特許 7603438 マンホール用の養生装置

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】

(24)【登録日】2024-12-12

(45)【発行日】2024-12-20

(54)【発明の名称】マンホール用の養生装置

(51)【国際特許分類】

   E04G 21/32 20060101AFI20241213BHJP

   E02D 29/12 20060101ALI20241213BHJP

【ＦＩ】

E04G21/32 C

E04G21/32 Z

E02D29/12 Z

【請求項の数】 3

(21)【出願番号】P 2020209490

(22)【出願日】2020-12-17

(65)【公開番号】P2022096401

(43)【公開日】2022-06-29

【審査請求日】2023-10-10

(73)【特許権者】

【識別番号】500466108

【氏名又は名称】レイズネクスト株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100088155

【弁理士】

【氏名又は名称】長谷川 芳樹

(74)【代理人】

【識別番号】100113435

【弁理士】

【氏名又は名称】黒木 義樹

(74)【代理人】

【識別番号】100128381

【弁理士】

【氏名又は名称】清水 義憲

(74)【代理人】

【識別番号】100169454

【弁理士】

【氏名又は名称】平野 裕之

(72)【発明者】

【氏名】小林 淳

(72)【発明者】

【氏名】吉行 達哉

(72)【発明者】

【氏名】加藤 弘道

【審査官】櫻井 茂樹

(56)【参考文献】

【文献】実開昭６０－０９４９４２（ＪＰ，Ｕ）

【文献】特開２０１２－２１５０２９（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０１９－１０５０６５（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２００２－００４３９７（ＪＰ，Ａ）

(58)【調査した分野】(Int.Cl.，ＤＢ名)

Ｅ０４Ｇ２１／２４、２１／３２

Ｅ０２Ｄ２９／１２

Ｂ６５Ｄ８８／００－９０／６６

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

建造物の側壁を貫通して設置された磁性材料を含むマンホールに用いられる養生装置であって、
前記マンホールの内面の少なくとも一部分に、前記マンホールの湾曲形状に沿って湾曲した状態で磁力により付着する養生マットを備える、マンホール用の養生装置。

【請求項2】

前記マンホールの一方の開口部の周囲にあるガスケット面を覆うように前記マンホールの前記開口部の周囲部分に磁力により付着する、環状の養生シートを備える、請求項１に記載のマンホール用の養生装置。

【請求項3】

前記マンホールの一方の開口部を覆うように配置される養生カバーであって、該養生カバーの口部に設けられた紐用止め具付きの紐体によって前記口部を絞り前記マンホールの円筒部に固定されるように構成されている養生カバーを備える、請求項１又は２に記載のマンホール用の養生装置。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、貯蔵タンクや塔、槽等の建造物の壁体に設置されているマンホールの養生に関し、特にマンホールの内面等を傷や汚れから保護するための養生装置に関する。

【背景技術】

【0002】

石油等の貯蔵タンクのような建造物を建設する際、或いはメンテナンス等で内部を検査、補修その他の内部作業をする際、建造物の壁体（貯蔵タンクにあっては側壁）に貫通設置された横型のマンホールを通って作業員が建造物の内部に入り、作業を行うことがある。この際、マンホールの内面、特に下部内面を、作業員が所持する作業道具によって傷付けたり、作業員の靴や衣服に着いた泥、塗料等によって汚したりすることがある。

【0003】

このため、従来から、図９の（Ａ）に示すように、養生シート１００と称されるウエス或いはポリマーシートをマンホール１１０の下部内面に固定して、その面を保護するという養生作業を行うことが一般的であった。養生シート１００の固定法としては、通常、養生用の粘着テープ１２０で養生シート１００の両端をマンホール１１０の内面に貼り付けるという方法が採られていた。

【0004】

また、マンホール開口部の周囲のフランジ部にガスケット面１３０が形成されている場合、このガスケット面１３０も保護すべく、従来においては、図９の（Ｂ）に示すように、マンホール開口部の周囲のガスケット面１３０を養生用の粘着テープ１４０によって覆い隠すという養生作業を行っていた。また、ガスケット面１３０の養生には、以前使用していたガスケットをその部分に配置し粘着テープ等で固定するという手段も採られることもあった。

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0005】

しかしながら、上述したような養生作業は手間がかかり、養生が完了した後における養生シート及び粘着テープの撤去や養生部分の復旧にも時間がかかるという問題点があった。

【0006】

そこで、本発明の第１の目的は、上記問題点を解決し、マンホールの内面の少なくとも一部分を覆いその部分の養生を効率的に行うことのできる養生装置を提供することにある。

【0007】

また、粘着テープでガスケット面の養生を行う場合、粘着テープをガスケット面に隙間なく貼り付けること、並びに養生後に粘着テープを撤去してガスケット面の復旧することに多大な手間がかかるという問題点がある。ガスケット面を使用済のガスケットで覆うという手法をとる場合も同様の問題点があり、特に使用済のガスケットに汚染物その他の塵埃等で汚れている場合には使用済みガスケット自体を利用できないおそれもある。また、ガスケット面の養生を行う場合、マンホールの内面の養生と同時に行うことが常であるため、両養生をそれぞれ別個に行うことは作業効率の面で不利であると考えられる。

【0008】

そこで、本発明の第２の目的は、ガスケット面の養生を行う場合の上記問題点を解決し、ガスケット面及びマンホールの内面の養生を効率的に行うことのできる養生装置を提供することにある。

【課題を解決するための手段】

【0009】

本発明は、貯蔵タンク等の多くの建造物で用いられるマンホールが円筒形であり、磁性材料を含んでいることに鑑みてなされたものであり、本発明の一態様による養生装置は、マンホールの内面の少なくとも一部分に磁力により付着することが可能である養生マットを備えることを特徴としている。磁力発生源として、養生マットの基本構成要素として湾曲可能なマグネットシートを用いてもよいし、養生マットの一部に固定したネオジム磁石のような永久磁石を用いてもよい。

【0010】

なお、養生マットは、その上を作業員が移動するため、クッション性を有することが好適である。マグネットシートを用いている場合には、マグネットシートの少なくとも一方の面（通常は作業員が接する面）に保護材を貼り付けて構成することが考えられる。

【0011】

また、本発明の別の態様による養生装置は、前記の養生マットに加えて、マンホールの一方の開口部の周囲にあるガスケット面を覆うようにマンホールの開口部の周囲部分に磁力により密着することが可能である養生シートを備えることを特徴としている。

【0012】

この養生シートも、養生マットと同様、磁力発生源として、養生シートの基本構成要素として湾曲可能なマグネットシートを用いてもよいし、養生シートの一部に固定したネオジム磁石のような永久磁石を用いてもよい。また、養生シートはクッション性を有することが好適である。

【0013】

養生シートは、養生マットとの同時使用も可能なように、養生マットに分離可能に結合され得ることが好適である。

【0014】

さらに、養生マット或いは養生シートは磁力をもってマンホールに取り付けられるため、何らかの要因で外れることも考えられ、また、マンホールの養生は長期にわたることも多いためにマンホールの開口部は頻繁に開け閉めすることが想定される。そこで、本発明による養生装置は、マンホールの一方の開口部を覆うように配置される養生カバーであって、該養生カバーの口部に設けられた、コードロック或いはコードストッパ等とも称される紐用止め具付きの紐体によって前記口部を絞りマンホールの円筒部に固定されるように構成されている養生カバーをさらに備えることが好適である。

【発明の効果】

【0015】

上述したような養生マットを備える養生装置は、上記の本発明の第１の目的を達成することができるものであり、磁力によりマンホールの内面に付着させることができるので、養生作業の技術がない者であって簡単に設置することができる。

【0016】

また、本発明による養生装置は、養生マットに加えてガスケット面を保護する養生シートを備えるものであり、これも磁力によりガスケット面を覆うように取り付けることができ、上記の本発明の第２の目的も達成することが可能となる。特に、養生シートを養生マットに分離可能に結合できるとした場合に、養生マットの設置と同時に養生シートの設置も可能となり、作業効率が向上する。一方、養生マットと養生シートを分離して単独での使用も可能となるため、必要に応じた養生作業のみを行うこともできる。

【0017】

さらに、上述の養生カバーを備える場合、紐用止め具付きの紐体を用いることで、粘着テープを用いずに養生カバーをマンホールに装着することができ、マンホールの開口部を頻繁に開け閉めする場合に特に適している。

【0018】

なお、養生装置における養生マット、養生シート及び養生カバーは再利用が可能である。

【図面の簡単な説明】

【0019】

【図1】本発明による養生装置の養生マット及び養生シートを概略的に示す斜視図であり、（Ａ）は分離した状態、（Ｂ）は結合した状態を示している。

【図2】図１の養生装置をマンホールに設置した状態を概略的に示す正面図である。

【図3】図２のIII－III線に沿っての断面図である。

【図4】本発明による養生装置の養生カバーを概略的に示す正面図である。

【図5】本発明による養生装置の養生カバーを概略的に示す正側面図である。

【図6】本発明の他の実施形態による養生装置における養生マットを示す斜視図である。

【図7】本発明の他の実施形態による養生装置における養生シートを示す斜視図である。

【図8】本発明の他の実施形態による養生装置における養生カバーを示す斜視図である。

【図9】従来の養生方法を示す概略説明図であり、（Ａ）はマンホールの内面の養生、（Ｂ）はガスケット面の養生を示している。

【発明を実施するための形態】

【0020】

以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、全図を通して同一又は相当部分には同一符号を付し、その重複した説明は省略する。

【0021】

図１は、本発明によるマンホール用の養生装置の一実施形態を示している。本実施形態においては、養生装置１０は、図２及び図３に示すような、石油等の貯蔵タンクの側壁２００に設置された横型のマンホール１１０に適用されるものとし、かかるマンホール１１０は円筒形であり、磁性材料を含むものとする。

【0022】

図１の（Ａ）に示すように、養生装置１０は、矩形の板状の養生マット２０と、環状の養生シート３０とから構成されている。図２及び図３から理解されるとおり、本実施形態における養生マット２０はマンホール１１０の円筒部の下部内面に配置されるものであり、養生シート３０は、マンホール１１０の開口部を囲むフランジ部に形成されている環状のガスケット面１３０を保護するためのものである。

【0023】

養生マット２０はマグネットシート２２から構成されている。マグネットシート２２は、薄板状の磁性素材に磁力を施した着磁性を有するシートであり、柔軟性があり、円筒状に湾曲可能となっている。また、マグネットシート２２の少なくとも一方の面（図１では上面であり、作業員が接する側となる面）にはクッション性を有する保護材２４が設けられていることが好ましい。保護材２４の構成としては、適当な厚さのポリエチレン発泡シートのようなシート材（例えば酒井化学工業株式会社によって製造・販売されている１０ｍｍ厚のミナフォーム（登録商標））を２枚の適当な表面材の間に挟み込んだものが好適であるが、これに限定されるものではない。貯蔵タンクにおけるマンホール１１０の場合、作業員が這ってマンホール１１０内を移動するため、保護材２４を設けることは作業員の体重を支え膝や手を保護し快適な作業環境を得るために有効である。また、保護材２４の表面材は耐久性や防汚性、耐水性に優れているターポリンが有効である。

【0024】

養生マット２０の寸法としては種々考えられるが、作業員が通る範囲を覆うために、短辺Ｄ１についてはマンホール１１０の全長と同等の長さを有し、長辺Ｄ２についてはマンホール１１０の下半分の内面の円弧長、すなわち「マンホールの内径×π÷２」と同等の長さを有することが好ましい。

【0025】

養生シート３０も、養生マット２０と同様にマグネットシート３２から構成されている。養生シート３０は、養生シート３０に作業員が接触した際の衝撃を緩和するために、養生マット２０と同様な保護材３４が少なくとも一方の面（図１では見える側の面であり、外部に露出する側の面）に設けられていることが好ましいが、作業員による接触は少ないため、養生マット２０より薄くてもよい。保護材３４の構成としては、適当な厚さのポリエチレン発泡シート、例えば２ｍｍ厚のベルポーレンやミナフォーム（登録商標）のようなのようなクッション性を有するシート材をターポリンのような２枚の適当な表面材の間に挟み込んだものが好適であるが、これに限定されるものではない。

【0026】

養生シート３０の寸法としてはマンホール１１０のガスケット面１３０を覆い隠すのに十分な面積を有していればよいので、養生シート３０の内径はガスケット面１３０の内径、実質的にはマンホール１１０の開口部の内径と同等であればよく、養生シート３０の外径はガスケット面１３０の外径と同等であればよい。

【0027】

養生マット２０と養生シート３０とは、養生作業時に同時使用することが好ましいため、図１の（Ｂ）に示すように結合された状態とすることが有効である。結合手段としては、分離不可能に一体化する等、種々の手段が考えられるが、本実施形態においては分離可能に結合されている。すなわち、養生マット２０の一方の側縁部の中央部に耳部２６が形成されており、この耳部２６を養生シート３０の中央穴に通して折り曲げ、養生シート３０の一部に当接させることが可能となっている。加えて、耳部２６の折曲げ側の面にはマジックテープ（登録商標）として知られている面ファスナの一方（図示せず）が設けられ、養生シート３０の、耳部２６を受ける面には面ファスナの他方３６が設けられ、これらを当接させることで、養生マット２０と養生シート３０とは分離可能に結合される。分離可能とすることは必須ではないが、養生作業の態様によっては養生マット２０と養生シート３０の一方のみで足りることもあるため有効である。例えば、図示しないが、マンホール蓋のガスケット面を保護したい場合等に養生シート３０のみを用いる態様が考えられる。

【0028】

なお、耳部２６は、養生マット２０の取扱い、特に取外しを容易に行うために指で摘まむ摘み片としても用いることができる。また、仮にマンホール蓋でマンホール１１０を閉止しようとした際に養生が残っていることの目印ともなる。同様の目的で養生シート３０にも耳部３８を形成することが好ましい。

【0029】

このような養生装置１０を用いる場合、図１の（Ｂ）に示す状態から養生マット２０の短辺側の両端部を近付けるようにすると、養生マット２０は湾曲し、その断面は概ね半円状となる。この状態で、耳部２６，３８とは反対側の養生マット２０の側縁部をマンホール１１０の開口部から挿入し、養生シート３０がマンホール１１０の、ガスケット面１３０が形成されているフランジ部に接するまで押し込む。養生マット２０は、その材料の性質上、自己復元性を有しているため、そこに加えている力を取り除くだけで、養生マット２０のマグネットシート２２は、その全体が図２及び図３に示すようにマンホール１１０の下部内面に当接する。マンホール１１０は磁性材料を含んでいるため、養生マット２０のマグネットシート２２は磁力により隙間なく密着する。また、養生シート３０は、そのマグネットシート３２がマンホール１１０のフランジ部の表面に接して磁力により密着し、ガスケット面１３０を覆い隠し、これを保護する。

【0030】

このように、本実施形態による養生装置１０は、磁力によってマンホール１１０に密着させることができるため、従来のように粘着テープを用いずとも容易にその設置が完了する。この作業には特に技術は必要でなく、経験の浅い作業員によっても十分に所望の養生作業を遂行することができる。養生装置１０が設置された状態では、作業員は養生シート３０の中央穴を通って出入りすることができ、養生マット２０上を行き来することができるが、その際に養生マット２０及び養生シート３０の下側となるマンホール１１０の表面には傷や汚れが付くことはなく、養生マット２０及び養生シート３０に接触しても、その保護材２４，３４によって作業員は保護され快適にメンテナンス等の作業を行うことが可能となる。また、養生マット２０及び養生シート３０は、比較的薄手のものであっても、マンホール１１０との接触面と密着するため、皺が寄るおそれがない。

【0031】

貯蔵タンクに対するメンテナンス等の作業が完了しマンホール１１０の養生が不要となったならば、マグネットシート２２，３２の磁力に打ち勝つだけの力を持って耳部２６，３８を引っ張ることで、養生装置１０をマンホール１１０から取り外すことができる。その取外し作業は、従来のように粘着テープを剥がす作業に比して大幅に容易であり、粘着テープを剥がした後にマンホール１１０に残る粘着剤の除去作業も不要となる。また、養生マット２０と養生シート３０は分離可能であるため、例えば、ガスケット面１３０を復旧する場合には養生シート３０のみを取り外すことも可能であり、マンホール１１０の内面を復旧する場合には養生マット２０のみを取り外すこともできる。

【0032】

さらに、養生後に取り外した養生マット２０及び養生シート３０は、粘着テープ等の付着もないため、再利用することも可能である。

【0033】

ところで、貯蔵タンクのメンテナンス等の作業は長期にわたることが多いが、その場合、従来においてはマンホール内面上の養生シートやガスケット面上の粘着テープ等をマンホールにそのまま残し、マンホール蓋は用いずに、防炎・防水対策として養生カバーでマンホールの開口部を仮閉めすることとしていた。従来の養生カバーはターポリンのような防炎・防水が可能なシート材料からなり、それをマンホールの開口部に被せ、養生カバーの自由縁部をマンホールの円筒部でまとめて、粘着テープやロープ等を用いて固縛していた。

【0034】

しかしながら、メンテナンス等の作業を行う際には、その都度、養生カバーを外す必要があり、その作業が終了したならば、再度養生カバーを設置する必要があった。この養生カバーの再設置には手間がかかり、粘着テープやロープを用いての固縛では隙間が生じるおそれもある。さらに、粘着テープで養生カバーを固定する場合は、その養生カバーは繰り返し用いることは困難となることも多い。

【0035】

一方、本発明による養生装置１０の場合、養生マット２０や養生シート３０を容易に取り外すことができるため、その養生マット２０等の偶発的な脱落を防止するために養生カバーは重要である。

【0036】

そこで、養生装置１０の任意的構成要素として、図４及び図５に示すような新規な養生カバー４０を創案した。

【0037】

本発明の一実施形態による養生カバー４０は、従来と同様にターポリン等の防炎や防水に適した柔軟なシート材料からなり、マンホール１１０のフランジ部全体を覆うことができるよう、袋状に構成されている。養生カバー４０の口部の周縁部には紐通し部４２が形成されており、そこに１本の紐体４４がループ状に通されている。紐体４４としては直径が４ｍｍ程度のエステル丸ゴム紐等が適当であり、この紐体４４の両端を引っ張ることで、養生カバー４０の口部を巾着状に且つ弾性的に絞ることができる。紐体４４の両端はコードストッパ或いはコードロック等と一般に称されている紐用止め具（例えば、株式会社ニフコにより製造・販売されているコードロック（ＣＬ２－Ｔ））４６に通されており、この紐用止め具４６によって養生カバー４０の口部の絞り具合を簡単且つ迅速に調整することができる。従来のように粘着テープやロープによって固縛する方法では養生カバーとマンホールとの間に隙間が生じ易かったが、本実施形態の養生カバー４０ではマンホール１１０との間の密閉度を高くすることができ、防炎性や防水性の向上を図ることができる。また、貯蔵タンク内部のガスが外部に放散されることを抑制ないしは防止することができるため、安全性も向上することになる。

【0038】

また、養生カバー４０の主面には、ファスナ（例えば、両スラス頭合せタイプのプラスチックファスナ）により気密に開閉自在となる窓部４８が形成されている。この窓部４８を通してガスホース５０等を設置することが可能であり、貯蔵タンク内部の残留ガスや臭い等を外部に排出したり、窒素等の雰囲気を維持したりすることに利用される。従来の養生カバーは再使用することを意図していなかったため、このような窓部を設けることはなかったが、本発明によれば、養生カバー４０の再使用をも考慮しているため、窓部４８を設け、残留ガスの排出等も可能となり、その他の作業のための簡便なアクセス手段を提供することも可能となっている。なお、図４及び図５における符号５４は、窓部４８のファスナを通してガスホース５０を挿入した場合等に生じる隙間から雨水が浸入しないようにする雨除けカバーである。

【0039】

なお、養生カバー４０の主面は広く露出するため、例えば図４において符号５２で示す部分を作業上の注意等を掲載するための表示部として利用することができる。

【0040】

以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。

【0041】

例えば、図１～図３に示す養生マット２０は、本体がマグネットシート２２から構成されており、養生マット２０の概ね全面に磁力が生じるようになっているが、部分的に磁力が生じるような構成としてもよい。例えば、小さなマグネットシートを養生マット２０の全体に離散配置してもよく、或いは、図６に示すように養生マット２０の両端部にそれぞれ複数個（図示実施形態では３個）の円盤状の永久磁石６０を固定してもよい。永久磁石６０としては、例えば磁力の強いネオジオ磁石が好ましい。図６に示す養生マット２０の本体は、図１～図３に示す養生マット２０の保護材と同様な構成からなるものとすることができるが、これに限定されるものではない。図６に示す構成の養生マット２０の場合、永久磁石６０をマンホール１１０の内面から離しておけば養生マット２０を磁力の影響を受けずに移動させることができるので、養生マット２０の設置が容易となる。

【0042】

ガスケット面１３０を保護する養生シート３０については、図１～図３に示すものは環状の分割不能な一体型であるが、分割可能なものとしてもよい。例えば、図７に示すように、複数の円弧状の養生シートセグメント７０を環状に並べ、隣合う養生シートセグメント７０の端部同士を面ファスナ７２ａ，７２ｂによって分離可能に接合したものが考えられる。このように養生シート３０を分割可能とすることで、養生シート３０の取付けや取外し等の取扱いが容易化される。勿論、養生マット２０についても分割可能とすることも可能である。

【0043】

また、図７に示す養生シート３０の場合、各養生シートセグメント７０は、ターポリン等の２枚の表面材７０ａ，７０ｂの間にベルポーレンやミナフォーム（登録商標）のようなクッション性を有するシート材７０ｃを挟み、シート材７０ｃの周囲に沿って表面材７０ａ，７０ｂを縫製等により結合させることで作製されている。養生シートセグメント７０の作製時に表面材７０ａ，７０ｂを周方向にずらし、そのずらした部分に面ファスナ７２ａ，７２ｂを設けた場合には、隣接の養生シートセグメント７０と接合した状態において、接合部の表面に形成される凸凹が少なくなり、作業員の衣服が引っかかったり汚れが侵入したりしにくくなるという効果を奏する。

【0044】

なお、図７に示す養生シート３０における磁力発生源は、図６の養生マット２０と同様に、例えばネオジム磁石のような円盤状の永久磁石７４を用いている。この永久磁石７４は、シート材７０ｃに設けた凹部又は貫通穴７６に埋設することで設置することができるが、これに限定されるものではない。

【0045】

養生カバー４０については、図４及び図５に示すものはターポリン等の柔軟なシート材料から袋状に構成したものとしたが、図８に示す養生カバー４０のように、マンホール１１０のフランジ部を囲む部分８０，８２についてはある程度の剛性を持たせたものとしてもよい。剛性を有する養生カバー４０の場合は、カバー自体が縒れ曲がるということがないため、設置が非常に容易となる。なお、養生カバー４０の円筒部分８２の自由端縁からは、例えば株式会社アオタケにより販売されているＦ２６００アーネスト等のポリエステル製の防炎ツイル８４がスカート状に延びている。このツイル８４の口部には、図４及び図５に示す養生カバー４０と同様に、止め具４６付き紐体４４が設けられており、マンホール１１０に対する養生カバー４０の装着、位置調整の容易化が図られている。

【0046】

また、例えば、上記実施形態では養生マット２０はマンホール１１０の下部内面のみに固定されるものとしているが、養生マット２０の全長を延ばし、マンホール１１０の内面の全周を覆うような長さとすることも可能である。

【0047】

さらに、石油貯蔵タンクのマンホール１１０に限らず、他の建造物のマンホール或いはその均等物にも本発明は適用可能である。例えば、原子炉建屋のように複数の隔室を有する建造物においては、隔室を仕切る壁体に貫通設置される管路も、円筒形であって磁性材料を含むものであれば、マンホールの均等物として本発明を適用することができる。本発明が適用可能なマンホールは横型に限られず、本発明の養生装置１０におれる養生マット２０及び／又は養生シート３０は磁力によって付着させることが可能であるため、垂直方向に延びる竪型のマンホールにも適用可能である。

【符号の説明】

【0048】

１０…養生装置、２０…養生マット、２２…養生マットのマグネットシート、２４…養生マットの保護材、２６…養生マットの耳部、３０…養生シート、３２…養生シートのマグネットシート、３４…養生シートの保護材、３６…面ファスナ、３８…養生シートの耳部、４０…養生カバー、４２…紐通し部、４４…紐体、４６…紐用止め具、４８…窓部、５０…ガスホース、５２…表示部、５４…雨除けカバー、６０…（円盤状）永久磁石、７０…養生シートセグメント、７０ａ，７０ｂ…表面材、７０ｃ…シート材、７４…（円盤状）永久磁石、７６…凹部又は貫通穴、８０，８２…養生カバーの剛性部分、８４…ツイル、１１０…マンホール、１３０…ガスケット面、２００…貯蔵タンクの側壁（建造物の壁体）

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】