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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】トルク計および計測システム
(51)【国際特許分類】
   G01L 3/10 20060101AFI20241213BHJP
【FI】
G01L3/10 311
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021105105
(22)【出願日】2021-06-24
(65)【公開番号】P2023003812
(43)【公開日】2023-01-17
【審査請求日】2024-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000145806
【氏名又は名称】株式会社小野測器
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(72)【発明者】
【氏名】宮田 徹
(72)【発明者】
【氏名】袈裟丸 定
(72)【発明者】
【氏名】小田 洋司
【審査官】松山 紗希
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-321335(JP,A)
【文献】特開2017-207451(JP,A)
【文献】特開2001-330525(JP,A)
【文献】特開2021-021586(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 3/00-3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トルクを検出するトルク計であって、
第1回転シャフトのフランジである第1フランジとボルトで連結される第1円盤部と、
第2回転シャフトのフランジである第2フランジとボルトで連結される第2円盤部と、
前記第1円盤部と前記第2円盤部を連結する、中空の起歪部と、
前記起歪部の内周面に固定されたひずみゲージとを備え、
前記第1円盤部は、周方向に配列された、前記第1フランジと当該第1円盤部を連結するボルトが通されるn個(但し、nは複数)のボルト孔を有し、
前記第2円盤部は、前記n個のボルト孔の各々と当該トルク計の軸方向に見て重なる位置に設けられた、前記第1フランジと前記第1円盤部を連結するボルトを通過させるためのn個の貫通孔と、周方向に配列された、前記第2フランジと当該第2円盤部を連結するボルトが螺合されるm個(但し、mは複数)のネジ穴とを有し、
当該トルク計の軸回りに一方向に進む角度を位相角として、前記各ネジ穴は、前記ボルト孔と位相角が異なる位置に設けられており、
前記ひずみゲージは、位相角が当該ひずみゲージに最も近い前記ボルト孔と当該ひずみゲージとの位相角の差と、位相角が当該ひずみゲージに最も近い前記ネジ穴と当該ひずみゲージとの位相角の差とが等しくなる位置に配置されていることを特徴とするトルク計。
【請求項2】
請求項1記載のトルク計であって、
前記mは前記nと等しい数であり、
前記n個のボルト孔は、360/n°の位相角間隔で配列されており、
前記n個のネジ穴は、360/n°の位相角間隔で配列されており、
前記n個のネジ穴と前記n個のボルト孔とは360/2n°位相角が異なり、
前記ひずみゲージは、位相角が当該ひずみゲージに最も近い前記ボルト孔と、位相角が当該ひずみゲージに最も近い前記ネジ穴の双方と360/4n°位相角が異なる位置に配置されていることを特徴とするトルク計。
【請求項3】
請求項2記載のトルク計であって、
前記ひずみゲージをn個備え、
前記n個のひずみゲージは、360/n°の位相角間隔で配列されており、
前記n個のひずみゲージと前記n個のボルト孔とは360/4n°位相角が異なることを特徴とするトルク計。
【請求項4】
請求項1、2または3記載のトルク計であって、
前記第1フランジが連結されたときに前記第1フランジと対向する前記第1円盤部の面の、前記ボルト孔の周囲の領域のうちの少なくとも一部の部分は、前記第1フランジが連結された状態において、当該第1円盤部と前記第1フランジとが軸方向に当接する箇所が、当該部分のみとなるように、前記第1フランジ方向に突出した形状を有し、
前記第2フランジが連結されたときに前記第2フランジと対向する前記第2円盤部の面の、前記ネジ穴の周囲の領域のうちの少なくとも一部の部分は、前記第2フランジが連結された状態において、当該第2円盤部と前記第2フランジとが軸方向に当接する箇所が、当該部分のみとなるように、前記第2フランジ方向に突出した形状を有していることを特徴とするトルク計。
【請求項5】
請求項1、2または3記載のトルク計と、前記第1フランジを備えた前記第1回転シャフトと、前記第2フランジを備えた前記第2回転シャフトとを備えた計測システムであって、
前記第1フランジと前記第1円盤部とは、前記ボルト孔の周囲の領域のみが軸方向に当接しており、
前記第2フランジと前記第2円盤部とは、前記ネジ穴の周囲の領域のみが軸方向に当接していることを特徴とする計測システム。
【請求項6】
請求項1、2または3記載のトルク計と、前記第1フランジを備えた前記第1回転シャフトと、前記第2フランジを備えた前記第2回転シャフトとを備えた計測システムであって、
前記第1フランジと前記第1円盤部とが軸方向に直接当接しないように前記第1フランジと前記第1円盤部との間に配置された、軸方向に見て前記ボルト孔の周囲の領域において、一方の端面が前記第1円盤部に軸方向に当接し他方の端面が前記第1フランジに軸方向に当接している第1部材と、
前記第2フランジと前記第2円盤部とが軸方向に直接当接しないように前記第2フランジと前記第2円盤部との間に配置された、軸方向に見て前記ネジ穴の周囲の領域において、一方の端面が第2フランジに軸方向に当接し他方の端面が前記第2円盤部に軸方向に当接している第2部材と、
のうちの少なくとも一方を有することを特徴とする計測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸によって伝達されるトルクを計測する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回転軸によって伝達されるトルクを計測する技術としては、図9aに示すトルク計9が知られている(たとえば、特許文献1)。
図9aはトルク計9の一部を切り欠いた側面図であり、斜線のハッチングを施した部分が切り欠いた後の断面を表す。
図示するように、このトルク計9は、中空の円筒形状の中空体部91の軸方向の一端に駆動側フランジ部92を設け、他端に負荷側フランジ部93を設けたものである。中空体部91の軸方向の中央部は肉薄に形成されており、中空体部91の内周面の肉薄部分にひずみゲージ94が固定されている。
【0003】
図9bに示すように、トルク計9の駆動側フランジ部92には、駆動側の回転軸100のフランジ101がボルトによって締結され、負荷側フランジ部93には負荷側の回転軸110のフランジ111がボルトによって締結される。
【0004】
このようなトルク計9において、駆動側の回転軸100と負荷側の回転軸110との間で伝達されるトルクが、中空体部91の内周面の肉薄部分の歪みとしてひずみゲージ94によって計測される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-321335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図9a、bに示したトルク計9を実際に適用する場合、フランジ101と駆動側フランジ部92との締結と、フランジ111と負荷側フランジ部93との締結作業の双方が一方の回転軸側から行えなければならないときがある。
【0007】
たとえば、図9a、bに示したトルク計9を、負荷側の回転軸110に負荷を加える装置の近くに配置する場合、回転軸110側に締結の作業に必要なスペースがなくなるので、駆動側の回転軸100側から、フランジ111と負荷側フランジ部93との締結と、フランジ101と駆動側フランジ部92との締結の双方を行えなければならない。
【0008】
図9c1に示すように、駆動側の回転軸100側から、駆動側フランジ部92に設けた孔921を通過させたボルトで、フランジ111と負荷側フランジ部93とを連結した上で、図9c2に示すように、駆動側フランジ部92とフランジ101をボルトで連結する構造とすれば、駆動側の回転軸100側のみから、フランジ111と負荷側フランジ部93との締結と、フランジ101と駆動側フランジ部92との締結の双方を行うことができる。
【0009】
このような構造とすると、フランジ101と駆動側フランジ部92とを連結するボルトと、フランジ111と負荷側フランジ部93とを連結するボルトとを軸方向に見て重なる位置に配置することができなくなり、フランジ101と駆動側フランジ部92との連結の形態と、フランジ111と負荷側フランジ部93との連結の形態が非対称となる。
【0010】
この非対称性がトルク計の計測誤差を生じさせる要因となっていた。
本発明は、2つの回転軸の間に配置される、各回転軸との連結作業を一方の回転軸側から行えるトルク計において、より誤差を低減した高精度なトルク計測を行うことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題達成のために、本発明は、トルクを検出するトルク計に、第1回転シャフトのフランジである第1フランジとボルトで連結される第1円盤部と、第2回転シャフトのフランジである第2フランジとボルトで連結される第2円盤部と、前記第1円盤部と前記第2円盤部を連結する、中空の起歪部と、前記起歪部の内周面に固定されたひずみゲージとを備え、前記第1円盤部に、周方向に配列された、前記第1フランジと当該第1円盤部を連結するボルトが通されるn個(但し、nは複数)のボルト孔を設け、前記第2円盤部に、前記n個のボルト孔の各々と当該トルク計の軸方向に見て重なる位置に設けられた、前記第1フランジと前記第1円盤部を連結するボルトを通過させるためのn個の貫通孔と、周方向に配列された、前記第2フランジと当該第2円盤部を連結するボルトが螺合されるm個(但し、mは複数)のネジ穴とを設けたものである。ここで、当該トルク計の軸回りに一方向に進む角度を位相角として、前記各ネジ穴は、前記ボルト孔と位相角が異なる位置に設けられており、前記ひずみゲージは、位相角が当該ひずみゲージに最も近い前記ボルト孔と当該ひずみゲージとの位相角の差と、位相角が当該ひずみゲージに最も近い前記ネジ穴と当該ひずみゲージとの位相角の差とが等しくなる位置に配置されている。
【0012】
このようなトルク計において、前記mを前記nと等しい数とし、前記n個のボルト孔は、360/n°の位相角間隔で配列し、前記n個のネジ穴は、360/n°の位相角間隔で配列してよい。この場合、前記n個のネジ穴と前記n個のボルト孔とは360/2n°位相角を異ならせ、前記ひずみゲージは、位相角が当該ひずみゲージに最も近い前記ボルト孔と、位相角が当該ひずみゲージに最も近い前記ネジ穴の双方と360/4n°位相角が異なる位置に配置する。
【0013】
この場合、トルク計に前記ひずみゲージをn個備え、前記n個のひずみゲージを、360/n°の位相角間隔で、前記n個のボルト孔と360/4n°位相角を異ならせて配列してもよい。
【0014】
以上のトルク計は、前記第1フランジが連結されたときに前記第1フランジと対向する前記第1円盤部の面の、前記ボルト孔の周囲の領域のうちの少なくとも一部の部分を、前記第1フランジが連結された状態において、当該第1円盤部と前記第1フランジとが軸方向に当接する箇所が、当該部分のみとなるように、前記第1フランジ方向に突出した形状とし、前記第2フランジが連結されたときに前記第2フランジと対向する前記第2円盤部の面の、前記ネジ穴の周囲の領域のうちの少なくとも一部の部分を、前記第2フランジが連結された状態において、当該第2円盤部と前記第2フランジとが軸方向に当接する箇所が、当該部分のみとなるように、前記第2フランジ方向に突出した形状としてもよい。
【0015】
併せて本発明は、トルク計と、前記第1フランジを備えた前記第1回転シャフトと、前記第2フランジを備えた前記第2回転シャフトとを備えた計測システムを提供する。
このような計測システムは、前記第1フランジと前記第1円盤部とが、前記ボルト孔の周囲の領域のみで軸方向に当接し、前記第2フランジと前記第2円盤部とが、前記ネジ穴の周囲の領域のみで軸方向に当接するように構成してよい。
または、このような計測システムに、前記第1フランジと前記第1円盤部とが軸方向に直接当接しないように前記第1フランジと前記第1円盤部との間に配置された、軸方向に見て前記ボルト孔の周囲の領域において、一方の端面が前記第1円盤部に軸方向に当接し他方の端面が前記第1フランジに軸方向に当接している第1部材と、前記第2フランジと前記第2円盤部とが軸方向に直接当接しないように前記第2フランジと前記第2円盤部との間に配置された、軸方向に見て前記ネジ穴の周囲の領域において、一方の端面が第2フランジに軸方向に当接し他方の端面が前記第2円盤部に軸方向に当接している第2部材と、のうちの少なくとも一方を備えてもよい。
【0016】
これらのトルク計や計測システムによれば、第1回転シャフトの第1フランジと第2回転シャフトの第2フランジ双方のトルク計への連結作業を第2回転シャフト側から行うことができると共に、第1フランジから働く誤差の要因となる力と第2フランジから働く誤差の要因となる力とをバランスさせ、ひずみゲージによる歪みの計測誤差や状態の変化に伴う計測誤差の変化を低減できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、2つの回転軸の間に配置される、各回転軸との連結作業を一方の回転軸側から行えるトルク計において、より誤差を低減した高精度なトルク計測を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係るトルク測定装置、計測システムの構成を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係るトルク計を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係るトルク測定装置の回転検出の構成を示す図である。
図4】本発明の実施形態に係るトルク計への回転シャフトの連結構造を示す図である。
図5】本発明の実施形態に係るトルク計のボルト孔とネジ穴の周辺を示す図である。
図6】本発明の実施形態に係るひずみゲージとその配置を示す図である。
図7】本発明の実施形態に係る歪検出回路を示す図である。
図8】本発明の実施形態に係るトルク計の他の構成例を示す図である。
図9】公知のトルク計を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態について説明する。
図1aに本実施形態に係るトルク測定装置の構成を示す。
図1aにおいて、図1a1はトルク測定装置の正面図を、図1a2はトルク測定装置の側面図を、図1a3はトルク測定装置の背面図を表す。
図示するように、トルク測定装置は、トルク計1とステータ2より構成され、ステータ2は、円環状のリング部21を備えている。
トルク測定装置を用いて、たとえば、図1bに示すような計測システムが構成される。
図1bの計測システムにおいて、トルク計1の正面側には第1回転シャフト3の端部に設けられたフランジである第1フランジ31が連結され、トルク計1の背面側には第2回転シャフト4の端部に設けられたフランジである第2フランジ41が連結されている。第2回転シャフト4は、エンジンや電気モータ等の駆動装置6によって回転駆動され、第1回転シャフト3はダイナモメータ等の負荷装置5に連結されており、トルク測定装置は第1回転シャフト3と第2回転シャフト4との間で働くトルクを測定する。ただし、第2回転シャフト4を負荷装置5に連結し、第1回転シャフト3を駆動装置6によって回転駆動する構成とすることもできる。
【0020】
計測システムにおいて、トルク計1は、ステータ2のリング部21と非接触な態様で、一部がリング部21の中空内に位置するように、トルク計1に連結した第1回転シャフト3と第2回転シャフト4によって支持される。
【0021】
ステータ2のリング部21は、ワイヤレス給電の送電用コイルとワイヤレス通信アンテナを兼ねるワンターンのコイルを形成しており、ステータ2は、トルク計1へのワイヤレス送電と、トルク計1とのワイヤレス通信を行うことができる。
【0022】
次に、図2にトルク計1の構成を示す。
図2a1にトルク計1の正面図を、図2a2にトルク計1の側面図を、図2a3にトルク計1の背面図を示す。
また、図2a1、a3に示すように、0°から360°まで正面からみて時計まわりに進むトルク計1の位相角を定義するものとして、図2bに、図2a1に示す位相角0°の切断線A-Aによる断面図を示す。ここで、iを0から7までの整数として、位相角0+(45×i)°の切断線による断面は図2bと同様である。
【0023】
また、図2cに、図2a3に示す位相角22.5°の切断線B-Bによる断面図をを示す。ここで、位相角22.5+(45×i)°の切断線による断面は図2cと同様である。
また、図2dに、図2a3に示す位相角11.25°の切断線C-Cによる断面図を示す。ここで、位相角11.25+(45×i)°の切断線による断面は図2dと同様である。
各図に示すように、トルク計1は、中空の円筒形状の起歪部11と、起歪部11の正面側にフランジ状に設けた、中央孔のある円盤形状の第1円盤部12と、起歪部11の背面側にフランジ状に設けた、中央孔のある円盤形状の第2円盤部13と、第2円盤部13の外周面に設けられた補助フランジ14を有する。
【0024】
また、起歪部11の軸方向についての中央の部分は歪み易いように肉薄に形成されており、図2dに示すように、この肉薄部分の位相角11.25+(45×i)°の位置にひずみゲージ15が固定されている。
【0025】
第1円盤部12は、周に沿って等位相角間隔で配置された8個のボルト孔121を有し、各ボルト孔121は位相角0+(45×i)°の位置に設けられている。
第2円盤部13は、周に沿って等位相角間隔で配置された8個のネジ穴131を有し、各ネジ穴131は位相角22.5+(45×i)°の位置に設けられている。また、各ネジ穴131の中心軸の径方向の位置は、第1円盤部12のボルト孔121の中心軸の径方向の位置と等しい。
【0026】
また、第2円盤部13は、周に沿って等位相角間隔で配置された8個の貫通孔132を有し、各貫通孔132は位相角0+(45×i)°の位置に、中心軸が軸方向に見て第1円盤部12のボルト孔121の中心軸と重なるように配置されている。また、各貫通孔132の穴径は、ボルトが軸方向に貫通孔132を通過できる穴径に設定されている。
【0027】
第1円盤部12の外周端部には、ワイヤレス給電の受電用コイルとワイヤレス通信アンテナを兼ねるコイル16が巻き回されている。
ここで、図1aに示すように、第1円盤部12は、ステータ側コイルを収容したステータ2のリング部21の中空内にリング部21と同軸状に配置されており、トルク計1は、第1円盤部12の外周端部に巻き回されたコイル16を介してステータ2からワイヤレスで電力を受けることができると共に、ステータ2とのワイヤレス通信を行うことができる。
【0028】
トルク計1は、ひずみゲージ15を用いて構成した歪検出回路を備えており、歪検出回路は、コイル16に給電された電力を用いて起歪部11の歪みを検出し、歪検出回路で検出された歪みはコイル16を介してワイヤレス通信によってステータ2に送信される。
【0029】
第2円盤部13の外周面に設けられた補助フランジ14を用いて、図3aの側面図、図3bの背面図に示すように、回転検出に用いる円環形状の歯車17をトルク計1に装備することができる。歯車17を用いて、回転検出を行う場合、ステータ2に、歯車17の歯の通過に伴う磁気的変化を検出する磁気センサ22を設け、磁気センサ22の出力からトルク計1の回転角や回転速度を算定する。ただし、歯車17に代えて、周方向にスリットを並べた円環形状の円板を、補助フランジ14を用いてトルク計1に装備し、ステータ2に、磁気センサ22に代えて、スリットの通過に伴う光学的変化を検出する光学センサを設け、光学センサの出力からトルク計1の回転角や回転速度を算定してもよい。
【0030】
次に、計測システム構成時の、負荷装置5に連結された第1回転シャフト3と駆動装置6によって回転駆動される第2回転シャフト4と、トルク計1との連結構造について説明する。
【0031】
図4aに模式的に示すように、トルク計1の正面側には、第1回転シャフト3の端部の第1フランジ31が、トルク計1の背面側には第2回転シャフト4の端部の第2フランジ41が連結され、トルク計1はひずみゲージ15によって、第2回転シャフト4と第1回転シャフト3との間で伝達されるトルクを起歪部11の歪みとして検出する。
【0032】
図4bの側面図に示すように、第1フランジ31のトルク計1への連結は、ボルトを用いて、第1円盤部12と第1フランジ31を締結することにより行い、第2フランジ41のトルク計1への連結は、ボルトを用いて、第2円盤部13と第2フランジ41を締結することにより行う。
【0033】
第1回転シャフト3、第2回転シャフト4のトルク計1への連結は次の手順で行う。
まず、図4c1に示すように、背面側から第2円盤部13の貫通孔132を通過させたボルトを第1円盤部12のボルト孔121に通し、ボルト孔121に通したボルトを、第1回転シャフト3の第1フランジ31に設けられている連結用ネジ穴311に螺合することにより、第1円盤部12と第1フランジ31を締結する。
【0034】
次に、図4c2に示すように、第2回転シャフト4の第2フランジ41に設けられている連結用ボルト孔に通したボルトを、第2円盤部13のネジ穴131に螺合することにより、第2円盤部13と第2フランジ41を締結する。
【0035】
このように本実施形態に係るトルク計1は、第1フランジ31と第2フランジ41の双方のトルク計1に対する連結の作業を背面側から行うことができる。
次に、第1円盤部12のボルト孔121の周辺を正面側から斜視したようすを図5a1に模式的に示し、第1円盤部12のボルト孔121の断面を図5a2に模式的に示す。
第1円盤部12の正面側端面は、ボルト孔121の周辺を除き、軸方向を法線とする同じ平面を形成しているが、図示するように、ボルト孔121の周辺は、ボルト孔121を中央孔とする円環状に正面方向に向かって僅かに、ボルト孔121の周辺外の平面よりも突出している(凸となっている)。凸部の形状は例えば、ボルト孔121の直径はφ19、ボルト孔121の周辺の平面より突出している部分の高さは0.1mm、直径はφ29である。
【0036】
一方、第1回転シャフト3の第1フランジ31の第1円盤部12の正面側端面と対向する端面は平面に形成されている。
したがって、第1回転シャフト3をボルトでトルク計1に連結した状態において、第1円盤部12の、第1回転シャフト3の第1フランジ31と軸方向に当接する領域は、図5a3に灰色の塗りつぶしで示したボルト孔121の周辺の領域のみとなる。
【0037】
次に、第2円盤部13のネジ穴131の周辺を背面側から斜視したようすを図5b1に模式的に示し、第2円盤部13のネジ穴131の断面を図5b2に模式的に示す。
第2円盤部13の背面側端面は、ネジ穴131の周辺を除き、軸方向を法線とする同じ平面を形成しているが、図示するように、ネジ穴131の周辺は、ネジ穴131を中央孔とする円環状に背面方向に向かって僅かに、ネジ穴131の周辺外の平面よりも突出している(凸となっている)。凸部の形状は例えば、ネジ穴131はM18、ネジ穴131の周辺の平面より突出している部分の高さは0.1mm、直径はφ29である。
【0038】
一方、第2回転シャフト4の第2フランジ41の第2円盤部13の正面側端面と対向する端面は平面に形成されている。
したがって、第2回転シャフト4をボルトでトルク計1に連結した状態において、第2円盤部13の、第2回転シャフト4の第2フランジ41と軸方向に当接する領域は、図5b3に灰色の塗りつぶしで示したネジ穴131の周辺の領域のみとなる。
【0039】
このようなトルク計1によれば、第1円盤と第1フランジ31との接触箇所が、両者を締結するボルト周辺の領域のみに集中し、接触面積は低減する。同様に、第2円盤と第2フランジ41との接触箇所が、両者を締結するボルト周辺の領域のみに集中し、接触面積は低減する。
【0040】
図6aにひずみゲージ15の構成を示す。
図示するように、各ひずみゲージ15は、変形によって抵抗値が変化する抵抗素子Lと抵抗素子Rを備えている。そして、各ひずみゲージ15は、図中に矢印で示した方向が位相角が進む方向となるように、起歪部11の内周面に固定される。
【0041】
図6bにひずみゲージ15の配置を模式的に示す。ひずみゲージ15は起歪部11の内周面の周方向にそって45°の位相角差をもって8個固定される。
8個のひずみゲージ15は、位相角11.25+(45×i)°の位置、すなわち、位相角が11.25°、56.25°、101.25°、146.25°、191.25°、236.25°、281.25°、326.25°の各位置に、位相角が減る方向側に抵抗素子Lが位置し位相角が進む方向側に抵抗素子Rが位置するように固定される。
【0042】
図7に、トルク計1が備える歪検出回路を示す。
歪検出回路は、電源回路700がコイル16でワイヤレス受電した電力から生成した定電圧電源を動作電源として稼働する回路であり、起歪部11の歪み量を表す検出信号を出力するブリッジ回路701、ブリッジ回路701の出力を増幅するアンプ702、アンプ702の出力電圧の大きさで発振周波数が制御される電圧-周波数変換器703、電圧-周波数変換器703が出力する発振信号を、たとえば、5.5MHzの搬送波で振幅変調する振幅偏移変調回路704、振幅偏移変調回路704が出力する振幅変調波信号を増幅する送信アンプ705を備えている。
【0043】
そして、送信アンプ705で増幅された振幅変調波信号でコイル16が駆動され、振幅変調波信号がステータ2に無線送信される。
ステータ2は、リング部21のステータ側コイルで受信した振幅変調波信号を発振信号に復調し、復調した発振信号の周波数を起歪部11の歪み量、もしくは、第1回転シャフト3から第2回転シャフト4に伝達されるトルクを表す測定信号に変換する。
【0044】
歪検出回路のブリッジ回路701は、8個のひずみゲージ15の抵抗素子Lと抵抗素子Rである16個の抵抗素子を用いて構成したブリッジ回路701であり、図6bに示すように、11.25°の位置のひずみゲージ15を15A、56.25°の位置のひずみゲージ15を15B、101.25°の位置のひずみゲージ15を15C、146.25°の位置のひずみゲージ15を15D、191.25°の位置のひずみゲージ15を15E、236.25°の位置のひずみゲージ15を15F、281.25°の位置のひずみゲージ15を15G、326.25°の位置のひずみゲージ15を15Hとして、ブリッジ回路701中の抵抗素子15x_Lはひずみゲージ15xの抵抗素子Lを、抵抗素子15x_Rはひずみゲージ15xの抵抗素子Rを表す。ここで、xは前記AからHを表す。
【0045】
以上のように本実施形態では、第1フランジ31と第2フランジ41の双方のトルク計1に対する締結を背面側から行えるように、第1円盤部12と第1フランジ31のボルトによる締結に用いる第1円盤部12のボルト孔121と、第2円盤部13と第2フランジ41のボルトによる締結に用いる第2円盤部13のネジ穴131とを位相角を22.5°ずらして設け、トルク計1の背面側から第1円盤部12のボルト孔121にボルトを装着するための貫通孔132を第2円盤部13に軸方向に見て第1円盤部12のボルト孔121と重なる位置に設けた。
【0046】
その上で、ひずみゲージ15を45°の位相角間隔で8個設け、各ひずみゲージ15の位相角を、当該ひずみゲージ15と位相角が最も近い第1円盤部12のボルト孔121に対しても、当該ひずみゲージ15と位相角が最も近い第2円盤部13のネジ穴131に対しても等しく11.25°異ならせた。
【0047】
本発明者らは、実験によって、このような第1円盤部12のボルト孔121と第2円盤部13のネジ穴131との位置関係で配置すれば、ひずみゲージ15による歪みの計測誤差を低減できると共に、トルク計1に加わるトルクの変化による計測誤差の変化を抑制できることを確認した。
【0048】
このような効果は以下の理由により得られるものと考えられる。
第1円盤部12と第1フランジ31とをボルト締結することで第1円盤部12を第1フランジ31方向に引っ張る方向の力が働き、第2円盤部13と第2フランジ41とをボルト締結することで第2円盤部13を第2フランジ41方向に引っ張る方向の力が働く。この両方向の力がバランスしていない位置では、その位置に両方向の力に起因して加わる力の大きさや向きが、トルク計1に加わるトルクの大きさ等の状態の変化に応じて大きく変動し、当該位置で歪みを計測すると、大きな計測の誤差として表れる。
【0049】
本実施形態では、上述した両方向の力がバランスする、ボルト孔121の位相角とネジ穴131の位相角の中間の位相角となる位置にひずみゲージ15を配置しているので、当該両方向の力に起因して加わる力の大きさや向きの状態の変化に応じた変動は小さく、ひずみゲージ15の計測の誤差や計測誤差の変化が抑制される。
【0050】
本実施形態では、さらに、ボルト孔121の周辺に集中させた第1円盤部12と第1フランジ31とが軸方向に当接する領域においてのみ第1円盤部12と第1フランジ31との間で力が伝達され、ネジ穴131の周辺に集中させた第2円盤部13と第2フランジ41とが軸方向に当接する領域においてのみ第1円盤部12と第1フランジ31との間で力が伝達されるようにしているので、ひずみゲージ15に働く、誤差の要因となる力を、より安定的に低減することができる。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明した。
以上の実施形態ではひずみゲージ15の数を8個としたが、ひずみゲージ15の数は任意であってよい。
ただし、いずれの場合も、ひずみゲージ15は、ボルト孔121の位相角とネジ穴131の位相角との中間の位相角の位置に配置する。ひずみゲージ15の数を4個とする場合には、たとえば、図6cに示すように、90°の位相角間隔で、11.25°、101.25°、191.25°、281.25°の位相角の位置にひずみゲージ15を配置する。
【0052】
以上の実施形態ではボルト孔121、貫通孔132、ネジ穴131の数を8個としたが、これらの数は任意であってよい。また、ネジ穴131の数を、ボルト孔121/貫通孔132の数の倍数や約数としてもよい。ただし、いずれの場合も、ひずみゲージ15は、ボルト孔121の位相角とネジ穴131の位相角との中間の位相角の位置に配置する。
【0053】
また、以上の実施形態では、第1円盤部12と第1フランジ31とがボルト孔121の周辺においてのみ軸方向に当接し、第2円盤部13と第2フランジ41とがネジ穴131の周辺においてのみ軸方向に当接するように構成したが、第1円盤部12の端面の各ボルト孔121を包含する円環状の領域の全体を第1フランジ31と当接させたり、第2円盤部13の各ネジ穴131を包含する円環状の領域の全体を第2フランジ41と当接させたりする等の形態で、第1円盤部12と第1フランジ31や、第2円盤部13と第2フランジ41を、より広い面で軸方向に当接してもよい。
【0054】
このようにしても、第1円盤部12と第1フランジ31との間の力はボルトによる締結力が直接加わるボルト孔121の周辺で強く働き、第2円盤部13と第2フランジ41との間の力はボルトによる締結力が直接加わるネジ穴131の周辺で強く働くので、ひずみゲージ15による歪みの計測誤差や状態の変化に伴う計測誤差の変動を抑制できる一定の効果を見込むことができる。
【0055】
また、以上の実施形態では、第1円盤部12の正面側端面のボルト孔121の周辺を正面方向に突出させることにより、第1円盤部12と第1フランジ31とが軸方向に当接する領域がボルト孔121の周辺の領域のみとなるようにしたが、これは、第1円盤部12の正面側端面のボルト孔121の周辺を突出させずに正面側端面を平面に形成し、その代わりに、図8a1の第1回転シャフト3の第1フランジ31の模式的な斜視図や、図8a2の第1フランジ31の連結用ネジ穴311の周辺の模式的な斜視図に示すように、第1フランジ31の連結用ネジ穴311の周辺を背面方向に僅かに突出させることにより、第1円盤部12と第1フランジ31とが軸方向に当接する領域をボルト周辺の領域のみとしてもよい。
【0056】
同様に、第2円盤部13の背面側端面のネジ穴131の周辺を突出させずに背面側端面を平面に形成し、その代わりに、図8b1の第2回転シャフト4の第2フランジ41の模式的な斜視図や、図8b2の第2フランジ41の連結用ボルト孔の周辺の模式的な斜視図に示すように、第2回転シャフト4の第2フランジ41の連結用ボルト孔周辺を正面方向に僅かに突出させることにより、第2円盤部13と第2フランジ41とが軸方向に当接する領域をボルト周辺の領域のみとしてもよい。
【0057】
また、他の実施形態は、第1円盤部12の正面側端面のボルト孔121の周辺を突出させずに正面側端面を平面に形成し、その代わりに、図8c1の模式図に示すように、第1円盤部12と第1フランジ31との連結に用いるボルトを、第1円盤部12の正面側端面と第1フランジ31の間で円環部材7の中央孔を通して、第1フランジ31の連結用ネジ穴311に螺合することにより、第1円盤部12が第1フランジ31側と軸方向に接触する領域をボルト周辺の領域に限定してもよい。
【0058】
同様に、第2円盤部13の背面側端面のネジ穴131の周辺を突出させずに背面側端面を平面に形成し、図8c2に示すように、第2円盤部13と第2フランジ41との連結に用いるボルトを、第2円盤部13の背面側端面と第2フランジ41の間で円環部材7の中央孔を通して、第2円盤部13のネジ穴131に螺合することにより、第2円盤部13が第2フランジ41側と軸方向に接触する領域をボルト周辺の領域に限定してもよい
【符号の説明】
【0059】
1…トルク計、2…ステータ、3…第1回転シャフト、4…第2回転シャフト、5…負荷装置、6…駆動装置、7…円環部材、9…トルク計、11…起歪部、12…第1円盤部、13…第2円盤部、14…補助フランジ、15…ひずみゲージ、16…コイル、17…歯車、21…リング部、22…磁気センサ、31…第1フランジ、41…第2フランジ、91…中空体部、92…駆動側フランジ部、93…負荷側フランジ部、94…ひずみゲージ、121…ボルト孔、131…ネジ穴、132…貫通孔、700…電源回路、701…ブリッジ回路、702…アンプ、703…電圧-周波数変換器、704…振幅偏移変調回路、705…送信アンプ。
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