(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】開口部建材
(51)【国際特許分類】
E06B 3/62 20060101AFI20241213BHJP
【FI】
E06B3/62 Z
(21)【出願番号】P 2021170687
(22)【出願日】2021-10-19
【審査請求日】2024-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136331
【氏名又は名称】小林 陽一
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 夏依
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-3987(JP,U)
【文献】実開平3-87780(JP,U)
【文献】特開平10-25971(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0390506(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 1/00-11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠と、枠に支持したガラスと、バックアップ材と、シーリング材とを備え、枠は、内周側が開口したガラス取付溝を有し、バックアップ材は、ガラスの室外側面又は室内側面とガラス取付溝の一側壁との隙間に挿入されるものであり、主部と、主部よりも見込寸法が小さい幅狭部と、幅狭部の室外側面及び室内側面に設けたヒレ片を有し、ヒレ片は、主部よりも室外側及び室内側に突出した状態と、幅狭部の室外側及び室内側の主部よりも見込寸法が小さくなった部分に収納した状態になり得るものであり、シーリング材は、バックアップ材の内周側に設けてあることを特徴とする開口部建材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の開口部に取付けられる開口部建材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ガラスを枠のガラス取付溝に保持する際に、バックアップ材をガラス取付溝の側壁とガラスとの隙間の奥側に挿入してから、バックアップ材の内周側にシーリング材を充填している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本願発明は以上に述べた実情に鑑み、使い勝手の良いバックアップ材を備えた開口部建材の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題を達成するために請求項1記載の発明による開口部建材は、枠と、枠に支持したガラスと、バックアップ材と、シーリング材とを備え、枠は、内周側が開口したガラス取付溝を有し、バックアップ材は、ガラスの室外側面又は室内側面とガラス取付溝の一側壁との隙間に挿入されるものであり、主部と、主部よりも見込寸法が小さい幅狭部と、幅狭部の室外側面及び室内側面に設けたヒレ片を有し、ヒレ片は、主部よりも室外側及び室内側に突出した状態と、幅狭部の室外側及び室内側の主部よりも見込寸法が小さくなった部分に収納した状態になり得るものであり、シーリング材は、バックアップ材の内周側に設けてあることを特徴とする。なお、ここでいう枠には、縦枠や横枠の他、方立や無目、障子の框等が含まれる。
【発明の効果】
【0005】
請求項1記載の発明による開口部建材は、バックアップ材が主部と、主部よりも見込寸法が小さい幅狭部と、幅狭部の室外側面及び室内側面に設けたヒレ片を有し、ヒレ片は、主部よりも室外側及び室内側に突出した状態と、幅狭部の室外側及び室内側の主部よりも見込寸法が小さくなった部分に収納した状態になり得るものであるため、バックアップ材をガラスの室外側面又は室内側面とガラス取付溝の一側壁との隙間に挿入する際に挿入しやすく、且つ前記隙間が多少広がっていてもヒレ片によりバックアップ材の抜け落ちを防止できるので、バックアップ材の使い勝手が良い。そして、バックアップ材の挿入がしやすく、且つバックアップ材の抜け落ちを防止できることで、枠にガラスを取付ける際の施工性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】枠のガラス取付溝にバックアップ材を挿入した状態を示す縦断面図であって、(a)はガラスの室内側面とガラス取付溝の室内側壁との隙間の寸法が設計通りの場合、(b)は同隙間の寸法が設計通りよりも少し広い場合を示す。
【
図2】本発明の開口部建材の一実施形態を示す縦断面図である。
【
図4】同開口部建材に用いられるバックアップ材の拡大断面図である。
【
図5】本発明の開口部建材のバックアップ材の他の実施形態を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1~3は、本発明の開口部建材の一実施形態を示している。本開口部建材は、ビル用の嵌め殺し窓に適用したものであって、
図2,3に示すように、躯体開口部に取付けられる枠1と、枠1内に納めたガラス2とを有している。
【0008】
枠2は、
図2,3に示すように、アルミニウム合金の押出形材で形成した上枠8と下枠9と左右の縦枠10,10とを矩形状に枠組みして構成してある。上枠8と下枠9と左右の縦枠10,10は、それぞれ内周側が開口したガラス取付溝11を有している。
【0009】
下枠9は、
図2に示すように、ガラス取付溝11の底壁12上にガラス2を受けるセッティングブロック13が取付けてある。ガラス取付溝11の室外側壁14と室内側壁15の開口側端部には、断面略C字形のホルダー部16,17が対向して形成されている。室外側のホルダー部16には、定形のシール材であるビード18が取付けてあり、ビード18がガラス2の室外側面に当接している。室内側のホルダー部17の室外側壁17aとガラス2の室内側面との隙間には、奥側にバックアップ材3が挿入・保持され、バックアップ材3の内周側に湿式のシーリング材4が充填してある。このように下枠9は、室外側のビード18と室内側のバックアップ材3及びシーリング材4とでガラス2の端部を挟持してガラス取付溝11に保持してある。
【0010】
上枠8は、下枠9と同様に、ガラス2の端部を室外側に設けたビード18と室内側に設けたバックアップ材3及びシーリング材4とで挟持してガラス取付溝11に保持してある。
縦枠10も、
図3に示すように、上枠8及び下枠9と同様に、ガラス2の端部を室外側に設けたビード18と室内側に設けたバックアップ材3及びシーリング材4とで挟持してガラス取付溝11に保持してある。縦枠10のガラス取付溝11の室内側壁は、着脱自在な押縁20となっており、押縁20は下枠9のようなホルダー部17を有しないものとなっている。
【0011】
バックアップ材3は、合成樹脂又は合成ゴムを押出成形したものであり、例えば塩化ビニル樹脂で形成してある。バックアップ材3は、
図4に示すように、略矩形断面の主部5と、主部5の内周側に設けられた主部5よりも見込寸法が小さい幅狭部6と、幅狭部6の室外側面及び室内側面に設けたヒレ片7,7とを有し、左右対称形となっている。ヒレ片7,7は、内周側に向かって外側に広がるように逆ハの字形に傾斜して設けてある。
主部5は、見込寸法Aがガラス2の室内側面とガラス取付溝11の室内側壁(上枠8と下枠9にあってはホルダー部17の室外側壁17a、縦枠10にあっては押縁20)との隙間寸法B(
図2参照)と同じか、それよりも僅かに小さくしてある。具体的には、ガラス2の室内側面とガラス取付溝11の室内側壁17aとの隙間寸法Bは設計上は5mmで、主部の見込寸法Aは4.8mmとしてある。ヒレ片7,7が外側に開いた状態でのバックアップ材3の見込寸法Cは、ガラス2の室内側面とガラス取付溝11の室内側壁17a,20との隙間寸法Bよりも大きく、具体的には6.4mmとしてある。ヒレ片7は、厚みが幅狭部6の室外側及び室内側の主部5よりも見込寸法が小さくなった部分19の見込寸法と略同じになっており、且つ幅狭部6の室外側面及び室内側面に沿うように曲がったときに、先端がバックアップ材3の内周側面から突出しない長さとしてある。
【0012】
次に、枠1にガラス2を取付ける際の手順を説明する。まず、下枠9のガラス取付溝11の底壁12上の所定の位置にセッチングブロック13を設置する。
次に、上枠8、下枠9及び縦枠10のガラス取付溝11の室外側のホルダー部16にビード18を取付ける。縦枠10の室内側の押縁20は取外しておく。
この状態で、上枠8のガラス取付溝11と下枠9のガラス取付溝11間に室内側からガラス2を上下けんどんで取付け、その後、縦枠10,10に押縁20を取付ける。
次に、
図1に示すように、ガラス2の室内側面と枠1のガラス取付溝11の室内側壁17a,20との隙間aに、内周側からバックアップ材3を挿入する。
図1(a)は、ガラス2の室内側面とガラス取付溝11の室内側壁17a,20との隙間寸法Bが設計通りの場合で、このときにはヒレ片7,7が幅狭部6の室外側及び室内側の主部5よりも見込寸法が小さくなった部分19,19にちょうど納まり、ヒレ片7,7が主部5の室外側面及び室内側面と面一になる。また、ヒレ片7,7の先端部がバックアップ材3の内周側面と面一になり、これによりガラス2の室内側面とガラス取付溝11の室内側壁17a,20との間に、シーリング材4を受ける面21がフラットに形成されている。
ガラス2の室内側面とガラス取付溝11の室内側壁17a,20との隙間寸法Bは、多少ばらつきが生ずることがあり(特にガラス取付溝11の室内側壁が押縁20になっている縦枠10側)、
図1(b)は、ガラス2の室内側面とガラス取付溝11の室内側壁17a,20との隙間寸法Bが設計通りよりも少し大きい場合を示している。この場合でも本バックアップ材3は、室内外のヒレ片7,7がガラス2の室内側面とガラス取付溝11の室内側壁17a,20との間で突っ張ることで、抜け落ちを防止することができる。またこの場合も、
図1(a)の場合と同様に、ガラス2の室内側面とガラス取付溝11の室内側壁17a,20との間に、シーリング材4を受ける面21がフラットに形成されている。
その後、バックアップ材3の内周側のガラス2の室内側面とガラス取付溝11の室内側壁17a,20との隙間aにシーリング材4を充填する。上記の通り、本バックアップ材3を挿入することでガラス2の室内側面とガラス取付溝11の室内側壁17a,20との間にシーリング材4を受ける面21がフラットに形成されているため、シーリング材4の充填がしやすい。
【0013】
図5は、バックアップ材3の他の実施形態を示している。本バックアップ材3は、幅狭部6が内外周方向の中間部に設けてあり、幅狭部6の室外側面と室内側面にヒレ片7,7が内周側に傾斜して設けてある。ヒレ片7,7が、幅狭部6の室外側及び室内側の主部5よりも見込寸法が小さくなった部分19,19に収納できるようになっている点は、先に説明した
図4のものと同様である。
本実施形態のバックアップ材3も、
図4のものと同様に、ガラス取付溝11に挿入しやすく、且つ脱落を防止できる。バックアップ材3の内周側面がもともとフラットに形成されているため、シーリング材4の充填もしやすい。
【0014】
以上に述べたように本開口部建材は、バックアップ材3が主部5と、主部5よりも見込寸法が小さい幅狭部6と、幅狭部6の室外側面及び室内側面に設けたヒレ片7,7を有し、ヒレ片7,7は、主部5よりも室外側及び室内側に突出した状態と、幅狭部6の室外側及び室内側の主部5よりも見込寸法が小さくなった部分19,19に収納した状態になり得るものであるため、バックアップ材3をガラス2の室外側面又は室内側面とガラス取付溝11の一側壁(ホルダー部17の室外側壁17a、押縁20)との隙間aに挿入する際に挿入しやすく、且つ前記隙間aが多少広がっていてもヒレ片7,7によりバックアップ材3の抜け落ちを防止できるので、バックアップ材3の使い勝手が良い。そして、バックアップ材3の挿入がしやすく、且つバックアップ材3の抜け落ちを防止できることで、枠1にガラス2を取付ける際の施工性が向上する。
本開口部建材は、バックアップ材3をガラス取付溝11に挿入することにより、ガラス2の室外側面又は室内側面とガラス取付溝11の一側壁17a,20との間にシーリング材4を受ける面21がフラットに形成されているため、シーリング材4の充填がしやすい。
また本開口部建材は、ヒレ片7,7が幅狭部6の室外側及び室内側の主部5よりも見込寸法が小さくなった部分19,19に収納された状態で、シーリング材4を受ける面21がフラットに形成されているので、バックアップ材3の挿入のしやすさ、抜け落ち防止効果を保ちながら、ヒレ片7,7がシーリング材4を充填する際に邪魔にならず、シーリング材4の充填がしやすいため、バックアップ材3の使い勝手が一層向上する。
さらに本開口部建材は、ヒレ片7,7が幅狭部6の室外側及び室内側の主部5よりも見込寸法が小さくなった部分19,19に収納された状態で、ヒレ片7,7が主部5の室外側面及び室内側面と面一になることで、バックアップ材3をガラス2の室外側面又は室内側面とガラス取付溝11の一側壁17a,20との隙間aに挿入しやすいとともに、挿入するとバックアップ材3を同隙間aに安定して保持できる。
【0015】
本発明は以上に述べた実施形態に限定されない。枠の材質及び断面形状、バックアップ材の材質及び断面形状は、適宜変更することができる。バックアップ材とシーリング材は、ガラスの室外側に設けてあってもよいし、ガラスの室外側と室内側の両方に設けてあってもよい。ガラスは、複層ガラスであってもよい。本発明は、嵌め殺し窓に限らず、開き窓、すべり出し窓、引違い窓など、あらゆる窓種に適用することができる。すなわち、障子の框のガラス取付溝にガラスを保持するために本発明に係るバックアップ材を用いたものであってもよい。
【符号の説明】
【0016】
1 枠
2 ガラス
3 バックアップ材
4 シーリング材
5 主部
6 幅狭部
7 ヒレ片
11 ガラス取付溝