(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】折板屋根を有する簡易構造物の製造方法
(51)【国際特許分類】
E04D 15/00 20060101AFI20241213BHJP
E04H 6/02 20060101ALI20241213BHJP
【FI】
E04D15/00 E
E04H6/02 A
(21)【出願番号】P 2021162861
(22)【出願日】2021-10-01
【審査請求日】2024-05-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100228511
【氏名又は名称】佐藤 彩秋
(74)【代理人】
【識別番号】100173462
【氏名又は名称】宮本 一浩
(74)【代理人】
【識別番号】100194179
【氏名又は名称】中澤 泰宏
(74)【代理人】
【識別番号】100166442
【氏名又は名称】鈴木 洋雅
(74)【代理人】
【識別番号】110002996
【氏名又は名称】弁理士法人宮田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 一臣
(72)【発明者】
【氏名】松井 哲也
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3151136(JP,U)
【文献】特開平10-068204(JP,A)
【文献】特開2015-059348(JP,A)
【文献】特開2017-008569(JP,A)
【文献】実開平01-100834(JP,U)
【文献】特開2009-121018(JP,A)
【文献】特開昭56-111760(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 15/00
E04D 15/04
E04G 21/16
E04H 6/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
簡易構造物と、折板の施工治具とを備え、
簡易構造物は、前後方向に離隔して立設された前側支持フレームと後側支持フレームを有し、
前側支持フレーム及び後側支持フレームは、一対の柱と、柱の上端に架設された梁と、梁に取り付けられたタイトフレームをそれぞれ有しており、
施工治具は、タイトフレームを前後方向に跨ぐ溝状部を有するベースと、ベースの上部で前後方向に回転可能に支持され且つ折板の複数の谷部を載置可能な長さのローラーを有しており、
次の工程を有することを特徴とする折板屋根を有する簡易構造物の製造方法。
(1)施工治具を前側支持フレーム又は後側支持フレームのいずれか一方の支持フレームのタイトフレームを跨いで着脱自在に取り付ける工程。
(2)折板を一方の支持フレームの一方側の下方から持ち上げて施工治具のローラーに載置し、
ローラーを回転させて他方側へ送り出すことで前側支持フレーム及び後側支持フレームの上方間に架設する工程。
(3)施工治具を一方の支持フレームの梁の長手方向に退避させる工程。
(4)上記(2)(3)工程を繰り返すことで前側支持フレーム及び後側支持フレームに複数の折板を架設する工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折板屋根を有する簡易構造物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、折板屋根を有する簡易構造物の製造において、柱(例えば高さ2,700mm)の上端に架設された梁間に複数枚の折板(例えば重量40kg/枚)を架設及び位置決めする作業は、かなりの高所において重量物を扱うものであり施工作業者に相当な負荷がかかっているため施工を容易にしたいという要望があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は上記の点に鑑み、折板屋根を有する簡易構造物の、施工の容易な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の折板屋根を有する簡易構造物の製造方法は、簡易構造物と、折板の施工治具とを備え、簡易構造物は、前後方向に離隔して立設された前側支持フレームと後側支持フレームを有し、前側支持フレーム及び後側支持フレームは、一対の柱と、柱の上端に架設された梁と、梁に取り付けられたタイトフレームをそれぞれ有しており、施工治具は、タイトフレームを前後方向に跨ぐ溝状部を有するベースと、ベースの上部で前後方向に回転可能に支持され且つ折板の複数の谷部を載置可能な長さのローラーを有しており、次の工程を有することを特徴とする。
(1)施工治具を前側支持フレーム又は後側支持フレームのいずれか一方の支持フレームのタイトフレームを跨いで着脱自在に取り付ける工程。
(2)折板を一方の支持フレームの一方側の下方から持ち上げて施工治具のローラーに載置し、ローラーを回転させて他方側へ送り出すことで前側支持フレーム及び後側支持フレームの上方間に架設する工程。
(3)施工治具を一方の支持フレームの梁の長手方向に退避させる工程。
(4)上記(2)(3)工程を繰り返すことで前側支持フレーム及び後側支持フレームに複数の折板を架設する工程。
【発明の効果】
【0005】
本発明の折板屋根を有する簡易構造物の製造方法によれば、折板の架設及びタイトフレームの剣先ボルトに対する位置決め作業が高所においても安定して容易に行え、施工性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】前側支持フレームの梁に載置した施工治具の(a)は正面図、(b)は(a)のI-I断面図である。但し(b)で折板は省略する。
【
図2】簡易構造物の(a)は正面図、(b)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明において前後及び左右とは、
図1乃至
図6に示す通りとする。
図1乃至
図6は本発明の簡易構造物の実施形態であって、折板屋根を有するカーポートとしたものである。
図2は簡易構造物1の(a)正面図、(b)側面図であり、
図1は
図6(d)における梁12に載置した施工治具4の(a)正面図、(b)は(a)のI-I断面図である。但し
図1(b)において折板3は省略してある。
【0008】
簡易構造物1は、
図2及び
図6に示すように、前後方向に離隔して地面に立設された門型の前側支持フレーム10と後側支持フレーム20を有する。前側支持フレーム10は、左右一対の柱11a,11bと、柱11a,11bの上端間に架設された梁12と、梁12の上面に長手方向に沿って取り付けられたタイトフレーム13を有している。後側支持フレーム20は、左右一対の柱21a,21bと、柱21a,21bの上端間に架設された梁22と、梁22の上面に長手方向に沿って取り付けられたタイトフレーム23を有している。タイトフレーム13,23は、
図1に示すように、折板3の断面形状に合わせた三角形が連続して並ぶ帯状のものであって、折板3を下方から支えるものである。タイトフレーム13,23の頂部にはそれぞれ、折板3を固定するための剣先ボルト15,25が先端を上方へ突出するように取り付けられている。折板3は
図5に示されるように、山部31と谷部32とが交互に形成されたものであり、重量は約40kgである。折板3の山部31には、前側支持フレーム10及び後側支持フレーム20のタイトフレーム13,23の剣先ボルト15,25を挿通し固定するための取付孔33が前部と後部にそれぞれ4つずつ設けられている。折板3は、前側支持フレーム10及び後側支持フレーム20のタイトフレーム13,23に載置されて剣先ボルト15,25に固定されることで架設され、複数枚の折板3が左右方向に並んで架設されることで折板屋根となる。
【0009】
折板3の施工治具4は、前側支持フレーム10及び後側支持フレーム20間への折板3の架設作業を容易にし、また、タイトフレーム13,23の剣先ボルト15,25に対する折板3の取付孔33の位置決め作業を容易にするために用いられるものである。
図3は施工治具4の斜視図であり、
図4は施工治具4の三面図である。
図3及び
図4に示されるように施工治具4は、前側支持フレーム10または後側支持フレーム20の梁12,22の上面に載置される断面ハット形状のベース40と、ベース40の上部において前後方向に回転可能に支持されるローラー60とからなる。施工治具4の材質はベース40がスチール、ローラー60がステンレスで形成されていて、施工治具4の重量は約4.2kgである。なお以降においては、
図1及び
図6のように施工治具4を前側支持フレーム10の梁12に載置した場合について説明する。
【0010】
ベース40は、
図3及び
図4に示すように側面視略矩形状の基部41と、基部41の下端から前後それぞれ略水平に延びる平板状の脚部42a~dと、基部41の頂部左右端部からそれぞれ略鉛直に立ち上がった平板状の軸受け部43a,43bとによって構成されている。
基部41は正面視略H字状であり、基部41の長手方向中間部の上側には、基部41の内側を視認可能な窓部44と、4箇所の切欠き41a~dが設けられている。この窓部44は、
図1(a)のようにベース40がタイトフレーム13を跨いで梁12に載置された際に剣先ボルト15を前側または後側から視認可能にするものである。またこの切欠き41a~dは、タイトフレーム13の剣先ボルト15に対しベース40の左右方向の位置合わせを行う際に目印となるものであり、
図1(a)のように施工治具4が適正位置にあるときに剣先ボルト15,15の位置と前後に重なる位置に設けられている。
左右の軸受け部43a,43bの間隔は、
図1(a)のように隣り合う剣先ボルト15の4つ分の左右間隔と略同じである。軸受け部43a,43bにはそれぞれローラー60の軸62を挿通するための穴が設けられている。
また
図1(b)のように、ベース40を梁12上に載置した状態において、ベース40の基部41とタイトフレーム13との間には、施工治具4を梁12上で梁12の長手方向にずらして移動できるよう、前側と後側にそれぞれ5mmのクリアランス50a,50bが基部41の長手方向に亘り設けられている。
そして、ベース40の前後方向の寸法、すなわち施工治具4の前後寸法は、梁12の上面の前後幅と略同じである。
【0011】
ローラー60は、
図3及び
図4のように円筒状の回転体61の長手方向両端に軸62が設けられたものである。回転体61の長さは、
図1(a)のように折板3の隣接した谷部32の3つ分の幅よりも長い。ローラー60は、ベース40の軸受け部43a,43bの穴に軸62が挿通されることで回転自在に軸着されている。ローラー60の長さ、すなわち施工治具4の長さは、折板3の幅寸法とほぼ同じである。
【0012】
次いで、簡易構造物1の前側支持フレーム10及び後側支持フレーム20に対する折板屋根の施工方法を説明する。なお、施工作業は2人の作業者A,Bが行う。また、施工治具4は前側支持フレーム10と後側支持フレーム20のいずれの梁に載置してもよいが、本実施例では
図6のように施工治具4を前側支持フレーム10の梁12に載置し、折板3を前側から後側へと送り出して架設する。
【0013】
まず、
図6(a)のように、作業者Bが施工治具4を前側支持フレーム10の梁12の長手方向一端側の上面に、タイトフレーム13を前後方向に跨いだ状態で載置する。このとき、施工治具4の梁12に対する位置決めは次のようにして行う。作業者Bは
図1のように、施工治具4の脚部42a~dが梁12の上面から前後にはみ出さないようにし、施工治具4のベース40の軸受け部43a,43bの左右方向位置をそれぞれ剣先ボルト15,15に合わせ、さらに、施工治具4の窓部44から視認される剣先ボルト15,15がベースの切欠き41a,41bと前後に重なるよう施工治具4を動かす。このようにして施工治具4を梁12に載置すると、ローラー60の軸62は梁12の長手方向と平行となり、ローラー60が前後方向に回転自在となる。
【0014】
次に、
図6(a)のように、作業者Aが折板3を前側支持フレーム10の前側下方から持ち上げ、
図6(b)のように作業者Bが折板3の後部を施工治具4のローラー60に載置する。このとき、施工治具4のベース40は長さ寸法が折板3の幅寸法とほぼ同じであるため、施工治具4のベース40の位置に合わせて折板3を施工治具4のローラー60上に載置することで、折板3の施工治具4に対する位置決めがされ、折板3の取付孔33とタイトフレーム13,23の剣先ボルト15,25の左右方向位置が揃う。またこのとき、折板3の左右方向のぐらつきを防ぐため、ローラー60には
図1(a)のように折板3の谷部32が3箇所載っていることが好ましい。
【0015】
そして、
図6(c)のように作業者Bが折板3を後方へと送り出し、作業者Aが折板3の後部を受け取って、前側支持フレーム10及び後側支持フレーム20の上方間に折板3が架設される。
【0016】
次いで、
図6(d)のように、作業者Aが折板3後部の4つの取付孔33を後側支持フレーム20のタイトフレーム23の4つの剣先ボルト25に落として挿通させる。このとき、折板3を施工治具4のローラー60に預けた状態で前後に動かすことで、取付孔33の剣先ボルト25に対する位置決めを行う。
【0017】
次いで、折板3前部を施工治具4のローラー60から持ち上げ、その間に
図6(e)のように、作業者Bが施工治具4を前側支持フレーム10の梁12上で梁12の長手方向他端側にずらして退避させたのち、折板3前部の4つの取付孔33を前側支持フレーム10のタイトフレーム13の4つの剣先ボルト15に落として挿通させる。
【0018】
そして、
図6(f)のように、別の折板3に対しても
図6(a)から(e)の工程を繰り返すことで、前側支持フレーム10及び後側支持フレーム20間に複数の折板3を架設する。最後に、前側支持フレーム10及び後側支持フレーム20のタイトフレーム13,23の全ての剣先ボルト15,25にナットをかけて全ての折板3を固定し、簡易構造物1の折板屋根の施工が完了する。
【0019】
以上の実施形態にかかる簡易構造物1の製造方法によれば、施工治具4のベース40の基部41とタイトフレーム13との間に前側と後側にそれぞれクリアランス50a,50bが設けられていることで、施工治具4を梁12上で梁12の長手方向にずらして移動できるため、施工治具4の退避が容易に行える。また、このクリアランス50a,50bの寸法が大きすぎると、折板3の施工作業中にベース40が前後にずれてローラー60の軸62が梁12の長手方向と平行ではなくなり作業効率が低下してしまうが、本実施形態ではクリアランス50a,50bの寸法が大きすぎず適切に設けられているため、施工治具4を梁12に載置する際や、折板3の送り出し時及び施工治具4の退避時にベース40が前後にずれることなくローラー60の軸62が梁12の長手方向と平行に保たれるため、作業性が良い。
【0020】
そして、ベース40の前後方向の寸法、すなわち施工治具4の前後寸法は梁12の上面の前後幅と略同じであるので、施工治具4を梁12に載置する際に梁12の上面から前後にはみ出さないようにすることで、ローラー60の軸62が梁12の長手方向と平行となるようにするための施工治具4の位置決めが容易に行え、作業性が良い。
【0021】
また、施工治具4のベース40の軸受け部43a,43bの間隔を隣り合う剣先ボルト15の4つ分の左右間隔と略同じとしてあるため、軸受け部43a,43bを剣先ボルト15,15の位置に合わせるようにすれば、施工治具4を梁12に載置する際の位置決めが容易に行え作業性が良い。
【0022】
さらに、施工治具4のベース40には剣先ボルト15,15と前後に重なる位置に切欠き41a~dが設けられているとともに、施工治具4の窓部44から剣先ボルト15を視認することができるので、ベースの切欠き41a,41bと剣先ボルト15,15の位置が前後に重なるよう施工治具4を動かすことで、施工治具4を梁12に載置する際の施工治具4の位置決めが容易に行え作業性が良い。
【0023】
そして、施工治具4の長さ寸法が折板3の幅寸法とほぼ同じであるため、折板3を施工治具4のベース40の位置に合わせてローラー60上に載置することで、折板3の施工治具4に対する位置決めが容易に行え、作業性が良い。
【0024】
また、施工治具4のベース40は断面ハット形状であり、脚部42a~dの下面において梁12の上面に当接しているため、折板3を施工治具4に載置した際に施工治具4が前後に転ぶことがなく、作業性が良い。
【0025】
そして、折板3の後部の4つの取付孔33を後側支持フレーム20のタイトフレーム23の4つの剣先ボルト25に落として挿通させる際に、折板3は施工治具4のローラー60に載置されたまま安定して前後に移動可能であるので、折板3の取付孔33の剣先ボルト25に対する位置決めが容易に行え、作業性が良い。
【0026】
さらに、施工治具4の材質は、ベース40がスチール、ローラー60がステンレスで形成されているため、軽量かつ強度に優れる。さらに、施工治具4は窓部44を設けることで軽量化されているため、作業性が良い。
【0027】
以上のようにして、本発明の折板屋根を有する簡易構造物1の製造方法により、折板3の架設及びタイトフレーム13,23の剣先ボルト15,25に対する位置決め作業が高所においても安定して容易に行え、施工性に優れる。
【0028】
本発明は、上記の実施形態に限らず本発明の要旨を逸脱しない範囲で変形可能であり、簡易構造物の各部の形状、寸法等は適宜変更できる。例えば、施工治具の材質はスチール製のベース及びステンレス製のローラーに限らず、オールステンレス製あるいはオールアルミ製であってもよい。さらに、ローラーは樹脂製であってもよく、ステンレスやアルミ製のローラーの表面にウレタンを巻いてあってもよい。また、施工治具のベースの基部とタイトフレームとの間のクリアランスの寸法は5mmに限らず、3~10mm等、施工治具を梁の長手方向に移動させやすく、折板を載置して前後方向に送り出す際に施工治具が前後に転びにくい寸法であればよい。そして、施工治具のクリアランス部分、すなわちベースの基部の内側には、施工治具を梁の長手方向に移動させやすくするために滑り性のある樹脂部品を設けてあってもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 簡易構造物
10 前側支持フレーム
11a,b 柱
12 梁
13 タイトフレーム
15 剣先ボルト
20 後側支持フレーム
21a,b 柱
22 梁
23 タイトフレーム
25 剣先ボルト
3 折板
33 取付孔
4 施工治具
40 ベース
60 ローラー