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特許7603534フィラメントワインディング方法及びフィラメントワインディング装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】フィラメントワインディング方法及びフィラメントワインディング装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 70/32 20060101AFI20241213BHJP
   B29C 70/16 20060101ALI20241213BHJP
   B29C 70/54 20060101ALI20241213BHJP
   B29K 105/08 20060101ALN20241213BHJP
   B29L 22/00 20060101ALN20241213BHJP
【FI】
B29C70/32
B29C70/16
B29C70/54
B29K105:08
B29L22:00
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021097340
(22)【出願日】2021-06-10
(65)【公開番号】P2022189016
(43)【公開日】2022-12-22
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】藤木 弘栄
(72)【発明者】
【氏名】辰島 宏亮
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-255359(JP,A)
【文献】特開昭63-312825(JP,A)
【文献】特開2017-196809(JP,A)
【文献】特開2004-209923(JP,A)
【文献】特開2018-134826(JP,A)
【文献】国際公開第2020/080996(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0066688(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 70/32
B29C 70/16
B29C 70/54
B29K 105/08
B29L 22/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィラメントワインディング装置を用いたフィラメントワインディング方法であって、
前記フィラメントワインディング装置は、
ボビンと当該ボビンに繊維束を巻回してなる繊維ロール部とを有するボビン部材を回転させるためのボビン駆動部と、
前記繊維ロール部から送り出された送出繊維部を、当該送出繊維部に張力を付与した状態でワークに巻き付ける巻付装置と、
前記ボビン駆動部から前記巻付装置までの前記送出繊維部の送り経路に設けられた張力付与装置と、を備え、
前記張力付与装置は、前記送出繊維部を押圧する押圧部を有し、
前記フィラメントワインディング方法は、
前記ワークへの前記送出繊維部の巻き付けの途中で前記巻付装置の動作を停止する途中停止工程を含み、
前記途中停止工程では、前記繊維ロール部からの前記送出繊維部の送り出しを継続した状態で、前記押圧部を前記送出繊維部に押圧しながら移動させることにより、前記送り経路の長さを長くし、
前記途中停止工程では、前記繊維ロール部からの前記送出繊維部の送り速度が速いほど前記押圧部の移動速度を速くする、フィラメントワインディング方法。
【請求項2】
請求項1記載のフィラメントワインディング方法であって、
前記途中停止工程において、前記送出繊維部への前記押圧部の押圧方向は、重力方向である、フィラメントワインディング方法。
【請求項3】
フィラメントワインディング装置を用いたフィラメントワインディング方法であって、
前記フィラメントワインディング装置は、
ボビンと当該ボビンに繊維束を巻回してなる繊維ロール部とを有するボビン部材を回転させるためのボビン駆動部と、
前記繊維ロール部から送り出された送出繊維部を、当該送出繊維部に張力を付与した状態でワークに巻き付ける巻付装置と、
前記ボビン駆動部から前記巻付装置までの前記送出繊維部の送り経路に設けられた張力付与装置と、を備え、
前記張力付与装置は、前記送出繊維部を押圧する押圧部を有し、
前記フィラメントワインディング方法は、
前記ワークへの前記送出繊維部の巻き付けの途中で前記巻付装置の動作を停止する途中停止工程を含み、
前記途中停止工程では、前記繊維ロール部からの前記送出繊維部の送り出しを継続した状態で、前記押圧部を前記送出繊維部に押圧しながら移動させることにより、前記送り経路の長さを長くし、
前記途中停止工程では、前記押圧部が前記送出繊維部から受ける荷重が大きいほど前記押圧部の移動速度を遅くする、フィラメントワインディング方法。
【請求項4】
フィラメントワインディング装置を用いたフィラメントワインディング方法であって、
前記フィラメントワインディング装置は、
ボビンと当該ボビンに繊維束を巻回してなる繊維ロール部とを有するボビン部材を回転させるためのボビン駆動部と、
前記繊維ロール部から送り出された送出繊維部を、当該送出繊維部に張力を付与した状態でワークに巻き付ける巻付装置と、
前記ボビン駆動部から前記巻付装置までの前記送出繊維部の送り経路に設けられた張力付与装置と、を備え、
前記張力付与装置は、前記送出繊維部を押圧する押圧部を有し、
前記フィラメントワインディング方法は、
前記ワークへの前記送出繊維部の巻き付けの途中で前記巻付装置の動作を停止する途中停止工程を含み、
前記途中停止工程では、前記繊維ロール部からの前記送出繊維部の送り出しを継続した状態で、前記押圧部を前記送出繊維部に押圧しながら移動させることにより、前記送り経路の長さを長くし、
前記途中停止工程における前記繊維ロール部からの前記送出繊維部の送り速度は、前記途中停止工程の直前の前記繊維ロール部からの前記送出繊維部の送り速度よりも遅い、フィラメントワインディング方法。
【請求項5】
フィラメントワインディング装置を用いたフィラメントワインディング方法であって、
前記フィラメントワインディング装置は、
ボビンと当該ボビンに繊維束を巻回してなる繊維ロール部とを有するボビン部材を回転させるためのボビン駆動部と、
前記繊維ロール部から送り出された送出繊維部を、当該送出繊維部に張力を付与した状態でワークに巻き付ける巻付装置と、
前記ボビン駆動部から前記巻付装置までの前記送出繊維部の送り経路に設けられた張力付与装置と、を備え、
前記張力付与装置は、前記送出繊維部を押圧する押圧部を有し、
前記フィラメントワインディング方法は、
前記ワークへの前記送出繊維部の巻き付けの途中で前記巻付装置の動作を停止する途中停止工程を含み、
前記途中停止工程では、前記繊維ロール部からの前記送出繊維部の送り出しを継続した状態で、前記押圧部を前記送出繊維部に押圧しながら移動させることにより、前記送り経路の長さを長くし、
前記途中停止工程の後で、前記巻付装置を作動させて前記ワークへの前記送出繊維部の巻き付けを再開する巻付再開工程を含み、
前記巻付再開工程では、前記押圧部を前記送出繊維部に押圧しながら初期位置まで移動させる、フィラメントワインディング方法。
【請求項6】
請求項記載のフィラメントワインディング方法であって、
前記巻付再開工程における前記押圧部の移動速度は、前記途中停止工程における前記押圧部の移動速度よりも速い、フィラメントワインディング方法。
【請求項7】
請求項記載のフィラメントワインディング方法であって、
前記巻付再開工程では、前記繊維ロール部からの前記送出繊維部の送り速度を徐々に上昇させる、フィラメントワインディング方法。
【請求項8】
ボビンと当該ボビンに繊維束を巻回してなる繊維ロール部とを有するボビン部材を回転させるためのボビン駆動部と、
前記繊維ロール部から送り出された送出繊維部を、当該送出繊維部に張力を付与した状態でワークに巻き付ける巻付装置と、
前記ボビン駆動部から前記巻付装置までの前記送出繊維部の送り経路に設けられた張力付与装置と、を備え、
前記張力付与装置は、前記送出繊維部を押圧する押圧部を有するフィラメントワインディング装置であって、
前記ボビン駆動部を制御するボビン制御部と、
前記巻付装置を制御する巻付制御部と、
前記張力付与装置を制御する張力制御部と、を有し、
前記巻付制御部は、前記巻付装置を制御して、前記ワークへの前記送出繊維部の巻き付けの途中で前記巻付装置の動作を停止させ、
前記巻付制御部が前記巻付装置の動作を途中停止させたときに、前記ボビン制御部は、前記ボビン駆動部を制御して前記繊維ロール部からの前記送出繊維部の送り出しを継続させ、前記張力制御部は、前記張力付与装置を制御して前記押圧部を前記送出繊維部に押圧しながら移動させることにより、前記送り経路の長さを長くし、
前記繊維ロール部からの前記送出繊維部の送り速度を検出する速度センサを有し、
前記途中停止時に、前記張力制御部は、前記張力付与装置を制御して、前記速度センサが検出した送り速度が速いほど前記押圧部の移動速度を速くさせる、フィラメントワインディング装置。
【請求項9】
請求項記載のフィラメントワインディング装置であって、
前記途中停止時の前記送出繊維部への前記押圧部の押圧方向は、重力方向である、フィラメントワインディング装置。
【請求項10】
ボビンと当該ボビンに繊維束を巻回してなる繊維ロール部とを有するボビン部材を回転させるためのボビン駆動部と、
前記繊維ロール部から送り出された送出繊維部を、当該送出繊維部に張力を付与した状態でワークに巻き付ける巻付装置と、
前記ボビン駆動部から前記巻付装置までの前記送出繊維部の送り経路に設けられた張力付与装置と、を備え、
前記張力付与装置は、前記送出繊維部を押圧する押圧部を有するフィラメントワインディング装置であって、
前記ボビン駆動部を制御するボビン制御部と、
前記巻付装置を制御する巻付制御部と、
前記張力付与装置を制御する張力制御部と、を有し、
前記巻付制御部は、前記巻付装置を制御して、前記ワークへの前記送出繊維部の巻き付けの途中で前記巻付装置の動作を停止させ、
前記巻付制御部が前記巻付装置の動作を途中停止させたときに、前記ボビン制御部は、前記ボビン駆動部を制御して前記繊維ロール部からの前記送出繊維部の送り出しを継続させ、前記張力制御部は、前記張力付与装置を制御して前記押圧部を前記送出繊維部に押圧しながら移動させることにより、前記送り経路の長さを長くし、
前記押圧部が前記送出繊維部から受ける荷重を検出する荷重センサを有し、
前記途中停止時に、前記張力制御部は、前記張力付与装置を制御して、前記荷重センサが検出した荷重が大きいほど前記押圧部の移動速度を遅くさせる、フィラメントワインディング装置。
【請求項11】
ボビンと当該ボビンに繊維束を巻回してなる繊維ロール部とを有するボビン部材を回転させるためのボビン駆動部と、
前記繊維ロール部から送り出された送出繊維部を、当該送出繊維部に張力を付与した状態でワークに巻き付ける巻付装置と、
前記ボビン駆動部から前記巻付装置までの前記送出繊維部の送り経路に設けられた張力付与装置と、を備え、
前記張力付与装置は、前記送出繊維部を押圧する押圧部を有するフィラメントワインディング装置であって、
前記ボビン駆動部を制御するボビン制御部と、
前記巻付装置を制御する巻付制御部と、
前記張力付与装置を制御する張力制御部と、を有し、
前記巻付制御部は、前記巻付装置を制御して、前記ワークへの前記送出繊維部の巻き付けの途中で前記巻付装置の動作を停止させ、
前記巻付制御部が前記巻付装置の動作を途中停止させたときに、前記ボビン制御部は、前記ボビン駆動部を制御して前記繊維ロール部からの前記送出繊維部の送り出しを継続させ、前記張力制御部は、前記張力付与装置を制御して前記押圧部を前記送出繊維部に押圧しながら移動させることにより、前記送り経路の長さを長くし、
前記途中停止時に、前記ボビン制御部は、前記ボビン駆動部を制御して、前記繊維ロール部からの前記送出繊維部の送り速度を、前記途中停止させる直前の前記繊維ロール部からの前記送出繊維部の送り速度よりも遅くさせる、フィラメントワインディング装置。
【請求項12】
ボビンと当該ボビンに繊維束を巻回してなる繊維ロール部とを有するボビン部材を回転させるためのボビン駆動部と、
前記繊維ロール部から送り出された送出繊維部を、当該送出繊維部に張力を付与した状態でワークに巻き付ける巻付装置と、
前記ボビン駆動部から前記巻付装置までの前記送出繊維部の送り経路に設けられた張力付与装置と、を備え、
前記張力付与装置は、前記送出繊維部を押圧する押圧部を有するフィラメントワインディング装置であって、
前記ボビン駆動部を制御するボビン制御部と、
前記巻付装置を制御する巻付制御部と、
前記張力付与装置を制御する張力制御部と、を有し、
前記巻付制御部は、前記巻付装置を制御して、前記ワークへの前記送出繊維部の巻き付けの途中で前記巻付装置の動作を停止させ、
前記巻付制御部が前記巻付装置の動作を途中停止させたときに、前記ボビン制御部は、前記ボビン駆動部を制御して前記繊維ロール部からの前記送出繊維部の送り出しを継続させ、前記張力制御部は、前記張力付与装置を制御して前記押圧部を前記送出繊維部に押圧しながら移動させることにより、前記送り経路の長さを長くし、
前記巻付制御部は、前記巻付装置の動作を前記途中停止させた後で、前記巻付装置を制御して前記ワークへの前記送出繊維部の巻き付けを再開させ、
前記ワークへの前記送出繊維部の巻き付けの再開時に、前記張力制御部は、前記張力付与装置を制御して、前記押圧部を前記送出繊維部に押圧しながら初期位置まで移動させる、フィラメントワインディング装置。
【請求項13】
請求項12記載のフィラメントワインディング装置であって、
前記ワークへの前記送出繊維部の巻き付けの再開時に、前記張力制御部は、前記張力付与装置を制御して、前記押圧部の移動速度を、前記途中停止時における前記押圧部の移動速度よりも速くさせる、フィラメントワインディング装置。
【請求項14】
請求項13記載のフィラメントワインディング装置であって、
前記ワークへの前記送出繊維部の巻き付けの再開時に、前記ボビン制御部は、前記ボビン駆動部を制御して、前記繊維ロール部からの前記送出繊維部の送り速度を徐々に上昇させる、フィラメントワインディング装置。
【請求項15】
請求項8~14のいずれか1項に記載のフィラメントワインディング装置であって、
前記送出繊維部を前記ボビン駆動部から前記巻付装置に送る複数の送りローラを備え、
前記押圧部は、複数設けられ、
前記送り経路上で互いに隣り合う前記押圧部の間には、前記複数の送りローラの少なくとも1つが配置されている、フィラメントワインディング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィラメントワインディング方法及びフィラメントワインディング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、フィラメントワインディング装置(以下、FW装置ということがある)が開示されている。FW装置は、ボビンモータと、巻付装置と、張力付与装置とを備える。ボビンモータは、ボビン部材を回転させる。ボビン部材は、ボビンと、当該ボビンに繊維束を巻回してなる繊維ロール部とを有する。巻付装置は、繊維ロール部から送り出された送出繊維部に張力を付与した状態で、当該送出繊維部をワークに巻き付ける。
【0003】
張力付与装置は、ボビン駆動部から巻付装置までの送出繊維部の送り経路に設けられている。張力付与装置は、送出繊維部を押圧する押圧部(ダンサーロール)を備える。FW装置の張力付与装置の押圧部は、一定の力で送出繊維部を押圧している。張力付与装置は、押圧部の位置を検出しその位置の変化により繊維ロール部からの送り出し速度を制御することで、押圧部の位置と押圧力を一定にするフィードバック制御が一般的である。また、高速運転でフィードバック制御が追い付かない場合は、巻付装置の巻付速度や巻付長さに応じて押圧部を移動させるアクティブ制御もある。これらの張力付与装置により、送出繊維部の張力を安定にさせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-255359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、FW装置を用いたフィラメントワインディング方法では、所定の中間処理を行うために、送出繊維部のワークへの巻き付けの途中で巻付装置の動作を停止する途中停止工程を行うことがある。中間処理は、例えば、ワークへの送出繊維部の巻付精度を測定することが含まれる。また、中間処理は、例えば、ワークに対する送出繊維部の巻付角度を変更することが含まれてもよい。上述した従来技術には、途中停止工程について記載されていない。
【0006】
途中停止工程中に繊維ロール部からの送出繊維部の送り出しを停止させると、送出繊維部には比較的大きな張力が作用する。そうすると、繊維ロール部は、送出繊維部によって過度に締め付けられて変形することがある。繊維ロール部が変形した場合、繊維ロール部の修正又はボビン部材の交換が必要になる。よって、フィラメントワインディングに要する時間が長くなり、且つフィラメントワインディングのコストが高くなる。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、フィラメントワインディング装置を用いたフィラメントワインディング方法であって、前記フィラメントワインディング装置は、ボビンと当該ボビンに繊維束を巻回してなる繊維ロール部とを有するボビン部材を回転させるためのボビン駆動部と、前記繊維ロール部から送り出された送出繊維部を、当該送出繊維部に張力を付与した状態でワークに巻き付ける巻付装置と、前記ボビン駆動部から前記巻付装置までの前記送出繊維部の送り経路に設けられた張力付与装置と、を備え、前記張力付与装置は、前記送出繊維部を押圧する押圧部を有し、前記フィラメントワインディング方法は、前記ワークへの前記送出繊維部の巻き付けの途中で前記巻付装置の動作を停止する途中停止工程を含み、前記途中停止工程では、前記繊維ロール部からの前記送出繊維部の送り出しを継続した状態で、前記押圧部を前記送出繊維部に押圧しながら移動させることにより、前記送り経路の長さを長くし、前記途中停止工程では、前記繊維ロール部からの前記送出繊維部の送り速度が速いほど前記押圧部の移動速度を速くする、フィラメントワインディング方法である。
【0009】
本発明の他の態様は、ボビンと当該ボビンに繊維束を巻回してなる繊維ロール部とを有するボビン部材を回転させるためのボビン駆動部と、前記繊維ロール部から送り出された送出繊維部を、当該送出繊維部に張力を付与した状態でワークに巻き付ける巻付装置と、前記ボビン駆動部から前記巻付装置までの前記送出繊維部の送り経路に設けられた張力付与装置と、を備え、前記張力付与装置は、前記送出繊維部を押圧する押圧部を有するフィラメントワインディング装置であって、前記ボビン駆動部を制御するボビン制御部と、前記巻付装置を制御する巻付制御部と、前記張力付与装置を制御する張力制御部と、を有し、前記巻付制御部は、前記巻付装置を制御して、前記ワークへの前記送出繊維部の巻き付けの途中で前記巻付装置の動作を停止させ、前記巻付制御部が前記巻付装置の動作を途中停止させたときに、前記ボビン制御部は、前記ボビン駆動部を制御して前記繊維ロール部からの前記送出繊維部の送り出しを継続させ、前記張力制御部は、前記張力付与装置を制御して前記押圧部を前記送出繊維部に押圧しながら移動させることにより、前記送り経路の長さを長くし、前記繊維ロール部からの前記送出繊維部の送り速度を検出する速度センサを有し、前記途中停止時に、前記張力制御部は、前記張力付与装置を制御して、前記速度センサが検出した送り速度が速いほど前記押圧部の移動速度を速くさせる、フィラメントワインディング装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、途中停止工程中に繊維ロール部からの送出繊維部の送り出しが継続される。これにより、途中停止工程中に繊維ロール部が送出繊維部によって過度に締め付けられることがないため、繊維ロール部の変形を抑えることができる。そのため、繊維ロール部の修正又はボビン部材の交換を不要にすることができる。よって、フィラメントワインディングに要する時間が長くなることを抑えることができ、且つフィラメントワインディングのコストが高くなることを抑えることができる。
【0011】
さらに、途中停止工程中に押圧部を移動させて送り経路の長さを長くするため、送出繊維部に適度な張力を付与し続けることができる。これにより、ワークに巻き付けられた送出繊維部が緩むことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るフィラメントワインディング装置の概略構成図である。
図2図2は、高圧ガスタンクの概略縦断面図である。
図3図3は、図2の矢印IIIで示す部分の詳細断面図である。
図4図4Aは、図1に示す第1張力保持部の平面説明図である。図4Bは、図4Aに示す第1張力保持部の第1の動作説明図である。図4Cは、図4Aに示す第1張力保持部の第2の動作説明図である。
図5図5は、図1の制御ブロック図である。
図6図6は、フィラメントワインディング方法を説明するフローチャートである。
図7図7Aは、張力付与装置の平面説明図である。図7Bは、図7Aに示す張力付与装置の第1の動作説明図である。図7Cは、図7Aに示す張力付与装置の第2の動作説明図である。
図8図8は、図6の途中停止工程の詳細を説明するフローチャートである。
図9図9は、図6の巻付再開工程の詳細を説明するフローチャートである。
図10図10は、第1変形例に係る張力付与装置の平面説明図である。
図11図11は、第2変形例に係る張力付与装置の平面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係るフィラメントワインディング装置(以下、「FW装置10」ということがある)は、複数のボビン部材400から送り出された複数の送出繊維部430をワーク500に巻き付けることにより高圧ガスタンク502を製造する。FW装置10を用いて製造される高圧ガスタンク502は、例えば、燃料電池車両に搭載される。この場合、高圧ガスタンク502には、水素ガスが高圧で充填される。なお、高圧ガスタンク502には、水素ガス以外の燃料ガスが充填されてもよい。
【0014】
図2において、高圧ガスタンク502は、ライナ504と、第1口金506と、第2口金508と、補強部510とを備える。ライナ504、第1口金506及び第2口金508は、ワーク500を形成する。ライナ504は、例えば、水素バリア性を示す高密度ポリエチレン(HDPE)樹脂又はナイロン樹脂(PA6)からなる。ライナ504の軸方向の一端部には、第1口金506が取り付けられている。ライナ504の軸方向の他端部には、第2口金508が取り付けられている。補強部510は、ライナ504の厚さ方向に積層された複数の補強層512を有する(図3参照)。
【0015】
FW装置10を用いて製造される製品は、高圧ガスタンク502に限定されない。つまり、FW装置10を用いて製造される製品は、例えば、中実部材等であってもよい。
【0016】
図1に示すように、FW装置10は、複数のボビン駆動部12と、複数の張力保持部14と、複数の送りローラ16と、巻付装置18と、張力付与装置20と、制御部22とを備える。
【0017】
本実施形態において、複数のボビン駆動部12の数は、4つである。複数のボビン駆動部12の数は、適宜設定可能である。複数のボビン駆動部12は、第1ボビン駆動部26と、第2ボビン駆動部28と、第3ボビン駆動部30と、第4ボビン駆動部32とを含む。第1ボビン駆動部26は、ボビン支持軸34とボビンモータ36とを有する。ボビンモータ36は、ボビン支持部を回転させる。第2ボビン駆動部28、第3ボビン駆動部30及び第4ボビン駆動部32の各々の構成は、第1ボビン駆動部26の構成と同じである。
【0018】
FW装置10には、複数のボビン部材400が着脱可能である。本実施形態において、複数のボビン部材400の数は、4つである。複数のボビン部材400は、第1ボビン部材402と、第2ボビン部材404と、第3ボビン部材406と、第4ボビン部材408とを含む。
【0019】
第1ボビン部材402は、ボビン410と、繊維ロール部412とを有する。ボビン410は、ボビン支持軸34に取り付けられる。ボビン410には、繊維束がトラバース巻きされている。換言すれば、ボビン410には、ボビン410の幅方向(ボビン410の軸方向)に繊維束を移動させながら繊維束が巻かれている。
【0020】
繊維束は、多数本の繊維を束ねて形成される。繊維束を形成する繊維としては、例えば、カーボン繊維又はガラス繊維が用いられる。繊維束には、予め樹脂が含浸されている。繊維束に含浸されている樹脂としては、例えば、熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂が用いられる。つまり、繊維束は、いわゆるトウプリプレグである。繊維ロール部412は、ボビン410に繊維束が巻回されて形成されている。繊維束は、ボビン410が回転することにより繊維ロール部412から送り出される。
【0021】
第2ボビン部材404、第3ボビン部材406及び第4ボビン部材408の各々は、第1ボビン部材402と同様に構成されている。そのため、第2ボビン部材404、第3ボビン部材406及び第4ボビン部材408の各々の構成の説明については、省略する。
【0022】
以下、第1ボビン部材402の繊維束のうち繊維ロール部412から送り出された部分を「第1送出繊維部422」という。第2ボビン部材404の繊維束のうち繊維ロール部412から送り出された部分を「第2送出繊維部424」という。第3ボビン部材406のうち繊維ロール部412から送り出された部分を「第3送出繊維部426」という。第4ボビン部材408のうち繊維ロール部412から送り出された部分を「第4送出繊維部428」という。また、第1送出繊維部422、第2送出繊維部424、第3送出繊維部426及び第4送出繊維部428の各々を「送出繊維部430」ということもある。
【0023】
本実施形態において、複数の張力保持部14の数は、4つである。複数の張力保持部14の数は、複数のボビン駆動部12の数と同じである。複数の張力保持部14の数は、複数のボビン駆動部12と同様に適宜設定可能である。複数の張力保持部14は、第1張力保持部42と、第2張力保持部44と、第3張力保持部46と、第4張力保持部48とを含む。第1張力保持部42は、第1送出繊維部422に作用する張力の変動を吸収する。換言すれば、第1張力保持部42は、第1送出繊維部422に作用する張力を基準張力範囲内に保持する。
【0024】
図4Aに示すように、第1張力保持部42は、ベース部50と、第1保持ローラ52と、第2保持ローラ54と、エアシリンダ56とを有する。ベース部50は、長方形状を有している。ベース部50は、第1端部51と第2端部53とを含む。第1端部51は、ベース部50の長手方向の一端部である。第2端部53は、ベース部50の長手方向の他端部である。第1保持ローラ52は、第1端部51に回転可能に取り付けられている。第2保持ローラ54は、第2端部53に回転可能に取り付けられている。第1保持ローラ52と第2保持ローラ54とには、第1送出繊維部422が巻き掛けられている。
【0025】
ベース部50は、傾動軸線58を中心に傾動可能である。傾動軸線58は、第1保持ローラ52と第2保持ローラ54との間に位置している。ベース部50は、傾動軸線58を中心に第1回転方向(矢印X方向)と第2回転方向(矢印Y方向)とに傾動する。エアシリンダ56は、第1回転方向に第2端部53を付勢する。第2保持ローラ54は、第1送出繊維部422に基準張力が作用している状態で図4Aに示す基準位置にある。このとき、第1送出繊維部422に作用する基準張力とエアシリンダ56の付勢力とは、互いに釣り合う。
【0026】
第1送出繊維部422に作用する張力が基準張力よりも小さくなると、図4Bに示すように、ベース部50は、エアシリンダ56の付勢力に押されて傾動軸線58を中心に第1回転方向に傾動する。そうすると、第2保持ローラ54は、基準位置から第1位置に変位する。これにより、第1送出繊維部422の経路長が長くなるため、第1送出繊維部422に作用する張力が大きくなる。つまり、第1送出繊維部422に作用する張力は、基準張力範囲の下限値以上に保持される。
【0027】
第1送出繊維部422に作用する張力が基準張力よりも大きくなると、図4Cに示すように、ベース部50は、第1送出繊維部422の張力によりエアシリンダ56を押圧しながら傾動軸線58を中心に第2回転方向に傾動する。そうすると、第2保持ローラ54は、基準位置から第2位置に変位する。これにより、第1送出繊維部422の経路長が短くなるため、第1送出繊維部422に作用する張力が小さくなる。つまり、第1送出繊維部422に作用する張力は、基準張力範囲の上限値以下に保持される。第1張力保持部42は、エアシリンダ56に代えて油圧シリンダ又はばね部材等を有してもよい。
【0028】
第2張力保持部44は、第2延出繊維束に作用する張力を基準張力範囲内に保持する。第3張力保持部46は、第3延出繊維束に作用する張力を基準張力範囲内に保持する。第4張力保持部48は、第4延出繊維束に作用する張力を基準張力範囲内に保持する。第2張力保持部44、第3張力保持部46及び第4張力保持部48の各々は、第1張力保持部42と同様に構成されている。そのため、第2張力保持部44、第3張力保持部46及び第4張力保持部48の各々の構成の説明については、省略する。
【0029】
各張力保持部14は、上述した構成に限定されず、適宜の構成を採用し得る。
【0030】
図1に示すように、複数の送りローラ16は、複数の張力保持部14を経由した複数の送出繊維部430を巻付装置18に送る。各送りローラ16は、回転可能に図示しないローラ支持部材に取り付けられている。各送りローラ16には、第1送出繊維部422、第2送出繊維部424、第3送出繊維部426及び第4送出繊維部428が巻き掛けられている。
【0031】
複数の送りローラ16は、第1送りローラ64と、第2送りローラ66と、第3送りローラ68と、第4送りローラ70と、第5送りローラ72と、第6送りローラ74と、第7送りローラ76とを含む。第1送りローラ64、第2送りローラ66、第3送りローラ68、第4送りローラ70、第5送りローラ72、第6送りローラ74及び第7送りローラ76は、複数の送出繊維部430の送り方向に向かってこの順番に配置されている。複数の送りローラ16の数は、適宜変更可能である。
【0032】
巻付装置18は、ワーク500の軸線Axを中心にワーク500を回転させながら複数の送出繊維部430をワーク500の外面に巻き付ける。巻付装置18は、第1支持台78と、第1支軸80と、第2支持台82と、第2支軸84と、回転モータ86と、繊維供給ヘッド88とを備える。
【0033】
第1支持台78は、第1支軸80を回転可能に支持する。第1支軸80は、ワーク500の第1口金506に着脱可能である。第2支持台82は、第2支軸84を回転可能に支持する。第2支軸84は、ワーク500の第2口金508に着脱可能である。回転モータ86は、第2支軸84を回転させる。回転モータ86は、第2支持台82に固定されている。回転モータ86は、ワーク500の軸線Axを中心に第1支軸80、ワーク500及び第2支軸84を一体的に回転させる。
【0034】
以下、ワーク500の軸線Axに沿った方向を、「ワーク500の軸方向」という。繊維供給ヘッド88は、複数の送出繊維部430を束ねた状態でワーク500に供給する。繊維供給ヘッド88は、ワーク500の軸方向に沿って移動可能である。繊維供給ヘッド88は、複数の送出繊維部430が挿通する挿通孔90を有している。巻付装置18は、複数の送出繊維部430をヘリカル巻き又はフープ巻き等によりワーク500に複数層巻き付ける。
【0035】
張力付与装置20は、複数のボビン駆動部12から巻付装置18までの複数の送出繊維部430の送り経路に設けられている。張力付与装置20は、複数の送出繊維部430に張力を付与する。張力付与装置20は、押圧部92と、押圧支持部94と、アクチュエータ96とを有する。
【0036】
押圧部92は、水平方向に延在したローラである。押圧部92は、各送出繊維部430を下方(重力方向)に押圧する。具体的に、押圧部92は、各送出繊維部430における第2送りローラ66と第3送りローラ68との間の部分を押圧する。各送出繊維部430のうち押圧部92によって押圧される部分は、適宜変更可能である。つまり、押圧部92は、例えば、各送出繊維部430における第1送りローラ64と第2送りローラ66との間の部分を押圧してもよい。
【0037】
押圧支持部94は、押圧部92を回転可能に支持する。押圧支持部94は、上下方向に延在している。アクチュエータ96は、押圧支持部94を上下方向に移動させる。詳細な図示は省略するが、アクチュエータ96は、例えば、モータとボールねじとを含む。ただし、アクチュエータ96は、エアシリンダ等であってもよい。
【0038】
図5に示すように、FW装置10は、速度センサ98と、荷重センサ100とを備える。速度センサ98は、各送出繊維部430の送り速度を検出する。速度センサ98は、検出された送り速度を制御部22に送信する。荷重センサ100は、各送出繊維部430から押圧部92が受ける荷重の総和を検出する。荷重センサ100は、検出された荷重を制御部22に送信する。
【0039】
制御部22は、演算部102(処理部)と、記憶部104とを有する。演算部102は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサ(処理回路)によって構成される。
【0040】
演算部102は、ボビン制御部106と、巻付制御部108と、巻付位置取得部110と、巻付位置判定部112と、張力制御部114とを含む。演算部102は、記憶部104に記憶されているプログラムを実行することによって、ボビン制御部106、巻付制御部108、巻付位置取得部110、巻付位置判定部112及び張力制御部114を実現する。
【0041】
なお、演算部102は、集積回路によって、ボビン制御部106、巻付制御部108、巻付位置取得部110、巻付位置判定部112及び張力制御部114の少なくとも一部を実現してもよい。集積回路としては、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等が挙げられる。
【0042】
記憶部104は、揮発性メモリと不揮発性メモリとを含む。揮発性メモリとしては、例えば、RAM(Random Access Memory)等が挙げられる。不揮発性メモリとしては、例えば、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等が挙げられる。データ等は、例えば、揮発性メモリに記憶される。プログラム、テーブル及びマップ等は、例えば、不揮発性メモリに記憶される。記憶部104の少なくとも一部は、上述したようなプロセッサ又は集積回路に組み込まれてもよい。
【0043】
ボビン制御部106は、ボビン駆動部12を制御する。巻付制御部108は、巻付装置18を制御する。具体的に、巻付制御部108は、回転モータ86を制御してワーク500を回転させる。巻付制御部108は、繊維供給ヘッド88を制御して繊維供給ヘッド88をワーク500の軸方向に沿って移動させる。巻付制御部108は、回転モータ86と繊維供給ヘッド88とを同期制御する。
【0044】
巻付位置取得部110は、各送出繊維部430のワーク500への巻付位置を取得する。巻付位置取得部110は、例えば、ワーク500の情報と巻付装置18の動作情報とに基づいて各送出繊維部430のワーク500への巻付位置を算出する。ワーク500の情報は、ワーク500の形状と、ワーク500の大きさとを含む。巻付装置18の動作情報は、回転モータ86の回転量と、繊維供給ヘッド88の位置情報とを含む。なお、巻付位置取得部110は、カメラ等を用いて各送出繊維部430のワーク500への巻付位置を取得してもよい。
【0045】
巻付位置判定部112は、各送出繊維部430のワーク500への巻付位置が張力低下領域に位置するか否かを判定する。張力低下領域は、各送出繊維部430に作用する張力が基準張力範囲の下限値よりも低下する可能性のある巻付位置の領域である。
【0046】
また、巻付位置判定部112は、各送出繊維部430のワーク500への巻付位置が張力上昇領域に位置するか否かを判定する。張力上昇領域は、各送出繊維部430に作用する張力が所定の張力範囲の上限値よりも上昇する可能性のある巻付位置の領域である。
【0047】
さらに、巻付位置判定部112は、各送出繊維部430のワーク500への巻付位置が途中停止位置にあるか否かを判定する。途中停止位置は、ワーク500の形状及び大きさ等に応じて適宜設定される。本実施形態では、途中停止位置は、1つの補強層512が形成された時の各送出繊維部430のワーク500への巻付位置に設定される。すなわち、各送出繊維部430のワーク500への巻付位置は、1つの補強層512が形成されるごとに途中停止位置に位置する。
【0048】
張力低下領域、張力上昇領域及び途中停止位置の情報は、予め記憶部104に記憶されている。張力低下領域及び張力上昇領域は、例えば、試験等を予め行うことにより得られる。ただし、張力低下領域及び張力上昇領域は、シミュレーションにより算出してもよい。
【0049】
張力制御部114は、張力付与装置20を制御する。具体的に、張力制御部114は、アクチュエータ96を制御して押圧部92を上下方向に移動させる。
【0050】
次に、FW装置10を用いたフィラメントワインディング方法(以下、「FW方法」という)について説明する。
【0051】
図6に示すように、FW方法は、準備工程(ステップS1)を含む。準備工程では、複数のボビン部材400を複数のボビン駆動部12にそれぞれ装着する。また、各送出繊維部430を各送りローラ16に巻き掛ける。さらに、各送出繊維部430を繊維供給ヘッド88の挿通孔90に通す。また、各送出繊維部430のワーク500への巻付端部(始端部)をワーク500の外面に固定する。なお、図7Aに示すように、各送出繊維部430のワーク500への巻き付けを開始する前の初期状態において、各送出繊維部430は、押圧部92に巻き掛けられている。換言すれば、初期状態において、押圧部92は、各送出繊維部430を押圧する。これにより、各送出繊維部430には、基準張力が作用する。
【0052】
続いて、複数の送出繊維部430のワーク500への巻き付けを開始する(ステップS2)。具体的に、ボビン制御部106は、各ボビン駆動部12を制御して各ボビンモータ36を回転させる。また、巻付制御部108は、回転モータ86を制御してワーク500を回転させる。さらに、巻付制御部108は、繊維供給ヘッド88を制御して繊維供給ヘッド88をワーク500の軸方向に移動させる。
【0053】
これにより、各送出繊維部430は、複数の繊維ロール部412の各々から送り出される。各送出繊維部430は、各張力保持部14と複数の送りローラ16とを介して繊維供給ヘッド88に送られる。繊維供給ヘッド88に送られた複数の送出繊維部430は、1つに束ねられた状態でワーク500の外面に巻き付けられる。このとき、各送出繊維部430の張力の変動は、基本的に各張力保持部14によって吸収される。そのため、各送出繊維部430には、基準張力範囲内の張力が作用し続ける。
【0054】
複数の送出繊維部430のワーク500への巻き付けを開始すると、巻付位置取得部110は、各送出繊維部430のワーク500への巻付位置を取得する(ステップS3)。続いて、巻付位置判定部112は、取得した巻付位置が張力低下領域に位置するか否かを判定する(ステップS4)。巻付位置が張力低下領域に位置する場合、各送出繊維部430に作用する張力の低下を各張力保持部14だけでは吸収できなくなる。すなわち、この場合、各送出繊維部430に作用する張力が基準張力範囲の下限値よりも低下する可能性がある。そのため、巻付位置が張力低下領域に位置する場合(ステップS4:YES)、張力制御部114は、張力上昇制御を行う(ステップS5)。
【0055】
図7Bに示すように、張力上昇制御では、張力制御部114は、アクチュエータ96を制御して押圧部92を下方向(重力方向)に移動させる。これにより、押圧部92によって押圧された各送出繊維部430が引き延ばされるため、各送出繊維部430に作用する張力が上昇する。よって、各送出繊維部430に作用する張力は、基準張力範囲内に保持される。張力上昇制御の後、動作フローは、後述するステップS8(図6参照)に進む。
【0056】
図6において、巻付位置が張力低下領域に位置しない場合(ステップS4:NO)、巻付位置判定部112は、取得した巻付位置が張力上昇領域に位置するか否かを判定する(ステップS6)。巻付位置が張力上昇領域に位置する場合、各送出繊維部430に作用する張力の上昇を各張力保持部14だけでは吸収できなくなる。すなわち、この場合、各送出繊維部430に作用する張力が基準張力範囲の上限値よりも上昇する可能性がある。そのため、巻付位置が張力上昇領域に位置する場合(ステップS6:YES)、張力制御部114は、張力低下制御を行う(ステップS7)。
【0057】
図7Cに示すように、張力低下制御では、張力制御部114は、アクチュエータ96を制御して押圧部92を上方向(重力方向とは反対方向)に移動させる。これにより、押圧部92から各送出繊維部430に作用していた押圧力が低下するため、各送出繊維部430に作用する張力が低下する。よって、各送出繊維部430に作用する張力は、基準張力範囲内に保持される。張力低下制御の後、動作フローは、後述するステップS8(図6参照)に進む。
【0058】
図6において、巻付位置が張力上昇領域に位置しない場合(ステップS6:NO)、制御部22は、各送出繊維部430のワーク500への巻き付けが完了したか否かを判定する(ステップS8)。各送出繊維部430のワーク500への巻き付けが完了していない場合(ステップS8:NO)、巻付位置判定部112は、各送出繊維部430のワーク500への巻付位置が途中停止位置にあるか否かを判定する(ステップS9)。
【0059】
本実施形態では、複数の送出繊維部430によって1つの補強層512が形成されたときに、各送出繊維部430のワーク500への巻付位置が途中停止位置に位置する。つまり、各送出繊維部430のワーク500への巻付位置は、各補強層512が形成されるごとに途中停止位置に位置する。各送出繊維部430のワーク500への巻付位置が途中停止位置にある場合(ステップS9:YES)、途中停止工程が行われる(ステップS10)。
【0060】
図8に示すように、途中停止工程では、巻付制御部108は、巻付装置18を制御して巻付装置18の動作を停止させる(ステップS11)。具体的に、巻付制御部108は、回転モータ86を制御してワーク500の回転を停止させる。また、巻付制御部108は、繊維供給ヘッド88を制御して繊維供給ヘッド88の移動を停止させる。
【0061】
このとき、中間処理が実施される(ステップS12)。中間処理では、各送出繊維部430のワーク500への巻き精度が測定される。換言すれば、中間処理では、各補強層512の積層精度が測定される。なお、中間処理では、各送出繊維部430のワーク500への巻き角度が設定されてもよい。
【0062】
また、ボビン制御部106は、各ボビンモータ36を制御して各送出繊維部430の送り速度を低下させる(ステップS13)。換言すれば、ボビン制御部106は、各ボビンモータ36を制御して、各送出繊維部430の送り速度を、途中停止工程の直前の各送出繊維部430の送り速度よりも遅くする。さらに、張力制御部114は、アクチュエータ96を制御して押圧部92を第1移動速度で下方向(重力方向)に移動させる(ステップS14)。
【0063】
具体的に、張力制御部114は、速度センサ98によって検出された各送出繊維部430の送り速度に基づいて第1移動速度を制御して、各送出繊維部430の張力を基準張力範囲内に保持させる。換言すれば、張力制御部114は、速度センサ98によって検出された各送出繊維部430の送り速度が速いほど第1移動速度を速くして、各送出繊維部430の張力を基準張力範囲内に保持させる。このような制御を行う場合、荷重センサ100は、省略されてもよい。
【0064】
張力制御部114は、荷重センサ100によって検出された荷重に基づいて第1移動速度を制御して、各送出繊維部430の張力を基準張力範囲内に保持させてもよい。換言すれば、張力制御部114は、荷重センサ100によって検出された荷重が大きいほど第1移動速度を遅くして、各送出繊維部430の張力を基準張力範囲内に保持させてもよい。このような制御を行う場合、速度センサ98は、省略されてもよい。
【0065】
押圧部92を第1移動速度で下方向に移動させると、図7Bに示すように、各送出繊維部430の送り経路の長さは、各送出繊維部430に適度な張力が作用した状態で長くなる。
【0066】
このような途中停止工程では、各繊維ロール部412からの各送出繊維部430の送り出しが継続される。換言すれば、各繊維ロール部412からの各送出繊維部430の送り出しが停止されない。そのため、各繊維ロール部412が各送出繊維部430によって過度に締め付けられることがない。
【0067】
また、各繊維ロール部412が回転するため、各繊維ロール部412を形成する繊維束に含浸されている樹脂が重力方向に垂れる(偏在する)ことが抑制される。よって、繊維束に含浸されている樹脂の分布が不均一になることを抑制できる。従って、ワーク500に巻き付けられた各送出繊維部430に強度不足の部分が発生することを抑制できる。
【0068】
さらに、途中停止工程では、各送出繊維部430に適度な張力が付与され続ける。換言すれば、途中停止工程では、各送出繊維部430の張力が基準張力範囲内に保持される。従って、ワーク500に巻き付けられた各送出繊維部430が緩むこと(撓むこと)が防止される。
【0069】
その後、図8において、中間処理が終了すると(ステップS15)、途中停止工程が終了する。途中停止工程の後、図6に示すように、巻付再開工程が行われる(ステップS16)。
【0070】
図9に示すように、巻付再開工程では、巻付制御部108は、巻付装置18を制御して巻付装置18の動作を再開させる(ステップS17)。すなわち、巻付制御部108は、回転モータ86を制御してワーク500を回転させる。また、巻付制御部108は、繊維供給ヘッド88を制御して繊維供給ヘッド88をワーク500の軸方向に移動させる。巻付再開工程の各送出繊維部430のワーク500への巻付加速度は、初期状態から巻付開始を行ったときの各送出繊維部430のワーク500への巻付加速度よりも大きい。
【0071】
また、張力制御部114は、アクチュエータ96を制御して押圧部92を第2移動速度で初期位置に復帰させる(ステップS18)。このとき、張力制御部114は、巻付再開工程中の各送出繊維部430のワーク500への巻付速度に基づいて第2移動速度を制御する。第2移動速度は、第1移動速度よりも速い。
【0072】
さらに、ボビン制御部106は、各ボビンモータ36を制御して各送出繊維部430の送り速度を徐々に上昇させる(ステップS19)。このとき、ボビン制御部106は、第2移動速度に基づいて各送出繊維部430の送り速度を制御して、各送出繊維部430の張力を基準張力範囲内に保持させる。これにより、図7Cに示すように、各送出繊維部430の送り経路の長さは、各送出繊維部430に適度な張力が作用した状態で短くなる。押圧部92が初期位置に復帰すると、巻付再開工程が終了する。巻付再開工程の後、図6のステップS3以降の処理が実施される。
【0073】
図6において、各送出繊維部430のワーク500への巻き付けが完了した場合(ステップS8:YES)、制御部22は、FW装置10の動作を停止させる(ステップS20)。具体的に、巻付制御部108は、回転モータ86を制御してワーク500の回転を停止させる。また、巻付制御部108は、繊維供給ヘッド88を制御して繊維供給ヘッド88の動作を停止させる。さらに、ボビン制御部106は、各ボビンモータ36を制御して各送出繊維部430の送出を停止させる。これにより、FW方法の動作フローは、終了する。
【0074】
上述したFW方法により繊維束が巻き付けられたワーク500(半製品)は、巻付装置18から取り外されて加熱される。これにより、繊維束に含浸している樹脂が硬化して補強層512が形成される。すなわち、補強部510を備えた高圧ガスタンク502が製造される。
【0075】
本実施形態は、以下の効果を奏する。
【0076】
FW方法は、ワーク500への各送出繊維部430の巻き付けの途中で巻付装置18の動作を停止する途中停止工程を含む。途中停止工程では、各繊維ロール部412からの各送出繊維部430の送り出しを継続した状態で、押圧部92を各送出繊維部430に押圧しながら移動させることにより、送り経路の長さを長くする。
【0077】
また、FW装置10は、ボビン制御部106と、巻付制御部108と、張力制御部114とを有する。巻付制御部108は、巻付装置18を制御して、ワーク500への各送出繊維部430の巻き付けの途中で前記巻付装置18の動作を停止させる。巻付制御部108が巻付装置18の動作を途中停止させたときに、ボビン制御部106は、ボビン駆動部12を制御して各繊維ロール部412からの各送出繊維部430の送り出しを継続させる。また、途中停止時に、張力制御部114は、張力付与装置20を制御して押圧部92を各送出繊維部430に押圧しながら移動させることにより、送り経路の長さを長くする。
【0078】
このような方法及び構成によれば、途中停止工程中に各繊維ロール部412からの各送出繊維部430の送り出しが継続される。これにより、途中停止工程中に各繊維ロール部412が各送出繊維部430によって過度に締め付けられることがないため、各繊維ロール部412の変形を抑えることができる。そのため、複数の繊維ロール部412の修正又は複数のボビン部材400の交換を不要にすることができる。よって、フィラメントワインディングに要する時間が長くなることを抑えることができ、且つフィラメントワインディングのコストが高くなることを抑えることができる。
【0079】
さらに、途中停止工程中に押圧部92を移動させて送り経路の長さを長くするため、各送出繊維部430に適度な張力を付与し続けることができる。これにより、ワーク500に巻き付けられた各送出繊維部430が緩むことを防止することができる。
【0080】
途中停止工程において、各送出繊維部430への押圧部92の押圧方向は、重力方向である。この場合、押圧部92に作用する負荷を効果的に低減することができる。
【0081】
途中停止工程では、各繊維ロール部412からの各送出繊維部430の送り速度が速いほど押圧部92の移動速度を速くする。換言すれば、FW装置10は、各繊維ロール部412からの各送出繊維部430の送り速度を検出する速度センサ98を有する。途中停止時に、張力制御部114は、張力付与装置20を制御して、速度センサ98が検出した送り速度が速いほど押圧部92の移動速度を速くさせる。
【0082】
このような方法又は構成によれば、途中停止工程中の各送出繊維部430に作用する張力の変動を効果的に抑えることができる。
【0083】
途中停止工程では、押圧部92が各送出繊維部430から受ける荷重が大きいほど押圧部92の移動速度を遅くする。換言すれば、FW装置10は、押圧部92が各送出繊維部430から受ける荷重を検出する荷重センサ100を有する。途中停止時に、張力制御部114は、張力付与装置20を制御して、荷重センサ100が検出した荷重が大きいほど押圧部92の移動速度を遅くさせる。
【0084】
このような方法又は構成によれば、途中停止工程中の各送出繊維部430に作用する張力の変動を効果的に抑えることができる。
【0085】
途中停止工程における各送出繊維部430の送り速度は、途中停止工程の直前の各送出繊維部430の送り速度よりも遅い。換言すれば、途中停止時に、ボビン制御部106は、各ボビン駆動部12を制御して、各送出繊維部430の送り速度を、途中停止させる直前の各送出繊維部430の送り速度よりも遅くさせる。
【0086】
このような方法又は構成によれば、途中停止工程中に送出繊維部430の送り経路が長くなり過ぎることを抑えることができる。
【0087】
FW方法は、途中停止工程の後で、巻付装置18を作動させてワーク500への各送出繊維部430の巻き付けを再開する巻付再開工程を含む。巻付再開工程では、押圧部92を各送出繊維部430に押圧しながら初期位置まで移動させる。換言すれば、巻付制御部108は、巻付装置18の動作を途中停止させた後で、巻付装置18を制御してワーク500への各送出繊維部430の巻き付けを再開させる。ワーク500への各送出繊維部430の巻き付けの再開時に、張力制御部114は、張力付与装置20を制御して、押圧部92を各送出繊維部430に押圧しながら初期位置まで移動させる。
【0088】
このような方法又は構成によれば、各送出繊維部430に適度な張力を付与しながら押圧部92を初期位置に復帰させることができる。
【0089】
巻付再開工程における押圧部92の移動速度は、途中停止工程における押圧部92の移動速度よりも速い。換言すれば、ワーク500への各送出繊維部430の巻き付けの再開時に、張力制御部114は、張力付与装置20を制御して、押圧部92の移動速度を、途中停止時における押圧部92の移動速度よりも速くさせる。
【0090】
このような方法又は構成によれば、巻付再開工程のときに各送出繊維部430をワーク500に効率的に巻き付けることができる。
【0091】
巻付再開工程では、各送出繊維部430の送り速度を、徐々に上昇させる。換言すれば、ワーク500への各送出繊維部430の巻き付けの再開時に、ボビン制御部106は、ボビン駆動部12を制御して、各送出繊維部430の送り速度を徐々に上昇させる。
【0092】
このような方法又は構成によれば、巻付再開工程において、各送出繊維部430の送り速度を急激に速くする場合と比較して、各送出繊維部430から各繊維ロール部412に作用する負荷を抑えることができる。
【0093】
FW装置10は、上述した張力付与装置20に代えて、図10に示す第1変形例に係る張力付与装置150を備えてもよい。第1変形例において、上述した実施形態と同一の参照符号は同一の構成を示す。また、第1変形例において、上述した実施形態と同一の構成についての説明は省略する。
【0094】
張力付与装置150を採用する場合、図10に示すように、複数の送りローラ16は、第1中間ローラ152と、第2中間ローラ154とをさらに含む。第1中間ローラ152は、第2送りローラ66と第3送りローラ68との間に位置する。第2中間ローラ154は、第1中間ローラ152と第3送りローラ68との間に位置する。第2送りローラ66、第1中間ローラ152、第2中間ローラ154及び第3送りローラ68は、複数の送出繊維部430の送り方向に向かってこの順番に配置される。第2送りローラ66、第1中間ローラ152、第2中間ローラ154及び第3送りローラ68は、水平方向に一列に配置されている。
【0095】
張力付与装置150は、複数の押圧部160と、押圧支持部94と、アクチュエータ96とを有する。複数の押圧部160の数は、3つである。ただし、複数の押圧部160の数は、2つ又は4つ以上であってもよい。各押圧部160は、押圧支持部94に回転可能に支持されている。各押圧部160は、上述した押圧部92と同様に構成されている。
【0096】
複数の押圧部160は、第1押圧部162と、第2押圧部164と、第3押圧部166とを含む。第1押圧部162は、各送出繊維部430における第2送りローラ66と第1中間ローラ152との間の部分を下方に押圧する。第2押圧部164は、各送出繊維部430における第1中間ローラ152と第2中間ローラ154との間の部分を下方に押圧する。第3押圧部166は、各送出繊維部430における第2中間ローラ154と第3送りローラ68との間の部分を下方に押圧する。
【0097】
第1変形例に係る張力付与装置150は、上述した張力付与装置20と同様の効果を奏する。また、張力付与装置150を備えたFW装置10は、以下の効果を奏する。
【0098】
FW装置10は、各送出繊維部430をボビン駆動部12から巻付装置18に送る複数の送りローラ16を備える。押圧部160は、複数設けられている。送り経路上で互いに隣り合う押圧部160の間には、複数の送りローラ16の少なくとも1つが配置されている。
【0099】
このような構成によれば、FW装置10が大型になることを抑えつつ各送出繊維部430の経路の最大延長量を増加させることができる。
【0100】
FW装置10は、上述した張力付与装置20に代えて、図11に示す第2変形例に係る張力付与装置170を備えてもよい。第2変形例において、第1変形例と同一の参照符号は同一の構成を示す。また、第2変形例において、上述した第1変形例と同一の構成についての説明は省略する。
【0101】
図11に示すように、張力付与装置170は、複数の押圧部160と、複数の押圧支持部172と、アクチュエータ96とを有する。複数の押圧支持部172の数は、複数の押圧部160の数と同じである。すなわち、複数の押圧支持部172の数は、3つである。複数の押圧部160の数は、3つである。複数の押圧支持部172と複数の押圧部160の数との各々は、2つ又は4つ以上であってもよい。
【0102】
複数の押圧支持部172は、第1押圧支持部174と、第2押圧支持部176と、第3押圧支持部178とを含む。第1押圧支持部174には、第1押圧部162が回転可能に支持されている。第2押圧支持部176には、第2押圧部164が回転可能に支持されている。第3押圧支持部178には、第3押圧部166が回転可能に支持されている。アクチュエータ96は、第1押圧支持部174、第2押圧支持部176及び第3押圧支持部178を個別に上下方向に沿って変位させる。
【0103】
第2変形例に係る張力付与装置170は、上述した張力付与装置20と同様の効果を奏する。また、第2変形例に係る張力付与装置170は、第1変形例に係る張力付与装置150と同様の効果を奏する。さらに、張力付与装置170によれば、張力付与装置150に比べて、途中停止工程での各送出繊維部430の経路の長さを微調整することができる。
【0104】
上述したFW装置10を用いたFW方法では、繊維束に樹脂が予め含浸されていなくてもよい。この場合、FW装置10は、送出繊維部430の経路上に繊維束に樹脂を含浸させるための含浸装置を備えてもよい。
【0105】
なお、本発明は、上述した実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を取り得る。
【0106】
以上の実施形態をまとめると、以下のようになる。
【0107】
上記実施形態は、フィラメントワインディング装置(10)を用いたフィラメントワインディング方法であって、前記フィラメントワインディング装置は、ボビン(410)と当該ボビンに繊維束を巻回してなる繊維ロール部(412)とを有するボビン部材(400)を回転させるためのボビン駆動部(12)と、前記繊維ロール部から送り出された送出繊維部(430)を、当該送出繊維部に張力を付与した状態でワーク(500)に巻き付ける巻付装置(18)と、前記ボビン駆動部から前記巻付装置までの前記送出繊維部の送り経路に設けられた張力付与装置(20)と、を備え、前記張力付与装置は、前記送出繊維部を押圧する押圧部(92、160)を有し、フィラメントワインディング方法は、前記ワークへの前記送出繊維部の巻き付けの途中で前記巻付装置の動作を停止する途中停止工程を含み、前記途中停止工程では、前記繊維ロール部からの前記送出繊維部の送り出しを継続した状態で、前記押圧部を前記送出繊維部に押圧しながら移動させることにより、前記送り経路の長さを長くする、フィラメントワインディング方法を開示している。
【0108】
上記のフィラメントワインディング方法において、前記途中停止工程において、前記送出繊維部への前記押圧部の押圧方向は、重力方向であってもよい。
【0109】
上記のフィラメントワインディング方法において、前記途中停止工程では、前記繊維ロール部からの前記送出繊維部の送り速度が速いほど前記押圧部の移動速度を速くしてもよい。
【0110】
上記のフィラメントワインディング方法において、前記途中停止工程では、前記押圧部が前記送出繊維部から受ける荷重が大きいほど前記押圧部の移動速度を遅くしてもよい。
【0111】
上記のフィラメントワインディング方法において、前記途中停止工程における前記繊維ロール部からの前記送出繊維部の送り速度は、前記途中停止工程の直前の前記繊維ロール部からの前記送出繊維部の送り速度よりも遅くてもよい。
【0112】
上記のフィラメントワインディング方法において、前記途中停止工程の後で、前記巻付装置を作動させて前記ワークへの前記送出繊維部の巻き付けを再開する巻付再開工程を含み、前記巻付再開工程では、前記押圧部を前記送出繊維部に押圧しながら初期位置まで移動させてもよい。
【0113】
上記のフィラメントワインディング方法において、前記巻付再開工程における前記押圧部の移動速度は、前記途中停止工程における前記押圧部の移動速度よりも速くてもよい。
【0114】
上記のフィラメントワインディング方法において、前記巻付再開工程では、前記繊維ロール部からの前記送出繊維部の送り速度を徐々に上昇させてもよい。
【0115】
上記実施形態は、ボビンと当該ボビンに繊維束を巻回してなる繊維ロール部とを有するボビン部材を回転させるためのボビン駆動部と、前記繊維ロール部から送り出された送出繊維部を、当該送出繊維部に張力を付与した状態でワークに巻き付ける巻付装置と、前記ボビン駆動部から前記巻付装置までの前記送出繊維部の送り経路に設けられた張力付与装置と、を備え、前記張力付与装置は、前記送出繊維部を押圧する押圧部を有するフィラメントワインディング装置であって、前記ボビン駆動部を制御するボビン制御部(106)と、前記巻付装置を制御する巻付制御部(108)と、前記張力付与装置を制御する張力制御部(114)と、を有し、前記巻付制御部は、前記巻付装置を制御して、前記ワークへの前記送出繊維部の巻き付けの途中で前記巻付装置の動作を停止させ、前記巻付制御部が前記巻付装置の動作を途中停止させたときに、前記ボビン制御部は、前記ボビン駆動部を制御して前記繊維ロール部からの前記送出繊維部の送り出しを継続させ、前記張力制御部は、前記張力付与装置を制御して前記押圧部を前記送出繊維部に押圧しながら移動させることにより、前記送り経路の長さを長くする、フィラメントワインディング装置を開示している。
【0116】
上記のフィラメントワインディング装置において、前記途中停止時の前記送出繊維部への前記押圧部の押圧方向は、重力方向であってもよい。
【0117】
上記のフィラメントワインディング装置において、前記繊維ロール部からの前記送出繊維部の送り速度を検出する速度センサ(98)を有し、前記途中停止時に、前記張力制御部は、前記張力付与装置を制御して、前記速度センサが検出した送り速度が速いほど前記押圧部の移動速度を速くさせてもよい。
【0118】
上記のフィラメントワインディング装置において、前記押圧部が前記送出繊維部から受ける荷重を検出する荷重センサ(100)を有し、前記途中停止時に、前記張力制御部は、前記張力付与装置を制御して、前記荷重センサが検出した荷重が大きいほど前記押圧部の移動速度を遅くさせてもよい。
【0119】
上記のフィラメントワインディング装置において、前記途中停止時に、前記ボビン制御部は、前記ボビン駆動部を制御して、前記繊維ロール部からの前記送出繊維部の送り速度を、前記途中停止させる直前の前記繊維ロール部からの前記送出繊維部の送り速度よりも遅くさせてもよい。
【0120】
上記のフィラメントワインディング装置において、前記巻付制御部は、前記巻付装置の動作を前記途中停止させた後で、前記巻付装置を制御して前記ワークへの前記送出繊維部の巻き付けを再開させ、前記ワークへの前記送出繊維部の巻き付けの再開時に、前記張力制御部は、前記張力付与装置を制御して、前記押圧部を前記送出繊維部に押圧しながら初期位置まで移動させてもよい。
【0121】
上記のフィラメントワインディング装置において、前記ワークへの前記送出繊維部の巻き付けの再開時に、前記張力制御部は、前記張力付与装置を制御して、前記押圧部の移動速度を、前記途中停止時における前記押圧部の移動速度よりも速くさせてもよい。
【0122】
上記のフィラメントワインディング装置において、前記ワークへの前記送出繊維部の巻き付けの再開時に、前記ボビン制御部は、前記ボビン駆動部を制御して、前記繊維ロール部からの前記送出繊維部の送り速度を徐々に上昇させてもよい。
【0123】
上記のフィラメントワインディング装置において、前記送出繊維部を前記ボビン駆動部から前記巻付装置に送る複数の送りローラ(16)を備え、前記押圧部は、複数設けられ、前記送り経路上で互いに隣り合う前記押圧部の間には、前記複数の送りローラの少なくとも1つが配置されてもよい。
【符号の説明】
【0124】
10…FW装置(フィラメントワインディング装置)
12…ボビン駆動部 18…巻付装置
20…張力付与装置 92、160…押圧部
98…速度センサ 100…荷重センサ
106…ボビン制御部 108…巻付制御部
114…張力制御部 400…ボビン部材
410…ボビン 412…繊維ロール部
430…送出繊維部 500…ワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11