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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】カテーテルシステム
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/10 20130101AFI20241213BHJP
【FI】
A61M25/10 510
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021020748
(22)【出願日】2021-02-12
(65)【公開番号】P2022123424
(43)【公開日】2022-08-24
【審査請求日】2023-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】原田 尚実
(72)【発明者】
【氏名】早川 浩一
【審査官】上石 大
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-265614(JP,A)
【文献】国際公開第2015/152194(WO,A1)
【文献】特開2000-107293(JP,A)
【文献】特表平10-500034(JP,A)
【文献】特表2010-506669(JP,A)
【文献】国際公開第2010/110043(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する外管と、前記外管に対して軸線方向に移動可能なように前記外管の内腔に配設された内管と、前記外管の先端部と前記内管の先端部とを互いに繋ぐとともに前記外管の径方向内方に膨らむ管状のバルーンと、を有するバルーンカテーテルと、
前記バルーンの内腔に挿入される線状の挿入部を有する医療機器と、を備えたカテーテルシステムであって、
前記バルーンの外面と前記外管の内面との間には、前記バルーンを膨らませるためのバルーン拡張流体が流通する外側空間が形成され、
前記バルーンは、前記バルーン拡張流体によって膨らんだ状態の当該バルーンを前記挿入部で支持した状態で、先端方向への押込み力が前記内管から前記バルーンへと伝達されることで前記バルーンの先端部が捲り返されながら前記外管の先端開口から前記先端方向に突出し、
前記内管には、前記バルーンの外面よりも径方向外方に突出するように形成され、且つ前記外管の内面に接触することにより前記外管に対する前記内管の周方向の回転を規制する回転規制部が設けられ、
前記回転規制部は、前記押込み力が前記内管から前記バルーンへと伝達されることで前記外管の内腔を前記先端方向にスライドし、
前記挿入部は、
前記外管の前記軸線方向に沿って延在した挿入基部と、
前記挿入基部の先端から前記先端方向に延出した挿入先端部と、を含み、
前記挿入基部の剛性は、前記挿入先端部の剛性よりも高く、
前記外管の前記軸線方向において、前記挿入先端部の長さは、前記バルーンの長さよりも短く、
前記医療機器は、内視鏡であり、
前記挿入基部の外径は、前記挿入先端部の外径よりも大きく、
前記外管は、
外管基部と、
前記外管基部の先端から前記先端方向に延出した外管先端部と、を有し、
前記外管先端部の外径は前記外管基部の外径と同じであり、かつ前記外管先端部の肉厚は前記外管基部の肉厚よりも厚い、カテーテルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、卵管の病変部(狭窄部又は閉塞部)を治療するためのバルーンカテーテルと、卵管鏡(内視鏡)とを備えたカテーテルシステムが開示されている。バルーンカテーテルは、可撓性を有する外管と、外管に対して軸線方向に移動可能なように外管の内腔に配設された内管と、外管の先端部と内管の先端部とを互いに繋ぐとともに外管の径方向内方に膨らむ管状のバルーンとを備える。
【0003】
バルーンの外面と外管の内面との間には、バルーンを径方向内方に膨らませるためのバルーン拡張流体が流通する外側空間が形成されている。卵管鏡下卵管形成術において、バルーンは、バルーンの内腔に挿入される卵管鏡の線状の挿入部で膨らんだ状態のバルーンを支持した状態で、先端方向への押込み力が内管からバルーンへと伝達されることでバルーンの先端部が捲り返されながら外管の先端開口から突出して卵管口に挿入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3921108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した卵管鏡下卵管形成術において、卵管の病変部が完全に閉塞しているような症例では、病変部をバルーンによって押し広げる際に比較的大きな押込み力を要することがある。押込み力が過度である場合、バルーンに大きな軸線方向の圧縮力が作用するため、バルーンとともに挿入部が外管内(外側空間内)で座屈変形するおそれがある。
【0006】
本発明は、このような課題を考慮してなされたものであり、バルーンの捻じれを抑制しつつ外管内での挿入部の座屈変形を抑えることができるカテーテルシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の態様は、可撓性を有する外管と、前記外管に対して軸線方向に移動可能なように前記外管の内腔に配設された内管と、前記外管の先端部と前記内管の先端部とを互いに繋ぐとともに前記外管の径方向内方に膨らむ管状のバルーンと、を有するバルーンカテーテルと、前記バルーンの内腔に挿入される線状の挿入部を有する医療機器と、を備えたカテーテルシステムであって、前記バルーンの外面と前記外管の内面との間には、前記バルーンを膨らませるためのバルーン拡張流体が流通する外側空間が形成され、前記バルーンは、前記バルーン拡張流体によって膨らんだ状態の当該バルーンを前記挿入部で支持した状態で、先端方向への押込み力が前記内管から前記バルーンへと伝達されることで前記バルーンの先端部が捲り返されながら前記外管の先端開口から前記先端方向に突出し、前記内管には、前記バルーンの外面よりも径方向外方に突出するように形成され、且つ前記外管の内面に接触することにより前記外管に対する前記内管の周方向の回転を規制する回転規制部が設けられ、前記回転規制部は、前記押込み力が前記内管から前記バルーンへと伝達されることで前記外管の内腔を前記先端方向にスライドし、前記挿入部は、前記外管の前記軸線方向に沿って延在した挿入基部と、前記挿入基部の先端から前記先端方向に延出した挿入先端部と、を含み、前記挿入基部の剛性は、前記挿入先端部の剛性よりも高く、前記外管の前記軸線方向において、前記挿入先端部の長さは、前記バルーンの長さよりも短く、前記医療機器は、内視鏡であり、前記挿入基部の外径は、前記挿入先端部の外径よりも大きく、前記外管は、外管基部と、前記外管基部の先端から前記先端方向に延出した外管先端部と、を有し、前記外管先端部の外径は前記外管基部の外径と同じであり、かつ前記外管先端部の肉厚は前記外管基部の肉厚よりも厚い、カテーテルシステムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の態様によれば、挿入基部の剛性が挿入先端部の剛性よりも高く、外管の軸線方向において挿入先端部の長さがバルーンの長さよりも短い。そのため、バルーンに比較的大きな軸線方向の圧縮力が作用した場合であっても、挿入基部により挿入部が座屈変形することを効率的に抑えることができる。また、内管に設けられた回転規制部によって外管に対する内管の回転が規制されるため、バルーンの捻じれを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態に係るカテーテルシステムの概略構成図である。
図2図1のカテーテルシステムの一部省略縦断面図である。
図3図2のカテーテルシステムの先端側の一部省略拡大断面図である。
図4図4Aは、図3のIVA-IVA線に沿った横断面図であり、図4Bは、図3のIVB-IVB線に沿った横断面図であり、図4Cは、図3のIVC-IVC線に沿った横断面図である。
図5図5Aは、図1の内視鏡の挿入部の一部断面説明図であり、図5Bは、図5Aの被覆部の拡大断面説明図である。
図6図1のカテーテルシステムを用いた卵管鏡下卵管形成術の第1説明図である。
図7】前記卵管鏡下卵管形成術の第2説明図である。
図8】前記卵管鏡下卵管形成術の第3説明図である。
図9】前記卵管鏡下卵管形成術の第4説明図である。
図10】前記卵管鏡下卵管形成術の第5説明図である。
図11】前記卵管鏡下卵管形成術の第6説明図である。
図12】バルーンカテーテルの構成例を示す縦断面説明図である。
図13】内視鏡の構成例を示す縦断面説明図である。
図14】本発明の第2実施形態に係るカテーテルシステムの一部省略縦断面図である。
図15図15Aは、内視鏡の他の構成例を示す縦断面説明図であり、図15Bは、内視鏡の別の構成例を示す縦断面説明図である。
図16】内視鏡のさらに別の構成例を示す縦断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るカテーテルシステムについて好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0014】
(第1実施形態)
図1に示すように、本発明の第1実施形態に係るカテーテルシステム10は、バルーンカテーテル12と、医療機器である内視鏡14(卵管鏡)とを備える。なお、図2図4C図6図11では、便宜上、内視鏡14の断面を簡略化して示している。図6図11に示すように、カテーテルシステム10は、例えば、卵管202の病変部204(狭窄部又は閉塞部等)を治療する卵管鏡下卵管形成術に用いられる。ただし、カテーテルシステム10は、卵管202以外のもの、例えば、血管、胆管、気管、食道、尿道、大腸、その他の臓器等の生体管内の病変部を治療するためのものでもよい。
【0015】
カテーテルシステム10に関する以下の説明では、図1中の左側(矢印X1方向)を「先端」、図1中の右側(矢印X2方向)を「基端」という。
【0016】
図1及び図2に示すように、バルーンカテーテル12は、外側カテーテル16と、外側カテーテル16に設けられたスライダ18と、外側カテーテル16内に挿入された内側カテーテル20と、バルーン22とを備える。
【0017】
外側カテーテル16は、可撓性を有する長尺な外管24と、外管24の基端部に設けられた外管ハブ26(外管操作部)と、外管ハブ26に設けられた固定ねじ28とを有する。外管24の全長は、100mm以上1500mm以下に設定するのが好ましく、200mm以上1000mm以下に設定するのがより好ましい。
【0018】
図3において、外管24は、外管本体30と、外管本体30の先端部に設けられた先端部材32(先端チップ)とを含む。外管本体30及び先端部材32のそれぞれの構成材料としては、例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等)、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート等)、エラストマー樹脂(例えば、ポリオレフィンエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、フッ素樹脂エラストマー、ポリウレタンエラストマー等)、可撓性を有する高分子材料(ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、エチレン-酢酸ビニル共重合体、シリコーンゴム等)、軟質ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリアミド等が挙げられる。
【0019】
図3図4Bに示すように、外管本体30には、先端から基端まで貫通した第1内腔34が形成されている。外管本体30は、矢印X方向に延在する外管基部36と、外管基部36の先端から先端方向(矢印X1方向)に延出した外管先端部38とを有する。第1内腔34は、外管基部36に設けられた基端側内腔40と、外管先端部38に設けられた先端側内腔42とを含む。先端側内腔42は、基端側内腔40に対して先端方向(矢印X1方向)に連通している。すなわち、外管24の内面は、外管基部36の内面である基端側内面43と、外管先端部38の内面である先端側内面44とを含む。
【0020】
図3に示すように、外管先端部38の長さL1は、外管基部36の長さL2よりも短い。外管先端部38の長さL1は、例えば、30mm以上80mm以下に設定するのが好ましく、40mm以上70mm以下に設定するのがより好ましく、50mm以上60mm以下に設定するのがさらに好ましい。外管先端部38は、軸線方向に円弧状に湾曲するように形状付けられている。外管先端部38の外径は、外管基部36の外径と同じである。換言すれば、外管本体30は、全長に亘って概ね一定の外径を有する。外管先端部38の肉厚T1は、外管基部36の肉厚T2よりも厚い。
【0021】
図4Aにおいて、基端側内面43は、横断面の形状が円弧である湾曲面46と、湾曲面46に連なる平坦面48を有する。湾曲面46は、バルーン22の周方向に180°以上延在している。図4Bにおいて、先端側内腔42は、円形状に形成されている。つまり、先端側内面44は、横断面が円形状に形成されている。先端側内腔42を矢印X方向から見た面積は、基端側内腔40を矢印X方向から見た面積よりも小さい。ただし、基端側内腔40の横断面形状と先端側内腔42の横断面形状は、適宜変更可能である。
【0022】
図3及び図4Bに示すように、先端側内面44は、基端側内面43よりも外管24の径方向内方に位置する。図3において、先端側内面44と基端側内面43との連結部には、先端方向(矢印X1方向)に向かって外管24の径方向内方にテーパ状に傾斜した傾斜内面50が形成されている。ただし、先端側内面44と基端側内面43との連結部には、矢印X方向と直交する方向に延在した段差面が形成されてもよい。
【0023】
先端部材32の外側面は、バルーンカテーテル12や生体組織の損傷を防止するために湾曲している。先端部材32には、バルーン22を先端部材32よりも先端方向(矢印X1方向)に導出させるためのバルーン導出孔52が形成されている。バルーン導出孔52は、外管24の先端開口54に連通している。
【0024】
図1及び図2に示すように、外管ハブ26は、硬質樹脂又は金属(ステンレス鋼、チタン、チタン合金等)によって構成されている。硬質樹脂としては、例えば、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリオレフィン、スチレン系樹脂、ポリアミド、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド等が挙げられる。
【0025】
図2において、外管ハブ26は、人手によって操作し易い大きさに中空状に形成されている。外管ハブ26には、外管24の第1内腔34に連通する第1空間53と、第1空間53の基端側に位置して内側カテーテル20が挿通する第1挿通孔55と、第1空間53にバルーン拡張流体を導入するための第1導入ポート部56が設けられている。バルーン拡張流体は、図2に示すバルーン22を外管24の径方向内方に膨らませるためのものである。バルーン拡張流体は、例えば、生理食塩水である。外管ハブ26には、第1空間53内のバルーン拡張流体が第1挿通孔55を介して外部に漏出することを防止する第1シール部材57が設けられている。
【0026】
固定ねじ28は、外管ハブ26に対して内側カテーテル20を固定するためのものである。固定ねじ28の構成材料は、外管ハブ26と同様のものが挙げられる。
【0027】
スライダ18は、外管本体30の外周面に対して外管24の軸線方向に移動可能(スライド可能)な状態で設けられている。スライダ18の全長は、外管24の全長よりも短い。スライダ18は、長尺な管状のスライダ本体58と、スライダ本体58の基端部に設けられたスライダハブ60(スライダ操作部)とを有する。スライダ本体58及びスライダハブ60のそれぞれは、上述した外管ハブ26と同様の材料によって構成される。スライダハブ60は、人手によって操作し易い大きさに環状に形成されている。
【0028】
スライダ18を外管本体30に対して最も基端側(矢印X2方向)に移動させた状態(スライダ18の基端を外管ハブ26の先端に位置させた状態)で、外管本体30の先端側は、スライダ18よりも先端側に露出するとともに円弧状に湾曲する。スライダ18を外管本体30に対して最も先端側(矢印X1方向)に移動させた状態で、外管本体30の先端側は、スライダ本体58の形状に沿って直線状に延在する。
【0029】
図1及び図2に示すように、内側カテーテル20は、長尺な内管62と、内管62の基端部に設けられた内管ハブ64(内管操作部)とを備える。内管62の全長は、100mm以上1500mm以下に設定するのが好ましく、200mm以上1000mm以下に設定するのがより好ましい。
【0030】
図2において、内管62の構成材料としては、比較的硬質な樹脂(例えば、フッ素樹脂、ポリカーボネート、ポリイミド、PEEK樹脂等)又は金属(例えば、ステンレス鋼、チタン、チタン合金等)によって構成されている。内管62には、先端から基端まで貫通した第2内腔66が形成されている。
【0031】
内管62は、外管ハブ26を挿通するとともに外管本体30の第1内腔34に配設されている。内管62の先端は、外管本体30の先端よりも基端方向(矢印X2方向)に位置している。内管62の外面と外管基部36の基端側内面43との間には、バルーン拡張流体が流通する外側ルーメンSa(拡張用ルーメン)が設けられている。
【0032】
内管62の第2内腔66には、バルーン支持デバイスとしても機能する内視鏡14の長尺な線状の挿入部90が挿入される。内管62の第2内腔66に挿入部90が挿入された状態で、内管62と挿入部90との間には、灌流液が流通する内側ルーメンSb(灌流用ルーメン)が形成される。灌流液は、例えば、生理食塩水である。
【0033】
図1において、内管ハブ64は、外管ハブ26と同様の材料によって構成される。内管ハブ64は、中空状に形成されている。内管ハブ64には、内管62の第2内腔66に連通する第2空間68と、第2空間68の基端側に位置して挿入部90が挿通する第2挿通孔70と、第2空間68に灌流液を導入するための第2導入ポート部72が設けられている。内管ハブ64には、第2空間68内の灌流液が第2挿通孔70を介して外部に漏出することを防止する第2シール部材73が設けられている。
【0034】
図3に示すように、バルーン22は、外管24の先端部と内管62の先端部とを互いに繋ぐ管状部材である。バルーン22は、バルーン拡張流体によって外管24の径方向内方に膨らむ。換言すれば、バルーン22は、径方向に弾性変形可能に形成されている。
【0035】
バルーン22の構成材料としては、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート等)、エラストマー樹脂(ポリオレフィンエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、フッ素樹脂エラストマー、ポリウレタンエラストマー等)、可撓性を有する高分子材料(天然ゴム、エチレン-プロピレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、エチレン-酢酸ビニル共重合体、シリコーンゴム等)、軟質ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイソプレン、ポリエステル等で構成するのが好ましい。
【0036】
バルーン22の一端部は、外管24の先端部(先端部材32の基端部)に接着又は融着されている。換言すれば、バルーン22の一端部は、外管24のうちバルーン導出孔52の基端側の近傍に接着又は融着されている。具体的に、バルーン22の一端部は、外管本体30の先端と先端部材32との間に挟持されている。バルーン22の他端部は、内管62の外面の先端部に接着又は融着されている。また、バルーン22の他端部は、バルーン固定部材74によって内管62の先端部に固定されている。なお、バルーン22の他端部は、内管62の内面の先端部に接着又は融着されてもよい。バルーン22は、内視鏡14の挿入部90が挿入可能な内腔76を有する。バルーン22の外面と外管本体30の内面との間には、先端が閉じた袋状の外側空間Scが形成されている。
【0037】
図7及び図8に示すように、バルーン22は、内管62からバルーン22へと押込み力(先端方向の押込み力)が伝達されることで、バルーン22の先端部22aが捲り返されながら外管24の先端開口54から先端方向に突出する。この際、バルーン22は、外管24の先端開口54よりも矢印X1方向に突出した突出部分22bにおいて、径方向に二重に折り重なった部分が形成される。
【0038】
図3に示すように、バルーン22が外管24の径方向内方に膨らんでいない状態で、先端側内面44とバルーン22の外面との間隔L3は、基端側内面43とバルーン22の外面との間隔L4よりも狭い。
【0039】
図4Cに示すように、バルーンカテーテル12は、内管62の先端部に設けられて外管24に対する内管62の周方向の回転を規制する回転規制部78を有する。回転規制部78は、円環部80と、円環部80の外周面から径方向外方に突出した2つの凸部82a、82bとを有する。
【0040】
円環部80の内周面は、内管62の外周面に固着(接着又は融着)されている。すなわち、内管62は、円環部80の内腔を挿通している。円環部80の外周面は、湾曲面46及び平坦面48に接触している。2つの凸部82a、82bは、円環部80の中心よりも平坦面48側にオフセットして配置されている。凸部82aは、平坦面48に直交するとともに円環部80の中心を通る線分Laの一方側(図4Cにおいて線分Laの下側)に位置する。凸部82bは、線分Laの他方側(図4Cにおいて線分Laの上側)に位置する。2つの凸部82a、82bは、平坦面48に近接している。各凸部82a、82bは、矢印X方向に沿って円環部80の全長に亘って延在している。各凸部82a、82bは、横断面が円弧状の外周面を有する。
【0041】
このような回転規制部78は、例えば、外管24に対して内管62が図4Cの矢印R1方向に回転すると凸部82aが平坦面48に接触することによりバルーン22の矢印R1方向の捻じれを抑制する。また、回転規制部78は、例えば、外管24に対して内管62が図4Cの矢印R2方向に回転すると凸部82bが平坦面48に接触することによりバルーン22の矢印R2方向の捻じれを抑制する。
【0042】
図2及び図3に示すように、内視鏡14は、卵管202(図6参照)を観察するための卵管鏡である。内視鏡14は、バルーンカテーテル12の内管62の第2内腔66とバルーン22の内腔76とに挿入された可撓性を有する挿入部90を備える。
【0043】
挿入部90は、外管24の軸線方向(矢印X方向)に延在した挿入基部92と、挿入基部92の先端から先端方向(矢印X1方向)に延出した挿入先端部94とを含む。
【0044】
挿入基部92の外径D1は、挿入先端部94の外径D2よりも大きい。具体的に、挿入基部92の外径D1は、挿入先端部94の外径D2に対して140%以下の大きさに設定するのが好ましく、110%以上120%以下の大きさに設定するのがより好ましい。挿入基部92の剛性は、挿入先端部94の剛性よりも高い。
【0045】
図5Aに示すように、具体的に、挿入部90は、チューブ体98、レンズユニット100、ライトガイド102、イメージガイド104及び被覆部106を備える。チューブ体98は、可撓性を有している。チューブ体98は、特に限定されないが、例えば、ポリイミド、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の樹脂材料、又はこれら樹脂材料の複合材料により構成される。
【0046】
レンズユニット100は、チューブ体98の先端部に設けられている。レンズユニット100は、対物レンズを含む。なお、レンズユニット100は、複数枚のレンズを含んでよい。ライトガイド102は、挿入部90の基端側に設けられた図示しない光源(例えば、LED)からの光を挿入部90の先端に導く導光部材である。ライトガイド102の数は、特に限定されず、1つであってもよいし、複数であってもよい。
【0047】
ライトガイド102は、例えば、複数本の光ファイバが束ねられて形成される。ただし、ライトガイド102は、1本の光ファイバから形成されてもよい。光ファイバとしては、例えば、コア及びクラッドがプラスチックで構成されたプラスチック製の光ファイバが用いられる。ただし、光ファイバは、コア及びクラッドがガラス(例えば、石英ガラス)で構成されたガラス製の光ファイバであってもよい。
【0048】
イメージガイド104は、レンズユニット100により得られた像を挿入部90の基端側に導く伝送部材である。イメージガイド104は、レンズユニット100と同軸に配置されている。イメージガイド104は、上述したライトガイド102と同様の光ファイバによって形成される。
【0049】
図5Bにおいては、被覆部106は、チューブ体98の外周面における先端部以外の部分に被覆されている。ここでは、被覆部106は、チューブ体98の先端部には設けられていない。挿入部90のうち被覆部106が設けられている部位は、挿入基部92を形成する。挿入部90のうち被覆部106が設けられていない部位は、挿入先端部94を形成する。
【0050】
被覆部106は、例えば、チューブ体98の外周面に樹脂部材108を複数層塗布する(コーティングする)ことによって形成されている。樹脂部材108は、上述したチューブ体98の構成材料と同じもので構成される。複数の樹脂部材108は、互いに同じ材料で構成されてもよいし、互いに異なる材料で構成されてもよい。複数の樹脂部材108の先端は、チューブ体98の径方向外方に位置するものほど基端方向にずれて位置している。これにより、挿入先端部94の外面と挿入基部92の外面との連結部には、挿入部90の基端方向(矢印X2方向)に向かって挿入部90の径方向外方にテーパ状に傾斜した傾斜外面96が形成される。
【0051】
被覆部106の外表面とチューブ体98の外表面とには、摺動抵抗を下げるために、図示しないフッ素コートが塗布されている。チューブ体98及び樹脂部材108は、フッ素コートを含む樹脂材料(複合材料)によって構成されてもよい。
【0052】
複数の樹脂部材108のうち最内層の樹脂部材108は、チューブ体98の先端まで延在してもよい。この場合、内側から2層目の樹脂部材108が設けられている範囲が挿入基部92を形成し、当該挿入基部92よりも先端側が挿入先端部94を形成することになる。これにより、チューブ体98よりも樹脂部材108の方が摺動性の高い材料である場合、最内層の樹脂部材108によって挿入先端部94の摺動性を高めることができる。なお、最内層の樹脂部材108の先端は、チューブ体98の先端よりも手前(基端方向)に位置してもよい。
【0053】
また、複数の樹脂部材108のうち最外層の樹脂部材108は、チューブ体98の先端まで延在してもよい。この場合、最内層の樹脂部材108が設けられている範囲が挿入基部92を形成し、当該挿入基部92よりも先端側が挿入先端部94を形成することになる。これにより、最外層の樹脂部材108によって最外層よりも内側に位置する樹脂部材108の先端部が覆われるため、挿入部90の操作時に樹脂部材108が傾斜外面96の位置から剥離することを防止することができる。また、チューブ体98よりも樹脂部材108の方が摺動性の高い材料である場合、最外層の樹脂部材108によって挿入先端部94の摺動性を高めることができる。なお、最外層の樹脂部材108の先端は、チューブ体98の先端よりも手前(基端方向)に位置してもよい。
【0054】
本実施形態では、複数の樹脂部材108を先端位置がずれるように積層することによって傾斜外面96を形成しているが、傾斜外面96は、適宜の方法によって形成してよい。
【0055】
被覆部106には、傾斜外面96が形成されていなくてもよい。つまり、被覆部106は、チューブ体98の軸線方向と直交する先端面(矢印X1方向を指向する先端面)を有してもよい。換言すれば、挿入先端部94の外面と挿入基部92の外面との連結部には、挿入部90の軸線方向と直交する方向に延在した段差面が形成されてもよい。被覆部106は、溶融した樹脂にチューブ体98を浸漬(ディッピング)して高温で焼き固めることにより形成しもよい。また、被覆部106は、チューブ体98の外周面に溶剤を吹き付けることによって形成してもよい。
【0056】
図3に示すように、外管24の軸線方向において、挿入先端部94の長さL5は、挿入基部92の長さL6よりも短い。具体的に、挿入先端部94の長さL5は、20mm以上50mm以下に設定するのが好ましく、30mm以上40mm以下に設定するのがより好ましい。なお、挿入基部92の長さL6は、例えば、200mm以上400mm以下に設定するのが好ましく、300mm程度に設定するのがより好ましい。
【0057】
このようなカテーテルシステム10は、初期状態において、挿入先端部94の全体が外管先端部38の先端側内腔42に位置するとともに挿入基部92が外管基部36の基端側内腔40に位置するようにセットされている。ただし、カテーテルシステム10の初期状態において、挿入基部92の先端側の一部は、外管先端部38の先端側内腔42に位置してもよい。また、カテーテルシステム10の初期状態において、挿入先端部94の先端は、外管24の先端開口54よりも基端側に位置している。
【0058】
また、図7に示すように、バルーン22を外管24の径方向内方に膨らませた状態で、外管先端部38の内径D3は、バルーン22のうち挿入先端部94の外面に密着する部分の外径D4の3倍未満に設定されている。
【0059】
次に、このように構成されるカテーテルシステム10を用いた卵管鏡下卵管形成術について説明する。
【0060】
卵管鏡下卵管形成術では、準備工程において、上述したカテーテルシステム10を準備する。そして、バルーンカテーテル12と内視鏡14とは、上述したカテーテルシステム10の初期状態の位置関係(図3のような位置関係)となっている。また、この際、ユーザは、内管62を基端側(矢印X2方向)に完全に引いた状態で固定ねじ28によって固定しておく。さらに、スライダ18を外管24に対して外管24の先端方向にスライドさせることにより外管本体30の先端側を真直ぐにする。
【0061】
続いて、挿入工程において、ユーザは、バルーンカテーテル12を経頸管的に子宮底200(図6参照)まで挿入する。そして、スライド工程において、スライダ18を外管24に対して外管24の基端方向に引き戻す。これにより、図6に示すように、外管本体30の先端側は、スライダ18から露出して湾曲形状になる。この際、ユーザは、内視鏡14の挿入部90の先端部を外管24の先端開口54に位置させ、内視鏡14の撮影画像により卵管口202aを確認する。
【0062】
そして、ユーザは、内視鏡14の挿入部90を初期位置(図6に示す位置)に戻した状態で固定ねじ28を締め付けた後で、バルーン導出工程を行う。具体的に、図7に示すように、第1導入ポート部56にバルーン拡張流体を供給する(加圧工程)。そうすると、バルーン拡張流体は、第1導入ポート部56から外側ルーメンSaを介してバルーン22の外側空間Scに供給される。そうすると、バルーン22は、外側空間Scに供給されたバルーン拡張流体によって径方向内方に押圧されて弾性変形する。つまり、バルーン22のうち挿入部90の外周側に位置する部位は、挿入部90の外周面に密着する。バルーン22のうち挿入部90の先端よりも先端側に位置する部位は、内面同士が互いに接触する。
【0063】
その後、ユーザは、固定ねじ28を緩めた状態で内管ハブ64を操作して内管62を外管24に対して前進させる(前進工程)。そうすると、図8に示すように、内管62によって先端方向に押されたバルーン22は、挿入部90とともに外管24に対して前進する。つまり、バルーン22は、押込み力が内管62からバルーン22に伝達されることにより、挿入部90とともに外管24の先端開口54から先端方向(矢印X1方向)に突出する。
【0064】
前進工程では、バルーン22の一端部が外管24の先端部に固定されているため、バルーン22は、その先端部22a(突出端部)が捲り返されながら前進する。すなわち、バルーン22は、その先端部22a(突出端部)で内面が外側を向くように捲り返される。そのため、バルーン22は、挿入部90の前進距離の半分の距離相当前進する。この際、挿入基部92は、外管先端部38の先端側内腔42に挿入される。
【0065】
続いて、ユーザは、内視鏡14の撮影画像に基づいてバルーン22が病変部204に到達したか否かを判断する。バルーン22が病変部204の手前に位置していた場合には、バルーン拡張流体を減圧するとともに第2導入ポート部72に灌流液(灌流用流体)を供給する(減圧工程)。これにより、内側ルーメンSbを介してバルーン22と内視鏡14の挿入部90との間に灌流液が流通する。次いで、ユーザは、図9に示すように、内視鏡14を所定距離だけ後退させる(後退工程)。その後、上述した加圧工程及び前進工程を再度行う。
【0066】
そして、図10に示すように、前進工程において、バルーン22の先端部が病変部204に接触すると、ユーザが内管62を先端方向に押し込んだ際に、バルーン22に比較的大きな軸線方向の圧縮力が作用する。このような圧縮力は、病変部204が完全に閉塞している場合に大きくなり易い。
【0067】
しかしながら、挿入基部92の剛性が挿入先端部94の剛性よりも高いため、挿入基部92の座屈変形が抑えられる。また、先端側内面44が基端側内面43よりも外管24の径方向内方に位置しているため、バルーン22及び挿入先端部94が軸線方向と交差する方向に大きく変形する前にバルーン22の外面が先端側内面44に接触する。そのため、挿入先端部94の座屈変形が抑えられる。
【0068】
その後、図11に示すように、バルーン22が病変部204を完全に通過すると、バルーン22によって病変部204が押し広げられる。すなわち、卵管202の狭窄又は閉塞が改善される。
【0069】
病変部204を広げた後、ユーザは、バルーン拡張流体を減圧してからバルーンカテーテル12及び内視鏡14を抜去する(抜去工程)。なお、バルーンカテーテル12の抜去前に、第2導入ポート部72を介して灌流液を注入しつつ内管62を引いてバルーン22を後退させ、同時に内視鏡14をバルーン22の先端部に位置するよう操作することで、抜去工程の際に卵管202内を観察しながらバルーンカテーテル12を抜去してもよい。これにより、卵管鏡下卵管形成術が終了する。
【0070】
本実施形態は、以下の効果を奏する。
【0071】
バルーンカテーテル12によれば、先端側内面44が基端側内面43よりも外管24の径方向内方に位置しているため、バルーン22の外面と先端側内面44との隙間(間隔L3)を比較的狭くすることができる。これにより、バルーン22に比較的大きな軸線方向の圧縮力が作用した場合に、バルーン22及び挿入部90が軸線方向と交差する方向に大きく変形する前にバルーン22の外面を先端側内面44に接触させることができるため、挿入部90が座屈変形することを抑えることができる。また、内管62に設けられた回転規制部78によって外管24に対する内管62の回転が規制されるため、バルーン22の捻じれを抑制することができる。
【0072】
外管先端部38の外径は、外管基部36の外径と同じである。
【0073】
このような構成によれば、外管本体30の外面に段差が形成されないため、バルーンカテーテル12の子宮内への挿入を円滑に行うことができる。
【0074】
外管先端部38の肉厚T1は、外管基部36の肉厚T2よりも厚い。
【0075】
このような構成によれば、簡単な構成により、先端側内面44を基端側内面43よりも外管24の径方向内方に位置させることができる。
【0076】
カテーテルシステム10において、挿入部90は、外管24の軸線方向に沿って延在した挿入基部92と、挿入基部92の先端から先端方向に延出した挿入先端部94と、を含む。挿入基部92の剛性は、挿入先端部94の剛性よりも高い。
【0077】
このような構成によれば、バルーン22に比較的大きな軸線方向の圧縮力が作用した場合に、挿入基部92が座屈変形することを抑えることができる。
【0078】
外管24の軸線方向において、挿入先端部94の長さL5は、外管先端部38の長さL1よりも短い。
【0079】
このような構成によれば、カテーテルシステム10の初期状態で、挿入先端部94の全体を外管先端部38の先端側内腔42に配置することができる。そのため、バルーン22に比較的大きな軸線方向の圧縮力が作用した場合に、挿入先端部94が座屈変形することを効率的に抑えることができる。
【0080】
挿入基部92の外径D1は、挿入先端部94の外径D2よりも大きい。
【0081】
このような構成によれば、簡単な構成(例えば、被覆部106を設けること)により挿入基部92の剛性を挿入先端部94の剛性よりも高くすることができる。
【0082】
カテーテルシステム10は、バルーンカテーテル12に代えて図12に示すバルーンカテーテル12aを備えてもよい。なお、バルーンカテーテル12aにおいて、上述したバルーンカテーテル12と同一の構成については同一の参照符号を付し、その説明については省略する。図12では、内視鏡14の断面を簡略化して示している。
【0083】
図12に示すように、バルーンカテーテル12aは、外側カテーテル16aと、スライダ18と、内側カテーテル20と、バルーン22とを備える。外側カテーテル16aの外管24aは、外管本体30aと、先端部材32と、外管本体30aの先端部99の内面に設けられたチューブ部材101とを有する。外管本体30aの内腔の形状及び大きさは、その全長に亘って概ね一定である。チューブ部材101の先端は、外管本体30aの先端に位置する。チューブ部材101の外周面は、外管本体30aの内周面に固着されている。
【0084】
外管本体30aのうちチューブ部材101よりも基端側は、外管基部36を形成する。外管本体30aの先端部99(外管本体30aのうちチューブ部材101と重なる部分)とチューブ部材101とは、外管先端部38aを形成する。つまり、チューブ部材101の内腔は、先端側内腔42を形成する。先端側内腔42には、バルーン22が挿入されている。チューブ部材101の内面は、先端側内面44を形成する。先端側内面44とバルーン22の外面との間には、バルーン22を膨らませるためのバルーン拡張流体が流通する外側空間Scが形成されている。外管24aの軸線方向において、外管先端部38aの長さは、上述した外管先端部38の長さと同様に設定される。
【0085】
本構成例において、外管24aは、外管本体30aと、外管本体30aの先端部99の内面に設けられたチューブ部材101とを有する。チューブ部材101の内面は、先端側内面44を形成する。外管本体30aの内面のうちチューブ部材101よりも基端側の部分は、基端側内面43を形成する。
【0086】
このような構成によれば、簡単な構成により、先端側内面44を基端側内面43よりも外管24aの径方向内方に位置させることができる。
【0087】
カテーテルシステム10は、上述した内視鏡14に代えて図13に示す内視鏡14aを備えてもよい。図13に示すように、内視鏡14aの挿入部90aは、被覆部106を有しない点以外、上述した挿入部90と同様に構成されている。つまり、挿入部90aは、その全長に亘って概ね一定の外径を有する。換言すれば、挿入部90aにおいて、挿入基部92aの外径は、挿入先端部94aの外径と同じである。このような内視鏡14aであっても、上述したバルーンカテーテル12、12aと組み合わせることにより、挿入部90aの座屈変形を抑えることができる。
【0088】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係るカテーテルシステム10Aについて図14を参照しながら説明する。なお、カテーテルシステム10Aにおいて、上述したカテーテルシステム10と同一の構成については同一の参照符号を付し、その説明については省略する。図14では、内視鏡14の断面を簡略化して示している。
【0089】
図14に示すように、本実施形態に係るカテーテルシステム10Aは、バルーンカテーテル12bと内視鏡14とを備える。バルーンカテーテル12bは、外側カテーテル16bと、スライダ18と、内側カテーテル20と、バルーン22とを有する。外側カテーテル16bの外管24bは、外管本体30aと、先端部材32とを含む。外管本体30aの内腔の形状及び大きさは、その全長に亘って概ね一定である。
【0090】
内視鏡14がこのようなバルーンカテーテル12bと組み合わせて用いられる場合、内視鏡14の挿入先端部94の長さL5と挿入基部92の長さL6は、以下のように設定するのが好ましい。すなわち、内視鏡14の挿入先端部94の長さL5は、20mm以上150mm以下に設定するのが好ましく、30mm以上120mm以下に設定するのがより好ましい。挿入基部92の長さL6は、例えば、150mm以上400mm以下に設定するのが好ましく、180mm以上300mm以下に設定するのがより好ましい。
【0091】
本実施形態によれば、上述した内視鏡14(挿入基部92及び挿入先端部94を有する内視鏡14)を備えている。すなわち、挿入基部92の剛性は、挿入先端部94の剛性よりも高く、外管24bの軸線方向において、挿入先端部94の長さL5は、バルーン22の長さよりも短い。そのため、バルーン22に比較的大きな軸線方向の圧縮力が作用した場合であっても、挿入基部92(挿入部90)が座屈変形することを効率的に抑えることができる。また、内管62に設けられた回転規制部78によって外管24bに対する内管62の回転が規制されるため、バルーン22の捻じれを抑制することができる。
【0092】
カテーテルシステム10Aは、上述した内視鏡14に代えて図15Aに示す内視鏡14bを備えてもよい。なお、内視鏡14bにおいて、上述した内視鏡14と同一の構成については同一の参照符号を付し、その説明については省略する。
【0093】
図15Aに示すように、内視鏡14bの挿入部90bは、挿入基部92bと、挿入先端部94とを備える。挿入基部92bは、チューブ体98と、チューブ体98の内腔に設けられるとともに挿入部90bの軸線方向に沿って延在した補強部材110とを含む。
【0094】
補強部材110は、チューブ体98よりも高強度の材料によって形成されている。補強部材110の構成材料としては、金属又は樹脂材料等が挙げられる。補強部材110は、挿入基部92bの全長に亘って延在している。補強部材110の外径(太さ)、長さ、配置、数等は、適宜変更可能である。
【0095】
本構成例において、挿入基部92bは、チューブ体98と、チューブ体98内に設けられるとともに挿入部90bの軸線方向に沿って延在した補強部材110とを含む。
【0096】
このような構成によれば、簡単な構成により挿入基部92bの剛性を挿入先端部94の剛性よりも高くすることができる。
【0097】
本構成例に係る内視鏡14bは、上述したバルーンカテーテル12、12aと組み合わせて用いてもよい。
【0098】
カテーテルシステム10Aは、上述した内視鏡14に代えて図15Bに示す内視鏡14cを備えてもよい。なお、内視鏡14cにおいて、上述した内視鏡14と同一の構成については同一の参照符号を付し、その説明については省略する。
【0099】
図15Bに示すように、内視鏡14cの挿入部90cは、挿入基部92cと、挿入先端部94aと、挿入中間部112とを有する。挿入中間部112は、挿入基部92cと挿入先端部94aとの間に位置している。挿入中間部112の剛性は、挿入基部92cの剛性よりも低く、且つ挿入先端部94aの剛性よりも高い。挿入先端部94aの長さL7及び挿入中間部112の長さL8との合計は、バルーン22(図14参照)の長さよりも短く、且つ挿入基部92cの長さL9よりも短い。挿入中間部112の長さL8は、挿入先端部94aの長さL7よりも短い。
【0100】
具体的に、挿入部90cは、チューブ体98、レンズユニット100、ライトガイド102、イメージガイド104及び被覆部106aを備える。被覆部106aは、チューブ体98の外周面における先端部以外の部分に被覆されている。すなわち、被覆部106aは、チューブ体98の先端部には設けられていない。
【0101】
被覆部106aは、被覆先端部114及び被覆基部116を有する。挿入部90cのうち被覆部106aが設けられていない部位は、挿入先端部94aを形成する。挿入部90cのうち被覆先端部114が設けられている部位は、挿入中間部112を形成する。挿入部90cのうち被覆基部116が設けられている部位は、挿入基部92cを形成する。
【0102】
被覆先端部114は、チューブ体98の外周面に設けられた第1樹脂チューブ118及び第2樹脂チューブ120を連結することにより形成されている。第1樹脂チューブ118及び第2樹脂チューブ120の構成材料は、上述したチューブ体98の構成材料と同じものが挙げられる。第2樹脂チューブ120の外径は、第1樹脂チューブ118の外径よりも大きい。ただし、第2樹脂チューブ120の外径は、第1樹脂チューブ118の外径と同じであってもよい。被覆先端部114の先端部(第1樹脂チューブ118の先端部)には、先端方向に向かって径方向内方に傾斜する傾斜外面96aが設けられている。
【0103】
被覆基部116の剛性は、被覆先端部114の剛性よりも高い。具体的に、被覆基部116は、被覆先端部114よりも高強度の材料によって形成されている。被覆基部116は、例えば、チューブ体98の外周面に樹脂材をコーティングすることにより形成される。
【0104】
被覆部106aは、いわゆる二色成形のように、第1の樹脂材料で被覆先端部114を成形した後で、第1の樹脂材料よりも高強度の第2の樹脂材料によって被覆先端部114に対して被覆基部116を一体成形してもよい。この場合であっても、被覆基部116の剛性を被覆先端部114の剛性よりも高くすることができる。
【0105】
本構成例において、挿入部90cは、挿入基部92cと挿入先端部94aとの間に挿入中間部112を有し、挿入中間部112の剛性は、挿入基部92cの剛性よりも低く、且つ挿入先端部94aの剛性よりも高い。
【0106】
このような構成によれば、挿入部90cの剛性を、挿入先端部94aから挿入中間部112を介して挿入基部92cに向かって徐々に高くすることができる。
【0107】
外管24bの軸線方向において、挿入先端部94aの長さL7と挿入中間部112の長さL8との合計は、バルーン22の長さよりも短い。
【0108】
このような構成によれば、バルーン22の内側に挿入先端部94a、挿入中間部112及び挿入基部92cを配置することができる。
【0109】
本構成例に係る内視鏡14cは、上述したバルーンカテーテル12、12aと組み合わせて用いてもよい。
【0110】
カテーテルシステム10Aは、上述した内視鏡14に代えて図16に示す内視鏡14dを備えてもよい。なお、内視鏡14dにおいて、上述した内視鏡14、14a~14cと同一の構成については同一の参照符号を付し、その説明については省略する。
【0111】
図16に示すように、内視鏡14dの挿入部90dは、挿入基部92dと挿入先端部94とを備える。挿入基部92dは、上述した被覆部106を有していない。つまり、挿入部90dは、その全長に亘って概ね一定の外径を有する。換言すれば、挿入基部92dの外径は、挿入先端部94の外径と同じである。挿入基部92dのチューブ体98内には、上述した補強部材110が設けられている。そのため、挿入基部92dの剛性は、挿入先端部94の剛性よりも高い。このような内視鏡14dは、上述した内視鏡14と同様の効果を奏する。本構成例に係る内視鏡14dは、上述したバルーンカテーテル12、12aと組み合わせて用いてもよい。
【0112】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能である。
【0113】
内視鏡14の挿入部90、90aにおいて、挿入基部92、92aは、挿入先端部94よりも高強度の樹脂材料によって形成されてもよい。
【0114】
以上の実施形態をまとめると、以下のようになる。
【0115】
上記実施形態は、可撓性を有する外管と、前記外管に対して軸線方向に移動可能なように前記外管の内腔に配設された内管と、前記外管の先端部と前記内管の先端部とを互いに繋ぐとともに前記外管の径方向内方に膨らむ管状のバルーンと、を有するバルーンカテーテルであって、前記バルーンの外面と前記外管の内面との間には、前記バルーンを膨らませるためのバルーン拡張流体が流通する外側空間(Sc)が形成され、前記バルーンは、前記バルーン拡張流体によって膨らんだ状態の当該バルーンを医療機器の線状の挿入部で支持した状態で、先端方向への押込み力が前記内管から前記バルーンへと伝達されることで前記バルーンの先端部が捲り返されながら前記外管の先端開口から前記先端方向に突出し、前記外管は、外管基部と、前記外管基部の先端から前記先端方向に延出した外管先端部と、を有し、前記内管には、前記バルーンの外面よりも径方向外方に突出するように形成され、且つ前記外管基部の内面である基端側内面に接触することにより前記外管に対する前記内管の周方向の回転を規制する回転規制部が設けられ、前記回転規制部は、前記押込み力が前記内管から前記バルーンへと伝達されることで前記外管基部の内腔を前記先端方向にスライドし、前記外管先端部の内面である先端側内面は、前記基端側内面よりも前記外管の径方向内方に位置している、バルーンカテーテルを開示している。
【0116】
上記のバルーンカテーテルにおいて、前記外管先端部の外径は、前記外管基部の外径と同じであってもよい。
【0117】
上記のバルーンカテーテルにおいて、前記外管先端部の肉厚(T1)は、前記外管基部の肉厚(T2)よりも厚くてもよい。
【0118】
上記のバルーンカテーテルにおいて、前記先端側内面と前記基端側内面との連結部には、前記先端方向に向かって前記外管の径方向内方にテーパ状に傾斜した傾斜内面(50)が形成されてもよい。
【0119】
上記のバルーンカテーテルにおいて、前記外管は、外管本体と、前記外管本体の先端部の内面に設けられたチューブ部材(101)と、を有し、前記チューブ部材の内面は、前記先端側内面を形成し、前記外管本体の内面のうち前記チューブ部材よりも基端側の部分は、前記基端側内面を形成してもよい。
【0120】
上記のバルーンカテーテルにおいて、前記外管先端部は、前記軸線方向に円弧状に湾曲するように形状付けられてもよい。
【0121】
本実施形態は、上述したバルーンカテーテルと、前記医療機器と、を備えるカテーテルシステム(10)を開示している。
【0122】
上記のカテーテルシステムにおいて、前記挿入部は、前記外管の前記軸線方向に沿って延在した挿入基部と、前記挿入基部の先端から前記先端方向に延出した挿入先端部と、を含み、前記挿入基部の剛性は、前記挿入先端部の剛性よりも高くてもよい。
【0123】
上記のカテーテルシステムにおいて、前記外管の前記軸線方向において、前記挿入先端部の長さ(L5、L7)は、前記外管先端部の長さ(L1)よりも短くてもよい。
【0124】
上記のカテーテルシステムにおいて、前記挿入基部の外径(D1)は、前記挿入先端部の外径(D2)よりも大きくてもよい。
【0125】
上記のカテーテルシステムにおいて、前記挿入先端部の外面と前記挿入基部の外面との連結部には、前記挿入部の基端方向に向かって前記挿入部の径方向外方にテーパ状に傾斜した傾斜外面が形成されてもよい。
【0126】
上記のカテーテルシステムにおいて、前記挿入基部は、前記挿入先端部よりも高強度の樹脂材料によって形成されてもよい。
【0127】
上記のカテーテルシステムにおいて、前記挿入基部は、チューブ体(98)と、前記チューブ体内に設けられるとともに前記挿入部の軸線方向に沿って延在した補強部材と、を含んでもよい。
【0128】
上記のカテーテルシステムにおいて、前記医療機器は、内視鏡であってもよい。
【0129】
本実施形態は、可撓性を有する外管と、前記外管に対して軸線方向に移動可能なように前記外管の内腔に配設された内管と、前記外管の先端部と前記内管の先端部とを互いに繋ぐとともに前記外管の径方向内方に膨らむ管状のバルーンと、を有するバルーンカテーテルと、前記バルーンの内腔に挿入される線状の挿入部を有する医療機器と、を備えたカテーテルシステムであって、前記バルーンの外面と前記外管の内面との間には、前記バルーンを膨らませるためのバルーン拡張流体が流通する外側空間が形成され、前記バルーンは、前記バルーン拡張流体によって膨らんだ状態の当該バルーンを前記挿入部で支持した状態で、先端方向への押込み力が前記内管から前記バルーンへと伝達されることで前記バルーンの先端部が捲り返されながら前記外管の先端開口から前記先端方向に突出し、前記内管には、前記バルーンの外面よりも径方向外方に突出するように形成され、且つ前記外管の内面に接触することにより前記外管に対する前記内管の周方向の回転を規制する回転規制部が設けられ、前記回転規制部は、前記押込み力が前記内管から前記バルーンへと伝達されることで前記外管の内腔を前記先端方向にスライドし、前記挿入部は、前記外管の前記軸線方向に沿って延在した挿入基部と、前記挿入基部の先端から前記先端方向に延出した挿入先端部と、を含み、前記挿入基部の剛性は、前記挿入先端部の剛性よりも高く、前記外管の前記軸線方向において、前記挿入先端部の長さ(L5、L7)は、前記バルーンの長さよりも短い、カテーテルシステムを開示している。
【0130】
上記のカテーテルシステムにおいて、前記挿入部は、前記挿入基部と前記挿入先端部との間に挿入中間部を有し、前記挿入中間部の剛性は、前記挿入基部の剛性よりも低く、且つ前記挿入先端部の剛性よりも高くてもよい。
【0131】
上記のカテーテルシステムにおいて、前記外管の前記軸線方向において、前記挿入先端部の長さ(L7)と前記挿入中間部の長さ(L8)との合計は、前記バルーンの長さよりも短くてもよい。
【符号の説明】
【0132】
10…カテーテルシステム 12、12a、12b…バルーンカテーテル
14、14a~14d…内視鏡(医療機器)
22…バルーン 24、24a、24b…外管
34…第1内腔 30、30a…外管本体
36…外管基部 38、38a…外管先端部
40…基端側内腔 42…先端側内腔
43…基端側内面 50…傾斜内面
54…先端開口 62…内管
78…回転規制部 90、90a~90d…挿入部
92、92a~92d…挿入基部 94、94a…挿入先端部
98…チューブ体 101…チューブ部材
110…補強部材 112…挿入中間部
Sc…外側空間
図1
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