド側マーク18と基板側マーク19との相対位置の検出結果)に基づいて、モールド11と基板13との位置合わせを制御しうる。また、制御部CNTは、インプリント処理の当該位置合わせにおいて、形状補正部によりモールド11のパターン領域11aを目標形状に変形する処理(モールド11の形状補正)を制御してもよい。
【0024】
次に、図2(a)~(b)を参照しながら、モールド11と基板13との位置合わせで用いられるアライメントマークとしてのモールド側マーク18および基板側マーク19について説明する。図2(a)~(b)に示す例では、基板13の1つのショット領域に6つのチップ領域が配置されているものとする。
【0025】
図2(a)は、モールド11のパターン領域11a、具体的には、パターン領域11aの四隅に設けられたモールド側マーク18a~18hの配置例を示している。図2(a)を参照するに、横方向に長手方向を有するモールド側マーク18a、18b、18eおよび18fは、X軸方向に計測方向を有するマークである。また、縦方向に長手方向を有するモールド側マーク18c、18d、18gおよび18hは、Y軸方向に計測方向を有するマークである。また、図2(a)において、点線で囲まれた領域は、基板上の6つのチップ領域のそれぞれに転写すべきパターンを表している。また、本実施形態のモールド11では、後述するように、基板13における2以上の転写領域上の樹脂を一括して成形するように(即ち、当該2以上の転写領域上の樹脂に一括してパターンを形成するように)、パターン領域11aが形成されている。
【0026】
図2(b)は、基板13の1つのショット領域13aの周辺、具体的には、ショット領域13aの四隅に設けられた基板側マーク19a~19hを示している。図2(b)を参照するに、横方向に長手方向を有する基板側マーク19a、19b、19eおよび19fは、X軸方向に計測方向を有するマークである。また、縦方向に長手方向を有する基板側マーク19c、19d、19gおよび19hは、Y軸方向に計測方向を有するマークである。また、図2(b)において、ショット領域13aの内側の実線で囲まれた領域は、チップ領域13bを示している。なお、各チップ領域13bは、例えば、集積回路が形成された1つの半導体チップが得られる領域である。
【0027】
インプリント処理において、モールド11と基板上の樹脂とを接触させる際には、モールド11に設けられたモールド側マーク18a~18hのそれぞれと基板13に設けられた基板側マーク19b~19hのそれぞれとが近接することになる。したがって、検出部15によってモールド側マーク18と基板側マーク19とを検出することで、モールド11のパターン領域11aの位置および形状と基板13のショット領域13aの位置および形状とを比較することができる。モールド11のパターン領域11aの位置および形状と基板13の上のショット領域13aの位置および形状との間に差(ずれ)が生じると、重ね合わせ精度が低下し、パターンの転写不良(製品不良)を招いてしまう。
【0028】
次に、図3(a)~(c)を参照しながら、モールド11のパターンを基板13(具体的には基板上の樹脂)に転写する、即ち、基板上の樹脂を成形するインプリント処理について説明する。
【0029】
図3(a)に示すように、モールド11の押印を開始するまでに、基板上の対象ショット領域(これからインプリント処理を行うショット領域)に樹脂20を供給する。インプリント装置で一般的に使用されている樹脂は、揮発性が高いため、インプリント処理を行う直前に基板上に供給されるとよい。但し、揮発性が低い樹脂であれば、スピンコードなどで基板上に樹脂を予め供給しておいてもよい。また、基板上に樹脂20を供給した後、モールド11の下方に基板13を移動させる。そして、モールド側マーク18と基板側マーク19との相対位置を検出部15に検出させ、その検出結果に基づいて、モールド11と基板13との位置合わせおよびモールド11の形状補正を制御する。
【0030】
次いで、図3(b)に示すように、モールド11と基板上の樹脂20とを接触させ、その状態で所定の時間を経過させてモールド11のパターンに樹脂20を充填させる。この間においても、モールド側マーク18と基板側マーク19とを検出部15に検出させ、その検出結果に基づいてモールド11と基板13との位置合わせを制御するとよい。ここで、モールド11と樹脂20との屈折率差が小さい場合、モールド側マーク18が凹凸構造だけで構成されていると、モールド側マーク18を検出部15で検出することが困難となる場合がある。したがって、モールド11と異なる屈折率や透過率を有する物質をモールド側マーク18に塗布したり、イオン照射などによってモールド側マーク18の屈折率を変えたりするとよい。これにより、モールド11と基板上の樹脂20とを接触させた状態においても、モールド側マーク18を検出部15で検出することが可能となる。
【0031】
モールド11のパターンに樹脂20が充填されたら(例えば所定の時間が経過したら)、硬化部25により基板上の樹脂20に光22を照射して当該樹脂20を硬化させる。そして、図3(c)に示すように、基板上の硬化した樹脂20からモールド11を引き離す(離型する)。これにより、樹脂20で構成されたパターン21を基板上に形成することができる(即ち、基板上にモールド11のパターンを転写することができる)。
【0032】
[マルチエリアインプリント]
インプリント装置1では、近年、マルチエリアインプリント技術の開発が進められている。マルチエリアインプリント技術とは、前工程で原版のパターンが個別に転写された2以上の転写領域に対して一括にインプリントする技術であり、この技術によりインプリント装置1の生産性(スループット)を向上させることができる。ここで、マルチエリアインプリント技術で用いられるモールド11は、2以上の転写領域を1つのショット領域(インプリント領域)として、1回のインプリント処理によって当該2以上の転写領域上の樹脂20を一括して成形可能に構成されている。例えば、モールド11のパターン領域11aは、1回のインプリント処理によって当該2以上の転写領域上の樹脂20に一括して転写するためのパターンを有する。また、各転写領域は、原版に形成されたパターンが個別に転写された基板上の領域のことである。各転写領域は、前工程での1ショット(例えば1回の転写処理)で原版のパターンが転写される領域と言うこともできる。例えば、前工程で露光装置が用いられた場合、転写領域は、原版としてのマスクのパターンに対応する1つのパターンが転写された基板上の領域である。前工程でインプリント装置が用いられた場合、転写領域は、原版としてのモールドのパターンに対応する1つのパターンが転写された基板上の領域である。
【0033】
図4には、基板上における複数の転写領域30のレイアウト(配置)の一例が示されている。基板13における複数の転写領域30は、基板13の中央部に配置された転写領域31(完全転写領域)と、基板13のエッジを含むように基板13の周縁部に配置されて一部が欠損した転写領域32(欠け転写領域)とを含みうる。そして、一部が欠損した転写領域32にも、少なくとも1つのチップ領域が含まれる場合がある。そのため、インプリント装置1では、半導体チップの収率向上の観点から、基板13の中央部に配置された転写領域31だけでなく、基板13の周縁部に配置された転写領域32においても、基板上の樹脂20を精度よく成形することが求められている。
【0034】
図5には、基板上における複数のショット領域40(インプリント領域)のレイアウトの従来例が示されている。図5(a)~(c)は、代表的なショット領域40(41~43)を拡大した図である。ショット領域40とは、1回のインプリント処理によってモールド11のパターンを転写可能な領域のことであり、図5では黒太枠で表されている。ここでは、モールド11のパターン領域11aが、2つの転写領域30上の樹脂20に一括してパターンを転写可能に構成されている例を示している。図5に示す従来例では、ショット領域42(図5(b))のように、基板13の周縁部に配置された1つの転写領域32で1つのショット領域40を構成している部分が生じている。このような部分では、インプリント処理の接触工程(モールド11と基板上の樹脂とを接触させる工程)において、モールド11と基板13との相対姿勢を制御することが困難になりうる。
【0035】
例えば、図6(a)は、基板13の中央部に設定されたショット領域41上の樹脂20にモールド11(パターン領域11a)を接触させる例を示している。この場合、モールド11のパターン領域11aと基板上の樹脂20との接触面積が比較的広いため、接触工程においてモールド11と基板13との相対姿勢を精度よく制御することが可能である。一方、図6(b)は、基板13の周縁部に設定されたショット領域42上の樹脂20にモールド11(パターン領域11a)を接触させる例を示している。この場合、モールド11のパターン領域11aの端部において、比較的狭い面積でショット領域42上の樹脂20に接触しうる。そのため、図6(b)に矢印Aで示すようにモールド11を回転させるモーメントが発生し、接触工程においてモールド11と基板13との相対姿勢を精度よく制御することが困難になりうる。つまり、基板上の樹脂20の膜厚(例えば残膜厚(RLT;Residual Layer Thickness))を精度よく制御することが困難になりうる。また、この場合において、モールド11と基板13との相対姿勢を精度よく制御するための機構を新たに追加することは、装置構成の複雑化や装置コストの点で不利になりうる。
【0036】
そこで、本実施形態では、図7に示すように、各ショット領域40に2以上の転写領域31が含まれるように、基板13における複数のショット領域40のレイアウトが設定されうる。即ち、本実施形態のインプリント装置1は、2以上の転写領域30を1つのショット領域40として一括してインプリント処理を行う。これにより、基板13の周縁部に配置された転写領域32に対してインプリント処理を行う場合であっても、図5に示す従来例と比較して、接触工程におけるモールド11と基板13との相対姿勢の制御を容易にすることができる。そのため、当該転写領域32上の樹脂20を精度よく成形することができる。なお、図7は、本実施形態における複数のショット領域40(インプリント領域)のレイアウトの一例を示しており、図7(a)~(c)は、代表的なショット領域40(44~46)を拡大した図である。
【0037】
基板13における複数のショット領域40のレイアウトの設定(決定)は、インプリント装置1の制御部CNTで行われうる。この場合、制御部CNTは、前処理に用いられた装置(露光装置等)から、基板13における複数の転写領域30の配置を示す情報を取得し、当該情報に基づいて、各ショット領域40に2以上の転写領域31が含まれるように当該レイアウトを設定しうる。このとき、制御部CNTは、各ショット領域40に含まれる転写領域30の数が複数のショット領域40で同じになるように当該レイアウトを設定するとよい。なお、当該レイアウトの設定は、インプリント装置1の外部コンピュータで行われてもよい。
【0038】
ここで、基板13には、図4に示すように、前工程で原版のパターンが個別に転写された複数の転写領域30に加えて、前工程で原版のパターンが転写されなかった非転写領域Rを含むことがある。非転写領域Rは、例えば、1つのチップ領域をも含まない大きさを有する領域、即ち、1つのチップ領域より小さい面積を有する領域であり、インプリント処理によるモールド11のパターンの転写は必要ない。しかしながら、非転写領域R上の樹脂20の成形を行わないと、後工程のエッチング処理等により、当該非転写領域Rにおいて基板13がエッチングされることとなる。そのため、当該エッチング処理等における基板13の保護の観点から、当該非転写領域Rにおいてもモールド11による樹脂20の成形を行うことが好ましい。
【0039】
しかしながら、図5に示す従来例のショット領域43(図5(c))のように、非転写領域Rを単独で1つのショット領域40として設定すると、接触工程においてモールド11と基板13との相対姿勢を精度よく制御することが困難になりうる。つまり、非転写領域Rにおいて、基板上の樹脂20の膜厚(例えば残膜厚(RLT;Residual Layer Thickness))を精度よく制御することが困難になりうる。そのため、本実施形態では、図7に示すショット領域46(図7(c))のように、非転写領域Rが少なくとも1つの転写領域30とともに1つのショット領域40を構成するように、複数のショット領域40のレイアウトが設定される。即ち、本実施形態のインプリント装置1は、非転写領域Rと少なくとも1つの転写領域30とを1つのショット領域40として一括してインプリント処理を行う。これにより、非転写領域R上の樹脂20の膜厚(例えば残膜厚)が目標範囲に収まるように、当該非転写領域R上の樹脂20を精度よく成形することができる。
【0040】
[ショット領域の位置合わせ]
基板13の周縁部は、基板13の連続性が途切れるため、前処理での基板13の加工により特異な挙動を示すことがある。例えば、基板13の周縁部では、エッチングレートや成膜レートなどが基板13の中央部と異なり、エッチングや成膜に不均一性や加工量のムラなどが生じることがある。つまり、基板13の周縁部の転写領域32に設けられた基板側マーク19では、歪みや膜厚ムラ等に起因して検出誤差が生じることがあり信頼性が低い。このような基板側マーク19を用いてモールド11と基板13との位置合わせを行うと、基板上の樹脂20を精度よく成形すること(即ち、基板上の樹脂20にモールド11のパターンを精度よく転写すること)が困難になりうる。
【0041】
そこで、本実施形態のインプリント装置1は、特定ショット領域の位置合わせを、当該特定ショット領域に含まれる2以上の転写領域30のうち最も小さい転写領域以外の転写領域に設けられた基板側マーク19の検出結果を用いて制御する。特定ショット領域とは、基板13における複数のショット領域40のうち、互い大きさが異なる2以上の転写領域30を有するショット領域のことであり、より具体的には、基板13の周縁部に配置された転写領域32を含むショット領域のことでありうる。特定ショット領域は、基板13の周縁部に配置されてモールド11のパターンの一部のみが転写されるショット領域と言うこともできる。図7に示す例では、ショット領域45(図7(b))が特定ショット領域として例示されている。
【0042】
例えば、制御部CNTは、基板13における複数の転写領域30の配置を示す情報に基づいて、各ショット領域40に含まれる最も小さい転写領域30の面積が、前工程で原版のパターンが転写される最大面積の所定比率より小さいか否かを判断する。これにより、制御部CNTは、当該最大面積の所定比率より小さい面積の転写領域30を含むショット領域40を、特定ショット領域として決定(判断)することができる。所定比率は、任意に設定されうるが、例えば、当該最大面積の半分(1/2)、1/3、1/4、1/5などに設定されうる。当該最大面積は、例えば基板の中央部に配置された転写領域31の面積であり、以下では、転写最大面積と呼ぶことがある。
【0043】
次に、各ショット領域40に設けられた複数の基板側マーク19の中から、位置合わせで用いる所定数の基板側マーク19を選択する方法について、図7を参照しながら説明する。本説明では、各ショット領域40に設けられた複数の基板側マーク19の中から、所定数として4個の基板側マーク19を選択する例について説明するが、選択する基板側マーク19の数は4個に限られるものではなく、任意に設定可能である。例えば、検出部15において、1個の基板側マーク19を検出するように構成されたスコープが複数設けられている場合、当該スコープの数に応じた数の基板側マーク19が選択されうる。また、本説明では、前工程で原版のパターンの全体が転写された転写領域30(即ち、転写領域31)に3×4=12個の基板側マーク19が形成されるものとする。図7に示す例では、各基板側マーク19が丸印で示されており、選択された基板側マーク19が黒塗りの丸印で、選択されなかった基板側マーク19が白塗りの丸印でそれぞれ表されている。
【0044】
制御部CNTは、モールド11と基板13との位置合わせにおいて検出部15に検出させる所定数(例えば4個)の基板側マーク19を、ショット領域40に設けられた複数の基板側マーク19の中から選択する。この際、制御部CNTは、当該ショット領域40に設けられた複数の基板側マーク19のうち、できるだけ離間して形成されている所定数の基板側マーク19を選択するとよい。このように所定数の基板側マーク19を選択することで、検出部15の検出結果に基づいて、ショット領域42の回転成分や倍率成分等を精度よく求めることができる。図7に示されるショット領域44(図7(a))については、制御部CNTは、上記原則に基づいて、当該ショット領域44の四隅に形成された4個の基板側マーク19を、位置合わせに用いる基板側マーク19として選択しうる。なお、ショット領域44は、基板13の中央部に配置されたショット領域であり、それに含まれる2以上の転写領域30は同じ大きさを有する。つまり、ショット領域44は、特定ショット領域として判断(決定)されなかったショット領域である。
【0045】
一方、図7に示されるショット領域45は、特定ショット領域として判断されたショット領域である。制御部CNTは、ショット領域45については、それに含まれる2以上の転写領域30のうち最も小さい転写領域以外の転写領域に設けられた基板側マーク19の中から、位置合わせに用いる所定数の基板側マーク19を選択する。例えば、図7(b)に示すように、ショット領域45に、第1転写領域30aと、第1転写領域30aより小さい第2転写領域30bとが含まれている。この場合、第2転写領域30bが最も小さい転写領域30となるため、制御部CNTは、位置合わせに用いる所定数の基板側マーク19を、第1転写領域30aから選択し、第2転写領域30bからは選択しない。つまり、制御部CNTは、特定ショット領域としてのショット領域45についての位置合わせを、第2転写領域30bに設けられた基板側マーク19の検出結果を用いずに、第1転写領域30aに設けられた基板側マーク19の検出結果に基づいて制御する。この場合において、制御部CNTは、第2転写領域30bに設けられた基板側マーク19の位置を検出部15に検出させなくてもよい。これにより、位置合わせにおいて検出誤差が生じる可能性の高い基板側マーク19を用いることを回避し、基板上の樹脂20を精度よく成形することができる。即ち、基板13の周縁部に配置された転写領域32に対しても精度よく樹脂の成形を行うことができるため、当該転写領域32のチップ領域にもパターンを精度よく形成し、半導体チップ等の収率を向上させることができる。
【0046】
また、非転写領域Rに基板側マーク19が形成されていない場合がある。そのため、制御部CNTは、図7(c)に示すように、非転写領域Rを含むショット領域46については、当該ショット領域46に含まれる転写領域30cから、位置合わせに用いる所定数の基板側マーク19を選択しうる。そして、選択した基板側マーク19の検出結果に基づいて、ショット領域46の位置合わせを制御しうる。非転写領域Rを含むショット領域46に2以上の転写領域30が含まれる場合には、上記のように、当該2以上の転写領域30のうち最も小さい転写領域以外の転写領域に設けられた基板側マーク19の検出結果に基づいて位置合わせを制御してもよい。
【0047】
ここで、本実施形態のインプリント処理におけるモールド11と基板13との位置合わせでは、基板側マーク19が選択されなかった転写領域30や非転写領域Rにおいて重ね合わせ誤差が生じる場合がある。例えば、基板側マーク19が選択された転写領域30については、シフト成分や回転成分、倍率成分、ショット形状差などを精度よく求めることができる。その一方で、基板側マーク19が選択されなかった転写領域30では、それらの成分を精度よく求めることが困難になることがあるため、モールド11のパターン領域11aと当該転写領域30とに重ね合わせ誤差が生じうる。この重ね合わせ誤差は、後続のインプリント処理でも再現することが考えられる。そのため、前のインプリント処理の結果から当該重ね合わせ誤差を算出し、当該重ね合わせ誤差を補正するためのオフセット値(補正値)を求めておくとよい。具体的には、基板13の下地パターンとインプリント処理により樹脂20に形成されたパターン(もしくは、パターンが形成された樹脂20をマスクとして基板13をエッチングした後のパターン)とのずれ量および形状差を計測する。これにより、その計測結果に基づいて、当該ずれ量および形状差を補正するためのオフセット値を求めることができる。このようなオフセット値は、ショット領域40(例えば特定ショット領域)ごとに求めておくとよい。また、オフセット値は、インプリント処理を行うごとに更新されてもよい。
【0048】
基板間やロット間において基板厚などのパラメータに差異(誤差)がある場合は、インプリント処理前に当該パラメータを計測し、そのパラメータの差異を補正するためのオフセット値(補正値)をインプリント装置1(制御部CNT)に記憶させてもよい。制御部CNTは、当該オフセット値に基づいてインプリント処理(例えば、モールド11と基板13との位置合わせ)を制御することで、当該パラメータの差異を低減する(改善させる)ことができる。このようなパラメータの計測は、インプリント装置1の外部装置で行われてもよいし、インプリント装置1の内部に構成された計測ユニットを用いて行われてもよい。また、パラメータの差異を、各ショット領域40において選択された基板側マーク19の位置の検出結果から算出(予測)してもよい。さらに、例えば、基板上におけるパラメータの変化は、通常、前工程での化学機械研磨(CMP)やスピンコートの影響により、同心円状に変化することが多いため、それらの傾向とこれまでの履歴情報から予測することもできる。
【0049】
また、各ショット領域40に2以上の転写領域30が含まれるように複数のショット領域40のレイアウトを設定する場合、各ショット領域40に含まれる転写領域30の数(即ち、モールド11のパターン領域11aの寸法)を調整してもよい。例えば、基板13における1つのショット領域40の大きさや、複数のショット領域40のレイアウトを調整することにより、上記のレイアウトの設定を実現することができる。後述する第2~第3実施形態では、1つのショット領域における転写領域の数を調整した例について説明する。
【0050】
さらに、基板13における複数のショット領域40において、前工程での原版のパターンの転写が同様の条件で行われることが望ましい。例えば、前工程での原版のパターンの転写に走査露光装置(スキャナ)が用いられる場合、転写領域ごとにアップスキャン(第1走査方向への走査露光)とダウンスキャン(第1走査方向とは反対の第2走査方向への走査露光)とが繰り返されうる。そのため、基板13における複数のショット領域間の誤差を低減するためには、複数のショット領域40において走査露光時の走査方向を同様にすることが望まれる。一例として、各ショット領域40に2以上の転写領域30が含まれる場合、各ショット領域40内での位置が対応する(同じである)転写領域30では走査方向が同じになるように走査露光を制御するとよい。図7に示すように、各ショット領域40に2つの転写領域30が含まれる場合、当該2つの転写領域30のうち、紙面左側の転写領域31では第1走査方向(例えば+Y方向)への走査露光を行う。一方、紙面右側の転写領域31では第2走査方向(例えば-Y方向)への走査露光を行う。これにより、基板13における複数のショット領域間の誤差を低減することができるとともに、走査方向が同じである転写領域30に対して同じオフセット値を適用することができる。
【0051】
上述したように、本実施形態では、各ショット領域40に2以上の転写領域30が含まれるように、基板13における複数のショット領域40のレイアウトが設定される。そして、インプリント装置1は、当該レイアウトに従って各ショット領域40のインプリント処理を制御する。また、インプリント装置1は、特定ショット領域の位置合わせを、当該特定ショット領域に含まれる2以上の転写領域30のうち最も小さい転写領域以外の転写領域に設けられた基板側マーク19の検出結果を用いて制御する。これにより、位置合わせにおいて検出誤差が生じる可能性の高い基板側マーク19を用いることを回避し、基板上の樹脂20を精度よく成形することができる。
【0052】
<第2実施形態>
本発明に係る第2実施形態について説明する。本実施形態では、モールド11のパターン領域11aが、3つの転写領域30上の樹脂20を一括して成形可能に(例えば、一括してパターンを転写可能に)構成されている例について説明する。なお、本実施形態は、第1実施形態を基本的に引き継ぐものであり、以下で特に言及されない限り、インプリント装置1の構成および処理は第1実施形態と同様である。
【0053】
図8は、本実施形態における複数のショット領域50のレイアウトの一例を示す図であり、図8(a)~(b)は、代表的なショット領域50(51~52)を拡大した図である。図8に示す例では、3つの転写領域30を含むショット領域50と、2つの転写領域30を含むショット領域50とが設定されうる。例えば、3つの転写領域を含むショット領域51では、当該3つの転写領域30d~31fのうち最も小さい転写領域30f以外の転写領域30d,30eから、位置合わせに用いる基板側マーク19が選択されうる。転写領域30eは、転写領域30fより基板側マーク19の数が多いため、基板側マーク19の選択肢を増やすことができる。例えば、転写領域30eに設けられた基板側マーク19のうち、一部の基板側マーク19に不具合が生じていたとしても、他の基板側マーク19を選択することができる。なお、図8では、図7と同様に、選択された基板側マーク19を黒塗りの丸印で、選択されなかった基板側マーク19を白塗りの丸印で表している。一方、2つの転写領域31g~31hを含むショット領域52では、当該2つの転写領域31g~31hのうち最も小さい転写領域31h以外の転写領域31gから、位置合わせに用いる基板側マーク19が選択されうる。
【0054】
<第3実施形態>
本発明に係る第3実施形態について説明する。本実施形態では、モールド11のパターン領域11aが、4つの転写領域30上の樹脂20を一括して成形可能に(例えば、一括してパターンを転写可能に)構成されている例について説明する。なお、本実施形態は、第1~2実施形態を基本的に引き継ぐものであり、以下で特に言及されない限り、インプリント装置1の構成および処理は第1実施形態と同様である。
【0055】
図9は、本実施形態における複数のショット領域60のレイアウト例を示す図であり、図9(a)~(b)は、代表的なショット領域60(61~62)を拡大した図である。例えば、ショット領域61では、それに含まれる3つの転写領域30i~30kのうち最も小さい転写領域30i以外の転写領域30j,30kから、位置合わせに用いる基板側マーク19が選択されうる。この際、基板13にエッジに近い基板側マーク19(例えば、基板13のエッジから所定範囲内に存在する基板側マーク19)を意図的に選択肢から外してもよい。また、最も小さい転写領域30i以外の転写領域30j,30kの全てから基板側マーク19を選択する必要はなく、例えば、最も大きい転写領域30jのみから基板側マーク19を選択してもよい。また、他の例として、ショット領域62では、それに含まれる3つの転写領域30l~30nのうち最も小さい転写領域30n以外の転写領域30l,30mから、位置合わせに用いる基板側マーク19が選択されうる。
【0056】
<物品の製造方法の実施形態>
本発明の実施形態にかかる物品の製造方法は、例えば、半導体デバイス等のマイクロデバイスや微細構造を有する素子等の物品を製造するのに好適である。本実施形態の物品の製造方法は、基板上に供給(塗布)されたインプリント材に上記のインプリント装置を用いてパターンを形成する工程と、かかる工程でパターンを形成された基板を加工する工程とを含む。更に、かかる製造方法は、他の周知の工程(酸化、成膜、蒸着、ドーピング、平坦化、エッチング、レジスト剥離、ダイシング、ボンディング、パッケージング等)を含む。本実施形態の物品の製造方法は、従来の方法に比べて、物品の性能・品質・生産性・生産コストの少なくとも1つにおいて有利である。
【0057】
インプリント装置を用いて成形した硬化物のパターンは、各種物品の少なくとも一部に恒久的に、或いは各種物品を製造する際に一時的に、用いられる。物品とは、電気回路素子、光学素子、MEMS、記録素子、センサ、或いは、型等である。電気回路素子としては、DRAM、SRAM、フラッシュメモリ、MRAMのような、揮発性或いは不揮発性の半導体メモリや、LSI、CCD、イメージセンサ、FPGAのような半導体素子等が挙げられる。型としては、インプリント用のモールド等が挙げられる。
【0058】
硬化物のパターンは、上記物品の少なくとも一部の構成部材として、そのまま用いられるか、或いは、レジストマスクとして一時的に用いられる。基板の加工工程においてエッチング又はイオン注入等が行われた後、レジストマスクは除去される。
【0059】
次に、物品の具体的な製造方法について説明する。図10(a)に示すように、絶縁体等の被加工材2zが表面に形成されたシリコンウェハ等の基板1zを用意し、続いて、インクジェット法等により、被加工材2zの表面にインプリント材3zを付与する。ここでは、複数の液滴状になったインプリント材3zが基板上に付与された様子を示している。
【0060】
図10(b)に示すように、インプリント用の型4zを、その凹凸パターンが形成された側を基板上のインプリント材3zに向け、対向させる。図10(c)に示すように、インプリント材3zが付与された基板1zと型4zとを接触させ、圧力を加える。インプリント材3zは型4zと被加工材2zとの隙間に充填される。この状態で硬化用のエネルギーとして光を型4zを通して照射すると、インプリント材3zは硬化する。
【0061】
図10(d)に示すように、インプリント材3zを硬化させた後、型4zと基板1zを引き離すと、基板1z上にインプリント材3zの硬化物のパターンが形成される。この硬化物のパターンは、型の凹部が硬化物の凸部に、型の凸部が硬化物の凹部に対応した形状になっており、即ち、インプリント材3zに型4zの凹凸パターンが転写されたことになる。
【0062】
図10(e)に示すように、硬化物のパターンを耐エッチングマスクとしてエッチングを行うと、被加工材2zの表面のうち、硬化物が無いか或いは薄く残存した部分が除去され、溝5zとなる。図10(f)に示すように、硬化物のパターンを除去すると、被加工材2zの表面に溝5zが形成された物品を得ることができる。ここでは硬化物のパターンを除去したが、加工後も除去せずに、例えば、半導体素子等に含まれる層間絶縁用の膜、つまり、物品の構成部材として利用してもよい。
【0063】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0064】
1:インプリント装置、11:モールド、13:基板、15:検出部、30:転写領域、40,50,60:ショット領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10