(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】スラット及びこれを用いたブラインド
(51)【国際特許分類】
E06B 9/386 20060101AFI20241213BHJP
【FI】
E06B9/386
(21)【出願番号】P 2021078815
(22)【出願日】2021-05-06
【審査請求日】2023-05-02
(31)【優先権主張番号】P 2020082863
(32)【優先日】2020-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000134958
【氏名又は名称】株式会社ニチベイ
(74)【代理人】
【識別番号】100182349
【氏名又は名称】田村 誠治
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 英二
(72)【発明者】
【氏名】高木 浩二
(72)【発明者】
【氏名】赤荻 弘樹
【審査官】櫻井 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-014909(JP,A)
【文献】特開2005-031379(JP,A)
【文献】特開2003-107219(JP,A)
【文献】特開2013-171056(JP,A)
【文献】特開2003-293673(JP,A)
【文献】国際公開第2015/076245(WO,A1)
【文献】特開2013-002224(JP,A)
【文献】実開昭64-011721(JP,U)
【文献】実開昭61-001596(JP,U)
【文献】特開2016-050950(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B9/00
9/02
9/06-9/50
9/56-9/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部に設置可能なブラインドに用いられるスラットにおいて、
金属材料から構成されるスラット基材と、
前記スラット基材の表面に形成され、表面色を呈するための意匠顔料を含む熱硬化性樹脂層からなる塗膜と、
を有し、
スラット表面に前記塗膜の平均塗膜厚が30μm以下のなだらかな凹凸面が形成され、前記スラット表面は、「JIS Z8741(1997)」にて定める85度における鏡面光沢度が7以下であ
り、
前記スラット表面に当たった光が前記スラット表面において拡散反射されることを特徴とする、スラット。
【請求項2】
入射角が30度及び60度における可視光領域での前記スラット表面の正反射率が0.7%以下であることを特徴とする、請求項1に記載のスラット。
【請求項3】
前記意匠顔料は、近赤外線領域での反射性能が高い太陽熱遮蔽顔料であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のスラット。
【請求項4】
前記塗膜は、前記スラット基材の表面に分散される複数の樹脂ビーズを備えることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載のスラット。
【請求項5】
前記樹脂ビーズの塗膜厚方向平均長さは40μm以下であり、
少なくとも一部の前記樹脂ビーズの大きさを前記平均塗膜厚よりも大きくすることを特徴とする、請求項4に記載のスラット。
【請求項6】
前記樹脂ビーズの平均粒径は、20~35μmであることを特徴とする、請求項
4又は5に記載のスラット。
【請求項7】
前記凹凸面は、砂粒子によるブラスト加工により前記塗膜の表面を削り取ることで形成することを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載のスラット。
【請求項8】
前記凹凸面は、凹凸を備えたフォーミングロールによる成型時に前記塗膜の表面を変形させて形成することを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載のスラット。
【請求項9】
前記熱硬化性樹脂層を構成する熱硬化性樹脂には、焼付時に
消失する物質が混入しており、
前記凹凸面は、焼付時に前記物質が消失して形成される穴によって形成されることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のスラット。
【請求項10】
前記凹凸面は、エンボス加工を施した前記スラット基材の表面に塗膜を形成することによって形成されることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のスラット。
【請求項11】
請求項1~
10のいずれかに記載のスラットを用いたブラインド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラット及びこれを用いたブラインドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のスラットとしては、実公平2-15995号公報(特許文献1)に示されるものがある。この特許文献1に開示されるものは、スラットの素材板の表面に、塗装後塗剤の酸化重合による縮み塗装膜を構成する。これによれば、平滑塗装、艶消し加工とは全く風合いの異なるソフトな外観を現し、太陽光線を各種角度に乱反射させてグレア現象を防止することができる効果を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような従来のスラットにおいては、グレア現象は防止できるが、縮み模様を構成する凹凸が目立つため、一般的なスラット塗装面との意匠上の差異が大きいという課題があった。
【0005】
そこで本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、グレア現象を防止しつつ意匠性を向上させることが可能なスラット及びこれを用いたブラインドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の第1の観点によれば、開口部に設置可能なブラインドに用いられるスラットにおいて、スラット基材と、前記スラット基材の表面に形成され、表面色を呈するための意匠顔料を含む熱硬化性樹脂層からなる塗膜と、を有し、スラット表面に凹凸面が形成され、前記スラット表面は、「JIS Z8741(1997)」にて定める85度における鏡面光沢度が7以下であることを特徴とする、スラットが提供される。
【0007】
かかる構成によれば、スラット表面に凹凸面を形成し、スラット表面における鏡面光沢度を7以下としたことで、外光の大部分を拡散反射させることができるため、グレアを抑制できる。
【0008】
本発明は様々な応用が可能である。例えば、入射角が30度及び60度における可視光領域での前記スラット表面の正反射率が0.7%以下であってもよい。このような構成により、各入射角における99%を超えるほとんどの可視光がスラット表面において吸収又は拡散反射されるため、スラットの傾斜角度に依存することなくグレアを抑制できる。
【0009】
また、前記意匠顔料は、近赤外線領域での反射性能が高い太陽熱遮蔽顔料であってもよい。このような構成により、一般的なスラット加工工程と同様の工程にて、グレア抑制性能と遮熱性能を兼ね備えたスラットを得ることができる。
【0010】
また、前記塗膜は、前記スラット基材の表面に分散される複数の樹脂ビーズを備えてもよい。このような構成により、複数の樹脂ビーズが分散されるとともに表面色を呈するための意匠顔料を含む熱硬化性樹脂層からなる塗膜によりスラット表面に凹凸が形成されるため、グレア抑制効果を有さない一般スラットと同様の加工工程にてスラットを製造することができ、スラットの意匠性が一般スラットに近くなる。また、凹凸面によって外光を拡散反射させてグレアを抑制できる。よって、グレア現象を防止しつつ意匠性を向上させることができる。
【0011】
また、前記塗膜の平均膜厚は30μm以下、前記樹脂ビーズの塗膜厚方向平均長さは40μm以下であり、少なくとも一部の前記樹脂ビーズの大きさを前記平均塗膜厚よりも大きくするようにしてもよい。熱可塑性樹脂層内に塗膜厚よりも大きな樹脂ビーズを分散させたため、スラット塗装面になだらかな凹凸が形成されて意匠性での不具合を解消でき、意匠性を向上させることができる。また、凹凸面によって外光を拡散反射させてグレアを抑制できる。
【0012】
また、前記塗膜における前記樹脂ビーズの比率は、5~15%であってもよい。このような構成により、スラット表面に適度な凹凸を形成して外光を拡散反射させることができる。
【0013】
また、前記樹脂ビーズの平均粒径は、20~35μmであってもよい。樹脂ビーズの平均粒径を20~35μmにすることで、スラット表面に塗膜によるなだらかな凹凸が形成される。
【0014】
また、前記凹凸面は、砂粒子によるブラスト加工により前記塗膜の表面を削り取ることで形成してもよい。凹凸面によって外光を拡散反射させてグレアを抑制できる。よって、グレア現象を防止しつつ意匠性を向上させることができる。
【0015】
また、前記凹凸面は、凹凸を備えたフォーミングロールを用いたロールフォーミングにより成型時に前記塗膜の表面を変形させて形成してもよい。凹凸面によって外光を拡散反射させてグレアを抑制できる。よって、グレア現象を防止しつつ意匠性を向上させることができる。
【0016】
また、前記熱硬化性樹脂層を構成する熱硬化性樹脂は、焼付時に焼失する物質を含有しており、前記凹凸面は、焼付時に前記物質が消失して形成される孔によって形成してもよい。凹凸面によって外光を拡散反射させてグレアを抑制できる。よって、グレア現象を防止しつつ意匠性を向上させることができる。
【0017】
また、前記凹凸面は、エンボス加工を施した前記スラット基材の表面に塗膜を形成してもよい。凹凸面によって外光を拡散反射させてグレアを抑制できる。よって、グレア現象を防止しつつ意匠性を向上させることができる。
【0018】
また、本発明の第2の観点によれば、上記本発明の第1の観点にかかるスラットを用いたブラインドが提供される。
【0019】
かかる構成によれば、複数のスラットによって、隣り合う一方のスラット表面で反射した外光が、他方のスラット表面でも反射し、拡散反射される割合が更に増えるため、確実にグレアを抑制して、ブラインドを設置した空間内にいる居住者の不快感を解消できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のスラット及びこれを用いたブラインドによれば、グレア現象を防止しつつ意匠性を向上させることが可能である。本発明のその他の効果については、後述する発明を実施するための形態においても説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1の実施形態にかかる横型ブラインド10の斜視図である。
【
図2】スラット100を説明するための図であり、(a)はスラット100の一部分を示す斜視図であり、(b)は(a)のスラット100の部分aの拡大図であり、(c)は(a)のスラット100の部分bの拡大断面図である。
【
図3】スラット100の反射特性の概略を示す断面図である。
【
図4】可視光領域における反射特性を示す概念図である。
【
図5】横型ブラインド10の反射特性を示す概略図である。
【
図6】JIS Z8741(1997)による測定の概念図である。
【
図7】スラット100と比較例のスラットの色別の鏡面光沢度を示す図である。
【
図8】スラット100と比較例のスラットの各入射角における可視光の正反射率と分光反射率を示す図であり、(a)は入射角30°の場合の分光反射率を示し、(b)は入射角60°の場合の分光反射率を示し、(c)は、(a)及び(b)にJIS R3106(2019)の可視光反射率の重価係数を乗じて加重平均して算出した入射角30°及び60°の正反射率を示す棒グラフである。
【
図9】スラット100と比較例のスラットの日射反射率を示す図である。
【
図10】第2の実施形態の縦型ブラインド20の斜視図である。
【
図11】第3の実施形態の横型ブラインドのスラット400を説明するための図であり、(a)はスラット400の加工工程を示すフローチャートであり、(b)はスラット400の部分断面図である。
【
図12】第4の実施形態の横型ブラインドのスラット500を説明するための図であり、(a)はスラット500の加工工程を示すフローチャートであり、(b)はスラット500の部分断面図である。
【
図13】第5の実施形態の横型ブラインドのスラット600を説明するための図であり、(a)はスラット600の加工工程を示すフローチャートであり、(b)は塗膜620のスラット基材610への焼付する状態を示す部分断面図であり、(c)はスラット600の部分断面図である。
【
図14】第6の実施形態の横型ブラインドのスラット700を説明するための図であり、(a)はスラット700の加工工程を示すフローチャートであり、(b)はスラット700の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0023】
(第1の実施形態)
本実施形態の横型ブラインド10について、
図1を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態の横型ブラインド10の斜視図である。横型ブラインド10は、
図1に示したように、図示していない窓枠等に固定されるヘッドボックス12と、ヘッドボックス12から傾動可能に垂下するラダーコード14と、ラダーコード14に整列状態に支持される多数のスラット100と、ラダーコード14の下端が連結されるボトムレール16と、ヘッドボックス12からスラット100を挿通して垂下し下端がボトムレール16に連結される昇降コード18と、ヘッドボックス12の一端から垂下し、ラダーコード14と昇降コード18を操作するための操作部19と、を備えて構成される。
【0024】
本実施形態の特徴的な構成要素であるスラット100について、
図2及び
図3を参照しながら説明する。
図2は、スラット100を説明するための図であり、
図3は、スラット100の反射特性の概略を示す断面図である。
【0025】
スラット100は、
図2に示したように、スラット基材110と、スラット基材110の表面に形成され、複数の樹脂ビーズ122が分散されるとともに表面色を呈するための意匠顔料を含む熱硬化性樹脂層124からなる塗膜120と、を有し、塗膜120の平均膜厚は30μm以下、樹脂ビーズ122の塗膜厚方向平均長さ(平均粒径)は40μm以下であり、より好ましくは、塗膜120の平均膜厚は11~20μm以下であると、スラット基材110の上に安定した塗膜を形成することができる。少なくとも一部の樹脂ビーズ122の大きさを平均塗膜厚よりも大きくすることで、スラット表面100aに塗膜120によるなだらかな凹凸が形成されて構成される。
【0026】
(スラット基材110)
スラット基材110は、
図2に示したように、長尺な板状であり、短手方向に若干湾曲した形状に形成されている。スラット基材110はアルミニウムまたはアルミニウム合金等の金属材料から構成されている。
【0027】
(塗膜120)
塗膜120は、スラット基材110の表面に形成される。塗膜120は、
図2(b)、(c)に示したように、複数の樹脂ビーズ122が分散されるとともに表面色を呈するための意匠顔料を含む熱硬化性樹脂層124からなる。樹脂ビーズ122は、アクリルビーズなどが用いられる。塗膜120における樹脂ビーズ122の比率は、5~15%が好ましい。樹脂ビーズ122の比率を5%とした試作品では、「JIS Z8741(1997)」にて定める85度における鏡面光沢度は3である。熱硬化性樹脂層124には、アクリル樹脂やポリエステル樹脂などが用いられる。意匠顔料は、近赤外線領域での反射性能が高い太陽熱遮蔽顔料を用いることが好ましい。
【0028】
塗膜120の平均膜厚は30μm以下であり、樹脂ビーズ122の塗膜厚方向平均長さ(平均粒径)は40μm以下である。より好ましくは、樹脂ビーズ122を球体とし、その平均粒径を20~35μm、より好ましくは25~30μmとすることが好ましい。少なくとも一部の樹脂ビーズ122の大きさは、平均塗膜厚よりも大きい。このように構成されることによって、スラット表面100aに塗膜120によるなだらかな凹凸が形成される。
【0029】
スラット表面100aは、「JIS Z8741(1997)」にて定める85度における鏡面光沢度が、7以下に構成されている。このように構成されたスラット表面100aは、
図3に示したように、樹脂ビーズ122に当たった際に、外光の大部分が拡散反射する。よって、スラット表面100aにおけるグレアが抑制される。
【0030】
以上、本実施形態の構成について説明した。次に、このように構成されたスラット100において、スラット表面100aの反射特性について、
図4及び
図5を参照しながら説明する。
図4は、可視光領域における反射特性を示す概念図である。
図5は、横型ブラインド10の反射特性を示す概略図である。
【0031】
まず、可視光領域における反射特性について説明する。入射光NLが、
図4に示したように、スラット100のスラット表面100aに対して角度Θで当たったときに、一部の光が角度Θで正反射して正反射光SLとなり、残りの光が拡散反射して拡散反射光KLとなる。
【0032】
つぎに、このような反射特性を有するスラット100を横型ブラインド10に適用した場合の反射特性を説明する。
図5に示したように、入射光NLは、スラット100のスラット表面100aに当たったとき、一部の光が正反射して正反射光SLとなり、残りの光が拡散反射して拡散反射光KL
1となる。スラット表面(上面)100aで正反射した正反射光SLは、一つ上に位置するスラット100のスラット表面(下面)100aに当たる。このとき、正反射光SLは、入射光NLの一部の光であるため、正反射量は微小なものとなり、ほとんどが拡散反射となる。このときの拡散反射光KL
2はごく小さなものとなる。
【0033】
以上、本実施形態のスラット100における反射特性の概念について説明した。次に、スラット100の鏡面光沢度を、
図6及び
図7を参照しながら評価する。
図6は、JIS Z8741(1997)による測定の概念図である。
図7は、スラット100と比較例のスラットの色別の鏡面光沢度を示す図である。なお、以下の説明において、特別な記載がない限り比較例のスラットは一般的なスラットである。
【0034】
鏡面光沢度の測定は、JIS Z8741(1997)による測定によって行われる。
図6に示したように、スラット表面100aの垂直面に対して、入射光が20度、60度、85度に入射するように光源200を配置する。そして、スラット表面100aの垂直面に対して、20度、60度、85度の位置に受光器210を配置して測定する。
【0035】
入射光が20度、60度、85度のときの鏡面光沢度を、本実施形態のスラット100と比較例のスラットとで、
図7を参照しながら比較する。入射光が20度の場合、スラット100の鏡面光沢度は、スラット色が淡いグレイの場合が最も高く、2.7である。これに対して比較例のスラットの鏡面光沢度は、スラット色が淡いグレイの場合が最も低く、5.7である。このように、入射光が20度の場合、スラット100の最も高い鏡面光沢度は、比較例のスラットの最も低い鏡面光沢度よりも低い。
【0036】
次に、入射光が60度の場合、スラット100の鏡面光沢度は、スラット色が濃いグレイの場合が最も高く、4.6である。これに対して比較例のスラットの鏡面光沢度は、スラット色が淡いグレイの場合が最も低く、30.9である。このように、入射光が60度の場合、スラット100の最も高い鏡面光沢度は、比較例のスラットの最も低い鏡面光沢度よりも非常に低く、スラット表面100aの光沢度が低いことが明らかである。
【0037】
次に、入射光が85度の場合、スラット100の鏡面光沢度は、スラット色が濃いグレイの場合が最も高く、6.1である。これに対して比較例のスラットの鏡面光沢度は、スラット色が淡いグレイの場合が最も低く、62.2である。このように、入射光が85度の場合、スラット100の最も高い鏡面光沢度は、比較例のスラットの最も低い鏡面光沢度よりも非常に低く、スラット表面100aの光沢度が低いことが明らかである。
【0038】
以上、スラット100の鏡面光沢度について説明した。次に、各入射角におけるスラット100、比較例1の遮熱スラット、比較例2の一般のスラットの可視光の正反射率を、
図8を参照しながら説明する。
図8は、スラット100と比較例のスラットの各入射角における可視光の正反射率と分光反射率を示す図であり、(a)は入射角30°の場合の分光反射率を示し、(b)は入射角60°の場合の分光反射率を示し、(c)は、(a)及び(b)にJIS R3106(2019)の可視光反射率の重価係数を乗じて加重平均して算出した入射角30°及び60°の正反射率を示す棒グラフである。
【0039】
光源200からの入射角が30°の場合、
図8(a)、(c)に示したように、スラット100の正反射率は0.27であるのに対し、比較例1の正反射率は1.11、比較例2の正反射率は1.10である。また、光源200からの入射角が60°の場合、
図8(b)、(c)に示したように、スラット100の正反射率は0.38であるのに対し、比較例1の正反射率は3.31、比較例2の正反射率は3.15である。
【0040】
このように、スラット100は、入射角30度及び60度における可視光領域でのスラット表面100aの正反射率が約0.4%以下であるため、各入射角における99%を超えるほとんどの可視光がスラット表面100aにおいて吸収又は拡散反射される。よって、太陽の位置に応じてスラット角度を変更しても、スラット100の傾斜角度に依存することなくグレアを抑制できる。
【0041】
以上、スラット100の正反射率について比較例1の遮熱スラット及び比較例2の一般のスラットの正反射率と比較して説明した。次に、各入射角におけるスラット100、比較例1の遮熱スラット、比較例2の一般のスラットの日射遮蔽率について、
図9を参照しながら説明する。
図9は、スラット100と比較例のスラットの日射反射率を示す図である。
【0042】
日射反射率は、
図9に示したように、スラット100、比較例1及び比較例2が淡いグレイである場合、スラット100は65.1%、比較例1は66.0%、比較例2は59.7%である。このように、スラット100は比較例2の一般のスラットよりも日射反射率が大きく、遮熱性能を高くすることができる。
【0043】
(第1の実施形態の効果)
以上説明したように、本実施形態によれば、複数の樹脂ビーズ122が分散されるとともに表面色を呈するための意匠顔料を含む熱硬化性樹脂層124からなる塗膜120によりスラット表面を凹凸面に形成するため、グレア抑制効果を有さない一般スラットと同様の加工工程にてスラット100を製造することができ、スラット100の意匠性が一般スラットに近くなる。また、凹凸面によって外光を拡散反射させてグレアを抑制できる。よって、グレア現象を防止しつつ意匠性を向上させることができる。
【0044】
また、塗膜120の平均膜厚は30μm以下、樹脂ビーズ122の塗膜厚方向平均長さは40μm以下であり、少なくとも一部の樹脂ビーズ122の大きさを平均塗膜厚よりも大きくすることで、熱可塑性樹脂層内に塗膜厚よりも大きな樹脂ビーズ122を分散させた。このため、スラット表面100aになだらかな凹凸が形成されて意匠性での不具合を解消でき、意匠性を向上させることができる。また、凹凸面によって外光を拡散反射させてグレアを抑制できる。
【0045】
また、スラット表面100aは、「JIS Z8741(1997)」にて定める85度における鏡面光沢度が、7以下であるようにしたことで、外光の大部分を拡散反射させることができるため、グレアを抑制できる。このように、グレア現象を防止しつつ意匠性を向上させることができる。
【0046】
また、入射角30度及び60度における可視光領域でのスラット表面100aの正反射率を0.7%以下としたことで、各入射角における99%を超えるほとんどの可視光がスラット表面100aにおいて吸収又は拡散反射されるため、スラット100の傾斜角度に依存することなくグレアを抑制できる。
【0047】
また、意匠顔料を近赤外線領域での反射性能が高い太陽熱遮蔽顔料としたことにより、一般的なスラット加工工程と同様の工程にて、グレア抑制性能と遮熱性能を兼ね備えたスラットを得ることができる。
【0048】
また、塗膜120における樹脂ビーズ122の比率を5~15%にしたことにより、スラット表面に適度な凹凸を形成して外光を拡散反射させることができる。
【0049】
また、樹脂ビーズ122の平均粒径を20~35μmにすることで、スラット表面100aに塗膜120によるなだらかな凹凸が形成される。
【0050】
また、グレア現象を防止しつつ意匠性を向上させた横型ブラインド10とすることができ、複数のスラット100によって、隣り合う一方のスラット上面で反射した外光が、他方のスラット下面でも反射し、拡散反射される割合が更に増えるため、確実にグレアを抑制して、横型ブラインド10を設置した空間内にいる居住者の不快感を解消できる。
【0051】
(第2の実施形態)
第2の実施形態の縦型ブラインド20について、
図10を参照しながら説明する。
図10は、本実施形態にかかる縦型ブラインド20の斜視図である。本実施形態の縦型ブラインド20は、ルーバー300である点が第1の実施形態と異なるものである。本実施形態では、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0052】
本実施形態の縦型ブラインド20は、
図10に示したように、ヘッドレール22と、ヘッドレール22の下方に吊り下げられるルーバー(スラット)300と、ルーバー300のヘッドレール22の長手方向への移動と回転を操作可能な操作部24と、を備えて構成される。
【0053】
ルーバー300は、上記第1の実施形態のスラット100と同様に、複数の樹脂ビーズが分散されるとともに表面色を呈するための意匠顔料を含む熱硬化性樹脂層からなる塗膜を有して構成される。
【0054】
(第2の実施形態の効果)
以上説明したように、本実施形態によれば、ルーバー300及びこれを備えた縦型ブラインド20は、第1の実施形態のスラット100及び横型ブラインド10と同様の効果を有する。
【0055】
(第3の実施形態)
第3の実施形態の横型ブラインドについて、
図11を参照しながら説明する。
図11は、本実施形態にかかる横型ブラインドのスラット400を説明するための図であり、(a)はスラット400の加工工程を示すフローチャートであり、(b)はスラット400の部分断面図である。本実施形態の横型ブラインドは、スラット400の構成が第1の実施形態と異なるものである。本実施形態では、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0056】
本実施形態のスラット400は、スラット表面に形成される凹凸面が、砂粒子によるブラスト加工により塗膜420の表面を削り取ることで形成されるものである。スラット400の加工工程について、
図11(a)を参照しながら説明する。
【0057】
まず、スラット基材410へ塗膜420を形成するための熱硬化性樹脂を塗布する(ステップ100)。
次に、熱硬化性樹脂のスラット基材410への焼付を行う(ステップ110)。
次に、冷却を行うことによって、塗膜420を形成する(ステップ120)。
次に、塗膜420に微細な砂粒子によるサンドブラスト加工を施し、塗膜420の表面を削り取る(ステップ130)。
すると、
図11(b)に示したように、塗膜420の表面に凹凸420aが形成される(ステップ140)。
次に、スラット基材410をロールフォーミングする(ステップ150)。
このようにして、
図11(b)に示したような塗膜420に凹凸420aが形成されたスラット400が成形される(ステップ160)。
【0058】
(第3の実施形態の効果)
以上説明したように、本実施形態によれば、スラット400及びこれを備えた横型ブラインドは、第1の実施形態のスラット100及び横型ブラインド10と同様の効果を有する。
【0059】
(第4の実施形態)
第4の実施形態の横型ブラインドについて、
図12を参照しながら説明する。
図12は、本実施形態にかかる横型ブラインドのスラット500を説明するための図であり、(a)はスラット500の加工工程を示すフローチャートであり、(b)はスラット500の部分断面図である。本実施形態の横型ブラインドは、スラット500の構成が第1の実施形態と異なるものである。本実施形態では、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0060】
本実施形態のスラット500は、スラット表面に形成される凹凸面が、凹凸を備えたコマ(フォーミングロール)を用いたロールフォーミングにより成型時に塗膜520の表面を変形させて形成されるものである。スラット500の加工工程について、
図12(a)を参照しながら説明する。
【0061】
まず、スラット基材510へ塗膜520を形成するための熱硬化性樹脂を塗布する(ステップ200)。
次に、熱硬化性樹脂のスラット基材510への焼付を行う(ステップ210)。
次に、冷却を行うことによって、塗膜520を形成する(ステップ220)。
次に、塗膜520を施したスラット基材510を微細な凹凸を備えたコマを用いてロールフォーミングを施す(ステップ230)。
すると、
図12(b)に示したように、塗膜520の表面に凹凸520aが形成される(ステップ240)。
このようにして、
図12(b)に示したような塗膜520に凹凸520aが形成されたスラット500が成形される(ステップ250)。
【0062】
(第4の実施形態の効果)
以上説明したように、本実施形態によれば、スラット500及びこれを備えた横型ブラインドは、第1の実施形態のスラット100及び横型ブラインド10と同様の効果を有する。
【0063】
(第5の実施形態)
第5の実施形態の横型ブラインドについて、
図13を参照しながら説明する。
図13は、本実施形態にかかる横型ブラインドのスラット600を説明するための図であり、(a)はスラット600の加工工程を示すフローチャートであり、(b)はスラット600の部分断面図である。本実施形態の横型ブラインドは、スラット600の構成が第1の実施形態と異なるものである。本実施形態では、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0064】
本実施形態のスラット600は、スラット表面に形成される凹凸面が、熱硬化性樹脂層を構成する熱硬化性樹脂が含有する物質が焼付時に消失して形成される孔によって形成されるものである。
【0065】
スラット600の加工工程について、
図13(a)を参照しながら説明する。
スラット基材610へ塗布する熱硬化性樹脂は、固形ワックス(物質)WXを含有している。含有物である固形ワックスWXは、焼付により焼失する物質である。本実施形態では、含有物を固形ワックスWXとしたが、薬品や泡などでもよい。
スラット基材610へ塗膜620を構成するための上記熱硬化性樹脂を塗布する(ステップ300)。
次に、
図13(b)に示したように、熱硬化性樹脂のスラット基材610への焼付を行う。このとき、含有物である固形ワックスWXが焼失する(ステップ310)。
すると、
図13(c)に示したように、塗膜620には、固形ワックスWXが消失した部分に孔620bが形成される。このため、スラット表面に凹凸620aが形成される(ステップ320)。
次に、冷却を行うことによって、塗膜620を形成する(ステップ330)。
次に、スラット基材610にロールフォーミングを施す(ステップ340)。
このようにして、
図13(c)に示したような塗膜620に凹凸620aが形成されたスラット600が成形される(ステップ350)。
【0066】
(第5の実施形態の効果)
以上説明したように、本実施形態によれば、スラット600及びこれを備えた横型ブラインドは、第1の実施形態のスラット100及び横型ブラインド10と同様の効果を有する。
【0067】
(第6の実施形態)
第6の実施形態の横型ブラインドについて、
図14を参照しながら説明する。
図14は、本実施形態にかかる横型ブラインドのスラット700を説明するための図であり、(a)はスラット700の加工工程を示すフローチャートであり、(b)はスラット700の部分断面図である。本実施形態の横型ブラインドは、スラット700の構成が第1の実施形態と異なるものである。本実施形態では、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0068】
本実施形態のスラット700は、スラット表面に形成される凹凸面が、エンボス加工を施したスラット基材710の表面に塗膜720を形成することによって形成されるものである。スラット700の加工工程について、
図14(a)を参照しながら説明する。
【0069】
まず、スラット基材710にエンボス加工を施す(ステップ400)。
次に、スラット基材710へ塗膜720を形成するための熱硬化性樹脂を塗布する(ステップ410)。
すると、スラット表面に凹凸720aが形成される(ステップ420)。
つぎに、熱硬化性樹脂のスラット基材710への焼付を行う(ステップ430)。
次に、冷却を行うことによって、塗膜720を形成する(ステップ440)。
次に、スラット基材710にロールフォーミングを施す(ステップ450)。
このようにして、
図14(b)に示したように、塗膜720に凹凸720aが形成されたスラット700が成形される(ステップ460)。
【0070】
(第6の実施形態の効果)
以上説明したように、本実施形態によれば、スラット700及びこれを備えた横型ブラインドは、第1の実施形態のスラット100及び横型ブラインド10と同様の効果を有する。
【0071】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0072】
また、上記第1の実施形態では、スラット表面100aは、「JIS Z8741(1997)」にて定める85度における鏡面光沢度が7以下としたが、本発明はこの例に限定されない。グレア現象を防止しつつ意匠性を向上させることができれば、任意に設計することができる。第2~第6の実施形態も同様である。
【0073】
また、上記第1の実施形態では、入射角が30度及び60度における可視光領域でのスラット表面100aの正反射率が0.7%以下としたが、本発明はこの例に限定されない。グレア現象を防止しつつ意匠性を向上させることができれば、任意に設計することができる。第2~第6の実施形態も同様である。
【0074】
また、上記第1の実施形態では、意匠顔料は、近赤外線領域での反射性能が高い太陽熱遮蔽顔料としたが、本発明はこの例に限定されない。グレア現象を防止しつつ意匠性を向上させることができれば、任意に設計することができる。第2~第6の実施形態も同様である。
【0075】
例えば、上記第1の実施形態では、塗膜120の平均膜厚は30μm以下、樹脂ビーズ122の塗膜厚方向平均長さは40μm以下であり、少なくとも一部の樹脂ビーズ122の大きさを平均塗膜厚よりも大きくすることで、スラット表面100aに塗膜120によるなだらかな凹凸面が形成される構成としたが、本発明はこの例に限定されない。グレア現象を防止しつつ意匠性を向上させることができれば、任意に設計することができる。第2の実施形態も同様である。
【0076】
また、上記第1の実施形態では、塗膜120における樹脂ビーズ122の比率は、5~15%としたが、本発明はこの例に限定されない。グレア現象を防止しつつ意匠性を向上させることができれば、任意に設計することができる。第2の実施形態も同様である。
【0077】
また、上記第1の実施形態では、樹脂ビーズ122の平均粒径は20~35μmとしたが、本発明はこの例に限定されない。グレア現象を防止しつつ意匠性を向上させることができれば、任意に設計することができる。第2の実施形態も同様である。
【符号の説明】
【0078】
10 横型ブラインド
12 ヘッドボックス
14 ラダーコード
16 ボトムレール
18 昇降コード
19 操作部
20 縦型ブラインド
22 ヘッドレール
24 操作部
100 スラット
100a スラット表面
110、410、510、610、710 スラット基材
120、420、520、620、720 塗膜
122 樹脂ビーズ
124 熱硬化性樹脂層
200 光源
210 受光器
420a、520a、620a、720a 凹凸
620b 孔
NL 入射光
SL 正反射光
KL 拡散反射光
WX 固形ワックス(物質)