(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】表面修飾ナノダイヤモンドおよび表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 32/28 20170101AFI20241213BHJP
C01B 32/15 20170101ALI20241213BHJP
【FI】
C01B32/28
C01B32/15
(21)【出願番号】P 2020204646
(22)【出願日】2020-12-10
【審査請求日】2023-10-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】柏木 健
【審査官】若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-303104(JP,A)
【文献】国際公開第2019/116936(WO,A1)
【文献】特開2010-202458(JP,A)
【文献】特開2017-186234(JP,A)
【文献】特開2020-172406(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0158549(US,A1)
【文献】BASIUK, Elena V. et al.,Solvent-free covalent functionalization of nanodiamond with amines,Appl. Surf. Sci.,NL,Elsevier B.V.,2012年12月20日,Vol. 275,pp. 324-334,DOI: 10.1016/j.apsusc.2012.12.062
【文献】ZHENG, Wen-Wei et al.,Organic functionalization of ultradispersed nanodiamond: synthesis and applications,J. Mater. Chem.,英国,The Royal Society of Chemistry,2009年11月28日,Vol. 19, No. 44,pp. 8432-8441,DOI: 10.1039/b904302k
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/00-32/991
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノダイヤモンド粒子と、前記ナノダイヤモンド粒子を表面修飾する下記式(1)で表される基とを含む、表面修飾ナノダイヤモンド。
-X-R
1 (1)
[式(1)中、Xは、
-NH-を示し、Xから左に伸びる結合手はナノダイヤモンド粒子に結合する。R
1は、置換基を有していてもよい2つの炭化水素基が、エステル結合、エーテル結合
、またはアミド結合を介して結合した一価の有機基を示す。]
【請求項2】
前記R
1における前記一価の有機基中の炭素原子数は5~30であり、前記2つの炭化水素基は直鎖状または分岐鎖状炭化水素基である、請求項
1に記載の表面修飾ナノダイヤモンド。
【請求項3】
有機分散媒と、前記有機分散媒中に分散した請求項
1又は2に記載の表面修飾ナノダイヤモンドとを含み、前記表面修飾ナノダイヤモンドの平均分散粒子径D50が1~100nmである、ナノダイヤモンド分散組成物。
【請求項4】
前記有機分散媒のSP値が6.0~23.0(cal/cm
3)
1/2である請求項
3に記載のナノダイヤモンド分散組成物。
【請求項5】
表面にヒドロキシ基を有するナノ炭素粒子が水にナノ分散した状態で、酸触媒の存在下、前記ナノ炭素粒子と下記式(2)で表される化合物とを反応させて表面修飾ナノ炭素粒子を得る工程を有
し、
前記ナノ炭素粒子がナノダイヤモンド粒子である表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
R
1-X-H (2)
[式(2)中、Xは、
-NH-を示す。R
1は、置換基を有していてもよい2つの炭化水素基が、エステル結合、エーテル結合
、またはアミド結合を介して結合した一価の有機基を示す。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表面修飾ナノダイヤモンドおよび表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノ炭素粒子などのナノサイズの微細な物質は、バルク状態では発現し得ない新しい特性を有することが知られている。例えば、ナノダイヤモンド粒子(=ナノサイズのダイヤモンド粒子)は、機械的強度、高屈折率、熱伝導性、絶縁性、酸化防止性、樹脂等の結晶化を促進する作用等を有する。しかし、ナノダイヤモンド粒子は、一般に、表面原子の割合が大きいので、隣接粒子の表面原子間で作用し得るファンデルワールス力の総和が大きく、凝集(aggregation)しやすい。これに加えて、ナノダイヤモンド粒子の場合、隣接結晶子の結晶面間クーロン相互作用が寄与して非常に強固に集成する凝着(agglutination)という現象が生じ得る。そのため、ナノダイヤモンド粒子を一次粒子の状態で有機溶媒や樹脂中に分散させることは非常に困難であった。そこで、ナノダイヤモンド粒子の表面を修飾することによりナノダイヤモンド粒子に分散性を付与し、凝集を抑制することが行われている。
【0003】
表面が修飾されたナノダイヤモンドとしては、例えば、ナノダイヤモンド粒子に、末端にヒドロキシ基を有する一価の有機基がエーテル結合を介して導入された表面修飾ナノダイヤモンドが知られている(非特許文献1参照)。また、ナノダイヤモンド粒子に、末端にアミノ基を有する一価の有機基がアミノ結合を介して導入された表面修飾ナノダイヤモンドが知られている(非特許文献2参照)。
【0004】
また、一価の有機基をナノダイヤモンド表面に導入した表面修飾ナノダイヤモンドを得る方法としては、例えば、ナノダイヤモンド粒子の粉体を用いて反応剤と反応させる方法(非特許文献1、2参照)、有機溶媒中でジルコニアビーズ等を用いてビーズミル処理することでナノダイヤモンド粒子の凝集体を解砕しつつ反応剤と反応させる方法が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Journal of Materials Chemistry 19 (2009) 8432-8441
【文献】Chemistry of Materials 16 (2004) 3924-3930
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、非特許文献1に記載の末端にヒドロキシ基を有する一価の有機基が表面修飾されたナノダイヤモンドや、非特許文献2に記載の末端にアミノ基を有する一価の有機基が表面修飾されたナノダイヤモンドは、有機溶剤に対する分散性が劣っていた。
【0008】
従って、第一の本開示の目的は、有機溶剤に対する分散性に優れる表面修飾ナノダイヤモンドを提供することにある。
【0009】
また、ナノダイヤモンド粒子の粉体を用いて反応剤と反応させて表面修飾ナノダイヤモンド等の表面修飾ナノ炭素粒子を得る方法は、反応剤の溶媒への溶解性の観点から、ビーズミル処理などにより解砕して水分散液を得た後、乾燥または脱溶媒してナノダイヤモンド粒子の粉体を得、反応剤の溶解性に優れる溶媒に分散させる必要があり、手間がかかるという問題があった。また、上記特許文献1に開示があるようにビーズミル処理により解砕と反応を同時に行う場合、加熱や脱水縮合などの特定の反応を行うことが困難であるため導入可能な表面修飾基が制限される、ビーズミルに用いるジルコニアビーズ由来のジルコニアが混入するなどの問題があった。
【0010】
従って、第二の本開示の目的は、様々な表面修飾基を導入することができ、ジルコニアの混入が少なく、且つ容易に表面修飾ナノ炭素粒子を製造することができる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の発明者は、上記第一の目的を達成するため鋭意検討した結果、特定の表面修飾ナノダイヤモンドが有機溶媒に対する分散性に優れることを見出した。また、本開示の発明者は、上記第二の目的を達成するため鋭意検討した結果、表面にヒドロキシ基を有するナノ炭素粒子が水にナノ分散した状態で、酸触媒の存在下、ナノ炭素粒子と特定の反応剤とを反応させることで、様々な表面修飾基を導入することができ、ジルコニアの混入が少なく、且つ容易に表面修飾ナノ炭素粒子を製造することができることを見出した。本開示はこれらの知見に基づいて完成させたものに関する。
【0012】
本開示は、ナノダイヤモンド粒子と、上記ナノダイヤモンド粒子を表面修飾する下記式(1)で表される基とを含む、表面修飾ナノダイヤモンドを提供する。
-X-R1 (1)
[式(1)中、Xは、-NH-または-O-を示し、Xから左に伸びる結合手はナノダイヤモンド粒子に結合する。R1は、置換基を有していてもよい2つの炭化水素基が、エステル結合、エーテル結合、カルボニル基、またはアミド結合を介して結合した一価の有機基を示す。]
【0013】
上記式(1)中、Xは、-NH-を示し、R1は、置換基を有していてもよい2つの炭化水素基がエステル結合、エーテル結合、またはアミド結合を介して結合した一価の有機基を示すことが好ましい。
【0014】
上記R1における上記一価の有機基中の炭素原子数は5~30であり、上記2つの炭化水素基は直鎖状または分岐鎖状炭化水素基であることが好ましい。
【0015】
また、本開示は、有機分散媒と、上記有機分散媒中に分散した上記表面修飾ナノダイヤモンドとを含み、上記表面修飾ナノダイヤモンドの平均分散粒子径D50が1~100nmである、ナノダイヤモンド分散組成物を提供する。
【0016】
上記有機分散媒のSP値は6.0~23.0(cal/cm3)1/2であることが好ましい。
【0017】
また、本開示は、表面にヒドロキシ基を有するナノ炭素粒子が水にナノ分散した状態で、酸触媒の存在下、上記ナノ炭素粒子と下記式(2)で表される化合物とを反応させて表面修飾ナノ炭素粒子を得る工程を有する表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法を提供する。
R1-X-H (2)
[式(2)中、Xは、-NH-または-O-を示す。R1は、置換基を有していてもよい2つの炭化水素基が、エステル結合、エーテル結合、カルボニル基、またはアミド結合を介して結合した一価の有機基を示す。]
【0018】
上記ナノ炭素粒子はナノダイヤモンド粒子であることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本開示の表面修飾ナノダイヤモンドは、有機溶媒に対する分散性に優れる。また、本開示の表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法によれば、様々な表面修飾基を導入することができ、ジルコニアの混入が少なく、且つ容易に表面修飾ナノ炭素粒子を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施例2で得られた表面修飾ナノダイヤモンドのFT-IRスペクトルを示す図である。
【
図2】実施例4で得られた表面修飾ナノダイヤモンドのFT-IRスペクトルを示す図である。
【
図3】実施例6で得られた表面修飾ナノダイヤモンドのFT-IRスペクトルを示す図である。
【
図4】実施例7で得られた表面修飾ナノダイヤモンドのFT-IRスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[表面修飾ナノダイヤモンド]
本開示の一実施形態に係る表面修飾ナノダイヤモンドは、ナノダイヤモンド粒子と、上記ナノダイヤモンド粒子を表面修飾する下記式(1)で表される基とを含む。なお、本明細書において、上記式(1)で表される基を「表面修飾基(L)」と称する場合がある。上記表面修飾ナノダイヤモンドは、表面修飾基(L)を一種のみ有していてもよいし、二種以上を有していてもよい。
-X-R1 (1)
[式(1)中、Xは、-NH-または-O-を示し、Xから左に伸びる結合手はナノダイヤモンド粒子に結合する。R1は、置換基を有していてもよい2つの炭化水素基が、エステル結合、エーテル結合、カルボニル基、またはアミド結合を介して結合した一価の有機基を示す。]
【0022】
上記ナノダイヤモンド粒子は、特に限定されず、公知乃至慣用のナノダイヤモンド粒子を用いることができる。ナノダイヤモンド粒子は本来的に製造過程で生じるヒドロキシ基を有している。ナノダイヤモンド粒子は、一種のみを用いてもよいし二種以上を用いてもよい。
【0023】
上記ナノダイヤモンド粒子としては、例えば、爆轟法ナノダイヤモンド(すなわち、爆轟法によって生成したナノダイヤモンド)や、高温高圧法ナノダイヤモンド(すなわち、高温高圧法によって生成したナノダイヤモンド)を使用することができる。中でも、分散媒中の分散性がより優れる点で、すなわち一次粒子の粒子径が一桁ナノメートルである点で、爆轟法ナノダイヤモンドが好ましい。
【0024】
上記爆轟法ナノダイヤモンドには、空冷式爆轟法ナノダイヤモンド(すなわち、空冷式爆轟法によって生成したナノダイヤモンド)と水冷式爆轟法ナノダイヤモンド(すなわち、水冷式爆轟法によって生成したナノダイヤモンド)が含まれる。中でも、空冷式爆轟法ナノダイヤモンドが水冷式爆轟法ナノダイヤモンドよりも一次粒子が小さい点で好ましい。
【0025】
爆轟は大気雰囲気下で行ってもよく、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気、二酸化炭素雰囲気などの不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。
【0026】
上記式(1)中、Xは、-NH-または-O-を示し、Xから左に伸びる結合手はナノダイヤモンド粒子に結合する。なお、これらの列挙された各結合において、左に伸びる結合手はナノダイヤモンド粒子に結合し、右に伸びる結合手はR1に結合する。
【0027】
上記式(1)中、R1は、置換基を有していてもよい2つの炭化水素基が、エステル結合、エーテル結合、カルボニル基、またはアミド結合を介して結合した一価の有機基を示し、Xと結合する原子は炭素原子である。すなわち、上記式(1)で表される基は下記式(1’)で表される基である。
-X-R2-Y-R3 (1’)
[式(1’)中、Xは、-NH-または-O-を示し、Xから左に伸びる結合手はナノダイヤモンド粒子に結合する。R2およびR3は、同一または異なって、置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、Yは、エステル結合、エーテル結合、カルボニル基、またはアミド結合を示す。]
【0028】
上記一価の有機基中における上記2つの炭化水素基(すなわち上記R2およびR3における炭化水素基)としては、例えば、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、これらが2以上結合した基などが挙げられる。上記一価の有機基における2つの炭化水素基は、同一であってもよいし異なっていてもよい。
【0029】
上記脂肪族炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基などが挙げられる。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、デシル基、ドデシル基等のC1-22アルキル基(好ましくはC2-20アルキル基、より好ましくはC3-18アルキル基)などが挙げられる。アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、メタリル基、1-プロペニル基、イソプロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、5-ヘキセニル基等のC2-22アルケニル基(好ましくはC4-20アルケニル基、より好ましくはC8-18アルケニル基)などが挙げられる。アルキニル基としては、例えば、エチニル基、プロピニル基等のC2-22アルキニル基(好ましくはC4-20アルキニル基、より好ましくはC8-18アルキニル基)などが挙げられる。
【0030】
上記脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロドデシル基等のC3-12シクロアルキル基;シクロヘキセニル基等のC3-12シクロアルケニル基;ビシクロヘプタニル基、ビシクロヘプテニル基等のC4-15架橋環式炭化水素基などが挙げられる。
【0031】
上記芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等のC6-14アリール基(特に、C6-10アリール基)などが挙げられる。
【0032】
脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素基とが結合した基としては、例えば、シクロへキシルメチル基、メチルシクロヘキシル基などが挙げられる。脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合した基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基等のC7-18アラルキル基(特に、C7-10アラルキル基)、シンナミル基等のC6-10アリール-C2-6アルケニル基、トリル基等のC1-4アルキル置換アリール基、スチリル基等のC2-4アルケニル置換アリール基などが挙げられる。
【0033】
上記炭化水素基が有していてもよい置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;シアノ基;イソシアナート基;イソチオシアナート基;置換または無置換シリル基;チオール基;アジ基などが挙げられる。
【0034】
上記R2としては、直鎖状または分岐鎖状炭化水素基が好ましく、より好ましくはアルキル基である。また、上記R2は、炭素原子数2~10の炭化水素基であることが好ましく、より好ましくは炭素原子数3~7の炭化水素基である。R2が上記炭化水素基であると、合成時においてナノダイヤモンドと原料となる化合物(後述の式(2)で表される化合物)との立体障害が小さく反応性に優れる。
【0035】
上記R3としては、直鎖状もしくは分岐鎖状炭化水素基、またはこれと芳香族炭化水素基とが結合した基(特に、末端が芳香族炭化水素基である基)が好ましい。また、上記R3は、炭素原子数3~20の炭化水素基であることが好ましく、より好ましくは炭素原子数4~18の炭化水素基である。R3が上記炭化水素基であると、脂溶性が高く、様々な有機分散媒に対する分散性に優れる。
【0036】
上記R1における一価の有機基中の炭素原子数は5~30が好ましく、より好ましくは7~25である。上記炭素原子数が5以上であると、表面修飾基同士の立体障害が充分となり分散媒中で分散しやすい。上記炭素原子数が30以下であると、表面修飾基同士が絡まり合うのを抑制し、分散媒中で分散しやすい。また、R2およびR3の合計の炭素原子数が上記範囲内であることが好ましい。
【0037】
上記式(1’)中、Yは、エステル結合、エーテル結合、カルボニル基、またはアミド結合を示す。上記エステル結合は、-C(=O)-O-および-O-C(C=O)-のいずれであってもよい。また、上記アミド結合は、-C(=O)-NH-および-NH-C(=O)-のいずれであってもよい。
【0038】
上記式(1)中、Xが-NH-である場合、R1は、置換基を有していてもよい2つの炭化水素基がエステル結合、エーテル結合、またはアミド結合(好ましくはエステル結合またはエーテル結合)を介して結合した一価の有機基(すなわち、上記式(1’)中のYがエステル結合、エーテル結合、またはアミド結合)であることが好ましい。また、この場合、上記R1における一価の有機基中の炭素原子数は5~30であることが好ましく、より好ましくは5~25である。また、R2およびR3の合計の炭素原子数が上記範囲内であることが好ましい。また、Xが-NH-である場合、上記式(1)におけるR1中の2つの炭化水素基(すなわち、上記式(1’)中のR2およびR3)は、直鎖状または分岐鎖状炭化水素基であることが好ましい。
【0039】
特に、R1が、置換基を有していてもよい2つの炭化水素基がエステル結合を介して結合した一価の有機基(すなわち、上記式(1’)中のYがエステル結合)である場合、上記R1における一価の有機基中の炭素原子数は12~30であることが好ましく、より好ましくは14~26である。また、R2およびR3の合計の炭素原子数が上記範囲内であることが好ましい。また、この場合、R2の炭素原子数は3~7が好ましく、R3の炭素原子数は8~20が好ましい。
【0040】
また、R1が、置換基を有していてもよい2つの炭化水素基がエーテル結合を介して結合した一価の有機基(すなわち、上記式(1’)中のYがエーテル結合)である場合、上記R1における一価の有機基中の炭素原子数は4~10であることが好ましく、より好ましくは5~8である。また、R2およびR3の合計の炭素原子数が上記範囲内であることが好ましい。また、この場合、R2の炭素原子数は2~5が好ましく、R3の炭素原子数は3~8が好ましい。
【0041】
上記式(1)中、Xが-O-である場合、R1は、置換基を有していてもよい2つの炭化水素基が、エステル結合、エーテル結合、またはアミド結合(好ましくはエステル結合またはエーテル結合)を介して結合した一価の有機基(すなわち、上記式(1’)中のYがエステル結合、エーテル結合、またはアミド結合)であることが好ましい。また、この場合、上記R1における一価の有機基中の炭素原子数は5~30であることが好ましく、より好ましくは5~25である。また、R2およびR3の合計の炭素原子数が上記範囲内であることが好ましい。また、Xが-O-である場合、上記式(1)におけるR1中の2つの炭化水素基(すなわち、上記式(1’)中のR2およびR3)は、直鎖状または分岐鎖状炭化水素基であることが好ましい。
【0042】
上記表面修飾ナノダイヤモンドを構成するナノダイヤモンド粒子は、ナノダイヤモンドの一次粒子を含むことが好ましい。その他、上記一次粒子が凝集(凝着)した二次粒子を含んでいてもよい。また、上記表面修飾ナノダイヤモンドの表面には、表面修飾基(L)以外にも、その他の表面官能基(例えば、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基など)を一種または二種以上有していてもよい。
【0043】
上記表面修飾ナノダイヤモンドにおける、表面修飾基(L)に対するナノダイヤモンドの質量比[ナノダイヤモンド/表面修飾基(L)]は、特に限定されないが、0.5以上であることが好ましく、より好ましくは2.5以上である。また、上記質量比は、17.0以下であることが好ましく、より好ましくは15.0以下、さらに好ましくは10.0以下、特に好ましくは5.0以下である。上記質量比が0.5以上であると、ナノダイヤモンド材料としての特性を損ないにくい。上記質量比が17.0以下であると、表面修飾基(L)の修飾度が充分となり、有機溶媒における分散性により優れる。上記質量比は、熱重量分析により測定される200℃から450℃の重量減少率に基づき、減少した重量を表面修飾基(L)の質量として求められる。
【0044】
上記表面修飾ナノダイヤモンドは、有機溶媒に対する分散性に優れ、また、上記式(1)で表される基におけるXおよびR1や、上記式(1’)で表される基におけるY、R2、およびR3の調整などによりナノダイヤモンド粒子の構造をコントロールすることで、様々な有機溶媒に対する分散性と樹脂に対する親和性が実現される。このため、CMP向け研磨剤やドレッサー用材料、燃料電池向け耐腐食性電極メッキ材料、切削工具等の高硬度表面コーティング層形成材料、高耐熱・高熱伝導材料など、工学応用分野で使用できる。
【0045】
上記表面修飾ナノダイヤモンドの粒子径(D50)は、例えば400nm以下であり、好ましくは300nm以下、より好ましくは100nm以下、さらに好ましくは50nm以下である。表面修飾ナノダイヤモンドの粒子径(D50)の下限は、例えば5nmである。また、粒子径(D90)は、例えば500nm以下であり、好ましくは400nm以下、より好ましくは150nm以下である。表面修飾ナノダイヤモンドの粒子径(D90)の下限は、例えば50nmである。表面修飾ナノダイヤモンドの粒子径が小さいほど、後述の複合材料において高い透明性が得られる点で好ましい。なお、表面修飾ナノダイヤモンドの(平均)粒子径は、動的光散乱法によって測定することができる。
【0046】
上記表面修飾ナノダイヤモンドは、後述の表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法により製造することができる。
【0047】
[表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法]
本開示の一実施形態に係る表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法は、表面にヒドロキシ基を有するナノ炭素粒子が水にナノ分散した状態で、酸触媒の存在下、上記ナノ炭素粒子と下記式(2)で表される化合物とを反応させて表面修飾ナノ炭素粒子を得る工程(「反応工程」と称する場合がある)を少なくとも有する。
R1-X-H (2)
[式(2)中、Xは、-NH-または-O-を示す。R1は、置換基を有していてもよい2つの炭化水素基が、エステル結合、エーテル結合、カルボニル基、またはアミド結合を介して結合した一価の有機基を示す。]
【0048】
(反応工程)
上記反応工程では、表面にヒドロキシ基を有するナノ炭素粒子が水にナノ分散した状態で、上記ナノ炭素粒子と上記式(2)で表される化合物とを反応させ、上記ナノ炭素粒子におけるヒドロキシ基と上記式(2)で表される化合物における-Hとを脱水させて縮合させることで表面修飾ナノ炭素粒子を得る。
【0049】
上記ナノ炭素粒子は、特に限定されず、公知乃至慣用のナノオーダーの炭素材料(ナノ炭素材料)の粒子を用いることができる。上記ナノ炭素粒子におけるナノ炭素材料としては、例えば、ナノダイヤモンド、フラーレン、酸化グラフェン、ナノグラファイト、カーボンナノチューブ、カーボンナノフィラメント、オニオンライクカーボン、ダイヤモンドライクカーボン、アモルファスカーボン、カーボンブラック、カーボンナノホーン、カーボンナノコイルなどが挙げられる。上記ナノ炭素粒子としては、中でも、ナノダイヤモンド粒子が好ましい。上記ナノ炭素粒子は、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
【0050】
上記式(2)中、XおよびR1は、それぞれ、上記式(1)中におけるXおよびR1と同じである。すなわち、上記式(2)で表される化合物は下記式(2’)で表される化合物である。
R3-Y-R2-X-H (2’)
[式(2’)中、Xは、-NH-または-O-を示す。R2およびR3は、同一または異なって、置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、Yは、エステル結合、エーテル結合、カルボニル基、またはアミド結合を示す。]
【0051】
上記式(2)で表される化合物は上記式(1)で表される基に応じて適宜選択される。上記式(2)で表される化合物は、公知乃至慣用の方法で作製することができる。例えば、上記式(2)で表される化合物が、置換基を有していてもよい2つの炭化水素基がエステル結合を介して結合した構造を有し、且つXが-NH-である場合、アミノアルコールと酸ハライドとのエステル化や、アミノ酸とアルコールとのエステル化により作製することができる。
【0052】
上記反応工程は、ナノ炭素粒子が水にナノ分散した状態、すなわちナノ炭素粒子の水分散組成物中で行われる。上記水分散組成物におけるナノ炭素粒子のメディアン径(D50)は、1~100nmであることが好ましく、より好ましくは1~50nm、さらに好ましくは1~10nmである。上記メディアン径が上記範囲内であると、ナノ炭素粒子表面のヒドロキシ基の量が多く、上記式(2)で表される化合物との反応がより多く進行する。また、得られるアミノ基修飾ナノ炭素粒子の分散性に優れる。
【0053】
上記式(2)で表される化合物は、上記酸触媒の存在下で水に対する溶解性または分散性に優れるものであることが好ましい。なお、上記式(2)で表される化合物が水への溶解性または分散性に乏しい場合、有機溶媒に上記式(2)で表される化合物を溶解または分散させ、水と有機溶媒の混合溶媒系で反応を行うことが可能である。
【0054】
上記有機溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素(特に、直鎖状飽和脂肪族炭化水素);ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素;ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒;メタノール等のアルコール;クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素、クロロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン等のハロゲン化炭化水素;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の鎖状または環状エーテル;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル;メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン等の鎖状ケトン;アセトニトリル等のニトリルなどが挙げられる。上記有機溶媒は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0055】
上記酸触媒は、カルボン酸とアルコールのエステル化、アルコールとアミンの脱水縮合反応、アルコールとチオールの脱水縮合反応などに用いられる公知乃至慣用の酸触媒を用いることができる。上記酸触媒としては、例えば、スルホン酸基含有化合物、塩酸、硝酸、硫酸、無水硫酸、リン酸、ホウ酸、トリハロ酢酸(トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸等)、これらの塩(アンモニウム塩等)、無機固体酸などが挙げられる。上記酸触媒は、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
【0056】
上記酸触媒は、反応時に溶媒や基質に溶解し得る均一系触媒、反応時に溶解しない不均一系触媒のいずれの形態であってもよい。不均一系触媒としては、例えば、酸成分が担体に担持された担持型触媒が挙げられる。
【0057】
上記スルホン酸基含有化合物としては、例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸、ドデカンスルホン酸、ヘキサデカンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ヘプタデカフルオロオクタンスルホン酸等の脂肪族スルホン酸;10-カンファースルホン酸等の脂環式スルホン酸;ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、2,4,6-トリメチルベンゼンスルホン酸、ヘキシルベンゼンスルホン酸、オクチルベンゼンスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸(DBSA)、オクタデシルベンゼンスルホン酸、1-ナフタレンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、ブチル-2-ナフタレンスルホン酸等の芳香族スルホン酸;スルホン酸型イオン交換樹脂、3-[トリオクチルアンモニオ]プロパン-1-スルホン酸-トリフルイミド、4-[トリオクチルアンモニオ]ブタン-1-スルホン酸-トリフルイミド、下記式(A)で表される化合物などが挙げられる。
【0058】
【0059】
上記無機固体酸としては、例えば、シリカ、シリカアルミナ、アルミナ、ゼオライト類、活性白土、モンモリロナイトなどが挙げられる。
【0060】
上記酸触媒としてのアンモニウム塩としては、例えば、下記式(B-1)で表されるアンモニウムイオンの塩、下記式(B-2)で表されるアンモニウムイオンの塩、下記式(B-3)で表されるアンモニウムイオンの塩、下記式(B-4)で表されるアンモニウムイオンの塩などが挙げられる。
【化2】
【0061】
上記式(B-1)中、RI~RIIIは、同一または異なって、水素原子、脂肪族炭化水素基、または芳香族炭化水素基を含む基を示す。上記脂肪族炭化水素基は、直鎖状または分岐鎖状C1-22炭化水素基が好ましい。上記芳香族炭化水素基を含む基としては、フェニル基等の芳香族炭化水素基;4-t-ブチルフェニル基、メシチル基等の肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基が結合した基などが挙げられる。中でも、上記RI~RIIIのうちの二以上が芳香族炭化水素基を含む基であることが好ましい。
【0062】
上記式(B-1)~(B-3)で表されるアンモニウムイオンのカウンターアニオンとなる酸アニオンとしては、スルホン酸イオンが好ましく、より好ましくは芳香族スルホン酸イオン、特に好ましくはp-ドデシルベンゼンスルホン酸イオンである。
【0063】
上記式(B-4)中、RiおよびRiiは、同一または異なって、水素原子、脂肪族炭化水素基、または芳香族炭化水素基を含む基を示す。上記脂肪族炭化水素基は、直鎖状または分岐鎖状C1-4炭化水素基が好ましい。上記芳香族炭化水素基を含む基としては、フェニル基等の芳香族炭化水素基、肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基が結合した基などが挙げられる。中でも、水素原子、メチル基、イソプロピル基、フェニル基が好ましい。
【0064】
上記式(B-4)で表されるアンモニウムイオンのカウンターアニオンとなる酸アニオンとしては、スルホン酸イオン、硫酸イオンが好ましく、特に好ましくはトリフルオロメタンスルホン酸イオン、10-カンファースルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、硫酸イオンである。
【0065】
上記式(B-1)~(B-4)で表されるアンモニウムイオンのカウンターアニオンとなる酸アニオンは、酸基を形成する酸素原子と、上記式(B-1)~(B-4)中の窒素原子上の水素原子とで水素結合を形成して錯塩を形成していてもよい。上記錯塩は、アンモニウムカチオン1個と酸アニオン1個とで1つの塩を形成していてもよいし、アンモニウムカチオン2個と酸アニオン2個とで1つの塩を形成していてもよく、1つの塩を形成するアンモニウムカチオンと酸アニオンのそれぞれの個数は特に限定されない。また、1つの塩中において、酸アニオンは多量体を形成していてもよい。例えば、硫酸イオンを形成する硫酸は[H
2SO
4(SO
3)
X]で表される構造を形成していてもよい。酸アニオンと上記式(B-4)とで形成される錯塩としては、例えば下記式(C)で表される化合物が挙げられる。
【化3】
【0066】
上記式(C)中、RiおよびRiiは、上記式(B-4)におけるものと同様である。
【0067】
上記酸触媒としては、中でも、上記縮合工程における反応がより促進される観点から、スルホン酸基含有化合物、スルホン酸基含有化合物のアンモニウム塩が好ましい。
【0068】
反応に供する上記ナノ炭素粒子と上記式(2)で表される化合物との比率(前者:後者、質量比)は、例えば1:1~1:25である。また、水分散組成物中における上記ナノ炭素粒子の濃度は、例えば1~10質量%であり、水分散組成物中における上記式(2)で表される化合物の濃度は、例えば1~60質量%である。
【0069】
上記ナノ炭素粒子と上記式(2)で表される化合物の反応条件は、例えば、温度0~100℃、反応時間1~48時間、圧力1~5atmの範囲内から適宜選択できる。
【0070】
上記製造方法は、上記反応工程以外のその他の工程を有していてもよい。上記反応工程後に得られた生成物を、例えば、濾過、遠心分離、抽出、水洗、中和等や、これらを組み合わせた手段により精製することが好ましい。また、例えば、上記ナノ炭素粒子が水にナノ分散した状態の水分散組成物を得るために、上記縮合工程の前に解砕工程を行ってもよい。
【0071】
以上のように、上記反応工程を少なくとも備える上記製造方法により、ナノ炭素粒子と、上記ナノ炭素粒子を表面修飾する上記式(1)で表される基とを含む、表面修飾ナノ炭素粒子を製造することができる。
【0072】
上記製造方法によれば、ナノ炭素粒子の粉体を用いる必要がないため、ビーズミル処理などにより解砕して水分散液を得た後、乾燥または脱溶媒してナノダイヤモンド粒子の粉体を得る必要がなく、容易に表面修飾ナノ炭素粒子を製造することができる。また、ビーズミル処理により解砕と反応を同時に行わず、ナノ炭素粒子を水に分散させた状態で反応剤との反応を行うため、従来の方法に比べ、導入可能な表面修飾基が制限されず、様々な表面修飾基を導入することができる。さらに、ビーズミル処理により解砕と反応を同時に行わないことで、解砕処理時間を最小限とすることができるため、ジルコニアの混入が少なく、また、ラジカルの発生による副反応を抑制することができる。
【0073】
[ナノ炭素粒子分散組成物]
上記表面修飾ナノダイヤモンド或いは上記製造方法により得られた表面修飾ナノ炭素粒子を分散媒に分散させることにより、分散媒と、上記分散媒中に分散している表面修飾ナノ炭素粒子とを含む、ナノ炭素粒子分散組成物が得られる。なお、上記反応工程後にナノ炭素粒子の凝着体が残存する場合には、反応工程後の液を静置した後にその上清液を採取し、これをナノ炭素粒子分散組成物としてもよい。また、上記製造方法により得られた水分散組成物を得た後で、エバポレーターなどで分散組成物中の水を留去する前或いはした後、新たな分散媒を混合して撹拌する、すなわち溶媒の交換によっても上記ナノ炭素粒子分散組成物を製造することができる。
【0074】
なお、上記製造方法により得られた表面修飾ナノ炭素粒子および上記表面修飾基(L)を有する表面修飾ナノダイヤモンドを総称して「表面修飾ナノ炭素粒子(P)」と称する場合がある。
【0075】
溶媒の交換により上記ナノ炭素粒子分散組成物を得る際、新たな分散媒を添加し、水および/または食塩水による洗浄を行い、その後抽出および/または留去により水を除去することが好ましい。
【0076】
上記分散媒は、表面修飾ナノ炭素粒子を分散させるための媒体であり、水、有機分散媒(有機溶媒)、イオン液体などが挙げられる。中でも、表面修飾ナノ炭素粒子(P)は有機溶媒に対する分散性に優れる観点から、有機分散媒であることが好ましい。上記分散媒は、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
【0077】
上記有機分散媒としては、公知乃至慣用の有機溶媒を用いることができる。中でも、表面修飾ナノ炭素粒子(P)は様々な有機分散媒に対する分散性に優れる観点から、SP値[ヒルデブラントによる溶解性パラメーター(δ)、25℃における、単位:(cal/cm3)1/2]が6.0~23.0であることが好ましく、より好ましくは7.0~23.0である。上記有機分散媒は、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。なお、二種以上の有機分散媒を用いる場合、二種以上の有機分散媒の混合物のSP値が上記範囲であることが好ましく、それぞれの有機分散媒のSP値は上記の範囲外であってもよい。
【0078】
上記有機分散媒としては、例えば、ヘキサン(SP:7.0)等のアルカン;アセトン(SP:10.0)、メチルエチルケトン(MEK、SP:9.3)、メチルイソブチルケトン(MIBK、SP:8.4)等のケトン;ジオキサン(SP:9.8)、テトラヒドロフラン(THF、SP:9.1)等のエーテル;メタノール(SP:14.5)、n-プロパノール(SP:11.9)、イソプロパノール(IPA、SP:11.5)、ヘキサノール(SP:10.7)、シクロヘキサノール(SP:11.4)等のアルコール;酢酸エチル(SP:9.1)、ポリオールエステル(SP:9.6)等のエステル;エタノールアミン(SP:15.4)等のアミン;トルエン(SP:8.8)、アルキルベンゼン(SP:7.6)等の芳香族化合物;N-メチルピロリドン(NMP、SP:11.3)等の環状アミド;ジメチルアセトアミド(DMAc、SP:10.8)等のアミド;エチレングリコール(SP:16.1)、ジエチレングリコール(SP:14.6)等の多価アルコール;クロロホルム(SP:9.3)、塩化メチレン(SP:9.7)、二塩化エチレン(SP:9.8)等のハロゲン化炭化水素;エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート(EC/DEC=1/1:体積比)混合溶媒(SP:11.75)、エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート/メチルエチルカーボネート(1/1/1:体積比)混合溶媒(SP:10.97)等のカーボネート化合物;ポリα-オレフィン(SP:6.0~8.0程度)等のポリオレフィン;鉱油(SP:6.0~8.0程度)、酢酸(SP:12.4)、アセトニトリル(SP:11.8)などが挙げられる。
【0079】
上記ナノ炭素粒子分散組成物中のナノ炭素粒子の含有割合は、特に限定されないが、例えば0.1質量ppm~10質量%である。
【0080】
上記ナノ炭素粒子の含有割合は、350nmにおける吸光度より算出することができる。なお、表面修飾ナノ炭素粒子の含有割合が低濃度(例えば2000質量ppm以下)である場合、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP発光分光分析法)によりナノ炭素粒子を表面修飾している化合物を検出し、その検出量に基づき求めることもできる。
【0081】
上記ナノ炭素粒子分散組成物中の分散媒の含有量は、例えば90~99.9999質量%である。なお、上限は100質量%である。
【0082】
上記ナノ炭素粒子分散組成物は、表面修飾ナノ炭素粒子(P)および分散媒のみからなるものであってもよく、その他の成分を含有していてもよい。その他の成分としては、例えば、界面活性剤、増粘剤、カップリング剤、分散剤、防錆剤、腐食防止剤、凝固点降下剤、消泡剤、耐摩耗添加剤、防腐剤、着色料などが挙げられる。上記その他の成分の含有割合は、上記ナノ炭素粒子分散組成物総量に対して、例えば30質量%以下、好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、特に好ましくは1質量%以下である。従って、表面修飾ナノ炭素粒子(P)および分散媒の合計の含有割合は、上記ナノ炭素粒子分散組成物総量に対して、例えば70質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、特に好ましくは99質量%以上である。
【0083】
上記ナノ炭素粒子分散組成物は、表面修飾ナノ炭素粒子(P)を高分散状態で含有する。上記ナノ炭素粒子分散組成物中におけるナノ炭素粒子の平均分散粒子径(D50)は、例えば100nm以下であり、好ましくは60nm以下、より好ましくは50nm以下、さらに好ましくは30nm以下である。上記ナノ炭素粒子の平均分散粒子径の下限は、例えば1nmである。
【0084】
上記ナノ炭素粒子分散組成物は、ヘイズ値が5以下であることが好ましく、より好ましくは3以下、さらに好ましくは1以下である。上記ナノ炭素粒子分散組成物は表面修飾ナノ炭素粒子(P)の分散性に優れるため、上記ヘイズ値のナノ炭素粒子分散組成物を得ることができる。上記ヘイズ値は、JIS K 7136に基づいて測定することができる。
【0085】
上記ナノ炭素粒子分散組成物は、例えば、微細なナノ炭素粒子が有する特性(例えば、機械的強度、高屈折率、熱伝導性、絶縁性、酸化防止性、結晶化促進作用、デンドライト抑制作用等)を樹脂など(例えば、熱若しくは光硬化性樹脂や熱可塑性樹脂等)に付与する、複合材料の添加剤として好ましく使用することができる。そして、上記ナノ炭素粒子分散組成物を樹脂に添加して得られる組成物は、例えば、機能性ハイブリッド材料、熱的機能(耐熱、蓄熱、熱電導、断熱等)材料、フォトニクス(有機EL素子、LED、液晶ディスプレイ、光ディスク等)材料、バイオ・生体適合性材料、遮熱フィルム等)材料、シート材料、スクリーン(透過型透明スクリーン等)材料、フィラー(放熱用フィラー、機械特性向上用フィラー等)材料、耐熱性プラスチック基板(フレキシブルディスプレイ用基板等)材料、リチウムイオン電池等材料として好ましく使用することができる。また、上記ナノ炭素粒子分散組成物は、その他、医療用途としても使用できる。
【0086】
本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。各実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は、一例であって、本開示の趣旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。また、本開示に係る各発明は、実施形態や以下の実施例によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例】
【0087】
以下に、実施例に基づいて本開示の一実施形態をより詳細に説明する。
【0088】
実施例1
下記工程を経て、表面修飾ナノダイヤモンド粒子および分散組成物を製造した。
【0089】
(アミンの調製)
3-アミノ-1-プロパノール3mmolに対して、0℃にて1M塩酸水溶液3.6mmolを加え、室温で2時間撹拌した。反応終了後、メタノールを加え減圧しながら共沸脱水した。得られた化合物に対し、トルエン3mL、ステアリン酸ハライド3mmolを加え70℃にて2時間撹拌した。反応終了後、減圧濃縮し対応するアミン塩酸塩(3-(ステアロイルオキシ)プロピルアミン塩酸塩)を得た。
【0090】
(表面修飾工程)
酸触媒としてドデシルベンゼンスルホン酸81mg(0.25mmol)、水1mL、爆轟法ナノダイヤモンド水分散液(固形分濃度約6質量%)500mg、および上記で作製したアミン塩酸塩1mmolを順次加え、90℃にて16時間程度撹拌して反応させた。反応終了後、水3mL、トルエン3mLを加えた後、水相を除去した。得られたトルエン相について遠心分離(20000G、10分)を行うことで、アミノ基(3-(ステアロイルオキシ)プロピルアミノ基)で表面修飾されたナノダイヤモンド粒子のトルエン分散液を得た。得られた分散液に対しイソプロパノール3mLを加え、遠心分離(20000G、5分)を行うことで表面修飾ナノダイヤモンドの固体を得た。この固体に対し、トルエン、THF、NMP、DMAcをそれぞれ3mL加えると、それぞれ分散液が得られた。
【0091】
実施例2
下記工程を経て、表面修飾ナノダイヤモンド粒子および分散組成物を製造した。
【0092】
(アミンの調製)
5-アミノ-1-プロパノールに代えて5-アミノ-1-ペンタノールを用いたこと以外は実施例1と同様にしてアミン塩酸塩(5-(ステアロイルオキシ)ペンチルアミン塩酸塩)を得た。
【0093】
(表面修飾工程)
アミン塩酸塩として上記で得られた5-(ステアロイルオキシ)ペンチルアミン塩酸塩を用いたこと以外は実施例1と同様にして、アミノ基(5-(ステアロイルオキシ)ペンチルアミノ基)で表面修飾されたナノダイヤモンドの固体を得た。この固体に対し、トルエン、THF、NMP、DMAcをそれぞれ3mL加えると、それぞれ分散液が得られた。得られた分散液中の表面修飾ナノダイヤモンド粒子の平均分散粒子径D50は、トルエン中で約19nm、THF中で約22nm、NMP中で約14nm、DMAc中で約21nmであった。また、熱重量分析により求められる質量比[ナノダイヤモンド/表面修飾基]は3.2であった。
【0094】
実施例3
下記工程を経て、表面修飾ナノダイヤモンド粒子および分散組成物を製造した。
【0095】
(アミンの調製)
γ-アミノ酪酸3mmolに対して、0℃にて1M塩酸水溶液3.6mmolを加え、室温で2時間撹拌した。反応終了後、メタノールを加え減圧しながら共沸脱水した。得られた化合物に対し、トルエン3mL、塩化チオニル3.6mmolを加え60℃にて2時間撹拌した。反応終了後、再度トルエン3mL、ドデシルアルコール3mmolを加え70℃にて2時間撹拌した。反応終了後、減圧濃縮し対応するアミン塩酸塩(γ-アミノ酪酸ドデシルエステル塩酸塩)を得た。
【0096】
(表面修飾工程)
アミン塩酸塩として上記で得られたγ-アミノ酪酸ドデシルエステル塩酸塩を用いたこと以外は実施例1と同様にして、アミノ基(3-(ドデシルオキシカルボニル)プロピルアミノ基)で表面修飾されたナノダイヤモンドの固体を得た。この固体に対し、トルエン、THF、NMP、DMAcをそれぞれ3mL加えると、それぞれ分散液が得られた。
【0097】
実施例4
下記工程を経て、表面修飾ナノダイヤモンド粒子および分散組成物を製造した。
【0098】
(アミンの調製)
γ-アミノ酪酸に代えて6-アミノヘキサン酸を用いたこと以外は実施例3と同様にしてアミン塩酸塩(6-アミノヘキサン酸ドデシルエステル塩酸塩)を得た。
【0099】
(表面修飾工程)
アミン塩酸塩として上記で得られた6-アミノヘキサン酸ドデシルエステル塩酸塩を用いたこと以外は実施例3と同様にして、アミノ基(5-(ドデシルオキシカルボニル)ペンチルアミノ基)で表面修飾されたナノダイヤモンドの固体を得た。この固体に対し、トルエン、THF、NMP、DMAcをそれぞれ3mL加えると、それぞれ分散液が得られた。得られた分散液中の表面修飾ナノダイヤモンド粒子の平均分散粒子径D50は、トルエン中で約27nm、THF中で約31nm、NMP中で約20nm、DMAc中で約43nmであった。また、熱重量分析により求められる質量比[ナノダイヤモンド/表面修飾基]は13.5であった。
【0100】
実施例5
下記工程を経て、表面修飾ナノダイヤモンド粒子および分散組成物を製造した。
【0101】
(アミンの調製)
γ-アミノ酪酸に代えて8-アミノオクタン酸を用いたこと以外は実施例3と同様にしてアミン塩酸塩(8-アミノオクタン酸ドデシルエステル塩酸塩)を得た。
【0102】
(表面修飾工程)
アミン塩酸塩として上記で得られた8-アミノオクタン酸ドデシルエステル塩酸塩を用いたこと以外は実施例3と同様にして、アミノ基(7-(ドデシルオキシカルボニル)ヘプチルアミノ基)で表面修飾されたナノダイヤモンドの固体を得た。この固体に対し、トルエン、THF、NMP、DMAcをそれぞれ3mL加えると、それぞれ分散液が得られた。
【0103】
実施例6
下記工程を経て、表面修飾ナノダイヤモンド粒子および分散組成物を製造した。
【0104】
(アミンの調製)
γ-アミノ酪酸に代えて6-アミノヘキサン酸を用い、且つドデシルアルコールに代えてシンナミルアルコールを用いたこと以外は実施例3と同様にしてアミン塩酸塩(6-アミノヘキサン酸シンナミルエステル塩酸塩)を得た。
【0105】
(表面修飾工程)
アミン塩酸塩として上記で得られた6-アミノヘキサン酸シンナミルエステル塩酸塩を用いたこと以外は実施例3と同様にして、アミノ基(5-(シンナミルオキシカルボニル)ペンチルアミノ基)で表面修飾されたナノダイヤモンドの固体を得た。この固体に対し、トルエン、THF、NMP、DMAcをそれぞれ3mL加えると、それぞれ分散液が得られた。得られた分散液中の表面修飾ナノダイヤモンド粒子の平均分散粒子径D50は、トルエン中で約24nm、THF中で約30nm、NMP中で約21nm、DMAc中で約28nmであった。また、熱重量分析により求められる質量比[ナノダイヤモンド/表面修飾基]は12.5であった。
【0106】
実施例7
アミン塩酸塩に代えて3-ブトキシプロピルアミンを用いたこと以外は実施例1と同様にして、アミノ基(3-ブトキシプロピルアミノ基)で表面修飾されたナノダイヤモンドの固体を得た。この固体に対し、トルエン、NMP、DMAcをそれぞれ3mL加えると、それぞれ分散液が得られた。得られた分散液中の表面修飾ナノダイヤモンド粒子の平均分散粒子径D50は、トルエン中で約30nm、NMP中で約22nm、DMAc中で約19nmであった。また、熱重量分析により求められる質量比[ナノダイヤモンド/表面修飾基]は15.6であった。
【0107】
<粒径D50>
上述のようにして得られた実施例のナノダイヤモンド分散液におけるナノダイヤモンド粒子のメディアン径(粒径D50)は、動的光散乱法によって得られたナノダイヤモンドの粒度分布から測定した体積基準の値である。上記粒度分布は、具体的には、Malvern社製の装置(商品名「ゼータサイザー ナノZS」)を使用して、ナノダイヤモンドの粒度分布を動的光散乱法(非接触後方散乱法)によって測定した。
【0108】
<熱重量分析>
TG/DTA(熱重量測定・示差熱分析)装置(商品名「EXSTAR6300」、エスアイアイナノテクノロジー社製)を用い、試料(約3mg)を、空気雰囲気下、昇温速度20℃/分にて加熱して重量減少を測定した。なお、基準物質には、アルミナを用いた。
【0109】
<FT-IR分析>
実施例で得られた表面修飾ナノダイヤモンドについて、フーリエ変換赤外分光光度計「IRTracer」(株式会社島津製作所製)に、加熱真空撹拌反射「Heat Chamber Type-1000℃」(株式会社エス・ティ・ジャパン製)を取り付けた装置を用いてFT-IR測定を行った。なお、ナノダイヤモンド粒子の吸着水を除去するために、真空度2×10-3Pa下、150℃、10分間加熱を行った後に、FT-IR測定を実施した。
【0110】
実施例2で得られた表面修飾ナノダイヤモンドのFT-IRスペクトルを
図1に、実施例4で得られた表面修飾ナノダイヤモンドのFT-IRスペクトルを
図2に、実施例6で得られた表面修飾ナノダイヤモンドのFT-IRスペクトルを
図3に、実施例7で得られた表面修飾ナノダイヤモンドのFT-IRスペクトルを
図4にそれぞれに示す。
【0111】
実施例2の表面修飾ナノダイヤモンドでは、2918cm-1付近、2851cm-1付近、および1456cm-1付近にアルキル基由来のピークが確認できた。実施例4の表面修飾ナノダイヤモンドでは、2928cm-1付近、2857cm-1付近、および1456cm-1付近にアルキル基由来のピークが確認できた。実施例6の表面修飾ナノダイヤモンドでは、2961cm-1付近、2928cm-1付近、2857cm-1付近、および1456cm-1付近にアルキル基由来のピークが、746cm-1付近および698cm-1付近にベンゼン環由来のピークがそれぞれ確認できた。実施例7の表面修飾ナノダイヤモンドでは、2961cm-1付近、2930cm-1付近、2866cm-1付近、および1458cm-1付近にアルキル基由来のピークが、1265cm-1付近にエーテル結合由来のピークがそれぞれ確認できた。
【0112】
以下、本開示に係る発明のバリエーションを記載する。
[付記1]ナノダイヤモンド粒子と、前記ナノダイヤモンド粒子を表面修飾する下記式(1)で表される基とを含む、表面修飾ナノダイヤモンド。
-X-R1 (1)
[式(1)中、Xは、-NH-または-O-を示し、Xから左に伸びる結合手はナノダイヤモンド粒子に結合する。R1は、置換基を有していてもよい2つの炭化水素基が、エステル結合、エーテル結合、カルボニル基、またはアミド結合を介して結合した一価の有機基を示す。]
[付記2]前記式(1)中、前記R1における一価の有機基中の炭素原子数が5~30(または7~25)である、付記1に記載の表面修飾ナノダイヤモンド。
[付記3]前記2つの炭化水素基は、同一または異なって、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素基とが結合した基、または脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合した基である、付記1または2に記載の表面修飾ナノダイヤモンド。
[付記4]前記式(1)中、Xは、-NH-を示し、R1は、置換基を有していてもよい2つの炭化水素基がエステル結合、エーテル結合、またはアミド結合を介して結合した一価の有機基を示す、付記1~3のいずれか1つに記載の表面修飾ナノダイヤモンド。
[付記5]前記R1における一価の有機基中の炭素原子数が5~30(好ましくは5~25)である、付記1~4のいずれか1つに記載の表面修飾ナノダイヤモンド。
【0113】
[付記6]前記式(1)で表される基が下記式(1’)で表される基である、付記1~5のいずれか1つに記載の表面修飾ナノダイヤモンド。
-X-R2-Y-R3 (1’)
[式(1’)中、Xは、-NH-または-O-を示し、Xから左に伸びる結合手はナノダイヤモンド粒子に結合する。R2およびR3は、同一または異なって、置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、Yは、エステル結合、エーテル結合、カルボニル基、またはアミド結合を示す。]
[付記7]前記式(1’)中、Xは、-NH-を示し、Yは、エステル結合、エーテル結合、またはアミド結合(好ましくはエステル結合またはエーテル結合)を示し、R2およびR3の合計の炭素原子数が5~30(好ましくは5~25)である、付記6に記載の表面修飾ナノダイヤモンド。
[付記8]前記式(1’)中のR2およびR3は、同一または異なって、直鎖状または分岐鎖状炭化水素基である、付記6または7に記載の表面修飾ナノダイヤモンド。
【0114】
[付記9]前記式(1’)中、Yはエステル結合を示し、R1における一価の有機基中の炭素原子数は12~30(好ましくは14~26)である、付記6~8のいずれか1つに記載の表面修飾ナノダイヤモンド。
[付記10]前記式(1’)中、R2およびR3の合計の炭素原子数は12~30(好ましくは14~26)である、付記9に記載の表面修飾ナノダイヤモンド。
[付記11]前記式(1’)中、R2の炭素原子数は3~7である、付記9または10に記載の表面修飾ナノダイヤモンド。
[付記12]前記式(1’)中、R3の炭素原子数は8~20である、付記9~11のいずれか1つに記載の表面修飾ナノダイヤモンド。
【0115】
[付記13]前記式(1’)中、Yはエーテル結合を示し、R1における一価の有機基中の炭素原子数は4~10(好ましくは5~8)である、付記6~8のいずれか1つに記載の表面修飾ナノダイヤモンド。
[付記14]前記式(1’)中、R2およびR3の合計の炭素原子数は4~10(好ましくは5~8)である、付記13に記載の表面修飾ナノダイヤモンド。
[付記15]前記式(1’)中、R2の炭素原子数は2~5である、付記13または14に記載の表面修飾ナノダイヤモンド。
[付記16]前記式(1’)中、R3の炭素原子数は3~8である、付記13~15のいずれか1つに記載の表面修飾ナノダイヤモンド。
【0116】
[付記17]前記式(1’)中、Xは、-O-を示し、Yは、エステル結合、エーテル結合、またはアミド結合(好ましくはエステル結合またはエーテル結合)を示し、R2およびR3の合計の炭素原子数が5~30(好ましくは5~25)である、付記6に記載の表面修飾ナノダイヤモンド。
[付記18]前記式(1’)中のR2およびR3は、同一または異なって、直鎖状または分岐鎖状炭化水素基である、付記17に記載の表面修飾ナノダイヤモンド。
【0117】
[付記19]前記R2は、直鎖状または分岐鎖状炭化水素基(好ましくはアルキル基)である、付記6~18のいずれか1つに記載の表面修飾ナノダイヤモンド。
[付記20]前記R2は、炭素原子数2~10(好ましくは3~7)の炭化水素基である、付記6~19のいずれか1つに記載の表面修飾ナノダイヤモンド。
[付記21]前記R3は、直鎖状もしくは分岐鎖状炭化水素基、またはこれと芳香族炭化水素基とが結合した基(特に、末端が芳香族炭化水素基である基)である、付記6~20のいずれか1つに記載の表面修飾ナノダイヤモンド。
[付記22]前記R3は、炭素原子数3~20(好ましくは4~18)の炭化水素基である、付記6~21のいずれか1つに記載の表面修飾ナノダイヤモンド。
【0118】
[付記23]前記式(1)で表される基に対するナノダイヤモンドの質量比[ナノダイヤモンド/式(1)で表される基]が0.5以上(好ましくは2.5以上)である、付記1~22のいずれか1つに記載の表面修飾ナノダイヤモンド。
[付記24]前記式(1)で表される基に対するナノダイヤモンドの質量比[ナノダイヤモンド/式(1)で表される基]が17.0以下(好ましくは15.0以下、より好ましくは10.0以下、さらに好ましくは5.0以下)である、付記1~23のいずれか1つに記載の表面修飾ナノダイヤモンド。
[付記25]粒子径(D50)は400nm以下(好ましくは300nm以下、より好ましくは100nm以下、さらに好ましくは50nm以下)である、付記1~24のいずれか1つに記載の表面修飾ナノダイヤモンド。
[付記26]粒子径(D90)は500nm以下(好ましくは400nm以下、より好ましくは150nm以下)である、付記1~25のいずれか1つに記載の表面修飾ナノダイヤモンド。
【0119】
[付記27]分散媒と、前記分散媒中に分散した付記1~26のいずれか1つの表面修飾ナノダイヤモンドとを含む、ナノダイヤモンド分散組成物。
[付記28]前記分散媒が有機分散媒である付記27に記載のナノダイヤモンド分散組成物。
[付記29]前記表面修飾ナノダイヤモンドの平均分散粒子径D50が1~100nm(好ましくは1~60nm、より好ましくは1~50nm、さらに好ましくは1~30nm)である、付記27または28に記載のナノダイヤモンド分散組成物。
[付記30]前記有機分散媒のSP値が6.0~23.0(cal/cm3)1/2(好ましくは7.0~23.0(cal/cm3)1/2)である付記27~29のいずれか1つに記載のナノダイヤモンド分散組成物。
[付記31]ヘイズ値が5以下(好ましくは3以下、より好ましくは1以下)である付記27~31のいずれか1つに記載のナノダイヤモンド分散組成物。
【0120】
[付記32]表面にヒドロキシ基を有するナノ炭素粒子が水にナノ分散した状態で、酸触媒の存在下、前記ナノ炭素粒子と下記式(2)で表される化合物とを反応させて表面修飾ナノ炭素粒子を得る工程を有する表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
R1-X-H (2)
[式(2)中、Xは、-NH-または-O-を示す。R1は、置換基を有していてもよい2つの炭化水素基が、エステル結合、エーテル結合、カルボニル基、またはアミド結合を介して結合した一価の有機基を示す。]
[付記33]前記ナノ炭素粒子がナノダイヤモンド粒子である付記32に記載の表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
[付記34]前記式(2)中、前記R1における一価の有機基中の炭素原子数が5~30(または7~25)である、付記32または33に記載の表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
[付記35]前記2つの炭化水素基は、同一または異なって、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素基とが結合した基、または脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合した基である、付記32~34のいずれか1つに記載の表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
[付記36]前記式(2)中、Xは、-NH-を示し、R1は、置換基を有していてもよい2つの炭化水素基がエステル結合、エーテル結合、またはアミド結合を介して結合した一価の有機基を示す、付記32~35のいずれか1つに記載の表面修飾ナノダイヤモンド。
[付記37]前記R1における一価の有機基中の炭素原子数が5~30(好ましくは5~25)である、付記32~36のいずれか1つに記載の表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
【0121】
[付記38]前記式(2)で表される基が下記式(2’)で表される基である、付記32~37のいずれか1つに記載の表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
-X-R2-Y-R3 (2’)
[式(2’)中、Xは、-NH-または-O-を示し、Xから左に伸びる結合手はナノダイヤモンド粒子に結合する。R2およびR3は、同一または異なって、置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、Yは、エステル結合、エーテル結合、カルボニル基、またはアミド結合を示す。]
[付記39]前記式(2’)中、Xは、-NH-を示し、Yは、エステル結合、エーテル結合、またはアミド結合(好ましくはエステル結合またはエーテル結合)を示し、R2およびR3の合計の炭素原子数が5~30(好ましくは5~25)である、付記38に記載の表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
[付記40]前記式(2’)中のR2およびR3は、同一または異なって、直鎖状または分岐鎖状炭化水素基である、付記38または39に記載の表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
【0122】
[付記41]前記式(2’)中、Yはエステル結合を示し、R1における一価の有機基中の炭素原子数は12~30(好ましくは14~26)である、付記38~40のいずれか1つに記載の表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
[付記42]前記式(2’)中、R2およびR3の合計の炭素原子数は12~30(好ましくは14~26)である、付記41に記載の表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
[付記43]前記式(2’)中、R2の炭素原子数は3~7である、付記41または42に記載の表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
[付記44]前記式(2’)中、R3の炭素原子数は8~20である、付記41~43のいずれか1つに記載の表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
【0123】
[付記45]前記式(2’)中、Yはエーテル結合を示し、R1における一価の有機基中の炭素原子数は4~10(好ましくは5~8)である、付記38~40のいずれか1つに記載の表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
[付記46]前記式(2’)中、R2およびR3の合計の炭素原子数は4~10(好ましくは5~8)である、付記45に記載の表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
[付記47]前記式(2’)中、R2の炭素原子数は2~5である、付記45または46に記載の表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
[付記48]前記式(2’)中、R3の炭素原子数は3~8である、付記45~47のいずれか1つに記載の表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
【0124】
[付記49]前記式(2’)中、Xは、-O-を示し、Yは、エステル結合、エーテル結合、またはアミド結合(好ましくはエステル結合またはエーテル結合)を示し、R2およびR3の合計の炭素原子数が5~30(好ましくは5~25)である、付記38に記載の表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
[付記50]前記式(2’)中のR2およびR3は、同一または異なって、直鎖状または分岐鎖状炭化水素基である、付記49に記載の表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
【0125】
[付記51]前記R2は、直鎖状または分岐鎖状炭化水素基(好ましくはアルキル基)である、付記38~50のいずれか1つに記載の表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
[付記52]前記R2は、炭素原子数2~10(好ましくは3~7)の炭化水素基である、付記38~51のいずれか1つに記載の表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
[付記53]前記R3は、直鎖状もしくは分岐鎖状炭化水素基、またはこれと芳香族炭化水素基とが結合した基(特に、末端が芳香族炭化水素基である基)である、付記38~52のいずれか1つに記載の表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
[付記54]前記R3は、炭素原子数3~20(好ましくは4~18)の炭化水素基である、付記38~53のいずれか1つに記載の表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法。