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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/511 20060101AFI20241213BHJP
   A61F 13/536 20060101ALI20241213BHJP
【FI】
A61F13/511 110
A61F13/536 100
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021030931
(22)【出願日】2021-02-26
(65)【公開番号】P2022131797
(43)【公開日】2022-09-07
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 絵里香
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-154964(JP,A)
【文献】特開2016-002100(JP,A)
【文献】登録実用新案第3219701(JP,U)
【文献】特開2018-083016(JP,A)
【文献】特開2020-000664(JP,A)
【文献】特開2020-044253(JP,A)
【文献】特開2019-187662(JP,A)
【文献】特開2019-041867(JP,A)
【文献】国際公開第2018/235497(WO,A1)
【文献】米国特許第08536401(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収体と、該吸収体の肌対向面側に配された表面シートと、該吸収体の非肌対向面側に配された裏面シートとを備え、長手方向及び幅方向を有する吸収性物品であって、
前記吸収性物品における肌対向面側に、前記表面シート及び前記吸収体が前記裏面シート側に向かって一体的に凹陥した線状エンボス部を有し、
1又は複数の前記線状エンボス部により、一部に開放部分を有する環状エンボス部が形成されており、
前記環状エンボス部は、前記吸収性物品を前記長手方向に三等分して中央領域とその両側の端部領域とに区分したときに、一方又は双方の前記端部領域に形成されており、
前記環状エンボス部は、前記開放部分として、前記幅方向の位置が前記環状エンボス部の図心に対して、前記長手方向に延びる長手方向中央線とは反対側に位置する外側開放部分を有しており、
前記環状エンボス部が複数形成されており、該複数の前記環状エンボス部それぞれが、前記線状エンボス部を他の前記環状エンボス部と共有しないで独立しており、
複数の前記環状エンボス部が、共通する中央部の周囲に環状に配された花模様形状の環状エンボス部群を形成しており、該中央部にエンボス部が形成されていない、吸収性物品。
【請求項2】
前記環状エンボス部は、前記開放部分を複数有する、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記環状エンボス部は、前記開放部分として、前記幅方向の位置が前記環状エンボス部の図心に対して、前記長手方向中央線側に位置する内側開放部分を有する、請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
複数の前記環状エンボス部は、少なくとも前記外側開放部分が、前記長手方向中央線を挟んだ両側それぞれに存在するように形成されている、請求項1~3の何れか一項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記長手方向中央線を挟んだ両側それぞれに、前記長手方向に延びる長手方向エンボス部が形成されており、
前記長手方向エンボス部は、前記環状エンボス部を形成する前記線状エンボス部とは別の前記線状エンボス部により形成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記環状エンボス部が、前記長手方向において、前記長手方向エンボス部の端部よりも外方に位置している、請求項5に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記長手方向エンボス部は、連続する一本の前記線状エンボス部から形成されている、請求項5又は6に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記環状エンボス部は、着用時に着用者の前側に配される前記端部領域である前側領域に少なくとも配されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、装着感を向上させたり、体液の漏れを抑制したりすることを目的として、吸収性物品の肌対向面側に、エンボス部を形成することが行われている。例えば特許文献1及び2には、表面シート及び吸収体が裏面シート側へ向かって一体的に凹陥したエンボス部を有する吸収性物品が記載されている。特許文献1には、環状に構成された無端状の溝からなる第1環状溝を形成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-50699号公報
【文献】特開2016-106992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、吸収性物品に形成されたエンボス部が、その効果を発揮するとともに、液漏れに対する安心感を得られるようにするには、エンボス部の明瞭性を向上させる必要がある。エンボス部の明瞭性を向上させるには、吸収性物品を肌対向面側から強く押してエンボス部を形成する必要がある。このようにして形成したエンボス部には、排泄された液が留まりやすいので、該液が吸収性物品の肌対向面側に残り、液戻りが発生するという不都合が生じる場合がある。この不都合は、特許文献1及び2に記載の吸収性物品においても同様に生じる。また、特許文献1において、第1環状溝は無端状の溝からなるので、該第1環状溝の内側の領域に達した液が、該第1環状溝の外側に出ていくときに、該液が拡散する方向を制御することができない。このことに起因して、特許文献1に記載の吸収性物品は、液漏れが発生しやすい。
したがって本発明の課題は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得る吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、吸収体と、該吸収体の肌対向面側に配された表面シートと、該吸収体の非肌対向面側に配された裏面シートとを備え、長手方向及び幅方向を有する吸収性物品に関する。
前記吸収性物品における肌対向面側に、前記表面シート及び前記吸収体が前記裏面シート側に向かって一体的に凹陥した線状エンボス部を有する。
1又は複数の前記線状エンボス部により、一部に開放部分を有する環状エンボス部が形成されている。
前記環状エンボス部は、前記吸収性物品を前記長手方向に三等分して中央領域とその両側の端部領域とに区分したときに、一方又は双方の前記端部領域に形成されている。
前記環状エンボス部は、前記開放部分として、前記幅方向の位置が前記環状エンボス部の図心に対して、前記長手方向に延びる長手方向中央線とは反対側に位置する外側開放部分を有する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、液戻りや液漏れが発生しにくい吸収性物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本発明の吸収性物品の一実施形態の肌対向面側を模式的に示す平面図である。
図2図2は、図1のII-II線断面図である。
図3図3は、図1のIII-III線断面図である。
図4図4は、図1の要部拡大図である。
図5図5(a)~(c)は、図1に示す吸収性物品において液の拡散している状態を模式的に示す平面図である。
図6図6(a)~(f)は、本発明の吸収性物品に係る環状エンボス部の変形例を模式的に示す平面図である。
図7図7は、本発明の吸収性物品に係る環状エンボス部の別の変形例を模式的に示す平面図である。
図8図8(a)及び(b)は、本発明の吸収性物品に係る環状エンボス部の更に別の変形例を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1には、本発明の吸収性物品の一実施形態が示されている。
図1に示す吸収性物品1は、失禁パッドである。吸収性物品は、主として尿、経血等の身体から排泄される体液を吸収保持するために用いられるものである。吸収性物品としては、失禁パッド以外に、例えば生理用ナプキン、おりものシートなどが挙げられる。
【0009】
図1に示す吸収性物品1は、長手方向X及び該長手方向Xに直交する幅方向Yを有する。長手方向Xは、着用者の前後方向に対応する方向である。
吸収性物品1は、該吸収性物品1を長手方向Xに三等分して中央領域Cとその両側の端部領域A,Bとに区分することができる。吸収性物品1において、一方の端部領域Aが着用者の腹側(前側)に配される前側領域であり、他方の端部領域Bが着用者の背側(後側)に配される後側領域である。少なくとも中央領域Cは、着用者の尿道口などの液排泄部に対向する排泄部対向部(図示せず)を含んで構成される。
【0010】
吸収性物品1は、図1ないし図3に示すように、吸収体5と、該吸収体5の肌対向面側に配された表面シート2と、該吸収体5の非肌対向面側に配された裏面シート3とを有する。
「肌対向面」は、吸収性物品又はその構成部材(例えば吸収体)に着目したときに、吸収性物品の着用時に着用者の肌に向けられる面であり、「非肌対向面」は、吸収性物品の着用時に着用者の肌とは反対側に向けられる面である。また「着用時」及び「着用状態」は、吸収性物品の適正な着用位置が維持されて着用された状態を指す。
【0011】
図1に示す実施形態においては、表面シート2と吸収体5との間に中間シート4が配されている。中間シート4は、セカンドシート、サブレイヤーシートなどとも呼ばれるものである。中間シート4としては、紙や各種不織布からなる液透過性シートを用いることができる。吸収体5は、吸収性コアを備えている。
【0012】
吸収性物品1は、図1に示すように、肌対向面側における側部域に、長手方向Xに沿って延びる一対の防漏カフ7,7が設けられていてもよい。図1に示す実施形態において、防漏カフ7は、幅方向Yの一端側が他の構成部材、例えば表面シート2に固定されて固定端部7bとされている。また防漏カフ7は、幅方向Yの他端側が他の構成部材に非固定の自由端部7aとされている。
【0013】
吸収性物品1は、その肌対向面側に、表面シート2及び吸収体5が裏面シート3側に向けて一体的に凹陥した線状エンボス部6を有する。線状エンボス部6は、吸収体5を厚み方向に貫通しておらず、表面シート2の肌対向面に開口を有するとともに、吸収体5の内部における該開口とは反対側に底部を有する。図1に示す実施形態に係る線状エンボス部6においては、図2及び図3に示すように、表面シート2及び吸収体5とともに、中間シート4も裏面シート3側に向けて一体的に凹陥している。
【0014】
線状エンボス部6は、吸収性物品1に対しその肌対向面即ち表面シート2側から圧搾加工を施すことによって形成されている。このような形成方法から、線状エンボス部6は吸収体5の厚みが他の部分に比して薄くなっている。線状エンボス部6は、該線状エンボス部6と交差する方向の液の流れを抑制する機能を有する。
【0015】
吸収性物品1においては、図1に示すように、複数の線状エンボス部6により環状エンボス部61が形成されている。吸収性物品1においては、2つの線状エンボス部6により1つの環状エンボス部61が形成されている。環状エンボス部61は、略ハート形状を有している。
環状エンボス部61は、排泄された液を該環状エンボス部61を構成する線状エンボス部6で囲まれた領域内に留めることができる。吸収性物品1は、環状エンボス部61を有することによって、体液の漏れ抑制性能に優れる。
【0016】
環状エンボス部61は、一部に開放部分を有する。環状エンボス部61は、複数の開放部分を有する。具体的には、環状エンボス部61は、図1及び図4に示すように、開放部分として、外側開放部分61aと、内側開放部分61bとを有する。
【0017】
外側開放部分61aは、図4に示すように、幅方向Yの位置が環状エンボス部61の図心Mに対して、長手方向Xに延びる長手方向中央線(以下、単に「中央線」とも言う。)Cyとは反対側に位置している。長手方向中央線Cyは、吸収性物品1を幅方向Yに2等分する直線である。外側開放部分61aの配置位置について詳述すると、外側開放部分61aは、環状エンボス部61を、該環状エンボス部61の図心Mを通り且つ中央線Cyと平行な第1直線L1を境界として、中央線Cy側の第1領域Pと、中央線Cyとは反対側の第2領域Qとに分けたときに、第2領域Qに位置している。
【0018】
内側開放部分61bは、図4に示すように、幅方向Yの位置が環状エンボス部61の図心Mに対して、長手方向中央線Cy側に位置している。具体的には、内側開放部分61bは、第1領域Pに位置している。
【0019】
吸収性物品1は、環状エンボス部61が外側開放部分61aを有することにより、液戻りや液漏れが発生しにくくなっている。以下、この点について、図5を参照しながら詳述する。吸収性物品1を着用した着用者が排尿した場合、該尿が長手方向Xに拡散して(図5(a)参照)、環状エンボス部61に達することがある。環状エンボス部61まで達した尿は、図5(b)に示すように、該環状エンボス部61の内側の領域内にも入る。そして、環状エンボス部61の内側の領域内に入った尿の量が、該領域内で保持可能な液量を超えると、尿は、該領域の外側へも拡散することになる。このとき、環状エンボス部61が、外側開放部分61aを有すると、尿は、図5(c)に示すように、外側開放部分61aを介して環状エンボス部61の外側へと拡散する。外側開放部分61aは、第2領域Qに位置しているので、環状エンボス部61の外側へと拡散する尿は、幅方向Y外方に向かって拡散しやすい。
このようにして、本実施形態の吸収性物品1によれば、尿等の排泄された液の拡散方向を制御することができるので、例えば吸収性物品1の長手方向Xの端部での液漏れを抑制することができる。また、環状エンボス部61の内側の領域内に誘導された液が、外側開放部分61aを介して、該領域の外側へと徐々に拡散することにより、吸収体5の吸液性能を十分に発揮させることもできる。このように、本実施形態の吸収性物品1によれば、排泄された液を十分に吸収することができるので、液戻りが派生しにくい。
【0020】
吸収性物品1は、体液を複数の方向に拡散させ、吸収体5の吸液性能を一層十分に発揮させる観点から、環状エンボス部61は開放部分を複数有することが好ましい。環状エンボス部61が開放部分を複数有する場合、複数の開放部分のうち少なくとも一つは外側開放部分61aである。一つの環状エンボス部61が有する外側開放部分61aの数は一つであってもよいし(図4及び図6(a)参照)、複数であってもよい(図6(b)及び図6(c)参照)。また複数の開放部分の全てが外側開放部分61aであってもよい(図6(a)及び図6(b)参照)。
【0021】
吸収性物品1は、環状エンボス部61が、開放部分として外側開放部分61aに加えて内側開放部分61bを有すると、該環状エンボス部61まで達した液を該環状エンボス部61の内側の領域内に引き込みやすくなる。そのため、液の拡散方向や拡散速度を、環状エンボス部61によって一層容易に制御できるので、吸収性物品1は、液漏れや液戻りが一層発生しにくくなっている。
内側開放部分61bの数は一つであってもよいし、複数であってもよい。環状エンボス部61が、外側開放部分61a及び内側開放部分61bの両方を有する場合、外側開放部分61aの数と内側開放部分61bの数とは同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0022】
吸収性物品1は、端部領域に、環状エンボス部61が複数形成されていることが好ましい。これにより、複数の環状エンボス部61の内側の領域に液を溜めるとともに、各環状エンボス部61の開放部分から徐々に液を拡散させることで吸収体5を有効に活用し、吸収性物品1の長手方向Xの前後端からの液漏れを一層発生しにくくすることができる。この効果を一層顕著にする観点から、端部領域に形成されている環状エンボス部61は、好ましくは2個以上、より好ましくは4個以上であり、また好ましくは8個以下、より好ましくは6個以下であり、また好ましくは2個以上8個以下、より好ましくは4個以上6個以下である。環状エンボス部61は、前側領域A及び後側領域Bの何れか一方に複数形成されていてもよいし、前側領域A及び後側領域Bの両方に複数形成されていてもよい。少なくとも一方の端部領域に、複数の環状エンボス部61が形成されていることが好ましい。なお、吸収性物品1は、環状エンボス部61を1つのみ有していてもよい。
【0023】
吸収性物品1においては、図1に示すように、複数の環状エンボス部61は、少なくとも外側開放部分61aが、中央線Cyを挟んだ両側それぞれに存在するように形成されていることが好ましい。こうすることにより、環状エンボス部61まで達した体液を幅方向Yの両端側に拡散しやすくなるので、吸収性物品1の長手方向Xの前後端からの液漏れを一層発生しにくくすることができる。図1に示す実施形態においては、環状エンボス部61が、中央線Cyを挟んだ両側それぞれに配されている。環状エンボス部61は、図8(a)及び(b)に示すように、少なくとも外側開放部分61aが、中央線を挟んで相互に反対側に位置することが好ましい、また環状エンボス部61は、図8(a)及び(b)に示すように、中央線Cyと重なる部分を有していてもよい。なお、図8(a)に示す変形例は、複数の環状エンボス部61の外側開放部分61aが、長手方向Xの同じ方向(前方又は後方)に向いている変形例であり、図8(b)に示す変形例は、複数の環状エンボス部61の外側開放部分61aが、長手方向Xの逆方向に向いている変形例である。
【0024】
環状エンボス部61の外側開放部分61aは、該環状エンボス部61の第2領域Qを、該環状エンボス部61の図心Mを通り且つ第1直線L1と直交する第2直線L2を境界として、吸収性物品1の長手方向Xの前端側の第3領域Q1と、該長手方向Xの後端側の第4領域Q2とに分けたときに(図4参照)、第3領域Q1及び第4領域Q2のいずれに配されていてもよい。外側開放部分61aが第3領域Q1及び第4領域Q2のいずれに配されている場合であっても、環状エンボス部61の外側へと拡散する液を幅方向Y外方に向かって拡散させることができる。
環状エンボス部61が前側領域Aに配されている場合、外側開放部分61aが第3領域Q1に配されていると、該環状エンボス部61内に誘導された液を、幅方向Y外方に向かって拡散させるとともに吸収性物品1の長手方向Xの前端側へ拡散させることができるので、吸収体5を有効に活用することができる。一方、外側開放部分61aが第4領域Q2に配されていると、該環状エンボス部61内に誘導された液を、幅方向Y外方に向かって拡散させるとともに吸収性物品1の長手方向Xの後端側へ拡散させることができるので、吸収性物品1の前端側からの液漏れを一層効果的に防止することができる。
環状エンボス部61が後側領域Bに配されている場合、外側開放部分61aが第3領域Q1に配されていると、該環状エンボス部61内に誘導された液を、幅方向Y外方に向かって拡散させるとともに前端側へ拡散させることができるので、吸収性物品1の後端側からの液漏れを一層効果的に防止することができる。一方、外側開放部分61aが第4領域Q2に配されていると、該環状エンボス部61内に誘導された液を、幅方向Y外方に向かって拡散させるとともに吸収性物品1の長手方向Xの後端側へ拡散させることができるので、吸収体5を有効に活用することができる。
【0025】
図1に示す実施形態においては、吸収性物品1は、第3領域Q1に外側開放部分61aを有する環状エンボス部61と、第4領域Q2に外側開放部分61aを有する環状エンボス部61とを、それぞれ2つずつ有している。このように、複数の環状エンボス部61が、互いに近接配置されて、一纏りの環状エンボス部群65を形成していることも好ましい。図1に示す環状エンボス部群65においては、複数の環状エンボス部61が、共通する中央部の周囲に、それぞれ外側開放部分61aとは反対側を中央部側に位置させた状態で環状に配されている。図1に示す環状エンボス部群65は、環状エンボス部61からなる4枚の花びらを有する花模様形状を形成している。これに代えて、3又は5以上の環状エンボス部61からなる花模様形状が形成されていてもよい。
【0026】
図1に示す実施形態においては、吸収性物品1を幅方向Yに2等分する中央線Cyを挟んだ両側それぞれに、長手方向Xに延びる長手方向エンボス部62が形成されている。一対の長手方向エンボス部62,62は、前側領域A側の端部どうしが離間しており、後側領域B側の端部どうしが連続している。即ち、一対の長手方向エンボス部62,62は、全体として、前側領域A側が開いた形状を有し、後側領域B側が閉じた形状を有している。長手方向エンボス部62は、環状エンボス部61を形成する線状エンボス部6とは別の線状エンボス部6により形成されている。
【0027】
吸収性物品1が長手方向エンボス部62を有することにより、該吸収性物品1の中央領域Cにおいては長手方向Xに液を拡散させ、前側領域A及び後側領域Bにおいては環状エンボス部61の内側の領域に液を溜めるとともに、環状エンボス部61の開放部分から徐々に液を拡散させることで、吸収体5を有効に活用することができるとともに、吸収性物品1の長手方向Xの前後端からの液漏れを効果的に抑制することができる。斯かる効果が一層顕著に奏されるようにする観点から、環状エンボス部61は、吸収性物品1の長手方向Xにおいて、長手方向エンボス部62の端部よりも外方に位置していることが好ましい。また、同様の観点から、長手方向エンボス部62を構成する線状エンボス部6は、連続して形成されていることが好ましい。図1に示す実施形態において、長手方向エンボス部62を構成する線状エンボス部6は、連続した1つの線状エンボス部6からなる。連続した1つの線状エンボス部6には、切れ目のない連続した形状のもののみならず、複数のドットや破線により構成されているものも含まれる。
【0028】
吸収性物品1において、環状エンボス部61は、前側領域A及び後側領域Bのいずれか一方又は両方に形成されていてもよい。一般に着用者の液排泄部は着用者の前側に存在するので、環状エンボス部61を、少なくとも前側領域Aに形成することで、吸収性物品1の長手方向Xの前端からの液漏れを抑制でき、吸収性物品1からの液漏れを一層効果的に抑制することができる。
【0029】
次に、吸収性物品1の構成材料について説明する。
表面シート2としては、液透過性を有するシート、例えば不織布や穿孔フィルムなどを用いることができる。表面シート2は、その肌対向面側が凹凸形状になっていてもよい。例えば表面シート2の肌対向面側に、散点状に複数の凸部を形成することができる。あるいは、表面シート2の肌対向面側に、一方向に延びる畝部と溝部とを交互に形成することができる。そのような目的のために、2枚以上の不織布を用いて表面シート2を形成することもできる。
【0030】
裏面シート3としては、例えば液難透過性のフィルムやスパンボンド・メルトブローン・スパンボンド積層不織布などを用いることができる。液難透過性のフィルムに、複数の微細孔を設け、該フィルムに水蒸気透過性を付与してもよい。吸収性物品の肌触り等を一層良好にする目的で、裏面シート3の外面に不織布等の風合いの良好なシートを積層してもよい。
【0031】
吸収体5が有する吸収性コアは例えばパルプを初めとするセルロース等の親水性繊維の積繊体、該親水性繊維と吸収性ポリマーとの混合積繊体、吸収性ポリマーの堆積体などから構成される。吸収性コアは、少なくともその肌対向面が液透過性のコアラップシートで覆われていてもよく、肌対向面及び非肌対向面を含む表面の全域がコアラップシートで覆われていてもよい。コアラップシートとしては、例えば親水性繊維からなる薄葉紙や、液透過性を有する不織布などを用いることができる。吸収体5は、吸収性コアのみからなるものであってもよい。
【0032】
吸収性コアは、シート状の吸収体である吸収性シートを主体とするものであってもよい。吸収性シートは、典型的には、木材パルプ等の繊維材料を主体とする繊維シートと、該繊維シートの内部又は表面に固定された吸収性ポリマー等の吸水性材料とを含んで構成されている。吸収性シートは、相対向する2枚のシート間に吸収性ポリマーの粒子が介在配置された構成を有するものであり得る。
【0033】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明の範囲は前記実施形態に制限されない。
【0034】
また、上述した実施形態において、環状エンボス部61は略ハート形状を有していたが、環状エンボス部61の形状はこれに限られず、例えば、円形状(図6(d)ないし(f)参照)であってもよい。また、環状エンボス部61の形状は、例えば、矩形形状(図7(a)参照)、星形形状(図7(b)参照)、馬蹄形状(図7(c)参照)、クローバー形状(図7(d)参照)等であってもよい。
また、環状エンボス部61は、双方の端部領域、即ち前側領域A及び後側領域Bそれぞれに1つずつ形成されていてもよい。
【0035】
また、防漏カフ7の自由端部7aは、伸縮性を有していてもよい。例えば、防漏カフ7の自由端部7aに、糸状又は帯状の弾性部材が長手方向Xに伸長状態で配置されていてもよい。防漏カフ7は、伸長状態で配された弾性部材が吸収性物品1の着用時に収縮することによって少なくとも中央領域Cで起立し、それによって尿等の排泄物の幅方向Yの外方への流出が阻止される。
また防漏カフ7の自由端部7aは伸縮性を有していなくてもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 吸収性物品
2 表面シート
3 裏面シート
4 中間シート
5 吸収体
6 線状エンボス部
61 環状エンボス部
61a 外側開放部分
61b 内側開放部分
62 長手方向エンボス部
7 防漏カフ
A 前側領域(端部領域)
B 後側領域(端部領域)
C 中央領域
X 長手方向
Y 幅方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8