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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】モールドコイル及びリアクトル
(51)【国際特許分類】
   H01F 37/00 20060101AFI20241213BHJP
   H01F 41/12 20060101ALI20241213BHJP
【FI】
H01F37/00 M
H01F37/00 J
H01F37/00 G
H01F41/12 C
H01F37/00 S
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021019336
(22)【出願日】2021-02-09
(65)【公開番号】P2022122176
(43)【公開日】2022-08-22
【審査請求日】2024-01-29
(73)【特許権者】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 浩太郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 龍太
【審査官】後藤 嘉宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-216146(JP,A)
【文献】特開2015-130410(JP,A)
【文献】特開2016-082047(JP,A)
【文献】実開昭53-004148(JP,U)
【文献】実開昭54-077954(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 37/00
H01F 41/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
4枚の平坦面と4枚の湾曲面とが交互に配された外形形状を有する筒状のコイルと、
前記コイルの表面に配置される枠体と、
前記枠体の枠内を除いて前記コイルの一部又は全部を被覆するモールド樹脂と、
を備え、
前記枠体は、前記コイルの筒軸に沿って延びる一対の縦辺部を有し、
前記一対の縦辺部は、1枚の前記平坦面を挟み、当該平坦面に隣接する2枚の前記湾曲面に密着し、
前記一対の縦辺部は、当該縦辺部と直交し、当該一対の縦辺部が挟む前記平坦面と平行な横方向、且つ前記コイルの外側であるコイル外側向きへ、当該縦辺部が移動することを規制するフックを有し、
前記縦辺部の延びる方向及び前記横方向と直交する上下方向に延びる第1突起部を更に備え、
前記フックは、上下方向に延びる第2突起部を有し、
前記第1突起部と前記第2突起部とは、前記横方向に並んで互いの側面で接触し、
前記第1突起部は、前記第2突起部よりもコイル外側に位置すること、
を特徴とするモールドコイル。
【請求項2】
前記一対の縦辺部は、当該一対の縦辺部が挟む前記平坦面から離間していること、
を特徴とする請求項1記載のモールドコイル。
【請求項3】
前記枠体は、横辺壁とコの字状枠が組み合わさって画成され、
前記コの字状枠は、前記一対の縦辺部と、当該一対の縦辺部の間に延びる1辺の横辺部とを含み、当該横辺部の対向辺が無いコの字形状を有すること、
を特徴とする請求項1又は2記載のモールドコイル。
【請求項4】
前記フックは、前記一対の縦辺部が密着する前記湾曲面内の領域よりも、前記一対の縦辺部が挟む前記平坦面側に設けられていること、
を特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のモールドコイル。
【請求項5】
前記フックは、前記一対の縦辺部のうちの、前記横辺部から延びた先端に設けられていること、
を特徴とする請求項3記載のモールドコイル。
【請求項6】
前記一対の縦辺部が挟む前記平坦面とは反対に位置する他の前記平坦面に配置される板体を更に備え、
前記第1突起部は、前記板体に直接又は間接的に連なって設けられ、
前記フックは、横方向に延びた先端に前記第2突起部が立ち上がるアーム部を有し、
前記第1突起部は、端面で前記アーム部と接触していること、
を特徴とする請求項1記載のモールドコイル。
【請求項7】
前記板体から延出し、前記コイルの一方の端面を覆うエッジ環状板を有し、
前記第1突起部は、前記エッジ環状板に設けられていること、
を特徴とする請求項6記載のモールドコイル。
【請求項8】
前記フックは、縦方向に沿って前記エッジ環状板よりもコイル外側に位置し、
前記フックと前記エッジ環状板とは面接触していること、
を特徴とする請求項7記載のモールドコイル。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れかに記載のモールドコイルと、
前記モールドコイルが装着される磁性体を含むコアと、
を備えることを特徴とするリアクトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイルを樹脂によってモールドして成るモールドコイル、及びこのモールドコイルを有するリアクトルに関する。
【背景技術】
【0002】
リアクトルはコイルとコアとを有する。コイルとコアとの電気的絶縁を図るべく、通常はコアを樹脂部材で被覆し、巻回されたコイルが樹脂部材の上からコアに装着される。このリアクトルは、電気エネルギーを磁気エネルギーに変換して蓄積及び放出する受動素子である。
【0003】
このようなリアクトルは、多種多様の用途に使用されている。代表的なリアクトルとして、ハイブリッド自動車や電気自動車の駆動システム等の車載用の昇圧回路に組み込まれる昇圧リアクトル、電動機回路に直列に接続し短絡時の電流を制限する直列リアクトル、並列回路間の電流分担を安定させる並列リアクトル、短絡時の電流を制限しこれに接続される機械を保護する限流リアクトル、電動機回路に直列に接続して始動電流を制限する始動リアクトル、送電線路に並列接続されて進相無効電力の補償や異常電圧を抑制する分路リアクトル、中性点と大地間に接続して電力系統の地絡事故時に流れる地絡電流を制限するために使用する中性点リアクトル、三相電力系統の1線地絡時に発生するアークを自動的に消滅させる消弧リアクトルなどがある。
【0004】
このようなリアクトルとして、コイルの外周を樹脂によって被覆したモールドコイルが各所で使用されている。この種のリアクトルでは、放熱性を確保するため、コイルの表面の一部をモールド樹脂で覆うことなく、露出させることがある。コイルの表面を露出させるために、コイル表面に金型を押し付けた状態でその周囲にモールド樹脂を充填させる案が提案されている(特許文献1乃至3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5869518号公報
【文献】特開2015-130410号公報
【文献】特開2018-011019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
コイルは、巻軸に沿って1ターンごとに巻き位置をずらしながら導電線を螺旋状に巻回して筒状に作成され、4枚の平坦面と4枚の湾曲面とが交互に配された外形形状を有する。製造精度上の理由から、コイルの表面には凹凸が存在し、必ずしも表面が平滑面にはなっていない。そのため、金型にコイルを密着させようとしても、金型とコイルの表面の間に隙間が発生する。そうすると、この隙間から樹脂が侵入して、露出させようとした表面にバリが発生する虞がある。
【0007】
放熱性を高めるためには、コイルの平坦面のみならず、露出領域を湾曲面に拡げていくことが有用ではある。しかし、コイルの湾曲面には、1ターン中に一定の曲率を維持し、また全ターンで同じ曲率とする必要があるため、特に凹凸が発生し易く、凹凸も大きくなり易い。そのため、金型にコイルに押し付ける製法では、モールド樹脂からの露出を湾曲面にまで及ぼし難い。
【0008】
バリの発生を抑制するため、金型をコイルの表面に強く押し付けることが考えられる。金型をコイルの表面に強く押し付けることで、金型とコイル表面との隙間をなくしたり、金型によってコイル表面の捻れを矯正できる。しかし、金型をコイルの表面に強く押し付けると、コイルを傷付けたり、コイルの導電線の被覆を破損させて絶縁性を損なうなどの問題が発生する。
【0009】
このように、モールド樹脂でコイルの一部表面を被覆し、一部表面をモールド樹脂から露出させるリアクトルにおいては、コイルを傷付けることなく、しかもバリの発生を抑止することが要求されていたが、前記の従来技術では、このような要望に応えることはできなかった。
【0010】
本発明は前記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものであり、本発明の目的は、一部表面が露出したコイルの表面にモールド樹脂のバリが発生することが抑制されたモールドコイル、及びこのモールドコイルを備えるリアクトルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のモールドコイルは、4枚の平坦面と4枚の湾曲面とが交互に配された外形形状を有する筒状のコイルと、前記コイルの表面に配置される枠体と、前記枠体の枠内を除いて前記コイルの一部又は全部を被覆するモールド樹脂と、を備え、前記枠体は、前記コイルの筒軸に沿って延びる一対の縦辺部を有し、前記一対の縦辺部は、1枚の前記平坦面を挟み、当該平坦面に隣接する2枚の前記湾曲面に密着し、前記一対の縦辺部は、当該縦辺部と直交し、当該一対の縦辺部が挟む前記平坦面と平行な横方向、且つ前記コイルの外側であるコイル外側向きへ、当該縦辺部が移動することを規制するフックを有すること、を特徴とする。
【0012】
前記一対の縦辺部は、当該一対の縦辺部が挟む前記平坦面から離間しているようにしてもよい。
【0013】
前記枠体は、横辺壁とコの字状枠が組み合わさって画成され、前記コの字状枠は、前記一対の縦辺部と、当該一対の縦辺部の間に延びる1辺の横辺部とを含み、当該横辺部の対向辺が無いコの字状形状を有するようにしてもよい。
【0014】
前記フックは、前記一対の縦辺部が密着する前記湾曲面内の領域よりも、前記一対の縦辺部が挟む前記平坦面側に設けられているようにしてもよい。
【0015】
前記フックは、前記一対の縦辺部のうちの、前記横辺部から延びた先端に設けられているようにしてもよい。
【0016】
縦方向及び横方向と直交する上下方向に延びる第1突起部を更に備え、前記フックは、上下方向に延びる第2突起部を有し、前記第1突起部と前記第2突起部とは、前記横方向に並んで互いの側面で接触し、前記第1突起部は、前記第2突起部よりもコイル外側に位置するようにしてもよい。
【0017】
前記一対の縦辺部が挟む前記平坦面とは反対に位置する他の前記平坦面に配置される板体を更に備え、前記第1突起部は、前記板体に直接又は間接的に連なって設けられ、前記フックは、横方向に延びた先端に前記第2突起部が立ち上がるアーム部を有し、前記第1突起部は、端面で前記アーム部と接触しているようにしてもよい。
【0018】
前記板体から延出し、前記コイルの一方の端面を覆うエッジ環状板を有し、前記第1突起部は、前記エッジ環状板に設けられているようにしてもよい。
【0019】
前記フックは、縦方向に沿って前記エッジ環状板よりもコイル外側に位置し、前記フックと前記エッジ環状板とは面接触しているようにしてもよい。
【0020】
このモールドコイルと、モールドコアが装着された磁性体を含むコアとを備えるリアクトルも、本発明の一態様である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、金型でコイルを直接加圧するとバリが発生し易い湾曲面にまでコイルの露出領域を拡げたとしても、バリの発生を抑制でき、放熱性にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】各部を被覆する部材を省いて示したリアクトルの斜視図である。
図2】被覆されたコイルを示す上部斜視図である。
図3】コイルの各被覆部材を示し、(a)はアッパーカバーを示し、(b)はロアーカバーを示し、(c)はモールド樹脂を示す斜視図である。
図4】モールドコイルを示す下部斜視図である。
図5】アッパーカバーの斜視図である。
図6】ロアーカバーの斜視図である。
図7】アッパーカバーとロアーカバーの組み付けを示す遷移図である。
図8】金型内でのアッパーカバー、ロアーカバー及びコイルの状態を示し、(a)はコイルの下側湾曲面の断面斜視図であり、(b)はコイルの下側湾曲面の断面図である。
図9】金型内でのアッパーカバー、ロアーカバー及びコイルの状態を示し、(a)は第1端面側から見た斜視図であり、(b)は第1端面側から見た平面図である。
図10】金型内でのアッパーカバー、ロアーカバー及びコイルの状態を示す下部斜視図である。
図11】リアクトルのその他の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態のリアクトルについて説明する。各図面においては、理解容易のため、厚み、寸法、位置関係、比率又は形状等を強調して示している場合があり、本発明は、それら強調に限定されるものではない。
【0024】
図1は、本実施形態のリアクトルの主構成を示す斜視図であり、説明の都合上、各部を被覆する部材を省いて示してある。リアクトル100は、リアクトル本体10を備えている。リアクトル本体10は、2個のコイル5,5と1個の環状のコア1を備えている。2個のコイル5,5はコア1に装着されている。
【0025】
コイル5,5は、通電により巻数に従って磁束を発生させる。コア1は、コイル5,5が発生させた磁束を真空よりも高い透磁率に従って通す閉磁路となる。即ち、このリアクトル100は、電気エネルギーを磁気エネルギーに変換して蓄積及び放出する電磁気部品である。
【0026】
コア1は、圧粉磁心、フェライト磁心、メタルコンポジットコア又は積層鋼板等の磁性体を含んでいる。圧粉磁心は、磁性粉末を押し固めた圧粉成形体を焼鈍したものである。磁性粉末は、鉄を主成分とし、純鉄粉、鉄を主成分とするパーマロイ(Fe-Ni合金)、Si含有鉄合金(Fe-Si合金)、センダスト合金(Fe-Si-Al合金)、アモルファス合金、ナノ結晶合金粉末、又はこれら2種以上の粉末の混合粉などが挙げられる。メタルコンポジットコアは、磁性粉末と樹脂とが混練され成型されて成るコアである。
【0027】
コイル5は、銅線等の導電線59を筒状に巻いた巻回体である。コイル5は、巻き軸に沿って1ターンごとに巻位置をずらしながら螺旋状に導電線59を巻回することで形成される。両コイル5,5は、巻き始めと巻き終わりから導電線59が引き出されている。各導電線59とバスバーとが電気的に接続されることによって、両コイル5,5は電気的に並列又は直列に接続されている。
【0028】
このコイル5は、筒軸と平行な4枚の湾曲面と4枚の平坦面を交互につなぎ合わせた外形形状を有する。即ち、コイル5は、コア1の環状形状が現れる面と平行な平坦面である上面51を有し、また上面51とは反対側に平坦な下面52を有する。コイル5は、上面51と下面52に対して直交する平坦面である側面54を有する。コイル5は、下面52と側面54との間に下側湾曲面53を有し、上面51と側面54との間に上側湾曲面56を有する。更に、コイル5は、導電線59の巻き始め及び巻き終わりに位置し、筒軸と直交する環状の第1端面55と第2端面57を有する。
【0029】
尚、コイル5における平坦面とは、湾曲面との相対的な比較において平坦な面であり、導電線59の巻き膨らみによって緩やかな曲率で大きな弧を描いた面も平坦面に含まれる。上下は、モールド成型によってコイル5,5を被覆する際に、コイル5,5を収容する上型と下型に倣ったものであり、リアクトル100が設置対象の実機に搭載された際の位置関係や方向を指すものではない。
【0030】
また、以下、リアクトル本体10において、横方向とは、コイル5の下面52と平行で、コイル5の側面54と直交するY軸方向を指す。コイル5の筒軸から側面54への向きをコイル横方向における外側という。コイル横方向外側の反対をコイル横方向内側という。縦方向とは、横方向と直交し、下面52と平行で、筒軸に沿い、側面54と平行なX軸方向をいう。第1端面55と第2端面57に等距離の中心位置から第1端面55や第2端面57への向きをコイル縦方向における外側という。コイル縦方向外側の反対をコイル横方向内側という。上下方向とは、上面51と下面52に対して直交するZ軸方向をいう。下面52から上面51に向かう方向を上側といい、上面51から下面52に向かう方向を下側という。
【0031】
図2は、被覆されたコイル5,5を示す上部斜視図である。図2に示すように、2つのコイル5,5は、各々がモールドコイルである。即ち、コイル5,5は、アッパーカバー6、ロアーカバー7及びモールド樹脂8で被覆され、これら被覆部材と共にモールドコイルを形成している。換言すれば、モールドコイルは、コイル5とアッパーカバー6、ロアーカバー7及びモールド樹脂8を備える。
【0032】
アッパーカバー6、ロアーカバー7及びモールド樹脂8は、絶縁性及び耐熱性を備えた樹脂であり、コイル5,5は、これらアッパーカバー6、ロアーカバー7及びモールド樹脂8に被覆されることで、コア1と電気的に絶縁された上で、コア1に嵌っている。
【0033】
絶縁性及び耐熱性を備えた樹脂としては、例えば、PPS(Polyphenylene Sulfide)、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ウレタン樹脂、BMC(Bulk Molding Compound)、PPS(Polyphenylene Sulfide)、PBT(Polybutylene Terephthalate)、又はこれらの複合が挙げられる。アッパーカバー6、ロアーカバー7及びモールド樹脂8は、同種の材質により成るものであってもよいし、異なる材質により成るものであってもよい。アッパーカバー6、ロアーカバー7及びモールド樹脂8の材料に熱伝導性のフィラーを混入させてもよい。
【0034】
図3の(a)に示すように、アッパーカバー6は、上部板体61、サイド湾曲板62及びエッジ環状板63を有する。上部板体61、サイド湾曲板62及びエッジ環状板63は、一体成型等により継ぎ目無く一繋がりに連接している。上部板体61は、コイル5の上面51と平行に拡がる中実の平坦板であり、コイル5の上面51を覆う。サイド湾曲板62は、上部板体61のコイル横方向両外側縁から延出し、上側湾曲面56と、側面54のうちの上側湾曲面56に隣接する上側縁領域を覆う。
【0035】
エッジ環状板63は、上部板体61のコイル縦方向端辺縁から延出し、上部板体61と直交して下側へ延び、コイル5の第1端面55に現れる導電線59を覆っている。エッジ環状板63の下端には、コイル横方向においてはコイル5の下面52全領域、及び下側湾曲面53のうちの下面52に隣接する両下側縁領域53aに亘って延び、上下方向においては下面52よりも下方まで延びている横辺壁64が形成されている。
【0036】
図3の(b)に示すように、ロアーカバー7は、コの字状枠71とエッジ環状板74を有する。コの字状枠71とエッジ環状板74は、一体成型等により継ぎ目無く一繋がりに連接している。コの字状枠71は、矩形の1辺を欠いたコの字の枠形状を有し、コイル5の下面52全領域、及び下側湾曲面53のうちの下面52に隣接する下側縁領域53aを三辺で囲んでいる。このコの字状枠71は、下方向においては下面52よりも下方まで延びている。
【0037】
一方、上方向においては、このコの字状枠71は、下側縁領域53aを除く下側湾曲面53及び側面54のうちの下方領域に対面するように拡大して、これらを覆っている。エッジ環状板74は、コの字状枠71のコイル横方向に延びる辺から上方へ延出し、コの字状枠71と直交して上側へ延び、コイル5の第2端面57に現れる導電線59を覆っている。
【0038】
モールド樹脂8は、アッパーカバー6とロアーカバー7が設置されたコイル5を金型に収容し、樹脂を金型内に射出して固化することで形成される。金型内では、アッパーカバー6のエッジ環状板63のうちのコイル縦方向外側を向く外面と、ロアーカバー7のエッジ環状板74のうちのコイル縦方向外側を向く面とを除き、アッパーカバー6とロアーカバー7は金型と接触する。
【0039】
そのため、図3の(c)に示すように、このモールド樹脂8は、アッパーカバー6とロアーカバー7との間の隙間である側面54の残部、第1端面55、第2端面57及びコイル5の内周面を覆う。モールド樹脂8は、第1端面55をアッパーカバー6のエッジ環状板63の上から覆い、第2端面57をロアーカバー7のエッジ環状板74の上から覆う。
【0040】
図4は、モールドコイルを示す下部斜視図である。コイル5は、アッパーカバー6、ロアーカバー7及びモールド樹脂8で被覆されるが、放熱性の向上のために、一部表面に開口58が形成されている。開口58は、コイル横方向においてはコイル5の下面52全域及び下側湾曲面53のうちの下面52に隣接する下側縁領域53aを露出させている。開口58は、コイル縦方向においては下面52全域を露出させている。
【0041】
コイル5の表面には枠体58aが設置されている。この枠体58aの枠内が開口58である。枠体58aは、全周に亘って下面52よりも下方へ立ち上がっており、下端縁は全周に亘って同一高さである。そのため、枠体58aは全周に亘って隙間無く金型に着座する。金型内では、枠体58aと金型によって枠体58aの内側は密閉されることになる。そのため、金型内では、枠体58aの枠内を除いてモールド樹脂8がコイル5を被覆し、枠体58aの枠内にモールド樹脂8が流れ込まずに開口58が形成される。
【0042】
この枠体58aは、ロアーカバー7のコの字状枠71とアッパーカバー6の横辺壁64とが組み合わさって画成されている。以下、このような開口58を画成するアッパーカバー6及びロアーカバー7について更に詳述する。
【0043】
図5は、アッパーカバー6の拡大斜視図である。図5に示すように、エッジ環状板63の上側中心領域は、上部板体61側に向けて切り欠かれ、エッジ環状板63は環が断絶しており、コイル5の導電線59を第1端面55から引き出す導出口63aが形成されている。エッジ環状板63の下方は、開口58を囲む横辺壁64になっている。
【0044】
横辺壁64のコイル横方向に沿った長さは、開口58に収まる一方の下側縁領域53aの外端から他方の下側縁領域53aの外端に亘る。また、横辺壁64は、開口58に収まる一方の下側縁領域53aの上限又はこの上限よりも上側から、開口58に収まる下面52よりも下方まで拡がっている。横辺壁64の最下端縁は高さ一定で直線的に延びている。
【0045】
横辺壁64には、一対の第1突起部65が膨出している。各第1突起部65は、コイル横方向両外側に分かれて膨出している。この第1突起部65は、直方体形状を有する。尚、第1突起部65には、第1突起部65と繋ぎ目無く一繋がりになった後端部65cが続いている。後端部65cは、第1突起部65から引き続いて形成され、下側湾曲面53に沿うように湾曲しながら上方へ向けて、エッジ環状板63の縁を這うように延びる。
【0046】
各第1突起部65は、突起部端面65bと突起部側面65aを有する。突起部側面65aは、コイル横方向内側を向く面である。この突起部側面65aは、横辺壁64から垂直に立ち上がり、コイル横方向と直交及び上下方向と平行に拡がる。突起部端面65bは、真下を向く面である。この突起部端面65bは、横辺壁64に対して垂直に立ち上がり、上下方向と直交及びコイル横方向と平行に拡がる。
【0047】
第1突起部65は、突起部端面65bが横辺壁64内に収まるように膨出している。第1突起部65の周囲には、突起部側面65aと突起部端面65bと隣接する突起部周囲領域66が拡がる。横辺壁64は、突起部周囲領域66を残して、第1突起部65と同じ高さまで膨出していてもよく、この場合、突起部周囲領域66は、突起部側面65aと突起部端面65bに沿ったL字形状を有している。
【0048】
図6は、ロアーカバー7の拡大斜視図である。図6に示すように、エッジ環状板74の上側中心領域は切り欠かれ、エッジ環状板74の環が断絶しており、コイル5の導電線59を第2端面57から引き出す導出口74aが形成されている。ロアーカバー7のコの字状枠71は、一対の縦辺部72と一辺の横辺部73とによりコの字形状を有する。
【0049】
縦辺部72は、コイル縦方向、換言するとコイル5の筒軸方向に沿って延びている。この縦辺部72は、湾曲部721と垂直部722とを有する。湾曲部721は、湾曲した内周面でコイル5と密着する。垂直部722は、開口58の周囲に立ち上がる枠体58aの壁の一部である。
【0050】
湾曲部721は、下面52を挟んで配置され、下側縁領域53aを除くコイル5の下側湾曲面53に密着する。湾曲部721の内周面側下端は、開口58に収まる下側縁領域53aの上限に位置し、下面52には及ばない。垂直部722は、湾曲部721の下端から引き続いて、コイル5の下面52が拡がる平面に対して垂直に延びる。一対の縦辺部72のうちの両垂直部722間は、コイル5の下面52全横幅に加え、開口58から露出させる両下側湾曲面53のうちの下側縁領域53aを加えた距離分離間している。即ち、垂直部722は、下面52から離間して延びている。
【0051】
垂直部722は、下面52を開口58内に収められるように、下面52よりも下方まで拡がっている。垂直部722の最下端縁は、高さ一定で直線的に延びている。尚、縦辺部72は、モールド樹脂8の射出圧によるコイル5の縦方向縮みを勘案して設定されている。
【0052】
横辺部73は、コイル横方向、換言するとコイル5の筒軸と直交し、且つコイル5の下面52と平行に延び、コイル5の第2端面57に沿って当該第2端面57を完全に横断して延びている。横辺部73のコイル横方向に沿った長さは、開口58に収まる一方の下側縁領域53aの外端から他方の下側縁領域53aの外端に及ぶ。また、横辺部73は、下面52を開口58内に収められるように、下面52よりも下方まで拡がっている。横辺部73の最下端縁は垂直部722と同一高さで直線的に延びている。
【0053】
この横辺部73は、開口58の周囲に立ち上がる枠体58aの壁の一部である。縦辺部72の垂直部722間にアッパーカバー6の横辺壁64が入り込み、アッパーカバー6の横辺壁64と横辺部73が対向辺になることにより、枠体58aが形成される。
【0054】
更に、縦辺部72は、横辺部73とは反対の延び先先端、即ち第1端面55の先端にフック76を備えている。このフック76は、アッパーカバー6の第1突起部65に引っ掛かることで、縦辺部72同士が離間する方向の移動を規制し、縦辺部72がコイル横方向外側に開かないようにしている。
【0055】
フック76は、各垂直部722から延出している。垂直部722とは、換言すれば、下側湾曲面53のうちの湾曲部721が密着する領域よりも下方であり、下面52側に当たる。即ち、フック76は、モールド樹脂8が入り込んではならない開口58に近い位置に設置されている。
【0056】
このフック76は、アーム部77と第2突起部78とを継ぎ目無く一繋ぎに備え、横倒しになったL字形状を有する。アーム部77は、垂直部722のコイル縦方向外側端部から延出し、コイル横方向内側に延びている。第2突起部78は、アーム部77のコイル横方向内側端部から延出し、上方向に延びている。
【0057】
アーム部77は直方体形状を有し、上側に向くアーム上側面77aを有する。アッパーカバー6とロアーカバー7をコイル5に対して位置決めしたとき、このアーム上側面77aと、アッパーカバー6に形成されている第1突起部65の突起部端面65bとは、同一の高さに位置するように形成位置が設定されている。また、アッパーカバー6とロアーカバー7をコイル5に対して位置決めしたとき、このアーム上側面77aと、第1突起部65の突起部端面65bとは、アーム上側面77aが拡がる範囲に、第1突起部65の突起部端面65bが収まるように形成位置及び範囲が設定されている。
【0058】
また、第2突起部78は直方体形状を有し、コイル横方向外側を向く突起部側面78aを有する。アッパーカバー6とロアーカバー7をコイル5に対して位置決めしたとき、このフック76の突起部側面78aと、アッパーカバー6の第1突起部65の突起部側面65aとは、コイル横方向における位置が同一になるように形成位置が設定されている。また、アッパーカバー6とロアーカバー7をコイル5に対して位置決めしたとき、フック76の突起部側面78aと、アッパーカバー6の第1突起部65の突起部側面65aとは、フック76の突起部側面78aが拡がる範囲に、アッパーカバー6の突起部側面65aが収まるように形成位置及び範囲が設定されている。
【0059】
また、アッパーカバー6とロアーカバー7をコイル5に対して位置決めしたとき、フック76がアッパーカバー6の突起部周囲領域66よりもコイル縦方向外側に存在し、フック76のフック裏面76aとアッパーカバー6の突起部周囲領域66とが、コイル縦方向において同一位置になるように、フック76のコイル縦方向における延出位置が設定されている。尚、フック裏面76aは、フック76のコイル縦方向内側に向く面である。
【0060】
このようなアッパーカバー6とロアーカバー7のコイル5への組み付けについて説明する。図7の(a)に示すように、ロアーカバー7をコイル5に嵌め込むと、アッパーカバー6の横辺壁64が有する突起部周囲領域66の厚み分を隔てて、第1端面55からコイル縦方向外側にフック76が位置する。また、フック76は、第1端面55とコイル縦方向において重なるように位置する。アッパーカバー6は、第1端面55から引き出される導電線59をエッジ環状板63の環内に通しつつ、上部板体61を上面51に着地させるように、コイル5に設置される。
【0061】
図7の(b)に示すように、第1端面55とフック76との間に突起部周囲領域66を滑り込ませ、アッパーカバー6の第1突起部65の突起部端面65bをフック76のアーム部77のアーム上側面77aに突き合わせる。そうすると、図7の(c)に示すように、フック76は、第2突起部78がアッパーカバー6の第1突起部65に対してコイル横方向内側に位置する。
【0062】
アッパーカバー6とロアーカバー7を取り付けた後のモールド樹脂8の形成工程について説明する。アッパーカバー6とロアーカバー7を取り付けたコイル5は金型内に設置される。金型内では、枠体58aを下型の平坦面に着地させ、アッパーカバー6の上から上型を被せる。
【0063】
図8の(a)及び(b)に示すように、金型内では、上型によってアッパーカバー6の上部板体61が下方向に押される。この下方の力P1は、コイル5に伝達され、コイル5の下側湾曲面53は、ロアーカバー7の湾曲部721に圧接する。下側湾曲面53から湾曲部721には、下側湾曲面53と湾曲部721の法線方向の力P2が生じる。
【0064】
コの字状枠71が位置不動であれば、この力P2によって湾曲部721が下側湾曲面53に押し付けられ、下側湾曲面53の凹凸や捻れが矯正され、湾曲部721と下側湾曲面53とが隙間無く密着する。これにより、モールド樹脂8の樹脂が開口58に進入し、バリが発生することを抑制できる。
【0065】
但し、この法線方向の力P2は、コイル横方向外側へ向く力成分P3を有する。この力成分P3は、コの字状枠71の縦辺部72をコイル横方向外側へ開こうとする。即ち、一対の縦辺部72の第1端面55側端部が離間するように、縦辺部72が位置ズレしようとする。縦辺部72がコイル横方向外側へ開いてしまうと、コイル5の下側湾曲面53を湾曲部721に押し付けることができない。
【0066】
図9の(a)及び(b)に示すように、このリアクトル100では、縦辺部72のコイル縦方向外側端部にフック76が形成されている。フック76は、金型によって押さえ付けられて位置不動のアッパーカバー6の第1突起部65に引っ掛かっている。そのため、コイル横方向外側へ向く力成分P3に対抗するコイル横方向内側へ向く力成分P4が、第1突起部65の突起部側面65aからフック76の突起部側面78aへ与えられ、そのフック76を有する縦辺部72がコイル横方向外側に開くことが抑制される。
【0067】
特に、フック76は、上下方向において下側湾曲面53の下側縁領域53aの上限から垂直部722の最下端までの間に配置されている。そのため、縦辺部72が開口58で捻れながら開く虞も抑制できている。
【0068】
また、第1突起部65の突起部端面65bとフック76のアーム上側面77aは上下方向で接触している。そのため、上型がアッパーカバー6を押さえつける力によって、フック76のアーム部77は、第1突起部65と下型とによって狭持される。そのため、フック76と第1突起部65との係合が解除され難くなっている。
【0069】
ここで、仮に、縦辺部72がコイル5の下面52に接触するまで延在している場合、縦辺部72は、コイル5の下面52と金型との間に挟まれる。そうすると、上型がアッパーカバー6の上部板体61に作用させた下方向への力によって、縦辺部72を下面52と金型との間から抜け難くなり、縦辺部72がコイル横方向外側へ開くことが抑制される。
【0070】
しかし、このリアクトル100では、コイル5の開口58をコイル横方向に拡大するため、枠体58aを画成する縦辺部72を、コイル5の下側湾曲面53の下側縁領域53aの上限から下方へ垂直に延ばしている。即ち、縦辺部72は、コイル5の下面52に接触するまで延在しておらず、下面52と離間し、下面52と金型との間で狭持されていない。
【0071】
また、仮に、コの字状枠71が4辺を有する矩形の枠形状であった場合、具体的にはアッパーカバー6の横辺壁64がロアーカバー7に設けられ、コの字状枠71と継ぎ目無く一繋がりに連接していた場合、縦辺部72のコイル横方向外側への開きは、横辺壁64の張力によって阻止される。
【0072】
しかし、金型内のモールド樹脂8の射出圧は、コイル5の縦方向の長さを縮めるように、コイル5を圧縮する現象が生じる。横辺壁64をコの字状枠71の一部として、樹脂射出前の第1端面55に位置させていた場合には、このコイル5の圧縮現象によって、第1端面55と横辺壁64との間に隙間が空いてしまう。そうすると、枠体58a内に樹脂が漏れて、開口58内にバリが発生してしまう。
【0073】
そこで、このリアクトル100では、コイル5の開口58をコイル縦方向に拡大するため、枠体58aをコの字状枠71と横辺壁64とに分離し、横辺壁64をコイル5の圧縮に合わせて可動にしている。コイル5の圧縮に追従して、アッパーカバー6のエッジ環状板63もコイル縦方向内側へ移動する。そのため、横辺壁64が第1端面55に密接するとともに、ロアーカバー7のコの字状枠71のコの字が開いた部分に嵌まり込む。そして、開口58の四方を隙間無く包囲する枠体58aが画成される。
【0074】
枠体58aをコの字状枠71と横辺壁64とに分離している場合、縦辺部72の開きを阻止するための別の手法としては、フック76を設けるのではなく、金型でロアーカバー7の縦辺部72を外側から支持することが考えられる。しかし、この場合、金型とロアーカバー7の密着度合いを高めないと、縦辺部72が開かないように支えることができない。一方、金型とロアーカバー7の密着度合いを高めようとすると、金型とロアーカバー7の寸法精度によっては、金型内に入らないロアーカバー7の個体も発生し得る。そうすると、ロアーカバー7の歩留まりが悪化する虞がある。
【0075】
しかし、このリアクトル100では、縦辺部72のコイル縦方向外側端部にフック76が形成されているため、開口58を下側湾曲面53に拡げても、下面52のコイル縦方向全域に拡げても、開口58にバリを発生させることを抑制でき、またロアーカバー7に多少の個体差があっても金型に入らない事態を防ぎ、ロアーカバー7の歩留まりを抑制できるものである。
【0076】
また、図10に示すように、フック76のフック裏面76aと突起部周囲領域66とが重なり、アッパーカバー6の横辺壁64とロアーカバー7のコの字状枠71の縦辺部72との境界は、開口58に至るまで迷路構造になっている。つまり、万一、フック76と第1突起部65との間からモールド樹脂8の樹脂が入り込んでも、この樹脂は、フック裏面76aと突起部周囲領域66との間を更に通らなければ、開口58に至らない。
【0077】
しかも、フック裏面76aと突起部周囲領域66とは、コイル縦方向に並んでおり、モールド樹脂8の射出圧を受けて圧接している。そのため、モールド樹脂8の樹脂がフック裏面76aと突起部周囲領域66とを通り抜けて開口58に至ることは難しくなっている。
【0078】
以上により、下面52の全域に加えて、下側湾曲面53のうちの下側縁領域53aにまで開口58に含める領域を拡げたとしても、バリの発生が抑制された開口58が形成され、このコイル5は放熱性に優れている。
【0079】
その他、このリアクトル100は、図11の(a)に示すように、例えば温度を検出するサーミスタ等のセンサ部3が設置され、図11の(b)に示すように、開口58を除き、コア1も含めてコイル5をモールド樹脂4で更に被覆するようにしてもよい。モールド樹脂4には、リアクトル100の設置対象に固定するための締結孔41が形成される。
【0080】
以上のように、コイル5の表面に枠体58aを配置し、枠体58aの枠内を除いてコイル5をモールド樹脂8で被覆することで、モールドコイルを作成した。枠体58aは、コイル5の筒軸に沿ったコイル縦方向に延びる一対の縦辺部72を有する。この一対の縦辺部72は、1枚の平坦面である下面52を挟み、下面52に隣接する2枚の下側湾曲面53と密着するようにした。そして、このような一対の縦辺部72は、当該縦辺部72が移動することを規制するフック76を有するようにした。フック76は、コイル横方向外側、即ち当該縦辺部72と直交し、下面52と平行な横方向、且つコイル外側の向きへ縦辺部72が位置ズレすることを規制する。
【0081】
これにより、下側湾曲面53から受けるコイル横方向外側への力によって縦辺部72が位置ズレしようとしても、フック76が引っ掛かって位置ズレを阻止する。そのため、縦辺部72同士が離間するように縦辺部72が開くことはなく、枠体58aの枠内にモールド樹脂8が流れ込み、バリが発生してしまうことを抑制できる。そうすると、下側湾曲面53の下側縁領域53aまで開口58に含める範囲を拡げても、バリの発生を抑制でき、放熱性にも優れる。
【0082】
このフック76は、一対の縦辺部72が下面52から離間している場合に特に有効に作用する。また、枠体58aは、横辺壁64とコの字状枠71が組み合わさって画成され、コの字状枠71は、一対の縦辺部72と、当該一対の縦辺部72の間に延びる1辺の横辺部73とを含み、当該横辺部73の対向辺が無いコの字形状を有する場合に更に有効である。但し、縦辺部72を下面52と金型の下型とで挟んでも縦辺部72が滑り抜けてしまう虞もあり、フック76を設けるようにしても良い。
【0083】
また、フック76は、一対の縦辺部72が密着する下側湾曲面53内の領域よりも下面52側に設けられているようにした。これにより、縦辺部72が開口58近辺で捻れながら開いてしまう虞を抑制できる。縦辺部72が高剛性であり、フック76を何れに設けても開口58付近での縦辺部72の開きを抑制できるのであれば、フック76は何れに設けてもよい。
【0084】
また、第1突起部65を更に備え、フック76は、上下方向に延びる第2突起部78を有し、第1突起部65と第2突起部78とは、横方向に並んで互いの側面で接触し、第1突起部65は、第2突起部78よりもコイル外側に位置するようにした。これにより、フック76は、縦辺部72の開きを抑制できる。但し、縦辺部72の開きを抑制できれば、フック76は、この形状に限られない。
【0085】
下面52とは反対に位置する上面51に配置される上部板体61を更に備え、第1突起部65は、上部板体61に直接又は間接的に連なって設けられ、フック76は、横方向に延び、延び先端部に第2突起部78が立ち上がるアーム部77を有し、第1突起部65は、突起部端面65bでアーム部77と接触しているようにした。
【0086】
上部板体61は、金型の上型から力を受ける。この上部板体61に直接又は間接的に連なる第1突起部65も、アーム部77を下方向に押圧することになる。これにより、フック76と第1突起部65との係合が解かれる可能性が低くなり、縦辺部72が開いてしまう虞を低減できる。このように、上部板体61からエッジ環状板63が延出し、このエッジ環状板63に第1突起部65が設けられているようにしたが、これに限らず、上部板体61に第1突起部65を設け、アーム部77の位置まで第1突起部65を延長してもよい。
【0087】
また、フック76は、横辺壁64を有するエッジ環状板63よりもコイル縦方向外側に位置し、フック76とエッジ環状板63の横辺壁64とは、フック裏面76aや突起部周囲領域66により面接触しているようにした。これにより、横辺壁64とコの字状枠71との境界が迷路構造になり、枠体58aを横辺壁64とコの字状枠71とに分離してもモールド樹脂8が開口58に進入し難くなる。
【0088】
以上の本発明の実施形態は例として提示したものであって、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。そして、実施形態やその変形は本発明の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0089】
100 リアクトル
10 リアクトル本体
1 コア
3 センサ部
4 モールド樹脂
41 締結孔
5 コイル
51 上面
52 下面
53 下側湾曲面
53a 下側縁領域
54 側面
55 第1端面
56 上側湾曲面
57 第2端面
58 開口
58a 枠体
59 導電線
6 アッパーカバー
61 上部板体
62 サイド湾曲板
63 エッジ環状板
63a 導出口
64 横辺壁
65 第1突起部
65a 突起部側面
65b 突起部端面
65c 後端部
66 突起部周囲領域
7 ロアーカバー
71 コの字状枠
72 縦辺部
721 湾曲部
722 垂直部
73 横辺部
74 エッジ環状板
74a 導出口
76 フック
76a フック裏面
77 アーム部
77a アーム上側面
78 第2突起部
78a 突起部側面
8 モールド樹脂
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11