(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】制御装置、制御方法および電源システム
(51)【国際特許分類】
H02P 9/04 20060101AFI20241213BHJP
B60K 6/485 20071001ALI20241213BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20241213BHJP
B60W 10/26 20060101ALI20241213BHJP
B60W 20/15 20160101ALI20241213BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20241213BHJP
B60L 50/16 20190101ALN20241213BHJP
B60L 50/60 20190101ALN20241213BHJP
B60L 58/12 20190101ALN20241213BHJP
H02P 101/25 20150101ALN20241213BHJP
H02P 101/45 20150101ALN20241213BHJP
【FI】
H02P9/04 M
B60K6/485 ZHV
B60W10/08 900
B60W10/26 900
B60W20/15
H02J7/00 P
H02J7/00 B
B60L50/16
B60L50/60
B60L58/12
H02P101:25
H02P101:45
(21)【出願番号】P 2021087362
(22)【出願日】2021-05-25
【審査請求日】2024-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】佐孝 恭一
(72)【発明者】
【氏名】松田 聡
(72)【発明者】
【氏名】高田 潤一
(72)【発明者】
【氏名】田中 直樹
(72)【発明者】
【氏名】末廣 諭
(72)【発明者】
【氏名】久保田 裕孝
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-205312(JP,A)
【文献】特開2001-112178(JP,A)
【文献】特開2018-039463(JP,A)
【文献】特開2012-066624(JP,A)
【文献】米国特許第05778997(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 9/04
B60K 6/485
B60W 10/08
B60W 10/26
B60W 20/15
H02J 7/00
B60L 50/16
B60L 50/60
B60L 58/12
H02P 101/25
H02P 101/45
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機を用いて発電する発電装置と、電気を充放電する蓄電装置と、前記発電装置と前記蓄電装置から供給された電力で駆動される電気負荷とを備える電源システムの制御装置であって、
前記制御装置は、前記電気負荷の負荷電力の平均分に基づいて前記発電装置の出力電力を制御
し、
前記電気負荷は、少なくとも2つの異なる所定の状態で動作し、
前記制御装置は、前記状態が変化した場合、当該状態に対応する所定の固定値の電力となるように前記発電装置の出力電力を制御した後、前記負荷電力の平均分が前記所定の固定値以上になった時点から、当該負荷電力の平均分で前記発電装置の出力電力を制御する、
制御装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記蓄電装置の充電状態に応じて、前記発電装置の出力電力の制御を補正する
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記蓄電装置が、蓄電池とキャパシタとを有し、
前記制御装置は、前記キャパシタの充放電電流が許容充放電電流に対して余裕がある場合、前記キャパシタの充放電電流が前記蓄電池の充放電電流を上回るように前記蓄電池の充放電電流と前記キャパシタの充放電電流の割合を制御する
請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記蓄電池の充電状態と前記キャパシタの充電状態に応じて、前記割合を補正する
請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
回転電機を用いて発電する発電装置と、電気を充放電する蓄電装置と、前記発電装置と前記蓄電装置から供給された電力で駆動される電気負荷とを備える電源システムの制御方法であって、
前記電気負荷の負荷電力の平均分に基づいて前記発電装置の出力電力を制御
するステップを有し、
前記電気負荷は、少なくとも2つの異なる所定の状態で動作し、
前記発電装置の出力電力を制御するステップでは、前記状態が変化した場合、当該状態に対応する所定の固定値の電力となるように前記発電装置の出力電力を制御した後、前記負荷電力の平均分が前記所定の固定値以上になった時点から、当該負荷電力の平均分で前記発電装置の出力電力を制御する、
制御方法。
【請求項6】
回転電機を用いて発電する発電装置と、
電気を充放電する蓄電装置と、
前記発電装置と前記蓄電装置から供給された電力で駆動される電気負荷と、
前記電気負荷の
負荷電力の平均分に基づいて前記発電装置の出力電力を制御する制御装置と
を備え、
前記電気負荷は、少なくとも2つの異なる所定の状態で動作し、
前記制御装置は、前記状態が変化した場合、当該状態に対応する所定の固定値の電力となるように前記発電装置の出力電力を制御した後、前記負荷電力の平均分が前記所定の固定値以上になった時点から、当該負荷電力の平均分で前記発電装置の出力電力を制御する、
電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御装置、制御方法および電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、主発電機と、主発電機をアシストする電力システムとを備える船舶が開示されている。特許文献1に記載されている電力システムは、蓄電池からなる第1電力貯蔵装置と、キャパシタからなる第2電力貯蔵装置とを備える。特許文献1に記載されている船舶では、停泊中や港湾付近での低速走行時に、電力システムを船内に電力を供給する唯一の電力源として動作させることで、港湾でのゼロエミッションを実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の電力システムでは、電力システムを唯一の電力源として動作させることができるようにするため、蓄電池を小型化することが困難な場合があるという課題があった。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、蓄電池を小型化することができる制御装置、制御方法および電源システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係る制御装置は、回転電機を用いて発電する発電装置と、電気を充放電する蓄電装置と、前記発電装置と前記蓄電装置から供給された電力で駆動される電気負荷とを備える電源システムの制御装置であって、前記制御装置は、前記電気負荷の負荷電力の平均分に基づいて前記発電装置の出力電力を制御する。
【0007】
本開示に係る制御方法は、回転電機を用いて発電する発電装置と、電気を充放電する蓄電装置と、前記発電装置と前記蓄電装置から供給された電力で駆動される電気負荷とを備える電源システムの制御方法であって、前記制御装置は、前記電気負荷の負荷電力の平均分に基づいて前記発電装置の出力電力を制御する。
【0008】
本開示に係る電源システムは、回転電機を用いて発電する発電装置と、電気を充放電する蓄電装置と、前記発電装置と前記蓄電装置から供給された電力で駆動される電気負荷と、前記電気負荷の平均電力に基づいて前記発電装置の出力電力を制御する制御装置とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示の制御装置、制御方法および電源システムによれば、蓄電池を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の第1実施形態に係る電源システムの構成例を示す図である。
【
図2】本開示の第1実施形態に係る電源システムの動作例を示す模式図である。
【
図3】本開示の第1実施形態に係る電力供給最適化部の構成例を示すブロック図である。
【
図4】本開示の第1実施形態に係る電力供給最適化部の動作例を説明するための模式図である。
【
図5】本開示の第1実施形態に係る電力供給最適化部の動作例を説明するための模式図である。
【
図6】本開示の第1実施形態に係る電力供給最適化部の動作例を説明するための模式図である。
【
図7】本開示の第1実施形態に係る電力供給最適化部の動作例を説明するための模式図である。
【
図8】本開示の第1実施形態に係る電力供給最適化部の動作例を説明するための模式図である。
【
図9】本開示の第1実施形態に係る電力供給最適化部の動作例を説明するための模式図である。
【
図10】本開示の第1実施形態に係る電力供給最適化部の動作例を説明するための模式図である。
【
図11】本開示の第1実施形態に係る電力供給最適化部の動作例を説明するためのフローチャートである。
【
図12】本開示の第1実施形態に係る電力供給最適化部の動作例を説明するためのフローチャートである。
【
図13】本開示の第2実施形態に係る電源システムの構成例を示す図である。
【
図14】本開示の第2実施形態に係る電力供給最適化部の構成例を示すブロック図である。
【
図15】本開示の第2実施形態に係る電力供給最適化部の構成例を示すブロック図である。
【
図16】本開示の第2実施形態に係る電力供給最適化部の動作例を説明するための模式図である。
【
図17】本開示の第2実施形態に係る電力供給最適化部の動作例を説明するための模式図である。
【
図18】本開示の第2実施形態に係る電力供給最適化部の動作例を説明するための模式図である。
【
図19】本開示の第2実施形態に係る電力供給最適化部の動作例を説明するための模式図である。
【
図20】本開示の第2実施形態に係る電力供給最適化部の構成例を説明するための模式図である。
【
図21】本開示の第2実施形態に係る電力供給最適化部の構成例を説明するための模式図である。
【
図22】本開示の第2実施形態に係る電源システムの構成例を説明するための模式図である。
【
図23】本開示の第2実施形態に係る電源システムの構成例を説明するための模式図である。
【
図24】少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1実施形態>
(電源システムの構成)
以下、本開示の第1実施形態に係る制御装置、制御方法および電源システムについて、
図1~
図12を参照して説明する。
図1は、本開示の第1実施形態に係る電源システムの構成例を示す図である。
図2は、本開示の第1実施形態に係る電源システムの動作例を示す模式図である。
図3は、本開示の第1実施形態に係る電力供給最適化部の構成例を示すブロック図である。
図4~
図10は、本開示の第1実施形態に係る電力供給最適化部の動作例を説明するための模式図である。
図11および
図12は、本開示の第1実施形態に係る電力供給最適化部の動作例を説明するためのフローチャートである。なお、各図において同一または対応する構成には同一の符号を用いて説明を適宜省略する。
【0012】
図1に示す本開示の第1実施形態に係る電源システム100は、一例として、パラレル方式のハイブリッドシステム車両に搭載された車載用電源システムとして構成されている。
図1に示す電源システム100は、本開示に係る制御装置の一構成例としての電力供給最適化部1と、発電装置の一構成例としてのエンジン発電機2と、蓄電装置3と、負荷装置の一構成例としての大型補機等の負荷4と、電圧センサ61と、電流センサ62とを備える。
【0013】
エンジン発電機2は、内燃機関式のエンジン21と、回転電機の一構成例としてのモータ/発電機(以下、電動発電機)22と、インバータ23とを備える。エンジン21は、電動発電機22を駆動して電力を発電するとともに、トランスミッション7を介して駆動輪等からなる走行負荷8を駆動する。電動発電機22は、交流回転電機であり、エンジン21によって駆動され、発電機として動作して発電したり、蓄電装置3から供給された電力によって電動機として動作し、走行負荷8を駆動したりする。インバータ23は、電動発電機22が発電した交流電力を直流電力に変換してバス5に出力したり、バス5を介して蓄電装置3から供給された直流電力を交流電力に変換して電動発電機22へ供給し、電動発電機22を回転駆動したりする。また、インバータ23は、電力供給最適化部1が出力したエンジン発電機出力指令値に基づいて、発電時の電動発電機22の出力電力を制御する。
【0014】
蓄電装置3は、バッテリ(蓄電池)31と、DC/DCコンバータ(直流-直流変換装置)32と、状態監視回路33とを備える。バッテリ31は、例えばリチウムイオン電池等の電荷を充放電する二次電池である。DC/DCコンバータ32は、エンジン発電機2からバス5を介して供給された直流電力を所定の電圧に変換してバッテリ31を充電したり、バッテリ31の放電電力を所定の電圧に変換してバス5へ出力したりする。また、DC/DCコンバータ32は、電力供給最適化部1が出力したDC/DCコンバータ指令電流値に基づいて、バス5へ出力する直流電流(=バッテリ31からの放電電流)と、バス5から入力する直流電流(=バッテリ31への充電電流)を制御する。状態監視回路33は、バッテリ31の充放電電流、充放電電圧、温度等を監視し、バッテリ31のSOC(State Of Charge;充電状態あるいは充電率)を演算し、求めた結果を、バッテリSOC(信号あるいは情報)として電力供給最適化部1へ出力する。
【0015】
負荷4は、例えば、大型補機、高出力アクチュエータや移動式の工作機械等の消費電力が比較的急峻に変化する電気負荷である。消費電力が比較的急峻に変化するとは、例えば、負荷4のピーク時の消費電力に対応するように選択したバッテリ31の容量が、負荷4の平均消費電力に対応するように選択したバッテリ31の容量よりも大きいことを意味する。なお、負荷4は、1つの電気負荷であってもよいし、複数の電気負荷であってもよい。
【0016】
電圧センサ61は、負荷4の近傍のバス5の電圧を計測し、計測した結果を電力供給最適化部1へ出力する。電流センサ62は、バス5から負荷4へ供給される電流を計測し、計測した結果を電力供給最適化部1へ出力する。
【0017】
図1に示す本開示の第1実施形態に係る電源システム100は、後述する電力供給最適化部1による制御によって、
図2に示すように、エンジン発電機2の出力電力が、負荷4が消費する負荷電力の平均分と等しくなるように、エンジン発電機2の出力電力を制御する。また、電源システム100は、負荷4が消費する負荷電力の平均分からの変動分が、蓄電装置3からの充放電電力と等しくなるように、蓄電装置3の出力電力を制御する。この構成によれば、エンジン発電機2が負荷4の消費電力の一部を負担するので、蓄電装置3の出力電力を抑え、バッテリ31の小型化を容易に図ることができる。
【0018】
(電力供給最適化部1の構成)
図3に示すように、電力供給最適化部1は、例えばハードウェアとソフトウェアとの組み合わせから構成される機能的構成として、負荷電力平均分P ̄load計算部11と、補正量ΔPbatt計算部12と、エンジン発電機出力指令値Pinv*計算部13と、DC/DCコンバータ指令電流値計算部14とを備える。ここで「 ̄」はオーバーラインに対応する。また、明細書中では、見やすさを考慮し、各変数の添え字等については文字サイズを変化せずにそのまま全角文字として記述している。
【0019】
本実施形態では、バッテリ31の出力を抑え、蓄電装置3を小型化することを念頭に置き、急峻な変動を伴う負荷電力に対し、次のような電力の流れを考える。
図2に示す通り、負荷電力を、エンジン発電機2の応答速度よりも速い変動に相当する変動分と、平均電力に相当する平均分の和と見なし、エンジン発電機2が平均分の電力を出力する状況を考える。この状況におけるDC/DCコンバータ32の動作として、エンジン発電機2の出力が負荷電力よりも大きい場合はバッテリ31に電力を流し、小さい場合にはバッテリ31から負荷4に電力を供給するよう動作すれば、丁度変動分の電力をバッテリ31が負担することになる。このため、DC/DCコンバータ32が上述の動作をすれば、エンジン発電機2が電力を供給していることから、バッテリ31の出力が抑えられる。このような状況を実現するには、DC/DCコンバータ32およびエンジン発電機2の動作を決定する制御器が必要となる。本実施形態では、この制御器が電力供給最適化部1である。
【0020】
図1の電源システム100において、電力供給最適化部1は、受信したバス電圧・負荷電流・モード信号・バッテリSOCからDC/DCコンバータの指令電流値およびエンジン発電機の出力指令値を計算し、それぞれをDC/DCコンバータ32とインバータ23に送信することでこれらの機器を制御する。バス電圧・負荷電流・モード信号を取得するために、バス5には電圧センサ61、バス-補機負荷間には電流センサ62、負荷4には図示していない制御装置を設置する。またバッテリ31のSOCの信号はバッテリに附随する(電流、電圧、温度等を監視する)状態監視回路33から受信する。
【0021】
ここで、モード信号とは負荷4の状態を示す信号であり、(ST1)停止、(ST2)待機、(ST3)スタンバイ、(ST4)動作中の4種のうちのいずれかをとる(
図7にて、補機負荷電力の波形例を用い、各状態の説明を示す)。例えば、
図8にまとめて示すように、停止は、補機が完全に停止しており、負荷電力を全く生じない状態である。待機は、冷却系を除く補助的な装置の負荷電力が発生している状態である。スタンバイは、冷却系を含め補助的な装置の負荷電力が発生している状態である。動作中は、主となる補機が動作し、急峻な変動を伴う負荷電力が発生しうる状態である。
【0022】
モード信号が「(ST4)動作中」の場合、負荷4から急峻な変動を伴う負荷電力が発生しており、この状況において、電力供給最適化部1は、バス電圧および負荷電流信号から負荷電力の平均分に相当する電力値を計算し、エンジン発電機2の出力指令値としてインバータ23に送信する(エンジン発電機出力指令値の具体的算出法は後述する)。また、バス電圧がある基準電圧値を下回る場合には放電、上回る場合には充電となるような指令電流値をDC/DCコンバータ32に送信する(このような指令電流を生成するためには、例えば、
図4の特性を利用すればよい)。これは、エンジン発電機2が負荷電力より大きい場合バス電圧が上昇するためバッテリ31に充電し、小さい場合にはバス電圧が低下するためバッテリ31から放電する動作となるよう指示することを意味する。このため、DC/DCコンバータ32は適切に電力の流れを制御することになり、バッテリ31が負荷電力の変動分を、エンジン発電機2が平均分を負担する動作をする、すなわち、DC/DCコンバータ32がバッテリ31とエンジン発電機2の2つの電源の想定動作を実現することになる。
【0023】
なお、DC/DCコンバータ32は急峻な負荷変動に追従するよう動作させる必要があるため、電力供給最適化部1におけるDC/DCコンバータ指令電流値計算部14をDC/DCコンバータ32の(ローカルな)制御器の中に含めてもよい。その場合には、ローカル制御器にバス電圧を送信するための電圧センサを追設する。
【0024】
本実施形態では、電力供給最適化部1を導入した構成により、エンジン発電機2の応答速度よりも速い変動を伴う負荷に対して、DC/DCコンバータ32の動作により電力の流れを制御し、バッテリ31とエンジン発電機2に想定の電力供給動作をさせることができる。同時に、エンジン発電機2が負荷電力の一部を負担していることから、バッテリ出力を抑えることができ、蓄電装置3の小型化につながる。
【0025】
DC/DCコンバータ指令電流値計算部14は、バス電圧に基づいてDC/DCコンバータ32の出力電力(充放電電力)を制御する際の出力電流の指令値であるDC/DCコンバータ指令電流値を計算し、求めたDC/DCコンバータ指令電流値をDC/DCコンバータ32へ出力する。
図4は、バス電圧VBUSと、DC/DCコンバータ32の出力電流との対応関係の一例を示す。
図4に示す例では、バス電圧が620V以下で放電が開始され、電圧の低下に伴って放電電流が増加し、600V以下では放電時の制限電流一定となる。また、バス電圧が670V以上で充電が開始され、電圧の上昇に伴って充電電流が増加し、700V以上では充電時の制限電流一定となる。
【0026】
図2に示すようにエンジン発電機2の出力電力が負荷4の消費電力の平均分に一致するように制御されている場合、バス電圧は負荷4の消費電力の変動分に応じて変化するので、例えば
図4に示すようにDC/DCコンバータ指令電流値計算部14がバス電圧に基づいてDC/DCコンバータ指令電流値を制御することで、蓄電装置3の出力電力を、負荷電力の変動分に応じた値とすることができる。なお、バス電圧に基づくDC/DCコンバータの出力制御については、例えば特許第3886940号公報に記載されている。
【0027】
負荷電力平均分P ̄load計算部11は、以下のようにして負荷電力の平均分を算出する。すなわち、負荷電力平均分P ̄load計算部11は、負荷電力平均分を、エンジン発電機出力指令値として用いることを念頭に、負荷電力の平均分を式(1)の示す通り、センサにより取得したバス電圧と負荷電流の積の時間平均で計算する。
【0028】
【0029】
ここで、P ̄loadは負荷電力の平均分(移動平均値)である。また、VBUSは電圧センサ61が計測したバス電圧、Iloadは電流センサ62が計測した負荷電流である。
【0030】
時間平均を計算するにあたり、その時間長さTは、式(1)をそのままエンジン発電機の出力指令値として用いた場合に、出力指令値の変動がエンジン発電機の応答速度より遅くなるよう、(想定される)負荷変動の周期に対し、十分長くとる。
【0031】
なお、式(1)は負荷電流のセンサ値を用いて直接負荷電力を計算しているが、代替手段として、インバータ23や、DC/DCコンバータ32のバス5への出力電流値(センサ値)を用いて供給電力の平均分を計算し、負荷電力の平均分としてもよい。
【0032】
【0033】
【0034】
【0035】
ここで、Pinvはインバータ23の出力電力、P ̄DCDCはDC/DCコンバータ32の平均出力電力である。Iinvはインバータ電流であり、インバータ23内の図示していない電流センサで計測した値である。IDCDCはDC/DCコンバータ電流であり、DC/DCコンバータ32内の図示していない電流センサで計測した値である。
【0036】
また、インバータ23とDC/DCコンバータ32の出力を、センサ値だけでなく、指令値や制御器内部パラメータを利用した次の式により算出してもよい。
【0037】
【0038】
【0039】
ηmotはモータ効率(制御器内部パラメータ)、ηinvはインバータ効率(制御器内部パラメータ)、ωはモータ回転速度(センサ値)、τはモータトルク(指令値)である。また、ηDCDCはDC/DCコンバータ効率、Vbattはバッテリ電圧(センサ値)、KbattはSOCから電力への換算係数、SOCbattはバッテリSOC(センサ値)である。
【0040】
各種平均出力の算出に用いたセンサ値、指令値、制御器内部パラメータについては
図5にまとめる。
【0041】
補正量ΔPbatt計算部12は、以下のようにして、負荷電力平均分P ̄load計算部11が計算した負荷電力平均分に生じる誤差に対する補正量ΔPbattを計算する。
【0042】
上述の通り、負荷電力平均分P ̄load計算部11は、負荷電力の平均分は式(1)(あるいは式(2)~(4))により推定しているが、センサの誤差や時間平均の遅れ等の影響により、実際の値に対して乖離を生じることがある。
図6は、その例として、負荷の起動時における負荷電力の振る舞いと時間平均の遅れにより実際値と推定値で乖離が生じる様子を表している。なお、
図6では、負荷電力の実際値を実線で示し、推定値(算出された平均負荷電力)を細線の破線で示し、状態毎に求めた平均電力を実際の平均負荷電力として太線の破線で示している。このような状況においては、バッテリ31のSOCが変動し、規定値を逸脱する恐れがある。そこで、後述するエンジン発電機出力指令値Pinv*計算部13は、エンジン発電機の出力指令値を求める際には、式(5)のように負荷電力の平均分に補正量を加える。
【0043】
【0044】
ここで、Pinv*はエンジン発電機出力指令値、ΔPbattは補正量である。
【0045】
補正量ΔPbattは以下の考えに従い、設定する。いま、システム設計からの要求として、バッテリ31のSOCが「低い」もしくは「高い」場合に、バッテリSOCの単位時間当たりに回復させる量が与えられているものとする。このとき、式(6)に示す、SOCの変化とバッテリの出(入)力電力の関係式を利用し、補正量の設計値を決める(バッテリ31の電圧は一定とした)。
【0046】
【0047】
ここで、ΔSOCはSOCの変化量、Vbattはバッテリ電圧、Abattはバッテリ31の電流容量であり、tは時間である。
【0048】
例えば、バッテリ電圧は300[V]、バッテリの電流容量は80[Ah]とした場合に、1秒間でSOCを0.025%増加あるいは減少させたい場合、補正量は次の値となる。
【0049】
【0050】
上で算出した補正量の値は、バッテリのSOCが「低い」もしくは「高い」状態の場合に適用するものとし、この範囲を逸脱する場合には倍の補正を加えるものとするならば、補正量は
図10のように取ることができる。
図10は、バッテリ31のSOCと、補正量ΔPbattの対応関係を定めるテーブル121を示す。補正量ΔPbatt計算部12は、例えば、
図10に示すテーブル121を用いて、補正量ΔPbattを算出する。
【0051】
エンジン発電機出力指令値Pinv*計算部13は、負荷電力平均分P ̄load計算部11が求めた負荷電力平均分P ̄loadと、補正量ΔPbatt計算部12が求めた正量ΔPbattに基づいて、上述した式(5)を用いて、エンジン発電機出力指令値Pinv*を計算し、インバータ23へ出力する。
【0052】
ただし、式(5)で対応しようとすると、次のような状況で瞬時的に負荷への給電が不足する可能性がある。
図6にみられるような、スタンバイ状態から大型補機動作状態に移行した直後に大きな負荷変動が発生する状況を考える。このとき、時間平均により算出された平均電力小さいため、エンジン発電機2の出力も小さくなり、バッテリ31の負担する電力が許容される最大出力を超え、負荷への給電が不足する可能性がある。
【0053】
この状況をさけるため、エンジン発電機出力指令値Pinv*計算部13は、以下のようにして負荷への供給電力を確保する。例えば、スタンバイ状態から大型補機動作状態に移行した直後において、エンジン発電機2の出力指令値Pinv*は、式(5)でなく、
図9に示すように、バッテリ31の出力と合計して、瞬時的な高負荷電力に十分対応できる値(固定値)Pinv_constにより与える。同時に、負荷電力平均分P ̄load計算部11は、式(1)の計算を行い、その値がPinv_const以上になった時点から、エンジン発電機の指令値を式(5)で与えるものとする。上記のように、大型補機動作状態に移行した時点で、最初から式(5)を使用せずに固定値を与えることで負荷への供給電力を確保する。なお、例えば、待機状態からスタンバイ状態への変更時にも、エンジン発電機出力指令値Pinv*を固定値Pinv_constとしてもよい。この固定値Pinv_constの導入により、充放電電流の大きな変化を抑えることができるので、バッテリの小型化を図ることができる。
【0054】
なお、エンジン発電機出力指令値Pinv*計算部13は、バッテリのSOCが高く、かつ、負荷電力の平均分が小さい場合、エンジン発電機の指令電力が負となりエンジン発電機が力行する場合がある。この状況をさけるため、エンジン発電機の出力が0以上の値となるよう、エンジン発電機の出力指令値に制限を設ける。
【0055】
エンジン発電機出力指令値Pinv*計算部13による以上までのエンジン発電機の出力指令値の決定の流れを
図11に示す。
【0056】
図11は、エンジン発電機出力指令値Pinv*計算部13による処理の流れを示す。
図11に示す処理は、所定の周期で繰り返し実行される。
図11に示す処理では、まず、エンジン発電機出力指令値Pinv*計算部13が、例えばモード信号が状態の変化を最初に示した場合等、所定の条件が満たされる場合、エンジン発電機出力指令値Pinv*を所定の固定値Pinv_constに設定する(ステップS21)。次に、エンジン発電機出力指令値Pinv*計算部13は、P ̄load+ΔPbattが固定値Pinv_const以上であるか否か(あるいはP ̄load+ΔPbattが固定値Pinv_constから所定の範囲内の値であるか否か)を判断する(ステップS22)。P ̄load+ΔPbattが固定値Pinv_const以上である場合(あるいはP ̄load+ΔPbattが固定値Pinv_constから所定の範囲内の値である場合)(ステップS22:YES)、エンジン発電機出力指令値Pinv*計算部13は、エンジン発電機出力指令値Pinv*をP ̄load+ΔPbattとする(ステップS23)。次に、エンジン発電機出力指令値Pinv*計算部13は、P ̄load+ΔPbattが0より小さいか否かを判断する(ステップS24)。P ̄load+ΔPbattが0より小さい場合(ステップS24:YES)、エンジン発電機出力指令値Pinv*計算部13は、エンジン発電機出力指令値Pinv*を0とする(ステップS25)。ステップS22で「No」の場合、ステップS24で「No」の場合、または、ステップS25を実行した場合、エンジン発電機出力指令値Pinv*計算部13は、
図11に示す処理を終了する。
【0057】
(電力供給最適化部1の動作)
図12は、電力供給最適化部1の動作例を示す。
図12に示す処理は、所定の周期で繰り返し実行される。
図12に示す処理では、まず、電力供給最適化部1が、バス電圧、負荷電流、モード信号、バッテリSOC等の各情報を取得する(ステップS1)。次に、電力供給最適化部1は、エンジン発電機の出力指令値を決定する(ステップS2)。電力供給最適化部1は、DC/DCコンバータの指令電流値を決定する(ステップS3)。次に、電力供給最適化部1は、決定した各値を出力して(ステップS4)、
図12に示す処理を終了する。
【0058】
(第1実施形態の作用・効果)
本実施形態によれば、急峻な負荷変動を伴う負荷電力に対し、エンジン発電機がその負荷の一部を担保することで、バッテリの出力を抑え、バッテリの小型化につながる。
【0059】
<第2実施形態>
(電源システムの構成)
以下、本開示の第2実施形態に係る制御装置、制御方法および電源システムについて、
図13~
図23を参照して説明する。
図13は、本開示の第2実施形態に係る電源システムの構成例を示す図である。
図14は、本開示の第2実施形態に係る電力供給最適化部の構成例を示すブロック図である。
図15は、本開示の第2実施形態に係る電力供給最適化部の構成例を示すブロック図である。
図16~
図23は、本開示の第2実施形態に係る電力供給最適化部の動作例を説明するための模式図である。なお、第1実施形態と同一の構成については同一の符号を付けて説明を適宜省略する。
【0060】
第2実施形態の電源システム100aは、
図13に示すように、
図1に示す第1実施形態の電源システム100において、蓄電装置3を、バッテリ31とキャパシタ34が並列に接続された蓄電装置3aに置き換えている。なお、電力供給最適化部1aは、DC/DCコンバータ指令電流値に代えて、バッテリ用DC/DCコンバータ指令電流値をDC/DCコンバータ32へ出力する。
【0061】
図13に示す本開示の第2実施形態に係る電源システム100aは、第1実施形態と同様、パラレル方式のハイブリッドシステム車両に搭載された車載用電源システムとして構成されている。
図13に示す電源システム100aは、本開示に係る制御装置の一構成例としての電力供給最適化部1aと、エンジン発電機2と、蓄電装置3aと、負荷4と、電圧センサ61と、電流センサ62とを備える。
【0062】
蓄電装置3aは、バッテリ31と、DC/DCコンバータ32と、状態監視回路33と、キャパシタ34と、DC/DCコンバータ35と、状態監視回路36とを備える。
【0063】
キャパシタ34は、電気二重層キャパシタ等の蓄電器である。DC/DCコンバータ35は、エンジン発電機2からバス5を介して供給された直流電力を所定の電圧に変換してキャパシタ34を充電したり、キャパシタ34の放電電力を所定の電圧に変換してバス5へ出力したりする。また、DC/DCコンバータ35は、電力供給最適化部1aが出力したキャパシタ用DC/DCコンバータ指令電流値に基づいて、バス5へ出力する直流電流(=キャパシタ34からの放電電流)と、バス5から入力する直流電流(=キャパシタ34への充電電流)を制御する。状態監視回路36は、キャパシタ34の充放電電流、充放電電圧、温度等を監視し、キャパシタ34のSOCを演算し、求めた結果を、キャパシタSOC(信号あるいは情報)として電力供給最適化部1aへ出力する。
【0064】
(電力供給最適化部1aの構成)
図14に示すように、電力供給最適化部1aは、機能的構成として、負荷電力平均分P ̄load計算部11と、補正量ΔPbatt計算部12aと、エンジン発電機出力指令値Pinv*計算部13と、バッテリ用DC/DCコンバータ指令電流値計算部15と、キャパシタ用DC/DCコンバータ指令電流値計算部16と、補正量Δk計算部17とを備える。
【0065】
図13の電源システム100aにはエンジン発電機2、バッテリ31、キャパシタ34の3種の電源が存在しており、各電源の想定動作を説明する。まず、エンジン発電機2は第1実施形態と同様に負荷電力の平均分に相当する電力を出力する。次に、バッテリ31とキャパシタ34については、エンジン発電機2が負荷電力の平均分を出力していることから、バッテリ31とキャパシタ34の出力の和が負荷電力の変動分に相当するよう充放電させる。加えて、蓄電装置3aを小型化するためには、変動分負荷電力に対してキャパシタ34の出力割合を(キャパシタの出力可能範囲で)大きくする。
【0066】
上記の各電源の動作を実現するにあたり、第1実施形態の場合と同様に、電力供給最適化部1aと称する制御器を導入する(
図13参照)。第1実施形態の場合との相違点として、キャパシタ用のDC/DCコンバータを制御するため、キャパシタ用DC/DCコンバータに送信する指令電流が追加されている。また、エンジン発電機2の出力指令値の算出に用いるキャパシタのSOCの信号は、キャパシタに附随する(電流、電圧、温度等を監視する)状態監視回路36から送信されている。
【0067】
いま、エンジン発電機2の出力指令値としては、負荷電力の平均分に相当する電力値が与えられており、エンジン発電機2は負荷電力の平均分の電力を供給しているものとする。このとき、バッテリ31とキャパシタ34が変動分の電力を負担する動作をすればよいが、両者の入出力電力を適切に制御しないと、バッテリ31の負担する電力を小さくすることができず、蓄電装置3aの小型化につながらない。このため、バッテリ31とキャパシタ34の出力電力比を調整し、バッテリの負担する電力が小さくなるよう、電力供給最適化部1aは
図15の制御ロジックを備える。
【0068】
図15は、バッテリ用DC/DCコンバータ指令電流値計算部15と、キャパシタ用DC/DCコンバータ指令電流値計算部16と、補正量Δk計算部17の構成例を示す。補正量Δk計算部17は、バッテリのSOCと、キャパシタのSOCと、バス電圧と、蓄電装置3aの出力電力を入力として、補正量Δkのマップ171を用いて、補正量Δkを計算して、出力する。
【0069】
バッテリ用DC/DCコンバータ指令電流値計算部15は、指令電流生成マップ151と、乗算器152と、k1特性マップ153と、加算器154と、乗算器155を備える。指令電流生成マップ151は、例えば
図2に示す特性で、バス電圧を、バッテリ用DC/DCコンバータ指令電流値(蓄電装置3aの出力電流)に変換するマップである。乗算器152は、蓄電装置3aの出力電流とバス電圧を乗算し、蓄電装置3aの出力電力を算出する。k1特性マップ153は、出力電力に基づいて係数k1を出力する。加算器154は、係数k1と補正量Δkを加算して出力する。乗算器155は、蓄電装置3aの出力電流に、係数k1と補正量Δkを加算した値を掛け合わせ、バッテリ用DC/DCコンバータ指令電流値を算出して出力する。
【0070】
一方、キャパシタ用DC/DCコンバータ指令電流値計算部16は、指令電流生成マップ161と、乗算器162と、k2特性マップ163と、加算器164と、乗算器165を備える。指令電流生成マップ161は、指令電流生成マップ151と同一特性のマップであり、例えば
図2に示す特性で、バス電圧を、キャパシタ用DC/DCコンバータ指令電流値(蓄電装置3aの出力電流)に変換するマップである。乗算器162は、蓄電装置3aの出力電流とバス電圧を乗算し、蓄電装置3aの出力電力を算出する。k2特性マップ163は、出力電力に基づいて係数k2を出力する。加算器164は、係数k2から補正量Δkを減算して出力する。乗算器165は、蓄電装置3aの出力電流に、係数k2から補正量Δkを減算した値を掛け合わせ、キャパシタ用DC/DCコンバータ指令電流値を算出して出力する。
【0071】
バッテリおよびキャパシタ用のDC/DCコンバータの指令電流計算部15および16においては、いずれも共通の指令電流生成特性(指令電流生成マップ151および161)(例えば、
図2示すようなマップ)を備え、その出力信号である指令電流に乗算器155および165で係数k1およびk2がかかる形となる。指令電流生成にあたり、同じバス電圧を参照していることから、これらのDC/DCコンバータの出力電力比は丁度k1:k2になるよう充放電する。k1およびk2は、バッテリ31とキャパシタ34の出力電力の和(以下、P_bcと呼ぶ)に対する関数となっており、P_bcがキャパシタ34の最大許容出力値以下の場合には、キャパシタ34がほとんど全ての充放電電力を負担するようk2をk1より十分大きく(例えば、k1=0.1、k2=0.9と)設定する。
【0072】
また、P_bcがキャパシタ34の最高許容出力以上となる場合は、キャパシタ34の出力が丁度その最高許容出力値となるよう、バッテリ31の負担率を徐々に増やす形でk1、k2を設定する(後述するが、グラフの概形としては
図16のようになる)。
【0073】
なお、
図15に示すロジックは電力供給最適化部1aに備えられるが、急峻な負荷変動に追従するためにその応答速度を速める目的で、キャパシタ34およびバッテリ31のDC/DCコンバータの指令電流計算部はキャパシタ34とバッテリ31の(ローカルな)制御器の中に備えてもよい。その場合には、それぞれのローカル制御器にバス電圧を送信するための電圧センサを追設する。
【0074】
ここで、上記のk1,k2の設定ではキャパシタの充放電が優先されることになるが、この状況ではキャパシタのSOCが犠牲になる状況が発生する。例えば、エンジン発電機の出力指令値が、センサの誤差や計算アルゴリズム固有の性質等の影響で、実際の負荷電力の平均分によりも低い値となった場合、バッテリ31とキャパシタ34は充放電を行うものの、放電の割合が大きくなる。加えて、バッテリ31に対してキャパシタ34の出力電力比を大きくしていることから、キャパシタ34の放電量が大きくなり、SOCが低下する。このような、キャパシタ34のSOCが犠牲になる状況を回避する目的で、k1、k2の値にはバッテリ31およびキャパシタ34のSOCに応じて補正量Δk計算部17にて計算された補正量Δkを加減算し、出力電力比を変更する。
図13の電源システム100aは、基本的にキャパシタ34の充放電を優先するよう動作するが、下記の(1)および(2)の状況では、バッテリ31の充放電を優先させたい。
【0075】
(1)充電時(バス電圧が基準電圧値以上)において、キャパシタ34のSOCが高くかつバッテリ31のSOCが低い場合。
【0076】
(2)放電時(バス電圧が基準電圧値以下)において、キャパシタ34のSOCが低くかつバッテリのSOC31が高い場合。
【0077】
そのため、バス電圧・バッテリのSOC・キャパシタのSOCを参照し、(1)もしくは(2)の状況に当てはまる場合には、係数k1、k2に補正量Δkを加減算することによりk1+Δk、k2-Δkと変更する。バッテリ31の充放電を優先させることから、k2-Δkに対しk1+Δkが十分大きく(例えば、k1+Δk=0.9、k2-Δk=0.1と)なるよう補正量Δkの値を設定する。この補正量Δkの計算にあたっては、バッテリ31とキャパシタ34のSOCの情報が必要となるが、これらの信号はバッテリ31とキャパシタ34それぞれに附随する(電流、電圧、温度等を監視する)状態監視回路33および36から送信する。
【0078】
係数k1、k2および補正量Δkの具体的な取り方は、例えば次のようにすることができる。いま、負荷電力に対する各種電源(エンジン発電機・バッテリ・キャパシタ)の分担を
図16のようにすることを考える。
図16はエンジン発電機の出力を含んでおり、 バッテリ31とキャパシタ34の分担に着目するため、
図16からエンジン発電機の出力差し引いた電力分担を
図17に示す。
図17は、負荷電力がある値以下の場合はほぼキャパシタ34に負担させ、負荷電力がそれ以上の値になった場合には、バッテリ31からも供給させることを意味しており、このように負荷電力を分担させることで、バッテリ31の出力を低減することを考える。
図17の縦軸はバッテリ31とキャパシタ34の合計出力になっており、各々の出力を合計出力に対する比率で表すと
図16のようになる。つまり、バッテリ31とキャパシタ35の出力電力がこの比率になるよう動作させたいので、k1、k2は
図18のグラフの形で与えればよい。
図15のk1特性マップ153とk2特性マップ163は、
図18の特性のように定めることができる。
【0079】
なお、
図17において、蓄電装置合計出力電力の全域においてバッテリ出力電力を0としていないのは、蓄電装置3aの動作時に、DC/DCコンバータ32を常時、動作状態としておく方が、DC/DCコンバータ32の起動時のバッテリ31から(への)急峻な電流変化を抑制しやすいためである。
【0080】
次に、補正量Δkの具体的設定方法について説明する。第2実施形態においては、下記の(1)および(2)の状況では、バッテリ31の充放電を優先させたい。
【0081】
(1)充電時(バス電圧が基準電圧値以上)において、キャパシタのSOCが高くかつバッテリのSOCが低い場合。
【0082】
(2)放電時(バス電圧が基準電圧値以下)において、キャパシタのSOCが低くかつバッテリのSOCが高い場合。
【0083】
上記は定性的な表現であり、(1)および(2)の状況となる基準電圧値とバッテリ・キャパシタのSOCの閾値を
図20にまとめる。
図20は、
図15に示す補正量Δkのマップ171の構成例を示す。
図20は、
図4からバッテリの充放電動作が切り替わる基準電圧値を645[V]とした場合の、補正量Δkの設定例である。
図20に示す補正量Δkのマップ171は、充電時のマップ172と、放電時のマップ173を含んでいる。係数(k1、k2)は、(0、0)の場合が補正量Δkによる補正が行われないことを示し、(Δk、-Δk)の場合が補正量Δkによる補正が行われることを示す。
【0084】
また、補正量Δkの取り方としては、補正量を加える状況において充放電のほとんど全てをバッテリ31に負担させる場合、負荷電力に応じて
図19のようにとる(
図19はk1+Δ:k2-Δ=0.9:0.1とする場合の例である)。
【0085】
なお、バッテリ31あるいはキャパシタ34のSOCは、
図20の「低」「高」を逸脱しないように制御される。
【0086】
補正量Δkを用いることで、バッテリとキャパシタの出力電力を想定の比率で制御する事が可能となる。これにより、蓄電装置として、バッテリ単体の場合に比べて、小型になる。
【0087】
また、第2実施形態において補正量ΔPbatt計算部12aは、次のようにして補正量ΔPbattを計算する。以下では、蓄電装置3aとしてキャパシタ34を併用する場合の補正量ΔPbattの取り方について説明する。
【0088】
本実施形態のようにキャパシタ34を併用する場合、補正量ΔPbattはバッテリ31とキャパシタ34の両方のSOCを参照し、その値を決定する。具体的には
図21に示すマップ121aのように設定する。以下では、
図21のように設定する考え方について説明する。
【0089】
補正量ΔPbattの設定を考えるにあたり、次の4つの状況を考える。
【0090】
(1)バッテリのSOCが高く、キャパシタのSOCが中程度の場合。
(2)バッテリのSOCが低く、キャパシタのSOCが中程度の場合。
(3)バッテリのSOCの状態によらず、キャパシタのSOCが高い場合。
(4)バッテリのSOCの状態によらず、キャパシタのSOCが低い場合。
【0091】
(1)の状況にて、バッテリ31のSOCを低下させるため、エンジン発電機2の出力を低減するよう、補正量ΔPbattとして負の値を設定することを考える。このとき、エンジン発電機2の出力は負荷電力の平均分より小さい値となり、バス電圧が基準電圧以下の値をとる。この場合、本実施形態にて導入した係数k1、k2に補正がかかり(
図20参照)、バッテリ31の充放電が優先される。このため、バッテリ31の放電が進行し、バッテリ31のSOCが中程度となる。よって、バッテリ31とキャパシタ34両者のSOCは(補正が不要な)中程度の状態になる。(2)の状況においても、同様の考え方で補正量Δkの値として正の値を設定すると、エンジン発電機2の出力が増加することにより、バッテリ31の充電が進行し、バッテリ31のSOCが中程度となる。
【0092】
(3)の状況にて、キャパシタ34のSOCを低下させるため、エンジン発電機2の出力を低減するよう、補正量ΔPbattとして負の値を設定することを考える。このとき、エンジン発電機2の出力は負荷電力の平均分より小さい値となり、バス電圧が基準電圧以下の値をとる。この場合、本実施形態にて導入した係数k1、k2に補正はかからず(
図20参照)、キャパシタの充放電が優先される。このため、キャパシタ34の放電が進行し、キャパシタ34のSOCが中程度となる。(4)の状況においても、同様の考え方で補正量Δkの値として正の値を設定すると、エンジン発電機2の出力が増加することにより、キャパシタ34の充電が進行し、キャパシタ34のSOCが中程度となる。これより、(3)および(4)の状況にて、上述のように補正量ΔPbattを加えると、(1)および(2)もしくはバッテリとキャパシタ両者のSOCが中程度の状態となる。(1)および(2)の状況に移る場合には、先に述べた通りの補正量ΔPbattの加え方により、バッテリとキャパシタ両者のSOCが(補正が不要な)中程度となる。
【0093】
以上より、
図21のように、バッテリとキャパシタのSOCの状態に応じて補正量ΔPbattを加えれば、バッテリとキャパシタのSOCを中程度に回復させることができる。
【0094】
なお、(3)および(4)の状況にある場合、キャパシタのSOCを増加もしくは低下させることが目的であるため、具体的な補正量ΔPbattの値は、式(6)におけるバッテリ電圧・電流容量をキャパシタ電圧・電流容量に置き換えて算出してもよい。
【0095】
(第2実施形態の作用・効果)
上述の構成により、エンジン発電機2は負荷電力の平均分を、バッテリ31とキャパシタ34は変動分を負担するよう電力を出力する。加えて、バッテリ31とキャパシタ34に関してはDC/DCコンバータの動作により、急峻な負荷変動に追従しつつ、キャパシタ34の負担する電力を多くするため、バッテリ31の出力を抑えることができる。
【0096】
本実施形態では、蓄電装置の構成としてバッテリだけでなく、出力密度の高い蓄電デバイス(例えば、EDLC(電気二重層キャパシタ)等)との併用によりバッテリの負担する電力を低減する。
図22は、バッテリとキャパシタの電気的特性を比較した図である。キャパシタは、バッテリに比べ、エネルギー密度が低いものの出力密度が高いため、キャパシタを用いた方が小型化につながる。一方で、
図23に示す通り、負荷に対してある程度の給電の継続性が必要であり、キャパシタ単体では対応できず、エネルギー密度の高いバッテリがある程度の容量で必要となる。本実施形態では、バッテリとキャパシタの併用により、蓄電装置の容量を低減している。
【0097】
本実施形態によれば、バッテリとキャパシタの出力電力を想定の比率で制御する事が可能となる。また、これにより、蓄電装置として、バッテリ単体の場合に比べて、小型にすることができる。
【0098】
(作用効果)
本開示の制御装置、制御方法および電源システムによれば、蓄電池を小型化することができる。
【0099】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0100】
〈コンピュータ構成〉
図24は、少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
コンピュータ90は、プロセッサ91、メインメモリ92、ストレージ93、および、インタフェース94を備える。
上述の電力供給最適化部1および1aは、コンピュータ90に実装される。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式でストレージ93に記憶されている。プロセッサ91は、プログラムをストレージ93から読み出してメインメモリ92に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、プロセッサ91は、プログラムに従って、上述した各記憶部に対応する記憶領域をメインメモリ92に確保する。
【0101】
プログラムは、コンピュータ90に発揮させる機能の一部を実現するためのものであってもよい。例えば、プログラムは、ストレージに既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせ、または他の装置に実装された他のプログラムとの組み合わせによって機能を発揮させるものであってもよい。なお、他の実施形態においては、コンピュータは、上記構成に加えて、または上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)などのカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等が挙げられる。この場合、プロセッサによって実現される機能の一部または全部が当該集積回路によって実現されてよい。
【0102】
ストレージ93の例としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ93は、コンピュータ90のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース94または通信回線を介してコンピュータ90に接続される外部メディアであってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ90に配信される場合、配信を受けたコンピュータ90が当該プログラムをメインメモリ92に展開し、上記処理を実行してもよい。少なくとも1つの実施形態において、ストレージ93は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0103】
<付記>
各実施形態に記載の電力供給最適化部1および1aは、例えば以下のように把握される。
【0104】
(1)第1の態様に係る電力供給最適化部1および1a(制御装置)は、回転電機を用いて発電する発電装置(エンジン発電機2)と、電気を充放電する蓄電装置3、3aと、前記発電装置と前記蓄電装置から供給された電力で駆動される電気負荷4とを備える電源システム100、100aの制御装置であって、前記制御装置は、前記電気負荷の負荷電力の平均分に基づいて前記発電装置の出力電力を制御する。この態様および以下の各態様によれば、平均分を発電装置の出力でまかなうことができるので、容易に蓄電装置の小型化を図ることができる。
【0105】
(2)第2の態様に係る電力供給最適化部1および1a(制御装置)は、(1)の電力供給最適化部1および1a(制御装置)であって、前記制御装置は、前記蓄電装置の充電状態(SOC)に応じて、前記発電装置の出力電力の制御を補正する。この態様によれば、充電状態を一定の範囲に維持することが容易となる。
【0106】
(3)第3の態様に係る電力供給最適化部1および1a(制御装置)は、(1)または(2)の電力供給最適化部1および1a(制御装置)であって、前記電気負荷は、少なくとも2つの異なる所定の状態で動作し、前記制御装置は、前記状態が変化した場合、所定電力となるように前記発電装置の出力電力を制御した後、前記平均分に基づいて前記発電装置の出力電力を制御する。この態様によれば、動作状態が変化した場合に急峻な充放電流の変化が発生することを防止することができる。
【0107】
(4)第4の態様に係る電力供給最適化部1a(制御装置)は、(1)または(2)の電力供給最適化部1a(制御装置)であって、前記蓄電装置3aが、蓄電池31とキャパシタ34とを有し、前記制御装置は、前記キャパシタの充放電電流が許容充放電電流に対して余裕がある場合、前記キャパシタの充放電電流が前記蓄電池の充放電電流を上回るように前記蓄電池の充放電電流と前記キャパシタの充放電電流の割合を制御する。
【0108】
(5)第5の態様に係る電力供給最適化部1a(制御装置)は、(4)の電力供給最適化部1a(制御装置)であって、前記制御装置は、前記蓄電池の充電状態と前記キャパシタの充電状態に応じて、前記割合を補正する。
【符号の説明】
【0109】
100、100a…電源システム
1、1a…電力供給最適化部
2…エンジン発電機(発電装置)
3、3a…蓄電装置
4…負荷(電気負荷)
31…バッテリ(蓄電池)
34…キャパシタ