(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】水中杭の打設管理方法
(51)【国際特許分類】
E02D 7/16 20060101AFI20241213BHJP
E02D 13/04 20060101ALI20241213BHJP
【FI】
E02D7/16
E02D13/04
(21)【出願番号】P 2021064800
(22)【出願日】2021-04-06
【審査請求日】2024-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】重松 映輝
(72)【発明者】
【氏名】大原 貴之
(72)【発明者】
【氏名】請川 誠
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-134054(JP,A)
【文献】特開2012-184623(JP,A)
【文献】特開2002-294704(JP,A)
【文献】特開平01-131722(JP,A)
【文献】特開平09-310352(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 7/00-13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水上に設けた杭打ち装置によって水底に向けて鋼管杭を打設する際の打設管理方法であって、
平面視で井桁状に組み立てられた鋼材によって構成されるとともに、杭打設位置に
鋼管杭の直径Dに杭打設の出来高管理基準値Lを2倍した数値を加算した寸法(D+2L)を内径とする鋼管によって構成された断面円形のガイド鋼管が夫々設けられた杭の位置決め用テンプレートを水底に沈設する第1手順と、
前記杭打ち装置を所定の杭打ち箇所に位置決めするとともに、鋼管杭をセットする第2手順と、
前記鋼管杭と前記位置決め用テンプレートのガイド鋼管とを電源及び接触警告手段を中間に介して電気的に接続する第3手順と、
前記接触警告手段による警告を監視しながら、前記鋼管杭を前記ガイド鋼管に接触しないように打設を行う第4手順とからなる水中杭の打設管理方法。
【請求項2】
前記接触警告手段は、ランプ及び/又はブザーとする請求項
1記載の水中杭の打設管理方法。
【請求項3】
前記鋼管杭と前記ガイド鋼管とが可視可能な水中カメラを設置し、打設状況を監視する請求項1
、2いずれかに記載の水中杭の打設管理方法。
【請求項4】
水上に、鋼管杭の溶接用足場と鋼管杭の位置決めとを兼ねた導枠設備を設ける請求項1~
3いずれかに記載の水中杭の打設管理方法。
【請求項5】
前記杭打ち装置は、クレーンにより吊り下げたバイブロハンマとする請求項1~
4いずれかに記載の水中杭の打設管理方法。
【請求項6】
前記位置決め用テンプレートは分割構造とされ、各分割位置決め用テンプレートが順に水底に沈設され連結される構造とされ、
先行して沈設される分割位置決め用テンプレートは、連結方向部材が下部側に配設され、それと直交する部材が上部側に配置された井桁構造を成し、
後行して沈設される分割位置決め用テンプレートは、連結方向部材が上部側に配置され、それと直交する部材が下部側に配置された井桁構造を成し、
前記先行して沈設される分割位置決め用テンプレートの下部側に配置された連結方向部材と、後行して沈設される分割位置決め用テンプレートの上部側に配置された連結方向部材とを上下に重ねて直接的にボルト連結するようにしてある請求項1~
5いずれかに記載の水中杭の打設管理方法。
【請求項7】
前記先行して沈設される分割位置決め用テンプレートの連結部位には、上部から重ねて設置される前記後行して沈設される分割位置決め用テンプレートのためのガイド部材が設けられている請求項
6記載の水中杭の打設管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海底や川底、湖底などの水底に水中杭を打設するに当たって、該水中杭を精度良く打設するための打設管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えばケーソンや水門構造物などの水中構造物を水底に固定し安定的に支持するために、水底に予め水中杭を多数打設し、これらの水中杭に対して前記水中構造物を一体的に固定するようにしている。
【0003】
従来より水底に水中杭を精度良く打設するために、幾つかの方法が考えられている。例えば、下記特許文献1では、台船に搭載された旋回式クレーンの旋回部前部に起伏ブームを装着し、該旋回部に巻上機を設け、該巻上機の吊ワイヤに前記起伏ブームを介して打撃装置を吊り下げ、該打撃装置に杭を装着すると共に、前記旋回式クレーンの旋回部前部に伸縮可能な伸縮ブームの一端を起伏可能に枢着すると共に、該伸縮ブームに起伏装置を接続し、前記杭を着脱可能に掴み保持する掴み装置を該伸縮ブームの他端に設け、該掴み装置は、前記伸縮ブームの他端に起伏可能に設けられた揺動部材と、該揺動部材に装着された掴みアームとからなる杭打装置が開示されている。
【0004】
下記特許文献2では、杭打作業船と、この杭打作業船に水平面内で回転自在に配設されて杭を吊りさげて海中に打設する杭打部材を備えるクレーンと、このクレーンに吊り下げられた杭の途中を保持して位置決めする位置決手段とを備える杭打装置が開示されている。
【0005】
これら特許文献1及び特許文献2に係る杭打装置の場合は、水上部分に杭の位置決め装置を備えることにより、打設精度の向上を図るようにしているものである。しかしながら、水上に出ている杭部分の位置決めだけでは、水上部では精度を確保することが出来ても、海底部では杭の打設精度を確保することが出来なかった。具体的には、
図17に示されるように、クレーン台船53のクレーンによってバイブロハンマ50を吊り下げて、水中杭51の位置決めをトータルステーション52などの測量機器によって管理した場合であっても、水上部分で水中杭51に僅かな傾斜θがあった場合でも、水底では(水深Lb+水上杭長さLa)×tanθ分の誤差S1が生じる計算になる。仮に傾斜角θが1.6°で水深Lbが10m、水上杭長さLaが3mの場合、水底では363mmもの誤差S1が生じることになる。
【0006】
そこで、水中杭打設での精度向上を図るために、水底に杭打設に際しての位置決めを行うためのテンプレート部材を沈設し、杭の打設精度を上げるようにした発明が提案されている。
【0007】
例えば、下記特許文献3では、 海底地盤に打設した複数の基礎杭上にケーソンを据え付けて固定するに際し、基礎杭の打設前に予め沈設しておくことによって、それら基礎杭打設の定規及びケーソン沈設時の受け皿としての機能を持たせるために用いる、ケーソン据え付け用テンプレート装置であって、平面ほぼ格子状の枠組み鋼構造物からなるテンプレート本体を備え、そのテンプレート本体の格子状の各升目部分に、前記基礎杭を上下に貫通させるための杭挿入部が形成されているケーソン据え付け用テンプレート装置が開示されている。
【0008】
また、下記特許文献4では、水底地盤に打設される杭の杭芯位置決め部材であって、平板状に形成されたコンクリート造のテンプレート本体部を有し、前記テンプレート本体部には、前記杭を位置決めするためのガイド管が設けられている杭芯位置決め部材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】実開平4-30185号公報
【文献】特開平7-259093号公報
【文献】特開平9-310352号公報
【文献】特開2014-134054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前記特許文献3、4では、水底に沈設したテンプレート装置や杭芯位置決め部材によって、杭の位置決めが容易に成されるようになるが、杭がテンプレート装置の杭挿入部やガイド管に接触しながら打設された場合には、テンプレート装置や杭芯位置決め部材が杭から横方向力を受けて水平方向に位置ずれすることが考えられるとともに、仮に位置ずれしない場合でも、多数の杭が杭挿入部やガイド管に接触しながらかつ傾斜して打設されていると、すべての杭打設が完了した後に、テンプレート装置や杭芯位置決め部材が上方向に抜けなくなるおそれがあった。
【0011】
また、水底に沈設するテンプレート装置が、大掛かりな構造体となる場合は、分割構造として水中で連結することになるが、その際の連結作業が手間の掛かる作業となっているなどの問題もあった。
【0012】
そこで本発明の第1の課題は、水底に杭の位置決め用テンプレートを沈設して水中杭の打設を行うに当たり、位置決め用テンプレートに設けたガイド鋼管と杭とが接触するのを防止しながら杭打設を行うようにすることで、位置決め用テンプレートの位置ずれを無くすとともに、杭打設の完了後に容易に撤去可能とすることにある。
【0013】
第2の課題は、分割された位置決め用のテンプレートを水中連結する際の作業性を効率化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、水上に設けた杭打ち装置によって水底に向けて鋼管杭を打設する際の打設管理方法であって、
平面視で井桁状に組み立てられた鋼材によって構成されるとともに、杭打設位置に鋼管杭の直径Dに杭打設の出来高管理基準値Lを2倍した数値を加算した寸法(D+2L)を内径とする鋼管によって構成された断面円形のガイド鋼管が夫々設けられた杭の位置決め用テンプレートを水底に沈設する第1手順と、
前記杭打ち装置を所定の杭打ち箇所に位置決めするとともに、鋼管杭をセットする第2手順と、
前記鋼管杭と前記位置決め用テンプレートのガイド鋼管とを電源及び接触警告手段を中間に介して電気的に接続する第3手順と、
前記接触警告手段による警告を監視しながら、前記鋼管杭を前記ガイド鋼管に接触しないように打設を行う第4手順とからなる水中杭の打設管理方法が提供される。
【0015】
上記請求項1記載の発明では、平面視で井桁状に組み立てられた鋼材によって構成されるとともに、杭打設位置に断面円形のガイド鋼管が夫々設けられた杭の位置決め用テンプレートを水底に沈設する第1手順と、杭打ち装置を所定の杭打ち箇所に位置決めするとともに、鋼管杭をセットする第2手順とを備える。ここまでは通常の手順であるが、本発明では特に、前記鋼管杭と前記位置決め用テンプレートのガイド鋼管とを電源及び接触警告手段を中間に介して電気的に接続する第3手順を有する。従って、前記接触警告手段による警告を監視しながら、前記鋼管杭を前記ガイド鋼管に接触しないように打設を行うことにより、位置決め用テンプレートの位置ずれを無くすとともに、杭打設の完了後に容易に撤去可能とすることが可能になる。
【0016】
なお、前記ガイド鋼管の内径は、水中杭の直径Dに杭打設の出来高管理基準値Lを2倍した数値を加算した寸法(D+2L)とすることが望ましい。
【0017】
請求項2に係る本発明として、前記接触警告手段は、ランプ及び/又はブザーとする請求項1記載の水中杭の打設管理方法が提供される。
【0018】
上記請求項2記載の発明では、前記接触警告手段を具体的に規定したものである。具体的には、前記接触警告手段としては、ランプ及び/又はブザーを好適に用いることができる。
【0019】
請求項3に係る本発明として、前記鋼管杭と前記ガイド鋼管とが可視可能な水中カメラを設置し、打設状況を監視する請求項1、2いずれかに記載の水中杭の打設管理方法が提供される。
【0020】
上記請求項3記載の発明では、前記鋼管杭と前記ガイド鋼管とが可視可能な水中カメラを設置し、打設状況を監視するようにしたものである。前記鋼管杭を前記ガイド鋼管の内部、好ましくはその中心位置に位置決めされているか水中カメラで監視することにより鋼管杭の位置決めを容易に行い得るようになる。
【0021】
請求項4に係る本発明として、水上に、鋼管杭の溶接用足場と鋼管杭の位置決めとを兼ねた導枠設備を設ける請求項1~3いずれかに記載の水中杭の打設管理方法が提供される。
【0022】
上記請求項4記載の発明では、水上に、鋼管杭の溶接用足場と鋼管杭の位置決めとを兼ねた導枠設備を設けるようにしたものである。
【0023】
請求項5に係る本発明として、前記杭打ち装置は、クレーンにより吊り下げたバイブロハンマとする請求項1~4いずれかに記載の水中杭の打設管理方法が提供される。
【0024】
上記請求項5記載の発明では、前記杭打ち装置を具体的に規定したものである。具体的には、杭打ち装置としては、クレーンにより吊り下げたバイブロハンマを用いることができる。
【0025】
請求項6に係る本発明として、前記位置決め用テンプレートは分割構造とされ、各分割位置決め用テンプレートが順に水底に沈設され連結される構造とされ、
先行して沈設される分割位置決め用テンプレートは、連結方向部材が下部側に配設され、それと直交する部材が上部側に配置された井桁構造を成し、
後行して沈設される分割位置決め用テンプレートは、連結方向部材が上部側に配置され、それと直交する部材が下部側に配置された井桁構造を成し、
前記先行して沈設される分割位置決め用テンプレートの下部側に配置された連結方向部材と、後行して沈設される分割位置決め用テンプレートの上部側に配置された連結方向部材とを上下に重ねて直接的にボルト連結するようにしてある請求項1~5いずれかに記載の水中杭の打設管理方法が提供される。
【0026】
上記請求項6記載の発明では、位置決め用テンプレートを分割構造した場合に、分割された位置決め用のテンプレートを水中連結する際の作業性を効率化するための手法を挙げたものである。すなわち、添接板の使用を省略することで省力化を可能にするものであり、先行して沈設される分割位置決め用テンプレートは、連結方向部材が下部側に配設され、それと直交する部材が上部側に配置された井桁構造とし、後行して沈設される分割位置決め用テンプレートは、連結方向部材が上部側に配置され、それと直交する部材が下部側に配置された井桁構造とし、先行して沈設される分割位置決め用テンプレートの下部側に配置された連結方向部材と、後行して沈設される分割位置決め用テンプレートの上部側に配置された連結方向部材とを上下に重ねて直接的にボルト連結するものである。添接板の取扱いの手間が無くなる分、省力化に資することが可能になる。
【0027】
請求項7に係る本発明として、前記先行して沈設される分割位置決め用テンプレートの連結部位には、上部から重ねて設置される前記後行して沈設される分割位置決め用テンプレートのためのガイド部材が設けられている請求項6記載の水中杭の打設管理方法が提供される。
【0028】
上記請求項7記載の本発明では、先行して沈設される分割位置決め用テンプレートの連結部位には、上部から重ねて設置される前記後行して沈設される分割位置決め用テンプレートのためのガイド部材を設けるようにすることで、連結作業の省力化を図ることが可能になる。
【発明の効果】
【0029】
以上詳説のとおり本発明によれば、水底に杭の位置決め用テンプレートを沈設して水中杭の打設を行うに当たり、位置決め用テンプレートに設けたガイド鋼管と鋼管杭とが接触するのを防止しながら杭打設を行うようにすることで、位置決め用テンプレートの位置ずれを無くすとともに、杭打設完了後に容易に撤去可能とすることが可能になる。
【0030】
また、分割された位置決め用のテンプレートを水中連結する際の作業性を効率化できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】水中構造物(水門)30の施工手順図(その1)である。
【
図2】水中構造物(水門)30の施工手順図(その2)である。
【
図3】水中構造物(水門)30の施工手順図(その3)である。
【
図4】水中構造物(水門)30の施工手順図(その4)である。
【
図5】水門プレキャスト構造体33の鋼管基礎連結部の拡大図である。
【
図6】本発明に係る水中杭の施工要領を示す図である。
【
図7】位置決め用テンプレート1の全体平面図である。
【
図8】位置決め用テンプレート1の分割状態図である。
【
図9】分割位置決め用テンプレート2、3の連結部を示す側面図である。
【
図10】ガイド鋼管13の配設部の要部拡大図である。
【
図11】水中杭の打設要領手順図(その1)である。
【
図12】水中杭の打設要領手順図(その2)である。
【
図13】水中杭の打設要領手順図(その3)である。
【
図14】水上導枠部材22の要部拡大平面図である。
【
図15】分割位置決め用テンプレート2、3の他の連結態様を示す側面図である。
【
図16】ガイド部材29、29の設置状態を示す横断面図である。
【
図17】従来の水中杭51の打設管理要領を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
〔水中構造物の構築〕
先ず、
図1~
図5に基づき、水中構造物(水門)30の施工手順について詳述する。
【0033】
図1に示されるように、水門30、堤防31などの水中構造物が構築される海底部分には、全体に捨石32が投入される。そして、捨石32の投入後に潜水士が潜り、潜水士船のオレンジバケットを用いて、捨石32の天端部凹凸面の均し作業を行う。均し作業を終えた状態が
図1の状態である。
【0034】
次いで、
図2に示されるように、水門30の規模に合わせて、杭打設領域の捨石32を撤去し均した後、この領域に多数の水中杭8、8…を打設する。これら水中杭8の打設管理が本発明の対象である。
【0035】
図3に示されるように、水中杭8、8…を捨石32の天端面(構造物設置基準面)より所定長さだけ突出させるために、各水中杭8、8…を酸素アーク熔断又は酸素ランス熔断などの方法によって水中にて切断する。この切断作業はすべて熟練した潜水士によって行われる。
【0036】
次に、
図4に示されるように、岸壁などの作業ヤードで構築されたプレキャスト水門構造体33を海上輸送した後、所定の設置場所にゆっくりと沈設する。プレキャスト水門構造体33の底面には、
図5に示されるように、杭位置に対応した部位に嵌合凹部34aが形成されており、すべての水中杭8、8…の頭部を各嵌合凹部33aに嵌合させるようにしながら沈設する。
【0037】
前記嵌合凹部33aの直径は、水中杭8の直径(外径)Dに両側の間隙2Lを加えた寸法となる。ここで、Lが杭打設の出来高管理基準値である。
【0038】
そして、水中杭8の頭部と、嵌合凹部33aとの間隙部分に水中コンクリート34を打設して作業を完了する。また、前記水門30の両側にはそれぞれ重力式の堤防31、31が構築される。
〔水中杭の打設管理〕
本発明は、
図6に示されるように、水上に設けた杭打ち装置5によって水底に向けて鋼管杭8を打設する際の打設管理方法であって、平面視で井桁状に組み立てられた鋼材によって構成されるとともに、杭打設位置に断面円形のガイド鋼管13が設けられた杭の位置決め用テンプレート1を水底に沈設する第1手順と、前記杭打ち装置5を所定の杭打ち箇所に位置決めするとともに、鋼管杭8をセットする第2手順と、前記鋼管杭8と前記位置決め用テンプレート1のガイド鋼管13とを電源26及び接触警告手段27を間に介して電気的に接続する第3手順と、前記接触警告手段27による警告を監視しながら、前記鋼管杭8を前記ガイド鋼管13に接触しないように打設を行う第4手順とからなるものである。
【0039】
以下、図面に基づいて更に詳述する。
【0040】
<第1手順>
先ず、第1手順では、平面視で井桁状に組み立てられた鋼材によって構成されるとともに、杭打設位置に断面円形のガイド鋼管13が夫々設けられた位置決め用テンプレート1を水底に沈設する。
【0041】
前記位置決め用テンプレート1は、
図7に示されるように、平面視で鋼材を井桁状に組み立てることによって構成された装置である。構成部材である鋼材としては、H形鋼が用いられているが、これに限らず溝型鋼、I形鋼や角型鋼管などを用いて構成することができる。
【0042】
図示された位置決め用テンプレート1は比較的大規模な構造体であるため、分割構造とされ、各分割位置決め用テンプレート2~4が順に水底に沈設され連結される構造となっている。具体的には、
図8に示されるように、前記位置決め用テンプレート1は、X方向に3分割された構造となっている。
【0043】
左端側の分割位置決め用テンプレート2は、X方向の各端部位置に、Y方向に沿って2本の脚部材10、10が配設される。これら脚部材10、10に跨がってその上面側に、複数本の1次部材11、11…(本発明の「連結方向部材」)がX方向に沿うとともに、Y方向に間隔を空けて配置されている。前記1次部材11、11…は杭打設位置を跨ぐように2本一組で配置されている。そして、前記1次部材11、11…の上面側に、複数本の2次部材12、12…(本発明の「連結方向部材と直交する部材」)がY方向に沿うとともに、X方向(連結方向)に間隔を空けて配置されている。これら2次部材12、12…は、杭打設位置を跨ぐように2本一組で配置されている。
【0044】
前記2本一組の1次部材11、11と、前記2本一組の2次部材12、12とによって囲まれた矩形状の空間が杭打設位置となっており、この空間内に断面円形のガイド鋼管13が夫々設けられている。左端側の分割位置決め用テンプレート2では、前記ガイド鋼管13は5個×4列で計20個設けられている。
【0045】
前記ガイド鋼管13は、
図10に示されるように、1次部材11及び2次部材12との間に設けられた支持部材9、9…によって支持されている。前記ガイド鋼管13としては、水中杭8の直径Dに杭打設の出来高管理基準値Lを2倍した数値を加算した寸法(D+2L)を内径とする鋼管が用いられている。前記出来高管理基準値Lが、杭打設に当たって水中杭8が水平方向に偏心して良い許容量となる。なお、前記支持部材9は
図7及び
図8では省略されている。
【0046】
中央の分割位置決め用テンプレート3も同様に、X方向の各端部位置に、Y方向に沿って配置された2本の脚部材10、10に跨がってその上面側に、複数本の1次部材11、11…がX方向(連結方向)に沿うとともに、Y方向に間隔を空けて配置されている。前記1次部材11、11…は杭打設位置を跨ぐように2本一組で配置されている。そして、前記1次部材11、11…の上面側に、複数本の2次部材12、12…がY方向に沿うとともに、X方向(連結方向)に間隔を空けて配置されている。これら2次部材12、12…は、杭打設位置を跨ぐように2本一組で配置されている。前記2本一組の1次部材11、11と、前記2本一組の2次部材12、12とによって囲まれた矩形状の空間が杭打設位置となっており、この空間内に、断面円形のガイド鋼管13が夫々設けられている。中央の分割位置決め用テンプレート3では、前記ガイド鋼管13は4個×4列で計16個設けられている。
【0047】
右端側の分割位置決め用テンプレート4も同様に、X方向の各端部位置に、Y方向に沿って配置された2本の脚部材10、10の間に跨がってその上面側に、複数本の1次部材11、11…がX方向(連結方向)に沿うとともに、Y方向に間隔を空けて配置されている。前記1次部材11、11…は杭打設位置を跨ぐように2本一組で配置されている。そして、前記1次部材11、11…の上面側に、複数本の2次部材12、12…がY方向に沿うとともに、X方向(連結方向)に間隔を空けて配置されている。これら2次部材12、12…は、杭打設位置を跨ぐように2本一組で配置されている。前記2本一組の1次部材11、11と、前記2本一組の2次部材12、12とによって囲まれた矩形状の空間が杭打設位置となっており、この空間内に、断面円形のガイド鋼管13が夫々設けられている。右端側の分割位置決め用テンプレート4では、前記ガイド鋼管13は5個×4列で計20個設けられている。
【0048】
前記分割位置決め用テンプレート2~4同士の連結は、
図9に示されるように、脚部材10、10同士を隣接して平行配置となるように並設すると、1次部材11、11同士が突き合わされることになる。これら1次部材11、11の上フランジにおいて、上下面にそれぞれ添接板14、15を掛け渡し、これら部材をボルト・ナット16、16…で締結している。また、1次部材11、11のウエブでは、両面に添接板17を配置し、これら部材をボルト・ネット16、16…で締結している。さらに、下フランジにおいては、下フランジと脚部材10の上フランジとをボルト・ナット16、16…で締結している。
【0049】
図7に示されるように、左端側の分割位置決め用テンプレート2のX方向左端部に、Y方向に間隔を空けて3箇所に土台となる基礎部18が設けられ、その上に前記脚部材10が設置される。また、左端側の分割位置決め用テンプレート2と中央の分割位置決め用テンプレート3との連結部に、Y方向に間隔を空けて3箇所に土台となる基礎部18が設けられ、その上に前記脚部材10、10が隣接して設置されるとともに、中央の分割位置決め用テンプレート3と右端側の分割位置決め用テンプレート4との連結部に、Y方向に間隔を空けて3箇所に土台となる基礎部18が設けられ、その上に前記脚部材10、10が隣接して設置される。更に、右端側の分割位置決め用テンプレート4のX方向右端部に、Y方向に間隔を空けて3箇所に土台となる基礎部18が設けられ、その上に前記脚部材10が設置される。
【0050】
これら各分割位置決め用テンプレート2~4の沈設、そして連結に当たっては、水中で芯出し測量を行い、正確に精度良く設置することが重要である。
【0051】
沈設施工は、
図11及び
図12に示されるように、クレーン船20のクレーン設備21によって、各分割位置決め用テンプレート2~4を順に沈設し、これらを水中で連結する。分割位置決め用テンプレート2~4の連結作業は、潜水士によって行われる。
【0052】
次いで、鋼管杭8の打設に先立って、
図13に示されるように、水上に、鋼管杭の溶接用足場と鋼管杭の位置決めとを兼ねた導枠設備22を設けるようにする。導枠設備22は、
図14にも示されるように、複数本の鋼管杭8の打設箇所を囲む4箇所にH鋼杭23をバイブロハンマ5によって打設した後、H鋼杭23、23に対して縦横架部材24、24を掛け渡すとともに、縦横架部材24、24間に亘って、長尺の横横架部材25、25を掛け渡すことによって構成されている。この導枠設備22は、複数本の鋼管杭8を1グループとして設置することを順に繰り返すようにする。この際、鋼管杭8の打設位置に合わせてガイドとなる杭の位置決め用部材を前記横横架部材25、25に架け渡しておくことで、杭の打設位置を設定しておくことも可能である。
【0053】
<第2手順>
ここまでの準備工が完了したならば、第2手順では、
図13に示されるように、前記杭打ち装置5(バイブロハンマ)を所定の杭打ち箇所に位置決めするとともに、これに鋼管杭8をセットする。具体的には、クレーン設備21によって、本発明の「杭打ち装置」となるバイブロハンマ5を吊持すると同時に、バイブロハンマ5に対して鋼管杭8を鉛直状態でセットする。
【0054】
前記バイブロハンマ5の杭打ち箇所への位置決めは、GNSS(GPS/GLONASS)を用いて杭芯の位置情報を計測し、杭打ち装置を打設位置まで誘導する既存の杭打設管理システムを用いて行うのが望ましい。この杭打設管理システムは、商品名「パイルナビ-V」として市場に提供されているものである。その概要は、特開2014-48635公報に記載されている。具体的には、GNSSによって求まる位置情報をもとに形鋼からなる杭を打設する鋼材の打設方法であって、前記杭の頭部を把持する打設装置のチャッキング部に、GNSS受信機を2個間隔をおいて設け、前記2個のGNSS受信機の3次元座標系のリアルタイムの位置情報の差分から前記杭の3次元座標系における位置に加え、前記杭の長手方向の軸を中心とする回転方向の向きをリアルタイムで求め、モニター上に表示した前記杭の設計位置および向きの画像に、リアルタイムで求まる前記杭の現在位置および向きの画像を重ね合わせ、前記モニター上の画像をもとに打設装置のオペレータが前記杭を設計位置に誘導するというシステムである。詳細については同公報に譲るものとする。
【0055】
上記杭打設管理システムとともに、台船上又は地上に設置されたトータルステーション(測量機器)7によって鋼管杭8の傾斜を測量することが望ましい。
【0056】
<第3手順>
次に第3手順では、
図6に示されるように、前記鋼管杭8と前記位置決め用テンプレート1のガイド鋼管13とを電源26及び接触警告手段27を中間に介して電気的に接続するようにする。
【0057】
つまり、中間に電源26と接触警告手段27を介して、電気ケーブル28の一端を鋼管杭8に接続し、他端をガイド鋼管13に接続して、仮に鋼管杭8がガイド鋼管13に接触した場合には電気が流れ、前記接触警告手段27が作動することによりこれらが接触したことをオペレーターに知らせるようにする。前記接触警告手段27としては、例えばランプ及び/又はブザーとすることができる。
【0058】
<第4手順>
第4手順では、前記接触警告手段27による警告を監視しながら、前記鋼管杭8を前記ガイド鋼管13に接触しないように打設を行うようにする。
【0059】
鋼管杭8をガイド鋼管13に接触させないようにすることで、前記位置決め用テンプレート1が鋼管杭1から横方向力を受けて水平方向に位置ずれするのを防止できるようになる。また、すべての鋼管杭8がガイド鋼管13に接触せずに余裕を持って打設されることで、鋼管杭8の打設が完了した後に、前記位置決め用テンプレート1を上方向に引き上げて撤去することが可能になる。
【0060】
前記鋼管杭8の位置決めに当たっては、前記鋼管杭8と前記ガイド鋼管13とが可視可能な水中カメラ(図示せず)を設置し、打設状況を監視するのが望ましい。前記鋼管杭8を前記ガイド鋼管13の内部、好ましくはその中心位置に位置決めされているか水中カメラで監視することにより鋼管杭8の位置決めを容易に行い得るようになる。
【0061】
〔他の形態例〕
(1)上記形態例では、分割位置決め用テンプレート2~4同士の連結に際して、添接板14、15、17を用いて連結を行うようにしたが、これらの添接板を省略して、前記分割位置決め用テンプレート2~4同士を直接的に連結するようにしてもよい。この場合は、分割位置決め用テンプレート2~4の連結作業を効率化することが可能になる。この連結方法について、以下に詳述する。
【0062】
先ず、分割位置決め用テンプレート2~4の沈設順序は、最初に中央の分割位置決め用テンプレート3を最初に沈設して、その後に左側の分割位置決め用テンプレート2と右側の分割位置決め用テンプレート4を沈設する手順とするのが望ましい。この場合、前記中央の分割位置決め用テンプレート3が「先行して沈設される分割位置決め用テンプレート」となり、前記左側の分割位置決め用テンプレート2と右側の分割位置決め用テンプレート4とが「後行して沈設される分割位置決め用テンプレート」となる。
【0063】
1次部材11と2次部材12との上下配置関係に関して、先行沈設される前記中央の分割位置決め用テンプレート3は、
図15に示されるように、X方向(連結方向)に沿う1次部材11(連結方向部材)が下部側に配置され、それと直交する2次部材12が上部側に配置された井桁構造を成している。
【0064】
一方、後行沈設される前記左側の分割位置決め用テンプレート2(及び右側の分割位置決め用テンプレート4)は、同
図15に示されるように、X方向(連結方向)に沿う2次部材12(連結方向部材)が上部側に配置され、それと直交する1次部材11が下部側に配置された井桁構造を成している。
【0065】
そして、先行沈設される分割位置決め用テンプレート3の下部側に配置された連結方向の部材(1次部材11)と、後行沈設される分割位置決め用テンプレート2の上部側に配置された連結方向の部材(2次部材12)とを上下に重ねて直接的にボルト連結するようにする。
【0066】
この際、後行沈設される分割位置決め用テンプレート2を精度良く位置決めするために、先行沈設される分割位置決め用テンプレート3の連結部位に、平面視でX方向位置の規制のためのガイド部材30と、Y方向位置の規制のためのガイド部材29、29を設けておくようにするのが望ましい。特に、前記Y方向位置の規制のためのガイド部材29、29については、
図16に示されるように、それぞれ上方向に行くに従って外側に向かって傾斜するように取り付けることで、後行沈設する分割位置決め用テンプレート2の落し込み作業と位置決めを容易化することができる。
【0067】
(2)上記形態例では、杭打ち装置として、クレーンにより吊り下げたバイブロハンマを用いたが、一般的な三点式杭打機を用いた杭打設に対しても、本発明の管理方法を適用し得ることは可能である。
【符号の説明】
【0068】
1…位置決め用テンプレート、2~4…分割位置決め用テンプレート、5…杭打ち装置(バイブロハンマ)、6…クレーン船、7…トータルステーション(測量機器)、8…鋼管杭、9…支持部材、10…脚部材、11…1次部材、12…2次部材、13…ガイド鋼管、18…基礎部、22…導枠設備