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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】金属管の縮径方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 22/02 20060101AFI20241213BHJP
   B21D 37/02 20060101ALI20241213BHJP
【FI】
B21D22/02 F
B21D37/02 Z
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021120154
(22)【出願日】2021-07-21
(65)【公開番号】P2023016090
(43)【公開日】2023-02-02
【審査請求日】2024-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】390010227
【氏名又は名称】株式会社三五
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 安浩
(72)【発明者】
【氏名】早川 尚志
(72)【発明者】
【氏名】江口 徹
【審査官】飯田 義久
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-193244(JP,A)
【文献】特開2008-023566(JP,A)
【文献】特開2004-025286(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 22/02
B21D 37/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる曲率半径を有する3組以上の互いに対向する曲線によって構成される略矩形の横断面を有する金属製の素管の軸周りに前記素管を取り囲むように配置された複数の分割型によって前記素管の外周面を押圧することにより前記素管を縮径させる、金属管の縮径方法であって、
複数の前記分割型が、1つ又は隣り合う2つ以上の前記分割型からなる複数の分割型群に分けられており、
複数の前記分割型群のうち前記素管の前記外周面の最も低い面剛性を有する領域を押圧する前記分割型群を最後に前記素管の前記外周面に当接させることを特徴とする、金属管の縮径方法。
【請求項2】
請求項に記載された金属管の縮径方法であって、
複数の前記分割型群のうち前記素管の前記外周面の最も高い面剛性を有する領域を押圧する前記分割型群を最初に前記素管の前記外周面に当接させることを特徴とする、金属管の縮径方法。
【請求項3】
請求項に記載された金属管の縮径方法であって、
複数の前記分割型群を前記素管の前記外周面に当接させるタイミングが、各々の前記分割型群が対向する前記素管の前記外周面の領域の面剛性の降順になっていることを特徴とする、金属管の縮径方法。
【請求項4】
請求項乃至請求項の何れか1項に記載された金属管の縮径方法であって、
複数の前記分割型からなる前記分割型群を前記素管の前記外周面に当接させるときに、前記素管の前記外周面に前記分割型を当接させるタイミングが、各々の前記分割型が対向する前記素管の前記外周面の領域の面剛性の降順になっていることを特徴とする、金属管の縮径方法。
【請求項5】
異なる曲率半径を有する3組以上の互いに対向する曲線によって構成される略矩形の横断面を有する金属製の素管の軸周りに前記素管を取り囲むように配置された複数の分割型によって前記素管の外周面を押圧することにより前記素管を縮径させる、金属管の縮径方法であって、
複数の前記分割型が、1つ又は隣り合う2つ以上の前記分割型からなる複数の分割型群に分けられており、
複数の前記分割型群のうち前記素管の前記横断面における短軸の端部に最も近い前記分割型群を最後に前記素管の前記外周面に当接させることを特徴とする、金属管の縮径方法。
【請求項6】
請求項に記載された金属管の縮径方法であって、
複数の前記分割型群のうち前記素管の前記横断面における長軸の端部に最も近い前記分割型群を最初に前記素管の前記外周面に当接させることを特徴とする、金属管の縮径方法。
【請求項7】
請求項に記載された金属管の縮径方法であって、
複数の前記分割型群を前記素管の前記外周面に当接させるタイミングが、各々の前記分割型群と前記長軸の端部との距離の昇順になっていることを特徴とする、金属管の縮径方法。
【請求項8】
請求項乃至請求項7の何れか1項に記載された金属管の縮径方法であって、
複数の前記分割型からなる前記分割型群を前記素管の前記外周面に当接させるときに、前記素管の前記外周面に前記分割型を当接させるタイミングが、各々の前記分割型と前記素管の前記横断面における長軸の端部との距離の昇順になっていることを特徴とする、金属管の縮径方法。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8の何れか1項に記載された金属管の縮径方法であって、
複数の前記分割型群の各々が前記素管の前記横断面を構成する前記曲線の各々に対応する素管の外周面の領域に対向していることを特徴とする、金属管の縮径方法。
【請求項10】
異なる曲率半径を有する3組以上の互いに対向する曲線によって構成される略矩形の横断面を有する金属製の素管の軸周りに前記素管を取り囲むように配置された複数の分割型によって前記素管の外周面を押圧することにより前記素管を縮径させる、金属管の縮径方法であって、
複数の前記分割型が、1つ又は隣り合う2つ以上の前記分割型からなる複数の分割型群に分けられており、
複数の前記分割型群の各々が前記素管の前記横断面を構成する前記曲線の各々に対応する素管の外周面の領域に対向しており、
複数の前記分割型群のうち前記素管の前記横断面を構成する前記曲線のうち最も長い前記曲線に対応する前記素管の前記外周面の領域を押圧する前記分割型群を最後に前記素管の前記外周面に当接させることを特徴とする、金属管の縮径方法。
【請求項11】
請求項10に記載された金属管の縮径方法であって、
複数の前記分割型群のうち前記素管の前記横断面を構成する前記曲線のうち最も短い前記曲線に対応する前記素管の前記外周面の領域を押圧する前記分割型群を最初に前記素管の前記外周面に当接させることを特徴とする、金属管の縮径方法。
【請求項12】
請求項11に記載された金属管の縮径方法であって、
複数の前記分割型群を前記素管の前記外周面に当接させるタイミングが、各々の前記分割型群が対向する前記素管の前記外周面の領域に対応する前記素管の前記横断面を構成する前記曲線の長さの昇順になっていることを特徴とする、金属管の縮径方法。
【請求項13】
異なる曲率半径を有する3組以上の互いに対向する曲線によって構成される略矩形の横断面を有する金属製の素管の軸周りに前記素管を取り囲むように配置された複数の分割型によって前記素管の外周面を押圧することにより前記素管を縮径させる、金属管の縮径方法であって、
複数の前記分割型が、1つ又は隣り合う2つ以上の前記分割型からなる複数の分割型群に分けられており、
複数の前記分割型群の各々が前記素管の前記横断面を構成する前記曲線の各々に対応する素管の外周面の領域に対向しており、
複数の前記分割型群のうち前記素管の前記横断面を構成する前記曲線のうち最も大きい曲率半径を有する前記曲線に対応する前記素管の前記外周面の領域を押圧する前記分割型群を最後に前記素管の前記外周面に当接させることを特徴とする、金属管の縮径方法。
【請求項14】
請求項13に記載された金属管の縮径方法であって、
複数の前記分割型群のうち前記素管の前記横断面を構成する前記曲線のうち最も小さい曲率半径を有する前記曲線に対応する前記素管の前記外周面の領域を押圧する前記分割型群を最初に前記素管の前記外周面に当接させることを特徴とする、金属管の縮径方法。
【請求項15】
請求項14に記載された金属管の縮径方法であって、
複数の前記分割型群を前記素管の前記外周面に当接させるタイミングが、各々の前記分割型群が対向する前記素管の前記外周面の領域に対応する前記素管の前記横断面を構成する前記曲線の曲率半径の大きさの昇順になっていることを特徴とする、金属管の縮径方法。
【請求項16】
請求項1乃至請求項15の何れか1項に記載された金属管の縮径方法であって、
複数の前記分割型が前記素管の中心軸に向かって前記素管の前記外周面を押圧することを特徴とする、金属管の縮径方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属管の縮径方法に関する。より詳細には、本発明は、異なる曲率半径を有する3組以上の互いに対向する曲線によって構成される略矩形の横断面を有する金属製の素管を縮径させて円滑且つ正確な略矩形の横断面を有する筒状部材を製造することができる金属管の縮径方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車に搭載される排気浄化装置(触媒コンバータ等)においては、性能面及び搭載スペース面からの要求により横断面の非円形化が進んでいる。このような排気浄化装置の集成過程においては、非円形の横断面を有する触媒担体の外周面に所定の厚さを有する緩衝マットが巻回され、斯かる触媒担体と緩衝マットとの組が非円形の横断面を有する金属製の筒状部材(外筒)の内部に挿入された後に金属管を縮径させることにより、触媒担体と筒状部材との間に挟持された緩衝マットの復元力によって触媒担体が保持される。即ち、筒状部材の横断面は、触媒担体の横断面の相似形であって、触媒担体の横断面よりも大きい形状を有する。
【0003】
非円形の横断面の形状の具体例としては、例えば楕円形及び矩形等を挙げることができる。しかしながら、平面上の2つの定点(焦点)からの距離の和が一定となるような点の集合である真楕円形の横断面を有する金属管を工業的に量産することは困難であるため、従来は疑似楕円形の横断面が多用されてきた。疑似楕円形とは、例えば図43に示すように、異なる曲率半径R1及びR2を有する大小2組の互いに対向する曲線(2つの曲線C1及び2つの曲線C2)からなる疑似的な楕円形である。従って、厳密には、疑似楕円形には4箇所の変曲点(隣接する曲線が繋がる点)が存在する(図中の黒丸を参照)。尚、図中に示す黒丸は、横断面を構成する複数の曲線が隣接する他の曲線と繋がる点(変曲点)の位置を判り易く示すことを目的として描かれているのであって、黒丸の形状に対応する凸部及び/又は隆起部等が横断面に存在することを意味する訳では無い。本明細書において後に参照する各図面についても同様である。
【0004】
図43に例示したような疑似楕円形の横断面を有する筒状部材は、一般に、目標とする横断面よりも僅かに大きい横断面を有する金属管である素管を縮径させることにより、最終的な大きさ及び形状の横断面を有する金属管である筒状部材へと仕上げられる。素管及び筒状部材は何れも長軸及び短軸を有する扁平な形状を有する。従って、従来の縮径用金型においては、横断面を構成する4つの曲線(2つの曲線C1及び2つの曲線C2)に対応する素管の外周面の領域を4つの押圧部材によって押圧することによって縮径させる。この場合、長軸方向及び短軸方向における押圧部材の移動量が異なるため、各々の押圧部材について独立した移動制御が必要となり、制御系及び押圧機構が複雑になる。
【0005】
そこで、特許文献1(特許第4856618号公報)に記載された発明に係る縮径用金型においては、疑似楕円形の横断面を構成する大小それぞれの曲率半径を有する2組の互いに対向する曲線に対応する素管の外周面の領域を押圧するための型(押圧部材)が複数の分割型に分けられている。そして、大きい方の曲率半径用の分割型群と小さい方の曲率半径用の分割型群とが構成され、大きい方の曲率半径用の分割型群の押圧面の端部と中心点とを結ぶ線分である中心線(半径)の上に小さい方の曲率半径用の分割型群の中心点が位置するように、それぞれの分割型群が構成されている。
【0006】
上記発明によれば、それぞれの曲率半径に対応する中心点に向かって複数の分割型を一律に(同一の速度にて同一の量だけ)移動させて複数の分割型を素管の外周面に同時に当接させて同時に押圧することができるとされている。また、隣り合う分割型の押圧面の間に段差が生じないので、複雑な制御系を必要とすること無く、円滑且つ正確な横断面形状を形成することができるとされている。尚、同様の発明は特許文献2(特表2013―500161号公報)にも記載されている。
【0007】
ところが、昨今では、上述したような疑似楕円形の横断面を有する筒状部材に代わり、異なる曲率半径を有する3組以上の互いに対向する曲線によって構成される略矩形の横断面を有する筒状部材に対する需要が高まっている。略矩形の具体例としては、例えば図44に示すように、異なる曲率半径を有する3組の互いに対向する曲線(4つの曲線C1、2つの曲線C2及び2つの曲線C3)からなる疑似的な矩形を挙げることができる。
【0008】
上記のような略矩形の横断面を有する筒状部材を得るためのワークとしての素管の横断面は、当該筒状部材の横断面の相似形であって、当該筒状部材の横断面よりも僅かに大きい形状を有する。即ち、素管の横断面もまた、異なる曲率半径を有する3組以上の互いに対向する曲線によって構成される横断面を有する略矩形の横断面を有する。このような略矩形の横断面を有する素管の場合、上述した特許文献1及び2のような従来技術に係る縮径用金型によって分割型を一律に移動させて素管の外周面に同時に当接させて当該外周面を押圧させることは困難又は不可能である。
【0009】
また、上記のような略矩形の横断面を有する素管においては、例えば略矩形の横断面を構成する曲線が長い部分と短い部分との間等において、対応する素管の外周面の領域の面剛性の差が大きくなる場合がある。このような場合、上述したような従来技術に係る縮径用金型によって分割型を一律に移動させて素管の外周面に同時に当接させて当該外周面を押圧しても各領域における変形量の差が生じ、低い面剛性を有する領域(例えば、横断面を構成する曲線のうち最も長い曲線に対応する領域)において座屈が生じたり、横断面において隣接する曲線が繋がる点(変曲点)に対応する部分に段差が生じたりする可能性が高い。
【0010】
以上のように、昨今多用される略矩形の横断面を有する筒状部材については、従来技術に係る縮径用金型によっては、円滑且つ正確な横断面を形成することは困難である。このような問題は、排気浄化装置の外筒に限られるものではなく、略矩形の横断面を有する筒状部材に共通するものである。即ち、当該技術分野においては、異なる曲率半径を有する3組以上の互いに対向する曲線によって構成される略矩形の横断面を有する金属製の素管を縮径させて円滑且つ正確な略矩形の横断面を有する筒状部材を製造することができる金属管の縮径方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特許第4856618号公報
【文献】特表2013―500161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前述したように、当該技術分野においては、異なる曲率半径を有する3組以上の互いに対向する曲線によって構成される略矩形の横断面を有する金属製の素管を縮径させて円滑且つ正確な略矩形の横断面を有する筒状部材を製造することができる金属管の縮径方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そこで、本発明者は鋭意研究の結果、略矩形の横断面を有する金属製の素管の外周面を複数の分割型によって押圧する際に複数の分割型を一律に移動させるのではなく分割型が素管に当接するタイミングに差を設けることにより上記課題を解決することができることを見出した。
【0014】
具体的には、本発明に係る金属管の縮径方法(以降、「本発明方法」と称呼される場合がある。)は、略矩形の横断面を有する金属製の素管の軸周りに素管を取り囲むように配置された複数の分割型によって素管の外周面を押圧することにより素管を縮径させる、金属管の縮径方法である。本明細書において「略矩形」とは、異なる曲率半径を有する3組以上の互いに対向する曲線によって構成される概ね矩形と見做すことができる形状を意味する。
【0015】
本発明方法においては、複数の分割型が、1つ又は隣り合う2つ以上の分割型からなる複数の分割型群に分けられている。更に、複数の分割型群を素管の外周面に当接させるタイミングに時間差が設けられている。
【発明の効果】
【0016】
上記のように、本発明方法においては、複数の分割型群を素管の外周面に当接させるタイミングに時間差が設けられている。従って、略矩形の横断面を有する素管の外周面における面剛性の差が大きい場合においても、面剛性の差に応じて分割型群が素管に当接するタイミングを設定することにより、低い面剛性を有する領域において座屈が生じたり横断面における変曲点に対応する部分に段差が生じたりする可能性を低減することができる。即ち、本発明方法によれば、異なる曲率半径を有する3組以上の互いに対向する曲線によって構成される略矩形の横断面を有する金属製の素管を縮径させて円滑且つ正確な略矩形の横断面を有する筒状部材を製造することができる。
【0017】
本発明の他の目的、他の特徴及び付随する利点は、以下の図面を参照しつつ記述される本発明の各実施形態についての説明から容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】(a)は本発明の第1実施態様に係る金属管の縮径方法(第1方法)によって縮径される素管の横断面の一例を示す模式図であり、(b)及び(c)は第1方法の開始直前における複数の分割型及び素管の配置を例示する模式図である。
図2】第1方法において複数の分割型を素管の外周面に向かって駆動する手段の一例を示す模式図である。
図3】(a)は本発明の第2実施態様に係る金属管の縮径方法(第2方法)によって縮径される素管の横断面の一例を示す模式図であり、(b)及び(c)は第2方法の開始直前における複数の分割型及び素管の配置を例示する模式図である。
図4】本発明の第3実施態様に係る金属管の縮径方法(第3方法)における素管の縮径工程の一例を示す模式図である。
図5】1つの好ましい態様に係る第3方法における素管の縮径工程の一例を示す模式図である。
図6】本発明の第4実施態様に係る金属管の縮径方法(第4方法)における素管の縮径工程の一例を示す模式図である。
図7】本発明の第5実施態様に係る金属管の縮径方法(第5方法)における素管の縮径工程の一例を示す模式図である。
図8】本発明の第6実施態様に係る金属管の縮径方法(第6方法)における素管の縮径工程の一例を示す模式図である。
図9】本発明の第7実施態様に係る金属管の縮径方法(第7方法)における複数の分割型の移動方向(素管の外周面を押圧する方向)について説明するための模式図である。
【0019】
図10】本発明の実施例1に係る金属管の縮径方法(実施例方法1)の開始直前における複数の分割型及び素管の配置を示す模式図である。
図11】実施例方法1において個々の分割型群によって実行される押圧処理における分割型群の動きを示す模式図である。
図12】実施例方法1において個々の分割型群によって実行される押圧処理における分割型群の動きを示す模式図である。
図13】実施例方法1において個々の分割型群によって実行される押圧処理における分割型群の動きを示す模式図である。
図14】実施例方法1において個々の分割型群によって実行される押圧処理における分割型群の動きを示す模式図である。
図15】実施例方法1において個々の分割型群によって実行される押圧処理における分割型群の動きを示す模式図である。
図16】実施例方法1において個々の分割型群によって実行される押圧処理における分割型群の動きを示す模式図である。
図17】実施例方法1において個々の分割型群によって実行される押圧処理における分割型群の動きを示す模式図である。
図18】実施例方法1において個々の分割型群によって実行される押圧処理における分割型群の動きを示す模式図である。
図19】実施例方法1において個々の分割型群によって実行される押圧処理における分割型群の動きを示す模式図である。
【0020】
図20】本発明の実施例2に係る金属管の縮径方法(実施例方法2)の開始直前における複数の分割型及び素管の配置を示す模式図である。
図21】実施例方法2において個々の分割型群によって実行される押圧処理における分割型群の動きを示す模式図である。
図22】実施例方法2において個々の分割型群によって実行される押圧処理における分割型群の動きを示す模式図である。
図23】実施例方法2において個々の分割型群によって実行される押圧処理における分割型群の動きを示す模式図である。
図24】実施例方法2において個々の分割型群によって実行される押圧処理における分割型群の動きを示す模式図である。
図25】実施例方法2において個々の分割型群によって実行される押圧処理における分割型群の動きを示す模式図である。
図26】実施例方法2において個々の分割型群によって実行される押圧処理における分割型群の動きを示す模式図である。
図27】実施例方法2において個々の分割型群によって実行される押圧処理における分割型群の動きを示す模式図である。
図28】実施例方法2において個々の分割型群によって実行される押圧処理における分割型群の動きを示す模式図である。
図29】実施例方法2において個々の分割型群によって実行される押圧処理における分割型群の動きを示す模式図である。
図30】実施例方法2において個々の分割型群によって実行される押圧処理における分割型群の動きを示す模式図である。
図31】実施例方法2において個々の分割型群によって実行される押圧処理における分割型群の動きを示す模式図である。
図32】実施例方法2において個々の分割型群によって実行される押圧処理における分割型群の動きを示す模式図である。
【0021】
図33】本発明の実施例3に係る金属管の縮径方法(実施例方法3)の開始直前における複数の分割型及び素管の配置を示す模式図である。
図34】実施例方法3において個々の分割型群によって実行される押圧処理における分割型群の動きを示す模式図である。
図35】実施例方法3において個々の分割型群によって実行される押圧処理における分割型群の動きを示す模式図である。
図36】実施例方法3において個々の分割型群によって実行される押圧処理における分割型群の動きを示す模式図である。
図37】実施例方法3において個々の分割型群によって実行される押圧処理における分割型群の動きを示す模式図である。
図38】実施例方法3において個々の分割型群によって実行される押圧処理における分割型群の動きを示す模式図である。
図39】実施例方法3において個々の分割型群によって実行される押圧処理における分割型群の動きを示す模式図である。
図40】実施例方法3において個々の分割型群によって実行される押圧処理における分割型群の動きを示す模式図である。
図41】実施例方法3において個々の分割型群によって実行される押圧処理における分割型群の動きを示す模式図である。
図42】実施例方法3において個々の分割型群によって実行される押圧処理における分割型群の動きを示す模式図である。
図43】従来から使用される筒状部材(外筒)が有する異なる曲率半径を有する大小2組の互いに対向する曲線からなる疑似的な楕円形である疑似楕円形の横断面の一例を示す模式図である。
図44】昨今多用される筒状部材(外筒)が有する異なる曲率半径を有する3組の互いに対向する曲線からなる疑似的な矩形である略矩形の横断面の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
《第1実施形態》
以下、図面を参照しながら本発明の第1実施形態に係る金属管の縮径方法(以降、「第1方法」と称呼される場合がある。)について説明する。
【0023】
第1方法は、略矩形の横断面を有する金属製の素管の軸周りに素管を取り囲むように配置された複数の分割型によって素管の外周面を押圧することにより素管を縮径させる、金属管の縮径方法である。前述したように、本明細書において「略矩形」とは、異なる曲率半径を有する3組以上の互いに対向する曲線によって構成される概ね矩形と見做すことができる形状を意味する。
【0024】
第1方法においては、複数の分割型が、1つ又は隣り合う2つ以上の分割型からなる複数の分割型群に分けられている。更に、複数の分割型群を素管の外周面に当接させるタイミングに時間差が設けられている。即ち、第1方法においては、複数の分割型が、素管の外周面に当接するタイミングが異なる複数の組(分割型群)に分けられており、各々の組(分割型群)は1つ又は隣り合う2つ以上の分割型からなる。
【0025】
従って、第1方法においては、略矩形の横断面を有する素管の外周面における面剛性の差が大きい場合においても、面剛性の差に応じて複数の分割型群が素管に当接するタイミングを設定することにより、低い面剛性を有する領域において座屈が生じたり横断面における変曲点に対応する部分に段差が生じたりする可能性を低減することができる。尚、複数の分割型群の各々が素管に当接するタイミングについては、素管の外周面における面剛性の分布に応じて適宜定めることが好ましい。素管の外周面を構成する各領域の面剛性は、例えば、縮径させようとする素管の横断面の形状、管壁の厚さ及び構成材料の性質(例えば、延性及び展性等)、並びに素管の外周面における各領域の形状(例えば、横断面における曲率半径等)及び面積並びに周囲の他の領域の面剛性等、様々な要因による影響を受ける。素管の外周面を構成する各領域の面剛性は、例えば、種々のシミュレーション解析及び素管そのものを用いる実測等、様々な手法によって求めることができる。また、複数の分割型群を素管に当接させる具体的なタイミングは、例えば、種々のシミュレーション解析及び予備実験等、様々な手法によって適宜定めることができる(詳しくは詳述する)。
【0026】
ところで、ある分割型群を素管に当接させるタイミングは、当該分割型群の直前に素管に当接させた他の分割型群による素管の押圧過程が完了する前であっても或いは後であってもよい。即ち、当該分割型群の直前に素管に当接させた他の分割型群による素管の押圧過程が完了する前に当該分割型群による素管の押圧過程を開始してもよく、当該分割型群の直前に素管に当接させた他の分割型群による素管の押圧過程が完了すると同時に当該分割型群による素管の押圧過程を開始してもよく、或いは、当該分割型群の直前に素管に当接させた他の分割型群による素管の押圧過程が完了した後に当該分割型群による素管の押圧過程を開始してもよい。この点についても、例えば種々のシミュレーション解析及び予備実験等、様々な手法によって適宜定めることができる。
【0027】
また、例えば、素管並びに分割型群及び分割型群を駆動する手段(詳しくは後述する)の構成によっては、目標とする横断面を有する筒状部材を必ずしも第1方法の1回の実行によって形成する必要は無い。即ち、複数回に亘って第1方法を実行することにより、素管の横断面を徐々に目標とする横断面に近付けてもよい。
【0028】
図1の(a)は第1方法によって縮径される素管の横断面の一例を示す模式図である。図1の(a)に例示する素管11は、異なる曲率半径を有する異なる3組の互いに対向する曲線(2つの曲線12a、4つの曲線12b及び2つの曲線12c)からなる疑似的な矩形(略矩形)の横断面を有する。このような略矩形の横断面を有する素管11を従来技術に係る縮径用金型によって縮径させる場合、前述したように、低い面剛性を有する領域において座屈が生じたり、横断面における変曲点に対応する部分に段差が生じたりする可能性が高い。
【0029】
図1の(b)は、第1方法の開始直前における複数の分割型及び素管の配置の一例を示す模式図である。図1の(b)に示す例においては、8つの分割型群(2つの分割型群21a、4つの分割型群21b及び2つの分割型群21c)が、素管11を軸周りに取り囲むように配置されている。また、複数の分割型群21a、21b及び21cは、それぞれ1つの分割型によって構成されている。但し、複数の分割型群21a、21b及び21cの少なくとも1つの分割型群が複数の分割型によって構成されていてもよい。
【0030】
図1の(c)に示す例においては、2つの分割型群21cがそれぞれ3つの分割型によって構成されている。このように複数の分割型によって構成される分割型群を素管の外周面に当接させる場合、当該分割型群を構成する全ての分割型を同時に素管の外周面に当接させてもよい。或いは、当該分割型群を構成する複数の分割型を素管の外周面に当接させるタイミングに時間差を設けてもよい。
【0031】
複数の分割型を素管の外周面に向かって駆動する手段は、複数の分割型を素管の外周面に押し当てて所期の量だけ素管を縮径させることが可能である限り、特に限定されない。例えば、前述した特許文献2に記載されている縮径装置が備えるジョーセグメントとリング部との組み合わせのような機構を使用して複数の分割型を素管の外周面に向かって駆動することができる。
【0032】
図2は、上記のような駆動機構の構成を例示する模式図である。図2の(a)の中心には、図1の(b)に例示した3組の分割型群21a、21b及び21cと素管11とが描かれている。その周りには、素管11の軸に垂直な方向(径方向)から観察した3組の分割型群21a、21b及び21cが描かれている。3組の分割型群21a、21b及び21cは、それぞれ、互いに近付いたり離れたりすることが可能であるように保持されており、素管11の径方向において外周面を押圧する面(押圧面)とは反対側に、素管11の軸方向に対して所定の角度にて傾斜している傾斜面である摺動面が形成されている。即ち、3組の分割型群21a、21b及び21cは上記ジョーセグメントに対応する。
【0033】
そして、図2の(b)に例示するように、素管11の軸方向に移動可能に構成された部材である3組の「お釜」31a、31b及び31cに形成された傾斜面に3組の分割型群21a、21b及び21cの摺動面がそれぞれ当接するように、3組のお釜31a、31b及び31cと3組の分割型群21a、21b及び21cとが係合される。そして、破線の矢印によって示すように、素管11の軸方向において3組の分割型群21a、21b及び21cの対向する摺動面の間隔がより広くなる向きに3組のお釜31a、31b及び31cを移動させる。その結果、実線の矢印によって示すように、3組の分割型群21a、21b及び21cの互いに対向する分割型群が互いに近付く向きに付勢される。このようにして、図2の(c)に示すように、3組の分割型群21a、21b及び21cを素管11の外周面に向かって駆動することができる。
【0034】
尚、第1方法においては、複数の分割型群を素管の外周面に当接させるタイミングに時間差が設けられている。上記のような駆動機構を採用する場合、例えば、3組の分割型群21a、21b及び21cと3組のお釜31a、31b及び31cとが当接しながら摺動する面の形成されている範囲及び/又は傾斜角等を適宜調整することにより、3組の分割型群21a、21b及び21cが素管11の外周面に当接するタイミングに時間差を設けることができる。
【0035】
或いは、第1方法において、例えば液圧シリンダ及びサーボシリンダ等のアクチュエータを用いて各々の分割型群又は各々の分割型を個別に駆動することにより、複数の分割型群を素管の外周面に当接させるタイミングに時間差を設けてもよい。
【0036】
以上のように、第1方法においては、複数の分割型群を素管の外周面に当接させるタイミングに時間差が設けられている。従って、略矩形の横断面を有する素管の外周面における面剛性の差が大きい場合においても、面剛性の差に応じて分割型群が素管に当接するタイミングを設定することにより、低い面剛性を有する領域において座屈が生じたり横断面における変曲点に対応する部分に段差が生じたりする可能性を低減することができる。即ち、第1方法によれば、異なる曲率半径を有する3組以上の互いに対向する曲線によって構成される略矩形の横断面を有する金属製の素管を縮径させて円滑且つ正確な略矩形の横断面を有する筒状部材を製造することができる。
【0037】
《第2実施形態》
以下、図面を参照しながら本発明の第2実施形態に係る金属管の縮径方法(以降、「第2方法」と称呼される場合がある。)について説明する。
【0038】
上述したように、第1方法は、略矩形の横断面を有する金属製の素管の軸周りに素管を取り囲むように配置された複数の分割型によって素管の外周面を押圧することにより素管を縮径させる、金属管の縮径方法である。更に、複数の分割型は、1つ又は隣り合う2つ以上の分割型からなる複数の分割型群に分けられている。
【0039】
第1方法における分割型の数及び個々の分割型の素管の外周面を押圧する面(以降、「押圧面」と称される場合がある。)の大きさは、上述したような効果を達成することが可能である限り、特に限定されない。例えば、第1方法においては、隣接する異なる2つの曲線に対応する2つの領域の境界を覆うように(隣接する領域の間の境界を跨ぐように)素管の外周面に対向する押圧面を有する分割型及び/又は分割型群の存在は排除されていない。換言すれば、素管の横断面における変曲点に対向する押圧面を有する分割型及び/又は分割型群が存在していてもよい。
【0040】
上記に加えて、第1方法においては、複数の分割型群を素管の外周面に当接させるタイミングに時間差を設けることにより、略矩形の横断面を有する素管の外周面における面剛性の差が大きい場合においても、低い面剛性を有する領域において座屈が生じたり横断面における変曲点に対応する部分に段差が生じたりする可能性を低減することができる。
【0041】
しかしながら、素管の外周面における面剛性の分布は、一般に、素管の横断面を構成する複数の曲線の配置に対応する。低い面剛性を有する領域において座屈が生じたり横断面における変曲点に対応する部分に段差が生じたりする可能性を低減する観点からは、素管の外周面における面剛性の分布に応じて複数の分割型群を素管の外周面に当接させるタイミングに時間差を設けることが好ましい。従って、素管の横断面を構成する複数の曲線の配置に合わせて複数の分割型群を配置することが好ましい。
【0042】
そこで、第2方法は、上述した第1方法であって、複数の分割型群の各々が素管の横断面を構成する曲線の各々に対応する素管の外周面の領域に対向していることを特徴とする、金属管の縮径方法である。換言すれば、第2方法においては、素管の横断面において隣接する曲線が繋がる点(変曲点)に対向する位置には、隣り合う分割型群の境界が存在する。これにより、素管の横断面を構成する複数の曲線に対応する素管の外周面の境域毎に分割型群を当接させるタイミングを設定することが容易となる。即ち、素管の外周面における面剛性の分布に応じて複数の分割型群を素管の外周面に当接させるタイミングに時間差を設けることが容易となる。
【0043】
図3の(a)は第2方法によって縮径される素管の横断面の一例を示す模式図であり、図1の(a)に例示した素管11と同じである。図3の(b)及び(c)は、第2方法の開始直前における複数の分割型及び素管の配置を例示する模式図である。図3に示す例においては、8つの分割型群(2つの分割型群21a、4つの分割型群21b及び2つの分割型群21c)が、素管11を軸周りに取り囲むように配置されており、隣り合う分割型群の境界が素管11の横断面における変曲点に対向する位置に存在する。即ち、複数の分割型群21a、21b及び21cの各々が素管11の横断面を構成する曲線12a、12b及び12cの各々に対応する素管11の外周面の領域に対向している。
【0044】
第2方法によれば、素管の横断面を構成する複数の曲線に対応する素管の外周面の境域毎に分割型群を当接させるタイミングを設定することが容易となる。即ち、素管の外周面における面剛性の分布に応じて複数の分割型群を素管の外周面に当接させるタイミングに時間差を設けることが容易となる。その結果、略矩形の横断面を有する素管の外周面における面剛性の差が大きい場合においても、低い面剛性を有する領域において座屈が生じたり横断面における変曲点に対応する部分に段差が生じたりする可能性をより確実に低減することができる。即ち、第2方法によれば、異なる曲率半径を有する3組以上の互いに対向する曲線によって構成される略矩形の横断面を有する金属製の素管を縮径させて円滑且つ正確な略矩形の横断面を有する筒状部材をより確実に製造することができる。
【0045】
《第3実施形態》
以下、図面を参照しながら本発明の第3実施形態に係る金属管の縮径方法(以降、「第3方法」と称呼される場合がある。)について説明する。
【0046】
前述したように、異なる曲率半径を有する3組以上の互いに対向する曲線によって構成される略矩形の横断面を有する素管においては、素管の外周面における面剛性の差が大きい場合がある。本発明者は、このような素管において最も低い面剛性を有する領域の押圧を先に開始した後により高い面剛性を有する領域の押圧を開始すると、最も低い面剛性を有する領域において座屈及び/又は段差等の意図せぬ変形が生ずる可能性が高くなる傾向を見出した。
【0047】
そこで、第3方法は、上述した第1方法又は第2方法であって、複数の分割型群のうち素管の外周面の最も低い面剛性を有する領域を押圧する分割型群を最後に素管の外周面に当接させることを特徴とする、金属管の縮径方法である。換言すれば、第3方法においては、複数の分割型群を素管の外周面に当接させるタイミングの中で、素管の外周面の最も低い面剛性を有する領域を押圧する分割型群を素管の外周面に当接させるタイミングが最も遅い。これによれば、最も低い面剛性を有する領域の押圧が開始された後により高い面剛性を有する領域の押圧が開始されることを回避して、最も低い面剛性を有する領域において意図せぬ変形等の問題が生ずる可能性を低減することができる。
【0048】
尚、第3方法において、素管の外周面の最も低い面剛性を有する領域を押圧する分割型群以外の分割型群を素管の外周面に当接させるタイミングについては、上記のような効果を達成することが可能である限り、特に限定されない。但し、より低い面剛性を有する領域において意図せぬ変形等の問題が生ずる可能性を低減する観点からは、複数の分割型群のうち素管の外周面の最も高い面剛性を有する領域を押圧する分割型群を最初に素管の外周面に当接させることが好ましい。
【0049】
そこで、好ましい態様に係る第3方法は、上記のように複数の分割型群のうち素管の外周面の最も低い面剛性を有する領域を押圧する分割型群を最後に素管の外周面に当接させることに加えて、複数の分割型群のうち素管の外周面の最も高い面剛性を有する領域を押圧する分割型群を最初に素管の外周面に当接させることを特徴とする、金属管の縮径方法である。換言すれば、好ましい態様に係る第3方法においては、複数の分割型群を素管の外周面に当接させるタイミングの中で、素管の外周面の最も低い面剛性を有する領域を押圧する分割型群を素管の外周面に当接させるタイミングが最も遅く、且つ、素管の外周面の最も高い面剛性を有する領域を押圧する分割型群を素管の外周面に当接させるタイミングが最も早い。
【0050】
好ましい態様に係る第3方法によれば、最も低い面剛性を有する領域の押圧が開始された後により高い面剛性を有する領域の押圧が開始されることを回避して最も低い面剛性を有する領域において座屈及び/又は段差等の意図せぬ変形が生ずる可能性のみならず、中間的な面剛性を有する領域の押圧が開始された後に最も高い面剛性を有する領域の押圧が開始されることを回避して中間的な面剛性を有する領域において座屈及び/又は段差等の意図せぬ変形が生ずる可能性をも低減することができる。
【0051】
尚、好ましい態様に係る第3方法において、素管の外周面の最も低い面剛性を有する領域を押圧する分割型群でも最も高い面剛性を有する領域を押圧する分割型群でもない(中間的な面剛性を有する領域を押圧する)分割型群を素管の外周面に当接させるタイミングについては、上述したような効果を達成することが可能である限り、特に限定されない。但し、より低い面剛性を有する領域において意図せぬ変形等の問題が生ずる可能性を低減する観点からは、素管の外周面において面剛性が最も高い領域から面剛性が最も低い領域へと、分割型群の押圧面が対向する素管の外周面の領域の面剛性の高い順に、素管の外周面に分割型群を当接させることが好ましい。
【0052】
そこで、より好ましい態様に係る第3方法は、複数の分割型群を素管の外周面に当接させるタイミングが、各々の分割型群が対向する素管の外周面の領域の面剛性の降順になっていることを特徴とする、金属管の縮径方法である。換言すれば、より好ましい態様に係る第3方法においては、素管の外周面において面剛性が最も高い領域から面剛性が最も低い領域へと、対向する素管の外周面の領域の面剛性の高い順に、素管の外周面に分割型群を当接させる。これによれば、より低い面剛性を有する領域の押圧が開始された後により高い面剛性を有する領域の押圧が開始されることを回避して、全ての領域において座屈及び/又は段差等の意図せぬ変形が生ずる可能性をより確実に低減することができる。
【0053】
図4は、第3方法における素管の縮径工程の一例を示す模式図である。図4の(a)は縮径工程の開始直前における複数の分割型及び素管の配置を示す。図4に例示する素管12は、異なる曲率半径を有する異なる3組以上の互いに対向する曲線からなる疑似的な矩形(略矩形)の横断面を有する。また、図4に示す例においては、8つの分割型群(2つの分割型群22a、4つの分割型群22b及び2つの分割型群22c)によって素管12の外周面を押圧して、素管12を縮径させる。尚、素管12の外周面においては、分割型群22aの押圧面に対向する領域の面剛性が最も高く、分割型群22bの押圧面に対向する領域の面剛性が次に高く、分割型群22cの押圧面に対向する領域の面剛性が最も低いものとする。また、図面を簡潔なものとするため、図4の(b)乃至(d)においては符号を省略する。
【0054】
図4に例示する素管12の縮径工程においては、(b)、(c)、(d)の順に、素管12の外周面の押圧処理が実行される。最初に実行される押圧処理を示す図4の(b)においては、3組の分割型群22a、22b及び22cのうちの分割型群22aにより、分割型群22aの押圧面に対向する素管12の外周面の領域が押圧される。上述したように分割型群22aの押圧面に対向する領域は、素管12の外周面において最も高い面剛性を有する領域である。即ち、図4に例示する素管12の縮径工程においては、素管12の外周面において最も高い面剛性を有する領域に分割型群22aが最初に当接し、当該領域を押圧する。従って、図4に例示する素管12の縮径工程は、上述した「好ましい態様に係る第3方法」に該当する。
【0055】
次に実行される押圧処理を示す図4の(c)においては、3組の分割型群22a、22b及び22cのうちの分割型群22bにより、分割型群22bの押圧面に対向する素管12の外周面の領域が押圧される。上述したように分割型群22bの押圧面に対向する領域は、素管12の外周面において中間的な面剛性を有する領域である。
【0056】
最後に実行される押圧処理を示す図4の(d)においては、3組の分割型群22a、22b及び22cのうちの分割型群22cにより、分割型群22cの押圧面に対向する領域が押圧される。上述したように分割型群22cの押圧面に対向する領域は、素管12の外周面において最も低い面剛性を有する領域である。即ち、図4に例示する素管12の縮径工程においては、素管12の外周面において最も低い面剛性を有する領域に分割型群22cが最後に当接し、当該領域を押圧する。従って、図4に例示する素管12の縮径工程は、上述した「第3方法」にも該当する。
【0057】
また、上記のように、図4の(b)、(c)、(d)へと素管12の縮径工程が進行するにつれて、素管12の外周面において分割型群22aの押圧面に対向する領域、分割型群22bの押圧面に対向する領域、分割型群22cの押圧面に対向する領域の順序にて、押圧処理が実行される。即ち、図4の(b)、(c)、(d)へと素管12の縮径工程が進行するにつれて、素管の外周面において面剛性が最も高い領域から面剛性が最も低い領域へと、素管の外周面の領域の面剛性の高い順に、素管の外周面に分割型群が当接し、各領域を押圧する。従って、図4に例示する素管12の縮径工程は、上述した「より好ましい態様に係る第3方法」にも該当する。
【0058】
図4に例示したように、第3方法によれば、より低い面剛性を有する領域の押圧が開始された後により高い面剛性を有する領域の押圧が開始されることを回避して、より低い面剛性を有する領域において座屈及び/又は段差等の意図せぬ変形が生ずる可能性を低減することができる。
【0059】
ところで、前述したように、複数の分割型群の少なくとも1つの分割型群が複数の分割型によって構成されている場合、当該分割型群を構成する全ての分割型を同時に素管の外周面に当接させてもよい。或いは、当該分割型群を構成する複数の分割型を素管の外周面に当接させるタイミングに時間差を設けてもよい。後者の場合、当該分割型群を構成する個々の分割型の押圧面が対向する素管の外周面の領域の面剛性に応じて、これらの分割型を素管の外周面に当接させるタイミングに時間差を設けてもよい。この場合、上述したようにより低い面剛性を有する領域の押圧が開始された後により高い面剛性を有する領域の押圧が開始されてより低い面剛性を有する領域において座屈及び/又は段差等の意図せぬ変形が生ずる可能性を低減する観点からは、個々の分割型の押圧面が対向する素管の外周面の領域の面剛性が高い順に、当該分割型群を構成する分割型を素管の外周面に当接させることが好ましい。
【0060】
そこで、もう1つの好ましい態様に係る第3方法は、複数の分割型からなる分割型群を素管の外周面に当接させるときに、素管の外周面に分割型を当接させるタイミングが、各々の分割型が対向する素管の外周面の領域の面剛性の降順になっていることを特徴とする、金属管の縮径方法である。
【0061】
図5は、上記もう1つの好ましい態様に係る第3方法における素管の縮径工程の一例を示す模式図である。図5の(a)に例示するように、この例に示す分割型群22cは、両端に位置する2つの分割型22c1と中央に位置する分割型22c2とによって構成されている。この点を除き、図5の(a)に例示する分割型群22cは、図4に例示した分割型群22cと同様の構成を有する。尚、以下の説明においては、分割型群22cの押圧面に対向する領域において、分割型22c1の押圧面に対向する領域の面剛性が分割型群22c2の押圧面に対向する領域の面剛性よりも高いものとする。尚、図面を簡潔なものとするため、図5の(d1)乃至(d2)においては符号を省略する。
【0062】
上記のように分割型群22cが複数の分割型22c1及び22c2によって構成されている場合、上述したように低い面剛性を有する領域において座屈及び/又は段差等の意図せぬ変形が生ずる可能性を低減する観点からは、個々の分割型22c1及び22c2の押圧面が対向する素管の外周面の領域の面剛性が高い順に、分割型22c1及び22c2を素管12の外周面に当接させることが好ましい。
【0063】
従って、図5に示す例においては、図4の(d)に例示した分割型群22cによる押圧処理が、図5の(d1)及び(d2)に例示するように、2段階に分けて実行される。先ず、図5の(d1)に示すように、より高い面剛性を有する領域に対向する分割型22c1が素管12の外周面に当接し押圧処理を開始する。次いで、図5の(d2)に示すように、より低い面剛性を有する領域に対向する分割型22c2が素管12の外周面に当接し押圧処理を開始する。
【0064】
上記のように、もう1つの好ましい態様に係る第3方法によれば、1つの分割型群の押圧面が対向する領域内においても、より低い面剛性を有する領域の押圧が開始された後により高い面剛性を有する領域の押圧が開始されることが回避される。その結果、より低い面剛性を有する領域において座屈及び/又は段差等の意図せぬ変形が生ずる可能性をより確実に低減することができる。
【0065】
《第4実施形態》
以下、図面を参照しながら本発明の第4実施形態に係る金属管の縮径方法(以降、「第4方法」と称呼される場合がある。)について説明する。
【0066】
前述したように、異なる曲率半径を有する3組以上の互いに対向する曲線によって構成される略矩形の横断面を有する素管においては、素管の外周面における面剛性の差が大きい場合がある。本発明者は、このような素管の横断面の短軸の端部に最も近い領域の押圧を先に開始した後に短軸の端部からより遠い領域の押圧を開始すると、短軸の端部に最も近い領域において座屈及び/又は段差等の意図せぬ変形が生ずる可能性が高くなる傾向を見出した。
【0067】
そこで、第4方法は、上述した第1方法又は第2方法であって、複数の分割型群のうち素管の横断面の短軸の端部に最も近い分割型群を最後に素管の外周面に当接させることを特徴とする、金属管の縮径方法である。換言すれば、第4方法においては、複数の分割型群を素管の外周面に当接させるタイミングの中で、素管の横断面の短軸の端部に最も近い分割型群を素管の外周面に当接させるタイミングが最も遅い。これによれば、素管の横断面の短軸の端部に最も近い領域の押圧が開始された後に短軸の端部からより遠い領域の押圧が開始されることを回避して、短軸の端部に最も近い領域において意図せぬ変形等の問題が生ずる可能性を低減することができる。
【0068】
尚、第4方法において、素管の横断面の短軸の端部に最も近い分割型群以外の分割型群を素管の外周面に当接させるタイミングについては、上記のような効果を達成することが可能である限り、特に限定されない。但し、短軸の端部に最も近い領域において意図せぬ変形等の問題が生ずる可能性を低減する観点からは、複数の分割型群のうち素管の横断面の長軸の端部に最も近い分割型群を最初に素管の外周面に当接させることが好ましい。
【0069】
そこで、好ましい態様に係る第4方法は、上記のように複数の分割型群のうち素管の横断面の短軸の端部に最も近い分割型群を最後に素管の外周面に当接させることに加えて、複数の分割型群のうち素管の横断面の長軸の端部に最も近い分割型群を最初に素管の外周面に当接させることを特徴とする、金属管の縮径方法である。換言すれば、好ましい態様に係る第4方法においては、複数の分割型群を素管の外周面に当接させるタイミングの中で、素管の横断面の短軸の端部に最も近い分割型群を素管の外周面に当接させるタイミングが最も遅く、且つ、素管の横断面の長軸の端部に最も近い分割型群を素管の外周面に当接させるタイミングが最も早い。
【0070】
好ましい態様に係る第4方法によれば、素管の横断面の短軸の端部に最も近い分割型群による押圧が開始された後に他の分割型群による押圧が開始されることを回避して素管の横断面の短軸の端部に最も近い分割型群によって押圧される領域において座屈及び/又は段差等の意図せぬ変形が生ずる可能性のみならず、他の分割型群による押圧が開始された後に素管の横断面の長軸の端部に最も近い分割型群による押圧が開始されることを回避して他の分割型群によって押圧される領域において座屈及び/又は段差等の意図せぬ変形が生ずる可能性をも低減することができる。
【0071】
尚、好ましい態様に係る第4方法において、素管の横断面の短軸の端部に最も近い分割型群でも素管の横断面の長軸の端部に最も近い分割型群でもない(これらの間に位置する)分割型群を素管の外周面に当接させるタイミングについては、上述したような効果を達成することが可能である限り、特に限定されない。但し、全ての領域において意図せぬ変形等の問題が生ずる可能性を低減する観点からは、素管の横断面の長軸の端部に最も近い分割型群から素管の横断面の短軸の端部に最も近い分割型群へと、素管の横断面の長軸の端部に近い順に、素管の外周面に分割型群を当接させることが好ましい。
【0072】
そこで、より好ましい態様に係る第4方法は、複数の分割型群を素管の外周面に当接させるタイミングが、各々の分割型群と長軸の端部との距離の昇順になっていることを特徴とする、金属管の縮径方法である。換言すれば、より好ましい態様に係る第4方法においては、素管の横断面の長軸の端部に最も近い分割型群から素管の横断面の短軸の端部に最も近い分割型群へと、素管の横断面の長軸の端部に近い順に、素管の外周面に分割型群を当接させる。これによれば、素管の横断面の短軸の端部により近い分割型群による押圧が開始された後に素管の横断面の長軸の端部により近い分割型群による押圧が開始されることを回避して、全ての領域において座屈及び/又は段差等の意図せぬ変形が生ずる可能性をより確実に低減することができる。
【0073】
図6は、第4方法における素管の縮径工程の一例を示す模式図である。図6の(a)は縮径工程の開始直前における複数の分割型及び素管の配置を示し、図6の(b)は縮径工程の終了時における複数の分割型及び素管の配置を示す。図6に例示する素管13には、略矩形の横断面の短軸DS及び長軸DLが太い両矢印によって示されている。また、図6に示す例においては、16個の分割型(2つの分割型23a、4つの分割型23b、4つの分割型23c、4つの分割型23d及び2つの分割型23e)によって素管13の外周面を押圧して、素管13を縮径させる。尚、図面を簡潔なものとするため、図6の(b)においては符号を省略する。
【0074】
図6に例示する素管13の縮径工程においては、16個の分割型23a乃至23eのうち素管13の横断面の長軸DLの端部(両矢印の先端)に最も近い分割型群23aが素管13の外周面に最初に当接し、押圧面に対向する領域の押圧を開始する。従って、図6に例示する素管13の縮径工程は、上述した「好ましい態様に係る第4方法」に該当する。その後、分割型23b、分割型23c及び分割型23dが、この順序にて素管13の外周面に当接し、各々の分割型の押圧面に対向する領域の押圧を開始する。最後に、16個の分割型23a乃至23eのうち素管13の横断面の短軸DSの端部(両矢印の先端)に最も近い分割型群23eが素管13の外周面に最初に当接し、押圧面に対向する領域の押圧を開始する。従って、図6に例示する素管13の縮径工程は、上述した「第4方法」にも該当する。
【0075】
また、図6に例示する素管13の縮径工程の全体としては、16個の分割型23a乃至23eのうち素管13の横断面の長軸DLの端部に最も近い分割型群23aから素管13の横断面の短軸DSの端部に最も近い分割型群23eへと、各々の分割型と長軸DLの端部との距離の昇順にて、素管13の外周面に分割型が当接し、各々の分割型の押圧面に対向する領域の押圧を開始する(図中の破線の矢印を参照)。従って、図4に例示する素管13の縮径工程は、上述した「より好ましい態様に係る第4方法」にも該当する。
【0076】
図6に例示したように、第4方法によれば、素管の横断面の短軸の端部により近い分割型群による押圧が開始された後に素管の横断面の長軸の端部により近い分割型群による押圧が開始されることを回避して、素管の横断面の短軸の端部により近い分割型群によって押圧される領域において座屈及び/又は段差等の意図せぬ変形が生ずる可能性を低減することができる。
【0077】
ところで、上記説明においては16個の分割型(2つの分割型23a、4つの分割型23b、4つの分割型23c、4つの分割型23d及び2つの分割型23e)の各々が分割型群として素管13の外周面に当接し、押圧面に対向する領域を押圧する場合について説明してきた。しかしながら、前述したように、複数の分割型群の少なくとも1つの分割型群が複数の分割型によって構成されていてもよい。この場合、当該分割型群を構成する全ての分割型を同時に素管の外周面に当接させてもよく、或いは、当該分割型群を構成する複数の分割型を素管の外周面に当接させるタイミングに時間差を設けてもよい。
【0078】
後者の場合において、分割型群を構成する個々の分割型と素管の横断面の長軸の端部との距離に応じて、これらの分割型を素管の外周面に当接させるタイミングに時間差を設けてもよい。この場合、素管の横断面の短軸の端部により近い分割型による押圧が開始された後に素管の横断面の長軸の端部により近い分割型による押圧が開始されて素管の横断面の短軸の端部により近い分割型群によって押圧される領域において座屈及び/又は段差等の意図せぬ変形が生ずる可能性を低減する観点からは、素管の横断面の長軸の端部に近い順に、当該分割型群を構成する分割型を素管の外周面に当接させることが好ましい。
【0079】
そこで、もう1つの好ましい態様に係る第4方法は、複数の分割型からなる分割型群を素管の外周面に当接させるときに、素管の外周面に分割型を当接させるタイミングが、各々の分割型と長軸の端部との距離の昇順になっていることを特徴とする、金属管の縮径方法である。
【0080】
例えば、図6の(a)に例示した16個の分割型のうち、分割型23eとその両隣に位置する分割型23dとが1つの分割型群を形成している場合、当該分割型群を素管13の外周面に当接させるときには、素管13の横断面の長軸DLの端部により近い分割型である分割型23dを先に素管13の外周面に当接させ、素管13の横断面の長軸DLの端部からより遠い(即ち、短軸DSの端部により近い)分割型である分割型23eを後に素管13の外周面に当接させる。
【0081】
上記のように、もう1つの好ましい態様に係る第4方法によれば、1つの分割型群の押圧面が対向する領域内においても、素管の横断面の短軸の端部により近い分割型による押圧が開始された後に素管の横断面の長軸の端部により近い分割型による押圧が開始されることが回避される。その結果、素管の横断面の長軸の端部からより遠い(即ち、短軸の端部により近い)分割型によって押圧される領域において座屈及び/又は段差等の意図せぬ変形が生ずる可能性をより確実に低減することができる。
【0082】
《第5実施形態》
以下、図面を参照しながら本発明の第5実施形態に係る金属管の縮径方法(以降、「第5方法」と称呼される場合がある。)について説明する。
【0083】
前述したように、第2方法においては、素管の横断面において隣接する曲線が繋がる点(変曲点)に対向する位置には、隣り合う分割型群の境界が存在する。即ち、複数の分割型群の各々が素管の横断面を構成する曲線の各々に対応する素管の外周面の領域に対向している。これにより、素管の横断面を構成する複数の曲線に対応する素管の外周面の境域毎に分割型群を当接させるタイミングを設定することが容易となる。即ち、素管の外周面における面剛性の分布に応じて複数の分割型群を素管の外周面に当接させるタイミングに時間差を設けることが容易となる。
【0084】
本発明者は、上記のように複数の分割型群の各々が素管の横断面を構成する曲線の各々に対応する素管の外周面の領域に対向している場合、素管の横断面を構成する曲線のうち最も長い曲線に対応する領域を押圧する分割型群を最後に素管の外周面に当接させることにより、当該領域において座屈及び/又は段差等の意図せぬ変形が生ずる可能性を低減することができることを見出した。
【0085】
そこで、第5方法は、上述した第2方法であって、複数の分割型群のうち素管の横断面を構成する曲線のうち最も長い曲線に対応する素管の外周面の領域を押圧する分割型群を最後に素管の外周面に当接させることを特徴とする、金属管の縮径方法である。換言すれば、第5方法においては、複数の分割型群を素管の外周面に当接させるタイミングの中で、素管の横断面を構成する曲線のうち最も長い曲線に対応する素管の外周面の領域を押圧する分割型群を素管の外周面に当接させるタイミングが最も遅い。これによれば、最も長い曲線に対応する領域の押圧が開始された後により短い曲線に対応する領域の押圧が開始されることを回避して、最も長い曲線に対応する素管の外周面の領域において意図せぬ変形等の問題が生ずる可能性を低減することができる。ここでいう「曲線の長さ」は、素管の横断面を構成する曲線の実際の長さであってもよく、或いは、素管の横断面を構成する曲線を円弧と見做した場合における弧若しくは弦の長さであってもよい。
【0086】
尚、第5方法において、素管の横断面を構成する曲線のうち最も長い曲線に対応する素管の外周面の領域を押圧する分割型群以外の分割型群を素管の外周面に当接させるタイミングについては、上記のような効果を達成することが可能である限り、特に限定されない。但し、素管の横断面を構成する曲線のうち最も長い曲線に対応する素管の外周面の領域において意図せぬ変形等の問題が生ずる可能性を低減する観点からは、素管の横断面を構成する曲線のうち最も短い曲線に対応する素管の外周面の領域を押圧する分割型群を最初に素管の外周面に当接させることが好ましい。
【0087】
そこで、好ましい態様に係る第5方法は、上記のように複数の分割型群のうち素管の横断面を構成する曲線のうち最も長い曲線に対応する素管の外周面の領域を押圧する分割型群を最後に素管の外周面に当接させることに加えて、複数の分割型群のうち素管の横断面を構成する曲線のうち最も短い曲線に対応する素管の外周面の領域を押圧する分割型群を最初に素管の外周面に当接させることを特徴とする、金属管の縮径方法である。換言すれば、好ましい態様に係る第5方法においては、複数の分割型群を素管の外周面に当接させるタイミングの中で、素管の横断面を構成する曲線のうち最も長い曲線に対応する素管の外周面の領域に分割型群を当接させるタイミングが最も遅く、且つ、素管の横断面を構成する曲線のうち最も短い曲線に対応する素管の外周面の領域に分割型群を当接させるタイミングが最も早い。
【0088】
好ましい態様に係る第5方法によれば、素管の横断面を構成する曲線のうち最も長い曲線に対応する領域の押圧が開始された後に他の領域の押圧が開始されることを回避して、素管の横断面を構成する曲線のうち最も長い曲線に対応する素管の外周面の領域において座屈及び/又は段差等の意図せぬ変形が生ずる可能性を低減することができる。これに加えて、他の領域の押圧が開始された後に素管の横断面を構成する曲線のうち最も短い曲線に対応する素管の外周面の領域の押圧が開始されることを回避して、他の領域において座屈及び/又は段差等の意図せぬ変形が生ずる可能性をも低減することができる。
【0089】
尚、好ましい態様に係る第5方法において、素管の横断面を構成する曲線のうち最も長い曲線に対応する素管の外周面の領域でも最も短い曲線に対応する素管の外周面の領域でもない素管の外周面の領域に分割型群を当接させるタイミングについては、上述したような効果を達成することが可能である限り、特に限定されない。但し、全ての領域において意図せぬ変形等の問題が生ずる可能性を低減する観点からは、素管の横断面を構成する曲線のうち最も短い曲線に対応する素管の外周面の領域から最も長い曲線に対応する素管の外周面の領域へと、素管の横断面を構成する曲線の長さが短い順に、分割型群を当接させることが好ましい。
【0090】
そこで、より好ましい態様に係る第5方法は、複数の分割型群を素管の外周面に当接させるタイミングが、各々の分割型群が対向する素管の外周面の領域に対応する素管の横断面を構成する曲線の長さの昇順になっていることを特徴とする、金属管の縮径方法である。換言すれば、より好ましい態様に係る第5方法においては、素管の横断面を構成する曲線のうち最も短い曲線に対応する素管の外周面の領域から最も長い曲線に対応する素管の外周面の領域へと、素管の横断面を構成する曲線の長さが短い順に、分割型群を当接させる。これによれば、素管の横断面を構成する曲線がより長い領域の押圧が開始された後に素管の横断面を構成する曲線がより短い領域の押圧が開始されることを回避して、全ての領域において座屈及び/又は段差等の意図せぬ変形が生ずる可能性をより確実に低減することができる。
【0091】
図7は、第5方法における素管の縮径工程の一例を示す模式図である。図7の(a)は縮径工程の開始直前における複数の分割型及び素管の配置を示す。図7に例示する素管14は、異なる曲率半径及び長さを有する異なる3組以上の互いに対向する曲線からなる略矩形の横断面を有する。また、図7に示す例においては、8つの分割型群(2つの分割型群24a、4つの分割型群24b及び2つの分割型群24c)によって素管14の外周面を押圧して、素管14を縮径させる。尚、素管14においては、横断面を構成する3組の曲線のうち、分割型群24aの押圧面に対向する領域に対応する曲線が最も短く、分割型群24bの押圧面に対向する領域に対応する曲線が次に短く、分割型群24cの押圧面に対向する領域に対応する曲線が最も長いものとする。尚、図面を簡潔なものとするため、図7の(b)乃至(d)においては符号を省略する。
【0092】
図7に例示する素管14の縮径工程においては、(b)、(c)、(d)の順に、素管14の外周面の押圧処理が実行される。最初に実行される押圧処理を示す図7の(b)においては、3組の分割型群24a、24b及び24cのうちの分割型群24aにより、分割型群24aの押圧面に対向する素管14の外周面の領域が押圧される。上述したように分割型群24aの押圧面に対向する領域は、素管14の横断面を構成する3組の曲線のうち最も短い曲線に対応する領域である。即ち、図7に例示する素管14の縮径工程においては、素管14の横断面を構成する曲線のうち最も短い曲線に対応する素管14の外周面の領域に分割型群24aが最初に当接し、当該領域を押圧する。従って、図7に例示する素管14の縮径工程は、上述した「好ましい態様に係る第5方法」に該当する。
【0093】
次に実行される押圧処理を示す図7の(c)においては、3組の分割型群24a、24b及び24cのうちの分割型群24bにより、分割型群24bの押圧面に対向する素管14の外周面の領域が押圧される。上述したように分割型群24bの押圧面に対向する領域は、素管14の横断面を構成する3組の曲線のうち中間的な長さを有する曲線に対応する領域である。
【0094】
最後に実行される押圧処理を示す図7の(d)においては、3組の分割型群24a、24b及び24cのうちの分割型群24cにより、分割型群24cの押圧面に対向する領域が押圧される。上述したように分割型群24cの押圧面に対向する領域は、素管14の横断面を構成する3組の曲線のうち最も長い曲線に対応する領域である。即ち、図7に例示する素管14の縮径工程においては、素管14の横断面を構成する曲線のうち最も長い曲線に対応する素管14の外周面の領域に分割型群24cが最後に当接し、当該領域を押圧する。従って、図7に例示する素管14の縮径工程は、上述した「第5方法」にも該当する。
【0095】
また、上記のように、図7の(b)、(c)、(d)へと素管14の縮径工程が進行するにつれて、素管14の外周面において分割型群24aの押圧面に対向する領域、分割型群24bの押圧面に対向する領域、分割型群24cの押圧面に対向する領域の順序にて、押圧処理が実行される。即ち、図7の(b)、(c)、(d)へと素管14の縮径工程が進行するにつれて、素管14の横断面を構成する曲線のうち最も短い曲線に対応する素管14の外周面の領域から素管14の横断面を構成する曲線のうち最も長い曲線に対応する素管14の外周面の領域へと、素管14の横断面を構成する曲線の長さが短い順に、素管14の外周面に分割型群24a、24b及び24cがそれぞれ当接し、各領域を押圧する。従って、図7に例示する素管14の縮径工程は、上述した「より好ましい態様に係る第5方法」にも該当する。
【0096】
図7に例示したように、第5方法によれば、素管の横断面を構成する曲線がより長い領域の押圧が開始された後に素管の横断面を構成する曲線がより短い領域の押圧が開始されることを回避して、素管の横断面を構成する曲線がより長い領域において座屈及び/又は段差等の意図せぬ変形が生ずる可能性を低減することができる。
【0097】
《第6実施形態》
以下、図面を参照しながら本発明の第6実施形態に係る金属管の縮径方法(以降、「第6方法」と称呼される場合がある。)について説明する。
【0098】
本発明者は、前述した第2方法のように複数の分割型群の各々が素管の横断面を構成する曲線の各々に対応する素管の外周面の領域に対向している場合、複数の分割型群のうち素管の横断面を構成する曲線のうち最も大きい曲率半径を有する曲線に対応する素管の外周面の領域を押圧する分割型群を最後に素管の外周面に当接させることにより、最も大きい曲率半径を有する曲線に対応する素管の外周面の領域において座屈及び/又は段差等の意図せぬ変形が生ずる可能性を低減することができることを見出した。
【0099】
そこで、第6方法は、上述した第2方法であって、複数の分割型群のうち素管の横断面を構成する曲線のうち最も大きい曲率半径を有する曲線に対応する素管の外周面の領域を押圧する分割型群を最後に素管の外周面に当接させることを特徴とする、金属管の縮径方法である。換言すれば、第6方法においては、複数の分割型群を素管の外周面に当接させるタイミングの中で、素管の横断面を構成する曲線のうち最も大きい曲率半径を有する曲線に対応する素管の外周面の領域を押圧する分割型群を素管の外周面に当接させるタイミングが最も遅い。これによれば、最も大きい曲率半径を有する曲線に対応する領域の押圧が開始された後により小さい曲率半径を有する曲線に対応する領域の押圧が開始されることを回避して、最も大きい曲率半径を有する曲線に対応する素管の外周面の領域において意図せぬ変形等の問題が生ずる可能性を低減することができる。ここでいう「曲率半径」は、必ずしも素管の横断面を構成する曲線の厳密な意味での曲率半径である必要は無く、例えば素管の横断面を構成する曲線を円弧と見做した場合における曲率半径であってもよい。
【0100】
尚、第6方法において、素管の横断面を構成する曲線のうち最も大きい曲率半径を有する曲線に対応する素管の外周面の領域を押圧する分割型群以外の分割型群を素管の外周面に当接させるタイミングについては、上記のような効果を達成することが可能である限り、特に限定されない。但し、素管の横断面を構成する曲線のうち最も大きい曲率半径を有する曲線に対応する素管の外周面の領域において意図せぬ変形等の問題が生ずる可能性を低減する観点からは、素管の横断面を構成する曲線のうち最も小さい曲率半径を有する曲線に対応する素管の外周面の領域を押圧する分割型群を最初に素管の外周面に当接させることが好ましい。
【0101】
そこで、好ましい態様に係る第6方法は、上記のように複数の分割型群のうち素管の横断面を構成する曲線のうち最も大きい曲率半径を有する曲線に対応する素管の外周面の領域を押圧する分割型群を最後に素管の外周面に当接させることに加えて、複数の分割型群のうち素管の横断面を構成する曲線のうち最も小さい曲率半径を有する曲線に対応する素管の外周面の領域を押圧する分割型群を最初に素管の外周面に当接させることを特徴とする、金属管の縮径方法である。換言すれば、好ましい態様に係る第6方法においては、複数の分割型群を素管の外周面に当接させるタイミングの中で、素管の横断面を構成する曲線のうち最も大きい曲率半径を有する曲線に対応する素管の外周面の領域に分割型群を当接させるタイミングが最も遅く、且つ、素管の横断面を構成する曲線のうち最も小さい曲率半径を有する曲線に対応する素管の外周面の領域に分割型群を当接させるタイミングが最も早い。
【0102】
好ましい態様に係る第6方法によれば、素管の横断面を構成する曲線のうち最も大きい曲率半径を有する曲線に対応する領域の押圧が開始された後に他の領域の押圧が開始されることを回避して、素管の横断面を構成する曲線のうち最も大きい曲率半径を有する曲線に対応する素管の外周面の領域において座屈及び/又は段差等の意図せぬ変形が生ずる可能性を低減することができる。これに加えて、他の領域の押圧が開始された後に素管の横断面を構成する曲線のうち最も小さい曲率半径を有する曲線に対応する素管の外周面の領域の押圧が開始されることを回避して、他の領域において座屈及び/又は段差等の意図せぬ変形が生ずる可能性をも低減することができる。
【0103】
尚、好ましい態様に係る第6方法において、素管の横断面を構成する曲線のうち最も大きい曲率半径を有する曲線に対応する素管の外周面の領域でも最も小さい曲率半径を有する曲線に対応する素管の外周面の領域でもない素管の外周面の領域に分割型群を当接させるタイミングについては、上述したような効果を達成することが可能である限り、特に限定されない。但し、全ての領域において意図せぬ変形等の問題が生ずる可能性を低減する観点からは、素管の横断面を構成する曲線のうち最も小さい曲率半径を有する曲線に対応する素管の外周面の領域から最も大きい曲率半径を有する曲線に対応する素管の外周面の領域へと、素管の横断面を構成する曲線の曲率半径が小さい順に、分割型群を当接させることが好ましい。
【0104】
そこで、より好ましい態様に係る第6方法は、複数の分割型群を素管の外周面に当接させるタイミングが、各々の分割型群が対向する素管の外周面の領域に対応する素管の横断面を構成する曲線の曲率半径の大きさの昇順になっていることを特徴とする、金属管の縮径方法である。換言すれば、より好ましい態様に係る第6方法においては、素管の横断面を構成する曲線のうち最も小さい曲率半径を有する曲線に対応する素管の外周面の領域から最も長い曲線に対応する素管の外周面の領域へと、素管の横断面を構成する曲線の曲率半径が小さい順に、分割型群を当接させる。これによれば、素管の横断面を構成する曲線の曲率半径がより大きい領域の押圧が開始された後に素管の横断面を構成する曲線の曲率半径がより小さい領域の押圧が開始されることを回避して、全ての領域において座屈及び/又は段差等の意図せぬ変形が生ずる可能性をより確実に低減することができる。
【0105】
図8は、第6方法における素管の縮径工程の一例を示す模式図である。図8の(a)は縮径工程の開始直前における複数の分割型及び素管の配置を示す。図8に例示する素管15は、異なる曲率半径を有する異なる3組の互いに対向する曲線からなる略矩形の横断面を有する。また、図8に示す例においては、16個の分割型群(4つの分割型群25a、8つの分割型群25b及び4つの分割型群25c)によって素管15の外周面を押圧して、素管15を縮径させる。尚、素管15においては、横断面を構成する3組の曲線のうち、分割型群25aの押圧面に対向する領域に対応する曲線の曲率半径が最も小さく、分割型群25bの押圧面に対向する領域に対応する曲線の曲率半径が次に小さく、分割型群25cの押圧面に対向する領域に対応する曲線の曲率半径が最も大きいものとする。尚、図面を簡潔なものとするため、図8の(b)乃至(d)においては符号を省略する。
【0106】
図8に例示する素管15の縮径工程においては、(b)、(c)、(d)の順に、素管15の外周面の押圧処理が実行される。最初に実行される押圧処理を示す図8の(b)においては、3組の分割型群25a、25b及び25cのうちの分割型群25aにより、分割型群25aの押圧面に対向する素管15の外周面の領域が押圧される。上述したように分割型群25aの押圧面に対向する領域は、素管15の横断面を構成する3組の曲線のうち最も小さい曲率半径を有する曲線に対応する領域である。即ち、図8に例示する素管15の縮径工程においては、素管15の横断面を構成する曲線のうち最も小さい曲率半径を有する曲線に対応する素管15の外周面の領域に分割型群25aが最初に当接し、当該領域を押圧する。従って、図8に例示する素管15の縮径工程は、上述した「好ましい態様に係る第6方法」に該当する。
【0107】
次に実行される押圧処理を示す図8の(c)においては、3組の分割型群25a、25b及び25cのうちの分割型群25bにより、分割型群25bの押圧面に対向する素管15の外周面の領域が押圧される。上述したように分割型群25bの押圧面に対向する領域は、素管15の横断面を構成する3組の曲線のうち中間的な大きさの曲率半径を有する曲線に対応する領域である。
【0108】
最後に実行される押圧処理を示す図8の(d)においては、3組の分割型群25a、25b及び25cのうちの分割型群25cにより、分割型群25cの押圧面に対向する領域が押圧される。上述したように分割型群25cの押圧面に対向する領域は、素管15の横断面を構成する3組の曲線のうち最も大きい曲率半径を有する曲線に対応する領域である。即ち、図8に例示する素管15の縮径工程においては、素管15の横断面を構成する曲線のうち最も大きい共立半径を有する曲線に対応する素管15の外周面の領域に分割型群25cが最後に当接し、当該領域を押圧する。従って、図8に例示する素管15の縮径工程は、上述した「第6方法」にも該当する。
【0109】
また、上記のように、図8の(b)、(c)、(d)へと素管15の縮径工程が進行するにつれて、素管15の外周面において分割型群25aの押圧面に対向する領域、分割型群25bの押圧面に対向する領域、分割型群25cの押圧面に対向する領域の順序にて、押圧処理が実行される。即ち、図8の(b)、(c)、(d)へと素管15の縮径工程が進行するにつれて、素管15の横断面を構成する曲線のうち最も小さい曲率半径を有する曲線に対応する領域から最も大きい曲率半径を有する曲線に対応する領域へと、素管15の横断面を構成する曲線の曲率半径が小さい順に、素管15の外周面に分割型群25a、25b及び25cがそれぞれ当接し、各領域を押圧する。従って、図8に例示する素管15の縮径工程は、上述した「より好ましい態様に係る第6方法」にも該当する。
【0110】
図8に例示したように、第6方法によれば、素管の横断面を構成する曲線がより大きい曲率半径を有する領域の押圧が開始された後に素管の横断面を構成する曲線がより小さい曲率半径を有する領域の押圧が開始されることを回避して、素管の横断面を構成する曲線の曲率半径がより大きい領域において座屈及び/又は段差等の意図せぬ変形が生ずる可能性を低減することができる。
【0111】
《第7実施形態》
以下、本発明の第7実施形態に係る金属管の縮径方法(以降、「第7方法」と称呼される場合がある。)について説明する。
【0112】
上述したように、第1方法乃至第6方法を始めとする本発明に係る金属管の縮径方法(本発明方法)は、略矩形の横断面を有する金属製の素管の軸周りに素管を取り囲むように配置された複数の分割型によって素管の外周面を押圧することにより素管を縮径させる、金属管の縮径方法である。
【0113】
本発明方法において複数の分割型によって素管の外周面を押圧する方向については、これまでに説明してきたような効果を達成することが可能である限り、特に限定されない。例えば、個々の分割型群において当該分割型群を構成する分割型の押圧面又は当該押圧面によって押圧される素管の領域の曲率半径に対応する中心に向かって素管の外周面を押圧してもよい。しかしながら、このように分割型群の各々について分割型の押圧方向を設定する場合、各々の分割型群について独立した移動制御が必要となり、制御系及び押圧機構が複雑になる場合がある。
【0114】
そこで、第7方法は、上述した第1方法乃至第6方法を始めとする本発明に係る金属管の縮径方法(本発明方法)であって、複数の分割型が素管の中心軸に向かって素管の外周面を押圧することを特徴とする、金属管の縮径方法である。
【0115】
図9は、第7方法における複数の分割型の移動方向(素管の外周面を押圧する方向)について説明するための模式図である。図9の(a)は第7方法によって縮径される素管の横断面の一例を示す模式図であり、図9の(b)は第7方法の開始直前における複数の分割型及び素管の配置の一例を示す模式図である。図9の(a)及び(b)は、前述した第1方法に関する説明において参照した図1の(a)及び(b)にそれぞれ対応する。
【0116】
図9に例示するように、素管11の中心軸に直交する平面による横断面において個々の分割型21a、21b及び21cは概ね線対称な形状を有しており、線対称であると見做した場合における個々の分割型の対称軸(一点鎖線)は分割型の移動方向(太い実線の矢印)に平行である。更に、複数の分割型21a、21b及び21cの対称軸の延長線は素管11の中心軸AX(白抜きの丸印)において交わっている。即ち、第7方法は、複数の分割型が素管の中心軸に向かって素管の外周面を押圧するように構成されている。
【0117】
第7方法によれば、上述した分割型群の各々について分割型の押圧方向を設定する場合のように各々の分割型群について独立した移動制御を必要とすること無く、制御系及び押圧機構を簡素化することができる。また、複数の分割型を円滑に動作させる観点からも、複数の分割型が素管の中心軸に向かって素管の外周面を押圧する第7方法は好適である。
【0118】
但し、第7方法は、本発明に係る金属管の縮径方法(本発明方法)に含まれる多種多様な態様の中の一例に過ぎない。即ち、本発明方法において、必ずしも第7方法の構成要件の全てが満たされている必要は無い。例えば、素管の中心軸に直交する平面による横断面における形状が線対称ではない分割型が存在していてもよい。また、素管の中心軸に直交する平面による横断面において概ね線対称な形状を有する分割型の中で、その対称軸が分割型の移動方向に平行ではない分割型が存在していてもよい。更に、素管の中心軸に直交する平面による横断面において概ね線対称な形状を有する分割型の中で、その対称軸の延長線が素管の中心軸に交わらない分割型が存在していてもよい。加えて、素管の中心軸に直交する平面による横断面において概ね線対称な形状を有する分割型の中で、その対称軸が分割型の移動方向に平行であり且つ対称軸の延長線が素管の中心軸に交わらない分割型が存在していてもよい。
【実施例1】
【0119】
以上のように説明してきた第1方法乃至第7方法を始めとする本発明に係る金属管の縮径方法(本発明方法)の1つの実施例につき、以下に図面を参照しながら説明する。但し、以下に説明する各種実施例は例示に過ぎない。
【0120】
図10は、本発明の実施例1に係る金属管の縮径方法(以降、「実施例方法1」と称呼される場合がある。)の開始直前における複数の分割型及び素管の配置を示す模式図である。図10に示すように、8つの分割型群(2つの分割型群26a、4つの分割型群26b及び2つの分割型群26c)が軸周りに素管16を取り囲むように配置されており、分割型群26a、26b及び26cはそれぞれ1つの分割型によって構成されている。実施例方法1においては、図10に示した8つの分割型群によって素管16の外周面が押圧され、素管16が縮径される。尚、素管16の外周面において、分割型群26aの押圧面に対向する領域の面剛性が最も高く、分割型群26bの押圧面に対向する領域の面剛性が次に高く、分割型群26cの押圧面に対向する領域の面剛性が最も低いものとする。
【0121】
図11乃至図19は、実施例方法1において個々の分割型群によって実行される押圧処理における分割型群の動きを示す模式図である。尚、図11乃至図19においては、図面を簡潔なものとするため、分割型及び素管の符号が省略されている。
【0122】
実施例方法1においては、先ず、図11に示すように、分割型群26a乃至26cのうち素管16の外周面において最も高い面剛性を有する領域に対向する分割型群26aが素管16の外周面に最初に当接し、押圧面に対向する領域の押圧を開始する。次に、図12に示すように、残る分割型群26b及び26cのうち素管16の外周面において中間的な面剛性を有する領域に対向する分割型群26bが素管16の外周面に当接し、押圧面に対向する領域の押圧を開始する。次に、図13に示すように、分割型群26a乃至26cのうち素管16の外周面において最も低い面剛性を有する領域に対向する分割型群26cが素管16の外周面に当接し、押圧面に対向する領域の押圧を開始する。このように、実施例方法1においては、図11図12図13へと素管16の縮径工程が進行するにつれて、素管16の外周面において面剛性が最も高い領域から面剛性が最も低い領域へと、素管16の外周面の領域の面剛性の高い順に、素管の外周面に分割型群が当接し、各領域を押圧する。従って、図11乃至図13に例示した実施例方法1における素管16の縮径工程は、前述した「より好ましい態様に係る第3方法」に該当する。
【0123】
尚、実施例方法1においては、図14乃至図19に示すように、上述した図11乃至図13に例示したものと同様の一連の押圧処理を、更に2回繰り返し実行することにより、素管16の横断面を徐々に目標とする横断面に近付けている。
【0124】
図10乃至図19を参照しながら上述したように、実施例方法1においては、より低い面剛性を有する領域の押圧が開始された後により高い面剛性を有する領域の押圧が開始されることを回避して、より低い面剛性を有する領域において座屈及び/又は段差等の意図せぬ変形が生ずる可能性を低減することができる。その結果、実施例方法1によれば、異なる曲率半径を有する3組以上の互いに対向する曲線によって構成される略矩形の横断面を有する金属製の素管を縮径させて円滑且つ正確な略矩形の横断面を有する筒状部材を製造することができる。
【実施例2】
【0125】
本発明方法のもう1つの実施例につき、以下に図面を参照しながら説明する。図20は、本発明の実施例2に係る金属管の縮径方法(以降、「実施例方法2」と称呼される場合がある。)の開始直前における複数の分割型及び素管の配置を示す模式図であり、略矩形の横断面の短軸DS及び長軸DLが太い両矢印によって示されている。
【0126】
図20に示す例においては、12個の分割型群(2つの分割型群27a、4つの分割型群27b、4つの分割型群27c及び2つの分割型群27d)が、軸周りに素管17を取り囲むように配置されている。即ち、複数の分割型群27a、27b、27c及び27dは、それぞれ1つの分割型によって構成されている。実施例方法2においては、図20に示した12個の分割型群によって素管17の外周面が押圧され、素管17が縮径される。図21乃至図32は、実施例方法2において個々の分割型群によって実行される押圧処理における分割型群の動きを示す模式図である。尚、図面を簡潔なものとするため、図21乃至図32においては分割型及び素管の符号を省略する。
【0127】
実施例方法2においては、先ず、図21に示すように、分割型27a乃至27dのうち素管17の横断面の長軸DLの端部(両矢印の先端)に最も近い分割型群27aが素管17の外周面に最初に当接し、押圧面に対向する領域の押圧を開始する。次に、図22に示すように、残る分割型27b乃至27dのうち素管17の横断面の長軸DLの端部により近い分割型27bが素管17の外周面に当接し、押圧面に対向する領域の押圧を開始する。次に、図23に示すように、残る分割型27c及び27dのうち素管17の横断面の長軸DLの端部により近い分割型27cが素管17の外周面に当接し、押圧面に対向する領域の押圧を開始する。次に、図24に示すように、分割型27a乃至27dのうち素管17の横断面の長軸DLの端部から最も遠い、即ち素管17の横断面の短軸DSの端部(両矢印の先端)に最も近い分割型27dが素管17の外周面に当接し、押圧面に対向する領域の押圧を開始する。このように、実施例方法2においては、4種類の分割型27a乃至27dを素管17の外周面に当接させるタイミングが、各々の分割型群と長軸DLの端部との距離の昇順になっている。従って、図20乃至図24に例示する素管17の縮径工程は、前述した「より好ましい態様に係る第4方法」に該当する。
【0128】
尚、実施例方法1においては、図25乃至図32に示すように、上述した図21乃至図24に例示したものと同様の一連の押圧処理を、更に2回繰り返し実行することにより、素管17の横断面を徐々に目標とする横断面に近付けている。
【0129】
図20乃至図32を参照しながら上述したように、実施例方法2においては、素管の横断面の短軸の端部により近い分割型群による押圧が開始された後に素管の横断面の長軸の端部により近い分割型群による押圧が開始されることを回避して、素管の横断面の短軸の端部により近い分割型群によって押圧される領域において座屈及び/又は段差等の意図せぬ変形が生ずる可能性を低減することができる。その結果、実施例方法2によれば、異なる曲率半径を有する3組以上の互いに対向する曲線によって構成される略矩形の横断面を有する金属製の素管を縮径させて円滑且つ正確な略矩形の横断面を有する筒状部材を製造することができる。
【実施例3】
【0130】
本発明方法の更にもう1つの実施例につき、以下に図面を参照しながら説明する。図33は、本発明の実施例3に係る金属管の縮径方法(以降、「実施例方法3」と称呼される場合がある。)の開始直前における複数の分割型及び素管の配置を示す模式図である。図33に例示する素管18は、異なる曲率半径を有する異なる3組の互いに対向する曲線からなる略矩形の横断面を有する。また、図33に示す例においては、16個の分割型群(4つの分割型群28a、8つの分割型群28b及び4つの分割型群28c)によって素管18の外周面を押圧して、素管18を縮径させる。尚、素管18においては、横断面を構成する3組の曲線のうち、分割型群28aの押圧面に対向する領域に対応する曲線の曲率半径が最も小さく、分割型群28bの押圧面に対向する領域に対応する曲線の曲率半径が次に小さく、分割型群28cの押圧面に対向する領域に対応する曲線の曲率半径が最も大きい。図34乃至図42は、実施例方法3において個々の分割型群によって実行される押圧処理における分割型群の動きを示す模式図である。尚、図面を簡潔なものとするため、図34乃至図42においては符号を省略する。
【0131】
実施例方法3においては、先ず、図34に示すように、素管18の横断面を構成する曲線のうち最も小さい曲率半径を有する曲線に対応する領域に分割型群28aが当接し、押圧面に対向する領域の押圧を開始する。次に、図35に示すように、素管18の横断面を構成する曲線のうち中間的な曲率半径を有する曲線に対応する領域に分割型群28bが当接し、押圧面に対向する領域の押圧を開始する。次に、図36に示すように、素管18の横断面を構成する曲線のうち最も大きい曲率半径を有する曲線に対応する領域に分割型群28cが当接し、押圧面に対向する領域の押圧を開始する。このように、実施例方法3においては、3種類の分割型28a乃至28cを素管18の外周面に当接させるタイミングが、各々の分割型群が対向する素管18の外周面の領域に対応する素管18の横断面を構成する曲線の曲率半径の大きさの昇順になっている。従って、図33乃至図36に例示する素管18の縮径工程は、前述した「より好ましい態様に係る第6方法」に該当する。
【0132】
尚、実施例方法2においては、図37乃至図42に示すように、上述した図34乃至図36に例示したものと同様の一連の押圧処理を、更に2回繰り返し実行することにより、素管18の横断面を徐々に目標とする横断面に近付けている。
【0133】
図33乃至図42を参照しながら上述したように、実施例方法3においては、素管の横断面を構成する曲線がより大きい曲率半径を有する領域の押圧が開始された後に素管の横断面を構成する曲線がより小さい曲率半径を有する領域の押圧が開始されることを回避して、素管の横断面を構成する曲線の曲率半径がより大きい領域において座屈及び/又は段差等の意図せぬ変形が生ずる可能性を低減することができる。その結果、実施例方法3によれば、異なる曲率半径を有する3組以上の互いに対向する曲線によって構成される略矩形の横断面を有する金属製の素管を縮径させて円滑且つ正確な略矩形の横断面を有する筒状部材を製造することができる。
【0134】
以上、本発明を説明することを目的として、特定の構成を有する幾つかの実施形態及び実施例につき、時に添付図面を参照しながら説明してきたが、本発明の範囲は、これらの例示的な実施形態及び実施例に限定されると解釈されるべきではなく、特許請求の範囲及び明細書に記載された事項の範囲内で、適宜修正を加えることが可能であることは言うまでも無い。
【符号の説明】
【0135】
11,12,13,14,15,16,17,18…素管
21a,21b,21c,22a,22b,22c,23a,23b,23c,23d,23e,24a,24b,24c,25a,25b,25c,26a,26b,26c,27a,27b,27c,27d,28a,28b,28c…分割型群(分割型)
22c1,22c2…分割型
31a,31b,31c…お釜
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