(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】クレンメ
(51)【国際特許分類】
A61M 39/28 20060101AFI20241213BHJP
【FI】
A61M39/28 110
(21)【出願番号】P 2021002457
(22)【出願日】2021-01-08
【審査請求日】2023-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003111
【氏名又は名称】あいそう弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】梅垣 彦希
【審査官】上石 大
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-130552(JP,A)
【文献】特開2017-148442(JP,A)
【文献】特開2003-339862(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0081797(US,A1)
【文献】米国特許第06113062(US,A)
【文献】特表2003-511112(JP,A)
【文献】特開2020-124276(JP,A)
【文献】国際公開第2015/064233(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 39/28
F16K 7/04
F16B 2/10
F16B 2/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用チューブに装着され、前記医療用チューブの開閉を行うためのクレンメであって、
前記クレンメは、ベース部と、前記ベース部の一端より延びる一端側弾性湾曲部と、前記一端側弾性湾曲部の一端より延び前記ベース部の上方に位置する係合操作用押圧部と、前記係合操作用押圧部から下方に突出する第1クランプ部と、前記ベース部から上方に突出する第2クランプ部と、前記ベース部の他端より、前記係合操作用押圧部の先端部方向に延びる他端側弾性湾曲部と、前記係合操作用押圧部の前記先端部に形成された第1係合部と、前記他端側弾性湾曲部の先端部に形成され、前記第1係合部と係合可能な第2係合部と、前記第2係合部より延出する係合解除用押圧部と、前記他端側弾性湾曲部より分岐し、前記他端側弾性湾曲部の外方に延び、かつ、前記係合解除用押圧部の下方に位置し、使用者の指と当接可能な指係止部とを備え、
前記他端側弾性湾曲部は、先端部にストレート部を備えており、前記第2係合部は、前記ストレート部の先端部に形成されており、
前記指係止部は、前記ベース部の他端よりも上方かつ前記他端側弾性湾曲部の前記ストレート部よりも前記ベース部側となる前記他端側弾性湾曲部の途中より分岐し、かつ、分岐する部分の接線方向かつ斜め上方に延びた後、頂点を越えると下方に向かって湾曲し、下方に向かって開口する側面視で円弧状であって、下側より、使用者の指が進入可能であり、さらに、前記指係止部は、両端部が前記他端側弾性湾曲部に連結したU字状のものであり、かつ、前記指係止部の中央部分には、開口が形成されており、
前記係合解除用押圧部は、前記他端側弾性湾曲部の前記ストレート部の先端から直線状に延出した板状部であり、かつ、前記ストレート部に対して10~45°の角度で傾斜しており、
前記一端側弾性湾曲部および前記他端側弾性湾曲部は、医療用チューブ挿通口を備え、前記クレンメは、前記係合操作用押圧部の押圧により、前記第1係合部と前記第2係合部が係合状態となり、前記第1クランプ部と前記第2クランプ部により前記医療用チューブを閉塞可能なものであり、かつ、前記係合解除用押圧部の押圧により、前記第1係合部と前記第2係合部の係合状態が解除されるものであり、さらに、前記係合解除用押圧部の押圧時に、前記指係止部に使用者の指を係止可能であることを特徴とするクレンメ。
【請求項2】
前記係合操作用押圧部の押圧時に、前記指係止部に使用者の指を係止可能である請求項1に記載のクレンメ。
【請求項3】
前記係合操作用押圧部は、板状部となっている請求項1
または2に記載のクレンメ。
【請求項4】
前記指係止部の前記他端側弾性湾曲部からの延出方向端部は、前記ベース部よりも下方へ突出しない請求項1から3のいずれかに記載のクレンメ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用チューブに装着され、医療用チューブの開閉を行うためのクレンメに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、患者に輸液(注液や排液)を行う場合、医療用バッグと患者とを医療用チューブで接続する。輸液の前後での意図しない薬液の流通を阻止する等の目的のために、チューブの開閉を行うためのクレンメ(所謂ワンタッチクレンメ)が、チューブに装着される。
そのようなクレンメとして、例えば、特許文献1(特開2020-124276)や特許文献2(特開2015-228882)に記載されているものが開示されている。これらのクレンメは、第1板状部と第2板状部とが湾曲部によって相互に連結された構造を有しており、外力を付加して第1板状部と第2板状部とを相互に接近させてチューブを閉塞し、チューブ内の薬液の流通を遮断する。このとき、第1板状部と第2板状部とを係合させることにより、第1板状部と第2板状部の離隔方向への相対的な復元変位が阻止され、チューブの閉塞状態が維持される。そして、第1板状部と第2板状部とが係合された状態で、第2板状部の先端部を所定の方向に押すことにより、第1板状部と第2板状部との係合が解除される。これにより、第1板状部と第2板状部が、湾曲部の弾性によって、相互に離隔した初期位置に戻り、チューブの閉塞状態が解除されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-124276号公報
【文献】特開2015-228882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
医療従事者ではない患者自身が輸液を行う場合(例えば、腹膜透析における透析液の注液および排液等)、そこで用いられる各種の医療器具については、操作性の向上が強く望まれる。特許文献2では、医療用チューブを閉塞する際に、強い力を加えなくてもチューブを確実に閉塞できるクランプ(クレンメ)を提供することを目的とし、基部(第2板状部)と可動部(第1板状部)とを有し、可動部の上部に押圧補助部を形成することが開示されている。
しかしながら、未だクレンメの操作性の向上については十分ではなく、特に、チューブの閉塞状態から開放状態への移行操作、言い換えれば、2つの板部の係合を解除する際の操作性の向上について強い要望がある。
そこで、本発明は、医療用チューブに装着され、医療用チューブの開閉を行うためのクレンメであって、閉塞状態から開放状態へ移行する際の操作性が向上されたクレンメを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するものは、以下のものである。
(1) 医療用チューブに装着され、前記医療用チューブの開閉を行うためのクレンメであって、
前記クレンメは、ベース部と、前記ベース部の一端より延びる一端側弾性湾曲部と、前記一端側弾性湾曲部の一端より延び前記ベース部の上方に位置する係合操作用押圧部と、前記係合操作用押圧部から下方に突出する第1クランプ部と、前記ベース部から上方に突出する第2クランプ部と、前記ベース部の他端より、前記係合操作用押圧部の先端部方向に延びる他端側弾性湾曲部と、前記係合操作用押圧部の前記先端部に形成された第1係合部と、前記他端側弾性湾曲部の先端部に形成され、前記第1係合部と係合可能な第2係合部と、前記第2係合部より延出する係合解除用押圧部と、前記他端側弾性湾曲部より分岐し、前記他端側弾性湾曲部の外方に延び、かつ、前記係合解除用押圧部の下方に位置し、使用者の指と当接可能な指係止部とを備え、
前記他端側弾性湾曲部は、先端部にストレート部を備えており、前記第2係合部は、前記ストレート部の先端部に形成されており、
前記指係止部は、前記ベース部の他端よりも上方かつ前記他端側弾性湾曲部の前記ストレート部よりも前記ベース部側となる前記他端側弾性湾曲部の途中より分岐し、かつ、分岐する部分の接線方向かつ斜め上方に延びた後、頂点を越えると下方に向かって湾曲し、下方に向かって開口する側面視で円弧状であって、下側より、使用者の指が進入可能であり、さらに、前記指係止部は、両端部が前記他端側弾性湾曲部に連結したU字状のものであり、かつ、前記指係止部の中央部分には、開口が形成されており、
前記係合解除用押圧部は、前記他端側弾性湾曲部の前記ストレート部の先端から直線状に延出した板状部であり、かつ、前記ストレート部に対して10~45°の角度で傾斜しており、
前記一端側弾性湾曲部および前記他端側弾性湾曲部は、医療用チューブ挿通口を備え、前記クレンメは、前記係合操作用押圧部の押圧により、前記第1係合部と前記第2係合部が係合状態となり、前記第1クランプ部と前記第2クランプ部により前記医療用チューブを閉塞可能なものであり、かつ、前記係合解除用押圧部の押圧により、前記第1係合部と前記第2係合部の係合状態が解除されるものであり、さらに、前記係合解除用押圧部の押圧時に、前記指係止部に使用者の指を係止可能であるクレンメ。
【0006】
(2) 前記係合操作用押圧部の押圧時に、前記指係止部に使用者の指を係止可能である上記(1)に記載のクレンメ。
(3) 前記係合操作用押圧部は、板状部となっている上記(1)または(2)に記載のクレンメ。
(4) 前記指係止部の前記他端側弾性湾曲部からの延出方向端部は、前記ベース部よりも下方へ突出しない上記(1)から(3)のいずれかに記載のクレンメ。
【発明の効果】
【0008】
本発明のクレンメは、他端側弾性湾曲部より分岐し、他端側弾性湾曲部の外方に延び、かつ、係合解除用押圧部の下方に位置する指係止部を備え、係合解除用押圧部の押圧により、第1係合部と第2係合部の係合状態が解除されるものであり、係合解除用押圧部の押圧時に、指係止部に使用者の指を係止可能である。これにより、医療用チューブの閉塞状態(第1係合部と第2係合部の係合状態)から開放状態(第1係合部と第2係合部の係合状態が解除)へ移行する際の操作性が向上される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明のクレンメの実施例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明のクレンメの実施例を示す他の斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明のクレンメの実施例を示す正面図である。
【
図4】
図4は、本発明のクレンメの実施例を示す背面図である。
【
図5】
図5は、本発明のクレンメの実施例を示す平面図である。
【
図6】
図6は、本発明のクレンメの実施例を示す底面図である。
【
図7】
図7は、本発明のクレンメの実施例を示す右側面図である。
【
図8】
図8は、本発明のクレンメの実施例を示す左側面図である。
【
図10】
図10は、本発明のクレンメを医療用チューブに装着した状態を示す、
図9に対応する断面説明図である。
【
図11】
図11は、本発明のクレンメの係合操作(閉塞操作)を説明するための、
図9に対応する断面説明図である。
【
図12】
図12は、本発明のクレンメの係合状態(閉塞状態)を説明するための、
図9に対応する断面説明図である。
【
図13】
図13は、本発明のクレンメの係合解除操作(開放操作)の一の例を説明するための、
図9に対応する断面説明図である。
【
図14】
図14は、本発明のクレンメの係合解除操作(開放操作)の他の例を説明するための、
図9に対応する断面説明図である。
【
図15】
図15は、本発明のクレンメの他の実施例を示す斜視図である。
【
図16】
図16は、本発明のクレンメの他の実施例を示す他の斜視図である。
【
図17】
図17は、本発明のクレンメの他の実施例を示す正面図である。
【
図18】
図18は、本発明のクレンメの他の実施例を示す背面図である。
【
図19】
図19は、本発明のクレンメの他の実施例を示す平面図である。
【
図20】
図20は、本発明のクレンメの他の実施例を示す底面図である。
【
図21】
図21は、本発明のクレンメの他の実施例を示す右側面図である。
【
図22】
図22は、本発明のクレンメの他の実施例を示す左側面図である。
【
図24】
図24は、本発明のクレンメの別の実施例を示す、
図9に対応する断面説明図である。
【
図25】
図25は、本発明のクレンメのさらに別の実施例を示す右側面図である。
【
図26】
図26は、本発明のクレンメのさらに別の実施例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のクレンメを、
図1ないし
図14に示した実施例を用いて説明する。なお、本実施例においては、
図7における上下方向を上下方向として、
図7における左右方向を左右方向として、
図3における左右方向を幅方向として説明することがあるが、これは必ずしもクレンメの使用状態等を限定するものではない。
【0011】
本発明のクレンメは、医療用チューブ7に装着され、医療用チューブ7の開閉(開放および閉塞)を行うためのクレンメ1であって、ベース部10と、ベース部10の一端より延びる一端側弾性湾曲部20と、一端側弾性湾曲部20の一端より延びベース部10の上方に位置する係合操作用押圧部30と、係合操作用押圧部30から下方に突出する第1クランプ部31と、ベース部10から上方に突出する第2クランプ部11と、ベース部10の他端より、係合操作用押圧部30の先端部方向に延びる他端側弾性湾曲部40と、係合操作用押圧部30の先端部に形成された第1係合部32と、他端側弾性湾曲部40の先端部に形成され、第1係合部32と係合可能な第2係合部42と、第2係合部42より延出する係合解除用押圧部50と、他端側弾性湾曲部40より分岐し、他端側弾性湾曲部40の外方に延び、かつ、係合解除用押圧部50の下方に位置し、使用者の指と当接可能な指係止部60とを備え、一端側弾性湾曲部20および他端側弾性湾曲部40は、医療用チューブ挿通口21,41を備え、クレンメ1は、係合操作用押圧部30の押圧により、第1係合部32と第2係合部42が係合状態となり、第1クランプ部31と第2クランプ部11により医療用チューブ7を閉塞可能なものであり、かつ、係合解除用押圧部50の押圧により、第1係合部32と第2係合部42の係合状態が解除されるものであり、さらに、係合解除用押圧部50の押圧時に、指係止部60に使用者の指を係止可能となっている。
【0012】
図示する実施例のクレンメ1は、ベース部10と、一端側弾性湾曲部20と、係合操作用押圧部30と、他端側弾性湾曲部40と、係合解除用押圧部50と、指係止部60とを備える。
【0013】
ベース部10は、長手矩形板状で、係合操作用押圧部30の下方に位置する。ベース部10の一端(ここでは、
図7における左側の端)は、一端側弾性湾曲部20の他端(ここでは、
図7における下側の端)と連結している。言い換えれば、べース部10の一端から、一端側弾性湾曲部20が延びている。ベース部10には、上方に突出する第2クランプ部11が形成されている。第2クランプ部11の幅方向の他端部(
図7における紙面垂直方向奥側の端部)からは枠板部15が延出している。枠板部15は、薄板状であり、第2クランプ部11の幅方向の他端部から上方に向かって延出している。
【0014】
一端側弾性湾曲部20は、側面視で円弧状とされた湾曲板状部である。言い換えれば、一端側弾性湾曲部20は、板状部が円弧状に湾曲されてなる。一端側弾性湾曲部20は、適度な弾性をもっている。一端側弾性湾曲部20により、係合操作用押圧部30とベース部10は連結されている。一端側弾性湾曲部20の中央部分には医療用チューブ挿通口21が形成されている、具体的には、
図3に示されるように、一端側弾性湾曲部20の中央部分には医療用チューブ7を挿通可能な貫通孔としての医療用チューブ挿通口21が形成されている。医療用チューブ挿通口21は、一端側弾性湾曲部20の適度な強度および弾性、さらにチューブ挿通性(作業性)を確保できる程度の大きさで形成される。
【0015】
ベース部10の上方に位置する係合操作用押圧部30は、長手矩形状の板状部となっている。係合操作用押圧部30は、一端側弾性湾曲部20の一端(ここでは、
図7における上側の端)より延びている。係合操作用押圧部30の先端部(一端側弾性湾曲部20からの延出方向の先端部)には第1係合部32が形成されている。ここでは、第1係合部32は、その幅方向中央部からさらに延出方向に突出する係合突起33を有する。係合操作用押圧部30の外面(上面)には、滑り止め部34が形成されている。この実施例では、滑り止め部34は、延出方向中央部に設けられている。滑り止め部34は、幅方向に延びる複数のリブから構成されている。この実施例では、各リブは半円柱状のものとなっている。係合操作用押圧部30には、下方に突出する第1クランプ部31が形成されている。第1クランプ部31の幅方向の一端部(
図7における紙面垂直方向手前側の端部)からは枠板部35が延出している。枠板部35は、薄板状であり、第1クランプ部31の幅方向の一端部から上方に向かって延出している。上述した第2クランプ部11の枠板部15と第1クランプ部31の枠板部35とは幅方向において対向している。
【0016】
ベース部10の他端(ここでは、
図7における右側の端)からは他端側弾性湾曲部40が延びている。他端側弾性湾曲部40は、ベース部10の他端から滑らかに湾曲して延出している。他端側弾性湾曲部40は、係合操作用押圧部30の先端部(第1係合部32)方向(上方)に延びる。他端側弾性湾曲部40は、適度な弾性をもっている。他端側弾性湾曲部40により、係合解除用押圧部50とベース部10は連結されている。他端側弾性湾曲部40の先端部(ベース部10からの延出方向の先端部)には第1係合部32と係合可能な第2係合部42が形成されている。具体的には、第2係合部42は、他端側弾性湾曲部40の先端部に形成された段差部からなる。
【0017】
本実施例では、他端側弾性湾曲部40は全長に亘って湾曲してはいない。
図7に示されるように、他端側弾性湾曲部40の先端側部分が湾曲せずに直線状に延びるストレート部43とされている。言い換えれば、他端側弾性湾曲部40は、先端部にストレート部43を備えている。第2係合部42はストレート部43の先端部に形成されている。他端側弾性湾曲部40において、ストレート部43は、他端側弾性湾曲部43の湾曲部分(ストレート部43を除くベース部10側の部分)の先端から接線方向に延びるように形成されている。
【0018】
他端側弾性湾曲部40の中央部分には医療用チューブ挿通口41が形成されている。具体的には、
図4に示されるように、他端側弾性湾曲部40の中央部分には医療用チューブ7を挿通可能な貫通孔としての医療用チューブ挿通口41が形成されている。医療用チューブ挿通口41は、他端側弾性湾曲部40の適度な強度および弾性、さらにチューブ挿通性(作業性)を確保できる範囲の大きさで形成される。本実施例では、医療用チューブ挿通口41は、他端側弾性湾曲部40の略全長に亘って形成されている。言い換えれば、医療用チューブ挿通口41は、ベース部10の他端から第2係合部42(段差部)まで延びており、他端側弾性湾曲部40は、幅方向において対向する2本のフレーム状構造とされている。
【0019】
係合解除用押圧部50は、クレンメ1の第2係合部42から延出している。より具体的には、第2係合部42(段差部)が形成された他端側弾性湾曲部40のストレート部43の先端から板状の係合解除用押圧部50が延出している。係合解除用押圧部50は、板状部となっている。本実施例では、
図7に示されるように、係合解除用押圧部50が、ストレート部43に対して所定の角度:θ1で傾斜している。本実施例では、係合解除用押圧部50は、ストレート部43に対して10~45°の角度(θ1)で傾斜していることが好ましく、特に、15~30°の角度(θ1)で傾斜していることが好ましい。
【0020】
クレンメ1は、指係止部60を備える。指係止部60は、使用者の指と当接可能なものとなっている。また、指係止部60は、係合解除用押圧部50の押圧時(通常、親指による押圧時)に、使用者の指(通常、人差し指)を係止可能なものとなっている。この実施例では、指係止部60は、他端側弾性湾曲部40より分岐し、他端側弾性湾曲部40の外方および下方に延びる湾曲状のものであり、かつ、下側より、使用者の指が進入可能なものとなっている。
【0021】
より具体的には、指係止部60は、他端側弾性湾曲部40より分岐し、他端側弾性湾曲部40の外方(他端側弾性湾曲部40の湾曲中心の存在する側とは逆側の方向、言い換えれば、ベース部10、一端側弾性湾曲部20および係合操作用押圧部30に囲まれたクレンメ1の内方とは逆方向)に延びている。指係止部60は、係合解除用押圧部50の下方に位置している。指係止部60は、側面視で円弧状とされた板状部である。言い換えれば、指係止部60は、板状部が円弧状に湾曲されてなる。より具体的には、指係止部60は、他端側弾性湾曲部40(ここでは、他端側弾性湾曲部40のストレート部43よりもベース部10側の部分)から、当該部分の接線方向に向かって延び、下方に向かって開口(開放)する円弧状に湾曲している。これにより、後述するクレンメ1の係合操作(医療用チューブ7の閉塞操作)およびクレンメ1の係合解除操作(医療用チューブ7の開放操作)における操作性をより向上できる。
【0022】
指係止部60の中央部分には、開口61が形成されている。このような開口61は必ずしも必要ではないが、本実施例では、開口61が設けられていることにより、指係止部60が医療用チューブ7と干渉することが防止される。また、
図7に示されるように、指係止部60の他端側弾性湾曲部40からの延出方向端部は、ベース部10よりも下方へ突出しないことが好ましい。これにより、クレンメ1全体のコンパクト化が図られるとともに、意図せずに指係止部60に触れることが防止され、それによる誤操作[係合解除(医療用チューブ7の開放)]が防止される。また、この実施例のクレンメ1では、指係止部60は、両端部が他端側弾性湾曲部40に連結したU字状のものとなっている。U字状の両側部は、湾曲している。
【0023】
クレンメ1は、例えば、射出成形等により一体的に形成されることが好ましい。クレンメの形成材料としては、特に限定されるものではないが、合成樹脂、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン、ポリスチレン、BS樹脂、ABS樹脂などのスチレン系樹脂、ポリカーボネート、塩化ビニル樹脂、ポリアセタール等が挙げられる。
【0024】
上述したクレンメ1の使用態様を、
図9ないし
図14を用いて説明する。
図9には、自然状態における係合解除状態(第1係合部32と第2係合部42とが係合していない状態)のクレンメ1が示されている。ここでは、係合操作用押圧部30とベース部10との間隔が、一端側弾性湾曲部20から他端側弾性湾曲部40に向かって(
図7における右方向に向かって)大きくなっており、第1係合部32と第2係合部42とが、所定の間隔で離間している。クレンメ1は、上述した一端側弾性湾曲部20の適度な弾性により、自然状態で係合解除状態が維持される。
【0025】
クレンメ1は、
図10に示されるように、医療用チューブ7を医療用チューブ挿通口21,41に挿通することにより、医療用チューブ7に装着される。医療用チューブ7は、可撓性を備え、内部を流体が流通可能なチューブである。医療用チューブとしては、特に限定されるものではないが、例えば、塩化ビニル樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、軟質ポリプロピレン、軟質ポリエチレンなどの軟質ポリオレフィン等の可撓性樹脂、シリコーンゴム、ウレタンゴム等のゴムにより形成された軟質チューブが使用される。
【0026】
医療用チューブ7内を流通する流体としては、各種の薬液、例えば、腹膜透析に用いられる透析液、腹膜透析で生じる廃液、輸液等が挙げられる。また、薬液に限られず、例えば、流動食等の流動性を有する食品(栄養剤)や、酸素や一酸化窒素等の気体を用いることもできる。
【0027】
クレンメ1の係合操作、言い換えれば医療用チューブ7の閉塞操作においては、
図11に示されるように、使用者によって、係合操作用押圧部30が押圧される。係合操作用押圧部30の滑り止め部34を押圧することにより、係合操作(閉塞操作)時に、指(親指81)が滑ることが防止される。
【0028】
係合操作用押圧部30が、指(親指81)により、押圧されることにより、係合操作用押圧部30の先端部(第1係合部32)と他端側弾性湾曲部40の先端部(第2係合部42)とが互いに近接する。より具体的には、係合操作用押圧部30の先端部(第1係合部32)が、係合解除用押圧部50に当接した状態で傾斜に沿って下方に移動し、それに伴い他端側弾性湾曲部40が変位(変形および移動)する。そして、第1係合部32が段差部(第2係合部42)を乗り越えることで、第1係合部32と第2係合部42とが係合する(
図12参照)。第1係合部32と第2係合部42との係合状態において、係合操作用押圧部30の係合突起33は、他端側弾性湾曲部40の医療用チューブ挿通口41内に収納される。これにより、係合状態における、第1係合部32の幅方向の変位が規制される。
【0029】
本実施例では、係合操作用押圧部30の押圧時に、指係止部60に指を当接により係止することが可能である。例えば、
図11に示されるように、係合操作用押圧部30を親指81で押圧する際に、指係止部60に人差し指82を掛ける(係止する)ことが可能である。これにより、クレンメ1の係合操作時(医療用チューブ7の閉塞操作時)の操作性が向上する。すなわち、
図11に白抜き矢印で示されるように、係合操作用押圧部30に第1係合部32と第2係合部42とを係合させる(医療用チューブ7を閉塞させる)ための押圧力が作用すると、クレンメ1自体が押圧力方向に付勢されるとともに、クレンメ1を回転(
図11における時計回り方向への回転)させるモーメントが生じる。これに対し、指係止部60に係止され指(人差し指82)から当該押圧力に対抗する力(当該押圧力によるモーメントを相殺する力)を加えることができるため、係合操作(閉塞操作)中のクレンメ1が安定する。
【0030】
第1係合部32と第2係合部42との係合状態において、第1クランプ部31と第2クランプ部11により医療用チューブ7は閉塞される。具体的には、
図12に示されるように、近接した第1クランプ部31と第2クランプ部11との間に医療用チューブ7が挟み込まれることにより、医療用チューブ7が変形し、医療用チューブ7内の流体の流通が遮断される。医療用チューブ7の閉塞状態は、第1係合部32と第2係合部42との係合によって維持される。
【0031】
なお、
図12に示されるように、第1クランプ部31および第2クランプ部11の突出方向先端部は、それぞれ、断面が円形状(幅方向に延びる円柱状部)とされている。これにより、第1クランプ部31および第2クランプ部11によって医療用チューブ7が傷つけられることが防止される。また、幅方向において対向する第1クランプ部31の枠板部35および第2クランプ部11の枠板部15により、幅方向において医療用チューブ7がクレンメ1の外部に飛び出すことが防止される。
【0032】
次いで、クレンメ1の係合状態(医療用チューブ7の閉塞状態)からのクレンメ1の係合解除操作(医療用チューブ7の開放操作)の一例(以下、通常解除操作とも言う)について説明する。ここでは、クレンメ1の係合解除操作、言い換えれば医療用チューブ7の開放操作において、
図13に示されるように、使用者によって、係合解除用押圧部50が押圧される。より具体的には、使用者はクレンメ1の一端側弾性湾曲部20側(
図13における左側)から、クレンメ1を掌中に保持するようにして、係合解除用押圧部50を親指81で押圧するとともに、指係止部60に人差し指82を掛ける。
【0033】
係合解除用押圧部50が押圧されることにより、係合解除用押圧部50と連結された他端側弾性湾曲部40が変位(変形および移動)し、係合操作用押圧部30の先端部(第1係合部32)と他端側弾性湾曲部40の先端部(第2係合部42)とが互いに離間していく。そして、第1係合部32が第2係合部42(段差部)を乗り越えることで、第1係合部32と第2係合部42との係合が解除される。第1係合部32は、第2係合部42との係合状態においては、一端側弾性湾曲部20の弾性力および変形した医療用チューブ7から受ける反力により、第2係合部42から離間する方向に付勢されており、他端側弾性湾曲部40の変位により第2係合部42との係合が解除されると、第2係合部42との離間状態、すなわち
図10に示されるような係合解除状態が維持される。
【0034】
クレンメ1は、上述した通常解除操作において、係合解除用押圧部50を指(親指81)で押圧する際に、指係止部60に指(人差し指82)を掛ける(係止する)ことが可能である。これにより、クレンメ1の係合解除操作時(医療用チューブ7の開放操作時)の操作性が向上する。すなわち、
図13に白抜き矢印で示されるように、係合解除用押圧部50に第1係合部32と第2係合部42との係合を解除する(医療用チューブ7を開放する)ための押圧力が作用すると、クレンメ1自体が押圧力方向に付勢されるとともに、クレンメ1を回転(
図13における時計回り方向への回転)させるモーメントが生じる。これに対し、指係止部60に掛けられた指(人差し指82)から当該押圧力に対抗する力(当該押圧力によるモーメントを相殺する力)を加えることができるため、係合解除操作(開放操作)中のクレンメ1が安定する。また、クレンメ1は、従来のクレンメと同様の使用方法(通常解除操作)が可能であり、その際の操作性も良好である。
【0035】
次いで、クレンメ1の係合状態(医療用チューブ7の閉塞状態)からのクレンメ1の係合解除操作(医療用チューブ7の開放操作)の他の例(以下、つまみ解除操作とも言う)について説明する。ここでは、クレンメ1の係合解除操作、言い換えれば医療用チューブ7の開放操作において、
図14に示されるように、使用者によって、係合解除用押圧部50が押圧される。より具体的には、使用者はクレンメ1の他端側弾性湾曲部40側(
図14における右側)から、係合解除用押圧部50に親指81を掛けるとともに、指係止部60に人差し指81を掛けてクレンメ1をつまむように保持し、係合解除用押圧部50を押圧する。
【0036】
つまみ解除操作においても、係合解除用押圧部50が押圧されることにより、係合解除用押圧部50と連結された他端側弾性湾曲部40が変位(変形および移動)し、係合操作用押圧部30の先端部(第1係合部32)と他端側弾性湾曲部40の先端部(第2係合部42)とが互いに離間していく。そして、第1係合部32が第2係合部42(段差部)を乗り越えることで、第1係合部32と第2係合部42との係合が解除される。
【0037】
クレンメ1は、つまみ解除操作においても、係合解除用押圧部50を指(親指81)で押圧する際に、指係止部60に指(人差し指82)を掛ける(係止する)ことが可能である。これにより、クレンメ1の係合解除操作時(医療用チューブ7の開放操作時)の操作性が向上する。すなわち、
図14に白抜き矢印で示されるように、係合解除用押圧部50に第1係合部32と第2係合部42との係合を解除する(医療用チューブ7を開放する)ための押圧力が作用すると、クレンメ1自体が押圧力方向に付勢されるとともに、クレンメ1を回転(
図14における時計回り方向への回転)させるモーメントが生じる。これに対し、指係止部60に掛けられた指(人差し指82)から当該押圧力に対抗する力(当該押圧力によるモーメントを相殺する力)を加えることができるため、係合解除操作(開放操作)中のクレンメ1が安定する。
【0038】
クレンメ1は、他端側弾性湾曲部40より分岐し、他端側弾性湾曲部40の外方に延び、かつ、係合解除用押圧部50の下方に位置する指係止部60を備え、係合解除用押圧部50の押圧時(係合解除操作時)に、指係止部60に指を掛ける(係止する)ことが可能である。これにより、係合解除操作(開放操作)時のクレンメ1が安定し、クレンメ1の操作性が向上する。さらに、クレンメ1は、係合解除操作として上述した通常解除操作およびつまみ解除操作の両方が実施可能となる。これにより、使用者が、状況に応じた適切な係合解除操作を選択すること(例えば、一端側弾性湾曲部20側から作業する場合は通常解除操作を選択し、他端側弾性湾曲部40側から作業する場合はつまみ解除操作を選択する等)が可能となり、より作業性が向上する。
【0039】
また、本実施例のクレンメ1は、他端側弾性湾曲部40は先端側部分が湾曲せずに直線状に延びるストレート部43を備えている。そのため、他端側弾性湾曲部40の全体が湾曲している場合に比べて、他端側弾性湾曲部40が、ストレート部43において、第1係合部32と第2係合部42との係合が解除される方向に変位(変形)し易く、係合解除操作(開放操作)がし易くなっている。
【0040】
また、本実施例のクレンメ1は、指係止部60が、他端側弾性湾曲部40のストレート部43よりもベース部40側から分岐している。そのため、指係止部60が、ストレート部43(第2係合部42含む)の変形(変位)を妨げず、係合解除操作(開放操作)がし易くなっている。
【0041】
また、本実施例のクレンメ1は、係合解除用押圧部50がストレート部43に対して所定の角度(θ1)で傾斜している。そのため、通常解除操作とつまみ解除操作の操作性が両立される。具体的には、通常解除操作時(一端側弾性湾曲部20側からの係合解除操作時)の操作性と、つまみ解除操作時(他端側弾性湾曲部40側からの係合解除操作時)の操作性とが、ともに良好なものとされている。
【0042】
図15ないし
図23には、本発明のクレンメの別の実施例が示されている。クレンメ1aにおいては、上述したクレンメ1に対して、係合解除用押圧部の形態が異なっている。なお、本実施例のクレンメ1aは、特に記載のない限り、上述したクレンメ1と略同様の構成を備え、そのような構成については、同一の名称および符号(末尾にaを付すことがある)を用い、詳細な説明を省略する。
【0043】
図22に示されるように、クレンメ1aにおいては、係合解除用押圧部50aが、ストレート部43に対して所定の角度:θ2で傾斜している。本実施例では、係合解除用押圧部50aは、ストレート部43に対して角度(θ2)で傾斜している。本実施例では、係合解除用押圧部50aは、ストレート部43に対して45~80°の角度(θ2)で傾斜していることが好ましく、特に、60~75°の角度(θ2)で傾斜していることが好ましい。
【0044】
本実施例のクレンメ1aは、係合解除用押圧部50aがストレート部43に対して所定の角度(θ2)で傾斜して延出している。そのため、特に、つまみ解除操作の操作性が向上される。また、係合解除用押圧部50aの上方への突出量、すなわちクレンメ1a全体の上下方向寸法が小さくなることで、クレンメ1aのコンパクト化にも寄与する。さらに、意図せずに係合解除用押圧部50aに触れることが防止され、それによる誤操作[係合解除(医療用チューブ7の開放)]が防止される。
【0045】
なお、
図24に示されるクレンメ1bのように、係合解除用押圧部50bは、途中で屈曲していてもよい、例えば、係合解除用押圧部50bの延出方向基端側部分(第2係合部42側部分)を上述した角度:θ1に準ずる角度とし、延出方向先端側部分を上述した角度:θ2に準ずる角度としてもよい。これにより、通常解除操作時の操作性と、つまみ解除操作時の操作性とを、ともにより良好なものとすることができる。また、係合解除用押圧部50bの上方への突出量が抑制されることで、クレンメ1bのコンパクト化にも寄与するとともに、誤操作[係合解除(医療用チューブ7の開放)]が防止される。
【0046】
なお、
図25に示されるクレンメ1cのように、指係止部60cを平板形状としてもよい。指係止部60cは、他端側弾性湾曲部40より分岐し、他端側弾性湾曲部40の外方に延び、かつ、係合解除用押圧部50の下方に位置している。このような形状の指係止部60cであっても、係合解除用押圧部50の押圧時に、指係止部60cに指を掛けることが可能であり、係合操作(閉塞操作)時および係合解除操作(開放操作)時の操作性を向上できる。
なお、他端側弾性湾曲部において、ストレート部を設けることなく、他端側弾性湾曲部が全体において湾曲していてもよい。
【0047】
なお、クレンメ1の指係止部60のようなU字状のものではなく、
図26に示されるクレンメ1dのように、他端側弾性湾曲部40より分岐する2つの指係止部60a,60bを有するものであってもよい。この実施例の指係止部60a,60bは、一端が他端側弾性湾曲部40に連結し、他端が自由端となっている。指係止部60a,60bの自由端間は、空隙部となっている。
【符号の説明】
【0048】
1,1a,1b,1c,1d クレンメ
10 ベース部
11 第2クランプ部
20 一端側弾性湾曲部
21 医療用チューブ挿通口
30 係合操作用押圧部
31 第1クランプ部
32 第1係合部
40 他端側弾性湾曲部
41 医療用チューブ挿通口
42 第2係合部
43 ストレート部
50 係合解除用押圧部
60 指係止部
7 医療用チューブ