(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】廃液中の有害有機化合物の分解方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/72 20230101AFI20241213BHJP
C02F 1/58 20230101ALI20241213BHJP
【FI】
C02F1/72 Z
C02F1/58 A
(21)【出願番号】P 2021018507
(22)【出願日】2021-02-08
【審査請求日】2023-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】521059848
【氏名又は名称】阿部 登壽男
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】弁理士法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 登壽男
【審査官】松浦 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特開昭49-037465(JP,A)
【文献】特開2003-080276(JP,A)
【文献】特開2004-181284(JP,A)
【文献】特開昭54-031958(JP,A)
【文献】特開昭52-045667(JP,A)
【文献】特開平11-253970(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0224648(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0175162(US,A1)
【文献】米国特許第4537686(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/58 - 1/64
C02F 1/70 - 1/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アムスエンジニアリング社製曝気装置(CATH-F)を使用し、30分以上有害有機化合物を含む廃水中に、空気あるいは酸素富化気体を廃液中に曝気して廃水中の溶存酸素量
を増加させ
、次亜塩素酸ソーダを添加し、過酸化ニッケルに酸化マグネシウム及びアルミナシリカを添加して成型した固形過酸化物と接触させること、により廃水中の有害有機化合物を分解する方法。
【請求項2】
有害有機化合物が、難分解性有機化合物である請求項1記載の有害有機化合物を分解する方法。
【請求項3】
有害有機化合物が、悪臭性有機化合物である請求項2記載の有害有機化合物を分解する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種廃液中に含有する有害有機化合物、特に難分解性の有害有機化合物の分解方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種廃液中に含有する有機化合物は、通常、酸化分解させることにより処理される。しかし、埋立地の地下水に含まれる1,4ジオキサンや、廃硫酸に含まれる1,2ジクロロエタン、あるいは毒性等価指数の高いダイオキシン類など難分解性有機化合物は、通常の曝気処理では分解できず、高温分解装置(特許文献1)や電気分解装置(特許文献2)などの高価な設備を必要とした。
また、常温における酸化処理においては、酸化ガスとしてオゾン含有ガスを使用し、さらに紫外線照射装置を必要とした(特許文献3)。
【0003】
さらに、メチルメルカプタンのような悪臭成分も、通常の曝気処理では完全に分解できず、微量でも残留すると悪臭源となるので、これを完全に分解するためには、高価な吸着剤(特許文献4)や多工程から成る設備(特許文献5)を必要とした。
【0004】
このように、廃液中に含まれる難分解性有機化合物や微量の悪臭成分を分解除去するより簡便な方法の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-057923号公報
【文献】特開2014-014754号公報
【文献】特開2008-126125号公報
【文献】特開2018-083170号公報
【文献】特開2007-319842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、各種廃液中に含有する難分解性や悪臭成分の有害有機化合物を従来法と比べより簡便な方法で分解する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、廃液中に含まれる有害有機化合物の共有結合を解離・切断できれば、どの様な難分解性有機化合物でも分解可能となるとの考えから、有機化合物の共有結合の解離・切断方法について鋭意検討を重ねた結果、固形過酸化物として過酸化ニッケルを使用すると共に、廃液中の溶存酸素量を増加させる、及び/又は次亜塩素酸ソーダを添加させる、ことで廃液中の有機化合物の共有結合が、簡単に解離・切断できることを見出し、本発明に至ったものである。本発明者の実験によれば、過酸化ニッケルを主成分とする固形過酸化材と、廃液中の溶存酸素量の増加、又は次亜塩素酸ソーダの添加により多くの有機化合物が分解できるが、これらの組合せで分解できなかった有機化合物も、過酸化ニッケルと、廃水中の溶存酸素量の増加、及び次亜塩素酸ソーダの添加を組み合わせることにより分解することができた。
【0008】
本発明の態様は以下の通りである。
(1)有害有機化合物を含む廃液中に、過酸化ニッケルを主成分とする固形過酸化物を添加すること、並びに、廃液中の溶存酸素量を増加させること及び/又は次亜塩素酸ソーダを添加すること、により廃液中の有害有機化合物を分解する方法。
(2)有害有機化合物が、難分解性有機化合物である(1)の有害有機化合物を分解する方法。
(3)有害有機化合物が、悪臭性有機化合物である(1)の有害有機化合物を分解する方法。
【0009】
本発明において「過酸化ニッケル」とは、三二酸化ニッケル、又は三二酸化ニッケル及び酸化ニッケル水和物の混合物のことをいう。また、「固形過酸化物」とは、前記過酸化ニッケルに、酸化マグネシウム及びアルミナシリカを固化成形剤として添加混合し固化成形したものである。
【0010】
本発明において、有害有機化合物を含む廃液中の溶存酸素を増加させるには、周知の曝気装置が使用でき、空気あるいは酸素富化気体を廃液中に曝気し、溶存酸素量を増加できるものであれば種類を問わない。
【0011】
本発明における固形過酸化材は、過酸化ニッケルを酸化マグネシウム及びアルミナシリカで固化したものであるが、固化剤の添加量は、固形過酸化材の使用態様により必要とされる強度が発現できる最低限の量とすることが望ましい。また、ガラス繊維などの無機繊維材を配合すれば、固形過酸化材の強度が向上するので固化剤の使用量も少なくて済む。
【0012】
本発明において推定される有害有機化合物の共有結合の解離・切断の機構を
図1の摸式図で説明する。(1)は、水中に、1,4ジオキサン、次亜塩素酸ソーダ、固形過酸化材が存在している状態を示す。図に示されるように、次亜塩素酸ソーダは固形過酸化材に接触する。(2)は、固形過酸化材に接触した次亜塩素酸ソーダが分解し、発生期の酸素を発生させ、この発生期の酸素が1,4ジオキサンの共有結合部へアタックしているところを示す。(3)は、発生期の酸素によりアタックされた1,4ジオキサンの共有結合部が解離・切断された状態を示す。
【0013】
次亜塩素酸ソーダに代えて、過酸化水素や次亜塩素酸ソーダ以外の塩素酸化物、過マンガン酸塩、クロム酸塩は、活性酸素を放出することができるが、過酸化ニッケルも還元され、還元された水酸化ニッケルを過酸化物に出来ない。一方、塩素水、塩素シアヌール酸、過硫酸塩などの酸性酸化材は、水酸化ニッケルを過酸化物に酸化出来るが、活性酸素を発生できない。
【0014】
過酸化ニッケルは、固化剤を混合して成型し、充填槽に充填し、次亜塩素酸ソーダを添加した廃液と接触させることが望ましい。次亜塩素酸ソーダは、時間がたつと被酸化物質に対し塩素付加反応を起こすことがあるので、反応槽の直前で廃液に添加することが望ましい。
【0015】
次亜塩素酸ソーダは添加後完全に分解して発生期の酸素を発生しつくすまでに若干の時間的ずれが生じるので、廃液のCODの変動に応じて次亜塩素酸ソーダの添加量を制御することが望ましい。また、CODの低下に応じて、酸素化合物溶液の添加量を段階的に減少させる『多段階添加法』による場合には、酸素化合物溶液の使用量を減少させることが出来るので有利である。
【0016】
さらに、次亜塩素酸ソーダ溶液を排水に混合した後、排水処理を行なうまでにあまり長時間を要する場合には、酸化以外の副反応、例えば被酸化物質に対する塩素付加反応を起こすことがあり、酸化反応に困難を来たす場合もあるので、排水が反応槽、又はリアクターに導入される前に添加を行なうことが望ましい。又、排水中にアミン塩類等の塩素付加反応を特に生じ易い被酸化物質が存在する場合には、苛性ソーダを酸素化合物溶液と共に、或いは、酸素化合物溶液の添加前、もしくは添加後に排水に加え、塩素付加反応を防止することが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の方法によれば、難分解性の1,4ジオキサン、1,2ジクロロエタン、あるいはダイオキシン類を比較的短時間で分解することができ、製油所で生産されるメチルメルカプタンのような悪臭成分も最短2時間で臭気指数9以下(人間の臭覚では感知不可能)に下げることができ、バイオマス発電設備で発生する窒素液の臭気成分も短時間で分解できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の方法による有機化合物の共有結合の切断状況の模式図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施例を記載するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例1】
【0020】
<固形酸化材の製造1>
硫酸及び過マンガン酸カリで予め処理して有機物を除去した長さ3~5mm程度のガラス繊維を、濃度10~25%程度の硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、塩化ニッケルなどのニッケル塩溶液にニッケル分の10~30wt%程度加え、次いで19~25%苛性ソーダ溶液によりニッケル分を水酸化ニッケル(Ni(OH)2)とし、さらにこれをNi(OH)3とするのに十分な次亜塩素酸ソーダ溶液を30℃以下で加える。次いで、水洗ろ過して水分含有量35~45%のケーキとし、これに固化剤としてニッケル分の25~50%の酸化マグネシウムやアルミナシリカを添加・混錬し、適宜形状に成型して過酸化材とした。この成形物の大きさは処理装置の容量等に応じ適宜決定すればよく、その大きさに応じてガラス繊維の長さも決定すればよい。成形物は、1~2日放置してから40℃で乾燥させる。
【実施例2】
【0021】
酸化ニッケル(NiO)に次亜塩素酸ソーダ(NaClO)を加えて、Ni2O3、Ni3O4の過酸化物を作る際に、酸化ニッケルに一部過酸化ニッケルを配合して次亜塩素酸ソーダ処理すると、より短時間で過酸化物に転化することができ、生成した過酸化ニッケルに酸化ニッケルを加えての次亜塩素酸ソーダ処理を繰り返すことによって、短時間に大量の過酸化ニッケルを製造することができる。
このようにして得られた過酸化ニッケル100重量部に対し、焼成マグネサイト100重量部、アルミナシリカ8重量部、水39.6重量部加えて混合・混錬後、6mmφ程度に造粒し、24時間風乾して酸化材とした。
【実施例3】
【0022】
<曝気と酸化材の組合せによる廃硫酸中の1,2-ジクロロエタンの分解>
[試験1]通常廃硫酸10lに対し、毎分7lの空気を144hr吹き込み曝気した。
[試験2]酢酸入廃硫酸10lに対し、毎分7lの空気を240hr吹き込み曝気した。
本実験で使用した曝気装置は、アムスエンジニアリング社製(CATH-F)である。
各試験における廃液中の1,2-ジクロロエタンの量を測定した結果を以下に示す。表から明らかなように、曝気だけでも廃硫酸中の1,2-ジクロロエタンの量を基準値以下に低下させることができるが、本発明の方法により、過酸化ニッケルの過酸化材を組み合わせることにより、劇的に低下させることができた。
【0023】
【実施例4】
【0024】
<曝気と過酸化材と次亜塩素酸ソーダの組合せによる浸出水中の1,4-ジオキサンの分解>
[試験1]1,4-ジオキサンを含有する地下浸出水6.0lに対し、空気3.75l/分で1時間曝気した。
[試験2]1,4-ジオキサンを含有する地下浸出水6.0lに対し過酸化ニッケルを200g添加し、空気3.75l/分で1時間曝気した。
[試験3]1,4-ジオキサンを含有する地下浸出水6.0lに対し過酸化ニッケルを200g、次亜塩素酸ソーダを300cc添加し、空気3.75l/分で1時間曝気した。
使用曝気装置(アムスエンジニアリング社製、CATH-F)
各試験における浸出水中の1,4-ジオキサンの量を測定した結果を以下に示す。表から明らかなように、曝気のみ、及び曝気と過酸化材との組合せでは1,4-ジオキサンをほとんど分解できなかったが、さらに次亜塩素酸ソーダを組合せることにより浸出水中の1,4-ジオキサンの量を劇的に低下させることができた。
【0025】
【実施例5】
【0026】
<各種酸化材と過酸化ニッケルとの組み合わせによる有機化合物の酸化分解>
有機化合物として、0.25%エチルアルコール及び0.25%トリエタノールアミンを使用し、(1)次亜塩素酸ソーダ溶液、(2)過酸化ニッケル、(3)次亜塩素酸ソーダ溶液と過酸化ニッケルで処理した結果は、以下の通りであった。
(1)0.25%エチルアルコール及び0.25%トリエタノールアミンのそれぞれに過剰量の次亜塩素酸ソーダ溶液を加えたところ、2時間後、エチルアルコールは48%分解され、トリエタノールアミンは39%分解された。
(2)次亜塩素酸ソーダ溶液に代えて過酸化ニッケルを用いて同様な試験を行ったところ、2時間後には、エチルアルコール及びトリエタノールアミンの約90%が分解できたが、還元された過酸化ニッケルを再生する必要があるので、操作が煩雑であった。
(3)本発明に従い、エチルアルコール及びトリエタノールアミンのそれぞれに過剰量の次亜塩素酸ソーダ溶液を加えた後、過酸化ニッケルを投入した場合、エチルアルコールは15分後に93%、トリエタノールアミンは、45分後に96%、それぞれ分解することができた。また、過酸化ニッケルは触媒として機能するだけなので、再生する必要がなかった。
【実施例6】
【0027】
<メチルメルカプタン原液を用いた臭気成分の分解>
50l反応槽を用意し、槽内にメチルメルカプタン原液を9kg投入し、次いで過酸化ニッケルを主成分とする過酸化材450gを投入し、反応槽のジャケットに温水を通して加温し、反応槽内が40~45℃となるよう調節した。この状態で反応槽を7.50l/分で曝気し、30分、60分、90分、150分後に臭気、温度、DO、OPR、pHを測定した。測定結果を表3に示す。
なお、『臭気(人間)』の評価は、大:強烈なにおい、中:楽に感知できるにおい、微小:やっと感知できるにおい、無:においを感知できない を基準とした官能試験の結果である。また、『臭気指数』とは、臭気が感じられなくなるまで無臭空気で希釈したときの希釈倍数の対数に10を乗じた値で定義される。
【0028】
【0029】
表3に見られるように、30分から60分の間に臭気が減少し、90分から150分の間にほぼ無臭にすることができた。人間が臭気を嗅ぐ場合、臭気発生液の容器の形状により臭気の感じ方が変わり、また、ニオイセンサーによる計測も測定部が少しずれただけでも変わるので、上記測定値にもばらつきがみられたが、ORP(酸化還元電位)が-550mv以下であれば人間による臭気が感じられなくなる。
【0030】
さらに臭気の強い廃液を用い、過酸化材の添加量と曝気量を変えた実験を行った。
50l反応槽を2槽用意し、各槽にメチルメルカプタン廃液を9l投入し、次いで過酸化ニッケルを主成分とする過酸化材の所定量を各槽に投入した。この状態で各槽を所定空気量で90分間曝気し、処理前後の臭気指数を測定した。測定結果を表4に示す。曝気量を減らした廃液(2)でもほぼ同様な結果となり、過酸化材の添加量と曝気量を増やした廃液(3)では、臭気成分をほぼ完全に分解することができた。
【0031】
【実施例7】
【0032】
<アミノ酸廃液の臭気成分の分解>
アミノ酸廃液900ccに対し、曝気装置を作動させ3.75l/minで曝気した。2時間後、アミノ酸独特の強烈な臭気に変化がなかったので本発明の過酸化材90g(10%)と次亜塩素酸ソーダ45cc(5%)を添加して曝気を続けた。
使用曝気装置(アムスエンジニアリング社製、CATH-F)
曝気開始18時間後には、ツンとくる臭気がなくなり、曝気開始24時間後にはかすかににおいが感じられる程度まで減少した。
【実施例8】
【0033】
<アンモニア廃液の臭気成分の分解>
アンモニア廃液900ccに対し、曝気装置を作動させ3.75l/minで曝気しながら、本発明の過酸化材90g(10%)と次亜塩素酸ソーダ45cc(5%)を添加した。
使用曝気装置(アムスエンジニアリング社製、CATH-F)
曝気開始2時間後には、臭気が全く感じられなくなり、曝気開始15時間30分後に曝気を停止した。
【実施例9】
【0034】
<貝汚泥の臭気成分の分解>
発電プラントの冷却水通路内に発生付着するムラサキイガイ類は定期的に除去されるが、回収された貝類はすぐに強烈な臭気を発する。
これらの臭気の種類は、
アンモニア: 10~1000ppm
硫化水素: 0.05~4.0ppm
メチルメルカプタン: 0.1~8.0ppm
であった。(使用機器:ガステック社製検知管式気体測定装置GV-100S)
回収した貝を貝殻ごと10~15mmφ程度に粉砕し、3つの20l容器(A,B,C)にそれぞれ2kg投入し、精製水10lを加え、各容器に所定量の過酸化材及び次亜塩素酸ソーダを投入し、3.75l/minの風量で30分間曝気したところ、貝汚泥中の臭気成分は、アンモニアで50ppm以下、硫化水素で1.0ppm以下、メチルメルカプタンで1.0ppm以下となった。
使用曝気装置(アムスエンジニアリング社製、CATH-F)
曝気処理後の容器の一つに新規の貝汚泥を2kg添加し、さらに、3.75l/minの風量で30分間曝気した。これを容器Dとする。
容器A~Dの曝気前後の貝汚泥中の臭気成分は以下の表5の通りで、いずれも劇的に臭気が減少した。
【0035】
【実施例10】
【0036】
<次亜塩素酸ソーダ単独と過酸化材と組み合わせとの比較>
表6に示す有機化合物に対し、次亜塩素酸ソーダ単独で添加した場合と、次亜塩素酸ソーダ及び過酸化材を組み合わせて添加した場合とについて、CODの経時的変化を調べた。
結果は表6に示される通りで、次亜塩素酸ソーダ単独の場合は2時間経過後も30%程度しか低下しなかったが、次亜塩素酸ソーダ及び過酸化材を組み合わせて添加した場合は、10~20分という短時間で90%程度低下した。
【0037】
【実施例11】
【0038】
<無機系排水>
表7に示す無機系排水に次亜塩素酸ソーダを所定量添加処理し、CODの経時的変化を測定したところ、いずれの排水も15分以内の短時間で70~100%の処理率を示した。特に、亜硝酸ソーダ排水は、CODの理論上の添加量と10分程度の短時間で、大半が100%近く処理できた。また、シアン含有排液はさらに高度の処理が可能で、低濃度から高濃度まで処理することができる。このように、無機系排水に関しては、次亜塩素酸ソーダの単独処理で十分であることが判った。
【0039】
【実施例12】
【0040】
<アルコール系廃水>
表8に示すアルコール系排水に、次亜塩素酸ソーダ及び過酸化材の添加を組み合わせた場合のCODの経時的変化を測定したところ、いずれの廃水も10~30分以内の短時間で85~99%の処理率を示した。特に、イソプロピルアルコール含有廃水の分解率は多少条件によって変わるが、90%以上の分解が可能であるが、添加剤の消費量はCOD理論値の4倍程度を必要とした。また、エチレングリコール含有廃水は、COD理論量の2倍程度で85~90%の分解率で処理できた。このように、アルコール系廃水に関して、本発明の組み合わせ処理で十分処理できることがわかる。
【0041】
【実施例13】
【0042】
<フェノール系排水>
表9に示すフェノール系排水に次亜塩素酸ソーダと過酸化材の添加、及び空気曝気を組み合わせた場合のCOD及びフェノール濃度の経時的変化を測定した。フェノール系廃水の場合はCOD処理とフェノール処理が必要で、目的に応じて処理を行う必要がある。フェノールの分解は、CODの理論量以上の添加剤でほぼ100%の分解が可能であり、CODの場合は、CODの理論量の添加剤で90%の分解率であるが、それ以上添加すると分解率は急減に低下する。
【0043】
【実施例14】
【0044】
<アルデヒド系排水>
表10に示すアルデヒド系排水に次亜塩素酸ソーダ及び過酸化材の添加を組み合わせた場合のCODの経時的変化を測定したところ、CODの理論量から2倍程度の添加剤の添加で、95%程度のCOD処理が可能であった。
【0045】
【実施例15】
【0046】
<有機酸系排水>
表11に示す有機酸系排水に次亜塩素酸ソーダ及び過酸化材の添加を組み合わせた場合のCODの経時的変化を測定したところ、クエン酸ナトリウムやステアリン酸ナトリウムに関しては、COD理論量程度の添加剤の添加で、90%以上のCOD処理が可能であったが、酢酸化合物については、CODの理論量の5~10倍程度の添加剤が必要である。
【0047】
【実施例16】
【0048】
<アミン系排水>
表12に示すアミン系排水に次亜塩素酸及び過酸化材の添加を組み合わせた場合のCODの経時的変化を測定した。アミン系化合物はアルカリ性で添加剤と反応させることにより、70~90%CODを分解することができるので、本実験では、すべてアルカリ性で行った。
トリエタノールアミン含有排水は、COD理論量2~4倍の添加剤を使用し、15分間の反応時間で約70%の分解率であった。脂肪酸2級アミン含有排水の場合は、反応時間を30分間とし、COD理論量の添加剤を使用して、80%以上分解することができた。
【0049】
【実施例17】
【0050】
<その他の有機排水>
表13に示すその他の有機排水に次亜塩素酸ソーダ及び過酸化材の添加を組み合わせた場合のCODの経時的変化を測定した。本実験における有機物の分解率は、50~90%であった。その他の実験でも、一般的に50~90%の分解率であったが、実施例11~17のように、排水の主成分の内容がわかっている排水の処理結果を見ると、有機物の分子量が大きな排水のCODの分解率は低く、分子量の小さなものほど分解率は高くなる傾向がみられる。
【0051】
【実施例18】
【0052】
<各種工場排水>
表14は、廃水中の成分が複雑で不明な物について業種別にまとめたものであり、これらの有機排水に次亜塩素酸ソーダ及び過酸化材の添加を組み合わせた場合のCODの経時的変化を測定した。
イオン交換樹脂排水は、有機物の精製工程のイオン交換樹脂の再生排水である、CODの分解率は69.6%とあまり高くはないが、COD27ppmは、排出基準をクリアしている。
無電解用メッキ排水は、廃水中の銅を還元して回収した後に曝気処理を行ったものである。
カプセル製造排水、糖衣錠製造排水、製薬工場排水は、会社は異なるものの、いずれも医薬品の製造工程より排出される排水である。これらの排水の処理ではCOD分解率が80~90%と良い結果が得られている。
生活排水では、一次処理した排水と二次処理(生物処理)した排水の処理結果を示す。生物処理を行った排水は処理前のCODも低く、処理後のCODも非常に低くなり、この程度のCOD廃水の処理が経済的と考えられる。さらに生活排水の一部として、し尿の三次処理として本発明の方法を採用したところ、CODだけでなく脱色効果もよいという結果であった。
食品関係の廃水も、生物処理後であれば、CODの処理率も70%以上となるが、二次処理として本発明の処理を行うとあまり効果はよくなかった。
【0053】
【実施例19】
【0054】
<染色廃水>
染色廃水に次亜塩素酸ソーダ及び過酸化材の添加を組み合わせ、5分間処理した場合のCODを測定し、廃水の色を観察した結果を表15に示す。
【0055】
【実施例20】
【0056】
<次亜塩素酸ソーダ>
本実験の目的は、本発明の実施のため過剰に加えた添加剤としての次亜塩素酸ソーダや、排水の脱色や殺菌のために添加された次亜塩素酸ソーダの分解である。
被処理排水中には、過酸化物を添加して処理した結果を表16に示す。次亜塩素酸ソーダは、短時間に効率よく分解された。
【0057】