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特許7603565ブリスタ包装機及びブリスタシートの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】ブリスタ包装機及びブリスタシートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65B 35/56 20060101AFI20241213BHJP
   B65B 35/46 20060101ALI20241213BHJP
   B65B 39/00 20060101ALI20241213BHJP
   B65B 35/38 20060101ALI20241213BHJP
   B65G 47/30 20060101ALI20241213BHJP
【FI】
B65B35/56
B65B35/46
B65B39/00 C
B65B35/38
B65G47/30 H
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021167822
(22)【出願日】2021-10-13
(65)【公開番号】P2023058073
(43)【公開日】2023-04-25
【審査請求日】2023-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111095
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 光男
(72)【発明者】
【氏名】畠山 肇
【審査官】佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-116084(JP,A)
【文献】特開2019-147668(JP,A)
【文献】特開昭54-065698(JP,A)
【文献】実開平05-094105(JP,U)
【文献】特開平03-256916(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 35/00
B65B 39/00
B65G 47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器フィルムに形成された複数のポケット部のそれぞれに内容物が収容されるとともに、該ポケット部を塞ぐように前記容器フィルムに対しカバーフィルムが取着されてなるブリスタシートを製造するためのブリスタ包装機であって、
所定の第一数値をmとし、前記第一数値よりも多数である第二数値をnとしたときに、
m列に並んだ状態で内容物を搬送する上流搬送手段と、
前記上流搬送手段により搬送される内容物に印刷を施す印刷手段と、
前記印刷手段によって印刷が施され、かつ、n列に並んだ内容物を、帯状の前記容器フィルムに形成された前記ポケット部に充填する充填手段と、
前記上流搬送手段及び前記充填手段間において、内容物の列数をmからnに変換する列数変換手段とを備え、
前記列数変換手段は、
前記上流搬送手段により搬送される内容物の列に対応して1又は複数設けられ、それぞれ特定の1の列の内容物のみを受取可能な計n個の受取部と、
前記受取部に対しそれぞれ1つずつ設けられ、前記上流搬送手段により搬送される内容物を前記受取部側に向けて排出する計n個の排出手段と、
それぞれ独立し、かつ、前記受取部に対しそれぞれ1つずつ設けられ、前記受取部が受け取った内容物を前記充填手段に対し搬送する計n個の中間搬送手段とを有し、
前記中間搬送手段により搬送された内容物は、前記充填手段に係る複数の内容物の列のうち、搬送を担う前記中間搬送手段ごとに異なる特定の1の列に供給されるように構成されていることを特徴とするブリスタ包装機。
【請求項2】
回転方向に並ぶとともに内容物を吸着保持可能な複数の吸着部を有し、該吸着部によって内容物を吸着保持しつつ回転することで該内容物を前記中間搬送手段側へと搬送可能であり、かつ、前記回転方向に並ぶ1列の前記吸着部によって1の前記受取部が構成された、計m個以下の前記受取部を具備する回転受取手段を備え、
所定の受取ポジションにおいて、前記上流搬送手段から内容物が排出されるとともに、排出された内容物が前記吸着部によって受取られるように構成されており、
前記回転受取手段は、前記受取ポジションにて前記吸着部が前記上流搬送手段により搬送される内容物と同一方向に移動するように構成されるとともに、前記上流搬送手段による内容物の搬送方向に沿って複数設けられていることを特徴とする請求項1に記載のブリスタ包装機。
【請求項3】
前記受取ポジションにおいて、前記吸着部と前記上流搬送手段により搬送される内容物とが同一速度で移動するように構成されていることを特徴とする請求項2に記載のブリスタ包装機。
【請求項4】
複数の前記回転受取手段は、それぞれ計m個の前記受取部を有することを特徴とする請求項2又は3に記載のブリスタ包装機。
【請求項5】
前記中間搬送手段は、内部空間が内容物の搬送路を構成するフレキシブルな管状部品によって構成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のブリスタ包装機。
【請求項6】
内容物は、前記印刷手段によって印刷が施される表面と、該表面の裏に位置する裏面と、前記表面及び前記裏面で挟まれた側面とを有し、
前記管状部品は、ねじり変形可能であるとともに、
前記管状部品において、複数の内容物はそれぞれの前記側面同士が隣接するようにして1列に並んだ状態で搬送されるように構成されており、
前記管状部品を180°ねじり変形させることで、搬送される内容物の表裏を反転可能に構成されていることを特徴とする請求項5に記載のブリスタ包装機。
【請求項7】
前記充填手段は、前記管状部品における出口部を接続可能な計n個の被接続部を有し、
複数の前記管状部品における各出口部は、全ての前記被接続部に対し脱着可能に構成されており、
前記管状部品の出口部の接続対象となる前記被接続部を変更することで、該管状部品によって搬送された内容物の供給先となる、前記充填手段に係る内容物の列を変更可能であることを特徴とする請求項5又は6に記載のブリスタ包装機。
【請求項8】
容器フィルムに形成された複数のポケット部のそれぞれに内容物が収容されるとともに、該ポケット部を塞ぐように前記容器フィルムに対しカバーフィルムが取着されてなるブリスタシートの製造方法であって、
所定の第一数値をmとし、前記第一数値よりも多数である第二数値をnとしたときに、
m列に並んだ状態で内容物を搬送する上流搬送工程と、
前記上流搬送工程により搬送される内容物に印刷を施す印刷工程と、
所定の充填手段によって、前記印刷工程によって印刷が施され、かつ、n列に並んだ内容物を、帯状の前記容器フィルムに形成された前記ポケット部に充填する充填工程と、
前記上流搬送工程及び前記充填工程間において、内容物の列数をmからnに変換する列数変換工程とを備え、
前記列数変換工程は、
前記上流搬送工程により搬送される内容物の列に対応して1又は複数設けられ、それぞれ特定の1の列の内容物のみを受取可能な計n個の受取部によって、前記上流搬送工程により搬送された内容物を受取る受取工程と、
前記受取部に対しそれぞれ1つずつ設けられ、前記上流搬送工程により搬送された内容物を前記受取部側に向けて排出可能な計n個の排出手段によって、内容物を前記受取部側へと排出する排出工程と、
それぞれ独立し、かつ、前記受取部に対しそれぞれ1つずつ設けられ、前記受取部が受け取った内容物を前記充填手段に対し搬送する計n個の中間搬送手段によって、前記受取部側から前記充填手段へと内容物を搬送する中間搬送工程とを有し、
前記中間搬送工程により搬送される内容物は、前記充填工程に係る複数の内容物の列のうち、搬送を担う前記中間搬送手段ごとに異なる特定の1の列に供給されることを特徴とするブリスタシートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷の施された内容物を収容してなるブリスタシートを製造するためのブリスタ包装機及びブリスタシートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に医薬品や食料品等の分野において用いられるブリスタシートとしてPTP(プレススルーパック)シートが知られている。PTPシートは、錠剤等の内容物が収容されるポケット部を有する容器フィルムと、その容器フィルムに対しポケット部の開口側を密封するように取着されるカバーフィルムとを備えている。
【0003】
かかるPTPシートは、搬送される帯状の容器フィルムに対しポケット部を形成する工程、該ポケット部に内容物を充填する工程、該ポケット部の開口側を密封するように容器フィルムに対しカバーフィルムを取着する工程、容器フィルム及びカバーフィルムからなる帯状のPTPフィルムをPTPシート単位に打ち抜く工程等を経て製造される。
【0004】
従来、内容物としては、製品名や製品番号など、文字や記号等からなる各種情報が印刷されたものがある。また、インクジェット方式などの印刷装置を備え、搬送される内容物に対し印刷を行う機能と、印刷の施された内容物を容器フィルムのポケット部へと順次充填していく機能とを備えたブリスタ包装機も知られている。
【0005】
さらに近年では、ポケット部へと内容物を充填するときにおける内容物の列数を、印刷処理を行うときにおける内容物の列数よりも増大させる装置(列数変換装置)を備えたブリスタ包装機が提案されている(例えば、特許文献1等参照)。
【0006】
この特許文献1に係るブリスタ包装機では、内容物(錠剤)を吸着保持可能な吸着孔を有する搬送ベルトによって内容物をm列(例えば3列)に並べた状態で搬送し、この搬送中に内容物に対する印刷処理が行われる。そして、所定の排出手段(ブローノズル)から前記吸着孔へとブローが行われることで、印刷処理の行われた内容物の吸着保持が解除され、内容物が受取部へと落下する。受取部はn個(n>mであり、例えば5個)設けられており、結果的に、m列の内容物はn個の受取部へと振り分けられることとなる。その後、各受取部に落下した内容物は充填ドラムへと搬送され、最終的に充填ドラムによってn列に並ぶ内容物がポケット部に充填される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2021-116084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1に係るブリスタ包装機では、内容物をn個の受取部へと振り分けるときに、各列の内容物は全ての受取部へと排出され得る。従って、最終的にポケット部に充填された内容物が、元々、印刷時(搬送時)にどの列を構成していたのかを把握することが非常に難しい。そのため、ブリスタシートにおいて印刷不良などの異常が内容物に発生したときに、そのブリスタシートにおける不良内容物の位置から異常発生に係る印刷時(搬送時)の列を特定すること(トレースバックを行うこと)が困難となり、ひいては異常の要因(例えば、ある列の内容物に印刷処理を行う装置の不良など)を把握することが困難となるおそれがある。
【0009】
さらに、特許文献1に係るブリスタ包装機では、m列の内容物をn個の受取部へと振り分けるために、m×n個(例えばm=3で、n=5であれば15個)の排出手段(ブローノズル)と、これら排出手段を個別に制御するための制御系統とが必要となる。そのため、部品点数の増大、包装機の複雑化・大型化、制御処理の煩雑化といった事態を招き、包装機の製造やメンテナンスなどの点で多大なコストを要するおそれがある。特に容器フィルムがその幅方向に沿って2シート分以上に対応する数のポケット部を配列された構成となっており、充填時における内容物の列数が多くなる場合には、排出手段などを多数設けなければならず、コスト面で極めて不利となるおそれがある。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、印刷時の列と充填時の列との対応関係をより容易に把握することができるとともに、コストの抑制等を効果的に図ることができるブリスタ包装機及びブリスタシートの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下、上記目的を解決するのに適した各手段につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0012】
手段1.容器フィルムに形成された複数のポケット部のそれぞれに内容物が収容されるとともに、該ポケット部を塞ぐように前記容器フィルムに対しカバーフィルムが取着されてなるブリスタシートを製造するためのブリスタ包装機であって、
所定の第一数値をmとし、前記第一数値よりも多数である第二数値をnとしたときに、
m列に並んだ状態で内容物を搬送する上流搬送手段と、
前記上流搬送手段により搬送される内容物に印刷を施す印刷手段と、
前記印刷手段によって印刷が施され、かつ、n列に並んだ内容物を、帯状の前記容器フィルムに形成された前記ポケット部に充填する充填手段と、
前記上流搬送手段及び前記充填手段間において、内容物の列数をmからnに変換する列数変換手段とを備え、
前記列数変換手段は、
前記上流搬送手段により搬送される内容物の列に対応して1又は複数設けられ、それぞれ特定の1の列の内容物のみを受取可能な計n個の受取部と、
前記受取部に対しそれぞれ1つずつ設けられ、前記上流搬送手段により搬送される内容物を前記受取部側に向けて排出する計n個の排出手段と、
それぞれ独立し、かつ、前記受取部に対しそれぞれ1つずつ設けられ、前記受取部が受け取った内容物を前記充填手段に対し搬送する計n個の中間搬送手段とを有し、
前記中間搬送手段により搬送された内容物は、前記充填手段に係る複数の内容物の列のうち、搬送を担う前記中間搬送手段ごとに異なる特定の1の列に供給されるように構成されていることを特徴とするブリスタ包装機。
【0013】
上記手段1によれば、複数の受取部は、上流搬送手段により搬送されつつ印刷が施される内容物のうち特定の1の列の内容物のみを受取り、受取られた内容物は、受取部ごとに設けられかつそれぞれ独立する中間搬送手段によって、充填手段へと搬送される。そして、中間搬送手段により搬送された内容物は、充填手段に係る複数(n)の内容物の列のうち、搬送を担う中間搬送手段ごとに異なる特定の1の列に供給される。従って、内容物に関し、印刷時の列と充填時の列との対応関係をより容易に把握することができる。そのため、充填されたポケット部の位置に基づき、内容物が元々印刷時(搬送時)にどの列を構成していたのかをより容易に把握することできる。例えば、ブリスタシートにおいて印刷不良などの異常が内容物に発生したときに、そのブリスタシートにおける不良内容物の位置から異常発生に係る印刷時(搬送時)の列を特定すること(トレースバックを行うこと)ができる。従って、異常の要因をより容易にかつより正確に把握することができる。
【0014】
加えて、上記手段1によれば、複数の受取部は特定の1の列の内容物のみを受取るため、排出手段を、受取部に対しそれぞれ1つずつ設ければ済み、多数設ける必要がない。例えば、内容物の列数をm列からn列へと変換する場合、従来技術ではm×n個の排出手段が必要となるが、上記手段1では排出手段はn個で足りる。また、上記手段1によれば、排出手段が少数となるため、排出手段を制御するための制御系統も少数で足りる。これらの結果、部品点数の削減、包装機の簡素化・小型化、制御処理の簡略化を図ることができ、製造やメンテナンスなどに係るコストの抑制を効果的に図ることができる。
【0015】
尚、上記コストの抑制は、容器フィルムがその幅方向に沿って2シート分以上に対応する数のポケット部を配列された構成となっており、充填時における内容物の列数が多くなる場合(例えばn≧10の場合)に特に効果がある。
【0016】
さらに、上記手段1によれば、以下の各種作用効果をも得ることができる。まず、比較的少ない列数で内容物の印刷処理を行いつつ、比較的多い列数で内容物の充填を行うことができる。比較的少ない列数で内容物の印刷処理を行うことができるため、印刷手段の規模を小さなものとすることができ、製造やメンテナンスなどに係るコストの抑制をより効果的に図ることができる。一方、比較的多い列数で内容物の充填を行うことができるため、内容物の充填に係る高速化を図ることができ、良好な生産速度を確保することができる。
【0017】
また、ブリスタ包装機が印刷手段のクリーニング装置を備える場合、クリーニング装置の規模をも小さなものとすることができる。そのため、製造等に係るコストの抑制を一層効果的に図ることができる。尚、印刷手段が、インクを吐出可能な複数のノズルを有してなる印刷ヘッドを備えた、インクジェット方式の装置により構成される場合、「クリーニング装置」としては、例えば、ノズルの内部に詰まった塵埃や増粘又は固形化したインク等を外部に排出するための加圧パージを行うクリーニング機構や、パージ後の印刷ヘッドを拭くワイピング機構などを備えた装置を挙げることができる。
【0018】
さらに、印刷手段が、上記のようなインクジェット方式の装置により構成されており、複数のノズルのうちの選択・制御されたものがインクを吐出することによって、内容物における任意の位置に印刷を施すものである場合、上記手段1によって、結果的に印刷手段による印刷頻度を増加させることができる。従って、各ノズルがインクの吐出対象として選択されやすくなり、一般にインクの吐出対象として選択されにくいノズル(例えば、印刷手段による印刷可能領域の端を担当するノズル)であってもインクの吐出を行う機会をより確保しやすくなる。これにより、インクの固形化や増粘等によるノズルの目詰まり不良を効果的に抑制して、印刷不良の発生をより確実に防止することができる。また、ノズルの目詰まりが生じにくくなることで、印刷手段のクリーニング頻度を低くすることができる。これらの結果、ブリスタシートの生産に係るコストの低減や生産速度の向上を図ることができる。
【0019】
手段2.回転方向に並ぶとともに内容物を吸着保持可能な複数の吸着部を有し、該吸着部によって内容物を吸着保持しつつ回転することで該内容物を前記中間搬送手段側へと搬送可能であり、かつ、前記回転方向に並ぶ1列の前記吸着部によって1の前記受取部が構成された、計m個以下の前記受取部を具備する回転受取手段を備え、
所定の受取ポジションにおいて、前記上流搬送手段から内容物が排出されるとともに、排出された内容物が前記吸着部によって受取られるように構成されており、
前記回転受取手段は、前記受取ポジションにて前記吸着部が前記上流搬送手段により搬送される内容物と同一方向に移動するように構成されるとともに、前記上流搬送手段による内容物の搬送方向に沿って複数設けられていることを特徴とする手段1に記載のブリスタ包装機。
【0020】
上記従来技術(特開2021-116084号公報)において、受取部は上流搬送手段による搬送方向と交差する方向に延びる滑り台状のものとされ、また、排出された内容物は受取部へと落下した上で該受取部を摺動するようになっている。従って、平面視したときに、上流搬送手段による内容物の搬送方向と交差する方向に、上流搬送手段から受取部が突出した状態となり、包装機の複雑化・大型化を招くおそれがある。また、上流搬送手段による内容物の搬送方向と受取部における内容物の移動方向とが異なるとともに、受取部へと内容物が落下し、さらに、内容物は受取部を比較的な長距離に亘って摺動する。そのため、進路変更や落下、摺動などに伴うダメージが内容物に加わるおそれがある。
【0021】
この点、上記手段2によれば、所定の受取ポジションにて上流搬送手段から排出された内容物を吸着部(受取部)によって受取った後、該内容物を吸着保持しつつ回転受取手段が回転することで、該内容物を中間搬送手段側へと搬送することができる。従って、上流搬送手段から吸着部(受取部)に対する内容物の受渡時に、落下によるダメージが内容物に加わることをより確実に防止できる。また、中間搬送手段側へと内容物を移動させる際における内容物の長距離の摺動を抑制することができ、内容物に加わるダメージをより低減させることができる。さらに、受取ポジションにおいて、吸着部は、上流搬送手段により搬送される内容物と同一方向に移動するように構成されているため、上流搬送手段から吸着部(受取部)への内容物の受渡時に、内容物の進路変更を生じさせずに済み、進路変更に伴うダメージが内容物に加わることを防止できる。これらの結果、内容物の破損や印刷部の摩耗などをより確実に防ぐことができ、不良品の内容物の発生を抑えることができる。そのため、ブリスタシートの生産に係るコストの低減を一層図ることができる。
【0022】
さらに、平面視したときに、回転受取手段の回転方向は、受取ポジションにおける上流搬送手段による内容物の搬送方向と平行になり、該搬送方向と交差する方向とはならない。従って、平面視したときに、上流搬送手段による内容物の搬送方向と交差する方向に、上流搬送手段から回転受取手段が突出した構成になることをより確実に防止できる。その上で、複数の回転受取手段は、上流搬送手段による内容物の搬送方向に沿って設けられているから、回転受取手段や上流搬送手段をよりコンパクトにまとめることができる。その結果、包装機の簡素化・小型化をより効果的に図ることができる。
【0023】
手段3.前記受取ポジションにおいて、前記吸着部と前記上流搬送手段により搬送される内容物とが同一速度で移動するように構成されていることを特徴とする手段2に記載のブリスタ包装機。
【0024】
上記手段3によれば、受取ポジションにおいて、吸着部と内容物とが同一速度で移動する。従って、上流搬送手段から吸着部(受取部)に対する内容物の受渡時に、内容物に対しダメージがより加わりにくくなる。これにより、不良品の内容物の発生をより効果的に抑えることが可能となり、ブリスタシートの生産に係るコストをより一層低減することができる。
【0025】
手段4.複数の前記回転受取手段は、それぞれ計m個の前記受取部を有することを特徴とする手段2又は3に記載のブリスタ包装機。
【0026】
上記手段4によれば、充填時における内容物の列数を印刷時における内容物の列数のx倍(xは2以上の自然数)に増やすことが可能な包装機を非常にシンプルな構成で実現することができる。
【0027】
手段5.前記中間搬送手段は、内部空間が内容物の搬送路を構成するフレキシブルな管状部品によって構成されていることを特徴とする手段1乃至4のいずれかに記載のブリスタ包装機。
【0028】
尚、「フレキシブルな管状部品」とあるのは、比較的容易に伸縮や湾曲などが可能な管状部品をいう。「フレキシブルな管状部品」としては、例えば、コイルスプリングにより形成された管状部品(いわゆるスプリングシュート)などを挙げることができる。
【0029】
上記手段5によれば、中間搬送手段は、フレキシブルな管状部品によって構成されている。従って、受取部から充填手段に対する内容物の搬送経路設定が容易になり、ブリスタシートの生産に係る利便性を高めることができる。
【0030】
手段6.内容物は、前記印刷手段によって印刷が施される表面と、該表面の裏に位置する裏面と、前記表面及び前記裏面で挟まれた側面とを有し、
前記管状部品は、ねじり変形可能であるとともに、
前記管状部品において、複数の内容物はそれぞれの前記側面同士が隣接するようにして1列に並んだ状態で搬送されるように構成されており、
前記管状部品を180°ねじり変形させることで、搬送される内容物の表裏を反転可能に構成されていることを特徴とする手段5に記載のブリスタ包装機。
【0031】
上記手段6によれば、管状部品を180°ねじり変形させる(管状部品の軸を中心として管状部品の入口部に対しその出口部が180°回転した状態とする)ことで、管状部品によって搬送される内容物の表裏を反転させることができる。従って、管状部品を180°ねじり変形させるか否かという簡単な調節によって、ポケット部に充填される内容物の表裏の向きを容易に変更させることができる。また、内容物の向きを変更するための特別な装置を設ける必要がないため、内容物の向き変更を可能としながら、包装機の製造などに係るコストの増大抑制や、包装機の簡素化・小型化をより確実に図ることができる。
【0032】
手段7.前記充填手段は、前記管状部品における出口部を接続可能な計n個の被接続部を有し、
複数の前記管状部品における各出口部は、全ての前記被接続部に対し脱着可能に構成されており、
前記管状部品の出口部の接続対象となる前記被接続部を変更することで、該管状部品によって搬送された内容物の供給先となる、前記充填手段に係る内容物の列を変更可能であることを特徴とする手段5又は6に記載のブリスタ包装機。
【0033】
上記手段7によれば、各管状部品の出口部は、全ての被接続部に対し着脱可能とされている。そして、管状部品の出口部の接続対象となる被接続部を変更することで、該管状部品によって搬送された内容物の供給先となる、充填手段に係る内容物の列を変更することができる。従って、管状部品における出口部の接続対象を変更するという簡単な作業だけで、印刷時にある列を構成していた内容物を、充填手段における任意の内容物の列へと供給することができる。これにより、内容物の充填対象となるポケット部の変更が極めて容易に可能となり、ブリスタシートの製造に係る利便性を一層高めることができる。
【0034】
手段8.容器フィルムに形成された複数のポケット部のそれぞれに内容物が収容されるとともに、該ポケット部を塞ぐように前記容器フィルムに対しカバーフィルムが取着されてなるブリスタシートの製造方法であって、
所定の第一数値をmとし、前記第一数値よりも多数である第二数値をnとしたときに、
m列に並んだ状態で内容物を搬送する上流搬送工程と、
前記上流搬送工程により搬送される内容物に印刷を施す印刷工程と、
所定の充填手段によって、前記印刷工程によって印刷が施され、かつ、n列に並んだ内容物を、帯状の前記容器フィルムに形成された前記ポケット部に充填する充填工程と、
前記上流搬送工程及び前記充填工程間において、内容物の列数をmからnに変換する列数変換工程とを備え、
前記列数変換工程は、
前記上流搬送工程により搬送される内容物の列に対応して1又は複数設けられ、それぞれ特定の1の列の内容物のみを受取可能な計n個の受取部によって、前記上流搬送工程により搬送された内容物を受取る受取工程と、
前記受取部に対しそれぞれ1つずつ設けられ、前記上流搬送工程により搬送された内容物を前記受取部側に向けて排出可能な計n個の排出手段によって、内容物を前記受取部側へと排出する排出工程と、
それぞれ独立し、かつ、前記受取部に対しそれぞれ1つずつ設けられ、前記受取部が受け取った内容物を前記充填手段に対し搬送する計n個の中間搬送手段によって、前記受取部側から前記充填手段へと内容物を搬送する中間搬送工程とを有し、
前記中間搬送工程により搬送される内容物は、前記充填工程に係る複数の内容物の列のうち、搬送を担う前記中間搬送手段ごとに異なる特定の1の列に供給されることを特徴とするブリスタシートの製造方法。
【0035】
上記手段8によれば、上記手段1と同様の作用効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】PTPシートを示す斜視図である。
図2】PTPシートの部分拡大断面図である。
図3】ポケット部側からPTPシートを見たときの平面図である。
図4】PTPフィルムを示す斜視図である。
図5】PTP包装機の概略構成を示す模式図である。
図6】印刷充填装置の概略構成を示す斜視模式図である。
図7】印刷充填装置の概略構成を示す正面模式図である。
図8】供給装置などの斜視模式図である。
図9】分配ドラムなどの斜視模式図である。
図10】上流搬送装置や分配ドラムなどの部分拡大断面図である。
図11】各分配ドラムに向けた錠剤の排出態様を説明するための、上流搬送装置により搬送される錠剤などを示す模式図である。
図12】印刷ヘッドにおけるノズル列の配置を示す模式図である。
図13】中間搬送装置などの一部破断正面図である。
図14】中間搬送装置などの平面図である。
図15】180°ねじり変形させた中間搬送装置を簡略化して示す斜視模式図である。
図16】充填装置などの斜視模式図である。
図17】錠剤の搬送速度やバッファ量などを大まかに示すグラフである。
図18】錠剤の貯留数を調節する際における各分配ドラムに向けた錠剤の排出態様を説明するための、上流搬送装置により搬送される錠剤などを示す模式図である。
図19】シャッタの個別制御について説明するための供給装置などの斜視模式図である。
図20】別の実施形態において、搬送ベルトを備えた印刷充填装置の概略構成を示す斜視模式図である。
図21】別の実施形態において、2つの搬送ドラムを有するとともに、錠剤の表面及び裏面に印刷処理を施すことが可能な印刷充填装置の概略構成を示す斜視模式図である。
図22】別の実施形態において、2つの搬送ベルトを有するとともに、錠剤の表面及び裏面に印刷処理を施すことが可能な印刷充填装置の概略構成を示す斜視模式図である。
図23】別の実施形態において、滑り台状の受取部を有する印刷充填装置の概略構成を示す斜視模式図である。
図24】別の実施形態における受取部などの部分拡大断面図である。
図25】別の実施形態において、各分配ドラムに向けた錠剤の排出態様を説明するための、上流搬送装置により搬送される錠剤などを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下に、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。まず、「ブリスタシート」としてのPTPシートの構成について説明する。
【0038】
図1,2に示すように、PTPシート1は、複数のポケット部2を備えた容器フィルム3と、ポケット部2を塞ぐようにして容器フィルム3に取着されたカバーフィルム4とを有している。
【0039】
本実施形態における容器フィルム3は、例えばPP(ポリプロピレン)やPVC(ポリ塩化ビニル)等の透明の熱可塑性樹脂材料により形成され、透光性を有している。一方、カバーフィルム4は、例えばポリプロピレン樹脂等からなるシーラントが表面に設けられた不透明材料(例えばアルミニウム箔等)により構成されている。勿論、各フィルム3,4の材料は、これらに限定されるものではなく、他の材質のものを採用してもよい。
【0040】
PTPシート1には、その長手方向に沿って配列された7個のポケット部2からなるポケット列が、その短手方向に2列形成されている。つまり、計14個のポケット部2が形成されている。各ポケット部2には、「内容物」としての錠剤5が1つずつ収容されている。
【0041】
PTPシート1は、帯状の容器フィルム3及び帯状のカバーフィルム4から形成された帯状のPTPフィルム6(図4参照)がシート状に打抜かれることによって製造されるものであり、平面視略矩形状に形成されている。本実施形態において、PTPフィルム6は、その幅方向に沿って2シート分に対応する数(つまり14個)のポケット部2が配列された構成となっている。
【0042】
また、本実施形態における錠剤5は、平面視円形状をなす円盤状の素錠であって、側面5aと、該側面5aを挟む表面5b及び裏面5cとを有した構成となっている。そして、図3に示すように、表面5bはポケット部2の凸部側に配置されており、該表面5bには、錠剤5に関する各種情報(文字や記号、数字、図形など)が印刷されている。図3は、ポケット部2側からPTPシート1を見たときの平面図である。印刷部5eは透明なポケット部2を通して外部から視認可能となっている。尚、表面5bは、印刷部5eが設けられた面をいい、裏面5cは表面5bの裏に位置する面をいう。本実施形態において、裏面5cには印刷部5eが形成されていない。
【0043】
錠剤5に関する各種情報としては、例えば「製品名」、「含量」、「剤形」、「製造元」、「ロット番号」及び「錠剤の服用時期に係る情報」などを挙げることができる。本実施形態において、表面5bには、「錠剤5の服用時期に係る情報」として、曜日を省略して表した文字が印刷形成されている。以下では、該文字の印刷された部位を「印刷部5e」と称する。本実施形態において、各錠剤5は、PTPシート1の長手方向に沿って、印刷部5eの示す曜日が曜日順で並ぶようにして各ポケット部2に充填されている。
【0044】
次に、上記PTPシート1を製造するためのPTP包装機10の概略構成について説明する。本実施形態では、PTP包装機10が「ブリスタ包装機」を構成する。
【0045】
図5に示すように、PTP包装機10の最上流側では、帯状の容器フィルム3の原反がロール状に巻回されている。ロール状に巻回された容器フィルム3の引出し端側は、ガイドロール13に案内されている。容器フィルム3は、ガイドロール13の下流側において間欠送りロール14に掛装されている。間欠送りロール14は、間欠的に回転するモータに連結されており、容器フィルム3を間欠的に搬送する。
【0046】
ガイドロール13と間欠送りロール14との間には、容器フィルム3の搬送経路に沿って、加熱装置15及びポケット部形成装置16が順に配設されている。そして、加熱装置15によって容器フィルム3が加熱されて該容器フィルム3が比較的柔軟になった状態において、ポケット部形成装置16によって容器フィルム3の所定位置に複数のポケット部2が形成される。ポケット部2の形成は、間欠送りロール14による容器フィルム3の搬送動作間のインターバルの際に行われる。
【0047】
間欠送りロール14から送り出された容器フィルム3は、テンションロール18、ガイドロール19及びフィルム受けロール20の順に掛装されている。フィルム受けロール20は、一定回転するモータに連結されているため、容器フィルム3を連続的に且つ一定速度で搬送する。テンションロール18は、容器フィルム3を弾性力によって緊張する側へ引っ張った状態とされており、間欠送りロール14とフィルム受けロール20との搬送動作の相違による容器フィルム3の弛みを防止して容器フィルム3を常時緊張状態に保持する。
【0048】
ガイドロール19とフィルム受けロール20との間には、容器フィルム3の搬送経路に沿って、印刷充填装置21及び検査装置22が順に配設されている。
【0049】
印刷充填装置21は、錠剤5に印刷部5eを形成する機能と、錠剤5をポケット部2に充填する機能とを有する。印刷充填装置21の詳細については後述する。
【0050】
検査装置22は、例えば錠剤5が各ポケット部2に確実に充填されているか否か、錠剤5の異常の有無、ポケット部2への異物混入の有無などに関する検査を行う。
【0051】
一方、帯状に形成されたカバーフィルム4の原反は、最上流側においてロール状に巻回されている。ロール状に巻回されたカバーフィルム4の引出し端は、ガイドロール24によって加熱ロール25の方へと案内されている。
【0052】
加熱ロール25は、前記フィルム受けロール20に圧接可能となっており、両ロール20,25間に容器フィルム3及びカバーフィルム4が送り込まれるようになっている。そして、容器フィルム3及びカバーフィルム4が、両ロール20,25間を加熱圧接状態で通過することで、容器フィルム3にカバーフィルム4が取着され、ポケット部2がカバーフィルム4で塞がれる。これにより、錠剤5が各ポケット部2に収容された帯状のPTPフィルム6が製造される。
【0053】
フィルム受けロール20から送り出されたPTPフィルム6は、テンションロール27及び間欠送りロール28の順に掛装されている。間欠送りロール28は、間欠的に回転するモータに連結されているため、PTPフィルム6を間欠的に搬送する。テンションロール27は、PTPフィルム6を弾性力によって緊張する側へ引っ張った状態とされており、前記フィルム受けロール20と間欠送りロール28との搬送動作の相違によるPTPフィルム6の弛みを防止してPTPフィルム6を常時緊張状態に保持する。
【0054】
間欠送りロール28から送り出されたPTPフィルム6は、テンションロール31及び間欠送りロール32の順に掛装されている。間欠送りロール32は、間欠的に回転するモータに連結されているため、PTPフィルム6を間欠的に搬送する。テンションロール31は、PTPフィルム6を弾性力によって緊張する側へ引っ張った状態とされており、前記間欠送りロール28,32間でのPTPフィルム6の弛みを防止する。
【0055】
間欠送りロール28とテンションロール31との間には、PTPフィルム6の搬送経路に沿って、スリット形成装置33及び刻印装置34が順に配設されている。スリット形成装置33は、PTPフィルム6の所定位置に切離用スリットを形成する機能を有する。また、刻印装置34はPTPフィルム6の所定位置(例えばタグ部)に刻印を付す機能を有する。尚、図1等では、切離用スリットや刻印の図示を省略している。
【0056】
間欠送りロール32から送り出されたPTPフィルム6は、その下流側においてテンションロール35及び連続送りロール36の順に掛装されている。間欠送りロール32とテンションロール35との間には、PTPフィルム6の搬送経路に沿って、シート打抜装置37が配設されている。シート打抜装置37は、PTPフィルム6をPTPシート1単位にその外縁を打抜く機能を有する。
【0057】
シート打抜装置37によって打抜かれたPTPシート1は、コンベア39によって搬送され、完成品用ホッパ40に貯留される。但し、前記検査装置22によって不良判定がなされた場合、この不良判定に係るPTPシート1は、完成品用ホッパ40へ送られることなく、図示しない不良シート排出機構によって別途排出される。
【0058】
前記連続送りロール36の下流側には、裁断装置41が配設されている。そして、シート打抜装置37による打抜き後に帯状に残った残材部(スクラップ部)を構成する不要フィルム部42は、テンションロール35及び連続送りロール36に案内された後、裁断装置41に導かれる。裁断装置41は、不要フィルム部42を所定寸法に裁断する。裁断された不要フィルム部42(スクラップ)はスクラップ用ホッパ43に貯留された後、別途廃棄処理される。
【0059】
次いで、印刷充填装置21について詳しく説明する。図6,7に示すように、印刷充填装置21は、供給装置51、上流搬送装置52、錠剤検査装置53、第一印刷装置54a、第二印刷装置54b、印刷検査装置55、不良品除去装置56、列数変換装置57、充填装置58及び制御装置59を備えている。本実施形態では、上流搬送装置52が「上流搬送手段」を構成し、同様に、第一印刷装置54a及び第二印刷装置54bが「印刷手段」を、列数変換装置57が「列数変換手段」を、充填装置58が「充填手段」を、それぞれ構成する。
【0060】
供給装置51は、多数の錠剤5が貯留された図示しない貯留部(例えばホッパ等)から上流搬送装置52へと錠剤5を供給する。供給装置51は、図8に示すように、供給シュート511及び供給ドラム512を備えている。尚、前記貯留部に貯留された錠剤5は、印刷部5eが形成されていないものである。
【0061】
供給シュート511は、前記貯留部から供給された錠剤5を、1錠ずつ供給ドラム512へと受け渡すものであり、供給ドラム512により搬送される錠剤5の列数と同数並んで設けられている。各供給シュート511は、筒状をなしており、錠剤5を鉛直方向に一列で積載できるように構成されている。また、各供給シュート511は、その下側開口部が供給ドラム512の回転軸の真上において該供給ドラム512に近接した状態で設置されている。
【0062】
各供給シュート511の下側開口部近傍には、該開口部を開閉可能なシャッタ511aが設けられている。該シャッタ511aの動作は制御装置59によって制御されている。該シャッタ511aの動作による前記開口部の開閉によって、錠剤5が、供給シュート511から1錠ずつ落下して、供給ドラム512へと供給される。
【0063】
供給ドラム512は、供給シュート511から供給された錠剤5を受け取った上で、該錠剤5を吸着保持しつつ上流搬送装置52側へと搬送する。供給ドラム512は、円筒形状をなすとともに、図示しない駆動手段によって回転可能に構成されている。
【0064】
供給ドラム512の外周面には、錠剤5を吸着保持するための供給ドラム吸着部512a(以下、単に「吸着部512a」という)が多数形成されている。各吸着部512aは、供給ドラム512の回転軸の真上から真下をやや過ぎた位置まで移動する間、所定の吸引機構(図示せず)により負圧が供給された状態となるように構成されている。これにより、各吸着部512aは、供給ドラム512の回転軸の真上から真下をやや過ぎた位置まで移動する間、錠剤5を吸着保持する。一方、各吸着部512aは、供給ドラム512の回転軸の真下をやや過ぎた位置から真上付近まで移動する間、大気に開放された状態となるように構成されている。これにより、吸着部512aにより吸着保持された錠剤5は、供給ドラム512の回転軸の真下をやや過ぎた位置にて吸着解除されて、上流搬送装置52へと受け渡される。
【0065】
また、吸着部512aは、供給ドラム512の回転方向及び軸方向に所定間隔で規則的に配列されている。本実施形態において、吸着部512aは、供給ドラム512の回転方向に沿って等間隔で多数設けられている。そして、この回転方向に並ぶ吸着部512aの列が、供給ドラム512の軸方向に沿って等間隔に複数設けられている。尚、吸着部512aの列数は、上流搬送装置52により搬送される錠剤5の列数と同一とされる。
【0066】
上流搬送装置52は、供給装置51から受け渡された錠剤5を吸着保持しつつ、列数変換装置57側へと搬送するものである。上流搬送装置52は、図6~8に示すように、搬送ドラム521を備えている。
【0067】
搬送ドラム521は、円筒形状をなすとともに、図示しない駆動手段によって回転可能に構成されている。また、搬送ドラム521は、錠剤5を吸着保持するための搬送ドラム吸着部521a(以下、単に「吸着部521a」という)を備えている。
【0068】
吸着部521aは、搬送ドラム521の回転方向つまり錠剤5の搬送方向に沿って、等間隔で多数並んで設けられている。そして、所定の第一数値(但し、自然数)をmとしたとき、搬送ドラム521の移動方向(錠剤5の搬送方向)に沿って並ぶ吸着部521aの列がm列形成されている。本実施形態において、第一数値(つまりm)は、2以上の自然数であり、具体的には「7」とされている。
【0069】
搬送ドラム521の内部空間には、図示しない吸引機構によって負圧が供給されており、該内部空間は略真空状態となっている。これにより、吸着部521aに負圧が供給された状態となり、上流搬送装置52は、吸着部521aによって錠剤5を吸着保持しつつ、搬送ドラム521の回転に伴い、m列に並んだ状態で錠剤5を搬送する。本実施形態では、上流搬送装置52によって、m列に並んだ状態で錠剤5を搬送する工程が「上流搬送工程」に相当する。尚、図6等では、不良品除去装置56や後述する排出装置571,572を示すべく、搬送ドラム521の内部空間が外部に開放された状態を示しているが、実際には、該内部空間は密閉された状態となっている。
【0070】
また、本実施形態において、上流搬送装置52には図示しないエンコーダが設けられており、該エンコーダから制御装置59へと搬送ドラム521の回転量(移動量)に関する信号が所定時間毎に送信されるようになっている。これにより、制御装置59は、上流搬送装置52によって搬送される錠剤5の位置を把握可能となっている。
【0071】
錠剤検査装置53は、図6,7に示すように、上流搬送装置52による錠剤5の搬送経路に沿って設けられており、搬送される錠剤5の検査を行う。錠剤検査装置53は、搬送される錠剤5を撮像するためのカメラ、及び、該カメラにより得られた撮像画像に基づき錠剤5の良否を判定する錠剤判定装置(それぞれ不図示)を備えている。前記カメラにより得られた錠剤5の撮像画像や前記錠剤判定装置による判定結果は、制御装置59へと送信される。
【0072】
第一印刷装置54a及び第二印刷装置54bは、上流搬送装置52による錠剤5の搬送方向に沿って錠剤検査装置53の下流に配置されており、所定のインクジェット方式(例えばピエゾ方式やサーマル方式)で、搬送される錠剤5に対し非接触で印刷を行う。
【0073】
各印刷装置54a,54bは、搬送ドラム521の幅方向に並ぶm個の吸着部521a(錠剤5)に対応するようにして、該幅方向に並ぶm個の印刷ヘッド(図示せず)をそれぞれ備えている。各印刷ヘッドは、搬送ドラム521の回転方向に並ぶ1列の錠剤5の印刷をそれぞれ担当する。各印刷ヘッドは、印刷装置54a,54bを通過する各錠剤5に向けてインクを吐出することで、各錠剤5に印刷を施して前記印刷部5eを形成する。
【0074】
また、各印刷ヘッドは、インクの液滴を吐出可能な複数のノズルを一定間隔で配列した2列のノズル列La,Lbを備えている(図12参照)。
【0075】
ノズル列Laは、x個のノズルNa(Na1,Na2,Na3,Na4,Na5,・・・,Nax)をヘッド幅方向に一定間隔で備え、ノズル列Lbは、x個のノズルNb(Nb1,Nb2,Nb3,Nb4,Nb5,・・・,Nbx)をヘッド幅方向に一定間隔で備えている。本実施形態では、各ノズルNa,Nbに対し、図示しないインクタンクから所定の可食性インクが供給されるようになっている。
【0076】
さらに、ノズル列Lbの各ノズルNbは、ノズル列Laの各ノズルNaに対してヘッド幅方向に位置ずれしており、各ノズルNa間に位置している。つまり、両ノズル列La,LbのノズルNa,Nbは、全体として千鳥状に配置され、ヘッド幅方向に一定間隔に並んだ状態となっている。
【0077】
また、各印刷ヘッドには、ノズルNa,Nbの内部に詰まった塵埃や増粘又は固形化したインク等を外部に排出する加圧パージを行うクリーニング機構や、パージ後の印刷ヘッドを拭くワイピング機構などを備えたクリーニング装置(不図示)が設けられている。
【0078】
本実施形態において、第二印刷装置54bは、クリーニング時など第一印刷装置54aによる印刷処理の停止時に、第一印刷装置54aに代わって印刷処理を行う。つまり、第二印刷装置54bは、第一印刷装置54aの予備としての機能を持つ。
【0079】
尚、両印刷装置54a,54bが並行して印刷処理を行うようにしてもよい。また、印刷部5eが2色で構成されている場合には、1の色を第一印刷装置54aが担当し、その他の色を第二印刷装置54bが担当するように構成してもよい。
【0080】
また、各印刷装置54a,54bは、制御装置59によって印刷位置が制御されるようになっている。その結果、搬送されている各錠剤5の状態(本実施形態では位置)がそれぞれ異なるものであっても、各錠剤5の適切な位置に印刷部5eが形成されるようになっている。
【0081】
さらに、各印刷装置54a,54bによる印刷内容についても制御装置59によって制御されるようになっている。本実施形態では、搬送ドラム521の軸方向に沿って並ぶm個の錠剤5における各印刷部5eの示す曜日が曜日順で並ぶように、各印刷装置54a,54bによる印刷内容が制御される。本実施形態では、上流搬送装置52により搬送される錠剤5に対し印刷装置54a,54bにより印刷を施す工程が「印刷工程」に相当する。
【0082】
印刷検査装置55は、印刷装置54a,54bによって形成された印刷部5eの検査を行う。印刷検査装置55は、搬送される錠剤5を撮像するためのカメラ、及び、該カメラにより得られた撮像画像に基づき印刷部5eの良否を判定し、ひいては錠剤5の良否を判定する印刷判定装置(それぞれ不図示)を備えている。前記印刷判定装置による判定結果は、制御装置59へと送信される。
【0083】
不良品除去装置56は、錠剤検査装置53や印刷検査装置55によって不良品と判定された錠剤5を系外(つまり上流搬送装置52による搬送経路の外)へと取り除くための装置である。不良品除去装置56は、上流搬送装置52による錠剤5の搬送方向に沿って、印刷検査装置55よりも下流に設けられている。不良品除去装置56は、不良品用ブローノズル56aと不良品収容部56bとを備えている。
【0084】
不良品用ブローノズル56aは、吸着部521aに対しブローを行うことで錠剤5の吸着保持を解除して、該錠剤5を系外へと排出するための装置である。不良品用ブローノズル56aは、搬送ドラム521の内部空間にm個設けられている。各不良品用ブローノズル56aは、搬送ドラム521による錠剤5の搬送方向と直交する方向に沿って並んでおり、搬送ドラム521による搬送方向に沿って並ぶ1列の錠剤5の除去をそれぞれ担当する。これにより、不良品の錠剤5のみを選択的に系外へと除去可能である。
【0085】
不良品収容部56bは、不良品の錠剤5を収容するための箱である。不良品収容部56bは、投入口(不図示)を備えており、該投入口は搬送ドラム521の外周面近傍に位置している。そして、不良品用ブローノズル56aのブロー動作によって除去された錠剤5は、前記投入口を通って不良品収容部56bに収容されるようになっている。
【0086】
列数変換装置57は、上流搬送装置52及び充填装置58間において、充填装置58による充填時における錠剤5の列数を、上流搬送装置52による搬送時における錠剤5の列数よりも増大させるためのものである。すなわち、前記第一数値よりも多数である第二数値をnとしたとき(但し、nは自然数)、列数変換装置57は、上流搬送装置52及び充填装置58間において、錠剤5の列数をmからnに変換する機能を有する。尚、本実施形態において、第二数値(つまりn)は3以上の自然数であり、具体的には「14」とされている。
【0087】
列数変換装置57は、図6~10に示すように、第一排出装置571、第二排出装置572、第一分配ドラム573、第二分配ドラム574、第一ドラムカバー575、第二ドラムカバー576、第一中間搬送装置577及び第二中間搬送装置578を備えている。尚、本実施形態においては、制御装置59におけるその一部機能(特に排出装置571,572による錠剤5の排出に関する機能)も、列数変換装置57の一部を構成している。本実施形態では、第一排出装置571及び第二排出装置572が「排出手段」を構成し、同様に、第一分配ドラム573及び第二分配ドラム574が「回転受取手段」を、第一中間搬送装置577及び第二中間搬送装置578が「中間搬送手段」を、それぞれ構成する。
【0088】
第一排出装置571は、上流搬送装置52による錠剤5の搬送方向に沿った不良品除去装置56よりも下流であって、搬送ドラム521の回転軸の真下よりもやや上流位置である第一受取ポジションP1(図10参照)に対応して設けられている。一方、第二排出装置572は、錠剤5の搬送方向に沿った第一排出装置571よりも下流であって、搬送ドラム521の回転軸の真下よりもやや下流位置である第二受取ポジションP2(図10参照)に対応して設けられている。各排出装置571,572は、それぞれ搬送ドラム521の内部に設置されたブローノズルによって構成されている。本実施形態では、受取ポジションP1,P2がそれぞれ「受取ポジション」に相当する。
【0089】
各排出装置571,572は、吸着部521aに対しブローを行うことで各受取ポジションP1,P2にて錠剤5の吸着保持を解除して、該錠剤5を分配ドラム573,574に向けて排出する。各排出装置571,572は、上流搬送装置52による錠剤5の搬送方向と直交する方向に沿ってm個(本実施形態では7個)ずつ並んで設けられている。従って、排出装置571,572は計n(=m×2)個設けられている。
【0090】
さらに、各第一排出装置571は、後述するm個の第一受取部573aのそれぞれに対し1つずつ設けられた態様となっており、また、各第二排出装置572は、後述するm個の第二受取部574aのそれぞれに対し1つずつ設けられた態様となっている。加えて、各排出装置571,572におけるブロー口〔気体(例えばエア)の吹き出し口〕の全ては、一定タイミング毎に吸着部521aと重なるようになっている。
【0091】
各排出装置571,572の動作は制御装置59によって制御されている。第一排出装置571は、搬送ドラム521の軸方向に並ぶ1列の錠剤5(図11にて、二点鎖線で囲まれた7個の錠剤5)を1列置きに排出するように制御される。一方、第二排出装置572は、残りの錠剤5(図11にて二点鎖線で囲まれていない錠剤5)を排出するように制御される。本実施形態では、排出装置571,572によって、上流搬送装置52から後述する受取部573a,574a側へと錠剤5を排出する工程が「排出工程」に相当する。
【0092】
各分配ドラム573,574は、排出装置571,572によって排出された錠剤5を受取るとともに、該錠剤5を中間搬送装置577,578側へと搬送する。各分配ドラム573,574は、それぞれ円筒形状をなすとともに、図示しない駆動手段によって回転可能に構成されている。また、各分配ドラム573,574は、上流搬送装置52による錠剤5の搬送方向に沿って設けられている。
【0093】
第一分配ドラム573は、第一排出装置571によって排出された錠剤5を吸着保持するための第一受取部573aを備えている。また、第二分配ドラム574は、第一受取部573aと同様に錠剤5を吸着保持するための第二受取部574aを備えている。
【0094】
第一受取部573aは、第一分配ドラム573の回転方向つまり錠剤5の搬送方向に沿って等間隔で多数並んで設けられた1列の第一分配ドラム吸着部573b(以下、単に「吸着部573b」という)によって構成されている。図9では、第一受取部573aを構成する1列の吸着部573bの中心を通る仮想線を二点鎖線で示している。そして、この仮想線で示す通り、1列の吸着部573bにより構成される第一受取部573aは、第一分配ドラム573の軸方向に沿ってm個設けられている。
【0095】
第二受取部574aは、第二分配ドラム574の回転方向つまり錠剤5の搬送方向に沿って等間隔で多数並んで設けられた1列の第二分配ドラム吸着部574b(以下、単に「吸着部574b」という)によって構成されている。図9では、第二受取部574aを構成する1列の吸着部574bの中心を通る仮想線を二点鎖線で示している。そして、この仮想線で示す通り、1列の吸着部574bにより構成される第二受取部574aは、第二分配ドラム574の軸方向に沿ってm個設けられている。本実施形態では、第一受取部573a及び第二受取部574aがそれぞれ「受取部」を構成し、吸着部573b,574bがそれぞれ「吸着部」を構成する。
【0096】
そして、本実施形態において、第一受取部573a及び第二受取部574aは、上流搬送装置52により搬送される錠剤5の列に対応して1つずつ設けられている。つまり、上流搬送装置52により搬送される錠剤5の列ごとに2つずつ「受取部」が設けられている。従って、本実施形態において、受取部574a,574bは計n(=m×2)個設けられている。
【0097】
また、第一分配ドラム573の内部空間には図示しない吸引機構によって負圧が供給されており、第一受取ポジションP1及びその近傍に配置された吸着部573bに対し負圧が供給されるようになっている。これにより、第一分配ドラム573は、第一受取ポジションP1にて上流搬送装置52から排出された錠剤5を第一受取部573a(吸着部573b)によって受取可能である。尚、各第一受取部573aは、それぞれ上流搬送装置52で搬送されるm列の錠剤5のうち特定の1の列の錠剤5のみを受取可能である。そして、錠剤5の受取後、第一分配ドラム573は、吸着部573bにより錠剤5を吸着保持しつつ、自身の回転に伴い該錠剤5を第一中間搬送装置577側へと搬送する。
【0098】
さらに、第二分配ドラム574の内部空間に対しても図示しない吸引機構によって負圧が供給されており、第二受取ポジションP2及びその近傍に配置された吸着部574bに対し負圧が供給されるようになっている。これにより、第二分配ドラム574は、第二受取ポジションP2にて上流搬送装置52から排出された錠剤5を第二受取部574a(吸着部574b)によって受取可能である。尚、各第二受取部574aは、第一受取部573aと同様、それぞれ上流搬送装置52で搬送されるm列の錠剤5のうち特定の1の列の錠剤5のみを受取可能である。錠剤5の受取後、第二分配ドラム574は、吸着部574bによって錠剤5を吸着保持しつつ、自身の回転に伴い該錠剤5を第二中間搬送装置578側へと搬送する。本実施形態では、受取部573a,574aによって、上流搬送装置52により搬送された錠剤5を受取る工程が「受取工程」に相当する。
【0099】
加えて、第一分配ドラム573は、第一受取ポジションP1にて、吸着部573bの移動方向が上流搬送装置52により搬送される錠剤5の移動方向と同一となるように構成されている。さらに、第一受取ポジションP1において、吸着部573bの移動速度と上流搬送装置52により搬送される錠剤5の移動速度とが同一となるように構成されている。
【0100】
また同様に、第二分配ドラム574は、第二受取ポジションP2にて、吸着部574bが上流搬送装置52により搬送される錠剤5と同一方向に移動するとともに、吸着部574b及び該錠剤5の各移動速度が同一となるように構成されている。
【0101】
第一ドラムカバー575は、第一受取ポジションP1の直下流から第一分配ドラム573の回転軸の側方よりもやや下流にかけての第一分配ドラム573の外周面を覆うものである。第一ドラムカバー575は、第一分配ドラム573の外周面との間で第一搬送路575aを形成するとともに、遠心力によって錠剤5が第一分配ドラム573側から飛び出すことを防止する。第一搬送路575aは、第一受取部573aごとに複数設けられており、それぞれ独立している。つまり、第一搬送路575aは、計m個設けられている。そして、各第一受取部573aにより受取られた錠剤5は、受取られた第一受取部573aごとに異なる別々の第一搬送路575aを通って搬送される。
【0102】
また、第一ドラムカバー575には、第一搬送路575aの最下流に連通し、該第一搬送路575aを通って搬送された錠剤5が通過する第一連結路575bが形成されている。第一連結路575bは、第一搬送路575aごとに設けられており、各第一連結路575bの最下流部に対しては、第一中間搬送装置577の後述する入口部577aが挿通されている。
【0103】
第二ドラムカバー576は、第二受取ポジションP2の直下流から第二分配ドラム574の回転軸の側方よりもやや下流にかけての第二分配ドラム574の外周面を覆う。第二ドラムカバー576は、第二分配ドラム574の外周面との間で第二搬送路576aを形成するとともに、遠心力によって錠剤5が第二分配ドラム574側から飛び出すことを防止する。第二搬送路576aは、第二受取部574aごとに設けられており、それぞれ独立している。つまり、第二搬送路576aは、計m個設けられている。そして、各第二受取部574aにより受取られた錠剤5は、受取られた第二受取部574aごとに異なる別々の第二搬送路576aを通って搬送される。
【0104】
さらに、第二ドラムカバー576には、第二搬送路576aの最下流に連通し、該第二搬送路576aを通って搬送された錠剤5が通過する第二連結路576bが形成されている。第二連結路576bは、第二搬送路576aごとに設けられており、各第二連結路576bの最下流部に対しては、第二中間搬送装置578の入口部578aが挿通されている。尚、各連結路575b,576aにおいて錠剤5は立った姿勢(錠剤5の中心軸が水平となる姿勢)となるところ、各連結路575b,576aを通過した錠剤5はこの姿勢のまま中間搬送装置577,578へと案内されるようになっている。
【0105】
第一中間搬送装置577は、第一受取部573aが受け取った錠剤5を充填装置58側へと搬送する。第二中間搬送装置578は、第二受取部574aが受け取った錠剤5を充填装置58側へと搬送する。本実施形態では、中間搬送装置577,578によって、受取部573a,574a側から充填装置58へと錠剤5を搬送する工程が「中間搬送工程」に相当する。
【0106】
各中間搬送装置577,578は、内部空間が錠剤5の搬送空間を構成するフレキシブルな管状部品によって構成されている。本実施形態において、この管状部品は、所定の線材を螺旋状に巻回してなり、比較的容易に伸縮及び湾曲可能なスプリングシュートである(図13参照)。
【0107】
各中間搬送装置577,578は、それぞれ独立し、かつ、受取部573a,574aに対しそれぞれ1つずつ設けられている。従って、計n個(=m×2)の中間搬送装置577,578が設けられている。各中間搬送装置577,578は、該中間搬送装置577,578の一端部により構成された入口部577a,578aを備えている。そして、入口部577a,578aが連結路575b,576bに挿通されることで、ドラムカバー575,576に対し中間搬送装置577,578が接続された状態となっている。
【0108】
一方、各中間搬送装置577,578は、該中間搬送装置577,578の他端部により構成された出口部577b,578b(図16参照)を有している。そして、各出口部577b,578bは、充填装置58の後述する被接続部581aの全てに対し着脱可能とされている。
【0109】
また、中間搬送装置577,578において、複数の錠剤5は、それぞれ側面5a同士が隣接するようにして1列に並んだ状態で搬送されるようになっている(図13参照)。さらに、各中間搬送装置577,578は楕円筒状をなしており、中間搬送装置577,578に対する錠剤5の相対回転が規制されるようになっている(図14参照)。
【0110】
加えて、中間搬送装置577,578は、ねじり変形可能に構成されている。本実施形態では、中間搬送装置577,578を180°ねじり変形させること、すなわち中間搬送装置577,578(スプリングシュート)の軸を中心としてその入口部577a,578aに対しその出口部577b,578bが180°回転した状態とすること(図15参照)が可能である。尚、図15では、中間搬送装置577,578を簡略化して示すとともに、ねじり変形の状態をより分かりやすいものとすべく仮想線VLを付している。中間搬送装置577,578をねじり変形させていない状態と比べ、中間搬送装置577,578を180°ねじり変形させることで、入口部577a,578aから出口部577b,578bまでの間に錠剤5の表裏を反転可能である。
【0111】
本実施形態において、各中間搬送装置577,578は180°ねじり変形した状態とされている。中間搬送装置577,578を180°ねじり変形させることで、ポケット部2に充填された錠剤5の印刷部5eが該ポケット部2の凸部(頂部)側に配置されるようになっている。
【0112】
尚、ポケット部2の開口側に印刷部5eを配置する場合には、各中間搬送装置577,578をねじり変形させなければよい。また、各中間搬送装置577,578のうちの一部のみを180°ねじり変形させることで、PTPシート1における一部のポケット部2の凸部側に表面5eが配置される一方、残りのポケット部2の凸部側に裏面5cが配置されるようにすることができる。
【0113】
上記のように構成された列数変換装置57によれば、上流搬送装置52によりm列に並んだ状態で搬送される錠剤5は、中間搬送装置577,578においてn列に並んだ状態となる。すなわち、錠剤5の列数がmからnに変換される。本実施形態では、列数変換装置57によって錠剤5の列数をmからnに変換する工程が「列数変換工程」に相当する。
【0114】
充填装置58は、n列に並んだ状態で搬送される錠剤5を、帯状の容器フィルム3に形成されたポケット部2へと充填する。充填装置58は、図16に示すように、充填用シュート581及び充填ドラム582を備えている。尚、図6,16等では、印刷部5eの図示を省略している。
【0115】
充填用シュート581は、中間搬送装置577,578を経て供給された錠剤5を、1錠ずつ充填ドラム582へと受け渡すものであり、容器フィルム3の幅方向に沿ったポケット部2の数と同数(本実施形態ではn個)設けられている。各充填用シュート581は、基本的には、前記供給シュート511と同様の機能を有しており、所定のシャッタ(不図示)を動作させることで、錠剤5を1錠ずつ落下させて充填ドラム582へと供給する。
【0116】
また、各充填用シュート581の上部には、中間搬送装置577,578(スプリングシュート)の出口部577b,578bを接続可能な筒状の被接続部581aが設けられている。被接続部581aは計n個設けられており、被接続部581aの内側に中間搬送装置577,578の出口部577b,578bを挿抜することで、被接続部581aに対し該出口部577b,578bを着脱可能とされている。尚、上記の通り、各出口部577b,578bは全ての被接続部581aに対し着脱可能である。そのため、出口部577b,578bの接続対象となる被接続部581aを変更することで、中間搬送装置577,578によって搬送された錠剤5の供給先となる、充填装置58に係る錠剤5の列を変更可能である。
【0117】
充填ドラム582は、充填用シュート581から供給された錠剤5を吸着保持しつつ、搬送される容器フィルム3のポケット部2へと該錠剤5を充填する。充填ドラム582は、円筒形状をなすとともに、図示しない駆動手段によって回転可能に構成されている。
【0118】
また、充填ドラム582の外周面には、錠剤5を吸着保持するための充填ドラム吸着部582a(以下、単に「吸着部582a」という)が多数形成されている。各吸着部582aは、基本的には、前記供給ドラム512と同様の機能を備えており、充填用シュート581の真下から充填ドラム582の回転軸の真下付近まで移動する間、錠剤5を吸着保持する一方、充填ドラム582の回転軸の真下にて錠剤5の吸着を解除して、該錠剤5をポケット部2へと投入する。
【0119】
また、吸着部582aは、充填ドラム582の回転方向及び軸方向に所定間隔で規則的に配列されている。本実施形態において、吸着部582aは、充填ドラム582の回転方向に沿って等間隔で多数設けられている。そして、この回転方向に並ぶ吸着部582aの列が、容器フィルム3の幅方向に沿ったポケット部2の列数に対応するようにして、充填ドラム582の軸方向に沿って等間隔にn列設けられている。これにより、充填装置58は、吸着部582aに吸着保持されてn列に並んだ錠剤5を、容器フィルム3の幅方向にn個並んだポケット部2へと順次充填していく。本実施形態では、充填装置58によって、n列に並んだ錠剤5をポケット部2に充填する工程が「充填工程」に相当する。
【0120】
また、中間搬送装置577,578により搬送された錠剤5は、充填装置58に係る複数の錠剤5の列のうち、搬送を担う中間搬送装置577,578ごとに異なる特定の1の列に供給される。従って、上流搬送装置52から1の受取部573a,574aに受渡された錠剤5は、充填装置58に係る複数の錠剤5の列のうち、この1の受取部573a,574aに対応する特定の1の列に供給される。
【0121】
加えて、本実施形態では、錠剤5の包装能力ひいてはPTPシート1の生産性が十分に高いものとなるように、充填ドラム582の回転速度や容器フィルム3の搬送速度が設定されている。“錠剤5の包装能力”とは、充填装置58によって単位時間当たりにポケット部2に充填される錠剤5の数に相当する。錠剤5の包装能力は、基本的には一定で維持される。
【0122】
制御装置59は、演算手段としてのCPUや、各種プログラムを記憶するROM、各種データを一時的に記憶するRAM、情報を長期記憶するための記憶媒体(例えばハードディスク等)などを備えている。制御装置59は、CPUが所定のプログラムを実行することによって、印刷充填装置21の各装置に対する制御処理を実行する。
【0123】
また、制御装置59は、印刷部5eに関する印刷データを予め記憶している。そして、錠剤5に印刷部5eを形成する際に、制御装置59は次のようにして動作する。すなわち、制御装置59は、錠剤検査装置53の前記カメラにより得られた撮像画像に基づき、錠剤5の状態(本実施形態では、位置)を把握する。そして、制御装置59は、把握した錠剤5の状態に基づきインクの吐出対象として適切なノズルNa,Nbを選択し、この選択したノズルNa,Nbからインクを吐出するように印刷装置54a(又は印刷装置54b)を制御する。また、このとき、制御装置59は、上流搬送装置52の前記エンコーダからの信号に基づき、印刷装置54a(又は印刷装置54b)による印刷タイミング(インクの吐出タイミング)を制御する。これにより、錠剤5の状態に応じた適切な位置に印刷部5eが形成される。
【0124】
また、制御装置59は、錠剤検査装置53及び印刷検査装置55による判定結果に基づき不良品の錠剤5を特定可能とされている。そして、制御装置59は、上流搬送装置52の前記エンコーダからの信号に基づき、不良品の錠剤5が不良品除去装置56に到達するタイミングを算出するとともに、この算出したタイミングで、該錠剤5の吸着を解除するためのブローを行うように不良品用ブローノズル56aを制御する。その結果、不良品の錠剤5は、系外へと排出されて不良品収容部56bに投入される。
【0125】
さらに、制御装置59は、印刷装置54a(又は印刷装置54b)による印刷を継続したまま、受取部573a,574aの下流から充填装置58の上流までの間(本実施形態では、各中間搬送装置577,578及び各充填用シュート581)において貯留されている錠剤5の数に基づき、印刷装置54a(又は印刷装置54b)によって単位時間当たりに印刷される錠剤5の数(つまり“印刷能力”)を調節する。尚、受取部573a,574aの下流から充填装置58の上流までの間において錠剤5を貯留する部分は計n個存在するため、錠剤5の貯留数は最大n種類存在することになる。
【0126】
本実施形態において、制御装置59は、印刷能力を調節するために、上流搬送装置52の動作を制御して、上流搬送装置52による錠剤5の搬送速度を変更する。搬送速度の変更に伴い印刷装置54a,54bに到達する単位時間当たりの錠剤5の数が増減することで印刷能力が調節される。
【0127】
“印刷能力”の調節についてより詳述すると、制御装置59は、図17に示すように、錠剤5の貯留数(バッファ量)の最小値が予め設定された下限値に到達したときには錠剤5の搬送速度が所定の第一速度V1となる一方、貯留数の最大値が予め設定された上限値に到達したときには錠剤5の搬送速度が第一速度V1よりも低い第二速度V2となるように、上流搬送装置52を制御する。図17では、錠剤5の搬送速度を実線で、錠剤5の貯留数を点線でそれぞれ大まかに示している。また、本実施形態において錠剤5の包装能力は一定で維持されるところ、図17では、包装能力を一点鎖線で大まかに示している。尚、錠剤5の貯留数は、供給装置51から吸着部521aの各列に対する錠剤5の供給数や、吸着部521aの各列における不良品の錠剤5の排出回数などに基づき把握することができる。勿論、上記(図17等)はあくまで一例であり、例えば、錠剤5の搬送速度を徐変させることとしてもよい。
【0128】
加えて、制御装置59は、上流搬送装置52の前記エンコーダからの信号に基づき、搬送ドラム521の軸方向に並ぶ1列の錠剤5が第一排出装置571に到達するタイミングを算出する。そして、制御装置59は、基本的には、この算出したタイミングで、錠剤5の吸着を解除するためのブローを行うように第一排出装置571を制御すること、及び、同様のブローを行うように第二排出装置572を制御することを交互に行う。その結果、搬送ドラム521の軸方向に並ぶ1列の錠剤5が1列置きに第一分配ドラム573(第一受取部573a)に向けて排出され、残りの錠剤5が第二分配ドラム574(第二受取部574a)に向けて排出される。
【0129】
さらに、制御装置59は、受取部573a,574aの下流から充填装置58の上流までの間における(各中間搬送装置577,578等における)錠剤5の貯留数に極端なばらつきが生じないように排出装置571,572やシャッタ511aを制御可能である。
【0130】
より詳しくは、制御装置59は、それぞれ同一の印刷部5eが形成されてなる錠剤5を貯留する第一中間搬送装置577等と第二中間搬送装置578等とにおいて、これらに貯留された錠剤5の数が所定数以上相違する場合、これらのうちの貯留数の少ない方へと錠剤5がより多く投入されるように排出装置571,572の制御を行う。例えば、図18に示すように、制御装置59は、通常第二分配ドラム574に向けて排出される錠剤5(図18にて正方形の二点鎖線で囲まれた錠剤5)を、第一分配ドラム573に向けて排出するように排出装置571,572の制御を行う。
【0131】
また、同一の印刷部5eが形成されてなる錠剤5を貯留する2つの中間搬送装置577,578等における貯留数が、その他の中間搬送装置577,578等における貯留数よりも所定数以上少ない場合、制御装置59は、吸着部521aの各列のうち前記その他の中間搬送装置577,578等に対応する列への錠剤5の供給数を減少させるように各シャッタ511aの個別制御を行う。例えば、図19に示すように、制御装置59は、供給シュート511から供給ドラム512に対する錠剤5の供給が行われるタイミングにおいて、2つの中間搬送装置577,578等に対応する供給シュート511の開口部が開放される一方、その他の中間搬送装置577,578等に対応する供給シュート511の開口部が閉鎖されるように各シャッタ511aの制御を行う。
【0132】
以上詳述したように、本実施形態によれば、複数の受取部573a,574aは、上流搬送装置52により搬送されつつ印刷が施される錠剤5のうち特定の1の列の錠剤5のみを受取り、受取られた錠剤5は、受取部573a,574aごとに設けられかつそれぞれ独立する中間搬送装置577,578によって、充填装置58へと搬送される。そして、中間搬送装置577,578により搬送された錠剤5は、充填装置58に係る複数(n)の錠剤5の列のうち、搬送を担う中間搬送装置577,578ごとに異なる特定の1の列に供給される。従って、錠剤5に関し、印刷時の列と充填時の列との対応関係をより容易に把握することができる。そのため、充填されたポケット部2の位置に基づき、錠剤5が元々印刷時(搬送時)にどの列を構成していたのかをより容易に把握することできる。例えば、PTPシート1において印刷不良などの異常が錠剤5に発生したときに、そのPTPシート1における不良品の錠剤5の位置から異常発生に係る印刷時(搬送時)の列を特定すること(トレースバックを行うこと)ができる。従って、異常の要因をより容易にかつより正確に把握することができる。尚、この有利な作用効果は、mが比較的大きな数(例えば5以上)である場合により効果的に発揮される。
【0133】
加えて、排出装置571,572を、受取部573a,574aに対しそれぞれ1つずつ設ければ済み、多数設ける必要がない。また、排出装置571,572が少数となるため、制御装置59から排出装置571,572を制御するための制御系統も少数で足りる。これらの結果、部品点数の削減、包装機の簡素化・小型化、制御処理の簡略化を図ることができ、製造やメンテナンスなどに係るコストの抑制を効果的に図ることができる。
【0134】
さらに、本実施形態によれば、比較的少ない列数で錠剤5の印刷処理を行いつつ、比較的多い列数で錠剤5の充填を行うことができる。比較的少ない列数で錠剤5の印刷処理を行うことができるため、印刷装置54a,54bの規模を小さなものとすることができ、製造やメンテナンスなどに係るコストの抑制をより効果的に図ることができる。一方、比較的多い列数で錠剤5の充填を行うことができるため、錠剤5の充填に係る高速化を図ることができ、良好な生産速度を確保することができる。
【0135】
また、印刷装置54a,54bにおけるクリーニング装置の規模をも小さなものとすることができる。そのため、製造等に係るコストの抑制を一層効果的に図ることができる。
【0136】
さらに、結果的に印刷装置54a,54bによる印刷頻度を増加させることができるため、各ノズルNa,Nbがインクの吐出対象として選択されやすくなる。従って、一般にインクの吐出対象として選択されにくいノズルNa,Nb(例えば、印刷装置54a,54bによる印刷可能領域の端を担当するノズル)であってもインクの吐出を行う機会をより確保しやすくなる。これにより、インクの固形化や増粘等によるノズルNa,Nbの目詰まり不良を効果的に抑制して、印刷不良の発生をより確実に防止することができる。また、ノズルの目詰まりが生じにくくなることで、印刷装置54a,54bのクリーニング頻度を低くすることができる。これらの結果、PTPシート1の生産に係るコストの低減や生産速度の一層の向上を図ることができる。
【0137】
また、本実施形態では、受取ポジションP1,P2にて上流搬送装置52から排出された錠剤5を吸着部573b,574b(受取部573a,574a)によって受取った後、該錠剤5を吸着保持しつつ分配ドラム573,574が回転することで、該錠剤5を中間搬送装置577,578側へと搬送することができる。従って、上流搬送装置52から吸着部573b,574b(受取部573a,574a)に対する錠剤5の受渡時に、落下によるダメージが錠剤5に加わることをより確実に防止できる。また、中間搬送装置577,578側へと錠剤5を移動させる際における錠剤5の長距離の摺動を抑制することができ、錠剤5に加わるダメージをより低減させることができる。さらに、受取ポジションP1,P2において、吸着部573b,574bは、上流搬送装置52により搬送される錠剤5と同一方向に移動するため、上流搬送装置52から吸着部573b,574bへの錠剤5の受渡時に、錠剤5の進路変更を生じさせずに済み、進路変更に伴うダメージが錠剤5に加わることを防止できる。これらの結果、錠剤5の破損や印刷部5eの摩耗などをより確実に防ぐことができ、不良品の錠剤5の発生を抑えることができる。そのため、PTPシート1の生産に係るコストの低減を一層図ることができる。
【0138】
さらに、平面視したときに、分配ドラム573,574の回転方向は、受取ポジションP1,P2における上流搬送装置52による錠剤5の搬送方向と平行になり、該搬送方向と交差する方向とはならない。従って、平面視したときに、上流搬送装置52による錠剤5の搬送方向と交差する方向に、上流搬送装置52から分配ドラム573,574が突出した構成になることをより確実に防止できる。その上で、複数の分配ドラム573,574は、上流搬送装置52による錠剤5の搬送方向に沿って設けられているから、分配ドラム573,574や上流搬送装置52をよりコンパクトにまとめることができる。その結果、PTP包装機10の簡素化・小型化をより効果的に図ることができる。
【0139】
また、受取ポジションP1,P2において、吸着部573b,574bと錠剤5とが同一速度で移動する。従って、上流搬送装置52から吸着部573b,574b(受取部573a,574a)に対する錠剤5の受渡時に、錠剤5に対しダメージがより加わりにくくなる。これにより、不良品の錠剤5の発生をより効果的に抑えることが可能となり、PTPシート1の生産に係るコストをより一層低減することができる。
【0140】
加えて、分配ドラム573,574はそれぞれm個の受取部573a,574aを有するため、充填時における錠剤5の列数を印刷時における錠剤5の列数の2倍に増やすことが可能なPTP包装機10を非常にシンプルな構成で実現することができる。
【0141】
また、中間搬送装置577,578は、フレキシブルな管状部品(スプリングシュート)によって構成されているため、受取部573a,574aから充填装置58に対する錠剤5の搬送経路設定が容易になり、PTPシート1の生産に係る利便性を高めることができる。
【0142】
さらに、中間搬送装置577,578を180°ねじり変形させることで、中間搬送装置577,578によって搬送される錠剤5の表裏を反転させることができる。従って、中間搬送装置577,578を180°ねじり変形させるか否かという簡単な調節によって、ポケット部2に充填される錠剤5の表裏の向きを容易に変更させることができる。また、錠剤5の向きを変更するための特別な装置を設ける必要がないため、錠剤5の向き変更を可能としながら、PTP包装機1の製造などに係るコストの増大抑制や、PTP包装機1の簡素化・小型化をより確実に図ることができる。
【0143】
加えて、各中間搬送装置577,578の出口部577b,578bは、全ての被接続部581aに対し着脱可能とされている。そして、出口部577b,578bの接続対象となる被接続部581aを変更することで、中間搬送装置577,578によって搬送された錠剤5の供給先となる、充填装置58に係る錠剤5の列を変更することができる。従って、出口部577b,578bの接続対象を変更するという簡単な作業だけで、印刷時にある列を構成していた錠剤5を、充填装置58における任意の錠剤5の列へと供給することができる。これにより、錠剤5の充填対象となるポケット部2の変更が極めて容易に可能となり、PTPシート1の製造に係る利便性を一層高めることができる。
【0144】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0145】
(a)上記実施形態において、上流搬送装置52は搬送ドラム521によって錠剤5を搬送するように構成されている。これに対し、図20に示すように、上流搬送装置52は搬送ベルト522によって錠剤5を搬送するものであってもよい。
【0146】
搬送ベルト522は、所定間隔をあけた状態で配設された一対のプーリ523a,523bに架け渡されており、プーリ523a,523bの回転に伴い回転移動する。また、搬送ベルト522には、回転移動方向(錠剤5の搬送方向)に沿って並ぶ搬送ベルト吸着部522a(以下、単に「吸着部522a」という)の列がm列形成されている。さらに、搬送ベルト522の内部空間には図示しない吸引機構によって負圧が供給されており、吸着部522aに負圧が供給された状態となっている。これにより、搬送ベルト522は、搬送ドラム521と同様に、吸着部522aによって錠剤5を吸着保持しつつ、m列に並んだ状態で錠剤5を搬送可能である。尚、図20等では、搬送ベルト522の内部空間が外部に開放された状態を示しているが、実際には、該内部空間は密閉された状態となっている。
【0147】
(b)上記実施形態では、錠剤5の表面5bのみに印刷部5eが形成されているが、裏面5cに印刷部5eを形成してもよい。つまり、錠剤5の表裏両面に印刷部5eを形成してもよい。
【0148】
この場合、例えば、図21に示すように、上流搬送装置52を、表面5b及び裏面5cのうちの一方に対する印刷時に錠剤5を搬送する第一搬送ドラム524aと、表面5b及び裏面5cのうちの他方に対する印刷時に錠剤5を搬送する第二搬送ドラム524bとを備えたものとしてもよい。尚、第一搬送ドラム524aから第二搬送ドラム524bに対し錠剤5が受渡されるとともに、受渡時に錠剤5の表裏が反転される。各搬送ドラム524a,524bは、基本的には搬送ドラム521と同様の構成を有しており、錠剤5を吸着保持しつつ搬送する。また、各搬送ドラム524a,524bに対応して、錠剤検査装置525a,525b、第一印刷装置526a,526b、第二印刷装置527a,527b及び印刷検査装置528a,528bを設けてもよい。これらは、上記実施形態における錠剤検査装置53、第一印刷装置54a、第二印刷装置54b及び印刷検査装置55と同様の構成を有する。印刷装置526a,527aは表面5b及び裏面5cのうちの一方に対する印刷を行い、印刷装置526b,527bは表面5b及び裏面5cのうちの他方に対する印刷を行う。
【0149】
また、錠剤5に両面印刷を施す場合においても、図22に示すように、搬送ドラムに代えて、搬送ベルトを用いてもよい。すなわち、上流搬送装置52を、表面5b及び裏面5cのうちの一方に対する印刷時に錠剤5を搬送する第一搬送ベルト529aと、表面5b及び裏面5cのうちの他方に対する印刷時に錠剤5を搬送する第二搬送ベルト529bとを備えるものとしてもよい。各搬送ベルト529a,529bは、それぞれ上記搬送ベルト522と同様の構成を有するものとされる。また、第一搬送ベルト529aから第二搬送ベルト529bに対し錠剤5が受渡されるとともに、受渡時に錠剤5の表裏が反転される。
【0150】
尚、錠剤5の両面に印刷を施した場合、両面のうちの任意の1の面が「表面5a」となり、該1の面の裏側の面が「裏面5c」となる。
【0151】
(c)上記実施形態において、各受取部573a,574aは分配ドラム573,574の回転方向に並ぶ1列の吸着部573b,574bによって構成されているが、受取部の構成はこれに限定されるものではない。従って、例えば、図23,24に示すように、排出装置571,572によって排出されて落下した錠剤5を傾斜面状の底面部で受取るとともに、落下した錠剤5が前記底面部を伝わって中間搬送装置577,578側へと搬送される第一受取部573c及び第二受取部573dを用いてもよい。この例では、上流搬送装置52により搬送される錠剤5の各列に対応してそれぞれ1つずつ第一受取部573c及び第二受取部573dが設けられている。つまり、錠剤5の各列に対しそれぞれ1組の受取部573c,573dが設けられる。そして、各組の受取部573c,573dは、それぞれ特定の1の列の錠剤5のみを受取るものとされる。
【0152】
(d)上記実施形態では、通常、搬送ドラム521の軸方向に並ぶ1列の錠剤5が1列置きに第一受取部573aに向けて排出され、残りの錠剤5が第二受取部574aに向けて排出されるようになっているが、受取部573a,574aに向けた錠剤5の排出パターンはこれに限定されるものではない。従って、図25に示すように、各列の錠剤5が連続的に第一受取部573a又は第二受取部574aに向けて排出されるように構成してもよい。図25では、二点鎖線で囲まれた3列の錠剤5が第一受取部573aに向けて排出され、二点鎖線で囲まれていない3列の錠剤5が第二受取部574aに向けて排出される例を示している。勿論、その他の錠剤5の排出パターンを採用してもよい。
【0153】
(e)上記実施形態において、分配ドラム573,574はそれぞれ計m個の受取部573a,574aを具備するものとされているが、受取部573a,574aの数はこれに限定されるものではない。従って、分配ドラム573,574は、それぞれ計m個未満の受取部573a,574aを具備するものであってもよい。また、第一分配ドラム573に設けられる第一受取部573aの数と、第二分配ドラム574に設けられる第二受取部574aの数とを異なるものとしてもよい。従って、例えば、第一分配ドラム573が計7個の第一受取部573aを有する一方、第二分配ドラム574が計5個の第二受取部574aを有するように構成してもよい。
【0154】
(f)上記実施形態において、排出装置571,572は、ブローによって錠剤5を排出するように構成されているが、錠剤5を上流搬送装置52による搬送経路外へと排出可能なものである限り、排出装置の構成を適宜変更してもよい。
【0155】
(g)上記実施形態では、列数変換装置57によって、錠剤5の列数が「7」から「14」に変更される例を挙げているが、変換後の錠剤5の列数が変換前の錠剤5の列数よりも多くなる限り、変換前及び変換後の錠剤5の列数を適宜変更してもよい。例えば、列数変換装置57によって錠剤5の列数を「5」から「10」に変更するようにしてもよい。
【0156】
(h)上記実施形態では、内容物として錠剤5を挙げているが、内容物は錠剤に限定されるものではない。
【0157】
また、上記実施形態では、錠剤5として、平面視円形状をなす円盤状の素錠(円盤形状の平錠)が例示されているが、錠剤の種別や形状等については、上記実施形態に限定されるものではない。例えば錠剤には、医薬のみならず、飲食用に用いられる錠剤なども含まれる。また、錠剤には、素錠のみならず、糖衣錠やフィルムコーティング錠、口腔内崩壊錠、腸溶錠、ゼラチン被包錠などが含まれるのは勿論のこと、硬カプセルや軟カプセルなどの各種カプセル錠なども含まれる。
【0158】
さらに、内容物の形状に関しては、例えば平面視円形状のみならず、平面視多角形状、平面視楕円形状、平面視長円形状等であってもよい。
【0159】
(i)製造されるPTPシートの構成は上記実施形態に限定されるものではない。例えばPTPシート1単位のポケット部2の配列や個数を適宜変更してもよい。
【0160】
また、上記実施形態において、PTPフィルム6は、その幅方向に沿って2シート分に対応する数のポケット部2が配列された構成となっているが、PTPフィルム6の構成はこれに限定されるものではない。例えば、PTPフィルム6は、その幅方向に沿って3シート分以上に対応する数のポケット部2が配列された構成であってもよい。尚、このように構成した場合には、上流搬送装置52により搬送される錠剤5の列ごとに3つ以上の受取部を設ければよい。例えば、3シート分に対応する数のポケット部2が配列されたPTPフィルム6を採用する場合、分配ドラム573,574と同様の構成を有する3つの分配ドラムを上流搬送装置52による錠剤5の搬送方向に沿って設けることで、上流搬送装置52により搬送される錠剤5の列ごとに3つの受取部を設けることができる。
【0161】
(j)上記実施形態では、ブリスタシートとしてPTPシート1を挙げているが、PTPシート1以外のブリスタシートに対し本発明の技術思想を適用してもよい。
【0162】
(k)印刷装置54a,54bの構成は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、2つの印刷装置54a,54bが設けられているが、印刷部5eの態様に応じて、印刷装置の数を適宜変更してもよい。
【0163】
また、上記実施形態において、両印刷装置54a,54bは、搬送ドラム521の幅方向に並ぶ複数の印刷ヘッドを備えているが、印刷ヘッドを1つのみ備える構成とし、この1つの印刷ヘッドによって前記幅方向に並ぶ複数の錠剤5の印刷を一度に行うものとしてもよい。
【0164】
加えて、印刷ヘッドの構成は、上記実施形態に限定されるものではなく、1列又は3列以上のノズル列を備えた構成としてもよい。
【0165】
さらに、上記実施形態の印刷ヘッドに係るクリーニング機構は、塵埃やインク等を加圧パージにより取り除く構成となっているが、これに限らず、塵埃等を吸引パージにより取り除く構成としてもよい。
【0166】
また、インクジェット方式以外の方式を利用した印刷装置を用いてもよい。例えば、印刷装置として、錠剤5と直接接触することで印刷を施すものや、錠剤5にレーザを照射することで印刷を施すものなどを用いてもよい。
【0167】
(l)上記実施形態では、印刷装置54a,54bの上流及び下流に検査装置53,55が設けられているが、検査装置53,55のうちの一方のみを設けてもよい。尚、印刷検査装置55のみを設ける場合、この印刷検査装置55は、錠剤5自体の良否を判定する機能を具備していてもよい。
【符号の説明】
【0168】
1…PTPシート(ブリスタシート)、2…ポケット部、3…容器フィルム、4…カバーフィルム、5…錠剤(内容物)、5a…側面、5b…表面、5c…裏面、10…PTP包装機(ブリスタ包装機)、52…上流搬送装置(上流搬送手段)、54a…第一印刷装置(印刷手段)、54b…第二印刷装置(第二印刷手段)、57…列数変換装置(列数変換手段)、58…充填装置(充填手段)、571…第一排出装置(排出手段)、572…第二排出装置(排出手段)、573…第一分配ドラム(回転受取手段)、573a…第一受取部(受取部)、573b…第一分配ドラム吸着部(吸着部)、574…第二分配ドラム(回転受取手段)、574a…第二受取部(受取部)、574b…第二分配ドラム吸着部(吸着部)、577…第一中間搬送装置(中間搬送手段)、577b…出口部、578…第二中間搬送装置(中間搬送手段)、578b…出口部、581a…被接続部、P1…第一受取ポジション(受取ポジション)、P2…第二受取ポジション(受取ポジション)。
図1
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