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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】模擬トロリー線端部設定器具
(51)【国際特許分類】
   B60M 1/28 20060101AFI20241213BHJP
【FI】
B60M1/28 K
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021048966
(22)【出願日】2021-03-23
(65)【公開番号】P2022147635
(43)【公開日】2022-10-06
【審査請求日】2024-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】591048830
【氏名又は名称】日本電設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100139114
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 貞嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100139103
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 卓志
(74)【代理人】
【識別番号】100214260
【弁理士】
【氏名又は名称】相羽 昌孝
(74)【代理人】
【氏名又は名称】片寄 武彦
(72)【発明者】
【氏名】宮▼崎▲ 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 祥三
(72)【発明者】
【氏名】多田 充志
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 政典
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-233515(JP,A)
【文献】特開2000-55662(JP,A)
【文献】米国特許第5930904(US,A)
【文献】実公平7-17706(JP,Y2)
【文献】特開平11-94534(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60M 1/00-7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レールとレールとの間に渡されるように装着され、トロリー線を模擬する水糸が取り付けられる模擬トロリー線端部設定器具であって、
長手方向を有する絶縁性の長尺部と、
前記長尺部の両端に配され、レールの頭部と当接する壁部外面と、
前記長尺部の長手方向に沿って設けられるレール部と、
前記レール部の長手方向に沿って摺動可能とされるスライダー部と、
前記スライダー部に設けられ、水糸を取り付けるプレート部と、を有することを特徴とする模擬トロリー線端部設定器具。
【請求項2】
前記長尺部の一端には固定端部が、前記長尺部の他方の端部には可動端部が設けられ、前記壁部外面が前記固定端部と前記可動端部とに設けられることを特徴とする請求項1に記載の模擬トロリー線端部設定器具。
【請求項3】
前記固定端部と前記可動端部とには、磁性シート部材が配されることを特徴とする請求項2に記載の模擬トロリー線端部設定器具。
【請求項4】
前記プレート部には、間に水糸を挟持するスリットが設けられることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の模擬トロリー線端部設定器具。
【請求項5】
前記レール部には、前記スライダー部が2つ設けられることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の模擬トロリー線端部設定器具。
【請求項6】
前記長尺部の長手方向に沿って設定用目盛りが設けられることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の模擬トロリー線端部設定器具。
【請求項7】
前記長尺部には反射テープが設けられることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の模擬トロリー線端部設定器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、模擬トロリー線端部設定器具と、この模擬トロリー線端部設定器具と共に用い得る補助器具と、模擬トロリー線端部設定器具と補助器具を用いたトロリー線支持予定箇所の適否確認方法に関する。
【背景技術】
【0002】
線路が、本線から側線へ分岐するような場合、分岐部近傍においては、電車線についても交差させることが必要となってくる。分岐部近傍において、電車線を構成する設備は「わたり線装置」と呼ばれ、このわたり線装置の構成部品の一つである交差金具が本線のトロリー線及び側線のトロリー線を連結させている。(例えば、特許文献1(特開2018-39455号公報))参照。)
トロリー線は、構造物によって支持されるようになっているが、例えば、当該構造物を建て替えるような場合、必ずしも、元のものと同様の場所に建て替えることができないようなことがある。
【0003】
そのような場合、建て替えられた構造物によって支持されるトロリー線が、電車のパンタグラフによって、規定通りに摺接されることを確認する必要がある。例えば、レールとレールの間の中間位置から±250mmの範囲内(中間位置を0mmとして、レール幅右方向に250mm、レール幅左方向に250mmの計500mm幅の範囲内)で、パンタグラフがトロリー線に摺接することが担保されるようにすることを確認する必要がある。
【0004】
従来、上記のような確認を行うために、模擬用器具30を用いてトロリー線を地上で模擬していた。図9は模擬用器具30を用いたトロリー線の模擬の様子を示す図である。模擬用器具30は、2条のレール5間の距離程度の長手方向の長さを有する長尺木材片33と、この長尺木材片33の一つの面に等間隔で打たれた複数の釘35とから構成されている。
【0005】
図9に示すように、対となる2つの長尺木材片33をレール5上に配し、トロリー線を支持する予定箇所を地面に投影した位置にある釘同士に水糸50結びつけテンションをかけ、この水糸50をトロリー線に見立てて、トロリー線を地上で模擬する。このようにすれば、水糸50が、レールとレールの間の中間位置から±250mmの範囲内に存在することを確認することで、トロリー線の支持箇所の適否を確認することができる。なお、当該中間位置からの幅方向における水糸50の距離を、水糸50の偏位量と定義する。
【0006】
わたり線装置が用いられるような場合は、図10に示すように、上記のような模擬用器具30を3つ用いて、交差する2条のトロリー線を模擬することができる。図10において、一点鎖線は本線のトロリー線を模擬する水糸50を示しており、二点鎖線は側線のトロリー線を模擬する水糸50を示している。
【文献】特開2018-39455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような従来の模擬用器具30を用いて、交差する2条のトロリー線を模擬する場合には、3つの模擬用器具30を3人の作業員がレール5上にそれぞれ固定しておき、それと同時に、1人の作業員が、先の中間位置からの水糸50の偏位量や、水糸50同士の交差位置などの確認を行うので、多くの人員と手間を要する、という課題が発生してしまう。
【0008】
模擬用器具30に重しなどを乗せてレール5上に固定するようにしてもよいが、模擬用器具30が水糸50の張力により引っ張られたり、模擬用器具30自体がそもそも軽量だったりするので、意図したように模擬用器具30を固定しておくことは困難であり、作業性が良くない、という課題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決するために、本発明に係る模擬トロリー線端部設定器具は、レールとレールとの間に渡されるように装着され、トロリー線を模擬する水糸が取り付けられる模擬トロリー線端部設定器具であって、長手方向を有する絶縁性の長尺部と、前記長尺部の両端に配され、レールの頭部と当接する壁部外面と、前記長尺部の長手方向に沿って設けられるレール部と、前記レール部の長手方向に沿って摺動可能とされるスライダー部と、前記スライダー部に設けられ、水糸を取り付けるプレート部と、を有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る模擬トロリー線端部設定器具は、前記長尺部の一端には固定端部が、前記長尺部の他方の端部には可動端部が設けられ、前記壁部外面が前記固定端部と前記可動端部とに設けられることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る模擬トロリー線端部設定器具は、前記固定端部と前記可動端部とには、磁性シート部材が配されることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る模擬トロリー線端部設定器具は、前記スライダー部には、間に水糸を挟持するスリットが設けられることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る模擬トロリー線端部設定器具は、前記レール部には、前記スライダー部が2つ設けられることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る模擬トロリー線端部設定器具は、前記長尺部の長手方向に沿って設定用目盛りが設けられることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る模擬トロリー線端部設定器具は、前記長尺部には反射テープが設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る模擬トロリー線端部設定器具は、長手方向を有する長尺部と、前記長尺部の両端に配され、レールの頭部と当接する壁部外面と、前記長尺部の長手方向に沿って設けられるレール部と、前記レール部の長手方向に沿って摺動可能とされるスライダー部と、前記スライダー部に設けられ、水糸を取り付けるプレート部と、、を有しており、このような本発明に係る模擬トロリー線端部設定器具によれば、レールの頭部と当接する壁部外面により、レール間への装着が簡単に行えると共に、摺動可能なスライダー部に水糸が取り付けられることで、トロリー線を模擬する水糸の位置決めが容易となる。
【0021】
そして、本発明に係る模擬トロリー線端部設定器具は、張った水糸の状態を安定させることができ、トロリー線を模擬する水糸による確認作業中、作業員がこれを固定しておく必要がなく、多くの人員や手間を省くことができる。このように、本発明に係る模擬トロリー線端部設定器具によれば、作業性が大幅に向上すると共に、労力を軽減することが可能となる。さらに、本発明に係る模擬トロリー線端部設定器具によれば、スライダー部による位置決めにより、取り付けた水糸の状態が安定し、正確な確認作業を行うことが可能となる。
【0022】
さらに、本発明に係る補助器具は、上記のような模擬トロリー線端部設定器具と共に用いることで、トロリー線を模擬する水糸の位置が適正であるかを簡単に確認することができる。また、本発明に係る補助器具によれば、作業性が大幅に向上すると共に、労力を軽減することが可能となる。
【0023】
また、本発明に係るトロリー線支持予定箇所の適否確認方法によれば、2つの前記模擬トロリー線端部設定器具の間のレール上で、前記補助器具を走行させる工程を有しており、このような本発明に係るトロリー線支持予定箇所の適否確認方法によれば、容易にトロリー線を模擬する水糸の位置が適正であるかを確認でき、作業性が大幅に向上すると共に、労力を軽減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態に係る模擬トロリー線端部設定器具100を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る模擬トロリー線端部設定器具100のスライダー部132を取り出して見た図である。
図3】本発明の実施形態に係る補助器具200を示す図である。
図4】本発明の実施形態に係る補助器具200の組み立て・分解を説明する図である。
図5】本発明の実施形態に係る補助器具200と共に利用される操作棒300を示す図である。
図6】本発明の実施形態に係るトロリー線支持予定箇所の適否確認方法の工程を示す図である。
図7】本発明の実施形態に係るトロリー線支持予定箇所の適否確認方法の工程を示す図である。
図8】本発明の実施形態に係るトロリー線支持予定箇所の適否確認方法の工程を示す図である。
図9】模擬用器具30を用いたトロリー線の模擬の様子を示す図である。
図10】模擬用器具30を用いて、交差する2条のトロリー線を模擬する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の実施形態に係る模擬トロリー線端部設定器具100を示す図である。図1(A)は模擬トロリー線端部設定器具100が、レール5間に装着される姿勢の上面図を示しており、図1(B)は図1(A)のXに示す方向から、模擬トロリー線端部設定器具100を見た図である。この模擬トロリー線端部設定器具100は、レール5とレール5との間に渡されるように装着され、トロリー線を模擬する水糸が取り付けられるものである。
【0026】
模擬トロリー線端部設定器具100における長尺部105は、2条のレール5間の距離と略同じ長手方向の長さを有している。このような長尺部105には、2条のレール5の短絡を防止するために、絶縁性の部材が用いられる。例えば、長尺部105には、FRPチャネル材を好適に用いることができる。
【0027】
長尺部105の一方の端部にはMCナイロン製の固定端部110が設けられ、他方の端部にはMCナイロンの可動端部120が設けられる。
【0028】
固定端部110は、長尺部105の3面を覆うようなコ字型断面部111と、このコ字型断面部111から下方へ延び出ている下方延出壁部116とを有している。固定端部110の場合、固定端部110に設けられている計4つの貫通孔112と、長尺部105に設けられている2つの穿孔とで、固定端部110が長尺部105に対して変位しないようにボルト・ナット113で取り付けられている。
【0029】
固定端部110のコ字型断面部111の底面114には磁性シート部材115が設けられている。この磁性シート部材115が、レール5の頭部の天面に対して吸着するように当接することで、模擬トロリー線端部設定器具100が安定的にレール5に対して装着される。また、下方延出壁部116における壁部外面117は、レール5の頭部の側面に対して当接する。このように底面114の磁性シート部材115と、下方延出壁部116の壁部外面117とからなるL字状構造部が、レール5の頭部に係合するようにして、模擬トロリー線端部設定器具100がレール5に装着される。
【0030】
可動端部120も、長尺部105の3面を覆うようなコ字型断面部121と、このコ字型断面部121から下方へ延び出ている下方延出壁部126とを有している。可動端部120の場合、コ字型断面部121における、対向する一片の少なくとも一方には長孔122が設けられている。このような長孔122と、長尺部105に設けられている2つの穿孔とで、可動端部120が長尺部105に対して変位することができるようにボルト・ナット123で取り付けられている。このような可動端部120によれば、レール5間の軌間幅に応じた微妙な調整を行うことで、模擬トロリー線端部設定器具100を安定的に装着することが可能となる。
【0031】
可動端部120のコ字型断面部121の底面124にも磁性シート部材125が設けられている。この磁性シート部材125が、レール5の頭部の天面に対して吸着するように当接することで、模擬トロリー線端部設定器具100が安定的にレール5に対して装着される。また、下方延出壁部126における壁部外面127は、レール5の頭部の側面に対して当接する。このように底面124の磁性シート部材125と、下方延出壁部126の壁部外面127とからなるL字状構造部が、レール5の頭部に係合するようにして、模擬トロリー線端部設定器具100がレール5に装着される。また、可動端部120の調整により、可動端部120の壁部外面127を、レール5の頭部の側面に対して、押圧するように模擬トロリー線端部設定器具100をレール5間に装着することで、模擬トロリー線端部設定器具100を安定的にレール5間に装着できる。
【0032】
模擬トロリー線端部設定器具100における長尺部105の一つの側面には、長尺部105の長手方向に沿って、リニアレール130が設けられている。このリニアレール130のレール部131には、その長手方向に沿って摺動可能とされるスライダー部132が設けられる。このようなスライダー部132は、リニアレール130に少なくとも2つ以上設けられることが好ましい。スライダー部132が2つ以上設けられ、2本の水糸50を用いることで、図10に示すような線路分岐における2条のトロリー線を模擬することができるからである。
【0033】
図2は本発明の実施形態に係る模擬トロリー線端部設定器具100のスライダー部132を取り出して見た図である。
【0034】
スライダー部132の上方には、プレート部140がネジ142によって固着されている。プレート部140には、スリット145が設けられており、このスリット145を利用することで、水糸50をプレート部140に取り付けるようにしている。より具体的には、水糸50には結び目を設け、スリット145の紙面手前側に、この結び目がくるように水糸50をスリット145に挟持させた上で、水糸50を紙面の奥の方向に送り出すようにする。
【0035】
なお、本実施形態では、プレート部140のスリット145を利用して、スライダー部132に対して、水糸50を取り付けるようにしているが、水糸50の取り付け方法がこれに限定されるものではなく、例えば、水糸50の一端をクランプするような方法としても良い。
【0036】
スライダー部132には、点線で示される貫通孔134が設けられており、この貫通孔134を利用して、インデックスプランジャー135が螺着されている。このインデックスプランジャー135を、紙面の奥の方向に螺進させると、図示していないインデックスプランジャー135の先端部が、レール部131を押圧し、スライダー部132がレール部131に対して仮固定できるようになっている。
【0037】
模擬トロリー線端部設定器具100における長尺部105の上面には、長尺部105の長手方向に沿って設定用目盛り150が設けられている。この設定用目盛り150における0の目盛りの位置は、長尺部105の両端部の中間位置とすることができる。スリット145から引き出されている水糸50の位置と、水糸50と交差する設定用目盛り150の値とを参照しつつ、スライダー部132の位置を調整した上で、インデックスプランジャー135を螺進させることで、スライダー部132の仮固定を行うことができる。
【0038】
長尺部105における設定用目盛り150の設けられていない箇所には、反射テープ160を貼り付けておくことができる。本実施形態では、設定用目盛り150の両端外側の固定端部110、可動端部120それぞれに近い位置に反射テープ160が貼り付けられている。このような作業員の注意を引きやすい反射テープ160を設けておくことで、作業員が確認作業を終了し、現場を撤収する際、模擬トロリー線端部設定器具100をレール5付近に置き忘れてしまうことを防止できる。
【0039】
以上のように構成される模擬トロリー線端部設定器具100を2つ、レール5上に装着し、それぞれの模擬トロリー線端部設定器具100の間に水糸50を張り渡すことで、トロリー線を支持する箇所の間のトロリー線の軌道を地上で確認することが可能となる。
【0040】
以上、本発明に係る模擬トロリー線端部設定器具100は、長手方向を有する長尺部105と、前記長尺部105の両端に配され、レールの頭部と当接する壁部外面(117、127)と、前記長尺部105の長手方向に沿って設けられレール部131と、前記レール部131の長手方向に沿って摺動可能とされるスライダー部132と、前記スライダー部132に設けられ、水糸を取り付けるプレート部140と、を有しており、このような本発明に係る模擬トロリー線端部設定器具100によれば、レール5の頭部と当接する壁部外面により、レール5間への装着が簡単に行えると共に、摺動可能なスライダー部132に水糸が取り付けられることで、トロリー線を模擬する水糸50の位置決めが容易となる。
【0041】
本発明に係る模擬トロリー線端部設定器具100は、張った水糸50の状態を安定させることができ、トロリー線を模擬する水糸による確認作業中、作業員がこれを固定しておく必要がなく、多くの人員や手間を省くことができる。このように、本発明に係る模擬トロリー線端部設定器具100によれば、作業性が大幅に向上すると共に、労力を軽減することが可能となる。さらに、本発明に係る模擬トロリー線端部設定器具100によれば、スライダー部132による位置決めにより、取り付けた水糸の状態が安定し、正確な確認作業を行うことが可能となる。
【0042】
次に、以上のように構成される模擬トロリー線端部設定器具100と共に用いられることで、確認作業をより簡単に行うことを可能とする、本発明に係る補助器具200について説明する。
【0043】
図3は本発明の実施形態に係る補助器具200を示す図である。図3(A)は補助器具200を、レール5上を走行させている間の姿勢の上面図を示しており、図3(B)は図3(A)のXに示す方向から、模擬トロリー線端部設定器具100を見た図である。図3(C)は図3(A)のYに示す方向から、模擬トロリー線端部設定器具100を見た図である。また、図4は本発明の実施形態に係る補助器具200の組み立て・分解を説明する図である。また、図5は本発明の実施形態に係る補助器具200と共に利用される操作棒300を示す図である。
【0044】
本発明に係る補助器具200は、トロリー線を模擬する水糸50の位置が適正であるかを確認するために用いられる。このような補助器具200は、少なくとも2つの模擬トロリー線端部設定器具100を用いて、トロリー線を模擬する水糸50を張った上で、この水糸50に沿って走行させるような構造を有している。
【0045】
このために、本発明に係る補助器具200は、それぞれのレール50に当接して、回転するローラー212を少なくとも一対は有している。本実施形態では、2対のローラー212を有するように構成されているが、3つ以上の対のローラー212を有するように構成してもよい。ローラー212としては、例えば、MCナイロンを主な材料とするものを用いることで、レール5間の短絡を防止することができる。
【0046】
ローラー支持部材210は、ローラー212を、ローラー軸213を中心として回転可能に支持するものであり、このようなローラー支持部材210が一対用意される。ローラー支持部材210には、例えば、FRPアングルを用いることができる。一対のローラー支持部材210は、長尺部205によって、連結されている。長尺部205には、FRPチャンネル材を用いることができる。
【0047】
図4に示すように、2つのローラー支持部材210の長手方向の中間部には、開口214が設けられている。また、この開口214の上方には孔が設けられており、この孔にインデックスプランジャー215が螺着されている。また、長尺部205の長手方向の両端には、インデックスプランジャー215の先端に対応した孔207が設けられている。
【0048】
本発明に係る補助器具200を組み立てる際には、インデックスプランジャー215の螺着を解き、開口214に長尺部205を挿入して、インデックスプランジャー215を締め付けることで、インデックスプランジャー215の先端部を孔207に挿通させて、長尺部205と2つのローラー支持部材210とを固定する。
【0049】
一方、本発明に係る補助器具200を分解する際には、インデックスプランジャー215による締め付けを解放し、2つのローラー支持部材210の開口214から長尺部205を取り外す。
【0050】
本発明に係る補助器具200は、上記のように分解されると、2つのローラー支持部材210と、長尺部205との3つのパーツに分解することができる。これらのパーツはいずれも長尺状のものであり、まとめることで持ち運びがし易いようになっている。
【0051】
図5に示す操作棒300は、補助器具200をレール5上で走行させる際に好適に用い得る部材の一例である。この操作棒300は、長尺状の棹部305と、この棹部305の一端側に設けられ、作業員が操作に利用するグリップ部307と、棹部305の他端側に設けられ、金属製でリング状をなす環状部309と、から構成されている。先のインデックスプランジャー215を、この環状部309に挿通して、作業員がグリップ部307を介して補助器具200を押していくことで、補助器具200は手動でレール5上を走行する。
【0052】
補助器具200における長尺部205の上面には、長尺部205の長手方向に沿って確認用目盛り250が設けられている。この確認用目盛り250における0の目盛りの位置は、長尺部105の両端部の中間位置とすることができる。作業員は、トロリー線を模擬する水糸50が張られた2つの模擬トロリー線端部設定器具100間のレール5上で、補助器具200を走行させる間、必ず水糸50が、0目盛りから±250mmの範囲内にあるか否かにより、初期に設定されたトロリー線の支持予定箇所が適切であるか否かを確認することができる。
【0053】
なお、本実施形態では、長尺部205の上面に確認用目盛り250を設けるようにしたが、0目盛りから±250mmの範囲内に相当する箇所に第1の色部を設けるようにし、0目盛りから±250mmの範囲外に相当する箇所に、第1の色部と異なる第2の色部とを設けるようにしてもよい。この場合、第1の色部には、「OK」を印象づける緑色を用い、第2の色部には、「NG」を印象づける赤色を用いることができる。このように構成すると、補助器具200を走行させている際、一度でも水糸50が赤色と重なったとすると、初期に設定されたトロリー線の支持予定箇所が適切でなかったことを感覚的に確認できる。
【0054】
補助器具200の長尺部105における確認用目盛り250の設けられていない箇所には、反射テープ260を貼り付けておくことができる。本実施形態では、確認用目盛り250の両端外側にそれぞれ反射テープ260が貼り付けられている。補助器具200は分解されることが想定されているので、反射テープ260は、それぞれのローラー支持部材210にも貼り付けるようにしてもよい。このような作業員の注意を引きやすい反射テープ260を設けておくことで、作業員が確認作業を終了し、現場を撤収する際、補助器具200をレール5付近に置き忘れてしまうことを防止できる。
【0055】
以上のように、本発明に係る補助器具200は、先のような模擬トロリー線端部設定器具100と共に用いることで、トロリー線を模擬する水糸50の位置が適正であるかを簡単に確認することができる。また、本発明に係る補助器具200によれば、作業性が大幅に向上すると共に、労力を軽減することが可能となる。
【0056】
次に、以上のような模擬トロリー線端部設定器具100と補助器具200を用いて、トロリー線支持予定箇所の適否確認を行う方法の各工程について説明する。図6乃至図8は、本発明の実施形態に係るトロリー線支持予定箇所の適否確認方法の工程を示す図である。以下のトロリー線支持予定箇所の適否確認方法の工程の説明では、2つの模擬トロリー線端部設定器具100を配して、この間の水糸50に基づいて、トロリー線支持予定箇所の適否を確認する例に基づいて説明するが、図10における模擬用器具30を、模擬トロリー線端部設定器具100に置き換えたような例でも、本発明を適用することができる。
【0057】
図6は、レール5上に、2つの模擬トロリー線端部設定器具100を装着する工程を示している。続く、図7では、2つの模擬トロリー線端部設定器具100に、共通の水糸を取り付けてテンションをかけて、水糸によってトロリー線を模擬している様子を示している。図8は、2つの模擬トロリー線端部設定器具100の間のレール5上で、補助器具200を走行させる工程を示している。作業員は、操作棒300で補助器具200をレール5上で走行させつつ、糸50が、0目盛りから±250mmの範囲内にあるか否かにより、トロリー線支持予定箇所の適否を確認する。
【0058】
以上のように、本発明に係るトロリー線支持予定箇所の適否確認方法によれば、2つの模擬トロリー線端部設定器具100の間のレール5上で、補助器具200を走行させる工程を有しており、このような本発明に係るトロリー線支持予定箇所の適否確認方法によれば、容易にトロリー線を模擬する水糸50の位置が適正であるかを確認でき、作業性が大幅に向上すると共に、労力を軽減することが可能となる。
【符号の説明】
【0059】
3・・・枕木
5・・・レール
10・・・本線
20・・・側線
30・・・模擬用器具
33・・・長尺木材片
35・・・釘
50・・・水糸
100・・・模擬トロリー線端部設定器具
105・・・長尺部
110・・・固定端部
111・・・コ字型断面部
112・・・貫通孔
113・・・ボルト・ナット
114・・・底面
115・・・磁性シート部材
116・・・下方延出壁部
117・・・壁部外面
120・・・可動端部
121・・・コ字型断面部
122・・・長孔
123・・・ボルト・ナット
124・・・底面
125・・・磁性シート部材
126・・・下方延出壁部
127・・・壁部外面
130・・・リニアレール
131・・・レール部
132・・・スライダー部
134・・・貫通孔
135・・・インデックスプランジャー
140・・・プレート部
142・・・ネジ
145・・スリット
150・・・設定用目盛り
160・・・反射テープ
200・・・補助器具
205・・・長尺部
207・・・孔
210・・・ローラー支持部材
211・・・外面
212・・・ローラー
213・・・ローラー軸
214・・・開口
215・・・インデックスプランジャー
250・・・確認用目盛り
260・・・反射テープ
300・・・操作棒
305・・・棹部
307・・・グリップ部
309・・・環状部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10