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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】被膜形成方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 1/28 20060101AFI20241213BHJP
   B05D 1/36 20060101ALI20241213BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20241213BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20241213BHJP
   C09D 163/00 20060101ALI20241213BHJP
   C09D 201/02 20060101ALI20241213BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20241213BHJP
【FI】
B05D1/28
B05D1/36 Z
B05D7/24 302U
C09D5/02
C09D163/00
C09D201/02
C09D5/00 D
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021029436
(22)【出願日】2021-02-26
(65)【公開番号】P2022130813
(43)【公開日】2022-09-07
【審査請求日】2023-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】599071496
【氏名又は名称】ベック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】三木 菜摘
(72)【発明者】
【氏名】北脇 和智
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-007312(JP,A)
【文献】特開2018-051435(JP,A)
【文献】特開2010-247070(JP,A)
【文献】特表2009-504398(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0042192(US,A1)
【文献】特開2019-173008(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00-7/26
B32B 1/00-43/00
C09D 1/00-10/00
101/00-201/10
E04F 13/00-13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に、第1被覆材を塗付し、次いで第2被覆材を順に塗付する被膜形成方法であって、
前記第1被覆材は、エポキシ樹脂エマルション(A)、アミノ基含有樹脂(B)、及び水性樹脂(C)(ただし、(A)、(B)は除く)を含み、
前記エポキシ樹脂エマルション(A)と前記水性樹脂(C)の混合重量比(固形分)が(A)/(C)<1であり、 前記第2被覆材は、カルボキシル基、エポキシ基、イソシアネート基から選ばれる1種以上の官能基を有する水性樹脂(D)を含み、 前記第2被覆材は、刷毛、ローラーから選ばれる少なくとも1種の塗付具で塗付されることを特徴とする被膜形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な被膜形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築物の内外装壁面・床面等への塗装においては、基材との密着性を考慮し、種々の下塗材が選定して用いられている。このような下塗材は、従来、溶剤系のものが主であったが、最近では、環境、安全等を考慮し、水系の下塗材が採用されつつある。例えば、特許文献1には、エポキシ樹脂エマルションを含む主剤とアミン樹脂を含む硬化剤からなる下塗り塗料用二液反応硬化型水性塗料組成物が記載されている。
【0003】
ところが、このようなエポキシ樹脂系下塗材に対して、上塗材を刷毛やローラー等で塗付した場合、低温または高湿度下等の塗装条件によっては、塗装作業性に劣る場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-53028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、種々の塗装条件下において塗装作業性に優れた被膜形成方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、このような問題に対し鋭意検討した結果、基材に、特定の第1被覆、特定の第2被覆材を塗付する被膜形成方法を見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、下記の特徴を有するものである。
1.基材に、第1被覆材を塗付し、次いで第2被覆材を順に塗付する被膜形成方法であって、
前記第1被覆材は、エポキシ樹脂エマルション(A)、アミノ基含有樹脂(B)、及び水性樹脂(C)(ただし、(A)、(B)は除く)を含み、
前記エポキシ樹脂エマルション(A)と前記水性樹脂(C)の混合重量比(固形分)が(A)/(C)<1であり、 前記第2被覆材は、カルボキシル基、エポキシ基、イソシアネート基から選ばれる1種以上の官能基を有する水性樹脂(D)を含み、 前記第2被覆材は、刷毛、ローラーから選ばれる少なくとも1種の塗付具で塗付されることを特徴とする被膜形成方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の被膜形成方法は、種々の塗装条件下において優れた塗装作業性を確保することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、基材に、第1被覆材、及び第2被覆材を塗付する被膜形成方法に関するものである。まず、第1被覆材、第2被覆材について説明する。
【0010】
<第1被覆材>
本発明の第1被覆材は、エポキシ樹脂エマルション(A)、アミノ基含有樹脂(B)、及び水性樹脂(C)(ただし、(A)、(B)は除く)を含むことを特徴とする水性被覆材である。
本発明のエポキシ樹脂エマルション(A)(以下、単に「(A)成分」ともいう。)は、エポキシ樹脂を水性媒体に分散・乳化させたものである。なお、エポキシ樹脂を水性媒体に分散させる場合には、必要に応じて乳化剤等を用いることができる。なお、水性媒体とは、主に水を含む媒体であり、必要に応じ、例えば、低級アルコール、多価アルコール、エーテル化合物、エステル化合物、アルキレンオキサイド含有化合物等の水溶性溶剤が混合されていてもよい。
【0011】
上記(A)成分のエポキシ樹脂としては、水性媒体に分散しうるものであればよく、固形型エポキシ樹脂及び/または液状型エポキシ樹脂のいずれであってもよい。このようなエポキシ樹脂としては、例えば、分子中にエポキシ基を1個以上、好ましくは2個以上含有する樹脂が使用でき、例えば、芳香族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、エポキシ基を有するポリブタジエン樹脂、エポキシ基を有するポリウレタン樹脂等が挙げられる。本発明では、芳香族エポキシ樹脂が好ましく、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられ、この中でも、特に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂から選ばれる1種以上が好適である。さらに、上記エポキシ樹脂は、必要に応じて分子量を増大させたものや、脂肪酸を反応させることにより得られる脂肪酸変性エポキシ樹脂、あるいはアミノ基含有化合物を付加反応させて得られるアミン付加エポキシ樹脂(アミン変性エポキシ樹脂)を水性化することより得られるもの等であっても良い。これらは1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。なお、固形型エポキシ樹脂とは、常温(23℃)で固形のもの、液状型エポキシ樹脂とは、常温(23℃)で液状のものをいう。
【0012】
本発明では、上記(A)成分として、固形型エポキシ樹脂(a1)を必須成分として含む態様が好ましい。このような態様としては、固形型エポキシ樹脂(a1)のみの態様、固形型エポキシ樹脂(a1)及び液状型エポキシ樹脂(a2)を含む態様が挙げられる。これにより、本発明の効果を十分に得ることができる。固形型エポキシ樹脂(a1)と液状型エポキシ樹脂(a2)を混合する場合、その混合比(固形分重量比)は、各エポキシ樹脂のエポキシ当量にもよるが、好ましくは100:0~5:95(より好ましくは100:0~10:90)である。なお、本発明において「α~β」は「α以上β以下」と同義である。
【0013】
(A)成分の調製方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、固形型エポキシ樹脂及び/または液状型エポキシ樹脂と、必要に応じて乳化剤を混合し樹脂溶液を調製した後、水性媒体(必要に応じて乳化剤を含む)と混合することにより乳化する方法等が挙げられる。なお、上記の調製時には、必要に応じて加熱することもできる。本発明において、固形型エポキシ樹脂と液状型エポキシ樹脂を併用する場合、固形型エポキシ樹脂と液状型エポキシ樹脂のそれぞれの水分散体を調整した後、混合して使用することが好ましい。エポキシ樹脂水分散体の樹脂固形分は、特に限定されないが、好ましくは10~80重量%(より好ましくは20~70重量%)である。
【0014】
上記乳化剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤をそれぞれ単独でまたは組み合わせて用いることができる。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ステアリルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸アルカリ金属塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等の硫酸エステルアルカリ金属塩等が挙げられる。
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、オキシエチレン・オキシプロピレンブロックコポリマー等が挙げられる。
乳化剤の配合量としては、樹脂固形分に対して好ましくは0.1~15重量%(より好ましくは0.1~10重量%、さらに好ましくは0.5~5重量%)の範囲内である。
【0015】
本発明の(A)成分のエポキシ樹脂水分散体の平均粒子径は、特に限定されないが、好ましくは100~1000nm(より好ましくは150~900nm、さらに好ましくは200~800nm、特に好ましくは300~600nm)である。平均粒子径がこのような範囲内であれば、シール性、耐白華性、耐白化性等において有利な効果を得ることができる。なお、ここに言う平均粒子径は、動的光散乱法により測定される値である。
【0016】
また、本発明の(A)成分は、エポキシ当量xが、好ましくは100~3000(より好ましくは110~2000、さらに好ましくは120~1500)である。なお、ここでいう「エポキシ当量x」は、1グラム当量のエポキシ基を含む樹脂固形分のグラム数[g/eq]であり、エポキシ樹脂の重量平均分子量を1分子当たりのエポキシ基の数で除した値である。
【0017】
なお、上記(A)成分として、エポキシ当量xや平均粒子径等が異なるものを混合して使用することもできる。
【0018】
本発明のアミノ基含有樹脂(B)(以下、単に「(B)成分」ともいう)は、エポキシ樹脂エマルション(A)と反応し塗膜を形成するものである。このような(B)成分としては、例えば、1分子中にアミノ基を2個以上含有するポリアミン樹脂が使用でき、例えば、脂肪族ポリアミン、脂環式ポリアミン、芳香族ポリアミン、複素環状アミン及びこれらポリアミン樹脂のアミノ基を変性してなる変性ポリアミン樹脂等が挙げられる。なお、上記ポリアミン樹脂の変性には、公知の方法が利用でき、例えば、アミノ基のアミド化、アミノ基とカルボニル化合物のマンニッヒ反応、アミノ基とエポキシ基の付加反応、アミノ基とスチレンとの付加反応等が挙げられる。また、(B)成分としては、脂肪族ポリアミド、脂環式ポリアミド、芳香族ポリアミド、脂肪族ポリアミドアミン、脂環式ポリアミドアミン、芳香族ポリアミドアミン等も使用できる。これらは、1種または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0019】
本発明では、(B)成分として、例えば、脂肪族ポリアミン、変性脂肪族ポリアミンから選ばれる1種以上を含むことが好ましい。これにより、エポキシ樹脂エマルションと混合した場合、基材、塗膜への付着発現性、密着性が向上する。脂肪族ポリアミンとしては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、ジプロピレンジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ヘキサメチレンジアミン等の鎖状脂肪族ポリアミン;N-アミノエチルピペラジン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、メンセンジアミン、イソホロンジアミン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(スピロアセタールジアミン)、ノルボルナンジアミン、トリシクロデカンジアミン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン等の環状脂肪族ポリアミン;メタキシレンジアミン等の脂肪芳香族アミン等が挙げられる。本発明では、特にメタキシレンジアミン、メタキシレンジアミンのスチレン付加反応生成物から選ばれる1種以上を含むことが好適である。
【0020】
(B)成分の態様としては、特に限定されないが、水性媒体に溶解可能な水可溶型樹脂、または水性媒体に分散可能な水分散型樹脂等が使用できる。本発明では、(B)成分として、水可溶型樹脂を含むことが好適である。この場合、貯蔵安定性に優れるとともに、エポキシ樹脂エマルション(A)との相溶性、反応性が高まり、基材、塗膜への付着発現性、密着性がよりいっそう向上するとともに、耐水性、塗膜外観に優れた塗膜を形成することができる。なお、(B)成分は、無溶剤型(固形分100重量%)であっても、予め(B)成分が水性媒体に溶解又は分散したものであってもよい。(B)成分の固形分は、好ましくは50重量%以上(より好ましくは55重量%以上、さらに好ましくは60重量%以上)である。(B)成分の固形分の上限は100重量%以下である。この範囲を満たす場合、本発明の効果を十分に発揮することができる。なお、水性媒体とは、主に水を含む媒体であり、必要に応じ、例えば、低級アルコール、多価アルコール、エーテル化合物、エステル化合物、アルキレンオキサイド含有化合物等の水溶性溶剤が混合されていてもよい。
【0021】
また、上記(B)成分は、(B)成分の活性水素当量yが、好ましくは10~1000(より好ましくは50~800、さらに好ましくは80~600)である。なお、ここでいう「活性水素当量y」は、1グラム当量の活性水素基を含む樹脂固形分のグラム数[g/eq]であり、アミノ基含有樹脂の重量平均分子量を1分子当たりのアミノ基の水素原子数で除した値である。
【0022】
本発明の第1被覆材において、上記(A)成分と上記(B)成分は、上記(A)成分のエポキシ当量([X]:固形分換算値)と、上記(B)成分の活性水素当量([Y];固形分換算値)の比[X/(Y)]が、好ましくは0.1~3(より好ましくは0.0.5~2、さらに好ましくは0.7~1.5)となるように混合することが好ましい。このような場合、第1被覆材の基材、塗膜への付着発現性、密着性が向上する。さらには、第1被覆材の安定性、可使時間を高めることができる。
【0023】
なお、上記X、上記Yは混合時の配合部数から求められるものであり、具体的に、上記[X]は、主剤に含まれる(A)成分の配合量(固形分重量部)を、(A)成分のエポキシ当量xで除した値である。また、上記[Y]は、硬化剤に含まれる(B)成分の配合量(固形分重量部)を、(B)成分の活性水素当量yで除した値である。
【0024】
本発明の第1被覆材は、上記(A)成分、上記(B)成分に加えて、水性樹脂(C)(ただし、(A)、(B)は除く)を含むことを特徴とする。水性樹脂(C)(以下、単に「(C)成分」ともいう。)を含むことにより、塗装条件による影響を抑制し、第2被覆材の塗装作業性を十分に確保することができる。その作用機構は、限定されるものではないが、形成塗膜の表面付近においては(C)成分が存在しやすいため、第2被覆材の塗付時には第1被覆材と第2被覆材の過剰な反応を抑制することができ、その結果、第2被覆材を刷毛、ローラー等で塗付した場合において、優れた塗装作業性を確保することができると考えられる。また、上記(C)成分を含むことにより、アミンブラッシング等を抑制することができるとともに、種々の基材及び塗膜に対して優れた密着性を発揮し、耐水性、塗膜外観等に優れた塗膜を形成することができる。
【0025】
本発明では、上記(A)成分と上記(C)成分の混合重量比(固形分)が(A)/(C)<1(より好ましくは<0.9、さらに好ましくは<0.8)であることが好ましい。なお、その下限は、(A)成分が含まれていればとくに限定されないが、好ましくは0.1<(A)/(C)(より好ましくは0.2<(A)/(C))である。このような混合比率で(C)成分を含むことにより、形成塗膜の表面付近では(C)成分の濃度が高くなりやすく、その結果、上記効果をよりいっそう高めることができる。
【0026】
上記(C)成分(上記(A)成分及び上記(B)成分を除く)は、水性媒体に溶解又は分散可能であれば特に限定されず、公知の樹脂を用いることができる。このような樹脂の種類としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、塩化ビニル樹脂等、あるいはこれらの複合系等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。さらに、(C)成分としては、上記樹脂成分が水性媒体に分散した水分散性樹脂(樹脂エマルション)が好適である。なお、水性媒体とは、主に水を含む媒体であり、必要に応じ、例えば、低級アルコール、多価アルコール、エーテル化合物、エステル化合物、アルキレンオキサイド含有化合物等の水溶性溶剤が混合されていてもよい。
【0027】
本発明では、(C)成分として、アクリル樹脂エマルション(C1)(以下、単に「(C1)成分」ともいう。)を含むことが好適である。このような(C1)成分は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが樹脂骨格の主成分となるものであり、必要に応じその他のモノマーその他の重合性モノマーを共重合したものである。なお、本発明では、アクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルを合わせて、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと表記している。また、モノマーとは、重合性不飽和二重結合を有する化合物の総称である。
【0028】
本発明では、(C1)成分を構成するモノマー群中に疎水性モノマーを含むことが好ましい。疎水性モノマーとしては、例えば、長鎖アルキル(メタ)アクリレート、芳香族基含有モノマー等が挙げられる。
【0029】
長鎖アルキル(メタ)アクリレートとしては、炭素数4以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが使用でき、例えば、n-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種または2種以上で用いることができる。
【0030】
芳香族基含有モノマーとしては、例えば、スチレン、2-メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ビニルナフタレン、クロロスチレン、等のスチレン系モノマー、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香族基含有(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
本発明では、特に、上記疎水性モノマーとして、炭素数6以上(好ましくは8以上)のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを含む態様が好ましい。
【0032】
モノマー群中における上記疎水性モノマーの含有量は、重量比率で、好ましくは10重量%以上、より好ましくは30重量%以上、さらに好ましくは40重量%以上である。上限は特に限定されないが、好ましくは99.5重量%以下である。このような場合、後述の有機溶剤(O)との相溶性が高まり、本発明の効果を高めることができる。
【0033】
その他のモノマーの具体例としては、例えば、アミド基含有モノマー、カルボニル基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、水酸基含有モノマー、ハロゲン化ビニリデン系モノマー、アルコキシシリル基含有モノマー、エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、ビニルエーテル、ビニルケトン等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上で使用することができる。
【0034】
本発明では、エポキシ基含有モノマーを含むことが好ましい。エポキシ基含有モノマーとしては、例えばグリシジル(メタ)アクリレート、ジグリシジルフマレート、3,4-エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシビニルシクロヘキサン、アリルグリシジルエーテル、ε-カプロラクトン変性グリシジル(メタ)アクリレート、β-メチルグリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用することができる。
【0035】
本発明では、(C1)成分を構成するモノマー中に、エポキシ基含有モノマーを、好ましくは0.5~50重量%(より好ましくは1~30重量%)である。これにより、アミンブラッシングによる密着性の低下や塗膜の白化等を抑制し、十分な塗膜物性を発揮することができる。
【0036】
その他のモノマーの具体例として、
ニトリル基含有モノマーとしては、例えば(メタ)アクリロニトリル、シアン化ビニリデン、α-シアノエチル(メタ)アクリレート等、
アミド基含有モノマーとしては、例えばマレイン酸アミド、(メタ)アクリルアミド、N-モノアルキル(メタ)アクリルアミド、N、N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド、2-(ジメチルアミノ)エチル(メタクリレート)、N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル](メタ)アクリルアミド、ビニルアミド等、
カルボニル基含有モノマーとしては、例えばアクロレイン、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン等、
カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、イソクロトン酸、サリチル酸等、
アミノ基含有モノマーとしては、例えばアミノメチルアクリレート、アミノエチルアクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリレート、アミノ-n-ブチル(メタ)アクリレート、ブチルビニルベンジルアミン、ビニルフェニルアミン、p-アミノスチレン、N-メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N-t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等、
水酸基含有モノマーとしては、例えばヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート等、
ハロゲン化ビニリデン系モノマーとしては、例えばフッ化ビニリデン等、
アルコキシシリル基含有モノマーとしては、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上で使用することができる。
【0037】
上記(C1)成分は、上記モノマーを適宜混合したモノマー群を乳化重合することにより製造することができる。重合方法としては公知の方法を採用すればよく、通常の乳化重合の他、ソープフリー乳化重合、フィード乳化重合、シード乳化重合、多段階乳化重合等を採用することもできる。重合時には、例えば、乳化剤、開始剤、分散剤、重合禁止剤、重合抑制剤、緩衝剤、連鎖移動剤、pH調整剤等を使用することができる。
【0038】
乳化剤としては、乳化重合に使用可能な各種界面活性剤が使用でき、これらは重合性不飽和二重結合を有する反応性タイプ(反応性界面活性剤)であってもよい。乳化剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤をそれぞれ単独でまたは組み合わせて用いることができる。具体的には、例えば上記(A)成分に記載したものの中から適宜選択できる。
【0039】
上記(C1)成分のガラス転移温度(以下、単に「Tg」という。)は、上記モノマーの種類、混合比率等を選定することで調整できる。このTgは、最終的な要求性能等を考慮して適宜設定すればよいが、好ましくは-5~80℃(より好ましくは-3~60℃)のTgを有することが好ましい。また、(C1)成分としてTgの異なる2種以上を使用することもできる。この場合には、そのトータルTgが上記範囲を満たすことが好ましい。なお、ガラス転移温度は、Foxの計算式により求めることができる。
【0040】
上記(C1)成分の平均粒子径は、特に限定されないが、好ましくは300nm以下(より好ましくは20~250nm、さらに好ましくは30~200nm)である。平均粒子径がこのような範囲内であれば、含浸補強性、シール性、耐白華性、耐白化性等において有利な効果を得ることができる。また、(C1)成分は、平均粒子径の異なる2種以上を使用することもできる。なお、ここに言う平均粒子径は、動的光散乱法により測定される値である。
【0041】
本発明では、上記(A)成分と、上記(C1)成分の平均粒子径の比が(A)/(C1)>1(より好ましくは>1.2)であることが好ましい。これにより、形成塗膜の表面付近においてよりいっそう(C1)成分の濃度が高くなる傾向となり、その結果、塗装条件による影響を抑制し、よりいっそう優れた塗膜物性を発揮することができる。なお、上記(A)成分と上記(C1)成分が平均粒子径の異なる2種以上を含む場合には、(A)成分における平均粒子径の平均値と(C1)成分における平均粒子径の平均値が上記条件を満たすことが好ましい。
【0042】
第1被覆材の態様は、上記(A)成分、上記(B)成分、及び上記(C)成分を含むものであれば特に限定されず、例えば、
・(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を含む態様(1液型)、
・(A)成分を含む主剤と、(B)成分を含む硬化剤を有する2液型であり、主剤と硬化剤のいずれか一方、またはその両方に上記(C)成分を含む態様、
・(A)成分を含む主剤と、(B)成分を含む硬化剤と、(C)成分を含む第三成分を有する態様(3液型)、
等が挙げられる。なお、相互に反応可能な成分を共存させる場合は、例えば、マスキング、ブロッキング等の処方を採用することができる。本発明の第1被覆材は、上記2液型とすることが好ましく、特に(A)成分、及び(C)成分を含む主剤と、(B)成分を含む硬化剤を有する水性被覆材であることが好ましい。
【0043】
本発明の第1被覆材は、上記成分に加えて、沸点が200℃以上であり、20℃における水への溶解度が10g/100gHO以下の有機溶剤(O)(以下、単に「(O)成分」ともいう)を含むことが好ましい。上記(C)成分に加えて、さらに(O)成分を併用して含むことにより、上記(A)成分と上記(B)成分と上記(C)成分の相溶性、反応性が高まり、優れた成膜性を得ることができる。その結果、緻密な塗膜を形成することができ、塗装条件による影響を効率的に抑制することができ、アミンブラッシング等が生じ難くなるとともに、第2被覆材の塗装作業性も高めることができる。
【0044】
上記(O)成分は、主剤、硬化剤(または第三成分)のいずれか、またはその両方(全て)に混合することができるが、本発明では主剤に混合することが好ましい。これにより、上記効果がよりいっそう高まり、アミンブラッシング等が抑制された美観性に優れた塗膜を形成することができる。
【0045】
(O)成分としては、沸点が200℃以上であり、20℃における水への溶解度が10g/100g/100gHO以下の有機溶剤であれば、特に限定されないが、例えば、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル等のエチレングリコールエーテル化合物;ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジブチルエーテル等のジエチレングリコールエーテル化合物;プロピレングリコールフェニルエーテル、ジプロピレングリコール-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコール-tert-ブチルエーテル、ジプロピレングリコール-n-プロピルエーテル、トリプロピレングリコール-n-ブチルエーテル等のプロピレングリコールエーテル化合物;2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジイソブチレート、ベンジルアルコール等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。なお、(O)成分は、沸点が200℃以上であり、その上限は好ましくは350℃以下(より好ましくは300℃以下)である。また、(O)成分の20℃における水への溶解度は10g/100gHO以下であるが、好ましくは8g/100gHO以下であり、その下限は好ましくは0g/100gHO以上(より好ましくは0.1g/100gHO以上)である。
【0046】
本発明では特に、プロピレングリコールフェニルエーテル、ジプロピレングリコール-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコール-tert-ブチルエーテル、ジプロピレングリコール-n-プロピルエーテル、トリプロピレングリコール-n-ブチルエーテル等のプロピレングリコールエーテル化合物から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0047】
(O)成分の混合量は、上記(A)成分(固形分)100重量部に対して、好ましくは1~80重量部(より好ましくは2~60重量部)である。このような範囲の場合、上記効果を十分に発揮することができる。
【0048】
さらに、本発明の第1被覆材には、シラン化合物(S)を含むことができる。シラン化合物(S)としては、例えば、グリシジル基含有シラン化合物(S1)、アルコキシシラン化合物(S2)、アミノ基含有シラン化合物(S3)等が挙げられる。これらは、1種または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0049】
上記グリシジル基含有シラン化合物(S1)(以下、単に「(S1)成分」ともいう)としては、グリシジル基(エポキシ基)とアルコキシシリル基を有する化合物、あるいはグリシジル基と環状シロキサンを有する化合物等が使用できる。これらは、1種または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0050】
グリシジル基(エポキシ基)とアルコキシシリル基を有する化合物としては、例えば、グリシジル基含有シランカップリング剤、及びその加水分解オリゴマー等が挙げられる。
【0051】
具体的に、グリシジル基含有シランカップリング剤としては、例えば、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、β-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、β-グリシドキシエチルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピル(エチル)ジメトキシシラン、β-3,4-エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、β-3,4-エポキシシクロヘキシルエチルトリエトキシシラン、8-グリシドキシオクチルトリメトキシシラン、8-グリシドキシオクチルメチルジメトキシシラン、8-グリシドキシオクチルメチルジエトキシシラン等が挙げられ、好ましくはエポキシ当量xn1が、10~1000(より好ましくは50~500)であるもの等が挙げられる。なお、ここでいう「エポキシ当量xn1」は、1グラム当量のエポキシ基を含むシラン化合物のグラム数[g/eq]であり、グリシジル基含有シラン化合物の重量平均分子量を1分子当たりのエポキシ基の数で除した値である。
【0052】
上記グリシジル基含有シランカップリング剤の加水分解オリゴマーとしては、アルコキシシリル基とグリシジル基を有するものであり、好ましくはアルコキシ基量が10~80wt%(より好ましくは20~75wt%)、エポキシ当量xn1が200~950(より好ましくは300~900)であるもの等が挙げられる。このような(N1)成分としては、2種以上のアルコキシシリル基を有するもの、あるいはアルコキシシリル基の一部ないし全部がシラノール基の状態となったものも使用することができる。
【0053】
グリシジル基と環状シロキサンを有する化合物としては、反応性官能基としてグリシジル基のみを有するシリコーンオリゴマーであり、好ましくはエポキシ当量xn1が100~500(より好ましくは150~400)であるもの等が挙げられる。
【0054】
特に、本発明では上記(S1)成分として、グリシジル基含有シランカップリング剤が好適であり、例えば、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、β-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、β-グリシドキシエチルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β-3,4-エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、β-3,4-エポキシシクロヘキシルエチルトリエトキシシランから選ばれる1種以上が好適であり、β-3,4-エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、β-3,4-エポキシシクロヘキシルエチルトリエトキシシランから選ばれる1種以上を含む態様がより好適である。これらを用いた場合、よりいっそう基材、塗膜への付着発現性、密着性が向上する。さらには、水性被覆材の安定性、可使時間を高めることができる。
【0055】
上記(S1)成分を含む場合には、主剤(または第三成分)に混合することが好ましく、その混合比は、上記(A)成分(固形分)100重量部に対し、上記(S1)成分を好ましくは0.5~50重量部(より好ましくは1~40重量部)である。このような場合、基材、塗膜への付着発現性が高まり、密着性がよりいっそう向上する。さらには、水性被覆材の安定性、可使時間を高めることができる。
【0056】
アルコキシシラン化合物(S2)(以下、単に「(S2)成分」ともいう)としては、アルコキシシラン、及びその加水分解縮合物等が使用できる。これらは、1種または2種以上組み合わせて使用することができる。このような(S2)成分を使用することによって、基材への密着性をよりいっそう高めることができる。
【0057】
このような(S2)成分としては、例えば、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラn-プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラsec-ブトキシシラン、テトラt-ブトキシシラン、テトラフェノキシシラン、等の4官能アルコキシシラン化合物;
【0058】
メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリプロポキシシラン、プロピルトリブトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ブチルトリプロポキシシラン、ブチルトリブトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリブトキシシラン等の3官能アルキルアルコキシシラン化合物;
【0059】
ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジブトキシシラン、ジエチルジプロポキシシラン、ジプロピルジメトキシシラン、ジプロピルジエトキシシラン、ジブチルジメトキシシラン、ジブチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジブトキシシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン、メチルフェニルジエトキシシラン等の2官能アルキルアルコキシシラン化合物;
等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、または2種以上が混合されて用いられてもよい。
【0060】
本発明では、(S2)成分として、3官能アルキルアルコキシシラン化合物、及び/または2官能アルキルアルコキシシラン化合物を含むことが好ましい。さらには、フェニル基を含有するものを含むことが好ましい。このような(S2)成分としては、例えば、フェニルトリメトキシシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルトリブトキシシラン、ジフェニルジブトキシシラン等が挙げられる。これらを用いた場合、形成被膜の硬化性が高まり、よりいっそう基材、塗膜への付着発現性、密着性が向上する。特に、既存塗膜を有する基材への付着発現性、密着性向上において優れた効果を発揮することができる。
【0061】
上記(S2)成分を含む場合には、主剤、硬化剤(または第三成分)のいずれか、またはその両方(全て)に混合することができるが、本発明では主剤に混合することが好ましく、その混合比は、上記(A)成分(固形分)100重量部に対し、上記(S2)成分を好ましくは0.5~30重量部(より好ましくは1~20重量部)である。このような場合、上記効果を十分に発揮することができる。
【0062】
アミノ基含有シラン化合物(S3)(以下、単に「(S3)成分」ともいう。)としては、アミノ基とアルコキシシリル基を有する化合物、あるいはアミノ基と環状シロキサンを有する化合物等が使用できる。これらは、1種または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0063】
アミノ基とアルコキシシリル基を有する化合物としては、例えば、アミノ基含有シランカップリング剤、及びその加水分解オリゴマー、アルコキシシリル基及びアミノ基を有するポリマー等が挙げられる。具体的に、アミノ基含有シランカップリング剤としては、例えば、
γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、γ-アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ビニルベンジル-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β(アミノエチル)-8-アミノオクチルトリメトキシシラン、γ-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロビルアミン等が挙げられる。
【0064】
上記アミノ基含有シランカップリング剤の加水分解オリゴマーとしては、アルコキシシリル基とアミノ基を有するものが使用できる。
このような(S3)成分としては、アルコキシシリル基の一部ないし全部がシラノール基の状態となったものも使用することができる。
【0065】
特に、本発明では(S3)成分として、アミノ基含有シランカップリング剤が好適であり、例えば、γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジエトキシシランから選ばれる1種以上が好適である。これらを用いた場合、基材、塗膜への付着発現性等が向上する。
【0066】
また、上記(S3)成分は、活性水素当量yが、好ましくは10~500(より好ましくは20~400、さらに好ましくは30~300)である。なお、ここでいう「活性水素当量y」は、1グラム当量の活性水素基を含むアミノ基含有シラン化合物のグラム数[g/eq]であり、アミノ基含有シラン化合物の重量平均分子量を1分子当たりのアミノ基の水素原子数で除した値である。
【0067】
上記(S3)成分を含む場合には、硬化剤に混合することが好ましく、その混合比は、上記(A)成分(固形分)100重量部に対して、上記(S3)成分を好ましくは0.5~200重量部(より好ましくは1~100重量部)である。このような範囲を満たす場合、貯蔵安定性に優れるとともに、基材、塗膜への付着発現性、密着性を十分に発揮することができる。
【0068】
本発明では、触媒(P)(以下、単に「(P)成分」ともいう)を混合することが好ましい。(P)成分は、例えば、水性被覆材中のグリシジル基(エポキシ基)とアミノ基との反応、あるいはアルコキシシリル基の加水分解・縮合等を促進させるものであり、基材への密着性、特に既存塗膜を有する基材への密着性をよりいっそう高めることができる。
【0069】
上記(P)成分としては、例えば、安息香酸、サリチル酸、トリヒドロキシ安息香酸、フタル酸、ケイ皮酸、ベンゼンヘキサカルボン酸等の各種芳香族カルボン酸類;トリメチルアミン、エチルジメチルアミン、プロピルジメチルアミン、N,N’-ジメチルピペラジン、ピリジン、ピコリン、1,8-ジアザビスシクロ(5,4,0)ウンデセン-1(DBU)、ベンジルジメチルアミン、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール(DMP-10)、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(DMP-30)等の第三アミン類、ヒドロキシルアミン、フェノキシアミン等のヒドロキシルアミン類、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、4(5)-メチルイミダゾール、2-エチル-4メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール等のイミダゾール類等の上記(B)成分、上記(S3)成分以外のアミン類;フェノールノボラック、o-クレゾールノボラック、p-クレゾールノボラック、t-ブチルフェノールノボラック、ジシクロペンタジエンクレゾール等のフェノール類、オクチル酸錫、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、オルガノチタネート、酢酸ナトリウム等の有機金属化合物等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。これらの中でも、(P)成分としては、特に、オクチル酸錫、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート等の有機錫化合物;安息香酸、サリチル酸、トリヒドロキシ安息香酸、フタル酸、ケイ皮酸、ベンゼンヘキサカルボン酸等の各種芳香族カルボン酸類が好適に用いられる。
【0070】
上記(P)成分は、主剤、硬化剤(または第三成分)のいずれか、またはその両方(全て)に混合することができ、その混合量は、上記(A)成分(固形分)100重量部対し、好ましくは0.01~15重量部(より好ましくは0.02~10重量部)である。このような範囲の場合、本発明の効果を高めることができる。
【0071】
本発明の第1被覆材には、上述の成分の他、主剤、硬化剤(または第三成分)のいずれか、またはその両方(全て)に必要に応じ着色顔料、体質顔料、防錆顔料、pH調整剤、可塑剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、消泡剤、レベリング剤、分散剤、沈降防止剤、たれ防止剤、増粘剤(チクソトロピック調整剤)、造膜助剤、艶消し剤、架橋剤、触媒、硬化促進剤、密着性付与剤、紫外線吸収剤、光安定剤等を、本発明の効果が著しく阻害されない範囲内で混合することができる。第1被覆材は、以上のような成分を常法により均一に混合することで製造することができる。
【0072】
本発明の第1被覆材としては、着色ないし無着色、あるいは不透明ないし透明等の種々のものが使用できる。本発明では、好ましくは透明性を有するクリヤー型水性被覆材として使用できる。また、本発明の水性被覆材は、固形分が好ましくは5~60重量%(より好ましくは6~50重量%、さらに好ましくは7~45重量%)である。なお、固形分は、上記水性媒体の混合により調整することができる。このような範囲の場合、塗装作業性に優れるとともに、種々の基材、及び塗膜に対して、密着性をよりいっそう向上させることができる。
【0073】
<第2被覆材>
本発明の第2被覆材は、アミノ基と反応性を有する官能基含有の水性樹脂(D)(以下、単に「(D)成分」ともいう。)を必須成分として含むことを特徴とする。
【0074】
本発明における(D)成分としては、アミノ基と反応性を有する官能基を有し、水性媒体に溶解又は分散可能であれば特に限定されず、公知の樹脂を用いることができる。このような樹脂の種類としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、塩化ビニル樹脂等、あるいはこれらの複合系等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。さらに、(D)成分としては、上記樹脂成分が水性媒体に分散した水分散性樹脂(樹脂エマルション)が好適である。本発明では、アクリル樹脂エマルション、ウレタン樹脂エマルション、シリコン樹脂エマルション、フッ素樹脂エマルション、あるいはこれらの複合系樹脂エマルションから選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。なお、水性媒体とは、主に水を含む媒体であり、必要に応じ、例えば、低級アルコール、多価アルコール、エーテル化合物、エステル化合物、アルキレンオキサイド含有化合物等の水溶性溶剤が混合されていてもよい。
【0075】
(D)成分中のアミノ基と反応性を有する官能基としては、例えば、エポキシ基、カルボキシル基、イソシアネート基、オキサゾリニル基等が挙げられる。これらは1種または2種以上含んでもよい。本発明では、エポキシ基、カルボキシル基、イソシアネート基から選ばれる1種以上を含むことが好ましく、特にカルボキシル基を含むことが好ましい。このような(D)成分を含むことにより、上記第1被覆材との密着性に優れ、耐水性、耐久性等を高めることができる。また、上記第1被覆材に対して、良好な塗装作業性を確保することができる。
【0076】
カルボキシル基含有樹脂エマルションは、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などのエチレン性不飽和カルボン酸等、及びこれらのアンモニウム塩、有機アミン塩、アルカリ金属塩等のカルボキシル基含有モノマーを共重合することにより得られる。これらモノマーは1種または2種以上を使用することができる。
【0077】
(D)成分の製造方法は特に限定されないが、例えば、乳化重合、ソープフリー乳化重合、分散重合、フィード乳化重合、フィード分散重合、シード乳化重合、シード分散重合等を採用することができる。(D)における反応性官能基の使用量は、(D)成分を構成する全モノマー量に対し、通常0.1~40重量%、好ましくは0.5~20重量%である。
【0078】
第2被覆材は、上記(D)以外の成分として、着色顔料、体質顔料、骨材等を混合することができる。このような成分を適宜配合することにより、所望の色彩やテクスチャーを表出することができる。その他、通常塗料に使用可能な各種添加剤を配合することもできる。このような添加剤としては、例えば増粘剤、造膜助剤、レベリング剤、湿潤剤、可塑剤、凍結防止剤、pH調整剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、分散剤、消泡剤、吸着剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、繊維類、触媒等が挙げられる。第2被覆材は、以上のような成分を常法により均一に混合することで製造することができる。
【0079】
<被膜形成方法>
本発明の被膜形成方法は、被塗面に、上記第1被覆材、上記第2被覆材を順に塗付することを特徴とする。
【0080】
基材としては、例えば、建築物の内外装壁面及び床面、あるいは一般歩道、歩道橋、プラットホーム等の屋外床面、さらには橋梁、鉄塔等の鋼構造物等を構成するものが挙げられ、具体的には、モルタル、コンクリート、窯業系サイディングボード、セラミック系サイディングボード、金属系サイディングボード、押出成形板、スレート板、ケイ酸カルシウム板、ALC板、金属、木材、ガラス、陶磁器、合成樹脂等が挙げられる。また、これらの表面には、多種多様な既存塗膜等が形成されたものであってもよい。さらに、このような基材や既存塗膜の形状としては、平滑(フラット)なもの、各種凹凸模様(例えば石材調、レンガ・タイル調、木目調、ボーダー調、塗り壁調、吹付け調等)を有するもの等が挙げられる。さらには、シーリング目地部を含む基材にも適用することもできる。
【0081】
特に、本発明の被膜形成方法は、基材の改修における被膜形成方法として好適であり、例えば、既存塗膜が設けられたサイディングボードの改修時の被膜形成方法として好適に適用することができる。
【0082】
既存塗膜は、上記基材上に、現場塗装、あるいは工場塗装(ライン塗装)等により既に塗装されている種々の塗膜であり、例えば、有機質塗膜、無機質塗膜、有機無機複合塗膜等から選ばれる少なくとも1種の塗膜が挙げられる。また、既存塗膜としては、着色塗膜(エナメル系塗膜、印刷塗膜等)、クリヤー塗膜、あるいはこれらの積層塗膜等が挙げられ、各種コーティング材を基材に塗布・硬化させ、形成された塗膜である。このようなコーティング材は、常温乾燥型、常温硬化型、焼付け硬化型、紫外線(UV)硬化型、電子線硬化型等のいずれのものであってもよい。
【0083】
このようなコーティング材の結合材としては、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂等の有機質結合材、あるいはシリコン樹脂、アルコキシシラン、コロイダルシリカ、ケイ酸塩等の無機質結合材、アクリルシリコン樹脂等の有機無機複合結合材等が挙げられる。
【0084】
本発明は、特に、既存塗膜が、無機質塗膜(上記無機質結合材を含む塗膜)、有機無機複合塗膜(上記有機無機複合結合材を含む塗膜)、フッ素樹脂塗膜(上記フッ素樹脂を含む塗膜)等から選ばれる1種以上である場合に好適であり、さらには、これらのクリヤー塗膜に好適に適用できる。このような既存塗膜は、光触媒酸化チタン等を含むものであってもよい。
【0085】
具体的なコーティング材としては、例えば、建築用耐候性上塗り塗料(JIS K5658:2010)、鋼構造物用耐候性塗料(JIS K5659:2008)、つや有合成樹脂エマルションペイント(JIS K5660:2008)、建築用防火塗料(JIS K5661:1970)、合成樹脂エマルションペイント(JIS K5663:2008)、路面標示用塗料(JIS K5665:2011)、多彩模様塗料(JIS K5667:2003)、合成樹脂エマルション模様塗料(JIS K5668:2010)、アクリル樹脂系非水分散形塗料(JIS K5670:2008)、鉛・クロムフリーさび止めペイント(JIS K5674:2008)、屋根用高日射反射率塗料(JIS K5675:2011)、建物用床塗料(JIS K5970:2008)、建築用塗膜防水材(JIS A6021:2011)、建築用仕上塗材(JIS A6909:2014)、等が挙げられる。
【0086】
上記基材に、上記第1被覆材を塗付する方法としては、特に限定されず、例えば、刷毛塗装、ローラー塗装、スプレー塗装等の種々の方法を採用することができる。また、工場内で塗装する場合は、上記以外にもロールコーター、フローコーター等を用いて塗装することもできる。
【0087】
第1被覆材の塗付け量については、好ましくは0.05~0.5kg/m(より好ましくは0.07~0.3kg/m)程度である。第1被覆材の塗回数は、下地の状態によって適宜設定すればよいが、好ましくは1~2回である。第1被覆材の乾燥時間は、好ましくは1時間以上1週間以内とすればよい。また乾燥温度は、好ましくは-10℃以上50℃以下(より好ましくは-5℃以上40℃以下)であればよい。本発明の第1被覆材は、常温硬化型として好ましいものである。
【0088】
本発明の第2被覆材は、刷毛、ローラー、ブラシから選ばれる少なくとも1種の塗付具で塗付することを特徴とする。本発明では、上記のような被塗面と接触し、第2被覆材を塗付する塗付具を使用した場合において、優れた塗装作業性を得ることができるものである。
【0089】
第2被覆材の塗付け量については、好ましくは0.05~0.5kg/m(より好ましくは0.07~0.3kg/m)程度である。第2被覆材の塗回数は、所望により適宜設定すればよいが、好ましくは1~2回である。第2被覆材の乾燥時間は、好ましくは1時間以上1週間以内とすればよい。また乾燥温度は、好ましくは-10℃以上50℃以下(より好ましくは-5℃以上40℃以下)であればよい。本発明の第2被覆材は、常温硬化型として好ましいものである。
【0090】
第2被覆材を塗付するタイミングは、第1被覆材の指触乾燥後であればよいが、半硬化乾燥後または硬化乾燥後であってもよい。また、本発明は、第1被覆材の指触乾燥後から硬化乾燥前、あるいは第1被覆材の指触乾燥後から半硬化乾前においても有効である。
【0091】
また、本発明は、第1被覆材及び/または第2被覆材の乾燥が、少なくとも低温環境下の状態を経て行われる場合においても有効である。低温環境下とは、気温15℃以下の環境下のことであり、本発明では、より低い温度の環境下、例えば、気温0~10℃の環境下の状態を経て被膜を形成することもできる。
【実施例
【0092】
以下に実施例及び比較例を示して、本発明の特徴をより明確にする。
【0093】
<第1被覆材>
表1に示す混合比において、エポキシ樹脂エマルション(A)、アクリル樹脂エマルション(C)、有機溶剤(O)、グリシジル基含有シラン化合物(S1)、アルキルアルコキシシラン化合物(S2)、触媒(P)、添加剤、及び水を混合したものを主剤とした。また、表1に示す混合比において、アミノ基含有樹脂(B1)、及びアミノ基含有シラン化合物(S3)を混合したもの硬化剤とした。主剤と硬化剤を混合したものを、第1被覆材1~12とした。
【0094】
なお、原料としては以下のものを使用した。
・エポキシ樹脂エマルション(A)
(A1)エポキシ樹脂エマルション[ビスフェノールA型エポキシ樹脂(固形型)水分散体、固形分46重量%、平均粒子径:390nm、エポキシ当量x508]
・アミノ基含有樹脂(B)
(B1)ポリアミン樹脂[水可溶型、メタキシレンジアミンのスチレン付加反応生成物、固形分100重量%、活性水素当量y:103]
・アクリル樹脂エマルション(C)
(C1)アクリル樹脂エマルション[スチレン/2-エチルヘキシルアクリレート/グリシジルメタクリレート共重合体、ガラス転移温度:20℃、固形分:33重量%、グリシジルメタクリレート含有量:9重量%、平均粒子径:75nm]
(C2)アクリル樹脂エマルション[スチレン/2-エチルヘキシルアクリレート/グリシジルメタクリレート共重合体、ガラス転移温度:-3℃、固形分:33重量%、グリシジルメタクリレート含有量:9重量%、平均粒子径:160nm]
(C3)アクリルシリコン樹脂エマルション[メチルメタクリレート/n-ブチルアクリレート/グリシジルメタクリレート/3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン/アクリル酸共重合体、ガラス転移温度:20℃、固形分:33重量%、アルコキシシリル基含有モノマー含有量:1重量%、グリシジルメタクリレート含有量:2重量%、平均粒子径:120nm]
(C4)アクリル樹脂エマルション[スチレン/2-エチルヘキシルアクリレート/メタクリレート共重合体、ガラス転移温度:20℃、固形分:33重量%、平均粒子径:75nm]
・有機溶剤(O)
(O1)ジプロピレングリコール-n-ブチルエーテル[沸点229℃、20℃における水への溶解度5g/100gHO]
(O2)プロピレングリコール[沸点187℃、20℃における水への溶解度∞]
・シラン化合物(S)
(S1)グリシジル基含有シラン化合物[β-3,4-エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、エポキシ当量xn1:246]
(S2)アルキルアルコキシシラン化合物[フェニルトリメトキシシラン/ジメトキシメチルフェニルシラン混合物]
(S3)アミノ基含有シラン化合物[N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、活性水素当量y:103]
・触媒(P)
(P1)有機錫化合物分散液[固形分:10重量%]
・添加剤:消泡剤、増粘剤等
【0095】
【表1】
【0096】
<第2被覆材>
水性樹脂(D)[カルボキシル基含有アクリル樹脂エマルション(メチルメタクリレート/2-エチルヘキシルアクリレート/メタクリル酸共重合体、メタクリル酸含有量:1重量%)、固形分50重量%、平均粒子径130nm]を200重量部、酸化チタンを85重量部、添加剤(分散剤、増粘剤、消泡剤、造膜助剤)10重量部を均一に混合したものを第2被覆材とした。
【0097】
(実施例1~11、比較例1)
<試験体の作成>
既存塗膜として無機質クリヤー塗膜が形成されたサイディングボード上に、主剤と硬化剤を混合して得られた第1被覆材をローラを用いて塗付け量0.1kg/mとなるように混合直後に塗付し、下記の乾燥条件(1)~(5)にて乾燥させた。
次いで、第2被覆材をローラ(短毛ローラー)を用いて塗付け量0.1kg/mとなるように塗付し、標準状態(気温23℃、相対湿度50%)で、1日間乾燥させた。
なお、第1被覆材、第2被覆材は、標準状態で塗装した。
(乾燥条件)
(1)標準状態で7日
(2)標準状態で1時間
(3)5℃、相対湿度50%環境下で2時間
【0098】
<塗装作業性評価>
上記試験体作成時において、第2被覆材の塗装作業性(ローラー作業性)を評価した。結果は表2に示す。
評価基準は、以下の通りである。
A:ローラーに被覆材が固着せず、効率よくスムーズに転動させることができた。
B:ローラーに被覆材が固着せず、転動させることができた。
C:ローラーに被覆材がやや固着し、やや転動させにくかった。
D:ローラーに被覆材が固着し、転動させることができなかった。
【0099】
<耐水性評価>
上記試験体を20℃の水に48時間浸漬させた後、試験体を取り出し、乾燥(23℃、3時間)させ、塗膜状態を目視にて、膨れ、剥れ等を観察し評価した。
評価基準は、ほぼ異常がなかったものを「A」、異常があったものを「D」とする6段階評価(AA>A>AB>B>C>D)評価とした。結果は、表2に示す。
【0100】
【表2】