(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】防汚剤、防汚塗膜及び防汚塗膜付き基材
(51)【国際特許分類】
C09K 3/00 20060101AFI20241213BHJP
C08F 220/18 20060101ALI20241213BHJP
C08F 220/20 20060101ALI20241213BHJP
C08F 220/58 20060101ALI20241213BHJP
D06M 15/263 20060101ALI20241213BHJP
【FI】
C09K3/00 112D
C08F220/18
C08F220/20
C08F220/58
D06M15/263
(21)【出願番号】P 2020565608
(86)(22)【出願日】2019-11-25
(86)【国際出願番号】 JP2019046011
(87)【国際公開番号】W WO2020144953
(87)【国際公開日】2020-07-16
【審査請求日】2021-03-24
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-25
(31)【優先権主張番号】P 2019001804
(32)【優先日】2019-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019063626
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100223424
【氏名又は名称】和田 雄二
(74)【代理人】
【識別番号】100215957
【氏名又は名称】田村 明照
(72)【発明者】
【氏名】牧野 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】中田 善知
(72)【発明者】
【氏名】小林 直記
(72)【発明者】
【氏名】菅原 飛鳥
【合議体】
【審判長】光本 美奈子
【審判官】関根 裕
【審判官】長谷川 真一
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-516617号公報(JP,A)
【文献】特開2017-101162号公報(JP,A)
【文献】国際公開第2011/074620号(WO,A1)
【文献】特開2002-348778号公報(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/00
C08F220/20
C08F220/18
C08F220/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2以上の水酸基を有する重合性二重結合含有単量体由来の構造単位、及び、アルキル基の炭素数が4~12であるアルキル(メタ)アクリレート由来の構造単位を有する共重合体
(ただし下記式(A):
【化1】
[式中、R
2
、R
3
及びR
4
は、同一又は異なる基であって、水素原子、炭素数1~6のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を示し、nは1~4の整数を示し、*は結合手を示す。]
で表されるホスホリルコリン類似基を有するものを除く)を含む防汚剤であって、
前記2以上の水酸基を有する重合性二重結合含有単量体は、下記式(I):
【化2】
(式(I)中、R
1
は水素原子又はメチル基を、Xは酸素原子又は-NH-基を示す。)
で表される単量体を含み、
2以上の水酸基を有する重合性二重結合含有単量体由来の構造単位の含有量が、共重合体の総量に対して、10~75質量%であり、アルキル基の炭素数が4~12であるアルキル(メタ)アクリレート由来の構造単位の含有量が、共重合体の総量に対して、25~90質量%である、水回り品処理用又は繊維処理用防汚剤(ただし、医療用具に適用されるものを除く)。
【請求項2】
防汚剤が繊維処理用防汚剤であり、当該繊維がポリエステル、ナイロン及びウレタンからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項
1に記載の防汚剤。
【請求項3】
請求項
1又は2に記載の防汚剤を含んでなる水回り品処理用又は繊維処理用防汚塗膜(ただし、医療用具に適用されるものを除く)。
【請求項4】
請求項
3に記載の防汚塗膜を繊維上に有する防汚塗膜付き繊維(ただし、医療用具用のものを除く)。
【請求項5】
請求項
3に記載の防汚塗膜を基材上に有する防汚塗膜付き水回り品(ただし、医療用具用のものを除く)。
【請求項6】
前記基材が、船舶、水中構造物、漁網又は漁具である、請求項
5に記載の防汚塗膜付き水回り品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は防汚剤、防汚塗膜及び防汚塗膜付き基材に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質、微生物等による汚れは、物品の美観を損なう、不衛生である等といった問題を生じる。しかし、物品に一度付着した汚れを落とすことは通常容易でない。そこで、汚れが付着することを防止する、又は汚れが付着したとしても容易に除去できるようにするための防汚剤が種々検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、繊維製品の汚れの防止を目的として、エーテルエステル型の非イオン界面活性剤等を含有する防汚剤が提案されている。また、特許文献2では、トイレの便器等の硬質表面の汚れの防止を目的として、芳香族スルホン酸系ホルマリン縮合物を含有する防汚剤が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-371466号公報
【文献】特開2007-99793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者等による検討により、特許文献1に記載の防汚剤は、タンパク質や微生物の汚れに対する防汚効果が不十分であり、特許文献2に記載の防汚剤は、臭気等の問題があること等が明らかとなった。
【0006】
そこで本発明は、タンパク質や微生物の汚れに対する防汚効果に優れ、且つ臭気が十分に低減された防汚剤、並びにこれを用いた防汚塗膜及び防汚塗膜付き基材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記事情に鑑み、本発明者等は鋭意検討を重ねた結果、以下の[1]~[8]に示す発明を完成させた。
[1] 2以上の水酸基を有する重合性二重結合含有単量体由来の構造単位、及び、アルキル基の炭素数が4~12であるアルキル(メタ)アクリレート由来の構造単位を有する共重合体を含む防汚剤。
[2] 2以上の水酸基を有する重合性二重結合含有単量体は、下記式(I)で表される単量体を含む、[1]に記載の防汚剤。
【化1】
(式(I)中、R
1は水素原子又はメチル基を、Xは酸素原子又は-NH-基を示す。)
[3] 繊維処理用である、[1]又は[2]に記載の防汚剤。
[4] 繊維がポリエステル、ナイロン及びウレタンからなる群より選ばれる少なくとも1種である、[3]に記載の防汚剤。
[5] 水回り品処理用である、[1]又は[2]に記載の防汚剤。
[6] [1]又は[2]に記載の防汚剤を含んでなる防汚塗膜。
[7] [6]に記載の防汚塗膜を基材上に有する防汚塗膜付き基材。
[8] 基材が、船舶、水中構造物、漁網又は漁具である、[7]に記載の防汚塗膜付き基材。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、タンパク質や微生物の汚れに対する防汚効果に優れ、且つ臭気が十分に低減された防汚剤、並びにこれを用いた防汚塗膜及び防汚塗膜付き基材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、本明細書中、「(メタ)アクリル酸」なる用語は、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。「(メタ)アクリレート」のような類似の表現についても同様である。
【0010】
<防汚剤>
本実施形態の防汚剤は、2以上の水酸基を有する重合性二重結合含有単量体(以下、「単量体(A)」ともいう。)由来の構造単位、及び、アルキル基の炭素数が4~12であるアルキル(メタ)アクリレート(以下、「単量体(B)」ともいう。)由来の構造単位を有する共重合体を含む。かかる防汚剤は、タンパク質や微生物の汚れに対する防汚効果に優れ、且つ臭気が十分に低い。
【0011】
以下、本実施形態の防汚剤について詳述する。
【0012】
(共重合体)
単量体(A)としては、重合性二重結合及び2以上の水酸基を有するものであれば、特に限定されないが、例えば、下記式(II)で表される化合物であると好ましい。単量体(A)は、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0013】
【化2】
(式(II)中、R
1は、水素原子またはメチル基、R
2は、2以上の水酸基を有する有機基を示す。)
【0014】
式(II)において、R2は、2以上の水酸基を有する有機基である。それらの中で、-COOR3基、-OCOR3基、-OR3基、-CONHR3基、-CH2OR3基、-CH2OCOR3基、-CONHR3基、-CON(R3)2基または-NHCOR3基(R3は、2以上の水酸基を有する有機基を示す)であることが好ましい。
【0015】
R3は、2以上の水酸基を有する有機基であり、好ましくは2以上の水酸基を有する炭素数1~30の有機基であり、より好ましくは2以上の水酸基を有する炭素数1~20の有機基である。この有機基としては、例えば、炭素数1~20のアルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数4~20のポリオキシアルキレン基、炭素数7~20のアラルキル基が挙げられる。なお、1分子中にR3が2以上含まれる場合には、各R3はそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。また、R3には、例えば、フッ素原子、塩素原子などのハロゲン原子、窒素原子、水酸基以外の官能基などが含まれていてもよい。
【0016】
単量体(A)としては、例えば、3以上の水酸基を有する多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル、糖類と(メタ)アクリル酸とのエステル、アミノ基を有する糖類と(メタ)アクリル酸とのエステルが挙げられる。これらのエステルは、エステル化反応のみならず、エステル交換反応や(メタ)アクリル酸グリシジルエステルの開環反応によって調製されたものであってもよい。
【0017】
3以上の水酸基を有する多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ペンタグリセリン、ヘキサグリセリン、ペンタエリスリトール、1,2,6-ヘキサントリオール、2-ヒドロキシメチル-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオールが挙げられる。糖類としては、例えば、グルコース、マンノース、ガラクトース、グロース、フルクトース、D-リボースなどの単糖類、当該単糖類から誘導されるグルコシド、ガラクトシド、フルクトシドなどをはじめ、これらの二量体、三量体が挙げられる。アミノ基を有する糖類としては、例えば、D-グルコサミンが挙げられる。
【0018】
単量体(A)は、防汚効果をより向上させる観点から、下記式(I)で表される単量体であるとより好ましい。
【化3】
(式(I)中、R
1は水素原子又はメチル基を、Xは酸素原子又は-NH-基を示す。)
【0019】
式(I)で表される単量体としては、グリセロールモノアクリレート(R1=水素原子、X=酸素原子)、グリセロールモノメタクリレート(R1=メチル基、X=酸素原子)、グリセロールモノアクリルアミド(R1=水素原子、X=-NH-基)又はグリセロールモノメタクリルアミド(R1=メチル基、X=-NH-基)が挙げられる。
【0020】
なお、式(I)で表される単量体由来の構造単位は、以下の式(I’)で表される構造単位に相当する。
【化4】
(式(I’)中、R
1及びXは式(I)と同義である。)
【0021】
単量体(A)の分子量は、500以下であると好ましい。
【0022】
単量体(A)としては、1,3-ジオキソラン構造を有する単量体を、原料又は中間体として経由する方法で合成された単量体であることが好ましい。1,3-ジオキソラン構造を有する単量体を原料又は中間体として経由して合成した単量体を用いて重合した共重合体は、塗膜の平滑性や、繊維処理剤としたときの風合いが良いため、防汚剤として好ましい。
【0023】
単量体(A)に由来する構造単位の含有量は、防汚効果をより向上させる観点から、共重合体の総量に対して、5~90質量%であると好ましく、10~75質量%であるとより好ましく、15~60質量%であると更に好ましい。
【0024】
なお、単量体(A)に由来する構成単位は、共重合体中で2以上の水酸基を有する構成単位であればよい。すなわち、単量体(A)を用いて重合した構成単位であってもよく、2以上の水酸基が保護基により保護された単量体を重合した後に、保護基を脱保護する等ポリマーを変性することで水酸基を2以上有する構造を導入してもよい。
【0025】
単量体(B)としては、例えば、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの中で、n-ブチル(メタ)アクリレートが好ましい。単量体(B)は、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0026】
単量体(B)に由来する構造単位の含有量は、防汚効果をより向上させる観点から、共重合体の総量に対して、10~95質量%であると好ましく、25~90質量%であるとより好ましく、40~85質量%であると更に好ましい。
【0027】
本実施形態の共重合体は、上記単量体(A)及び(B)のいずれでもない単量体(C)由来の構造単位を含んでいてもよい。単量体(C)としては、例えば、(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル等のアルキル基の炭素数が1~3の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;塩化ビニル、塩化ビニリデン等;エチレン、プロピレン、ブテン、イソプレン等のオレフィン類;N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド等のN-ビニル化合物;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル等のビニルエーテル類;メチルマレイミドが挙げられる。単量体(C)は、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0028】
単量体(C)に由来する構造単位の含有量は、共重合体の総量に対して、25質量%以下であると好ましく、20質量%以下であるとより好ましく、10質量%以下であると更に好ましい。
【0029】
上記共重合体のガラス転移温度は、-10℃以下であることが好ましい。-10℃以下とすることでタンパク質や微生物の付着が特に抑制され、防汚効果がよりすぐれたものとなる。ガラス転位温度は、DSC(示差走査熱量計)などにより測定することができる。
【0030】
上記共重合体は、上述の単量体を適宜選択して重合反応を行うことにより製造することができる。重合反応の際の単量体の好ましい使用量は、上記共重合体おけるこれらの単量体由来の構造単位の好ましい含有量と同様である。
【0031】
上記重合反応は、重合開始剤の存在下で重合反応を行うことが好ましい。重合開始剤としては、例えば、過酸化水素;過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)等のアゾ系化合物;過酸化ベンゾイル、過酢酸、ジ-t-ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物等が好適である。これらの重合開始剤は、単独で使用されてもよく、2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
重合開始剤の使用量としては、重合反応に使用される単量体の使用量1モルに対して、0.01g以上10g以下であると好ましく、0.1g以上5g以下であるとより好ましい。
【0032】
上記重合反応は、溶媒を使用せずに行ってもよいが、溶媒を使用することが好ましい。溶媒としては、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどが挙げられる。これらの溶媒は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。溶媒の使用量としては、重合反応に使用される単量体100質量部に対して40~250質量部が好ましい。
【0033】
上記重合反応は、通常、0℃以上で行われることが好ましく、また、150℃以下で行われることが好ましい。より好ましくは、40℃以上であり、更に好ましくは、60℃以上であり、特に好ましくは、80℃以上である。また、より好ましくは、120℃以下であり、更に好ましくは、110℃以下である。上記重合温度は、重合反応において、常にほぼ一定に保持する必要はなく、一度または二度以上変動(加温または冷却)してもよい。重合反応は、常圧、加圧、減圧のいずれの条件下で行ってもよい。
【0034】
上記重合反応において、単量体や重合開始剤等は、それぞれ反応器に一括で添加してもよく、逐次的に添加してもよい。
【0035】
共重合体の製造方法は、上記重合反応工程以外の他の工程を含んでいてもよい。その他の工程としては、例えば、熟成工程、中和工程、重合開始剤や連鎖移動剤の失活工程、希釈工程、乾燥工程、濃縮工程、精製工程が挙げられる。
【0036】
なお、本実施形態の共重合体は、架橋剤等を用いて架橋されたものであってもよいが、架橋されていない(非架橋の)共重合体であることが好ましい。
【0037】
本実施形態の防汚剤は、上述の共重合体のみを含むものであってもよく、上述の共重合体以外の他の成分と組み合わせて用いるものであってもよい。
【0038】
また、本実施形態の防汚剤は、取り扱い性を向上させる観点から、上述の共重合体を溶剤に溶解させて溶液として用いると好ましい。溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、トルエン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン(THF)、クロロホルム、アセトン、イソプロピルアルコール(IPA)、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等を用いることができる。これらの中で、安全性等の観点から、エタノールが好ましい。
【0039】
防汚剤を溶液とした場合のその濃度は、防汚剤の適用方法等に合わせて適宜調整することができるが、例えば、上述の共重合体の濃度が0.1~20質量%である溶液とすることができる。
【0040】
<防汚剤の用途>
本実施形態の防汚剤は、タンパク質や微生物の汚れに対する防汚効果に優れ、且つ臭気が十分に低いので、皮脂、デンプン、タンパク質又は微生物汚れが付着する可能性がある物品全般に使用することができる。タンパク質汚れとしては、例えば、汗、唾液、血等の生体由来の汚れ、卵、牛乳等の食品由来の汚れが挙げられる。微生物汚れとしては、例えば、大腸菌、黄色ブドウ球菌、緑膿菌、ミュータンス菌等の細菌類や、黒色酵母様菌、フォーマ、ススカビ、クロカビ等の水回りに生えやすいカビ類による汚れが挙げられる。
【0041】
本実施形態の防汚剤は、繊維処理用又は水回り品処理用の防汚剤として用いると好ましい。
【0042】
本実施形態の防汚剤を繊維の処理に適用すると、防汚効果に優れ、臭気や毒性の問題が生じず、且つ繊維製品の風合いを損なわないという効果を奏する。
【0043】
防汚剤の処理対象となる繊維としては特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタラート等のポリエステル、ナイロン又はウレタンが挙げられる。防汚剤により繊維を処理する際は、単繊維を直接処理してもよく、布状の繊維を処理してもよい。
【0044】
防汚剤で繊維を処理する方法は、特に限定されないが、例えば、防汚剤の溶液に繊維を浸漬する方法、防汚剤の溶液を繊維にスプレーする方法等が挙げられる。
【0045】
防汚剤で繊維を処理した際に形成される塗膜(繊維に付着した共重合体)の好適な重量は、用いられる繊維によって異なるが、例えば、繊維1g当たり、好ましくは0.1~15mg、より好ましくは0.5~12mgとすることができる。防汚剤で繊維を処理した際に形成される塗膜の重量を上記範囲とすることにより、繊維製品の風合いへの影響をより小さくすることができる。さらに、本実施形態の防汚剤は、防汚性に優れることから、繊維1g当たりの塗膜の重量が小さくても、十分に防汚効果を奏する。
【0046】
本実施形態の防汚剤を水回り品の処理に適用すると、防汚効果に優れ、且つ臭気や毒性の問題が生じない。
【0047】
防汚剤の処理対象となる水回り品としては、例えば、シンク、ワークショップ、水栓等の台所本体;水切りかご等の台所用品;バスタブ、床、壁等の浴室本体;洗面器、バスチェア等のバス用品;口腔用歯ブラシ等のブラシ;洗面台;便器等が挙げられる。水回り品の材質は、特に限定されないが、例えば、ポリエステル樹脂、ナイロン樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂等の樹脂;ステンレス等の金属;陶器が挙げられる。
【0048】
防汚剤で水回り品を処理した際に形成される塗膜の膜厚は、特に限定されないが、例えば、0.01μm~10μm、好ましくは0.1μm~5μm、更に好ましくは0.5μm~3μmとすることができる。
【0049】
<防汚塗膜>
本実施形態の防汚塗膜は、上述の防汚剤を含んでなる。本実施形態の防汚塗膜を基材上に形成することにより、基材の防汚性を向上させることができる。本実施形態の防汚塗膜は、海水に接する可能性のある基材、例えば、船舶、水中構造物、漁網、漁具等の物品に好適に適用することができる。本実施形態の防汚塗膜をこれらの基材に適用することにより、海水に含まれる微生物等由来の汚れを防止することができる。
【実施例】
【0050】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0051】
<合成例>
[GLMA(グリセロールモノアクリレート)]
撹拌子を入れた反応容器にガス導入管、温度計、冷却管、及び、留出液受器に繋げたトの字管を付し、アクリル酸メチル230g、2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-メタノール(DOM)70gを仕込み、ガス導入管を通して酸素/窒素混合ガス(酸素濃度7vol%)を吹き込みながら反応溶液を攪拌し、オイルバス(バス温110℃)で加熱を開始した。留出液に水が出てこなくなってから、チタンテトライソプロポキシド4.5gを反応容器に添加し、エステル交換反応を開始させた。生成してくるメタノールをアクリル酸メチルで共沸留去しながら、ガスクロマトグラフィ(GC)分析によりiPGLMA(イソプロピリデングリセリルアクリレート)/DOMの面積比を追跡した。反応開始から7時間後のGC分析で、iPGLMA/DOMの面積比が9/1を超えたのを確認し、反応を終了し、室温まで冷却した。このようにして、GLMA合成の中間体として、1,3-ジオキソラン構造を有する単量体である、iPGLMAを得た。反応液に精製水150gと抽出溶媒として酢酸エチル300gを加え10分撹拌した。チタンテトライソプロポキシドの加水分解により生じた酸化チタンの沈殿を、吸引濾過で除いた濾液を分液漏斗に移し、有機層と水層を分離した。有機層を精製水で2回洗浄したのち、ロータリーエバポレーターに移し、残存アクリル酸メチル及び軽沸成分を留去し、iPGLMA96gを得た。
撹拌子を入れたナスフラスコにガス導入管を設け、精製水160mlとiPGLMA80gを加えて溶解させた後に、予め水に浸漬後に風乾した固体酸触媒アンバーリスト15Jwet(オルガノ社製)を35g加えた。ガス導入管を通して酸素/窒素混合ガス(酸素濃度7vol%)を吹き込みながら反応溶液を攪拌し、室温下で脱保護反応を開始させた。GC分析によりGLMA/iPGLMAの面積比を追跡し、面積比が99/1を超えたのを確認し、4時間で反応を終了した。固体酸触媒を濾別して得られた濾液をn-ヘキサンで洗浄し、未反応iPGLMAを除いた。水層を減圧濃縮し、目的とするGLMA53gを得た。
【0052】
[共重合体GB37]
攪拌子を入れた反応容器にガス導入管、温度計、冷却管を付し、単量体としてグリセロールモノアクリレート(GLMA)12g、ブチルアクリレート(BA)28g、溶媒として1,4-ジオキサン60gを仕込み、窒素ガスを流しながら攪拌と昇温を開始した。内温80℃でアゾ系ラジカル重合開始剤0.004g(和光純薬社製、商品名:V-601)を添加して重合を開始し、6時間反応を行った。得られた反応液をアセトンで希釈し、大量のヘキサン中に撹拌しながら投入することで精製した。沈殿物を真空乾燥機によって、減圧下、80℃で4時間減圧乾燥し、固体の共重合体GB37を得た。得られた共重合体の重量平均分子量は13.1万であった。JIS K7127に準拠してDSCにより測定したガラス転移温度は-38.5℃であった。
【0053】
[共重合体GB46]
単量体としてグリセロールモノアクリレート(GLMA)16g、ブチルアクリレート(BA)24g、溶媒としてメチルエチルケトン60gを用いた以外は実施例1と同様にして、固体の共重合体GB46を得た。得られた共重合体の重量平均分子量は14.1万であった。JIS K7127に準拠してDSCにより測定したガラス転位温度は-32.8℃であった。
【0054】
[共重合体GB55]
単量体としてグリセロールモノアクリレート(GLMA)20g、ブチルアクリレート(BA)20g、溶媒としてエタノール60gを用いた以外は実施例1と同様にして、固体の共重合体GB55を得た。得られた共重合体の重量平均分子量は5.7万であった。JIS K7127に準拠してDSCにより測定したガラス転移温度は-26.8℃であった。
【0055】
[共重合体DB46]
攪拌子を入れた反応容器にガス導入管、温度計、冷却管を付し、単量体として2,3-ジヒドロキシプロピルメタクリルアミド(以下、「DHPMA」とも記載する。)4g、ブチルアクリレート(以下、「BA」とも記載する。)6g、溶媒としてメタノール40g、アゾ系ラジカル重合開始剤0.02g(和光純薬社製、商品名:V-65)を仕込み、窒素ガスを流しながら攪拌と昇温を開始した。内温65℃で重合を開始し、6時間反応を行った。
得られた反応液をアセトンで希釈し、大量のn-ヘキサン中に撹拌しながら投入することで再沈した。沈殿物を真空乾燥機によって、減圧下、40℃で12時間減圧乾燥し、固体の共重合体DB46を得た。得られた共重合体の重量平均分子量は5.1万であった。JIS K7127に準拠してDSCにより測定したガラス転移温度は-27.2℃であった。
【0056】
<評価方法>
[タンパク質付着性評価]
両面ポリマーコートフィルム(0.75×1cm2)30枚をD-PBS(-)(富士フィルム和光純薬社製、販売元コード045-29795)3.6mLに浸し、37℃、1時間プライミング処理した。続いてフィルムを、以下に示す各種タンパク質溶液(1mg/mL)3.6mLに37℃、1時間浸漬した。その後、フィルムをリザーバーに入れたPBS(-)中で10回ピペッティング洗浄を行なったのち、これを5回繰り返した。続いて1.5mLチューブ(WATSON社製:プロキープタンパク質低付着、品番:PK15C-500)にフィルムを10枚ずつ入れて、それぞれ1%SDS水溶液(富士フィルム和光純薬社製、販売元コード191-07145)1.2mLを添加し、37℃、1時間撹拌してタンパク質を洗い出した。その後、クロロホルム/メタノール法により夾雑物除去とタンパク質濃縮を行なった。PBS(-)50μLと2×sample buffer(富士フィルム和光純薬社製、販売元コード193-11032)50μLで再懸濁し、98℃、5分間還元処理したのち、SDS-PAGE電気泳動(Laemmli法)(ATTO社製e-PAGEL、型式E-R 520L)を実施した。SYPRO Ruby染色(Thermo fisher scientific社製、製品番号S12000)をして、イメージング装置(Bio rad社製、ChemiDocTMTouch)により分子量に基づいたデンシトメトリ定量評価を行ない、タンパク質付着量を測定した。比較例1で作製したPSコートフィルムを用いた場合のタンパク質付着量を100%として比較評価した。
(各種タンパク質溶液)
アルブミン、ヒト、植物発現組換え体:
富士フィルム和光純薬社製、販売元コード018-21541
フィブリノゲン、ヒト血漿由来:
アルドリッチ社製、製品番号F3879-250MG
フィブロネクチン、ヒト血漿由来:
アルドリッチ社製、製品番号F2006-1MG
γ-グロブリン、ヒト血漿由来:
富士フィルム和光純薬社製、販売元コード075-06691
リゾチーム、ヒト、組換体(植物発現):
富士フィルム和光純薬社製、販売元コード189-02064
ミオグロビン 塩フリー、馬由来:
ナカライテスク製、商品コード23550-74
トリプシンインヒビター、大豆由来:
富士フィルム和光純薬社製、販売元コード202-20123
【0057】
[微生物付着評価]
菌株としては以下に示す株を用いた。培養試験管に5mL入れた培地に対して、凍結保存株から植菌して所定温度、300rpmで撹拌(振とう培養機:高崎科学器械株式会社、TXY-16R-3F)しながら復元培養したのち、継代培養(20mL)を18時間実施した。その後、5000×gの遠心力で、5分間遠心して菌体を回収したのち、上清を除きPBS(-)または0.85%NaCl水溶液15mLで洗浄を行なった。この洗浄作業を計2回実施した。6穴マイクロプレート(IWAKI 製品コード3810-006)に洗浄した菌液を1×109cells/mLとなるよう調整し、3mLずつウェルに添加した。続いて、別途滅菌水に浸漬しておいた2×2cm2四方のポリマーコートフィルムをウェルに入れて、所定温度、1時間静置した。その後、ピペットマンを用いて菌液をウェルから除去し、PBS(-)または0.85%NaCl水溶液4mLを添加して弱くピペッティングを行ない、リンスを実施した。これを2回繰り返した。別途用意した6穴マイクロプレートにフィルムを移し、2.5%グルタルアルデヒド水溶液(富士フィルム和光純薬社製、販売元コード072-02262、PBS(-)または0.85%NaCl水溶液で希釈)3mLを添加し、2.5時間常温静置することで固定化を実施した。続いてPBS(-)または0.85%NaCl水溶液5mLをウェルに加えてピペッティングを10回実施したのち、除液した。同様に蒸留水5mLで洗浄を2回実施した。その後凍結乾燥を実施して脱水を実施した。フィルム中央部分0.75×0.75cm2四方分を裁断してSEM台に乗せて金蒸着(JEOL社製、Smart coater)したのち、SEM(日本電子社製、JSM7600F)でフィルム全体を観察後、平均的な5箇所の撮影を実施した。得られたSEM写真に対してImageJソフトウェアを用いて菌の表面被覆度を算出し、微生物付着量を求めた。比較例1で作製したPSコートフィルムを用いた場合の微生物付着量を100%として比較評価した。
(菌株/培地/培養温度)
Pseudomonasputida ATCC700801株/ Trypticase Soy培地/30℃
Streptcoccusmutans NBRC13955株/BHI培地/37℃
Staphylococcusaureus NBRC12732株/BHI培地/37℃
Pseudomonasaeruginosa NBRC13275株/LB培地/37℃
【0058】
[風合い評価]
評価に用いる布として色染社PET(布1)及び日本規格協会試験用添付白布PET(布2)の2種類を用いた。重量を予め測定しておいた5×5cm2四方に裁断した布1及び布2をそれぞれ固形分1%の試験液に浸した後、マングル(大栄科学精器製作所製)で絞った。含浸前後の重量変化より布に残った試験液量を算出し、試験液のポリマー濃度より、含浸されたポリマー(共重合体)重量を算出した。さらに含浸後の布を十分に乾燥させた後、10人のパネラーにより以下の基準で官能評価し、評点の平均点で示した。
<評点>
5点:対象布と比べて柔らかい風合いが付与される
4点:対象布と比べてやや柔らかい風合いが付与される
3点:対象布と同等の風合いである
2点:対象布と比べてやや風合いが硬くなる
1点:対象布と比べて著しく風合いが硬くなる
【0059】
[臭気評価]
評価サンプルを両面コートして作製した評価フィルムをA4判に裁断し、茶封筒に入れて1昼夜放置した後茶封筒を開封し、中にこもった臭気を評価した。臭気の評価は、5名の専門パネラーにより、表1に示した6段階臭気強度表示法により行ない、得られた強度はパネラー5名の平均値(四捨五入)で示した。
<臭気強度>
5点:無臭である。
4点:どうにか探知できる程度の臭いである。
3点:何の臭いかがわかる程度の弱い臭いである。
2点:容易に感知できる程度の臭いである。
1点:強い臭いである。
0点:非常に強烈な臭いである。
【0060】
[防汚塗膜評価]
内面に試料となる塗膜を形成した内径5mm、長さ100mmのガラス管に、兵庫県西宮市甲子園浜より採取した海水200mlを、2カ月間、循環、通液した後、室温で1日乾燥し、内面の汚れ状態を目視で評価した。
[評点]
5点;初期状態と比較して同等の透明度がある。
4点;初期状態と比較して、やや透明度が低下しているが、シミ状の汚れはない。
3点;初期状態と比較して、やや透明度が低下し、所々にシミ状の汚れがある。
2点;初期状態と比較して、やや透明度が低下し、シミ状の汚れが多い。
1点;初期状態と比較して、全体的に白く濁り透明度が低下している。
【0061】
<実施例1~4>
スピンコーター(MIKASA CO.LTD.、SPIN COATER 1H-D7)を用いて、易接着PETフィルム(東レ、ルミラーT60)に対して、共重合体GB37、GB46、GB55、DB46をそれぞれエタノールで希釈して調製した1(w/w)%溶液を滴下、風乾した。これを両面について行ない、両面ポリマーコートフィルムを作製した。作製したフィルムを用いて、タンパク質吸着評価を実施した。その結果を表1に示す。
【0062】
<比較例1>
スピンコーター(MIKASA CO.LTD.、SPIN COATER 1H-D7)を用いて、易接着PETフィルム(東レ、ルミラーT60)に対して、ポリスチレン(PS;アルドリッチ社製、製品番号441147-1KG)の1(w/w)%溶液を滴下、風乾した。これを両面行ない、両面ポリマーコートフィルム(PSコートフィルム)を作製した。作製したフィルムを用いて、タンパク質吸着評価を実施した。その結果を表1に示す。
【0063】
【表1】
以上の実施例より、本発明の防汚剤が優れたタンパク質付着抑制効果があることが明らかである。
【0064】
<実施例5~8>
実施例1~4で作製した両面ポリマーコートフィルムを用いて、微生物付着評価を実施した。その結果を表2に示す。
【0065】
<比較例2>
比較例1で作製したPSコートフィルム用いて、微生物付着評価を実施した。その結果を表2に示す。
【0066】
【表2】
以上の実施例より、本発明の防汚剤が優れた菌付着抑制効果があることが明らかである。
【0067】
<実施例9~12>
共重合体GB37、GB46、GB55、DB46をそれぞれエタノールで希釈して1(w/w)%のエタノール溶液を調製した。得られたエタノール溶液に、色染社 PET(布1)及び日本規格協会 試験用添付白布 PET(布2)をそれぞれ浸漬し、マングル(大栄科学精器製作所製)で液を切った後、風乾した。その後、風合い評価を実施した。その結果を表3に示す。
【表3】
【0068】
<実施例13~16>
共重合体GB37、GB46、GB55、DB46をそれぞれエタノールで希釈して、濃度10ppm及び10000ppmのエタノール溶液を調製した。それぞれのエタノール溶液を用いて作製した両面コートフィルムを評価フィルムとして用いて臭気評価を行った結果を表4に示す。
【0069】
<比較例3~5>
芳香族スルホン酸塩ホルマリン縮合物であるナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物(ラベリンFP:第一工業製薬製)、メラミンスルホン酸塩ホルマリン縮合物(ラベリンFP:第一工業製薬製)及びフッ素化合物であるパーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物(ユニダインDS-401:ダイキン工業製)をそれぞれエタノールで希釈して、濃度10ppm及び10000ppmのエタノール溶液を調製した。それぞれのエタノール溶液を用いて作製した両面コートフィルムを評価フィルムとして用いて臭気評価を行った結果を表4に示す。
【0070】
【0071】
<実施例17~20>
共重合体GB37、GB46、GB55、DB46をそれぞれエタノールで希釈して1(w/w)%のエタノール溶液を調製した。溶液内径5mm、長さ100mmのガラス管を、得られたエタノール溶液で満たした後、溶液を排出し、室温で60分間乾燥した。もう一度同じ操作を繰り返しガラス管の内面をポリマーで被覆した。該ガラス管をシリコンゴム管で循環ポンプおよび200mlの海水の入った容器と接続し、海水を2ヶ月間、ガラス管に通液、循環して防汚塗膜評価を行った。その結果を表5に示す。
【0072】
<比較例6>
ガラス管に充填するポリマー溶液を、ポリスチレンの1(w/w)%アセトン溶液とした以外は実施例17~20と同様にしてガラス管内面をポリスチレンで被覆し、防汚塗膜評価を行った。その結果を表5に示す。
【0073】
<比較例7>
ガラス管に充填するポリマー溶液を、ポリビニルアルコールの1(w/w)%水溶液とした以外は実施例17~20と同様にしてガラス管内面をポリビニルアルコールで被覆し、防汚塗膜評価を行った。その結果を表5に示す。
【0074】
【表5】
以上の実施例より、本発明の防汚剤が海水に含まれる微生物等由来の汚れに対しても優れた防汚性を示すことが明らかである。