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特許7603508燃料電池システム及び燃料電池制御システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】燃料電池システム及び燃料電池制御システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04955 20160101AFI20241213BHJP
   H01M 8/04664 20160101ALI20241213BHJP
   H01M 8/043 20160101ALI20241213BHJP
   H01M 8/04858 20160101ALI20241213BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20241213BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20241213BHJP
   H02J 3/14 20060101ALI20241213BHJP
   H02J 3/46 20060101ALI20241213BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20241213BHJP
【FI】
H01M8/04955
H01M8/04664
H01M8/043
H01M8/04858
H01M8/04 H
H02J3/38 170
H02J3/14
H02J3/46
H01M8/12 101
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021058684
(22)【出願日】2021-03-30
(65)【公開番号】P2022155266
(43)【公開日】2022-10-13
【審査請求日】2023-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】南 和徹
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-017161(JP,A)
【文献】特開2015-050826(JP,A)
【文献】特開2016-042411(JP,A)
【文献】特開2018-033213(JP,A)
【文献】特開2021-034125(JP,A)
【文献】特開2020-021598(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04 - 8/0668
F24D 18/00
F24H 1/00
F24H 1/18 - 1/20
F24H 4/00 - 4/06
H02J 3/00 - 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の施設の夫々に設置されて電力を出力可能な燃料電池装置と、前記燃料電池装置の運転を制御する運転制御部と、前記燃料電池装置及び他の燃料消費機器に燃料を供給する燃料供給路での漏洩を検知する漏洩検知装置と、複数の前記燃料電池装置との間で前記施設の外部から通信可能な管理装置と、を備える燃料電池システムにおいて、
前記燃料電池装置は、運転により発生した電力を電力負荷部に供給可能で、且つ、運転により発生した電力を電力系統に供給可能な状態及び前記電力系統から前記電力負荷部に電力供給可能な状態で前記電力系統と連系されている固体酸化物形燃料電池を有しており、
前記漏洩検知装置は、前記燃料供給路における燃料の流量が所定流量以下である累積時間が所定時間未満であるときに漏洩が発生したと判定するように構成されており、
前記管理装置は、複数の前記燃料電池装置に対して、前記燃料電池装置の出力電力を定める出力制御指令を送信可能に構成されており、
前記運転制御部は、前記累積時間をリセットするために前記固体酸化物形燃料電池の運転を所定期間停止させる停止予定日よりも前の日に、前記施設の受電点電力を上げるために前記管理装置から前記出力制御指令される受電点電力上げ指令日が存在するとき、前記停止予定日を前記受電点電力上げ指令日に変更し、
前回の前記停止予定日から次回の前記停止予定日までの間に、前記受電点電力上げ指令日が複数ある場合、前回の前記停止予定日から1の前記受電点電力上げ指令日の前日までにおいて、他の前記受電点電力上げ指令日に前記受電点電力を上げる電力量の絶対値と、前記受電点電力を下げるために前記管理装置から前記出力制御指令される受電点電力下げ指令日において前記受電点電力を下げる電力量の絶対値と、の合計を、前回の前記停止予定日から前記1の受電点電力上げ指令日の前日までの日数で除した日平均値が最大となる前記1の受電点電力上げ指令日を次回の前記停止予定日として変更する燃料電池システム。
【請求項2】
前記運転制御部は、前記停止予定日の少なくとも2日前に前記停止予定日を変更する請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
複数の施設の夫々に設置され電力系統に連係された燃料電池装置の運転を制御する運転制御部と、複数の前記燃料電池装置との間で前記施設の外部から通信可能な管理装置と、を備える燃料電池制御システムにおいて、
前記管理装置は、複数の前記燃料電池装置に対して、前記燃料電池装置の出力電力を定める出力制御指令を送信可能に構成されており、
前記運転制御部は、前記燃料電池装置の運転の停止を開始する停止予定開始時刻よりも前に、前記施設の受電点電力を上げるために前記管理装置から前記出力制御指令される受電点電力上げ指令期間が存在するとき、前記燃料電池装置の運転を所定期間停止させる停止予定期間が前記受電点電力上げ指令期間と重複するように変更し、
前回の前記停止予定期間から次回の前記停止予定期間までの間に、前記受電点電力上げ指令期間が複数ある場合、前回の前記停止予定期間から1の前記受電点電力上げ指令期間の前までにおいて、他の前記受電点電力上げ指令期間に前記受電点電力を上げる電力量の絶対値と、前記受電点電力を下げるために前記管理装置から前記出力制御指令される受電点電力下げ指令期間において前記受電点電力を下げる電力量の絶対値と、の合計を、前回の前記停止予定期間から前記1の受電点電力上げ指令期間の前までの時間で除した時間平均値が最大となる前記1の受電点電力上げ指令期間と重複するように次回の前記停止予定期間を変更する燃料電池制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力系統に連系された燃料電池システム及び燃料電池制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、固体酸化物形燃料電池(SOFC)を備えた発電効率の高い燃料電池システムが知られている。この燃料電池システムは、改質器において原燃料を改質して生成された水素と酸素を含む空気とを反応させて発電した電力を電力負荷部に供給し、該反応により発生した熱を給湯用途や暖房用途である熱負荷部に供給する。固体酸化物形燃料電池の改質器等のガス機器には商用ガス(例えば都市ガス13A)が供給されており、この商用ガスは、一般的に、ガスの漏洩を検知して警報やガス遮断動作等を行う保護機能を備えたガス漏洩検知装置を介して供給される。従来、ガス漏洩検知装置としては、ガス供給管に設けられたマイコン機能付きのガスメータ(以下、「マイコンメータ」と称する)が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
マイコンメータには種々の安全機能が搭載されているが、その1つに「所定時間ガスが流れ続けたときに警報を発する機能」が備わっている。これは、例えばゴム管やガス管に損傷がありガスが微量に漏れ続けた場合にガス漏れを検出することが目的とされている機能であり、一定時間以上(例えば30日間)の連続したガスの微流出を検知して警報を発するという機能である。
【0004】
この警報が発せられると、警報の解除のため、ガス供給事業者による点検が必要となる場合が多く、また警報の解除には所定時間ガス流量の無い状態が必要となる。この解除作業はユーザーへの負担であることに加え、連続的にガスを使用している燃料電池を一時的に停止させる措置が必要となる。一旦、燃料電池の運転が停止してしまうと定常運転の状態に戻るまでに時間がかかり、特に固体酸化物形燃料電池の場合、停止行程に10時間、再起動行程に2~3時間程度必要となることもある。このため、その間の電力負荷を発電により補うことができず、燃料電池システムを導入したメリットが充分に活かされない。そこで、特許文献1には、マイコンメータの保護機能を無効にすることなく、停電時に非常用電源として自立運転可能な燃料電池システムが開示されている。
【0005】
特許文献1に記載の燃料電池システムは、少なくとも停電発生予測期間には燃料電池の自立運転が可能なように燃料電池の停止予定期間を変更する停止予定変更部を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-42411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、各施設に設けられた燃料電池等の需要側リソースを束ねて需要等を増減し、供給力等を提供するバーチャルパワープラント(VPP、仮想発電所)が普及しつつある。このVPPでは、例えば、アグリゲーションコーディネーターからの供出指令に基づいて、燃料電池等のリソース制御を行うリソースアグリゲータが各施設の受電点電力を上げ下げして調整力を供出する。例えば、リソースアグリゲータから各施設に受電点電力下げ指令を出すことにより、電力系統に電力を供給することができる。一方、需要側リソースが固体酸化物形燃料電池の場合、起動に時間を要するため、燃料電池の停止中に受電点電力下げ指令があったとき、確実に応答することが難しい。
【0008】
特許文献1に記載の燃料電池システムでは、停電発生予測期間と燃料電池の停止予定期間とが重複しないように制御しているものの、受電点電力下げ指令まで考慮できていない。また、家庭のエネルギー消費量が著しく小さいときや、予め長時間の不在が見込まれるときは、省エネの観点から燃料電池を停止させることがあり、受電点電力下げ指令があったとき、確実に応答することが難しい。
【0009】
そこで、受電点電力下げ指令に確実に応答することが可能な燃料電池システム及び燃料電池制御システムが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る燃料電池システムの特徴構成は、複数の施設の夫々に設置されて電力を出力可能な燃料電池装置と、前記燃料電池装置及び他の燃料消費機器に燃料を供給する燃料供給路での漏洩を検知する漏洩検知装置と、複数の前記燃料電池装置との間で前記施設の外部の遠隔地から通信可能な管理装置と、を備える燃料電池システムにおいて、前記燃料電池装置は、運転により発生した電力を電力負荷部に供給可能で、且つ、運転により発生した電力を電力系統に供給可能な状態及び前記電力系統から前記電力負荷部に電力供給可能な状態で前記電力系統と連系されている固体酸化物形燃料電池と、前記固体酸化物形燃料電池の運転を制御する運転制御部と、を有しており、前記漏洩検知装置は、前記燃料供給路における燃料の流量が所定流量以下である累積時間が所定時間未満であるときに漏洩が発生したと判定するように構成されており、前記管理装置は、複数の前記燃料電池装置に対して、前記燃料電池装置の出力電力を定める出力制御指令を送信可能に構成されており、前記運転制御部は、前記累積時間をリセットするために前記固体酸化物形燃料電池の運転を所定期間停止させる停止予定日よりも前の日に、前記施設の受電点電力を上げるために前記管理装置から前記出力制御指令される受電点電力上げ指令日が存在するとき、前記停止予定日を前記受電点電力上げ指令日に変更し、前回の前記停止予定日から次回の前記停止予定日までの間に、前記受電点電力上げ指令日が複数ある場合、前回の前記停止予定日から1の前記受電点電力上げ指令日の前日までにおいて、他の前記受電点電力上げ指令日に前記受電点電力を上げる電力量の絶対値と、前記受電点電力を下げるために前記管理装置から前記出力制御指令される受電点電力下げ指令日において前記受電点電力を下げる電力量の絶対値と、の合計を、前回の前記停止予定日から前記1の受電点電力上げ指令日の前日までの日数で除した日平均値が最大となる前記1の受電点電力上げ指令日を次回の前記停止予定日として変更する点にある。
【0013】
本構成では、固体酸化物形燃料電池の停止予定日を日単位で管理しているため、実際の停止日の次の日には、受電点電力下げ指令に応答することができる。また、電力系統の需給バランスを調整するために、受電点電力上げ指令(逆潮流を減少又は順潮流を増加させる指令)が出されることがあり、この場合には固体酸化物形燃料電池から電力負荷部に電力供給する光熱費メリットが小さくなる。そこで、本構成のように、固体酸化物形燃料電池の停止予定日よりも前の日に受電点電力上げ指令日があれば、この受電点電力上げ指令日を停止予定日として変更することにより、停止予定日を前倒しして漏洩検知装置の漏洩判定を確実に回避すると共に、光熱費メリットを享受しながら受電点電力下げ指令に確実に応答することができる。また、前日までに受電点電力を上下させる電力量の日平均値が最大となる受電点電力上げ指令日を、次回の停止予定日として変更すれば、受電点電力下げ指令により確実に応答することができる。よって、受電点電力下げ指令に対応可能な需要側リソースを確保して、受電点電力下げ指令に確実に応答することが可能な燃料電池システムを提供できる。
【0020】
他の特徴構成として、前記運転制御部は、前記停止予定日の少なくとも2日前に前記停止予定日を変更する点にある。
【0021】
固体酸化物形燃料電池は、停止から起動まで長時間(例えば、24時間)要することから、本構成のように、停止予定日の2日前に停止予定日を変更する制御を実行すれば、停止予定日を1日前倒しする場合でも、少なくとも停止予定日の2日前に日変更を実施しているので、固体酸化物形燃料電池の運転特性を加味した適正な制御となる。
【0024】
本発明に係る燃料電池制御システムの特徴構成は、複数の施設の夫々に設置され電力系統に連係された燃料電池装置の運転を制御する運転制御部と、複数の前記燃料電池装置との間で前記施設の外部から通信可能な管理装置と、を備える燃料電池制御システムにおいて、前記管理装置は、複数の前記燃料電池装置に対して、前記燃料電池装置の出力電力を定める出力制御指令を送信可能に構成されており、前記運転制御部は、前記燃料電池装置の運転の停止を開始する停止予定開始時刻よりも前に、前記施設の受電点電力を上げるために前記管理装置から前記出力制御指令される受電点電力上げ指令期間が存在するとき、前記燃料電池装置の運転を所定期間停止させる停止予定期間が前記受電点電力上げ指令期間と重複するように変更し、前回の前記停止予定期間から次回の前記停止予定期間までの間に、前記受電点電力上げ指令期間が複数ある場合、前回の前記停止予定期間から1の前記受電点電力上げ指令期間の前までにおいて、他の前記受電点電力上げ指令期間に前記受電点電力を上げる電力量の絶対値と、前記受電点電力を下げるために前記管理装置から前記出力制御指令される受電点電力下げ指令期間において前記受電点電力を下げる電力量の絶対値と、の合計を、前回の前記停止予定期間から前記1の受電点電力上げ指令期間の前までの時間で除した時間平均値が最大となる前記1の受電点電力上げ指令期間と重複するように次回の前記停止予定期間を変更する点にある。
【0025】
電力系統の需給バランスを調整するために、受電点電力上げ指令(逆潮流を減少又は順潮流を増加させる指令)が出されることがあり、この場合には光熱費メリットが小さくなる。そこで、本構成のように、燃料電池装置の停止予定期間よりも前に受電点電力上げ指令期間があれば、この受電点電力上げ指令期間を停止予定期間と重複させることにより、光熱費メリットを享受しながら受電点電力下げ指令に確実に応答することができる。よって、受電点電力下げ指令に対応可能な需要側リソースを確保して、受電点電力下げ指令に確実に応答することが可能な燃料電池制御システムを提供できる。
また、電力需給調整力が要求されるときに、増減可能な燃料電池装置が多い方が好ましい。そこで、本構成のように、受電点電力を上下させる電力量の時間平均値が最大となる受電点電力上げ指令期間を、次回の停止予定期間と重複させれば、受電点電力下げ指令により確実に応答することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】施設、管理装置及びアグリゲーションコーディネーターの関係を示した図である。
図2】燃料電池システム及び燃料電池制御システムの構成例を示す図である。
図3】燃料電池装置の全体構成図である。
図4】第一実施形態に係る燃料電池停止日の設定例である。
図5】第二実施形態に係る燃料電池停止日の設定例である。
図6】第二実施形態の変形例に係る燃料電池停止日の設定例である。
図7】第二実施形態の変形例に係る燃料電池停止日の設定例である。
図8】第二実施形態の変形例に係る燃料電池停止日の設定例である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に、本発明に係る燃料電池システム及び燃料電池制御システムの実施形態について、図面に基づいて説明する。本実施形態では、燃料電池システム及び燃料電池制御システムの一例として、需給調整市場,卸電力市場,容量市場等で取引されるΔkW、kWh、kWの提供に用いられる燃料電池システム及び燃料電池制御システムについて説明する。ただし、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0034】
[全体概要]
図1は、燃料電池装置X及び電力負荷部3が設けられる施設100と、管理装置Gと、アグリゲーションコーディネーターZとの関係を示した図である。図2は、施設100の構成例を示す図である。燃料電池システムは、複数の施設100の夫々に設置されて電力を出力可能な燃料電池装置Xと、複数の燃料電池装置Xとの間で施設100の外部の遠隔地から通信を行うことができる管理装置Gとを備える。なお、図1に記載した管理装置Gの数及び施設100の数は適宜変更可能である。
【0035】
管理装置Gは、リソースアグリゲータ等とも呼ばれ、バーチャルパワープラント(VPP、仮想発電所)サービス契約を締結した施設100に対して需要家側エネルギーリソースとしての燃料電池装置X及び電力負荷部3への制御情報を伝達することで、その需要家側エネルギーリソースの制御を行う事業者である。アグリゲーションコーディネーターZは、各管理装置Gが制御する電力量を束ね、電気の取引市場(需給調整市場、卸電力市場、容量市場等)において一般送配電事業者や小売電気事業者と電力取引を行う事業者である。
【0036】
図1図2に示すように、管理装置Gは、複数の施設100から、燃料電池装置Xの出力電力、電力負荷部3の負荷電力、施設100での電力メーターMの受電点電力などの電力情報を逐次収集して記憶している。なお、本実施形態で「電力負荷部3の負荷電力」と記載する場合、施設100に設けられている全ての電力負荷部3の合計の負荷電力のことを意味する。そして、管理装置Gは、将来の所定の時間帯に各施設100から供出可能な電力を予測し、アグリゲーションコーディネーターZに伝達する。この供出可能電力は、施設100の受電点電力を上げる能力又は下げる能力といった調整余力である。なお、本実施形態において、「受電点電力を上げる」と言う場合、電力系統15から電力線PLへの受電電力(順潮流電力)を増加させる、又は、電力線PLから電力系統15への逆潮流電力を減少させることを意味し、「受電点電力を下げる」と言う場合、電力系統15から電力線PLへの受電電力(順潮流電力)を減少させる、又は、電力線PLから電力系統15への逆潮流電力を増加させることを意味する。
【0037】
例えば、施設100の受電点電力を上げるためには、燃料電池装置Xの出力電力を下げること、及び、電力負荷部3の負荷電力を上げることの少なくとも一方を行えばよいため、施設100の受電点電力を上げる場合の上げ側調整余力は、燃料電池装置Xの出力電力を下げる余力がどの程度あるかを示し、電力負荷部3の負荷電力を上げる余力がどの程度あるかを示す。また、施設100の受電点電力を下げるためには、燃料電池装置Xの出力電力を上げること、及び、電力負荷部3の負荷電力を下げることの少なくとも一方を行えばよいため、施設100の受電点電力を下げる場合の下げ側調整余力は、燃料電池装置Xの出力電力を上げる余力がどの程度あるかを示し、電力負荷部3の負荷電力を下げる余力がどの程度あるかを示す。
【0038】
また、管理装置Gは、自身が管理する複数の施設100におけるベースライン受電点電力を決定する。このベースライン受電点電力は、各施設100から調整力等(即ち、送配電事業者に提供する調整力及び小売事業者等に提供する供給力等を含む)を供出させない場合に予測される、各施設100の受電点電力の合計に相当する。
【0039】
アグリゲーションコーディネーターZは、各管理装置Gから受け取った供出可能電力を集計し、需給調整市場,卸電力市場,容量市場等の取引市場への入札を行うなどして、一般送配電事業者や小売電気事業者と取引を行う。そして、アグリゲーションコーディネーターZは、取引を行った一般送配電事業者や小売電気事業者から、将来の所定の制御対象期間での調整力等の供出指令を受け取った場合、その供出指令で指定された調整力等を各管理装置Gに対して分配して伝達する。
【0040】
管理装置Gは、アグリゲーションコーディネーターZから供出指令を受け取った場合、その供出指令で指定された調整力等を各施設100に対して分配して伝達する。その結果、各施設100では、将来の所定の制御対象期間において需要家側エネルギーリソースとしての燃料電池装置X及び電力負荷部3の制御が行われることで、その制御が行われなかった場合と比較して、施設100の受電点電力が増減するという調整力等の供出が行われる。
【0041】
施設100には、燃料電池装置Xと、電力負荷部3とが設けられている。燃料電池装置X及び電力負荷部3は、電力系統15に連系される電力線PLに接続される。電力線PLには、施設100の受電電力を測定する電力メーターMが設置されている。なお、図1及び図2には、燃料電池装置Xが各施設100に1台設置されている例を示しているが、燃料電池装置Xの設置台数は適宜変更可能である。
【0042】
電力メーターMで測定された受電点電力に関する情報は、ゲートウェイGW及びルーターRTを介して管理装置Gに伝達される。例えば、受電点電力に関する情報は、10秒毎などの所定のタイミングで管理装置Gに伝達される。
【0043】
電力負荷部3は、例えば照明装置、空調装置などの様々な装置であり、施設100に設置される燃料電池装置X及び電力系統15の少なくとも一方から電力供給を受けることができる。
【0044】
燃料電池装置Xは、電力系統15に連系される固体酸化物形燃料電池1を備える。また、固体酸化物形燃料電池1の発電電力は、電力変換部12にて所定の電圧、周波数、位相に変換して電力線PLに供給される。燃料電池装置X及び電力変換部12の動作は、運転制御部Cにより制御される。
【0045】
運転制御部Cは、所定の上限出力電力と下限出力電力との間で、燃料電池装置Xから電力線PLへの出力電力を調節できる。例えば、運転制御部Cは、燃料電池装置Xの出力電力を上限出力電力に維持して連続運転(定格出力運転)させることができる。また、運転制御部Cは、燃料電池装置Xの出力電力を、電力負荷部3の負荷電力に追従させる運転(負荷追従運転)を行わせることもできる。例えば、運転制御部Cは、電力系統15から供給される電力がゼロ又はゼロに近い値になるように燃料電池装置Xの出力電力を調節することで、電力負荷部3の負荷電力に追従させる運転を行わせることができる。
【0046】
運転制御部Cは、電力変換部12から電力線PLに供給する出力電力についての情報及び電力メーターMでの測定電力についての情報を有しているため、電力負荷部3の負荷電力(=出力電力+測定電力)を導出できる。なお、電力メーターMでの測定電力の符号がプラス(順潮流)の場合は負荷電力が燃料電池装置Xの出力電力よりも大きい状態であることを意味し、電力メーターMでの測定電力の符号がマイナス(逆潮流)の場合は燃料電池装置Xの出力電力が負荷電力よりも大きい状態であることを意味する。
【0047】
燃料電池装置Xは、施設100の利用者が燃料電池装置Xに対する指令を出す場合に操作するリモコンRMと接続されている。そして、燃料電池装置Xが有する出力電力についての情報及び負荷電力についての情報などは、リモコンRM及びルーターRTを介して管理装置Gに伝達される。例えば、燃料電池装置Xが有する出力電力についての情報及び負荷電力についての情報などは、1分毎などの所定のタイミングで管理装置Gに伝達される。
【0048】
上述したように、管理装置Gは、複数の燃料電池装置Xに対して、燃料電池装置Xの出力電力を定める出力制御指令を送信できる。そして、燃料電池装置Xは、管理装置Gから出力制御指令を受け取った場合、出力制御指令の対象となる制御対象期間の間、出力制御指令に基づいて定まる出力電力の供給を目標とする第1運転モードで動作し、制御対象期間から外れる非制御対象期間の間、第1運転モードとは別の第2運転モードで動作する。
【0049】
第1運転モードは、需給調整市場,卸電力市場又は容量市場において出力制御指令(需給調整市場の出力増減要請や容量市場の発動指令等)が見込まれる日(受電点電力下げ指令日又は受電点電力上げ指令日)において、複数の燃料電池装置Xの出力電力を調整する運転モードである。この第1運転モードにおいて、施設100の受電点電力を下げることが要請されると予想される日を「受電点電力下げ指令日」と称し、施設100の受電点電力を上げることが要請されると予想される日を「受電点電力上げ指令日」と称する。また、この第1運転モードにおいて、施設100の受電点電力を下げることが要請されると予想される開始時刻から終了時刻までの期間を「受電点電力下げ指令期間」と称し、施設100の受電点電力を上げることが要請されると予想される開始時刻から終了時刻までの期間を「受電点電力上げ指令期間」と称する。
【0050】
第2運転モードは、複数の燃料電池装置Xにおいて予め設定されている運転モードである。或いは、管理装置Gは、複数の燃料電池装置Xに対して、第2運転モードを定める運転モード制御指令を送信でき、燃料電池装置Xは、管理装置Gから受け取った運転モード制御指令に従って第2運転モードを決定する。例えば、第2運転モードは、燃料電池装置Xの出力電力を上限出力電力で維持する運転(定格出力運転)、燃料電池装置Xの出力電力を電力負荷部3の負荷電力に追従させる運転(負荷追従運転)などである。
【0051】
[燃料電池システム及び燃料電池制御システムの構成]
図3は、燃料電池装置Xの構成を示す図である。燃料電池システムは、上述した管理装置Gと、燃料電池装置Xと、燃料計Y(漏洩検知装置の一例)と、燃料電池装置Xの運転を制御する運転制御部Cと、燃料電池装置Xの停止予定日等を記憶する記憶部Rとを備える。燃料電池制御システムは、上述した管理装置Gと、燃料電池装置Xの運転を制御する運転制御部Cと、燃料電池装置Xの停止予定日等を記憶する記憶部Rとを備える。運転制御部Cは、情報処理機能,情報記憶機能及び情報通信機能等を有するハードウェア及びソフトウェアで構成されており、各施設100に設けられているが、一部又は全部が管理装置Gに設けられていても良い。記憶部Rは、運転制御部Cを作動させるプログラム等を格納した記憶媒体で構成されており、各施設100に設けられているが、一部又は全部が管理装置Gに設けられていても良い。
【0052】
燃料電池装置Xは、運転により発生した電力を電力負荷部3に供給すると共に運転によ り発生した熱を熱負荷部4に供給する固体酸化物形燃料電池1を備える。電力負荷部3は、固体酸化物形燃料電池1から供給される電力に加えて、電力系統15から供給される電力も消費することが可能である。つまり、固体酸化物形燃料電池1は、運転により発生した電力を電力負荷部3に供給可能で、且つ、電力系統15から電力負荷部3に電力供給可能な状態及び運転により発生した電力を電力系統15に供給可能な状態で電力系統15と連系されている。
【0053】
熱負荷部4は、固体酸化物形燃料電池1から発生する熱に加えて、原燃料を燃焼して熱を発生する補助熱源装置11から供給される熱を消費することもできる。
【0054】
固体酸化物形燃料電池1は、供給される改質用水を蒸発させる気化器1bと、原燃料(炭化水素を含むガス、例えば都市ガス13A)を水蒸気改質して燃料ガス(水素を含むガス)を生成する改質器1aと、改質器1aで生成された燃料ガスを用いて発電する複数の燃料電池セルSを有するセルスタックと、セルスタックからのオフガスを燃焼する燃焼部1cと、を容器1Aの内部に備える。このセルスタックは電力変換部12に電気的に接続される。
【0055】
セルスタックは、改質器1aで生成された燃料ガスが通流する燃料通流部(図示せず)を有するアノード50と、酸素(空気)が通流する空気通流部(図示せず)を有するカソード60とを備えた燃料電池セルSを、複数個電気的に直列接続した状態で備えている。図示は省略するが、燃料電池セルSは、アノード50とカソード60との間に固体電解質層を備えた固体酸化物形に構成される。アノード50に燃料ガスが供給され、カソード60に酸素が供給される。
【0056】
セルスタックの下部には、改質器1aから燃料ガス流路L4を通して供給される燃料ガ スを受け入れるガスマニホールド1eが設けられる。このガスマニホールド1eに供給された燃料ガスが複数の燃料電池セルSの下端から上方側に通流して発電反応に供される。発電反応に供されたのちの排出燃料ガスは、上端の燃料ガス排出口50aから排出される。
【0057】
固体酸化物形燃料電池1には、空気供給流路L5が接続された空気導入部70が設けられており、この空気供給流路L5の途中には、エアフィルタ21とエアブロア22とエア流量計23とが設けられる。エアブロア22の作動により、空気が空気供給流路L5を通して容器1A内に供給される。エアフィルタ21は、エアブロア22によって空気供給流路L5に吸い込まれた空気中の塵などの異物を捕らえる。エア流量計23は、容器1A内に供給される空気の単位時間当たりの流量を測定する。複数の燃料電池セルSの夫々には容器1A内の空気が下方側から上方側に通流して発電反応に供される。発電反応に供されたのちの排空気は、上端の空気排出口60aから排出される。
【0058】
セルスタックの上方には、燃料ガス排出口50aから排出される発電反応に用いられなかった水素を含む排出燃料ガスと、空気排出口60aから排出される排空気と、を燃焼させる燃焼空間が形成される。これら排出燃料ガスと排空気とが、セルスタックからのオフガスとなる。この燃焼空間には点火器1dも設けられる。つまり、セルスタックの上方の燃焼空間によって、セルスタックからのオフガスを燃焼する燃焼部1cが実現される。加えて、一体で構成された気化器1bと改質器1aとが、燃焼部1cとして機能するセルスタックの上方の燃焼空間に隣接して設けられている。
【0059】
容器1Aには、燃焼部1cにて発生した燃焼排ガスを、熱交換器Eを経由させて外部に排出するための排気部80が下部に形成されている。そして、容器1A内には、排気部80から外部に排出される燃焼排ガス中の一酸化炭素ガス等を除去する燃焼触媒部90(例えば、白金系触媒)が設けられている。
【0060】
気化器1bは、供給される改質用水を、燃焼部1cから伝えられる燃焼熱を用いて加熱して蒸発させる。改質用水タンク24に貯えられている改質用水は、改質用水タンク24に連結される改質用水流路L2を介して気化器1bに供給される。具体的には、改質用水ポンプPが動作することで改質用水タンク24に貯えられている改質用水が改質用水流路L2を通流して気化器1bの内部に流入する。
【0061】
気化器1bには原燃料流路L1を介して原燃料も供給される。原燃料流路L1の途中には質量流量計Faと原燃料ブロアBとが設けられている。質量流量計Faには例えば原燃料の熱拡散作用を利用して測定を行う熱式質量流量計が用いられる。更に、原燃料ブロアBの下流側の原燃料流路L1には、原燃料(例えば、都市ガス等)に含まれる硫黄化合物を取り除くための脱硫器20が設けられている。そして、原燃料ブロアBが動作することで、原燃料が原燃料流路L1を通流し且つ脱硫器20で脱硫された後で気化器1bの内部に流入する。運転制御部Cは、質量流量計Faを用いて測定される原燃料の流量が目標の流量になるように原燃料ブロアB及び開閉バルブV1の動作を制御する。以上のようにして、気化器1bでは、運転制御部Cによって単位時間当たりの供給量が制御された原燃料及び水蒸気が混合された混合ガスが生成され、混合ガス流路L3を介して改質器1aに供給される。
【0062】
改質器1aは、気化器1bから供給される混合ガスに含まれる原燃料の水蒸気改質処理を行う。図示は省略するが、改質器1aの内部には改質触媒が充填されており、この改質触媒の触媒作用によって原燃料が改質処理される。
【0063】
固体酸化物形燃料電池1の発電電力は電力変換部12に供給される。電力変換部12は固体酸化物形燃料電池1の発電電力を電力系統15から受電する受電電力と同じ電圧及び同じ周波数にする。電力変換部12の動作は運転制御部Cが制御する。電力変換部12は、発電電力供給ライン13を介して受電電力供給ライン14に電気的に接続される。そして、固体酸化物形燃料電池1からの発電電力が電力変換部12,発電電力供給ライン13及び受電電力供給ライン14(上述した電力線PLに相当)を介して電力負荷部3に供給される。この受電電力供給ライン14は電力系統15に接続されている。つまり、固体酸化物形燃料電池1は、運転により発生した電力を電力系統15に供給可能な状態で電力系統15と連系されている。
【0064】
受電電力供給ライン14には、電力負荷部3の電力負荷を計測する電力負荷計測部16 が設けられ、その計測結果が運転制御部Cに伝達される。そして、運転制御部Cは、電力系統15から供給される電力がゼロ又はゼロに近い値になるように燃料電池装置Xの出力電力を調節することで、電力負荷部3の負荷電力に追従させる運転(第2運転モードの負荷追従運転)を行わせることができる。この負荷追従運転は、上述した電力メーターM付近での受電点電力の計測値に基づいて固体酸化物形燃料電池1の発電電力を制御しても良いし、電力負荷計測部16で検出される電力負荷と固体酸化物形燃料電池1から受電電力供給ライン14に供給される発電電力とが等しくなるように制御しても良い。また、運転制御部Cは、固体酸化物形燃料電池1を定格出力(固体酸化物形燃料電池1に供給されるガス流量が120~130L/h)で動作させることも可能である(第2運転モードの定格出力運転)。ただし、負荷追従運転において、電力負荷計測部16で計測される電力負荷が、固体酸化物形燃料電池1の最低発電電力(電力変換部12により受電電力供給ライン14に供給される最低発電電力)よりも小さい場合、余剰電力が発生する。また、定格出力運転モードにおいて、固体酸化物形燃料電池1を定格出力で動作させ、電力変換部12からの出力電力が電力負荷よりも大きい場合にも、余剰電力が発生する。電力系統15への電力の逆潮流が可能な場合には、その余剰電力を電力系統15へ供給しても良い(第1運転モード)。電力系統15への電力の逆潮流が認められていない場合には、その余剰電力を熱に代えて回収する余剰電力消費用の電気ヒータ9で消費しても良い。
【0065】
なお、電力負荷部3にどのような装置を含めるのかは適宜設定可能である。例えば、固体酸化物形燃料電池1を運転するために用いられる補機や、熱負荷部4へ供給する湯水の凍結を防止する凍結防止用ヒータ等を、電力負荷部3から除外するような設定も可能である。また、電力負荷部3の待機電力を、電力負荷計測部16で計測する電力負荷から減算してもよい。
【0066】
電気ヒータ9は、複数の抵抗加熱器から構成され、排熱回収用ポンプ7の作動により排熱回収路6を通流する湯水を加熱する。
【0067】
貯湯タンク2には、固体酸化物形燃料電池1で発生した熱が湯水の形態で蓄えられる。つまり、貯湯タンク2は、固体酸化物形燃料電池1の運転により発生した熱を用いて加温された湯水が貯留される。貯湯タンク2の下部には、給水路17を介して上水が供給される。貯湯タンク2の内部では、相対的に低温の湯水がその下部に貯えられ、相対的に高温の湯水がその上部に貯えられるように構成されている。
【0068】
貯湯タンク2に貯えられている湯水は、排熱回収用ポンプ7を作動させることにより、排熱回収路6を通って固体酸化物形燃料電池1の燃焼排ガスが流通する熱交換器Eと貯湯タンク2との間で循環する。排熱回収路6の途中には、排熱回収路6を通って貯湯タンク2から熱交換器Eへと流れる湯水からの放熱を行うための放熱器8が設置されている。貯湯タンク2の上部に貯留されている相対的に高温の湯水は、貯湯タンク2の上部に接続されている湯水供給路5及び補助熱源装置11を介して熱負荷部4に供給される。
【0069】
熱負荷部4は、給湯用途や暖房用途等である。熱負荷部4が給湯用途の場合、湯水は貯湯タンク2へ帰還しない。熱負荷部4が暖房用途の場合、湯水が保有している熱のみが消費されて、湯水は貯湯タンク2へと帰還することもある。
【0070】
燃料計Yは、固体酸化物形燃料電池1に原燃料流路L1(燃料供給路の一例)を介して供給される原燃料(燃料)、及び、補助熱源装置11やガスコンロ等で構成される他の燃料消費機器Kに原燃料流路L6(燃料供給路の一例)を介して供給される原燃料(燃料)の合計体積を計測する体積流量計Fbを備える。この体積流量計Fbは、2つの計量室を仕切る可動式の膜の動作回数から原燃料の使用量(合計体積)を計測する膜式ガスメータ、又は、超音波センサによりガスの流速を測定して原燃料の使用量(合計体積)を計測する超音波式ガスメータで構成される。
【0071】
体積流量計Fbは、少なくとも「所定時間ガスが流れ続けたときに警報を発する機能」を含む安全機能を有するマイコンメータで構成される。この安全機能の1つとして、所定の期間中(例えば30日間)に、ごく微量(所定流量)以下の流量(合計体積)となる累積時間が所定時間(例えば1時間)に達していないときに漏洩が発生したと判定して警報を発し、所定時間に達していれば累積時間をリセットする(累積時間をゼロにする)機能を備えている。本実施形態では、累積時間をリセットするために、固体酸化物形燃料電池1の運転を所定期間(例えば、停止,起動を含め24時間)停止させる停止予定日を、所定間隔(例えば、27日間隔)で設けている。
【0072】
[運転制御部による制御形態]
続いて、燃料電池システム及び燃料電池制御システムの運転制御部Cに係る制御形態について説明する。上述したように、管理装置Gは、複数の燃料電池装置Xに対して、燃料電池装置Xの出力電力を定める出力制御指令を送信できる。燃料電池装置Xは、この出力制御指令に基づいて定まる出力電力の供給を目標とする第1運転モードで動作する。この第1運転モードにおいて、施設100の受電点電力を下げるための受電点電力下げ指令日と、施設100の受電点電力を上げるための受電点電力上げ指令日とは、予め管理装置Gから運転制御部Cに伝達されている。図4図8に示す出力要請見込みの「増」が受電点電力下げ指令日であり、出力要請見込みの「減」が受電点電力上げ指令日である。
【0073】
また、上述したように、記憶部Rは、固体酸化物形燃料電池1の運転を所定期間(例えば24時間)停止させる停止予定日又は停止予定期間を、所定間隔(例えば、27日間隔)で記憶している。本実施形態における運転制御部Cは、固体酸化物形燃料電池1が停止から起動まで長時間(例えば、24時間)要することから、記憶部Rに記憶された停止予定日の少なくとも2日前に停止予定日を変更することとしている。図4図8に示す白塗星印が、予め記憶部Rに記憶されている停止予定日であり、図4図8に示す黒塗星印が、変更後の停止予定日である。本実施形態では、固体酸化物形燃料電池1の停止予定日を日単位で管理しているため、実際の停止日(変更後の停止予定日)の次の日には、受電点電力下げ指令(出力要請見込みの「増」)に応答することができる。
【0074】
(第一実施形態)
図4に示すように、運転制御部Cは、固体酸化物形燃料電池1の運転を所定期間停止させる停止予定日と、施設100の受電点電力を下げるために管理装置Gから出力制御指令される受電点電力下げ指令日(出力要請見込みの「増」)と、が一致したとき、停止予定日を受電点電力下げ指令日よりも前の日に変更する。この変更する前の日は、受電点電力下げ指令日ではなく、予め記憶部Rに記憶されている停止予定日と最も近い日であることが好ましい。このように、固体酸化物形燃料電池1の停止予定日と受電点電力下げ指令日とが一致した場合には、停止予定日を前倒ししているため、燃料計Yの漏洩判定を確実に回避しながら、受電点電力下げ指令に確実に応答することができる。よって、受電点電力下げ指令に対応可能な需要側リソースを確保して、受電点電力下げ指令に確実に応答することができる。
【0075】
つまり、需給調整市場では、確実に応答するVPPリソースが増えることで拠出できる調整力(ΔkW)が増えるため、事前に入札するΔkW量を増やすことができ、より大きな対価を得られる。卸電力市場では、市場価格が高騰している時に拠出できる逆潮電力量(kWh)が増えるため、売電による収入が増加する。容量市場では、発動指令時に受電点電力下げ指令に確実に応答できる電源が増え、より多くの発電量(kW)を確保できることで、発動指令電源として事前に入札できる量が増え、より大きな対価を得られる。以下同様であるため、作用効果の説明を省略する。
【0076】
(第二実施形態)
電力系統15の需給バランスを調整するために、受電点電力上げ指令(逆潮流を減少又は順潮流を増加させる指令)が出されることがあり、この場合には固体酸化物形燃料電池1から電力負荷部3に電力供給する光熱費メリットが小さくなる。そこで、図5に示すように、運転制御部Cは、固体酸化物形燃料電池1の運転を所定期間停止させる停止予定日よりも前の日に、施設100の受電点電力を上げるために管理装置Gから出力制御指令される受電点電力上げ指令日(出力要請見込みの「減」)が存在するとき、停止予定日を受電点電力上げ指令日に変更する。このように、固体酸化物形燃料電池1の停止予定日よりも前の日に受電点電力上げ指令日があれば、この受電点電力上げ指令日を停止予定日として変更することにより、停止予定日を前倒しして燃料計Yの漏洩判定を確実に回避すると共に、光熱費メリットを享受しながら受電点電力下げ指令に確実に応答することができる。よって、受電点電力下げ指令に対応可能な需要側リソースを確保して、受電点電力下げ要請に確実に応答することができる。
【0077】
なお、受電点電力上げ指令日に固体酸化物形燃料電池1を停止させたことにより、電力負荷部3の電力負荷を下げる余力がない場合(逆潮流電力を減少させることにより施設100の受電点電力がマイナス又はゼロに近い場合)は、固体酸化物形燃料電池1とは異なる電源装置(蓄電池等)から電力負荷部3に電力供給しても良い。一方、施設100に固体酸化物形燃料電池1とは異なる電源装置(蓄電池等)が装備されていない場合、運転制御部Cは、受電点電力上げ指令日が存在するとき、停止予定日を、施設100の受電点電力がプラスとなる受電点電力上げ指令日に変更する。
【0078】
(第二実施形態の変形例)
第二実施形態の変形例として、図6に示すように、運転制御部Cは、前回の停止予定日(日の「0」)から次回の停止予定日(日の「27」)までの間に、受電点電力上げ指令日(出力要請見込みの「減」)が複数ある場合、施設100の受電点電力を上げる電力量が最大となる受電点電力上げ指令日(日の「22」)を次回の停止予定日として変更しても良い。このように、施設100の受電点電力を上げる電力量が最大の日を停止予定日とすれば、固体酸化物形燃料電池1から電力負荷部3に電力供給する光熱費メリットが最も小さい日に固体酸化物形燃料電池1を停止することとなるため、系統需給安定化に寄与し、固体酸化物形燃料電池1を導入するコストメリットを最大限に高めることができる。
【0079】
(第二実施形態の変形例)
第二実施形態の変形例として、図7に示すように、運転制御部Cは、前回の停止予定日(日の「0」)から次回の停止予定日(日の「27」)までの間に、受電点電力上げ指令日(出力要請見込みの「減」)が複数ある場合、次回の停止予定日から最も近い受電点電力上げ指令日(日の「25」)を次回の停止予定日として変更しても良い。こののように、次回の停止予定日から最も近い受電点電力上げ指令日を次回の停止予定日として変更すれば、固体酸化物形燃料電池1の停止間隔を大きくすることが可能となるため、固体酸化物形燃料電池1を最大限運転させて、導入メリットを高めることができる。
【0080】
(第二実施形態の変形例)
調整力が要求されるときに、増減可能な固体酸化物形燃料電池1が多い方が好ましい。そこで、第二実施形態の変形例として、図8に示すように、運転制御部Cは、前回の停止予定日(日の「0」)から次回の停止予定日(日の「27」)までの間に、受電点電力上げ指令日(出力要請見込みの「減」)が複数(日の「21」又は「22」又は「25」)ある場合、前回の停止予定日(日の「0」)から1の受電点電力上げ指令日の前日(日の「20」又は「21」又は「24」)までにおいて、他の受電点電力上げ指令日に施設100の受電点電力を上げる電力量の絶対値と、受電点電力下げ指令日に施設100の受電点電力を下げる電力量の絶対値と、の合計を、前回の停止予定日から1の受電点電力上げ指令日の前日までの日数(21又は22又は25)で除した日平均値(0.3kwh/日又は0.32kwh/日又は0.29kwh/日)が最大となる1の受電点電力上げ指令日(日の「22」)を次回の停止予定日として変更しても良い。このように、前日までに受電点電力を上下させる電力量の日平均値が最大となる受電点電力上げ指令日を、次回の停止予定日として変更すれば、調整力が要求されるときに、増減可能な固体酸化物形燃料電池1の期待値が高まるので、系統需給安定化に寄与し、受電点電力下げ指令により確実に応答することができる。
【0081】
[その他の実施形態]
<1>上述した実施形態では、燃料電池装置Xが固体酸化物形燃料電池1を備えたが、燃料電池装置Xが、固体高分子形燃料電池(PEFC)、リン酸形燃料電池(PAFC)又は溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)を備えても良い。
【0082】
<2>上述した実施形態では、燃料電池装置Xの停止予定期間を24時間とし、受電点電力上げ指令日や受電点電力上げ指令日を1日単位で予測したが、例えば、燃料電池装置Xの停止予定期間を12時間として、受電点電力上げ指令日や受電点電力上げ指令日を半日単位又は数時間単位で予測しても良い。この場合、上述した「停止予定日」を「停止予定期間」と読み替え、「受電点電力下げ指令日」又は「受電点電力上げ指令日」を「受電点電力下げ指令期間」又は「受電点電力下げ指令期間」と読み替え、「日平均値」を「時間平均値」と読み替えて適用することができる。
【0083】
本実施形態において、運転制御部Cは、燃料電池装置Xの運転を所定期間停止させる停止予定期間と、施設100の受電点電力を下げるために管理装置Gから出力制御指令される受電点電力下げ指令期間と、が重複したとき、受電点電力下げ開始時刻よりも前に停止予定期間を変更する。
【0084】
また、本実施形態において、運転制御部Cは、燃料電池装置Xの運転の停止を開始する停止予定開始時刻よりも前に、施設100の受電点電力を上げるために管理装置Gから出力制御指令される受電点電力上げ指令期間が存在するとき、燃料電池装置Xの運転を所定期間停止させる停止予定期間が受電点電力上げ指令期間と重複するように変更する。この場合、「停止予定期間」と「受電点電力上げ指令時間」との重複時間が最大となるように、「停止予定期間」を変更することが好ましい。
【0085】
変形例として、運転制御部Cは、前回の停止予定期間から次回の停止予定期間までの間に、受電点電力上げ指令期間が複数ある場合、受電点電力を上げる電力量が最大となる受電点電力上げ指令期間と重複するように次回の停止予定期間を変更しても良い。他の変形例として、運転制御部Cは、前回の停止予定期間から次回の停止予定期間までの間に、受電点電力上げ指令期間が複数ある場合、次回の停止予定期間から最も近い受電点電力上げ指令期間と重複するように次回の停止予定期間を変更しても良い。他の変形例として、運転制御部Cは、前回の停止予定期間から次回の停止予定期間までの間に、受電点電力上げ指令期間が複数ある場合、前回の停止予定期間から1の受電点電力上げ指令期間の前までにおいて、他の受電点電力上げ指令期間に受電点電力を上げる電力量の絶対値と、受電点電力下げ指令期間において受電点電力を下げる電力量の絶対値と、の合計を、前回の停止予定期間から1の受電点電力上げ指令期間の前までの時間で除した時間平均値が最大となる1の受電点電力上げ指令期間と重複するように次回の停止予定期間を変更しても良い。
【0086】
<3>上述した実施形態では、燃料計Yの漏洩判定を回避するために、燃料電池装置Xの停止日や停止予定期間を変更したが、燃料電池装置Xの停止日や停止予定期間の変更理由は特に限定されない。例えば、ガスや電気の使用実績が長時間無い等の場合、光熱費メリットを考慮して燃料電池装置Xの停止日や停止予定期間が予定されていることがある。つまり、停止日や停止予定期間は、燃料電池装置Xの運転を所定期間停止させることが予定されているものであれば、どの様な形態であっても良い。
【0087】
<4>上記実施形態では、具体的な数値を挙げて燃料電池システム及び燃料電池制御システムで行われる制御例について説明したが、それらの数値は例示目的で記載したものであり適宜変更可能である。例えば、燃料電池装置Xの停止時間が12時間として、受電点電力上げ指令日や受電点電力上げ指令日を半日単位又は数時間単位で予測し、
【0088】
なお、上述した実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能である。また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、電力系統に連系された燃料電池システム及び燃料電池制御システムに利用可能である。
【符号の説明】
【0090】
1 :固体酸化物形燃料電池
3 :電力負荷部
15 :電力系統
C :運転制御部
K :他の燃料消費機器
L1 :原燃料流路(燃料供給路)
L6 :原燃料流路(燃料供給路)
X :燃料電池装置
Y :燃料計(漏洩検知装置)
G :管理装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8