(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】床版構造、鉄筋コンクリート構造物及び床版構造の施工方法
(51)【国際特許分類】
E01D 19/12 20060101AFI20241213BHJP
E01D 22/00 20060101ALI20241213BHJP
【FI】
E01D19/12
E01D22/00 B
(21)【出願番号】P 2021118543
(22)【出願日】2021-07-19
【審査請求日】2024-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】591205536
【氏名又は名称】JFEシビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 泰邦
(72)【発明者】
【氏名】尾添 仁志
(72)【発明者】
【氏名】塩田 啓介
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-317325(JP,A)
【文献】実公昭49-032037(JP,Y1)
【文献】特開2000-336845(JP,A)
【文献】特開2001-279853(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 19/12
E01D 22/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼材又は鉄筋コンクリートで構成された内部構造と、
格子状の鉄筋部材と、
前記鉄筋部材と前記内部構造の表面との間に配置されるスペーサーと、
前記内部構造の表面に沿って充填される充填材と、
前記内部構造との間に前記鉄筋部材を挟んで保持する固定金具と、を備え、
前記鉄筋部材は、
前記内部構造の表面と離間して配置され、
前記充填材は、
前記鉄筋部材と前記スペーサーとを内包
しており、
前記固定金具は、前記鉄筋部材が前記内部構造から離れる方向に移動しないように保持しており、
前記固定金具は、天板部と、前記天板部の両端から下方に延びる脚部と、前記脚部の下端から外側に向かって前記天板部と平行に延びる固定部と、を有しており、
前記固定部は、前記内部構造に固定される、床版構造。
【請求項2】
前記充填材は、
骨材を含み、
前記骨材の最大寸法をD、前記鉄筋部材の幅をB、前記鉄筋部材と前記内部構造の表面との距離をHとしたときに、前記距離Hは、
H>D/2+(B/2×(D-B/2))
0.5
を満たし、
前記スペーサーの高さ寸法は、
前記距離H以上に設定される、請求項1に記載の床版構造。
【請求項3】
前記スペーサーは、
ブロック形状である、請求項1又は2に記載の床版構造。
【請求項4】
前記スペーサーは、
前記内部構造の表面に立設された固定部材と、
前記固定部材に固定された支持金具と、を備え、
前記支持金具は、
前記鉄筋部材を支持する、請求項1又は2に記載の床版構造。
【請求項5】
前記スペーサーは、
磁力を有する、請求項3又は4に記載の床版構造。
【請求項6】
前記鉄筋部材は、
互いに平行に延びる複数の主筋と、
前記複数の主筋の側面同士を接続するように配置された配力筋と、を備える、請求項1~
5の何れか1項に記載の床版構造。
【請求項7】
前記鉄筋部材は、
切り込みが形成された鋼板を一方向に拡開して格子状に形成されている、請求項
6に記載の床版構造。
【請求項8】
前記鉄筋部材は、
表面に突起を有する、請求項1~
7の何れか1項に記載の床版構造。
【請求項9】
前記内部構造は、
鋼床版である、請求項1~
8の何れか1項に記載の床版構造。
【請求項10】
前記内部構造は、
鉄筋コンクリート床版である、請求項1~
8の何れか1項に記載の床版構造。
【請求項11】
前記鉄筋部材は、
前記内部構造の下方に配置される、請求項1~
10の何れか1項に記載の床版構造。
【請求項12】
請求項1~
11の何れか1項に記載の床版構造を備える、鉄筋コンクリート構造物。
【請求項13】
前記床版構造は、
上面に道路又は鉄道が設置される、請求項
12に記載の鉄筋コンクリート構造物。
【請求項14】
前記床版構造の前記鉄筋部材は、
複数の主筋が道路又は鉄道が延設される第1方向に対し交差する方向に延びるように設置される、請求項
6を引用する請求項
13に記載の鉄筋コンクリート構造物。
【請求項15】
請求項1~
11の何れか1項に記載の床版構造の施工方法であって、
前記内部構造の表面に前記スペーサーを設置するスペーサー配置工程と、
前記スペーサーの表面に前記鉄筋部材を載置する鉄筋載置工程と、
前記内部構造の表面に前記スペーサー及び前記鉄筋部材を内包するように前記充填材を充填する充填工程と、を備える、床版構造の施工方法。
【請求項16】
前記内部構造は、
前記鋼床版であり、
前記スペーサー配置工程は、
磁力を備える前記スペーサーを前記鋼床版に吸着させて設置する、請求項
9を引用する請求項
15に記載の床版構造の施工方法。
【請求項17】
前記スペーサー配置工程は、
前記内部構造の表面に固定部材を設置し、前記固定部材に支持金具を固定し、
前記鉄筋載置工程は、
前記支持金具の上に前記鉄筋部材を載置する、請求項4を引用する請求項
15に記載の床版構造の施工方法。
【請求項18】
前記スペーサー配置工程の前に既設構造物の表面を除去する除去工程を更に備え、
表面が除去された前記既設構造物を前記内部構造とする、請求項
15~
17の何れか1項に記載の床版構造の施工方法。
【請求項19】
前記鉄筋載置工程の後に、前記鉄筋部材を前記内部構造との間に挟むように前記固定金具を設置する、固定金具設置工程を更に備える、
請求項
15~
18の何れか1項に記載の床版構造の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋部材で補強された床版構造、床版構造を用いた鉄筋コンクリート構造物及び床版構造の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄筋コンクリート構造物を構築、補修、補強するときには、工場において加工された格子形状を有する平板状の鉄筋部材を現場に搬入し、現場で構造物の所定の位置に設置する技術が利用されている。
【0003】
このような従来の鉄筋部材の施工は、格子状の鉄筋部材を構造物の梁、床、又は柱等の構造物の表面に沿って所定の距離を持って配置し、その上からモルタル等の充填部材を充填する。充填部材は、鉄筋部材と構造物との間の空間に充填され、さらに鉄筋部材からの充填部材の厚さが所定の寸法になる様に鉄筋部材を覆う。このような構造により、棒鋼などの鉄筋を現場で技能者により組み立てる工程や、主筋と配力筋とを予め溶接した網状鉄筋の場合であっても工場で鉄筋の組み立て及び溶接作業を行う工程が不要となり、鉄筋組み立て時の手間やコストを抑えるとともに技能者の確保が不要となる。また、格子状の鉄筋部材により鉄筋コンクリート構造物の耐荷重性能を向上させている。
【0004】
例えば、特許文献1に開示されている鉄筋コンクリート構造物によれば、互いに平行に配置された複数の主筋と隣接する複数の主筋の間を連結する複数の配力筋とにより格子を有する板状に形成された鉄筋部材により補強されている。特許文献1の鉄筋コンクリート構造は、格子を有する板状の鉄筋部材が用いられていることにより、従来の異形棒鋼により構成された鉄筋構造と比較して、厚さ方向の寸法が抑えられ、かつ耐荷重性能が向上している。
【0005】
また、特許文献2に開示されている床版構造は、FRP格子材を床版に配置し、鋼繊維補強超速硬コンクリートを充填して床版と一体化させている。床版の表面にFRP格子材を配置し補強繊維等を含むコンクリートで床版と一体化させることにより、繰り返し荷重を受けたコンクリートのひび割れを分散させ、ひび割れ自己修復機能を有する床版が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-91126号公報
【文献】特開2007-162417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、道路及び鉄道などの高架橋は、高度経済成長期における建設後長時間経過し、老朽化及び劣化したものについては、補強が進められている。このような高架橋の床版を補強する場合、特許文献1のように鉄筋部材を床版に配置しコンクリートなどの充填部材を充填する。このとき十分な強度を確保するため、鉄筋部材と高架橋の床版の部材として配置されているデッキプレートなどの内部構造との間には、適正な厚さの充填材が配置され、また鉄筋部材は適正な厚さの充填材で覆われる必要がある。しかし、充填材を充填する際に鉄筋部材が所定の位置から移動してしまうという課題があった。また、鉄筋部材と内部構造との間隙に充填材が十分に充填されずに空隙ができて、車両から受ける繰り返し荷重によって空隙部分からひび割れが進行して損傷するという課題があった。
【0008】
特に、特許文献2のようなFRP格子材を床版に配置してコンクリートを充填する場合は、充填材により比重の軽いFRP格子材が浮き上がり、FRP格子材が適正な位置に配置できないという課題があった。
【0009】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、床版を補強するにあたり充填材を充填時に鉄筋部材を適正な位置に保持でき、内部構造と充填材との間の充填材の空隙の発生を抑える、床版構造、鉄筋コンクリート構造物及び床版構造の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の床版構造は、鋼材又は鉄筋コンクリートで構成された内部構造と、格子状の鉄筋部材と、前記鉄筋部材と前記内部構造の表面との間に配置されるスペーサーと、前記内部構造の表面に沿って充填される充填材と、前記内部構造との間に前記鉄筋部材を挟んで保持する固定金具と、を備え、前記鉄筋部材は、前記内部構造の表面と離間して配置され、前記充填材は、前記鉄筋部材と前記スペーサーとを内包しており、前記固定金具は、前記鉄筋部材が前記内部構造から離れる方向に移動しないように保持しており、前記固定金具は、天板部と、前記天板部の両端から下方に延びる脚部と、前記脚部の下端から外側に向かって前記天板部と平行に延びる固定部と、を有しており、前記固定部は、前記内部構造に固定される。
【0011】
本発明に係る鉄筋コンクリート構造物は、上記床版構造を備える。
【0012】
本発明に係る床版構造の施工方法は、上記の床版構造の施工方法であって、前記内部構造の表面に前記スペーサーを設置するスペーサー配置工程と、前記スペーサーの表面に前記鉄筋部材を載置する鉄筋載置工程と、前記内部構造の表面に前記スペーサー及び前記鉄筋部材を内包するように前記充填材を充填する充填工程と、を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、スペーサーを配置して鉄筋部材を内部構造の表面から適正な距離に配置できる。そのため、鉄筋部材と内部構造との間に充填材の空隙の発生を抑え、床版構造及び鉄筋コンクリート構造物を鉄筋部材により適正に補強することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施の形態1に係る鉄筋コンクリート構造物100の一例である高架橋の斜視図である。
【
図2】
図1の鉄筋コンクリート構造物100の上部構造の拡大斜視図である。
【
図3】
図2のデッキプレート23及び縦リブ24の拡大図である。
【
図5】実施の形態1に係る床版構造10における鉄筋部材50及びスペーサー60の配置の一例である。
【
図6】実施の形態1に係る床版構造10における鉄筋部材50及びスペーサー60の配置の変形例である。
【
図7】実施の形態1に係る床版構造10における鉄筋部材50及びデッキプレート23の間に骨材が充填された状態の模式図である。
【
図8】実施の形態2に係る鉄筋部材50のスペーサー配置部60a周辺の拡大図である。
【
図9】
図8の鉄筋部材50のスペーサー配置部60aの断面構造の説明図である。
【
図11】実施の形態2に係る固定金具61の変形例である。
【
図12】実施の形態3に係る鉄筋コンクリート構造物100の床版構造310に配置される鉄筋部材50のスペーサー配置部360aの断面構造の説明図である。
【
図13】実施の形態3に係る支持金具361の説明図である。
【
図14】実施の形態4に係る鉄筋コンクリート構造物400の断面構造の説明図である。
【
図15】実施の形態4に係る床版構造410における鉄筋部材50及びスペーサー配置部460aの配置の一例である。
【
図16】実施の形態4に係る床版構造410のスペーサー配置部460aの断面構造の説明図である。
【
図17】実施の形態4に係る床版構造410のスペーサー配置部460aの断面構造の変形例の説明図である。
【
図18】スペーサー60の変形例であるスペーサー60Aの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。各図において、同一の符号を付した部位については、同一の又はこれに相当する部位を表すものであって、これは明細書の全文において共通している。また、明細書全文に表れている構成要素の形態は、あくまで例示であって、本発明は明細書内の記載のみに限定されるものではない。特に構成要素の組み合わせは、各実施の形態における組み合わせのみに限定するものではなく、他の実施の形態に記載した構成要素を別の実施の形態に適用することができる。さらに、添字で区別等している複数の同種の部位について、特に区別したり、特定したりする必要がない場合には、添字を省略して記載する場合がある。また、図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。
【0016】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る鉄筋コンクリート構造物100の一例である高架橋の斜視図である。実施の形態1において鉄筋コンクリート構造物100は、例えば高速道路の高架橋であり、道路93が延びる方向(以下、第1方向と呼ぶ)に橋脚が複数配置され、橋脚に支持された橋梁の上に鋼床版が配置される。鋼床版は、以下の説明において、内部構造90とも称する。床版構造10は、内部構造90とその上面に形成される舗装30を含めた構造である。道路93は、床版構造10の上面に形成される。
図1に示すように、道路93上を車両99が走行することにより、床版構造10に繰り返し荷重が掛かる。なお、道路93の代わりに鉄道の線路が敷設されていても良い。
【0017】
図2は、
図1の鉄筋コンクリート構造物100の上部構造の拡大斜視図である。主桁20は、道路93が延びる方向を第1方向としたときに、第1方向に延びる板状の主桁ウェブ21と、主桁ウェブ21に交差して配置された横リブ22と、主桁ウェブ21及び横リブ22の上端に接合された鋼板を用いたデッキプレート23と、を備える。主桁ウェブ21と横リブ22とは、板状であり、板の幅方向を道路93に直交(交差)するように配置されている。デッキプレート23は、十字に交差して配置された主桁ウェブ21と横リブ22とに溶接等により接合され、道路93の面方向の荷重に耐えられるように構成されている。
【0018】
デッキプレート23の下面には、縦リブ24が接合されている。縦リブ24は、道路93が延びる第1方向に延びる部材であり、第1方向に垂直な断面においてU字形又は略コの字形に形成されている。縦リブ24は、U字形の開放された側の先端部をデッキプレート23の下面に溶接等により接合されている。縦リブ24は、第1方向に直交する第2方向に複数並べて設置されており、デッキプレート23の道路93の面方向の荷重に対する剛性及び強度を確保している。
【0019】
図3は、
図2のデッキプレート23及び縦リブ24の拡大図である。縦リブ24は、
図3に示す断面において、板面が道路93に交差する方向に延びる2つの側板部25と2つの側板部25の下端同士を接続する底板部26を備える。側板部25の上端は、デッキプレート23の下面に溶接されている。デッキプレート23の下面と縦リブ24の側板部25の先端との間には溶接部28が形成されている。縦リブ24は、このような構造により、デッキプレート23の面方向の剛性を向上させている。
【0020】
図3に示すように、デッキプレート23の上面には、舗装30が形成されている。舗装30の表面が道路93となっている。タイヤ80は、道路93の上を走行する車両99のタイヤを模式的に表したものであり、道路93に向かって荷重Fを掛けている。縦リブ24は、主桁ウェブ21及び横リブ22が配置されていない部分のデッキプレート23の下面に接合されることにより、タイヤ80から舗装30を介して掛かる荷重Fによるデッキプレート23のたわみを抑制する。実施の形態1においては、例えば、デッキプレート23の板厚及び縦リブ24を構成する鋼板の板厚は9~16mmである。また、縦リブ24のU字形の高さは200~400mmである。
【0021】
図4は、
図3の舗装30の周辺拡大図である。デッキプレート23の上には、ブロック形状のスペーサー60が載置され、その上に鉄筋部材50が載置されている。充填材70は、デッキプレート23の上に所定の厚さで充填される。なお、実施の形態1において、充填材70には、コンクリート又はモルタルが用いられるが、鋼繊維のほか、炭素繊維、アラミド繊維、ビニロン繊維などの、合成繊維やFRP繊維を混入してひびわれを抑止した繊維補強コンクリートや繊維補強モルタルが用いられる。また、充填材70は、樹脂を混入したモルタルが用いられることもある。
【0022】
スペーサー60は、デッキプレート23の上面に載置され、デッキプレート23の上面と鉄筋部材50との距離を適正に確保するものである。スペーサー60の高さは、例えば10~40mmに設定されている。スペーサー60の高さは、鉄筋部材50とデッキプレート上面との間隙高さHに合わせて調整されるものである。
【0023】
図5は、実施の形態1に係る床版構造10における鉄筋部材50及びスペーサー60の配置の一例である。
図5は、
図3の床版構造10を上面から見た図であり、充填材70を透視した図である。
図5に示されている矢印Xは、道路93が延びる第1方向を示している。鉄筋部材50は、
図5に示すように第1方向に直交する方向延びる複数の主筋51と、第1方向に延びる複数の配力筋52が交差して格子状に構成されている。主筋51と配力筋52とは、同一面上に配置されている。換言すると、鉄筋部材50は、隣り合って配置された2つの主筋51の側面同士の間を配力筋52により接続した構造になっている。
【0024】
主筋51は、第1方向に対し直交する方向に延びるように配置されている。配力筋52は、第1方向に沿って配置されている。
図5に示す鉄筋部材50は、鋼板を切断して格子状に加工したものであり、主筋51と配力筋52とが直交して配置されている。なお、
図5に示す鉄筋部材50は、主筋51及び配力筋52が同じ太さに設定されている。
【0025】
主筋51を縦リブ24が延びる第1方向に対し直交する方向に延びるように配置することにより、主筋51が引張抵抗力を発揮し、デッキプレート23に生じる応力を緩和して、床版構造10の疲労損傷を防止する。配力筋52は、縦リブ24に沿う方向に配置され、複数の主筋51に荷重を分散させる。これにより主筋51の局所的な応力発生を緩和して、鉄筋部材50の疲労耐久性が向上する。特に、
図5に示す格子目が正方形又は長方形である鉄筋部材50を用いた場合に荷重分散効果が高い。なお、実施の形態1において、鉄筋部材50の板厚は4.5~12mm、格子の間隔は50~200mmに設定されている。
【0026】
図6は、実施の形態1に係る床版構造10における鉄筋部材50及びスペーサー60の配置の変形例である。
図6に示す鉄筋部材50は、例えば一枚の鋼板に複数の切り込みを入れて、その切り込みを一方向に拡開するように鋼板を展張して形成される。鋼板の切り込みは、例えば
図6の矢印Xに直交する方向に延びるように設けられ、鋼板をX方向に拡開することにより主筋51が矢印Xに直交する方向に一直線に延びるように形成される。複数の配力筋52は、矢印Xに対し傾斜しており、矢印Xが示す第1方向に沿ってジグザグに折れ曲がって接続されている。
【0027】
図6に示すような展張タイプの鉄筋部材50であっても、複数の主筋51が縦リブ24が延びる第1方向に対し直交する方向に延びることにより、主筋51が引張抵抗力を発揮し、デッキプレート23の応力を緩和して、疲労損傷を防止する。
図6に示す配力筋52は、第1方向に対し傾斜しているが、縦リブ24に沿う方向に配置されているため、
図5に示す鉄筋部材50と同様に複数の主筋51に荷重を分散させる効果が得られる。
【0028】
図4に示すように、充填材70は、鉄筋部材50及びスペーサー60の全体を覆うように充填される。実施の形態1において、鉄筋部材50の上方の充填材70の厚さである被り厚さKは、20~40mmの厚さに設定される。また、充填材70は、鉄筋部材50及びデッキプレート23の間にも隙間なく充填される。充填材70は、例えばコンクリートが用いられる。コンクリートは、セメント、細骨材及び粗骨材を混合して構成される。細骨材は例えば砂であり、10mmの目のふるいを全て通過し、粒の大きさが5mm以下のものが質量比において85%以上のものである。また、粗骨材は例えば砂利であり、5mmのふるいに質量比85%以上がとどまる粒形の大きい骨材である。粗骨材の最大寸法Dは、質量で少なくとも90%が通るふるいのうち、目の大きさが最も小さいふるいの寸法により決定する。そのふるいの目の寸法は、一般に13mm、20mm、25mm、40mmのものが用いられる。なお、細骨材及び粗骨材をまとめて骨材71と呼ぶ。
【0029】
図7は、実施の形態1に係る床版構造10における鉄筋部材50及びデッキプレート23の間に骨材71が充填された状態の模式図である。鉄筋部材50がデッキプレート23から間隙高さHだけ配置されたときに、間隙高さHの間にコンクリートに含まれる最大寸法Dの骨材71が隙間なく入るようにする必要がある。間隙高さHが適正に設定されない場合、鉄筋部材と内部構造との間隙に充填材が十分に充填されずに空隙ができて、車両から受ける繰り返し荷重によって空隙部分からひび割れが進行して損傷するおそれがある。従って、
図7に示すように、最大寸法Dの2つの骨材71が鉄筋部材50の下に入ったときに互いに接するように、間隙高さHが設定される必要がある。このように間隙高さHを設定することにより、最大寸法Dの骨材71を含むコンクリートは、鉄筋部材50とデッキプレート23との間にも隙間なく充填される。
【0030】
鉄筋部材50とデッキプレート23との間隙高さをH、鉄筋部材50の主筋51又は配力筋52の幅をB、骨材の直径をDとすると、次の関係式のときに骨材71は鉄筋部材50とデッキプレート23の間隙に充填される。
D≧Bのとき H>D/2+(B/2×(D-B/2))0.5・・・(1)
D≦Bのとき H>D・・・(2)
【0031】
例えば、充填材70が繊維補強コンクリートで、粗骨材の最大寸法D=20mm、鉄筋部材50の幅寸法B=7mmの場合、上記式(1)に基づき、H>14.8mmとなる。従って、間隙高さHは、例えば15mm以上に設定すると良い。
【0032】
なお、充填材70がモルタルの場合は、粗骨材は混入しておらず、骨材の直径Dが5mm以下の細骨材のみが混入されているため、上記式(2)に基づき、間隙高さH>5mmを確保すればよく、望ましくは間隙高さH>10mmを確保すると良い。
【0033】
以上のように、鉄筋部材50とデッキプレート23との間隙高さHは、充填材70に含まれる骨材71の最大寸法Dに応じて適宜設定される。これにより、仮に最大寸法Dの骨材71が鉄筋部材50の下に入った場合であっても、互いに
図7の接触部72において互いに接触できるように構成されているため、鉄筋部材50の下に充填される充填材70に隙間が生じることがない。
【0034】
実施の形態1において、スペーサー60は、磁石により構成されている。磁石は、例えばフェライト磁石が用いられるが、その他のネオジム磁石等であっても良い。スペーサー60が有する磁力により、スペーサー60は、鋼製のデッキプレート23に固定され、鉄筋部材50もスペーサー60に固定される。従って、磁力を有するスペーサー60により鉄筋部材50は、容易に床版構造10に設置することができる。また、スペーサー60の寸法を上記で説明した間隙高さHに合わせることにより、鉄筋部材50と内部構造90との距離を適正に確保することができる。特に、充填材70としてコンクリートを用いた場合、充填材70は、割合として60%程度の粗骨材が含まれるため、鉄筋部材50の下に骨材71が入り込まず充填材70に空隙が生じるおそれがあるが、上記のように間隙高さHを確保することにより鉄筋部材50の下の空隙の発生を抑えることができる。
【0035】
(床版構造10の施工方法)
図4及び
図5を参照して、鉄筋コンクリート構造物100の床版構造10を鉄筋部材50により補強する工程を説明する。実施の形態1においては、内部構造90がデッキプレート23を用いた鋼床版である場合について説明する。まず、床版構造10は、デッキプレート23が露出した状態にされる。例えば既設構造物を床版構造10とするのであれば、既設構造物の表面の舗装30を斫り、除去する除去工程を実施し、デッキプレート23を露出させる。なお、デッキプレート23が内部構造90の表面である。また、床版構造10を新設する場合は、除去工程は不要である。
【0036】
次に、デッキプレート23の表面にスペーサー60を配置する。この工程をスペーサー配置工程と呼ぶ。そして、スペーサー60の上に鉄筋部材50を載置する。この工程を鉄筋載置工程と呼ぶ。スペーサー60が磁力を有する場合は、スペーサー60は、デッキプレート23に吸着させて固定される。また、鉄筋部材50もスペーサー60に吸着させて位置を固定できる。
【0037】
鉄筋部材50がスペーサー60の上に載置された状態において、内部構造90の表面に充填材70が充填される。この工程を充填工程と呼ぶ。充填材70は、スペーサー60及び鉄筋部材50を内包するように充填される。
【0038】
実施の形態1においては、内部構造90が鋼床版である場合について説明したが、内部構造90は鉄筋コンクリート床版であっても良い。その場合は、上記の除去工程において、内部構造90の表面に鉄筋部材50及びスペーサー60を配置できる程度のスペースが確保される。
【0039】
実施の形態2.
実施の形態2に係る鉄筋コンクリート構造物100の床版構造210について説明する。実施の形態2に係る床版構造210は、実施の形態1に係る床版構造10に対し、鉄筋部材50の固定構造を変更したものである。実施の形態2においては実施の形態1からの変更点を中心に説明する。
【0040】
図8は、実施の形態2に係る鉄筋部材50のスペーサー配置部60a周辺の拡大図である。
図9は、
図8の鉄筋部材50のスペーサー配置部60aの断面構造の説明図である。
図9において、内部構造90は、省略されているが、
図1などに示すようなデッキプレート23であっても良いし、例えば鉄筋コンクリート床版であっても良い。
【0041】
鉄筋部材50は、床版構造10において内部構造90の表面に沿って設置されるが、上記において説明したように、スペーサー60の上に載置されるだけでなく、固定金具61により固定されても良い。つまり、鉄筋部材50及びスペーサー60は、固定金具61及び内部構造90により挟まれて固定されていても良い。固定金具61は、例えばボルトなどの固定部材66により内部構造90に固定され、鉄筋部材50及びスペーサー60を内部構造90側に押し付けるようにして固定する。
【0042】
図10は、
図8及び
図9に示す固定金具61の三面図である。
図10(a)は固定金具61の上面図、
図10(b)は固定金具61の正面図、
図10(c)は固定金具61の側面図である。固定金具61は、天板部62と、天板部62の両端から下方に延びる脚部64と、脚部64の下端から外側に向かって天板部62と平行に延びる固定部63a及び63bと、を備える。
【0043】
固定金具61は、鉄筋部材50の上面を下方向に抑えるように配置され、鉄筋部材50と内部構造90との間にスペーサー60を設けることにより間隙高さHを調整しつつ、例えばアンカーボルトなどの内部構造90にねじ込む固定部材66によって鉄筋部材50を押さえつける。
図10(b)に示すように固定金具61は、帽子形状であるが、これは、固定部材66の頭部が充填材70から突出しないようにし、鉄筋部材50が側方にずれないように、安定して内部構造90に押さえつけるための構造である。
【0044】
なお、固定部63a及び63bは、固定部材66を挿入するための孔65a又は65bを有する。固定部63aの孔65aは、長孔になっており、固定部材66の位置に応じて固定金具61の水平方向の位置を調整できるようになっている。
【0045】
図11は、実施の形態2に係る固定金具61の変形例である。
図11(a)は、固定金具61の変形例の上面図、
図11(b)は、固定金具61の変形例の正面図である。固定金具61の変形例においては、一方の固定部63bに固定部材66を通す孔65c及び65dが設けられている。
図10においては、一方の固定部63aの孔65aを長孔にすることにより固定部材66の位置ずれに対応していたが、
図11の固定金具61のように固定部63bに複数の孔65c及び65dを設けても良い。
図11の固定金具61においては、孔65c又は65dに固定部材66を挿通することにより、固定部材66の位置ずれを吸収することができる。
【0046】
なお、固定金具61は、
図10及び
図11に示す正面図において帽子形の形態に限定されず、平板状であっても良い。板状の固定金具61の場合は、固定部材66の頭部が鉄筋部材50よりも上方に位置するため、充填材70の被り厚さKを大きく取る必要がある。例えば、充填材70の被り厚さKは、固定部材66の頭部から20~40mmを確保すると良い。
【0047】
また、実施の形態2に係る鉄筋部材50のスペーサー配置部60aは、固定金具61を用いて鉄筋部材50を内部構造90の表面に沿って固定しているため、スペーサー60は磁力を有していなくともよい。例えば、スペーサー60は、コンクリートブロックであっても良い。
【0048】
(床版構造210の施工方法)
図9を参照しながら床版構造210の施工方法について説明する。実施の形態2においては、既設の鉄筋コンクリート構造の床版構造を補強して床版構造210を施工する場合について説明する。しかし、新設の鉄筋コンクリート構造の床版構造であっても除去工程以外は同じ工程である。
【0049】
まず、既存の鉄筋コンクリートの表面を斫り、除去し、内部構造90の表面に鉄筋部材50、固定金具61及び固定部材66を配置するスペースを確保する。
【0050】
次に、内部構造90の表面にスペーサー60を配置する。この工程をスペーサー配置工程と呼ぶ。そして、スペーサー60の上に鉄筋部材50を載置する。この工程を鉄筋載置工程と呼ぶ。スペーサー60が磁力を有する場合は、スペーサー60は、鉄筋部材50をスペーサー60に吸着させて位置を固定できる。
【0051】
鉄筋部材50がスペーサー60の上に載置された状態において、固定金具61を鉄筋部材50の上から覆うように配置する。これを固定金具設置工程と呼ぶ。固定金具61は、例えばボルトなどの固定部材66により内部構造90に固定され、鉄筋部材50とスペーサー60とを内部構造90の表面に押し付けるように固定する。
【0052】
鉄筋部材50が固定された状態において、内部構造90の表面に充填材70が充填される。この工程を充填工程と呼ぶ。充填材70は、スペーサー60及び鉄筋部材50を内包するように充填される。
【0053】
実施の形態3.
実施の形態3に係る鉄筋コンクリート構造物100の床版構造310について説明する。実施の形態3に係る床版構造310は、実施の形態2に係る床版構造210のスペーサー60に相当する構造を変更したものである。実施の形態3においては実施の形態2からの変更点を中心に説明する。
【0054】
図12は、実施の形態3に係る鉄筋コンクリート構造物100の床版構造310に配置される鉄筋部材50のスペーサー配置部360aの断面構造の説明図である。
図13は、実施の形態3に係る支持金具361の説明図である。
図13(a)は、支持金具361の上面図、
図13(b)は、支持金具361の正面図である。実施の形態3に係る鉄筋コンクリート構造物100は、床版構造310に配置される鉄筋部材50が、
図3、
図4及び
図9などに示すようにスペーサー60に支持されるのではなく、
図12に示す支持構造360により支持されている。
【0055】
支持構造360は、内部構造90の表面に立設された固定部材366であるアンカーボルトに螺合された下ナット367aと、下ナット367aの上に載置された支持金具361と、を備える。実施の形態3においては、支持金具361の上に鉄筋部材50を載せることにより、内部構造90と鉄筋部材50との距離である間隙高さHを調整する。
【0056】
支持構造360の上部には、固定金具61が取付けられている。固定金具61は、上ナット367bを締結することにより、鉄筋部材50を固定金具61と支持金具361との間に挟んで固定する。実施の形態3においては、固定金具61と鉄筋部材50との間にスペーサー369を2つ挟んでいる。ただし、スペーサー369の数量及び大きさは、固定金具61の帽子形の高さを変更することにより適宜変更することができる。
【0057】
固定金具61は、帽子形に形成されているが、平板状に形成されていても良い。ただし、固定部材366の先端に対し適正な被り厚さKを確保する必要がある。
【0058】
スペーサー369は、磁力を有していても良い。スペーサー369が磁力を有していることにより、支持金具361と磁力を有するスペーサー369とにより鉄筋部材50を挟みこんで仮固定することができる。この場合、支持構造360から固定金具61及び上ナット367bを省略することもできる。
【0059】
支持金具361は、
図12に示す固定部材366の軸方向において下ナット367aの位置をずらすことにより鉄筋部材50の間隙高さHを調整できる。鉄筋コンクリート構造物100は、例えば既設の構造物の表面を削り取り、削り取った部分に鉄筋部材50を配置し、充填材70を充填して形成される場合がある。既設構造物の補強のために鉄筋部材50を配置する場合、既設の構造物の表面を削り取って形成された内部構造90の表面は、凹凸が大きい場合がある。すると、実施の形態1のようなスペーサー60を配置しても、鉄筋部材50と内部構造90との所定の間隙高さHを確保することが困難な場合がある。また、内部構造90の凹凸の大きい表面にスペーサー60を配置した場合、不安定で鉄筋部材50を安定して支持できない場合がある。しかし、実施の形態3に係る支持構造360によれば、内部構造90の表面の状態に関わらず支持金具361の位置を調整できるため、内部構造90の表面に凹凸があったとしても安定して鉄筋部材50を配置することができる。
【0060】
支持構造360は、支持金具361と内部構造90の表面との間に補強部材368が設置されていても良い。補強部材368は、例えば鉄筋部材50を設置する際に、作業者が配置された鉄筋部材50の上に乗る場合があり、支持金具361が変形する場合がある。支持構造360は、補強部材368を備えることにより、設置時においても十分な強度が確保される。
【0061】
(床版構造310の施工方法)
図12を参照しながら床版構造310の施工方法について説明する。実施の形態3においては、既設の鉄筋コンクリート構造の床版構造を補強して床版構造310を施工する場合について説明する。ただし、新設の鉄筋コンクリート構造の床版構造に施工する場合であっても、除去工程以外は同じ工程が行われる。
【0062】
まず、既存の鉄筋コンクリート構造の表面を斫り、除去する除去工程が行われる。除去工程においては、内部構造90の表面に鉄筋部材50、支持金具361、固定金具61及び固定部材366を配置するスペースを確保する。
【0063】
次に、内部構造90の表面に固定部材366を設置する。固定部材366は、例えば内部構造90に穿孔し、その孔に埋め込まれて設置される。また、固定部材366は、下ナット367aが螺合される。2本の固定部材366に下ナット367aが螺合されたら、下ナット367aの上に支持金具361が載置される。これらの工程は、実施の形態1又は実施の形態2のスペーサー配置工程に相当するものである。実施の形態3においては、スペーサー配置工程として上記の工程が行われる。
【0064】
その後、支持金具361の上に鉄筋部材50が載置される。この工程を鉄筋載置工程と呼ぶ。鉄筋載置工程においては、スペーサー369を鉄筋部材50の上に適宜載置する。これは、固定金具61の形状に応じて必要があれば行うものである。
【0065】
鉄筋部材50が支持金具361の上に載置された状態において、固定金具61を鉄筋部材50の上から覆うように配置する。固定金具61は、上ナット367bを固定部材366により螺合させることにより締結固定され、鉄筋部材50とスペーサー369とを支持金具361に押し付けるように固定する。
【0066】
鉄筋部材50が固定された状態において、内部構造90の表面に充填材70が充填される充填工程が行われる。充填材70は、固定部材366、固定金具61及び鉄筋部材50を内包するように充填される。
【0067】
実施の形態4.
実施の形態4に係る鉄筋コンクリート構造物400の床版構造410について説明する。実施の形態4に係る床版構造410は、鉄筋コンクリート構造物400として例えば道路下の水路を形成するボックスカルバートの床版構造410の補強構造について説明する。実施の形態4においては実施の形態1からの変更点を中心に説明する。
【0068】
図14は、実施の形態4に係る鉄筋コンクリート構造物400の断面構造の説明図である。実施の形態4に係る鉄筋コンクリート構造物400は、例えば道路下の水路を形成するボックスカルバートであり、その内部の上面を鉄筋部材50で補強したものである。鉄筋コンクリート構造物400は、内部の上面及び側面を削り取り、そこに鉄筋部材50を配置し、表面に充填材70としてモルタルを吹き付けて上面及び側面が補強されている。鉄筋部材50は、上面の中央に配置されている鉄筋部材50a及び上面から側面にわたって配置されている鉄筋部材50bを備えている。鉄筋部材50aと50bとは一部を重ね合わせて配置されている。
【0069】
図15は、実施の形態4に係る床版構造410における鉄筋部材50及びスペーサー配置部460aの配置の一例である。
図15(a)は、鉄筋コンクリート構造物400の内側から上面を見た平面図であり、
図15(b)は、鉄筋コンクリート構造物400の上部の断面構造の説明図である。
図15(a)の矢印Xに示すように、鉄筋部材50の主筋51は、水路が延びる第1方向に直交する方向に延びるように配置される。また、
図15(a)に示す鉄筋部材50は、鋼板に切り込みを入れて拡開して形成された展張タイプの鉄筋部材が使用されているが、
図5において示した格子目が正方形の鉄筋部材50を用いても良いし、格子目がその他の形状のものであっても良い。
【0070】
図15(b)に示すように、鉄筋部材50を床版構造410の下側から設置する際においても、鉄筋部材50と内部構造90との間隙高さHを適正に確保する必要がある。また、充填材70の被り厚さKも適正に確保する必要があるため、充填材70を充填する際において、鉄筋部材50は適正な位置に保持される必要がある。
【0071】
図16は、実施の形態4に係る床版構造410のスペーサー配置部460aの断面構造の説明図である。実施の形態4に係る床版構造410の鉄筋部材50は、固定金具61と内部構造90とにより挟まれて固定されている。固定金具61は、内部構造90に固定部材66をねじ込むことにより固定されている。このとき内部構造90と鉄筋部材50との間にはスペーサー60が配置されて、間隙高さHの距離が適正に確保される。
【0072】
スペーサー60は、磁力を有しても良い。例えば、内部構造90が内部に鉄筋98を有していれば、磁力を有するスペーサー60を内部構造90の内部の鉄筋98に吸着させて配置し、そのスペーサー60に鉄筋部材50を吸着させて鉄筋部材50の仮固定ができる。また、内部構造90内に例えばデッキプレート23のような鋼板部材が配置されている場合も、磁力を有するスペーサー60を用いることにより、鉄筋部材50の仮固定が容易になる。
【0073】
図17は、実施の形態4に係る床版構造410のスペーサー配置部460aの断面構造の変形例の説明図である。実施の形態4に係る鉄筋コンクリート構造物400は、既設のボックスカルバートであっても良い。その場合、床版構造410表面を削り、内部構造90の既設の鉄筋98を露出させ、その鉄筋98に磁力を有するスペーサー60を吸着させることができる。既設鉄筋98に磁力を有するスペーサー60を取り付けた後に鉄筋部材50をスペーサー60に吸着させ、鉄筋部材50を内部構造90の内側の上面に仮固定が可能となる。
【0074】
内部構造90との間隙高さHを適正に確保するようにスペーサー60の寸法を調整し、鉄筋部材50の下側から固定金具61を取り付ける。固定金具61は、内部構造90に固定された固定部材66に螺合されたナット67により固定される。その後、内部構造90の内側の上面及び側面に充填材70であるモルタルを吹き付けて鉄筋部材50及び固定金具61等の部材を充填材70で覆う。このように、鉄筋部材50は、鉄筋コンクリート構造物400の床版構造410の下面側に配置して補強することができる。
【0075】
以上に本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施の形態の構成のみに限定されるものではない。特に構成要素の組み合わせは、実施の形態における組み合わせのみに限定するものではなく、適宜変更することができる。
【0076】
図18は、スペーサー60の変形例であるスペーサー60Aの斜視図である。実施の形態1、2及び4のスペーサー60及び実施の形態3の補強部材368は、スペーサー60Aに置換することができる。スペーサー60Aは、複数の脚部鉄筋60Aaと複数の脚部鉄筋60Aaの頂部に接合された支持配筋60Abとから構成される。スペーサー60Aは、支持配筋60Abの上に鉄筋部材50又は補強部材368が載置され、支持するものである。
【0077】
なお、いわゆる当業者が必要に応じてなす種々なる変更、応用、利用の範囲をも本発明の要旨(技術的範囲)に含むことを念のため申し添える。
【符号の説明】
【0078】
10 床版構造、20 主桁、21 主桁ウェブ、22 横リブ、23 デッキプレート、24 縦リブ、25 側板部、26 底板部、28 溶接部、30 舗装、32 デッキプレート、50 鉄筋部材、50a 鉄筋部材、50b 鉄筋部材、51 主筋、52 配力筋、60 スペーサー、60A スペーサー、60Aa 脚部鉄筋、60Ab 支持配筋、60a スペーサー配置部、61 固定金具、62 天板部、63a 固定部、63b 固定部、64 脚部、65a 孔、65b 孔、65c 孔、65d 孔、66 固定部材、67 ナット、70 充填材、71 骨材、72 接触部、80 タイヤ、90 内部構造、93 道路、98 (既設)鉄筋、99 車両、100 鉄筋コンクリート構造物、210 床版構造、310 床版構造、360 支持構造、360a スペーサー配置部、361 支持金具、366 固定部材、367a 下ナット、367b 上ナット、368 補強部材、369 スペーサー、400 鉄筋コンクリート構造物、410 床版構造、460a スペーサー配置部。