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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/17 20060101AFI20241213BHJP
   E04G 23/02 20060101ALN20241213BHJP
【FI】
G01N21/17 A
E04G23/02 Z ESW
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021041755
(22)【出願日】2021-03-15
(65)【公開番号】P2022141443
(43)【公開日】2022-09-29
【審査請求日】2023-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 瑞穂
(72)【発明者】
【氏名】平 将次郎
(72)【発明者】
【氏名】染谷 俊介
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 賢
(72)【発明者】
【氏名】黒田 健資
【審査官】小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-158656(JP,A)
【文献】特表2020-507776(JP,A)
【文献】特開2013-064735(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/01
G01N 21/17 - G01N 21/61
E04G 23/00 - E04G 23/08
G01B 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物におけるアスベストが含まれている可能性のある撮影対象領域に対して、当該アスベストが吸収する波長帯域を含む波長のレーザ光を用いて3次元撮影して得られた、当該レーザ光の反射強度を示す反射強度情報を含む点群データを取得する取得部と、
前記取得部によって取得された前記反射強度情報を用いて、前記撮影対象領域に前記アスベストが含まれているか否かを推定する推定部と、
前記推定部によって前記アスベストが含まれていると推定された場合、前記取得部によって取得された点群データが示す3次元形状の何処かに前記アスベストが含まれていることを提示する提示部と、
を備え
前記推定部は、前記反射強度情報が示す反射強度を用いて、前記アスベストの厚さの推定値を更に導出し、
前記提示部は、前記推定部によって推定された前記アスベストの厚さの分布状況を示す画像を更に提示する、
情報処理装置。
【請求項2】
前記提示部は、前記推定部によって前記アスベストが含まれていると推定された場合、前記取得部によって取得された点群データが示す3次元形状のどの部分に前記アスベストが含まれているかを表示部によって表示することで前記提示を行う、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記提示部は、前記アスベストの量に応じて前記表示部による前記表示の方法を変化させる、
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記取得部は、前記点群データの座標情報を取得するためのレーザ光と、前記アスベストを検出するためのレーザ光とで波長が異なる2系統のレーザ光を射出する3次元スキャナを用いて前記点群データを取得する
請求項1~請求項3の何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記アスベストの量は、当該アスベストの厚さである、
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記推定部は、赤外線吸収スペクトルを用いて、前記アスベストの種類を更に推定する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建設業での3次元スキャナ(以下、「3Dスキャナ」ともいう。)による3次元撮影は、土木分野と同様に、屋外から建物の躯体及び外装や、設備類を対象として行われている。また、当該3次元撮影は、半屋外(目隠し壁で隠れた屋上、ドライエリア、ピロティ等)や屋内においても、建物の躯体及び内装や、設備類を対象に行われている。
【0003】
この3Dスキャナによる3次元撮影によって取得した点群データは、パーソナルコンピュータ等により、現地及び現況の確認を行うといった活用が行われている。
【0004】
このような3Dスキャナによって得られる点群データを利用する技術として、特許文献1には、建物、建築環境、及び/又は環境領域を含む対象物を分析するためのデバイスが開示されている。
【0005】
このデバイスは、前記対象物の画像データ点を検出するための撮像手段と、対象物データ点を取得するためにそれぞれの前記画像データ点に空間座標を割り当てるための割り当て手段と、を備えている。また、このデバイスは、前記対象物データ点に基づいて、少なくとも前記対象物の材料特性を決定するための決定手段を備えている。そして、このデバイスは、前記決定のために少なくともスペクトルライブラリデータが使用され、前記スペクトルライブラリデータは、物理的、構成的、化学的及び/又は生物学的材料特性に対応する材料スペクトル特性の集合を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2020-507776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来の建物には、当該建物の保温性、断熱性、及び耐火性を向上させることを目的として、天井、壁、床等にアスベストが吹き付けられていたり、アスベストを含有する建材が用いられていたりする場合がある。このため、既存の建物にアスベストが含まれているか否かを容易に推定する技術が要望されている。
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の技術をアスベストの有無の推定に用いる場合、材料スペクトル特性を用いて対象物を分析するものとされているため、建物にアスベストが含まれているか否かを、必ずしも簡易に推定することができるとは限らない、という問題点があった。
【0009】
本開示は、以上の事情を鑑みて成されたものであり、既存の建物にアスベストが含まれているか否かを容易に推定することができる情報処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の本発明に係る情報処理装置は、建物におけるアスベストが含まれている可能性のある撮影対象領域に対して、当該アスベストが吸収する波長帯域を含む波長のレーザ光を用いて3次元撮影して得られた、当該レーザ光の反射強度を示す反射強度情報を含む点群データを取得する取得部と、前記取得部によって取得された前記反射強度情報を用いて、前記撮影対象領域に前記アスベストが含まれているか否かを推定する推定部と、前記推定部によって前記アスベストが含まれていると推定された場合、前記取得部によって取得された点群データが示す3次元形状の何処かに前記アスベストが含まれていることを提示する提示部と、を備え、前記推定部は、前記反射強度情報が示す反射強度を用いて、前記アスベストの厚さの推定値を更に導出し、前記提示部は、前記推定部によって推定された前記アスベストの厚さの分布状況を示す画像を更に提示する
【0011】
請求項1に記載の本発明に係る情報処理装置によれば、建物におけるアスベストが含まれている可能性のある撮影対象領域に対して、当該アスベストが吸収する波長帯域を含む波長のレーザ光を用いて3次元撮影して得られた、当該レーザ光の反射強度を示す反射強度情報を含む点群データを取得し、取得した反射強度情報を用いて、撮影対象領域にアスベストが含まれているか否かを推定し、アスベストが含まれていると推定された場合、上記点群データが示す3次元形状の何処かにアスベストが含まれていることを提示することで、既存の建物にアスベストが含まれているか否かを容易に推定することができる。
【0012】
請求項2に記載の本発明に係る情報処理装置は、請求項1に記載の情報処理装置であって、前記提示部が、前記推定部によって前記アスベストが含まれていると推定された場合、前記取得部によって取得された点群データが示す3次元形状のどの部分に前記アスベストが含まれているかを表示部によって表示することで前記提示を行うものである。
【0013】
請求項2に記載の本発明に係る情報処理装置によれば、アスベストが含まれていると推定された場合、点群データが示す3次元形状のどの部分にアスベストが含まれているかを表示部によって表示することで、アスベストが含まれている3次元形状を容易に把握することができる。
【0014】
請求項3に記載の本発明に係る情報処理装置は、請求項2に記載の情報処理装置であって、前記提示部が、前記アスベストの量に応じて前記表示部による前記表示の方法を変化させるものである。
【0015】
請求項3に記載の本発明に係る情報処理装置によれば、アスベストの量に応じて表示部による表示の方法を変化させることで、アスベストが含まれている3次元形状を、より容易に把握することができる。
【0016】
請求項4に記載の本発明に係る情報処理装置は、請求項1~請求項3の何れか1項に記載の情報処理装置であって、前記取得部が、前記点群データの座標情報を取得するためのレーザ光と、前記アスベストを検出するためのレーザ光とで波長が異なる2系統のレーザ光を射出する3次元スキャナを用いて前記点群データを取得するものである。
【0017】
請求項4に記載の本発明に係る情報処理装置によれば、点群データの座標情報を取得するためのレーザ光と、アスベストを検出するためのレーザ光とで波長が異なるものとすることで、座標情報を取得するためのレーザ光とアスベストを検出するためのレーザ光とを共通の波長のレーザ光とする場合に比較して、座標情報及びアスベストの各々の検出精度を向上させることができる。
請求項5に記載の本発明に係る情報処理装置は、請求項3に記載の情報処理装置であって、前記アスベストの量が、当該アスベストの厚さであるものである。
請求項6に記載の本発明に係る情報処理装置は、請求項1に記載の情報処理装置であって、前記推定部が、赤外線吸収スペクトルを用いて、前記アスベストの種類を更に推定するものである。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、既存の建物にアスベストが含まれているか否かを容易に推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態に係る情報処理システムのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図2】実施形態に係る3Dスキャナの構成の一例を示す斜視図である。
図3】実施形態に係る情報処理装置の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
図4】実施形態に係るスキャン情報データベースの構成の一例を示す模式図である。
図5】実施形態に係るアスベスト情報データベースの構成の一例を示す模式図である。
図6】実施形態に係る3Dスキャナによる3次元撮影の状態の一例を示す側面図である。
図7】実施形態に係る情報処理の一例を示すフローチャートである。
図8】実施形態に係る第1提示画面の一例を示す正面図である。
図9】実施形態に係る第2提示画面の一例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態例を詳細に説明する。
【0021】
まず、図1図3を参照して、本実施形態に係る情報処理システム90の構成を説明する。図1は、本実施形態に係る情報処理システム90のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。また、図2は、本実施形態に係る3Dスキャナ50の構成の一例を示す斜視図である。更に、図3は、本実施形態に係る情報処理装置10の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
【0022】
図1に示すように、本実施形態に係る情報処理システム90は、情報処理装置10及び3Dスキャナ50を含んで構成されている。なお、情報処理装置10の例としては、パーソナルコンピュータ及びサーバコンピュータ等の汎用又は専用の情報処理装置が挙げられる。
【0023】
本実施形態に係る情報処理装置10は、CPU(Central Processing Unit)11、一時記憶領域としてのメモリ12、不揮発性の記憶部13、キーボードとマウス等の入力部14、液晶ディスプレイ等の表示部15、媒体読み書き装置(R/W)16及び通信インタフェース(I/F)部18を備えている。CPU11、メモリ12、記憶部13、入力部14、表示部15、媒体読み書き装置16及び通信I/F部18はバスBを介して互いに接続されている。媒体読み書き装置16は、記録媒体17に書き込まれている情報の読み出し及び記録媒体17への情報の書き込みを行う。
【0024】
記憶部13はHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等によって実現される。記憶媒体としての記憶部13には、情報処理プログラム13Aが記憶されている。情報処理プログラム13Aは、情報処理プログラム13Aが書き込まれた記録媒体17が媒体読み書き装置16にセットされ、媒体読み書き装置16が記録媒体17からの情報処理プログラム13Aの読み出しを行うことで、記憶部13へ記憶される。CPU11は、情報処理プログラム13Aを記憶部13から読み出してメモリ12に展開し、情報処理プログラム13Aが有するプロセスを順次実行する。
【0025】
また、記憶部13には、スキャン情報データベース13B及びアスベスト情報データベース13Cが記憶される。なお、スキャン情報データベース13B及びアスベスト情報データベース13Cについては、詳細を後述する。
【0026】
一方、図1に示すように、本実施形態に係る3Dスキャナ50は、スキャナ本体52及び記憶部58を含んで構成されている。なお、図示は省略するが、本実施形態に係る3Dスキャナ50は、スキャナ本体52により3次元撮影を行う際に当該スキャナ本体52による撮影方向を変化させるためのモータや、当該モータ、スキャナ本体52等の各部の作動を制御する制御部等も含まれている。
【0027】
図2に示すように、本実施形態に係る3Dスキャナ50は、3脚とされた脚部60の上部にスキャナ本体52が設けられており、スキャナ本体52は、脚部60の上部において、上述したモータの駆動により撮影方向が変更可能とされている。なお、脚部60は3脚には限らないことは言うまでもない。
【0028】
本実施形態に係る3Dスキャナ50は、スキャナ本体52からレーザ光を射出し、対象物に反射して返ってくるまでの時間から距離を算出する一方、スキャナ本体52の移動方向からレーザ光の射出角度を算出し、これらの算出値を用いて3次元位置を特定する、所謂タイムオブフライト方式のものとされている。但し、3Dスキャナ50による3次元位置の特定方式は、これに限るものではない。例えば、スキャナ本体52から複数に変調させたレーザ光を射出し、対象物に当たって戻ってきた拡散反射成分の位相差により対象物との距離を求め、当該距離とレーザ光の射出角度から3次元位置を特定する、所謂フェイズシフト方式のものを、3Dスキャナ50として適用する形態としてもよい。
【0029】
また、本実施形態に係る3Dスキャナ50では、点群データとして、各点の3次元位置の座標を示す座標情報の他、対応する点のレーザ光の反射強度を示す反射強度情報、及び対応する点の色を示す色情報が取得される。そして、本実施形態に係る3Dスキャナ50では、取得した座標情報、反射強度情報、及び色情報が点群データにおける点毎に関連付けられて記憶部58に記憶される。但し、この形態に限るものではなく、例えば、点群データとして、上記座標情報及び上記反射強度情報のみを記憶する形態としてもよい。
【0030】
本実施形態に係る情報処理システム90は、建物の天井、壁、床等におけるアスベストの有無や、アスベストの量を検出するために、3Dスキャナ50による3次元撮影によって得られる反射強度情報を用いるものとされている。このため、本実施形態に係る3Dスキャナ50は、射出するレーザ光として、上述した座標情報を得ることに適した第1波長帯域の通常のレーザ光と、アスベストを検出するために適した第2波長帯域のレーザ光(以下、「アスベスト検出用レーザ光」という。)と、の2系統のレーザ光が射出されるものとされている。なお、本実施形態では、上記第2波長帯域として、アスベストが吸収する波長である1400nm、2300nm、及び2700nmのうちの何れか1つの波長を含む波長帯域を適用しているが、これに限るものではない。例えば、これらの波長の少なくとも2つの波長を含む波長帯域を第2波長帯域として適用する形態としてもよい。また、本実施形態では、アスベスト検出用レーザ光を射出する素子として、赤外線レーザ素子を適用しているが、これに限るものではなく、赤外線レーザ素子以外のレーザ素子を、アスベスト検出用レーザ光を射出する素子として適用する形態としてもよい。
【0031】
なお、本実施形態に係る情報処理システム90では、3Dスキャナ50の記憶部58に記憶された各種情報を有線通信によって情報処理装置10に送信する形態とされているが、これに限るものではない。例えば、無線通信によって、3Dスキャナ50の記憶部58に記憶された各種情報を情報処理装置10に送信する形態としてもよい。また、記憶部58を3Dスキャナ50から着脱可能な可搬型の記憶媒体としておき、当該記憶媒体を介して、3Dスキャナ50の記憶部58に記憶された各種情報を情報処理装置10に転送する形態としてもよい。更に、3Dスキャナ50の記憶部58に記憶された各種情報を情報処理装置10に直接送信する形態には限らず、例えば、クラウドサーバを経由して情報処理装置10に送信する形態としてもよい。
【0032】
次に、図3を参照して、本実施形態に係る情報処理装置10の機能的な構成について説明する。図3に示すように、本実施形態に係る情報処理装置10は、取得部11A、推定部11B、及び提示部11Cを含む。情報処理装置10のCPU11が情報処理プログラム13Aを実行することで、取得部11A、推定部11B、及び提示部11Cとして機能する。
【0033】
本実施形態に係る取得部11Aは、建物におけるアスベストが含まれている可能性のある撮影対象領域(以下、単に「撮影対象領域」という。)に対して、3Dスキャナ50のアスベスト検出用レーザ光を用いて3次元撮影して得られた、当該レーザ光の反射強度を示す反射強度情報を含む点群データを取得する。
【0034】
また、本実施形態に係る推定部11Bは、取得部11Aによって取得された反射強度情報を用いて、撮影対象領域にアスベストが含まれているか否かを推定する。なお、本実施形態に係る推定部11Bでは、撮影対象領域において、反射強度情報が示す反射強度が予め定められた閾値TH以下となっている領域が存在するか否かを判定することによって上記推定を行っている。
【0035】
本実施形態では、閾値THとして、上記反射強度が当該値以下である場合にアスベスト検出用レーザ光がアスベストによって吸収された強度であると見なすことのできる値として、予め実験やコンピュータ・シミュレーション等によって得られた値を適用している。但し、この形態に限るものではない。例えば、情報処理システム90に要求されるアスベストの検出精度、3次元撮影時における撮影対象領域と3Dスキャナ50との距離、アスベスト検出用レーザ光の射出時の強度等に応じて、閾値THを予めユーザに設定させる形態としてもよい。
【0036】
また、本実施形態では、上述したように、撮影対象領域において、反射強度情報が示す反射強度が予め定められた閾値TH以下となっている領域が存在するか否かを判定することによって上記推定を行っているが、これに限るものではない。例えば、撮影対象領域において、反射強度が他の領域に対して相対的に所定閾値以上小さい領域が存在するか否かを判定することによって上記推定を行う形態としてもよい。
【0037】
そして、本実施形態に係る提示部11Cは、推定部11Bによってアスベストが含まれていると推定された場合、取得部11Aによって取得された点群データが示す3次元形状の何処かにアスベストが含まれていることを提示する。ここで、本実施形態に係る提示部11Cは、推定部11Bによってアスベストが含まれていると推定された場合、取得部11Aによって取得された点群データが示す3次元形状のどの部分にアスベストが含まれているかを表示部15によって表示することで上記提示を行う。特に、本実施形態に係る提示部11Cは、アスベストの量に応じて表示部15による表示の方法を変化させる。なお、提示部11Cによる提示方法は表示部による表示による提示方法に限るものではない。例えば、スピーカ等の音声生成装置による音声による提示や、プリンタ等の画像形成装置による印刷による提示等を提示部11Cによる提示方法として適用する形態としてもよい。
【0038】
次に、図4を参照して、本実施形態に係るスキャン情報データベース13Bについて説明する。図4は、本実施形態に係るスキャン情報データベース13Bの構成の一例を示す模式図である。
【0039】
図4に示すように、本実施形態に係るスキャン情報データベース13Bは、座標、反射強度、及び色の各情報が関連付けられて記憶される。
【0040】
上記座標は、3Dスキャナ50による3次元撮影によって得られた各点の位置の座標を示す、上述した座標情報であり、上記反射強度は、対応する点における、上述した反射強度情報であり、上記色は、対応する点における、上述した色情報である。即ち、本実施形態に係るスキャン情報データベース13Bは、3Dスキャナ50による3次元撮影によって得られた座標情報、反射強度情報、及び色情報の点群データが登録されるものである。
【0041】
次に、図5を参照して、本実施形態に係るアスベスト情報データベース13Cについて説明する。図5は、本実施形態に係るアスベスト情報データベース13Cの構成の一例を示す模式図である。
【0042】
図5に示すように、本実施形態に係るアスベスト情報データベース13Cは、座標、アスベスト属性、及び推定厚さの各情報が関連付けられて記憶される。
【0043】
上記座標は、スキャン情報データベース13Bの座標と同一の情報であり、上記アスベスト属性は、対応する座標が示す点の位置にアスベストが含まれていると推定されるか否かを示す情報である。そして、上記推定厚さは、対応する座標が示す点の位置にアスベストが含まれていると推定される場合における、当該アスベストの厚さの推定値を示す情報である。なお、図5に示すように、本実施形態では、上記アスベスト属性として、アスベストが含まれていると推定される場合は「有」を示す情報を適用し、アスベストが含まれていると推定されない場合は「無」を示す情報を適用しているが、これに限るものでないことは言うまでもない。
【0044】
次に、図6図9を参照して、本実施形態に係る情報処理システム90の作用を説明する。図6は、本実施形態に係る3Dスキャナ50による3次元撮影の状態の一例を示す側面図である。また、図7は、本実施形態に係る情報処理の一例を示すフローチャートである。
【0045】
一例として図6に示すように、3次元撮影を行う撮影者は、対象とする建物(以下、「対象建物」という。)80の内部における、アスベスト84が含まれている可能性のある撮影対象領域82の3次元撮影が可能な位置に3Dスキャナ50を設置して3次元撮影を実施する。なお、錯綜を回避するために、以下では、3Dスキャナ50による1回のみの3次元撮影で撮影対象領域82を網羅できる場合について説明するが、これに限るものではない。3Dスキャナ50による1回のみの3次元撮影では撮影対象領域82を網羅できない場合は、複数回に分けて3次元撮影を実施し、各3次元撮影で得られた点群データを合成する形態としてもよい。
【0046】
この3次元撮影によって、撮影対象領域82における、上述した座標情報、反射強度情報、及び色情報の各情報が得られ、一時的に記憶部58に記憶される。
【0047】
その後、撮影者は、3Dスキャナ50に記憶された座標情報、反射強度情報、及び色情報の各情報を情報処理装置10に送信する操作を行う。
【0048】
上記各情報が3Dスキャナ50から受信されると、情報処理装置10では、受信した各情報がスキャン情報データベース13Bに登録される。この情報の登録により、一例として図4に示されるスキャン情報データベース13Bが構築されることになる。
【0049】
この状態において、情報処理装置10のユーザは、情報処理プログラム13Aの実行を開始する指示入力を、入力部14を介して行う。この指示入力に応じて、情報処理装置10のCPU11が当該情報処理プログラム13Aを実行することにより、図7に示す情報処理が実行される。
【0050】
図7のステップ100で、CPU11は、スキャン情報データベース13Bから全ての情報(以下、「スキャン情報」という。)を読み出す。
【0051】
ステップ102で、CPU11は、読み出したスキャン情報に含まれる何れか1つの点(以下、「処理対象点」という。)の反射強度情報が示す反射強度が上述した閾値TH以下であるか否かを判定し、肯定判定となった場合はステップ104に移行する。
【0052】
ステップ104で、CPU11は、処理対象点に対応するアスベスト属性として「有」を示す情報を、対応する座標情報と共にアスベスト情報データベース13Cに記憶する。ステップ106で、CPU11は、処理対象点の反射強度情報が示す反射強度を用いて、当該処理対象点におけるアスベストの厚さの推定値を導出する。なお、本実施形態では、上記反射強度の値と上記アスベストの厚さの推定値との対応関係を示す変換テーブルを予め作成して記憶部13に記憶しておき、当該変換テーブルを参照して上記推定値を導出する形態としているが、これに限るものではない。例えば、上記反射強度の値から上記アスベストの厚さの推定値を算出することのできる演算式を予め作成して記憶部13に記憶しておき、当該演算式を用いて上記推定値を導出する形態としてもよい。
【0053】
ステップ108で、CPU11は、導出したアスベストの厚さの推定値を、処理対象点の上述した推定厚さとしてアスベスト情報データベース13Cに記憶し、その後にステップ112に移行する。
【0054】
一方、ステップ102において否定判定となった場合はステップ110に移行し、CPU11は、処理対象点に対応するアスベスト属性として「無」を示す情報を、対応する座標情報と共にアスベスト情報データベース13Cに記憶し、その後にステップ112に移行する。
【0055】
ステップ112で、CPU11は、ステップ102~ステップ110の処理がスキャン情報に含まれる全ての点について終了したか否かを判定し、否定判定となった場合はステップ102に戻る一方、肯定判定となった場合はステップ114に移行する。なお、ステップ102~ステップ112の処理を繰り返し実行する際に、CPU11は、それまでに処理対象としなかったスキャン情報における点を処理対象点とする。以上の処理により、一例として図5に示されるアスベスト情報データベース13Cが構築されることになる。
【0056】
ステップ114で、CPU11は、アスベスト情報データベース13Cから全ての情報(以下、「アスベスト情報」という。)を読み出す。
【0057】
ステップ116で、CPU11は、読み出したアスベスト情報に含まれるアスベスト属性に「有」を示す情報があるか否かを判定し、肯定判定となった場合は、撮影対象領域82にアスベストを含む領域が存在する可能性が高いと見なしてステップ118に移行する。
【0058】
ステップ118で、CPU11は、予め定められた構成とされた第1提示画面を表示するように表示部15を制御し、ステップ120で、CPU11は、所定情報が入力されるまで待機する。
【0059】
図8には、本実施形態に係る第1提示画面の一例が示されている。図8に示すように、本実施形態に係る第1提示画面では、アスベストが含まれている可能性があることを示すメッセージが表示されると共に、撮影対象領域82を示す画像15Aが表示される。なお、画像15Aは、読み出したスキャン情報における座標情報と、読み出したアスベスト情報におけるアスベストの推定厚さを示す情報とを用いて、当該推定厚さが厚い点ほど濃度が高くなるように表示される。このため、情報処理装置10のユーザは、第1提示画面を参照することにより、撮影対象領域82にアスベストが含まれる可能性があることのみならず、推定されるアスベストの厚さの分布状況も視覚的かつ直感的に把握することができる。なお、第1提示画面の画面構成は図8に示すものに限らず、例えば、上記メッセージのみを表示する形態としてもよいし、アスベストの推定厚さを文字で表示する形態としてもよい。
【0060】
一例として図8に示す第1提示画面が表示部15に表示されると、ユーザは、表示内容を把握した後、終了ボタン15Eを、入力部14を介して指定する。ユーザによって終了ボタン15Eが指定されると、ステップ120が肯定判定となって本情報処理が終了する。
【0061】
一方、ステップ116において否定判定となった場合、CPU11は、撮影対象領域82にアスベストを含む領域が存在する可能性は低いと見なしてステップ122に移行する。
【0062】
ステップ122で、CPU11は、予め定められた構成とされた第2提示画面を表示するように表示部15を制御し、ステップ124で、CPU11は、所定情報が入力されるまで待機する。
【0063】
図9には、本実施形態に係る第2提示画面の一例が示されている。図9に示すように、本実施形態に係る第2提示画面では、アスベストが含まれていない可能性が高いことを示すメッセージが表示される。一例として図9に示す第2提示画面が表示部15に表示されると、ユーザは、表示内容を把握した後、終了ボタン15Eを、入力部14を介して指定する。ユーザによって終了ボタン15Eが指定されると、ステップ124が肯定判定となって本情報処理が終了する。
【0064】
以上説明したように、本実施形態に係る情報処理装置10によれば、建物におけるアスベストが含まれている可能性のある撮影対象領域に対して、当該アスベストが吸収する波長帯域を含む波長のレーザ光を用いて3次元撮影して得られた、当該レーザ光の反射強度を示す反射強度情報を含む点群データを取得する取得部11Aと、取得部11Aによって取得された反射強度情報を用いて、撮影対象領域にアスベストが含まれているか否かを推定する推定部11Bと、推定部11Bによってアスベストが含まれていると推定された場合、取得部11Aによって取得された点群データが示す3次元形状の何処かにアスベストが含まれていることを提示する提示部11Cと、を備えている。従って、既存の建物にアスベストが含まれているか否かを容易に推定することができる。
【0065】
また、本実施形態に係る情報処理装置10によれば、アスベストが含まれていると推定された場合、点群データが示す3次元形状のどの部分にアスベストが含まれているかを表示部15によって表示している。従って、アスベストが含まれている3次元形状を容易に把握することができる。
【0066】
また、本実施形態に係る情報処理装置10によれば、アスベストの量に応じて表示部15による表示の方法を変化させている。従って、アスベストが含まれている3次元形状を、より容易に把握することができる。
【0067】
更に、本実施形態に係る情報処理装置10によれば、点群データの座標情報を取得するためのレーザ光と、アスベストを検出するためのレーザ光とで波長が異なるものとしている。従って、座標情報を取得するためのレーザ光とアスベストを検出するためのレーザ光とを共通の波長のレーザ光とする場合に比較して、座標情報及びアスベストの各々の検出精度を向上させることができる。
【0068】
なお、上記実施形態では、アスベストを検出するためのレーザ素子を、座標情報を得るためのレーザ素子とは異なるものとする場合について説明したが、これに限定されない。例えば、アスベストを検出するためのレーザ素子と、座標情報を得るためのレーザ素子とを1つのレーザ素子で共用する形態としてもよい。この場合、上記実施形態に比較して、レーザ素子を設けるための領域を狭くすることができる結果、3Dスキャナを小型化することができる。
【0069】
また、上記実施形態では、アスベストが存在すると推定された場合に当該アスベストの厚さの推定値を導出する場合について説明したが、これに限定されない。例えば、アスベストが存在すると推定された場合に、その領域における赤外線吸収スペクトルを用いて、当該アスベストの種類を推定する形態としてもよい。なお、この形態において推定可能なアスベストの種類としては、クリソタイル、アモサイト、クロシドライト、トレモライト、アクチノライト、アンソフィライト等を例示することができる。
【0070】
また、上記実施形態では、アスベストの厚さを推定する形態の例として、反射強度の値とアスベストの厚さの推定値との対応関係を示す変換テーブルを用いて導出する形態、及び、反射強度の値からアスベストの厚さの推定値を算出することのできる演算式を用いて導出する形態について説明したが、これに限定されない。例えば、対象建物の施工時又は竣工時の図面からアスベストの吹き付け前の寸法を予めデータとして保持しておき、当該データとスキャン情報とを比較してアスベストの厚さを推定する形態としてもよい。また、アスベストが存在すると推定される領域の表面位置を座標情報から得て、当該表面位置の凹凸の度合いから相対的にアスベストが厚い領域を推定する形態としてもよい。
【0071】
また、上記実施形態では特に言及しなかったが、アスベストの有無の推定結果や、アスベストの厚さの推定結果を、対象建物の平面図、天伏図、展開図等の各種図面や、報告書等に反映させる形態としてもよい。
【0072】
また、上記実施形態において、例えば、取得部11A、推定部11B、及び提示部11Cの各処理を実行する処理部(processing unit)のハードウェア的な構造としては、次に示す各種のプロセッサ(processor)を用いることができる。上記各種のプロセッサには、前述したように、ソフトウェア(プログラム)を実行して処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPUに加えて、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が含まれる。
【0073】
処理部は、これらの各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGAの組み合わせや、CPUとFPGAとの組み合わせ)で構成されてもよい。また、処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。
【0074】
処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアント及びサーバ等のコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)等に代表されるように、処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサの1つ以上を用いて構成される。
【0075】
更に、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造としては、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)を用いることができる。
【符号の説明】
【0076】
10 情報処理装置
11 CPU
11A 取得部
11B 推定部
11C 提示部
12 メモリ
13 記憶部
13A 情報処理プログラム
13B スキャン情報データベース
13C アスベスト情報データベース
14 入力部
15 表示部
15A 画像
15E 終了ボタン
16 媒体読み書き装置
17 記録媒体
18 通信I/F部
50 3Dスキャナ
52 スキャナ本体
58 記憶部
60 脚部
80 対象建物
82 撮影対象領域
84 アスベスト
90 情報処理システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9