(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】被膜形成方法、及び被覆材セット
(51)【国際特許分類】
B05D 1/36 20060101AFI20241213BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20241213BHJP
E04F 13/18 20060101ALI20241213BHJP
【FI】
B05D1/36 Z
B05D7/24 303A
B05D7/24 303J
E04F13/18 A
(21)【出願番号】P 2021086841
(22)【出願日】2021-05-24
【審査請求日】2023-10-17
(31)【優先権主張番号】P 2020090629
(32)【優先日】2020-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】599071496
【氏名又は名称】ベック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】川原 道生
(72)【発明者】
【氏名】金野 克博
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-216223(JP,A)
【文献】特開2017-087164(JP,A)
【文献】特開2016-179646(JP,A)
【文献】特開平11-172202(JP,A)
【文献】特開2019-122956(JP,A)
【文献】特開2012-217893(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00-7/26
B32B 1/00-43/00
E04F 13/00-13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に対し、第1被覆材及び第2被覆材を順に塗付する被膜形成方法であって、
上記第1被覆材は、樹脂成分
(A)の固形分100重量部に対し、粉体成分
(B)を70~1000重量部含み、
上記第2被覆材は、樹脂成分
(C)の固形分100重量部に対し、鱗片状粒子
(D)を5~200重量部含
み、
上記鱗片状粒子(D)は、短径2mm超の大粒子(d1)、短径0.7mm超2mm以下の中粒子(d2)、及び短径0.7mm以下の小粒子(d3)を含むことを特徴とする被膜形成方法。
【請求項2】
上記中粒子(d2)及び小粒子(d3)と上記大粒子(d1)との重量比[(d2)+(d3)]/(d1)が、1以上50以下であることを特徴とする請求項1に記載の被膜形成方法。
【請求項3】
積層被膜を形成するための被覆材セットであって、
上記被覆材セットは、少なくとも第1被覆材及び第2被覆材からなり、
上記第1被覆材は、樹脂成分
(A)の固形分100重量部に対し、粉体成分
(B)を70~1000重量部含み、
上記第2被覆材は、樹脂成分
(C)の固形分100重量部に対し、鱗片状粒子
(D)を5~200重量部含
み、
上記鱗片状粒子(D)は、短径2mm超の大粒子(d1)、短径0.7mm超2mm以下の中粒子(d2)、及び短径0.7mm以下の小粒子(d3)を含むことを特徴とする被覆材セット。
【請求項4】
上記中粒子(d2)及び小粒子(d3)と上記大粒子(d1)との重量比[(d2)+(d3)]/(d1)が、1以上50以下であることを特徴とする請求項3に記載の被覆材セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な被膜形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物や土木構造物に自然石調の美観性を付与する装飾仕上げ工法が知られている。近年、自然石特有の多彩な色彩等の意匠性を有する装飾仕上げが望まれるケースも増えている。このような工法として、例えば、特許文献1には、下地材上に複数色の着色雲母(鱗片状粒子)を混合した樹脂を塗付する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1のような着色雲母(鱗片状粒子)を含む被覆材により形成される被膜は伸び性に劣る傾向がある。特に、雲母のような層状化合物は、その劈開性により剥離しやすい性質がある。そのため、下地の変位に追従することができず、割れ、剥れ等が発生しやすくなるおそれがあった。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みなされたものであり、下地への追従性に優れ、美観性に優れた被膜を形成することができる被膜形成方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、少なくとも2種の特定の被覆材を順に塗付する被膜形成方法に想到し、本発明の完成に至った。すなわち、本発明は以下の特徴を有するものである。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の特徴を有するものである。
1.基材に対し、第1被覆材及び第2被覆材を順に塗付する被膜形成方法であって、
上記第1被覆材は、樹脂成分(A)の固形分100重量部に対し、粉体成分(B)を70~1000重量部含み、
上記第2被覆材は、樹脂成分(C)の固形分100重量部に対し、鱗片状粒子(D)を5~200重量部含み、
上記鱗片状粒子(D)は、短径2mm超の大粒子(d1)、短径0.7mm超2mm以下の中粒子(d2)、及び短径0.7mm以下の小粒子(d3)を含むことを特徴とする被膜形成方法。
2.上記中粒子(d2)及び小粒子(d3)と上記大粒子(d1)との重量比[(d2)+(d3)]/(d1)が、1以上50以下であることを特徴とする1.に記載の被膜形成方法。
3.積層被膜を形成するための被覆材セットであって、
上記被覆材セットは、少なくとも第1被覆材及び第2被覆材からなり、
上記第1被覆材は、樹脂成分(A)の固形分100重量部に対し、粉体成分(B)を70~1000重量部含み、
上記第2被覆材は、樹脂成分(C)の固形分100重量部に対し、鱗片状粒子(D)を5~200重量部含み、
上記鱗片状粒子(D)は、短径2mm超の大粒子(d1)、短径0.7mm超2mm以下の中粒子(d2)、及び短径0.7mm以下の小粒子(d3)を含むことを特徴とする被覆材セット。
4.上記中粒子(d2)及び小粒子(d3)と上記大粒子(d1)との重量比[(d2)+(d3)]/(d1)が、1以上50以下であることを特徴とする請求項3に記載の被覆材セット。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、下地への追従性に優れ、美観性に優れた被膜を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0010】
本発明は、基材に対し、特定の第1被覆材及び特定の第2被覆材を順に塗付することを特徴とする被膜形成方法に関するものである。
まず、第1被覆材、第2被覆材について説明する。
【0011】
<第1被覆材>
本発明の第1被覆材は、樹脂成分(A)及び粉体成分(B)を含むものであり、ベース層を形成する被覆材である。
樹脂成分(A)(以下「(A)成分」ともいう)としては、特に限定されないが、水溶性樹脂及び水分散性樹脂(樹脂エマルション)から選ばれる1種以上が好適である。樹脂の種類としては、例えば、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂等、あるいはこれらの複合系等を挙げることができる。これらは1種または2種以上で使用することができる。また、これら(A)成分は架橋反応性を有するものであってもよい。架橋反応性を有する(A)成分を使用した場合は、被膜の耐水性、耐候性、耐薬品性等を向上させることができる。
【0012】
本発明では、(A)成分として、アクリル樹脂エマルション(A1)を含むことが好ましい。さらにアクリル樹脂エマルション(以下「(A1)成分」ともいう)は、樹脂構成成分として、炭素数3以上のアルキル主鎖を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(p)(以下「(p)成分」ともいう)を含むことが好ましい。なお、本発明では、アクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルとを併せて(メタ)アクリル酸アルキルエステルと表記している。
【0013】
(p)成分は、アルキル部分に炭素数3以上のアルキル主鎖を有する。このアルキル主鎖は直鎖状であり、環状を除く。(p)成分のアルキル部分は、このようなアルキル主鎖を有する限り、種々の側鎖(例えば、アルキル主鎖よりも少ない炭素数のアルキル基等)を有するものであってもよい。(p)成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸1-エチルプロピル、(メタ)アクリル酸t-ペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸2-メチルブチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸3-メチルブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸2-メチルペンチル、(メタ)アクリル酸4-メチルペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ヘプチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸n-ウンデシル、(メタ)アクリル酸n-ラウリル等が挙げられる。これらは、1種または2種以上で使用できる。これらの中でも、(p)成分としては、アルキル部分に炭素数4以上(より好ましくは4以上8以下)のアルキル主鎖を有するものが好適である。
【0014】
(p)成分は、(A1)成分の樹脂構成成分中に好ましくは20重量%以上(より好ましくは25~70重量%、さらに好ましくは30~60重量%)含まれる。(p)成分がこのような比率で含まれることにより、下地への追従性を高めることができる。なお、本発明において、「α~β」は「α以上β以下」と同義である。
【0015】
(A1)成分は、樹脂構成成分として、(p)成分以外のモノマー(以下「(q)成分」ともいう)を含むことができる。(q)成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、あるいは、カルボキシル基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、ピリジン系モノマー、水酸基含有モノマー、ニトリル基含有モノマー、アミド基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、カルボニル基含有モノマー、アルコキシシリル基含有モノマー、芳香族モノマー等が挙げられる。これらは、1種または2種以上で使用できる。これら(q)の構成比率は、(A)成分の樹脂構成成分中に、好ましくは80重量%以下(より好ましくは10~75重量%、より好ましくは15~70重量%)である。
【0016】
(A1)成分としては、シリコーン樹脂を含むアクリルシリコーン樹脂(A1’)(以下「(A1’)成分」ともいう)が使用できる。このような(A1’)成分としては、(A1)成分のエマルション粒子中にシリコーン樹脂を含む形態のものが使用できる。シリコーン樹脂は、エマルション粒子内において、アクリル樹脂と混在する状態であってもよいし、アクリル樹脂と化学的に結合した状態であってもよい。このようなシリコーン樹脂を含む(A1’)成分の使用は、本発明の効果向上の点で好適である。
【0017】
シリコーン樹脂(以下「(s)成分」ともいう)は、例えば、シロキサン化合物、アルコキシシラン化合物等のシリコーン成分を重合して得ることができる。シロキサン化合物としては、例えば、環状シロキサン化合物、直鎖状シロキサン化合物、分岐状シロキサン化合物等が挙げられる。このうち、環状シロキサン化合物としては、例えば、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等が挙げられる。アルコキシシラン化合物としては、分子中に1個以上のアルコキシル基を有するシラン化合物が使用でき、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン等の他、ビニルメチルジメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤等が挙げられる。これらは、1種または2種以上で使用できる。(s)成分は、(A1’)成分の樹脂構成成分中に、好ましくは0.5~30重量%(より好ましくは1~25重量%)含まれる。
【0018】
(A1)成分は、例えば、(p)成分及び必要に応じ(q)成分を含むモノマー群を乳化重合すること等によって製造できる。(s)成分を含む(A1’)成分は、例えば、(s)成分の存在下、(p)成分及び必要に応じ(q)成分を含むモノマー群を乳化重合すること等によって製造できる。乳化重合においては、公知の方法を採用することができる。
【0019】
重合方法としては公知の方法を採用すればよく、通常の乳化重合の他、ソープフリー乳化重合、フィード乳化重合、シード乳化重合等を採用することもできる。重合時には、乳化剤、開始剤、分散剤、重合禁止剤、重合抑制剤、緩衝剤、連鎖移動剤等を使用することができる。
【0020】
乳化剤としては、乳化重合に使用可能な各種界面活性剤が使用でき、これらは重合性不飽和二重結合を有する反応性タイプ(反応性界面活性剤)であってもよい。乳化剤としては、好ましくはアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤をそれぞれ単独でまたは組み合わせて用いればよい。
【0021】
上記(A)成分のガラス転移温度(以下、単に「Tg」という。)は、好ましくは-50℃~50℃に設定する。Tgがこのような範囲内であれば、本発明の効果を安定して得ることができる。なお、本発明におけるTgは、Foxの計算式により求められる値である。また、上記(A)成分の平均粒子径は、好ましくは300nm以下(より好ましくは20~200nm)である。平均粒子径がこのような範囲内であれば、被膜の耐水性、耐候性、耐薬品性等を向上させることができる。なお、ここに言う平均粒子径は、動的光散乱法により測定される値である。
【0022】
粉体成分(B)(以下「(B)成分」ともいう)としては、特に限定されないが、着色顔料(b1)、及び着色顔料以外の粉体成分(b2)等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。
【0023】
着色顔料(b1)(以下「(b1)成分」ともいう)は、第1被覆材に色彩、隠ぺい性等を付与することができる成分である。(b1)成分としては、例えば、酸化第二鉄(弁柄)、黄色酸化鉄、群青、コバルトグリーン等の無機有彩色顔料;アゾ系、ナフトール系、ピラゾロン系、アントラキノン系、ペリレン系、キナクリドン系、ジスアゾ系、イソインドリノン系、ベンゾイミダゾール系、フタロシアニン系、キノフタロン系等の有機有彩色顔料;カーボンブラック、鉄‐マンガン複合酸化物、鉄‐銅‐マンガン複合酸化物、鉄‐クロム‐コバルト複合酸化物、銅‐クロム複合酸化物、銅‐マンガン‐クロム複合酸化物、黒色酸化鉄等の黒色顔料;酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ等の白色顔料;その他光輝性顔料(パール顔料、アルミニウム顔料、メタリック顔料等)、蓄光顔料、蛍光顔料等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。(b1)成分の平均粒子径は、好ましくは1μm以下(より好ましくは0.01~0.9μm)である。着色顔料の平均粒子径は、レーザ回折式粒度分布測定装置によって測定される。
【0024】
上記着色顔料以外の粉体成分(以下「(b2)成分」ともいう)としては、例えば、重質炭酸カルシウム、軽微性炭酸カルシウム、カオリン、クレー、陶土、チャイナクレー、珪藻土、含水微粉珪酸、タルク、マイカ、バライト粉、硫酸バリウム、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、シリカ粉、水酸化アルミニウム等の体質顔料;シリカ粒子、寒水石、珪藻土、珪石、珪砂、砂利、ガラスビーズ、樹脂ビーズ、金属粒、または岩石、ガラス、陶磁器、貝殻、焼結体、コンクリート、モルタル、プラスチック、ゴム等の破砕品等の骨材等が挙げられる。これらは着色が施されたものであってもよい。これらは1種または2種以上で使用できる。
【0025】
また、(b2)成分は、粒子径1~1000μm(より好ましくは5~850μm、さらに好ましくは10~600μm)であることが好ましい。また、例えば、粒子径が53~300μmの粉粒体(b2’)を、(b2)成分総量中に好ましくは40重量%以上(より好ましくは45重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上)含む場合、よりいっそう美観性に優れた被膜を形成することができる。なお、その上限は好ましくは100重量%以下(より好ましくは95重量%以下、さらに好ましくは90重量%以下)である。このような態様は、本発明の効果向上の点でいっそう好ましいものである。なお、(b2)成分の粒子径は、20μm超の場合には、JIS Z8801-1:2000に規定される金属製網ふるいを用いてふるい分けを行うことにより測定できる。また、20μm以下の場合には、レーザー回折式粒子径分布測定装置を用いて測定できる。
【0026】
第1被覆材は、(A)成分の固形分100重量部に対し、(B)成分を70~1000重量部(好ましくは100~800重量部、より好ましくは130~600重量部)含むことを特徴とする。これにより、下地への追従性に優れた被膜を形成することができる。
【0027】
また、本発明では、(B)成分中に、(b2)成分を好ましくは50重量%以上(より好ましくは55~98重量%、さらに好ましくは60~95重量%)含むことが好ましい。(b2)成分をこのような比率で含むことにより、基材への追従性をよりいっそう高めることができる。さらに、粒子径が53~300μmの粉粒体(b2’)を含むことにより、ベース層表面に(b2’)成分に由来する微細な凹凸を形成することが可能となる。これにより、本発明の効果をよりいっそう高めることができるとともに、意匠層の鱗片状粒子端部の跳ね上がり等に由来するザラツキ感を抑制することができる。
【0028】
第1被覆材は、上記成分を公知の方法によって均一に混合することで製造することができるが、必要に応じて、通常被覆材に使用可能なその他の成分を混合することもできる。このような成分としては、例えば、顔料分散剤、乳化剤、増粘剤、造膜助剤、レベリング剤、カップリング剤、湿潤剤、可塑剤、凍結防止剤、pH調整剤、乾燥調整剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、消泡剤、吸着剤、脱臭剤、繊維類、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、触媒、架橋剤等が挙げられる。
【0029】
<第2被覆材>
本発明の第2被覆材は、意匠層を形成する被覆材であり、樹脂成分(C)、鱗片状粒子(D)を含むことを特徴とする。
【0030】
第2被覆材における樹脂成分(C)(以下「(C)成分」ともいう)としては、特に限定されず、上記第1被覆材の(A)成分と同様の樹脂から選ばれる樹脂を使用することができる。これらは1種または2種以上で使用することができる。本発明では、(C)成分としてアクリル樹脂エマルション(C1)を含むことが好ましい。アクリル樹脂エマルション(C1)(以下「(C1)成分」ともいう)は、樹脂構成成分として上記(p)成分を含むことが好ましい。(p)成分は、(C1)成分の構成成分中に、好ましくは1~50重量%(より好ましくは2~40重量%、さらに好ましくは5重量~35重量%)である。また、(C1)成分中の(p)成分の含有量は、(A1)成分の(p)成分の含有量よりも少ないことが好ましい。これにより、下地への追従性に優れるとともに、形成被膜の強度、美観性等においても有利である。
【0031】
鱗片状粒子(D)(以下「(D)成分」ともいう)は、形成被膜に優れた意匠を付与するものである。また、(D)成分は、形成被膜の薄膜化、軽量化等にも有利である。本発明では、樹脂成分(C)の固形分100重量部に対して、鱗片状粒子(D)を5~200重量部(好ましくは10~100重量部、より好ましくは15~80重量部)を含むことを特徴とする。上記範囲を満たす場合、自然石調等の意匠性を有する被膜を得ることができる。
【0032】
このような(D)成分としては、例えば、雲母(マイカ)、セリサイト、クレー、タルク、板状カオリン、硫酸バリウムフレーク、ガラスフレーク、アルミナフレーク、貝殻片、金属片等の無機質片、あるいはゴム片、プラスチック片、木片等が挙げられる。また、これらを基体粒子とし着色処理したものが挙げられる。着色処理としては、特に限定されないが、例えば、顔料や染料等を含む着色剤を基体粒子に被覆する(あるいは吸着させる)方法、焼成処理等を基体粒子に施す方法等が挙げられる。本発明では、着色剤で被覆処理された雲母(着色マイカ)を使用することが好適である。(D)成分は1種または2種以上(1色または2色以上)を組み合わせて使用することができ、種々の色彩を表出することができる。本発明では、着色処理された鱗片状粒子(鱗片状着色粒子)、特に着色処理された雲母(着色マイカ)を使用することが好適である。
【0033】
本発明における「鱗片状粒子」としては、その形状が鱗片状(薄片状)であれば特に限定されないが、アスペクト比(「短径/厚み」の比)が、1.5~2000(より好ましくは2~500、さらに好ましくは3~100)の粒子であることが好ましい。また、短径と長径との比(短径/長径)が0.3~1(より好ましくは0.4~1、さらに好ましくは0.5~1)であることが好ましい。鱗片状粒子の大きさが、上記範囲を満たす場合、その形状が視認されやすく、意匠として好適である。さらに、意匠層の薄膜化、軽量化等に優れた意匠層を形成することができる。なお、ここに言う「短径」、「長径」、「厚み」とは、鱗片状粒子を水平面に安定に静置させ、上から顕微鏡を用いて観察し最も短い部分の長さを「短径」、最も長い部分の長さを「長径」、底面からの最大高さを「厚み」として算出されるものである。
【0034】
本発明では、上記(D)成分として、短径2mm超の大粒子(d1)(以下「大粒子(d1)」ともいう)を含むことが好ましい。上記大粒子(d1)を含むことにより、形成被膜に大柄意匠を効果的に付与することができる。
【0035】
さらに、上記(D)成分として、上記大粒子(d1)に加えて、短径0.7mm超2mm以下の中粒子(d2)(以下「中粒子(d2)」ともいう)、及び短径0.7mm以下の小粒子(d3)(以下「小粒子(d3)」ともいう)を含むことが好ましい。このように大きさの異なる(D)成分を併用することより、(D)成分端部の跳ね上がりを抑制することができ、ザラツキ感が少なく平坦な美観性に優れた形成被膜を形成することができるとともに、鱗片状粒子の偏りが生じにくく、模様のバランス(配置)が良好な被膜を形成することができる。これにより自然石調等の色彩、及び大柄模様等の意匠性を付与することができ、かつ形成被膜の強度が高まり下地への追従性において有利である。具体的に、上記中粒子(d2)は、主に、形成被膜のベース模様(ベース色)として視認されるものである。さらに、上記小粒子(d3)は、形成被膜に小柄な意匠を付与するとともに、形成被膜の隠蔽性等を付与する成分である。
【0036】
本発明では、上記大粒子(d1)、上記中粒子(d2)、上記小粒子(d3)を特定重量比率で併用することが好ましく、上記中粒子(d2)及び小粒子(d3)と上記大粒子(d1)との重量比[(d2)+(d3)]/(d1)が、1以上50以下(より好ましくは3以上40以下、さらに好ましくは5以上30以下)であることが好ましい。このような範囲を満たす場合、上記大粒子(d1)の偏りが生じにくく、上記中粒子(d2)及び小粒子(d3)により形成されたベース模様中に、上記大粒子(d1)による大柄模様のバランス(配置)が良好な美観性に優れた形成被膜を形成することができる。さらには、上記中粒子(d2)及び小粒子(d3)によって、上記大粒子(d1)の端部跳ね上がりを十分に抑制することができ、よりいっそうザラツキ感の少ない平坦な被膜を形成することができる。さらに、上記中粒子(d2)と小粒子(d3)との重量比(d2)/(d3)が、1以上30以下(より好ましくは1.5以上20以下、さらに好ましくは2以上10以下)であることが好ましい。このような範囲を満たす場合、上記効果を一層高めることができる。
【0037】
このような効果が得られる作用機構としては、限定されるものではないが、例えば、大粒子(d1)よりも小さい中粒子(d2)及び小粒子(d3)は、大粒子(d1)のスペーサーとして作用し、大粒子(d1)の分散性に寄与する。また、中粒子(d2)よりも小さい小粒子(d3)は中粒子(d2)のスペーサーとして作用し、中粒子(d2)の分散性に寄与する。これにより、被覆材中に分散する(D)成分は、大粒子(d1)、中粒子(d2)、及び小粒子(d3)がそれぞれ良好な分散性を保つことができるものと推察される。特に、中粒子(d2)を比較的多く含む被覆材中では、中粒子(d2)中に、大粒子(d1)と小粒子(d3)がバランス良く分散されるものと推察される。このような被覆材を塗装することによって、各粒子が偏りを生じ難く、模様のバランスが良好な被膜が形成され、粒子端部の跳ね上がりも十分に抑制することができると推察される。
【0038】
なお、本発明において(D)成分の短径は、上述のとおり、鱗片状粒子を水平面に安定に静置させた場合に最も短い部分の長さのことをいうが、上記大粒子(d1)、上記中粒子(d2)、上記小粒子(d3)は、JIS Z8801-1:2000に規定される金属製網ふるい(標準篩)を使用して篩分けして分類することができる。この場合、標準篩の目開きを「a」とすると、その対角線の長さ「L=√2a」が短径に相当するとみなすことができる。具体的に、(D)成分を100g秤量し、JIS K 0069に準拠する試験方法(手動ふるい分け)により10分間篩分けを行い、
・12メッシュ(a=1.4mm、L=2.0mm)の篩を通過しないものを大粒子(d1)、
・12メッシュ(a=1.4mm、L=2.0mm)の篩は通過するが、30メッシュ(a=0.5mm、L=0.7mm)の篩は通過しないものを中粒子(d2)、
・30メッシュ(a=0.5mm、L=0.7mm)の篩を通過するものを小粒子(d3)、
とする。
なお、大粒子(d1)の上限は、好ましくは6.5メッシュ(a=2.8mm、L=4.0mm)の篩を通過するもの(短径が4mm以下の粒子)が好ましい。一方、小粒子(d3)の下限は、好ましくは70メッシュ(a=0.21mm、L=0.3mm)の篩を通過しないもの(短径が0.3mm超の粒子)が好ましい。
【0039】
本発明において、上記(D)成分は、所望の意匠によって単色(1色のみ)または複数色を用いることができる。上記(D)成分が単色(1色のみ)の場合には、それぞれの粒子の形状に由来する模様を有する被膜を得ることができる。
【0040】
上記(D)成分が複数色の場合には、少なくとも2色以上(より好ましくは2~6色)の異なる粒子を含むことが好ましい。これにより、それぞれの粒子の形状に由来する模様を有するとともに、多彩な色彩等の意匠性を有する被膜を得ることができる。上記(D)成分を2色以上含む態様としては、所望の模様(意匠)により設定することができる。本発明では、上記大粒子(d1)と上記中粒子(d2)が異色の粒子を含むことが好ましい。これにより、大柄のアクセント意匠が効果的に視認され、美観性に優れた被膜を容易に形成することができる。また、上記小粒子(d3)は、上記大粒子(d1)または上記中粒子(d2)(より好ましくは上記中粒子(d2))と同色系のものを含むことが好ましい。これにより、形成被膜に奥行き感等が付与され、美観性をよりいっそう高めることができる。
【0041】
また、上記大粒子(d1)、上記中粒子(d2)、上記小粒子(d3)は、それぞれ2色以上の粒子を含むことができる。特に、上記大粒子(d1)を2色以上含む場合には、多彩感等が向上し、よりいっそう美観性を高めることができる。また、上記中粒子(d2)を2色以上含む場合には、形成被膜のベース模様(ベース色)となる中粒子(d2’)を中粒子(d2)中に50重量%以上(より好ましくは55重量%以上)含むことが好ましい。上記中粒子(d2’)は、単色(1色のみ)、あるいは同系色(近似色・類似色)の粒子を2種以上含むこともできる。これにより、上記大粒子(b1)によるアクセント意匠が視認されやすく、美観性を高めることができる。さらに、上記小粒子(b3)を2色以上含む場合には、上記中空粒子(d2’)と同色系の形成被膜のベース模様(ベース色)となる小粒子(d3’)を小粒子(d3)中に60重量%以上(より好ましくは65重量%以上)含むことが好ましい。
【0042】
なお、上記(D)成分において、異色とは、色差(△E)が、好ましくは10以上(より好ましくは15以上)のものをいう。また、同色系(近似色・類似色)とは、色差(△E)が、好ましくは10未満(好ましくは8以下)のものをいう。なお、ここに言う色差(△E)は、色差計を用いて測定される値であり、それぞれのL*値、a*値、b*値より下記式にて算出することができる。
<式>△E={(L *1-L *2) 2+(a *1-a *2) 2+(b *1-b *2) 2} 0.5
式中、
L *1、a *1、b *1はそれぞれ(B)成分の第1色のL *、a *、b *。
L *2、a *2、b *2はそれぞれ(B)成分の第2色のL *、a *、b *。
また、(D)成分のL*、a*、b*は、ガラス板上に、ガラス面が隠蔽されるまで(D)成分を載置し、その上にPEフィルム(無色透明)を被せた面を測定することにより、算出することができる。
【0043】
本発明の第2被覆材は、上記成分を公知の方法によって均一に混合することで製造することができるが、必要に応じて、通常被覆材に使用可能なその他の成分を混合することもできる。このような成分としては、例えば、着色顔料、体質顔料、繊維、造膜助剤、増粘剤、レベリング剤、カップリング剤、可塑剤、凍結防止剤、pH調整剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、分散剤、消泡剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、水等が挙げられる。
【0044】
本発明の被覆材は、水性被覆材であることが好ましい。また、被覆材のpHは、好ましくは7~12(より好ましくは7.5~11)である。このような範囲の場合、本発明の効果を十分に高めることができる。さらに、被覆材の不揮発分は、好ましくは10~80重量%(より好ましくは15~70重量%)である。このような範囲の場合、自然石特有の多彩な色彩等の意匠性を有し、ザラツキ感の少ない平坦な美観性に優れる形成被膜を得ることができる。なお、不揮発分は、各成分の配合比率調整等により調整することができる。
【0045】
<被膜形成方法>
本発明の被膜形成方法は、基材に対し、上記第1被覆材、及び上記第2被覆材を順に塗付することを特徴とする。例えば、
(1)基材に対し、第1被覆材を塗付し、ベース層を形成する工程、
(2)上記ベース層上に、第2被覆材を塗付し、意匠層を形成する工程、
を含む被膜形成方法等が挙げられる。これによりベース層と意匠層が積層した積層被膜(積層模様被膜)を形成することができる。
【0046】
基材は、建築物、土木構造物等の表面を構成するものである。このような基材としては、例えば、コンクリート、モルタル、サイディングボード、押出成形板、石膏ボード、スレート板、パーライト板、合板、煉瓦、プラスチック板、金属板、ガラス、磁器タイル等が挙げられる。これら基材は、その表面に、既に被膜が形成されたものや、壁紙が貼り付けられたもの等であってもよい。また、上記基材は、必要に応じ、基材の表面処理を行うことができる。表面処理としては、例えば、フィラー処理、パテ処理、サーフェーサー処理、シーラー処理等が挙げられる。
【0047】
上記(1)工程において、第1被覆材の塗付前には、必要に応じ、基材の表面処理を行うことができる。表面処理としては、例えば、フィラー処理、パテ処理、サーフェーサー処理、シーラー処理等が挙げられる。
【0048】
上記(1)の第1被覆材としては、上述の第1被覆材を使用する。第1被覆材の塗付方法としては、例えば、スプレー塗り、ローラー塗り、こて塗り、刷毛塗り等を採用することができる。また、これらを組み合わせてもよい。
【0049】
第1被覆材は、1回ないし複数回塗付することができる。第1被覆材の塗り回数は、好ましくは1回または2回である。第1被覆材の塗付け量は、塗付回数1回当たり好ましくは0.05~1kg/m 2(より好ましくは0.1~0.8kg/m 2)である。第1被覆材をこのような条件で塗付することにより、第2被覆材の塗付に適したべース層が形成でき、本発明の効果が得られやすくなる。
【0050】
第1被覆材の塗付時には水等の希釈剤を混合して粘性を適宜調製することもできる。希釈割合は、好ましくは0~20重量%である。塗装に供する第1被覆材の粘度は、好ましくは3~30Pa・s(より好ましくは4~20Pa・s)であり、チクソトロピーインデックスは、好ましくは2~9(より好ましくは3~8)である。なお、ここで言う粘度、チクソトロピーインデックスは、測定機器としてBH型粘度計を使用して得られる値(測定温度23℃)である。粘度は、回転数を20rpmとした場合の測定値である。チクソトロピーインデックスは、回転数2rpmにおける測定値を、回転数20rpmにおける測定値で除した値である。
【0051】
第1被覆材の乾燥は、好ましくは常温(0~40℃)で行えばよい。第1被覆材を複数回塗付する場合は、先の第1被覆材の被膜が乾燥した後、後の第1被覆材を塗付することが望ましい。
【0052】
上記(2)工程では、上記(1)工程で形成されたベース層上に、第2被覆材を塗付し、意匠層を形成する。第2被覆材としては、上述の第2被覆材を使用する。第2被覆材の塗付方法としては例えば、スプレー塗り、ローラー塗り、こて塗り、刷毛塗り等を採用することができる。本発明では、スプレー塗り、ローラー塗りが好ましく、特に、スプレーを用いた吹付け塗装により被膜を形成することが好ましい。これにより、鱗片状粒子(D)の偏りが生じにくく、模様のバランス(配置)が良好で、かつザラツキ感の少ない平坦で美観性に優れた形成被膜を簡便に形成することができる。
【0053】
本発明の第2被覆材の塗付け量は、特に限定されないが、塗付回数1回当たり好ましくは0.05~1kg/m 2(より好ましくは0.1~0.8kg/m 2)である。また、塗付回数は、所望の意匠を形成によって設定できるが、好ましくは1~2回(より好ましくは2回)である。このような場合、本発明の効果を十分に発揮することができる。
【0054】
第2被覆材の塗付時には水等の希釈剤を混合して粘性を適宜調製することもできる。希釈割合は、好ましくは0~20重量%である。塗装に供する第2被覆材の粘度は、好ましくは1~50Pa・s(より好ましくは5~40Pa・s)であり、チクソトロピーインデックスは、好ましくは3以上(さらに好ましくは4~10)である。
【0055】
第2被覆材の乾燥は、好ましくは常温(0~40℃)で行えばよい。第2被覆材を複数回塗付する場合は、先の第2被覆材の被膜が乾燥した後、後の第2被覆材を塗付することが望ましい。
【0056】
本発明の被膜形成方法では、本発明の効果を阻害しない限り、表面保護、耐候性向上、耐汚染性等の目的で、最表面(意匠層の上)にクリヤー被覆材を塗付して、クリヤー層を設けることもできる。このようなクリヤー層は、無色透明、着色透明のいずれであってもよく、また艶有り、艶消し(7分艶、5分艶、3分艶等を含む)のいずれであってもよい。
【0057】
<被覆材セット>
本発明の被覆材セットは、上記被膜形成方法に使用するものであり、上記第1被覆材、及び上記第2被覆材を備えることを特徴とするものである。このような特定の被覆材を組み合わせて使用することにより、下地への追従性に優れ、美観性に優れた積層被膜(積層模様被膜)を形成することができる。
【実施例】
【0058】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0059】
・第1被覆材の製造
表1に示す配合に基づき、各原料を定法により混合して下塗材1~11を製造した。
なお、各成分は以下のものを使用した。
【0060】
(A)樹脂成分
樹脂構成成分中の(p)成分、(q)成分、(s)成分の重量比率は、それぞれ「p比率」、「q比率」、「s比率」と表記している。
・樹脂(A1-1):アクリル樹脂エマルション(メタクリル酸メチル・メタクリル酸t-ブチル・アクリル酸n-ブチル・アクリル酸2-エチルヘキシル・メタクリル酸の乳化重合体、p比率:42重量%、q比率:58重量%、平均粒子径:140nm、固形分:50重量%、媒体:水)
・樹脂(A1-2):アクリル樹脂エマルション(メタクリル酸メチル・メタクリル酸t-ブチル・アクリル酸n-ブチル・アクリル酸2-エチルヘキシル・メタクリル酸・シリコーン樹脂の乳化重合体、p比率:42重量%、q比率:38重量%、s比率20重量%、平均粒子径:145nm、固形分:50重量%、媒体:水)
・樹脂(A1-3):アクリル樹脂エマルション(メタクリル酸メチル・メタクリル酸t-ブチル・アクリル酸n-ブチル・アクリル酸2-エチルヘキシル・メタクリル酸の乳化重合体、p比率:14重量%、q比率:86重量%、平均粒子径:140nm、固形分:50重量%、媒体:水)
【0061】
(B)粉体成分
・着色顔料(b1):酸化チタンの分散液、固形分:70重量%)
・粉体成分(b2-1):炭酸カルシウム(粒子径20~38μm)
・粉体成分(b2-2):珪石粉(粒子径20~400μm、粒子径53~300μmの含有率:75重量%)
・粉体成分(b2-3):珪石粉(粒子径20~400μm、粒子径53~300μmの含有率:45重量%)
・添加剤(増粘剤、分散剤、消泡剤、造膜助剤、等)
【0062】
【0063】
・第2被覆材の製造
表2に示す配合に基づき、各原料、及び添加剤(増粘剤、分散剤、消泡剤、造膜助剤、等)を定法により混合して第2被覆材1~13を製造した。なお、各成分は、以下のものを使用した。
【0064】
(C)樹脂成分
・樹脂(C1):アクリル樹脂エマルション(メタクリル酸メチル・アクリル酸2-エチルヘキシル・シクロヘキシルメタクリル酸の乳化重合体、p比率:30重量%、q比率:60重量%、平均粒子径:140nm、固形分:50重量%、媒体:水)
(D)鱗片状粒子
(d1)大粒子
・(d1-1)黒色マイカ片[短径:2mm超4mm以下、短径/長径(平均値):0.95、短径/厚み(平均値):11.4]
・(d1-2)白色マイカ片[短径:2mm超4mm以下、短径/長径(平均値):0.88、短径/厚み(平均値):10.7]
・(d1-3)薄クリーム色マイカ片[短径:2mm超4mm以下、短径/長径(平均値):0.92、短径/厚み(平均値):11.5]
(d2)中粒子
・(d2-1)灰色マイカ片[短径:0.7mm超2mm以下、短径/長径(平均値):0.87、短径/厚み(平均値):10.5]
(d3)小粒子
・(d3-1)灰色マイカ片[短径:0.3mm超0.7mm以下、短径/長径(平均値):0.92、短径/厚み(平均値):11.4]
・(d3-2)白色マイカ片[短径:0.3mm超0.7mm以下、短径/長径(平均値):0.94、短径/厚み(平均値):11.0]
(その他)
・添加剤(増粘剤、消泡剤、造膜助剤、紫外線吸収剤、等)
【0065】
【0066】
<試験例I>
(実施例1~9、比較例1~3)
板状壁材(窯業系サイディングボート)2枚を併設し、ボード間の目地部(幅10mm×厚み10mm)に変性シリコーン系シーリング材を充填したものを試験基材とした。
この試験基材の全面に対し、第1被覆材(1~11)を塗り付け量0.3kg/m 2で吹付け塗装し、23℃で5時間乾燥させた。次いで、第2被覆材1をスプレーガン(口径:5.5mm)で塗付け量0.7kg/m 2で吹付け塗装し、23℃で24時間乾燥、硬化させたものを試験体とし、下記の評価を実施した。なお、第1被覆材、第2被覆材の組み合わせは、評価結果は、表3に示す。
【0067】
・追従性1
上記方法で得られた試験体について、標準状態で引張り試験機にて水平方向に1.5mm(引張り速度:2mm/min)変移させたときの表面状態を観察し、追従性を評価した。
追従性の評価は、割れが認められなかったものを「A」、割れが生じたものを「D」とする4段階(A>B>C>D)で行った。
【0068】
・追従性2
上記方法で得られた試験体を65℃恒温器にて7日間放置した後、前述と同様の方法で追従性を評価した。
【0069】
実施例1~9では、良好な下地追従性を有するものであった。特に、実施例3~6、8では、割れの発生がなく、優れた下地追従性を有する着色模様被膜が得られた。
【0070】
さらに、実施例3~6、8について、以下の評価を実施した。
・追従性3
上記方法で得られた試験体について、試験体を65℃恒温器にて7日間放置した後、標準状態で引張り試験機にて水平方向に2mm(引張り速度:2mm/min)変位させたときの表面状態を観察し、追従性を評価した。評価基準は、上記と同様である。
【0071】
【0072】
<試験例II>
(実施例6、10~21、比較例4)
試験例Iと同様にして試験体を作製し、同様の評価を実施した。なお、第1被覆材、第2被覆材の組み合わせ、結果は、表4に示す。
さらに、上記方法で得られた試験体について、美観性(外観)を目視により評価した。
・質感(手触り感)
形成被膜のザラツキ感が少ないものを「A」、ザラツキ感があるものを「D」とし、A>B>C>Dの5段階で評価した。
・意匠性
鱗片状粒子の偏りが少なく、模様のバランスが良好なものを「AA」、劣るものを「D」とし、AA>A>B>C>Dの5段階で評価した。
【0073】
実施例6、10~21では、良好な下地追従性を有するものであった。特に、実施例6、10~17、20では、割れの発生がなく、優れた下地追従性を有し、ザラツキ感の少ない着色模様被膜が得られた。さらに実施例6、13~16(特に、実施例13、14)では、大中小の鱗片状粒子の偏りがなく、模様バランスが良好な着色模様被膜を形成することができた。
【0074】