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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】非空気圧タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 7/00 20060101AFI20241213BHJP
   B60B 9/04 20060101ALI20241213BHJP
【FI】
B60C7/00 H
B60B9/04
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020219331
(22)【出願日】2020-12-28
(65)【公開番号】P2022104246
(43)【公開日】2022-07-08
【審査請求日】2023-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】梶原 晃平
【審査官】池田 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-083915(JP,A)
【文献】特開2018-193046(JP,A)
【文献】特開2016-023736(JP,A)
【文献】特開2017-023888(JP,A)
【文献】特開2019-043505(JP,A)
【文献】国際公開第2019/093212(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00 - 19/12
B60B 9/00 - 9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周にトレッドを有する外側環状部と、
前記外側環状部の内側に設けられる内側環状部と、
前記外側環状部と前記内側環状部とを連結し、タイヤ周方向に沿って設けられる連結部と、を備える非空気圧タイヤであって、
前記連結部は、前記外側環状部のタイヤ幅方向の一方側から前記内側環状部のタイヤ幅方向の他方側へ向かって延設される長尺板状の第1連結部と、前記外側環状部のタイヤ幅方向の他方側から前記内側環状部のタイヤ幅方向の一方側へ向かって延設される長尺板状の第2連結部と、がタイヤ周方向に沿って交互に配列されて構成され、外表面に前記連結部よりも耐候性が高い耐候性層を有するとともに前記耐候性層の外表面に耐摩耗性層を有する、非空気圧タイヤ。
【請求項2】
前記耐候性層は、前記連結部の外表面全面に設けられる、請求項1に記載の非空気圧タイヤ。
【請求項3】
前記耐摩耗性層は、前記連結部よりも摩擦係数が低い材料からなる、請求項1又は2に記載の非空気圧タイヤ。
【請求項4】
前記耐摩耗性層は、前記連結部よりも表面粗さが小さい材料からなる、請求項1~のいずれか1項に記載の非空気圧タイヤ。
【請求項5】
前記耐摩耗性層は、前記連結部よりも硬度が高い材料からなる、請求項1~4のいずれか1項に記載の非空気圧タイヤ。
【請求項6】
前記耐摩耗性層は、隣り合う前記連結部に対向する面から、タイヤ幅方向に面する内側側面及び外側側面にかけて設けられる、請求項1~5のいずれか1項に記載の非空気圧タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非空気圧タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パンクの発生等の問題のない非空気圧タイヤが知られている(例えば、特許文献1等参照)。一般に、非空気圧タイヤは、外側環状部と、外側環状部の内側に同心円状に設けられる内側環状部との間を、タイヤ周方向に配列した複数の連結部によって連結した構造を有する。非空気圧タイヤは、車両からの荷重を受けた際に、接地域に配置される連結部に圧縮力が作用して撓み変形する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-218132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非空気圧タイヤの連結部は、車両からの荷重を受けた際に撓み変形可能な樹脂又はゴムからなる弾性材料によって形成される。このような連結部は、非空気圧タイヤが使用される環境条件下において劣化し易い。例えば、連結部がウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂からなる場合、連結部は、水、O、UVによって劣化し易い。そのため、長期使用によって耐久性が徐々に低下する課題がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、連結部の耐久性が向上した非空気圧タイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の非空気圧タイヤは、外周にトレッドを有する外側環状部と、前記外側環状部の内側に設けられる内側環状部と、前記外側環状部と前記内側環状部とを連結し、タイヤ周方向に沿って設けられる連結部と、を備える非空気圧タイヤであって、前記複数の連結部は、外表面に前記連結部よりも耐候性が高い耐候性層をそれぞれ有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、連結部の耐久性が向上した非空気圧タイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の非空気圧タイヤの一実施形態を示す正面図である。
図2図1中のA-A線に沿う断面図である。
図3図2中のC-C線に沿う断面図である。
図4】車両からの荷重が掛かった状態の非空気圧タイヤの接地域を示す正面図である。
図5図4における隣り合う2つの連結部を示す拡大図である。
図6図1中のB-B線に沿う断面図である。
図7】本発明の非空気圧タイヤの他の実施形態の一部分を示す正面図である。
図8】本発明の非空気圧タイヤの他の実施形態において車両からの荷重が掛かった状態の非空気圧タイヤの接地域を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の非空気圧タイヤの一実施形態を示す正面図である。図2は、図1中のA-A線に沿う断面図である。非空気圧タイヤ1は、外側環状部2と、外側環状部2の内側に同心円状に設けられる内側環状部3と、外側環状部2と内側環状部3とを連結し、タイヤ周方向Dに沿って各々独立して設けられる複数の連結部4と、を備える。外側環状部2の外周には、トレッド5が設けられている。トレッド5には、従来の空気入りタイヤと同様のトレッドパターンが設けられる。
【0010】
まず、外側環状部2及び内側環状部3について説明する。なお、以下において、外側環状部2及び内側環状部3の厚みとは、図1及び図2に示すタイヤ径方向Xに沿う方向の板厚のことをいう。外側環状部2及び内側環状部3の幅とは、図2に示すタイヤ幅方向Yに沿う方向の幅のことをいう。
【0011】
外側環状部2は、ユニフォミティを向上させる観点から、周方向及び幅方向に一定の厚みを有する。外側環状部2の厚みは、特に限定されないが、連結部4からの力を十分に伝達しつつ、軽量化及び耐久性の向上を図る観点からは、図2に示すタイヤ断面高さHの2%以上7%以下であることが好ましく、2%以上5%以下であることがより好ましい。
【0012】
外側環状部2の内径は、用途等に応じて適宜決定される。例えば、一般の空気入りタイヤの代替を想定した場合、外側環状部2の内径は、420mm以上750mm以下とすることができる。
【0013】
外側環状部2の幅は、用途等に応じて適宜決定される。例えば、一般の空気入りタイヤの代替を想定した場合、外側環状部2の幅は、100mm以上300mm以下とすることができる。
【0014】
内側環状部3は、ユニフォミティを向上させる観点から、周方向及び幅方向に一定の厚みを有する。内側環状部3の内周面には、図示しないが、車軸やリムとの装着のために、嵌合性を保持するための凹凸等を設けてもよい。内側環状部3の厚みは、特に限定されないが、連結部4に力を十分に伝達しつつ、軽量化及び耐久性の向上を図る観点からは、図2に示すタイヤ断面高さHの2%以上7%以下であることが好ましく、3%以上6%以下であることがより好ましい。
【0015】
内側環状部3の内径は、非空気圧タイヤ1を装着するリムや車軸の寸法等に合わせて適宜決定される。例えば、一般の空気入りタイヤの代替を想定した場合、内側環状部3の内径は、250mm以上500mm以下とすることができる。
【0016】
内側環状部3の幅は、用途、車軸の長さ等に応じて適宜決定される。例えば、一般の空気入りタイヤの代替を想定した場合、内側環状部3の幅は、100mm以上300mm以下とすることができる。
【0017】
連結部4は、非空気圧タイヤ1において、外側環状部2と内側環状部3とを一定の間隔を保持するように連結するスポークとして機能する部材である。複数の連結部4は、タイヤ周方向Dに沿って一定の間隔で各々独立して配列され、図1に示すように、無荷重状態の非空気圧タイヤ1をタイヤ回転軸に沿う方向から正面視した場合に、タイヤ径方向Xに沿う放射方向に直線状に延びている。
【0018】
連結部4は、弾性材料によって形成される。弾性材料とは、JIS K7321に準じて引張試験を行い、10%伸び時の引張応力から算出した引張モジュラスが、100MPa以下であるものを指す。具体的には、十分な耐久性を確保しながら、適度な剛性を付与する観点から、引張モジュラスは5MPa以上100MPa以下であることが好ましく、7MPa以上50MPa以下であることがより好ましい。
【0019】
連結部4の母材として用いられる弾性材料としては、熱可塑性エラストマー、架橋ゴム、その他の樹脂が挙げられる。
【0020】
熱可塑性エラストマーとしては、ポリエステルエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリスチレンエラストマー、ポリ塩化ビニルエラストマ
ー、ポリウレタンエラストマー等が例示される。
【0021】
架橋ゴムを構成するゴム材料としては、天然ゴム及び合成ゴムのいずれを使用することもできる。合成ゴムとしては、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IIR)、ニトリルゴム(NBR)、水素添加ニトリルゴム(水添NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、フッ素ゴム、シリコーンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム等が例示される。これらのゴム材料は、必要に応じて2種以上を併用してもよい。
【0022】
その他の樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。
【0023】
連結部4には、上記の弾性材料のうち、成形、加工性及びコストの観点から、ポリウレタン樹脂が好ましく用いられる。なお、弾性材料としては、発泡材料を使用することもできる。すなわち、上記の熱可塑性エラストマー、架橋ゴム、その他の樹脂を発泡させたものを使用することができる。また、外側環状部2及び内側環状部3が樹脂製である場合、連結部4は、外側環状部2及び内側環状部3と、同じ樹脂材料を用いて一体に形成してもよい。
【0024】
本実施形態の連結部4は、第1連結部41と第2連結部42とが、タイヤ周方向Dに沿って交互に配列される。第1連結部41は、図2に示すように、外側環状部2のタイヤ幅方向Yの一方側Y1から内側環状部3のタイヤ幅方向Yの他方側Y2へ向かって延設されている。一方、第2連結部42は、外側環状部2のタイヤ幅方向Yの他方側Y2から内側環状部3のタイヤ幅方向Yの一方側Y1へ向かって延設されている。すなわち、タイヤ周方向Dに隣り合う第1連結部41と第2連結部42とは、タイヤ周方向Dから見た場合に、略X字状に配置されている。
【0025】
図2に示すように、タイヤ周方向Dから見た第1連結部41と第2連結部42とは、タイヤ赤道面Sに対して対称な同一形状である。そのため、第1連結部41を用いて、連結部4の具体的な形状について説明する。なお、タイヤ赤道面Sは、タイヤ回転軸(タイヤ子午線)に直交する面で、かつタイヤ幅方向Yの中心に位置する面である。
【0026】
連結部4は、外側環状部2から内側環状部3へと斜めに延びる長尺板状に形成されている。連結部4は、図2及び図3に示すように、板厚tが板幅wよりも小さく、板厚方向PTがタイヤ周方向Dを向いている。すなわち、連結部4は、タイヤ径方向X及びタイヤ幅方向Yに延びる板状に形成されている。なお、連結部4の板厚tは、タイヤ周方向Dに沿う連結部4の厚みである。連結部4の板幅wは、連結部4をタイヤ周方向Dに沿う方向から見たときの連結部4の延び方向に直交する方向の幅である。連結部4は、このような長尺板状であるため、板厚tを薄くしても、板幅wを広く設定することによって、板厚tが薄い場合の連結部4の耐久性を向上させることができる。さらに、板厚tを薄くしつつ第1連結部41及び第2連結部42の数を増やすことによって、タイヤ全体の剛性を維持しつつ、タイヤ周方向Dに隣り合う連結部4,4同士の隙間を小さくすることができる。これによって、タイヤ転動時の接地圧分散を小さくできる。
【0027】
連結部4は、図2に示すように、外側環状部2との接続部401及び内側環状部3との接続部402が、それぞれタイヤ幅方向Yに沿ってなだらかに広がった形状を有する。連結部4は、各接続部401,402との間においてほぼ一定の板幅wを有する。第1連結部41の外側環状部2との接続部401は、外側環状部2のタイヤ幅方向の半分の領域に亘って設けられる。
【0028】
すなわち、第1連結部41の接続部401の一方側Y1は、外側環状部2の一方側Y1の端部2aまで延びている。第1連結部41の接続部401の他方側Y2は、外側環状部2のタイヤ幅方向の中央に配置されるタイヤ赤道面Sまで延びている。第1連結部41の接続部401の他方側Y2は、内側環状部3の他方側Y2の端部3bまで延びている。第1連結部41の接続部402の一方側Y1は、内側環状部3のタイヤ幅方向の中央に配置されるタイヤ赤道面Sまで延びている。
【0029】
同様に、第2連結部42の接続部401の他方側Y2は、外側環状部2の他方側Y2の端部2bまで延びている。第2連結部42の接続部401の一方側Y1は、外側環状部2のタイヤ幅方向の中央に配置されるタイヤ赤道面Sまで延びている。第2連結部42の接続部402の一方側Y1は、内側環状部3の一方側Y1の端部3aまで延びている。第2連結部42の接続部402の他方側Y2は、内側環状部3のタイヤ幅方向の中央に配置されるタイヤ赤道面Sまで延びている。
【0030】
連結部4の板厚tは、外側環状部2及び内側環状部3からの力を十分伝達しつつ、後述するように荷重が負荷した際に容易に撓み変形し得る図る観点から、1mm以上30mm以下であることが好ましく、5mm以上25mm以下であることがより好ましい。連結部4の板厚tは、外側環状部2から内側環状部3にかけて同一厚でなくてもよい。例えば、連結部4の板厚tは、荷重によって容易に撓み変形し易くするために、外側環状部2及び内側環状部3との接続部側の板厚よりも、中央部の板厚が小さくなるように形成されてもよい。
【0031】
連結部4の板幅wは、外側環状部2及び内側環状部3からの力を十分伝達しつつ、軽量化及び耐久性の向上を図る観点から、5mm以上25mm以下であることが好ましく、10mm以上20mm以下であることがより好ましい。また、板幅wは、耐久性を向上させつつ接地圧分散を小さくする観点から、板厚tの110%以上であることが好ましく、115%以上であることがより好ましい。
【0032】
タイヤ周方向Dに隣り合う第1連結部41と第2連結部42との間のピッチpは、タイヤ周方向Dに一定で小さいことが好ましい。このピッチpは、後述するように、タイヤ周方向Dに隣り合う第1連結部41と第2連結部42とが、接地域Cにおいて車両からの荷重によって撓み変形した際に、互いに接触し得るように狭く設定される。これによって、非空気圧タイヤ1の転動時の車外音を低減することができる。具体的には、ピッチpは、1mm以上10mm以下であることが好ましく、1mm以上5mm以下であることがより好ましい。ピッチpが10mmよりも大きい場合は、接地圧がタイヤ周方向Dで不均一になり易く、車外音が発生するおそれがある。
【0033】
非空気圧タイヤ1に設けられる連結部4の数としては、撓み変形した際に隣り合う連結部4,4同士が互いに接触し得るとともに、車両からの荷重を十分支持しつつ、軽量化、動力伝達及び耐久性の向上を図る観点から、80個以上300個以下であることが好ましく、100個以上200個以下であることがより好ましい。図1は、第1連結部41及び第2連結部42をそれぞれ50個ずつ設けた例を示している。
【0034】
図4は、車両からの荷重が掛かった状態の非空気圧タイヤ1の接地域を示す正面図である。図5は、図4における隣り合う2つの連結部を示す拡大図である。図4及び図5に示すように、非空気圧タイヤ1の連結部4は、それぞれ車両からの荷重によって容易に撓み変形可能に設けられる。
【0035】
具体的には、連結部4は、トレッド5が路面Rに接地する接地域Cにおいて、非空気圧タイヤ1に2.45kN以上の荷重が負荷されたときに、接地域Cにおけるタイヤ周方向Dの両端部近傍に配置される少なくとも一つの連結部4A,4Aが、タイヤ周方向Dに沿う接地域Cの外側に向けてそれぞれ大きくくの字状に撓み変形する。すなわち、連結部4は、接地域Cにおけるタイヤ周方向Dに沿うほぼ中央部を境にして、タイヤ周方向Dに沿う相反する方向に撓み変形する。これによって、くの字状に撓み変形した連結部4A,4Aは、くの字の突出方向に隣り合う連結部4B,4Bと接触部CTにおいて互いに接触する。
【0036】
図3及び図4に示すように、本実施形態の非空気圧タイヤ1は、接地域Cにおけるタイヤ周方向Dの両端部近傍に配置されるそれぞれ少なくとも一つずつの連結部4A,4Aが、タイヤ周方向Dに沿う接地域Cの外側に向けてそれぞれ大きくくの字状に撓み変形している。連結部4A,4Aの変形方向は、タイヤ周方向Dに沿う接地域Cの外側に向けてそれぞれ凸となる方向である。図4に示すように、最も大きく撓み変形した連結部4Aにおけるくの字の凸側の面4A1は、その凸側に隣り合う連結部4Bにおける僅かにくの字状に撓んだ凹側の面4B1に接触する。接触した連結部4,4同士は、互いに支え合うことによって、それぞれ過度の撓み変形が抑制されるとともに、一体となって車両からの荷重を支持する。
【0037】
非空気圧タイヤ1に負荷される2.45kN以上の荷重は、非空気圧タイヤ1を車両に装着させた状態で路面Rに接地させた際に、非空気圧タイヤ1の内側環状部3から外側環状部2に向けて鉛直方向下向きに作用する荷重である。この荷重は、非空気圧タイヤ1に適切なホイールを装着し、ホイールを中心に鉛直方向下向きの静的な荷重を負荷することによって計測される。
【0038】
また、接地域Cは、非空気圧タイヤ1を車両に装着した状態で路面Rに接地させた際に、車重によってトレッド5が路面Rに圧接した時のタイヤ周方向Dに沿う領域である。なお、図4及び図5は、非空気圧タイヤ1がタイヤ周方向Dに沿う一方向D1に転動した場合を示している。
【0039】
このように、非空気圧タイヤ1の連結部4は、トレッド5が路面Rに接地する接地域Cにおいて、車両からの荷重によってそれぞれタイヤ周方向Dに撓み変形することによって、隣り合う少なくとも2つの連結部4,4同士が互いに接触して支え合うように設けられる。そのため、接地域Cにおける連結部4の荷重支持力が向上する。このように、連結部4は、隣り合う連結部4と互いに接触することによって荷重を支持するため、連結部4は容易に撓み変形するように形成することができる。これによって、非空気圧タイヤ1のクッション性が向上するため、乗り心地が改善される。さらに、隣り合う連結部4,4同士は、撓み変形した際に接触し得る程度に近接しているため、接地域Cにおける連結部4の有無による圧力差は小さくなる。そのため、走行時の車外音は低減される。
【0040】
本実施形態の連結部4は、第1連結部41と第2連結部42とが、タイヤ周方向Dに沿って交互に配列されることが好ましい。第1連結部41は、図2に示すように、外側環状部2のタイヤ幅方向Yの一方側Y1から内側環状部3のタイヤ幅方向Yの他方側Y2へ向かって延設されている。一方、第2連結部42は、外側環状部2のタイヤ幅方向Yの他方側Y2から内側環状部3のタイヤ幅方向Yの一方側Y1へ向かって延設されている。すなわち、タイヤ周方向Dに隣り合う第1連結部41と第2連結部42とは、タイヤ周方向Dから見た場合に、略X字状に配置されている。
【0041】
連結部4の各々は、図6に示すように、外表面に耐候性層6を有している。耐候性層6は、連結部4(連結部4の母材)よりも耐候性が高い材料からなる層である。連結部4の外表面に耐候性層6が設けられることによって、長期使用による連結部4の劣化が抑制され、連結部4の耐久性が向上する。なお、耐候性は、JIS K7350-2、JIS K-6259(ゴム)、JIS K7312-20のいずれかに準じて試験を行うことによって求められる値によって評価される。
【0042】
耐候性層6を構成する具体的な材料は、連結部4の母材によって適宜決定される。例えば、連結部4の母材が熱硬化性樹脂である場合、耐候性層6としては、ゴム、熱可塑性エラストマー、シリコーン、フッ素樹脂、連結部4の母材よりも耐候性の高い熱硬化性樹脂等を用いることができる。熱可塑性エラストマーとしては、ポリエステル系、ウレタン系、アミド系、オレフィン系、スチレン系の熱可塑性エラストマーが例示される。連結部4の母材よりも耐候性の高い熱硬化性樹脂としては、ポリオール系、イソシアネート系の熱硬化性樹脂が例示される。このような耐候性層6は、連結部4の外表面にコーティングすることによって設けることができる。
【0043】
耐候性層6は、連結部4の外表面全面に設けられることが好ましい。すなわち、耐候性層6は、図3に示すように、連結部4において外気と接するタイヤ周方向Dに面する両面4a,4aからタイヤ幅方向Yに面する両側面4c,4dに亘る全面に設けられる。連結部4は、外表面の全面において耐候性が向上するため、連結部4の耐久性がさらに向上する。
【0044】
連結部4の各々は、図2図6に示すように、耐候性層6のさらに外表面における少なくとも隣り合う連結部4との接触部位に、連結部4(連結部4の母材)よりも耐摩耗性が高い耐摩耗性層7を有することが好ましい。本実施形態の非空気圧タイヤ1の連結部4は、タイヤ周方向Dから見て略X字状に交差するように配置される第1連結部41と第2連結部42とが、タイヤ周方向Dに沿って交互に配列されているため、隣り合う第1連結部41と第2連結部42とは、撓み変形時に第1連結部41及び第2連結部42のそれぞれの延設方向における中央部のみで接触する。そのため、耐摩耗性層7は、図2に示すように、タイヤ周方向Dから見て、少なくとも第1連結部41と第2連結部42とが互いに交差する中央部のみにそれぞれ設けられていればよい。
【0045】
このように、連結部4の各々が、少なくとも隣り合う連結部4との接触部位に耐摩耗性層7を有することによって、隣り合う連結部4,4同士が互いに接触した際の耐摩滅性能が向上し、連結部4の耐久性が向上する。なお、耐摩耗性は、JIS K6264-2に準じて摩耗試験を行うことによって求められる値によって評価される。
【0046】
耐摩耗性層7は、連結部4(連結部4の母材)よりも耐摩耗性が高い樹脂又はゴムによって形成される。具体的には、耐摩耗性層7は、連結部4(連結部4の母材)よりも摩擦係数が低い材料によって形成することができる。また、耐摩耗性層7は、連結部4(連結部4の母材)よりも表面粗さが小さい材料によって形成されてもよい。さらに、耐摩耗性層7は、連結部4(連結部4の母材)よりも硬度が高い材料によって形成されてもよい。耐摩耗性層7は、上記の摩擦係数、表面粗さ及び硬度のうちのいずれか2種以上の機能を併せ持つ材料であってもよい。
【0047】
連結部4(連結部4の母材)よりも摩擦係数が低い耐摩耗性層7は、例えば、フッ素樹脂によって形成することができる。フッ素樹脂からなる耐摩耗性層7は、連結部4の外表面にフッ素樹脂をコーティングすることによって形成してもよい。また、連結部4よりも表面粗さが小さい耐摩耗性層7は、連結部4の母材とは異なる材料であって、連結部4の母材よりも表面粗さが小さい適宜の樹脂又はゴムによって形成してもよいし、連結部4の母材と同一材料を用いて、例えば表面を研磨する等の方法によって、表面粗さだけを小さくすることによって形成してもよい。連結部4(連結部4の母材)よりも硬度が高い耐摩耗性層7は、連結部4の母材が熱硬化性樹脂である場合、その母材である熱硬化性樹脂よりも硬度が高い熱硬化性樹脂によって形成してもよいし、熱可塑性エラストマーによって形成してもよい。この熱可塑性エラストマーとしては、ポリエステル系、ウレタン系、アミド系、オレフィン系、スチレン系等が例示される。
【0048】
耐摩耗性層7は、図3に示すように、第1連結部41及び第2連結部42におけるタイヤ周方向Dに面するそれぞれの両面4a,4aに少なくとも設けられる。しかし、本実施形態の連結部4のように、第1連結部41と第2連結部42とがタイヤ周方向Dから見て略X字状に交差するように配置される場合、第1連結部41と第2連結部42とが撓み変形して互いに接触した際に、それぞれの角部4b,4b同士が接触し得る。角部4b、4b同士の接触は、面同士の接触に比べて摩耗し易いため、耐摩耗性層7は、隣り合う第1連結部41と第2連結部42との接触部位である連結部4の両面4a,4aから、角部4b,4bを経由して、タイヤ幅方向Yに面する外側側面4c及び内側側面4dにかけてそれぞれ設けられることが好ましい。これによって、連結部4の角部4bから外側側面4c及び内側側面4dにかけて耐摩耗性層7によって保護されるため、角部4bの摩耗が抑制され、連結部4の耐久性がさらに向上する。
【0049】
なお、連結部4において、タイヤ幅方向Yに面する外側側面4cとは、非空気圧タイヤ1が車両に装着されたときに車両外側に向く面であり、内側側面4dとは、その反対の車両内側に向く側面である。本実施形態の非空気圧タイヤ1においては、タイヤ幅方向YにおけるY1方向側を外側、Y2方向側を内側と定義する。
【0050】
本実施形態の非空気圧タイヤ1によれば、以下の効果を奏する。
【0051】
(1)本実施形態に係る非空気圧タイヤ1は、外周にトレッド6を有する外側環状部2と、外側環状部2の内側に設けられる内側環状部3と、外側環状部2と内側環状部3とを連結し、タイヤ周方向Dに沿って設けられる連結部4と、を備える。連結部4は、外表面に連結部4よりも耐候性が高い耐候性層6を有する。これによって、長期使用による連結部4の劣化が抑制され、連結部4の耐久性が向上する。
【0052】
(2)本実施形態に係る非空気圧タイヤ1の耐候性層6は、連結部4の外表面全面に設けられる。これによって、連結部4は、外表面の全面において耐候性が向上するため、連結部4の耐久性がさらに向上する。
【0053】
(3)本実施形態に係る非空気圧タイヤ1の連結部4は、耐候性層6の外表面に耐摩耗性層7を有する。これによって、隣り合う連結部4,4同士が互いに接触した際の耐摩滅性能が向上し、連結部4の耐久性がさらに向上する。
【0054】
(4)本実施形態に係る非空気圧タイヤ1の耐摩耗性層7は、連結部4よりも摩擦係数が低い材料からなるものであってもよい。これによって、隣り合う連結部4,4同士が互いに接触した際の耐摩滅性能が向上し、連結部4の耐久性がさらに向上する。
【0055】
(5)本実施形態に係る非空気圧タイヤ1の耐摩耗性層7は、連結部4よりも表面粗さが小さい材料からなるものであってもよい。これによって、隣り合う連結部4,4同士が互いに接触した際の耐摩滅性能が向上し、連結部4の耐久性がさらに向上する。
【0056】
(6)本実施形態に係る非空気圧タイヤ1の耐摩耗性層7は、連結部4よりも硬度が高い材料からなるものであってもよい。これによって、隣り合う連結部4,4同士が互いに接触した際の耐摩滅性能が向上し、連結部4の耐久性がさらに向上する。
【0057】
(7)本実施形態に係る非空気圧タイヤ1の耐摩耗性層7は、隣り合う連結部4,4に対向する面4aから、タイヤ幅方向Yに面する外側側面4c及び内側側面4dにかけて設けられる。これによって、接触時に摩耗し易い連結部4の角部4bから外側側面4c及び内側側面4dにかけて耐摩耗性層7によって保護されるため、角部4bの摩耗が抑制され、連結部4の耐久性がさらに向上する。
【0058】
(8)本実施形態に係る非空気圧タイヤ1の複数の連結部4は、外側環状部2のタイヤ幅方向Yの一方側Y1から内側環状部3のタイヤ幅方向Yの他方側Y2へ向かって延設される長尺板状の第1連結部41と、外側環状部2のタイヤ幅方向Yの他方側Y2から内側環状部3のタイヤ幅方向Yの一方側Y1へ向かって延設される長尺板状の第2連結部42と、がタイヤ周方向Dに沿って交互に配列されて構成される。これによって、連結部4の板厚tを薄くしても、板幅wを広く設定することによって、連結部4の所望の剛性を確保することができるため、撓み変形し易い薄い連結部4であっても、連結部4の耐久性が向上し、非空気圧タイヤ1の乗り心地がさらに向上する。しかも、第1連結部41と第2連結部42が交互に配置されることによって、タイヤ転動時の接地圧分散をより小さくすることができる。
【0059】
以上の実施形態に示す非空気圧タイヤ1の連結部4は、タイヤ周方向Dから見て略X字状に交差するように配置される第1連結部41と第2連結部42によって構成されているが、これに限定されない。全ての連結部4は、外側環状部2から内側環状部3に亘って延びる帯板状に形成されてもよい。帯板状の連結部4は、外側環状部2から内側環状部3にかけて同一幅であってもよいし、外側環状部2側と内側環状部3側とで幅が異なっていてもよい。また、各連結部4の板厚tは、外側環状部2から内側環状部3に亘って同一厚みに限定されず、外側環状部2側と内側環状部3側とで板厚tが異なっていてもよい。
【0060】
以上の実施形態に示す非空気圧タイヤ1の連結部4は、図1に示すように、無荷重状態においてタイヤ径方向Xに沿う放射方向に直線状に延びている。しかし、連結部4は、このように直線状に延びるものに限定されない。例えば、図7に示す非空気圧タイヤ1Aのように、無荷重状態の非空気圧タイヤ1Aをタイヤ回転軸に沿う方向から正面視した場合に、連結部4は、タイヤ周方向Dに沿ういずれか一方向に凸となるくの字状に屈曲した形状であってもよい。この非空気圧タイヤ1Aにおいても、2.45kN以上の荷重が負荷されたときに、図8に示すように、トレッド5が路面Rに接地する接地域Cにおいてそれぞれタイヤ周方向Dに撓み変形することによって、隣り合う連結部4,4同士が互いに接触して支え合うように設けられる。
【実施例
【0061】
(実施例1)
ポリウレタン樹脂からなる連結部の外表面全面に、フッ素樹脂を1μmの厚みでコーティングすることによって耐候性層を形成した。
【0062】
(実施例2)
実施例1の連結部のさらに外表面の一部に、硬度50%に増加させたポリウレタン樹脂を100μmの厚みでコーティングすることによって耐摩耗性層を形成した。
【0063】
(比較例)
耐候性層及び耐摩耗性層を形成しない以外は実施例1と同様の連結部を形成した。
【0064】
耐候性試験
実施例1、2及び比較例の各連結部に対し、JIS K7352-2に準じて光源暴露試験を行い、連結部の耐候性を評価した。その結果を表1に示す。評価は、比較例を100とした場合の相対的な評価で示す。
【0065】
耐摩耗性試験
実施例1、2及び比較例の各連結部に対し、JIS K6264-2に準じて摩耗試験を行い、連結部の耐久性を評価した。その結果を表1に示す。評価は、比較例を100とした場合の相対的な評価で示す。
【0066】
【表1】
【0067】
表1に示すように、連結部に耐候性層を設けることによって、連結部の耐候性及び耐久性がいずれも向上した。耐候性層にさらに耐摩耗性層を設けることによって、連結部の耐久性がさらに向上した。
【符号の説明】
【0068】
1 非空気圧タイヤ
2 外側環状部
3 内側環状部
4 連結部
4a 面
4b 角部
4c 外側側面
4d 内側側面
41 第1連結部
42 第2連結部
5 トレッド
6 耐候性層
7 耐摩耗性層
C 接地域
D タイヤ周方向
R 路面
Y タイヤ幅方向
Y1 一方側
Y2 他方側
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8