(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】ソリューション管理装置、ソリューション管理方法、及びソリューション管理プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/06 20230101AFI20241213BHJP
【FI】
G06Q10/06
(21)【出願番号】P 2021150233
(22)【出願日】2021-09-15
【審査請求日】2024-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】檜 一平
(72)【発明者】
【氏名】野尻 周平
(72)【発明者】
【氏名】土屋 良介
【審査官】松野 広一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-212082(JP,A)
【文献】特開2018-045724(JP,A)
【文献】特開2004-021379(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0065620(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の目標を実現するための価値の創出の方法をパターン化した情報であって、前記価値を提供する主体、前記価値の提供対象である客体、及び、前記価値によって変動する前記客体に関する変数である変動要素の各構成要素の組み合わせを複数パターン記憶した情報である価値創出原理情報と、
前記価値創出原理情報における組み合わせのいずれかと対応づけられた情報であって前記価値の具体的な内容を示す情報である提供価値情報と、を記憶する記憶装置、及び、
ユーザから主体、客体、及び変動要素の各構成要素を含む情報の入力を受け付けるユーザ入力処理と、
前記入力された情報と所定の関係にある主体、客体、及び変動要素の組み合わせを前記価値創出原理情報から検索し、検索した組み合わせに対応する前記提供価値情報を特定し、特定した提供価値情報を出力する提供価値抽出処理と、
を実行する演算装置を備える、ソリューション管理装置。
【請求項2】
前記記憶装置は、前記価値創出原理情報における主体間の同一又は類似関係、客体間の同一又は類似関係、及び変動要素間の同一又は類似関係の情報である類似性情報を記憶しており、
前記演算装置は、前記提供価値抽出処理において、前記類似性情報に基づき、前記入力された情報と各構成要素の内容が全て同一又は類似である前記組み合わせを前記価値創出原理情報から検索する、
請求項1に記載のソリューション管理装置。
【請求項3】
前記記憶装置は、前記価値創出原理情報の構成要素として、前記主体及びその各下位概念、前記客体及びその各下位概念、及び、前記変動要素及びその各下位概念の情報をそれぞれ記憶しており、
前記演算装置は、前記提供価値抽出処理において、前記価値創出原理情報における主体の各下位概念、客体の各下位概念、及び変動要素の各下位概念から、前記入力された情報と前記所定の関係にある主体、客体、及び変動要素の組み合わせを検索する、
請求項1に記載のソリューション管理装置。
【請求項4】
前記演算装置は、前記提供価値抽出処理において、前記類似性情報に基づき、前記価値創出原理情報から、前記入力された情報と前記変動要素が同一であり前記入力された情報と前記主体及び前記客体の少なくともいずれかが類似である各構成要素の組み合わせを検索する、
請求項2に記載のソリューション管理装置。
【請求項5】
前記記憶装置は、前記所定の目標を実現するための価値を提供するために必要な、情報処理システムが行う処理に関する情報である機能情報を記憶し、
前記演算装置は、前記ユーザ入力処理において、ユーザから、情報処理システムが行う処理に関する情報の入力を受け付け、
前記機能情報から、前記入力された情報と所定の関係にある情報を特定し、特定した情報を出力する機能情報抽出処理を実行する、
請求項1に記載のソリューション管理装置。
【請求項6】
前記演算装置は、前記提供価値抽出処理において、前記価値創出原理情報から、前記入力された情報と前記主体が非類似であり前記客体及び前記変動要素が同一又は類似である各構成要素の組み合わせを検索する、
請求項2に記載のソリューション管理装置。
【請求項7】
前記演算装置は、前記提供価値抽出処理において、前記入力された情報と各構成要素の内容が全て同一又は類似である前記組み合わせを検索できなかった場合には、その内容が同一又は類似であった構成要素に係る前記価値創出原理情報と、当該構成要素以外の非類似の構成要素に係る前記入力された情報とからなる組み合わせの情報を、新たな価値創出原理情報として記憶する、
請求項2に記載のソリューション管理装置。
【請求項8】
前記演算装置は、前記提供価値抽出処理において、前記検索された価値創出原理情報の各構成要素のうち、前記入力された情報とその内容が類似であった構成要素を特定し、特定した構成要素の内容を前記入力された情報の当該構成要素の内容に置換した情報を、新たな価値創出原理情報として生成し記憶する価値創出原理情報更新処理を実行する、
請求項2に記載のソリューション管理装置。
【請求項9】
情報処理装置が、
所定の目標を実現するための価値の創出の方法をパターン化した情報であって、前記価値を提供する主体、前記価値の提供対象である客体、及び、前記価値における前記客体の活動である変動要素の各構成要素の組み合わせを複数パターン記憶した情報である価値創出原理情報と、
前記価値創出原理情報における組み合わせのいずれかと対応づけられた情報であって前記価値の具体的な内容を示す情報である提供価値情報と、を記憶し、
ユーザから主体、客体、及び変動要素の各構成要素を含む情報の入力を受け付けるユーザ入力処理と、
前記入力された情報と所定の関係にある主体、客体、及び変動要素の組み合わせを前記価値創出原理情報から検索し、検索した組み合わせに対応する前記提供価値情報を特定し、特定した提供価値情報を出力する提供価値抽出処理と、
を実行する、ソリューション管理方法。
【請求項10】
情報処理装置に、
所定の目標を実現するための価値の創出の方法をパターン化した情報であって、前記価値を提供する主体、前記価値の提供対象である客体、及び、前記価値における前記客体の活動である変動要素の各構成要素の組み合わせを複数パターン記憶した情報である価値創出原理情報と、
前記価値創出原理情報における組み合わせのいずれかと対応づけられた情報であって前記価値の具体的な内容を示す情報である提供価値情報と、を記憶させ、
ユーザから主体、客体、及び変動要素の各構成要素を含む情報の入力を受け付けるユーザ入力処理と、
前記入力された情報と所定の関係にある主体、客体、及び変動要素の組み合わせを前記価値創出原理情報から検索し、検索した組み合わせに対応する前記提供価値情報を特定し、特定した提供価値情報を出力する提供価値抽出処理と、
を実行させる、ソリューション管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソリューション管理装置、ソリューション管理方法、及びソリューション管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
IoT(Internet Of Things)時代を迎えるにあたり、事業者のビジネス形態は、「モノ」売りから、社会課題又は顧客課題の解決手段そのものに直結する「コト」売りへと、事業分野に関わらず大きく変化している。「コト」売りの時代においては、「モノ」売り時代に比べて社会課題や顧客課題はより抽象的な概念からの検討が必要であることが多い。例えば、「モノ」売りにおいては、「Aという機能(あるいは技術)を搭載する製品」といったような技術的要素により具体的に製品の特徴等を謳い易いが、一方でIoT等の「コト」売りにおいては、社会課題及び顧客課題の検討、さらには当該課題を解決するためにIoTにて提供できる「価値」の検討といった抽象的な概念の検討から始まり、当該価値を実現するための具体的なコンピュータを用いたデジタルソリューションを構築する、という形態へと状況が変化しつつある。
【0003】
例えば、顧客の価値に係る課題解決に有用なデジタルソリューションやその顧客価値を提示するための技術として、特許文献1には、デジタルソリューション提案支援装置が、ソリューション情報とデジタル化成熟度の情報とを格納した記憶装置と、所定のインターフェイスを介して指定を受けた所定顧客における課題に関し、デジタルソリューションおよびその導入時の顧客価値の算定ロジックをソリューション情報から特定し、特定した算定ロジックの入力値として当該顧客に関し保持している所定の属性値を適用して顧客価値を試算し、デジタル化成熟度の情報が示すレベルの高さに応じた所定係数を試算結果に適用することで、顧客提示用の顧客価値を特定し、特定したデジタルソリューションおよび顧客提示用の顧客価値の情報を出力する演算装置とを含む構成とすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このようなデジタルソリューションを提供する事業者においては、「価値」を基点に一度開発したデジタルソリューションを効率的かつ拡散的にユーザ企業等に展開する(以下、N倍化という)ことが事業の発展及び拡大のために特に要請されている。ここで、本明細書において、N倍化における「効率的」とは、「低コスト及び/又は短い顧客要求リードタイムで」という意味で主に用い、「拡散的」とは、「同様の価値を所望する、できるだけ沢山の顧客に」という意味で主に用いる。
【0006】
しかしながら、上述の通り「価値」は抽象的な概念であるため、価値の観点からN倍化を行うことは一般に困難である。例えば、N倍化される対象(ユーザに提供される商材)は技術的機能を有するデジタルソリューションであるところ、複数の異なるユーザ企業から概ね共通に求められるような「価値」を特定したとしても、各ユーザの設備環境の差異や、業種の差異、又は求める「価値」を具体化させたときに生じる差異等が、ユーザ企業ごとに当該「価値」を実装する際の技術的な差異となって現れてしまい、例えばユーザ企
業によっては既存のソフトウェア等では当該価値を実現できず、大きなコストのかかるSI(システムインテグレーション)が必要になる等、N倍化実現の阻害要因となり得る。特許文献1では、このような「価値」を起点にしたN倍化を目指した場合に生じるデジタルソリューション、すなわち技術的機能への影響等については考慮されておらず、そのような観点からの構成も充分に備えていない。
【0007】
本発明はこのような現状に鑑みてなされたものであり、ユーザ企業から指定された情報に対して、ユーザ企業の事業課題等と整合する価値の情報を、当該価値を実現する技術のN倍化可否も鑑みて提供し、これにより、当該価値を提供するための技術的実装が可能なデジタルソリューションをユーザ企業に提案又は提供することが可能となり、ひいてはN倍化を実現することが可能なソリューション管理装置、ソリューション管理方法、及びソリューション管理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明の一つは、所定の目標を実現するための価値の創出の方法をパターン化した情報であって、前記価値を提供する主体、前記価値の提供対象である客体、及び、前記価値によって変動する前記客体に関する変数である変動要素の各構成要素の組み合わせを複数パターン記憶した情報である価値創出原理情報と、前記価値創出原理情報における組み合わせのいずれかと対応づけられた情報であって前記価値の具体的な内容を示す情報である提供価値情報と、を記憶する記憶装置、及び、ユーザから主体、客体、及び変動要素の各構成要素を含む情報の入力を受け付けるユーザ入力処理と、前記入力された情報と所定の関係にある主体、客体、及び変動要素の組み合わせを前記価値創出原理情報から検索し、検索した組み合わせに対応する前記提供価値情報を特定し、特定した提供価値情報を出力する提供価値抽出処理と、を実行する演算装置を備える、ソリューション管理装置、とする。
【0009】
また、上記課題を解決するための本発明の一つは、情報処理装置が、所定の目標を実現するための価値の創出の方法をパターン化した情報であって、前記価値を提供する主体、前記価値の提供対象である客体、及び、前記価値における前記客体の活動である変動要素の各構成要素の組み合わせを複数パターン記憶した情報である価値創出原理情報と、前記価値創出原理情報における組み合わせのいずれかと対応づけられた情報であって前記価値の具体的な内容を示す情報である提供価値情報と、を記憶し、ユーザから主体、客体、及び変動要素の各構成要素を含む情報の入力を受け付けるユーザ入力処理と、前記入力された情報と所定の関係にある主体、客体、及び変動要素の組み合わせを前記価値創出原理情報から検索し、検索した組み合わせに対応する前記提供価値情報を特定し、特定した提供価値情報を出力する提供価値抽出処理と、
を実行する、ソリューション管理方法、とする。
【0010】
また、上記課題を解決するための本発明の一つは、情報処理装置に、所定の目標を実現するための価値の創出の方法をパターン化した情報であって、前記価値を提供する主体、前記価値の提供対象である客体、及び、前記価値における前記客体の活動である変動要素の各構成要素の組み合わせを複数パターン記憶した情報である価値創出原理情報と、前記価値創出原理情報における組み合わせのいずれかと対応づけられた情報であって前記価値の具体的な内容を示す情報である提供価値情報と、を記憶させ、ユーザから主体、客体、及び変動要素の各構成要素を含む情報の入力を受け付けるユーザ入力処理と、前記入力された情報と所定の関係にある主体、客体、及び変動要素の組み合わせを前記価値創出原理情報から検索し、検索した組み合わせに対応する前記提供価値情報を特定し、特定した提供価値情報を出力する提供価値抽出処理と、を実行させる、ソリューション管理プログラム、とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ユーザ企業から指定された情報に対して、ユーザ企業の事業課題等と整合する価値の情報を、当該価値を実現する技術のN倍化可否も鑑みて提供し、これにより、当該価値を提供するための技術的実装が可能なデジタルソリューションをユーザ企業に提案又は提供することが可能となり、ひいてはN倍化を実現することが可能となる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態に係るソリューション管理システムの構成の一例を示す図である。
【
図2】ソリューション管理装置が備える主な機能の一例を説明する図である。
【
図3】価値機能対応情報のデータ構造の一例を示す図である。
【
図4】デジタルソリューションに係るV-Fモデルの概念図である。
【
図5】スポーツ分野又はエンターテイメント分野におけるファンサイトに対するデジタルソリューションをV-Fモデルを当てはめた例を説明する図である。
【
図6】価値創出原理情報(コアKPI)のデータ構造の一例を示す図である。
【
図7】ソリューション管理装置が備えるハードウェアの一例を示す図である。
【
図8】ソリューション提供支援処理の一例の概要を説明する図である。
【
図9】ソリューション提供支援処理の一例を説明するフロー図である。
【
図10】ソリューション提供画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本実施形態に係るソリューション管理システム1の構成の一例を示す図である。ソリューション管理システム1は、IoT(Ineternet Of Things)等を利用したデジ
タルトランスフォーメーション(DX)に係るビジネスを行うユーザ(個人又は組織)が使用する1又は複数のユーザ端末20と、そのビジネスの解決手段に関する情報(デジタルソリューション)を提供するソリューション管理装置10とを含んで構成される。
【0014】
ソリューション管理装置10及びユーザ端末20の間は、通信線(データバス)、専用線、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、又はインターネッ
ト等の有線若しくは無線の通信ネットワーク3によって通信可能に接続される。
【0015】
本実施形態のソリューション管理装置10は、ユーザがその顧客に提供する「価値」(「価値」の意義の詳細は後述する)と、その価値を実現するための技術的又は機能的な手段(以下、単に「機能」という)とを対応づけたモデル(以下、V-Fモデルという)に基づき、デジタルソリューションに対応した価値に関する情報を生成し、生成した情報を当該ユーザに提供する。
【0016】
図2は、ソリューション管理装置10が備える主な機能の一例を説明する図である。ソリューション管理装置10は、V-Fモデルの情報である価値機能対応情報500、及び類似性情報600を記憶している。
【0017】
まず、価値機能対応情報500について説明する。
<価値機能対応情報>
図3は、価値機能対応情報500のデータ構造の一例を示す図である。価値機能対応情報500は、価値情報510及び機能情報520により構成される。
【0018】
価値情報510は、ユーザが行うサービス上の目標(課題)及び、その目標を達成するために顧客に提供する「価値」に関する情報である。具体的には、価値情報510は、KPI情報530、目標KPI情報540、価値創出原理情報550、及び提供価値情報5
60を含む。
【0019】
KPI情報530は、サービスの目標に関する指標の情報である。例えば、KPI情報530はKPI(Key Performance Indicators)の情報であり、サービスの売上目標に関する現在の達成度の情報である。
【0020】
目標KPI情報540は、KPI情報530が示す目標を構成する個々の具体的な目標に関する指標の情報である。すなわち、KPI情報530に対しては1又は複数の目標KPI情報540が紐付けられる。目標KPI情報540は、例えば、顧客のサービスへの参加率の目標の情報、顧客の総数の目標の情報、又は、顧客の単価の目標の情報である。
【0021】
価値創出原理情報550(以下、コアKPIともいう)は、目標KPI情報540が示す目標を実現するための価値の創出の方法をパターン化(法則化)した情報であって、価値を創出又は提供する「主体」、価値の提供対象である「客体」、及び、価値によって変動する客体に関する変数である「変動要素」の組み合わせを複数パターン記憶した情報である。価値創出原理情報550は、複数の業種を跨いで存在するような、価値の創出の共通パターンを定義した情報である。
【0022】
本実施形態では、1又は複数種類(カテゴリ)の価値創出原理情報550が各目標KPI情報540に対して紐付けられている。価値創出原理情報550は、価値創出原理の構成要素であり、本実施形態では、新たに顧客を生み出すこと(創生)、既存の顧客をサービスにより巻き込むこと(育成)、及び、サービスに巻き込んだ顧客を維持すること(維持)、により構成されるコアKPIの情報である。価値創出原理情報550は、その内容が多岐に渡る価値を体系化しているので、当該価値創出原理情報550を基点として後述するように複数の業種にわたる提供価値情報560の展開、すなわちN倍化を可能としている。価値創出原理情報550の詳細は後述する。なお、本実施形態では、価値創出原理情報550は創生、育成、及び維持の3種類からなるものとするが、これらのうち一部のみを採用してもよいし、他の要素を加え又は置換してもよい。
【0023】
提供価値情報560は、詳細を後述する価値創出原理情報における主体、客体、及び変動要素の組み合わせのいずれかと対応づけられた、具体的な価値の内容を示す情報であり、後述するリードタイム情報565に対応づけられる。
【0024】
本実施形態では、提供価値情報560は、価値が提供される客体(すなわち顧客)の視点で内容が特定されるものとする。例えば、提供価値情報560は、プロスポーツの運営ビジネスにおける「育成」というコアKPIにおける具体的な提供価値の一つとして、「(試合観戦する顧客が)試合観戦しながら試合結果を予想してワクワクしたい。」という情報、又は、「創生」というコアKPIにおける具体的な提供価値の1つとしてとして、「(試合観戦する顧客が)ペットと一緒に試合観戦できる。」という情報である。
【0025】
リードタイム情報565は、提供価値情報560が示す価値を提供するために必要なリードタイム(例えば、納入の必要工数、納入の所要時間)の情報である。リードタイム情報565は、提供価値情報560のいずれかに対応づけられている。
【0026】
次に、機能情報520は、提供価値情報560が示す価値を提供するために必要な、情報処理システムが行う処理(情報処理システムが有する機能)に関する情報である。機能情報520は、各提供価値情報560に対応づけられた、1又は複数種類の業務機能情報570を含んで構成される。業務機能情報570は、例えば、ソフトウェアの構成、情報処理装置の構成、又はネットワークの構成の情報である。
ここで、以上の情報を用いたV-Fモデルの具体例を説明する。なお、以下の説明では
、スポーツチームやスタジアム等の運営者向けの、ファン獲得等を目的としたデジタルソリューションを一例に説明するが、あくまで具体例であって本発明はこれに限定されるものではない。
【0027】
<V-Fモデル>
図4は、デジタルソリューションに係るV-Fモデルの概念図である。このV-Fモデルは階層構造となっており、「価値」に関する概念であるValue層310と、「機能」に関する、言い換えれば技術的な概念に関するFunction層320とに大別される。さらに、Value層11は、価値創出原理(V1)(価値創出原理情報550に対応)と、顧客へ提供される個別具体的な提供価値(V2)(提供価値情報560に対応)の順に連結された階層構造になっている。
【0028】
価値創出原理(V1)は、一つ又は複数のデジタルソリューションによって構成される情報処理システムに内包される複数の異なる提供価値(V2)が共通に有する、価値を創出するための法則である。価値創出原理(V1)は、多岐に渡る提供価値の創出を法則化することによって、業種を跨いだ提供価値のN倍化を可能にすることを目的として設定されている。
【0029】
提供価値(V2)は、対象となるデジタルソリューションによって提供される個別具体的な価値である。提供価値(V2)は、価値を享受する者の視点の表現で、かつ享受する価値そのもののみを構成要件として定義される。なぜなら、提供価値(V2)は、Value層310の最下位でFunction層320と接続される位置、すなわち「Value」と「Function」との境界にあるため、それぞれの「価値」と「機能」との概念が混在しないよう、明確に区別される必要があるためである。特に「機能」は、その表現方法が多岐にわたるため、提供価値(V2)の概念と混在しやすい傾向がある。例えば、スポーツ観戦等に関するデジタルソリューションにおいて、「試合結果を予想してワクワクしたい」は当該試合の観戦者(価値享受者)が享受する価値そのものにフォーカスした概念として定義されているため提供価値(V2)になり得るが、「楽しい試合結果予想ゲーム」は「ゲーム」という「機能」を指しているため、提供価値(V2)とは異なる概念である。また、「価値提供者の提供物・ケーパビリティ」そのものが提供価値(V2)と混在する場合もある。例えば、「我々(プロバイダ)はITとOTをトータルソリューションで顧客に提供できる」という設定は、そのデジタルソリューションを提供するプロバイダのケーパビリティそのものを定義しているため、顧客が享受する提供価値(V2)としての設定ではない。そのため前述したように、提供価値(V2)とそれ以外との混在を避けるため、提供価値(V2)は享受する「価値」のみによって構成している。
【0030】
一方、Funtion層320は、各提供価値(V2)を直接的に実現する業務等の概念によって構成されるユーザインターフェース(UI)(F2)(業務機能情報570に対応)、及び、各業務を実現する物理的なソフトウェアであるコンポーネントF1によって構成されている。
【0031】
次に、このようなV-Fモデルにデジタルソリューションを当てはめた例を説明する。
図5は、スポーツ分野又はエンターテイメント分野におけるファンサイトに対するデジタルソリューションをV-Fモデルを当てはめた例を説明する図である。なお、スポーツ分野の場合は、例えば野球チーム又はサッカーチームのファンサイト(運営者)であり、エンターテイメント分野の場合は、例えば、音楽アーティストが所属する芸能プロダクション又は音楽会社等のファンサイト(運営者)である。
【0032】
まず、本デジタルソリューションが運営者に提供するコンセプトとしての「価値」は、「ファンの活性化」である。そして、当該「価値」における個別具体的な提供価値(V2
)を享受するのはファンの人たち自身であるため、例えばファンの人たちが享受する個別価値(V2)としては、「ファンサイトで運営している勝敗予想ゲームでワクワクしたい」や「ポイントを貯めて非売品のグッズを獲得したい」といった、「ファンの活性化」というコンセプトの射程内での個別具体的な価値が挙げられる。
【0033】
以下、これらの提供価値(V2)などに基づいて価値創出原理(V1)を検証すると、本デジタルソリューションにおける提供価値(V2)は、
図5に示す3つの上位概念(育成、維持、創生)のいずれかに該当しており、これらが本デジタルソリューションで提供するコンセプトとしての価値のファクターである「ファンの活性化」になっていることを説明する。
【0034】
まず、ファンは、「今までファンでなかった者」(
図5に示す三角形の外部領域)と「既にファンである者」(
図5に示す三角形の内部領域)の2つのグループに大別でき、各提供価値(V2)は、この2つのグループのどちらかに対して提供されるものである。さらに「既にファンである者」は、その愛好度合いに段階があり、度合いが高い順に「プレミアム」「コア」「ファン」「ファン候補」の4つのグループに区分でき、愛好度が高いグループほどファンの人数が少なく、且つファン一人当たりの運営者への売上貢献が大きいことが期待される。すなわち本デジタルソリューションでは、上記グループの少なくとも一つに対して価値を提供することによって、各グループ内のファンを成長させ、「ファンの活性化」というコンセプトである提供価値(V2)を実現している。これらの現象に基づいて、提供価値(V2)は以下の三つに区分される。なお、本実施例の中ではこのようなV3の各区分を「コアKPI」と呼ぶことがある。コアKPIの詳細については後述する。
【0035】
一つ目の提供価値(V2)の区分は「育成」である。これは、「既にファンである者」の運営者側への愛好度を高めることによって、より上位層の区分へと引き上げようとする価値である。二つ目の提供価値(V2)の区分は「創生」である。これは、「未だファンになっていない者」を、「既にファンである者」に引き上げようとする価値である。三つ目の提供価値(V2)の区分は「維持」である。これは、「既にファンである者」の愛好度が下位層に下がらないようにする価値である。
【0036】
以上の区分化によって、本デジタルソリューションの価値創出原理(V1)として、提供価値(V2)が「創生」「育成」「維持」の区分のうちいずれを実施しようとしていることが分かる。このように、提供価値(V2)の原理化によって、ファンの中でもどのレベルにあるファン(ユーザ)をターゲットにした提供価値であるかが定められ、より、運営者(顧客)が所望する価値の提供が可能となる。
【0037】
次に、V-Fモデルにおける価値創出原理情報550(コアKPI)の詳細について説明する。
<価値創出原理情報>
図6は、価値創出原理情報550のデータ構造の一例を示す図である。価値創出原理情報550は、目標KPI情報540の少なくともいずれか(例えば、創生、育成、及び維持)に対応づけて設定される。各価値創出原理情報550は、互いに対応づけられた主体情報551、客体情報553、及び変動要素情報555を有する。
【0038】
主体情報551は、価値を享受する主体の情報である。主体情報551は、主体のカテゴリ(上位概念)の情報と、当該主体の下位概念の情報である、1又は複数の主体下位概念情報552とを含む。本実施形態では、主体情報551には、ユーザの業種の情報が設定される。例えば、主体情報551における上位概念の情報が「プロスポーツ団体のオーナ」である場合、主体下位概念情報552は「プロスポーツ団体のオーナ」に対応づけられた「プロ野球球団のオーナ」、「プロサッカーチームのオーナ」、及び「プロバスケッ
トボールチームのオーナ」である。主体情報551における各情報は、客体情報553における各情報の少なくともいずれか、及び、変動要素情報555における各情報の少なくともいずれかに対応づけられている。なお、本実施形態では、主体情報551は上記例のように2階層であるものとするが、3階層以上の構成を備えていてもよい。
【0039】
客体情報553は、主体情報551が示す主体が価値を提供する対象すなわち客体の情報である。客体情報553は、客体の上位概念(カテゴリ)の情報と、当該客体の下位概念の情報である、1又は複数の客体下位概念情報554とを含む。本実施形態では、客体情報553には、ユーザの顧客等の情報が設定される。例えば、客体情報553における上位概念の情報が「ファン」である場合、客体下位概念情報554は「ファン」に対応づけられた「コアなファン」、及び「ファンの候補」である。客体情報553における各情報は、主体情報551における各情報の少なくともいずれか、及び、変動要素情報555における各情報の少なくともいずれかに対応づけられている。なお、本実施形態では、客体情報553は上記例のように2階層であるものとするが、3階層以上の構成を備えていてもよい。
【0040】
変動要素情報555は、客体情報553が示す客体に関する変数の情報である。変動要素情報555は、変動要素の上位概念(カテゴリ)の情報と、当該変動要素の下位概念の情報である、1又は複数の変動要素下位概念情報556とを含む。本実施形態では、変動要素情報555には、カテゴリごとの顧客の数等の情報が設定される。例えば、変動要素情報555における上位概念の情報は「ファンの数」である場合、変動要素下位概念情報556は「ファンの数」に対応づけられた「ファン候補の数」及び「コアなファンの数」である。変動要素情報555における各情報は、主体情報551における各情報の少なくともいずれか、及び、客体情報553における各情報の少なくともいずれかに対応づけられている。なお、本実施形態では、変動要素情報555は上記例のように2階層であるものとするが、3階層以上の構成を備えていてもよい。
【0041】
以上のような、価値創出原理情報550における主体情報551における各情報、客体情報553における各情報、及び変動要素情報555における各情報の組み合わせのそれぞれが、各提供価値情報560の少なくともいずれかと対応づけられている。ここで一例として、上述した提供価値(V4)の「創生」「育成」「維持」それぞれを提供価値情報560に基づき、主体、客体、変動要素の3つの要素によって構成される。例えば「創生」「育成」「維持」は、いずれも主体は「プロスポーツ団体のオーナ」、客体は「ファンの数」であるが、「変動要素」については以下のようにそれぞれ異なる。
【0042】
・「育成」の変動要素:現状の区分よりも上位層の区分へ引き上げられた客体、または当該客体の遷移率
・「創生」の変動要素:区分外である者の数から、当該区分内に引き込まれた客体、または当該客体の遷移率
・「維持」の変動要素:現状の区分よりも下位層の区分へ引き下がらないようにされた客体、または当該客体の遷移率
【0043】
なお、価値創出原理情報550は、例えば、ソリューション管理装置10の管理者が、過去に各業種のユーザがその事業において提供した価値の実績の情報を入力することにより作成されてもよいし、所定の業務データベースから自動的に取得されてもよい。
【0044】
次に、
図2に示す類似性情報600は、価値創出原理情報における各主体間、各客体間、及び各変動要素間のそれぞれの類似関係を示す情報である。
【0045】
具体的には、類似性情報600は、主体情報551における各情報の間の類似関係の情
報を含む。また、類似性情報600は、客体情報553における各情報の間の類似関係の情報を含む。また、類似性情報600は、変動要素情報555における各情報の間の類似関係の情報を含む。
【0046】
本実施形態では、主体情報551の各主体下位概念情報552間の類似関係について、各情報が同一の場合は同一業種、主体情報551が類似の場合は類似業種、及び、主体情報551が非類似(同一でも類似でもない)の場合は異業種であるものとする。例えば、主体下位概念情報552に関して、類似性情報600には、「プロ野球球団のオーナ」と「プロサッカーチームのオーナ」は類似であるが、「プロ野球球団のオーナ」と「IT企業のオーナ」は非類似であると設定される。なお、類似及び非類似の関係は、同一階層の情報の間の関係に限らず、異なる階層の間の類似及び非類似の関係を含むものであってよい。
【0047】
ここで留意されたいのは、主体情報あるいは主体下位概念情報552と、入力情報との間は「クラス」と「インスタンス」の関係にあり、この2つの関係の同一、類似、または非類似が比較される点である。例えば、主体下位概念情報552に「プロ野球球団のオーナ」というクラスが存在する場合、当該クラスには、インスタンスの情報として、「プロ野球球団のオーナ」がこれまでにソリューションとして提供した実績に関する情報が蓄積される。
【0048】
より具体的な例としては、「プロ野球球団のオーナ」のクラスにはインスタンスの情報として「ABCベースボールクラブのオーナー」の過去の具体的な実績に関する情報が蓄積される。そして、このようなクラスである主体情報あるいは主体下位概念情報552と、「XYZ野球クラブのオーナー」なるインスタンスを含む入力情報との同一又は類似を比較する場合、入力情報と比較されるのは、インスタンスの情報である「ABCベースボールクラブオーナー」ではなく、「ABCベースボールクラブオーナー」の事例(実績)を含んでいるクラスである「プロ野球球団のオーナー」である。そして、インスタンスである「XYZ野球クラブのオーナー」は、クラスである「プロ野球球団のオーナー」の下位概念として内包されるため、入力情報と、主体情報あるいは主体下位概念情報552とは、「同一」と判断される。
【0049】
次に、ソリューション管理装置10は、ユーザ入力部101、提供価値抽出部103、機能抽出部105、新規ソリューション候補出力部107、及び価値創出原理情報更新部109の各機能部(プログラム)を備える。
【0050】
ユーザ入力部101は、ユーザから主体、客体、変動要素、及び機能の情報(ユーザ入力情報)の入力を受け付ける。
【0051】
提供価値抽出部103は、ユーザ入力情報と所定の関係にある主体、客体、及び変動要素の組み合わせを価値創出原理情報550から検索し、検索した組み合わせに対応する提供価値情報560を特定し、特定した提供価値情報560を出力する。
【0052】
本実施形態では、提供価値抽出部103は、類似性情報600に基づき、ユーザ入力情報と各構成要素の内容が全て同一又は類似である組み合わせを価値創出原理情報550から検索する。
【0053】
機能抽出部105は、機能情報520から、ユーザ入力情報と所定の関係(例えば、同一又は類似の関係)にある情報を特定し、特定した情報を出力する。
【0054】
新規ソリューション候補出力部107は、ユーザ入力情報と同一又は類似の価値内容が
価値創出原理情報550に存在しなかった場合は、そのユーザ入力情報を新たな価値創出原理情報550(新規ソリューション候補)として記憶する。すなわち、新規ソリューション候補出力部107は、提供価値抽出部103においてユーザ入力情報と各構成要素の内容が全て同一又は類似である組み合わせを検索できなかった場合には、その内容が同一又は類似であった構成要素に係る価値創出原理情報550と、その構成要素以外の非類似の構成要素に係るユーザ入力情報とからなる組み合わせの情報を、新たな価値創出原理情報550として記憶する。
【0055】
価値創出原理情報更新部109は、ユーザ入力情報と類似の価値内容を価値創出原理情報550から検索できた場合は、その価値創出原理情報550の一部をユーザの情報(例えば、ユーザの主体たる業種)に置き換えた情報を新たな価値創出原理情報550として記憶する。すなわち、価値創出原理情報更新部109は、提供価値抽出部103において検索された価値創出原理情報550の各構成要素のうち、ユーザ入力情報とその内容が類似であった構成要素を特定し、特定した構成要素の内容をユーザ入力情報の当該構成要素の内容に置換した情報を、新たな価値創出原理情報として生成し記憶する。
【0056】
次に、
図7は、ソリューション管理装置10が備えるハードウェアの一例を示す図である。ソリューション管理装置10は、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、GPU(Graphics Processing Unit)、又はFPGA(Field-Programmable Gate Array)等の演算装置11と、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の記
憶装置12(メモリ)と、HDD(Hard Disk Drive)、又はSSD(Solid State Drive)等の補助記憶装置13と、マウスやキーボード等で構成される入力装置14と、液晶ディスプレイ又は有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等で構成される表示装置15と、NIC(Network Interface Card)、無線通信モジュール、USB(Universal Serial Interface)モジュール、又はシリアル通信モジュール等で構成される通信装置16とを備える。なお、ユーザ端末20も同様のハードウェア構成を備える。
【0057】
図1-6に基づきこれまでに説明したソリューション管理装置10の各機能は、演算装置11が、記憶装置12又は補助記憶装置13に格納されている各プログラムを読み出して実行することにより実現される。また上記のプログラムは、例えば、記録媒体に記録して配布することができる。なお、ソリューション管理装置10は、上記のような物理的なハードウェアを備える計算機であってもよいし、物理的な計算機を論理的に分割した計算機の単位(仮想サーバ)でもよい。また、ソリューション管理装置10は、1台または複数の計算機クラスタ上で実行されるタスク(プロセスやコンテナ)であってもよい。
次に、ソリューション管理装置10が行う処理について説明する。
【0058】
<ソリューション提供支援処理>
図8は、ソリューション管理装置10が行う処理のうち、デジタルソリューションに係る価値の情報を提供するソリューション提供支援処理の一例の概要を説明する図である。
【0059】
まず、ソリューション管理装置10は、ユーザから、ユーザが提供する価値に関する主体(ユーザの業種)、客体、及び機能の情報(ユーザ入力情報)の入力を受け付ける(s1)。
【0060】
ソリューション管理装置10は、価値機能対応情報500における各価値創出原理情報550及び提供価値情報560を参照することにより、ユーザ入力情報と同一又は類似の、価値創出原理情報550における各構成要素の組み合わせ(主体、客体、及び変動要素の組み合わせ)を検索し、検索した組み合わせに対応づけられている提供価値情報560を特定して画面に表示する(s2)。なお、ソリューション管理装置10は、検索した価値創出原理情報550の一部情報をユーザの情報に修正して、新たな価値の原理の情報と
して価値創出原理情報550に追加する。
【0061】
また、ソリューション管理装置10は、ユーザの業種と異業種である(主体が非類似である)が客体及び変動要素が同一又は類似である、価値創出原理情報550の各構成要素の組み合わせ(サブ情報)を検索し、その組み合わせ(異業種展開情報)、これに対応するリードタイム、及び機能(コア機能)の情報を画面に表示する(s3)。
【0062】
次に、
図9は、ソリューション提供支援処理の一例を説明するフロー図である。ソリューション提供支援処理は、例えば、ソリューション管理装置10が起動したことを契機に開始される。
【0063】
まず、ソリューション管理装置10のユーザ入力部101は、ユーザ端末20から、ユーザが提供する価値の各構成要素の情報(ユーザ入力情報)の入力を受け付ける(s11)。
【0064】
ユーザ入力情報は、価値を提供する主体の情報(例えば、ユーザたる球団オーナ)、価値を提供する対象である客体の情報(例えば、ファン)、及び当該客体の変動要素(例えば、ファンの増加数)を含む。
【0065】
なお、ユーザ入力部101は、価値の提供方法すなわち機能の情報(例えば、クイズゲーム)の入力を受け付けてもよい。本実施形態では、ユーザ入力部101は、この機能の情報の入力を受け付けるものとする。
【0066】
提供価値抽出部103は、s11で機能の入力があったか否かを判定する(s13)。s11で機能の入力があった場合には(s13:YES)、提供価値抽出部103は、s31の処理を実行し、s11で機能の入力がなかった場合には(s13:NO)、提供価値抽出部103は、s15の処理を実行する。
【0067】
s31において提供価値抽出部103は、類似性情報600に基づき、価値機能対応情報500における各機能情報510から、ユーザ入力情報における機能と同一又は類似の業務機能情報570を検索する。そして、提供価値抽出部103は、検索した業務機能情報570を画面に表示する。その後はs15の処理が行われる。なお、ユーザ入力情報における機能と各業務機能情報570との間の同一又は類似の関係は、例えば、類似性情報600が予め記憶しているものとする。なお、提供価値抽出部103は、ユーザ入力情報における機能と同一の業務機能情報570のみを検索してもよい。
【0068】
s15において提供価値抽出部103は、各価値創出原理情報550に登録されている主体、客体、及び変動要素の組み合わせパターンから、ユーザ入力情報と同一又は類似する主体、客体、及び変動要素の組み合わせを検索する。そして、提供価値抽出部103は、検索した価値創出原理情報550の各構成要素の組み合わせのそれぞれについて、対応づけられている提供価値情報560を全て取得する。
【0069】
具体的には、提供価値抽出部103は、各価値創出原理情報550において主体下位概念情報552、客体下位概念情報554、及び変動要素下位概念情報556の組み合わせを全て作成し、作成した各組み合わせにおける主体下位概念情報552、客体下位概念情報554、及び変動要素下位概念情報556と、ユーザ入力情報における主体、客体、及び変動要素とをそれぞれ、類似性情報600を参照しつつ比較することにより、主体、客体、及び変動要素に関する同一及び類似をそれぞれ判定する。そして、提供価値抽出部103は、主体、客体、及び変動要素に関して全てユーザ入力情報と同一である組み合わせ(以下、同一組み合わせという)を検索できた場合は、その組み合わせを、ユーザ入力情
報と同一の、価値創出原理情報550における情報とする。また、提供価値抽出部103は、主体、客体、及び変動要素の3つの構成要素のうち1つ又は2つについてはユーザ入力情報と類似であるが、その他の構成要素についてはユーザ入力情報と同一である組み合わせ(以下、類似組み合わせという)を価値創出原理情報550から検索できた場合は、その組み合わせを、ユーザ入力情報と類似の、価値創出原理情報550における情報とする。
【0070】
なお、提供価値抽出部103は、s15の処理に際して、ユーザ端末20から、KPI情報530又は目標KPI情報540を特定するための情報の入力を受け付け、入力された情報に対応づけられる価値創出原理情報550を抽出し、抽出した価値創出原理情報550を検索の対象としてもよい。また、提供価値抽出部103は、各価値創出原理情報550のうち検索対象とする各価値創出原理情報550の指定を受け付けてもよい。
【0071】
提供価値抽出部103は、s15で同一組み合わせ又は類似組み合わせを検索できたか否かを確認する(s17)。同一組み合わせ又は類似組み合わせを検索できなかった場合は(s17:NO)、提供価値抽出部103は、s33の処理を実行し、同一組み合わせ又は類似組み合わせを検索できた場合は(s17:YES)、提供価値抽出部103は、s19の処理を実行する。
【0072】
s33において新規ソリューション候補出力部107は、s11で入力されたユーザ入力情報を含んだ価値の情報を、新たな価値創出原理情報550(新規ソリューション候補)として追加する。
【0073】
例えば、新規ソリューション候補出力部107は、価値創出原理情報550から、s11で入力されたユーザ入力情報とその内容が同一又は類似であった構成要素(主体下位概念情報552、客体下位概念情報554、又は変動要素下位概念情報556)があればその構成要素を特定し、価値創出原理情報550におけるその特定した構成要素の内容を取得する。また、新規ソリューション候補出力部107は、s11で入力されたユーザ入力情報のうち、上記特定した構成要素以外の構成要素(すなわち、s11で入力されたユーザ入力情報とその内容が非類似であった構成要素)の内容を取得する。そして、新規ソリューション候補出力部107は、取得したこれらの構成要素の組み合わせを、新規ソリューション候補とする。以上でソリューション提供支援処理は終了する。
【0074】
なお、新規ソリューション候補出力部107は、追加した組み合わせの各構成要素と、既存の価値創出原理情報550の各構成要素の同一又は類似性の関係を新規に定義してもよい。例えば、新規ソリューション候補出力部107は、追加した組み合わせにおける主体(主体下位概念情報552)、客体(客体下位概念情報554)、及び変動要素(変動要素下位概念情報556)と、既存の価値創出原理情報550の他の主体(主体下位概念情報552)、客体(客体下位概念情報554)、及び変動要素(変動要素下位概念情報556)との間のそれぞれの同一又は類似関係の入力を管理者等から受け付け、入力された情報を類似性情報600に設定する。なお、新規ソリューション候補出力部107は、この同一又は類似の関係の情報を、所定の体系データベース等に基づき自動的に設定してもよい。
【0075】
一方、s19において提供価値抽出部103は、ユーザ入力情報と変動要素が同一であった組み合わせ(価値創出原理情報550)に対応づけられている提供価値情報560を全て画面に表示する。すなわち、提供価値抽出部103は、s15で検索した同一組み合わせ及び類似組み合わせのうち、変動要素が同一であった同一組み合わせ及び類似組み合わせを全て抽出し、抽出した同一組み合わせ及び類似組み合わせに対応づけられている提供価値(提供価値情報560)を画面に表示する。
【0076】
さらに、提供価値抽出部103は、s15で検索した、s19で表示した組み合わせ以外の組み合わせ(価値創出原理情報550)に対応づけられている提供価値情報560を全て画面に表示する(s21)。すなわち、提供価値抽出部103は、s19で表示した同一組み合わせ及び類似組み合わせ以外の同一組み合わせ及び類似組み合わせに対応づけられている提供価値を画面に表示する。続いてs23の処理が行われる。
【0077】
さらに、提供価値抽出部103は、ユーザの業種と異なる異業種の提供価値情報560をサブ情報として表示する(s23、s27)。
まず、s23において提供価値抽出部103は、主体がユーザ入力情報と非類似であるが、客体及び変動要素はユーザ入力情報と同一又は類似である価値創出原理情報550における構成要素の組み合わせ(主体、客体、及び変動要素の組み合わせ)を検索する。
【0078】
そして、提供価値抽出部103は、s23で検索した組み合わせに対応づけられている提供価値情報560(異業種展開情報)、及び提供価値情報560に対応するリードタイム情報565を全て取得する(s25)。提供価値抽出部103は、抽出した提供価値情報560及びリードタイム情報565を画面に表示する(s25)。
【0079】
また、提供価値抽出部103は、s25で抽出した提供価値情報560に対応づけられている業務機能情報570(コア機能情報)を全て取得し、取得した業務機能情報570を画面に表示する(s27)。
【0080】
その後、提供価値抽出部103は、s15で検索した、ユーザと類似業種の情報たる、価値創出原理情報550における構成要素の組み合わせを、価値創出原理情報550に追加する(s29)。
【0081】
すなわち、提供価値抽出部103は、s13で検索した類似組み合わせに基づき、当該類似組み合わせにおける主体を、ユーザ入力情報における主体の情報に置換した新規の価値創出原理情報550を作成し、作成した価値創出原理情報550を価値機能対応情報500に追加する。
【0082】
例えば、提供価値抽出部103は、s13で検索した類似組み合わせのうち、主体下位概念情報552がユーザに類似する類似組み合わせを類似性情報600に基づき全て特定し、特定した各類似組み合わせのそれぞれについて、その主体下位概念情報552をユーザ入力情報における主体の情報に置換した、新たな類似組み合わせを生成する。そして、提供価値抽出部103は、生成した各類似組み合わせを、価値創出原理情報550における新たな組み合わせとして価値創出原理情報550に追加する。以上でソリューション提供支援処理は終了する。
【0083】
なお、提供価値抽出部103は、追加した組み合わせの各構成要素と、既存の価値創出原理情報550の各構成要素の同一又は類似性の関係を新規に定義してもよい。例えば、提供価値抽出部103は、追加した組み合わせにおける主体(主体下位概念情報552)、客体(客体下位概念情報554)、及び変動要素(変動要素下位概念情報556)と、既存の価値創出原理情報550の他の主体(主体下位概念情報552)、客体(客体下位概念情報554)、及び変動要素(変動要素下位概念情報556)との間のそれぞれの同一又は類似関係の入力を管理者等から受け付け、入力された情報を類似性情報600に設定する。なお、提供価値抽出部103は、この同一又は類似の関係の情報を、所定の体系データベース等から自動的に設定してもよい。
【0084】
<ソリューション提案画面>
図10は、ソリューション提供処理においてソリューション管理装置10又はユーザ端末20が表示するソリューション提供画面1000の一例を示す図である。
【0085】
ソリューション提供画面1000は、ユーザ入力情報が表示される入力データ欄1010、ユーザと同業種又は類似業種の価値創出原理情報550に係る提供価値情報560が表示されるメイン情報表示欄1020、ユーザと異業種の価値創出原理情報550に係る提供価値情報560及びこれに対応づけられている業務機能情報570が表示されるサブ情報表示欄1030、並びに、ユーザ入力情報における機能と同一又は類似の業務機能情報570が表示される機能情報表示欄1040を有する。
【0086】
このうちメイン情報表示欄1020は、ユーザ入力情報と変動要素が同一の価値創出原理情報550(構成要素の組み合わせ)に対応づけられている提供価値情報560のリストが表示される第1表示欄1021と、ユーザ入力情報と変動要素が類似である価値創出原理情報550(構成要素の組み合わせ)に対応づけられている提供価値情報560のリストが表示される第2表示欄1022とを有する。
【0087】
サブ情報表示欄1030は、実績情報が表示される実績情報表示欄1031と、業務機能情報570が表示される業務機能情報表示欄1032とを有する。このうち、実績情報表示欄1031は、異業種展開情報(提供価値情報560)が表示される異業種展開情報表示欄1033と、リードタイムが表示されるリードタイム表示欄1034とを有する。
【0088】
ユーザは、このようなソリューション提供画面1000を参照することで、ユーザと同業種又は類似業種の分野で提供されている価値の詳細を知ることができると共に、異業種で提供されている価値を参考情報として知ることができる。なお、メイン情報表示欄1020には、その変動要素がユーザ入力情報と同一の価値創出原理情報550に対応する提供価値情報560のリストと、その変動要素がユーザ入力情報と類似の価値創出原理情報550に対応する提供価値情報560のリストとを別々に表示してもよい。
【0089】
以上のように、本実施形態のソリューション管理装置10は、ユーザからユーザ入力情報の入力を受け付け、ユーザ入力情報に対応する価値創出原理情報550(価値の主体、客体、及び、変動要素の組み合わせ)を検索し、これに対応する提供価値情報560を特定して出力する。
【0090】
すなわち、本実施形態のソリューション管理装置10は、主体、客体、及び、変動要素を構成要素とした価値創出の原理の情報である価値創出原理情報550を用いて、ユーザ入力に対応した、顧客に提供すべき具体的な価値の情報(提供価値情報560)を出力する。これにより、ユーザは、価値創出原理情報550に蓄積されている価値原理を基点とした様々な提供価値の具体的な情報を得ることができる。このように、本実施形態のソリューション管理装置10によれば、ユーザ企業から指定された情報に対して、ユーザ企業の事業課題等と整合する価値の情報を、当該価値を実現する技術のN倍化可否も鑑みて提供し、これにより、当該価値を提供するための技術的実装が可能なデジタルソリューションをユーザ企業に提案又は提供することが可能となり、ひいてはN倍化を実現することができる。
【0091】
また、本実施形態のソリューション管理装置10は、価値創出原理情報550における各主体間、各客体間、及び各変動要素間のそれぞれの同一又は類似関係を示す類似性情報600を記憶しており、この類似性情報600に基づき、ユーザ入力情報と全構成要素が同一又は類似である組み合わせを検索する。
【0092】
このように、価値創出原理情報550の各構成要素に関する同一又は類似を類似性情報
600により定義しておくことにより、ユーザ入力情報の価値構成に即した適切な範囲の(例えば、ユーザと類似業種の、又は変動要素が類似の)価値創出原理情報550(主体、客体、及び変動要素の組み合わせ)を検索することができる。これにより、ユーザは、自身の業態に即した実現可能性の高い有望なソリューションを発見することができる。
【0093】
また、本実施形態のソリューション管理装置10は、ユーザ入力情報に対応する主体、客体、及び変動要素の組み合わせを、価値創出原理情報550における主体の下位概念、客体の下位概念、及び変動要素の下位概念から検索する。これにより、精度の高い価値創出原理情報550の情報検索が可能となる。
【0094】
また、本実施形態のソリューション管理装置10は、ユーザ入力情報と変動要素が同一であり主体及び客体の少なくともいずれかが類似の組み合わせを価値創出原理情報550から検索する。これにより、ユーザは、価値を提供するに際して重要な要素である変動要素が同一である価値創出原理情報550に基いた提供価値情報560を知ることができる。すなわち、価値の提供実現可能性が高いソリューションを発見することができる。
【0095】
また、本実施形態のソリューション管理装置10は、ユーザ入力情報における機能に対応する(例えば、同一又は類似の機能に係る)業務機能情報570を出力する。これにより、ユーザは、価値とは異なる概念である機能の観点からも、ユーザ入力情報が示す価値を提供する方法を具体的に知ることができる。
【0096】
また、本実施形態のソリューション管理装置10は、ユーザ入力情報と主体が非類似であり客体及び変動要素が同一又は類似である各構成要素の組み合わせを価値創出原理情報550から検索する。これにより、ユーザは、異業種の価値創出原理情報550に基いた提供価値情報560を知ることができる。すなわち、異業種で価値提供が実現されている、有望なソリューションを発見することができる。
【0097】
また、本実施形態のソリューション管理装置10は、ユーザ入力情報と各構成要素(主体、客体、及び変動要素)の全てが同一又は類似である組み合わせを価値創出原理情報550から検索できなかった場合には、その内容が同一又は類似であった構成要素の価値創出原理情報550と、非類似であった構成要素に係るユーザ入力情報とからなる構成要素の組み合わせを、新たな価値創出原理情報550として記憶する。このように、ソリューション管理装置10は、ユーザが入力した新規な(既存の価値創出原理情報550に無い)内容の構成要素からなる価値創出原理情報550を生成するので、ソリューション管理装置10の管理者等は、新規な視点での価値の原理についての知見を得ることができる。
【0098】
また、本実施形態のソリューション管理装置10は、ユーザ入力情報と類似する価値創出原理情報550(主体、客体、及び変動要素の組み合わせ)について、価値創出原理情報550と類似する部分(異なる部分)の構成要素をユーザ入力情報の構成要素に置換した情報を生成して新たな価値創出原理情報550とする。これにより、ソリューション管理装置10は、既に存在する価値創出原理情報550を類似範囲において拡張して各ユーザに提供し、ひいてはそれらの価値を実現する様々な機能を提供する(すなわちN倍化する)ことができる。
【0099】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で、任意の構成要素を用いて実施可能である。以上説明した実施形態や変形例はあくまで一例であり、発明の特徴が損なわれない限り、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。また、上記では種々の実施形態や変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【0100】
例えば、実施形態の各装置が備える各機能の一部は他の装置に設けてもよいし、別装置が備える機能を同一の装置に設けてもよい。
【0101】
また、本実施形態では、KPI情報530及び目標KPI情報540は、KPIに関する情報であることが前提としたが、所定の目標を達成するための指標であればその他の種類の指標を用いてもよい。
【0102】
また、本実施形態では、ソリューション管理装置10は、提供価値情報560等を画面に表示するだけでなく、その提供価値情報560に対応づけられた業務機能情報570が示す各情報処理システムの構成要素(ソフトウェア)を、ユーザからの選択により又は自動的に制御するようにしてもよい。
【0103】
また、本実施形態では、ソリューション管理装置10は、類似性情報600を用いて各情報間の同一、類似、及び非類似を判定する構成であったが、その他の方法(例えば、テキストの自然言語処理)によって各情報間の関係を判定してもよいし、類似度等の指標値を用いてこれらを判定してもよい。
【符号の説明】
【0104】
1 ソリューション管理システム、10 ソリューション管理装置、550 価値創出原理情報、560 提供価値情報