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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】未加硫ゴム用防着剤組成物及びその利用
(51)【国際特許分類】
   C08C 4/00 20060101AFI20241213BHJP
   C08K 3/01 20180101ALI20241213BHJP
   C08J 7/04 20200101ALI20241213BHJP
【FI】
C08C4/00
C08K3/01
C08J7/04 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021008352
(22)【出願日】2021-01-22
(65)【公開番号】P2021138922
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-12-26
(31)【優先権主張番号】P 2020032574
(32)【優先日】2020-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000188951
【氏名又は名称】松本油脂製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】杉本 元
(72)【発明者】
【氏名】武市 賢治
【審査官】▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-193416(JP,A)
【文献】特開2018-100387(JP,A)
【文献】特開2019-094455(JP,A)
【文献】特開2017-031296(JP,A)
【文献】特開2011-144221(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08C 1/00- 4/00
C08J 7/04- 7/06
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
B32B 1/00- 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機成分及び界面活性剤を含有する未加硫ゴム用防着剤組成物であって、
前記無機成分が、珪酸塩と、酸化鉄及び硫化鉄から選ばれる少なくとも1種とを必須に含み、
前記珪酸塩、前記酸化鉄及び前記硫化鉄の合計に対する前記酸化鉄及び前記硫化鉄の重量割合の合計が2~10重量%であ
前記界面活性剤がアニオン界面活性剤(A)及びノニオン界面活性剤(B)を含み、(A)の重量/(B)の重量で表される重量比(A/B)が1~20である、未加硫ゴム用防着剤組成物。
【請求項2】
炭酸塩及び/又は金属石鹸をさらに含有し、前記無機成分及び界面活性剤の合計量100重量部に対する前記炭酸塩及び金属石鹸の含有量の合計が1~40重量部である、請求項1に記載の未加硫ゴム用防着剤組成物。
【請求項3】
前記アニオン界面活性剤(A)が脂肪酸石鹸を含む、請求項1又は2に記載の未加硫ゴム用防着剤組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の未加硫ゴム用防着剤組成物を、成型加工された未加硫ゴムの表面に付着させる処理工程を含む、防着処理された未加硫ゴムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は未加硫ゴム用防着剤組成物及びその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム製品の生産加工工程において、未加硫ゴムを次の成型や加硫等の工程に移行するまでの間、積み重ねて貯蔵することがあり、この場合にゴムの密着を防止する目的で密着防止剤(防着剤)が使用されている。
防着剤としては、無機粉末と界面活性剤を主成分とする防着剤が広く用いられており、一般に、これらは水分散液の形態でゴム表面に塗布し乾燥させることが行われている。塗布方法としては、水分散液をスプレーしたり、水分散液に浸漬したりする。
しかし、これら無機粉末の水分散液を使用する際に発生する沈降物が、作業環境の悪化や生産性の低下を引き起こすことが課題となっている。沈降物が多く発生すると、使用設備の清掃が必要であるし、スプレー詰まりや分散液の濃度不均一によって均一な塗布を妨げる。このような理由から沈降物が少なく、防着性能に優れる防着剤の開発が望まれている。
【0003】
これまで、様々な防着剤が開発されているが、上記問題を解決し、かつ十分な防着性を満たす防着剤はこれまでにない。
特許文献1では、水膨潤性無機粉末であるモンモリロナイトを特定量含有するベントナイトと、アニオン界面活性剤とノニオン界面活性剤を特定比率で含む界面活性剤を必須とした防着剤が開示されている。ノニオン界面活性剤の配合比率をアニオン界面活性剤の配合比率よりも高くすることで、ゴム表面への防着剤の付着性を向上させて防着性を向上させているが、分散液が低濃度の条件では、アニオン活性剤による無機粉末の分散効果が著しく低下して沈降しやすい問題がある。
特許文献2では、炭素数及び金属イオンを限定した脂肪酸石鹸と金属石鹸及び特定の界面活性剤を水に分散させた組成物をゴム面に塗布して防着する方法が開示されている。無機粉末を使用しないため沈降物の問題は生じないが、充分な密着防止の効果を発揮させるためには、高濃度での使用が必要であり、その場合、加硫ゴムの物理的性質を低下させる問題点があるため使用方法が限定され汎用性に乏しい。
以上のように、様々な防着剤が開発されているが、無機粉末の沈降物を抑制し十分な防着性を満たすものはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-213202号公報
【文献】特開昭49-18780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、分散性と防着性が同時に優れる未加硫ゴム用防着剤組成物と、その未加硫ゴム用防着剤組成物を使用して行われる防着処理された未加硫ゴムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、珪酸塩、酸化鉄及び硫化鉄の合計に対する前記酸化鉄及び前記硫化鉄の重量割合が特定の範囲にあり、アニオン界面活性剤(A)及びノニオン界面活性剤(B)が特定の比率で含む防着剤組成物であれば、上記課題を解決できることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明の未加硫ゴム用防着剤組成物は、無機成分及び界面活性剤を含有する未加硫ゴム用防着剤組成物であって、前記無機成分が、珪酸塩と、酸化鉄及び硫化鉄から選ばれる少なくとも1種とを必須に含み、前記珪酸塩、前記酸化鉄及び前記硫化鉄の合計に対する前記酸化鉄及び前記硫化鉄の重量割合の合計が10重量%以下であって、前記界面活性剤がアニオン界面活性剤(A)及びノニオン界面活性剤(B)を含み、(A)の重量/(B)の重量で表される重量比(A/B)が1~20である。
【0008】
炭酸塩及び/又は金属石鹸をさらに含有すると好ましい。
前記アニオン界面活性剤(A)が脂肪酸石鹸を含むと好ましい。
【0009】
本発明の防着処理された未加硫ゴムの製造方法は、上記未加硫ゴム用防着剤組成物を、成型加工された未加硫ゴムの表面に付着させる処理工程を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明の未加硫ゴム用防着剤組成物は、分散性と防着性に優れる。
また、本発明の未加硫ゴムの製造方法では、本発明の未加硫ゴム用防着剤組成物を用いるために、良好な分散性と防着性により作業性が向上し、ゴム製品の不良が低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔未加硫ゴム用防着剤組成物〕
本発明の未加硫ゴム用防着剤組成物は、珪酸塩を必須とする無機成分及び界面活性剤を含有する未加硫ゴム用防着剤組成物である。
以下、各成分を詳しく説明する。
【0012】
〔無機成分〕
無機成分は、未加硫ゴム表面に被膜を形成して防着性を発揮する材料の成分である。
本発明の未加硫ゴム用防着剤組成物では、無機成分として珪酸塩を必須成分として含有する。
珪酸塩は、一般に、4個の酸素原子から形成される三角錐の真ん中の隙間に1個の珪素原子が入り込んでできる珪酸四面体が連結して形成される構造である。珪酸塩は、珪酸四面体の連結方式により、さらにネソ珪酸塩、ソロ珪酸塩、サイクロ珪酸塩、イノ珪酸塩、フィロ珪酸塩及びテクト珪酸塩等に分類され、本発明の未加硫ゴム用防着剤では、これらの珪酸塩を1種又は2種以上を併用してもよい。
【0013】
ネソ珪酸塩は、独立型連結方式の珪酸塩と分類され、(SiO4-の化学式で表される構造を基本組成とする。ネソ珪酸塩としては、特に限定はないが、たとえば、フォルステライト、ファヤライト、マンガンカンラン石等のかんらん石;ヒューマイト;パイロープ、アルマンディン、スペサルティン、グロッシュラー、アンドラダイト、ウバロバイト等のざくろ石;ダトーライト、珪線石等のガドリン石等が挙げられ、これらを1種又は2種以上を併用してもよい。
ソロ珪酸塩は、複合型連結方式の珪酸塩と分類され、(Si6-及び(Si1612-の化学式で表される構造から選ばれる少なくとも1種を基本組成とする。ネソ珪酸塩としては、特に限定はないが、たとえば、ゾイサイト、クリノゾイサイト等の緑レン石;オケルマナイト、ゲーレナイト等のメリライト;ベスビアナイト等のパンペリー石等が挙げられ、これらを1種又は2種以上を併用してもよい。
【0014】
サイクロ珪酸塩は、環状連結方式の珪酸塩と分類され、(Si6-、(Si128-、(Si1812-の化学式で表される構造を基本組成とする。ネソ珪酸塩としては、特に限定はないが、たとえば、ベニト石;斧石;緑柱石;鉄電気石、苦土電気石、リシア電気石等の電気石;大隅石等が挙げられ、これらを1種又は2種以上を併用してもよい。
イノ珪酸塩は、単鎖状連結方式の珪酸塩と分類され、(Si4-、(Si6-、(Si116-、(Si1510-、(Si2114-の化学式で表される構造を基本組成とする。イノ珪酸塩としては、特に限定はないが、たとえば、透輝石、クリノエンスタタイト、エンスタタイト、アクマイト、スポジューメン等の輝石;直閃石、透閃石、藍閃石、ロードナイト等の角閃石等が挙げられ、これらを1種又は2種以上を併用してもよい。
【0015】
フィロ珪酸塩は、層状連結方式の珪酸塩と分類され、SiOの化学式で表される構造を基本組成とする。フィロ珪酸塩としては、特に限定はないが、たとえば、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイト等のスメクタイト;ジ-バーミキュライト、トリ-バーミキュライト等のバーミキュライト;ハロイサイト、カオリン、エンデライト、ディッカイト、ナクライト、クリソタイル等のカオリナイト;タルク;テトラシリリックマイカ等のマイカ;パイロフィライト;マーガライト;クリントナイト;白雲母、黒雲母、金雲母、合成雲母、フッ素雲母等の雲母鉱物;パラゴライト;フロゴパイト;レピドライト;アンチゴライト等のジャモン石;ドンパサイト、スドウ石、クッカイト、クリノクロア、シャモサイト、クロライト、ナンタイト等の緑泥石;セピオライト、パリゴルスカイト等のピオライト-パリゴスカイト等が挙げられ、これらを1種又は2種以上を併用してもよい。
テクト珪酸塩は、網状連結方式の珪酸塩と分類され、SiOの化学式で表される構造を基本組成とする。テクト珪酸塩としては、特に限定はないが、たとえば、サニディン、アルバイト、アノーサイト、ネフェリン等の長石;白榴石、スコレス沸石、輝沸石等の沸石;柱石等が挙げられ、これらを1種又は2種以上を併用してもよい。
【0016】
本発明で用いる無機成分に含まれる珪酸塩は、フィロ珪酸塩を含有すると好ましく、水分散性が良好で防着性に優れた被膜を形成することができる。なかでも、フィロ珪酸塩が、スメクタイト、カオリナイト、タルク及びマイカから選ばれる少なくとも1種であると、防着性に優れた被膜を形成するので好ましい。
スメクタイトは、水と接触すると、層間の交換性陽イオンに水分子が次々に水和して膨潤するため、水中で効果的に分散することができる。したがって、フィロ珪酸塩がスメクタイトであると、水に配合した際の分散性に優れ被膜性が向上するのでさらに好ましい。また、スメクタイトのうちでも、水膨潤性が特に著しいことから、モンモリロナイトが好ましい。
【0017】
モンモリロナイトは2八面体型含水層状珪酸塩の鉱物であり、ナトリウム、カルシウム、カリウム、マグネシウム、水素イオン等を交換陽イオンとして含有する。これらの陽イオンは容易に交換される性質を有しており、かつ容易に水を取り込める性質も有している。交換陽イオンがナトリウムイオンであると、水和力で水分子を取り込みやすく、層間隔が増大し膨潤が著しい。
一般に、モンモリロナイトを主成分として含有する層状粘土鉱物をベントナイトと呼ぶ。ベントナイトは、無機成分の一例として挙げられ、未加硫ゴム表面に容易に吸着し、被膜を形成することができる。ベントナイトの被膜は、防着性及び滑性に優れることから、本発明の未加硫ゴム用防着剤組成物における珪酸塩がベントナイトを必須成分とするとさらに好ましい。また、ベントナイトがナトリウムベントナイトを高い純度で含有すると、水膨潤性の効果が著しく特に好ましい。
【0018】
本発明の未加硫ゴム用防着剤組成物に含まれる珪酸塩の量は特に限定はないが、無機成分と界面活性剤の合計量を100重量部としたときに、好ましくは30~90重量部、より好ましくは32.5~87.5重量部、さらに好ましくは35~85重量部、特に好ましくは37.5~82.5重量部である。珪酸塩の含有量が30重量部以上であると防着性が向上する傾向にあり、90重量部以下である分散性が向上する傾向にある。
【0019】
無機成分は、上記珪酸塩以外に、酸化鉄及び硫化鉄から選ばれる少なくとも1種を必須に含む。また、珪酸塩、酸化鉄及び硫化鉄の合計に対する酸化鉄及び硫化鉄の重量割合の合計は10重量%以下である。珪酸塩は微量の鉄化合物と共に存在することがあるが、鉄化合物は珪酸塩や炭酸塩と比べると比重が大きいため、珪酸塩中の鉄化合物の重量割合が10重量%超であると沈降物が生じ、生産性の悪化や防着性低下の原因となる。なお、本発明における鉄化合物とは、酸化鉄及び硫化鉄から選ばれる少なくとも一つであり、両方含んでいてもよい。
珪酸塩、酸化鉄及び硫化鉄の合計に対する酸化鉄及び硫化鉄の重量割合の合計については、好ましくは9重量%以下、より好ましくは8重量%以下、さらに好ましくは7重量%以下、特に好ましくは6重量%以下である。一方、珪酸塩、酸化鉄及び硫化鉄の合計に対する酸化鉄及び硫化鉄の重量割合の合計の下限値は、特に限定はないが、(1)0重量%超、(2)0.05重量%、(3)0.1重量%、(4)0.3重量%、(5)0.6重量%、(6)0.7重量%、(7)0.8重量%、(8)0.9重量%、(9)1重量%の順で好ましい(括弧内の数値が大きくなるに従い、好ましい)。
【0020】
珪酸塩、酸化鉄及び硫化鉄の合計に対する酸化鉄及び硫化鉄の重量割合を調整する方法としては、共に存在する鉄化合物の重量割合が10重量%以下の珪酸塩は、その市販品を入手することもできるが、鉄化合物を含む珪酸塩組成物に対して遠沈法や遠心分離法等の処理を行ったり、鉄化合物を混合したりしてもよい。
【0021】
〔鉄化合物の重量割合の分析方法〕
珪酸塩と共に存在する鉄化合物の重量割合を粉末X線回折により測定する。測定値が検出限界未満である時は0重量%とした。
【0022】
無機成分は、珪酸塩、酸化鉄及び硫化鉄以外の無機物を含んでもよい。珪酸塩、酸化鉄及び硫化鉄以外の無機物としては、特に限定はないが、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩;硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の硫酸塩;非晶質シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、三酸化アンチモン、酸化チタン、ホワイトカーボン等の金属酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物;ベンガラ;カーボンブラック;グラファイト等が挙げられる。
これら珪酸塩、酸化鉄及び硫化鉄以外の無機物のなかでも、未加硫ゴムの防着性の点で、炭酸塩が好ましい。また、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム及び炭酸マグネシウムから選ばれる少なくとも1種であると、より好ましい。
【0023】
無機成分の平均粒子径については、特に限定はないが、未加硫ゴムへの付着性等を考慮すると、好ましくは0.1~200μm、より好ましくは0.1~100μm、さらに好ましくは0.1~50μm、特に好ましくは0.1~40μm、最も好ましくは0.1~30μmである。
【0024】
〔界面活性剤〕
界面活性剤は、本発明に必須の成分であり、防着剤組成物の分散を補助する成分であり、未加硫ゴムに対して「濡れ」を補助する成分である。界面活性剤が本発明の未加硫ゴム用防着剤組成物に含まれていることによって、無機成分の分散性が向上して沈降を抑制でき、未加硫ゴムへの濡れ性が向上することで、より均一に未加硫ゴム表面に被膜化できる。
【0025】
本発明で用いられる界面活性剤は、アニオン界面活性剤とノニオン界面活性剤を必須に含む。アニオン界面活性剤は防着剤組成物の分散性を向上させ、ノニオン界面活性剤は防着剤組成物のゴムへの付着性を向上させる。したがって、アニオン界面活性剤とノニオン界面活性剤の両方が必須となる。
【0026】
本発明で重要な点は、珪酸塩、酸化鉄及び硫化鉄の合計に対する酸化鉄及び硫化鉄の重量割合と、アニオン界面活性剤(A)とノニオン界面活性剤(B)で表される重量比率(A/B)との相関である。
言い換えると、防着剤組成物の安定性を阻害する物質が、鉄化合物であることをつきとめ、鉄化合物が特定の値にあるときに、アニオン界面活性剤(A)とノニオン界面活性剤(B)とが特定の比率で配合されている場合、鉄化合物を適度に分散させることができることを見出した点である。
【0027】
すなわち、分散性と付着性の両性能を満足するには、アニオン界面活性剤(A)とノニオン界面活性剤(B)で表される重量比率(A/B)が1~20の範囲である必要がある。A/Bが1未満であると、分散性が低下して沈降物が増加する。一方、A/Bが20を超えると、付着性が低下する。A/Bは、好ましくは1.2~18、より好ましくは1.4~16、さらに好ましくは1.6~14である。
【0028】
アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤については特に限定は無く、1種又は2種以上を含んでいてもよい。
アニオン界面活性剤としては、たとえば、カプリン酸カリウム、カプリン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム、パルミチン酸ナトリウム、プルミチン酸カリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム、パーム核油脂肪酸ナトリウム、パーム核油脂肪酸カリウム、パームステアリン酸カリウム、パームステアリン酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸カリウム、牛脂脂肪酸ナトリウム、牛脂脂肪酸カリウム等の脂肪酸石鹸;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ステアリル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩;ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、2-エチルヘキシルスルホコハク酸Na等の長鎖スルホコハク酸塩;オレオイルザルコシンナトリウム、ラウロイルザルコシンナトリウム等のN‐アシルサルコシン塩;ステアロイルメチルタウリンナトリウム、ラウロイルメチルタウリンナトリウム、ミリストイルメチルタウリンナトリウム、パルミトイルメチルタウリンナトリウム等の高級脂肪酸アミドスルホン酸塩;モノステアリルリン酸ナトリウム等のアルキルリン酸塩;ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸ナトリウム等のポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル塩;N-ラウロイルグルタミン酸ナトリウムモノナトリウム、N-ステアロイル-L-グルタミン酸ジナトリウム等の長鎖N-アシルグルタミン酸塩等が挙げられ、1種又は2種以上を併用してもよい。
【0029】
ノニオン界面活性剤としては、たとえば、ポリオキシエチレン3モル付加のデシルエーテル、ポリオキシエチレン3モル付加およびポリオキシプロピレン1モル付加のデシルエーテル、ポリオキシエチレン5モル付加のデシルエーテル、ポリオキシエチレン7モル付加のデシルエーテル、ポリオキシエチレン3モル付加のイソデシルエーテル、ポリオキシエチレン3モル付加およびポリオキシプロピレン1モル付加のイソデシルエーテル、ポリオキシエチレン5モル付加のイソデシルエーテル、ポリオキシエチレン7モル付加のイソデシルエーテル、ポリオキシエチレン3モル付加のラウリルエーテル、ポリオキシエチレン3モル付加およびポリオキシプロピレン1モル付加のラウリルエーテル、ポリオキシエチレン5モル付加のラウリルエーテル、ポリオキシエチレン7モル付加のラウリルエーテル、ポリオキシエチレン3モル付加のトリデシルエーテル、ポリオキシエチレン3モル付加およびポリオキシプロピレン1モル付加のトリデシルエーテル、ポリオキシエチレン5モル付加のトリデシルエーテル、ポリオキシエチレン7モル付加のトリデシルエーテル、ポリオキシエチレン3モル付加のイソトリデシルエーテル、ポリオキシエチレン3モル付加およびポリオキシプロピレン1モル付加のイソトリデシルエーテル、ポリオキシエチレン5モル付加のイソトリデシルエーテル、ポリオキシエチレン7モル付加のイソトリデシルエーテル、ポリオキシエチレン3モル付加のミリスチルエーテル、ポリオキシエチレン3モル付加およびポリオキシプロピレン1モル付加のミリスチルエーテル、ポリオキシエチレン5モル付加のミリスチルエーテル、ポリオキシエチレン7モル付加のミリスチルエーテル、ポリオキシエチレン3モル付加のセチルエーテル、ポリオキシエチレン3モル付加およびポリオキシプロピレン1モル付加のセチルエーテル、ポリオキシエチレン5モル付加のセチルエーテル、ポリオキシエチレン7モル付加のセチルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル;ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノオレエート等のポリオキシアルキレン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等のポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシアルキレンアルキルアミン;脂肪酸アルカノールアミド;ポリオキシアルキレン脂肪酸アミド;ポリオキシアルキレン硬化ひまし油;ポリオキシアルキレンソルビトール脂肪酸エステル;ポリグリセリン脂肪酸エステル;アルキルグリセリンエーテル;ポリオキシアルキレンコレステリルエーテル;アルキルポリグルコシド;ショ糖脂肪酸エステル;オキシエチレンーオキシプロピレンブロックポリマー等が挙げられ、1種又は2種以上を併用してもよい。
【0030】
本発明の未加硫ゴム用防着剤組成物に含まれる界面活性剤の量は特に限定はないが、無機成分と界面活性剤の合計量を100重量部としたときに、好ましくは1~40重量部、より好ましくは2~35重量部、さらに好ましくは3~30重量部、特に好ましくは4~25重量部である。界面活性剤の含有量が1重量部以上であると分散性が向上する傾向にあり、40重量部以下であると防着性が向上する傾向にある。
【0031】
本発明の未加硫ゴム用防着剤組成物は、上記で説明した成分以外に、下記成分をさらに含有していてもよい。
【0032】
〔金属石鹸〕
金属石鹸は、未加硫ゴム表面に付着し、未加硫ゴム間の摩擦を軽減できる成分である。金属石鹸としては、たとえば、ラウリン酸マグネシウム、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛、ミリスチン酸マグネシウム、ミリスチン酸カルシウム、ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸マグネシウム、パルミチン酸カルシウム、パルミチン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、トリオクタデカン酸アルミニウム、ジオクタデカン酸アルミニウム、モノオクタデカン酸アルミニウム、オクタデカン酸カルシウム、オクタデカン酸亜鉛、オクタデカン酸マグネシウム、オクタデカン酸バリウム等が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。
金属石鹸としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム及びステアリン酸亜鉛から選ばれる少なくとも1種であると、未加硫ゴム間の摩擦を軽減する効果が高く好ましい。
【0033】
また、本発明の未加硫ゴム用防着剤組成物は、炭酸塩及び/又は金属石鹸を含むと、本発明の効果を奏する点で好ましい。
本発明の未加硫ゴム用防着剤組成物において炭酸塩及び/又は金属石鹸を含む場合、炭酸塩及び金属石鹸の含有量の合計は特に限定はないが、無機成分と界面活性剤の合計量を100重量部としたときに、好ましくは1~40重量部、より好ましくは2~35重量部、さらに好ましくは3~30重量部、最も好ましくは4~25重量部である。炭酸塩及び金属石鹸の含有量の合計が1重量部以上であると分散性が向上する傾向にあり、40重量部以下であると防着性が向上する傾向にある。
【0034】
〔水溶性高分子〕
水溶性高分子は、未加硫ゴム用防着剤組成物に粘性を付与でき、未加硫ゴム表面への付着性を向上させる成分である。特に、未加硫ゴム用組成物が後述する水分散液の形態である場合に、その効果をより高めることができる。
水溶性高分子としては、たとえば、酸化でんぷん、酢酸でんぷん、燐酸でんぷん、カルボキシメチルスターチ、カルボキシエチルスターチ、ヒドロキシエチルスターチ、陽性でんぷん、シアノエチル化でんぷん、ジアルデヒドでんぷん等のでんぷん類;マンナン;アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、アルギン酸トリエタノールアミン、アルギン酸アンモニウム等のアルギン酸類;メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロースエーテル類;タラカントガム、アラビアガム、グアーガム、キサンタンガム、ブリティッシュガム、グルコマンナン、ジェランガム、タラガム、ローカストビーンガム、カラギーナン等の天然ガム類;ポリアクリル酸ソーダ;ポリビニルアルコール;ポリエチレングリコール;ポリエチレンオキシド;水溶性アクリル樹脂;水溶性ウレタン樹脂;水溶性メラミン樹脂;水溶性エポキシ樹脂;水溶性ブタジエン樹脂;水溶性フェノール樹脂等が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。
【0035】
〔多価アルコール〕
多価アルコールは未加硫ゴム表面に付着し、未加硫ゴム間に潤滑性を付与でき、未加硫ゴム間の摩擦を軽減できる成分である。
多価アルコールとしては、たとえば、グリセリン、1,3-ブタンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ペンチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、マルトトリオース、グルコース、スクロース、フルクトース、マルトース等が挙げられ、1種又は2種以上を併用してもよい。
【0036】
〔消泡剤〕
消泡剤としては、たとえば、ポリメチルシロキサン、ポリエーテル変性シリコー等のシリコーン系消泡剤;ヒマシ油、ゴマ油、アマニ油、動植物油等の油脂系消泡剤;ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸等の脂肪酸系消泡剤;ステアリン酸イソアミル、コハク酸ジステアリル、エチレングリコールジステアレート、ステアリン酸ブチル等の脂肪酸エステル系消泡剤;ポリオキシアルキレンモノハイドリックアルコールジ-t-アミルフェノキシエタノール、3-ヘプタノール、2-エチルヘキサノール等のアルコール系消泡剤;ジ-t-アミルフェノキシエタノール3-ヘプチルセロソルブノニルセロソルブ3-ヘプチルカルビトール等のエーテル系消泡剤;トリブチルオスフェート、トリス(ブトキシエチル)フオスフェート等のリン酸エステル系消泡剤;ジアミルアミン等のアミン系消泡剤;ポリアルキレンアミド、アシレートポリアミン等のアミド系消泡剤;ラウリル硫酸エステルナトリウム等の硫酸エステル系消泡剤;ポリオキシアルキレン系消泡剤;鉱物油等が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。
【0037】
〔防腐剤〕
防腐剤としては、たとえば、チアゾール、2-メルカプトチアゾール等のチアゾール類;メチレンビスチオシアネート、アンモニウムチオシアネート等のチオシアネート類;o-ベンゾイックスルフィミド、フェニルマーキュリック-o-ベンゾイックスルフィミド等のスルフィミド類;メチルジメチルチオカルバメート、エチルジエチルジチオカルバメート等のアルキルジアルキルチオカルバメート類;テトラメチルチラウムスルフィド、テトラエチルチラウムスルフィド等のチラウムスルフィド類;テトラメチルチラウムジスルフィド、テトラエチルチラウムジスルフィド等のチラウムジスルフィド類;フェリックジエチルジチオカルバメート、リードジメチルジチオカルバメート等のジチオカルバメート類;o-トルエンスルホンアミド、ベンゼンスルフォンアニリド等のスルファミド類;1-アミノナフチル-4-スルホン酸、1-アミノ-2-ナフトール-4-スルホン酸等のアミノスルホン酸類;ペンタクロロフェノール、o-フェニルフェノール等のフェノール類及びこれらのアルカリ金属塩類;;テトラクロロ-p-ベンゾキノン、2,3-ジクロロ-1,4-ナフトキノン等の塩化キノン類;ジニトロカプリルフェニルクロトネート、ジニトロ-o-クレゾール等のニトロ基含有化合物類;1,3,5-トリヒドロキシエチルヘキサハイドロ-1,3,5-トリアジン、1,3,5-トリエチルヘキサハイドロ-1,3,5-トリアジン等のトリアジン類;フェニルマーキュリックフタレート、o-ヒドロキシフェニルマーキュリッククロライド等の有機水銀化合物;p-アミノアゾベンゼン、ジフェニルアミン等のアミン類;シンナムアニリド等のアミド類;1,3-ジヨード-2-プロパノール等のヨウ素含有化合物等が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。
【0038】
〔水〕
本発明の未加硫ゴム用防着剤組成物は、水を含んでいてもよい。未加硫ゴムの防着剤組成物が水を含むと、ハンドリング性の観点から好ましい。
水は、水道水、イオン交換水、蒸留水等のいずれでもよく、特に限定はないが、イオン交換水や蒸留水が好ましい。また、品質管理の観点から、水が軟水であるとその硬度を調整できるため好ましい。
また、本発明の未加硫ゴム用防着剤組成物が水を含む場合、未加硫ゴム用防着剤組成物は水以外の成分が水に分散や溶解した水分散液の形態であってもよい。
【0039】
本発明の未加硫ゴム用防着剤組成物の形態が水分散液である場合、未加硫ゴム用防着剤組成物に占める水の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは90~99.99重量%、より好ましくは92.5~99.95重量%、さらに好ましくは95~99.5重量%である。水の重量割合が90重量%以上であると乾燥性が向上する傾向にあり、99.9重量%以下であると防着性が向上する傾向にある。
【0040】
〔未加硫ゴム用防着剤の製造方法〕
本発明の未加硫ゴム用防着剤組成物において、その製造方法については、無機成分と界面活性剤、必要に応じてその他の成分等を混合する工程を含むものであれば、混合順序や使用する混合設備等について特に限定はない。未加硫ゴム用防着剤組成物は、たとえば、リボン型混合機や垂直スクリュー型混合機等の混合機に各成分を順次添加し、混合することで製造することができる。
【0041】
〔防着処理された未加硫ゴムの製造方法〕
本発明の防着処理された未加硫ゴムの製造方法は、上記未加硫ゴム用防着剤組成物を、未加硫ゴムの表面に付着させる処理工程を含む。ここで、未加硫ゴムは、成形加工されたものであるとよい。
処理工程では、ウェット法、すなわち、上述した水分散液の形態である未加硫ゴム用防着剤組成物を用いる方法が好ましい。
【0042】
ウェット法で処理工程を行う場合、水分散液の形態である未加硫ゴム用防着剤組成物をスプレーする方法や、細流にてゴムに吹き付ける方法、水分散液中に浸漬する方法等が挙げられる。
水分散液中に浸漬する方法では、均一に未加硫ゴム用防着剤組成物を付着させることができるため好ましい。本発明の製造方法で用いる未加硫ゴムは、通常、100~180℃に加熱された状態にあり、水分散液中に浸漬する方法で未加硫ゴムを冷却することができる。水分散液の温度は特に限定はないが、0~60℃であると好ましい。
次いで、水分散液を付着後に未加硫ゴムを乾燥する工程を実施してもよい。乾燥の方法としては、特に限定はないが熱風機やブローヒーターにより熱風を送ることで強制的に乾燥させる方法であると、コストが安くてよい。
【0043】
処理工程では、ドライ法、すなわち、水が配合されていない未加硫ゴム用防着剤組成物を用いる方法を行ってもよい。
このようにして製造された、防着処理された未加硫ゴムでは、次の工程に移行するまでの間、積み重ねて貯蔵する場合に、未加硫ゴム同士の密着を防止することができる。
【実施例
【0044】
以下に、本発明を実施例及び比較例を示して具体的に説明する。本発明はこれら実施例に限定されるものではない。実施例及び比較例における各物性の評価は、以下のようにして行った。なお、実施例1、19~21及び23は参考例とする。
【0045】
[防着性]
未加硫ゴム用防着剤組成物の水分散液(水の重量割合が98.5重量%)に対して、100℃に加熱したNR/BR試験片(天然ゴム/ブタジエンゴム;厚み0.5cm×縦5cm×横3cm)を浸漬して直ちに引き上げた。浸漬させたゴム試験片を2枚作製し、風乾したら重ね合わせ、1000kg/mの荷重をかけ40℃の恒温槽に24時間放置した。恒温槽から取出した試験片を室温まで空冷し、引張り試験機を用いて100mm/minの速度下で剥離抗力(N/cm)を測定した。剥離抗力が小さいほど剥がしやすく、防着性が高い。評価基準は次の通りであり、剥離抗力が2N/cm未満の場合を合格とした。
剥離抗力が1N/cm以下:防着性は非常に良好(容易に未加硫ゴム同士を剥がすことができる、指標は◎)
剥離抗力が1N/cm超2N/cm未満:防着性は良好(負荷なく未加硫ゴム同士を剥がすことができる、指標は○)
剥離抗力が2N/cm以上3N/cm以下:防着性は不良(未加硫ゴム同士を剥がす時の負荷が大きく、防着性が低い、指標は△)
剥離抗力が3N/cm超:防着性が非常に不良(ゴム同士が密着して剥離が困難である。防着性が非常に低い、指標は×)
【0046】
[分散性]
未加硫ゴム用防着剤組成物の水分散液(水の重量割合が98.5重量%)を作製し、100mlメスシリンダーに入れて24時間静置した。静置後、沈殿の有無を確認した。沈殿が有る場合、メスシリンダーを転倒混和して、沈殿が再分散するかを評価した。分散性の評価基準は以下とした。
沈殿なし:分散性は非常に良好(指標は◎)
沈殿あるが、容易に再分散する:分散性は良好(転倒混和回数が5回以内、指標は○)
沈殿あり、再分散が難しい:分散性は不良(転倒混和回数が5回を超え10回以内、指標は△)
沈殿あり、再分散が非常に難しい:分散性は非常に不良(転倒混和回数が10回を超える、指標は×)
【0047】
(実施例1)
80gのベントナイト1、10gの炭酸カルシウム、8gのジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、2gのPOE(3)トリデシルエーテルを均一に混合して、未加硫ゴム用防着剤組成物を得た。
次いで、水道水295.5gに上記防着剤組成物を4.5g加え、水中に均一分散させて、未加硫ゴム用防着剤組成物の水分散液を得た。得られた水分散液を用いて、防着性、分散性を評価した。評価の結果は表1に示すとおりで、防着性、分散性に優れた。
【0048】
(実施例2~23)
実施例2~23では、表1~3に示すように組成を変更した以外は、実施例1と同様にして未加硫ゴム用防着剤組成物とその水分散液を得て、評価した。評価の結果は表1~3に示す。
【0049】
(比較例1)
80gのベントナイト4、10gの炭酸カルシウム、8gのジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、2gのPOE(3)トリデシルエーテルを均一に混合して、未加硫ゴム用防着剤組成物を得た。
次いで、水道水295.5gに上記防着剤組成物を4.5g加え、水中に均一分散させて、未加硫ゴム用防着剤組成物の水分散液を得た。得られた水分散液を用いて、防着性、分散性を評価した。評価の結果は表4に示すとおりで、分散性が不良であった。
【0050】
(比較例2~8)
比較例2~8では、表4に示すように組成を変更した以外は、比較例1と同様にして未加硫ゴム用防着剤組成物とその水分散液を得て評価した。その結果を表4にそれぞれ示す。
上記実施例及び比較例において、POE(n)とはポリオキシエチレン(オキシエチレンの繰返し単位数:n)を意味し、POP(n)とはポリオキシプロピレン(ポリオキシプロピレンの繰返し単位:n)を意味する。
また、使用した珪酸塩に含有する鉄化合物の種類と鉄化合物の珪酸塩に対する重量割合は以下の通りである。
ベントナイト1:酸化鉄が1重量%、珪酸塩が99重量%
ベントナイト2:酸化鉄及び硫化鉄が2重量%、珪酸塩が98重量%
ベントナイト3:酸化鉄及び硫化鉄が5重量%、珪酸塩が95重量%
ベントナイト4:酸化鉄及び硫化鉄が10重量%、珪酸塩が90重量%
ベントナイト5:酸化鉄及び硫化鉄が15重量%、珪酸塩が85重量%
ベントナイト6:酸化鉄及び硫化鉄が20重量%、珪酸塩が80重量%
カオリン:酸化鉄が0.1重量%、珪酸塩が99.9重量%
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
【表3】
【0054】
【表4】
【0055】
表1~3からわかるように、実施例1~23の未加硫ゴム用防着剤組成物は、無機成分及び界面活性剤を含有する未加硫ゴム用防着剤組成物であって、無機成分が、珪酸塩と、酸化鉄及び硫化鉄から選ばれる少なくとも1種とを必須に含み、珪酸塩、酸化鉄及び硫化鉄の合計に対する酸化鉄及び硫化鉄の重量割合の合計が10重量%以下であって、界面活性剤がアニオン界面活性剤(A)及びノニオン界面活性剤(B)を含み、(A)の重量/(B)の重量で表される重量比(A/B)が1~20であるために、本願の課題である、分散性と防着性が同時に優れる。
一方、表4からわかるように、珪酸塩、酸化鉄及び硫化鉄の合計に対する酸化鉄及び前記硫化鉄の重量割合の合計が10重量%を超えている場合(比較例1、2)、(A/B)が1~20の範囲にない場合(比較例3、4、5、6)、珪酸塩と、酸化鉄及び硫化鉄から選ばれる少なくとも1種とを含有しない場合(比較例7、8)には、本願の課題である、分散性と防着性の少なくとも1つが解決できていない。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の未加硫ゴム用防着剤組成物は、未加硫ゴム製品の生産加工工程に用いられ、未加硫ゴムを次の成型や加硫等の工程に移行するまでの間、積み重ねて貯蔵する場合にゴムの密着を防止することができる。その際、分散性と防着性が良好であり、ゴム製品の不良の低減が可能となる。