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特許7603551製品検査システム、製品検査方法、学習装置、および認識装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】製品検査システム、製品検査方法、学習装置、および認識装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/02 20060101AFI20241213BHJP
【FI】
G01B11/02 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021137059
(22)【出願日】2021-08-25
(65)【公開番号】P2023031527
(43)【公開日】2023-03-09
【審査請求日】2023-11-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(72)【発明者】
【氏名】中田 悠貴
【審査官】櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-271152(JP,A)
【文献】特許第6779426(JP,B1)
【文献】国際公開第2020/189189(WO,A1)
【文献】特開2011-095263(JP,A)
【文献】特開2019-057250(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
G06T 7/00- 7/90
G06V 10/00-20/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック製であって電子部品を収納する収納ポケットが連続的に形成されるエンボスキャリアテープの寸法を測定するために照明装置が光を照射する照明条件に関する照明条件情報、および前記エンボスキャリアテープを特定するための対象物情報を入力する入力部と、
前記入力部により入力した前記照明条件情報および前記対象物情報を教師データとして機械学習させたモデルであって、前記対象物情報を入力した場合に、前記エンボスキャリアテープの寸法測定に最適な条件に関する前記照明条件情報を出力する前記モデルを構築するモデル構築部と、を備え、
前記対象物情報は、前記エンボスキャリアテープの部位を示し、前記照明条件情報は、前記エンボスキャリアテープの部位の寸法測定に最適な照明条件を示し、前記モデルは、前記エンボスキャリアテープの部位を示す情報を入力した場合に前記エンボスキャリアテープの部位の寸法測定に最適な照明条件を出力する、学習装置。
【請求項2】
プラスチック製であって電子部品を収納する収納ポケットが連続的に形成されるエンボスキャリアテープの寸法を測定するために照明装置が光を照射する照明条件に関する照明条件情報、および前記エンボスキャリアテープを特定するための対象物情報を入力する入力部と、
前記入力部により入力した前記照明条件情報および前記対象物情報を教師データとして機械学習させたモデルであって、前記対象物情報を入力した場合に、前記エンボスキャリアテープの寸法測定に最適な条件に関する前記照明条件情報を出力する前記モデルを構築するモデル構築部と、を備え、
前記対象物情報は、前記エンボスキャリアテープの成形方法および金型形状を含む物性情報を示し、前記照明条件情報は、前記エンボスキャリアテープの成形方法および金型形状に対応した前記エンボスキャリアテープの寸法測定に最適な照明条件を示し、前記モデルは、前記エンボスキャリアテープの成形方法および金型形状を示す情報を入力した場合に前記エンボスキャリアテープの成形方法および金型形状に対応した前記エンボスキャリアテープの寸法測定に最適な照明条件を出力する、学習装置。
【請求項3】
プラスチック製であって電子部品を収納する収納ポケットが連続的に形成されるエンボスキャリアテープを特定するための対象物情報を入力する入力部と、
エンボスキャリアテープの寸法を測定するために照明装置が光を照射する照明条件に関する照明条件情報および前記対象物情報を教師データとして機械学習させたモデルに、前記入力部により入力した前記対象物情報を入力し、前記モデルから出力された前記照明条件情報に基づいて、前記エンボスキャリアテープの寸法測定に最適な照明条件を推定する推定部と、を備え、
前記対象物情報は、前記エンボスキャリアテープの部位を示し、前記照明条件情報は、前記エンボスキャリアテープの部位の寸法測定に最適な照明条件を示し、前記モデルは、前記エンボスキャリアテープの部位を示す情報を入力した場合に前記エンボスキャリアテープの部位の寸法測定に最適な照明条件を出力する、推定装置。
【請求項4】
プラスチック製であって電子部品を収納する収納ポケットが連続的に形成されるエンボスキャリアテープを特定するための対象物情報を入力する入力部と、
エンボスキャリアテープの寸法を測定するために照明装置が光を照射する照明条件に関する照明条件情報および前記対象物情報を教師データとして機械学習させたモデルに、前記入力部により入力した前記対象物情報を入力し、前記モデルから出力された前記照明条件情報に基づいて、前記エンボスキャリアテープの寸法測定に最適な照明条件を推定する推定部と、を備え、
前記対象物情報は、前記エンボスキャリアテープ成形方法および金型形状を含む物性情報を示し、前記照明条件情報は、前記エンボスキャリアテープ成形方法および金型形状に対応した前記エンボスキャリアテープの寸法測定に最適な照明条件を示前記モデルは、前記エンボスキャリアテープの成形方法および金型形状を示す情報を入力した場合に前記エンボスキャリアテープの成形方法および金型形状に対応した前記エンボスキャリアテープの寸法測定に最適な照明条件を出力する、推定装置。
【請求項5】
プラスチック製であって電子部品を収納する収納ポケットが連続的に形成されるエンボスキャリアテープに光を照射する照明装置と、
前記エンボスキャリアテープの寸法を測定する測定部と、
前記エンボスキャリアテープを特定するための対象物情報を入力する入力部と、
前記入力部により入力した前記対象物情報に基づいて、前記照明装置を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記エンボスキャリアテープの寸法を測定するために照明装置が光を照射する照明条件に関する照明条件情報および前記対象物情報を教師データとして機械学習させたモデルに、前記入力部により入力した前記対象物情報を入力し、前記モデルから出力された前記照明条件情報に基づいて、前記エンボスキャリアテープの寸法測定に最適な照明条件を推定し、推定結果に基づいて前記照明装置を制御し、
前記対象物情報は、前記エンボスキャリアテープの部位を示し、前記照明条件情報は、前記エンボスキャリアテープの部位の寸法測定に最適な照明条件を示し、前記モデルは、前記エンボスキャリアテープの部位を示す情報を入力した場合に前記エンボスキャリアテープの部位の寸法測定に最適な照明条件を出力する、
寸法測定装置。
【請求項6】
プラスチック製であって電子部品を収納する収納ポケットが連続的に形成されるエンボスキャリアテープに光を照射する照明装置と、
前記エンボスキャリアテープの寸法を測定する測定部と、
前記エンボスキャリアテープを特定するための対象物情報を入力する入力部と、
前記入力部により入力した前記対象物情報に基づいて、前記照明装置を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記エンボスキャリアテープの寸法を測定するために照明装置が光を照射する照明条件に関する照明条件情報および前記対象物情報を教師データとして機械学習させたモデルに、前記入力部により入力した前記対象物情報を入力し、前記モデルから出力された前記照明条件情報に基づいて、前記エンボスキャリアテープの寸法測定に最適な照明条件を推定し、推定結果に基づいて前記照明装置を制御し、
前記対象物情報は、前記エンボスキャリアテープの成形方法および金型形状を含む物性情報を示し、前記照明条件情報は、前記エンボスキャリアテープの成形方法および金型形状に対応した前記エンボスキャリアテープの寸法測定に最適な照明条件を示し、前記モデルは、前記エンボスキャリアテープの成形方法および金型形状を示す情報を入力した場合に前記エンボスキャリアテープの成形方法および金型形状に対応した前記エンボスキャリアテープの寸法測定に最適な照明条件を出力する、
寸法測定装置。
【請求項7】
プラスチック製であって電子部品を収納する収納ポケットが連続的に形成されるエンボスキャリアテープの寸法を測定するために照明装置が光を照射する照明条件に関する照明条件情報、および前記エンボスキャリアテープを特定するための対象物情報を教師データとして機械学習させたモデルであって、前記対象物情報を入力した場合に、前記エンボスキャリアテープの寸法測定に最適な照明条件に関する前記照明条件情報を出力する前記モデルを構築するステップと、
前記エンボスキャリアテープを特定するための対象物情報を入力するステップと、
前記モデルに、入力した前記対象物情報を入力し、前記モデルから出力された前記照明条件情報に基づいて、前記エンボスキャリアテープの寸法測定に最適な照明条件を推定し、推定結果に基づいて前記照明装置を制御するステップと、
前記エンボスキャリアテープの寸法を測定するステップと、を含み、
前記対象物情報は、前記エンボスキャリアテープの部位を示し、前記照明条件情報は、前記エンボスキャリアテープの部位の寸法測定に最適な照明条件を示し、前記モデルは、前記エンボスキャリアテープの部位を示す情報を入力した場合に前記エンボスキャリアテープの部位の寸法測定に最適な照明条件を出力する、
寸法測定方法。
【請求項8】
プラスチック製であって電子部品を収納する収納ポケットが連続的に形成されるエンボスキャリアテープの寸法を測定するために照明装置が光を照射する照明条件に関する照明条件情報、および前記エンボスキャリアテープを特定するための対象物情報を教師データとして機械学習させたモデルであって、前記対象物情報を入力した場合に、前記エンボスキャリアテープの寸法測定に最適な照明条件に関する前記照明条件情報を出力する前記モデルを構築するステップと、
前記エンボスキャリアテープを特定するための対象物情報を入力するステップと、
前記モデルに、入力した前記対象物情報を入力し、前記モデルから出力された前記照明条件情報に基づいて、前記エンボスキャリアテープの寸法測定に最適な照明条件を推定し、推定結果に基づいて前記照明装置を制御するステップと、
前記エンボスキャリアテープの寸法を測定するステップと、を含み、
前記対象物情報は、前記エンボスキャリアテープの成形方法および金型形状を含む物性情報を示し、前記照明条件情報は、前記エンボスキャリアテープの成形方法および金型形状に対応した前記エンボスキャリアテープの寸法測定に最適な照明条件を示し、前記モデルは、前記エンボスキャリアテープの成形方法および金型形状を示す情報を入力した場合に前記エンボスキャリアテープの成形方法および金型形状に対応した前記エンボスキャリアテープの寸法測定に最適な照明条件を出力する、
寸法測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、学習装置、推定装置、寸法測定装置、および寸法測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、微小な電子部品を収納するためにエンボスキャリアテープと称される包装材が知られている(下記の特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-136545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のエンボスキャリアテープは、例えば電子部品を収納する凹部の形状などのパターンを高い寸法精度で製造することが望まれているが、寸法を測定するためには、作業員が測定位置を確認して手動で位置合わせをするなどの作業が必要であった。一方、エンボスキャリアテープを撮像した画像を用いた寸法測定によれば、作業員の作業を抑えることができる。しかし、画像を用いて高い精度の寸法測定を行うためには鮮明な画像を用いる必要があるが、エンボスキャリアテープには様々な形状や種類があるので、各エンボスキャリアテープの寸法測定に最適な照明装置の照明条件を細やかに設定する必要がある。
【0005】
本発明は、高い精度で対象物の寸法を測定することができる学習装置、推定装置、寸法測定装置、および寸法測定方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る学習装置は、プラスチック製であって電子部品を収納する収納ポケットが連続的に形成されるエンボスキャリアテープの寸法を測定するために照明装置が光を照射する照明条件に関する照明条件情報、および前記エンボスキャリアテープを特定するための対象物情報を入力する入力部と、前記入力部により入力した前記照明条件情報および前記対象物情報を教師データとして機械学習させたモデルであって、前記対象物情報を入力した場合に、前記エンボスキャリアテープの寸法測定に最適な条件に関する前記照明条件情報を出力する前記モデルを構築するモデル構築部と、を備え、前記対象物情報は、前記エンボスキャリアテープの部位を示し、前記照明条件情報は、前記エンボスキャリアテープの部位の寸法測定に最適な照明条件を示し、前記モデルは、前記エンボスキャリアテープの部位を示す情報を入力した場合に前記エンボスキャリアテープの部位の寸法測定に最適な照明条件を出力する、学習装置、である。
本発明の一態様に係る学習装置は、プラスチック製であって電子部品を収納する収納ポケットが連続的に形成されるエンボスキャリアテープの寸法を測定するために照明装置が光を照射する照明条件に関する照明条件情報、および前記エンボスキャリアテープを特定するための対象物情報を入力する入力部と、前記入力部により入力した前記照明条件情報および前記対象物情報を教師データとして機械学習させたモデルであって、前記対象物情報を入力した場合に、前記エンボスキャリアテープの寸法測定に最適な条件に関する前記照明条件情報を出力する前記モデルを構築するモデル構築部と、を備え、前記対象物情報は、前記エンボスキャリアテープの成形方法および金型形状を含む物性情報を示し、前記照明条件情報は、前記エンボスキャリアテープの成形方法および金型形状に対応した前記エンボスキャリアテープの寸法測定に最適な照明条件を示し、前記モデルは、前記エンボスキャリアテープの成形方法および金型形状を示す情報を入力した場合に前記エンボスキャリアテープの成形方法および金型形状に対応した前記エンボスキャリアテープの寸法測定に最適な照明条件を出力する、学習装置、である。
【0007】
本発明の一態様に係る推定装置は、プラスチック製であって電子部品を収納する収納ポケットが連続的に形成されるエンボスキャリアテープを特定するための対象物情報を入力する入力部と、エンボスキャリアテープの寸法を測定するために照明装置が光を照射する照明条件に関する照明条件情報および前記対象物情報を教師データとして機械学習させたモデルに、前記入力部により入力した前記対象物情報を入力し、前記モデルから出力された前記照明条件情報に基づいて、前記エンボスキャリアテープの寸法測定に最適な照明条件を推定する推定部と、を備え、前記対象物情報は、前記エンボスキャリアテープの部位を示し、前記照明条件情報は、前記エンボスキャリアテープの部位の寸法測定に最適な照明条件を示し、前記モデルは、前記エンボスキャリアテープの部位を示す情報を入力した場合に前記エンボスキャリアテープの部位の寸法測定に最適な照明条件を出力する、推定装置、である。
本発明の一態様に係る推定装置は、プラスチック製であって電子部品を収納する収納ポケットが連続的に形成されるエンボスキャリアテープを特定するための対象物情報を入力する入力部と、エンボスキャリアテープの寸法を測定するために照明装置が光を照射する照明条件に関する照明条件情報および前記対象物情報を教師データとして機械学習させたモデルに、前記入力部により入力した前記対象物情報を入力し、前記モデルから出力された前記照明条件情報に基づいて、前記エンボスキャリアテープの寸法測定に最適な照明条件を推定する推定部と、を備え、前記対象物情報は、前記エンボスキャリアテープ成形方法および金型形状を含む物性情報を示し、前記照明条件情報は、前記エンボスキャリアテープ成形方法および金型形状に対応した前記エンボスキャリアテープの寸法測定に最適な照明条件を示前記モデルは、前記エンボスキャリアテープの成形方法および金型形状を示す情報を入力した場合に前記エンボスキャリアテープの成形方法および金型形状に対応した前記エンボスキャリアテープの寸法測定に最適な照明条件を出力する、推定装置、である。
【0008】
本発明の一態様に係る寸法測定装置は、プラスチック製であって電子部品を収納する収納ポケットが連続的に形成されるエンボスキャリアテープに光を照射する照明装置と、前記エンボスキャリアテープの寸法を測定する測定部と、前記エンボスキャリアテープを特定するための対象物情報を入力する入力部と、前記入力部により入力した前記対象物情報に基づいて、前記照明装置を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記エンボスキャリアテープの寸法を測定するために照明装置が光を照射する照明条件に関する照明条件情報および前記対象物情報を教師データとして機械学習させたモデルに、前記入力部により入力した前記対象物情報を入力し、前記モデルから出力された前記照明条件情報に基づいて、前記エンボスキャリアテープの寸法測定に最適な照明条件を推定し、推定結果に基づいて前記照明装置を制御し、前記対象物情報は、前記エンボスキャリアテープの部位を示し、前記照明条件情報は、前記エンボスキャリアテープの部位の寸法測定に最適な照明条件を示し、前記モデルは、前記エンボスキャリアテープの部位を示す情報を入力した場合に前記エンボスキャリアテープの部位の寸法測定に最適な照明条件を出力する、寸法測定装置、である。
本発明の一態様に係る寸法測定装置は、プラスチック製であって電子部品を収納する収納ポケットが連続的に形成されるエンボスキャリアテープに光を照射する照明装置と、前記エンボスキャリアテープの寸法を測定する測定部と、前記エンボスキャリアテープを特定するための対象物情報を入力する入力部と、前記入力部により入力した前記対象物情報に基づいて、前記照明装置を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記エンボスキャリアテープの寸法を測定するために照明装置が光を照射する照明条件に関する照明条件情報および前記対象物情報を教師データとして機械学習させたモデルに、前記入力部により入力した前記対象物情報を入力し、前記モデルから出力された前記照明条件情報に基づいて、前記エンボスキャリアテープの寸法測定に最適な照明条件を推定し、推定結果に基づいて前記照明装置を制御し、前記対象物情報は、前記エンボスキャリアテープの成形方法および金型形状を含む物性情報を示し、前記照明条件情報は、前記エンボスキャリアテープの成形方法および金型形状に対応した前記エンボスキャリアテープの寸法測定に最適な照明条件を示し、前記モデルは、前記エンボスキャリアテープの成形方法および金型形状を示す情報を入力した場合に前記エンボスキャリアテープの成形方法および金型形状に対応した前記エンボスキャリアテープの寸法測定に最適な照明条件を出力する、寸法測定装置、である。
【0009】
本発明の一態様に係る寸法測定方法は、プラスチック製であって電子部品を収納する収納ポケットが連続的に形成されるエンボスキャリアテープの寸法を測定するために照明装置が光を照射する照明条件に関する照明条件情報、および前記エンボスキャリアテープを特定するための対象物情報を教師データとして機械学習させたモデルであって、前記対象物情報を入力した場合に、前記エンボスキャリアテープの寸法測定に最適な照明条件に関する前記照明条件情報を出力する前記モデルを構築するステップと、前記エンボスキャリアテープを特定するための対象物情報を入力するステップと、前記モデルに、入力した前記対象物情報を入力し、前記モデルから出力された前記照明条件情報に基づいて、前記エンボスキャリアテープの寸法測定に最適な照明条件を推定し、推定結果に基づいて前記照明装置を制御するステップと、前記エンボスキャリアテープの寸法を測定するステップと、を含み、前記対象物情報は、前記エンボスキャリアテープの部位を示し、前記照明条件情報は、前記エンボスキャリアテープの部位の寸法測定に最適な照明条件を示し、前記モデルは、前記エンボスキャリアテープの部位を示す情報を入力した場合に前記エンボスキャリアテープの部位の寸法測定に最適な照明条件を出力する、寸法測定方法、である。
本発明の一態様に係る寸法測定方法は、プラスチック製であって電子部品を収納する収納ポケットが連続的に形成されるエンボスキャリアテープの寸法を測定するために照明装置が光を照射する照明条件に関する照明条件情報、および前記エンボスキャリアテープを特定するための対象物情報を教師データとして機械学習させたモデルであって、前記対象物情報を入力した場合に、前記エンボスキャリアテープの寸法測定に最適な照明条件に関する前記照明条件情報を出力する前記モデルを構築するステップと、前記エンボスキャリアテープを特定するための対象物情報を入力するステップと、前記モデルに、入力した前記対象物情報を入力し、前記モデルから出力された前記照明条件情報に基づいて、前記エンボスキャリアテープの寸法測定に最適な照明条件を推定し、推定結果に基づいて前記照明装置を制御するステップと、前記エンボスキャリアテープの寸法を測定するステップと、を含み、前記対象物情報は、前記エンボスキャリアテープの成形方法および金型形状を含む物性情報を示し、前記照明条件情報は、前記エンボスキャリアテープの成形方法および金型形状に対応した前記エンボスキャリアテープの寸法測定に最適な照明条件を示し、前記モデルは、前記エンボスキャリアテープの成形方法および金型形状を示す情報を入力した場合に前記エンボスキャリアテープの成形方法および金型形状に対応した前記エンボスキャリアテープの寸法測定に最適な照明条件を出力する、寸法測定方法、である。

【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高い精度で対象物の寸法を測定することができる学習装置、推定装置、寸法測定装置、および寸法測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態における寸法測定システムの概略的な構成の一例を示す図である。
図2】実施形態の寸法測定システムの機能的な構成の一例を示すブロック図である。
図3】実施形態における学習部の一例を示すブロック図である。
図4】畳み込みニューラルネットワークにおける入力変数と出力変数との関係を示す図である。
図5】実施形態における推定部の一例を示すブロック図である。
図6】実施形態における照明装置の配置の一例を示す上面図である。
図7】実施形態における照明装置の配置の他の一例を示す上面図である。
図8】実施形態における照明装置を側面からみた図である。
図9】実施形態における照明装置を側面からみた他の図である。
図10】実施形態のエンボスキャリアテープの一例を示す上面図である。
図11】実施形態におけるエンボスキャリアテープを成型する金型の一例を説明するための図である。
図12】実施形態における計測値の変化の一例を示す図であり、照明条件Aでエンボスキャリアテープに光を照射した状態で計測した値の変化を示す図である。
図13】実施形態における計測値の変化の一例を示す図であり、照明条件Bでエンボスキャリアテープに光を照射した状態で計測した値の変化を示す図である。
図14】実施形態におけるエンボスキャリアテープにおける部位A、B、Cと、理想値と、照明条件A、B、Cごとの計測値との関係を示す図である。
図15】実施形態における畳み込みニューラルネットワークを用いた推定処理を行う処理を説明するための図である。
図16】実施形態における畳み込みニューラルネットワークを用いた学習処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照し、学習装置、推定装置、寸法測定装置、および寸法測定方法の実施形態について説明する。
【0013】
[寸法測定の概要]
実施形態の寸法測定システム1は、対象物の寸法を測定する。実施形態において、対象物は、例えばエンボスキャリアテープである。エンボスキャリアテープは、プラスチック製であって、チップ型電子部品を収納する収納ポケット(凹部)が連続的に形成される。寸法測定システム1は、エンボスキャリアテープに光を照射した状態でエンボスキャリアテープの収納ポケットの寸法に基づく情報を取得することで、収納ポケットの寸法を測定する。なお、本実施形態は、凹部などの形状の寸法を測定するが、これに限定されず、凹部以外の形状を測定する用途にも適用可能である。
【0014】
[寸法測定システム1の構成]
図1は、実施形態における寸法測定システム1の概略的な構成の一例を示す図である。寸法測定システム1は、例えば、製造ラインLの上方および下方に配置された照明装置100と、撮像装置200とを備える。製造ラインLは、凹部10aが形成されたエンボスキャリアテープ10を配送する移動手段である。寸法測定システム1は、エンボスキャリアテープ10の寸法を測定する場合、照明装置100からエンボスキャリアテープ10に光を照射した状態で、撮像装置200によりエンボスキャリアテープ10を撮像する。寸法測定システム1は、撮像した画像等に基づいて凹部10aの寸法を測定する。
【0015】
図2は、実施形態の寸法測定システム1の機能的な構成の一例を示すブロック図である。寸法測定システム1は、例えば、照明装置100と、撮像装置200と、寸法測定装置300と、情報入力部400と、教師データ記憶部500と、通知部600とを備える。
【0016】
寸法測定装置300は、例えば、測定部310と、学習部320と、推定部330と、照明制御部340とを備える。測定部310、学習部320、推定部330、および照明制御部340といった機能部は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサがプログラムメモリに格納されたプログラムを実行することにより実現される。また、これらの機能部のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、またはFPGA(Field-Programmable Gate Array)等のハードウェアにより実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアが協働することで実現されてもよい。プログラムは、予め寸法測定装置300のHDD(Hard Disc Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体(非一過性の記憶媒体)がドライブ装置に装着されることで寸法測定装置300のHDDやフラッシュメモリにインストールされてもよい。
【0017】
測定部310は、撮像装置200により撮像された画像を用いてエンボスキャリアテープ10の寸法を測定する。学習部320は、エンボスキャリアテープ10の寸法測定に最適な照明条件を推定する推定モデルを構築する。推定部330は、推定モデルを用いた演算を行ってエンボスキャリアテープ10の寸法測定に最適な照明条件を推定する。照明制御部340は、推定部330により推定された照明条件に従って照明装置100を制御する。
【0018】
情報入力部400は、例えばユーザに操作されるユーザインターフェース装置である。情報入力部400は、ユーザの操作に基づいて対象物情報を受け付けて寸法測定装置300に出力する。
【0019】
教師データ記憶部500は、例えば、HDD、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などの記憶装置により実現される。教師データ記憶部500は、例えば、SAN(Storage Area Network)やNAS(Network Attached Storage)により実現されてよい。教師データ記憶部500には、照明条件情報および対象物情報が教師データとして記憶される。照明条件情報は、照明装置100を構成する複数の照明の配置、光の強度、光の角度、光の波長の少なくとも一つの照明条件を含む。対象物情報は、対象物としてのエンボスキャリアテープ10の部位を示す情報であるが、これに限定されない。対象物情報は、エンボスキャリアテープ10の形状、色、透過度、表面性、成形方法、金型形状の少なくとも一つを含む物性情報であってよい。対象物情報は、エンボスキャリアテープ10の画像、またはエンボスキャリアテープ10からの反射光のピーク値を含む測定情報であってよい。
【0020】
通知部600は、例えばディスプレイやスピーカ等であり、例えば、寸法の測定結果、照明条件の推定結果、照明装置100の制御結果などを通知する。
【0021】
図3は、実施形態における学習部320の一例を示すブロック図である。学習部320は、例えば、教師データ取得部321、モデル構築部322、畳み込みニューラルネットワーク(CNN:Convolutional Neural Network)323、および学習結果記憶部324を備える。
【0022】
図4は、畳み込みニューラルネットワーク323における入力変数と出力変数との関係を示す図である。入力変数は対象物情報であり、出力変数は照明条件情報である。図4において、各行に含まれる入力変数および出力変数が一つのエンボスキャリアテープ10に対応する。例えば、製品情報が「1」のエンボスキャリアテープ10の形状情報がa1、透明度情報がb1、表面性情報がc1であり、当該製品情報が「1」のエンボスキャリアテープ10の寸法を測定するための最適な照明装置100の配置情報がA1、波長情報がB1、強度情報がC1である。
【0023】
教師データ取得部321は、教師データ記憶部500から教師データとして対象物情報および照明条件情報を取得する。モデル構築部322は、対象物情報を畳み込みニューラルネットワーク323に入力し、畳み込みニューラルネットワーク323から出力変数を出力するように、畳み込みニューラルネットワーク323の処理パラメータを学習する。具体的に、モデル構築部322は、教師データを用い、図4に示した入力変数に対応する出力変数と、目標とする出力との差が小さくなるように、処理パラメータを再帰的に算出(更新)する。モデル構築部322は、処理パラメータを取得するために、例えば、深層学習を行う。深層学習とは、多層構造、特に3層以上のニューラルネットワークを用いた機械学習である。多層構造のニューラルネットワークとして、実施形態においては、畳み込みニューラルネットワーク323を用いる。モデル構築部322は、更新した処理パラメータを学習結果記憶部324に保存する。
【0024】
図5は、実施形態における推定部330の一例を示すブロック図である。推定部330は、対象物情報取得部331、推定処理部332、畳み込みニューラルネットワーク333、および推定結果記憶部334を備える。対象物情報取得部331は、情報入力部400から対象物情報および/または撮像装置200から撮像画像を取得する。畳み込みニューラルネットワーク333は、学習結果記憶部324に記憶された処理パラメータが設定された推定モデルである。畳み込みニューラルネットワーク333は、対象物情報および/または画像を入力した場合に、照明条件情報を出力する。推定処理部332は、畳み込みニューラルネットワーク333から出力された推定結果を推定結果記憶部334に保存する。推定結果は、図4に示した照明条件情報に対応した情報として、照明装置100の配置、波長、強度等の情報を含む。
【0025】
図6は、実施形態における照明装置100の配置の一例を示す上面図である。図6において、例えば一つの○が一つの照明素子100aを示している。照明装置100は、例えば、仮想的な中心円から放射状に複数の照明素子100aを配置して構成される。照明装置100は、中心円の中心が製造ラインLと交わるように配置される。図7は、実施形態における照明装置100の配置の他の一例を示す上面図である。照明装置100は、例えば、仮想的な四角形の各辺から垂直方向に延びる複数の直線に沿って複数の照明素子100aを配置して構成される。照明装置100は、四角形の重心が製造ラインLと交わるように配置される。寸法測定システム1は、例えば、エンボスキャリアテープ10の対象物情報に応じた推定結果に基づいて、図6または図7の配置を切り換えたり、各照明素子100aから照射する光の波長を調整したり、各照明素子100a照射する光の強度を調整することができる。
【0026】
図8および図9は、実施形態における照明装置100を側面からみた図である。照明装置100は、図8に示すように、製造ラインL上に搬送されるエンボスキャリアテープ10に対して上方および下方の円弧に沿って複数の照明素子100aが配置される。各照明素子100aは、照射光が製造ラインLの所定範囲に向くように位置決めされてよく、照射光が製造ラインLの所定範囲に向くように調光されてよいある照明素子100aは、ミラー110を介して照射光を所定範囲に照射する。撮像装置200は、製造ラインLの所定範囲を撮像する位置に配置される。寸法測定システム1は、図9に示すように、例えば、推定結果に基づいて、複数の照明素子のうち一部の照明素子100aからエンボスキャリアテープ10に照射光を照射することもできる。
【0027】
図10は、実施形態のエンボスキャリアテープ10の一例を示す上面図である。エンボスキャリアテープ10には、複数の凹部10a-1および10a-2が形成される。寸法測定システム1は、例えば、点P1、P2、P3、P4、P5、P6の座標値(X,Y)を取得し、各点間の距離を算出することにより、凹部10a-1および10a-2の寸法を測定する。寸法測定システム1は、例えば、点P1から点P6までのY方向距離をエンボスキャリアテープ10の幅方向寸法を測定し、点P2からP3までのX方向距離およびY方向距離を算出することにより凹部10a-1のX方向寸法およびY方向寸法を測定し、点P4およびP5を用いて凹部10a-2のX方向寸法およびY方向寸法を測定する。
【0028】
図11は、実施形態におけるエンボスキャリアテープ10を成型する金型の一例を説明するための図である。エンボスキャリアテープ10の内壁面は、成形方法や金型形状などの様々な要因により変化する。図11(a)に示すように凹部の内壁に金型Xを押し当ててエンボスキャリアテープ10を成型する場合、金型Xによって内壁面が規制された形状に形成された結果、XおよびYのような位置に、測定に使用する明暗線が発現する。一方、図11(b)に示すように凹部の外壁に金型Yを押し当ててエンボスキャリアテープ10を成型する場合、金型Yによって外壁面が規制された形状に形成された結果、XおよびYのような位置に、測定に使用する明暗線が発現する。XおよびYのような位置は形状、色、透過度、表面性、成形方法、金型形状の違いにより、大きく異なる。このように、対象物情報は、エンボスキャリアテープ10の成形方法や金型形状を含み、エンボスキャリアテープ10の成形方法や金型形状に基づいて寸法測定に最適な照明条件を推定することが望ましい。
【0029】
図12および図13は、実施形態における計測値の変化の一例を示す図であり、図12は、照明条件Aでエンボスキャリアテープ10に光を照射した状態で計測した値の変化を示し、図13は、照明条件Bでエンボスキャリアテープ10に光を照射した状態で計測した値の変化を示す。照明条件Aでエンボスキャリアテープ10を計測した場合、図12に示すように、エンボスキャリアテープ10の位置Pにおいて適正範囲のピーク値を得ることができないが、照明条件Bでエンボスキャリアテープ10を計測した場合、図13に示すように、エンボスキャリアテープ10の位置Pにおいて適正範囲のピーク値を得ることができる。このように、照明条件が異なることにより計測値のピークを検出できない場合がある。計測値は、例えば、エンボスキャリアテープ10の位置に対応した画素値である。寸法測定システム1は、エンボスキャリアテープ10の画像、またはエンボスキャリアテープ10からの反射光のピーク値を含む測定情報を対象物情報として用いて推定モデルを学習することが望ましい。
【0030】
図14は、実施形態におけるエンボスキャリアテープ10における部位A、B、Cと、理想値と、照明条件A、B、Cごとの計測値との関係を示す図である。計測値は、複数回に亘り測定した値の平均値およびバラツキを示しており、例えば、照明条件Aにおいて部位Aを測定した計測値の平均値は12.5であり、バラツキは±0.02である。図14によれば、部位Aの寸法を測定するためには照明条件Bが寸法測定に最適な照明条件であり、部位Bの寸法を測定するためには照明条件Aが寸法測定に最適な照明条件であり、部位Cの寸法を測定するためには照明条件Cが寸法測定に最適な照明条件であることが分かる。
【0031】
[畳み込みニューラルネットワーク]
以下、実施形態における畳み込みニューラルネットワーク323および畳み込みニューラルネットワーク333の一例について説明する。なお、この説明において、畳み込みニューラルネットワーク323および畳み込みニューラルネットワーク333を総称して「畳み込みニューラルネットワーク」と記載する。
【0032】
上述したように、モデル構築部322は、学習用の畳み込みニューラルネットワー323に対して、教師データを入力層に入力する入力変数とし、照明条件情報を出力層から出力される出力変数として設定する。モデル構築部322は、対象物情報と照明条件情報の学習データセットを用いて、機械学習を行う。推定処理部332は、学習済の畳み込みニューラルネットワーク333に対して、対象物情報を入力層へ入力し、出力層から照明条件情報を取得する。
【0033】
図15は、実施形態における畳み込みニューラルネットワークを用いた推定処理を行う処理を説明するための図である。畳み込みニューラルネットワークは、例えば層L0、層L1、層L2、層Li、および層LIを含む。層L0は入力層、層L1~層Liは中間層或いは隠れ層、層LIは出力層とも呼ばれる。畳み込みニューラルネットワークは、入力層L0に、対象物情報が入力される。対象物情報は、各種情報のパラメータが行列の位置とする行列D11で表される。行列D11の各要素は、行列の位置に対応するパラメータのサブ値として、R(赤)のサブ値、G(緑)のサブ値、およびB(青)サブ値を含む。1番目の中間層L1は、畳み込み処理(フィルター処理とも呼ばれる)とプーリング処理が行われる層である。
【0034】
(畳み込み処理(Convolution))
中間層L1の畳み込み処理の一例について説明する。畳み込み処理は、元のパラメータにフィルタをかけて特徴マップを出力する処理である。具体的には、入力されたパラメータは、それぞれ、Rのサブ行列D121と、Bのサブ行列D122と、Gのサブ行列D123とに分けられる。各サブ行列D121、D122、D123(各々を「サブ行列D12」とも称する)は、それぞれ、s行t列の部分行列ごとに、その部分行列の各要素とs行t列のコンボリューション行列CM1(カーネルとも呼ばれる)の要素が乗算され、加算されることで、第1パラメータ値が算出される。各サブ行列D12で算出された第1パラメータ値は、それぞれ、重み係数が乗算されて加算されることで、第2パラメータ値が算出される。第2パラメータ値は、部分行列の位置に対応する行列要素として、畳込行列D131の各要素として設定される。各サブ行列D12において部分行列の位置が要素(サブパラメータ)ごとにずらされることで、各位置での第2パラメータ値が算出され、畳込行列D131の全ての行列要素が算出される。
【0035】
図15は、例えば、3行3列のコンボリューション行列CM(convolution matrix)1を用いた畳み込みニューラルネットワークの一例であり、畳込パラメータ値D1311は、各サブ行列D12の2行目から4行目、かつ、2列目から4列目までの3行3列の部分行列について第1パラメータ値が算出される。各サブ行列D121、D122、およびD123の各第1パラメータ値に、重み係数が算出されて加算されることで、畳込行列D131の2行目2列目の行列要素として、第2パラメータ値が算出される。同様に、3行目から5行目、かつ、2列目から4列目の部分行列から、畳込行列D131の3行目2列目の行列要素の第2パラメータ値が算出される。また同様に、他の重み付け係数又は他のコンボリューション行列を用いて、畳込行列D132、・・・が算出される。
【0036】
(プーリング処理(Pooling))
中間層L1のプーリング処理の一例について説明する。プーリング処理は、対象物情報の特徴を残しながらパラメータ群(行列)を縮小する処理である。具体的には、畳込行列D131におけるu行v列の領域PM(pooling matrix)ごとに、領域内の行列要素の代表値が算出される。代表値は、例えば、領域内の行列要素の最大値である。代表値は、領域PMの位置に対応する行列要素として、CNN行列D141の各要素に設定される。畳込行列D131における領域が、領域PMごとにずらされることで、各位置での代表値が算出され、CNN行列D141の全ての要素が算出される。
【0037】
図15は、例えば2行2列の領域PMを用いた畳み込みニューラルネットワークの一例であり、畳込行列D131の3行目から4行目、かつ、3列目から4列目までの2行2列の領域PMについて、領域PM内の最大値が、代表値として算出される。この代表値は、CNN行列D141の2行目2列目の行列要素に設定される。同様に、5行目から6行目、かつ、2列目から4列目の部分行列から、CNN行列D141の3行目2列目の行列要素の代表値が算出される。また同様に、畳込行列D132、・・・から、CNN行列D142、・・・が算出される。
【0038】
CNN行列D141、D142、・・・の各行列要素(N個)は、予め定められた順序で並べられることで、ベクトルXとして生成される。ベクトルXは、N個の要素x(n=1、2、3、・・・N)を含む。ベクトルXは、ベクトルu(0)に相当する。
【0039】
中間層Liは、第i番目(i=2,・・・)の中間層を表している。中間層Liは、ベクトルu(i)を含む。中間層Liの各ノードからは、ベクトルz(i)が出力される。ベクトルz(i)は、ベクトルu(i)が活性化関数である関数f(u(i))に入力された値を持つ。ベクトルu(i)は、第i-1目の中間層のノードから出力されたベクトルz(i-1)に重み行列W(i)を乗算した値と、ベクトルb(i)とを加算した値を持つ。ベクトルb(i)は、バイアスである。
【0040】
出力層LIは、ベクトルz(I-1)を含む。出力層LIの出力は、M個のy(m=1、2、・・・M)である。つまり、出力層LIは、M個のyを要素として含むベクトルY(y、y、y、・・・y)を出力する。以上により、畳み込みニューラルネットワークは、入力変数として対象物情報のパラメータが入力された場合に、出力変数としてベクトルYを出力する。実施形態におけるベクトルYは、照明条件情報を表す。
【0041】
図16は、実施形態における畳み込みニューラルネットワークを用いた学習処理を説明するための図である。学習データセットの対象物情報のパラメータ値に対して、第1番目の中間層L1から出力されたベクトルをベクトル[X]とする。学習データセットにおける確定クラスを表すベクトルをベクトル[Y]とする。確定クラスは、実施形態における図4に示した出力係数(照明素子の配置、波長、強度等の照明条件情報)である。
【0042】
重み行列W(i)には、初期値が設定される。対象物情報が入力層L0に入力されたことに基づいて第2番目の中間層L2にベクトル[X]が入力された場合、出力層LIからベクトル[X]に基づくベクトルY(X)が出力される。ベクトルY(X)とベクトル[Y]の誤差Eは、損失関数を用いて計算される。第i層の勾配ΔEは、各層からの出力zと誤差信号δと用いて計算される。誤差信号δは、誤差信号δi-1を用いて計算される。なお、出力層LIから入力層L0に向かって、出力層側の誤差信号から入力層側の誤差信号を計算する処理は、逆伝搬とも呼ばれる。重み行列W(i)は、勾配ΔEに基づいて更新される。同様に、第1番目の中間層L1においても、コンボリューション行列CMまたは重み係数が更新される。
【0043】
[推定モデルの設定]
モデル構築部322は、畳み込みニューラルネットワークについて、層数、各層のノード数、各層間のノードの結合方式、活性化関数、誤差関数、及び勾配降下アルゴリズム、プーリングの領域、カーネル、重み係数、および重み行列といった処理パラメータを設定する。モデル構築部322は、例えば、層数として、3層(I=3)を設定する。モデル構築部322は、各層のノードの数(「ノード数」とも称する)として、ベクトルXの要素数(ノード数N)に800、第2番目の中間層(i=2)のノード数に500、出力層(i=3)に10を設定する。ただし、実施形態はこれに限らず、総数は4層以上であってもよいし、ノード数には別の値が設定されてもよい。
【0044】
モデル構築部322は、20個の5行5列のコンボリューション行列CMをし、2行2列の領域PMを設定する。ただし、実施形態はこれに限らず、別の行列数又は別の個数のコンボリューション行列CMが設定されてもよい。また、別の行列数の領域PMが設定されてもよい。モデル構築部322は、より多くの畳み込み処理又はプーリング処理を行ってもよい。
【0045】
モデル構築部322は、畳み込みニューラルネットワークの各層の結合として、全結合を設定する。ただし、実施形態はこれに限らず、一部或いは全ての層の結合は、非全結合に設定であってもよい。モデル構築部322は、活性化関数として、全ての層の活性化関数にシグモイド関数を設定する。ただし、実施形態はこれに限らず、各層の活性化関数は、ステップ関数、線形結合、ソフトサイン、ソフトプラス、ランプ関数、切断冪関数、多項式、絶対値、動径基底関数、ウェーブレット、maxout等、他の活性化関数であってもよい。また、ある層の活性化関数は、他の層とは異なる種類であってもよい。
【0046】
モデル構築部322は、誤差関数として、二乗損失(平均二乗誤差)を設定する。ただし、本発明はこれに限らず、誤差関数は、交差エントロピー、τ-分位損失、Huber損失、ε感度損失(ε許容誤差関数)であってもよい。また、モデル構築部322は、勾配を計算するアルゴリズム(勾配降下アルゴリズム)として、SGD(確率的勾配降下)を設定する。ただし、本発明はこれに限らず、勾配降下アルゴリズムには、Momentum(慣性項) SDG、AdaGrad、RMSprop、AdaDelta、Adam(Adaptive moment estimation)等が用いられてもよい。
【0047】
モデル構築部322は、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)に限らず、パーセプトロンのニューラルネットワーク、再起型ニューラルネットワーク(RNN)、残差ネットワーク(ResNet)等の他のニューラルネットワークを設定してもよい。また、モデル構築部322は、決定木、回帰木、ランダムフォレスト、勾配ブースティング木、線形回帰、ロジスティック回帰、又は、SVM(サポートベクターマシン)等の教師あり学習の推定モデルを一部或いは全部に設定してもよい。
【0048】
[実施形態の効果]
以上に説明したように、実施形態によれば、エンボスキャリアテープ10の寸法を測定するために照明装置100が光を照射する照明条件に関する照明条件情報、およびエンボスキャリアテープ10を特定するための対象物情報を入力する教師データ取得部321と、教師データ取得部321により入力した照明条件情報および対象物情報を教師データとして機械学習させたモデルであって、対象物情報を入力した場合に、対象物の寸法測定に最適な照明条件に関する照明条件情報を出力する畳み込みニューラルネットワーク323を構築するモデル構築部322と、を備える、学習装置(学習部320)を実現することができる。この実施形態によれば、測定対象のエンボスキャリアテープ10に関する情報をモデルに入力するだけで測定対象のエンボスキャリアテープ10の寸法測定に最適な照明条件情報を取得することできるので、高い精度でエンボスキャリアテープ10の寸法を測定することができる。
【0049】
ところで、照明条件により寸法の測定結果の正確性や再現性が大きく変わるため、寸法測定に最適な照明条件の発見が困難な場合が存在する。従来では、エンボスキャリアテープ10の特性によってどのような照明条件が寸法測定に最適であるかを調整する作業は、寸法測定の作業者によって所要時間が異なっていた。しかし、エンボスキャリアテープ10の色や透明度等の材質、表面性(反射、光沢または非光沢)、形状(平坦または凹凸)、部位などのエンボスキャリアテープ10の特性によって最適な照明条件は異なるため、高い精度で最適な照明条件を推測するためには長い時間を要する場合がある。これに対し、実施形態によれば、上述した推定モデルを構築することで照明条件の推定時間を短縮することができる。
【0050】
また、実施形態によれば、照明条件情報として照明装置100の配置、光の強度、光の角度、光の波長を用いるので、寸法測定に最適な照明装置100の配置、光の強度、光の角度、光の波長を推定することができる。さらに、実施形態によれば、対象物情報としてエンボスキャリアテープ10の部位を用いるので、エンボスキャリアテープ10の部位の寸法測定に最適な照明条件を推定することができる。さらに、実施形態によれば、対象物情報としてエンボスキャリアテープ10の形状、色、透過度、表面性、成形方法、金型形状といった物性情報を用いるので、当該物性情報で示されるエンボスキャリアテープ10の寸法測定に最適な照明条件を推定することができる。さらに、実施形態によれば、対象物情報としてエンボスキャリアテープ10の画像、またはエンボスキャリアテープ10からの反射光のピーク値を含む測定情報を用いるので、測定情報を用いた寸法測定に最適な照明条件を推定することができる。
【0051】
また、実施形態によれば、エンボスキャリアテープ10を特定するための対象物情報を入力する対象物情報取得部331と、エンボスキャリアテープ10の寸法を測定するために照明装置100が光を照射する照明条件に関する照明条件情報および対象物情報を教師データとして機械学習させたモデルに、対象物情報取得部331により入力した対象物情報を入力し、モデルから出力された照明条件情報に基づいて、エンボスキャリアテープ10の寸法測定に最適な照明条件を推定する推定処理部332と、を備える、推定装置(推定部330)を実現することができる。この実施形態によれば、測定対象のエンボスキャリアテープ10に関する情報をモデルに入力するだけでエンボスキャリアテープ10の寸法測定に最適な照明条件情報を取得することできるので、高い精度でエンボスキャリアテープ10の寸法を測定することができる。
【0052】
さらに、実施形態によれば、エンボスキャリアテープ10に光を照射する照明装置100と、エンボスキャリアテープ10の寸法を測定する測定部310と、エンボスキャリアテープ10を特定するための対象物情報を入力する情報入力部400と、情報入力部400により入力した対象物情報に基づいて、照明装置100を制御する照明制御部340と、を備える、寸法測定システム1を実現することができる。この実施形態によれば、測定対象のエンボスキャリアテープ10に関する情報をモデルに入力するだけで測定対象のエンボスキャリアテープ10の寸法測定に最適な照明条件情報を取得し、照明条件となるように照明装置100を制御することができる。この結果、寸法測定システム1によれば、高い精度でエンボスキャリアテープ10の寸法を測定することができる。
【0053】
なお、本発明の一態様における寸法測定装置300のプログラムは、本発明の一態様に関わる上記の各実施形態や変形例で示した機能を実現するように、1つ、または複数の、CPU等のプロセッサを制御するプログラム(コンピュータを機能させるプログラム)であっても良い。そして、これらの各装置で取り扱われる情報は、その処理時に一時的にRAMに蓄積され、その後、フラッシュメモリ、SSDやHDD等の各種ストレージに格納され、必要に応じてCPUによって読み出し、修正・書き込みが行われても良い。
【0054】
なお、上述した各実施形態や変形例における寸法測定装置300が備える学習部320または推定部330の一部又は全部を1つ、または複数のプロセッサを備えたコンピュータで実現するようにしても良い。その場合、この制御機能を実現するためのプログラムをコンピュータが読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現しても良い。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでも良い。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0055】
また、上述した各実施形態や変形例における寸法測定装置300が備える学習部320または推定部330の一部、又は全部を典型的には集積回路であるLSIとして実現してもよいし、チップセットとして実現してもよい。また、集積回路化の手法は、LSIに限らず専用回路、および/または汎用プロセッサで実現しても良い。また、半導体技術の進歩によりLSIに代替する集積回路化の技術が出現した場合、当該技術による集積回路を用いることも可能である。
【0056】
以上、この発明の一態様として各実施形態や変形例に関して図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は各実施形態や変形例に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、本発明の一態様は、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、上記各実施形態や変形例に記載された要素であり、同様の効果を奏する要素同士を置換した構成も含まれる。
【0057】
例えば、上記各実施形態の一部または全部を組み合わせることで本発明の一態様を実現してもよい。
【0058】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0059】
1 寸法測定システム
100 照明装置
200 撮像装置
300 寸法測定装置
310 測定部
320 学習部
330 推定部
340 照明制御部
400 情報入力部
500 教師データ記憶部
600 通知部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16