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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】強制給排気式燃焼装置
(51)【国際特許分類】
   F23N 5/24 20060101AFI20241213BHJP
   F23N 5/18 20060101ALI20241213BHJP
【FI】
F23N5/24 104
F23N5/18 101L
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021074618
(22)【出願日】2021-04-27
(65)【公開番号】P2022168924
(43)【公開日】2022-11-09
【審査請求日】2023-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】家田 陵平
(72)【発明者】
【氏名】戸田 卓也
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-304255(JP,A)
【文献】特開2000-186816(JP,A)
【文献】特開平09-089251(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23N 1/00 - 5/26
F24H 1/00 - 15/493
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風機の作動により、給気路を介してバーナに燃焼用空気を供給すると共に、該バーナの燃焼運転により生成される燃焼排ガスを排気路を介して排気する強制給排気式燃焼装置であって、
前記給気路又は前記排気路に設けられたオリフィスの上流側と下流側との間の差圧を検出する圧力センサと、
前記送風機の作動開始前の停止状態で前記圧力センサにより検出される圧力値の基準値である作動前圧力基準値を記憶保持する記憶部と、
前記送風機の作動中に、前記圧力センサにより検出された圧力値である作動中圧力検出値を取得し、該作動中圧力検出値と前記記憶保持された作動前圧力基準値との差である圧力変化量に応じて、又は該圧力変化量から推定される前記給気路もしくは前記排気路の閉塞度合いに応じて、又は、該圧力変化量から推定される前記給気路もしくは前記排気路の風量に応じて、前記バーナの運転制御を行う制御部と、
前記記憶部に記憶保持する前記作動前圧力基準値を更新する処理を実行する更新処理部とを備えており、
前記更新処理部は、前記送風機の作動開始前の停止状態で前記圧力センサにより検出された圧力値である作動前圧力検出値を取得して、該作動前圧力検出値が所定範囲に含まれるか否かを判断し、該作動前圧力検出値が該所定範囲に含まれない場合には、前記記憶部に記憶保持されている作動前圧力基準値を更新せず、該作動前圧力検出値が該所定範囲に含まれる場合には、前記記憶部に記憶保持されている作動前圧力基準値を少なくとも該作動前圧力検出値に応じて更新し、前記作動前圧力検出値が前記所定範囲に含まれるとき、該作動前圧力検出値を、前記所定範囲を新たに設定するための設定用圧力検出値として記憶するように構成されていると共に、前記送風機の作動開始前の停止状態で取得した作動前圧力検出値と比較する前記所定範囲を、過去に記憶した複数の前記設定用圧力検出値の平均値を中心とする範囲に設定するように構成されていることを特徴とする強制給排気式燃焼装置。
【請求項2】
請求項1記載の強制給排気式燃焼装置において、
前記更新処理部は、前記記憶部に記憶保持されている作動前圧力基準値を更新するとき、該作動前圧力基準値を、前記作動前圧力検出値に更新するように構成されていることを特徴とする強制給排気式燃焼装置。
【請求項3】
送風機の作動により、給気路を介してバーナに燃焼用空気を供給すると共に、該バーナの燃焼運転により生成される燃焼排ガスを排気路を介して排気する強制給排気式燃焼装置であって、
前記給気路又は前記排気路に設けられたオリフィスの上流側と下流側との間の差圧を検出する圧力センサと、
前記送風機の作動開始前の停止状態で前記圧力センサにより検出される圧力値の基準値である作動前圧力基準値を記憶保持する記憶部と、
前記送風機の作動中に、前記圧力センサにより検出された圧力値である作動中圧力検出値を取得し、該作動中圧力検出値と前記記憶保持された作動前圧力基準値との差である圧力変化量に応じて、又は該圧力変化量から推定される前記給気路もしくは前記排気路の閉塞度合いに応じて、又は、該圧力変化量から推定される前記給気路もしくは前記排気路の風量に応じて、前記バーナの運転制御を行う制御部と、
前記記憶部に記憶保持する前記作動前圧力基準値を更新する処理を実行する更新処理部とを備えており、
前記更新処理部は、前記送風機の作動開始前の停止状態で前記圧力センサにより検出された圧力値である作動前圧力検出値を取得して、該作動前圧力検出値が所定範囲に含まれるか否かを判断し、該作動前圧力検出値が該所定範囲に含まれない場合には、該所定範囲に含まれないという事象の発生が連続する回数をカウントし、当該カウントされた回数が所定回数に達した場合に、前記記憶部に記憶保持されている作動前圧力基準値を少なくとも該作動前圧力検出値に応じて更新し、前記カウントされた回数が前記所定回数に満たない場合には、前記記憶部に記憶保持されている作動前圧力基準値を更新しないように構成されていることを特徴とする強制給排気式燃焼装置。
【請求項4】
請求項記載の強制給排気式燃焼装置において、
前記更新処理部は、前記所定範囲を、前記記憶部に記憶保持されている作動前圧力基準値を中心とする範囲に設定するように構成されていることを特徴とする強制給排気式燃焼装置。
【請求項5】
請求項又は記載の強制給排気式燃焼装置において、
前記更新処理部は、前記作動前圧力検出値が所定範囲に含まれない場合に、該作動前圧力検出値を、前記作動前圧力基準値を更新するための更新用圧力検出値として記憶するように構成されていると共に、前記カウントされた回数が前記所定回数に達したことに応じて前記記憶部に記憶保持している作動前圧力基準値を更新するとき、該作動前圧力基準値を、前記所定回数のそれぞれにおいて記憶した前記作動前圧力検出値の平均値に更新するように構成されていることを特徴とする強制給排気式燃焼装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温風暖房機等の強制給排気式燃焼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
送風機の作動により、給気路を介してバーナに燃焼用空気を供給すると共に、バーナの燃焼運転により生成される燃焼排ガスを排気路を介して排気する強制給排気式燃焼装置では、例えば特許文献1に見られるように、給気路又は排気路に備えたオリフィスの上流側と下流側との間の差圧を圧力センサで検出すると共に、その差圧の検出値から、給気路又は排気路の閉塞度合いが高いと推定される場合に、バーナの燃焼運転を開始させず、あるいは、停止させるものが知られている。
【0003】
この場合、特許文献1に見られる技術では、送風機の作動開始前の差圧の検出値を作動前圧力値として記憶し、その後、送風機の作動中の差圧の検出値(作動中圧力値)の、作動前圧力値からの変化量を所定の閾値と比較し、該変化量が所定の閾値よりも小さくなった場合に給気路又は排気路の閉塞度合いが高いとみなして、バーナの燃焼運転を開始させず、あるいは、停止させるようにしている。
【0004】
また、例えば特許文献2には、燃焼用空気を供給する送風機による風量を、圧力センサにより構成された風量検出器により検出する技術に関し、送風機の停止状態での風量検出器の検出信号により風量検出器の校正を行う技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-304255号公報
【文献】特開平8-159464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、2に見られる技術は、送風機の作動停止状態で、圧力センサによる圧力検出箇所での風量がゼロ(無風状態)であるとみなし、送風機の作動中の圧力検出値の変化量(送風機の作動停止状態での圧力検出値からの相対的な圧力変化量)に基づいて、送風機の作動中の給気路もしくは排気路の閉塞度合いや、風量の適否を推定するものである。
【0007】
しかるに、送風機の作動停止状態であっても、給気路又は排気路に外風が作用することによって、圧力センサによる圧力検出箇所の風量がゼロになっていない場合もあり、このような場合には、送風機の作動停止状態での圧力センサの圧力検出値が、外風による風量の影響を含んでしまう。
【0008】
そして、このような場合には、送風機の作動停止状態での圧力センサの圧力検出値を基準として、送風機の作動中の圧力検出値の変化量(送風機の作動停止状態での圧力検出値からの変化量)に基づいて、給気路もしくは排気路の閉塞度合いや、風量の適否を検知しようとしても誤検知を生じる。例えば、給気路もしくは排気路の閉塞がさほど進行していないのに、閉塞度合いが高いと誤検知され、ひいては、バーナの燃焼運転が停止されてしまう等の不都合を生じる虞がある。
【0009】
本発明はかかる背景に鑑みてなされたものであり、給気路又は排気路の風量に応じた圧力を検出する圧力センサを備える強制給排気式燃焼装置において、給気路又は排気路の閉塞度合い、あるいは、風量に応じたバーナの適切な運転制御を高い信頼性で行うことができる強制給排気式燃焼装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の強制給排気式燃焼装置の第1の態様は、上記の目的を達成するために、
送風機の作動により、給気路を介してバーナに燃焼用空気を供給すると共に、該バーナの燃焼運転により生成される燃焼排ガスを排気路を介して排気する強制給排気式燃焼装置であって、
前記給気路又は前記排気路に設けられたオリフィスの上流側と下流側との間の差圧を検出する圧力センサと、
前記送風機の作動開始前の停止状態で前記圧力センサにより検出される圧力値の基準値である作動前圧力基準値を記憶保持する記憶部と、
前記送風機の作動中に、前記圧力センサにより検出された圧力値である作動中圧力検出値を取得し、該作動中圧力検出値と前記記憶保持された作動前圧力基準値との差である圧力変化量に応じて、又は該圧力変化量から推定される前記給気路もしくは前記排気路の閉塞度合いに応じて、又は、該圧力変化量から推定される前記給気路もしくは前記排気路の風量に応じて、前記バーナの運転制御を行う制御部と、
前記記憶部に記憶保持する前記作動前圧力基準値を更新する処理を実行する更新処理部とを備えており、
前記更新処理部は、前記送風機の作動開始前の停止状態で前記圧力センサにより検出された圧力値である作動前圧力検出値を取得して、該作動前圧力検出値が所定範囲に含まれるか否かを判断し、該作動前圧力検出値が該所定範囲に含まれない場合には、前記記憶部に記憶保持されている作動前圧力基準値を更新せず、該作動前圧力検出値が該所定範囲に含まれる場合には、前記記憶部に記憶保持されている作動前圧力基準値を少なくとも該作動前圧力検出値に応じて更新し、前記作動前圧力検出値が前記所定範囲に含まれるとき、該作動前圧力検出値を、前記所定範囲を新たに設定するための設定用圧力検出値として記憶するように構成されていると共に、前記送風機の作動開始前の停止状態で取得した作動前圧力検出値と比較する前記所定範囲を、過去に記憶した複数の前記設定用圧力検出値の平均値を中心とする範囲に設定するように構成されていることを特徴とする(第1発明)。
【0011】
かかる第1発明では、前記所定範囲を適切に設定しておくことによって、送風機の作動開始前の停止状態で、給気路及び排気路のうち、オリフィス周辺の通気路に外風に起因する気流が発生している状況では、前記作動前圧力検出値が所定範囲から逸脱し、該オリフィス周辺の通気路が無風状態になっている状況では、前記作動前圧力検出値が所定範囲内に含まれるようにすることができる。
【0012】
そして、作動前圧力検出値が所定範囲に含まれない場合(所定範囲から逸脱している場合)には、記憶部に記憶保持されている作動前圧力基準値が更新されないので、圧力センサが外風に起因する気流の影響を受けている状態での作動前圧力検出値を用いて、作動前圧力基準値を更新してしまうのを防止することが可能となる。
【0013】
また、作動前圧力検出値が所定範囲に含まれる場合には、作動前圧力基準値を少なくとも作動前圧力検出値に応じて更新するので、オリフィス周辺の通気路が無風状態になっている状況での作動前圧力検出値を反映させて、作動前圧力基準値を更新することが可能となる。
【0014】
ひいては、送風機の作動中における前記圧力変化量は、給気路又は排気路の閉塞度合いや、給気路又は排気路の風量に応じたものとして信頼性の高い指標値となる。従って、圧力変化量に応じて、又は該圧力変化量から推定される給気路もしくは排気路の閉塞度合いに応じて、又は、該圧力変化量から推定される給気路もしくは排気路の風量に応じて、バーナの運転制御を行うことで、給気路又は排気路の閉塞度合い、あるいは、風量に応じたバーナの適切な運転制御を高い信頼性で行うことが可能となる。また、これによれば、無風状態での圧力センサの出力の定常的なドリフト(初期状態からのオフセット)が生じても、その影響を適切に補償して、作動前圧力検出値と比較する所定範囲を適切に設定できる。ひいては、作動前圧力検出値が所定範囲に含まれるか否かが、オリフィス周辺の通気路が無風状態であるか否かを表すものとしての信頼性を高めることができる。
【0017】
上記第1発明では、前記更新処理部は、前記記憶部に記憶保持されている作動前圧力基準値を更新するとき、該作動前圧力基準値を、前記作動前圧力検出値に更新するように構成され得る(第発明)。
【0018】
これによれば、無風状態での圧力センサの出力のドリフトや、出力特性のばらつきの影響を適切に補償して、無風状態で圧力センサにより検出されるオリフィス前後差圧の値に相当するものとしての作動前圧力基準値を適切に設定できる。
【0019】
また、本発明の強制給排気式燃焼装置の第2の態様は、上記の目的を達成するために、
送風機の作動により、給気路を介してバーナに燃焼用空気を供給すると共に、該バーナの燃焼運転により生成される燃焼排ガスを排気路を介して排気する強制給排気式燃焼装置であって、
前記給気路又は前記排気路に設けられたオリフィスの上流側と下流側との間の差圧を検出する圧力センサと、
前記送風機の作動開始前の停止状態で前記圧力センサにより検出される圧力値の基準値である作動前圧力基準値を記憶保持する記憶部と、
前記送風機の作動中に、前記圧力センサにより検出された圧力値である作動中圧力検出値を取得し、該作動中圧力検出値と前記記憶保持された作動前圧力基準値との差である圧力変化量に応じて、又は該圧力変化量から推定される前記給気路もしくは前記排気路の閉塞度合いに応じて、又は、該圧力変化量から推定される前記給気路もしくは前記排気路の風量に応じて、前記バーナの運転制御を行う制御部と、
前記記憶部に記憶保持する前記作動前圧力基準値を更新する処理を実行する更新処理部とを備えており、
前記更新処理部は、前記送風機の作動開始前の停止状態で前記圧力センサにより検出された圧力値である作動前圧力検出値を取得して、該作動前圧力検出値が所定範囲に含まれるか否かを判断し、該作動前圧力検出値が該所定範囲に含まれない場合には、該所定範囲に含まれないという事象の発生が連続する回数をカウントし、当該カウントされた回数が所定回数に達した場合に、前記記憶部に記憶保持されている作動前圧力基準値を少なくとも該作動前圧力検出値に応じて更新し、前記カウントされた回数が前記所定回数に満たない場合には、前記記憶部に記憶保持されている作動前圧力基準値を更新しないように構成されていることを特徴とする(第発明)。
【0020】
かかる第発明では、第1発明と同様に、前記所定範囲を適切に設定しておくことによって、送風機の作動開始前の停止状態で、給気路及び排気路のうち、オリフィス周辺の通気路に外風に起因する気流が発生している状況では、前記作動前圧力検出値が所定範囲から逸脱し、該オリフィス周辺の通気路が無風状態になっている状況では、前記作動前圧力検出値が所定範囲内に含まれるようにすることができる。
【0021】
ここで、送風機の作動開始前の停止状態で、オリフィス周辺の通気路が無風状態であっても、圧力センサの出力の定常的なドリフト(初期状態からのオフセット)に起因して、作動前圧力検出値が所定範囲を定常的に逸脱する場合がある。一方、送風機の作動開始前の停止状態で、オリフィス周辺の通気路に外風に起因する気流が発生する状況は、一般に一時的な状況である。
【0022】
そこで、第発明では、作動前圧力検出値が所定範囲に含まれない場合(所定範囲から逸脱した場合)に、該所定範囲に含まれないという事象の発生が連続する回数に関してカウントされた回数が所定数に達することを必要条件として、作動前圧力基準値を少なくとも該作動前圧力検出値に応じて更新する。これにより、圧力センサの出力に定常的なドリフトが生じている場合に、オリフィス周辺の通気路が無風状態になっている状況での作動前圧力検出値(ドリフトの影響分を含む作動前圧力検出値)を反映させて、作動前圧力基準値を更新することが可能となる。
【0023】
また、前記カウントされた回数が所定数に満たない場合には、作動前圧力基準値が更新されないので、圧力センサが外風に起因する気流の影響を受けている状態での作動前圧力検出値を用いて、作動前圧力基準値を更新してしまうのを防止することが可能となる。
【0024】
ひいては、送風機の作動中における前記圧力変化量は、給気路又は排気路の閉塞度合いや、給気路又は排気路の風量に応じたものとして信頼性の高い指標値となる。従って、圧力変化量に応じて、又は該圧力変化量から推定される給気路もしくは排気路の閉塞度合いに応じて、又は、該圧力変化量から推定される給気路もしくは排気路の風量に応じて、バーナの運転制御を行うことで、給気路又は排気路の閉塞度合い、あるいは、風量に応じたバーナの適切な運転制御を高い信頼性で行うことが可能となる。
【0025】
なお、第発明では、前記作動前圧力検出値が所定範囲に含まれる場合に、第1発明と同様に、作動前圧力基準値を少なくとも該作動前圧力検出値に応じて更新する態様、あるいは、作動前圧力基準値を更新しない態様とのいずれの態様を採用してもよい。
【0026】
上記第発明では、前記更新処理部は、前記所定範囲を、前記記憶部に記憶保持されている作動前圧力基準値を中心とする範囲に設定するように構成され得る(第発明)。
これによれば、作動前圧力検出値が所定範囲に含まれるか否かが、オリフィス周辺の通気路が無風状態であるかに応じたものになるように前記所定範囲を設定することを適切に実現できる。
【0027】
上記第発明又は第発明では、前記更新処理部は、前記作動前圧力検出値が所定範囲に含まれない場合に、該作動前圧力検出値を、前記作動前圧力基準値を更新するための更新用圧力検出値として記憶するように構成されていると共に、前記カウントされた回数が前記所定回数に達したことに応じて前記記憶部に記憶保持している作動前圧力基準値を更新するとき、該作動前圧力基準値を、前記所定回数のそれぞれにおいて記憶した前記作動前圧力検出値の平均値に更新するように構成されていることが好ましい(第発明)。
【0028】
これによれば、オリフィス周辺の通気路が無風状態になっている状況での作動前圧力検出値(ドリフトの影響分を含む作動前圧力検出値)を好適に反映させると共に、外乱ノイズの影響が極力低減されるように、作動前圧力基準値を更新することが可能となる。ひいては、無風状態で圧力センサにより検出されるオリフィス前後差圧の値に相当するものとしての作動前圧力基準値の信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の実施形態(第1実施形態又は第2実施形態)の温風暖房機の機構的な構成を示す図。
図2】実施形態の温風暖房機の制御に関する構成を示すブロック図。
図3図2に示すコントローラの第1実施形態での処理を示すフローチャート。
図4図2に示すコントローラの第2実施形態での処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0030】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態を図1図3を参照して説明する。図1を参照して、本実施形態の強制給排気式燃焼装置は、例えば温風暖房機1である。この温風暖房機1は、屋内に配置される本体ケース2内に、バーナ3を収容した燃焼室4と、該燃焼室4に連通する熱交換部4aと、屋内の空気の吸引及び温風の吹出しを行う対流ファン5とを備える。
【0031】
燃焼室4には、バーナ3に燃焼用空気を供給するための通気路である給気路10aを内部に形成する給気筒10が接続されていると共に、バーナ3の燃焼運転により生成される燃焼排ガスを排出するための通気路である排気路11aを内部に形成する排気筒11が熱交換部4aを介して接続されている。給気路10aは燃焼室4及び熱交換部4aを介して排気路11aに連通しており、以降、給気路10aから排気路11aまでの通気路を総称的に給排気路ということがある。
【0032】
給気筒10は、燃焼室4から本体ケース2の外部の屋内空間を通って屋外まで延在し、その上流端が給気口10bとして屋外に開口されている。また、排気筒11は、熱交換部4aの下流端から本体ケース2の外部の屋内空間を通って屋外まで延在し、その下流端が排気口11bとして屋外に開口されている。なお、図示例の温風暖房機1では、排気筒11の下流部分が、給気筒10の上流部分の内側に同芯に配置されている。ただし、排気筒11は、その全体が給気筒10の外部に配設されていてもよい。
【0033】
給気筒10には、燃焼用空気をバーナ3に供給する送風機としての燃焼ファン12が組付けられている。該燃焼ファン12には、それを回転駆動する電動モータ12aが連結されている。そして、電動モータ12aにより燃焼ファン12を回転駆動することで、外気(屋外の空気)が給気口10bから給気筒10内の給気路10aに吸引され、その吸引された外気が、燃焼ファン12を経由した後、給気路10aから燃焼室4内のバーナ3に燃焼用空気として供給される。この場合、燃焼ファン12の回転数(回転速度)を制御することで、バーナ3への燃焼用空気の供給量を増減制御することが可能である。
【0034】
バーナ3は、本実施形態では公知の構造のガスバーナであり、図示しない燃料ガスの供給源から燃料供給路としてのガス供給管14を介して燃料ガスが供給される。そして、バーナ3は、ガス供給管14から供給される燃料ガスと、燃焼ファン12の回転作動により給気路10aから供給される燃焼用空気とを混合し、その混合により得られた混合気を燃焼させるように構成されている。
【0035】
ガス供給管14には、これを開閉可能な二つの電磁弁15a,15bと、バーナ3への燃料ガスの供給量を調整するための比例弁等の燃料調整弁16とが組付けられており、電磁弁15a,15bを開弁制御した状態で、燃料調整弁16を制御することで、バーナ3への燃料ガスの供給量を増減制御することが可能である。
【0036】
また、燃焼室4内には、バーナ3の点火用の火花放電をイグナイタ17(図2に示す)の作動により発生する点火プラグ18と、バーナ3の不着火や失火の有無を検知するための炎検知センサ19とが配置されている。炎検知センサ19は、例えばフレームロッド、熱電対等により構成される。
【0037】
対流ファン5は、本体ケース2の背面部に形成された吸引口2aに臨んで本体ケース2内に配置され、該対流ファン5を回転駆動する電動モータ5aに連結されている。この対流ファン5を電動モータ5aにより回転駆動することで、屋内の空気が、吸引口2aを介して本体ケース2内に吸引され、その吸引された空気が、本体ケース2内に形成された送風通路2bを経由した後、本体ケース2の前面部に形成された吹出口2cから屋内に送風される。
【0038】
この場合、送風通路2bには、熱交換部4aが配置されている。このため、バーナ3の燃焼運転を行いながら、対流ファン5を電動モータ5aにより回転駆動すると、バーナ3の燃焼運転により生成される燃焼排ガスが熱交換部4a内を通って排気路11aに流れる過程で、該燃焼排ガスから、送風通路2b内を流れる屋内空気への熱交換(伝熱)が行われる。それにより、送風通路2bを通る屋内空気が熱交換部4aで加熱され、その加熱された空気が温風として吹出口2cから屋内に送風される。
【0039】
また、本体ケース2内の後部には、吸引口2aから送風通路2b内に導入される空気の温度を温風暖房機1が配置された屋内の室温として検出する温度センサ20が吸引口2aに臨んで配置されている。
【0040】
本実施形態の温風暖房機1では、さらに、給気路10a又は排気路11aの途中部、例えば、燃焼ファン12の上流側の給気路10aには、オリフィス21が形成されている。このオリフィス21は、給気路10aから排気路11aまでの給排気路(燃焼室4及び熱交換部4aを含む)において、燃焼ファン12の回転作動により正常な気流が発生したときに、オリフィス21の上流側の圧力と下流側の圧力との差圧を生じさせるものである。
【0041】
オリフィス21の近傍には、オリフィス21の上流側の給気路10aに連通する上流側連通管22と、オリフィス21の下流側の給気路10aに連通する下流側連通管23とが給気筒10から導出されており、これらの上流側連通管22及び下流側連通管23が給気路10aの外部に配置された圧力センサ24に接続されている。該圧力センサ24は、オリフィス21の上流側と下流側との間の差圧(以降、オリフィス前後差圧という)を検出可能に構成された公知の構造のセンサであり、例えば薄膜半導体素子等により構成される。
【0042】
温風暖房機1には、さらに、図2に示す如く、温風暖房機1の運転制御を行う機能を有するコントローラ30と、ユーザが温風暖房機1の運転に関する操作を行う操作部40とを備えている。
【0043】
操作部40は、例えば、温風暖房機1の図示しない外装ケース(前記本体ケース2を内蔵する外装ケース)の表面部、あるいは、コントローラ30と通信可能なリモコンユニットに搭載される。詳細な図示は省略するが、操作部40には、温風暖房機1の運転のオン・オフ操作を行うためのスイッチや、目標の室温(又はその高低度合い)を設定するためのスイッチ等が備えられる。
【0044】
コントローラ30は、マイクロコンピュータ等のプロセッサ、メモリ、インターフェース回路等を含む1つ以上の電子回路ユニットにより構成され、例えば、温風暖房機1の図示しない外装ケースの内部に搭載される。このコントローラ30には、前記した炎検知センサ19、温度センサ20、圧力センサ24等、温風暖房機1に備えられた各センサの検出信号が入力されると共に、操作部40の操作信号が入力される。
【0045】
そして、コントローラ30は実装されたハードウェア構成及びプログラム(ソフトウェア構成)により実現される機能として、前記した対流ファン5及び燃焼ファン12のそれぞれの回転駆動用の電動モータ5a,12a、ガス供給管14の電磁弁15a,15b及び燃料調整弁16、並びに、点火プラグ18の駆動用のイグナイタ17の作動制御を通じ温風暖房機1の運転制御を行う運転制御部31としての機能と、燃焼ファン12の作動開始前の停止状態で圧力センサ24により検出されるオリフィス前後差圧の基準値である作動前圧力基準値を記憶保持する記憶部32としての機能と、記憶部32に記憶させる作動前圧力基準値を適宜更新する処理を実行する更新処理部33としての機能とを含む。なお、運転制御部31は、本発明における制御部に相当する。
【0046】
次に、コントローラ30が実行する制御処理を中心に、本実施形態の温風暖房機1の作動を説明する。コントローラ30は、ユーザによる操作部40の操作(温風暖房機1の運転開始操作)によって、あるいは、温風暖房機1のタイマー運転機能によって、温風暖房機1の運転開始が指示されると、図3のフローチャートに示す処理を実行する。
【0047】
コントローラ30は、まず、燃焼ファン12の作動を開始させる前に(燃焼ファン12の作動停止状態で)、STEP1~6の処理を更新処理部33により実行する。STEP1では、更新処理部33は、圧力センサ24により検出されたオリフィス前後差圧DPの現在の検出値を、燃焼ファン12の作動開始前のオリフィス前後差圧の検出値である作動前圧力検出値DP0として取得する。
【0048】
次にSTEP2では、更新処理部33は、STEP1で取得した作動前圧力検出値DP0が、給排気路に外風に起因する気流が発生していない状態(無風状態)での検出値であるか否かを判断するために、作動前圧力検出値DP0に対する所定範囲の下限値Lp1と上限値Hp1とを、燃焼ファン12の過去の作動開始前に取得された複数(所定数)の作動前圧力検出値の平均値(過去平均値)a1(y)に応じて決定する。なお、このSTEP2の処理の詳細は後述する。
【0049】
次のSTEP3では、更新処理部33は、作動前圧力検出値DP0が、STEP2で決定した下限値Lp1と上限値Hp1との間の所定範囲内に含まれるか否か(Lp1≦DP0≦Hp1であるか否か)を判断する。ここで、給排気路に外風による気流が発生していない状態(無風状態)、もしくはこれに近い状態では、STEP3の判断結果が肯定的になる。
【0050】
そして、STEP3の判断結果が肯定的になった場合には、更新処理部33は、STEP4において、記憶部32に記憶保持させる作動前圧力基準値Aの値を、STEP1で所得した作動前圧力検出値DP0に応じて更新する。具体的には、更新処理部33は、STEP1で所得した作動前圧力検出値DP0を作動前圧力基準値Aの更新値(更新後の値)として設定することで、作動前圧力基準値Aを更新する。これにより、給排気路に外風による気流が発生していない状態、もしくはこれに近い状態で、圧力センサ24により検出されたオリフィス前後差圧の検出値としての作動前圧力検出値DP0が、作動前圧力基準値Aとして記憶部32に記憶保持される。
【0051】
次いで、更新処理部33は、STEP5において、作動前圧力基準値Aの更新回数を示すパラメータx(以降、単に更新回数xという)の値を「1」だけ増加させ、さらに、STEP6において、作動前圧力検出値DP0(STEP1で取得した今回の作動前圧力検出値DP0)を、STEP5での増加後の更新回数xに対応付けたパラメータa1(x)の値として記憶する。該パラメータa1(x)は、STEP2で所定範囲の下限値Lp1及び上限値Hp1を設定するために用いる設定用圧力検出値を記憶するためのパラメータである。
【0052】
一方、STEP3の判断結果が否定的である場合(DP0<Lp1又はDP0>Hp1である場合)には、STEP1で取得した作動前圧力検出値DP0は、給排気路に外風による気流が発生している状態で、圧力センサ24により検出されたオリフィス前後差圧の検出値である可能性が高い。そこで、この場合には、更新処理部33は、STEP4~6の処理を実行せずに(ひいては作動前圧力基準値Aを更新せずに)、温風暖房機1の今回の運転のための燃焼ファン12の作動開始前における処理を終了する。
【0053】
ここで、説明を後回しにしたSTEP2の処理を説明する。本実施形態では、更新処理部33は、前記したSTEP6の処理によって、STEP3の判断結果が肯定的になる都度(換言すれば作動前圧力基準値Aの更新の都度)、STEP1で取得した作動前圧力検出値DP0を、パラメータa1(x)(x=1,2,……)の値として記憶保持する。
【0054】
そして、更新処理部33は、STEP2では、作動前圧力検出値DP0の過去平均値a1(y)を、作動前圧力基準値Aの所定回数前の更新時から前回の(1回前の)更新時までの複数回分の作動前圧力検出値DP0の平均値として算出する。
【0055】
具体的には、例えば、作動前圧力基準値Aの5回分の更新時にそれぞれ取得した作動前圧力検出値DP0の平均値が過去平均値a1(y)として算出され得る。この場合、作動前圧力基準値Aの5回前から前回(1回前)までの各更新時に取得された作動前圧力検出値DP0は、それぞれ、パラメータa1(x-4),a1(x-3),a1(x-2),a1(x-1),a1(x)の値として記憶されるので、作動前圧力検出値DP0の過去平均値a1(y)は、次式(1)により算出される。
【0056】
a1(y)=(a1(x-4)+a1(x-3)+a1(x-2)+a1(x-1)+a1(x))/5
……(1)
【0057】
そして、STEP2では、更新処理部33は、次式(2a),(2b)で示す如く、作動前圧力検出値DP0に対する所定範囲の下限値Lp1として、上記過去平均値a1(y)よりも、あらかじめ定められた所定値α1だけ小さい値(=a1(y)-α1)を設定し、該所定範囲の上限値Hp1として、上記過去平均値a1(y)よりも上記所定値α1だけ大きい値(=a1(y)+α1)を設定する。これにより、作動前圧力検出値DP0に対する所定範囲が、作動前圧力検出値DP0の過去平均値a1(y)を中心とする範囲として決定される。
【0058】
Lp1=a1(y)-α1 ……(2a)
Hp1=a1(y)+α1 ……(2b)
【0059】
なお、作動前圧力基準値Aの更新回数(STEP3の判断結果が肯定的になった回数)が、過去平均値a1(y)の算出に必要な所定回数(例えば5回)に満たない場合には、STEP2では、下限値Lp1及び上限値Hp1として、例えば、あらかじめ定められた値が設定される。あるいは、例えば、現在の作動前圧力基準値Aよりも上記所定値α1だけ小さい値(=A-α1)と上記所定値α1だけ大きい値(=A+α1)とがそれぞれ、下限値Lp1及び上限値Hp1として設定される。
【0060】
補足すると、上記所定値α1の値は、給排気路に外風による気流が発生していない状態(無風状態)、もしくはこれに近い状態では、STEP3の判断結果が肯定的になり、外風に起因して給排気路に発生した気流によって、圧力センサ24にオリフィス前後差圧が作用する状態では、STEP3の判断結果が否定的になるように、あらかじめ実験等に基づいて設定されている。
【0061】
更新処理部33の処理は、以上の如く実行される。コントローラ30は、上記の如くSTEP1~6で更新処理部33の処理を実行した後、STEP7、8の処理を運転制御部31により実行する。STEP7では、運転制御部31は、電動モータ12aを制御することで、燃焼ファン12の回転作動を開始させる(燃焼ファン12をONにする)。なお、図3での図示は省略しているが、STEP7では、運転制御部31はさらに、バーナ3を点火させて、バーナ3の燃焼運転を開始させると共に、電動モータ5aを介して対流ファン5の作動を開始させる。この場合、バーナ3の点火処理では、運転制御部31は、燃焼ファン12の回転数を電動モータ12aを介して点火用の所定回転数に制御することと、ガス供給管14の電磁弁15a、15bを開弁制御することと、バーナ3への燃料ガスの供給量を燃料調整弁16を介して点火用の供給量に制御することと、イグナイタ17を介して点火プラグ18に火花放電を発生させることとを実行する。
【0062】
さらに、バーナ3の燃焼運転の開始後は、運転制御部31は、操作部40の操作によりユーザが設定した目標温度(又はその高低度合い)と、温度センサ20により検出される室温とに応じて、バーナ3の燃焼量と対流ファン5の回転数とを制御することで、温風暖房機1の暖房運転を行わせる。この場合、バーナ3の燃焼量の制御は、燃焼ファン12の回転数の制御(燃焼用空気の供給量の制御)と、燃料調整弁16の制御(燃料ガスの供給量の制御)とを通じて行われる。
【0063】
そして、運転制御部31は、燃焼ファン12の作動中にSTEP8の処理を実行する。このSTEP8では、運転制御部31は、圧力センサ24により検出されるオリフィス前後差圧DPである作動中圧力検出値を逐次取得しつつ、該作動中圧力検出値と作動前圧力基準値Aとの差(=作動中圧力検出値-A)である圧力変化量に基づいて、給気路10aから排気路11aまでの給排気路の閉塞度合いを判定する処理を実行する。
【0064】
具体的には、本実施形態では、運転制御部31は、圧力変化量があらかじめ定められた所定の閾値よりも小さくなったか否かを逐次判定する。ここで、給排気路の閉塞がある程度進行すると(閉塞度合いが高くなると)、給排気路での風量が小さくなるため、上記圧力変化量が所定の閾値よりも小さくなる。そして、この場合には、バーナ3に適正量の燃焼用空気を供給できなくなることから、運転制御部31は、前記電磁弁15a,15bのいずれか一方又は両方を閉弁制御することで、バーナ3の燃焼運転を強制的に停止させる。さらに、運転制御部31は、給排気路の閉塞度合いが高い旨を示すエラー情報を温風暖房機1の図示しない表示器等を介して出力する。
【0065】
本実施形態では、以上説明した如く更新処理部33の処理が実行されるので、燃焼ファン12の作動開始前の停止状態で、給排気路に外風による気流が発生している状態(ひいては、圧力センサ24により検出されるオリフィス前後有差圧が当該気流の影響を受ける状態)で、作動前圧力基準値Aが作動前圧力検出値DP0を用いて更新されてしまうのを防止できる。
【0066】
そして、燃焼ファン12の作動開始前の停止状態で、給排気路に外風による気流が発生していない状態(無風状態)もしくはこれに近い状態では、作動前圧力基準値Aが作動前圧力検出値DP0を用いて更新される。
【0067】
このため、給排気路の無風状態でのオリフィス前後差圧の検出値に相当するものとして信頼性の高い作動前圧力基準値Aを記憶部32に記憶保持させることができる。ひいては、燃焼ファン12の作動中の前記圧力変化量は、給排気路の閉塞度合いや風量に応じた指標値として高い信頼性を有するものとなる。
【0068】
このため、給排気路の閉塞度合いが高い場合(ひいては、バーナ3に適正量の燃焼用空気を供給できない場合)に、バーナ3の燃焼運転を停止させることを適切なタイミングで実行させることができる。また、給排気路の閉塞度合いが十分に低いのに、閉塞度合いが高いと誤検知して、バーナ3の燃焼運転を停止させてしまうことを防止できる。
【0069】
また、本実施形態では、STEP3で作動前圧力検出値DP0と比較する所定範囲の下限値Lp1及び上限値Hp1を前記した如く設定するので、圧力センサ24の出力の定常的なドリフトが生じても、そのドリフトの影響を含む作動前圧力検出値DP0に適した所定範囲を適切に設定することができる。ひいては、給排気路が無風状態であるのに、STEP3の判断結果が否定的になるような事態が生じるのを防止できる。
【0070】
そして、作動前圧力検出値DP0が当該所定範囲に含まれる場合の作動前圧力基準値Aの更新によって、定常的なドリフトが生じた圧力センサ24に対して適切な作動前圧力基準値Aを記憶部32に記憶保持させることができる。
【0071】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を図4を参照して説明する。なお、本実施形態は、コントローラ30の更新処理部33の処理だけが第1実施形態と相違するものであるので、第1実施形態と同一の事項については説明を省略する。
【0072】
本実施形態では、コントローラ30は、ユーザによる操作部40の操作(温風暖房機1の運転開始操作)によって、あるいは、温風暖房機1のタイマー運転機能によって、温風暖房機1の運転開始が指示されると、図4のフローチャートに示す処理を実行する。
【0073】
コントローラ30は、まず、燃焼ファン12の作動を開始させる前に(燃焼ファン12の作動停止状態で)、STEP11~20の処理を更新処理部33により実行する。STEP11では、更新処理部33は、圧力センサ24により検出されたオリフィス前後差圧の現在の検出値を、燃焼ファン12の作動開始前のオリフィス前後差圧の検出値である作動前圧力検出値DP0として取得する。
【0074】
次にSTEP12では、更新処理部33は、作動前圧力検出値DP0が、現在の作動前圧力基準値Aに近い値であるか否かを判断するために、作動前圧力検出値DP0に対する所定範囲の下限値Lp2と上限値Hp2とを現在の作動前圧力基準値Aに応じて決定する。
【0075】
この場合、更新処理部33は、次式(3a),(3b)で示す如く、作動前圧力検出値DP0に対する所定範囲の下限値Lp2として、現在の作動前圧力基準値Aよりも、あらかじめ定められた所定値α2だけ小さい値(=A-α2)を設定し、該所定範囲の上限値Hp2として、現在の作動前圧力基準値Aよりも上記所定値α2だけ大きい値(=A+α2)を設定する。これにより、作動前圧力検出値DP0に対する所定範囲が、現在の作動前圧力基準値Aを中心とする範囲として決定される。
【0076】
Lp2=A-α2 ……(3a)
Hp2=A+α2 ……(3b)
【0077】
次のSTEP13では、更新処理部33は、作動前圧力検出値DP0が、下限値Lp2と上限値Hp2との間の所定範囲内に含まれるか否か(Lp2≦DP0≦Hp2であるか否か)を判断する。ここで、給排気路に外風による気流が発生していない状態、もしくはこれに近い状態であり、且つ、圧力センサ24の劣化等に起因する該圧力センサ24の出力のドリフトが発生していないか、もしくはそのドリフトが十分に小さい状態である場合には、STEP13の判断結果が肯定的になる(こうなるように、上記所定値α2の値が、あらかじめ実験等に基づいて設定されている)。
【0078】
STEP13の判断結果が肯定的になった場合には、現在の作動前圧力基準値Aは、給排気路に外風による気流が発生していない状態(無風状態)、もしくはこれに近い状態で圧力センサ24が検出するオリフィス前後差圧の値に一致もしくはほぼ一致するとみなし得る。
【0079】
この場合には、更新処理部33は、作動前圧力基準値Aを更新することなく、STEP14において、カウント値nをゼロに初期化し、燃焼ファン12の今回の作動開始前の処理を終了する。該カウント値nは、STEP13の判断結果が否定的になることが連続する回数をカウントするためのパラメータである。
【0080】
STEP13の判断結果が否定的になる状況としては、圧力センサ24の出力の定常的なドリフトが発生したことに起因して、現在の作動前圧力基準値Aが、給気路10a又は排気路11aに外風による気流が発生していない状態(無風状態)、もしくはこれに近い状態で圧力センサ24により検出されるオリフィス前後差圧の検出値(ドリフトの影響を含む圧力センサ24の出力により示される検出値)からずれている状況、あるいは、給気路10a又は排気路11aに外風による気流が一時的に発生したことに起因して、作動前圧力検出値DP0が作動前圧力基準値Aから乖離する値になった状況が考えられる。
【0081】
そこで、STEP13の判断結果が否定的になる場合(DP0<Lp1又はDP0>Hp1となる場合)には、更新処理部33は、STEP15からの処理を実行する。STEP15において、更新処理部33は、カウント値nを「1」だけ増加させ、さらに、STEP16において、今回の作動前圧力検出値DP0(STEP1で取得した作動前圧力検出値DP0)を、カウント値nに対応付けたパラメータa2(n)の値として記憶する。これにより、STEP13の判断結果が否定的になることが連続的に繰り返されると、各回の作動前圧力検出値DP0が、順次、パラメータa2(1),a3(2),……の値として記憶される。このようにパラメータa2(1),a3(2),……の値として記憶される作動前圧力検出値DP0は、作動前圧力基準値Aを更新するために用いる更新用圧力検出値である。
【0082】
次いで、STEP17において、更新処理部33は、現在のカウント値nが所定数N(例えばN=5)に達したか否かを判断する。すなわち、STEP13の判断結果が否定的になることが連続的に繰り返された回数が所定数Nに達したか否かが判断される。
【0083】
ここで、給排気路に外風による気流が一時的に発生したことに起因して、STEP13の判断結果が否定的になる状況では、一般に、STEP17の判断結果は否定的になる。この場合には、更新処理部33は、作動前圧力基準値Aを更新することなく、燃焼ファン12の今回の作動開始前の処理を終了する。
【0084】
一方、圧力センサ24の出力の定常的なドリフトに起因して、現在の作動前圧力基準値Aが、給気路10a又は排気路11aに外風による気流が発生していない状態(無風状態)、もしくはこれに近い状態で圧力センサ24により検出されるオリフィス前後差圧の検出値(ドリフトの影響を含む圧力センサ24の出力により示される検出値)からずれている場合には、温風暖房機1の各回の運転の開始直前(燃焼ファン12の作動開始の直前)におけるSTEP13の判断結果が否定的になることが連続的に繰り返される。ひいては、STEP17の判断結果が肯定的になる。
【0085】
この場合には、更新処理部33は、STEP13の判断結果が否定的になる都度、STEP16で設定した所定数Nのパラメータa2(1),a2(2),…,a2(N)の値から、その平均値a2(y)を算出することをSTEP18において実行する。該平均値a2(y)は、次式(4)により算出される。
【0086】
a2(y)=(a2(1)+a2(2)+ … +a2(N))/N ……(4)
【0087】
次いで、STEP19において、更新処理部33は、記憶部32に記憶保持されている作動前圧力基準値Aの値を上記平均値a2(y)に応じて更新する。具体的には、更新処理部33は、上記平均値a2(y)を作動前圧力基準値Aの更新値(更新後の値)として設定することで、作動前圧力基準値Aを更新する。これにより、STEP13の判断結果が否定的になることが所定回数(=所定数N)、連続的に繰り返された場合に、各回の燃焼ファン12の作動開始前に圧力センサ24により検出されたオリフィス前後差圧の検出値としての作動前圧力検出値DP0の平均値a2(y)が、作動前圧力基準値Aとして記憶部32に記憶保持される。
【0088】
次いで、STEP20において、更新処理部33は、カウント値nをゼロに初期化し、燃焼ファン12の今回の作動開始前の処理を終了する。
【0089】
コントローラ30は、上記の如くSTEP11~20で更新処理部33の処理を実行した後、STEP21、22の処理を運転制御部31により実行する。これらのSTEP21、22の処理は、第1実施形態におけるSTEP7、8の処理と同じである。なお、バーナ3の燃焼運転も第1実施形態と同様に行われる。
【0090】
本実施形態では、以上説明した如く更新処理部33の処理が実行されるので、燃焼ファン12の作動開始前の停止状態で、給排気路に外風による気流が発生している状態(ひいては、圧力センサ24により検出されるオリフィス前後有差圧が当該気流の影響を受ける状態)で、作動前圧力基準値Aが作動前圧力検出値DP0を用いて更新されてしまうのを防止できる。
【0091】
そして、燃焼ファン12の作動開始前の停止状態で、給排気路に外風による気流が発生していない状態(無風状態)もしくはこれに近い状態での作動前圧力検出値DP0が、圧力センサ24の出力の定常的なドリフト(微小でないドリフト)が生じていることに起因して、STEP13の判断結果が肯定的になった場合には、複数回分の作動前圧力検出値DP0の平均値を用いて作動前圧力基準値Aが更新される。
【0092】
このため、給排気路の無風状態でのオリフィス前後差圧の検出値に相当するものとして信頼性の高い作動前圧力基準値Aを記憶部32に記憶保持させることができる。ひいては、燃焼ファン12の作動中の前記圧力変化量は、給排気路の閉塞度合いや風量に応じた指標値として高い信頼性を有するものとなる。
【0093】
このため、給排気路の閉塞度合いが高い場合(ひいては、バーナ3に適正量の燃焼用空気を供給できない場合)に、バーナ3の燃焼運転を停止させることを適切なタイミングで実行させることができる。また、給排気路の閉塞度合いが十分に低いのに、閉塞度合いが高いと誤検知して、バーナ3の燃焼運転を停止させてしまうことを防止できる。
【0094】
また、本実施形態では、作動前圧力基準値Aが、圧力センサ24の出力の定常的なドリフトに起因する影響を適切に反映させて更新されるので、STEP13で作動前圧力検出値DP0と比較する所定範囲の下限値Lp2及び上限値Hp2を前記した如く設定することで、結果的に圧力センサ24の出力のドリフトの影響を含む作動前圧力検出値DP0に適した所定範囲を設定できる。ひいては、給排気路に生じる微風の影響でSTEP13の判断結果が頻繁に否定的になったり、作動前圧力基準値Aの不要な更新が行われるのを防止できる。
【0095】
なお、本実施形態では、STEP13の判断結果が肯定的である場合には、作動前圧力基準値Aの更新を行わないようにしたが、STEP13の判断結果が肯定的である場合に、例えば第1実施形態のSTEP4の処理と同様に、作動前圧力基準値Aを更新するようにしてもよい。
【0096】
[他の実施形態]
本発明は前記第1実施形態及び第2実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態を採用することもできる。以下に他の実施形態をいくつか例示する。
【0097】
前記各実施形態では、燃焼ファン12の作動中の前記圧力変化量(=作動中圧力検出値-A)が所定の閾値よりも小さい場合に、バーナ3の燃焼運転を停止させるようにした。ただし、例えば、燃焼ファン12の作動中の圧力変化量から、給排気路の閉塞度合いを推定し、その閉塞度合いの推定値が所定の閾値を越えた場合に、バーナ3の燃焼運転を停止させるようにしてもよい。あるいは、燃焼ファン12の作動中の圧力変化量から、給排気路の風量を推定し、その風量の推定値が所定の閾値よりも小さくなった場合に、バーナ3燃焼運転を停止させるようにしてもよい。
【0098】
さらに、例えば、前記圧力変化量に応じて、あるいは、該圧力変化量から推定される給排気路の閉塞度合いに応じて、あるいは、該圧力変化量から推定される給排気路の風量に応じて、燃焼ファン12の回転数を、給排気路が正常である場合の回転数から適宜補正することで、給排気路の閉塞度合いがある程度高くなっても、バーナ3の燃焼運転を継続しながら、適正量の燃焼用空気をバーナ3に供給するようにしてもよい。
【0099】
また、前記各実施形態では、圧力センサ24を給気路10a側に備えたが、排気路11a側に圧力センサ24を備えるようにしてもよい。
【0100】
また、前記第1実施形態では、STEP3の判断結果が肯定的である場合に、作動前圧力基準値Aを直前のSTEP1で取得された作動前圧力検出値DP0に更新したが、例えば、燃焼ファン12の複数回の作動開始前に取得された作動前圧力検出値DP0(燃焼ファン12の今回の作動開始前に取得された作動前圧力検出値DP0を含む)の平均値を、作動前圧力基準値Aの更新後の値として設定してもよい。
【0101】
また、前記各実施形態では、強制給排気式燃焼装置として温風暖房機1を例示したが、本発明の強制給排気式燃焼装置は、温風暖房機に限らず、例えば、給湯装置の熱源機に備えられる燃焼装置であってもよい。
【符号の説明】
【0102】
1…温風暖房機(強制給排気式燃焼装置)、3…バーナ、10a…給気路、11a…排気路、12…燃焼ファン(送風機)、21…オリフィス、24…圧力センサ、31…運転制御部(制御部)、32…記憶部、33…更新処理部。
図1
図2
図3
図4