(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】炊飯器
(51)【国際特許分類】
A47J 27/00 20060101AFI20241213BHJP
【FI】
A47J27/00 109G
A47J27/00 103A
(21)【出願番号】P 2021041874
(22)【出願日】2021-03-15
【審査請求日】2023-12-26
(73)【特許権者】
【識別番号】390010168
【氏名又は名称】東芝ホームテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 智志
(72)【発明者】
【氏名】加藤 善光
(72)【発明者】
【氏名】小林 洋一
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 紀子
(72)【発明者】
【氏名】三宅 一也
【審査官】木村 麻乃
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-239673(JP,A)
【文献】特開平11-197010(JP,A)
【文献】特開平09-248242(JP,A)
【文献】特開2014-030643(JP,A)
【文献】特開2014-184019(JP,A)
【文献】特開2016-106978(JP,A)
【文献】特開2009-254563(JP,A)
【文献】特開2018-108311(JP,A)
【文献】特開2021-186183(JP,A)
【文献】再公表特許第2013/061483(JP,A1)
【文献】特開2003-290024(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被炊飯物を収容する有底筒状の鍋と、
前記鍋を加熱する加熱手段と、を備え、
前記鍋は、略筒状の側面上部と、略円盤状の底部と、当該底部の外周から延びて側面上部に連結する側面下部と、を有し、
前記底部は、前記鍋を平面に載置するときに当該平面に当接する最下部を外周部分に設け、前記底部の中心部に行くに従い高くなるように形成され、
前記側面下部は、前記側面上部から前記最下部方向に傾斜した形状であり、
前記加熱手段は、前記側面下部に対向するように設けられた第1のIHヒータと、前記最下部に対向するように設けられた第2のIHヒータと、前記底部に対向するように設けられた第3のIHヒータと、を有し、
前記第1のIHヒータの加熱量と、前記第2のIHヒータの加熱量と、前記第3のIHヒータの加熱量と、をそれぞれ独立して調節可能に構成され、
前記被炊飯物の量に応じて、前記第1のIHヒータ、前記第2のIHヒータおよび前記第3のIHヒータの加熱バランスが調整され、
前記被炊飯物が定格の最大炊飯量に対して大量の場合は、
(i)前記第1、前記第2および前記第3のIHヒータを同時に加熱する加熱バランス、次に(ii)前記第1および前記第2のIHヒータを同時に加熱する加熱バランス、その後(iii)前記第1および前記第3のIHヒータを同時に加熱する加熱バランス、以降(i)~(iii)の加熱バランスが順に繰り返し行なわれることを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
被炊飯物を収容する有底筒状の鍋と、
前記鍋を加熱する加熱手段と、を備え、
前記鍋は、略筒状の側面上部と、略円盤状の底部と、当該底部の外周から延びて側面上
部に連結する側面下部と、を有し、
前記底部は、前記鍋を平面に載置するときに当該平面に当接する最下部を外周部分に設け、前記底部の中心部に行くに従い高くなるように形成され、
前記側面下部は、前記側面上部から前記最下部方向に傾斜した形状であり、
前記加熱手段は、前記側面下部に対向するように設けられた第1のIHヒータと、前記最下部に対向するように設けられた第2のIHヒータと、前記底部に対向するように設けられた第3のIHヒータと、を有し、
前記第1のIHヒータの加熱量と、前記第2のIHヒータの加熱量と、前記第3のIHヒータの加熱量と、をそれぞれ独立して調節可能に構成され、
前記被炊飯物の量に応じて、前記第1のIHヒータ、前記第2のIHヒータおよび前記第3のIHヒータの加熱バランスが調整され、
前記被炊飯物が定格の最大炊飯量に対して中量の場合は、
(iv)前記第1および前記第2のIHヒータを同時に加熱する加熱バランス、次に(v)前記第2および前記第3のIHヒータを同時に加熱する加熱バランス、以降、(iv)および(v)の加熱バランスが順に繰り返し行なわれることを特徴とする炊飯器。
【請求項3】
被炊飯物を収容する有底筒状の鍋と、
前記鍋を加熱する加熱手段と、を備え、
前記鍋は、略筒状の側面上部と、略円盤状の底部と、当該底部の外周から延びて側面上部に連結する側面下部と、を有し、
前記底部は、前記鍋を平面に載置するときに当該平面に当接する最下部を外周部分に設け、前記底部の中心部に行くに従い高くなるように形成され、
前記側面下部は、前記側面上部から前記最下部方向に傾斜した形状であり、
前記加熱手段は、前記側面下部に対向するように設けられた第1のIHヒータと、前記最下部に対向するように設けられた第2のIHヒータと、前記底部に対向するように設けられた第3のIHヒータと、を有し、
前記第1のIHヒータの加熱量と、前記第2のIHヒータの加熱量と、前記第3のIHヒータの加熱量と、をそれぞれ独立して調節可能に構成され、
前記被炊飯物の量に応じて、前記第1のIHヒータ、前記第2のIHヒータおよび前記第3のIHヒータの加熱バランスが調整され、
前記被炊飯物が定格の最大炊飯量に対して少量の場合は、
(vi)前記第2および前記第3のIHヒータを同時に加熱する加熱バランス、次に(vii)前記第2のIHヒータを加熱する加熱バランス、その後(viii)前記第3のIHヒータを加熱する加熱バランス、以降、(vi)~(viii)の加熱バランスが順に繰り返し行なわれることを特徴とする炊飯器。
【請求項4】
工程の進行に伴い前記加熱手段の加熱量を第1パターンで変化させて、前記被炊飯物への炊飯を行なう炊飯制御手段と、
前記炊飯制御手段が前記鍋を加熱するように前記加熱手段を制御しているときに、前記第1パターンとは異なる第2パターンで、前記加熱手段の加熱量を経時的に変化させる加熱量可変手段と、をさらに備えたことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の炊飯器。
【請求項5】
前記加熱手段の加熱パターンを選択する選択手段と、
選択された前記加熱パターンに基づいて前記加熱手段を制御する制御手段と、をさらに備え、
前記制御手段は、選択された前記加熱パターンに基いて、前記第1のIHヒータの加熱量と、前記第2のIHヒータの加熱量と、前記第3のIHヒータの加熱量と、をそれぞれ変更することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の炊飯器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鍋の加熱中に加熱手段の加熱量に変化をもたせて炊飯を行なう炊飯器に関する。
【背景技術】
【0002】
かまどで薪炎を燃やして炊飯を行なうと、薪炎の炎がゆらぎとなって、微妙に火力を変化させながら、被炊飯物を入れた鍋の底部や側面部を加熱する。
【0003】
こうした古来のかまど炊きに近付けるために、鍋の加熱中に加熱手段の加熱量に変化をもたせる技術が知られており、例えば特許文献1,2のように、鍋の底部から側面部にかけ、底部に対して120°毎に分割して3つのブロックに分け、それぞれが独立した誘導加熱(IH)用のコイルを配置し、各コイルを順次ローテーションしながら通断電して加熱を行なうものや、特許文献3,4のように、鍋の底部と側面部に高さ位置の異なる独立した2つのコイルをそれぞれ配置し、各コイルを交互に通断電して加熱を行なうものや、特許文献5のように、鍋の底部から側面部にかけて誘導加熱用のコイルを配置し、コイルの加熱量を時間の経過と共に段階的に変化させて加熱を行なうものや、特許文献6,7のように、鍋の底部から側面部にかけて誘導加熱用のコイルを配置し、コイルの加熱量を時間の経過と共に連続的に変化させて加熱を行なうものがそれぞれ開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-162250号公報
【文献】特開2019-180533号公報
【文献】特開平9-248242号公報
【文献】特開2011-206142号公報
【文献】特開2008-220470号公報
【文献】特開平11-214139号公報
【文献】特開2020-4540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の技術は、炊飯中に鍋内の水対流を促進させ、鍋内の米がムラなく水が存在する状態で加熱されることで、鍋内全体のご飯を一様に糊化させるための技術である一方で、定格の最大炊飯量における炊飯量が中間量以上であるときを想定した技術であると推考される。そのため、特に炊飯量が中間量未満の炊飯量では、被炊飯物において鍋の側面上部および側面下部近傍にある米の糊化が過剰になり、炊きムラになる虞が高かった。
【0006】
そこで本発明は、被炊飯物の炊飯量にかかわらずに炊きムラのないご飯を炊飯することができる炊飯器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の炊飯器は、上記目的を達成するために、被炊飯物を収容する有底筒状の鍋と、前記鍋を加熱する加熱手段と、を備え、前記鍋は、略筒状の側面上部と、略円盤状の底部と、当該底部の外周から延びて側面上部に連結する側面下部と、を有し、前記底部は、前記鍋を平面に載置するときに当該平面に当接する最下部を外周部分に設け、前記底部の中心部に行くに従い高くなるように形成され、前記側面下部は、前記側面上部から前記最下部方向に傾斜した形状であり、前記加熱手段は、前記側面下部に対向するように設けられた第1のIHヒータと、前記最下部に対向するように設けられた第2のIHヒータと、前記底部に対向するように設けられた第3のIHヒータと、を有し、前記第1のIHヒータの加熱量と、前記第2のIHヒータの加熱量と、前記第3のIHヒータの加熱量と、をそれぞれ独立して調節可能に構成され、前記被炊飯物の量に応じて、前記第1のIHヒータ、前記第2のIHヒータおよび前記第3のIHヒータの加熱バランスが調整され、前記被炊飯物が定格の最大炊飯量に対して大量の場合は、(i)前記第1、前記第2および前記第3のIHヒータを同時に加熱する加熱バランス、次に(ii)前記第1および前記第2のIHヒータを同時に加熱する加熱バランス、その後(iii)前記第1および前記第3のIHヒータを同時に加熱する加熱バランス、以降(i)~(iii)の加熱バランスが順に繰り返し行なわれることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の炊飯器によれば、鍋を台などの上に載置するときの安定性を確保し、鍋の温度が上昇したとき、鍋の底部が熱膨張により変形する虞を防止することができる。また第1のIHヒータの加熱により発生する外対流を促進することができ、第2のIHヒータおよび第3のIHヒータの加熱により発生する内対流の、底部からの吹上げ効果を促進することができる。さらに、定格の最大炊飯量における炊飯量である大量、中量、少量の炊飯量に応じて、第1~第3のIHヒータの加熱バランスおよび加熱量を炊飯量に適するように各々独立させて単独で加熱調節し、被炊飯物の炊飯量にかかわらずに炊きムラのないご飯を炊飯でき、特に中量未満の炊飯量で炊きムラのないご飯を炊飯できるようにしている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1の実施形態を示す炊飯器の概略説明図である。
【
図2】同上、底面加熱体周辺の要部を示す概略断面図および概略平面図である。
【
図3】同上、炊飯器の電気的構成を示すブロック図である。
【
図5】同上、炊飯工程および保温工程における、鍋温度と、蓋温度と、蓋加熱手段の加熱量と、底面加熱体および側面加熱体の加熱量と、の経時的な変化を示すグラフである。
【
図6】同上、(A)炊飯制御手段による鍋への加熱量の経時的な変化と、(B)加熱量ゆらぎ手段による鍋への加熱量の経時的な変化を、それぞれグラフで示したものである。
【
図7】同上、加熱量ゆらぎ手段による鍋への加熱量の経時的な変化を示すグラフである。
【
図8】同上、強火での加熱量と時間との関係を示すグラフである。
【
図9】同上、中火での加熱量と時間との関係を示すグラフである。
【
図10】同上、弱火での加熱量と時間との関係を示すグラフである。
【
図11】従来の炊飯器の底面加熱体周辺の要部を示す概略断面図および概略平面図である。
【
図12】同上、被炊飯物が中量以上の炊飯量で炊飯したときの鍋内の熱の移動を示す図である。
【
図13】同上、(A)被炊飯物が中量の炊飯量のときに大量時の底面加熱体の加熱バランスで炊飯した場合の鍋内の熱の移動を示す図と、(B)被炊飯物が少量の炊飯量のときに大量時の底面加熱体の加熱バランスで炊飯した場合の鍋内の熱の移動を示す図である。
【
図14】本発明の第1の実施形態を示す炊飯器の、被炊飯物が大量のときの第1~第3のIHヒータの加熱バランスの変化を示す図である。
【
図15】同上、被炊飯物が大量のときの鍋内の熱の移動を示す図である。
【
図16】同上、被炊飯物が中量のときの第1~第3のIHヒータの加熱バランスの変化を示す図である。
【
図17】同上、被炊飯物が中量のときの鍋内の熱の移動を示す図である。
【
図18】同上、被炊飯物が少量のときの第1~第3のIHヒータの加熱バランスの変化を示す図である。
【
図19】同上、被炊飯物が少量のときの鍋内の熱の移動を示す図である。
【
図20】第1の実施形態の変形例を示す炊飯器の、被炊飯物が中量以上のときの第1~第3のIHヒータの加熱バランスの変化を示す図である。
【
図21】同上、被炊飯物が中量未満のときの第1~第3のIHヒータの加熱バランスの変化を示す図である。
【
図22】第1の実施形態のさらなる変形例を示す炊飯器の、表示操作ユニットの上面図である。
【
図23】第1の実施形態のさらなる変形例を示す炊飯器の、表示操作ユニットの上面図である。
【
図24】同上、記憶手段が記憶する、お米の産地およびお米の銘柄の表である。
【
図25】同上、品種銘柄米の炊上がり食感情報から各産地の品種銘柄の食感に応じて該当するマトリクス欄に銘柄を配置した表である。
【
図26】第1の実施形態のさらなる変形例を示す炊飯器の、表示操作ユニットの上面図である。
【
図27】本発明の第2の実施形態を示す炊飯器の、底面加熱体周辺の要部を示す概略断面図および概略平面図である。
【
図28】同上、被炊飯物が中間量以上のときの第1~第3のIHヒータの加熱バランスの変化を示す図である。
【
図29】同上、被炊飯物が中間量以上のときの鍋内の熱の移動を示す図である。
【
図30】同上、被炊飯物が中間量以上のときの第1~第3のIHヒータの加熱バランスの変化および鍋内の熱の移動の変化を示す図である。
【
図31】同上、被炊飯物が少量のときの第1~第3のIHヒータの加熱バランスの変化を示す図である。
【
図32】同上、被炊飯物が少量のときの鍋内の熱の移動を示す図である。
【
図33】本発明の第3の実施形態を示す炊飯器の、底面加熱体周辺の要部を示す概略断面図である。
【
図34】同上、被炊飯物が大量のときの鍋内の熱の移動を示す図である。
【
図35】同上、被炊飯物が中量のときの鍋内の熱の移動を示す図である。
【
図36】同上、被炊飯物が少量のときの鍋内の熱の移動を示す図である。
【
図37】本発明の第3の実施形態の変形例を示す炊飯器の、底面加熱体周辺の要部を示す概略断面図である。
【
図38】本発明の第3の実施形態のさらなる変形例を示す炊飯器の、底面加熱体周辺の要部を示す概略断面図である。
【
図39】同上、(A)被炊飯物が大量のときの鍋内の熱の移動を示す図と、被炊飯物が少量のときの鍋内の熱の移動を示す図である。
【
図40】本発明の第4の実施形態を示す炊飯器の、炊飯工程および保温工程における、被炊飯物が少量のときの鍋温度と、蓋温度と、第1~第3のIHヒータの加熱パターンと、底面加熱体および側面加熱体の加熱量と、の経時的な変化を示すグラフである。
【
図41】同上、炊飯工程および保温工程における、被炊飯物が中量のときの鍋温度と、蓋温度と、第1~第3のIHヒータの加熱パターンと、底面加熱体および側面加熱体の加熱量と、の経時的な変化を示すグラフである。
【
図42】同上、炊飯工程および保温工程における、被炊飯物が大量のときの鍋温度と、蓋温度と、第1~第3のIHヒータの加熱パターンと、底面加熱体および側面加熱体の加熱量と、の経時的な変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明における好ましい炊飯器の実施形態について、添付図面を参照して説明する。なお、これらの全図面にわたり、共通する部分には共通する符号を付すものとする。
【実施例1】
【0011】
図1~
図10、
図14~
図18は、本発明の炊飯器の第1の実施形態を示している。先ず、
図1に基づいて、本実施形態における炊飯器の全体構成を説明すると、1は上面を開口した本体、2は本体1の開口上面を覆う開閉可能な蓋体であり、これらの本体1と蓋体2とにより炊飯器の外観が構成される。蓋体2の上面には、後述するLED64~66およびLCD63などの表示部3や、操作キーやタッチパネルなどの操作部4を纏めて配置した表示操作ユニット5が配設される。表示操作ユニット5は、蓋体2にではなく本体1に配設してもよい。
【0012】
本体2は上面を開口した鍋収容部6を有し、蓋体3を開けたときに、被調理物Sである水や米を収容する容器としての有底筒状の鍋7が着脱自在に収容される構成となっている。そして本体1に鍋7を入れて蓋体2を閉じると、蓋体2の下面部に装着された内蓋8が鍋7の開口上面を塞ぐことにより、鍋7から発生する蒸気を密閉するように構成される。
【0013】
鍋収容部6は、絶縁性、耐熱性および難燃性に優れたガラス繊維含有のポリエチレンテレフタレート樹脂などの樹脂製で椀状の内枠9や、金属製の内枠リング10などを組み合わせて構成され、収容された鍋7との間に空間を持たせるように、全体が有底筒状に形成される。鍋7の側面下部から底面に対向する内枠9の外面には、被炊飯物Sを炊飯するために鍋7を加熱する加熱手段としてIH(induction heating:誘導加熱)ヒータによる底面加熱体11が配設され、鍋7の外側面に対向する内枠リング10の外面には、加熱手段としてコードヒータによる側面加熱体12が配設される。鍋7への補助加熱手段となる側面加熱体12は、鍋7の側面上部に対向して配置され、側面加熱体12が通電状態となると、側面加熱体12からの輻射熱で鍋7の主に側面上部を加熱する構成となっている。鍋7および底面加熱体11は、後程詳しく説明する。
【0014】
内枠9の中央には挿通穴9aが設けられており、本体1には、この挿通穴9aを通り抜けて、鍋7の底部の外面である外底面の内側中心部7e(
図2参照)に当接するサーミスタ式の鍋温度センサ15が配設される、鍋温度検知手段となる鍋温度センサ15は、鍋7の底部温度を検知して、底面加熱体11による鍋7の底部の加熱温度を主に温度管理するようになっている。
【0015】
そして炊飯時と保温時には、鍋7を加熱手段で加熱するが、保温時は、鍋7の外底面に接触させた鍋温度センサ15の検知温度に応じて底面加熱体11を加熱調節し、鍋7を一定温度に保持する。また炊飯後、鍋7内の、例えば100℃の炊き立てのご飯の温度が、例えば73℃の保温温度に低下するまで側面加熱体12を発熱させ、そして保温温度で保温する保温安定時に側面加熱体12を発熱させて、本体1と蓋体2との隙間からの外気の侵入による冷えを抑制すると共に、鍋7の主に側面上部を加熱する。
【0016】
鍋7の上方開口部を開閉する蓋体2には、内蓋8の温度を検知するサーミスタ式の蓋温度センサ16と、鍋7の内部圧力を検知する圧力センサ17と、コードヒータなどの蓋加熱体18がそれぞれ設けられている。蓋温度センサ16と蓋加熱体18は、主に蓋加熱手段23による内蓋8の温度管理を行なうもので、蓋体2に内蓋8を装着すると、内蓋8の上面に蓋温度センサ16が接触し、内蓋8の上面に蓋加熱体18が対向して配置される構成となっている。
【0017】
蓋体2の下面部を構成する内蓋8の略中央には、ボール状の弁体19を含む圧力調整弁20が配設される。圧力調整弁20は、鍋7内と蓋体2の外部、すなわち炊飯器の外部(機外)との間を連通する蒸気通路空間の途中に配設され、蓋体2の内部には、弁体19を圧力調整弁20に進出または圧力調整弁20から退避させるソレノイドなどの可動機構(
図3参照)が設けられる。これにより、弁体19が圧力調整弁20に進出して蒸気通路空間を塞ぐと、鍋7への加熱に伴い鍋7内部の圧力が上昇してこの弁体19を押し上げるまで、鍋7内部を大気圧以上に加圧でき、弁体19が圧力調整弁20から退避して蒸気通路空間を開放すると、鍋7への加熱に関係なく鍋7内部を大気圧に維持できる構成となっている。圧力センサ17は圧力調整弁20に臨んで蓋体2の内部に設けられるが、本発明ではこれに限定されず、鍋7内部の圧力を検知できるならば、別な場所に配設されてもよい。
【0018】
図2は、底面加熱体11周辺の要部を示す概略図である。鍋7は、略筒状の側面上部7aと、略円盤状の底部7bと、当該底部7bの外周から延びて側面上部7aに連結する側面下部7cと、を主に有して構成される。また鍋7の母材は熱伝導性に優れたアルミニウム系素材であり、母材の外面の側面下部7cから底部7bにかけて、IH加熱による発熱に優れた磁性金属のステンレス素材からなる発熱体を接合して形成される。また鍋7の内側には、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やテフロン(登録商標)からなる、図示しない鍋内面フッ素コートが塗布されている。底部7bは、その外面である外底面の外周部分に、鍋7を台の上などの平面に載置するときに当該平面に当接する部分である最下部7dを設けている。また底部7bの高さが中心部に行くに従い高くなるように形成しており、最下部7dから外底面の内側中心部7eに行くに従い高くなるように形成している。そのため、鍋7を、例えば台などの上に載置するときの安定性を確保し、炊飯工程、保温工程などで鍋7の温度が上昇したとき、鍋7の底部が熱膨張により変形する虞を防止することができる。また底部7bの直径は側面上部7aの直径よりも小さく形成されており、そのため側面下部7cは、側面上部7aから底部7bの外周である最下部7d方向に傾斜しており、または傾斜した曲面で構成され、あるいは傾斜および曲面を組み合わせて構成され、側面下部7cの外面である外側面下部も同様に構成される。その結果、後述するように第1のIHヒータ25の加熱により発生する外対流C
1を促進することができる。さらに、このような鍋7の形状により、後述するように、第2のIHヒータ26および第3のIHヒータ27の加熱により発生する内対流C
2およびC
3の、鍋7底部7bからの吹上げ効果を促進することができる。
【0019】
本実施形態の底面加熱体11は、第1の底面加熱手段としての第1のIHヒータ25と、第2の底面加熱手段としての第2のIHヒータ26と、第3の底面加熱手段としての第3のIHヒータ27と、で構成されている。第1のIHヒータ25、第2のIHヒータ26および第3のIHヒータ27は、それぞれ内枠9の外面に設けられており、第1のIHヒータ25は側面下部IHヒータとして側面下部7cの外側面下部に対向させて配設され、第2のIHヒータ26は底面外側ヒータとして底部7bの最下部7dに対向させて配設され、第3のIHヒータ27は底面内側ヒータとして底部7bの最下部7dから内側中心部7eまでの外底面に対向させて配設される。
【0020】
底面加熱体11の加熱量は、第1のIHヒータ25が0~450W、第2のIHヒータ26が0~550W、第3のIHヒータ27が0~400Wであり、合計で0~1400Wになるように構成されている。なお本実施形態では第3のIHヒータ27が最も少ない加熱量になるような加熱バランスであり、この例では第1のIHヒータ25≦第2のIHヒータ26≧第3のIHヒータ27となっているが、第1のIHヒータ25≧第2のIHヒータ26≧第3のIHヒータ27でもよい。また、これらの数値は一例であり、第1のIHヒータ25、第2のIHヒータ26および第3のIHヒータ27の加熱量や加熱量の大小は、炊飯器1の加熱特性に応じて任意に設定してよい。
【0021】
図3は、本実施形態における炊飯器の電気的な構成を示している。同図において、31は本体1や蓋体2の内部に組み込まれ、マイクロコンピュータや各部の駆動素子などを含んで構成される制御部である。制御部31の入力ポートには、操作部4と、鍋温度センサ15と、蓋温度センサ16と、圧力センサ17がそれぞれ電気的に接続される。また、制御部31の出力ポートには、表示部3と、第1のIHヒータ25に接続する第1のIH加熱駆動ユニット32と、第2のIHヒータ26に接続する第2のIH加熱駆動ユニット33と、第3のIHヒータ27に接続する第3のIH加熱駆動ユニット34と、側面加熱体12に接続する側面加熱駆動ユニット35と、蓋加熱体18に接続する蓋加熱駆動ユニット36がそれぞれ電気的に接続される。制御部31には、各種の情報やデータを記憶する読み出しおよび書き込みが可能なメモリなどの記憶手段37が組み込まれる。
【0022】
制御部31は、操作部4からの操作信号と、鍋温度センサ15や蓋温度センサ16や圧力センサ17からの各検知信号を受けて、内蔵する計時手段としてのタイマ(図示せず)からの計時に基づく所定のタイミングで、表示部3に表示制御信号を出力し、また底面加熱体11としての第1のIH加熱駆動ユニット32、第2のIH加熱駆動ユニット33および第3のIH加熱駆動ユニット34と、側面加熱駆動ユニット35と、蓋加熱駆動ユニット36とに、それぞれ加熱制御信号を出力する機能を有する。こうした機能は、記憶媒体としての記憶手段37に予め記録したプログラムを、制御部31が読み取ることで実現し、炊飯時に鍋7内の被炊飯物Sである米と水を炊飯加熱してご飯に炊き上げる炊飯制御手段41、保温時に鍋7内のご飯を所定の保温温度に維持する保温制御手段42、操作部4からの操作信号を受けて表示部3の表示動作を制御する表示制御手段43、および加熱量ゆらぎ手段44として、制御部31を主に機能させるプログラムを備えている。
【0023】
第1のIH加熱駆動ユニット32、第2のIH加熱駆動ユニット33および第3のIH加熱駆動ユニット34は、ユニット32~34に共通した電源回路44と、インバータ32-1,33-1,34-1と、IH駆動回路32-2,33-2,34-2とを主な構成要素として備えている。電源回路44は、本体1に供給される例えば交流100Vの商用電源電圧を直流電圧に変換する整流平滑回路に相当するもので、電源回路44からの直流電圧がインバータ32-1,33-1,34-1にそれぞれ入力電圧として印加される。
【0024】
インバータ32-1,33-1,34-1は何れも図示しないが、底面加熱体11となる第1のIHヒータ25、第2のIHヒータ26および第3のIHヒータ27とそれぞれ並列に接続して、それぞれの共振回路を構成する共振コンデンサや、これらの共振回路とそれぞれ直列に接続されるIGBTなどのスイッチ素子などを備えた周知の電圧形共振インバータである。
【0025】
IH駆動回路32-2,33-2,34-2は、制御部31からのそれぞれの加熱制御信号を受けて、インバータ32-1,33-1,34-1のそれぞれのスイッチ素子をオン・オフ動作させるのに十分なパルス駆動信号を、スイッチ素子のゲートに送出するものである。これにより、IH駆動回路32-2,33-2,34-2からそれぞれのスイッチ素子のゲートにパルス駆動信号が与えられると、それぞれのスイッチ素子のエミッタ・コレクタ間がオン・オフを繰り返して、電源回路44からの電源電圧がそれぞれのインバータ32-1,33-1,34-1の共振回路に断続的に印加され、第1~第3のIHヒータ25~27にそれぞれ高周波電流が供給される構成となっている。このときパルス駆動信号の周期や、一周期に対するオン時間の比率(オン時比率)を変化させることで、インバータ32-1,33-1,34-1からの出力電力、すなわち第1~第3のIHヒータ25~27から鍋7への加熱量を増減させることができる。
【0026】
側面加熱駆動ユニット35は、制御部31からの加熱制御信号を受けて、電源回路44に印加する商用電源電圧を側面加熱体12となるコードヒータに供給するものである。同様に蓋加熱駆動ユニット36は、制御部31からの加熱制御信号を受けて、電源回路44に印加する商用電源電圧を蓋加熱体18となるコードヒータに供給するものである。また制御部31は、弁体19を動かす可動機構21に対してオン・オフ動作させるための制御信号を送出する機能を有する。
【0027】
炊飯制御手段41は、操作部4への操作による炊飯開始の指示を受けて、鍋7に投入した被炊飯物Aの中で米の吸水を促進させるひたし炊きと、被炊飯物Sの温度を短時間に沸騰まで上昇させる沸騰加熱と、被炊飯物Sの沸騰状態を継続させて、水の無いドライアップ状態にする沸騰継続と、ドライアップ状態になった被炊飯物Sを焦がさない程度の高温に維持して、ご飯に炊き上げるむらしの各工程を順に実行して、鍋7に収容される被炊飯物Sを所望の圧力で炊飯加熱するものである。そして本実施形態では、炊飯器により炊飯加熱が可能な全ての炊飯コースについて、前述のひたし炊きからむらしに至る炊飯の各工程の進行に伴い、表示部3や、底面加熱体11や、側面加熱体12や、蓋加熱体18をどのように動作させ、それにより底面加熱体11や、側面加熱体12や、蓋加熱体18から鍋7内の被炊飯物Sへの加熱量をどのように変化させるのかという第1パターンが記憶手段37に予め記憶保持されており、操作部4への操作により、複数の炊飯コースの中からユーザが所望する任意の炊飯コースが選択した後に、炊飯開始が指示されると、その選択された炊飯コースに対応する第1パターンを、炊飯制御手段41が記憶手段37から読み出して、底面加熱体11や、側面加熱体12や、蓋加熱体18を適切に制御することにより、鍋7に入れられた被炊飯物Sへの炊飯動作を行なう構成となっている。
【0028】
加熱量ゆらぎ手段44は、炊飯制御手段41が選択された炊飯コースに対応する第1パターンに従って、鍋7を加熱するように底面加熱体11や、側面加熱体12や、蓋加熱体18を動作させているときに、必要に応じて第1パターンとは異なる第2パターンを生成し、その第2パターンに基づいて、底面加熱体11や、側面加熱体12や、蓋加熱体18から鍋7内の被炊飯物Sへの加熱量を、時間の経過と共に変化させるものである。この加熱量ゆらぎ手段44の詳細については、後程詳しく説明する。
【0029】
保温制御手段42は、前述の選択された炊飯コースに対応する第1パターンに従って、鍋7内のご飯を所定の保温温度に保つように制御するもので、選択した炊飯コースに拘わらず、炊飯制御手段41による被炊飯物Sへの炊飯加熱が終了すると、自動的に保温制御手段42による保温が行われる構成となっている。また保温制御手段42は、保温中に操作部4への操作により再加熱が指示されると、鍋7内のご飯が保温温度よりも一時的に高くなるように、底面加熱体11の動作を制御する保温再加熱の機能を有する。さらに、本体1に商用電源を投入した直後の切状態で、操作部4への操作により保温開始が指示された場合にも、保温制御手段42により鍋7に入れられた被炊飯物Sを保温できるようになっている。
【0030】
表示制御手段43は、操作部4からの操作信号に基づき、この操作部4で選択できる条件の選択および設定、例えば複数の調理コースや炊飯コースの中から所望の調理コースや炊飯コースの選択および設定、ができるように構成されている。
【0031】
図4は表示操作ユニット5の上面図である。表示操作ユニット5の表示部3の「炊飯」のLED65が点灯して炊飯工程の状態であることが示され、表示部3のLCD63において、「白米」、「3.0」および「ふつう」が選択されて示されている。この
図3を参照して説明すると、操作部4は、表示操作ユニット5の右側部分に並んで配置される予約キー51と、進むキー52と、戻るキー53と、メニューキー54と、食感キー55と、切キー56に加えて、表示操作ユニット5の下側部分に並んで配置される炊飯量キー57と、炊飯キー58と、保温キー59と、LCD63の上面に配設されるタッチセンサ60とで構成される。ここで、31~39の各キーはユーザのタッチ操作では操作できず、押動することにより操作可能なタクトスイッチなどの押動型操作手段として機能し、タッチセンサ40は図示しない制御PC板に接続されることで、ユーザのタッチ操作で操作可能なタッチキーなどの非押動型操作手段として機能する。
【0032】
炊飯キー58は炊飯を開始する際に操作されるもので、炊飯キー58が押圧されると、炊飯キー58からの操作信号を炊飯制御手段41が受け付けて、本体1内の被炊飯物Sに対する炊飯開始の制御をする構成となっている。また保温キー59は保温を行なう際に操作されるもので、保温キー59が押圧されると、保温キー59からの操作信号を保温制御手段42が受け付けて、本体1内の被炊飯物Sに対する保温再加熱を開始する制御を行なう。
【0033】
切キー56は、炊飯や保温をやめる際に操作されるもので、切キー56が押圧されると、切キー68からの操作信号を炊飯制御手段41または保温制御手段42が受け付けて、本体1内の被炊飯物Sに対する加熱を中止して切状態にする制御を行なう。
【0034】
予約キー51は予約炊飯を行なう際に操作されるもので、予約キー51を押圧し、予約時刻や炊飯コースを設定した後に、炊飯キー58を押圧すると、予約炊飯手段55が炊飯キー58からの操作信号を受け付けて、予め設定した予約時刻に本体1内の被炊飯物Sが炊き上がるように炊飯制御手段41により炊飯を開始し、また保温制御手段42による保温を開始するように制御する構成となっている。
【0035】
進むキー52や戻るキー53は、後述するメニューや食感、炊飯量の選択画面で、これらを設定する際に操作される他にも、予約時刻や現在時刻、調理時間を調整するのに操作されるものである。
【0036】
メニューキー54は、例えば「白米」や「玄米」など、ご飯のメニューを設定する際に操作するもので、メニューキー52を押圧すると、表示制御手段43がメニューキー52からの操作信号を受け付けてご飯のメニューの選択画面に移行する。また食感キー55は、例えば「しゃっきり」や「ふっくら」など、炊飯されたご飯のかたさやねばりなどのお米の炊き方を設定する際に操作するもので、食感キー55を押圧すると、表示制御手段43が食感キー55からの操作信号を受け付けてご飯の食感の選択画面に移行する。そして炊飯量キー57は、被炊飯物Sの炊飯量を設定する際に操作するもので、炊飯量キー57を押圧すると、表示制御手段43が炊飯量キー57からの操作信号を受け付けてご飯の炊飯量の選択画面に移行する。そして、これらの選択画面では、進むキー64や戻るキー65、タッチセンサ73でご飯のメニューや食感、炊飯量をそれぞれ選択、設定する構成となっている。
【0037】
タッチセンサ60は、導電性ポリマーによる透明電極部と図示しない制御PC板に接続する接点部との間をパターン配線で繋いだ構成要素が、タッチキーとして複数配設されるものであり、タッチセンサ60下のLCD63に表示される複数の表示要素67の何れかに指先のタッチ操作を行なうことで、その表示要素67の上に配設され、当該表示要素67に対応したタッチキーがタッチ操作されて、この表示要素67が選択される構成となっている。
【0038】
表示部3は、現在の時刻や炊飯完了の予約時刻、選択したご飯のメニューや食感、炊飯量を表示するLCD63と、表示操作ユニット5の上側部分に並んで配置され、炊飯器としての炊飯の工程を表示する「予約」のLED64、「炊飯」のLED65および「保温」のLED66と、で構成される。
図4を参照してLCD63に配置される表示要素67を説明すると、現在時刻を表示する時計用表示要素67-1と、予約炊飯を設定したときに炊飯完了の予約時刻を表示する炊上り予約用表示要素67-2,67-3と、選択されたご飯の炊飯量を表示する炊飯量の表示要素67-4と、選択されたメニューを点灯させて表示する「白米」の表示要素67-5、「白米おこげ」の表示要素67-6、「玄米」の表示要素67-7および「おかゆ」の表示要素67-8と、選択された食感を点灯させて表示する「しゃっきり」の表示要素67-9、「ふつう」の表示要素67-10および「ふっくら」の表示要素67-11と、が、それぞれ配置される。
【0039】
次に
図5を参照して、上記構成の炊飯器本体1について炊飯工程における作用を説明する。
図5は、本実施形態の炊飯器本体1の炊飯工程および保温工程における、鍋温度センサ15の検知温度である鍋温度t
1と、蓋温度センサ16の検知温度である蓋温度t
2と、蓋加熱手段16の加熱量P
Lと、底面加熱体11および側面加熱体12の加熱量P
Hと、の経時的な変化をそれぞれグラフで示している。図中、aは鍋温度t
1の温度上昇率の変化による沸騰検知を示し、bは蓋温度t
2の温度上昇率の変化による沸騰検知を示し、cは、鍋温度t
1の温度上昇率の変化によるドライアップ状態を検出する炊上検知を示している。
【0040】
本実施形態の炊飯時における動作を説明すると、先ず鍋7内に被炊飯物Sとして米および水を入れ、この鍋7を鍋収容部6にセットした後に、蓋体3を閉じる。それと前後して、炊飯器本体1を通電すると、本体1は炊飯や保温が行われていない初期の切(待機)状態となり、表示制御手段43は、現在の炊飯コースの設定をLCD63に表示させる。
【0041】
ここで操作部4の、例えばメニューキー54、食感キー55、炊飯量キー57、進むキー26、戻るキー27、タッチセンサ34を操作する毎に、その操作信号が表示制御手段43に受け入れられ、この表示制御手段43により炊飯コースの設定が変更される。変更された設定は表示制御手段43によりLCD63にその都度表示され、ユーザはこれを目視で確認できる。なお炊飯量キー57で炊飯量を選択せずに炊飯工程を開始すると、表示制御手段43は炊飯量の表示要素67-4に「――(自動)」が表示されるようにLCD63を制御し、炊飯量の設定は、後述するように炊飯工程中に鍋温度t1や蓋温度t2の温度上昇率を基に算出、判定された値が選択される。
【0042】
そして操作部4の、例えば炊飯キー58を操作すると、その操作信号が制御部41に受け入れられ、制御部41の炊飯制御手段41はLCD63に表示された炊飯コースを今回設定した炊飯コースとして記憶手段37に記憶し、炊飯制御手段41は、その設定した炊飯コースの加熱パターンに沿って、鍋7内の被炊飯物Sに対する炊飯工程である、ひたし炊き工程、沸騰加熱工程、沸騰継続工程、高温保持工程の各炊飯動作を行なう。本実施形態では、設定した炊飯コースの炊飯量により底面加熱体11、すなわち第1~第3のIHヒータ25~27の、ON/OFFのパターンを示す加熱バランスを変更する構成としている。なお炊飯工程における、第1~第3のIHヒータ25~27の加熱バランスについては、後程詳しく説明する。
【0043】
一方、加熱量ゆらぎ手段44は、かまど炊きの火加減を伝承する「はじめちょろちょろ、中ぱっぱ、じゅうじゅう吹いたら火を引いて、一握りのワラ燃やし、赤子泣いてもふた取るな」に沿った炊飯制御手段41による鍋7への経時的な加熱量の変化に対し、誘導加熱による鍋7への加熱量を、1秒~10秒周期の中で、100ms(0.1秒)~1s(1秒)毎に増減させ、底面加熱体11の加熱量に相当する第1~第3のIHヒータ25~27の出力の合計が、全体で例えば200W程度に変化するような第2パターンを生成する。そして、この第2パターンに基づく加熱量が底面加熱体11から鍋7に与えられるように、薪炎のゆらぎを想定した加熱構成を付加するものである。
【0044】
すなわち、「はじめちょろちょろ」は、「ひたし炊き」工程の加熱により、弱火で・優しい炎とし、「中ぱっぱ」は、「沸騰加熱」工程での沸騰までの加熱により、強火で・激しい炎とし、「じゅうじゅう吹いたら火を引いて」は、「沸騰加熱」工程での沸騰継続中に炊き上げとなるまで、中火で・穏やかな炎とし、「一握りのワラ燃やし、赤子泣いてもふた取るな」は、「むらし」工程でのむらし中の二度炊きで、弱火で・静かな炎とし、
図6の(A)で示すような、炊飯制御手段41による工程の進行に伴う鍋7への加熱量P1の変化に、
図6の(B)に示すような、加熱量ゆらぎ手段44による鍋7への加熱量P2のゆらぎ変化を付加する。
【0045】
加熱量ゆらぎ手段44は、1秒~10秒のサイクル(周期)Cの中で、インバータ37の出力が一定に保たれる出力維持時間Dを0.1秒~1秒の範囲に設定して、この出力維持時間Dごとに第1~第3のIHヒータ25~27の出力の合計の出力を段階的に増減させ、第1~第3のIHヒータ25~27の出力の合計の出力の上限値と下限値との差である出力変化量Eが200W程度に変化するような第2パターンを生成し、この第2パターンで底面加熱体11から鍋7に加熱量P2のゆらぎ変化を与える。これにより、
図5に示す鍋7への最終的な加熱量P
Hは、炊飯制御手段41により変化する加熱量P1に、加熱量ゆらぎ手段44によりゆらぐように変化する加熱量S2を加味したものとなる。
【0046】
具体的には、炊飯キー58が操作されて炊飯工程を開始すると、炊飯制御手段51は、鍋温度センサ15による鍋7の底部の温度検知に基づき、第1~第3のIH加熱駆動ユニット32~34にそれぞれ加熱制御信号を出力して底面加熱体11を通断電制御し、鍋7の底部を加熱して、
図5に示されるように、鍋5内の水温を所定の温度、例えば35~55℃、最高でも60℃にまで昇温させて米の吸水を促進させるひたし炊き工程を行なう。ひたし炊き工程は、鍋5内の水温を所定の温度に所定の時間、例えば15分程度保持するように構成されるが、この時間は任意に変更してよい。
【0047】
一方、加熱量ゆらぎ手段44は、「ひたし炊き」工程の加熱で、弱火で・優しい炎を実現するために、弱火は第1~第3のIHヒータ25~27の出力の合計を、500W(下限値)→540W→580W→620W→660W→700W(上限値)→660W→620W→580W→540W→500W(下限値)へ戻すまでを1つのサイクルCとし、優しい炎は1つのサイクルCを7秒として設定し、それにより各々の出力が一定に保たれる出力維持時間Dを0.7秒に設定して、0.7秒毎に第1~第3のIHヒータ25~27の出力の合計が可変するような加熱量P2の変化サイクルを、底面加熱体11から鍋7に繰り返し与える構成となっている。
【0048】
その後、所定の時間のひたし工程が終了して次の沸騰加熱工程に移行すると、
図5の電力P
Hと電力P
Lで示されるように、被炊飯物Sの沸騰検知を行なうまでの加熱で、炊飯制御手段51が、第1~第3のIH加熱駆動ユニット32~34および側面加熱駆動ユニット35にそれぞれ加熱制御信号を出力して底面加熱体11と側面加熱体12を連続通電する制御を行なうと共に、蓋加熱駆動ユニット35に加熱制御信号を出力して蓋加熱体18を連続通電する制御を行ない、ひたし炊き工程よりも鍋7内の被炊飯物Sを強く加熱する。このことにより、
図5に示されるように、鍋温度センサ15が検出する鍋温度t
1と共に、蓋温度センサ16が検出する蓋温度t
2が次第に上昇する。
【0049】
ここで炊飯制御手段51は、可動機構21を制御して弁体19が圧力調整弁20に転動して蒸気通路空間を閉塞し、鍋5の内部を密閉した状態にしており、上述のように鍋7内部で被炊飯物Sを強く加熱しているため、この被炊飯物Sが大気圧以上、例えば1.2気圧に達するまで鍋5内部で加圧され、その加圧状態で被炊飯物Sを沸騰させることができる。これにより、加圧状態における米の糊化最適温度である105℃(1.2気圧の場合)で被炊飯物を沸騰させることで、米の硬さと粘りのバランスを確保することができる。
【0050】
また炊飯制御手段51は、ひたし炊き工程や沸騰加熱工程における、鍋温度t1の温度上昇率や蓋温度t2の温度上昇率を基に、鍋7内の被炊飯物Sの炊飯量を算出することで検出している。そして炊飯制御手段51は、今回設定した炊飯コースの炊飯量と、今回検出した炊飯量との間に相違があるかを判定する。ここで相違があった場合は、今回検出した炊飯量を優先し、炊飯制御手段51は、当該判定以降の炊飯工程では、今回検出した炊飯量による加熱パターンで底面加熱体11の制御を行なうように構成される。また表示制御手段43は、炊飯量の表示要素67-4の表示を「――(自動)」に切り替えるようにLCD63を制御し、今回設定した炊飯コースの炊飯量とは異なる炊飯量による加熱パターンで炊飯工程を行なうことをユーザが分かるようにしている。そのため、例えば炊飯コース設定時に炊飯キー58で炊飯量を誤って選択した場合などに、炊飯量が少ないのに炊飯量が多いときの加熱量で炊飯して加熱過多になる虞、その逆に炊飯量が多いのに炊飯量が少ないときの加熱量で炊飯して加熱不足になる虞を防止することができる。
【0051】
その他、例えば記憶手段37を動作させる、例えばバッテリーやコンデンサが消耗して記憶手段37に記憶できなくなった場合や停電などで記憶手段37からデータが消失した場合も、今回検出した炊飯量を優先し、炊飯制御手段51は、当該判定以降の炊飯工程では、今回検出した炊飯量による加熱パターンで底面加熱体11の制御を行なうように構成される。そのため、例えば炊飯量の設定が記憶できなくなったときに、上述のように加熱過多になる虞、その逆に加熱不足になる虞を防止することができる。
【0052】
その一方で、加熱量ゆらぎ手段44は、沸騰加熱工程の加熱で、強火で・激しい炎を実現するために、強火は第1~第3のIHヒータ25~27の出力の合計を、1200W(下限値)→1240W→1280W→1320W→1360W→1400W(上限値)→1360W→1320W→1280W→1240W→1200W(下限値)へ戻すまでを1つのサイクルCとし、激しい炎は1つのサイクルCを最小の1秒として設定し、それにより各々の出力が一定に保たれる出力維持時間Dを最小の0.1秒に設定して、0.1秒毎に第1~第3のIHヒータ25~27の出力の合計が段階的に可変するような加熱量P2の変化サイクルを、底面加熱体11から鍋7に繰り返し与える構成となっている。
【0053】
その後、炊飯制御手段41は、鍋温度t
1が所定温度以上、例えば90℃以上になったことを鍋温度センサ15からの温度検知信号により検出し、それに加えて蓋温度t
2が所定温度以上、例えば90℃以上になったことを蓋温度センサ16からの温度検知信号により検出すると、被炊飯物Sの加圧状態での沸騰を検知する沸騰検知を開始する。炊飯制御手段41が、引き続き、底面加熱体11と側面加熱体12を連続通電する制御を行なうと共に、蓋加熱体18を連続通電する制御を行なって鍋7内部で被炊飯物Sを強く加熱する一方で、鍋温度センサ15の検知温度や蓋温度センサ16の検知温度が所定の時間にどの程度上昇するのかという検知温度の傾きを算出する。具体的には、炊飯制御手段51が、鍋温度センサ15の検知温度から鍋7の底部の温度である鍋温度t
1の上昇が120秒で3℃以下など所定の温度上昇率以下になったと算出したら、
図5のaに示されるように鍋温度t
1の温度上昇率の変化による沸騰を検知したと判断する。また炊飯制御手段51が、蓋温度センサ16の検知温度から内蓋8の温度である蓋温度t
2の上昇が60秒で1℃以下など所定の温度上昇率以下になったと算出したら、
図5のbに示されるように蓋温度t
2の温度上昇率の変化による沸騰を検知したと判断する。なお、これらの沸騰a,bを検知するための鍋温度t
1や蓋温度t
2の所定の温度上昇率は、被炊飯物Sの炊飯量の設定に応じてそれぞれ調節され、設定されている。
【0054】
炊飯制御手段51が、鍋温度t1の温度上昇率の変化による沸騰aを検知し、かつ、蓋温度t2の温度上昇率の変化による沸騰bを検知した時点で、次の沸騰継続工程に移行する。沸騰継続工程に移行すると、炊飯制御手段41は、鍋温度センサ15の検知温度から鍋温度t1が、例えば98℃以上など所定の温度を維持するように、第1~第3のIH加熱駆動ユニット32~34および側面加熱駆動ユニット35に加熱制御信号を出力して底面加熱体11と側面加熱体12の通断電制御を行なうと共に、蓋温度センサ16からの検知温度から蓋温度t2が、例えば98℃以上など所定の温度を維持するように、第3加熱駆動ユニット44に加熱制御信号を出力して蓋加熱体18を連続通電する制御を行ない、被炊飯物Sの沸騰状態を継続させる。
【0055】
ここで炊飯制御手段51は可動機構21を制御して弁体19が圧力調整弁20から退避して蒸気通路空間を開放し、鍋7内を本体1の機外と連通した状態にして、被炊飯物Sからの蒸気を図示しない蒸気口から本体1の機外に放出する。
【0056】
その一方で、加熱量ゆらぎ手段44は、沸騰継続工程の加熱で、中火で・穏やかな炎を実現するために、中火は第1~第3のIHヒータ25~27の出力の合計を、800W(下限値)→840W→880W→920W→960W→1000W(上限値)→960W→920W→880W→840W→800W(下限値)へ戻すまでを1つのサイクルCとし、穏やかな炎は1つのサイクルCを4秒として設定し、それにより各々の出力が一定に保たれる出力維持時間Dを0.4秒に設定して、0.4秒毎に第1~第3のIHヒータ25~27の出力の合計が段階的に可変するような加熱量P2の変化サイクルを、底面加熱体11から鍋7に繰り返し与える構成となっている。
【0057】
炊飯制御手段51は、沸騰継続工程で鍋5内部の水が無くなり、鍋温度センサ15の検知温度から鍋7の底部の温度の上昇が10秒で0.5℃以上など所定の温度上昇率以上になったと算出すると、
図5のcに示されるように鍋温度t
1の温度上昇率の変化を検知したと判断し、次のむらし工程に移行する。
【0058】
むらし工程中は、炊飯制御手段53が蓋温度センサ34の検知温度により、蓋ヒータ22を通断電制御して温度管理を行ない、内蓋22への露付きを防止すると共に、鍋温度センサ15の検知温度により、底面加熱体11と側面加熱体12を通断電制御して鍋5の底部の温度を管理し、鍋5内部のご飯が焦げない程度に高温が保持されるようにする。むらし工程は所定時間、例えば12分間続けられる。
【0059】
その一方で加熱量ゆらぎ手段44は、むらし工程やむらし中の二度炊きの加熱で、弱火で・静かな炎を実現するために、弱火は第1~第3のIHヒータ25~27の出力の合計を、500W(下限値)→540W→580W→620W→660W→700W(上限値)→660W→620W→580W→540W→500W(下限値)へ戻すまでを1つのサイクルCとし、静かな炎は1つのサイクルCを最大の10秒として設定し、それにより各々の出力が一定に保たれる出力維持時間Dを最大の1秒に設定して、1秒毎に第1~第3のIHヒータ25~27の出力の合計が段階的に可変するような加熱量P2の変化サイクルを、底面加熱体11から鍋7に繰り返し与える構成となっている。むらし工程が終了したら、保温制御手段54による保温工程に移行する。
【0060】
図7に示すように、加熱量可変手段としての加熱量ゆらぎ手段44は、炊飯制御手段41で実行する第1パターンによる加熱量P1を基準値P1aveとして、その基準値P1aveよりも大きな加熱量P2の上限値P2maxと、基準値P1aveよりも小さな加熱量P2の下限値P2minとを周期的に繰り返すような第2パターンで、加熱手段となる底面加熱体11の加熱量Sを変化させる構成となっている。
【0061】
図8は、上述の例における第1~第3のIHヒータ25~27の出力の合計を1200W~1400Wの範囲とした強火での加熱量P2と時間との関係を示している。同図(B)に示すように、加熱量ゆらぎ手段44は、1200W,1240W,1280W,1320W,1360W,1400Wからなる6段階の加熱量P2より、強火に相当する加熱量P2を設定し、各段階での加熱量P2の長さ、すなわち出力維持時間Dの長さで、加熱量P2のゆらぎを構成する。比較として同図(A)は、加熱量ゆらぎ手段44により加熱量P2を連続的に無段階で可変させた例を示している。
【0062】
図9は、上述の例における第1~第3のIHヒータ25~27の出力の合計の出力を800W~1000Wの範囲とした中火での加熱量P2と時間との関係を示している。同図(B)に示すように、加熱量ゆらぎ手段44は、800W,840W,880W,920W,960W,1000Wからなる6段階の加熱量P2より、中火に相当する加熱量P2を設定し、各段階での出力維持時間Dの長さで、加熱量S2のゆらぎを構成する。比較として同図(A)は、加熱量ゆらぎ手段44により加熱量P2を連続的に無段階で可変させた例を示している。
【0063】
図10は、上述の例における第1~第3のIHヒータ25~27の出力の合計を500W~700Wの範囲とした弱火での加熱量P2と時間との関係を示している。同図(B)に示すように、加熱量ゆらぎ手段44は、500W,540W,580W,620W,660W,700Wからなる6段階の加熱量S2より、弱火に相当する加熱量P2を設定し、各段階での出力維持時間Dの長さで、加熱量P2のゆらぎを構成する。比較として同図(A)は、加熱量ゆらぎ手段44により加熱量P2を連続的に無段階で可変させた例を示している。
【0064】
このように加熱量ゆらぎ手段44が、例えば強火、中火、弱火の要部を構成する加熱量帯(加熱量P2の範囲)を、上限値P2maxと、下限値P2minと、中間値P1aveとを含めた多段階の加熱量より設定する構成となっている。そのため、第1~第3のIHヒータ25~27にそれぞれ高周波電流が供給するインバータ32-1,33-1,34-1への高周波のパルス駆動信号を連続的に可変する必要がなく、インバータ32-1,33-1,34-1を含めた第1~第3のIH加熱駆動ユニット32~34の回路構成を簡素化し、インバータ32-1,33-1,34-1の小型化を図ることが可能になる。
【0065】
本実施形態の加熱量ゆらぎ手段44は、加熱量P2の上限値P2maxが炊飯器の定格消費電力を超えないように設定する構成を有している。炊飯器の定格消費電力の表示は、電気用品安全法により定められており、上述の例では、例えば強火で第1~第3のIHヒータ25~27の出力の合計を1200W~1400Wとしても、経時的に消費電力が変動するので、製造組立ラインなどでの消費電力検査が困難になる。そのため炊飯制御手段41や加熱量ゆらぎ手段44を含む制御部31により、加熱量P2の上限値P2maxに相当する第1~第3のIHヒータ25~27の出力の合計が、炊飯器の定格消費電力を超えないか、または超えても5%以内、具体的には炊飯器の定格消費電力が1400Wの場合には、第1~第3のIHヒータ25~27の出力の合計が1470W以下となるように制御制限を行なう。
【0066】
但し、炊飯器の定格消費電力には、加熱コイルによる底面加熱体11から鍋7への加熱だけでなく、蓋加熱体18による蓋体2への加熱や、側面加熱体12による鍋7の側面への加熱を付加する場合があるため、例えば蓋加熱体18の消費電力が50Wで、底面加熱体11と同時に加熱を行なう場合には、底面加熱体11と蓋加熱体18との合計消費電力で、炊飯器の定格消費電力を超えない1350Wを、加熱量P2の上限値P2maxに相当する第1~第3のIHヒータ25~27の出力の合計として設定するのが好ましい。
【0067】
また、上述の例では第1~第3のIHヒータ25~27の出力の合計を1200W~1400Wの範囲とした強火で、加熱量P2の下限値P2minを1200Wにしているが、実際の薪火の場合に鍋7への加熱量P2に相当する火力は、ゆらぎがあったとしても瞬時に大きく低下することはないため、加熱量P2の下限値P2minは上限値P2maxの50%を下回らないように、加熱量ゆらぎ手段44が下限値SPminの制限を設けることが好ましい。すなわち、加熱量P2の上限値P2maxを1400Wとした場合、加熱量P2の下限値P2minは700Wを下回らないように制限する。このように構成することにより、加熱量ゆらぎ手段44によって底面加熱体11の加熱量S2にゆらぎの制御を付加した場合に、製造時の消費電力検査に支障がなく、また法令遵守にて、炊飯器の定格消費電力を超えて、屋内配線の制限電流を超えた電流が流れてしまうなどの不具合を防止できる。
【0068】
図14~
図18は、本実施形態における第1~第3のIHヒータ25~27の加熱パターンおよび鍋7内の熱の移動を示している。また
図11~
図13は、比較のために、従来の底面加熱体11’としての第1のIHヒータ25’および第2のIHヒータ26’の配置および鍋7内の熱の移動を示している。
【0069】
図11に示されるように、従来の底面加熱体11’は、第1のIHヒータ25’および第2のIHヒータ26’で構成されており、
図12に示されるように、第1のIHヒータ25’で鍋7の側面下部7cを加熱することで鍋7内の熱の外対流C
1を発生させ、第2のIHヒータ26’で鍋7の底部7bを加熱することで鍋7内の熱の内対流C
2を発生させて、第1のIHヒータ25’および第2のIHヒータ26’を交互に加熱することにより鍋7内で熱の外対流C
1および内対流C
2を交互に発生させていた。あるいは複数のIHヒータを、鍋7の側面下部7cや底部7bに対して、例えば120°毎や60°毎に分割するように複数のブロックに分けて配設させ、これらの独立加熱可能な各ブロックのIHヒータをローテーションで加熱することで、鍋7の側面下部7cから底部7bに亘って局所的にローテーションで加熱されて、鍋7内で熱の対流を複雑に発生させていた。これらのIHヒータの配置および加熱パターンは、鍋7内に収容される被炊飯物Sが、定格の最大炊飯量における中量以上の炊飯量のときに効果的に作用していた。なお本明細書では、4合以上の炊飯量のときは定格の最大炊飯量における大量の炊飯量、1.5合より多くて4合未満が中量の炊飯量、1.5合以下が少量の炊飯量として説明するが、本発明はこれに限定されず、数値は一例である。
【0070】
しかしながら、これらのIHヒータの配置および加熱パターンにおいて、定格の最大炊飯量において炊飯量が少ないときには、鍋7内に収容された被炊飯物Sの水位が低く、例えば鍋7の側面下部7cを加熱する第1のIHヒータ25’の加熱位置までこの水位が達していない場合や、被炊飯物Sの米が下に沈むために、第1のIHヒータ25’の加熱位置に水位が達していても被炊飯物Sの水だけがこの加熱位置にあった場合では、第1のIHヒータ25’による鍋7の側面下部7cが加熱過多になる虞があった。
【0071】
図12を参照して、従来の炊飯器の鍋7の側面下部および底部の加熱バランスを説明する。まず鍋7や被炊飯物Sの熱伝導率(k)の説明をすると、鍋7の内面形状を形成する母材であるアルミニウムが略236W/mKであり、鍋7の内面に塗布された鍋内面フッ素コートであるPTFTが略0.25W/mKであり、水が略0.582W/mKであるため、鍋内面フッ素コートや水は、母材と比較して熱伝導率が極めて劣っている。熱は高温部から低温部へと移動するため、第1のIHヒータ25’や第2のIHヒータ26’により鍋7を加熱すると、第1のIHヒータ25’や第2のIHヒータ26’に対向する部分である鍋7の側面下部7cの外側面下部や底部7bの最下部7dが最初に高温となり、この熱が母材経由で鍋7の側面上部7a側に移動する。
【0072】
これらの鍋7の熱は、次に鍋内面フッ素コート経由で、当該鍋内面フッ素コートに接している被炊飯物Sの水に移動する。ここで、被炊飯物Sは水と米からなるため、米が存在する場所では当該米が熱抵抗となってしまい、熱および水を吸収した米は糊化する。そのため被炊飯物Sの熱の移動は主に水の移動と共に行われるが、当該水の移動は被炊飯物Sの米粒の間の狭い空隙のみに制限されてしまい、上述した高温部としての、鍋内面フッ素コートに接している被炊飯物Sの水から、上述した低温部としての、鍋内面フッ素コートから離れている鍋7の中央部への水および熱の移動が鈍化してしまう。その一方で、米が存在しない場所では、対流により水および熱の移動が活発になるため、鍋内面フッ素コートに接している被炊飯物Sの水の次は、米が下方に沈むために存在しない被炊飯物Sの上層部分の水が高温となる。その後、高温部となった被炊飯物Sの上層部分の水および熱が、低温部としての被炊飯物Sの中層部分に移動し、その後、被炊飯物Sの下層部分に移動していく。この現象がいわゆる熱対流であり、本実施形態では外対流C1として説明する。
【0073】
また最下部7dから底部7bに移動した熱は、鍋内面フッ素コート経由で、底部7bの鍋内面フッ素コートに接している被炊飯物Sの水および米に移動する。ここで被炊飯物Sの下層部分では被炊飯物Sの米が下方に沈んでいるため、下層部分の上部が被炊飯物Sの米および水で覆われた状態であり、この水の温度および圧力が上昇する。その後、下層部分において温度および圧力が高くなった水が、被炊飯物Sの米粒の間の空隙を通り抜けて上方に移動し、上方に吹上げることにより、下層部分で温度が上昇した水、すなわち熱水が、熱と共に被炊飯物Sの中層部分に移動し、その後、上層部分に移動していく。この現象がいわゆる吹上げであり、本実施形態では内対流C2,C3として説明する。
【0074】
ここで、被炊飯物Sが定格の最大炊飯量における大量の炊飯量であるときに、例えば
図12(A)に示されるように、第1のIHヒータ25’の加熱量が多くて鍋7の側面下部7cにおける加熱が強すぎ、第2のIHヒータ26’の加熱量が少なくて鍋7の底部における加熱が弱すぎる場合は、第1のIHヒータ25’による加熱場所およびその近傍である、側面上部7aおよび側面下部7c近傍の被炊飯物Sの部分の温度が周囲よりも上昇し、また鍋7内で強い熱の外対流C
1が発生するために被炊飯物Sの上層部分の温度が周囲よりも上昇し、被炊飯物Sの水の温度上昇が早い箇所から米が糊化するため、これらの被炊飯物Sにおける側面上部7aおよび側面下部7c近傍の部分や上層部分の米の糊化が過剰になる。その一方で、被炊飯物Sの中層部分や下層部分の温度は周囲よりも上がり方が遅くなる傾向があるため、これらの中層部分や下層部分の米の糊化が不足傾向になる。被炊飯物Sの米は糊化により膨張するため、被炊飯物Sが炊上がると、鍋7側面近傍にある被炊飯物Sの周囲部分のご飯、いわゆる鍋肌部のご飯、が糊化過剰により盛り上がり、被炊飯物Sの中央部分のご飯は、中層部分や下層部分の糊化不足により膨らみが少なく凹んでしまい、全体として中央部分が凹んだ炊上がりになってしまう。糊化が過剰になると米に含まれる水分が多すぎてしまうため、例えばのびきったおかゆやお茶漬けのような、水っぽく粘りの少ないご飯になってしまい、今回の場合は、鍋肌部のご飯や被炊飯物Sの上層部分のご飯がこのようになってしまうため、ご飯全体の食味低下の要因になってしまう。
【0075】
その一方で、例えば
図12(B)に示されるように、第1のIHヒータ25’の加熱量が少なくて鍋7の側面下部7cにおける加熱が弱すぎ、第2のIHヒータ26’の加熱量が多くて鍋7の底部7bにおける加熱が強すぎる場合は、
図12(A)の場合とは逆に、被炊飯物Sの中層部分や下層部分の米の糊化が過剰になり、被炊飯物Sの上層部分の米の糊化が糊化不足になるため、被炊飯物Sが炊上がると、全体として中央部分が盛り上がった炊上がりになってしまう。ここで、被炊飯物Sの中層部分や下層部分のご飯は膨張する一方で、被炊飯物Sの上層部分のご飯が糊化不足であるために膨らみが抑制され、この上層部分のご飯が、例えば団子状にベタっと固まった歯応えのない食感となってしまい、やはりご飯全体の食味低下の要因になってしまう。
【0076】
これらのことは、被炊飯物Sが定格の最大炊飯量における中量以下の炊飯量であるときも当てはまる。その一方で、第1のIHヒータ25’の加熱量が少なくて側面下部7cにおける加熱が弱すぎ、第2のIHヒータ26’の加熱量が多くて底部7bにおける加熱が強すぎる場合は、上述した大量の炊飯量であるときと比較して、被炊飯物Sの温度が周囲よりも上昇する中層部分や下層部分と、被炊飯物Sの温度が周囲よりも上がり方が遅い上層部分と、の間の距離が近いために、
図10(B)で上述した炊きムラの程度が小さくなる。しかしながら、被炊飯物Sの炊飯量が少なくなったことに対応して、第1のIHヒータ25’および第2のIHヒータ26’の加熱量の合計を、例えば1400Wや1200Wから1000Wや800Wに低下させた場合でも、
図12(A)(B)で上述したような第1のIHヒータ25’および第2のIHヒータ26’の大量の炊飯量の加熱バランスと同様であれば、鍋7の側面下部7cにおける加熱が強くなってしまい、被炊飯物Sにおいて側面上部7aおよび側面下部7c近傍の部分や上層部分の米の糊化が過剰になる傾向がある。これは被炊飯物Sにおいて、底部7bに接触する米および水の面積は、大量の炊飯量および中量以下の炊飯量で同程度である一方で、側面上部7aおよび側面下部7cに接触する米および水の面積は、大量の炊飯量と比較して中量以下の炊飯量では低下してしまい、第1のIHヒータ25’により加熱される被炊飯物Sの量を被加熱体積とすると、この被加熱体積が減少してしまうためである。
【0077】
図13(A)(B)は、被炊飯物Sが定格の最大炊飯量における大量の炊飯量であるときの鍋7の側面下部7cおよび底部7bへの加熱バランスを維持し、第1のIHヒータ25’および第2のIHヒータ26’の加熱量を低減させて、定格の最大炊飯量における中量の炊飯量の被炊飯物Sの炊飯を行なった場合の鍋7内の熱の移動を示している。
【0078】
例えば、被炊飯物Sが定格の最大炊飯量における大量の炊飯量であるときの底面加熱体11’の加熱量が1400Wであり、鍋7の側面下部7cを加熱する第1のIHヒータ25’が45%、鍋7の底部7b、さらに言えば最下部7dを加熱する第2のIHヒータ26’が55%というのが最適な加熱バランスであった場合、底面加熱体11’の加熱量を1000Wに低下させ、被炊飯物Sが中量の炊飯量であるときに見合った加熱量にしたときでも、加熱バランスは、第1のIHヒータ25’が45%、第2のIHヒータ26’が55%で維持されて変化しない。しかしながら
図13(A)に示されるように、被炊飯物Sが大量の炊飯量であるときと比較して被炊飯物Sの水位が低下しているため、側面上部7aおよび側面下部7cに接触する米および水の面積は、大量の炊飯量と比較して中量の炊飯量では低下してしまう。そのため第1のIHヒータ25’の加熱により側面上部7aおよび側面下部7cに接触する米および水が受ける被加熱量が相対的に多くなり、
図10(A)のときと同様に、被炊飯物Sの鍋7側面近傍にある部分の温度が周囲よりも上昇し、また鍋7内で強い熱の外対流C
1が発生するために被炊飯物Sの上層部分の温度が周囲よりも上昇し、被炊飯物Sにおける側面上部7aおよび側面下部7c近傍にある部分や上層部分の米の糊化が過剰になる。
【0079】
また底面加熱体11’の加熱量を、被炊飯物Sが少量の炊飯量であるときに見合った加熱量にしたときでは、
図13(B)に示されるように、被炊飯物Sが大量の炊飯量であるときと比較して被炊飯物Sの水位が低下し、
図11(A)に示される被炊飯物Sが中量の炊飯量であるときと比較してもさらに水位が低下しているため、
図13(A)で上述した、側面上部7aおよび側面下部7cに接触する米および水の面積は、中量の炊飯量と比較してもさらに低下し、そのため被炊飯物Sにおける側面上部7aおよび側面下部7c近傍にある部分の米の糊化がさらに過剰になる。また所定の高さよりも水位が低くなると、第1のIHヒータ25’の加熱が外対流C
1の発生に寄与しなくなるため、外対流C
1が発生したとしても弱く、この外対流C
1による被炊飯物Sの上層部分の温度上昇の効果が少なくなる。
【0080】
その一方で、被炊飯物Sの水位が少なくなり、米の量も少なくなるために米の層も薄くなり、その結果、底部7bから上側方向への熱抵抗が減少、すなわち被炊飯物Sの米が水および熱を吸収するが、その吸収する量が少なくなるために、
図13(B)に示されるように、第2のIHヒータ26’で鍋7の底部7bを加熱することで発生する熱の内対流C
2が主に上方に流れ易くなって吹上げが活発になり、また鍋7内の被炊飯物Sの中央部下層や中層にまで熱の内対流C
2が流れない。そのため、被炊飯物Sの中央部下層や中層の温度は周囲よりも上がり方が遅くなり、米の糊化が不足傾向になる。また被炊飯物Sが炊上がると、鍋7の底部からの圧力が通った孔、すなわち熱水が吹上げた孔である、いわゆるカニ穴が生じやすくなってしまう。
【0081】
そこで本実施形態の底面加熱体11では、定格の最大炊飯量における炊飯量に応じて、第1~第3のIHヒータ25~27の加熱バランスが最適になるように調整可能にし、定格の最大炊飯量における炊飯量が中量以上のときだけではなく、最小量から最大量まで、第1~第3のIHヒータ25~27の加熱バランスおよび加熱量を炊飯量に適するように各々独立させて単独で加熱調節し、特に中量未満の炊飯量で炊きムラのないご飯を炊飯できるようにしている。
【0082】
図14は、定格の最大炊飯量における炊飯量が大量のときの、本実施形態の第1~第3のIHヒータ25~27の加熱バランスの変化を示す図であり、
図15は、第1~第3のIHヒータ25~27の加熱したときの鍋7内の熱の移動を示している。そして第1のIHヒータ25で鍋7の側面下部7cを加熱することで鍋7内の熱の外対流C
1を発生させ、第2のIHヒータ26で外側の底部7bである最下部7dを加熱することで鍋7内の熱の内対流C
2を発生させ、第3のIHヒータ27で内側の底部7bを加熱することで鍋7内の熱の内対流C
3を発生させている。
【0083】
本実施形態では、炊飯量が大量のときの第1~第3のIHヒータ25~27の加熱バランスは、主に第1のIHヒータ25により、例えば加熱量を最小0Wから最大450Wで調節して側面下部7cを加熱し、第2のIHヒータ26により底部7bの最下部7dを、第3のIHヒータ27により最下部7dから内側中心部7eまでの底部7bを同時に加熱、または交互に加熱しており、第1~第3のIHヒータ25~27を組み合わせて加熱できるような構成にしている。
【0084】
図14および
図15を参照して具体的に説明すると、炊飯量が大量のときは、まず(i)のように第1~第3のIHヒータ25~27による加熱を行ない、熱の外対流C
1および熱の内対流C
2,C
3を発生させる。次に(ii)のように第1および第2のIHヒータ25,26による加熱を行ない、熱の外対流C
1および熱の内対流C
2を発生させ、その後(iii)のように第1および第3のIHヒータ25,27による加熱を行ない、熱の外対流C
1および熱の内対流C
3を発生させる。そして次は(i)の加熱バランスを行ない、以降、(i)~(iii)の加熱バランスを繰り返し行なっている。そのため、鍋7内の被炊飯物Sにおいて、熱の外対流C
1が連続して発生し、熱の内対流C
2とC
3とが同時に発生、または交互に発生することが繰り返し行われている。
【0085】
図16は、定格の最大炊飯量における炊飯量が中量のときの、本実施形態の第1~第3のIHヒータ25~27の加熱バランスを示す図であり、
図17は、第1~第3のIHヒータ25~27の加熱したときの鍋7内の熱の移動を示している。炊飯量が中量のときの第1~第3のIHヒータ25~27の加熱バランスは、主に第2のIHヒータ26により、例えば加熱量を最小0Wから最大550Wで加熱量を調節して底部7bの最下部7dを加熱し、第1のIHヒータ25により側面下部7cを、第3のIHヒータ27により最下部7dから内側中心部7eまでの底部7bを交互に加熱しており、第1~第3のIHヒータ25~27を組み合わせて加熱できるような構成にしている。
【0086】
従来例で上述したように、鍋7の熱が鍋内面フッ素コート経由で移動し、当該鍋内面フッ素コートに接している被炊飯物Sの水や、被炊飯物Sの上層部分の水が高温となるが、これらの高温部から、被炊飯物Sの中層部分および下層部分が相当する低温部までの距離は、炊飯量が大量のときよりも短い。そのため、加熱バランスは、炊飯量が大量のときと比較して、例えば最小0Wから最大450Wである第1のIHヒータ25の加熱量を少なくし、鍋7の外側面下部への加熱を弱めて外対流C1を弱め、また例えば最小0Wから最大400Wである第3のIHヒータ27の加熱量も少なくして鍋7の最下部7dから内側中心部7eまでの外底面への加熱を弱めて内対流C3を弱め、吹上げの強度を弱めている。このとき、第1のIHヒータ25や第3のIHヒータ27の加熱量を少なくするために、第1のIHヒータ25や第3のIHヒータ27に入力する電力を低くしてもよく、または第1のIHヒータ25や第3のIHヒータ27のインバータ32-1,34-1のそれぞれのスイッチ素子のゲートに送出するIH駆動回路32-2,34-2のパルス駆動信号の周期やオン時比率を変化させることで、第1のIHヒータ25や第3のIHヒータ27の断続通電率を変更してもよい。
【0087】
また第1のIHヒータ25による側面下部7cへの加熱と、第3のIHヒータ27による最下部7dから内側中心部7eまでの底部7bへの加熱と、を交互に行なうことにより、熱の外対流C1と熱の内対流C3とが交互に発生するようにして、鍋7内の被炊飯物Sの水の撹拌を促進することにより加熱ムラを低減することができる。
【0088】
図16および
図17を参照して具体的に説明すると、炊飯量が中量のときは、まず(iv)のように第1および第2のIHヒータ25,26による加熱を行ない、熱の外対流C
1および熱の内対流C
2を発生させ、次に(v)のように第2および第3のIHヒータ26,27による加熱を行ない、熱の内対流C
2,C
3を発生させる。そして(iv)の加熱バランスを行ない、次は(v)の加熱バランスを行ない、以降、(iv)および(v)の加熱バランスを繰り返し行なっている。そのため、鍋7内の被炊飯物Sにおいて、熱の内対流C
2が連続して発生し、熱の外対流C
1と熱の内対流C
3とが交互に発生することが繰り返し行われている。
【0089】
図18は、定格の最大炊飯量における炊飯量が少量のときの、本実施形態の第1~第3のIHヒータ25~27の加熱バランスを示す図であり、
図19は、第1~第3のIHヒータ25~27の加熱したときの鍋7内の熱の移動を示している。炊飯量が少量のときの第1~第3のIHヒータ25~27の加熱バランスは、第2のIHヒータ26により底部7bの最下部7dを、第3のIHヒータ27により最下部7dから内側中心部7eまでの底部7bを同時に加熱、または交互に加熱しており、第2および第3のIHヒータ26,27を組み合わせて加熱できるような構成にしている。そして第1のIHヒータ25による加熱を停止するように構成される。なお、この第1のIHヒータ25による加熱は、上述した炊飯量が大量のとき、中量のときと比較して、炊飯量が少量のときの加熱に寄与する加熱量にまで減少させるように構成されてもよい。
【0090】
炊飯量が少量のとき、鍋7の鍋内面フッ素コートに接している被炊飯物Sの水や、被炊飯物Sの上層部分の水が相当する高温部から、被炊飯物Sの中層部分および下層部分が相当する低温部までの距離は炊飯量が中量のときと比較してさらに短いため、加熱バランスは、第1のIHヒータ25による加熱を停止、もしくは減少させて外対流C1を無くしている。その一方で、上述したように、第2のIHヒータ26により加熱された最下部7dの熱が母材経由で鍋7の側面上部7a側に移動し、次に鍋内面フッ素コート経由で、当該鍋内面フッ素コートに接している被炊飯物Sの水に移動して、米が存在しない場所では、対流により水および熱の移動が活発になるため、被炊飯物Sの上層部分の水が高温となる。そのため炊飯量が少量のときには、第2のIHヒータ26により十分な強さの熱の外対流C2が発生する。なお第1のIHヒータ25による加熱を減少させて外対流C1を弱めたときは、熱の外対流C2に加えて外対流C1も発生する。
【0091】
その一方で、第2のIHヒータ26の加熱量を炊飯量が少量のときに見合うまで減少させるため、最下部7dから内側中心部7eまでの底部7bへの加熱量が減少してしまう。そのため、第3のIHヒータ27による底部7bへの加熱を併用して、炊飯量が少量のときに見合った加熱バランスにしている。
【0092】
また第2のIHヒータ26による鍋7の最下部7dへの加熱と、第3のIHヒータ27による最下部7dから内側中心部7eまでの底部7bへの加熱と、を交互に行なうことにより、熱の外対流C2と熱の内対流C3とが交互に発生するようにして、鍋7内の被炊飯物Sの水の撹拌を促進することにより加熱ムラを低減することができる。
【0093】
図18および
図19を参照して具体的に説明すると、炊飯量が少量のときは、まず(vi)のように第2および第3のIHヒータ26,27による加熱を行ない、熱の外対流C
2および熱の内対流C
3を発生させる。次に(vii)のように第2のIHヒータ26による加熱を行ない、熱の外対流C
2を発生させ、その後(viii)のように第3のIHヒータ27による加熱を行ない、熱の内対流C
3を発生させる。そして次は(vi)の加熱バランスを行ない、以降、(vi)~(viii)の加熱バランスを繰り返し行なっている。そのため、鍋7内の被炊飯物Sにおいて、熱の外対流C
2および熱の内対流C
3が同時に発生、または交互に発生することが繰り返し行われている。
【0094】
以上のように、本実施形態の炊飯器の本体1では、被炊飯物として米と水を収容する有底筒状の鍋7と、鍋7を加熱する加熱手段としての底面加熱体11と、を備え、鍋7は、略筒状の側面上部7aと、略円盤状の底部7bと、底部7bの外周から延びて側面上部7aに連結する側面下部7cと、を有し、底部7bは、鍋7を平面に載置するときに当該平面に当接する最下部7dを外周部分に設け、底部7bの中心部に行くに従い高くなるように形成され、側面下部7cは、側面上部7aから最下部7d方向に傾斜した形状であり、底面加熱体11は、側面下部7cに対向するように設けられた第1のIHヒータ25と、最下部7dに対向するように設けられた第2のIHヒータ26と、底部7bに対向するように設けられた第3のIHヒータ27と、を有し、第1のIHヒータ25の加熱量と、第2のIHヒータ26の加熱量と、第3のIHヒータ27の加熱量と、をそれぞれ独立して調節可能に構成している。
【0095】
そのため、鍋7を、例えば台などの上に載置するときの安定性を確保し、炊飯工程、保温工程などで鍋7の温度が上昇したとき、鍋7の底部7bが熱膨張により変形する虞を防止することができる。また第1のIHヒータ25の加熱により発生する外対流C1を促進することができ、第2のIHヒータ26および第3のIHヒータ27の加熱により発生する内対流C2およびC3の、底部7bからの吹上げ効果を促進することができる。さらに、定格の最大炊飯量における炊飯量である大量、中量、少量の炊飯量に応じて、第1~第3のIHヒータ25~27の加熱バランスおよび加熱量を炊飯量に適するように各々独立させて単独で加熱調節し、被炊飯物Sの炊飯量にかかわらずに炊きムラのないご飯を炊飯でき、特に中量未満の炊飯量で炊きムラのないご飯を炊飯できるようにしている。
【0096】
また本実施形態の炊飯器の本体1では、炊飯の各工程の進行に伴い、底面加熱体11の加熱量を第1パターンに基づいて変化させて、被炊飯物Sへの炊飯を行なう炊飯制御手段41と、炊飯制御手段41が鍋7を加熱するように、底面加熱体11の動作を制御しているときに、第1パターンとは異なる第2パターンで、底面加熱体11の加熱量を経時的に変化させる加熱量可変手段としての加熱量ゆらぎ手段44と、をさらに備えており、より薪火で炎がゆれるようなかまど炊きの形態に近い加熱で、鍋7内の被炊飯物Sに対する炊飯を行なうことが可能になる。
【0097】
図20および
図21は、本実施形態の変形例を示している。本変形例では、第1のIHヒータ25と第2のIHヒータ26とを直列に接続し、底面加熱体11の回路構成を簡素化している。
【0098】
図20は、炊飯量が大量または中量のときの、本変形例の第1~第3のIHヒータ25~27の加熱バランスの変化を示す図であり、
図21は、炊飯量が少量のときの、本変形例の第1~第3のIHヒータ25~27の加熱バランスの変化を示す図である。本変形例では、第1のIHヒータ25と第2のIHヒータ26とが直列に接続されるため、第1のIH加熱駆動ユニット32と第2のIH加熱駆動ユニット33が合わさって1つのIH加熱駆動ユニットになっており、底面加熱体11を駆動させるのが、このIH加熱駆動ユニットと第3のIH加熱駆動ユニット34の2つになるため、底面加熱体11の回路構成が簡素化する。また炊飯量に応じて、直列接続している第1および第2のIHヒータ25,26や第3のIHヒータ27の断続通電率を変更することにより、従来よりきめ細やかな加熱バランスを構成して、炊きムラのない炊飯を行なうことができる。
【0099】
本変形例では、炊飯量が大量のときの第1~第3のIHヒータ25~27の加熱バランスは、第1~第3のIHヒータ25~27により側面下部7cおよび底部7b全体を加熱し、特に第3のIHヒータによる最下部7dから内側中心部7eまでの底部7bの加熱量を増やすことにより、熱の内対流C3を発生させて鍋7内の底部7bからの吹上げを促進し、鍋7内の被炊飯物Sの中央部下層や中層に熱水を供給することにより被炊飯物Sの炊きムラを低減している。また炊飯量が中量のときの第1~第3のIHヒータ25~27の加熱バランスは、主に第1および第2のIHヒータ25,26により側面下部7cと底部7bの最下部7dとを連続して加熱し、また第3のIHヒータ27による加熱を弱め、最下部7dから内側中心部7eまでの底部7bの加熱量を減少させて、この底部7bの部分への加熱過多を抑制することにより被炊飯物Sの炊きムラを低減している。
【0100】
図20を参照して具体的に説明すると、炊飯量が大量または中量のときは、まず(i)のように第1~第3のIHヒータ25~27による加熱を行ない、熱の外対流C
1および熱の内対流C
2,C
3を発生させる。次に(ii)のように第1および第2のIHヒータ25,26による加熱を行ない、熱の外対流C
1および熱の内対流C
2を発生させ、その後(i)の加熱バランスを行ない、以降、(i)~(ii)の加熱バランスを繰り返し行なっている。そのため、鍋7内の被炊飯物Sにおいて、熱の外対流C
1および熱の内対流C
2が連続して発生し、熱の内対流C
3が断続的に発生することが繰り返し行われている。
【0101】
ここで、本変形例では炊飯量に応じて第3のIHヒータ27による加熱時間が変更されており、例えば炊飯量が中量の2.0合である場合、第3のIHヒータ27は(i)の加熱バランスで100ms(0.1秒)加熱をし、(ii)の加熱バランスで800ms(0.8秒)加熱をしない、ということを繰り返すように制御される。また例えば炊飯量が大量の5.5合である場合、第3のIHヒータ27は(i)の加熱バランスで800ms(0.8秒)加熱をし、(ii)の加熱バランスで100ms(0.1秒)加熱をしない、ということを繰り返すように制御される。すなわち、本変形例では炊飯量が多いほど第3のIHヒータ27による加熱時間を多くしており、最下部7dから内側中心部7eまでの底部7bの加熱量を多くしている。このときパルス駆動信号の周期や、一周期に対するオン時間の比率(オン時比率)を変化させることで、第1~第3のIHヒータ25~27から鍋7への加熱量の合計を炊飯量に応じて、例えば最大1400Wから700Wまで増減させることができる。
【0102】
また本変形例では、炊飯量が少量のときの第1~第3のIHヒータ25~27の加熱バランスは、直列接続している第1および第2のIHヒータ25,26による側面下部7cおよび底部7bの最下部7dの加熱と、第3のIHヒータ27による最下部7dから内側中心部7eまでの底部7bへの加熱と、を交互に行なうことにより、熱の外対流C1および熱の内対流C2と、熱の内対流C3とが交互に発生するようにして、鍋7内の被炊飯物Sの水の撹拌を促進することにより、特に被炊飯物Sにおける側面下部7c近傍にある部分の加熱過多を抑制して、加熱ムラを低減することができる。
【0103】
図21を参照して具体的に説明すると、炊飯量が少量のときは、まず(iii)のように第3のIHヒータ27による加熱を行ない、熱の内対流C
3を発生させる。次に(iv)のように第1および第2のIHヒータ25,26による加熱を行ない、熱の外対流C
1および熱の内対流C
2を発生させ、その後(i)の加熱バランスを行ない、以降、(iii)~(iv)の加熱バランスを繰り返し行なっている。
【0104】
また炊飯量に応じて、第1~第3のIHヒータ25~27における(iii)の加熱バランスの時間および(iv)の加熱バランスの時間が変更されており、例えば炊飯量が0.5合と少ない場合、(iii)の加熱バランスで300ms(0.3秒)加熱をし、(iv)の加熱バランスで100ms(0.1秒)加熱をする、ということを繰り返すように制御される。また例えば炊飯量が1.5合と多い場合、(iii)の加熱バランスで100ms(0.1秒)加熱をし、(iv)の加熱バランスで300ms(0.3秒)加熱をする、ということを繰り返すように制御される。すなわち、本変形例では炊飯量が多いほど、第1および第2のIHヒータ25,26による加熱時間を多くし、その一方で第3のIHヒータ27による加熱時間を少なくしており、特に被炊飯物Sにおける側面下部7c近傍にある部分の加熱過多を抑制して、加熱ムラを低減するようにしている。
【0105】
以上のように、本変形例の炊飯器の本体1では、底面加熱体11は、側面下部7cに対向するように設けられた第1のIHヒータ25と、最下部7dに対向するように設けられた第2のIHヒータ26と、底部7bに対向するように設けられた第3のIHヒータ27と、を有し、第1のIHヒータ25および第2のIHヒータ26の加熱量と、第3のIHヒータ27の加熱量と、を独立して調節可能に構成している。
【0106】
そのため、第1の実施形態と比較して底面加熱体11の回路構成を簡素化しつつ、よりきめ細やかな加熱バランスを構成することができ、炊飯量が大量のときは、第3のIHヒータによる最下部7dから内側中心部7eまでの底部7bの加熱量を増やすことにより、熱の内対流C3を発生させて鍋7内の底部7bからの吹上げを促進し、炊飯量が中量のときは第3のIHヒータ27による加熱を弱め、最下部7dから内側中心部7eまでの底部7bの加熱量を減少させて、この底部7bの部分への加熱過多を抑制することにより被炊飯物Sの炊きムラを低減することができる。そして炊飯量が少量のときは、第1および第2のIHヒータ25,26による側面下部7cおよび底部7bの最下部7dの加熱と、第3のIHヒータ27による最下部7dから内側中心部7eまでの底部7bへの加熱と、を交互に行なうことにより、被炊飯物Sにおける側面下部7c近傍にある部分の加熱過多を抑制して、加熱ムラを低減することができる。
【0107】
図22は、本実施形態のさらなる変形例を示している。本変形例では、炊飯工程の最初から炊飯量に応じた炊き方をユーザが選択できるようになっている。
【0108】
図22は、本変形例の表示操作ユニット5の上面図である。同図を参照して具体的に説明すると、LCD63の最下段に「少量適量」の表示要素67-13、「中量」の表示要素67-14、「大量」の表示要素67-15、および「自動」の表示要素67-16が、それぞれ並んで配置される。その他の構成については、第1の実施形態のものと同様であるので、説明を省略する。
【0109】
次に上記構成の炊飯器本体1についてその作用を説明すると、操作部4の、例えば炊飯量キー57を操作すると、炊飯量の選択画面に移動する。ここで、例えば進むキー52、戻るキー53、タッチセンサ60を操作する毎に、その操作信号が表示制御手段43に受け入れられ、この表示制御手段43により「少量適量」の表示要素67-13、「中量」の表示要素67-14、「大量」の表示要素67-15、および「自動」の表示要素67-16の点灯表示、消灯表示をさせるようにLCD63を制御され、点灯表示をした炊飯量が選択されるように炊飯コースの設定が変更される。
【0110】
ここで、「少量適量」の表示要素67-13が選択された場合、炊飯制御手段が少量の炊飯量であるときの第1~第3のIHヒータ25~27の加熱バランスで炊飯工程を行なうように第1~第3のIH加熱駆動ユニット32~34を制御し、「中量」の表示要素67-13または「大量」の表示要素67-15が選択された場合も同様に、炊飯制御手段が中量または大量の炊飯量であるときの第1~第3のIHヒータ25~27の加熱バランスで炊飯工程を行なうように第1~第3のIH加熱駆動ユニット32~34を制御する。そして「自動」の表示要素67-16が選択された場合、炊飯制御手段は、ひたし炊き工程や沸騰加熱工程における、鍋温度t1の温度上昇率や蓋温度t2の温度上昇率を基に、鍋7内の被炊飯物Sの炊飯量を算出することで検出した炊飯量による加熱バランスで炊飯工程を行なうように第1~第3のIH加熱駆動ユニット32~34を制御する。このように構成することにより、ユーザが直接第1~第3のIHヒータ25~27の加熱バランスを選択することができ、具体的に炊飯量に応じた加熱バランスを選択することにより炊飯工程の最初から炊飯量に応じた加熱バランスで炊飯をすることができる。
【0111】
図23は、本実施形態のさらなる変形例を示している。本変形例では、ご飯のメニューの他にも、お米の銘柄や米質からも設定することができ、被炊飯物Sの各種の炊き分けにおいて、炊飯量の多少にかかわらず、炊きムラの少ない炊飯ができるようになっている。
【0112】
図23は、本変形例の表示操作ユニット5の上面図である。同図を参照して具体的に説明すると、操作部4はタッチセンサ60のみで構成されており、第1の実施形態の炊飯キー58の代わりに「炊飯」の表示要素67-18が、保温キー59の代わりに「保温」の表示要素67-19が、切キー56の代わりに「切」の表示要素67-20が、表示操作ユニット5の下側部分、すなわちLCD63の下側部分に並んで配置される。そして、これらの表示要素67-18~67-20の上のタッチセンサ60をタッチ操作することにより、炊飯制御手段41または保温制御手段42が炊飯キー58、保温キー59または切キー56と同様に作用するように構成されている。
【0113】
時刻調整用の「進む」の表示要素67-21や「戻る」の表示要素67-22は、予約時刻や現在時刻を調整するのに操作されるものであり、例えば時計用表示要素67-1、炊上り予約用表示要素67-2,67-3の上のタッチセンサ60をタッチ操作すると、表示制御手段43がタッチセンサ60からの操作信号を受け付けて現在時刻の調整画面や予約時刻の選択画面に移行し、時刻調整用の「進む」の表示要素67-21や「戻る」の表示要素67-22で現在時刻の調整や予約時刻の選択を行なう。ここで本変形例の表示制御手段43は、炊飯工程の開始前に各種の炊き分けの設定および炊飯量の設定を加味した炊飯コースによりタイマーとなる予約時刻を設定するため、選択された各種炊き分けの加熱パターンに応じて、設定された所定時刻に対する炊飯開始時刻が変更になり、各種の炊き分けの炊飯量に応じた炊飯時間の精度が向上し、例えばむらし工程の時間が過剰に長くなる、または被炊飯物Sの炊上り時刻より早く炊上ってしまうという虞を抑制することができる。
【0114】
炊飯量調整用の「進む」の表示要素67-23や「戻る」の表示要素67-24は、炊飯量の選択画面で、これらを設定する際に操作されるものであり、例えば炊飯量調整用の「進む」の表示要素67-23や「戻る」の表示要素67-24の上のタッチセンサ60をタッチ操作すると、表示制御手段43がタッチセンサ60からの操作信号を受け付けて、炊飯量の選択画面に移行し、「0.5合」~「5.5合」までの0.5合刻みに設定することができ、または「お任せ(自動)」に設定することができる。また炊飯量の選択は、例えばユーザが予め記憶手段37に記憶させて登録している、炊飯量の表示要素67-25,67-26,67-27の上のタッチセンサ60をタッチ操作することでも設定することができる。
【0115】
食感選択用の「進む」の表示要素67-28や「戻る」の表示要素67-29は、食感の選択画面で、これらを設定する際に操作されるものであり、例えば食感選択用の「進む」の表示要素67-28や「戻る」の表示要素67-29の上のタッチセンサ60をタッチ操作すると、表示制御手段43がタッチセンサ60からの操作信号を受け付けて、食感の選択画面に移行する。また食感の選択は、例えばユーザが予め記憶手段37に記憶させて登録している、食感の表示要素67-30,67-31,67-32の上のタッチセンサ60をタッチ操作することでも設定することができる。
【0116】
メニュー選択用の「進む」の表示要素67-33や「戻る」の表示要素67-34は、メニューの選択画面で、これらを設定する際に操作されるものであり、例えばメニュー選択用の「進む」の表示要素67-33や「戻る」の表示要素67-34の上のタッチセンサ60をタッチ操作すると、表示制御手段43がタッチセンサ60からの操作信号を受け付けて、メニューの選択画面に移行する。またメニューの選択は、例えばユーザが予め記憶手段37に記憶させて登録している、メニューの表示要素67-35,67-36,67-37の上のタッチセンサ60をタッチ操作することでも設定することができる。
【0117】
本変形例では、ご飯のメニューの代わりに、お米の銘柄や米質から設定することができる。お米の銘柄で設定する場合は、メニューの選択画面でお米の銘柄選択用の「進む」の表示要素67-38や「戻る」の表示要素67-39が操作される。例えばお米の銘柄選択用の「進む」の表示要素67-38や「戻る」の表示要素67-39の上のタッチセンサ60をタッチ操作すると、表示制御手段43がタッチセンサ60からの操作信号を受け付けて、例えば
図24に示されるような、お米の産地や銘柄の選択画面に移行する。またお米の銘柄の選択は、例えばユーザが予め記憶手段37に記憶させて登録している、お米の銘柄の表示要素67-41,67-42,67-43の上のタッチセンサ60をタッチ操作することでも設定することができる。
【0118】
本変形例の記憶手段37は、例えば
図24に示されるような、お米の産地や銘柄毎にかたさや粘りの食感データを記憶しており、炊飯制御手段41は、この食感データに基づき炊飯工程の加熱パターンを選択して、お米の銘柄の特徴を生かして炊き上げる構成としている。
図24を参照して、お米の産地や銘柄の選択について説明すると、お米の産地や銘柄の選択画面に移行すると、表示制御手段43は、まず
図24(A)に示されるような、お米の産地の表示要素を表示するようにLCD63を制御する。ここで、お米の銘柄選択用の「進む」の表示要素67-38や「戻る」の表示要素67-39、タッチセンサ60を操作してお米の産地の表示要素が選択されると、表示制御手段43は、
図24(B)に示されるような、選択されたお米の産地の表示要素の下に並べられたお米の銘柄の表示要素を表示するようにLCD63を制御する。例えば、お米の産地の表示要素の選択画面で「徳島」を選択した場合、表示制御手段43は、「コシヒカリ」、「ヒノヒカリ」、「あきたこまち」「キヌヒカリ」「にこまる」「おいでまい」の各表示要素を表示するようにLCD63を制御する。そして、お米の銘柄選択用の「進む」の表示要素67-38や「戻る」の表示要素67-39、タッチセンサ60を操作してお米の銘柄の表示要素が選択されると、表示制御手段43は、お米の銘柄の表示要素67-41,67-42,67-43のどれに登録するかの選択画面を表示するようにLCD63を制御し、ユーザによる選択後、表示制御手段43は、選択されたお米の銘柄の表示要素67-41,67-42,67-43の表示を選択されたお米の産地および銘柄に変更するようにLCD63を制御し、また記憶手段37に選択されたお米の産地および銘柄を記憶する。
【0119】
また記憶手段37が記憶しているかたさや粘りの食感データについて
図25を参照して説明すると、例えば「コシヒカリ 南魚沼」はかたさが「3」、粘りが「3」とかたさと粘りのバランスが良く、「あきたこまち」はかたさが「1」、粘りが「2」としっかりとしたかたさと粘り(咀嚼性)のバランスであり、「ミルキークィーン」はかたさが「5」、粘りが「5」と、もっちりとした粘りのある炊上りとなっている。
【0120】
ここで本変形例では、かたさと粘りのバランスが良い「コシヒカリ 南魚沼」を基準として炊飯工程の加熱パターンを選択しており、例えば「あきたこまち」はしっかりとしたかたさと粘りが過度になってしまうと、かたくなりすぎて食味が低下するため、本変形例の炊飯制御手段41は、鍋7内の被炊飯物Sの水を早期に沸騰させて沸騰時間が長くなり、また「コシヒカリ 南魚沼」より沸騰後の加熱量を少なくするように底面加熱体11と側面加熱体12の通断電制御を行なう。具体的には、炊飯制御手段41は、第1のIHヒータ25の加熱により発生する外対流C1に、第2のIHヒータ26および第3のIHヒータ27の加熱により発生する内対流C2およびC3の吹上げを付加した1400Wの最大加熱量になるように底面加熱体11を制御して鍋7内の被炊飯物Sの水を早期に沸騰させ、沸騰した後は、炊飯制御手段41は、第1のIHヒータ25の加熱率より第2のIHヒータ26および第3のIHヒータ27の加熱率を減少させた加熱バランスで700Wに加熱量を減少させるように底面加熱体11を制御して、さらに通断電率が60%程度になるように底面加熱体11を制御して沸騰継続時間が長くなるように構成しており、被炊飯物Sの米の糊化度を高めて粘りを促進し、やや含水量が多めにしてやわらかめ傾向になるように炊飯している。
【0121】
また例えば、「ミルキークィーン」は、やわらかめの粘りが過度になると、歯応えの無いかたさと粘りになり食味が低下するため、本変形例の炊飯制御手段41は、「コシヒカリ 南魚沼」よりも、第1のIHヒータ25の加熱を抑制して外対流外対流C1の発生を抑制しつつ第2のIHヒータ26および第3のIHヒータ27の加熱を強化して内対流C2およびC3の吹上げを促進させた加熱バランスで1400Wの加熱量になるように底面加熱体11を制御し、沸騰した後は、炊飯制御手段41は、第1のIHヒータ25、第2のIHヒータ26および第3のIHヒータ27の加熱バランスを「コシヒカリ 南魚沼」と同様に戻した加熱バランスで1000Wに加熱量を減少させるように底面加熱体11を制御して、さらに通断電率が80%程度になるように底面加熱体11を制御して沸騰継続時間が短くなるように構成しており、過度に沸騰時間が長くなって被炊飯物Sの米の糊化が過剰にならないように、強めの加熱で沸騰を継続させるように炊飯している。
【0122】
また米質で設定する場合は、メニューの選択画面で米質選択用の「進む」の表示要素67-44や「戻る」の表示要素67-45が操作される。例えば米質選択用の「進む」の表示要素67-44や「戻る」の表示要素67-45の上のタッチセンサ60をタッチ操作すると、表示制御手段43がタッチセンサ60からの操作信号を受け付けて、例えば「白米」、「8分づき」、「7分づき」、「5分づき」、「3分づき」、「玄米」、「玄米混ぜ米」、「胚芽米」、「雑穀米」、「麦混ぜ米」、「低タンパク米」、「長粒米」、「高アミロース米」のような、米質の選択画面に移行する。また米質の選択は、例えばユーザが予め記憶手段37に記憶させて登録している、米質の表示要素67-46,67-47,67-48の上のタッチセンサ60をタッチ操作することでも設定することができる。
【0123】
ここで例えば「玄米」を選択した場合、玄米は吸水性が遅いため、本変形例の炊飯制御手段41は、むらし加熱工程において、上述した精白米では、例えば水温略45℃にして15分行なうのに対し、玄米では、例えば水温を略60℃にして略30分行なうなど、高水温で長時間行ない、また玄米は糊化し難いので、被炊飯物Sが沸騰した後は、炊飯制御手段41は、沸騰を適度に維持できる加熱量へ低減させるように底面加熱体11を制御して、沸騰継続時間を長く保持するように炊飯している。
【0124】
ここで玄米の場合は、精白米よりも熱および水を吸収が少なく、被炊飯物Sの米の熱抵抗が少なく精白米より熱移動の抵抗が少ないため、鍋7の鍋肌部の熱は、鍋肌から離れた鍋7中央部へ移動しやすい。そのため被炊飯物Sを炊飯したご飯の炊きムラは、精白米と比較すると少なく、また内対流C2,C3による鍋7の底部からの吹上げによる『カニ穴』も精白米と比較してできやすくなる。したがって、外対流C1は精白米の炊飯時ほど必要としない一方で、上述した精白米と同様の加熱バランスである場合、被炊飯物Sにおける側面上部7aおよび側面下部7c近傍の部分が加熱過多となり、米の糊化が過剰になって水分過多の煮崩れた炊上りになる虞がある。そこで本変形例の炊飯制御手段41は、「玄米」を選択して炊飯した場合、沸騰した後は、精白米の加熱バランスと比較して、第2のIHヒータ26および第3のIHヒータ27の加熱バランスよりも第1のIHヒータ25の加熱バランスを少なくなるように底面加熱体11を制御して、鍋側面下部の加熱バランスを鍋底面に比べ少なくし、被炊飯物Sにおける側面上部7aおよび側面下部7c近傍の部分が加熱過多を抑制して炊飯を行なっている。
【0125】
また例えば「低タンパク白米」を選択した場合は、吸水過多になると歯応えがなくなってしまうため、本変形例の炊飯制御手段41は、ひたし炊き工程をほとんど行なわず、速やかに沸騰加熱工程を行ない、沸騰した後は、略3~5分でむらし工程に移行し、むらし工程は略10~15分程度にするよう、第1のIHヒータ25、第2のIHヒータ26および第3のIHヒータ27すべてによる加熱バランスで急速に加熱を行なうように底面加熱体11を制御して、未吸収の水分を米に吸収または蒸発させて炊飯を行なっている。
【0126】
図26は、本実施形態のさらなる変形例を示している。本変形例では、
図23に示された変形例を簡易化し、ユーザに分かりやすくしている。同図を参照して具体的に説明すると、操作部4は
図23で説明した変形例と同様にタッチセンサ60のみで構成されており、時刻調整用の表示要素67-21,67-22、炊飯量調整用の表示要素67-23,67-24、食感調整用の表示要素67-28,67-29、メニュー選択用の表示要素67-33,67-34、およびお米の銘柄選択用の表示要素67-38,67-39の代わりに、選択用の「進む」の表示要素67-51および「戻る」の表示要素67-52がLCD63の下側部分に配置される。
【0127】
そして設定をするときには、時計用表示要素67-1や炊上り予約用表示要素67-2,67-3や、炊飯量の表示要素67-4や、食感の表示要素67-30や、お米の銘柄の表示要素67-41や、米質の表示要素67-46や、メニューの表示要素67-35の上のタッチセンサ60をタッチ操作すると、表示制御手段43がタッチセンサ60からの操作信号を受け付けて、それぞれの設定の選択画面に移行し、その画面で選択用の「進む」の表示要素67-51および「戻る」の表示要素67-52、またはタッチセンサ60をタッチ操作することにより、それぞれの設定を選択することができるように構成される。その他の作用は、上述した実施形態や変形例と同様なので、説明を省略する。
【0128】
以上のように、本変形例の炊飯器では、底面加熱体11の加熱パターンを選択する選択手段としての操作部4と、選択された加熱パターンに基づいて底面加熱体11を制御する制御手段としての炊飯制御手段41と、をさらに備え、炊飯制御手段41は、選択された加熱パターンに基いて、第1のIHヒータ25の加熱量と、第2のIHヒータ26の加熱量と、第3のIHヒータ27の加熱量と、をそれぞれ変更するように構成されている。そのため、「炊飯量」だけではなく、「メニュー」、「食感」、「お米の産地や銘柄」などに応じて、第1~第3のIHヒータ25~27の加熱量をそれぞれ変更することができ、炊きムラを抑制したご飯を炊飯できる。
【実施例2】
【0129】
図27~
図32は、本発明の炊飯器の第2の実施形態の実施形態を示している。本実施形態の炊飯器では、複数のIHヒータを、鍋7の底部7bの底面に対して分割するように複数のブロックに分けて配設させ、一つ置きのブロックで直列に接続し、これらを第2のIHヒータ71および第3のIHヒータ72として独立加熱可能なIHヒータとしており、定格の最大炊飯量における炊飯量に応じて、第1~第3のIHヒータ25,71および72の加熱バランスが最適になるように調整可能にし、定格の最大炊飯量における炊飯量が中量以上のときだけではなく、最小量から最大量まで、第1~第3のIHヒータ25,71および72の加熱バランスおよび加熱量を炊飯量に適するように各々独立させて単独で加熱調節し、特に中量未満の炊飯量で炊きムラのないご飯を炊飯できるようにしている。
【0130】
図27は、底面加熱体11周辺の要部を示す概略図である。第1~第3のIHヒータ25,71および72は、第1の実施形態と同様に、それぞれ内枠9の外面に設けられており、第2および第3のIHヒータ71,72は底面ヒータとして底部7bに対向させて配設される。また
図27に示されるように、第2および第3のIHヒータ71,72は鍋7の底部7bの底面に対して例えば60°毎に分割して、例えば6個など複数のブロックに分けて配設しており、例えば3個など半分のブロックを一つ置きで直列に接続しており、第1~第3のIHヒータ25,71および72の加熱バランスおよび加熱量を炊飯量に適するように各々独立させて単独で加熱調節している。
【0131】
図28は、定格の最大炊飯量における炊飯量が、例えば3.0~5.5合である中間量以上のときの、本実施形態の第1~第3のIHヒータ25,71および72の加熱バランスを示す図であり、
図29は、第1~第3のIHヒータ25,71および72を加熱したときの鍋7内の熱の移動を示している。そして第1のIHヒータ25で鍋7の側面下部7cを加熱することで鍋7内の熱の外対流C
1を発生させ、第2および第3のIHヒータ71,72で外側の底部7bをローテーションで加熱することで底部7bに亘って局所的にローテーションで熱の内対流C
4,C
5を発生させ、鍋7内で熱の対流を複雑に発生させている。
【0132】
図28および
図29を参照して具体的に説明すると、炊飯量が中間量以上のときは、まず(i)のように第1のIHヒータ25による加熱を行ない、熱の外対流C
1を発生させる。次に(ii)のように第2および第3のIHヒータ71および72による加熱を行ない、熱の内対流C
4,C
5を発生させ、その後(i)の加熱バランスを行ない、以降、(i)~(ii)のサイクルを、例えば1サイクル50msなどの高速で繰り返し行なっている。そのため、鍋7内の被炊飯物Sにおいて、熱の外対流C
1と、熱の内対流C
4,C
5とが交互に発生することが繰り返し行われ、熱の外対流C
1と熱の内対流C
4,C
5との交互対流を行なっている。なお、このときのパルス駆動信号の周期や、一周期に対するオン時間の比率(オン時比率)は、上述したものに限定されず、被炊飯物Sが炊飯されたご飯の炊きムラがないように任意に設定されている。
【0133】
また炊飯量が大量のときは、例えば最小0Wから最大1400Wである第1~第3のIHヒータ25,71および72のすべてのIHヒータによる加熱を連続して行ない、鍋7の外側面下部および外底面への加熱を行なうことで熱の外対流C1および熱の内対流C4,C5を連続して発生させる。
【0134】
また
図30は、定格の最大炊飯量における炊飯量が、例えば0.5~2.5合である中間量未満のときの、本実施形態の第1~第3のIHヒータ25,71および72の加熱バランス、および第1~第3のIHヒータ25,71および72の加熱したときの鍋7内の熱の移動を示している。
【0135】
図30を参照して具体的に説明すると、炊飯量が中間量未満のときは、まず(iii)のように第1~第3のIHヒータ25,71および72による加熱を行ない、熱の外対流C
1および熱の内対流C
4,C
5を発生させる。次に(iv)のように第1のIHヒータ25および第2のIHヒータ71による加熱を行ない、熱の外対流C
1および熱の内対流C
4を発生させ、その後(v)のように第2のIHヒータ71および第3のIHヒータ72による加熱を行ない、熱の内対流C
4,C
5を発生させ、次に(vi)のように第1のIHヒータ25および第3のIHヒータ72による加熱を行ない、熱の外対流C
1および熱の内対流C
5を発生させる。その後、(iii)の加熱バランスを行ない、以降、(iii)~(vi)のサイクルを、例えば1サイクル100msなどの高速で繰り返し行なっている。そのため、鍋7内の被炊飯物Sにおいて、熱の外対流C
1と、熱の内対流C
4,C
5とが交互に発生することが繰り返し行われ、従来では実現できなかった熱の外対流C
1と熱の内対流C
4,C
5と複雑な熱対流を行なっている。
【0136】
また
図31は、定格の最大炊飯量における炊飯量が少量のときの、本実施形態の第1~第3のIHヒータ25,71および72の加熱バランスを示す図であり、
図32は、第1~第3のIHヒータ25,71および72の加熱したときの鍋7内の熱の移動を示している。炊飯量が少量のときの第1~第3のIHヒータ25,71および72の加熱バランスは、第2および第3のIHヒータ71,72により底部7bを交互に加熱しており、第2および第3のIHヒータ71,72を組み合わせて加熱できるような構成にしている。そして第1のIHヒータ25による加熱を停止するように構成される。なお、この第1のIHヒータ25による加熱は、上述した炊飯量が大量のとき、中間量以上のときと比較して、炊飯量が少量のときの加熱に寄与する加熱量にまで減少させるように構成されてもよい。
【0137】
図31および
図32を参照して具体的に説明すると、炊飯量が少量のときは、まず(vii)のように第3のIHヒータ72による加熱を行ない、熱の内対流C
5を発生させ、次に(viii)のように第2のIHヒータ71による加熱を行ない、熱の内対流C
4を発生させる。その後、(vii)の加熱バランスを行ない、以降、(vii)~(viii)のサイクルを、例えば1サイクル50msなどの高速で繰り返し行なっている。そのため、鍋7内の被炊飯物Sにおいて、熱の内対流C
4,C
5が交互に発生することが繰り返し行われ、鍋7の底部7bに亘って局所的にローテーションで加熱されることにより、被炊飯物Sの上層部分~下層部分の熱移動が活性化し、被炊飯物Sが炊飯されたご飯の炊きムラを低減することができる。
【0138】
以上のように、本実施形態の炊飯器の本体1では、被炊飯物として米と水を収容する有底筒状の鍋7と、鍋7を加熱する加熱手段としての底面加熱体11と、を備え、鍋7は、略筒状の側面上部7aと、略円盤状の底部7bと、底部7bの外周から延びて側面上部7aに連結する側面下部7cと、を有し、底部7bは、鍋7を平面に載置するときに当該平面に当接する最下部7dを外周部分に設け、底部7bの中心部に行くに従い高くなるように形成され、側面下部7cは、側面上部7aから最下部7d方向に傾斜した形状であり、底面加熱体11は、側面下部7cに対向するように設けられた第1のIHヒータ25と、底部7bに対向するように設けられ、当該底部7bに対して分割して複数のブロックに分けて配設された第2のIHヒータ71および第3のIHヒータ72と、を有し、第1のIHヒータ25の加熱量と、第2のIHヒータ71の加熱量と、第3のIHヒータの加熱量73の加熱量と、をそれぞれ独立して調節可能に構成している。
【0139】
そのため、定格の最大炊飯量における炊飯量である大量、中量、少量の炊飯量に応じて、第1~第3のIHヒータ25~27の加熱バランスおよび加熱量を炊飯量に適するように各々独立させて単独で加熱調節し、また鍋7の側面下部7cへの加熱に加えて、鍋7の底部7bに亘って局所的にローテーションで加熱されることにより、熱の外対流C1と、熱の内対流C4,C5とが交互に発生することが繰り返し行われ、従来では実現できなかった熱の外対流C1と熱の内対流C4,C5と複雑な熱対流を行なうことができ、被炊飯物の炊飯量にかかわらずに炊きムラのないご飯を炊飯できるようにしている。
【実施例3】
【0140】
図33~
図36は、本発明の炊飯器の第3の実施形態の実施形態を示している。本実施形態の炊飯器では、
図11に示されるような、一層目のIHヒータである第1のIHヒータ25’および第2のIHヒータ26’に加え、二層目のIHヒータである第3のIHヒータ81を、第2のIHヒータ26’の外側に重ねるように設けており、定格の最大炊飯量における炊飯量である大量、中量、少量の炊飯量に応じて、第1~第3のIHヒータ25’、26’および81の加熱バランスおよび加熱量を炊飯量に適するように各々独立させて単独で加熱調節し、炊きムラのないご飯を炊飯できるようにしている。
【0141】
図33(A)(B)は、底面加熱体11周辺の要部を示す概略図である。一層目のIHヒータである第1のIHヒータ25’や第2のIHヒータ26’は、それぞれ側面下部7cの外側面下部や底部7bに対向させて配設される一方で、二層目のIHヒータである第3のIHヒータ81は、第2のIHヒータ26’の外側に重ねるように、底部7bに対向させて配設され、第2のIHヒータ26’および第3のIHヒータ81を多段に備える点が従来と異なる。そのため、内枠9は二層構造に形成され、内側の一層目の外面に第1のIHヒータ25’や第2のIHヒータ26’が設けられ、外側の二層目の外面に第3のIHヒータ81が設けられる。底面加熱体11の加熱量は、第1のIHヒータ25’が0~400W、第2のIHヒータ26’が0~500W、第3のIHヒータ27が0~500Wであり、合計で0~1400Wになるように構成される。なお本実施形態では、二層目のIHヒータである第3のIHヒータ81は、第2のIHヒータ26’の外側に重ねるように配設されるが、第1のIHヒータ25’の外側に重ねるように配設されてもよい。また内枠9の一層目および二層目は、
図33(A)に示されるように、第1のIHヒータ25’よりも外周側で連結されてもよく、
図33(B)に示されるように第1のIHヒータ25’と第2のIHヒータ26’との間で連結されてもよい。
【0142】
図34は、定格の最大炊飯量における炊飯量が大量のとき、第1~第3のIHヒータ25’、26’および81を加熱した場合の鍋7内の熱の移動を示している。そして第1のIHヒータ25’で鍋7の側面下部7cを加熱することで鍋7内の熱の外対流C
1を発生させ、第2のIHヒータ26’で底部7bを加熱することで鍋7内の熱の内対流C
2を発生させ、第3のIHヒータ81で底部7bを加熱することで鍋7内の熱の内対流C
6を発生させている。
【0143】
本実施形態では、炊飯量が大量のときの第1~第3のIHヒータ25’、26’および81の加熱バランスは、主に第3のIHヒータ81により、例えば加熱量を最小0Wから最大500Wで調節して底部7bを加熱し、第1のIHヒータ25’により、例えば加熱量を最小0Wから最大400Wで調節して側面下部7cを、第2のIHヒータ26’により、例えば加熱量を最小0Wから最大500Wで調節して底部7bを同時に加熱、または交互に加熱しており、第1~第3のIHヒータ25’、26’および81を組み合わせて加熱できるような構成にしている。そのため、鍋7内の被炊飯物Sにおいて、熱の内対流C6が連続して発生し、熱の外対流C1と熱の内対流C2とが同時に発生、または交互に発生することが繰り返し行われ、鍋7内の底部7bからの圧力上昇である吹上げを強化することができ、鍋7内の被炊飯物Sにおける中心部の加熱不足を抑制して、炊きムラのないご飯を炊飯できるようにしている。
【0144】
図35は、定格の最大炊飯量における炊飯量が中量のとき、第1~第3のIHヒータ25’、26’および81を加熱した場合の鍋7内の熱の移動を示している。そして炊飯量が中量のときは第3のIHヒータ81による加熱は行なわず、第1のIHヒータ25’で鍋7の側面下部7cを加熱することで鍋7内の熱の外対流C
1を発生させ、第2のIHヒータ26’で底部7bを加熱することで鍋7内の熱の内対流C
2を発生させている。
【0145】
本実施形態では、炊飯量が中量のときの第1~第3のIHヒータ25’、26’および81の加熱バランスは、第1のIHヒータ25’により、例えば加熱量を最小0Wから最大400Wで調節して側面下部7cを、第2のIHヒータ26’により、例えば加熱量を最小0Wから最大500Wで調節して底部7bを交互に加熱しており、第1および第2のIHヒータ25’,26’を組み合わせて加熱できるような構成にして、被炊飯物Sが炊飯されたご飯の炊きムラを低減することができる。
【0146】
図35は、定格の最大炊飯量における炊飯量が少量のとき、第1~第3のIHヒータ25’、26’および81を加熱した場合の鍋7内の熱の移動を示している。そして炊飯量が少量のときは第1のIHヒータ25’や第2のIHヒータ26’による加熱は行なわず、第3のIHヒータ81で鍋7の底部7bを加熱することで鍋7内の熱の内対流C
6を発生させている。また第1の実施形態で上述したように、第3のIHヒータ81により加熱された底部7bの熱が母材経由で鍋7の側面上部7a側に移動し、次に鍋内面フッ素コート経由で、当該鍋内面フッ素コートに接している被炊飯物Sの水に移動して、米が存在しない場所では、対流により水および熱の移動が活発になるため、被炊飯物Sの上層部分の水が高温となる。そのため炊飯量が少量のときには、第3のIHヒータ81により十分な強さの熱の外対流C
6が発生し、側面上部7aおよび側面下部7c近傍にある部分のご飯、いわゆる鍋肌のご飯の糊化が過剰になり、水分過多になる虞を抑制することができる。また炊飯量が大量または中量の場合に行なう、第1のIHヒータ25’による側面下部7cへの加熱を行なわないため、加熱のロスを低減することができ、炊飯工程における加熱効率を向上させることができる。
【0147】
以上のように、本実施形態の炊飯器の本体1では、被炊飯物として米と水を収容する有底筒状の鍋と、鍋7を加熱する加熱手段としての底面加熱体11と、を備え、鍋7は、略筒状の側面上部7aと、略円盤状の底部7bと、底部7bの外周から延びて側面上部7aに連結する側面下部7cと、を有し、底部7bは、鍋7を平面に載置するときに当該平面に当接する最下部7dを外周部分に設け、底部7bの中心部に行くに従い高くなるように形成され、側面下部7cは、側面上部7aから最下部7d方向に傾斜した形状であり、底面加熱体11は、側面下部7cに対向するように設けられた第1のIHヒータ25’と、底部7bに対向するように設けられた第2のIHヒータ26’と、第1のIHヒータ25’または第2のIHヒータ26’に重ねるように設けられた第3のIHヒータ81と、を有し、第1のIHヒータ25’の加熱量と、第2のIHヒータ26’の加熱量と、第3のIHヒータの加熱量81の加熱量と、をそれぞれ独立して調節可能に構成している。
【0148】
そのため、定格の最大炊飯量における炊飯量が少量であるときは、第3のIHヒータ81により十分な強さの熱の内対流C6および熱の外対流C6が発生するため、側面上部7aおよび側面下部7c近傍にある部分のご飯、いわゆる鍋肌のご飯の糊化が過剰になり、水分過多になる虞を抑制することができる。また第1のIHヒータ25’による側面下部7cへの加熱を行なわずにすむため炊飯工程における加熱効率を向上させることができる。炊飯量が大量であるときは、鍋7内の底部7bからの圧力上昇である吹上げを強化することができ、鍋7内の被炊飯物Sにおける中心部の加熱不足を抑制して、炊きムラのないご飯を炊飯できる。さらに炊飯量が中量または大量であるときは、熱の外対流C1と熱の内対流C2とを交互に発生させることで、炊きムラを抑制させることができる。したがって、大量、中量、少量の炊飯量に応じて、第1~第3のIHヒータ25’、26’および81の加熱バランスおよび加熱量を炊飯量に適するように各々独立させて単独で加熱調節し、被炊飯物の炊飯量にかかわらずに炊きムラのないご飯を炊飯できるようにしている。
【0149】
図37は、本実施形態の変形例を示している。本変形例では、第2のIHヒータ26’と第3のIHヒータ81との位置を交換しており、第3のIHヒータ81が一層目に、第2のIHヒータ26’が二層目に配設されている。このように構成することでも、第3の実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0150】
図38および
図39は、本実施形態のさらなる変形例を示している。本変形例では、第1のIHヒータ25’と第2のIHヒータ26’とを直列に接続し、底面加熱体11の回路構成を簡素化している。
【0151】
図38は、底面加熱体11周辺の要部を示す概略図である。本変形例では、第1のIHヒータ25’と第2のIHヒータ26’とが直列に接続されるため、第1のIH加熱駆動ユニット32と第2のIH加熱駆動ユニット33が合わさって1つのIH加熱駆動ユニットになっており、底面加熱体11を駆動させるのが、このIH加熱駆動ユニットと第3のIH加熱駆動ユニット34の2つになるため、底面加熱体11の回路構成が簡素化する。また炊飯量に応じて、直列接続している第1および第2のIHヒータ25’,26’や第3のIHヒータ81の断続通電率を変更することにより、よりきめ細やかな加熱バランスを構成して、より炊きムラのない炊飯を行なうことができる。
【0152】
図39(A)(B)を参照して具体的に説明すると、定格の最大炊飯量における炊飯量が大量のとき、
図39(A)に示されるように、直列接続している第1および第2のIHヒータ25’,26’の1層目のIHヒータにより、例えば加熱量を最小0Wから最大900Wで調節して側面下部7cおよび底部7bを加熱し、また第3のIHヒータ81により、例えば加熱量を最小0Wから最大500Wで調節して底部7bを加熱している。そのため、第3の実施形態と同様に、鍋7内の被炊飯物Sにおいて、熱の外対流C
1と熱の内対流C
2とが同時に発生し、また熱の内対流C
6が発生しており、鍋7内の底部7bからの圧力上昇である吹上げを強化することができ、鍋7内の被炊飯物Sにおける中心部の加熱不足を抑制して、炊きムラのないご飯を炊飯できるようにしている。
【0153】
また炊飯量が少量のとき、
図39(B)に示されるように、1層目の第1および第2のIHヒータ25’,26’による加熱は行なわず、2層目の第3のIHヒータ81で鍋7の底部7bを加熱することで鍋7内の熱の内対流C
6および熱の外対流C
6を発生させている。そのため、第3の実施形態と同様に、いわゆる鍋肌のご飯の糊化が過剰になり、水分過多になる虞を抑制することができる。また加熱のロスを低減することができ、炊飯工程における加熱効率を向上させることができる。
【0154】
そして炊飯量が中量のときは第3のIHヒータ81による加熱は行なわず、第1のIHヒータ25’で鍋7の側面下部7cを加熱することで鍋7内の熱の外対流C1を発生させ、第2のIHヒータ26’で底部7bを加熱することで鍋7内の熱の内対流C2を発生させている。
【実施例4】
【0155】
図40~
図42は、本発明の炊飯器の第4の実施形態を示している。ここまで、主に加熱工程である沸騰加熱工程と沸騰継続工程において、大量、中量、少量の炊飯量に応じて、第1~第3のIHヒータ25~27の加熱バランスおよび加熱量を炊飯量に適するように各々独立させて単独で加熱調節し、被炊飯物の炊飯量にかかわらずに炊きムラのないご飯を炊飯できることについて説明したが、記憶手段37に予め記憶保持されている第1パターンには、
図5に示した沸騰加熱工程と沸騰継続工程以外の他の工程である、ひたし炊き工程、むらし工程、保温工程についての制御パターンも記憶されていることが好ましい。この場合、ひたし炊き工程、むらし工程、保温工程の各工程おいても、大量、中量、少量の炊飯量に応じて、第1~第3のIHヒータ25~27の加熱バランスおよび加熱量を炊飯量に適するように各々独立させて単独で加熱調節することが可能である。
【0156】
各工程での加熱バランスの一例を示す。
図40は少量の場合、
図41は中量の場合、
図42は大量の場合を示している。なお、図に示されるパターン(1)は、第1~第3のIHヒータ25~27のすべてをオン・オフ制御するパターン、パターン(2)は、第1~第2のIHヒータ25~26をオン・オフ制御するパターン(第3のIHヒータ27はオフ)、パターン(3)は、第1のIHヒータ25をオン・オフ制御するパターン(第2~第3のIHヒータ26~27はオフ)とすることを意味している。
【0157】
図40~
図42に示すように、ひたし工程における炊飯量に応じた第1~第3のIHヒータ25~27の加熱バランスの制御によれば、炊飯前に炊飯量を設定すれば、炊飯の最初から炊飯量に応じた加熱バランスにコントロールが可能となる。具体的には、ひたし炊き工程における加熱量バランスを、各種炊き分け選択に応じて設定される、ひたし炊き工程の水温と時間に応じて可変することで、所望する甘みや旨みの促進を鍋内均一化が可能となる。
【0158】
また、むらし工程における炊飯量に応じた第1~第3のIHヒータ25~27の加熱バランスの制御によれば、炊飯前に炊飯量を設定すれば、より確度の高い炊飯量に応じた加熱バランスにコントロールが可能となる。
【0159】
また、保温工程における炊飯量に応じた第1~第3のIHヒータ25~27の加熱バランスの制御によれば、炊飯前に炊飯量を設定すれば、より確度の高い炊飯量に応じた加熱バランスにコントロールが可能となる。なお、保温工程は、一般に、「炊立て保温」、「保温降下期」、「保温安定期」の順となっているが、「炊立て保温」は、炊上ってから保温になっても、ご飯を食べるまでの時間経過を考慮して、炊立てと同じご飯温度と食感のご飯を提供することを目的としているため、特に「炊立て保温」での加熱バランスの制御が効果的である。
【0160】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更可能である。例えば第1~第4の実施形態で特徴となる構成を組み合わせてもよい。また、実施形態中で例示した数値などはあくまでも一例にすぎず、炊飯器の仕様などに応じて適宜変更してかまわない。
【符号の説明】
【0161】
4 操作部(選択手段)
7 鍋
7a 側面上部
7b 底部7
7c 側面下部
7d 最下部
11 底面加熱体(加熱手段)
25,25’ 第1のIHヒータ
26,26’,71 第2のIHヒータ
27,72,81 第3のIHヒータ
41 炊飯制御手段(制御手段)
44 加熱量ゆらぎ手段(加熱量可変手段)