(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】成膜装置
(51)【国際特許分類】
C23C 14/34 20060101AFI20241213BHJP
C23C 14/58 20060101ALI20241213BHJP
【FI】
C23C14/34 U
C23C14/34 J
C23C14/58 Z
(21)【出願番号】P 2020164889
(22)【出願日】2020-09-30
【審査請求日】2023-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002428
【氏名又は名称】芝浦メカトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】青山 祐士
【審査官】今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-074821(JP,A)
【文献】特開2018-174300(JP,A)
【文献】特表2002-518823(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/34
C23C 14/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを設置面に設置して回転する回転テーブルを有し、当該回転テーブルを回転させることにより前記ワークを円周の搬送経路で循環搬送する搬送部と、
前記搬送経路に対向し、前記ワークに膜を形成する成膜室と、
前記成膜室に配置され、前記膜の材料源であるターゲットと、前記ターゲットと前記回転テーブルとの間に導入されたスパッタガスをプラズマ化するプラズマ発生器とを有し、プラズマにより前記ターゲットをスパッタリングして前記ワーク上に膜を形成する成膜部と、
前記ワーク上の前記膜の厚みを監視する監視部と、
を備え、
前記監視部は、
前記搬送経路に対向して前記成膜室外に配置され、膜厚検出のための光が透過する検出窓と、
前記検出窓を介して前記膜が形成されたワークに光を照射する投光部と、
前記ワーク
からの反射光、または、前記ワークを透過する光に基づいて前記膜の厚みを検出する解析部と、
前記成膜室外において
前記検出窓の周囲に配置され、前記回転テーブルの前記設置面に対面しつつ、前記設置面に沿って延在
し、前記検出窓に、前記成膜室から漏れ出すスパッタ粒子が到達するのを抑制する板状部と、
を有
し、
前記検出窓は、
前記回転テーブルの前記設置面を臨み、前記投光部からの光が前記ワークに向けて出射する端面を有し、
前記端面は、前記検出窓の中心軸に対して傾斜し、前記成膜室が存在する方向とは逆の方向に向くこと、
を特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記板状部は、前記ターゲットを構成する材料の分子の平均自由行程以上の長さで、前記設置面に沿って延在すること、
を特徴とする請求項1記載の成膜装置。
【請求項3】
前記板状部は、前記回転テーブルの前記設置面と対面し、算術平均粗さRaで4μm以上14μm以下の表面粗さを有する対向面を有すること、
を特徴とする請求項1又は2記載の成膜装置。
【請求項4】
前記板状部は、前記回転テーブル上の前記ワークが通過可能な間隔を空けて設置されていること、
を特徴とする請求項
1乃至3の何れかに記載の成膜装置。
【請求項5】
前記検出窓を保持するホルダを備え、
前記検出窓は、前記回転テーブルの前記設置面を臨み、前記投光部からの光が前記ワークに向けて出射する端面を有し、
前記ホルダは、前記端面を囲う包囲壁を有し、
前記端面と前記設置面との間の間隔よりも、前記包囲壁の端部と前記設置面との間の間隔の方が狭いこと、
を特徴とする請求項
1乃至4の何れかに記載の成膜装置。
【請求項6】
前記検出窓は、前記回転テーブルの内周側に位置すること、
を特徴とする請求項
1乃至5の何れかに記載の成膜装置。
【請求項7】
前記搬送経路に対向して前記成膜室よりも前記ワークの搬送方向下流に位置し、前記成膜部で形成された前記膜を化学反応させる膜処理室と、
前記膜処理室に配置され、プロセスガスを導入するプロセスガス導入部と、前記プロセスガスをプラズマ化するプラズマ発生器とを有し、前記膜を化学反応させる膜処理部と、
を更に備え、
前記検出窓は、前記膜処理室よりも前記ワークの搬送方向下流に位置すること、
を特徴とする請求項
1乃至6の何れかに記載の成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体、ディスプレイ及び光ディスク等の各種製品の製造工程において、例えばウエーハやガラス基板等のワーク上に成膜処理が施されることがある。スマートフォン、TV、HUD(Head Up Display)又はプロジェクタ等の部品には、表面の反射を抑制するためのARコート(Anti-Reflection coating)が成膜される。分光分析や光通信などに用いられ任意の光のみを透過させるバンドパスフィルター(Band Pass Filter)、レーザーやUVランプ又は車載センサなどに対しては、反射鏡に用いられるコールドミラー(Cold mirror)等が成膜処理によって形成される。
【0003】
成膜処理のための成膜装置は各種あるが、その一種としてプラズマを用いた成膜装置がある。プラズマを用いた成膜装置は、膜の材料源を材質とするターゲットを成膜室に配置し、成膜室に不活性ガスを導入し、直流電圧を印加する。プラズマ化した不活性ガスのイオンがターゲットに衝突すると、ターゲットを構成する材料が原子状、分子状あるいはクラスタ状の粒子(以下、スパッタ粒子ともいう)として叩き出される。該スパッタ粒子は、成膜室内においてターゲットに対向したワーク上に堆積していく。成膜室に加えて膜処理室を有し、成膜室で形成された膜を酸化又は窒化等の化学反応させる成膜装置もある。
【0004】
ワーク上の膜が求められた機能を十分に果たすためには所定の膜厚が必要である。目標膜厚にする方法として、ワークへの薄膜形成を繰り返して全体として目標膜厚を達成する方法が知られている。薄膜を積層する成膜装置は、成膜室を巡回可能な回転テーブルを有する。回転テーブルにワークが設置され、回転テーブルが回転することにより、ワークは成膜室を複数回通過し、通過の度に膜が積み重ねられていく。尚、膜処理室を有する場合には、ワークは成膜室と膜処理室とを複数回通過し、通過の度に成膜と膜処理を繰り返していく。
【0005】
従来は、目標膜厚に到達するまでの成膜時間を予めシミュレーション、演算又は実測等により求めておき、この成膜時間への到達によって成膜を停止していた。しかし、目標膜厚と実際に成膜された膜の膜厚とに差異が生じる虞もある。そこで、実際の膜厚を検出しながら成膜する手法も提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。提案された成膜装置は、膜厚を監視する監視部を備えている。監視部は、ワークと対面する位置に検出窓を有し、検出窓を通じてワーク及び膜に光を照射する。そして、監視部は、ワーク及び膜の透過光を検出し、分光透過率に基づいて膜厚を測定している。または監視部は、検出窓を介してワーク及び膜からの反射光を受光し、反射光の解析により膜厚を測定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第3744003号公報
【文献】特開平04-92444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般的に、成膜室は仕切り壁によって囲まれている。従って、ターゲットから叩き出されたスパッタ粒子が成膜室外へ流出し難くなってはいる。一方で、回転テーブルによってワークが成膜室を通過できるように、回転テーブルのワーク設置面と仕切り壁の端部との間には、ワークが通過可能な隙間が開けられている。そのため、成膜室からスパッタ粒子が漏れ出すことを完全に防ぐことはできず、成膜室外に設置された監視部の検出窓にスパッタ粒子が到達し、監視部の検出窓にスパッタ粒子が付着してしまう虞がある。
【0008】
検出窓がスパッタ粒子の付着によって汚れると、ワークへ向けて予定した光量を出射することができなくなり、またワークからの透過光や反射光を十分な光量で得ることができなくなる。しかも、監視部では検出窓の付着物の情報を含んだ光を解析することになる。そのため、膜厚の測定結果に誤差が生じたり、最悪の場合には膜厚の検出が不可能になったりして、膜厚検出に支障をきたす虞がある。
【0009】
膜厚検出に支障をきたさないように、検出窓を定期的に清掃する必要があるが、清掃頻度が高まると、成膜装置を頻繁に停止させなければならず、成膜装置による生産効率が低下してしまう。
【0010】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、検出窓の汚れを抑制し、検出精度と生産性の向上を図る成膜装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の成膜装置は、ワークを設置面に設置して回転する回転テーブルを有し、当該回転テーブルを回転させることにより前記ワークを円周の搬送経路で循環搬送する搬送部と、
前記搬送経路に対向し、前記ワークに膜を形成する成膜室と、前記成膜室に配置され、前記膜の材料源であるターゲットと、前記ターゲットと前記回転テーブルとの間に導入されたスパッタガスをプラズマ化するプラズマ発生器とを有し、プラズマにより前記ターゲットをスパッタリングして前記ワーク上に膜を形成する成膜部と、前記ワーク上の前記膜の厚みを監視する監視部と、を備え、前記監視部は、前記搬送経路に対向して前記成膜室外に配置され、膜厚検出のための光が透過する検出窓と、前記検出窓を介して前記膜が形成されたワークに光を照射する投光部と、前記ワークからの反射光、または、前記ワークを透過する光に基づいて前記膜の厚みを検出する解析部と、前記成膜室外において前記検出窓の周囲に配置され、前記回転テーブルの前記設置面に対面しつつ、前記設置面に沿って延在し、前記検出窓に、前記成膜室から漏れ出すスパッタ粒子が到達するのを抑制する板状部と、を有し、前記検出窓は、前記回転テーブルの前記設置面を臨み、前記投光部からの光が前記ワークに向けて出射する端面を有し、前記端面は、前記検出窓の中心軸に対して傾斜し、前記成膜室が存在する方向とは逆の方向に向くこと、を特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の実施形態によれば、検出窓の汚れを抑制し、検出精度と生産性の向上を図ることができる成膜装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態の成膜装置の構成を模式的に示す透視平面図である。
【
図2】成膜装置の動作を示すフローチャートである。
【
図3】
図1のA-A断面図であり、成膜室と膜処理室の内部を示す。
【
図4】成膜装置が備える監視部の構成を示すブロック図である。
【
図5】
図1のB-B断面図であり、監視部の設置態様を示す。
【
図7】板状部と回転テーブルとの間を通過しようとする飛来粒子を示す模式図である。
【
図9】検出窓付近に至った飛来粒子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る成膜装置の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0015】
(装置全体)
図1は、本実施形態の成膜装置100の構成を模式的に示す透視平面図である。成膜装置100はワーク10に膜を形成する装置である。ワーク10は、これに限られないが、例えばガラス基板又は樹脂基板である。成膜装置100がワーク10上に形成する膜は、酸化物や窒化物等の化合物膜である。この成膜装置100は、チャンバ20、搬送部30、成膜室4、膜処理室5、監視区画6、ロードロック部70及び制御装置80を備えている。
【0016】
チャンバ20は内部を真空にすることが可能とされた円柱形状の容器である。搬送部30は、チャンバ20と同心円状の回転テーブル31をチャンバ20内に有する。ロードロック部70から搬入されたワーク10は、回転テーブル31に設置される。回転テーブル31は、ワーク10を循環搬送する。ワーク10は、回転テーブル31により、円周軌跡である搬送経路Lに沿って移動する。
【0017】
チャンバ20内は複数区画に分割されている。チャンバ20内の各区画には、チャンバ20の周方向に沿って成膜室4、膜処理室5、及び監視区画6が、この順番で割り当てられ、ワーク10の搬送経路Lと対向している。成膜室4は複数室連続して配置されていてもよい。成膜室4は仕切り壁22で仕切られた区画、膜処理室5は筒状体51によって仕切られた区画である。監視区画6は、搬送方向において最も上流に位置する仕切り壁22と搬送方向において下流に位置する筒状体51の側壁で仕切られた区画である。換言すると、監視区画6は、搬送方向上流に位置する成膜室4と、膜処理室5との間の区画であって、膜処理室5よりも搬送方向下流に位置する区画である。ワーク10は、搬送部30により成膜室4、膜処理室5及び監視区画6を繰り返し巡回する。
【0018】
成膜室4は、成膜部40が配置された区画であり、ワーク10上に膜を形成する。成膜部40は、プラズマによって、膜の材料源で組成されたターゲット42からスパッタ粒子を叩き出し、ワーク10上に堆積させて成膜する。膜処理室5は、膜処理部50が配置された区画であり、搬送部30により成膜室4を通過したワーク10上に成膜された膜を膜処理する。膜処理部50は、プロセスガス中でプラズマを発生させ、プラズマ中のイオンと膜とを化学反応させることで化合物膜を生成する。
【0019】
成膜室4は、例えば搬送方向に連続して2室配置される。2室の成膜室4に配置されたターゲット42の材料は異なっていてもよい。これにより、異なる2種類の膜をワーク10上に積層できる。尚、成膜室4は、1室のみ配置されていてもよいし、3室以上の複数が連続配置されていてもよい。また、複数の成膜室4には、それぞれ異なる材料のターゲット42を配置する他、同一種類の材料のターゲット42を配置することもできる。
【0020】
監視区画6では、ワーク10に形成された化合物膜の厚みを光学的に測定する。光学的な測定方法であれば各種公知の膜厚検出方法を適用できるが、例えば、膜厚は、ワーク10に光を当てて、ワーク10からの反射光を例えばピークバレー法(PV法)に基づき検出する。監視区画6には、検出窓65が回転テーブル31に対向して設置されている(
図3参照)。検出窓65は石英又はサファイア等の透光部材である。この検出窓65を通じて、検出窓65の直下を通過中のワーク10に光を照射し、この検出窓65を通じて、ワーク10からの反射光を取得する。即ち、この検出窓65は、ワーク10が存在する空間と、各種光学部品が配された空間とを隔てつつ、両空間の光の行き来を確保している。
【0021】
制御装置80は、PLC(Programmable Logic Controller)や、CPU(Central Processing Unit)を含む処理装置であり、制御内容を記述したプログラムが記憶されている。この制御装置80は、成膜装置100の各構成要素を制御し、監視区画6で検出されたワーク10上の膜厚が目標膜厚になるまで、成膜部40と膜処理部50と回転テーブル31とを稼働させる。
【0022】
図2は、この制御装置80により制御された成膜装置100の全体動作を示すフローチャートである。ワーク10は、ロードロック部70からチャンバ20内に搬入される(ステップS01)。チャンバ20内が所定の圧力まで減圧される(ステップS02)。チャンバ20内の減圧後、制御装置80は、ワーク10が設置された回転テーブル31を回転させる(ステップS03)。
【0023】
成膜装置100が2室の成膜室4を備える場合、制御装置80は、一方の成膜室4の成膜部40を稼働させ、他方の成膜室4の成膜部40を停止させておく(ステップS04)。稼働している成膜室4ではワーク10に膜が形成される(ステップS05)。例えば、一方の成膜室4には、シリコン(Si)のターゲット42が設置され、ワーク10上にシリコン膜を成膜する。稼働中の成膜室4をワーク10が通過する度に、ワーク10の表面の膜は厚くなっていく。稼働している成膜室4で成膜されたワーク10は、成膜室4を通過する度に膜処理室5に向かい、ワーク10上の膜が膜処理されていく(ステップS06)。例えば、酸素ガスを含むプロセスガス中でプラズマを発生させ、酸素イオンをシリコン膜に衝突させることによりシリコン膜を酸化させる。
【0024】
ワーク10が稼働中の成膜室4及び膜処理室5を通過し、監視区画6に入ると、監視区画6では、ワーク10に成膜された化合物膜の膜厚が検出される(ステップS07)。制御装置80は、検出された膜厚と目標膜厚とを比較する(ステップS08)。目標膜厚は、制御装置80によって予め記憶されている。検出された膜厚が目標膜厚に未達であると(ステップS08,No)、制御装置80は、回転テーブル31の回転を維持し、現在稼働中の成膜部40を変えずに、ステップS05乃至ステップS08を繰り返す。
【0025】
検出された膜厚が目標膜厚に達すると(ステップS08,Yes)、制御装置80は、次に稼働させる成膜部40、即ち未だ稼働させていない成膜部40があれば(ステップS09,Yes)、現在の成膜室4の成膜部40の稼働を停止させ、次の成膜室4の成膜部40を稼働させる(ステップS10)。そして、ステップS05乃至ステップS08を繰り返し、検出された膜厚が目標膜厚に達していると(ステップS08,Yes)、制御装置80は、ワーク10への成膜及び膜処理を終了する。一方、制御装置80は、次に稼働させる成膜部40がなければ(ステップS09,No)、制御装置80は、ワーク10への成膜及び膜処理を終了する処理を行う。
【0026】
例えば、他方の成膜室4には、ニオブ(Nb)のターゲット42が設置され、ワーク10上にニオブ膜を成膜する。膜処理室5では、酸素イオンをニオブ膜に衝突させることによりニオブ膜を酸化させる。これにより、ワーク10上には、下層に目標膜厚の酸化シリコン膜が形成され、酸化シリコン膜の上層に目標膜厚の酸化ニオブ膜が形成される。成膜室4は2室に限らず、3室以上の成膜室4が配置されていてもよい。制御装置80は、化合物膜が目標膜厚に達していることを監視区画6で検出する度に、稼働させる成膜室4を切り替えてステップS05乃至ステップS08を繰り返せばよい。
【0027】
(チャンバ)
チャンバ20について更に詳細に説明する。
図3に示すように、チャンバ20は、円盤状の天井20a、円盤状の内底面20b、及び環状の内周面20cにより囲まれて形成されている。チャンバ20には排気口21が設けられている。排気口21には排気部90が接続されている。排気部90は配管及び図示しないポンプ、バルブ等を有する。排気口21を通じた排気部90による排気により、チャンバ20内は減圧されて真空になる。
【0028】
(搬送部)
搬送部30について更に詳細に説明する。搬送部30は、回転テーブル31とモータ32とを有する。
図3に示すように、搬送部30の回転テーブル31は、円盤形状を有し、内周面20cと接触しない程度に大きく拡がっている。搬送部30は、回転テーブル31を回転させるモータ32を備えており、モータ32は、回転テーブル31の円中心を回転軸として連続的に所定の回転速度で回転させる。本実施形態では、モータ32は、回転テーブル31を
図1に示すように反時計回りに回転させる。これにより、搬送部30は、ワーク10を円周の軌跡である搬送経路Lに沿って循環搬送させる。すなわち、搬送部30は、成膜室4、膜処理室5、監視区画6をこの順に繰り返し通過するようにワーク10を循環搬送する。
【0029】
回転テーブル31には保持部33が配設されている。保持部33は、回転テーブル31の設置面311に円周等配位置に配設される溝、穴、突起、治具、ホルダ等であり、ワーク10を載せたトレイ34をメカチャック、粘着チャックによって保持する。ワーク10は、例えばトレイ34上にマトリクス状に整列配置され、保持部33は、回転テーブル31上に60°間隔で6つ配設される。
【0030】
(ロードロック部)
ロードロック部70は、チャンバ20の真空を維持した状態で、図示しない搬送手段によって、外部から未処理のワーク10を搭載したトレイ34を、チャンバ20に搬入し、処理済みのワーク10を搭載したトレイ34をチャンバ20の外部へ搬出する装置である。このロードロック部70は、周知の構造のものを適用することができるため、説明を省略する。
【0031】
(成膜室)
成膜室4について更に詳細に説明する。
図3に示すように、成膜室4には成膜部40が配置されている。この成膜部40はスパッタ源とプラズマ発生器とを備える。スパッタ源はターゲット42、バッキングプレート43及び電極44を備える。プラズマ発生器は電源部46及びスパッタガス導入部49を備える。
【0032】
ターゲット42は、板状の部材であり、回転テーブル31に載置されたワーク10の搬送経路Lに離隔して設けられている。ターゲット42の表面は、回転テーブル31に載置されたワーク10に対向するように、チャンバ20の天井20aに保持されている。ターゲット42は例えば3つ設置されており、3つのターゲット42は、平面視で三角形の頂点上に並ぶ位置に設けられている(
図1参照)。
【0033】
バッキングプレート43はターゲット42を保持する支持部材である。このバッキングプレート43は各ターゲット42を個別に保持する。電極44は、チャンバ20の外部から各ターゲット42に個別に電力を印加するための導電性の部材であり、ターゲット42と電気的に接続されている。各ターゲット42に印加する電力は、個別に変えることができる。その他、スパッタ源には、必要に応じてマグネット、冷却機構などが適宜具備されている。
【0034】
電源部46は、例えば、高電圧を印加するDC電源であり、電極44と電気的に接続されている。電源部46は、電極44を通じてターゲット42に電力を印加する。尚、回転テーブル31は、接地されたチャンバ20と同電位であり、ターゲット42側に高電圧を印加することにより、電位差が発生する。電源部46としては、高周波スパッタを行うためにRF電源とすることもできる。
【0035】
スパッタガス導入部49は、配管48とガス導入口47を有し、工場等の設備であるボンベ等のスパッタガスG1の供給源に接続されている。スパッタガスG1の供給源を成膜装置100側で保持してもよい。スパッタガス導入部49の配管48は、スパッタガスG1の供給源に接続されてチャンバ20を気密に貫通してチャンバ20の内部に延び、その端部がガス導入口47として開口している。ガス導入口47は、回転テーブル31とターゲット42との間に開口し、回転テーブル31とターゲット42との間に形成された処理空間41に成膜用のスパッタガスG1を導入する。スパッタガスG1としては不活性ガスが採用でき、アルゴンガス等が好適である。
【0036】
図1及び
図3に示すように、チャンバ20内は仕切り壁22によって区画される。仕切り壁22は、円柱形状の中心から放射状に配設された方形の壁板であり、天井20aから内底面20bに向けて延び、内底面20bには未達である。即ち、内底面20b側には円柱状の空間が確保されている。この円柱状の空間に回転テーブル31が配置されている。仕切り壁22の下端は、回転テーブル31に載せられたワーク10が通過する隙間を空けて、回転テーブル31におけるワーク10の設置面311と対向している。この仕切り壁22によって、成膜室4が仕切られる。
【0037】
このような成膜部40では、スパッタガス導入部49からスパッタガスG1を導入し、電源部46が電極44を通じてターゲット42に高電圧を印加すると、回転テーブル31とターゲット42との間に形成された処理空間41に導入されたスパッタガスG1がプラズマ化し、イオン等の活性種が発生する。プラズマ中のイオンはターゲット42と衝突してターゲット42を構成する材料がスパッタ粒子として叩き出される。
【0038】
また、この処理空間41を回転テーブル31によって循環搬送されるワーク10が通過する。スパッタ粒子は、ワーク10が処理空間41を通過するときにワーク10上に堆積して、スパッタ粒子からなる膜がワーク10上に形成される。ワーク10は、回転テーブル31によって循環搬送され、この処理空間41を繰り返し通過することで膜が成膜されていく。成膜部40を1回通過する度に堆積する膜の膜厚は、膜処理部50の処理レートにも依るが、例えば1~2原子レベル(5nm以下)程度の薄膜であると良い。ワーク10が複数回循環搬送されることで、膜の厚みが増し、ワーク10上に所定の膜厚の膜が形成される。
【0039】
(膜処理室)
膜処理室5について更に詳細に説明する。
図3に示すように、膜処理室5の膜処理部50は、筒状体51、窓部材52、アンテナ53、RF電源54、マッチングボックス55及びプロセスガス導入部58により構成されるプラズマ発生器を備える。また、膜処理部50は、プロセスガス導入部58を備える。プロセスガス導入部58は、配管57とガス導入口56を有し、工場内の設備であるボンベ等のプロセスガスG2の供給源に接続されている。プロセスガスG2の供給源を成膜装置100側で保持してもよい。
【0040】
筒状体51は、
図1と
図3に示すように水平断面が角丸長方形状の筒であり、開口を有する。筒状体51は、その開口が回転テーブル31側に離隔して向かうように、チャンバ20の天井20aに嵌め込まれ、チャンバ20の内部空間に突き出る。この筒状体51は、回転テーブル31と同様の材質とする。窓部材52は、筒状体51の水平断面と略相似形の石英等の誘電体の平板である。この窓部材52は、筒状体51の開口を塞ぐように設けられ、チャンバ20内の酸素ガスを含むプロセスガスG2が導入される処理空間59と筒状体51の内部とを仕切る。処理空間59は、膜処理部50において、回転テーブル31と筒状体51の内部との間に形成される空間である。この処理空間59を回転テーブル31によって循環搬送されるワーク10が繰り返し通過することで酸化処理が行われる。尚、窓部材52は、アルミナ等の誘電体であってもよいし、シリコン等の半導体であってもよい。
【0041】
アンテナ53は、コイル状に巻回された導電体であり、窓部材52によってチャンバ20内の処理空間59とは隔離された筒状体51内部空間に配置され、交流電流が流されることで電界を発生させる。アンテナ53から発生させた電界が窓部材52を介して処理空間59に効率的に導入されるように、アンテナ53は窓部材52の近傍に配置されることが望ましい。アンテナ53には、高周波電圧を印加するRF電源54が接続されている。RF電源54の出力側には整合回路であるマッチングボックス55が直列に接続されている。マッチングボックス55は、入力側及び出力側のインピーダンスを整合させることで、プラズマの放電を安定化させる。
【0042】
プロセスガス導入部58の配管57は、プロセスガスG2の供給源に接続されてチャンバ20を気密に貫通してチャンバ20の内部に延び、その端部がガス導入口56として開口している。ガス導入口56は、窓部材52と回転テーブル31との間の処理空間59に開口し、プロセスガスG2を導入する。プロセスガスG2は、例えば、酸素又は窒素を含む。プロセスガスG2は、酸素ガス又は窒素ガスの他、アルゴンガス等の不活性ガスを含んでいても良い。
【0043】
このような膜処理部50では、RF電源54からアンテナ53に高周波電圧が印加される。これにより、アンテナ53に高周波電流が流れ、電磁誘導による電界が発生する。電界は、窓部材52を介して、処理空間59に発生し、プロセスガスG2の誘導結合プラズマが発生する。このとき、プロセスガスG2もイオン化し、イオンがワーク10上の膜に衝突し、膜を構成する原子と結合する。プロセスガスG2が酸素を含む場合は、膜処理部50は、ワーク10上の膜を酸化させる。プロセスガスG2が窒素を含む場合は、膜処理部50は、ワーク10上の膜を窒化させる。
【0044】
(監視区画)
膜厚の監視について更に詳細に説明する。
図4は、成膜装置100が備える監視部60の構成を示すブロック図である。
図4に示すように、成膜装置100は、ワーク10に形成された膜厚を検出する監視部60を備えている。監視部60は、監視区画6に配置された検出窓65を構成要素として含み、検出窓65を介してワーク10に光を照射し、ワーク10からの反射光を検出窓65を介して取得し、当該反射光を解析して膜厚を検出する。監視部60が検出した膜厚を制御装置80が目標膜厚と比較し、成膜続行か成膜終了かを判断し、判断結果に基づいて成膜装置100の各要素を制御する。この監視部60は、検出窓65に加えて、投光部62、伝送部64、分光部63及び解析部61を備えている。
【0045】
投光部62は光源である。この投光部62が出射した光が検出窓65を透過し、ワーク10に到達する。例えば、光の波長帯は、200nm以上800nm以下の範囲であり、波長が400nm以下の紫外光を出射するようにしてもよい。この投光部62としては、例えばキセノンランプ、水銀キセノンランプ、ハロゲンランプ等が挙げられ、水銀キセノンランプであれば紫外光領域の光を照射することができ、且つ、光束を大きくすることができる。
【0046】
分光部63は、検出窓65を透過したワーク10からの反射光を各波長の光に分けることで、反射光のスペクトラムを得る。典型的には、この分光部63はプリズム又は回折格子である。解析部61は、分光部63を経た反射光のスペクトラムを解析して、ワーク10上の膜厚を検出する。この解析部61は、分光部63で分けられた各波長の光を個別に受光するCCDやCMOS等の各受光素子と、CPU等のプロセッサを含む。
【0047】
解析部61は、光学的な測定方法であれば各種公知の膜厚検出方法を適用できるが、例えばピークバレー法(PV法)により膜厚を検出する。膜表面の反射光とワーク10の表面の反射光には光路差が生じている。この光路差が、ある波長の整数倍のとき、ワーク10の表面での反射光と膜表面での反射光の干渉光のうち、その波長成分の光は位相が合って強め合う方向で加算され、位相が1/2波長ずれた波長成分の光は打ち消し合う方向で減算される。解析部61はこれら波長を特定し、2nd=iλ(dは膜厚、iは整数、λは特定された波長)から膜厚を検出する。
【0048】
伝送部64は、投光部62と検出窓65との間、及び検出窓65と分光部63との間に配設される。この伝送部64は、一方端部から入射した投光部62の光を、他方端部側にある検出窓65に向けて導光する。また伝送部64は、検出窓65を透過したワーク10からの反射光を他方端部で受け取り、分光部63に向けて導光する。このような伝送部64としては例えば光ファイバが挙げられるが、これに限らず、レンズやミラー等の各種光学部品を含んだ光学系であってもよい。
【0049】
図5は、監視部60の設置態様を示す模式図である。
図5に示すように、監視区画6には、チャンバ20の天井20aに筒状の筐体67が取り付けられている。筐体67は、天井20aから回転テーブル31のワーク10が設置される設置面311に向けて延びている。筐体67は、設置面311側の開口端がホルダ66によって閉じられている。検出窓65は、封止部材を介してこのホルダ66に保持されている。検出窓65はホルダ66に保持されることで、回転テーブル31の設置面311と間隔を隔てつつ、設置面311と対面している。
【0050】
検出窓65は、設置面311において、回転テーブル31で移動するワーク10が描く軌跡と対面している。その中でも、良好なS/N比となる光量の反射光を取得するために、検出窓65は、回転テーブル31の内周側に位置させておくことが好ましい。即ち、筐体67を回転テーブル31の内周側に取り付けておく。回転テーブル31の内周側とは、回転テーブル31の回転中心から外周縁までの半径Rに沿った線分の中点よりも、回転中心側である。回転テーブル31の内周側は周速が遅い。そのため、良好なS/N比となる光量の反射光を取得する時間以上に、ワーク10が検出窓65の直下に滞在し続ける。
【0051】
伝送部64は、筐体67内に配置され、端部が検出窓65に向けられている。この伝送部64は筐体67内を通ってチャンバ20の天井20aから外部へ引き出されている。これら伝送部64及び検出窓65によれば、伝送部64が伝送してきた光が検出窓65を透過して、検出窓65の直下を移動しているワーク10に向かい、ワーク10に向かった光がワーク10の表面やワーク10上に形成された膜で反射し、検出窓65を透過して伝送部64で伝送される。
【0052】
図6は、監視区画6を抜き出した拡大図である。
図5及び
図6に示すように、検出窓65の周囲には板状部68が取り付けられている。板状部68は、検出窓65を中心とする幅広のリング形状の板である。この板状部68は、回転テーブル31の設置面311と対向する対向面681を有する。この対向面681は、ホルダ66の側周面を基端として、検出窓65の周囲に拡がっており、回転テーブル31の設置面311に沿って延在する。板状部68は、好ましくは設置面311と平行に延びる。板状部68に撓みが生じ難ければ、板状部68の材質や厚みに特に限定はなく、例えば板状部68として厚さ5mmのアルミ板を用いてもよい。
【0053】
この板状部68は、回転テーブル31に搭載されたワーク10の成膜面から間隔Hを空けて配置される。間隔Hは、通過するワーク10が板状部68に接触しない寸法以上で設定されるが、極力狭いほうが好ましく、例えば5mmとすることができる。また、この間隔Hは、仕切り壁22における回転テーブル31側の端部とワーク10の成膜面との間の間隔と同じとすることができる。また、板状部68の長さD、即ち板状部68の内周縁から外周縁までのリング径方向の幅は、スパッタ粒子、すなわちターゲットを構成する材料の分子の平均自由行程以上である。
【0054】
また、板状部68の対向面681は、算術平均粗さRaで4μm以上14μm以下の表面粗さを有することが好ましい。ステンレス鋼(SUS)製の板状部68の対向面681は、算術平均粗さRaで4μm以上10μm以下の表面粗さを有することが更に好ましい。アルミニウム製の板状部68の対向面681は、算術平均粗さRaで6μm以上14μm以下の表面粗さを有することが更に好ましい。この表面粗さの対向面681は、例えば粒度が♯20以上♯60以下程度の研磨材にてブラスト処理を行うことで形成できる。
【0055】
図7は、この板状部68の作用を示す模式図である。検出窓65の周囲には飛来粒子421が漂っている。飛来粒子421は、例えば成膜室4から漏れ出して漂うスパッタ粒子である。飛来粒子421は、検出窓65に到達する前に、板状部68と回転テーブル31の設置面311により画成された狭くて長い空間を通り抜けなくてはならない。そのため、多くの飛来粒子421が検出窓65に到達する前に、板状部68に接触し、この板状部68によって捕捉される。多くの飛来粒子421が板状部68に阻まれて検出窓65に到達できない。このように、板状部68は、飛来粒子421を捕捉し、検出窓65の汚れを抑制する。
【0056】
特に、板状部68が飛来粒子421の平均自由行程以上の長さDであれば、飛来粒子421の捕捉確率が高まり、検出窓65の汚れがより抑制される。ワーク10の成膜面から板状部68までの間隔Hはごく狭い距離であり、間隔Hの間から検出窓65に向かって斜めに入射する飛来粒子421であっても、板状部68が平均自由行程以上の長さであれば途中で捕捉される可能性がより高まるためである。また、板状部68の長さDは、好ましくは20cm超であり、より好ましくは30cm以上である。本発明者が実験で確かめたところ、回転テーブル31に搭載されたワーク10の成膜面から板状部68までの間隔Hが5mmであり、板状部68の長さDが30cmであると、少なくとも3ヶ月間の間は検出窓65の清掃が不要であった。
【0057】
また、板状部68の対向面681には、算術平均粗さRaで4μm以上10μm以下の表面粗さを有している。そのため、板状部68に接触した飛来粒子421が対向面681に付着する確率が高まる。更に、たとえ板状部68の対向面681に付着しなくとも、対向面681が平滑な場合と比べて、飛来粒子421の反射方向がまちまちになる。即ち、検出窓65とは異なる方向に反射する飛来粒子421が増える。従って、対向面681で捕捉できなかった飛来粒子421が検出窓65に向けて反射する確率も小さくなる。従って、算術平均粗さRaで4μm以上10μm以下の表面粗さを有する対向面681は、検出窓65に向けて入射する飛来粒子421を更に減らすことができる。
【0058】
また、
図8、9を用いて説明するように、検出窓65に向けて入射する飛来粒子421を更に減らすことができる。
図8は、検出窓65付近の拡大図である。
図8に示すように、検出窓65は外側端面651を有している。外側端面651は、回転テーブル31の設置面311を臨む面であり、ワーク10へ光を出射し、ワーク10からの反射光が入射する面である。また、ホルダ66は、検出窓65の全周囲を包囲する包囲壁661を有している。検出窓65は、この包囲壁661が画成する孔に嵌め込まれて、包囲壁661の内周面で全周囲が支持されている。
【0059】
包囲壁661は、外側端面651を覆わないように回転テーブル31の設置面311に向けて延び、外側端面651よりも回転テーブル31の設置面311側へ全周に亘って突出している。換言すると、外側端面651と回転テーブル31の設置面311との間隔よりも、包囲壁661の端部と設置面311との間の間隔の方が狭い。要するに、外側端面651は、包囲壁661の先端部よりも引っ込んで位置している。
【0060】
検出窓65の外側端面651は、検出窓65の中心軸65Aに対して傾斜した傾斜面になっている。傾斜面となった外側端面651は、成膜室4が存在する方向、すなわち回転テーブル31の内周側とは逆方向に向いている。換言すれば、回転テーブル31の外周側を向くように外側端面651は傾斜している。監視区画6と成膜室4とが同一円周上に位置するときは、成膜室4に対して遠い方向が、回転テーブル31の内周側に対して逆に向く方向である。飛来粒子421がより多く飛来してくる方向に露出する外側端面651の面積割合を少なくするために、外側端面651を回転テーブル31の内周側とは逆に向けるものである。従って、外側端面651が180°反対を向くことが好ましいが、チャンバ20の中心から外側に向かう半径方向を基準にして、1°でも回転テーブル31の内周側とは逆の方向に向いていれば、成膜室4が同一円周上のどの位置に配置されたとしても、すべての成膜室4から遠ざかる方向に外側端面651を向けることができる。これにより、飛来粒子421がより多く飛来してくる方向に露出する外側端面651の面積割合は少なくなる。
【0061】
図9は、この包囲壁661と外側端面651との位置関係、及び外側端面651の向きに基づく作用を示す模式図である。
図9に示すように、板状部68に捕捉されずに検出窓65付近に到達する飛来粒子421は確率的にゼロではない。しかし、検出窓65の外側端面651は包囲壁661で囲まれる領域内に引っ込んでいる。そのため、検出窓65に至るまでの通路は、板状部68の外周縁から始まって、検出窓65の直下で屈曲した迷路構造を有している。従って、飛来粒子421は、板状部68と回転テーブル31の設置面311との間を通過できたとしても、反射等によって検出窓65に向けて進路変更できなければ、検出窓65に到達できず、検出窓65への飛来粒子421の付着がいっそう抑制されている。
【0062】
但し、解析に必要な十分な光量の反射光を得るために、検出窓65から出射した光はワーク10の一点に照射されることが好ましい。検出窓65とワーク10の表面とが長距離であると光が拡散するため、検出窓65とワーク10の表面との距離は40mm程度が好ましい。また、包囲壁661の先端部の位置は、ワーク10が通過可能な高さが限界となる。そうすると、外側端面651が包囲壁661の内側へ引っ込む距離(包囲壁661の先端部と外側端面651との間の距離)は、光学的には最大で40mmが好ましい。
【0063】
板状部68と回転テーブル31の設置面311との間で反射を繰り返す等して、包囲壁661で囲まれた領域に向けて急角度で飛来する飛来粒子421も存在し得る。しかし、外側端面651は、検出窓65の中心軸65Aに対して傾斜し、飛来粒子421の発生源となる成膜室4がある方向とは逆方向を向いている。そのため、成膜室4側から飛来してきた飛来粒子421は、包囲壁661で囲まれた領域に向けて垂直に近い角度で外側端面651に向かわない限りは、外側端面651に入射できず、包囲壁661の内周面で捕捉される。従って、更に検出窓65への飛来粒子421の付着がいっそう抑制されている。尚、包囲壁661の内周面も粗面化してもよい。粗面化した場合、包囲壁661の内周面で飛来粒子421が捕捉される確率が高まる。
【0064】
図8及び
図9に示すように、検出窓65の内側端面652、即ち外側端面651とは反対側の端面であって、筐体67の内部空間に臨む端面については、検出窓65の中心軸65Aと直交していても、斜交していてもよい。好ましくは、内側端面652は、検出窓65の中心軸65Aに対して傾いている外側端面651と平行である。
図8に示すように、伝送部64を出射した光L1は、検出窓65の中心軸65Aと平行であり、外側端面651と内側端面652とが平行であれば、検出窓65を透過して出射するときには、検出窓65の中心軸65Aに対して平行に戻り、ワーク10に対して垂直に入射していく。また、ワーク10からの反射光は、伝送部64を出射した光と同じ光路を辿って伝送部64に入射できる。
【0065】
しかも、
図8に示すように、内側端面652が検出窓65の中心軸65Aに対して傾いていれば、伝送部64から出射して検出窓65の内側端面652で反射する光L2は、例えば筐体67の内周面に向かい、伝送部64に戻り難く、ワーク10の表面や膜表面からの反射光と干渉し難くなる。外側端面651も傾いているので、検出窓65内を進行して外側端面651で反射する光L3も、例えば筐体67の内周面やホルダ66の内周面に向かい、伝送部64に戻り難く、ワーク10の表面や膜表面からの反射光と干渉し難くなる。従って、膜厚検出の精度が向上する。
【0066】
外側端面651や内側端面652で反射した光が伝送部64に入射する方向以外の方向に向かわせるためには、外側端面651や内側端面652の傾斜角度が検出窓65の中心軸65Aに対して1.5°以上45°以下であることが好ましい。この範囲であれば、外側端面651や内側端面652で反射した光は伝送部64に戻り難い。
【0067】
(効果)
このように、この成膜装置100では、ワーク10上の膜厚を監視する監視部60を備えるようにした。監視部60は、検出窓65と投光部62と解析部61とを備えている。検出窓65は、搬送部30によるワーク10の搬送経路L上及び成膜室4外に配置され、膜厚検出のための光が透過する。このような監視部60は、板状部68を更に有するようにした。板状部68は、回転テーブル31のワーク10が設置された設置面311に対面しつつ、回転テーブル31の設置面311に沿って延在する。
【0068】
これにより、成膜部と検出窓65との間には、板状部68と回転テーブル31の設置面311とで画成された空間が存在する。この空間を通過する多くの飛来粒子421は検出窓65に到達するまでに、板状部68に捕捉される。そのため、検出窓65への飛来粒子421の付着を抑制できる。検出窓65への飛来粒子421の付着が抑制されることで、ワーク10上の膜厚検出精度が向上したり、検出窓65の清掃頻度が下がって、成膜装置100の稼働率が向上する。
【0069】
板状部68は、検出窓65の周囲に設置されていることが好ましい。検出窓65の周囲に設置すれば、飛来粒子421を検出窓65に到達させない効果を得るための板状部68の面積を最小限度に抑えることができる。但し、成膜室4から漏れ出すスパッタ粒子が検出窓65に至ることを抑制できればよく、スパッタ粒子が検出窓65に至るルートに板状部68を設置できればよい。即ち、板状部68は、搬送経路Lにおいて成膜室4と検出窓65との間に配置されていればよい。
【0070】
例えば、成膜室4を画成する仕切り壁22の下端部に板状部68が設けられるようにしてもよい。この場合、板状部68は、仕切り壁22を基端として、成膜室4の外側に向けて延びる。または、膜処理室5を画成する筒状体51の下端部に板状部68が設けられるようにしてもよい。この場合、板状部68は、筒状体51を基端として、膜処理室5の外側に向けて延びる。更に、監視区画6内に延びるようにしてもよい。
【0071】
また、板状部68は検出窓65の全周囲から放射状に拡がるリング状としたが、スパッタ粒子が検出窓65に至るルートに板状部68を設置できればよい。即ち、スパッタ粒子が飛来する方向が局所的であれば、板状部68が局所的な方向に拡がるようにしてもよい。例えば、この成膜装置100において、ロードロック部70側から飛来してくる飛来粒子421が無いか少なければ、板状部68は、膜処理室5側にのみ延びる形状でもよい。例えば半月状としてもよい。
【0072】
また、この板状部68は、ターゲット42を構成する材料の分子の平均自由行程以上の長さで、回転テーブル31の設置面311に沿って延在するようにした。これにより、飛来粒子421が板状部68に接触する確率が高まる。従って、板状部68は、より多くの飛来粒子421を捕捉し、検出窓65への付着をいっそう抑制することができる。
【0073】
また、板状部68は、回転テーブル31の設置面311と対面し、算術平均粗さRaで4μm以上14μm以下の表面粗さを有する対向面を有するようにした。これにより、飛来粒子421が板状部68で反射することを抑制し、板状部68に飛来粒子421が留まる確率が高まる。従って、板状部68は、より多くの飛来粒子421を捕捉し、検出窓65への付着をいっそう抑制することができる。
【0074】
また、検出窓65は、回転テーブル31の設置面311を臨み、投光部62からの光がワーク10に向けて出射する外側端面651を有し、外側端面651は、検出窓65の中心軸65Aに対して傾斜し、回転テーブル31の内周側とは逆の方向に向くようにした。これにより、飛来粒子421が多く飛来する方向に外側端面651が露出する面積割合が小さくなり、外側端面651に飛来粒子421が接触することが難しくなる。従って、検出窓65への付着を抑制することができる。
【0075】
また、検出窓65を保持するホルダ66は、外側端面651を囲う包囲壁661を有し、外側端面651は、包囲壁661における設置面311に対向する端部よりも引っ込んだ位置にあるようにした。すなわち、ホルダ66は、外側端面651と設置面311との間の間隔よりも、包囲壁611の端部と設置面311との間の間隔の方が狭くなるように検出窓66を保持する。これにより、飛来粒子421は、検出窓65付近に到達できても、包囲壁661に阻まれて外側端面651に接触することが難しくなる。従って、検出窓65への付着を抑制することができる。
【0076】
また、検出窓65は、回転テーブル31の内周側に位置するようにした。回転テーブル31の内周側は、周速が遅いので、ワーク10に十分な光量の光を当てることができる。従って、良好なS/N比を達成でき、膜厚検出の精度があがる。
【0077】
尚、この成膜装置100では、検出窓65は、膜処理室5よりもワーク10の搬送方向下流に位置するようにしたが、これに限られない。即ち、成膜装置100によっては、成膜室4で化合物の粒子をワーク10上に堆積させる場合もある。例えば、処理空間41にプロセスガスG2も導入し、ターゲット42から叩き出された粒子とプロセスガスG2中のイオンとが反応して化合物となり、この化合物をワーク10上に堆積させる場合がある。この場合、膜処理室5は省略可能となり、監視区画6は成膜室4に隣接して配置される。従って、検出窓65は、成膜室4よりもワーク10の搬送方向下流に位置する。
【0078】
また、監視部60は、ワーク10から反射する光を検出窓65を通じて取得し、解析部61を用いてワーク10から反射する光に基づいて膜厚を検出するようにした。但し、光学的な膜厚検出方法としてはこれに限られない。例えば、投光部62からの光を出射する検出窓65とは別に、ワーク10を透過する光を透過させる検出窓65を、回転テーブル31を挟んで反対側に設置する。ワーク10は透過性の材質であり、回転テーブル31やトレイ34についても透光性の部材で構成する。ワーク10を透過する光を透過させる検出窓65を含む光学系に分光部63と解析部61が設置される。解析部61は、透過光のスペクトルを基に、分光透過率特性から膜厚を検出するようにしてもよい。
【0079】
(他の実施形態)
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、下記に示す他の実施形態も包含する。また、本発明は、上記実施形態及び下記の他の実施形態を全て又はいずれかを組み合わせた形態も包含する。更に、これらの実施形態を発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができ、その変形も本発明に含まれる。
【0080】
成膜室4、膜処理室5、監視区画6がチャンバ20の底部側にあり、成膜室4、膜処理室5、監視区画6と回転テーブル31との上下関係が逆となっていてもよい。この場合、回転テーブル31の設置面311は、回転テーブル31が水平方向である場合に下方を向く面、つまり下面となる。成膜装置100の設置面は、床面であっても、天井であっても、側壁面であってもよい。また、回転テーブル31の配置は、水平に限らず垂直の配置でも傾斜した配置でもよい。また、回転テーブル31の設置面311は、相反する両面に設けられるようにしてもよい。
【0081】
つまり、回転テーブル31の回転平面の方向はどのような方向であってもよく、トレイ34の位置、成膜部40、膜処理部50、検出窓65の位置は、トレイ34に保持されたワーク10が成膜部40及び膜処理部50によって処理可能であり、検出窓65により光照射が可能な位置であればよい。
【0082】
成膜装置100では、膜処理部50によって膜が酸化や窒化等の処理がされ、膜が化合物膜となることにより、膜の光透過性が高まり、膜厚検出が可能となる。成膜装置100では、成膜室4において、プロセスガスを導入してスパッタ粒子を酸化又は窒化させつつ、ワーク10上に成膜することもできる。この場合は、成膜室4で光透過性の高い化合物膜が成膜されており、膜処理部50を排除し、成膜室4の搬送方向下流に監視区画6を設ければよい。即ち、本実施形態において、酸化や窒化等された化合物膜に対して膜厚検出を行うことができれば、膜処理室5の搬送方向下流に監視区画6を設ける構成に限定されない。
【0083】
また、上記実施形態では、監視部60が検出した膜厚に基づいて成膜続行か成膜終了かを判断し、判断結果に基づいて成膜装置の各要素を制御するものとしたが、このようなフィードバック制御は全てのワーク10の成膜処理に行われるものでなくてもよい。例えば、チャンバ20内に複数回、ワーク10を搬入して同じ成膜処理を行う場合、初回に搬入されるワーク10に対しては、フィードバック制御を行い、2回目以降に搬入されるワーク10に対しては、初回でかかった成膜時間に基づいて成膜続行か成膜終了かを判断し、成膜装置の各要素を制御してもよい。即ち、本実施形態においては、任意の時点でチャンバ20内に搬入されるワーク10に成膜される膜厚を検出できればよく、全てのワーク10の膜厚を検出する構成に限定されない。
【符号の説明】
【0084】
10 ワーク
20 チャンバ
20a 天井
20b 内底面
20c 内周面
21 排気口
22 仕切り壁
30 搬送部
31 回転テーブル
311 設置面
32 モータ
33 保持部
34 トレイ
4 成膜室
40 成膜部
41 処理空間
42 ターゲット
421 飛来粒子
43 バッキングプレート
44 電極
46 電源部
47 ガス導入口
48 配管
49 スパッタガス導入部
5 膜処理室
50 膜処理部
51 筒状体
52 検出窓材
53 アンテナ
54 RF電源
55 マッチングボックス
56 ガス導入口
57 配管
58 プロセスガス導入部
59 処理空間
6 監視区画
60 監視部
61 解析部
62 投光部
63 分光部
64 伝送部
65 検出窓
651 外側端面
652 内側端面
65A 中心軸
66 ホルダ
661 包囲壁
67 筐体
68 板状部
681 対向面
70 ロードロック部
80 制御装置
90 排気部
100 成膜装置
G1 スパッタガス
G2 プロセスガス