(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】鉗子装置
(51)【国際特許分類】
A61B 17/29 20060101AFI20241213BHJP
【FI】
A61B17/29
(21)【出願番号】P 2021013791
(22)【出願日】2021-01-29
【審査請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】弁理士法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】道本 励史
(72)【発明者】
【氏名】増田 賢樹
【審査官】和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106551716(CN,A)
【文献】特開平07-140398(JP,A)
【文献】特開2017-079895(JP,A)
【文献】実開平01-157702(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/28 - 17/29
A61B 1/005 - 1/008
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉗子装置であって、
対象物の挟み込みが可能な挟み込み部と、
前記挟み込み部の基端側に接続され、真直状態と屈曲状態とをとることが可能な屈曲部と、
前記屈曲部の基端側に接続されるシャフト部と、
前記屈曲部による屈曲を操作可能な屈曲操作部と、を有する本体部と、
前記挟み込み部の挟み込み操作が可能であり、且つユーザが片手の指により前記挟み込み操作可能な操作部と、
を備え、
前記操作部は、前記シャフト部の軸に対して所定の第1状態で配置可能であるとともに、前記第1状態を前記シャフト部の軸を中心に反対側に回転させた第2状態で配置可能であり、
前記屈曲操作部は、前記操作部が前記第1状態で配置されている場合において、前記操作部を操作する片手の指により操作可能な範囲に屈曲を操作する第1操作ダイアルを有するとともに、前記操作部が前記第2状態で配置されている場合において、前記操作部を操作する片手の指により操作可能な範囲に屈曲を操作する第2操作ダイアルを有する
鉗子装置。
【請求項2】
前記操作部は、前記シャフト部の前記軸を中心に回動可能である
請求項1に記載の鉗子装置。
【請求項3】
前記操作部は、前記本体部に対して脱着可能である
請求項1又は請求項2に記載の鉗子装置。
【請求項4】
前記屈曲部の先端に、一対の操作線の一端が接続されており、
前記一対の操作線の他端と接続され、所定の軸を中心に回動することにより、一方の操作線を引いて、前記操作線の張力の調整が可能な調整部を有し、
前記第1操作ダイアル又は前記第2操作ダイアルを回動させることにより、前記調整部を回動可能である
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の鉗子装置。
【請求項5】
前記調整部は、ウォームホイールと、前記ウォームホイールに螺合するウォームとを有し、
前記第1操作ダイアル及び第2操作ダイアルは、前記ウォームの軸を回動可能である
請求項4に記載の鉗子装置。
【請求項6】
前記第1操作ダイアル及び第2操作ダイアルは、同一方向に回動された場合に、前記ウォームの軸を同一方向に回動可能である
請求項5に記載の鉗子装置。
【請求項7】
前記シャフト部の前記軸を中心に前記シャフト部を回動可能なシャフト調整部を更に有する
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の鉗子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、内視鏡下外科手術等の外科手術で使用される鉗子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
外科手術では多くの専用の医療器具が使用される。その中で組織を切ったり掴んだりする装置として鉗子装置が知られている。例えば、腹腔鏡下手術や胸腔鏡下手術等の内視鏡下外科手術においては、高解像度カメラを搭載した内視鏡カメラを使用し、モニタ越しに術者が内視鏡下手術用の鉗子装置を用いて手技を行う。術式によっては、鉗子装置を体内の奥深くに挿入することがあり、シャフトが長い鉗子装置が使用される。
【0003】
このような鉗子装置としては、ハンドルが着脱可能な鉗子装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、鉗子装置には、遠位端に関節があり、多自由度に操作できる鉗子装置も知られている。
【0005】
手術によっては、術者が両手のそれぞれに鉗子装置をもって手技を行うことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、片手で鉗子装置を使用することが要請される場合があるので、より容易に操作することの鉗子装置が要請されている。
【0008】
また、上述したように、手術によっては、術者は両手のそれぞれにより鉗子装置を操作することがあるが、これに対応するためには、左手用の鉗子装置、右手用の鉗子装置を用意しなければならない。さらに、複数の術者により手術がされる場合には、それぞれの術者に対して、それぞれの手用の鉗子装置を用意しなければならない。
【0009】
このような場合に対応するために、予めそれぞれの手用の鉗子装置を大量に用意しなければならない。このように多くの鉗子装置を用意すると、費用が掛かるとともに、管理が大変となる。また、多くの鉗子装置を用意すると、使用頻度が低い鉗子装置が発生してしまう可能性もある。
【0010】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、術者のいずれの手でも容易且つ適切に使用することのできる鉗子装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の観点に係る鉗子装置は、鉗子装置であって、対象物の挟み込みが可能な挟み込み部と、前記挟み込み部の基端側に接続され、真直状態と屈曲状態とをとることが可能な屈曲部と、前記屈曲部の基端側に接続されるシャフト部と、
前記屈曲部による屈曲を操作可能な屈曲操作部と、を有する本体部と、前記挟み込み部の挟み込み操作が可能であり、且つユーザが片手の指により前記挟み込み操作可能な操作部と、を備え、前記操作部は、前記シャフト部の軸に対して所定の第1状態で配置可能であるとともに、前記第1状態を前記シャフト部の軸を中心に反対側に回転させた第2状態で配置可能であり、前記屈曲操作部は、前記操作部が前記第1状態で配置されている場合において、前記操作部を操作する片手の指により操作可能な範囲に屈曲を操作する第1操作ダイアルを有するとともに、前記操作部が前記第2状態で配置されている場合において、前記操作部を操作する片手の指により操作可能な範囲に屈曲を操作する第2操作ダイアルを有する。
【0012】
上記鉗子装置において、前記操作部は、前記シャフト部の前記軸を中心に回動可能であってもよい。
【0013】
上記鉗子装置において、前記操作部は、前記本体部に対して脱着可能であってもよい。
【0014】
上記鉗子装置において、前記屈曲部の先端に、一対の操作線の一端が接続されており、前記一対の操作線の他端と接続され、所定の軸を中心に回動することにより、一方の操作線を引いて、操作線の張力の調整が可能な調整部を有し、前記第1操作ダイアル又は前記第2操作ダイアルを回動させることにより、前記調整部を回動可能であってもよい。
【0015】
上記鉗子装置において、前記調整部は、ウォームホイールと、前記ウォームホイールに螺合するウォームとを有し、前記第1操作ダイアル及び第2操作ダイアルは、前記ウォームの軸を回動可能であってもよい。
【0016】
上記鉗子装置において、前記第1操作ダイアル及び第2操作ダイアルは、同一方向に回動された場合に、前記ウォームの軸を同一方向に回動可能であってもよい。
【0017】
上記鉗子装置において、前記シャフト部の前記軸を中心に前記シャフト部を回動可能なシャフト調整部を更に有していてもよい。
【0018】
第2の観点に係る鉗子装置は、鉗子装置であって、対象物の挟み込みが可能な挟み込み部と、前記挟み込み部の基端側に接続され、真直状態と屈曲状態とをとることが可能な屈曲部と、前記屈曲部の基端側に接続されるシャフト部と、を備え、前記屈曲部は、複数のリンク部品を直列状に配列させて構成されており、前記屈曲部は、第1リンク部品及び前記第1リンク部品の基端側に隣接する第2リンク部品を含み、前記第1リンク部品は、基端側に、前記屈曲部の屈曲する屈曲面に対して垂直な線上において、外方に突出する第1凸状部と、前記屈曲面に対して垂直な線上において前記第1凸状部と反対側に、内方が凹む第1凹状部とを有し、前記第2リンク部品は、先端側に、前記屈曲面に対して垂直な線上において前記第1凸状部と反対側に外方に突出し、前記第1凹状部と遊嵌する第2凸状部と、前記屈曲面に対して垂直な線上において前記第1凹状部と反対側に内方が凹み、前記第1凸状部と遊嵌する第2凹状部とを有する。
【0019】
上記鉗子装置において、前記屈曲部が真直状態である場合に、前記屈曲面に対して一方の側において、隣接するリンク部材同士の面が接触し、前記屈曲面に対して他方の側において、隣接するリンク部材同士の面が非接触であってもよい。
【0020】
第3の観点に係る鉗子装置は、鉗子装置であって、対象物の挟み込みが可能な挟み込み部と、前記挟み込み部の基端側に接続され、真直状態と屈曲状態とをとることが可能な屈曲部と、前記屈曲部の基端側に接続されるシャフト部と、前記屈曲部の先端側に、一端が接続された一対の操作線と、前記一対の操作線の他端と接続され、所定の軸を中心に回転することにより、一方の操作線を引くとともに他方の操作線を押すことが可能な操作線駆動部と、前記屈曲部を屈曲状態にする際に前記操作線駆動部により引かれる一方の操作線についての前記操作線駆動部により引かれることが可能な最大量を調整可能な最大量調整部と、を備える。
【0021】
上記鉗子装置において、前記操作線駆動部は、前記所定の軸を中心に回転する部分円形状の移動量調整部を有し、前記最大量調整部は、前記移動量調整部の辺部分と接触して前記移動量調整部の回転を制限することにより、前記最大量を規制し、前記最大量調整部は、前記辺部分と接触する位置を変更可能であってもよい。
【0022】
上記鉗子装置において、前記最大量調整部は、所定の軸を中心に回転可能に設置され、前記所定の軸から外面までの距離が異なる形状となっており、前記最大量調整部を回転させて前記辺部分と接触する外面の部分を変更することにより、前記辺部分と接触する位置を変更可能であってもよい。
【0023】
また、第3の観点に係る鉗子装置は、鉗子装置であって、対象物の挟み込みが可能な挟み込み部と、前記挟み込み部の基端側に接続され、真直状態と屈曲状態とをとることが可能な屈曲部と、前記屈曲部の基端側に接続されるシャフト部と、前記屈曲部による屈曲を操作可能な屈曲操作部と、前記挟み込み部の挟み込み操作が可能であり、且つユーザが片手の指により前記挟み込み操作可能な操作部と、前記シャフト部内に配策され、前記操作部の動力を前記挟み込み部に伝える操作線と、を備え、前記操作線は、前記屈曲部の全体の範囲を含む範囲において、中空ロープにより補強されている。
【発明の効果】
【0024】
本発明によると、いずれの手でも容易且つ適切に使用し易い鉗子装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図4】鉗子装置の挟み込み部及び関連部位の分解図である。
【
図6】左手用状態の鉗子装置の上面図、側面図、及び背面図である。
【
図8】右手用状態の鉗子装置の上面図、側面図、及び背面図である。
【
図9】左手用状態の鉗子装置の本体部と操作部との接続状態を示す図である。
【
図10】本体部と操作部との着脱時の状態を示す図である。
【
図12】屈曲部のリンク部品の構成及びリンク部品の接続方法を説明する図である。
【
図13】屈曲部の曲げ伸ばし動作に関わる構成及びその動作を説明する図である。
【
図14】屈曲部の曲げ伸ばし動作に関わる構成を詳細に説明する図である。
【
図15】鉗子装置のメカエンドを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
実施形態に係る鉗子装置について図面を参照して説明するが、本発明は、当該図面に記載の実施形態にのみ限定されるものではない。
【0027】
本明細書において、「先端側」及び「先端方向」とは、挟み込み部が位置する側及び方向を意味する。また、「基端側」及び「基端方向」とは、挟み込み部を駆動させる動力を加える操作部が位置する側及び方向を意味する。また、「先端」とは、任意の部材または部位における先端側の端部、「基端」とは、任意の部材または部位における基端側の端部をそれぞれ示す。
【0028】
図1は、一実施形態に係る鉗子装置の斜視図であり、左手での操作を想定している状態(左手用状態)となっている鉗子装置の斜視図である。図における方向を説明する際には、図示したX軸,Y軸,Z軸を適宜用いる。ここで、X軸のプラスの方向(X軸を示す矢印の方向)が先端側を示し、その逆が基端側を示す。また、鉗子装置1の長手方向を水平にした状態(基準状態という)とした場合には、Z軸方向は、垂直方向であり、X軸は、長手方向であり、Y軸は、長手方向と直交する短手方向である。そこで、Z軸方向のことを上下方向、Y軸方向のことを左右方向又は横方向ということもある。
【0029】
鉗子装置1は、多自由度の鉗子装置であり、挟み込み部7と、屈曲部6と、シャフト部4を含む本体部2と、操作部8と、を備える。挟み込み部7は、対象物を把持するための部位であり、エンドエフェクター71,72(
図4参照)の開閉動作及びシャフト部4の軸を中心とする回転動作が可能である。屈曲部6は、挟み込み部7とシャフト部4とを接続し、シャフト部4の軸方向に沿った真直状態と、所定の方向に屈曲する屈曲状態とをとることができる。
【0030】
本体部2は、シャフト部4を備え、挟み込み部7の軸に対する回転動作をさせるため、屈曲部6を真直状態としたり、屈曲状態としたりする動作(曲げ伸ばし動作)をさせるために術者が操作するための部位である。
【0031】
操作部6は、挟み込み部7の開閉動作させるためにユーザが操作するための部位である。
【0032】
【0033】
鉗子装置1は、例えば、操作部8と、本体部2及び屈曲部6と、挟み込み部7及び操作線36とに分解することができる。
【0034】
挟み込み部7は、基端側にエンドエフェクターの開閉動作の操作入力を伝達する操作線36が接続可能されている。操作線36は、基端側から、操作部8と係合するための係合部36eと、外形が多角形形状(例えば、六角形形状)のハイポチューブ36aと、円筒状のハイポチューブ36bと、ワイヤーロープ36cと、ワイヤーロープ36cの先端側を覆う中空ロープ36dとにより構成され、本体部2内に配策される。中空ロープ36dは、ワイヤーロープを中空状に形成したロープである。中空ロープ36dは、挟み込み部7を屈曲部6の先端に取り付けた際に、屈曲部6の屈曲部分に対応する位置に配置され、X軸方向の長さL1は、屈曲部6の屈曲部分の長さ以上となっている。中空ロープ36dによると、ワイヤーロープ36cに対して屈曲に対する弾性力を補強することができ、これにより、屈曲部6の屈曲状態の形状をほぼ同一の形状とすることができる。
【0035】
次に、鉗子装置1の本体部2を詳細に説明する。
図3は、その分解図である。
【0036】
鉗子装置1の本体部2は、シャフト部4と、本体部ケース21,22と、ウォーム23と、ウォームホイール24と、高さ調整部材25と、ウォームホイール回転軸26と、スライド部27,28と、ピン29と、ネジ30と、操作ダイアル31,33(第1操作ダイアル及び第2操作ダイアルの一例)と、ネジ32,34と、挟み込み部回転ダイアル35と、を有する。ここで、特許請求の範囲における調整部、操作線駆動部は、主に、ウォームホイール24、ピン29、スライド部27,28により構成され、移動量調整部は、ウォームホイール24により構成され、屈曲操作部は、主に、ウォーム23、操作ダイアル31,33により構成される。
【0037】
本体部ケース21,22は、ウォーム23、ウォームホイール24、高さ調整部材25、ウォームホイール回転軸26、スライド部27,28、及びピン29を収容するケースである。本体部ケース21は、基端側に操作部8との着脱を規制するリブ21aを有する。また、本体部ケース21は、スライド部27のX軸に沿う移動を案内するガイド溝21bと、スライド部28のX軸に沿う移動を案内するガイド溝21cと、を有する。
【0038】
ウォーム23は、回転軸がZ軸方向となるように本体部ケース21,22に収容され、一端側(
図3では、Z軸のプラス側)にネジ32により操作ダイアル31が一体回転可能に固定され、他端側(
図3では、Z軸のマイナス側)にネジ34により操作ダイアル33が一体回転可能に固定される。操作ダイアル31,33は、ユーザが屈曲部6の曲げ伸ばし動作を行うために回動させる円盤状のダイアルである。
【0039】
ウォームホイール24は、ウォーム23と歯合するように配置される。
図3の例では、ウォームホイール24は、ウォームホイール回転軸26により、Y軸中心に回動可能に本体部ケース21,22に取り付けられる。したがって、ウォームホイール24は、ウォーム23がZ軸中心に回動すると、Y軸中心に回動するようになっている。ウォームホイール24のY軸のマイナス側には、高さ調整部材25がネジ30により取り付けられている。ウォームホイール24及び高さ調整部材25のY軸のマイナス側には、ウォームホイール24の回転軸に対して対称な位置に、2つのピン29が装着されている。
【0040】
スライド部27は、屈曲部6の曲げ伸ばし動作を操作するための一方の操作線37(
図4参照)に接続され、ウォームホイール24の回動に応じて、操作線37を引っ張ったり、押したりする部位である。スライド部27は、長孔27aと、凸部27bとを有する。長孔27aは、Z軸に沿って延びて形成され、ピン29をZ軸に沿って移動可能に収容する。凸部27bは、本体部ケース21のガイド溝21bに係合して、スライド部27をX軸に沿って直線移動可能に案内する。
【0041】
スライド部28は、屈曲部6の曲げ伸ばし動作を操作するための一方の操作線38(
図4参照)に接続され、ウォームホイール24の回動に応じて、操作線38を引っ張ったり、押したりする部位である。スライド部28は、長孔28aと、凸部28bとを有する。長孔28aは、Z軸に沿って延びて形成され、ピン29をZ軸に沿って移動可能に収容する。凸部28bは、本体部ケース21のガイド溝21cに係合して、スライド部28をX軸に沿って直線移動可能に案内する。
【0042】
挟み込み部回転ダイアル35は、ユーザが挟み込み部7の回転動作を操作するための円盤状のダイアルである。挟み込み部回転ダイアル35は、回転軸がX軸となるように本体部ケース21,22に収容される。挟み込み部回転ダイアル35は、中心部に、操作線36のハイポチューブ36aの外形に対応する貫通孔35aを有する。挟み込み部回転ダイアル35と、操作線36のハイポチューブ36aとは、ハイポチューブ36aが貫通孔35aと係合する位置となるように構成されている。これにより、挟み込み部回転ダイアル35が回動されると、操作線36のハイポチューブ36aが一体して回動し、この結果、操作線36に接続されている挟み込み部7が回動することとなる。
【0043】
シャフト部4は、メインシャフト41と、係合部42と、メインシャフトダイアル43と、ダイアルキャップ44と、装着リング45,46と、シャフト支持部47と、調整ナット48,49と、中間キャップ50と、先端キャップ51とを有する。ここで、特許請求の範囲におけるシャフト調整部は、主に、係合部42と、メインシャフトダイアル43とにより構成される。
【0044】
メインシャフト41は、中空の円筒状のシャフトであり、例えば、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastic)や、医療用のステンレス等で構成されている。
【0045】
係合部42は、略円筒状の形状であり、本体部ケース21,22の先端部にX軸中心に回転可能に係合する。係合部42の内部には、シャフト支持部47を一体回転可能に固定する固定部42aを有する。
【0046】
メインシャフトダイアル43は、略円筒状の形状であり、ユーザがシャフト部41全体をX軸中心に回転させるために、具体的には、屈曲部6の屈曲方向を変更するために回動させるダイアルである。メインシャフトダイアル43は、係合部42を一体回転可能に収容する。メインシャフトダイアル43は、内周側にX軸に沿って延び、所定の中心角毎に対応する位置に形成された複数の位置規制溝43aを有する。位置規制溝43aは、本体部ケース21に形成された図示しないリブと係合することにより、シャフト部4を所定の角度位置に規制することができる。ダイアルキャップ44は、円筒状の形状であり、メインシャフトダイアル43の先端側に装着される。
【0047】
シャフト支持部47は、内部にX軸に沿う貫通孔を有する部材であり、基端部47aと、角柱部47bと、ネジ部47cと、先端部47dとを有する。基端部47aは、円筒状であり、周囲に装着リング45,46が装着され、装着リング45,46を介して、本体部ケース21の先端部の内周に回転可能に装着される。角柱部47bは、係合部42の固定部42aに対応する外形形状を有し、固定部42aに装着されて固定されることにより、係合部42と一体回転可能になっている。ネジ部47cは、ナット48,49と螺合する。先端部47dは、ネジ部47cの外径よりも短い径の円筒状の形状をしている。
【0048】
中間キャップ50は、ドーム状の形状をしており、係合部42の先端と係合し、シャフト支持部47のネジ部47cよりも基端側を覆う。
【0049】
先端キャップ51は、略円筒形状をしており、シャフト支持部47のネジ部47c及び先端部47dの径方向外側に位置した状態で、シャフト支持部47上をX軸に沿って移動可能に配置される。先端キャップ51の基端側は、ネジ部47cに螺合されたナット49と接触するようになっており、先端キャップ51のX軸のマイナス方向の位置は、ナット49の位置により規制される。
【0050】
先端キャップ51には、孔51aが形成されている。孔51aに対して図示しない固定ピンを圧入することにより、先端キャップ51と、先端キャップ51の内孔に挿入されているメインシャフト41とが固定される。なお、メインシャフト41は、基端側の位置が、例えば、シャフト支持部47よりも基端側となるように、先端キャップ51に固定されていてもよい。
【0051】
上記構成によって、シャフト部4においては、ナット49のX軸の位置を調整することにより、先端キャップ51のX軸の位置を調整でき、結果として、メインシャフト41の先端側の位置を調整することができる。
【0052】
次に、鉗子装置1の挟み込み部7及び関連部位について詳細に説明する。
図4は、その分解図である。
【0053】
メインシャフト41の先端側には、屈曲部6が接続される。屈曲部6には、曲げ伸ばし動作を操作する操作線37,38が接続される。操作線37は、基端側から、ハイポチューブ37aと、ワイヤーロープ37bと、係合端子37cとを有する。操作線38は、基端側から、ハイポチューブ38aと、ワイヤーロープ38bと、係合端子38cとを有する。
【0054】
挟み込み部7は、一対のエンドエフェクター71,72と、ピン73と、挟み込み部本体部74と、カム75と、を有する。
【0055】
挟み込み部本体部74は、略円筒部材であり、基端側が屈曲部6の先端部に回転可能に装着される。挟み込み部本体部74は、軸方向(X軸方向)に延び、カム75のX軸に沿う移動を可能にするスライド溝74aと、孔74bとを有する。
【0056】
カム75は、操作線36の先端側に一体回転可能に接続される板状部材である。カム75は、Z軸のプラス側の面に形成された斜行溝75aと、Z軸のマイナス側の面に形成された斜行溝75bと、Y軸のプラス側及びマイナス側に突出した凸状部75cとを有する。斜行溝75aと、斜行溝75bとは、Z軸のプラス側から視てX字状になるように構成されている。すなわち、斜行溝75aは、先端側に行くほど、X軸のプラス側及びY軸のプラス側に位置するように形成されている一方、斜行溝75bは、先端側に行くほど、X軸のプラス側及びY軸のマイナス側に位置するように形成されている。
【0057】
カム75は、凸状部75cが挟み込み部本体部74のスライド溝74aに係合するように挟み込み部本体部74の内部空間に配置される。これにより、カム75は、挟み込部本体部74内において、X軸に沿って移動可能となっている。
【0058】
エンドエフェクター71,72は、互いの間の角度を狭める(閉める)ことにより、対象物を把持することができ、互いの間の角度を広げることにより、対象物の把持を解消することができる。エンドエフェクター71は、先端側のY軸のマイナス側の面が対象物を把持するための面であり、Z軸のマイナス側に突出する突起71aと、Z軸方向に延びる孔71bとを有する。エンドエフェクター72は、先端側のY軸のプラス側の面が対象物を把持するための面であり、Z軸のプラス側に突出する突起72aと、Z軸方向に延びる孔72bとを有する。
【0059】
エンドエフェクター71は、突起71aがカム75の斜行溝75aに係合するようにされ、エンドエフェクター72は、突起72aがカム75の斜行溝75bに係合するようにされて互いに重ねあわされた状態とされ、それらが挟み込み部本体部74の内部空間に配置された後、孔71b、孔72bに挿入しつつ、孔74bにピン73を圧入することで、ピン73が挟み込み部本体部74に固定される。エンドエフェクター71は、ピン73を中心に矢印R1に示すように回動可能であり、エンドエフェクター72は、ピン73を中心に矢印R2に示すように回動可能である。
【0060】
エンドエフェクター71は、突起71aが斜行溝75aに係合しているので、カム75が先端側に移動すると、先端側がY軸のプラス側となる方向に回転する一方、カム75が基端側に移動すると、先端側がY軸のマイナス側となる方向に回転する。一方、エンドエフェクター72は、突起72aが斜行溝75bに係合しているので、カム75が先端側に移動すると、先端側がY軸のマイナス側となる方向に回転する一方、カム75が基端側に移動すると、先端側がY軸のプラス側となる方向に回転する。これにより、エンドエフェクター71,72は、カム75が先端側に移動すると、先端の把持する面が開く、すなわち、対象物の把持を解除するように動作し、カム75が基端側に移動すると、先端の把持する面が閉まる、すなわち、対象物を把持するように動作する。
【0061】
次に、鉗子装置1の操作部8について詳細に説明する。
図5は、鉗子装置の操作部の分解図である。
【0062】
操作部8は、操作部ケース81,82と、指掛け84と、回転ブロック85と、ロックボルト86と、ラチェット爪87と、ラチェット歯車88と、ラチェット解除ボタン89とを有する。
【0063】
操作部ケース81には、指掛け83が設けられている。指掛け83は、片手の人差し指や中指が挿入され、鉗子装置1を保持し、挟み込み部7の開閉動作のための駆動力を加えるための部位である。
【0064】
指掛け84は、片手(基本的には、指掛け83で使用する指と同じ手)の親指が挿入され、鉗子装置1を保持し、挟み込み部7の開閉動作のための駆動力を加えるための部位である。指掛け84は、操作部81,82に回動可能に装着され、指掛け83との間の角度を調整可能である。指掛け84には、ラチェット歯車88が装着される。
【0065】
指掛け84は、操作線36の係合部36eと係合する操作線係合部84aを有する。本実施形態では、指掛け84を指掛け83との間の角度が小さくなる方向に回動させると、操作線36の係合部36eをX軸のマイナス側に移動させること、すなわち、操作線36を基端側に引っ張ることができ、指掛け84を指掛け83との間の角度が大きくなる方向に回動させると、操作線36の係合部36eをX軸のプラス側に移動させること、すなわち、操作線36を先端側に押すことができる。
【0066】
ロックボルト86は、操作部ケース81,82の上部に配置され、締め付けることにより回転ブロック85を回転不能に固定することができる。本実施形態では、ロックボルト86は、回転ブロック85の平面部85bに対向する位置で締め付けることにより、本体部2と操作部8とを、鉗子装置1が左手用状態又は右手用状態となるように固定することができる。
【0067】
操作部ケース82のY軸のマイナス側の内周には、本体部ケース21のリブ21aに対応する形状のスリット82aが形成されている。操作部ケース82のスリット82aに対応する外周側には、スリット82aがある位置を示す取外マーク82bが設けられている。
【0068】
回転ブロック85は、略円筒状であり、操作部ケース81,82内にX軸中心に所定角度(例えば、180度)だけ回転可能に収容されている。回転ブロック85の回転中心は、メインシャフト41の軸とほぼ一致する位置となっている。回転ブロック85の基端側には、本体部2の基端部の外形形状と係合する係合孔85aが形成されている。本実施形態では、係合孔85aは、例えば、半円柱状となっている。回転ブロック85の外周における、鉗子装置1が左手用状態となった場合に本体部2の上部となる位置と、鉗子装置1が右手用状態となった場合に本体部2の上部となる位置とのそれぞれに平面部85bが設けられている。
【0069】
操作部ケース81には、ラチェット爪87が装着されている。ラチェット爪87は、ラチェット歯車88と係合することにより、指掛け84の挟み込み部7の開方向への回動を規制し、指掛け84の挟み込み部7の閉方向への回動を許容する。
【0070】
ラチェット解除ボタン89は、ピン90を介して操作部ケース82に装着されている。ラチェット解除ボタン89は、押下されると、ラチェット爪87とラチェット歯車88との係合状態を解除する。これにより、指掛け84の挟み込み部7の開方向への回動を可能にする。
【0071】
上記した構成により、操作部8は、本体部2に対して(厳密には、メインシャフト41の軸中心に)、例えば、180度回転可能となっており、操作部8及び本体部2を左手用状態にすることができるとともに、操作部8を左手用状態から反対側(例えば、180度)に回転させることにより、操作部8及び本体部2を右手用状態にすることができる。なお、左手用状態から右手用状態にする回転角度は、例えば、160~200度の範囲内の所定の角度としてもよい。
【0072】
次に、左手用状態となっている鉗子装置1について説明する。
図6は、その上面図、側面図、及び背面図であり、(a)は上面図、(b)は側面図、(c)は背面図、を示している。
【0073】
左手用状態においては、鉗子装置1の本体部2の操作ダイアル31,33は、本体部2のY軸のプラス側に位置している。操作ダイアル33は、指掛け84に左手の親指を挿入し、指掛け83に左手の中指を挿入した状態において、左手の人差し指が到達可能な範囲に位置し、操作できるように配置されている。したがって、ユーザは、左手のみで、操作ダイアル33を操作して、屈曲部6の曲げ伸ばし動作を行うことができる。
【0074】
次に、右手用状態となっている鉗子装置1について説明する。
図7は、右手用状態の鉗子装置の斜視図であり、
図8は、その上面図、側面図、及び背面図であり、(a)は上面図、(b)は側面図、(c)は背面図を示している。
【0075】
鉗子装置1は、上述したように、左手用状態から、操作部8を本体部2に対して180度回転させることにより、
図7に示す右手用状態とすることができる。なお、
図7は、右手用状態となっている鉗子装置1について、操作部8が同様な向きとなる状態を示しているので、本体部2は、左手用状態の場合において180度回転した状態となっている。
【0076】
右手用状態においては、鉗子装置1の本体部2の操作ダイアル31,33は、本体部2のY軸のマイナス側に位置している。操作ダイアル31は、指掛け84に右手の親指を挿入し、指掛け83に右手の中指を挿入した状態において、右手の人差し指が到達可能な範囲に位置し、操作できるように配置されている。したがって、ユーザは、右手のみで、操作ダイアル31を操作して、屈曲部6の曲げ伸ばし動作を行うことができる。
【0077】
左手用状態の鉗子装置1において、左手の人差し指により操作ダイアル33を手前に引く操作、すなわち、操作ダイアル33を矢印R3方向(
図6(a))に回動させる操作と、右手用状態の鉗子装置1において、右手の人差し指により操作ダイアル31を手前に引く操作、すなわち、操作ダイアル31を矢印R4方向(
図8(a))に回動させる操作とは、ウォーム23を同じ方向に回動させる操作であり、屈曲部7に対して同一の動作(本実施形態では、屈曲部7を屈曲させる動作)を行わせる操作となる。したがって、いずれの手を使う場合であっても、人差し指により操作ダイアルを手前に引く操作を行えば、同じように屈曲部7が動作することとなるので、ユーザにとっては、直感的な操作で容易且つ適切に使用することができる。
【0078】
次に、左手用状態における鉗子装置の本体部と操作部との接続状態について説明する。
図9は、左手用状態の鉗子装置の本体部と操作部との接続状態を示す図である。
図9において、(a)は、その本体部及び操作部の側面図であり、(b)は、断面図であり、(c)、その操作部の正面図である。
【0079】
左手用状態における鉗子装置1においては、本体部2のリブ21aは、
図9(b)に示すように、Z軸のプラス側に位置している一方、操作部8のスリット82aは、
図9(c)に示すように、Y軸のマイナス側に位置しており、両者の位置が一致していないので、本体部2から操作部8を取り外すことはできない。
【0080】
次に、鉗子装置1の本体部2と操作部8との着脱時について説明する。
図10は、鉗子装置の本体部と操作部との着脱時の状態を示す図である。
図10において、(a)は、着脱時の鉗子装置の本体部及び操作部の側面図であり、(b)は、B-B線での鉗子装置の本体部及び操作部の断面図であり、(c)は、着脱時の鉗子装置の操作部の正面図である。
【0081】
図9(a)に示す左手用状態における鉗子装置1において、本体部2から操作部8を取り外す際には、本体部2の取外マーク21dと操作部8の取外マーク82bとが対向するように本体部2と操作部8とを相対回転(本実施例では、本体部2を操作ダイアル31が図面手前側となる相対回転)させて、
図10(a)に示す状態(着脱時状態)とする。
【0082】
図10(a)に示す状態においては、
図10(b)、
図10(c)に示すように、本体部2のリブ21aと、操作部8のスリット82aとは、Y軸のマイナス側の同じ位置に位置することとなる。このため、本体部2のリブ21aは、スリット82aを介してX軸方向に移動可能となり、操作部8を本体部2から取り外すことができる。なお、本体部2に操作部8を装着する場合には、本体部2と操作部8とを取り外した直後と同様な位置関係にして、本体部2のリブ21aを、スリット82aを介して操作部8内に導入し、その後、操作部8と本体部2とを相対回転させればよい。
【0083】
次に、鉗子装置1の屈曲部6について詳細に説明する。
図11は、鉗子装置の屈曲部の拡大図である。
図11において、(a)は、真直状態の屈曲部6の正面図であり、(b)は、その断面図であり、(c)は、真直状態の屈曲部6の屈曲面に対して垂直な方向からの側面図であり、(d)は、屈曲部6のC-C線での断面図であり、(e)は、屈曲状態の屈曲部6の側面図である。
図12は、屈曲部のリンク部品の構成及びリンク部品の接続方法を説明する図である。
図12において、(a)は、屈曲部のリンク部品の接続前の正面図を示し、(b)は、屈曲部のリンク部品の接続前の断面図を示し、(c)は、屈曲部のリンク部品の接続後の正面図を示し、(d)は、屈曲部のリンク部品の接続後の断面図を示す。
【0084】
屈曲部6は、先端リンク部品61と、複数のリンク部品62と、基端リンク部品63とを備え、これらの部品が、直列的に連結されている。先端リンク部品61は、先端側に挟み込み部7の基端側を、相対回転可能に装着可能である。先端リンク部品61の基端側の構成は、リンク部品62の基端側の構成と同様である。先端リンク部位61は、操作線37の係合端子37cと、操作線38の係合端子38cと係合する、2つの凹部61aが形成されている。
【0085】
基端リンク部品63は、基端側にメインシャフト41の先端側に挿入されて一体回転可能に係合するシャフト係合部63aを有する。基端リンク部品63の先端側の構成は、リンク部品62の先端側の構成と同様である。
【0086】
図11(c)に示すように、リンク部品62の先端側には、真直状態における軸方向に対して垂直な面を有する上面接触部62cを有し、基端側には、真直状態における軸方向に対して垂直な面を有する真直時接触部62aと、真直状態における軸方向に対する垂直な面よりも先端側に傾く面を有する屈曲時接触部62bとを有する。
【0087】
屈曲部6においては、
図11(d)に示すように、中央部に、操作線36を挿通させる操作線用孔64が形成され、真直時接触部62a側に、操作線37を挿通させる操作線用孔66が形成され、屈曲部接触部62b側に、操作線38を挿通させる操作線用孔65が形成されている。
【0088】
リンク部品62は、
図12(b)に示すように、上部壁部62dと、屈曲面に対して上部壁部62dと反対側に形成された上部壁部62hと、上部壁部62dから屈曲面に垂直な線上において外方に突出する上部凸状部62e(第2凸状部の一例)と、上部壁部62hに上部凸状部62eの突出方向と同じ線上に形成された上部孔部62i(第2凹状部の一例)と、上部壁部62hよりも径方向内側に位置する下部壁部62jと、屈曲面に対して下部壁部62jと反対側に形成され、上部壁部62dよりも径方向外側に位置する下部壁部62fと、下部壁部62jから屈曲面に垂直な線上において外方に突出する下部凸状部62k(第1凸状部の一例)と、下部壁部62fに下部凸状部62kの突出方向と同じ線上に形成された下部孔部62g(第1凹状部の一例)とを有する。ここで、屈曲面とは、屈曲部6が屈曲する際に移動する平面であり、
図12においては、紙面に垂直な面であって、紙面の上下方向に延びる面である。
【0089】
先端側のリンク部品62と、基端側のリンク部品62を接続する場合には、
図12(a)に示す状態から、先端側(図中上側)のリンク部品62を左側に移動させるだけでよく、これにより、先端側のリンク部品62と、基端側のリンク部品62とは、
図12(c)に示すように接続されることとなる。この場合には、
図12(d)に示すように、先端側のリンク部品62の下部凸状部62kが基端側のリンク部品62の上部孔部62iに遊嵌される(回転可能に嵌め合わされる)とともに、基端側のリンク部品62の上部凸状部62eが先端側のリンク部品62の下部孔部62gに遊嵌される。このように、本実施形態のリンク部品62によると、各リンク部品を容易に接続することができる。
【0090】
図11の説明に戻り、真直状態の屈曲部6においては、リンク部品62の真直時接触部62aは、
図11(c)に示すように、基端側の部品(リンク部品62又は基端リンク部品63)の上面接触部62cと接触する。また、リンク部品62と、基端側の部品とは、先端側のリンク部品62の下部凸状部62kと、基端側の部品の上部凸状部62eとにより位置が規制される。これにより、真直状態の屈曲部6における屈曲に対する効力を大きくすることができ、すなわち、真直状態の屈曲部6の剛性を高くすることができ、屈曲部6の真直した状態を比較的安定して維持することができる。
【0091】
一方、屈曲状態の屈曲部6においては、リンク部品62の屈曲時接触部62bは、
図11(e)に示すように、基端側の部品(リンク部品62又は基端リンク部品63)の上面接触部62cと接触する。また、リンク部品62と、基端側の部品とは、先端側のリンク部品62の下部凸状部62kと、基端側の部品の上部凸状部62eとにより位置が規制される。これにより、屈曲状態の屈曲部6における屈曲を阻害することに対する効力を大きくすることができ、屈曲した状態を比較的安定して維持することができる。
【0092】
次に、鉗子装置1における屈曲部6の曲げ伸ばし動作に関わる構成及びその動作について詳細に説明する。
図13は、鉗子装置の屈曲部の曲げ伸ばし動作に関わる構成及びその動作を説明する図である。
図13において、(a)は、真直状態の鉗子装置の状態を示し、(b)は、屈曲状態の鉗子装置の状態を示す。
図14は、鉗子装置の屈曲部の曲げ伸ばし動作に関わる構成を詳細に説明する図であり、ウォームホイール24の上部の部品を取り除いた状態を示す。
図14において、(a)は、真直状態の鉗子装置の一部の状態を示し、(b)は、屈曲状態の鉗子装置の一部の状態を示す。
【0093】
鉗子装置1においては、
図13(a)に示すように、スライド部27には、操作線37が接続されている。操作線37の先端の係合端子37cは、屈曲部6の先端部の真直側(真直時接触部62aがある側)に接続されるように配策されている。この操作線37は、基端側に引っ張られると、屈曲部6を真直状態とするように作用する。一方、スライド部28には、操作線38が接続されている。操作線38の先端の係合端子38cは、屈曲部6の先端部の屈曲側(屈曲時接触部62bがある側)に接続されるように配策されている。この操作線38は、基端側に引っ張られると、屈曲部6を屈曲状態とするように作用する。
【0094】
鉗子装置1は、真直状態では、
図13(a)に示すように、スライド部27,28は、X軸での位置がほぼ同じ位置となっている。スライド部27から屈曲部6の係合部分までの操作線37の長さよりも、スライド部28から屈曲部6の係合部分までの操作線38の長さが長くなっており、操作線37が基端側に引っ張られた状態となる一方、操作線38が緩んでいる状態となっている。この場合には、ウォームホイール24は、
図14(a)に示すように、ウォームホイール24の真直側接触部24bは、本体部ケース21と接触した状態となっている。ここで、ウォームホイール24は、例えば、部分円形状をしており、Y軸のマイナス側の面において、回転軸に対して対称な位置に、2つのピン設置穴24aを有する。ウォームホイール24は、真直状態にする場合には、時計回り(矢印R5)方向に回転され、屈曲状態にする場合には、反時計回り(矢印R6)方向に回転されることとなる。ウォームホイール24の時計回り方向の先端となる辺部分には、時計回り方向に最も回転させた際に本体部ケース21と接触する真直側接触部24bを有し、ウォームホイール24の反時計回り方向の先端となる辺部分には、反時計回り方向に最も回転させた際にメカエンド39(最大量調整部の一例)と接触する屈曲側接触部24cを有する。
【0095】
鉗子装置1を
図13(a)に示す真直状態から
図13(b)に示す屈曲状態にする場合には、ユーザは、操作ダイアル31を回転させることにより、ウォーム23を回転させて、
図14(b)に示すように、ウォームホイール24を反時計回り(矢印R6)方向に回転させる必要がある。ウォームホイール24を反時計回り(矢印R6)方向に回転させると、ウォームホイール24の屈曲側接触部24cがメカエンド39と接触する位置まで回転する。
【0096】
このようにウォームホイール24を回転させると、ウォームホイール24の回転に伴って、2本のピン29が回転することとなる。このピン29の回転に伴って、
図13(b)に示すように、ピン29が長孔28aに収容されているスライド部28が、スライド溝21cに沿ってX軸のマイナス側に直線移動して操作線38を基端側に引っ張るとともに、ピン29が長孔27aに収容されているスライド部27が、スライド溝21bに沿ってX軸のプラス側に直線移動して、操作線37を先端側に移動させ、屈曲部6が屈曲する。
【0097】
上述したように、ウォームホイール24は、反時計回り(矢印R6)方向においては、屈曲側接触部24cがメカエンド39と接触する位置まで回転するようになっている。このようにウォームホイール24を反時計回り方向に最も回転させた場合において、屈曲部6を屈曲させる操作線38に掛かる張力(テンション)が最大となる。例えば、操作線38の製造時の精度のばらつきや、操作線38の使用による経時変化によって、ウォームホイール24を反時計回り方向に最も回転させた場合において操作線38に掛かる張力が適切でないことが起こり得る。そこで、本実施形態のメカエンド39は、ウォームホイール24の屈曲側接触部24cと接触する位置を調整できるようになっている。
【0098】
次に、ウォームホイール24の屈曲側接触部24cと接触する位置を調整可能なメカエンド39の構成を説明する。
図15は、鉗子装置のメカエンドを説明する図である。
図15(a)は、メカエンド39の斜視図であり、
図15(b)は、メカエンドの側面図であり、
図15(c)は、D-D線でのメカエンド39の断面図である。
【0099】
メカエンド39は、円柱部39aと、円柱部39bと、接触部39cと、接触部固定穴39dとを有する。円柱部39a,39bは、メカエンド39を本体部ケース21に回転可能に設置する際に本体部ケース21に接触する部分である。円柱部39aと円柱部39bとの中心軸(円柱部中心39o)は、同軸となっている。
【0100】
接触部39cは、ウォームホイール24の屈曲側接触部24cと接触する部位であり、
図15(c)に示すように、円柱部中心39oから距離D1だけ離れた接触面391と、円柱部中心39oから距離D2だけ離れた接触面392と、円柱部中心39oから距離D3だけ離れた接触面393と、円柱部中心39oから距離D4だけ離れた接触面394とを有する。ここで、距離D1>距離D2>距離D3>距離D4となっている。接触部39cによると、本体部ケース21に対する接触部39cの設置状態に応じて、ウォームホイール24の屈曲側接触部24cと接触する面を、接触面391~394のいずれかに調整でき、メカエンド39がウォームホイール24の屈曲側接触部24cと接触する位置を調整できる。例えば、操作線38に対する最大の張力を弱くする場合には、円柱部中心39oからの距離が長い接触面を選択すればよく、操作線38に対する最大の張力を強くする場合には、円柱部中心39oからの距離が短い接触面を選択すればよい。
【0101】
接触部固定穴39dは、ウォームホイール24の屈曲側接触部24cと接触するように選択された接触面を、ウォームホイール24の屈曲側接触部24cと接触する位置に固定するために、図示しないネジを挿入する穴である。
【0102】
次に、鉗子装置1の製作時又はメンテナンス時において、操作線37,38の張力を調整する操作を説明する。
【0103】
まず、真直状態の屈曲部6を引っ張る操作線37の張力の調整方法について説明する。操作線37の張力を調整する場合には、調整ナット48,49を回動させて、先端キャップ51のX軸の位置を調整する。これにより、先端キャップ51に固定されているメインシャフト41のX軸の位置を調整することができ、結果として、スライド部27から屈曲部6の操作線37の係合部分までの長さを調整することができ、すなわち、操作線37の張力を調整することができる。例えば、操作線37の張力を大きくしたい場合には、ナット48,49を先端側に移動させればよく、操作線37の張力を小さくしたい場合には、ナット48,49を基端側に移動させればよい。
【0104】
この調整方法により、真直状態における操作線37の張力、すなわち、真直状態の屈曲部6の剛性を適切に調整することができる。
【0105】
次に、屈曲状態の屈曲部6を引っ張る操作線38の張力の調整方法について説明する。操作線38の張力を調整する場合には、メカエンド39の屈曲側接触部24cと接触する面を、接触面391~394のいずれかに調整すればよい。なお、適切な接触面を決定した場合には、その状態において、接触部固定穴39dに図示しないネジを挿入して固定すればよい。
【0106】
この調整方法により、屈曲状態における操作線38の張力、すなわち、屈曲状態の屈曲部6の剛性を適切に調整することができる。これにより、屈曲状態において操作線38に必要以上の張力がかかってしまい、操作線38等を破損する事態を適切に防止することができる。
【0107】
本明細書で開示している技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0108】
例えば、上述した実施形態では、操作線36,37,38を複数の部材で構成するようにしていたが、本発明はこれに限られず、例えば、同一の部材、例えば、ワイヤーロープで構成するようにしてもよい。
【0109】
上述した実施形態において、リンク部品62の凸状部(上部凸状部62e、下部凸状部62k)と、孔部(下部孔部62g、上部孔部62i)の少なくとも一部について、凸状部を孔部に挿入した後に、凸状部が孔部から抜けることを抑制する抜け止めとして作用する構成としてもよい。例えば、凸状部の一部の径を、その径よりも内側の孔部の径よりも大きくなるようにしてもよい。
【0110】
上述の実施形態においては、ウォームホイール24を回転させて、スライド部27,28を軸方向に移動させることにより、操作線37,38の引っ張り及び押し出しを行って屈曲部6を屈曲状態又は真直状態としていたが、本発明はこれに限られず、例えば、ウォームホイールと共に回転するプーリに操作線37,38を固定して、操作線37,38の引っ張り及び押し出しを行って屈曲部6を屈曲状態又は真直状態とするようにしてもよい。
【0111】
上記実施形態では、メカエンド39の接触部39cは、円柱部中心39oからの距離が異なる複数の平面を有していたが、本発明はこれに限られず、例えば、接触部は、円柱部中心39oからの距離が連続的に変化する曲面を有するようにしてもよい。
【0112】
上記実施形態では、
図1に示す状態を左手用状態とし、
図7に示す状態を右手用状態として説明していたが、本発明はこれに限られず、
図1に示す状態を右手用状態とし、
図7に示す状態を左手用状態としてもよい。
【0113】
上述の実施形態においては、エンドエフェクター71,72は、対象物を把持する機能を有するものとしていたが、本発明はこれに限られず、対象物を切断する機能を有するエンドエフェクターとしてもよい。
【0114】
なお、本発明は、上述した実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。例えば、屈曲部6が「真直状態」というのは、厳密に真直な状態だけでなく、技術的意義の同一性を損なわない或る程度の範囲を含む「略真直」な状態を含んでもよい。
【符号の説明】
【0115】
1 鉗子装置
2 本体部
4 シャフト部
6 屈曲部
7 挟み込み部
8 操作部
21,22 本体部ケース
21a リブ、 21b,21c ガイド溝、 21d 取外マーク
23 ウォーム
24 ウォームホイール
24a ピン設置穴、 24b 真直側接触部、 24c 屈曲側接触部
25 高さ調整部材
26 ウォームホイール回転軸
27,28 スライド部
27a,28a 長孔、 27b,28b 凸部
29 ピン
30 ネジ
31,33 操作ダイアル
32,34 ネジ
35 挟み込み部回転ダイアル
35a 貫通孔
36 操作線
36a ハイポチューブ、 36b ハイポチューブ、 36c ワイヤ、
36d 中空ワイヤ、 36e 係合部
37,38 操作線
37a,38a ハイポチューブ、 37b,38b ワイヤ、
37c,38c 係合端子
39 メカエンド
39a,38b 円柱部、 39c 接触部、 39d 接触部固定穴
39o 円柱部中心
41 メインシャフト
42 係合部
42a 規制溝
43 メインシャフトダイアル
43a 位置規制溝
44 ダイアルキャップ
45,46 装着リング
47 シャフト支持部
47a 基端部、 47b 角柱部、 47c ネジ部、 47d 先端部
48,49 調整ナット
50 中間キャップ
51 先端キャップ
51a 孔
61 先端リンク部品
62 リンク部品
62a 真直時接触部、 62b 屈曲時接触部、 62c 上面接触部
62d 上部壁部、 62e 上部凸状部、 62f 下部壁部
62g 下部孔部、 62h 上部壁部、 62i 上部孔部
62j 下部壁部、 62k 下部凸状部、
63 基端リンク部品
64,65,66 操作線用孔
71,72 エンドエフェクター
71a,72a 突起、 71b,72b 孔
73 ピン
74 挟み込み部本体部
74a スライド溝、 74b 孔
75 カム
75a,75b 斜行溝、 75c 凸状部
81,82 操作部ケース
82a スリット、 82b 取外マーク
83,84 指掛け
84a 操作線係合部
85 回転ブロック
85a 係合孔、 85b 平面部
86 ロックボルト
87 ラチェット爪
88 ラチェット歯車
89 ラチェット解除ボタン
90 ネジ