IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社の特許一覧 ▶ ソニー株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】光電変換素子および撮像素子
(51)【国際特許分類】
   H10K 30/60 20230101AFI20241213BHJP
   H10K 39/32 20230101ALI20241213BHJP
   H10K 30/85 20230101ALI20241213BHJP
   H10K 30/86 20230101ALI20241213BHJP
   H10K 85/60 20230101ALI20241213BHJP
   H01L 27/146 20060101ALI20241213BHJP
【FI】
H10K30/60
H10K39/32
H10K30/85
H10K30/86
H10K85/60
H01L27/146 E
H01L27/146 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021005270
(22)【出願日】2021-01-15
(65)【公開番号】P2021125682
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】P 2020017804
(32)【優先日】2020-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大江 隆
(72)【発明者】
【氏名】菊地 加代子
(72)【発明者】
【氏名】妹尾 雅美
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 陽介
(72)【発明者】
【氏名】榎 修
(72)【発明者】
【氏名】茂木 英昭
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 雄大
(72)【発明者】
【氏名】平野 英孝
(72)【発明者】
【氏名】八木 巖
【審査官】原 俊文
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-232608(JP,A)
【文献】特開2009-231610(JP,A)
【文献】国際公開第2013/171549(WO,A1)
【文献】特表2018-513558(JP,A)
【文献】特表2016-532300(JP,A)
【文献】特開2015-050331(JP,A)
【文献】国際公開第2015/189551(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 30/00-30/89
H10K 39/00-39/38
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、
前記第1電極と対向配置された第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に設けられると共に、色素材料である第1の有機半導体材料、電子輸送性を有するn型半導体である第2の有機半導体材料および正孔輸送性を有するp型半導体である第3の有機半導体材料を含む光電変換層と、
前記第1電極と前記光電変換層との間に設けられた第1バッファ層と、
前記第2電極と前記光電変換層との間に設けられた第2バッファ層とを備え、
第2バッファ層は、前記光電変換層に含まれる材料として、前記第1の有機半導体材料と、前記第2の有機半導体材料または前記第3の有機半導体材料との2種を含み、
前記色素材料は、下記式(1-2)で表されるBODIPY色素B、下記式(1-3)で表されるBODIPY色素C、下記式(1-4)で表されるBODIPY色素D、下記式(2-1)で表されるサブフタロシアニン誘導体、下記式(3)で表されるメロシアニン誘導体、下記式(1-5)で表される亜鉛錯体および下記式(4-1)で表されるペリレン誘導体のうちのいずれかである
光電変換素子。
【化1】
【請求項2】
前記第2の有機半導体材料は、フラーレンC60およびその誘導体である、請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項3】
前記第1バッファ層は、前記第2の有機半導体材料と、前記第1の有機半導体材料または前記第3の有機半導体材料との2種を含み、
前記第1電極の仕事関数と前記第1バッファ層に含まれる前記第1の有機半導体材料または前記第3の有機半導体材料のHighest Occupied Molecular Orbital(HOMO)準位との差が1.4eV以上である、請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項4】
前記第1バッファ層は、前記第2の有機半導体材料と、前記第1の有機半導体材料または前記第3の有機半導体材料との2種を含み、
前記第2の有機半導体材料のLUMO準位と前記第1バッファ層に含まれる前記第1の有機半導体材料または前記第3の有機半導体材料のHOMO準位との差は1.7eV以上である、請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項5】
前記第1バッファ層は、前記第2の有機半導体材料と、前記第1の有機半導体材料または前記第3の有機半導体材料との2種を含み、
前記第2の有機半導体材料と前記第1の有機半導体材料または前記第3の有機半導体材料とのLowest Unoccupied Molecular Orbital(LUMO)準位の差は0以上0.5eV以下である、請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項6】
1または複数の有機光電変換部として光電変換素子がそれぞれ設けられている複数の画素を備え、
前記光電変換素子は、
第1電極と、
前記第1電極と対向配置された第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に設けられると共に、色素材料である第1の有機半導体材料、電子輸送性を有するn型半導体である第2の有機半導体材料および正孔輸送性を有するp型半導体である第3の有機半導体材料を含む光電変換層と、
前記第1電極と前記光電変換層との間に設けられた第1バッファ層と、
前記第2電極と前記光電変換層との間に設けられた第2バッファ層とを備え、
第2バッファ層は、前記光電変換層に含まれる材料として、前記第1の有機半導体材料と、前記第2の有機半導体材料または前記第3の有機半導体材料との2種を含み、
前記色素材料は、下記式(1-2)で表されるBODIPY色素B、下記式(1-3)で表されるBODIPY色素C、下記式(1-4)で表されるBODIPY色素D、下記式(2-1)で表されるサブフタロシアニン誘導体、下記式(3)で表されるメロシアニン誘導体、下記式(1-5)で表される亜鉛錯体および下記式(4-1)で表されるペリレン誘導体のうちのいずれかである
撮像素子。
【化2】
【請求項7】
各画素には、1または複数の前記有機光電変換部と、前記有機光電変換部とは異なる波長域の光電変換を行う1または複数の無機光電変換部とが積層されている、請求項6に記載の撮像素子。
【請求項8】
前記無機光電変換部は、半導体基板に埋め込み形成され、
前記有機光電変換部は、前記半導体基板の第1の面側に形成されている、請求項7に記載の撮像素子。
【請求項9】
前記半導体基板は前記第1の面と対向する第2の面を有し、前記第2の面側に多層配線層が形成されている、請求項8に記載の撮像素子。
【請求項10】
前記有機光電変換部は可視光領域の光電変換を行い、
前記無機光電変換部は赤外光領域の光電変換を行う、請求項7に記載の撮像素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば、有機材料を用いた光電変換素子およびこれを備えた撮像素子に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1では、対向する一対の電極と光電変換層との間に、それぞれ、電子ブロッキング層および正孔ブロッキング層が設けられた光電変換素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-236008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、有機光電変換素子では、耐熱性と電流特性との両立が求められている。
【0005】
耐熱性を向上させると共に電気特性を改善することが可能な光電変換素子および撮像素子を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態の光電変換素子は、第1電極と、第1電極と対向配置された第2電極と、第1電極と第2電極との間に設けられると共に、色素材料である第1の有機半導体材料、電子輸送性を有するn型半導体である第2の有機半導体材料および正孔輸送性を有するp型半導体である第3の有機半導体材料を含む光電変換層と、第1電極と光電変換層との間に設けられた第1バッファ層と、第2電極と光電変換層との間に設けられた第2バッファ層とを備えたものであり、第2バッファ層は、光電変換層に含まれる材料として、第1の有機半導体材料と、第2の有機半導体材料または第3の有機半導体材料との2種を含み、色素材料は、後述する式(1-2)で表されるBODIPY色素B、後述する式(1-3)で表されるBODIPY色素C、後述する式(1-4)で表されるBODIPY色素D、後述する式(2-1)で表されるサブフタロシアニン誘導体、後述する式(3)で表されるメロシアニン誘導体、後述する式(1-5)で表される亜鉛錯体および後述する式(4-1)で表されるペリレン誘導体のうちのいずれかである
【0007】
本開示の一実施形態の撮像素子は、複数の画素毎に、1または複数の上記本開示の一実施形態の光電変換素子を備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一実施形態の光電変換素子および一実施形態の撮像素子では、対向配置された第1電極と光電変換層との間に第1バッファ層を、第2電極と光電変換層との間に第2バッファ層をそれぞれ設け、第2バッファ層を、光電変換層に含まれる、色素材料である第1の有機半導体材料と、第2の有機半導体材料または第3の有機半導体材料との2種を用いて形成するようにした。これにより、光電変換層と第2バッファ層との接合状態を改善する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の一実施の形態に係る光電変換素子の構成を表す断面模式図である。
図2図1に示した光電変換素子の各層に含まれる材料のエネルギー準位の一例を表す図である。
図3図1に示した光電変換素子を備えた撮像素子の構成の一例を表す断面模式図である。
図4図3に示した撮像素子の単位画素の構成を表す平面模式図である。
図5図3に示した撮像素子の製造方法を説明するための断面模式図である。
図6図5に続く工程を表す断面模式図である。
図7図1に示した光電変換素子を備えた撮像素子の構成の他の例を表す断面模式図である。
図8図7に示した撮像素子の等価回路図である。
図9図1に示した撮像素子の下部電極および制御部を構成するトランジスタの配置を表す模式図である。
図10】本開示の変形例1に係る撮像素子の構成の一例を表す断面模式図である。
図11】本開示の変形例2に係る撮像素子の構成の一例を表す断面模式図である。
図12A】本開示の変形例3に係る撮像素子の構成の一例を表す断面模式図である。
図12B図12Aに示した撮像素子の平面構成を表す模式図である。
図13図3等に示した撮像素子の全体構成を表すブロック図である。
図14図13に示した撮像素子を用いた電子機器(カメラ)の一例を表す機能ブロック図である。
図15】内視鏡手術システムの概略的な構成の一例を示す図である。
図16】カメラヘッド及びCCUの機能構成の一例を示すブロック図である。
図17】車両制御システムの概略的な構成の一例を示すブロック図である。
図18】車外情報検出部及び撮像部の設置位置の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示における実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。以下の説明は本開示の一具体例であって、本開示は以下の態様に限定されるものではない。また、本開示は、各図に示す各構成要素の配置や寸法、寸法比等についても、それらに限定されるものではない。なお、説明する順序は、下記の通りである。
1.実施の形態(対向する一対の電極と光電変換層との間に、光電変換層に含まれる少なくとも2材料を含むバッファ層を設けた例)
1-1.光電変換素子の構成
1-2.撮像素子の構成例1
1-3.撮像素子の構成例2
1-4.作用・効果
2.変形例
2-1.変形例1(撮像素子の構成の他の例)
2-2.変形例2(撮像素子の構成の他の例)
3-2.変形例3(撮像素子の構成の他の例)
3.適用例
4.応用例
5.実施例
【0011】
<1.実施の形態>
図1は、本開示の一実施の形態の光電変換素子(光電変換素子10)の断面構成の一例を模式的に表したものである。光電変換素子10は、例えば、デジタルスチルカメラ、ビデオカメラ等の電子機器に用いられるCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等の撮像素子(撮像素子1、例えば図13参照)において1つの画素(単位画素P)を構成するものである。本実施の形態の光電変換素子10は、下部電極11、バッファ層12、光電変換層13、バッファ層14および上部電極15がこの順に積層されており、バッファ層12,14のどちらか一方または両方が、光電変換層13に含まれる2種類の材料を含んで形成されたものである。
【0012】
(1-1.光電変換素子の構成)
光電変換素子10は、選択的な波長帯域(例えば、400nm以上760nm以下の可視光領域)の波長の一部または全部に対応する光を吸収して電子正孔対を発生させるものである。後述する撮像素子(例えば、撮像素子1A、例えば図3参照)では、光電変換によって生じる電子正孔対のうち、例えば、正孔が信号電荷として下部電極11側から読み出される。以下では、信号電荷として正孔を読み出す場合を例に、各部の構成や材料等について説明する。
【0013】
下部電極11は、例えば、光透過性を有する導電膜により構成されている。下部電極11の構成材料としては、例えば、酸化インジウム錫(ITO)、ドーパントとしてスズ(Sn)を添加したIn23、結晶性ITOおよびアモルファスITOを含むインジウム錫酸化物が挙げられる。下部電極11の構成材料としては、上記以外にも、ドーパントを添加した酸化スズ(SnO2)系材料、あるいはドーパントを添加してなる酸化亜鉛系材料を用いてもよい。酸化亜鉛系材料としては、例えば、ドーパントとしてアルミニウム(Al)を添加したアルミニウム亜鉛酸化物(AZO)、ガリウム(Ga)を添加したガリウム亜鉛酸化物(GZO)、ホウ素(B)を添加したホウ素亜鉛酸化物およびインジウム(In)を添加したインジウム亜鉛酸化物(IZO)が挙げられる。また、下部電極11の構成材料としては、CuI、InSbO4、ZnMgO、CuInO2、MgIN24、CdO、ZnSnO3またはTiO2等を用いてもよい。更に、スピネル形酸化物やYbFe24構造を有する酸化物を用いてもよい。なお、上記のような材料を用いて形成された下部電極11は、一般に高仕事関数を有し、アノード電極として機能する。
【0014】
バッファ層12は、光電変換層13において発生した電荷のうち、正孔を選択的に下部電極11へ輸送すると共に、電子の下部電極11側への移動を阻害する、所謂電子ブロック層(pバッファ層)である。バッファ層12の厚みは、例えば0.5nm以上100nm以下であり、好ましくは、1nm以上50nm以下である。より好ましくは、3nm以上20nm以下である。バッファ層12の構成については、後述するバッファ層14と共に説明する。
【0015】
光電変換層13は、光エネルギーを電気エネルギーに変換するものである。光電変換層13は、例えば、400nm以上760nm以下の範囲の一部または全ての波長の光を吸収する。光電変換層13は、例えば、p型半導体またはn型半導体として機能する有機材料を2種以上含んで構成されており、層内に、p型半導体とn型半導体との接合面(p/n接合面)を有している。p型半導体は、相対的に電子供与体として機能するものであり、n型半導体は、相対的に電子受容体として機能するものである。光電変換層13は、光を吸収した際に生じる励起子(電子正孔対)が電子と正孔とに分離する場を提供するものであり、具体的には、電子正孔対は、電子供与体と電子受容体との界面(p/n接合面)において電子と正孔とに分離する。
【0016】
光電変換層13は、p型半導体およびn型半導体の他に、さらに、所定の波長帯域の光を吸収する一方、他の波長帯域の光を透過させる有機材料、所謂色素材料を含んで構成されている。光電変換層13をp型半導体、n型半導体および色素材料の3種類の有機材料を用いて形成する場合には、p型半導体およびn型半導体は、可視領域(例えば、400nm~760nm)において光透過性を有する材料であることが好ましい。これにより、光電変換層13では、色素材料が吸収する波長帯域の光が選択的に光電変換させるようになる。光電変換層13の厚みは、例えば25nm以上400nm以下であり、好ましくは、50nm以上350nm以下である。より好ましくは、150nm以上300nm以下である。
【0017】
本実施の形態では、光電変換層13は、色素材料として、例えば、二置換ホウ素原子と複合体を形成するジピロメテン骨格を有する下記一般式(1)で表される化合物を含んで形成されている。この一般式(1)で表される化合物は、例えば電子受容性を有し、例えば450nm以上650nm以下の光を吸収するBODIPY色素である。
【0018】
【化1】
(R1、R4は、各々独立して水素原子または重水素原子である。R2およびR3は、各々独立してアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基またはアリールエーテル基である。R5およびR6は、各々独立して水素原子、ハロゲン原子またはアルキル基である。R7はアリール基、ヘテロアリール基またはアルケニル基である。Mは、ホウ素、または、m価の金属原子であり、ゲルマニウム、ベリリウム、マグネシウム、アルミニウム、クロム、鉄、ニッケル、銅、亜鉛および白金から選ばれる少なくとも一種である。Lは、ハロゲン原子、水素原子、アルキル基、アリール基またはヘテロアリール基である。nは1以上6以下の整数であり、n-1が2以上の場合、各Lは、各々独立してハロゲン原子、水素原子、アルキル基、アリール基またはヘテロアリール基である。)
【0019】
色素材料としては、この他、下記一般式(2)で表されるサブフタロシアニンまたはその誘導体が挙げられる。
【0020】
【化2】
(R8~R19は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、直鎖,分岐,または環状アルキル基、チオアルキル基、チオアリール基、アリールスルホニル基、アルキルスルホニル基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシルアミノ基、アシルオキシ基、フェニル基、カルボキシ基、カルボキソアミド基、カルボアルコキシ基、アシル基、スルホニル基、シアノ基およびニトロ基からなる群から選択され、且つ、隣接した任意のR8~R19は縮合脂肪族環または縮合芳香環の一部であってもよい。縮合脂肪族環または縮合芳香環は、炭素以外の1または複数の原子を含んでいてもよい。Xは、ハロゲン、ヒドロキシ基、チオール基、イミド基、置換もしくは未置換のアルコキシ基、置換もしくは未置換のアリールオキシ基、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアルキルチオ基、置換もしくは未置換のアリールチオ基からなる群より選択されるいずれかの置換基である。)
【0021】
色素材料としては、さらに、例えば、下記一般式(4)で表されるペリレンまたはその誘導体が挙げられる。
【0022】
【化3】
(R20~R31は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、直鎖、分岐または環状アルキル基、チオアルキル基、チオアリール基、アリールスルホニル基、アルキルスルホニル基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシルアミノ基、アシルオキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、カルボキシ基、カルボキソアミド基、カルボアルコキシ基、アシル基、スルホニル基、シアノ基およびニトロ基から選択される。)
【0023】
色素材料としては、さらに、メロシアニンまたはその誘導体が挙げられる。
【0024】
この他、光電変換層13は、他の有機材料として、例えば、フラーレンC60またはその誘導体が挙げられる。更に、光電変換層13を構成する他の有機材料としては、例えば、ベンゾジチオフェン(BDT)を母骨格とするチオフェン誘導体やクリセン骨格を有するクリセン誘導体が挙げられる。上記有機材料は、その組み合わせによってp型半導体またはn型半導体として機能する。
【0025】
なお、光電変換層13は、上記材料以外の有機材料を含んでいてもよい。上記材料以外の有機材料としては、例えば、キナクリドン、ペンタセン、ベンゾチエノベンゾチオフェン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、テトラセン、ピレンおよびフルオランテンあるいはそれらの誘導体のうちのいずれか1種が好適に用いられる。あるいは、フェニレンビニレン、フルオレン、カルバゾール、インドール、ピロール、ピコリン、チオフェン、アセチレン、ジアセチレン等の重合体やそれらの誘導体を用いてもよい。加えて、金属錯体色素、シアニン系色素、フェニルキサンテン系色素、トリフェニルメタン系色素、ロダシアニン系色素、キサンテン系色素、大環状アザアヌレン系色素、アズレン系色素、ナフトキノン、アントラキノン系色素、アントラセンおよびピレン等の縮合多環芳香族、および、芳香環あるいは複素環化合物が縮合した鎖状化合物、または、スクアリリウム基およびクロコニツクメチン基を結合鎖として持つキノリン、ベンゾチアゾール、ベンゾオキサゾール等の二つの含窒素複素環、または、スクアリリウム基およびクロコニツクメチン基により結合したシアニン系類似の色素等を好ましく用いることができる。なお、上記金属錯体色素としては、ジチオール金属錯体系色素、金属フタロシアニン色素、金属ポルフィリン色素、またはルテニウム錯体色素が好ましいが、これに限定されるものではない。
【0026】
バッファ層14は、光電変換層13において発生した電荷のうち、電子を選択的に上部電極15へ輸送すると共に、正孔の上部電極15側への移動を阻害する、所謂正孔ブロック層(nバッファ層)である。バッファ層14の厚みは、例えば0.5nm以上100nm以下であり、好ましくは、1nm以上50nm以下である。より好ましくは、3nm以上20nm以下である。
【0027】
本実施の形態では、バッファ層12,14のうちの一方または両方が光電変換層13に含まれる2種類以上の材料を含んで形成されている。これにより、光電変換層13と、バッファ層12,14との親和性が向上し、耐熱性が向上する。バッファ層12,14を構成する具体的な2材料としては、例えば下記組み合わせが挙げられる。
【0028】
バッファ層12,14を構成する、光電変換層13に含まれる1材料としては、例えば、色素材料を用いることが好ましい。具体的な色素材料としては、BODIPY色素、サブフタロシアニンまたはその誘導体、ジピロメテン配位子を有する金属錯体、メロシアニンまたはその誘導体およびペリレンまたはその誘導体が挙げられる。このうち、さらに、分子量が500以上の材料を用いることが好ましい。
【0029】
バッファ層12,14を構成する、光電変換層13に含まれる他の1材料としては、p型半導体またはn型半導体が挙げられる。具体的には、電子ブロック層として機能するバッファ層12は、上記色素材料と、光電変換層13に含まれる、例えばp型半導体とを用いて形成することができる。正孔ブロック層として機能するバッファ層14は、上記色素材料と、光電変換層13に含まれる、例えばn型半導体とを用いて形成することができる。
【0030】
バッファ層12,14は、それぞれ、上記2材料以外の材料をさらに含んでいてもよい。
【0031】
また、本技術は、例えば後述する撮像素子1B(例えば、図7参照)のように、信号電荷として電子が下部電極11側から読み出される場合にも適用することができる。その場合には、下部電極11側のバッファ層12は、正孔ブロック層(nバッファ層)として構成され、上部電極15側のバッファ層14は、電子ブロック層(pバッファ層)として構成される。その際には、バッファ層12は、光電変換層13に含まれる材料のうち、フラーレンC60またはその誘導体を用いることが好ましい。これにより、バッファ層12における電子の移動度が向上し、光電変換層13において発生した電子の下部電極11側への移動が促進される。
【0032】
上記のようにバッファ層12を構成する材料としてフラーレンC60またはその誘導体を用いる場合、バッファ層12を構成する、光電変換層13に含まれる他の材料としては、例えば、図2に示したようなエネルギー準位を有する材料を用いることが好ましい。具体的には、他の材料は、下部電極11の仕事関数とのエネルギー差が1.4eV以上であり、且つ、6.2eVよりも深いHighest Occupied Molecular Orbital(HOMO)準位を有する材料を用いることが好ましい。これにより、下部電極11からの正孔の侵入を防ぐことが可能となる。
【0033】
更に、上記のようにバッファ層12を構成する材料としてフラーレンC60またはその誘導体を用いる場合の他の材料は、フラーレンC60またはその誘導体のLowest Unoccupied Molecular Orbital(LUMO)準位とのエネルギー差が1.7eV以上であり、且つ、フラーレンC60またはその誘導体のHOMO準位よりも浅いHOMO準位を有する材料を用いることが好ましい。これにより、バッファ層12内での電荷の生成が低減される。あるいは、他の材料は、フラーレンC60またはその誘導体とのLUMO準位の差が0以上0.5eV以下の材料を用いることが好ましい。これにより、バッファ層12内における電荷(電子)のトラップを低減することが可能となる。
【0034】
なお、バッファ層12を構成する材料としてフラーレンC60またはその誘導体を用いる場合の上述した他の材料は、光電変換層13に含まれる材料であってもよいし、光電変換層13に含まれない材料であってもよい。他の材料が光電変換層13に含まれる材料である場合には、例えば、上記色素材料が挙げられる。他の材料が光電変換層13に含まれない材料である場合には、バッファ層12は、フラーレンC60またはその誘導体と、この他の材料の他に、光電変換層13に含まれる材料を少なくとも1種をさらに含んで形成される。
【0035】
上部電極15は、下部電極11と同様に光透過性を有する導電膜により構成されている。光電変換素子10を1つの画素として用いる撮像素子1では、上部電極15は画素毎に分離されていてもよいし、各画素に共通の電極として形成されていてもよい。上部電極15の厚みは、例えば10nm~200nmである。
【0036】
なお、光電変換層13と下部電極11との間、光電変換層13と上部電極15との間には、他の層がさらに設けられていてもよい。例えば、下部電極11と光電変換層13との間には、バッファ層12の他に下引き層や正孔輸送層を設けるようにしてもよい。光電変換層13と上部電極15との間には、バッファ層14の他に仕事関数調整層や電子輸送層を設けるようにしてもよい。
【0037】
(1-2.撮像素子の構成例1)
図3は、上述した光電変換素子10を用いた撮像素子の断面構成の一例(撮像素子1A)を模式的に表したものである。この撮像素子1Aは、互いに異なる波長域の光を選択的に検出して光電変換を行う1つの有機光電変換部と、2つの無機光電変換部32B,32Rとが縦方向に積層された、所謂縦方向分光型のものである。上述した光電変換素子10は、有機光電変換部として用いられている。以下では、有機光電変換部は上述した光電変換素子10と同様の構成を有するものとして同じ符号10を付して説明する。
【0038】
撮像素子1Aでは、有機光電変換部10は、半導体基板30の裏面(第1面30S1)側に設けられている。無機光電変換部32B,32Rは、半導体基板30内に埋め込み形成されており、半導体基板30の厚み方向に積層されている。
【0039】
有機光電変換部10と、無機光電変換部32B,32Rとは、互いに異なる波長帯域の光を選択的に検出して光電変換を行うものである。例えば、有機光電変換部10では、緑(G)の色信号を取得する。無機光電変換部32B,32Rでは、吸収係数の違いにより、それぞれ、青(B)および赤(R)の色信号を取得する。これにより、撮像素子1Aでは、カラーフィルタを用いることなく一つの画素において複数種類の色信号を取得可能となっている。
【0040】
なお、撮像素子1Aでは、光電変換によって生じる電子正孔対のうち、正孔を信号電荷として読み出す場合(p型半導体領域を光電変換層とする場合)について説明する。また、図中において、「p」「n」に付した「+(プラス)」は、p型またはn型の不純物濃度が高いことを表している。
【0041】
半導体基板30は、例えば、n型のシリコン(Si)基板により構成され、所定領域にpウェル31を有している。pウェル31の第2面(半導体基板30の表面)30S2には、例えば、各種フローティングディフュージョン(浮遊拡散層)FD(例えば、FD1,FD2,FD3)と、各種トランジスタTr(例えば、縦型トランジスタ(転送トランジスタ)Tr2、転送トランジスタTr3、アンプトランジスタ(変調素子)AMPおよびリセットトランジスタRST)と、多層配線層40とが設けられている。多層配線層40は、例えば、配線層41,42,43を絶縁層44内に積層した構成を有している。また、半導体基板30の周辺部には、ロジック回路等からなる周辺回路(図示せず)が設けられている。
【0042】
なお、図3では、半導体基板30の第1面30S1側を光入射面S1、第2面30S2側を配線層側S2と表している。
【0043】
無機光電変換部32B,32Rは、例えばPIN(Positive Intrinsic Negative)型のフォトダイオードによって構成されており、それぞれ、半導体基板30の所定領域にpn接合を有する。無機光電変換部32B,32Rは、シリコン基板において光の入射深さに応じて吸収される波長帯域が異なることを利用して縦方向に光を分光することを可能としたものである。
【0044】
無機光電変換部32Bは、青色光を選択的に検出して青色に対応する信号電荷を蓄積させるものであり、青色光を効率的に光電変換可能な深さに設置されている。無機光電変換部32Rは、赤色光を選択的に検出して赤色に対応する信号電荷を蓄積させるものであり、赤色光を効率的に光電変換可能な深さに設置されている。なお、青(B)は、例えば450nm~495nmの波長帯域、赤(R)は、例えば620nm~760nmの波長帯域にそれぞれ対応する色である。無機光電変換部32B,32Rはそれぞれ、各波長帯域のうちの一部または全部の波長帯域の光を検出可能となっていればよい。
【0045】
無機光電変換部32Bおよび無機光電変換部32Rは、具体的には、図3に示したように、それぞれ、例えば、正孔蓄積層となるp+領域と、電子蓄積層となるn領域とを有する(p-n-pの積層構造を有する)。無機光電変換部32Bのn領域は、縦型トランジスタTr2に接続されている。無機光電変換部32Bのp+領域は、縦型トランジスタTr2に沿って屈曲し、無機光電変換部32Rのp+領域につながっている。
【0046】
縦型トランジスタTr2は、無機光電変換部32Bにおいて発生し、蓄積された、青色に対応する信号電荷(ここでは正孔)を、フローティングディフュージョンFD2に転送する転送トランジスタである。無機光電変換部32Bは半導体基板30の第2面30S2から深い位置に形成されているので、無機光電変換部32Bの転送トランジスタは縦型トランジスタTr2により構成されていることが好ましい。
【0047】
転送トランジスタTr3は、無機光電変換部32Rにおいて発生し、蓄積された赤色に対応する信号電荷(ここでは正孔)を、フローティングディフュージョンFD3に転送するものであり、例えばMOSトランジスタにより構成されている。
【0048】
アンプトランジスタAMPは、有機光電変換部10で生じた電荷量を電圧に変調する変調素子であり、例えばMOSトランジスタにより構成されている。
【0049】
リセットトランジスタRSTは、有機光電変換部10からフローティングディフュージョンFD1に転送された電荷をリセットするものであり、例えばMOSトランジスタにより構成されている。
【0050】
下部第1コンタクト45、下部第2コンタクト46および上部コンタクト13Bは、例えば、PDAS(Phosphorus Doped Amorphous Silicon)等のドープされたシリコン材料、または、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、チタン(Ti)、コバルト(Co)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)等の金属材料により構成されている。
【0051】
半導体基板30の第1面30S1側には、有機光電変換部10が設けられている。撮像素子1Aでは、下部電極11は、例えば、単位画素Pごとに分離形成されている。バッファ層12、光電変換層13、バッファ層14および上部電極15は、複数の単位画素P(例えば、図13に示した撮像素子1の画素部1a)に共通した連続層として設けられている。
【0052】
半導体基板30の第1面30S1と下部電極11との間には、例えば、絶縁膜26,27および層間絶縁層28が、半導体基板30側からこの順に積層されている。上部電極15の上には、保護層51が設けられている。保護層51の上方には、オンチップレンズ52Lを構成すると共に、平坦化層を兼ねるオンチップレンズ層52が配設されている。
【0053】
半導体基板30の第1面30S1と第2面30S2との間には、貫通電極34が設けられている。有機光電変換部10は、この貫通電極34を介して、アンプトランジスタAMPのゲートGampと、フローティングディフュージョンFD1とに接続されている。これにより、有機光電変換部10では、半導体基板30の第1面30S1側の有機光電変換部10で生じた電荷(正孔)を、貫通電極34を介して半導体基板30の第2面30S2側に良好に転送し、特性を高めることが可能となっている。
【0054】
貫通電極34は、例えば単位画素Pごとに、それぞれ設けられている。貫通電極34は、有機光電変換部10とアンプトランジスタAMPのゲートGampおよびフローティングディフュージョンFD1とのコネクタとしての機能を有すると共に、有機光電変換部10において生じた電荷の伝送経路となるものである。
【0055】
貫通電極34の下端は、例えば、配線層41内の接続部41Aに接続されており、接続部41Aと、アンプトランジスタAMPのゲートGampとは、下部第1コンタクト45を介して接続されている。接続部41Aと、フローティングディフュージョンFD1とは、下部第2コンタクト46を介して下部電極11に接続されている。なお、図1では、貫通電極34を円柱形状として示したが、これに限らず、例えばテーパ形状としてもよい。
【0056】
フローティングディフュージョンFD1の隣には、図3に示したように、リセットトランジスタRSTのリセットゲートGrstが配置されていることが好ましい。これにより、フローティングディフュージョンFD1に蓄積された電荷を、リセットトランジスタRSTによりリセットすることが可能となる。
【0057】
本実施の形態の有機光電変換部10では、上部電極15側から撮像素子1Aに入射した光は光電変換層13で吸収される。これによって生じた励起子は、光電変換層13を構成する電子供与体と電子受容体との界面に移動し、励起子分離、即ち、電子と正孔とに解離する。ここで発生した電荷(電子および正孔)は、キャリアの濃度差による拡散や、陽極(ここでは、下部電極11)と陰極(ここでは、上部電極15)との仕事関数の差による内部電界によって、それぞれ異なる電極へ運ばれ、光電流として検出される。また、下部電極11と上部電極15との間に電位を印加することによって、電子および正孔の輸送方向を制御することができる。
【0058】
絶縁膜26は、正の固定電荷を有する膜でもよいし、負の固定電荷を有する膜でもよい。負の固定電荷を有する膜の材料としては、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化アルミニウム(Al23)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化タンタル(Ta25)、酸化チタン(TiO2)等が挙げられる。また上記以外の材料としては酸化ランタン、酸化プラセオジム、酸化セリウム、酸化ネオジム、酸化プロメチウム、酸化サマリウム、酸化ユウロピウム、酸化ガドリニウム、酸化テルビウム、酸化ジスプロシウム、酸化ホルミウム、酸化ツリウム、酸化イッテルビウム、酸化ルテチウム、酸化イットリウム、窒化アルミニウム膜、酸窒化ハフニウム膜または酸窒化アルミニウム膜等を用いてもよい。
【0059】
絶縁膜26は、2種類以上の膜を積層した構成を有していてもよい。それにより、例えば負の固定電荷を有する膜の場合には正孔蓄積層としての機能をさらに高めることが可能である。
【0060】
絶縁膜27の材料は特に限定されないが、例えば、シリコン酸化膜、TEOS膜、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜等によって形成されている。
【0061】
層間絶縁層28は、例えば、酸化シリコン(SiO)、窒化シリコン(SiN)および酸窒化シリコン(SiON)等のうちの1種よりなる単層膜か、あるいはこれらのうちの2種以上よりなる積層膜により構成されている。
【0062】
保護層51は、光透過性を有する材料により構成され、例えば、酸化シリコン、窒化シリコンおよび酸窒化シリコン等のうちのいずれかよりなる単層膜、あるいはそれらのうちの2種以上よりなる積層膜により構成されている。この保護層51の厚みは、例えば、100nm~30000nmである。
【0063】
保護層51上には、全面を覆うように、オンチップレンズ層52が形成されている。オンチップレンズ層52の表面には、複数のオンチップレンズ52L(マイクロレンズ)が設けられている。オンチップレンズ52Lは、その上方から入射した光を、有機光電変換部10、無機光電変換部32B,32Rの各受光面へ集光させるものである。本実施の形態では、多層配線層40が半導体基板30の第2面30S2側に形成されていることから、有機光電変換部10、無機光電変換部32B,32Rの各受光面を互いに近づけて配置することができ、オンチップレンズ52LのF値に依存して生じる各色間の感度のばらつきを低減することができる。
【0064】
図4は、本開示に係る技術を適用し得る複数の光電変換部(例えば、上記無機光電変換部32B,32Rおよび有機光電変換部10)が積層された撮像素子1Aの構成例を示した平面図である。即ち、図4は、例えば、図13に示した画素部1aを構成する単位画素Pの平面構成の一例を表したものである。
【0065】
単位画素Pは、R(Red)、G(Green)およびB(Blue)のそれぞれの波長の光を光電変換する赤色光電変換部(図3における無機光電変換部32R)、青色光電変換部(図3における無機光電変換部32B)および緑色光電変換部(図3における有機光電変換部10)(図4では、いずれも図示せず)が、例えば、受光面(図3における光入射面S1)側から、緑色光電変換部、青色光電変換部および赤色光電変換部の順番で3層に積層された光電変換領域1100を有する。更に、単位画素Pは、RGBのそれぞれの波長の光に対応する電荷を、赤色光電変換部、緑色光電変換部および青色光電変換部から読み出す電荷読み出し部としてのTr群1110、Tr群1120およびTr群1130を有する。撮像素子1では、1つの単位画素Pにおいて、縦方向の分光、即ち、光電変換領域1100に積層された赤色光電変換部、緑色光電変換部および青色光電変換部としての各層で、RGBのそれぞれの光の分光が行われる。
【0066】
Tr群1110、Tr群1120およびTr群1130は、光電変換領域1100の周辺に形成されている。Tr群1110は、赤色光電変換部で生成、蓄積されたRの光に対応する信号電荷を画素信号として出力する。Tr群1110は、転送Tr(MOS FET)1111、リセットTr1112、増幅Tr1113および選択Tr1114で構成されている。Tr群1120は、青色光電変換部で生成、蓄積されたBの光に対応する信号電荷を画素信号として出力する。Tr群1120は、転送Tr1121、リセットTr1122、増幅Tr1123および選択Tr1124で構成されている。Tr群1130は、緑色光電変換部で生成、蓄積されたGの光に対応する信号電荷を画素信号として出力する。Tr群1130は、転送Tr1131、リセットTr1132、増幅Tr1133および選択Tr1134で構成されている。
【0067】
転送Tr1111は、ゲートG、ソース/ドレイン領域S/DおよびFD(フローティングディフュージョン)1115(となっているソース/ドレイン領域)によって構成されている。転送Tr1121は、ゲートG、ソース/ドレイン領域S/D、および、FD2125によって構成される。転送Tr1131は、ゲートG、光電変換領域1100のうちの緑色光電変換部(と接続しているソース/ドレイン領域S/D)およびFD2135によって構成されている。なお、転送Tr1111のソース/ドレイン領域は、光電変換領域1100のうちの赤色光電変換部に接続され、転送Tr1121のソース/ドレイン領域S/Dは、光電変換領域1100のうちの青色光電変換部に接続されている。
【0068】
リセットTr1112、1132および1122、増幅Tr1113、1133および1123ならびに選択Tr1114、1134および1124は、いずれもゲートGと、そのゲートGを挟むような形に配置された一対のソース/ドレイン領域S/Dとで構成されている。
【0069】
FD2115、1135および1125は、リセットTr1112、1132および1122のソースになっているソース/ドレイン領域S/Dにそれぞれ接続されると共に、増幅Tr1113、1133および1123のゲートGにそれぞれ接続されている。リセットTr1112および増幅Tr1113、リセットTr1132および増幅Tr1133ならびにリセットTr1122および増幅Tr1123のそれぞれにおいて共通のソース/ドレイン領域S/Dには、電源Vddが接続されている。選択Tr1114、1134および1124のソースになっているソース/ドレイン領域S/Dには、VSL(垂直信号線)が接続されている。
【0070】
図3に示した撮像素子1Aは、例えば、次のようにして製造することができる。
【0071】
図5および図6は、撮像素子1Aの製造方法を工程順に表したものである。まず、図5に示したように、半導体基板30内に、第1の導電型のウェルとして例えばpウェル31を形成し、このpウェル31内に第2の導電型(例えばn型)の無機光電変換部32B,32Rを形成する。半導体基板30の第1面30S1近傍にはp+領域を形成する。
【0072】
半導体基板30の第2面30S2には、同じく図5に示したように、フローティングディフュージョンFD1~FD3となるn+領域を形成したのち、ゲート絶縁層62と、縦型トランジスタTr2、転送トランジスタTr3、アンプトランジスタAMPおよびリセットトランジスタRSTの各ゲートを含むゲート配線層64とを形成する。これにより、縦型トランジスタTr2、転送トランジスタTr3、アンプトランジスタAMPおよびリセットトランジスタRSTが形成される。更に、半導体基板30の第2面30S2上に、下部第1コンタクト45、下部第2コンタクト46、接続部41Aを含む配線層41,43,43および絶縁層44からなる多層配線層40を形成する。
【0073】
半導体基板30の基体としては、例えば、半導体基板30と、埋込み酸化膜(図示せず)と、保持基板(図示せず)とを積層したSOI(Silicon on Insulator)基板を用いる。埋込み酸化膜および保持基板は、図5には図示しないが、半導体基板30の第1面30S1に接合されている。イオン注入後、アニール処理を行う。
【0074】
次いで、半導体基板30の第2面30S2側(多層配線層40側)に支持基板(図示せず)または他の半導体基板等を接合して、上下反転する。続いて、半導体基板30をSOI基板の埋込み酸化膜および保持基板から分離し、半導体基板30の第1面30S1を露出させる。以上の工程は、イオン注入およびCVD(Chemical Vapor Deposition)等、通常のCMOSプロセスで使用されている技術にて行うことが可能である。
【0075】
次いで、図6に示したように、例えばドライエッチングにより半導体基板30を第1面30S1側から加工し、環状の開口30Hを形成する。開口30Hの深さは、図6に示したように、半導体基板30の第1面30S1から第2面30S2まで貫通すると共に、例えば、接続部41Aまで達するものである。
【0076】
続いて、図6に示したように、半導体基板30の第1面30S1および開口30Hの側面に、例えば絶縁膜26を形成する。絶縁膜26として、2種類以上の膜を積層してもよい。それにより、正孔蓄積層としての機能をより高めることが可能となる。絶縁膜26を形成したのち、絶縁膜27を形成する。
【0077】
次に、開口30Hに、導電体を埋設して貫通電極34を形成する。導電体としては、例えば、PDAS(Phosphorus Doped Amorphous Silicon)等のドープされたシリコン材料の他、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、チタン(Ti)、コバルト(Co)、ハフニウム(Hf)およびタンタル(Ta)等の金属材料を用いることができる。
【0078】
続いて、絶縁膜27および貫通電極34上に、下部電極11と貫通電極34とを電気的に接続する上部第1コンタクト29A、パッド部39A、上部第2コンタクト29Bおよびパッド部39Bが貫通電極34上に設けられた層間絶縁層28を形成する。
【0079】
その後、層間絶縁層28上に、下部電極11、バッファ層12、光電変換層13、バッファ層14、上部電極15および保護層51をこの順に形成する。バッファ層12、光電変換層13およびバッファ層14は、例えば、例えば真空蒸着法を用いて成膜することができる。最後に、表面に複数のオンチップレンズ52Lを有するオンチップレンズ層52を配設する。以上により、図1に示した撮像素子1Aが完成する。
【0080】
なお、バッファ層12、光電変換層13およびバッファ層14の成膜方法としては、必ずしも真空蒸着法を用いた手法に限らず、他の手法、例えば、スピンコート技術やプリント技術等を用いてもよい。
【0081】
撮像素子1Aでは、有機光電変換部10に、オンチップレンズ52Lを介して光が入射すると、その光は、有機光電変換部10、無機光電変換部32B,32Rの順に通過し、その通過過程において緑(G)、青(B)、赤(R)の色光毎に光電変換される。以下、各色の信号取得動作について説明する。
【0082】
(有機光電変換部10による緑色信号の取得)
撮像素子1Aへ入射した光のうち、まず、緑色光が、有機光電変換部10において選択的に検出(吸収)され、光電変換される。
【0083】
有機光電変換部10は、貫通電極34を介して、アンプトランジスタAMPのゲートGampとフローティングディフュージョンFD1とに接続されている。よって、有機光電変換部10で発生した電子正孔対のうちの正孔が、下部電極11側から取り出され、貫通電極34を介して半導体基板30の第2面30S2側へ転送され、フローティングディフュージョンFD1に蓄積される。これと同時に、アンプトランジスタAMPにより、有機光電変換部10で生じた電荷量が電圧に変調される。
【0084】
また、フローティングディフュージョンFD1の隣には、リセットトランジスタRSTのリセットゲートGrstが配置されている。これにより、フローティングディフュージョンFD1に蓄積された電荷は、リセットトランジスタRSTによりリセットされる。
【0085】
ここでは、有機光電変換部10が、貫通電極34を介して、アンプトランジスタAMPだけでなくフローティングディフュージョンFD1にも接続されているので、フローティングディフュージョンFD1に蓄積された電荷をリセットトランジスタRSTにより容易にリセットすることが可能となる。
【0086】
これに対して、貫通電極34とフローティングディフュージョンFD1とが接続されていない場合には、フローティングディフュージョンFD1に蓄積された電荷をリセットすることが困難となり、大きな電圧をかけて上部電極15側へ引き抜くことになる。そのため、光電変換層13がダメージを受けるおそれがある。また、短時間でのリセットを可能とする構造は暗時ノイズの増大を招き、トレードオフとなるため、この構造は困難である。
【0087】
(無機光電変換部32B,32Rによる青色信号,赤色信号の取得)
続いて、有機光電変換部10を透過した光のうち、青色光は無機光電変換部32B、赤色光は無機光電変換部32Rにおいて、それぞれ順に吸収され、光電変換される。無機光電変換部32Bでは、入射した青色光に対応した電子が無機光電変換部32Bのn領域に蓄積され、蓄積された電子は、縦型トランジスタTr2によりフローティングディフュージョンFD2へと転送される。同様に、無機光電変換部32Rでは、入射した赤色光に対応した電子が無機光電変換部32Rのn領域に蓄積され、蓄積された電子は、転送トランジスタTr3によりフローティングディフュージョンFD3へと転送される。
【0088】
(1-3.撮像素子の構成例2)
図7は、上述した有機光電変換部10を用いた撮像素子の断面構成の他の例(撮像素子1B)を模式的に表したものである。図8は、図7に示した撮像素子1Bの等価回路図である。図9は、図7に示した撮像素子1Bの下部電極11および制御部を構成するトランジスタの配置を模式的に表したものである。上述した有機光電変換部10は、図3に示した撮像素子1Aの他に、図7に示した撮像素子1Bの有機光電変換部として用いることができる。
【0089】
撮像素子1Bでは、有機光電変換部10は、下部電極11が複数の電極(例えば、読み出し電極11Aおよび蓄積電極11Bの2つ)からなり、下部電極11とバッファ層12との間には、例えば、絶縁層16および半導体層17がこの順に積層されている。下部電極11のうち、読み出し電極11Aは、絶縁層16に設けられた開口16Hを介して半導体層17と電気的に接続されている。撮像素子1Bでは、例えば、光電変換によって生じる電子正孔対のうち、電子が信号電荷として読み出される。
【0090】
下部電極11は、上記のように、分離形成された読み出し電極11Aと蓄積電極11Bとから構成されている。読み出し電極11Aは、光電変換層13内で発生した電荷をフローティングディフュージョンFD1に転送するためのものであり、例えば、上部第2コンタクト29B、パッド部39A、上部第1コンタクト29A、貫通電極34、接続部41Aおよび下部第2コンタクト46を介してフローティングディフュージョンFD1に接続されている。蓄積電極11Bは、光電変換層13内で発生した電荷のうち、電子を信号電荷として半導体層17内に蓄積するためのものである。蓄積電極11Bは、半導体基板30内に形成された無機光電変換部32B,32Rの受光面と正対して、これらの受光面を覆う領域に設けられている。蓄積電極11Bは、読み出し電極11Aよりも大きいことが好ましく、これにより、多くの電荷を蓄積することができる。蓄積電極11Bには、図9に示したように、配線を介して電圧印加回路60が接続されている。
【0091】
絶縁層16は、蓄積電極11Bと半導体層17とを電気的に分離するためのものである。絶縁層16は、下部電極11を覆うように、例えば、層間絶縁層28上に設けられている。また、絶縁層16には、下部電極11のうち、読み出し電極11A上に開口22Hが設けられており、この開口22Hを介して、読み出し電極11Aと半導体層17とが電気的に接続されている。絶縁層16は、例えば、酸化シリコン、窒化シリコンおよび酸窒化シリコン等のうちの1種よりなる単層膜か、あるいはこれらのうちの2種以上よりなる積層膜により構成されている。絶縁層16の厚みは、例えば、20nm~500nmである。
【0092】
半導体層17は、光電変換層13の下層、具体的には、絶縁層16とバッファ層12との間に設けられ、光電変換層13で発生した信号電荷を蓄積するためのものである。半導体層17は、光電変換層13よりも電荷の移動度が高く、且つ、バンドギャップが大きな材料を用いて形成されていることが好ましい。例えば、半導体層17の構成材料のバンドギャップは、3.0eV以上であることが好ましい。このような材料としては、例えば、IGZO等の酸化物半導体材料および有機半導体材料等が挙げられる。有機半導体材料としては、例えば、遷移金属ダイカルコゲナイド、シリコンカーバイド、ダイヤモンド、グラフェン、カーボンナノチューブ、縮合多環炭化水素化合物および縮合複素環化合物等が挙げられる。半導体層17の厚みは、例えば10nm以上300nm以下である。上記材料によって構成された半導体層17を下部電極11と光電変換層13との間に設けることにより、電荷蓄積時における電荷の再結合を防止し、転送効率を向上させることが可能となる。
【0093】
半導体基板30には、撮像素子1Aと同様に、pウェル31の第2面30S2には、転送トランジスタTr2(転送トランジスタTR2trs),Tr3(転送トランジスタTR3trs)と、アンプトランジスタAMPと、リセットトランジスタRST(リセットトランジスタTr1rst)と、選択トランジスタSEL(選択トランジスタTR1sel)等が設けられている。
【0094】
リセットトランジスタRST(リセットトランジスタTr1rst)は、リセットゲートGrstと、チャネル形成領域36Aと、ソース/ドレイン領域36B,36Cとから構成されている。リセットゲートGrstは、リセット線RST1に接続され、リセットトランジスタTr1rstの一方のソース/ドレイン領域36Bは、フローティングディフュージョンFD1を兼ねている。リセットトランジスタTr1rstを構成する他方のソース/ドレイン領域36Cは、電源線VDDに接続されている。
【0095】
アンプトランジスタAMPは、ゲートGampと、チャネル形成領域35Aと、ソース/ドレイン領域35B,35Cとから構成されている。ゲートGampは、下部第1コンタクト45、接続部41A、下部第2コンタクト46および貫通電極34等を介して、読み出し電極21AおよびリセットトランジスタTr1rstの一方のソース/ドレイン領域36B(フローティングディフュージョンFD1)に接続されている。また、一方のソース/ドレイン領域35Bは、リセットトランジスタTr1rstを構成する他方のソース/ドレイン領域36Cと、領域を共有しており、電源線VDDに接続されている。
【0096】
選択トランジスタSEL(選択トランジスタTR1sel)は、ゲートGselと、チャネル形成領域34Aと、ソース/ドレイン領域34B,34Cとから構成されている。ゲートGselは、選択線SEL1に接続されている。一方のソース/ドレイン領域34Bは、アンプトランジスタAMPを構成する他方のソース/ドレイン領域35Cと、領域を共有しており、他方のソース/ドレイン領域34Cは、信号線(データ出力線)VSL1に接続されている。
【0097】
転送トランジスタTr2(転送トランジスタTR2trs)は、無機光電変換部32Bにおいて発生し、蓄積された青色に対応する信号電荷を、フローティングディフュージョンFD2に転送するためのものであり、転送ゲート線TG2に接続されている。転送トランジスタTR2trsのゲートGtrs2の近傍の領域37Cには、フローティングディフュージョンFD2が設けられている。無機光電変換部32Bに蓄積された電荷は、ゲートGtrs2に沿って形成される転送チャネルを介してフローティングディフュージョンFD2に読み出される。
【0098】
転送トランジスタTr3(転送トランジスタTR3trs)は、無機光電変換部32Rにおいて発生し、蓄積された赤色に対応する信号電荷を、フローティングディフュージョンFD3に転送するためのものであり、転送ゲート線TG3に接続されている。転送トランジスタTR3trsのゲートGtrs3の近傍の領域38Cには、フローティングディフュージョンFD3が設けられている。無機光電変換部32Rに蓄積された電荷は、ゲートGtrs3に沿って形成される転送チャネルを介してフローティングディフュージョンFD3に読み出される。
【0099】
半導体基板30の第2面30S2側には、さらに、無機光電変換部32Bの制御部を構成するリセットトランジスタTR2rstと、アンプトランジスタTR2ampと、選択トランジスタTR2selとが設けられている。更に、無機光電変換部32Rの制御部を構成するリセットトランジスタTR3rstと、アンプトランジスタTR3ampおよび選択トランジスタTR3selが設けられている。
【0100】
リセットトランジスタTR2rstは、ゲート、チャネル形成領域およびソース/ドレイン領域から構成されている。リセットトランジスタTR2rstのゲートはリセット線RST2に接続され、リセットトランジスタTR2rstの一方のソース/ドレイン領域は電源線VDDに接続されている。リセットトランジスタTR2rstの他方のソース/ドレイン領域は、フローティングディフュージョンFD2を兼ねている。
【0101】
アンプトランジスタTR2ampは、ゲート、チャネル形成領域およびソース/ドレイン領域から構成されている。ゲートは、リセットトランジスタTR2rstの他方のソース/ドレイン領域(フローティングディフュージョンFD2)に接続されている。アンプトランジスタTR2ampを構成する一方のソース/ドレイン領域は、リセットトランジスタTR2rstを構成する一方のソース/ドレイン領域と領域を共有しており、電源線VDDに接続されている。
【0102】
選択トランジスタTR2selは、ゲート、チャネル形成領域およびソース/ドレイン領域から構成されている。ゲートは、選択線SEL2に接続されている。選択トランジスタTR2selを構成する一方のソース/ドレイン領域は、アンプトランジスタTR2ampを構成する他方のソース/ドレイン領域と領域を共有している。選択トランジスタTR2selを構成する他方のソース/ドレイン領域は、信号線(データ出力線)VSL2に接続されている。
【0103】
リセットトランジスタTR3rstは、ゲート、チャネル形成領域およびソース/ドレイン領域から構成されている。リセットトランジスタTR3rstのゲートはリセット線RST3に接続され、リセットトランジスタTR3rstを構成する一方のソース/ドレイン領域は電源線VDDに接続されている。リセットトランジスタTR3rstを構成する他方のソース/ドレイン領域は、フローティングディフュージョンFD3を兼ねている。
【0104】
アンプトランジスタTR3ampは、ゲート、チャネル形成領域およびソース/ドレイン領域から構成されている。ゲートは、リセットトランジスタTR3rstを構成する他方のソース/ドレイン領域(フローティングディフュージョンFD3)に接続されている。アンプトランジスタTR3ampを構成する一方のソース/ドレイン領域は、リセットトランジスタTR3rstを構成する一方のソース/ドレイン領域と、領域を共有しており、電源線VDDに接続されている。
【0105】
選択トランジスタTR3selは、ゲート、チャネル形成領域およびソース/ドレイン領域から構成されている。ゲートは、選択線SEL3に接続されている。選択トランジスタTR3selを構成する一方のソース/ドレイン領域は、アンプトランジスタTR3ampを構成する他方のソース/ドレイン領域と、領域を共有している。選択トランジスタTR3selを構成する他方のソース/ドレイン領域は、信号線(データ出力線)VSL3に接続されている。
【0106】
リセット線RST1,RST2,RST3、選択線SEL1,SEL2,SEL3、転送ゲート線TG2,TG3は、それぞれ、駆動回路を構成する垂直駆動回路に接続されている。信号線(データ出力線)VSL1,VSL2,VSL3は、駆動回路を構成するカラム信号処理回路に接続されている。
【0107】
下部第1コンタクト45、下部第2コンタクト46、上部第1コンタクト29A、上部第2コンタクト29Bおよび上部第3コンタクト29Cは、例えば、PDAS(Phosphorus Doped Amorphous Silicon)等のドープされたシリコン材料、または、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、チタン(Ti)、コバルト(Co)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)等の金属材料により構成されている。
【0108】
(1-4.作用・効果)
本実施の形態の光電変換素子10は、対向配置された下部電極11および上部電極15と光電変換層13との間に、それぞれ、光電変換層13に含まれる材料を少なくとも2種含むバッファ層12,14を設けるようにした。これにより、光電変換層13とバッファ層12,14との接合状態が改善される。以下、これについて説明する。
【0109】
前述したように、対向する一対の電極と光電変換層との間に、それぞれ、電子ブロッキング層および正孔ブロッキング層を設けることで、感度、光電極/暗電流のS/N比および応答速度の改善を図った光電変換素子が開示されている。
【0110】
ところが、上記光電変換素子では、十分な耐熱性が得られず、例えば、製造工程中におけるアニール処理によって電子ブロック性または正孔ブロック性が劣化して暗電流特性が悪化する虞がある。具体的には、加熱によってバッファ材料が相転移する。あるいは、他材料との混合、拡散することにより、光電変換層とバッファ層との接合状態が悪化し、所望の特性が得られなくなる場合がある。
【0111】
これに対して、本実施の形態では、対向配置された下部電極11および上部電極15と光電変換層13との間に、それぞれ、光電変換層13に含まれる材料を2種以上、例えば、光電変換層13を構成する色素材料とn型半導体またはp型半導体とを含むバッファ層12,14を設けるようにした。これにより、光電変換層13と、バッファ層12,14との親和性が向上し、耐熱性を向上する。また、これに伴い、アニール処理後の暗電流の悪化が抑制される。
【0112】
以上により、本実施の形態の光電変換素子10では、下部電極11と光電変換層13との間、および光電変換層13と上部電極15との間に、それぞれ、光電変換層13に含まれる材料を2種以上用いたバッファ層12,14を設けるようにしたので、光電変換層13とバッファ層12,14との接合状態が改善される。よって耐熱性が向上する。また、これに伴い、アニール処理後の暗電流の悪化が抑制される。よって、高い耐熱性を有すると共に、優れた電気特性を有する光電変換素子10およびこれを備えた撮像素子1(1A,1B)を提供することが可能となる。
【0113】
また、本実施の形態では、バッファ層12,14の構成する1材料として、例えば、光電変換層13に含まれる色素材料であり、さらにその分子量が500以上のBODIPY色素、サブフタロシアニンまたはその誘導体、ジピロメテン配位子を有する金属錯体、メロシアニンまたはその誘導体およびペリレンまたはその誘導体を用いるようにした。これにより、暗電流と共に残像特性を改善することが可能となる。
【0114】
更に、本実施の形態では、例えば、図7に示した撮像素子1Bのように、電子を信号電荷として読み出す場合において、電子ブロック層として機能するバッファ層(バッファ層12)を構成する、光電変換層13に含まれる1材料として、例えば、フラーレンC60またはその誘導体を用い、さらに、バッファ層12を構成する他の材料として、下部電極11とのエネルギー差が1.4eV以上であり、且つ、6.2eVよりも深いHOMO準位を有する材料を用いるようにした。これにより、下部電極11からの正孔の侵入を防ぐことが可能となる。
【0115】
また、図7に示した撮像素子1Bのように、電子を信号電荷として読み出す場合において、バッファ層12を構成する他の材料として、フラーレンC60またはその誘導体のLUMO準位とのエネルギー差が1.7eV以上であり、且つ、フラーレンC60またはその誘導体のHOMO準位よりも浅いHOMO準位を有する材料を用いることにより、バッファ層12内での電荷の生成が低減される。あるいは、バッファ層12を構成する他の材料として、フラーレンC60またはその誘導体とのLUMO準位の差が0よりも大きく0.5eVよりも小さな材料を用いることにより、バッファ層12内における電荷(電子)のトラップを低減することが可能となる。
【0116】
次に、本開示の変形例1~3および適用例について説明する。以下では、上記実施の形態と同様の構成要素については同一の符号を付し、適宜その説明を省略する。
【0117】
<2.変形例>
(2-1.変形例1)
図10は、本開示の変形例1に係る撮像素子1Cの断面構成を模式的に表したものである。撮像素子1Cは、上記実施の形態等の撮像素子1Aと同様に、例えば、デジタルスチルカメラ、ビデオカメラ等の電子機器に用いられるCMOSイメージセンサ等の撮像素子である。本変形例の撮像素子1Cは、2つの有機光電変換部10,80と、1つの無機光電変換部32とが縦方向に積層されたものである。
【0118】
有機光電変換部10,80と、無機光電変換部32とは、互いに異なる波長域の光を選択的に検出して光電変換を行うものである。例えば、有機光電変換部10では緑(G)の色信号を取得する。例えば、有機光電変換部80は青(B)の色信号を取得する。例えば、無機光電変換部32では赤(R)の色信号を取得する。これにより、撮像素子1Cでは、カラーフィルタを用いることなく一つの画素において複数種類の色信号を取得可能となっている。
【0119】
有機光電変換部10,80は、上記実施の形態の撮像素子1Bと同様に、下部電極11,81が複数の電極(例えば、読み出し電極11A,81Aおよび蓄積電極11B,81Bの2つ)からなり、下部電極11,81とバッファ層12,82との間には、例えば、絶縁層16,86および半導体層17,87がこの順に積層されている。下部電極11,81のうち、読み出し電極11A,81Aは、絶縁層16,86に設けられた開口16H,86Hを介して半導体層17,87と電気的に接続されている。撮像素子1Cでは、例えば、光電変換によって生じる電子正孔対のうち、電子が信号電荷として読み出される。
【0120】
読み出し電極81Aには、層間絶縁層88および有機光電変換部10を貫通し、有機光電変換部10の読み出し電極21Aと電気的に接続された貫通電極88が接続されている。更に、読み出し電極81Aは、貫通電極34,88を介して、半導体基板30に設けられたフローティングディフュージョンFDと電気的に接続されており、光電変換層84において生成された電荷を一時的に蓄積することができる。更に、読み出し電極81Aは、貫通電極34,88を介して、半導体基板20に設けられたアンプトランジスタAMP等と電気的に接続されている。
【0121】
(2-2.変形例2)
図11は、本開示の変形例2に係る撮像素子1Dの断面構成を表したものである。撮像素子1Dは、上記実施の形態等の撮像素子1Aと同様に、例えば、デジタルスチルカメラ、ビデオカメラ等の電子機器に用いられるCMOSイメージセンサ等の撮像素子である。本変形例の撮像素子1Dは、半導体基板30の上方に赤色光電変換部70R、緑色光電変換部70Gおよび青色光電変換部70Bがこの順に積層された構成を有する。
【0122】
赤色光電変換部70R、緑色光電変換部70Gおよび青色光電変換部70Bは、それぞれ一対の電極の間、具体的には、下部電極71Rと上部電極75Rとの間、下部電極71Gと上部電極75Gとの間、下部電極71Bと上部電極75Bとの間に、それぞれ光電変換層73R,73G,73Bを有している。下部電極71Rと光電変換層73Rとの間、下部電極71Gと光電変換層73Gとの間、下部電極71Bと光電変換層73Bとの間に、上記実施の形態と同様に、それぞれバッファ層72R,72G,72Bを有している。上部電極75Rと光電変換層73Rとの間、上部電極75Gと光電変換層73Gとの間、上部電極75Bと光電変換層73Bとの間に、上記実施の形態と同様に、それぞれバッファ層74R,74G,74Bを有している。バッファ層72R,72G,72Bおよびバッファ層74R,74G,74Bを、それぞれ、上記実施の形態と同様に、光電変換層73R,73G,73Bに含まれる2種類の材料を含んで形成することにより、上記実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0123】
撮像素子1Dは、上記のように、半導体基板30の上方に赤色光電変換部70R、緑色光電変換部70Gおよび青色光電変換部70Bがこの順に積層された構成を有する。具体的には、赤色光電変換部70Rは、絶縁層77を介して半導体基板30上に積層されている。緑色光電変換部70Gは、絶縁層78を介して赤色光電変換部70R上に積層されている。青色光電変換部70Bは、絶縁層79を介して緑色光電変換部70G上に積層されている。青色光電変換部70B上には、保護層51およびオンチップレンズ層52を介してオンチップレンズ52Lが設けられている。半導体基板30内には、赤色蓄電層310R、緑色蓄電層310Gおよび青色蓄電層310Bが設けられている。オンチップレンズ52Lに入射した光は、赤色光電変換部70R、緑色光電変換部70Gおよび青色光電変換部70Bで光電変換され、赤色光電変換部70Rから赤色蓄電層310Rへ、緑色光電変換部70Gから緑色蓄電層310Gへ、青色光電変換部70Bから青色蓄電層310Bへそれぞれ信号電荷が送られるようになっている。
【0124】
半導体基板30は、例えばp型シリコン基板により構成されている。この半導体基板30に設けられた赤色蓄電層310R、緑色蓄電層310Gおよび青色蓄電層310Bは、各々n型半導体領域を含んでおり、このn型半導体領域に赤色光電変換部70R、緑色光電変換部70Gおよび青色光電変換部70Bから供給された信号電荷(電子)が蓄積されるようになっている。赤色蓄電層310R、緑色蓄電層310Gおよび青色蓄電層310Bのn型半導体領域は、例えば、半導体基板30に、リン(P)またはヒ素(As)等のn型不純物をドーピングすることにより形成される。なお、半導体基板30は、ガラス等からなる支持基板(図示せず)上に設けるようにしてもよい。
【0125】
半導体基板30には、赤色蓄電層310R、緑色蓄電層310Gおよび青色蓄電層310Bそれぞれから電子を読み出し、例えば垂直信号線(後述の図18の垂直信号線Lsig)に転送するための画素トランジスタが設けられている。この画素トランジスタのフローティングディフュージョンが半導体基板30内に設けられており、このフローティングディフュージョンが赤色蓄電層310R、緑色蓄電層310Gおよび青色蓄電層310Bに接続されている。フローティングディフュージョンは、n型半導体領域により構成されている。
【0126】
絶縁層76,77,78は、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコンおよび酸化ハフニウム等により構成されている。複数種類の絶縁膜を積層させて絶縁層76を構成するようにしてもよい。絶縁層76は、有機絶縁材料を用いて形成されていてもよい。絶縁層76には、赤色蓄電層310Rと赤色光電変換部70R、緑色蓄電層310Gと緑色光電変換部70G、青色蓄電層310Bと青色光電変換部70Bをそれぞれ接続するためのプラグおよび電極が設けられている。絶縁層77,78は、上記材料の他に、金属酸化物、金属硫化物あるいは有機物を用いて形成してもよい。金属酸化物としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化タングステン、酸化マグネシウム、酸化ニオブ、酸化スズおよび酸化ガリウム等が挙げられる。金属硫化物としては、硫化亜鉛および硫化マグネシウム等が挙げられる。絶縁層77,78の構成材料のバンドギャップは3.0eV以上であることが好ましい。
【0127】
以上のように、本技術は、上記実施の形態の撮像素子1A,1Bのように、1つの有機光電変換部10と、2つの無機光電変換部32B,32Rとが縦方向に積層された素子構造に限定されるものではない。本技術は、上記のように、2つの有機光電変換部10,80と、1つの無機光電変換部32とが縦方向に積層された撮像素子1Cや、3つの有機光電変換部(赤色光電変換部70R,緑色光電変換部70G,青色光電変換部70B)が縦方向に積層された撮像素子1Dにも適用することができ、上記実施の形態の同様の効果を得ることができる。
【0128】
(2-3.変形例3)
図12Aは、本開示の変形例3に係る撮像素子1Eの断面構成を模式的に表したものである。図12Bは、図12Aに示した撮像素子1Eの平面構成の一例を模式的に表したものであり、図12Aは、図12Bに示したI-I線における断面を表している。撮像素子1Eは、例えば、無機光電変換部32と有機光電変換部60とが積層された積層型の撮像素子であり、画素部1aでは、例えば図12Bに示したように、例えば2行×2列で配置された4つの画素を画素ユニットとしてこれが繰り返し単位となり、行方向と列方向とからなるアレイ状に繰り返し配置されている。
【0129】
撮像素子1Eでは、例えば、カラーフィルタ53が無機光電変換部32と有機光電変換部60との間に設けている。カラーフィルタ53は、画素ユニット1a内において、少なくとも赤色光(R)を選択的に透過させるカラーフィルタ53Rおよび少なくとも青色光(B)を選択的に透過させるカラーフィルタ53Bが互いに対角線上に配置された構成を有している。有機光電変換部60(光電変換層64)は、例えば上記実施の形態と同様の構成を有し、例えば、緑色光(G)に対応する波長を選択的に吸収するように構成されている。カラーフィルタ53Rが配置された無機光電変換部32R(単位画素Pr)およびカラーフィルタ53Bが配置された無機光電変換部32B(単位画素Pb)では、それぞれ赤色光(R)および青色光(B)が検出される。本変形例の撮像素子1Eでは、一般的なベイヤー配列を有する撮像素子よりもRGBそれぞれの光電変換部の面積を拡大することができるため、S/N比を向上させることが可能となる。
【0130】
<3.適用例>
(適用例1)
図13は、上記実施の形態において説明した光電変換素子10を各画素に用いた撮像素子1(撮像素子1A,1B)の全体構成を表したものである。この撮像素子1は、CMOSイメージセンサであり、半導体基板30上に、撮像エリアとしての画素部1aを有すると共に、この画素部1aの周辺領域に、例えば、行走査部131、水平選択部133、列走査部134およびシステム制御部132からなる周辺回路部130を有している。
【0131】
画素部1aは、例えば、行列状に2次元配置された複数の単位画素P(光電変換素子10に相当)を有している。この単位画素Pには、例えば、画素行ごとに画素駆動線Lread(具体的には行選択線およびリセット制御線)が配線され、画素列ごとに垂直信号線Lsigが配線されている。画素駆動線Lreadは、画素からの信号読み出しのための駆動信号を伝送するものである。画素駆動線Lreadの一端は、行走査部131の各行に対応した出力端に接続されている。
【0132】
行走査部131は、シフトレジスタやアドレスデコーダ等によって構成され、画素部1aの各単位画素Pを、例えば、行単位で駆動する画素駆動部である。行走査部131によって選択走査された画素行の各単位画素Pから出力される信号は、垂直信号線Lsigの各々を通して水平選択部133に供給される。水平選択部133は、垂直信号線Lsigごとに設けられたアンプや水平選択スイッチ等によって構成されている。
【0133】
列走査部134は、シフトレジスタやアドレスデコーダ等によって構成され、水平選択部133の各水平選択スイッチを走査しつつ順番に駆動するものである。この列走査部134による選択走査により、垂直信号線Lsigの各々を通して伝送される各画素の信号が順番に水平信号線135に出力され、当該水平信号線135を通して半導体基板30の外部へ伝送される。
【0134】
行走査部131、水平選択部133、列走査部134および水平信号線135からなる回路部分は、半導体基板30上に直に形成されていてもよいし、あるいは外部制御ICに配設されたものであってもよい。また、それらの回路部分は、ケーブル等により接続された他の基板に形成されていてもよい。
【0135】
システム制御部132は、半導体基板30の外部から与えられるクロックや、動作モードを指令するデータ等を受け取り、また、撮像素子1の内部情報等のデータを出力するものである。システム制御部132はさらに、各種のタイミング信号を生成するタイミングジェネレータを有し、当該タイミングジェネレータで生成された各種のタイミング信号を基に行走査部131、水平選択部133および列走査部134等の周辺回路の駆動制御を行う。
【0136】
(適用例2)
上記撮像素子1は、例えば、デジタルスチルカメラやビデオカメラ等のカメラシステムや、撮像機能を有する携帯電話等、撮像機能を備えたあらゆるタイプの電子機器に適用することができる。図14に、その一例として、電子機器2(カメラ)の概略構成を示す。この電子機器2は、例えば、静止画または動画を撮影可能なビデオカメラであり、撮像素子1と、光学系(光学レンズ)210と、シャッタ装置211と、撮像素子1およびシャッタ装置211を駆動する駆動部213と、信号処理部212とを有する。
【0137】
光学系210は、被写体からの像光(入射光)を撮像素子1の画素部1aへ導くものである。この光学系210は、複数の光学レンズから構成されていてもよい。シャッタ装置211は、撮像素子1への光照射期間および遮光期間を制御するものである。駆動部213は、撮像素子1の転送動作およびシャッタ装置211のシャッタ動作を制御するものである。信号処理部212は、撮像素子1から出力された信号に対し、各種の信号処理を行うものである。信号処理後の映像信号Doutは、メモリ等の記憶媒体に記憶されるか、あるいは、モニタ等に出力される。
【0138】
<4.応用例>
(内視鏡手術システムへの応用例)
本開示に係る技術(本技術)は、様々な製品へ応用することができる。例えば、本開示に係る技術は、内視鏡手術システムに適用されてもよい。
【0139】
図15は、本開示に係る技術(本技術)が適用され得る内視鏡手術システムの概略的な構成の一例を示す図である。
【0140】
図15では、術者(医師)11131が、内視鏡手術システム11000を用いて、患者ベッド11133上の患者11132に手術を行っている様子が図示されている。図示するように、内視鏡手術システム11000は、内視鏡11100と、気腹チューブ11111やエネルギー処置具11112等の、その他の術具11110と、内視鏡11100を支持する支持アーム装置11120と、内視鏡下手術のための各種の装置が搭載されたカート11200と、から構成される。
【0141】
内視鏡11100は、先端から所定の長さの領域が患者11132の体腔内に挿入される鏡筒11101と、鏡筒11101の基端に接続されるカメラヘッド11102と、から構成される。図示する例では、硬性の鏡筒11101を有するいわゆる硬性鏡として構成される内視鏡11100を図示しているが、内視鏡11100は、軟性の鏡筒を有するいわゆる軟性鏡として構成されてもよい。
【0142】
鏡筒11101の先端には、対物レンズが嵌め込まれた開口部が設けられている。内視鏡11100には光源装置11203が接続されており、当該光源装置11203によって生成された光が、鏡筒11101の内部に延設されるライトガイドによって当該鏡筒の先端まで導光され、対物レンズを介して患者11132の体腔内の観察対象に向かって照射される。なお、内視鏡11100は、直視鏡であってもよいし、斜視鏡又は側視鏡であってもよい。
【0143】
カメラヘッド11102の内部には光学系及び撮像素子が設けられており、観察対象からの反射光(観察光)は当該光学系によって当該撮像素子に集光される。当該撮像素子によって観察光が光電変換され、観察光に対応する電気信号、すなわち観察像に対応する画像信号が生成される。当該画像信号は、RAWデータとしてカメラコントロールユニット(CCU: Camera Control Unit)11201に送信される。
【0144】
CCU11201は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等によって構成され、内視鏡11100及び表示装置11202の動作を統括的に制御する。さらに、CCU11201は、カメラヘッド11102から画像信号を受け取り、その画像信号に対して、例えば現像処理(デモザイク処理)等の、当該画像信号に基づく画像を表示するための各種の画像処理を施す。
【0145】
表示装置11202は、CCU11201からの制御により、当該CCU11201によって画像処理が施された画像信号に基づく画像を表示する。
【0146】
光源装置11203は、例えばLED(light emitting diode)等の光源から構成され、術部等を撮影する際の照射光を内視鏡11100に供給する。
【0147】
入力装置11204は、内視鏡手術システム11000に対する入力インタフェースである。ユーザは、入力装置11204を介して、内視鏡手術システム11000に対して各種の情報の入力や指示入力を行うことができる。例えば、ユーザは、内視鏡11100による撮像条件(照射光の種類、倍率及び焦点距離等)を変更する旨の指示等を入力する。
【0148】
処置具制御装置11205は、組織の焼灼、切開又は血管の封止等のためのエネルギー処置具11112の駆動を制御する。気腹装置11206は、内視鏡11100による視野の確保及び術者の作業空間の確保の目的で、患者11132の体腔を膨らめるために、気腹チューブ11111を介して当該体腔内にガスを送り込む。レコーダ11207は、手術に関する各種の情報を記録可能な装置である。プリンタ11208は、手術に関する各種の情報を、テキスト、画像又はグラフ等各種の形式で印刷可能な装置である。
【0149】
なお、内視鏡11100に術部を撮影する際の照射光を供給する光源装置11203は、例えばLED、レーザ光源又はこれらの組み合わせによって構成される白色光源から構成することができる。RGBレーザ光源の組み合わせにより白色光源が構成される場合には、各色(各波長)の出力強度及び出力タイミングを高精度に制御することができるため、光源装置11203において撮像画像のホワイトバランスの調整を行うことができる。また、この場合には、RGBレーザ光源それぞれからのレーザ光を時分割で観察対象に照射し、その照射タイミングに同期してカメラヘッド11102の撮像素子の駆動を制御することにより、RGBそれぞれに対応した画像を時分割で撮像することも可能である。当該方法によれば、当該撮像素子にカラーフィルタを設けなくても、カラー画像を得ることができる。
【0150】
また、光源装置11203は、出力する光の強度を所定の時間ごとに変更するようにその駆動が制御されてもよい。その光の強度の変更のタイミングに同期してカメラヘッド11102の撮像素子の駆動を制御して時分割で画像を取得し、その画像を合成することにより、いわゆる黒つぶれ及び白とびのない高ダイナミックレンジの画像を生成することができる。
【0151】
また、光源装置11203は、特殊光観察に対応した所定の波長帯域の光を供給可能に構成されてもよい。特殊光観察では、例えば、体組織における光の吸収の波長依存性を利用して、通常の観察時における照射光(すなわち、白色光)に比べて狭帯域の光を照射することにより、粘膜表層の血管等の所定の組織を高コントラストで撮影する、いわゆる狭帯域光観察(Narrow Band Imaging)が行われる。あるいは、特殊光観察では、励起光を照射することにより発生する蛍光により画像を得る蛍光観察が行われてもよい。蛍光観察では、体組織に励起光を照射し当該体組織からの蛍光を観察すること(自家蛍光観察)、又はインドシアニングリーン(ICG)等の試薬を体組織に局注するとともに当該体組織にその試薬の蛍光波長に対応した励起光を照射し蛍光像を得ること等を行うことができる。光源装置11203は、このような特殊光観察に対応した狭帯域光及び/又は励起光を供給可能に構成され得る。
【0152】
図16は、図15に示すカメラヘッド11102及びCCU11201の機能構成の一例を示すブロック図である。
【0153】
カメラヘッド11102は、レンズユニット11401と、撮像部11402と、駆動部11403と、通信部11404と、カメラヘッド制御部11405と、を有する。CCU11201は、通信部11411と、画像処理部11412と、制御部11413と、を有する。カメラヘッド11102とCCU11201とは、伝送ケーブル11400によって互いに通信可能に接続されている。
【0154】
レンズユニット11401は、鏡筒11101との接続部に設けられる光学系である。鏡筒11101の先端から取り込まれた観察光は、カメラヘッド11102まで導光され、当該レンズユニット11401に入射する。レンズユニット11401は、ズームレンズ及びフォーカスレンズを含む複数のレンズが組み合わされて構成される。
【0155】
撮像部11402を構成する撮像素子は、1つ(いわゆる単板式)であってもよいし、複数(いわゆる多板式)であってもよい。撮像部11402が多板式で構成される場合には、例えば各撮像素子によってRGBそれぞれに対応する画像信号が生成され、それらが合成されることによりカラー画像が得られてもよい。あるいは、撮像部11402は、3D(dimensional)表示に対応する右目用及び左目用の画像信号をそれぞれ取得するための1対の撮像素子を有するように構成されてもよい。3D表示が行われることにより、術者11131は術部における生体組織の奥行きをより正確に把握することが可能になる。なお、撮像部11402が多板式で構成される場合には、各撮像素子に対応して、レンズユニット11401も複数系統設けられ得る。
【0156】
また、撮像部11402は、必ずしもカメラヘッド11102に設けられなくてもよい。例えば、撮像部11402は、鏡筒11101の内部に、対物レンズの直後に設けられてもよい。
【0157】
駆動部11403は、アクチュエータによって構成され、カメラヘッド制御部11405からの制御により、レンズユニット11401のズームレンズ及びフォーカスレンズを光軸に沿って所定の距離だけ移動させる。これにより、撮像部11402による撮像画像の倍率及び焦点が適宜調整され得る。
【0158】
通信部11404は、CCU11201との間で各種の情報を送受信するための通信装置によって構成される。通信部11404は、撮像部11402から得た画像信号をRAWデータとして伝送ケーブル11400を介してCCU11201に送信する。
【0159】
また、通信部11404は、CCU11201から、カメラヘッド11102の駆動を制御するための制御信号を受信し、カメラヘッド制御部11405に供給する。当該制御信号には、例えば、撮像画像のフレームレートを指定する旨の情報、撮像時の露出値を指定する旨の情報、並びに/又は撮像画像の倍率及び焦点を指定する旨の情報等、撮像条件に関する情報が含まれる。
【0160】
なお、上記のフレームレートや露出値、倍率、焦点等の撮像条件は、ユーザによって適宜指定されてもよいし、取得された画像信号に基づいてCCU11201の制御部11413によって自動的に設定されてもよい。後者の場合には、いわゆるAE(Auto Exposure)機能、AF(Auto Focus)機能及びAWB(Auto White Balance)機能が内視鏡11100に搭載されていることになる。
【0161】
カメラヘッド制御部11405は、通信部11404を介して受信したCCU11201からの制御信号に基づいて、カメラヘッド11102の駆動を制御する。
【0162】
通信部11411は、カメラヘッド11102との間で各種の情報を送受信するための通信装置によって構成される。通信部11411は、カメラヘッド11102から、伝送ケーブル11400を介して送信される画像信号を受信する。
【0163】
また、通信部11411は、カメラヘッド11102に対して、カメラヘッド11102の駆動を制御するための制御信号を送信する。画像信号や制御信号は、電気通信や光通信等によって送信することができる。
【0164】
画像処理部11412は、カメラヘッド11102から送信されたRAWデータである画像信号に対して各種の画像処理を施す。
【0165】
制御部11413は、内視鏡11100による術部等の撮像、及び、術部等の撮像により得られる撮像画像の表示に関する各種の制御を行う。例えば、制御部11413は、カメラヘッド11102の駆動を制御するための制御信号を生成する。
【0166】
また、制御部11413は、画像処理部11412によって画像処理が施された画像信号に基づいて、術部等が映った撮像画像を表示装置11202に表示させる。この際、制御部11413は、各種の画像認識技術を用いて撮像画像内における各種の物体を認識してもよい。例えば、制御部11413は、撮像画像に含まれる物体のエッジの形状や色等を検出することにより、鉗子等の術具、特定の生体部位、出血、エネルギー処置具11112の使用時のミスト等を認識することができる。制御部11413は、表示装置11202に撮像画像を表示させる際に、その認識結果を用いて、各種の手術支援情報を当該術部の画像に重畳表示させてもよい。手術支援情報が重畳表示され、術者11131に提示されることにより、術者11131の負担を軽減することや、術者11131が確実に手術を進めることが可能になる。
【0167】
カメラヘッド11102及びCCU11201を接続する伝送ケーブル11400は、電気信号の通信に対応した電気信号ケーブル、光通信に対応した光ファイバ、又はこれらの複合ケーブルである。
【0168】
ここで、図示する例では、伝送ケーブル11400を用いて有線で通信が行われていたが、カメラヘッド11102とCCU11201との間の通信は無線で行われてもよい。
【0169】
以上、本開示に係る技術が適用され得る内視鏡手術システムの一例について説明した。本開示に係る技術は、以上説明した構成のうち、撮像部11402に適用され得る。撮像部11402に本開示に係る技術を適用することにより、検出精度が向上する。
【0170】
なお、ここでは、一例として内視鏡手術システムについて説明したが、本開示に係る技術は、その他、例えば、顕微鏡手術システム等に適用されてもよい。
【0171】
(移動体への応用例)
本開示に係る技術は、様々な製品へ応用することができる。例えば、本開示に係る技術は、自動車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、自動二輪車、自転車、パーソナルモビリティ、飛行機、ドローン、船舶、ロボット、建設機械、農業機械(トラクター)などのいずれかの種類の移動体に搭載される装置として実現されてもよい。
【0172】
図17は、本開示に係る技術が適用され得る移動体制御システムの一例である車両制御システムの概略的な構成例を示すブロック図である。
【0173】
車両制御システム12000は、通信ネットワーク12001を介して接続された複数の電子制御ユニットを備える。図17に示した例では、車両制御システム12000は、駆動系制御ユニット12010、ボディ系制御ユニット12020、車外情報検出ユニット12030、車内情報検出ユニット12040、及び統合制御ユニット12050を備える。また、統合制御ユニット12050の機能構成として、マイクロコンピュータ12051、音声画像出力部12052、及び車載ネットワークI/F(interface)12053が図示されている。
【0174】
駆動系制御ユニット12010は、各種プログラムにしたがって車両の駆動系に関連する装置の動作を制御する。例えば、駆動系制御ユニット12010は、内燃機関又は駆動用モータ等の車両の駆動力を発生させるための駆動力発生装置、駆動力を車輪に伝達するための駆動力伝達機構、車両の舵角を調節するステアリング機構、及び、車両の制動力を発生させる制動装置等の制御装置として機能する。
【0175】
ボディ系制御ユニット12020は、各種プログラムにしたがって車体に装備された各種装置の動作を制御する。例えば、ボディ系制御ユニット12020は、キーレスエントリシステム、スマートキーシステム、パワーウィンドウ装置、あるいは、ヘッドランプ、バックランプ、ブレーキランプ、ウィンカー又はフォグランプ等の各種ランプの制御装置として機能する。この場合、ボディ系制御ユニット12020には、鍵を代替する携帯機から発信される電波又は各種スイッチの信号が入力され得る。ボディ系制御ユニット12020は、これらの電波又は信号の入力を受け付け、車両のドアロック装置、パワーウィンドウ装置、ランプ等を制御する。
【0176】
車外情報検出ユニット12030は、車両制御システム12000を搭載した車両の外部の情報を検出する。例えば、車外情報検出ユニット12030には、撮像部12031が接続される。車外情報検出ユニット12030は、撮像部12031に車外の画像を撮像させるとともに、撮像された画像を受信する。車外情報検出ユニット12030は、受信した画像に基づいて、人、車、障害物、標識又は路面上の文字等の物体検出処理又は距離検出処理を行ってもよい。
【0177】
撮像部12031は、光を受光し、その光の受光量に応じた電気信号を出力する光センサである。撮像部12031は、電気信号を画像として出力することもできるし、測距の情報として出力することもできる。また、撮像部12031が受光する光は、可視光であっても良いし、赤外線等の非可視光であっても良い。
【0178】
車内情報検出ユニット12040は、車内の情報を検出する。車内情報検出ユニット12040には、例えば、運転者の状態を検出する運転者状態検出部12041が接続される。運転者状態検出部12041は、例えば運転者を撮像するカメラを含み、車内情報検出ユニット12040は、運転者状態検出部12041から入力される検出情報に基づいて、運転者の疲労度合い又は集中度合いを算出してもよいし、運転者が居眠りをしていないかを判別してもよい。
【0179】
マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030又は車内情報検出ユニット12040で取得される車内外の情報に基づいて、駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置の制御目標値を演算し、駆動系制御ユニット12010に対して制御指令を出力することができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車両の衝突回避あるいは衝撃緩和、車間距離に基づく追従走行、車速維持走行、車両の衝突警告、又は車両のレーン逸脱警告等を含むADAS(Advanced Driver Assistance System)の機能実現を目的とした協調制御を行うことができる。
【0180】
また、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030又は車内情報検出ユニット12040で取得される車両の周囲の情報に基づいて駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置等を制御することにより、運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行うことができる。
【0181】
また、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030で取得される車外の情報に基づいて、ボディ系制御ユニット12020に対して制御指令を出力することができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030で検知した先行車又は対向車の位置に応じてヘッドランプを制御し、ハイビームをロービームに切り替える等の防眩を図ることを目的とした協調制御を行うことができる。
【0182】
音声画像出力部12052は、車両の搭乗者又は車外に対して、視覚的又は聴覚的に情報を通知することが可能な出力装置へ音声及び画像のうちの少なくとも一方の出力信号を送信する。図17の例では、出力装置として、オーディオスピーカ12061、表示部12062及びインストルメントパネル12063が例示されている。表示部12062は、例えば、オンボードディスプレイ及びヘッドアップディスプレイの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0183】
図18は、撮像部12031の設置位置の例を示す図である。
【0184】
図18では、撮像部12031として、撮像部12101,12102,12103,12104,12105を有する。
【0185】
撮像部12101,12102,12103,12104,12105は、例えば、車両12100のフロントノーズ、サイドミラー、リアバンパ、バックドア及び車室内のフロントガラスの上部等の位置に設けられる。フロントノーズに備えられる撮像部12101及び車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部12105は、主として車両12100の前方の画像を取得する。サイドミラーに備えられる撮像部12102,12103は、主として車両12100の側方の画像を取得する。リアバンパ又はバックドアに備えられる撮像部12104は、主として車両12100の後方の画像を取得する。車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部12105は、主として先行車両又は、歩行者、障害物、信号機、交通標識又は車線等の検出に用いられる。
【0186】
なお、図18には、撮像部12101ないし12104の撮影範囲の一例が示されている。撮像範囲12111は、フロントノーズに設けられた撮像部12101の撮像範囲を示し、撮像範囲12112,12113は、それぞれサイドミラーに設けられた撮像部12102,12103の撮像範囲を示し、撮像範囲12114は、リアバンパ又はバックドアに設けられた撮像部12104の撮像範囲を示す。例えば、撮像部12101ないし12104で撮像された画像データが重ね合わせられることにより、車両12100を上方から見た俯瞰画像が得られる。
【0187】
撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、距離情報を取得する機能を有していてもよい。例えば、撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、複数の撮像素子からなるステレオカメラであってもよいし、位相差検出用の画素を有する撮像素子であってもよい。
【0188】
例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104から得られた距離情報を基に、撮像範囲12111ないし12114内における各立体物までの距離と、この距離の時間的変化(車両12100に対する相対速度)を求めることにより、特に車両12100の進行路上にある最も近い立体物で、車両12100と略同じ方向に所定の速度(例えば、0km/h以上)で走行する立体物を先行車として抽出することができる。さらに、マイクロコンピュータ12051は、先行車の手前に予め確保すべき車間距離を設定し、自動ブレーキ制御(追従停止制御も含む)や自動加速制御(追従発進制御も含む)等を行うことができる。このように運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行うことができる。
【0189】
例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104から得られた距離情報を元に、立体物に関する立体物データを、2輪車、普通車両、大型車両、歩行者、電柱等その他の立体物に分類して抽出し、障害物の自動回避に用いることができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車両12100の周辺の障害物を、車両12100のドライバが視認可能な障害物と視認困難な障害物とに識別する。そして、マイクロコンピュータ12051は、各障害物との衝突の危険度を示す衝突リスクを判断し、衝突リスクが設定値以上で衝突可能性がある状況であるときには、オーディオスピーカ12061や表示部12062を介してドライバに警報を出力することや、駆動系制御ユニット12010を介して強制減速や回避操舵を行うことで、衝突回避のための運転支援を行うことができる。
【0190】
撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、赤外線を検出する赤外線カメラであってもよい。例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104の撮像画像中に歩行者が存在するか否かを判定することで歩行者を認識することができる。かかる歩行者の認識は、例えば赤外線カメラとしての撮像部12101ないし12104の撮像画像における特徴点を抽出する手順と、物体の輪郭を示す一連の特徴点にパターンマッチング処理を行って歩行者か否かを判別する手順によって行われる。マイクロコンピュータ12051が、撮像部12101ないし12104の撮像画像中に歩行者が存在すると判定し、歩行者を認識すると、音声画像出力部12052は、当該認識された歩行者に強調のための方形輪郭線を重畳表示するように、表示部12062を制御する。また、音声画像出力部12052は、歩行者を示すアイコン等を所望の位置に表示するように表示部12062を制御してもよい。
【0191】
<5.実施例>
次に、本開示の実施例について説明する。
【0192】
(実験1)
実験1では、光電変換層に含まれる1種(実験例1-1)または2種(実験例1-2)の材料を含むnバッファ層を有する評価用デバイス(光電変換素子)を作製し、加熱前後の暗電流特性を評価した。
【0193】
まず、膜厚50nmのITO電極(下部電極)が設けられたガラス基板をUV/オゾン処理にて洗浄した。続いて、ガラス基板を真空蒸着機に移し、1×10-5Pa以下に減圧された状態で基板ホルダを回転させながらガラス基板上に、抵抗加熱法を用いて、膜厚10nmのpバッファ層、膜厚200nmの光電変換層および膜厚10nmのnバッファ層を順に成膜した。このとき、実験例1-1では、光電変換層の構成材料のうちの1種を用いてnバッファ層を成膜した。実験例1-2では、光電変換層の構成材料のうちの2種を用いてnバッファ層を成膜した。続いて、nバッファ層上に、膜厚50nmのITO電極(上部電極)を成膜した。以上により、1mm×1mmの光電変換領域を有する光電変換素子を作製した。
【0194】
暗電流特性の評価は、半導体パラメータアナライザを用いて行った。具体的には、フィルタを介して光源から光電変換素子に照射される光の光量を1.62μW/cm2とし、電極間に印加されるバイアス電圧を10Vとした場合の電流値(明電流値)および光の光量を0μW/cm2とした場合の電流値(暗電流値)をそれぞれ測定し、これらの値から、暗電流特性を算出した。素子に照射する光の波長は、それぞれの光電変換層の可視域における極大吸収波長に相当する波長を選択した。
【0195】
表1は、実験例1-1および実験例1-2における加熱前後の暗電流特性の変化をまとめたものである。表1に記載の数値は、実験例1-1における加熱前の暗電流特性を1.0とした際の相対値である。光電変換層の構成材料のうちの1種を用いてnバッファ層を作製した実験例1-1では、加熱前後で2桁以上の暗電流特性の悪化が確認された。一方、光電変換層の構成材料のうちの2種を用いてnバッファ層を作製した実験例1-2では、加熱前後で暗電流特性の変化は1桁以下であった。即ち、バッファ層の構成材料として光電変換層の構成材料を2種以上用いることにより、バッファ層の耐熱性を向上させることができることがわかった。
【0196】
【表1】
【0197】
(実験2)
実験2では、nバッファ層を構成する1材料として、光電変換層に含まれる色素材料を用いた評価用デバイス(光電変換素子)を作製し、加熱前後の暗電流特性を評価した。
【0198】
(実験例2-1)
まず、実験例2-1では、膜厚50nmのITO電極(下部電極)が設けられたガラス基板をUV/オゾン処理にて洗浄した。続いて、ガラス基板を真空蒸着機に移し、1×10-5Pa以下に減圧された状態で基板ホルダを回転させながらガラス基板上に、抵抗加熱法を用いて、膜厚10nmのpバッファ層、膜厚200nmの光電変換層および膜厚10nmのnバッファ層を順に成膜した。このとき、nバッファ層は、フラーレンC60および下記式(1-1)で表される分子量483.02のBODIPY色素Aを用いて成膜した。続いて、nバッファ層上に、膜厚50nmのITO電極(上部電極)を成膜した。以上により、1mm×1mmの光電変換領域を有する光電変換素子を作製した。
【0199】
(実験例2-2)
実験例2-1で用いたBODIPY色素Aの代わりに下記式(1-2)で表される分子量594.38のBODIPY色素Bを用いた以外は、実験例2-1と同様の方法を用いて光電変換素子を作製した。
【0200】
(実験例2-3)
実験例2-1で用いたBODIPY色素Aの代わりに下記式(1-3)で表される分子量699.35のBODIPY色素Cを用いた以外は、実験例2-1と同様の方法を用いて光電変換素子を作製した。
【0201】
(実験例2-4)
実験例2-1で用いたBODIPY色素Aの代わりに下記式(1-4)で表される分子量706.46のBODIPY色素Dを用いた以外は、実験例2-1と同様の方法を用いて光電変換素子を作製した。
【0202】
(実験例2-5)
実験例2-1で用いたBODIPY色素Aの代わりに下記式(2-1)で表される分子量632.24のサブフタロシアニン誘導体を用いた以外は、実験例2-1と同様の方法を用いて光電変換素子を作製した。
【0203】
(実験例2-6)
実験例2-1で用いたBODIPY色素Aの代わりに下記式(3)で表される分子量430.34のメロシアニン誘導体を用いた以外は、実験例2-1と同様の方法を用いて光電変換素子を作製した。
【0204】
(実験例2-7)
実験例2-1で用いたBODIPY色素Aの代わりに下記式(1-5)で表される分子量988.21の亜鉛錯体を用いた以外は、実験例2-1と同様の方法を用いて光電変換素子を作製した。
【0205】
(実験例2-8)
実験例2-8では、ベンゾジチオフェン誘導体および下記式(4-1)を用いてpバッファ層を成膜し、ナフタレンジイミド(NDI)誘導体を用いてnバッファ層を成膜した以外は、実験例2-1と同様の方法を用いて光電変換素子を作製した。
【0206】
【化4】
【0207】
【化5】
【0208】
表2は、実験例2-1~実験例2-7のnバッファ層の1材料および実験例2-8のpバッファ層の1材料として用いた色素材料およびその分子量ならびに加熱前後の暗電流特性の変化をまとめたものである。各実験例2-1~実験例2-8の加熱前後の暗電流特性は、電極間に印加されるバイアス電圧を2.6Vとした場合の電流値から算出したものであり、表2に記載の数値は、実験例2-6の加熱前の暗電流特性を1.0とした際の相対値である。
【0209】
【表2】
【0210】
表2から、nバッファ層を構成する1材料として、分子量430.34のメロシアニン誘導体を用いた実験例2-6と比較して、BODIPY色素、サブフタロシアニン誘導体または亜鉛錯体を用いた実験例2-2~実験例2-5および実験例2-7では、加熱前後で暗電流特性が向上することがわかった。一方で、実験例2-1では、加熱前後で暗電流特性の大きな悪化が確認された。また、pバッファ層を構成する1材料としてペリレン誘導体を用いた実験例2-8においても、実験例2-2~実験例2-5および実験例2-7と同様に、加熱前後で暗電流特性が向上することがわかった。以上のことから、nバッファ層を構成する1材料としてBODIPY色素、サブフタロシアニン誘導体または亜鉛錯体を用いること、または、pバッファ層を構成する1材料としてペリレン誘導体を用いることで暗電流特性を向上させることができ、さらに、その中でも分子量500以上のBODIPY色素、サブフタロシアニン誘導体、亜鉛錯体、ペリレン誘導体を用いることで、さらに耐熱性を向上させることができることがわかった。
【0211】
また、ここでは示していないが、分子量500以上のメロシアニン誘導体についても実験例2-2~実験例2-5および実験例2-7と同様の結果が得られた。また、残像特性についても暗電流特性と同様の結果が得られた。即ち、nバッファ層を構成する1材料としてBODIPY色素、サブフタロシアニン誘導体、亜鉛錯体またはメロシアニン誘導体を、または、pバッファ層を構成する1材料としてペリレン誘導体を用い、さらに、その中でも分子量500以上のBODIPY色素、サブフタロシアニン誘導体、亜鉛錯体、メロシアニン誘導体、ペリレン誘導体を用いることで、耐熱性を向上させつつ残像特性を向上させることができることがわかった。
【0212】
以上、実施の形態、変形例および実施例ならびに適用例および応用例を挙げて説明したが、本開示内容は上記実施の形態等に限定されるものではなく、種々変形が可能である。例えば、有機光電変換部および無機光電変換部の数やその比率も限定されるものではなく、2以上の有機光電変換部を設けてもよいし、有機光電変換部だけで複数色の色信号が得られるようにしてもよい。更にまた、有機光電変換部および無機光電変換部を縦方向に積層させる構造に限らず、基板面に沿って並列させてもよい。
【0213】
また、上記実施の形態等では、裏面照射型の固体撮像装置の構成を例示したが、本開示内容は表面照射型の固体撮像装置にも適用可能である。更に、本開示の光電変換素子では、上記実施の形態で説明した各構成要素を全て備えている必要はなく、また逆に他の層を備えていてもよい。
【0214】
更に、上記実施の形態では、撮像素子1として、例えば緑色光を検出する有機光電変換部(光電変換素子10)と、青色光および赤色光をそれぞれ検出する無機光電変換部32Bおよび無機光電変換部32Rとを積層させた構成としたが、本開示内容はこのような構造に限定されるものではない。例えば、光電変換素子10において可視光領域(例えば、400nm以上760nm以下)の波長を検出し、半導体基板30に埋め込み形成される無機光電変換部において赤外光領域(例えば、700nm以上1000nm以下)の波長を検出するようにしてもよい。
【0215】
更にまた、上記実施の形態等では、撮像素子1を構成する撮像素子として光電変換素子10を用いて例を示したが、本開示の光電変換素子10は、太陽電池に適用してもよい。
【0216】
なお、本明細書中に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、また、他の効果があってもよい。
【0217】
なお、本開示は以下のような構成をとることも可能である。以下の構成の本技術によれば、対向配置された第1電極と光電変換層との間に第1バッファ層を、第2電極と光電変換層との間に第2バッファ層をそれぞれ設け、第2バッファ層を、光電変換層に含まれる、色素材料である第1の有機半導体材料と、第2の有機半導体材料または第3の有機半導体材料との2種を用いて形成するようにしたので、光電変換層と第2バッファ層との接合状態が改善される。よって、耐熱性を向上させると共に電気特性を改善することが可能となる。
[1]
第1電極と、
前記第1電極と対向配置された第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に設けられると共に、色素材料である第1の有機半導体材料、電子輸送性を有するn型半導体である第2の有機半導体材料および正孔輸送性を有するp型半導体である第3の有機半導体材料を含む光電変換層と、
前記第1電極と前記光電変換層との間に設けられた第1バッファ層と、
前記第2電極と前記光電変換層との間に設けられた第2バッファ層とを備え、
第2バッファ層は、前記光電変換層に含まれる材料として、前記第1の有機半導体材料と、前記第2の有機半導体材料または前記第3の有機半導体材料との2種を含み、
前記色素材料は、下記式(1-2)で表されるBODIPY色素B、下記式(1-3)で表されるBODIPY色素C、下記式(1-4)で表されるBODIPY色素D、下記式(2-1)で表されるサブフタロシアニン誘導体、下記式(3)で表されるメロシアニン誘導体、下記式(1-5)で表される亜鉛錯体および下記式(4-1)で表されるペリレン誘導体のうちのいずれかである
光電変換素子。
【化1】
[2]
前記第2の有機半導体材料は、フラーレンC60およびその誘導体である、前記[1]に記載の光電変換素子。
[3]
前記第1バッファ層は、前記第2の有機半導体材料と、前記第1の有機半導体材料または前記第3の有機半導体材料との2種を含み、
前記第1電極の仕事関数と前記第1バッファ層に含まれる前記第1の有機半導体材料または前記第3の有機半導体材料のHighest Occupied Molecular Orbital(HOMO)準位との差が1.4eV以上である、前記[1]または[2]に記載の光電変換素子。
[4]
前記第1バッファ層は、前記第2の有機半導体材料と、前記第1の有機半導体材料または前記第3の有機半導体材料との2種を含み、
前記第2の有機半導体材料のLUMO準位と前記第1バッファ層に含まれる前記第1の有機半導体材料または前記第3の有機半導体材料のHOMO準位との差は1.7eV以上である、前記[1]乃至[3]のうちのいずれか1つに記載の光電変換素子。
[5]
前記第1バッファ層は、前記第2の有機半導体材料と、前記第1の有機半導体材料または前記第3の有機半導体材料との2種を含み、
前記第2の有機半導体材料と前記第1の有機半導体材料または前記第3の有機半導体材料とのLowest Unoccupied Molecular Orbital(LUMO)準位の差は0以上0.5eV以下である、前記[1]乃至[4]のうちのいずれか1つに記載の光電変換素子。
[6]
1または複数の有機光電変換部として光電変換素子がそれぞれ設けられている複数の画素を備え、
前記光電変換素子は、
第1電極と、
前記第1電極と対向配置された第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に設けられると共に、色素材料である第1の有機半導体材料、電子輸送性を有するn型半導体である第2の有機半導体材料および正孔輸送性を有するp型半導体である第3の有機半導体材料を含む光電変換層と、
前記第1電極と前記光電変換層との間に設けられた第1バッファ層と、
前記第2電極と前記光電変換層との間に設けられた第2バッファ層とを備え、
第2バッファ層は、前記光電変換層に含まれる材料として、前記第1の有機半導体材料と、前記第2の有機半導体材料または前記第3の有機半導体材料との2種を含み、
前記色素材料は、下記式(1-2)で表されるBODIPY色素B、下記式(1-3)で表されるBODIPY色素C、下記式(1-4)で表されるBODIPY色素D、下記式(2-1)で表されるサブフタロシアニン誘導体、下記式(3)で表されるメロシアニン誘導体、下記式(1-5)で表される亜鉛錯体および下記式(4-1)で表されるペリレン誘導体のうちのいずれかである
撮像素子。
【化2】
[7]
各画素には、1または複数の前記有機光電変換部と、前記有機光電変換部とは異なる波長域の光電変換を行う1または複数の無機光電変換部とが積層されている、前記[6]に記載の撮像素子。
[8]
前記無機光電変換部は、半導体基板に埋め込み形成され、
前記有機光電変換部は、前記半導体基板の第1の面側に形成されている、前記[7]に記載の撮像素子。
[9]
前記半導体基板は前記第1の面と対向する第2の面を有し、前記第2の面側に多層配線層が形成されている、前記[8]に記載の撮像素子。
[10]
前記有機光電変換部は可視光領域の光電変換を行い、
前記無機光電変換部は赤外光領域の光電変換を行う、前記[7]乃至[9]のうちのいずれか1つに記載の撮像素子。
[11]
第1電極と、
前記第1電極と対向配置された第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に設けられた光電変換層と、
前記第1電極と前記光電変換層との間に設けられると共に、前記光電変換層に含まれる、色素材料からなる第1の有機半導体材料と、第2の有機半導体材料とを含むバッファ層と
を備えた光電変換素子。
[12]
前記第2の有機半導体材料は、フラーレンC60またはその誘導体である、前記[11]に記載の光電変換素子。
[13]
第1電極と、
前記第1電極と対向配置された第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に設けられた光電変換層と、
前記第1電極と前記光電変換層との間に設けられると共に、前記光電変換層に含まれる、フラーレンC60からなる第1の有機半導体材料と、前記第1の有機半導体材料とのLowest Unoccupied Molecular Orbital(LUMO)準位の差が0以上0.5eV以下のLUMO準位を有する第2の有機半導体材料とを含むバッファ層と
を備えた光電変換素子。
[14]
前記バッファ層は、前記第1電極と前記光電変換層との間に設けられ、
前記第1電極の仕事関数と前記第1の有機半導体材料のHighest Occupied Molecular Orbital(HOMO)準位との差が1.4eV以上であり、且つ、前記第2の有機半導体材料のHOMO準位は6.2eVよりも深い、前記[13]に記載の光電変換素子。
[15]
前記第1の有機半導体材料のLUMO準位と前記第2の有機半導体材料のHOMO準位との差は1.7eV以上であり、且つ、前記第1の有機半導体材料のHOMO準位は、前記第2の有機半導体材料のHOMO準位よりも浅い、前記[13]または[14]に記載の光電変換素子。
【符号の説明】
【0218】
1,1A,1B,1C,1D,1E…撮像素子、2…電子機器(カメラ)、10…光電変換素子、11…下部電極、11A…読み出し電極、11B…蓄積電極、12,14…バッファ層、13…光電変換層、15…上部電極、30…半導体基板、31…pウェル、32R,32B…無機光電変換部、26,27…絶縁膜、28…層間絶縁層、30…半導体基板、31…pウェル、32B,32R…無機光電変換部、33…ゲート絶縁層、34…貫通電極、40…多層配線層、41,42,43…配線層、41A…接続部、45…下部第1コンタクト、46…下部第2コンタクト、47…ゲート配線層、51…保護層、52…オンチップレンズ層、52L…オンチップレンズ、53…遮光膜。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13
図14
図15
図16
図17
図18