(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】列車運行管理システム、パラメータ作成システム、及びパラメータ作成方法
(51)【国際特許分類】
B61L 27/60 20220101AFI20241213BHJP
【FI】
B61L27/60
(21)【出願番号】P 2021196120
(22)【出願日】2021-12-02
【審査請求日】2024-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】福嶋 開人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 昇
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-30542(JP,A)
【文献】特開2016-137864(JP,A)
【文献】特開2020-117169(JP,A)
【文献】特開2010-234968(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0184917(US,A1)
【文献】特開2019-188868(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
列車運行管理システムであって、
所定の処理を実行する演算装置と、前記演算装置がアクセス可能な記憶装置とを備え、
前記演算装置が、計画ダイヤ、前記計画ダイヤの評価シナリオ、評価指標、設備データ、及びパラメータの初期値の入力を受ける入力部と、
前記演算装置が、1以上の前記評価シナリオに従ってダイヤを予測し、予測ダイヤを作成する予測部と、
前記演算装置が、前記計画ダイヤと前記予測ダイヤとを比較し、前記評価指標を充足するパラメータ値を絞り込むパラメータ絞り込み部とを有し、
前記列車運行管理システムは、前記絞り込まれたパラメータを用いて列車ダイヤを予測し、前記予測された列車ダイヤに従って線路設備を制御する信号を出力することを特徴とする列車運行管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の列車運行管理システムであって、
前記評価シナリオは、遅延発生地点、及び遅延時分を含み、
前記評価指標は、遅延回復地点、及び総遅延時分の少なくとも一つを含むことを特徴とする列車運行管理システム。
【請求項3】
請求項1に記載の列車運行管理システムであって、
前記パラメータ絞り込み部は、
遅延列車無しが定められる第一の評価シナリオにおいて、総遅延時分が0である第一の評価指標として、前記パラメータ値を絞り込んで、第一のパラメータを作成し、
任意の遅延列車、任意の遅延発生地点、及び任意の遅延時分が定められる1以上の第二の評価シナリオにおいて、遅延回復地点を1以上の第二の評価指標として、前記パラメータ値を絞り込んで、第二のパラメータを作成することを特徴とする列車運行管理システム。
【請求項4】
請求項1に記載の列車運行管理システムであって、
前記パラメータ絞り込み部は、パラメータ値候補作成部と、制約式計算部と、パラメータ値選定部とを有し、
前記評価シナリオ毎に、
前記パラメータ値候補作成部が、パラメータ値の候補を作成し、
前記予測部が、前記計画ダイヤと、前記評価シナリオと、前記パラメータ値の候補とに基づいて予測ダイヤを作成し、
前記制約式計算部が、前記予測ダイヤが前記評価指標を充足するかを判定し、パラメータ値が満たす制約式を計算し、
前記パラメータ値選定部が、1以上の前記評価シナリオに対して、全ての前記制約式を充足するパラメータ値を一つ選定することを特徴とする列車運行管理システム。
【請求項5】
請求項4に記載の列車運行管理システムであって、
前記パラメータ値選定部は、前記評価シナリオで指定された遅延列車の遅延発生地点から、評価指標で指定された遅延回復地点まで間の所要時間の調整量で遅延時分を按分して第二のパラメータを作成することを特徴とする列車運行管理システム。
【請求項6】
請求項5に記載の列車運行管理システムであって、
前記パラメータ値選定部は、実行結果によって生成されるパラメータ改善履歴に基づいて、前記按分の比率を計算すること特徴とする列車運行管理システム。
【請求項7】
請求項5に記載の列車運行管理システムであって、
前記パラメータ値選定部は、パラメータの種別ごとに設定した余裕時分の按分の重みに基づいて、前記按分の比率を計算することを特徴とする列車運行管理システム。
【請求項8】
請求項4に記載の列車運行管理システムであって、
前記パラメータ値候補作成部は、線形が運行上のボトルネックとなる箇所でパラメータ変更の刻み幅を小さく設定し、パラメータ値の候補を作成することを特徴とする列車運行管理システム。
【請求項9】
パラメータ作成システムであって、
所定の処理を実行する演算装置と、前記演算装置がアクセス可能な記憶装置とを備え、
前記演算装置が、計画ダイヤ、前記計画ダイヤの評価シナリオ、評価指標、設備データ、及びパラメータの初期値の入力を受ける入力部と、
前記演算装置が、1以上の前記評価シナリオに従ってダイヤを予測し、予測ダイヤを作成する予測部と、
前記演算装置が、前記計画ダイヤと前記予測ダイヤとを比較し、前記評価指標を充足するパラメータ値を絞り込むパラメータ絞り込み部とを有することを特徴とするパラメータ作成システム。
【請求項10】
パラメータ作成システムが実行するパラメータ作成方法であって、
前記パラメータ作成システムは、所定の処理を実行する演算装置と、前記演算装置がアクセス可能な記憶装置とを有し、
前記パラメータ作成方法は、
前記演算装置が、計画ダイヤ、前記計画ダイヤの評価シナリオ、評価指標と、設備データ、及びパラメータの初期値の入力を受ける入力手順と、
前記演算装置が、1以上の前記評価シナリオに従ってダイヤを予測し、予測ダイヤを作成する予測手順と、
前記演算装置が、前記計画ダイヤと前記予測ダイヤとを比較し、前記評価指標を充足するパラメータ値を絞り込むパラメータ絞り込み手順とを有することを特徴とするパラメータ作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、列車運行管理システムで列車運行の予測に必要なパラメータを作成するシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
列車運行管理業務は、列車の運行計画に基づいて列車の運行時刻と走行経路(以下進路と称する)を制御し、列車による輸送を支える業務である。この列車運行管理業務の効率化のために、列車運行予測機能を有する列車運行管理システムが実現されている。
【0003】
本技術分野の背景技術として、以下の先行技術がある。特許文献1(特開2016-30542号公報)には、列車運行管理システムにおいて、列車に関する環境が変化した箇所を検出する環境変化検出部と、列車の状況に対応した影響範囲情報を記憶する条件記憶部と、環境が変化した箇所と、前記条件記憶部に記憶された影響範囲情報に基づいて、環境変化の影響範囲を特定する影響範囲特定部と、特定された影響範囲に基づいて、列車の運行を予測するための制約条件を決定する条件決定部と、決定された制約条件に基づいて列車の運行を予測する予測部と、を備える。
【0004】
また、特許文献2(特開2019-93906号公報)には、実施形態の運行管理支援装置は、構成情報記憶部と、入力部と、特定部と、を備える。構成情報記憶部は、列車の運行を管理する運行管理システムに設けられた各構成を示した構成情報を記憶する。入力部は、列車の運行を管理する運行管理システムが管理対象としている列車が経路に従って運行された場合の運行実績が示された実績ダイヤデータと、当該列車が経路を定刻通りに運行した場合の運行状況が示された所定ダイヤデータと、を入力する。特定部は、実績ダイヤデータと所定ダイヤデータとの違いと、構成情報記憶部に記憶された構成情報と、に基づいて、列車を所定ダイヤデータに従って運行させるために修正の対象となる、運行管理システムに設けられた構成を特定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-30542号公報
【文献】特開2019-93906号公報
【文献】特開2012-245801号公報
【文献】特開2009-96221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
列車運行管理システムの一機能である列車運行予測機能では、列車の運行経路上の駅の着時刻と発時刻を示すダイヤによって列車の運行を表現し、将来のダイヤを予測する。特許文献1(特開2016-30542)では、ダイヤ予測に必要なパラメータが基準運転時分や交差時隔などの形式でモデル化されている。ダイヤを尤もらしく予測するには、信号設備や車両などをモデル化し、適切なパラメータをモデルに入力しなければならない。しかし、信号設備や車両などの制御データとパラメータの対応は明確ではなく、また、パラメータの数も多いことから、とり得る値に自由度が生じ、パラメータの作成には試行錯誤が必要である。また、作業者が列車運行管理システムを熟知していない状況や、新規路線等で制御系の詳細データ(例えば運転曲線)が入手困難な場合に、パラメータの作成には試行錯誤が必要であった。
【0007】
このことから、列車運行管理システムの振舞いを熟知していなければ尤もらしいパラメータを作成できず、また、列車運行管理システムに慣れている人であっても試行錯誤を要するためパラメータ作成に時間がかかる。また、地上の信号設備の車上信号化により、ソフトウェア更新で制御データを更新でき、制御データに追従するためのパラメータ作成頻度の増加が予想され、効率的なパラメータ作成が求められる。
【0008】
パラメータ作成を支援する方法として、特許文献2(特開2019-93906)に記載される方法では、実績ダイヤと所定ダイヤとの差分から、列車運行管理システムの構成における修正箇所を特定する。これによって、修正を必要とする装置を迅速に知ることができる。しかし、特許文献2では、特定した箇所の修正方法について言及されていない。また、特許文献2では、新規路線の実績ダイヤが手に入らない場合に適用できない。
【0009】
本発明は、自由度のあるパラメータ値の候補から、尤もらしい予測ダイヤの出力が可能なパラメータを作成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願において開示される発明の代表的な一例を示せば以下の通りである。すなわち、列車運行管理システムであって、所定の処理を実行する演算装置と、前記演算装置がアクセス可能な記憶装置とを備え、前記演算装置が、計画ダイヤ、前記計画ダイヤの評価シナリオ、評価指標、設備データ、及びパラメータの初期値の入力を受ける入力部と、前記演算装置が、1以上の前記評価シナリオに従ってダイヤを予測し、予測ダイヤを作成する予測部と、前記演算装置が、前記計画ダイヤと前記予測ダイヤとを比較し、前記評価指標を充足するパラメータ値を絞り込むパラメータ絞り込み部とを有し、前記運行管理システムは、前記絞り込まれたパラメータを用いて列車ダイヤを予測し、前記予測された列車ダイヤに従って線路設備を制御する信号を出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、試行錯誤することなく尤もらしいパラメータを作成できる。前述した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施例の説明によって明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】本実施例のパラメータ作成システムの全体の構成図である。
【
図1B】本実施例のパラメータ作成システムの物理的な構成を示す図である。
【
図2】本実施例の設備データによって表される線路配線を示す図である。
【
図3】本実施例の計画ダイヤの構成例である表を示す図である。
【
図4A】本実施例の暫定パラメータの構成例である表を示す図である。
【
図4B】本実施例の暫定パラメータの構成例である表を示す図である。
【
図5】本実施例のロバスト性評価シナリオの構成例である表を示す図である。
【
図6】本実施例のパラメータ適用優先度情報の構成例である表を示す図である。
【
図7】本実施例の改善履歴の構成例である表を示す図である。
【
図8A】本実施例のパラメータ作成システムが実行する処理のシーケンス図である。
【
図8B】本実施例のパラメータ作成システムが実行する処理のシーケンス図である。
【
図9】本実施例のパラメータ作成システムによる処理の全体の流れを示すフローチャートである。
【
図10】本実施例のロバスト性評価シナリオの場合の各パラメータの制約式を算出する処理のフローチャートである。
【
図11】本実施例の複数の制約式を纏めたパラメータの設定幅から代表値を算出する処理(S400)のフローチャートである。
【
図12】本実施例の作業者からの入力画面の例を示す図である。
【
図13】本実施例の作業者へ提示される出力画面の例を示す図である。
【
図14】本実施例によって作成された予測ダイヤを示す図である。
【
図15】本実施例において評価シナリオ2においてB-C駅間走行時分とC駅停車時分の調整を図示したグラフである。
【
図16】本実施例の定常シナリオと評価シナリオ2使用して算出された複数のパラメータの設定幅を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照してこの発明の実施例を説明する。
【0014】
図1Aは、パラメータ作成システム100の全体の構成図である。
【0015】
パラメータ作成システム100は、列車運行管理システム99が動作するためのデータを作成する装置である。列車運行管理システム99は、列車の情報を線路設備から収集し、列車の運行に必要な情報を線路設備や列車に送信する。パラメータ作成システム100は、列車運行管理システム99のサブシステムとして位置付けられるが、列車運行管理システム99と別のシステムでもよい。例えば、パラメータ作成システム100と列車運行管理システム99は、別々の計算機環境に設置する場合には、ネットワークや記憶媒体を通してデータが転送されるとよい。その際、作業者98が外部から受け取るデータは、オンラインで常に最新のデータを受け取り、作成されたデータを列車運行管理システム99に反映してもよい。また、既存路線で走行実績のデータが使用できる場合、計画ダイヤに代えて実績ダイヤと予測ダイヤを比較してもよい。改善履歴105が十分に蓄えられている場合、作業者98による調整を不要としてもよい。この構成にした場合、車上信号化及び自動運転化によって定期的な制御データの更新が必要となっても自動的に制御に追従するデータが更新され、データ作成における負担を軽減できる。
【0016】
パラメータ作成システム100は、入力部101と、予測部102と、パラメータ絞り込み部103と、結果提示部104と、改善履歴105とを含む。入力部101は、作業者98からのデータ入力を受け付ける部分である。予測部102は、パラメータからダイヤを予測する部分であり、例えば、特開2012-245801に記載の技術によって実現できる。パラメータ絞り込み部103は、自由度があるパラメータの中から尤もらしい値を絞り込む部分である。パラメータ絞り込み部103は、パラメータ値の候補を作成するパラメータ値候補作成部103Aと、ダイヤ予測結果が評価指標109Bを充足するかを判定し、パラメータ値が満たす制約式を計算する制約式計算部103Bと、1以上の評価シナリオに対して、全ての制約式を充足するパラメータ値を一つ選定するパラメータ値選定部103Cとを有する。
【0017】
結果提示部104は、作成したパラメータを作業者98に提示する部分である。改善履歴105は、結果を提示した際の作業者98からのフィードバックを記録する。パラメータ作成システム100は、計画ダイヤ107と、暫定パラメータ108と、ロバスト性評価シナリオ109Aと、評価指標109Bと、パラメータ適用優先度情報110とを外部から受け取る。これらのデータ107~110は、
図3から
図6を参照して後述する。
【0018】
図1Bは、パラメータ作成システム100の物理的な構成を示す図である。
【0019】
パラメータ作成システム100は、プロセッサ(CPU)1、メモリ2、補助記憶装置3及び通信インターフェース4を有する計算機によって構成される。パラメータ作成システム100は、入力インターフェース5及び出力インターフェース6を有してもよい。
【0020】
プロセッサ1は、メモリ2に格納されたプログラムを実行する演算装置である。プロセッサ1が、各種プログラムを実行することによって、パラメータ作成システム100の各機能部(例えば、入力部101、予測部102、パラメータ絞り込み部103、結果提示部104など)による機能が実現される。なお、プロセッサ1がプログラムを実行して行う処理の一部を、他の演算装置(例えば、ASIC、FPGA等のハードウェア)で実行してもよい。
【0021】
メモリ2は、不揮発性の記憶素子であるROM及び揮発性の記憶素子であるRAMを含む。ROMは、不変のプログラム(例えば、BIOS)などを格納する。RAMは、DRAM(Dynamic Random Access Memory)のような高速かつ揮発性の記憶素子であり、プロセッサ1が実行するプログラム及びプログラムの実行時に使用されるデータを一時的に格納する。
【0022】
補助記憶装置3は、例えば、磁気記憶装置(HDD)、フラッシュメモリ(SSD)等の大容量かつ不揮発性の記憶装置である。また、補助記憶装置3は、プロセッサ1がプログラムの実行時に使用するデータ(例えば、改善履歴105など)、及びプロセッサ1が実行するプログラムを格納する。すなわち、プログラムは、補助記憶装置3から読み出されて、メモリ2にロードされて、プロセッサ1によって実行されることによって、パラメータ作成システム100の各機能を実現する。
【0023】
通信インターフェース4は、所定のプロトコルに従って、他の装置(例えば、列車運行管理システム99)との通信を制御するネットワークインターフェース装置である。
【0024】
入力インターフェース5は、キーボード7やマウス8などの入力装置が接続され、オペレータからの入力を受けるインターフェースである。出力インターフェース6は、ディスプレイ装置9やプリンタ(図示省略)などの出力装置が接続され、プログラムの実行結果をオペレータが視認可能な形式で出力するインターフェースである。なお、パラメータ作成システム100にネットワークを介して接続されたユーザ端末が入力装置及び出力装置を提供してもよい。この場合、パラメータ作成システム100がウェブサーバの機能を有し、ユーザ端末がパラメータ作成システム100に所定のプロトコル(例えばhttp)でアクセスしてもよい。
【0025】
プロセッサ1が実行するプログラムは、リムーバブルメディア(CD-ROM、フラッシュメモリなど)又はネットワークを介してパラメータ作成システム100に提供され、非一時的記憶媒体である不揮発性の補助記憶装置3に格納される。このため、パラメータ作成システム100は、リムーバブルメディアからデータを読み込むインターフェースを有するとよい。
【0026】
パラメータ作成システム100は、物理的に一つの計算機上で、又は、論理的又は物理的に構成された複数の計算機上で構成される計算機システムであり、複数の物理的計算機資源上に構築された仮想計算機上で動作してもよい。例えば、入力部101、予測部102、パラメータ絞り込み部103、結果提示部104は、各々別個の物理的又は論理的計算機上で動作するものでも、複数が組み合わされて一つの物理的又は論理的計算機上で動作するものでもよい。
【0027】
図2は、設備データ106によって表される線路配線を示す図である。
【0028】
設備データ106は、駅と、番線と、信号機と、線形とを含む。図中、駅は駅A、駅B、駅Cがあり、番線は#1、#2によって表され、信号8111、8121、8211、8212、8311、8321が表される。
図2は、C駅で行き止まりとなり、折返し運転が行われる線形を示す。
【0029】
図3は、計画ダイヤ107の構成例である表T01を示す図である。なお、
図3から
図6では、各データを表形式で示すが、表以外の形式で構成してもよい。計画ダイヤ107(表T01)は、列車の運行に関する駅毎の着発番線と着発時刻を記録しており、行レコードの識別情報である通番T01aと、列車の識別情報である(列車番号)列番T01bと、駅T01cと、番線T01dと、着時刻T01eと、発時刻T01fとを含む。計画ダイヤ107は、表T01に示すデータの他に、計画ダイヤの刻み幅(計画ダイヤを作成する際に設定する最小の時間間隔)を含むとよい。
【0030】
図4A、
図4Bは、暫定パラメータ108の構成例である表T02を示す図ある。暫定パラメータ108は、
図4Aに示す発駅T02cと着駅T02dの駅間に設定されるパラメータ(例えば走行時分)と、
図4Bに示す駅T02eや番線に設定されるパラメータ(例えば、折返時分、続行時隔、交差支障時隔)で構成される。
図4A及び
図4Bに示す表は、図示するように別に構成されても、統合して構成されてもよい。これらの暫定パラメータは、列車種別や車両性能毎に作成してもよい。暫定パラメータ108(表T02)は、通番T02aと、パラメータ種別T02bと、パラメータの区間(発駅T02c、着駅T02d、駅T02e)と、暫定値T02fとを含む。
【0031】
暫定パラメータ108は、既に列車運行管理システム99を稼働させ基礎となるパラメータがある場合、その値を初期値として設定する。基礎となるパラメータがない場合、パラメータの仕様によって定められるデフォルト値を設定する。これらのパラメータの例に公知文献(特開2009-96221号)に記載された停車時分、折返し時分、続行時隔、交差支障時隔がある。このうち、停車時分と折返し時分は駅に設定され、続行時隔と交差支障時隔は駅間に設定される。例えば、
図2に示す路線において、続行時隔は、B駅での先行する列車と続行する列車の時間間隔であり、交差支障時隔は、A駅又はC駅に設置された分岐を通過時に前後列車で確保しなければならない時間間隔である。パラメータ値は、時分などの連続値の他に、これらの時隔の確保の要否などの離散値でもよい。
【0032】
図5は、ロバスト性評価シナリオ109Aの構成例である表T03を示す図ある。ロバスト性評価シナリオ109Aは、計画ダイヤ作成時に考慮するロバスト性を、各地点からの許容遅延量で表したものである。ロバスト性評価シナリオ109A(表T03)は、通番T03aと、想定する遅延が発生する駅T03bと、想定する遅延時間T03cと、遅延発生駅に入れた想定する遅延が回復(予測ダイヤと計画ダイヤの発時刻が一致する状態)する駅T03dとを含む。
【0033】
図6は、パラメータ適用優先度情報110の構成例である表T04を示す図ある。パラメータ適用優先度情報110(表T04)は、複数のパラメータ間でのパラメータ調整量を按分する際に使用される。パラメータ調整量は、パラメータ種別固有の余裕時分を含む割合を数値化する方法で決めてもよい。パラメータ適用優先度情報110(表T04)は、通番T04aと、パラメータ種別T04と、優先順位T04cとを含む。
【0034】
図7は、改善履歴105の構成例である表T05を示す図である。改善履歴105は、結果提示時に作業者98からのフィードバックを蓄える次回のパラメータ作成に使用される。改善履歴105(表T05)は、通番T05a、パラメータ種別T05b、当該パラメータの区間の発駅T05c及び着駅T05d、提案する設定幅T05e、提案する代表値T05f、改善種別T05g、及び改善指示T05hを含む。設定幅T05eは、パラメータの絞り込みにより自由度があるパラメータの設定可能範囲を示す。代表値は、設定幅の中から選択された設定値である。設定値の選択方法は後述する。改善種別T05gは、パラメータとして代表値を採用した場合には承認が、設定幅の中から代表値以外の値が選択された場合には選択が、設定幅の範囲外から指定された場合や提示されたパラメータ種別以外が指定された場合は新規が記録される。改善指示T05hは、改善種別T05gが選択と新規の場合に選択又は指定された値が記録され、列車運行管理システム99に提供される。
【0035】
図8A、
図8Bは、パラメータ作成システム100が実行する処理のシーケンス図であり、
図8Aが処理の全体を示し、
図8Bが定常シナリオによる予測ダイヤ生成処理及びロバスト性評価シナリオ109Aによる予測ダイヤ生成処理を示す。
【0036】
作業者98は、設備データ106と、計画ダイヤ107と、暫定パラメータ108と、ロバスト性評価シナリオ109Aとを含む入力データを入力部101に入力する。パラメータ適用優先度情報110は、パラメータ作成システム100の開発者により作成され組み込まれている。入力部101は、入力データを所定のデータベース106~110に登録する。入力部101は、データ登録が完了すると、登録データを格納したアドレスをパラメータ絞り込み部103に伝える。
【0037】
パラメータ絞り込み部103は、計画ダイヤ107と暫定パラメータ108とを予測部102に送る。予測部102は、パラメータ絞り込み部103から送られたデータを使用して、ダイヤを予測する。暫定パラメータ108によるダイヤ予測が終了すると、パラメータ絞り込み部103は、計画ダイヤで調整済みのパラメータ111を作成する。
【0038】
パラメータ絞り込み部103は、予測部102が計画ダイヤ107と、計画ダイヤで調整済みのパラメータ111と、ロバスト性評価シナリオ109Aとを使用して作成した予測ダイヤ(パラメータにより演算した現在時刻から予測されるダイヤ)を取得する。パラメータ絞り込み部103は、予測ダイヤと、計画ダイヤ107と、改善履歴105と、パラメータ適用優先度情報110とを使い、パラメータの設定幅と代表値とを算出し、結果提示部104へ送る。
【0039】
結果提示部104は、計画ダイヤ107と予測ダイヤの比較結果と、暫定パラメータ108とパラメータの設定幅と代表値の比較結果と、適用したロバスト性評価シナリオ109Aとを作業者98に提示する。
【0040】
作業者98は、提示された結果に対して出力画面から調整方法を指示する。結果提示部104は、作業者98からの指示を改善履歴105に格納し、指示に基づいて調整済みのパラメータ111を作成し、作業者98へ提示する。
【0041】
図9は、本実施例のパラメータ作成システム100による処理の全体の流れを示すフローチャートである。
【0042】
まず、入力データを設備データ106と、計画ダイヤ107と、暫定パラメータ108と、ロバスト性評価シナリオ109Aと、パラメータ適用優先度情報110とに登録する(S201)。
【0043】
次に、暫定パラメータ108でダイヤを予測する(S202)。その後、各駅の着発時刻について、計画ダイヤより処理S202で作成した予測ダイヤが計画ダイヤの刻み幅以上と遅くなる列車を抽出する(S203)。鉄道では早発が禁止されているため、遅延する列車を抽出する。例えば、計画ダイヤの刻み幅が5秒、ある列車の計画ダイヤ上でのA駅発時刻が12:00:00、B駅着時刻が12:03:00、予測ダイヤのA駅発時刻12:00:00、B駅着時刻が12:03:05である場合、この列車は抽出すべき列車となる。また、A駅の1番線と2番線から同時刻に同じ線路に向け列車が発車する場合、どちらかの列車の発時刻を遅らせることから、この列車は抽出すべき列車となる。計画ダイヤの刻み幅以下の差分が丸め誤差の範囲内に含まれることから、計画ダイヤの刻み幅以上と遅くなる列車を抽出する処理によって、予測を行う回数を低減できる。
【0044】
そして、抽出された全列車について(S204a~S204b)、定常シナリオ(計画ダイヤ通りに遅延なく運行するシナリオ)を使い、差分が発生する箇所に関連するパラメータを変更し、ダイヤを予測する(S300)。処理S300の詳細は、
図10を参照して説明する。また、シナリオ別パラメータ別の値域を示す制約式を算出する処理は、
図10で説明する。
【0045】
複数のロバスト性の評価シナリオ間での列車ごとに作成された各パラメータの制約式をまとめ、代表値を作成する(S400)。処理S400の詳細は、
図11を参照して説明する。計画ダイヤと一致するパラメータの代表値を計画ダイヤで調整済みのパラメータ111として保存する。また、ダイヤ予測において予測ダイヤに変化が起きたパラメータ種別と変更が起きたダイヤの箇所を記録することで、ロバスト性評価シナリオ109Aを使用した処理S300を効率的に実行する。処理S204a~S204bの反復処理は、列車ごとに並列処理を行い、ダイヤ予測に必要な時間を短縮してもよい。
【0046】
その後、ある列車の発時刻を、ロバスト性評価シナリオ109Aに記載の値だけ遅らせる(S205)。遅延を挿入することで、計画ダイヤに含まれる余裕時分を省き、パラメータの組合せにより計算された予測ダイヤを得ることができる。そして、ロバスト性評価シナリオ109Aの評価シナリオごとに(S206a~S206b)、遅延状態でのダイヤ予測を行いパラメータがとり得る範囲を表す制約式を算出する(S300)。算出された評価シナリオ毎の制約式をまとめ、設定幅と代表値を作成する(S400)。処理S206の反復処理は、評価シナリオ毎に並列処理を行い、ダイヤ予測にかかる時間を短縮してもよい。
【0047】
作成された設定幅と代表値は、暫定パラメータ108と共に表示した出力画面で作業者98に提示される(S207)。作業者98は、提示されたパラメータに関して、改善方法のフィードバックを入力し、入力されたフィードバックは改善方法へ記録される。改善履歴105が豊富になることによって、代表値を決める根拠となるデータが増え、パラメータ値の確認が少なくてよくなり、自動的に調整されたパラメータの精度を向上できる。
【0048】
図10は、ロバスト性評価シナリオ109Aの場合の各パラメータの制約式を算出する処理のフローチャートであり、処理S300を詳細に示すものである。
【0049】
まず、与えられたパラメータでダイヤを予測する(S301)。
図3の計画ダイヤと
図5のシナリオの各々を用いて作成された予測ダイヤを
図14に示す。
図14に示すダイヤは、定常シナリオを用いた各列車の各駅の着時刻T06eと発時刻T06f、評価シナリオ1を用いた各列車の各駅の着時刻T06gと発時刻T06h、評価シナリオ2を持ち痛っ各列車の各駅の着時刻T06iと発時刻T06jの時刻を含む。評価シナリオ1では、#2でA駅にて90秒だけ発時刻が遅れる条件で予測する。評価シナリオ2では、#4でB駅にて30秒だけ発時刻が遅れる条件で予測する。
【0050】
その後、計画ダイヤと予測ダイヤを比較し、パラメータ調整対象を決める(S302)。各駅の発時刻と着時刻が計画ダイヤと予測ダイヤで一致しない場合に差分ありと判定し、パラメータを変更する。変更されるパラメータは、列車の行路上で最初に差分が発生した駅(以降、差分起点駅と称する)及び差分起点駅を発駅又は着駅とする駅間を区間とするパラメータを選定する。例えば、
図2の線形でB駅着時点からダイヤの差分が発生する場合、差分発生起点の直前であるA駅発から差分発生の起点となるB駅着までに関連するパラメータ(
図4のパラメータでは、A-B駅間に設定される#1、A-B駅間の分岐に設定される#12、A-B駅間での前後の列車間隔に設定される#9、#10)が該当する。定常シナリオの場合、差分発生箇所のパラメータを網羅的に選ぶ。ロバスト性評価シナリオ109Aの場合、定常シナリオでの処理で有効だった連続値を抽出してもよい。この場合、予測ダイヤに変更が生じるパラメータを効率的に発見でき、ダイヤの予測回数を低減できる。
【0051】
抽出されたパラメータを用いて、パラメータごと及びパラメータの組ごとに繰り返し処理を実行する(S303a~S303b)。パラメータの組は、抽出されたパラメータから生じ得る全ての組み合わせであり、これら全ての組み合わせに対して繰り返し処理が実行される。例えば、続行時隔の確保が必要だと続行時隔の組み合わせは発生し得るが、時隔の確保が不要だと続行時隔の組み合わせは発生し得ない。繰り返し処理を並列に実行して、計算時間を削減してもよい。全ての組み合わせに対して行うのは、あるパラメータ種別を変更しなければ予測ダイヤに変更が反映されない関係となるパラメータ種別が存在するためである。例えば、ある駅での先行列車の出発と自列車の到着の間の時隔である続行時隔が、後続列車の予測着時刻を決定している場合、前述の駅に到着する駅間の走行時分を短くしても当該駅の予測着時刻は変わらない。
【0052】
次に、パラメータの変更量を決定する。適用されるロバスト性評価シナリオ109Aの区間(T03bの駅からT03dの駅までの区間)の設備データ106を参照し、交差部や単線区間などの運行上のボトルネックとなる線形があるかを判定する(S304)。ボトルネックの有無は、単線や行き違い等のボトルネックが当該列車の運転線路上にあるかで判定できる。評価シナリオ2の例では、B駅に単線区間が存在することから、判定はYESとなる。判定がYESの場合、パラメータを調整する刻み幅に第一の設定値を設定する(S305)。判定がNOの場合、パラメータを調整する刻み幅に第二の設定値を設定する(S306)。なお、第一の設定値は第二の設定値より小さい値が予め定められる。例えば、第一の設定値にはパラメータ仕様の最小値を定め、第二の設定値には計画ダイヤの刻み幅を定めるとよい。交差が発生する箇所は、複数の列車が交錯し、運行管理上のボトルネックになるため、細かくパラメータを調整することで尤もらしい予測ダイヤを出力できるパラメータが作成される可能性が高まる。しかし、全ての場所で仕様上の最小値とすると計算量が大きくなるため、ボトルネック箇所以外では大きな刻み幅でパラメータを調整するとよい。これによって、予測ダイヤの尤もらしさを保ちつつ、パラメータの算出に必要な時間を低減できる。
【0053】
決定したパラメータの刻み幅の分だけ、与えられたパラメータからロバスト性評価シナリオ109Aの場合は減算し(S307)、パラメータが0以上の場合(S308)、ダイヤを予測する(S309)。パラメータが0より小さい場合、繰り返し処理の対象のパラメータを変更する。この処理を、予測ダイヤがロバスト性評価シナリオ109Aの想定地点で回復するまで、繰り返し実行する(S310)。減算とするのは、時間の単位でデータが設計されているパラメータにおいて、発時刻を遅らせる条件で予測した場合には全体の所要時間が増える方向の予測がされないからである。
【0054】
定常シナリオの場合、S303a~S303bのループ内の処理は、列車順序を変える目的での前後列車間隔を刻み幅とした処理と、計画ダイヤに合わせる目的での計画ダイヤ刻み幅を刻み幅とした処理の2段階で実行してもよい。これにより、ダイヤ予測に必要な時間を短縮できるため、効率的にパラメータを調整できる。
【0055】
パラメータごと及びパラメータの組ごとに、ロバスト性評価シナリオ109Aの通りに列車遅延を回復する予測ダイヤを出力するためのパラメータ値とその予測ダイヤを抽出する(S311)。抽出したパラメータ値に基づいて、パラメータごと及びパラメータの組ごとの値域を示す制約式を求める(S312)。ロバスト性評価シナリオ109Aの通りに列車遅延を回復できるパラメータ値が見つからない場合、暫定パラメータ値のままとする。列車遅延を回復できるパラメータ値が見つからなかったことが分かるようフラグを立てるとよい。
【0056】
ここで、
図15を例に説明する。グラフ700は、評価シナリオ2においてB-C駅間走行時分とC駅停車時分の調整を示す。
【0057】
評価シナリオ2では、B駅での遅延が30秒までなら許容される。つまり、計画ダイヤにはB駅発時刻から回復地点であるC駅発時刻までに30秒の余裕時分を含んだ時刻を設定したことになる。B-C駅間走行時分のみで30秒すべての余裕時分を使い切る場合、B-C駅間走行時分は、計画ダイヤで調整済みの120秒(702)から30秒短縮された時点である90秒以下の範囲がとり得る範囲となる。同様に、C駅停車時分についても計画ダイヤで調整済みの60秒(703)から30秒短縮された時点である30秒以下の範囲がとり得る範囲となる。この点702と点703を結ぶ線分701を描くことができる。従って、パラメータ単体では、計画ダイヤで調整済みのパラメータから大きくならないよう、B-C駅間走行時分は120秒以下、C駅停車時分は60秒以下となり、パラメータを組み合わせた場合には、B-C駅間走行時分とC駅停車時分の和は150秒以下が算出される制約式となる。
【0058】
図11は、複数の制約式を纏めたパラメータの設定幅から代表値を算出する処理(S400)のフローチャートである。
【0059】
まず、複数のパラメータの制約式をまとめ設定幅を算出する(S401)。定常シナリオと評価シナリオ2使用時の例では、
図16のようになる。複数のシナリオでのパラメータ同士の関係性から値のとり得る範囲が絞られる。T07iに記載済みの部分の例は、
図15の定常シナリオとロバスト性評価シナリオ109Aの適用可範囲になる。
【0060】
次に、定常シナリオとロバスト性評価シナリオ109Aで処理を分岐する。定常シナリオのみの場合、各パラメータの中央値を代表値として設定し(S408)、処理S400は終わる。
【0061】
ロバスト性評価シナリオ109Aの場合、改善履歴105を参照し、計画ダイヤが同一の箇所や設定幅の組み合わせ、範囲が酷似している箇所が存在するかを判定する(S402)。このような改善履歴105が存在する場合、改善履歴105から各パラメータへの余裕時分按分比率を作成する(S403)。余裕時分按分比率は、各シナリオによって算出される制約式において、余裕となる時分を按分する比率である。このような改善履歴105が存在しない場合、パラメータ適用優先度情報110を参照し、当該パラメータが存在するかを判定する(S404)。このようなパラメータ適用優先度情報110が存在する場合、パラメータ適用優先度情報110から各パラメータへの余裕時分按分比率を作成する(S405)。改善履歴105又はパラメータによって余裕時分按分比率が作成された場合、各パラメータ値は按分比率を決定することとなったパラメータの組み合わせの設定幅の最大値から按分された余裕時分だけ減算される(S406)。このような余裕時分の按分比率によって、余裕時分があるパラメータへの偏りを抑制し、詳細に把握できない制御による制約がパラメータに反映される可能性を高めることができる。
【0062】
改善履歴105、パラメータ適用優先度情報110のいずれにも対象箇所が存在しない場合、調整が必要となるパラメータ全体で、計画ダイヤで調整済みのパラメータとの差が最小となる値を採用する。例えば、処理S401で評価シナリオの間での制約式が
図16のT07iに示す制約式で得られたとする。制約式を纏めると
図15に示すグラフとなる。S402の処理では、
図7のT05に当該パラメータが存在するかを判定する。今回はT07の#201、#202、#207が対象であり、そのパラメータ、発着駅の組み合わせがT05にないことから、いずれも当てはまらない。従って、S402でNOと判定され、処理S404に移る。処理S404では、
図6のT04に当該パラメータが存在するかを判定する。停車時分と走行時分のパラメータがT04に含まれていることから、S404でYESと判定され。処理S405では、停車時分と走行時分の余裕時分按分比率として4:5が作成される。処理S406では、
図15の点702と点703の間の線分上で4:5となるパラメータ値を代表値とする。この処理を複数のパラメータを軸とする多次元空間で実行し、複数のパラメータ間での余裕時分按分比率を決定する。
【0063】
図12は、作業者98からの入力画面500の例を示す図である。
【0064】
入力画面500は、計画ダイヤ入力部510と、パラメータ入力部520と、ロバスト性評価シナリオ入力部530と、確定ボタン501とを含む。計画ダイヤ入力部510は、時刻表のスジ表示部511と、計画ダイヤの時刻表入力部512と、計画ダイヤの刻み幅入力部513とを含む。計画ダイヤの時刻表入力部512に入力されたデータは、計画ダイヤ107に記録される。計画ダイヤの時刻表の入力後、スジ表示部511に計画ダイヤが描画される。パラメータ入力部520は、駅間のパラメータ入力部521と、駅のパラメータ入力部522とを含む。パラメータ入力部520に入力されたデータは、暫定パラメータ108に記録される。ロバスト性評価シナリオ入力部530は、個別設定531と、一括設定532とを含む。ロバスト性評価シナリオ109Aは、個別設定531又は一括設定532で入力される。一括設定532で入力されたデータは、駅毎に展開され、ロバスト性評価シナリオ109Aに記録される際に
図5のT03の形式に変換される。データが不足なく入力された状態で確定ボタン550を操作すると、データ登録のイベントが発生する。入力されたデータが不足する場合、作業者98に対し不足箇所を示すエラーを提示し、修正を促す。
【0065】
図13は、作業者98へ提示される出力画面600の例を示す図である。
【0066】
出力画面600は、予測ダイヤのスジ表示部610と、パラメータ表示部620と、ロバスト性評価シナリオ選択部630と、再描画ボタン640と、確定ボタン650とを含む。パラメータ表示部620は、改善履歴105(
図7に示す表T05)を表示する。予測ダイヤのスジ表示部610は、ロバスト性評価シナリオ選択部630で選択されたデータを描画する。例えば、ロバスト性評価シナリオ選択部630で2番目の評価シナリオが選択された場合、B駅#1停車中のスジ611のように遅延が描画される。予測ダイヤのスジ表示部610には、パラメータ表示部620の幅描画で選択された結果を出力した予測ダイヤが描画される。例えば、パラメータ表示部620で2番目のパラメータが選択された場合、B-C駅間の走行時分の詳細のデータ613がポップアップされる。これにより、作業者98はパラメータが提案される根拠を知ることができる。
【0067】
以上に説明したように、本発明の実施例の列車運行管理システム99は、計画ダイヤ107、ロバスト性評価シナリオ109A、評価指標109B、設備データ106、及びパラメータの初期値の入力を受ける入力部101と、1以上の評価シナリオに従ってダイヤを予測し、予測ダイヤを作成する予測部102と、計画ダイヤ107と予測ダイヤとを比較し、評価指標を充足するパラメータ値を絞り込むパラメータ絞り込み部103とを有し、絞り込まれたパラメータを用いて列車ダイヤを予測し、予測された列車ダイヤに従って線路設備を制御する信号を出力するので、作業者98が列車運行管理システム99の詳細な動作を熟知していない状況や制御系の詳細データがない状況であっても、自由度のあるパラメータ値の候補から、尤もらしいパラメータの作成ができる。これにより、列車運行管理システム99の早期のリリース、運行形態や設備の変更に迅速に追従でき、運行管理業務を円滑化できる。
【0068】
また、ロバスト性評価シナリオ109Aは、遅延発生地点、及び遅延時分を含み、評価指標109Bは、遅延回復地点、及び総遅延時分の少なくとも一つを含むので、試行錯誤なく作業者98の負担を低減したパラメータを作成できる。
【0069】
また、パラメータ絞り込み部103は、遅延列車無しが定められる第一の評価シナリオにおいて、総遅延時分が0である第一の評価指標として、パラメータ値を絞り込んで、第一のパラメータを作成する手順と、任意の遅延列車、任意の遅延発生地点、及び任意の遅延時分が定められる1以上の第二の評価シナリオにおいて、遅延回復地点を1以上の第二の評価指標として、パラメータ値を絞り込んで、第二のパラメータを作成する手段とを順に実行するため、変更するパラメータに見当をつけて効率的な絞り込みが可能となり、パラメータの提案に必要な時間を短縮できる。
【0070】
また、パラメータ絞り込み部103は、パラメータ値候補作成部103Aと、制約式計算部103Bと、パラメータ値選定部103Cとを有し、評価シナリオ毎に、パラメータ値候補作成部103Aが、パラメータ値の候補を作成し、予測部103が、計画ダイヤ107と、ロバスト性評価シナリオ109Aと、パラメータ値の候補とに基づいて予測ダイヤを作成し、制約式計算部103Bが、予測ダイヤが評価指標を充足するかを判定し、パラメータ値が満たす制約式を計算し、パラメータ値選定部103Cが、1以上のロバスト性評価シナリオに対して、全ての制約式を充足するパラメータ値を一つ選定するので、作業者98に依存しないパラメータ値を算出できる。
【0071】
また、パラメータ値選定部103Cは、評価シナリオで指定された遅延列車の遅延発生地点から、評価指標で指定された遅延回復地点まで間の所要時間の調整量で遅延時分を按分して第二のパラメータを作成するので、制御の制約に違反する可能性を小さくできる。
【0072】
また、パラメータ値選定部103Cは、実行結果によって生成されるパラメータ改善履歴105に基づいて、按分の比率を計算するので、実行によって類似するパラメータの精度を向上できる。
【0073】
また、パラメータ値選定部103Cは、パラメータの種別ごとに設定した余裕時分の按分の重みに基づいて、按分の比率を計算するので、パラメータ固有の余裕時分の按分傾向を反映して、パラメータの精度を向上できる。
【0074】
また、パラメータ値候補作成部103Cは、線形が運行上のボトルネックとなる箇所でパラメータ変更の刻み幅を小さく設定し、パラメータ値の候補を作成するので、パラメータを緻密に作成する部分と粗く作成する部分でパラメータ値の精度を変えて、計算機リソース量を抑制し、効率的なパラメータ値の絞り込みが可能となる。
【0075】
なお、本発明は前述した実施例に限定されるものではなく、添付した特許請求の範囲の趣旨内における様々な変形例及び同等の構成が含まれる。例えば、前述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに本発明は限定されない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えてもよい。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えてもよい。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をしてもよい。
【0076】
また、前述した各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等により、ハードウェアで実現してもよく、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し実行することにより、ソフトウェアで実現してもよい。
【0077】
各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に格納することができる。
【0078】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、実装上必要な全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、ほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてよい。
【符号の説明】
【0079】
98 作業者
99 列車運行管理システム
100 パラメータ作成システム
101 入力部
102 予測部
103 パラメータ絞り込み部
104 結果提示部
105 改善履歴
106 設備データ
107 計画ダイヤ
108 暫定パラメータ
109A ロバスト性評価シナリオ
109B 評価指標
110 パラメータ適用優先度情報
500 入力画面
600 出力画面
700 B-C駅間走行時分とC駅停車時分の制約式算出イメージのグラフ