(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】基板処理装置および音圧センサ
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20241213BHJP
B08B 3/12 20060101ALI20241213BHJP
【FI】
H01L21/304 642A
H01L21/304 642E
B08B3/12 B
(21)【出願番号】P 2020209279
(22)【出願日】2020-12-17
【審査請求日】2023-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】390005050
【氏名又は名称】ダイキンファインテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100183276
【氏名又は名称】山田 裕三
(72)【発明者】
【氏名】二又 善一
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-275817(JP,A)
【文献】特開2011-183300(JP,A)
【文献】特開2001-050808(JP,A)
【文献】実開昭57-182134(JP,U)
【文献】特開平06-296942(JP,A)
【文献】特開平10-135176(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B08B 3/12
G01H 3/00
G01H 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板が浸漬される洗浄液を貯留する洗浄槽と、
洗浄液を振動させる振動子と、
前記振動子に電気信号を出力して前記振動子を振動させる発振器と、
前記振動子によって振動される媒体に浸漬されて前記媒体の振動を検出する音圧センサと、を有し、
前記音圧センサが、前記媒体に浸漬されるセンサ筺体と、前記センサ筺体内に収容されて前記センサ筺体の振動を電気信号に変換する圧電体と、を含み、
前記振動子の共振周波数帯域と前記センサ筺体の共振周波数帯域とに、共通の周波数帯域が含まれ、
前記音圧センサが振動を検出するときに、前記発振器が、前記共通の周波数帯域に含まれる周波数で前記振動子を振動させるための電気信号を前記振動子に出力する、基板処理装置。
【請求項2】
前記圧電体の共振周波数帯域に、前記共通の周波数帯域が含まれる、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記センサ筺体が、金属製であって、石英によって覆われている、請求項
1または2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記振動子が、前記共通の周波数帯域を含む共振周波数帯域を備える圧電体を含む、請求項1から
3のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
基板の洗浄処理に必要な洗浄時周波数が、前記共通の周波数帯域に含まれ、
前記音圧センサが振動を検出するときに、前記振動子が、前記洗浄時周波数で振動する、請求項1から
4のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記媒体が、前記洗浄槽に貯留されている洗浄液である、請求項1から
5のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項7】
洗浄液を貯留する洗浄槽、洗浄液を振動させる振動子、および前記振動子に電気信号を出力して前記振動子を振動させる発振器を有する洗浄処理装置において、前記振動子によって振動される媒体に浸漬されて前記媒体の振動を検出する音圧センサであって、
前記媒体に浸漬されるセンサ筺体と、
前記センサ筺体内に収容されて前記センサ筺体の振動を電気信号に変換する圧電体と、を有し、
前記センサ筺体の共振周波数帯域の少なくとも一部が、前記振動子の共振周波数帯域の少なくとも一部と共通して且つ前記振動子が振動するときの周波数を含んでいる、音圧センサ。
【請求項8】
前記センサ筺体の前記共振周波数帯域と前記振動子の前記共振周波数帯域とに共通して含まれる周波数帯域が、前記音圧センサの前記圧電体の共振周波数帯域に含まれる、請求項7に記載の音圧センサ。
【請求項9】
前記音圧センサの前記圧電体として、共振周波数帯域が異なる複数の圧電体を含んでいる、請求項7または8に記載の音圧センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を洗浄液に浸漬して洗浄処理する基板処理装置およびそれに使用される音圧センサに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、洗浄液に浸漬された基板を、洗浄液に超音波振動を印加することによって洗浄する基板処理装置が開示されている。基板処理装置は、洗浄液を振動させる振動子と、振動子を振動させるための電気信号をその振動子に出力する発振器とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載されるような基板処理装置の場合、基板の洗浄条件の一つとして、超音波振動の周波数が含まれることがある。そのため、発振器や振動子の状態を高い信頼度で定期的に確認する必要がある。その高い信頼度の確認を実現するためには、ノイズなどの影響を抑制するために発振器と振動子とによって振動する洗浄液の振動を高い感度で検出する必要がある。
【0005】
そこで、本発明は、洗浄液を振動させる振動子とその振動子に電気信号を出力する発振器とを含む基板処理装置などの洗浄液を振動させる洗浄処理装置において、洗浄液の振動を高い感度で検出することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するために、本発明の一態様によれば、
基板が浸漬される洗浄液を貯留する洗浄槽と、
洗浄液を振動させる振動子と、
前記振動子に電気信号を出力して前記振動子を振動させる発振器と、
前記振動子によって振動される媒体に浸漬されて前記媒体の振動を検出する音圧センサと、を有し、
前記音圧センサが、前記媒体の振動を電気信号に変換させる圧電体を含み、
前記振動子の共振周波数帯域と前記圧電体の共振周波数帯域とに、共通の周波数帯域が含まれ、
前記音圧センサが振動を検出するときに、前記発振器が、前記共通の周波数帯域に含まれる周波数で前記振動子を振動させるための電気信号を前記振動子に出力する、基板処理装置が提供される。
【0007】
また、本発明の別態様によれば、
基板が浸漬される洗浄液を貯留する洗浄槽と、
洗浄液を振動させる振動子と、
前記振動子に電気信号を出力して前記振動子を振動させる発振器と、
前記振動子によって振動される媒体に浸漬されて前記媒体の振動を検出する音圧センサと、を有し、
前記音圧センサが、前記媒体に浸漬されるセンサ筺体と、前記センサ筺体内に収容されて前記センサ筺体の振動を電気信号に変換する圧電体と、を含み、
前記振動子の共振周波数帯域と前記センサ筺体の共振周波数帯域とに、共通の周波数帯域が含まれ、
前記音圧センサが振動を検出するときに、前記発振器が、前記共通の周波数帯域に含まれる周波数で前記振動子を振動させるための電気信号を前記振動子に出力する、基板処理装置が提供される。
【0008】
さらに、本発明のさらに別の態様によれば、
洗浄液を貯留する洗浄槽、洗浄液を振動させる振動子、および前記振動子に電気信号を出力して前記振動子を振動させる発振器を有する洗浄処理装置において、前記振動子によって振動される媒体に浸漬されて前記媒体の振動を検出する音圧センサであって、
前記媒体の振動を電気信号に変換させる圧電体を含み、
前記圧電体の共振周波数帯域の少なくとも一部が、前記振動子の共振周波数帯域の少なくとも一部と共通して且つ前記振動子が振動するときの周波数を含んでいる、音圧センサが提供される。
【0009】
さらにまた、本発明のさらに異なる態様によれば、
洗浄液を貯留する洗浄槽、洗浄液を振動させる振動子、および前記振動子に電気信号を出力して前記振動子を振動させる発振器を有する洗浄処理装置において、前記振動子によって振動される媒体に浸漬されて前記媒体の振動を検出する音圧センサであって、
前記媒体に浸漬されるセンサ筺体と、
前記センサ筺体内に収容されて前記センサ筺体の振動を電気信号に変換する圧電体と、を有し、
前記センサ筺体の共振周波数帯域の少なくとも一部が、前記振動子の共振周波数帯域の少なくとも一部と共通して且つ前記振動子が振動するときの周波数を含んでいる、音圧センサが提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、洗浄液を振動させる振動子とその振動子に電気信号を出力する発振器とを含む基板処理装置などの洗浄液を振動させる洗浄処理装置において、洗浄液の振動を高い感度で検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る基板処理装置の概略図
【
図2】実施の形態1に係る基板処理装置における制御系を示すブロック図
【
図3】実施の形態1における、振動子、センサ筺体、および音圧センサの圧電体それぞれの共振周波数帯域の関係を示す図
【
図4】(a)共通の周波数帯域内の周波数で振動子が振動するときの音圧センサの圧電体の電圧波形の一例と、(b)共通の周波数帯域外の周波数で振動子が振動するときの音圧センサの圧電体の電圧波形の一例とを示す図
【
図5】基板が洗浄槽の洗浄液に浸漬していない状態の基板処理装置を示す図
【
図6】実施の形態1の改良形態に係る基板処理装置を示す図
【
図7】本発明の実施の形態2に係る基板処理装置の概略図
【
図8】実施の形態2における、振動子、センサ筺体、および音圧センサの圧電体それぞれの共振周波数帯域の関係を示す図
【
図9】実施の形態2の改良形態に係る基板処理装置を示す図
【
図10】本発明の別の実施の形態に係る基板処理装置の概略図
【
図11】本発明のさらに別の実施の形態に係る基板処理装置の概略図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一態様に係る基板処理装置は、基板が浸漬される洗浄液を貯留する洗浄槽と、洗浄液を振動させる振動子と、前記振動子に電気信号を出力して前記振動子を振動させる発振器と、前記振動子によって振動される媒体に浸漬されて前記媒体の振動を検出する音圧センサと、を有し、前記音圧センサが、前記媒体の振動を電気信号に変換させる圧電体を含み、前記振動子の共振周波数帯域と前記圧電体の共振周波数帯域とに、共通の周波数帯域が含まれ、前記音圧センサが振動を検出するときに、前記発振器が、前記共通の周波数帯域に含まれる周波数で前記振動子を振動させるための電気信号を前記振動子に出力する。
【0013】
このような態様によれば、洗浄液を振動させる振動子とその振動子に電気信号を出力する発振器とを含む基板処理装置などの洗浄液を振動させる洗浄処理装置において、洗浄液の振動を高い感度で検出することができる。なお、本明細書において、「媒体」は、流動性を備え、振動を伝達することができる物質を言う。
【0014】
例えば、前記音圧センサが、前記媒体に浸漬されるセンサ筺体を含み、前記圧電体が、前記センサ筺体内に収容されて前記センサ筺体の振動を電気信号に変換してもよい。
【0015】
例えば、前記センサ筺体の共振周波数帯域に、前記共通の周波数帯域が含まれてもよい。
【0016】
本発明の別態様に係る基板処理装置は、基板が浸漬される洗浄液を貯留する洗浄槽と、洗浄液を振動させる振動子と、前記振動子に電気信号を出力して前記振動子を振動させる発振器と、前記振動子によって振動される媒体に浸漬されて前記媒体の振動を検出する音圧センサと、を有し、前記音圧センサが、前記媒体に浸漬されるセンサ筺体と、前記センサ筺体内に収容されて前記センサ筺体の振動を電気信号に変換する圧電体と、を含み、前記振動子の共振周波数帯域と前記センサ筺体の共振周波数帯域とに、共通の周波数帯域が含まれ、前記音圧センサが振動を検出するときに、前記発振器が、前記共通の周波数帯域に含まれる周波数で前記振動子を振動させるための電気信号を前記振動子に出力する。
【0017】
このような態様によれば、洗浄液を振動させる振動子とその振動子に電気信号を出力する発振器とを含む基板処理装置などの洗浄液を振動させる洗浄処理装置において、洗浄液の振動を高い感度で検出することができる。
【0018】
例えば、前記センサ筺体が、金属製であって、石英によって覆われてもよい。
【0019】
例えば、前記振動子が、前記共通の周波数帯域を含む共振周波数帯域を備える圧電体を含んでもよい。
【0020】
例えば、基板の洗浄処理に必要な洗浄時周波数が、前記共通の周波数帯域に含まれ、前記音圧センサが振動を検出するときに、前記振動子が、前記洗浄時周波数で振動してもよい。
【0021】
本発明のさらに別態様に係る音圧センサは、洗浄液を貯留する洗浄槽、洗浄液を振動させる振動子、および前記振動子に電気信号を出力して前記振動子を振動させる発振器を有する洗浄処理装置において、前記振動子によって振動される媒体に浸漬されて前記媒体の振動を検出する音圧センサであって、前記媒体の振動を電気信号に変換させる圧電体を含み、前記圧電体の共振周波数帯域の少なくとも一部が、前記振動子の共振周波数帯域の少なくとも一部と共通して且つ前記振動子が振動するときの周波数を含んでいる。
【0022】
このような態様によれば、洗浄液を振動させる振動子とその振動子に電気信号を出力する発振器とを含む基板処理装置などの洗浄液を振動させる洗浄処理装置において、洗浄液の振動を高い感度で検出することができる。
【0023】
例えば、前記圧電体として、共振周波数帯域が異なる複数の圧電体を含んでいてもよい。
【0024】
例えば、前記媒体が、前記洗浄槽に貯留されている洗浄液であってもよい。
【0025】
本発明のさらに異なる態様に係る音圧センサは、洗浄液を貯留する洗浄槽、洗浄液を振動させる振動子、および前記振動子に電気信号を出力して前記振動子を振動させる発振器を有する洗浄処理装置において、前記振動子によって振動される媒体に浸漬されて前記媒体の振動を検出する音圧センサであって、前記媒体に浸漬されるセンサ筺体と、前記センサ筺体内に収容されて前記センサ筺体の振動を電気信号に変換する圧電体と、を有し、前記センサ筺体の共振周波数帯域の少なくとも一部が、前記振動子の共振周波数帯域の少なくとも一部と共通して且つ前記振動子が振動するときの周波数を含んでいる。
【0026】
このような態様によれば、洗浄液を振動させる振動子とその振動子に電気信号を出力する発振器とを含む基板処理装置などの洗浄液を振動させる洗浄処理装置において、洗浄液の振動を高い感度で検出することができる。
【0027】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0028】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る基板処理装置の概略図である。
【0029】
図1に示すように、本実施の形態1に係る基板処理装置10は、洗浄液CLを貯留する洗浄槽12と、洗浄液CLを振動させる振動子14と、振動子14に電気信号を出力する発振器16と、発振器16を制御する制御装置18とを有する。
【0030】
洗浄槽12は、洗浄液CLを貯留する槽であって、その洗浄液CL内に洗浄対象のワークである半導体ウェハなどの基板Wが浸漬される。
【0031】
振動子14は、洗浄槽12内の洗浄液CLを超音波振動させる部材である。本実施の形態1の場合、振動子14は、SUSなどの金属材料から作製された振動子筺体20、その内部に配置されて電気信号(電圧信号)を振動に変換する圧電体22、圧電体22に電圧を印加するための電極や配線(図示せず)などを含んでいる。圧電体22は、例えば、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT:Piezo Electric Titanate)から作製されている。この圧電体22が発振器16からの電気信号S1によって振動することにより、振動子14が振動し、その結果として洗浄液CLが振動される。
【0032】
また、本実施の形態1の場合、振動子14は、伝播槽24に設けられ、その伝播槽24を介して洗浄槽12内の洗浄液CLを振動させる。具体的には、伝播槽24内に水などの振動伝達媒体MLが貯留され、その振動伝達媒体ML内に洗浄槽12が配置されている。すなわち、振動子14は、洗浄液CLに直接的に接触しておらず、洗浄槽12、振動伝達媒体ML、および伝播槽24を介して洗浄液CLに間接的に接触している。
【0033】
発振器16は、振動子14(その圧電体22)に電気信号(電圧信号)S1を出力することにより、振動子14を超音波振動させるデバイスである。なお、発振器16の更なる詳細については後述する。
【0034】
制御装置18は、発振器16に対して電気信号(制御信号)S2を出力し、それにより発振器16に振動子14が超音波振動するための電気信号S1をその振動子14に出力させる装置である。制御装置18は、例えば、CPUと、CPUを様々に機能させるプログラムを記憶するメモリやハードディスクなどの記憶装置とから構成されている。制御装置18が、発振器16に対して電気信号S2を出力し、電気信号S2が入力された発振器16が対応する電気信号S1を振動子14に出力し、電気信号S1が入力された振動子14が超音波振動し、それにより洗浄液CLを超音波振動させる。その結果、洗浄液CL内の基板Wが超音波洗浄される。
【0035】
さらに、本実施の形態1の場合、基板処理装置10は、洗浄槽12内の洗浄液CL内に浸漬され、洗浄液CLの音圧(すなわち振動)を検出する音圧センサ30を有する。
【0036】
本実施の形態1の場合、音圧センサ30は、洗浄液CLに浸漬されるセンサ筺体32、その内部に配置されて振動を電気信号S3(電圧信号)に変換する圧電体34、圧電体34によって発生した電圧を引き出すための電極や配線(図示せず)などを含んでいる。
【0037】
音圧センサ30の圧電体34は、センサ筺体32に収容されることにより、洗浄液CLから保護されている。そのため、圧電体34は、洗浄液CLの超音波振動を、センサ筺体32を介して受振する。すなわち、洗浄液CLによって振動するセンサ筺体32の振動を、圧電体34は受振する。圧電体34は、受振した超音波振動を電気信号(電圧信号)S3に変換して出力する。圧電体34の電気信号S3は、最終的に制御装置18やオシロスコープ36に出力される。
【0038】
音圧センサ30のセンサ筺体32は、洗浄液CLによって腐食しにくい金属材料、例えばSUSなどから作製される。また、本実施の形態1の場合、センサ筺体32は、洗浄液CLに浸漬するように且つ振動可能な状態で洗浄槽12内に固定されている。なお、音圧センサ30を配置する洗浄槽12内の位置は、振動子14の直上が好ましい。ただし、振動子14と基板Wとの間を除く位置が好ましい。これは、振動子14からの超音波振動の一部が音圧センサ30に阻害されて基板Wに十分に伝達できない可能性があるからである。
【0039】
オシロスコープ36は、洗浄液CLの超音波振動波形に対応する電気信号S3の波形、すなわち洗浄液CLの超音波振動によって圧電体34が発生させた電圧波形を表示する。これにより、基板処理装置10の作業者は、超音波振動波形をモニタリングすることができる。
【0040】
制御装置18は、本実施の形態1の場合、音圧センサ30の圧電体34の電気信号S3に基づいて、振動子14と発振器16の状態判定を実行するように構成されている。言い換えると、制御装置18から発振器16に所定の電気信号S2が入力されたときに、音圧センサ30の圧電体34が対応する電気信号S3を出力しているか否かを判定するように、制御装置18は構成されている。
【0041】
図2は、本実施の形態1に係る基板処理装置における制御系を示すブロック図である。
【0042】
図2に示すように、振動子14と発振器16の状態判定を実行するために、制御装置18は、発振器16を制御する発振器制御部40と、音圧センサ30が検出した超音波振動の波形(振動波形)を取得する振動波形取得部42と、振動波形取得部42によって取得された振動波形に基づいて、振動子14と発振器16との状態を判定する振動子/発振器状態判定部44と、取得した振動波形を記憶する記憶部46とを有する。制御装置18がCPUと記憶部46とで構成される場合、記憶部46に記憶されているプログラムにしたがってCPUが動作することにより、CPUが発振器制御部40、振動波形取得部42、および振動子/発振器状態判定部44として機能する。
【0043】
発振器制御部40は、振動子14と発振器16の状態判定を実行するとき、状態判定用周波数fcで振動子14が振動するように、対応する状態安定用電気信号Scを発振器16に出力する。この状態判定用周波数fcについては後述する。
【0044】
なお、発振器制御部40は、状態判定を行うときのみに発振器を制御する専用の制御部であってもよいし、基板Wを洗浄するときに発振器を制御する制御部であってもよい。
【0045】
振動波形取得部42は、振動子14が状態判定用周波数fcで振動しているときに音圧センサ30が検出した振動波形を取得する。なお、取得した振動波形は、ディスプレイなどの出力デバイス50を介して作業者に提示してもよい。また、取得された振動波形は、データとして記憶部46に記憶される。
【0046】
振動子/発振器状態判定部44は、振動波形取得部42によって取得された振動波形に基づいて、振動子14と発振器16の状態を判定する。具体的には、振動子/発振器状態判定部44は、記憶部46に記憶されている直近に取得した過去の振動波形と、新たに取得した振動波形とを比較し、その比較結果に基づいて、状態判定を行う。例えば、周波数のずれ量が所定のずれ量を超える場合、および/または振幅の変化量が所定の変化量を超える場合には、振動子/発振器状態判定部44は、振動子14および発振器16の少なくとも一方に異常が発生していると判定する。そして、その異常発生を、出力デバイス50を介して作業者に通知する。
【0047】
このような振動子/発振器状態判定部44による状態判定を高い信頼度で行うためには、予め決められた一定の条件の下で音圧センサ30が高い感度で洗浄液CLの振動を検出する必要がある。そのために、本実施の形態1の場合、まず、振動子14の共振周波数帯域と音圧センサ30の圧電体34の共振周波数帯域とに、共通の周波数帯域が含まれている。
【0048】
図3は、実施の形態1における、振動子、センサ筺体および音圧センサの圧電体それぞれの共振周波数帯域の関係を示す図である。
【0049】
図3に示すように、本実施の形態1の場合、振動子14の共振周波数帯域と音圧センサ30の圧電体34の共振周波数帯域は、共通の周波数帯域CB(クロスハッチング領域)を含んでいる。
【0050】
ここで言う振動子14の「共振周波数帯域」は、振動子14への電気信号S1を変化させたとき、他の周波数帯域に比べて振動子14が大きく変位/変形する周波数の帯域を言う。振動子14の共振周波数帯域は、例えば、振動子14の振動子筺体20の材料、形状、剛性などや圧電体22の材料、形状、剛性などによって異なり、これらを適宜調節することによって所望の帯域に調節することができる。
【0051】
また、ここで言う音圧センサ30の圧電体34の「共振周波数帯域」は、圧電体34が受振する振動の周波数を変化させたとき、他の周波数帯域に比べて圧電体34の感度が大きく増加する、例えば出力信号(電圧信号)の振幅が大きく増加する周波数の帯域を言う。圧電体34の共振周波数帯域は、例えば圧電体34の材料、形状、剛性などによって異なり、これらを適宜調節することによって所望の帯域に調節することができる。
【0052】
発振器16は、予め決められた共通の周波数帯域CBに含まれる状態判定用周波数fcに対応する電気信号を振動子14に出力する。これにより、振動子14が状態判定用周波数fcで振動し、その振動子14から音圧センサ30の圧電体34に大きな振幅の状態判定用周波数fcの超音波振動が伝達される(振動子14が共振周波数帯域外の周波数で振動する場合に比べて)。また、その超音波振動を受振した圧電体34も共振し、その感度が増加する、すなわち大きな振幅の電圧信号を出力する(圧電体34が共振周波数帯域外の周波数の振動を受振する場合に比べて)。その結果、音圧センサ30は、洗浄液CLの振動がノイズに埋もれていない、S/N比が高い振動波形を検出結果として出力することができる。
【0053】
したがって、振動子/発振器状態判定部44は、一定の条件(状態判定用周波数fc)の下で高い感度で音圧センサ30が検出した振動波形に基づいて、高い信頼度で振動子14と発振器16の状態を判定することができる。
【0054】
図4は、(a)共通の周波数帯域内の周波数で振動子が振動するときの音圧センサの圧電体の電圧波形の一例と、(b)共通の周波数帯域外の周波数で振動子が振動するときの音圧センサの圧電体の電圧波形の一例とを示している。なお、
図4(a)の場合、電圧を示す縦軸の一目盛は50Vを示し、
図4(b)の場合、一目盛は1Vを示している。
【0055】
図4に示すように、振動子14が共通の周波数帯域CB内の周波数(状態判定用周波数fc)で振動する場合((a)の場合)、そうでない場合((b)の場合)に比べて、音圧センサ30の圧電体34は、S/N比が高くて大きな振幅の電圧信号を出力する。このようなS/N比が高くて大きな振幅の電圧信号に基づくことにより、高い信頼度で振動子14と発振器16の状態を判定することが可能になる。
【0056】
さらに、本実施の形態1の場合には、
図3に示すように、音圧センサ30のセンサ筺体32の共振周波数帯域に、共通の周波数帯域CBが含まれている。
【0057】
ここで言うセンサ筺体32の「共振周波数帯域」は、センサ筺体32に印加される振動の周波数を変化させたとき、他の周波数帯域に比べてセンサ筺体32が大きく変位/変形する周波数の帯域を言う。センサ筺体32の共振周波数帯域は、例えば、センサ筺体32の材料、形状、剛性などによって異なり、これらを適宜調節することによって所望の帯域に調節することができる。
【0058】
このようなセンサ筺体32によれば、センサ筺体32での減衰が抑制されつつ、振動子14からの状態判定用周波数fcの超音波振動が圧電体34に伝達する。その結果、さらに圧電体34の感度が増加する。
【0059】
加えて、振動子14と発振器16の状態判定を行うための状態判定用周波数ftは、洗浄時周波数であるのが好ましい。
【0060】
具体的には、洗浄液CLに浸漬された基板Wの洗浄条件として超音波振動の周波数(洗浄処理に必要な洗浄時周波数)が含まれる場合がある。例えば、基板の種類により、20~300kHzの帯域に含まれる周波数、700kHz以上の周波数などが、洗浄時周波数として決められている場合がある。この場合、共通の周波数帯域CBに、洗浄時周波数が含まれているのが好ましい。状態判定用周波数fcが洗浄時周波数であることにより、基板Wの洗浄中に、振動子14と発振器16の状態を判定することが可能になる。また、その判定により、振動子14と発振器16の状態が基板Wの洗浄を行える状態であることを保証することができる。
【0061】
なお、振動子14と発振器16の状態判定を行うタイミングは、基板Wが洗浄槽12内の洗浄液CLに浸漬しているタイミングに限らない。
【0062】
図5は、基板が洗浄槽の洗浄液に浸漬していない状態を示している。
【0063】
図5に示すように、基板Wが洗浄槽12の洗浄液CLに浸漬していないタイミング、例えば、基板Wが洗浄液CLに搬入される前、あるいは洗浄処理後の基板Wが洗浄液CLから搬出された後に、状態判定を行ってもよい。これにより、音圧センサ30は、基板Wの影響を受けずに、例えば、基板Wの浸漬位置のずれなどの影響を受けずに、より一定の条件の下で超音波振動を検出することができる。
【0064】
また、音圧センサ30の振動検出対象の媒体は、洗浄槽12内の洗浄液CLに限らない。
【0065】
図6は、実施の形態1の改良形態に係る基板処理装置を示している。
【0066】
図6に示すように、音圧センサ30は、洗浄槽12内ではなく伝播槽24内に設けられ、振動伝達媒体MLの振動を検出してもよい。この場合でも、洗浄槽12内の洗浄液CLの振動を検出する場合と同様に、振動子14と発振器16の状態を判定することができる。また、この場合、基板Wが洗浄液CL内に浸漬していてもまたは浸漬していなくても、すなわち同一条件で、振動子14と発振器16の状態を判定することが可能である。
【0067】
以上のような本実施の形態1によれば、基板を洗浄する洗浄液を振動させる振動子とその振動子に電気信号を出力する発振器とを含む基板処理装置において、洗浄液または振動伝達媒体の振動を高い感度で検出することができる。
【0068】
(実施の形態2)
本実施の形態2は、音圧センサの構造について上述の実施の形態1と異なる。したがって、異なる点を中心に、本実施の形態2について説明する。なお、上述の実施の形態1の構成要素と実質的に同一の本実施の形態2の構成要素には、同一の符号が付されている。
【0069】
図7は、本発明の実施の形態2に係る基板処理装置の概略図である。また、
図8は、実施の形態2における、振動子、センサ筺体、および音圧センサの圧電体それぞれの共振周波数帯域の関係を示す図である。
【0070】
図7に示すように、本実施の形態2に係る基板処理装置110において、音圧センサ130は、洗浄液CLに浸漬されるセンサ筺体132、その内部に配置されて振動を電気信号に変換する圧電体134、圧電体134によって発生した電圧を引き出すための電極や配線(図示せず)などを含んでいる。
【0071】
本実施の形態2の音圧センサ130の場合、センサ筺体132は、上述の実施の形態1における音圧センサ30のセンサ筺体32と異なり、二重構造である。具体的には、センサ筺体132は、金属製であって圧電体134を収容する筺体132aと、その筺体132aの外表面上に形成された石英のカバー層132bとから構成されている。金属製の筺体132aが石英のカバー層132bで覆われている理由は、洗浄対象の基板Wが金属の影響を受けやすい基板であるからである。
【0072】
また、
図8に示すように、センサ筺体132の石英のカバー層132bの共振周波数帯域は、共通の周波数帯域CBから外れている。これと異なり共通の周波数帯域CBに重なる場合、共通の周波数帯域CBに含まれる状態判定用周波数ftの振動を受けると、石英のカバー層132bが割れる可能性がある。
【0073】
なお、音圧センサのセンサ筺体の二重構造は、金属製の筺体とその筺体の外表面に形成された石英のカバー層とからなる構成以外の構成でも可能である。
【0074】
図9は、実施の形態2の改良形態に係る基板処理装置を示している。
【0075】
図9に示すように、実施の形態2の改良形態に係る基板処理装置210において、音圧センサ230のセンサ筺体232は、圧電体234を収容する金属製の内側筺体232aと、その内側筺体232aを収容する石英製のカップ状の外側筺体232bとから構成されている。その外側筺体232bには、外側筺体232bから内側筺体232aに振動を伝達するための水などの振動伝達媒体236が充填されている。
【0076】
以上のような本実施の形態2も、上述の実施の形態1と同様に、基板を洗浄する洗浄液を振動させる振動子とその振動子に電気信号を出力する発振器とを含む基板処理装置において、洗浄液の振動を高い感度で検出することができる。
【0077】
なお、実施の形態2においても、音圧センサ130、230は、伝播槽24内に設けられ、振動伝達媒体MLの振動を検出してもよい。
【0078】
以上、上述の実施の形態1および2を挙げて本発明を説明したが、本発明の実施の形態は上述の実施の形態に限らない。
【0079】
例えば、上述の実施の形態1の場合、
図3に示すように、振動子14の共振周波数帯域と音圧センサ30の圧電体34の共振周波数帯域とに含まれる共通の周波数帯域CBに含まれる状態判定用周波数fcで、振動子14は振動する。しかしながら、本発明の実施の形態はこれに限らない。
【0080】
振動子の共振周波数帯域と音圧センサのセンサ筺体の共振周波数帯域とに含まれる共通の周波数帯域の周波数で、すなわち音圧センサの圧電体の共振周波数帯域から外れた周波数で振動子が振動してもよい。この場合でも、洗浄液の振動を高い感度で検出することは可能である。
【0081】
また、上述の実施の形態1および2の場合、
図1および
図7に示すように、音圧センサ30、130の圧電体34、134は、センサ筺体32、132に収容された状態で洗浄液CLに浸漬されている。しかしながら、本発明の実施の形態はこれに限らない。音圧センサの圧電体は、防水型の圧電体であって且つ基板に影響を与えない場合、センサ筺体に収容されることなく、洗浄液に浸漬されてもよい。
【0082】
さらに、上述の実施の形態1の場合、
図1に示すように、音圧センサ30は、洗浄槽12に固定されている。これに代わって、音圧センサは、基板処理装置に対して着脱可能であってもよい。この場合、複数台の基板処理装置が、1つの音圧センサを共用することができる。
【0083】
音圧センサが基板処理装置に対して着脱可能である場合、音圧センサに異なる複数の圧電体が含まれていてもよい。
【0084】
図10は、本発明の別の実施の形態に係る基板処理装置の概略図である。
【0085】
図10に示すように、別の実施の形態に係る基板処理装置310において、その洗浄槽12に対して着脱可能な音圧センサ330は、そのセンサ筺体332内に、3つの圧電体324A、324B、および324Cを含んでいる。3つの圧電体324A、324B、および324Cそれぞれは、異なる共振周波数帯域を備える。そのため、振動子の共振周波数帯域がそれぞれ異なる複数の基板処理装置に対して、音圧センサ330を流用することができる。これにより、音圧センサの汎用性が向上する。
【0086】
さらにまた、上述の実施の形態1の場合、
図1に示すように、振動子14は、伝播槽24に設けられている。すなわち、洗浄液CLは、伝播槽24、振動伝達媒体ML、洗浄槽12を介して、振動子14によって振動される。しかしながら、本発明の実施の形態はこれに限らない。
【0087】
図11は、本発明のさらに別の実施の形態に係る基板処理装置の概略図である。
【0088】
図11に示すように、さらに別の実施の形態に係る基板処理装置410は、上述の実施の形態1と異なり、伝播槽を備えていない。そのため、振動子14が洗浄槽12に設けられている。また、音圧センサ30も洗浄槽12に設けられている。このような基板処理装置410によれば、振動子14から洗浄液CLに伝達される振動の損失が、伝播槽が存在する場合に比べて低減する。
【0089】
すなわち、本発明の一実施の形態に係る基板処理装置は、広義には、基板が浸漬される洗浄液を貯留する洗浄槽と、洗浄液を振動させる振動子と、前記振動子に電気信号を出力して前記振動子を振動させる発振器と、前記振動子によって振動される媒体に浸漬されて前記媒体の振動を検出する音圧センサと、を有し、前記音圧センサが、前記媒体の振動を電気信号に変換させる圧電体を含み、前記振動子の共振周波数帯域と前記圧電体の共振周波数帯域とに、共通の周波数帯域が含まれ、前記音圧センサが振動を検出するときに、前記発振器が、前記共通の周波数帯域に含まれる周波数で前記振動子を振動させるための電気信号を前記振動子に出力する装置である。
【0090】
また、本発明の別の実施の形態に係る基板処理装置は、広義には、基板が浸漬される洗浄液を貯留する洗浄槽と、洗浄液を振動させる振動子と、前記振動子に電気信号を出力して前記振動子を振動させる発振器と、前記振動子によって振動される媒体に浸漬されて前記媒体の振動を検出する音圧センサと、を有し、前記音圧センサが、前記媒体に浸漬されるセンサ筺体と、前記センサ筺体内に収容されて前記センサ筺体の振動を電気信号に変換する圧電体と、を含み、前記振動子の共振周波数帯域と前記センサ筺体の共振周波数帯域とに、共通の周波数帯域が含まれ、前記音圧センサが振動を検出するときに、前記発振器が、前記共通の周波数帯域に含まれる周波数で前記振動子を振動させるための電気信号を前記振動子に出力する装置である。
【0091】
以上のように、本発明における技術の例示として、上述の実施の形態を説明してきた。そのために、図面および詳細な説明を提供している。したがって、図面及び詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上述の技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0092】
また、上述の実施の形態は、本発明における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲又はその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略等を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、振動子とその振動子に電気信号を出力して振動させる発振器とを備える基板処理装置などの洗浄処理装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0094】
10 基板処理装置
12 洗浄槽
14 振動子
16 発振器
30 音圧センサ
34 圧電体
CL 洗浄液
W 基板