(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】ガス供給システム
(51)【国際特許分類】
F17C 7/00 20060101AFI20241213BHJP
F17C 13/02 20060101ALI20241213BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20241213BHJP
H01M 8/0438 20160101ALI20241213BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20241213BHJP
H01M 8/04701 20160101ALI20241213BHJP
H01M 8/04007 20160101ALI20241213BHJP
【FI】
F17C7/00 A
F17C13/02 301A
H01M8/04 J
H01M8/0438
H01M8/04746
H01M8/04701
H01M8/04007
(21)【出願番号】P 2021167843
(22)【出願日】2021-10-13
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】河瀬 暁
【審査官】森本 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-170443(JP,A)
【文献】特開2013-253672(JP,A)
【文献】特開2011-169350(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 7/00
F17C 13/02
H01M 8/04
H01M 8/0438
H01M 8/04746
H01M 8/04701
H01M 8/04007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを貯蔵する第1タンク及び第2タンクと、
ガスを消費するガス消費装置と、
前記第1タンクから前記ガス消費装置へのガスの供給と遮断とを切り替える第1バルブと、
前記第2タンクから前記ガス消費装置へのガスの供給と遮断とを切り替える第2バルブと、
前記第1バルブの開閉制御及び前記第2バルブの開閉制御を行うバルブ制御部と、
を備えるガス供給システムであって、
前記第1タンクから前記ガス消費装置にガスを供給するか否かを判定するためのガス圧の閾値である第1圧力閾値を記憶する記憶装置を備え、
前記第1圧力閾値は、前記第1タンクの内部温度である第1タンク温度と対応付けて記憶され、
前記バルブ制御部は、
前記第1バルブを開けて、前記第1タンクから前記ガス消費装置にガスを供給すると共に、前記第2バルブを開けて、前記第2タンクから前記ガス消費装置にガスを供給し、
前記ガス消費装置に供給されるガスの前記ガス圧
を取得するガス圧取得処理と、前記第1タンク温度
を取得する第1の温度取得処理と、を
行い、
前記第1の温度取得処理よって取得された前記第1タンク温度に対応付けられる前記第1圧力閾値を
取得する第1の閾値取得処理を行い、
前記ガス圧取得処理によって取得された前記ガス圧が
前記第1の閾値取得処理によって取得された前記第1圧力閾値未満である場合に、前記第1バルブを閉じて、前記第1タンクから前記ガス消費装置へのガスを遮断し、
前記第1バルブを閉じた後
に、前記第1タンク温度を取得する第2の温度取得処理を行い、
前記第2の温度取得処理によって取得された前記第1タンク温度に基づいて前記第1タンクの内圧を取得する第1のタンク内圧取得処理を行い、
前記第2の温度取得処理によって取得された前記第1タンク温度に対応付けられる前記第1圧力閾値を取得する第2の閾値取得処理を行い、
前記第1のタンク内圧取得処理によって取得された前記第1タンクの内圧が前記第2の閾値取得処理によって取得された前記第1圧力閾値以上である場合に、前記第1バルブを開けて、前記第1タンクから前記ガス消費装置へのガスの供給を再開する、
ガス供給システム。
【請求項2】
請求項1に記載のガス供給システムであって、
前記記憶装置は、前記第2タンクから前記ガス消費装置にガスを供給するか否かを判定するための前記ガス圧の閾値である第2圧力閾値を記憶し、
前記第2圧力閾値は、前記第2タンクの内部温度である第2タンク温度と対応付けて記憶され、
前記バルブ制御部は、
前記ガス圧取得処理と、前記第2タンク温度
を取得する第3の温度取得処理と、を
行い、
前記第3の温度取得処理よって取得された前記第2タンク温度に対応付けられる前記第2圧力閾値を
取得する第3の閾値取得処理を行い、
前記ガス圧取得処理によって取得された前記ガス圧が
前記第3の閾値取得処理によって取得された前記第2圧力閾値未満である場合に、前記第2バルブを閉じて、前記第2タンクから前記ガス消費装置へのガスを遮断し、
前記第2バルブを閉じた後
に、前記第2タンク温度を取得する第4の温度取得処理を行い、
前記第4の温度取得処理によって取得された前記第2タンク温度に基づいて前記第2タンクの内圧を取得する第2のタンク内圧取得処理を行い、
前記第4の温度取得処理によって取得された前記第2タンク温度に対応付けられる前記第2圧力閾値を取得する第4の閾値取得処理を行い、
前記第2のタンク内圧取得処理によって取得された前記第2タンクの内圧が前記第4の閾値取得処理によって取得された前記第2圧力閾値以上である場合に、前記第2バルブを開けて、前記第2タンクから前記ガス消費装置へのガスの供給を再開する、
ガス供給システム。
【請求項3】
請求項1に記載のガス供給システムであって、
前記ガス消費装置へのガスの供給量を調整する調整バルブを備え、
前記バルブ制御部は、前記第1バルブを閉じた場合に、前記調整バルブを制御することによって、前記第2タンクから前記ガス消費装置へのガスの供給量を制限する、ガス供給システム。
【請求項4】
請求項1に記載のガス供給システムであって、
前記第1バルブを閉じた後に、前記第1タンクを収納するタンク室の室内を温める室温調整部を備える、ガス供給システム。
【請求項5】
請求項4に記載のガス供給システムであって、
前記タンク室は、前記タンク室の内部の気体を前記タンク室の外部に排出するための排出口を有し、
前記室温調整部は、前記排出口を開放状態にすることによって、前記タンク室の内部に流入する気体を前記タンク室の外部に排出させる、ガス供給システム。
【請求項6】
請求項1に記載のガス供給システムであって、
前記第1タンクに取り付けられた熱交換器を備え、
前記熱交換器は、前記第1タンク以外の部分から吸熱し、前記第1タンクに放熱する、ガス供給システム。
【請求項7】
請求項1に記載のガス供給システムであって、
前記記憶装置は、前記第2タンクから前記ガス消費装置にガスを供給するか否かを判定するための前記ガス圧の閾値である第2圧力閾値を記憶し、
前記第2圧力閾値は、前記第2タンクの内部温度である第2タンク温度と対応付けて記憶され、
前記バルブ制御部は、
前記ガス圧取得処理と、前記第2タンク温度を取得する第3の温度取得処理と、を行い、
前記第3の温度取得処理よって取得された前記第2タンク温度に対応付けられる前記第2圧力閾値を取得する第3の閾値取得処理を行い、
前記ガス圧取得処理によって取得された前記ガス圧が前記第3の閾値取得処理によって取得された前記第2圧力閾値未満である場合には、前記第2タンクから前記ガス消費装置へのガスの供給を継続する、
ガス供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のタンクからガス消費装置へのガスの供給と遮断とを切り替えるガス供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムは、タンクと、燃料電池と、を備える。タンクは、水素ガスを貯蔵する。燃料電池は、水素と酸素とを反応させて発電する。特許文献1は、燃料電池システムに設けられるガス供給システムを示す。このガス供給システムにおいて、コントローラは、複数のタンクの中からいずれか1つを選択し、選択したタンクから燃料電池に水素ガスを供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のガス供給システムは、複数のタンクから燃料電池に同時に水素ガスを供給しない。複数のタンクから燃料電池に同時に水素ガスを供給するガス供給システムの場合、コントローラは、例えば、次のような制御を行う。
【0005】
コントローラは、燃料電池に供給される水素ガスの圧力を検出し、その圧力を各タンクの内圧と判定する。タンクの内圧が圧力閾値以下に低下すると、タンクから燃料電池に水素ガスを供給することができなくなる。このため、コントローラは、水素ガスの圧力が所定値以下に低下した場合に、ガス欠であると判定する。コントローラは、ガス欠の判定をした場合に、燃料電池への水素ガスの供給自体を停止する。
【0006】
このような場合、一部のタンクには十分な量の水素ガスが残留していることがある。また、内圧が低下したタンクにも、ある程度の量の水素ガスは残留している。従って、複数のタンクから燃料電池に同時に水素ガスを供給するガス供給システムにおいては、水素ガスを有効に使用することができない。
【0007】
本発明は上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様は、ガスを貯蔵する第1タンク及び第2タンクと、ガスを消費するガス消費装置と、前記第1タンクから前記ガス消費装置へのガスの供給と遮断とを切り替える第1バルブと、前記第2タンクから前記ガス消費装置へのガスの供給と遮断とを切り替える第2バルブと、前記第1バルブの開閉制御及び前記第2バルブの開閉制御を行うバルブ制御部と、を備えるガス供給システムであって、前記第1タンクから前記ガス消費装置にガスを供給するか否かを判定するためのガス圧の閾値である第1圧力閾値を記憶する記憶装置を備え、前記第1圧力閾値は、前記第1タンクの内部温度である第1タンク温度と対応付けて記憶され、前記バルブ制御部は、前記第1バルブを開けて、前記第1タンクから前記ガス消費装置にガスを供給すると共に、前記第2バルブを開けて、前記第2タンクから前記ガス消費装置にガスを供給し、前記ガス消費装置に供給されるガスの前記ガス圧と、前記第1タンク温度と、を取得し、前記第1タンク温度に対応付けられる前記第1圧力閾値を判定し、前記ガス圧が前記第1圧力閾値未満である場合に、前記第1バルブを閉じて、前記第1タンクから前記ガス消費装置へのガスを遮断し、前記第1バルブを閉じた後であり、且つ、前記第1タンク温度が第1所定温度まで上昇した場合に、前記第1バルブを開けて、前記第1タンクから前記ガス消費装置へのガスの供給を再開する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、水素ガスを有効に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、燃料電池車両の内部構造を模式的に示す図である。
【
図2】
図2は、ガス供給システムの構成を示す図である。
【
図3】
図3は、タンク温度に対応する圧力閾値を示す図である。
【
図4】
図4は、第1タンクに関する主処理のフローチャートである。
【
図5】
図5は、第1タンクに関するガス供給処理のフローチャートである。
【
図6】
図6は、第1タンクに関するガス遮断処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、燃料電池車両10の内部構造を模式的に示す図である。本発明に係るガス供給システム14は、複数のタンクからガス消費装置にガスを供給するシステムに使用可能である。本明細書では、燃料電池車両10の燃料電池システム12に使用されるガス供給システム14を説明する。なお、本発明に係るガス供給システム14は、燃料電池スタック20以外の装置にガスを供給しても良い。
【0012】
[1 車両10]
以下では、燃料電池車両10を、単に車両10という。車両10は、燃料電池システム12を有する。燃料電池システム12は、本発明に係るガス供給システム14を含む。燃料電池システム12は、例えば、複数のタンク(第1タンク16及び第2タンク18)と、燃料電池スタック20と、バッテリ22と、モータ24と、を有する。
【0013】
第1タンク16及び第2タンク18は、共に水素ガスを貯蔵する。本実施形態において、第1タンク16の容量は、第2タンク18の容量よりも大きい。燃料電池スタック20は、水素ガスを消費するガス消費装置である。燃料電池スタック20には、各タンクから水素ガスが供給されると共に、大気中の酸素が供給される。燃料電池スタック20は、水素と酸素との化学反応によって発電する。バッテリ22は、充放電が可能である。モータ24は、燃料電池スタック20、又は、バッテリ22から供給される電力によって駆動する。モータ24は、トラクションモータである。
【0014】
車両10の前部には、モータ室26が位置する。車両10の中間部には、バッテリ室28が位置する。車両10の後部には、タンク室30が位置する。モータ室26は、ボンネット32と、フロアパネル34の前部と、アンダーカバー36の前部と、によって形成される。なお、フロアパネル34の前部は、ダッシュパネルともいう。モータ室26の前端部には、フロントグリル38が設けられる。フロントグリル38には、複数の第1導入口40が形成される。
【0015】
バッテリ室28は、フロアパネル34の中間部と、アンダーカバー36の中間部と、によって形成される。タンク室30は、フロアパネル34の後部と、アンダーカバー36の後部と、によって形成される。アンダーカバー36の後部には、第2導入口42と排出口44とが形成される。第2導入口42は、排出口44の前方に位置する。第2導入口42には、開閉可能な扉46が設けられる。排出口44には、開閉可能な扉48が設けられる。
【0016】
モータ室26には、燃料電池スタック20及びモータ24が収納される。バッテリ室28には、バッテリ22が収納される。タンク室30には、第1タンク16及び第2タンク18が収納される。第1タンク16は、第2タンク18の後方に位置する。第1タンク16は、排出口44の前方に位置する。第2タンク18は、第2導入口42の前方に位置する。
【0017】
モータ室26とバッテリ室28とは、互いに連通する。バッテリ室28とタンク室30とは、互いに連通する。車両10が前進すると、第1導入口40からモータ室26に大気が流入する。モータ室26に流入した大気は、バッテリ室28に流入する。大気は、モータ24、バッテリ22等の発熱源から吸熱する。扉46及び扉48が開けられた状態で、大気はモータ室26に流入する。大気は、第1タンク16及び第2タンク18に放熱する。モータ室26に流入した大気は、排出口44から車両10の外部に排出される。一方、扉46及び扉48が閉じられた状態で、タンク室30は閉塞される。このため、大気はモータ室26に流入しない。
【0018】
[2 ガス供給システム14の構成]
図2は、ガス供給システム14の構成を示す図である。上述したように、ガス供給システム14は、燃料電池システム12に含まれる。ガス供給システム14は、複数のタンク(第1タンク16及び第2タンク18)と、燃料電池スタック20と、複数のバルブ(第1バルブ52、第2バルブ54、減圧バルブ55及びインジェクタ56)と、複数の温度センサ(第1温度センサ58及び第2温度センサ60)と、圧力センサ62と、を有する。なお、本実施形態に係るガス供給システム14は、2つのタンクを有する。しかし、ガス供給システム14は、3つ以上のタンクを有しても良い。
【0019】
第1タンク16と燃料電池スタック20は、第1配管64と共通配管68とによって接続される。第2タンク18と燃料電池スタック20とは、第2配管66と共通配管68とによって接続される。第1配管64の上流端64-1は、第1タンク16のガス放出口に接続される。第2配管66の上流端66-1は、第2タンク18のガス放出口に接続される。第1配管64の下流端64-2及び第2配管66の下流端66-2の各々は、共通配管68の上流端68-1に接続される。共通配管68の下流端68-2は、燃料電池スタック20のガス導入口に接続される。
【0020】
第1配管64には、第1バルブ52が設けられる。第1バルブ52は、コントローラ78から出力される信号に応じて開閉する。第1バルブ52が開くと、第1タンク16から放出される水素ガスが、第1配管64及び共通配管68を流れて、燃料電池スタック20に供給される。第1バルブ52が閉じると、第1タンク16から燃料電池スタック20への水素ガスが遮断される。
【0021】
第2配管66には、第2バルブ54が設けられる。第2バルブ54は、コントローラ78から出力される信号に応じて開閉する。第2バルブ54が開くと、第2タンク18から放出される水素ガスが、第2配管66及び共通配管68を流れて、燃料電池スタック20に供給される。第2バルブ54が閉じると、第2タンク18から燃料電池スタック20への水素ガスが遮断される。
【0022】
共通配管68には、減圧バルブ55及びインジェクタ56が設けられる。減圧バルブ55は、インジェクタ56の上流に配置される。減圧バルブ55は、上流から供給される水素ガスを減圧して下流に排出する。インジェクタ56は、コントローラ78から出力される信号に応じて、燃料電池スタック20への水素ガスの供給量を調整する。
【0023】
第1タンク16には、第1温度センサ58が取り付けられる。第1温度センサ58は、第1タンク16の内部温度を検出する。第1タンク16の内部温度を第1タンク温度という。なお、第1温度センサ58は、第1タンク16の内部温度を検出する代わりに、第1タンク16から放出された水素ガスの温度を検出しても良い。例えば、第1温度センサ58は、第1配管64を流れる水素ガスの温度を検出しても良い。第1温度センサ58は、コントローラ78に検出値を出力する。
【0024】
第2タンク18には、第2温度センサ60が取り付けられる。第2温度センサ60は、第2タンク18の内部温度を検出する。第2タンク18の内部温度を第2タンク温度という。なお、第2温度センサ60は、第2タンク18の内部温度を検出する代わりに、第2タンク18から放出された水素ガスの温度を検出しても良い。例えば、第2温度センサ60は、第2配管66を流れる水素ガスの温度を検出しても良い。第2温度センサ60は、コントローラ78に検出値を出力する。
【0025】
共通配管68には、圧力センサ62が設けられる。圧力センサ62は、共通配管68の上流端68-1と減圧バルブ55との間の水素ガスのガス圧を検出する。圧力センサ62は、コントローラ78に検出値を出力する。
【0026】
ガス供給システム14は、第1開閉機構70と第2開閉機構72とを有する。第1開閉機構70は、第2導入口42の扉46を開閉するアクチュエータを有する。第2開閉機構72は、排出口44の扉48を開閉するアクチュエータを有する。各アクチュエータは、コントローラ78から供給される電力によって動作する。
【0027】
ガス供給システム14は、複数の熱交換器(第1熱交換器74及び第2熱交換器76)を有する。第1熱交換器74は、第1タンク16の外周面に取り付けられる。第2熱交換器76は、第2タンク18の外周面に取り付けられる。例えば、第1熱交換器74は、熱交換媒体が流れる循環路と、ポンプと、を有する。循環路の第1部分は、第1タンク16の外周面に沿って配置される。循環路の第2部分は、熱源(モータ24、バッテリ22)の外周面に沿って配置される。循環路の第2部分は、大気に露出されても良い。第2熱交換器76の構成は、第1熱交換器74の構成と同じである。第1熱交換器74は、車両10の走行中に、第1タンク16を温める。第2熱交換器76は、車両10の走行中に、第2タンク18を温める。
【0028】
ガス供給システム14は、コントローラ78を有する。コントローラ78は、演算装置80と記憶装置82とを有する。
【0029】
演算装置80は、処理回路を有する。処理回路は、CPU等のプロセッサであっても良い。処理回路は、ASIC、FPGA等の集積回路であっても良い。プロセッサは、記憶装置82に記憶されるプログラムを実行することによって各種の処理を実行可能である。演算装置80は、バルブ制御部84と室温調整部86として機能する。バルブ制御部84の処理と室温調整部86の処理の少なくとも一部が、ディスクリートデバイスを含む電子回路によって実行されても良い。
【0030】
バルブ制御部84は、第1バルブ52の開閉、第2バルブ54の開閉及びインジェクタ56の動作を制御する。室温調整部86は、第1開閉機構70のアクチュエータの動作及び第2開閉機構72のアクチュエータの動作を制御する。
【0031】
記憶装置82は、揮発性メモリと不揮発性メモリとを有する。揮発性メモリとしては、例えばRAM等が挙げられる。揮発性メモリは、プロセッサのワーキングメモリとして使用される。揮発性メモリは、処理又は演算に必要なデータ等を一時的に記憶する。不揮発性メモリとしては、例えばROM、フラッシュメモリ等が挙げられる。不揮発性メモリは、保存用のメモリとして使用される。不揮発性メモリは、プログラム、テーブル、マップ等を記憶する。記憶装置82の少なくとも一部が、上述したようなプロセッサ、集積回路等に備えられても良い。
【0032】
不揮発性メモリは、閾値情報88を記憶する。閾値情報88は、タンク毎に作成される。つまり、不揮発性メモリは、第1タンク16の閾値情報88-1と、第2タンク18の閾値情報88-2と、を記憶する。閾値情報88は、判定対象のタンクから燃料電池スタック20に水素ガスを供給するか否かを判定するために使用される。言い換えると、閾値情報88は、判定対象のタンクが使用可能か否かを判定するために使用される。
【0033】
図3で示されるように、閾値情報88は、ガス圧の閾値に関する情報を含む。ガス圧の閾値を圧力閾値という。第1タンク16の圧力閾値を第1圧力閾値という。第2タンク18の圧力閾値を第2圧力閾値という。圧力閾値は、タンク温度毎に定められる。圧力閾値は、タンクの形状、容量、タンクの材質等に応じて定められる。例えば、圧力閾値としては、タンクから燃料電池スタック20に水素ガスを供給するために最低限必要なガス圧が設定される。
【0034】
[3 コントローラ78が行う処理]
図4~
図6を用いて、コントローラ78が行う処理(主処理、ガス供給処理、ガス遮断処理)について説明する。なお、
図4~
図6で示される処理は、第1タンク16から放出される水素ガスの制御に関する。
【0035】
[3-1 主処理]
図4は、第1タンク16に関する主処理のフローチャートである。コントローラ78は、車両10の電気系統が始動してから停止するまでの間に、一定周期で主処理を実行する。室温調整部86は、車両10の電気系統の始動時に、扉46及び扉48を閉じる。また、バルブ制御部84は、車両10の電気系統の始動時に、第1バルブ52及び第2バルブ54を開状態にする。更に、バルブ制御部84は、車両10の電気系統の始動時に、処理フラグを1にする。処理フラグは、各々の周期において実行すべき処理(ガス
供給処理又はガス遮断処理)を判定するためのフラグである。
【0036】
ステップS1において、バルブ制御部84は、処理フラグが1と2のいずれであるかを判定する。処理フラグが1である場合(ステップS1:1)、処理はステップS2に移行する。一方、処理フラグが2である場合(ステップS1:2)、処理はステップS3に移行する。
【0037】
ステップS1からステップS2に移行すると、
図5で示されるガス供給処理が行われる。一方、ステップS1からステップS3に移行すると、
図6で示されるガス遮断処理が行われる。
【0038】
[3-2 ガス供給処理]
図5は、第1タンク16に関するガス供給処理のフローチャートである。
図4で示されるステップS2においては、以下の一連のガス供給処理が実行される。ガス供給処理は、第1タンク16から燃料電池スタック20に水素ガスが供給されている状態において行われる。
【0039】
ステップS11において、バルブ制御部84は、第1温度センサ58から第1タンク温度を取得する。ステップS11が終了すると、処理はステップS12に移行する。
【0040】
ステップS12において、バルブ制御部84は、圧力センサ62からガス圧を取得する。ステップS12が終了すると、処理はステップS13に移行する。
【0041】
ステップS13において、バルブ制御部84は、第1タンク16の閾値情報88-1を用いて、ステップS11において取得された第1タンク温度に対応する第1圧力閾値を判定する。ステップS13が終了すると、処理はステップS14に移行する。
【0042】
ステップS14において、バルブ制御部84は、ステップS12において取得されたガス圧と、ステップS13において判定された第1圧力閾値と、を比較する。ガス圧が第1圧力閾値未満である場合(ステップS14:YES)、処理はステップS15に移行する。一方、ガス圧が第1圧力閾値以上である場合(ステップS14:NO)、ガス供給処理は終了する。この場合、第1タンク16から燃料電池スタック20に水素ガスが供給され続ける。
【0043】
ステップS14からステップS15に移行すると、バルブ制御部84は、第1バルブ52に閉信号を出力する。第1バルブ52は、閉信号に応じて、開状態から閉状態に切り替わる。すると、第1タンク16から燃料電池システム12への水素ガスが遮断される。第1タンク16が閉状態となっても、第2タンク18が開状態であれば、第2タンク18から燃料電池システム12に水素ガスが供給され続ける。ステップS15が終了すると、処理はステップS16に移行する。
【0044】
ステップS16において、室温調整部86は、第1開閉機構70のアクチュエータと第2開閉機構72のアクチュエータの各々に、開電力を供給する。第1開閉機構70のアクチュエータは、開電力の供給によって、扉46を開ける。第2開閉機構72のアクチュエータは、開電力の供給によって、扉48を開ける。すると、タンク室30は開放される。
【0045】
第1導入口40から車両10の内部に流入した大気は、モータ室26と、バッテリ室28とを流れた後に、タンク室30に流入する。更に、扉46からタンク室30に大気が流入する。タンク室30に流入した大気は、排出口44を通り、タンク室30の外部に排出される。大気の温度は、第1タンク16の温度よりも高温である。このため、第1タンク16は温められる。ステップS16が終了すると、処理はステップS17に移行する。
【0046】
ステップS17において、バルブ制御部84は、インジェクタ56に制限信号を出力する。インジェクタ56は、制限信号に応じて、水素ガスの供給量を制限する。例えば、インジェクタ56は、燃料電池スタック20への水素ガスの供給量を、通常時の水素ガスの供給量よりも少なくする。その結果、燃料電池スタック20における水素ガスの消費量が減少する。これにより、容量の小さい第2タンク18における水素ガスの低下率を低くすることができる。すると、第2タンク18の使用可能時間が延びる。更に、第1タンク16の温度が回復するまでの時間を稼ぐことができる。
【0047】
ステップS18において、バルブ制御部84は、処理フラグを1から2に変更する。ステップS18が終了すると、ガス供給処理は終了する。
【0048】
[3-3 ガス遮断処理]
図6は、第1タンク16に関するガス遮断処理のフローチャートである。
図4で示されるステップS3においては、以下の一連のガス遮断処理が実行される。ガス遮断処理は、第1タンク16から燃料電池スタック20への水素ガスが遮断されている状態において行われる。
【0049】
ステップS21において、バルブ制御部84は、第1温度センサ58から第1タンク温度を取得する。ステップS21が終了すると、処理はステップS22に移行する。
【0050】
ステップS22において、バルブ制御部84は、ステップS21において取得された第1タンク温度と記憶装置82の情報とを用いて、第1タンク16の内圧を算出する。第1タンク16の内圧を第1タンク内圧という。タンク温度とタンク内圧とには相関がある。記憶装置82は、各々のタンクについて、タンク温度とタンク内圧との相関の情報を記憶する。ステップS22が終了すると、処理はステップS23に移行する。
【0051】
ステップS23において、バルブ制御部84は、第1タンク16の閾値情報88-1を用いて、ステップS21において取得された第1タンク温度に対応する第1圧力閾値を判定する。ステップS23が終了すると、処理はステップS24に移行する。
【0052】
ステップS24において、バルブ制御部84は、ステップS22において算出された第1タンク内圧と、ステップS23において判定された第1圧力閾値と、を比較する。第1タンク内圧が第1圧力閾値以上である場合(ステップS24:YES)、処理はステップS25に移行する。一方、第1タンク内圧が第1圧力閾値未満である場合(ステップS24:NO)、ガス遮断処理は終了する。この場合、第1タンク16から燃料電池スタック20への水素ガスの遮断が継続される。
【0053】
ステップS24からステップS25に移行すると、バルブ制御部84は、第1バルブ52に開信号を出力する。第1バルブ52は、開信号に応じて、閉状態から開状態に切り替わる。すると、第1タンク16から燃料電池システム12に水素ガスが供給される。ステップS25が終了すると、処理はステップS26に移行する。
【0054】
ステップS26において、室温調整部86は、第1開閉機構70のアクチュエータと第2開閉機構72のアクチュエータの各々に、閉電力を供給する。第1開閉機構70のアクチュエータは、閉電力の供給によって、扉46を閉める。第2開閉機構72のアクチュエータは、閉電力の供給によって、扉48を閉める。すると、タンク室30は閉塞される。ステップS26が終了すると、処理はステップS27に移行する。
【0055】
ステップS27において、バルブ制御部84は、インジェクタ56に通常信号を出力する。インジェクタ56は、通常信号に応じて、燃料電池スタック20への水素ガスの供給量を、制限前の状態に戻す。ステップS27が終了すると、処理はステップS28に移行する。
【0056】
ステップS28において、バルブ制御部84は、処理フラグを2から1に変更する。ステップS28が終了すると、ガス遮断処理は終了する。
【0057】
[3-4 第2タンク18についての処理]
コントローラ78は、第2タンク18から放出される水素ガスの制御についても、
図4~
図6で示される処理と同様の処理を行う。この場合、各処理の説明において、「第1タンク16」を「第2タンク18」と読み替える。また、各処理の説明において、「第1バルブ52」を「第2バルブ54」と読み替える。また、ガス供給処理の説明において、「第1圧力閾値」を「第2圧力閾値」と読み替える。
【0058】
3つ以上のタンクを有するガス供給システム14の場合、コントローラ78は、各タンクに対して
図4~
図6で示される処理と同様の処理を行う。
【0059】
[4 変形例]
バルブ制御部84は、第1タンク16における水素ガスの残量を演算し、水素ガスの残量と残量閾値とを比較することによって、第1バルブ52の開閉を判定しても良い。例えば、バルブ制御部84は、第1タンク温度と、ガス圧と、第1タンク16の容量と、から、第1タンク16の内部に残留する水素ガスの重量(残量)を算出することができる。
【0060】
上記実施形態において、演算装置80は、第1タンク16及び第2タンク18の各々を対象にして、
図4~
図6で示される処理を行う。演算装置80は、第1タンク16と第2タンク18のいずれか一方のみを対象にして、
図4~
図6で示される処理を行っても良い。例えば、演算装置80は、第1タンク16のみを対象にして、
図4~
図6で示される処理を行っても良い。第1タンク16は、第2タンク18よりも大きいため、タンク温度及び内圧が低下しやすい。このため、第1タンク16を対象にして、
図4~
図6で示される処理を行うことは有効である。
【0061】
[5 実施形態から得られる発明]
上記実施形態から把握しうる発明について、以下に記載する。
【0062】
本発明の態様は、ガスを貯蔵する第1タンク(16)及び第2タンク(18)と、ガスを消費するガス消費装置(20)と、前記第1タンクから前記ガス消費装置へのガスの供給と遮断とを切り替える第1バルブ(52)と、前記第2タンクから前記ガス消費装置へのガスの供給と遮断とを切り替える第2バルブ(54)と、前記第1バルブの開閉制御及び前記第2バルブの開閉制御を行うバルブ制御部(84)と、を備えるガス供給システム(14)であって、前記第1タンクから前記ガス消費装置にガスを供給するか否かを判定するためのガス圧の閾値である第1圧力閾値を記憶する記憶装置(82)を備え、前記第1圧力閾値は、前記第1タンクの内部温度である第1タンク温度と対応付けて記憶され、前記バルブ制御部は、前記第1バルブを開けて、前記第1タンクから前記ガス消費装置にガスを供給すると共に、前記第2バルブを開けて、前記第2タンクから前記ガス消費装置にガスを供給し、前記ガス消費装置に供給されるガスの前記ガス圧と、前記第1タンク温度と、を取得し、前記第1タンク温度に対応付けられる前記第1圧力閾値を判定し、前記ガス圧が前記第1圧力閾値未満である場合に、前記第1バルブを閉じて、前記第1タンクから前記ガス消費装置へのガスを遮断し、前記第1バルブを閉じた後であり、且つ、前記第1タンク温度が第1所定温度まで上昇した場合に、前記第1バルブを開けて、前記第1タンクから前記ガス消費装置へのガスの供給を再開する。
【0063】
上記構成において、バルブ制御部は、第1タンクの内圧が減少した場合に、第1タンクからガス消費装置に供給される水素ガスを遮断する一方で、第2タンクからガス消費装置への水素ガスの供給を継続する。従って、上記構成によれば、第2タンクの水素ガスを有効に使用することができる。更に、上記構成において、バルブ制御部は、第1タンクの温度を上昇させる。第1タンクの温度が上昇すると、第1タンクの内圧も上昇する。第1タンクの内圧が上昇すると、第1タンクからガス消費装置に水素ガスを供給することが可能となる。従って、上記構成によれば、第1タンクの水素ガスを有効に使用することができる。ガス供給システムが燃料電池車両に搭載される場合、燃料電池車両の航続距離を延ばすことができる。
【0064】
本発明の態様において、前記記憶装置は、前記第2タンクから前記ガス消費装置にガスを供給するか否かを判定するための前記ガス圧の閾値である第2圧力閾値を記憶し、前記第2圧力閾値は、前記第2タンクの内部温度である第2タンク温度と対応付けて記憶され、前記バルブ制御部は、前記ガス消費装置に供給されるガスの前記ガス圧と、前記第2タンク温度と、を取得し、前記第2タンク温度に対応付けられる前記第2圧力閾値を判定し、前記ガス圧が前記第2圧力閾値未満である場合に、前記第2バルブを閉じて、前記第2タンクから前記ガス消費装置へのガスを遮断し、前記第2バルブを閉じた後であり、且つ、前記第2タンク温度が第2所定温度まで上昇した場合に、前記第2バルブを開けて、前記第2タンクから前記ガス消費装置へのガスの供給を再開しても良い。
【0065】
本発明の態様において、前記ガス消費装置へのガスの供給量を調整する調整バルブ(56)を備え、前記バルブ制御部は、前記第1バルブを閉じた場合に、前記調整バルブを制御することによって、前記第2タンクから前記ガス消費装置へのガスの供給量を制限しても良い。
【0066】
第1バルブを閉じた場合、ガス消費装置は、第2タンクから放出されるガスを使用する。すると、第2タンクがガス欠になるリスクがある。上記構成においては、第2タンクから放出されるガスが抑制される。このため、上記構成によれば、第2タンクがガス欠になるリスクを減らすことができる。
【0067】
本発明の態様は、前記第1バルブを閉じた後に、前記第1タンクを収納するタンク室(30)の室内を温める室温調整部(86)を備えても良い。
【0068】
上記構成によれば、第1タンク温度を早期に回復させることができ、第1タンクの内圧を早期に上昇させることができる。
【0069】
本発明の態様において、前記タンク室は、前記タンク室の内部の気体を前記タンク室の外部に排出するための排出口(44)を有し、前記室温調整部は、前記排出口を開放状態にすることによって、前記タンク室の内部に流入する気体を前記タンク室の外部に排出させても良い。
【0070】
本発明の態様において、前記第1タンクに取り付けられた熱交換器(74)を備え、前記熱交換器は、前記第1タンク以外の部分から吸熱し、前記第1タンクに放熱しても良い。
【0071】
上記構成によれば、第1タンク温度を早期に回復させることができ、第1タンクの内圧を早期に上昇させることができる。
【符号の説明】
【0072】
14…ガス供給システム 16…第1タンク
18…第2タンク
20…燃料電池スタック(ガス消費装置) 30…タンク室
44…排出口 52…第1バルブ
54…第2バルブ 56…インジェクタ(調整バルブ)
82…記憶装置 84…バルブ制御部
86…室温調整部