(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】ロボットコントローラ
(51)【国際特許分類】
H02M 7/06 20060101AFI20241213BHJP
B25J 19/06 20060101ALI20241213BHJP
【FI】
H02M7/06 H
B25J19/06
(21)【出願番号】P 2020203401
(22)【出願日】2020-12-08
【審査請求日】2023-11-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】百瀬 博文
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-014141(JP,A)
【文献】特開2010-074918(JP,A)
【文献】特開2018-011370(JP,A)
【文献】特開平09-233736(JP,A)
【文献】特開昭61-132079(JP,A)
【文献】特開平07-023558(JP,A)
【文献】国際公開第2020/110236(WO,A1)
【文献】特開2013-162719(JP,A)
【文献】特開昭62-114492(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0178994(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/06
B25J 19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業用ロボットの駆動に用いられる外部電源である交流電源から交流電力を供給されて
前記産業用ロボットの駆動と制御を行なうロボットコントローラであって、
前記交流電力を供給し遮断する主回路リレーと、
前記交流電力を整流する整流回路と前記整流回路の出力側に設けられた平滑コンデンサとを有する電源回路と、
前記主回路リレーと前記電源回路との間に設けられた突入電流防止用の抵抗と、
前記抵抗の両端を短絡する短絡リレーと、
前記短絡リレーを制御する電源制御手段と、
前記交流電源を監視して異常を検出する電源測定制御回路と、
を有し、
前記電源測定制御回路は、
前記主回路リレーと前記交流電源との間にあって前記交流電力の電流波形及び電圧波形を検出する検出手段と、
前記検出手段で検出された前記電流波形及び前記電圧波形を記憶し、前記電流波形及び前記電圧波形から電流及び電圧を算出する検出記憶手段と、
前記検出記憶手段に接続して、前記交流電源における異常を検出する異常検出手段と、
を
備え、
前記検出記憶手段は、前記電流波形及び前記電圧波形の少なくとも一方におけるゼロクロス点を検出し、
前記電源制御手段は、前記ゼロクロス点に同期して前記短絡リレーの接点を閉じる制御を行なう、ロボットコントローラ。
【請求項2】
前記電流波形及び前記電圧波形に基づいて、あるいは前記電流及び前記電圧に基づいて電力を算出する電力算出手段をさらに備える、請求項
1に記載のロボットコントローラ。
【請求項3】
前記異常検出手段は、前記異常を検出したときに上位装置に通知する、請求項
1または
2に記載のロボットコントローラ。
【請求項4】
前記電源制御手段は、前記ゼロクロス点に同期して、前記主回路リレーの接点を閉じる制御及び前記主回路リレーの接点を開く制御の少なくとも一方の制御を行なう、請求項
1乃至3のいずれか1項に記載のロボットコントローラ。
【請求項5】
前記電源制御手段は、前記主回路リレーの接点を開く制御を行なうときに、前記ゼロクロス点に同期して前記短絡リレーの接点を開く制御を行なった後に、前記ゼロクロス点に同期して前記主回路リレーの接点を開く制御を行なう、請求項
4に記載のロボットコントローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用ロボットのための電源測定制御回路を備えるロボットコントローラとに関する。
【背景技術】
【0002】
産業用ロボットの動作に用いられる外部電源は、一般に商用の交流電源であり、例えば、単相あるいは三相、200/230V、50/60Hzである商用の交流電源が用いられる。しかしながら、ロボットの設置環境によっては、電圧降下が大きかったり、電圧波形に対してノイズが混入したり、あるいは電圧波形における大きな波形歪みがあるなど、良好な質の外部電源が得られないことがある。波形歪みの例としては、本来ならば正弦波であるべき波形が、その頂点付近で削られて平坦になっているようなものがある。質が良好ではない外部電源にロボットを接続した場合、そのロボットが正常に動作できないことがある。これまでは、ロボットが接続される外部電源の質に関し、ロボットに供給される交流電力の電圧が所定の電圧レベル(公称200Vの交流電源に対して例えば160V)を満たしているかどうかを検出して、所定のレベルに達していなければ「減電圧」と判定して警報を発するなどしていた。
【0003】
ロボットに供給される電流やロボットで消費される電力は、ロボットの機種ごとやロボットがどのような動作を行っているかによって大きく変動する。そのため、あるロボットを正常に動作させることができた外部電源に対し、新たに別のロボットを接続して動作させた場合、新たに接続したロボットが正常に動作しないこともあり得る。ロボットに交流電力を供給する外部電源に起因する不具合を防ぐために、新規にロボットを導入する際には、ロボットに対する入力電流や電力を、例えばオシロスコープ、電流プローブ、電力計などの汎用の測定器を用いて測定している。ロボットの設置後に外部電源に起因すると思われる不具合が発生した場合も、現場に汎用の測定器を持ち込んで外部電源に対する測定を行っている。
【0004】
交流電源に関連する測定に関して特許文献1は、交流電源の電圧及び電流におけるゼロクロスタイミングに基づいて電圧と電流との位相差を求め、電圧、電流及び位相差から電力値を演算することを開示している。同様に特許文献2は、交流電源からの電力の電圧波形におけるゼロクロスタイミングと電流波形におけるゼロクロスタイミングとの位相差に基づいて力率を求め、電圧の実効値と電流の実効値と力率とに基づいて有効電力を算出することを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平2-116759号公報
【文献】特開2017-9774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
産業用ロボットでは、そのロボットの駆動のために用いられる外部電源である交流電源の質を判断する機構として、従来、入力電源電圧が規定値に達しているか否かを判断するものしか設けられていなかった。そのため、交流電源における、例えば電流が増加して電圧降下が大きくなることによる異常や、電流または電圧波形における大きな歪みによる異常などを検出することができなかった。また、ロボットを実際に操作させているときの交流電源からの入力電流や入力電力を知るためには汎用の測定器を別途用意して測定を行う必要があった。
【0007】
本発明の目的は、産業用ロボットの駆動のための電力を供給する外部電源である交流電源を監視してその交流電源の異常を検出することができる電源測定制御回路を備えて、産業用ロボットの制御に用いられるロボットコントローラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のロボットコントローラは、産業用ロボットの駆動に用いられる外部電源である交流電源から交流電力を供給されて産業用ロボットの駆動と制御を行なうロボットコントローラであって、交流電力を供給し遮断する主回路リレーと、交流電力を整流する整流回路と整流回路の出力側に設けられた平滑コンデンサとを有する電源回路と、主回路リレーと電源回路との間に設けられた突入電流防止用の抵抗と、抵抗の両端を短絡する短絡リレーと、短絡リレーを制御する電源制御手段と、交流電源を監視して異常を検出する電源測定制御回路と、を有する。電源測定制御回路は、主回路リレーと交流電源との間にあって交流電力の電流波形及び電圧波形を検出する検出手段と、検出手段で検出された電流波形及び電圧波形を記憶し、電流波形及び電圧波形から電流及び電圧を算出する検出手段と、検出記憶手段に接続して、交流電源における異常を検出する異常検出手段と、を有する。検出記憶手段は、電流波形及び電圧波形の少なくとも一方におけるゼロクロス点を検出し、電源制御手段は、ゼロクロス点に同期して短絡リレーの接点を閉じる制御を行なう。
【0014】
本発明のロボットコントローラでは電源測定制御回路を設けるとともに、電源測定制御回路において、交流電源からの交流電力の電流波形及び電圧波形を検出する検出手段を主回路リレーよりも交流電源側の位置に設け、さらに、検出手段で検出された電流波形及び電圧波形を記憶し、電流波形及び電圧波形から電流及び電圧を算出する検出記憶手段と、検出記憶手段に接続して、交流電源における異常を検出する異常検出手段と、を設けることにより、汎用の測定器を用いることなく、外部電源である交流電源の質を評価し、交流電源における異常を検出することができるようになる。また本発明のロボットコントローラでは、電源投入時に平滑コンデンサに流れる突入電流を制限できるようになるとともに、ゼロクロス点に合わせて短絡リレーの接点が閉じられるので、短絡リレーの接点の損耗を低減することが可能になる。
【0015】
本発明のロボットコントローラでは、電流波形及び電圧波形に基づいて、あるいは電流及び電圧に基づいて電力を算出する電力算出手段をさらに備えてもよい。電力算出手段を設けることにより、産業用ロボットへの入力電力を知ることができ、ロボットでの大まかな電力消費を知ることができる。
【0016】
本発明のロボットコントローラでは、異常検出手段は、異常を検出したときに上位装置に通知するように構成してもよい。ロボットコントローラに対して指令を送信して産業用ロボットの制御を行なう上位装置があるときにその上位装置に対して異常の発生を通知できるようにすることにより、上位装置側において交流電源における異常の発生を知ることができ、異常に適切に対応できるようになる。
【0018】
本発明のロボットコントローラでは、検出記憶手段がゼロクロス点を検出する場合に、電源制御手段が、ゼロクロス点に同期して、主回路リレーの接点を閉じる制御及び前記主回路リレーの接点を開く制御の少なくとも一方の制御を行なってもよい。ゼロクロス点に同期して主回路リレーの接点の開閉を行うことにより、主回路リレーの損耗を低減することができる。特に、主回路リレーの接点を開く制御を行なうときには、ゼロクロス点に同期して短絡リレーの接点を開く制御を行なった後に、ゼロクロス点に同期して主回路リレーの接点を開く制御を行なうことが好ましい。このような制御を行なうことで、主回路リレーと短絡リレーの両方の接点の損耗を低減することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、産業用ロボットの駆動のための電力を供給する外部電源である交流電源を監視して交流電源の異常を検出することができる電源測定制御回路を備えるロボットコントローラを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施の一形態のロボットコントローラの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。本発明に基づく電源測定制御回路は、産業用ロボットの駆動のための電力を供給する外部電源である交流電源を監視して交流電源の異常を検出することができるものであって、通常、産業用ロボットの駆動と制御に用いられるロボットコントローラの内部に設けられる。
図1は、本発明の実施の一形態のロボットコントローラの構成を示している。
【0022】
図1に示すロボットコントローラは、例えば商用電源である交流電源10から交流電力が供給され、外部から入力する指令に基づいて産業用ロボットの各軸のモータ60を制御する。ロボットコントローラの内部には、交流電源10からの交流電力が供給されて直流電力を出力する電源回路26が設けられている。電源回路26には交流電力が供給されて整流する全波整流回路27と、全波整流回路27が出力する脈流を平滑する平滑コンデンサ28とが設けられている。電源回路26で得られた直流電力は、短絡保護ヒューズ29を介し、モータ60を駆動しサーボ制御するサーボドライバ51に供給される。さらにロボットコントローラは、ロボットコントローラとしての基本的な制御を実行する主制御部50を備えている。主制御部50は、上位装置、例えば、産業用ロボットのユーザが使用する装置に接続しており、例えば、CPU(中央処理装置)あるいはマイクロプロセッサによって構成されている。サーボドライバ51は、外部指令に基づいてモータ60の駆動制御を行なう主制御部50からの指令により、供給された直流電力を使用してサーボ制御によりモータ60を駆動する。
【0023】
モータ60からサーボドライバ51を介して電源回路26側に回生電流が流れたときに回生エネルギーを消費するために、サーボドライバ51における直流電力の入力に対して放電抵抗32が並列に設けられ、さらに、放電抵抗32に流れる電流を断続するスイッチ素子33が設けられている。図示した例では、スイッチ素子33としてNPN型のバイポーラトランジスタが用いられ、放電抵抗32の一端は、サーボコントローラ51の直流入力の正(+)側の導線に接続し、放電抵抗32の他端はスイッチ素子33であるトランジスタのコレクタに接続している。このトランジスタのエミッタは、サーボコントローラ51の直流入力の負(-)側の導線に接続している。また、電源回路26の出力側での電圧を検出するために、短絡保護ヒューズ29よりもサーボドライバ51の側に、直流電圧検出器30が設けられている。
【0024】
交流電源10と電源回路26との間には、電源回路26への交流電力の供給と遮断を行う主回路リレー23が設けられている。産業用ロボットでは、安全のための所定の条件が満たされない限りモータが駆動されてはならないので、主回路リレー23は、安全のための所定の条件が満たされたかどうかを判定する安全判定回路(不図示)からの安全出力信号に応じて接点が閉じて交流電源10からの交流電力を電源回路26に供給する。安全出力信号は、所定の遅延時間を与える遅延素子31を介して主回路リレー23のコイル23aに加えられる。主回路リレー23と電源回路26との間には、電源回路26の起動時に平滑コンデンサ28に流れる突入電流を制限するために抵抗24が設けられ、さらに、抵抗24の両端を短絡するための接点を有する短絡リレー25が設けられている。
【0025】
主回路リレー23よりも交流電源10に近い位置に、交流電源10から電源回路26に供給される交流電力の電流波形及び電圧波形をそれぞれ検出する交流電流検出部21及び交流電圧検出部22が設けられている。交流電流検出部21及び交流電圧検出部22は検出手段に相当する。交流電流検出部21は、交流電源10から主回路リレー23に向かう導線に挿入されたシャント抵抗によって構成され、シャント抵抗の両端の間の電圧である電圧信号によって、検出した電流波形を出力する。一方、交流電圧検出部22は、交流電源10と主回路リレー23とを接続する一対の導線の間に配置された分圧抵抗によって構成されており、分圧抵抗によって分圧された電圧である電圧信号によって、検出した電圧波形を出力する。ここでは交流電源10が単相であるものとしているが、三相である場合には、3本の導線うちの2本の導線にそれぞれ挿入された2個のシャント抵抗によって交流電流検出部21が構成され、3本の導線のうちの一本と、残りの2本のそれぞれとの間に設けられた2組の分圧抵抗によって交流電圧検出部22が構成される。交流電流検出部21及び交流電圧検出部22でそれぞれ検出された電流波形及び電圧波形が入力される検出処理部40が設けられている。ここでは導線に挿入されたシャント抵抗により交流電力の電流波形を検出する場合を説明しているが、本発明において利用可能な電流波形の検出方法はシャント抵抗を用いるものに限定されない。交流電流検出部21として、ホール素子を用いて電流波形を検出するものや、カレントトランスなどによって電流波形を検出するものを用いることもできる。
【0026】
検出処理部40は、アナログ/デジタル(A/D)変換機能を有するCPU〈中央処理装置〉あるいはマイクロプロセッサから構成されており、検出記憶部41及び電力算出部42を論理的に備えている。検出記憶部41及び電力算出部42は、それぞれ、検出記憶手段及び電力算出手段に相当する。検出記憶部41は、電流波形を示す電圧信号と電圧波形を示す電圧信号とをそれぞれアナログ/デジタル変換し、それらの電流波形及び電圧波形から電流及び電圧の各々の実効値を算出するとともに、電流波形及び電圧波形を記憶する。実効値の算出では、波形歪みの影響を避けるために、単純に波高値に基づいて実効値を求めるのではなく、瞬時値を積算して実効値を求めることが好ましい。検出記憶部41は、電流波形及び電圧波形の各々でのゼロクロス点を検出することもできる。電力算出部42は、検出した電流と電圧とを乗算することにより、あるいは電流波形での瞬時値と電圧波形での瞬時値との積を積算することによって、交流電源10から入力した電力を算出して記憶する。入力電力の算出が不要であるときは、必ずしも電力算出部42を設けなくてもよい。
【0027】
本実施形態のロボットコントローラは、さらに、主回路リレー23、短絡リレー25及びスイッチ素子33の制御を行なう電源制御部45を備えている。電源制御部45は、例えばCPUあるいはマイクロプロセッサによって構成されており、検出処理部40及び主制御部50と信号線を介して接続している。特に本実施形態では電源制御部43は、検出処理部40によって検出された電流、電圧及び電力や、検出処理部40に記憶されている電流波形、電圧波形などに基づいて、交流電源10における異常を検出する異常検出部46を備えている。異常検出部46は異常検出手段に相当する。異常検出部46は、交流電源10における異常を検出した場合に、主制御部50を介して上位装置に異常の発生を通知することができる。また、主制御部50を介して上位装置から入力した要求に応じ、算出された電流、電圧及び電力の値や、検出処理部40に格納されている電流波形、電圧波形あるいは電力波形などを上位装置に向けて出力する。交流電流検出部21、交流電圧検出部22、検出処理部40及び異常検出部46によって、本発明に基づく電源測定制御回路が構成される。
【0028】
このように電源測定制御回路をロボットコントローラに設けることにより、オシロスコープや電流プローブ、電力計などの汎用の測定器を用いることなく、ロボットごとに、さらにはロボットの動作ごとに、交流電源10からの電源入力電圧の実効値、最大値及び波形と、電源入力電流の実効値、最大値及び波形と、入力電力とを求めることが可能になる。電源入力電流や電源入力電圧を検出することにより、許容入力電流を超過したことや、過電圧、減電圧の発生などを検出することができる。入力電力を用いれば、ロボットのモータ60での発熱や電力消費の概算を求めることができ、さらには許容電力を超過したことなどを検出することができる。波高値から期待される実効値が、波形における瞬時値を積算して得られる実効値と大きくずれているときは、交流電源10における波形歪みが大きいと判断することができる。
【0029】
次に、本実施形態における電源制御部45による主回路リレー23、短絡リレー25及びスイッチ素子33の制御について説明する。まず、スイッチ素子33の制御を説明する。モータ60からの回生電流がサーボドライバ51から電源回路26側に流れると、電源回路26の出力側の直流電圧が上昇する。この直流電圧が上昇しすぎると、電源回路26に接続する素子や機器の耐電圧を超過するおそれがある。電源回路26の出力側に設けられている直流電圧検出器30で検出された電圧が電源制御部45に入力しており、電源制御部45は、直流電圧検出器30での検出電圧がしきい値を超えたらスイッチ素子33であるトランジスタのベースに信号を出力してトランジスタを導通状態にし、回生エネルギーが放電抵抗32によって消費されるようにする。回生エネルギーが消費されることによって電源回路26の出力側の電圧が低下するから、直流電圧検出器30での検出電圧が低下したら、電源制御部45はトランジスタを遮断状態に制御し、放電抵抗32による回生エネルギーの消費を中止させる。これにより、電源回路26の出力側の直流電圧は常にしきい値以下に保たれることになる。
【0030】
主回路リレー23の接点を閉じて電源回路26を起動したとき、電源回路26の平滑コンデンサ28に大きな突入電流が流れるおそれがあり、電源回路26の入力側には突入電流制限用の抵抗24が設けられている。平滑コンデンサ28の充電電圧が十分に上昇したのちは突入電流の制限は不必要となるので、抵抗24の両端を短絡リレー25で短絡する必要がある。電源制御部45は、短絡リレー25のコイル25aを駆動できるように構成されており、主回路リレー23の接点が閉じてから例えば一定の時間の経過後に、あるいは直流電圧検出器30で検出される平滑コンデンサ28の充電電圧が一定値を超えたら、短絡リレー25の接点を閉じる制御を行なう。電源制御部45は、検出処理部40を介し、交流電源10からの交流電力の電圧波形あるいは電流波形におけるゼロクロスタイミングを知ることができるので、交流電力の波形におけるゼロクロス点の近傍のタイミングで短絡リレー25の接点を閉じるように制御をすることができる。交流電力の波形におけるゼロクロス点の近傍のタイミングで短絡リレー14の接点を閉じるようにすることにより、接点を閉じる瞬間に接点を流れる電流が小さくなるので、接点の損耗を低減することができる。
【0031】
産業用ロボットにおける安全確保の観点からは、主回路リレー23の接点は、原則として安全出力信号によって制御される。本実施形態では安全制御信号は電源制御部45にも供給されているから、電源制御部45は、検出処理部40を介し、交流電源10からの交流電力の電圧波形におけるゼロクロスタイミングを知ることできる。そこで、安全出力信号そのものによって主回路リレー12の接点を閉じる制御するのではなく、安全出力信号が出力されていてかつ交流電力の電圧波形でのゼロクロス点に同期するタイミングで電源制御部45が主回路リレー23の接点を閉じる制御を行なうようにしてもよい。交流電力の電圧波形におけるゼロクロス点の近傍のタイミングで主回路リレー23の接点を閉じるようにすることにより、接点を閉じる瞬間に接点を流れる電流が小さくなるので、主回路リレー23の接点の損耗を低減することができる。
【0032】
非常停止などの理由により安全出力信号がオフとなって主回路リレー23の接点を開かなければならないときも、ゼロクロス点の近傍で接点を開くようにすることにおり、接点を開くことによって遮断しなければならない電流が小さくなるので、接点でのアーク放電の発生を抑制でき、接点の損耗を低減することができる。非常停止などで主回路リレー23の接点を開かなければならないとき、電源制御部45は、交流電力の波形でのゼロクロス点の近傍でまず短絡リレー25の接点を開き、続いて、交流電力の波形でのゼロクロス点の近傍で主回路リレー23の接点を開く制御を行なうことができる。このように制御すれば、両方のリレー23,25の接点の損耗を防ぐことができる。またこの制御は、交流電力での1サイクル分の時間内に終わらせることができ、非常停止時の安全確保に支障をきたすことはない。
【0033】
以上説明したように本実施形態によれば、交流電源10から入力する交流電力での電流波形及び電圧波形を検出して電流及び電圧を求め、これらの波形を記憶し、さらに電力を検出することができるようにすることにより、汎用の計測器などを持ち込むことなく、産業用ロボットの駆動に用いる交流電源10の異常などを検出できるようになる。また、ロボットの概略の消費電力などを知ることができるようになるとともに、ゼロクロスタイミングで各リレー23,25の接点の開閉を行えるようになって、リレー23,25の接点の損耗を低減することができる。
【符号の説明】
【0034】
10…交流電源、21…交流電流検出部、22…交流電圧検出部、23…主回路リレー;24…抵抗;25…短絡リレー;26…電源回路;27…全波整流回路;28…平滑コンデンサ:29…短絡保護ヒューズ;30…直流電圧検出器;31…遅延素子;32…放電抵抗、33…スイッチ素子、40…検出処理部、41…検出記憶部、42…電力算出部、45…電源制御部、46…異常検出部、50…主制御部;51…サーボドライバ、60
…モータ。